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1958/11/04 第30回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第030回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第4号
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1958/11/04 第30回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第030回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第4号

#1
第030回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第4号
昭和三十三年十一月四日(火曜日)
    午前十時三十六分開議
 出席委員
  委員長代理 理事 逢澤  寛君
   理事 中山 マサ君 理事 山下 春江君
   理事 受田 新吉君
      井原 岸高君    臼井 莊一君
      河野 孝子君    辻  政信君
      細田 義安君    今村  等君
      大貫 大八君    角屋堅次郎君
      金丸 徳重君    山口シヅエ君
 委員外の出席者
        大蔵事務官
        (管財局国有財
        産第二課長)  市瀬 泰藏君
        厚生事務官
        (引揚援護局
        長)      河野 鎭雄君
        労働事務官
        (職業安定局雇
        用安定課長)  廣瀬 忠三君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する件
     ――――◇―――――
#2
○逢澤委員長代理 これより会議を開きます。
 本日は、委員長が所用のため出席できませんので、私が委員長の職務を行います。
 これより海外同胞引揚及び遺家族援護に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。辻政信君。
#3
○辻(政)委員 軍艦「陸奥」の引き揚げにつきましては、過去の国会において数回質問をいたしておりますが、どうも、政府は本気であれを引き揚げてやろうという熱意が足りないように思うのであります。最近引揚援護局から関係遺族に渡された書類を点検いたしてみますと、どうも技術的に引き揚げがむずかしい、また、訴訟事件等に妨げられてなかなかはかどらないから、まあ、がまんをして、今まで引き揚げた遺骨を分骨したらどうか、というようなことであったようであります。まだあの軍艦の中には十数年間にわたって眠っている遺体が二百七十一体ある。それなのに、今まで揚げられた人の骨を分けてもらってがまんをしておれというような意味の書類が出ておるのであります。これを見て、私は非常に憤慨したのでありますが、この委員会において厚生大臣橋本さんも、責任を持って善処すると言いながら、その下っ端の役人が、これはむずかしいからがまんをせよというようなことを、遺族にそれとなしに通知をしておる書類がある。こういうことで、一体国のために死んだ人に対して済むと思われるかどうか。私のこの前の質問に対して、援護局長から、どういう処置をとられたか、また、どういうふうにしようとするのか、お答えを願いたい。
#4
○河野説明員 ただいま御質問のございました中に、遺族に私どもの方からお手紙を差し上げたというふうなお言葉がございましたが、その通りでございます。ただ、私ども、引き揚げができないからがまんをしろということで、分骨のことを実は考えておるのじゃないのであります。引き揚げにつきましては、先般の委員会でも申し上げましたように、訴訟も係属中でございます、また、技術的にもいろいろ問題がございますので、今すぐというふうなことも非常にむずかしいのではないかというふうに考えておるわけでございますが、さりとて、御遺族の方に対してこのままただ手をこまねいているというふうなわけにはいかぬのじゃないか。かたがた、だいぶ前になりますが、東京近辺の御遺族がお集まりになりました席上でも、少くとも、さしあたり相当数の遺骨を収容しておるから、それを希望者に分骨したらどうかというような御意見が出たわけであります。そこで、当時の艦長の奥さんが東京へ出られまして、その方とも御相談をいたしまして、三好艦長の奥さんから遺族のお気持を一応聞いていただいたわけであります。そうしますと、相当数の分骨御希望があるように伺いましたので、やはり引き揚げるつなぎの措置といたしまして、御希望の方に分骨をして差し上げることが適当であろうというふうなことで、御希望をただいま取りまとめておる次第でございます。まだ全部集まっておりませんが、府県を通じて調査をいたしておりまして、もよりの県の状況を聞いてみますと、かなりの方が分骨を御希望なさっているというふうに承知をいたしておるわけであります。従いまして、その御希望に応じまして、とりあえずの措置として、分骨をして差し上げることがいいのじゃないか、こういうように考えておるわけでございます。一方、引き揚げのことは、それによってやめてしまう、あるいはできないから、そのかわりだという趣旨では毛頭ございません。引き揚げの方も、御承知のように極力早くこれが実現するように私ども努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。この前の委員会でも申し上げましたように、ただいま訴訟が係属をしておるわけでございます。立ち入り禁止の仮処分の申請が出ておりまして、最高裁にこれが係属しております。そこで、最高裁の方にも法務省を通じて連絡をとりまして、極力これを早く片づけてもらうように措置をいたしておるわけでございます。これは、そう長くかからないで解決する見通しのように伺っております。
 それからもう一つ、所有権確認の訴えが西日本海事から出ておるわけでございますが、これは、山口県の地方裁判所に係属中でございまして、第一審の判決までまだいっておりません。従いまして、これが完全な解決をいたしますまでには若干の日時を要するのではないか、かように考えております。これも、できるだけ早く促進をしてもらいますように、同様、法務省の方から地裁の方にも申し入れをしていただいております。さようにいたしまして、訴訟が片づきました暁におきましては、大蔵省にお願いいたしまして、これが払い下げによりまして沈船の引き揚げ、それに伴う遺体の収容というふうなことをいたしたい、かように考えておる次第でございます。
#5
○辻(政)委員 二百七十二人の御遺族からどのくらいの回答がきておりますか。
#6
○河野説明員 まだ県の手元にございまして、私どものところに届いておりませんので、正確なお答えをいたしかねますが、近県の模様をちょっと聞いてみますと、東京、神奈川、埼玉の状況でございますが、百七十七件御照会いたしまして、今月の一日までに回答がございましたのが七十三件、そのうち、六十二件が分骨を御希望になっておる、こういうふうに聞いております。これは、全国大体同じような傾向ではなかろうかというふうに一応推察をいたしまして、先ほどのようなお答えを申し上げたようなわけであります。
#7
○辻(政)委員 私のところに、長野県からも大阪府からも、血相を変えて陳情に来ております。それは、三好艦長の未亡人を通じて、とても引き揚げの見込みがないのだからがまんをしろ、こういうようなことを、引揚援護局はそれとなしににおわされておる。むずかしいということで責任を転嫁して、がまんをしろと言う。あなたのお子さんがあの軍艦の中に沈んでおったら、援護局長は、他人の骨をもらってきて仏壇に供えるお気持になりますか。
#8
○河野説明員 先ほどお答えいたしましたように、引き揚げのかわりという趣旨では毛頭ないわけでございます。先般遺族の代表の方もお見えになりましたので、お会いをいたしましていろいろお話し合いをいたしたのでございますが、大体そういう趣旨で、すぐというわけにいかないので、そのつなぎの意味で分骨を御希望の方にはして差し上げたらどうかというようなことを御説明申し上げまして、その点、御了承いただいたように私は考えておるわけでございます。
#9
○辻(政)委員 山口県の地裁で非常に判決がおくれておるということに対して、厚生大臣から法務大臣に、正式にそれを促進するように御連絡なさいましたか。
#10
○河野説明員 事務的に法務省を通じまして督促をいたしておる次第でございます。
#11
○辻(政)委員 大蔵省に聞きますが、あれは、現在大蔵省の所管になっておりますか。
#12
○市瀬説明員 その通りでございます。
#13
○辻(政)委員 大蔵省はどうするつもりですか。
#14
○市瀬説明員 一般に旧陸海軍の所有でありました艦船は、日本の近海に沈んでおります場合は、これを引き揚げ可能なものから順次希望される向きに売り払う、そういう方針で今やってきておりまして、すでに浅いところに沈んでおりました、あるいは比較的引き揚げが容易でありました艦船につきましては、相当数量の引き揚げが行われまして、売り払いが行われております。旧軍艦「陸奥」も、もし引き揚げが可能であり、容易であるとしましたならば、すでに売り払われたでありましょうし、あるいは今後においても売り払われるべきものでございますが、今までのところは、引き揚げ技術の問題と、それから、ただいまお話がございましたように遺骨の問題がございますので、引き揚げ技術上の相当な制約がございまして、そのために今までおくれておったものでございます。
#15
○辻(政)委員 遺族にその点を確かめますと、われわれは、引き揚げ技術上、あれを水中で爆破しなければできないというような場合に、その爆破によって遺体が散乱をしてなくなることはがまんをする、こういうことなのであります。あなた方は、今技術上むずかしいとおっしゃるが、私、しろうとでありますけれども、深さは四十メートルです。しかも、山口県の瀬戸内海のどまん中に沈んでおる。ガダルカナルとかニューギニアに沈んでいる船とは違う。しかも、くず鉄屋はニューギニアやフィリピンまで出かけていって引き揚げをしておる。自分の家の目の前に沈んだものをほったらかしておいて南方まで出ていこう、そういう空気にある。おそらく私は、この訴訟事件とかその他の問題がひっかかっておって、あなた方がこれをまだ入札させないんじゃないか、そうじゃないですか。
#16
○市瀬説明員 訴訟事件にかかっております物件の現状を変えるということは、極力避けております。その点でおくれておりますのも一つの原因でございますが、もう一つは、引き揚げ技術の問題でございまして、ただいま辻委員からお話がありましたけれども、今まで私どもといたしましては、厚生省からのお話もありまして、「陸奥」にまだ残っております遺体の引き揚げの問題について、慎重なる考慮を払わなければならないということを聞いておりますので、たとえば、ダイナマイトでございますか、ハッパを使って爆破しつつ部分的に引き揚げていくという方法ならば可能でございますけれども、そういうことを避けまして、完全浮揚という観点から引き揚げをする、こういう点で今まで考えておりまして、そのためには、完全浮揚という方法でこれを引き揚げるとしますならば、相当の日子と多額の金額がかかる、そういうような考慮から、私ども、売り払いの場合に、完全浮揚という条件をつけても、なお買って下さるという方があるかどうかという問題で、十分慎重な考慮を払っておりましておくれた次第でございます。繰り返して申し上げますが、訴訟が係属しておったということと、それから引き揚げ技術、二つの問題でございます。
#17
○辻(政)委員 完全浮揚をやるときに、どのくらいの費用がかかるのですか、御調査なさいましたか。
#18
○市瀬説明員 調査いたしました。これは、一般に引揚業者は、サルベージ業者でございますが、なかなか方法を教えてくれません。そこで、大蔵省におります技術陣で最終的に検討したのでございますが、従来かなりの沈船を引き揚げております。そのデータをもととし、かつ引揚業者ともいろいろ話し合いをしまして、断片的な資料はいただいております。それから、かつて「陸奥」につきましては、海底の状況を調査しまして、大体どんな状態で海底に横たわっているかということは図面ができております。そういうような点と海流等を計算いたしまして、完全浮揚にかかる引揚費というものが計算されております。
#19
○辻(政)委員 大体の見当はどのくらいですか。
#20
○市瀬説明員 現在の価格にいたしまして約九億四千三百万円と推定されております。
#21
○辻(政)委員 西日本海事工業というインチキ会社を御存じでしょうが、社長は武岡賢、この人がアメリカ軍から引き継ぎを受けて、そして役人と結託して、簡単に引き揚げられるものは引き揚げておる。遺骨は揚げても売れないから、高く売れる鉄だけを引き揚げて、そして英霊だけはあと回しにしておる。私はそういうふうに見ておる。そうして、この男は業務上横領罪で刑事訴訟が提起されておりましたが、今は民事訴訟にかかっております。その過去までさかのぼりますと、かなりこの事件には不正、汚職が出ると思いますが、それは過去の問題ですから問わない。大蔵省も厚生省も全力をあげて、一般に入札を公告なさって――皆さんは業者じゃないから九億かかるとおっしゃるけれども、何といっても瀬戸内海のどまん中で四十メートルの深さ、ことに調査の図面もできておるのですから、これに九億かかるなんといいうのは、専門家じゃありませんけれども納得できない。入札を公告なさって、専門家が検討してよかろうというのなら、一日も早くやるべきじゃないですか、こう思うのです。何も特定の業者だけに入札する必要はないのですから、これを公開して、専門家がそれぞれ検討すればそんなことはない。一体この鋼材だけでも相当なものです。大蔵省はどのくらいに見積られておりますか。
#22
○市瀬説明員 ただいま西日本海事工業の話がございましたのですが、ただいま御紹介の通りでございまして、刑事事件につきましては、すでに最高裁の判決が出ておりまして、武岡何がしという者は有罪となっております。それでありますから、大蔵省といたしましては、もはや過去にいろいろのいきさつはあったにいたしましても、武岡何がしが社長になっております西日本海事工業は相手にいたさない方針でございまして、もし今後「陸奥」を処分いたしますとすれば、一般競争あるいは指名競争等、会計法並びに予算決算及び会計令の定めるところによりまして、その二つの方法で処分する予定でございます。なお、「陸奥」のスクラップ等の価格を見積りましたものは、全体で五億七千万円と予定しておりますが、発生見込みの鋼材は三千六百九十三トン、これは伸鉄材であります。それからもう一つの鋼材、溶解用特級が一万二千六十二トン、特殊鋼が一万三千九百二十五トン、銑鉄が四百五十六トン、銅系統金属が二百九十一トン、砲金系が二百九十九トン、鉛系統のものが百九トン、合計いたしまして三万八百三十五トンの金属類と計算し、それを時価に計算しましたものでございます。
#23
○辻(政)委員 西日本海事工業社長の武岡賢という人は、業務上横領で有罪になった人だ。そうすると、大蔵省の御意見は、この民事裁判が決定しなくても、もはや、こういうものは相手にせずに、入札処分しようというお考えを持っているのですか。
#24
○市瀬説明員 刑事上は、武岡氏は有罪の判決が出ておりますが、その武岡氏から国に対しまして訴訟が二件、国側は一件反訴しておりますような関係でございまして、民事上の問題を解決しないで、もし今引き揚げましたといたしますと、万一国側に不利なる判決が出た場合に多大の損害賠償を払わされるおそれがあります。それから、先ほどもお話がありましたように、最高裁判所、山口地方裁判所の裁判所側から、問題の物件の原状不変更というような指示が出ましたならば、これも避けなければならないという考慮がありまして、ただいまの現段階では、引き揚げは差し控えている次第でございます。
#25
○辻(政)委員 山口地方裁に武岡氏かな提訴されたのはいつです。
#26
○市瀬説明員 山口地方裁に対しましては、国が先に、昭和二十八年の五月十五日に、当初売り払いました以上のものを彼が無断で引き揚げましたので、その損害賠償の請求の訴訟を起したのでございます。それに対しまして昭和三十年の十二月二十六日に、所有権確認請求の訴訟を武岡氏の方から国に提出されておるのでございます。
#27
○辻(政)委員 三年たっているんですね。こういう事件が三年たっても判決が与えられない。これはあなた方を責めてもしようがないが、そのために英霊二百七十一体が眠っているんです。これが日本の裁判の現状でございます。また、それを促進しようという気持が援護局にない。あるならば政府に連絡して――三年もこういう問題で判決を下さないというばかなことはないじゃないですか。皆さんは、自分の子供を海底に沈めているなら、こういうことはなかろうと思う。そういう気持で法務省にも連絡をなさり、また、山口の地方裁にも連絡して、一日も早くこの判決をお出しになって――現にこの西日本海事というやつはどろぼうみたいなやつだ。インチキ会社でもうけるだけもうけて、そして、まだ国に対して訴訟を起すというような手合いでありますから、こういうものを何の必要があって保護しなければならぬかということを考えられて、一日も早く法務省と連絡をとられ、また、できたときには、大蔵省は時間を置かないように正式に入札させて、そして、海底に沈んで十三年になるその遺族の気持になって、この問題を処理していただきたいと思います。きょうは両大臣を呼ぶつもりでありましたが、おらぬから、あなた方から責任を持って両大臣、政府にその点を報告なさって、そして、できるだけ近い時期に結論を出されるように、特にお願いしておきます。
#28
○河野説明員 ただいまの御趣旨に沿うように、極力努力をいたしたいと思います。
#29
○辻(政)委員 通常国会でまたやりますから、それまでに結論を出されるようにお願いしておきます。
#30
○中山委員 今の問題に対して、私はちょっと伺いたいのでございます。私も法律事務に携わっておるうちの者といたしまして、自分の問題について不利なような裁判を頼まれますと、これは弁護士の常套手段で、それを引き延ばし引き延ばしして、延期するということを、私は弁護士の家庭に生活している者として知っております。今の問題につきましても、何らか、そういうふうな不利であるということで、その相手方の悪質な人間の手に、法務省がやむを得ず――これは手続をとりますれば、そういうことは幾らでもできることなんでございますが、その手に乗っているきらいがあるのではないかということを、私は今ふっと思いついたのでございます。それは延期なしに次々と裁判が執行されておるかどうか、開廷されておるかどうかということを、私ちょっと伺っておきたいのでございます。これは個人の訴訟でございますと、依頼者がとてもやかましいのですから、なかなかその引き延ばしの手に乗らないように、相手方の弁護士もやっていくという手もあるのでございますけれども、こういうふうな、ほんとうに遺族の人がこれの訴訟提出人というわけでなしに、国が提出していらっしゃるので、まことに言いにくいことでございますけれども、いささか、そういう場合にはやむを得ないというような態度で向うの引き延ばし戦術にかかられて、こういうふうに三年もだらだらといっているのではないかということを、私ふっと気になるのでございますが、そういう面も一つおわかりでございましたならば、大蔵省なり引き揚げ関係の方なり、どちらでもよろしゅうございますから、どういうわけでこう長く延びておるか。松川事件のようなものは十年近くもやっておる。これは大ぜいの人ですけれども、この問題については、業者がたった一つの会社なんですから、そんなにむちゃくちゃに引き延ばされるわけは、私はないように思うのでありますが、こういう手続上の遅延でございますね。こういう問題について、一つおわかりでございましたら、聞かしておいていただきたいと思います。
#31
○市瀬説明員 国が裁判の当事者になっております場合は、すべて法務省が担当いたしておりまして、法務省の訟務局においてやっておられます。あるいは地方の法務局の訟務部でやっておられますが、大蔵省所管の財産に関する訴訟でございますと、その事情は逐一私どもでもキャッチしておるのでございまして、ただいまの問題につきましては、訴訟が三件重なっております関係もありまして、山口の裁判所と、それから、すでに最高裁に上っておりますものは、東京地方裁判所から東京高裁を経て最高裁判所にかかるわけでありまして、その間、両裁判所で連絡しておったこともございます。現在山口地方裁判所に提訴になっておりますのはすでに二十五回の準備手続が終りまして、近く口頭弁論が開かれる予定になっております。それで、次回が十一月の二十五日というぐらいでございまして、最近はかなりピッチを上げておるのでございますが、ただいま御指摘のように、提訴に対しまして、昭和三十年に相手方が反訴してきてからしばらくの間は、まさに相手方のペースに巻き込まれたのかもしれませんけれども、非常におそいぺースで裁判が進行されていることは事実でございます。
#32
○中山委員 私も、そういう事件に関連して、相手方に、何と申しますか、良心的な弁護士さんならば巻き込まれるおそれがあるということも過去において見て参っておりますので、どうぞ一つ今のような――辻委員も懸命の努力をして、その遺族の人たちの声も聞いてやっていらっしゃることでございまするので、相手方の弁護士の、弁護士としてのその腕にひっかからないように、一つ急速なる御判決が仰がれるような運びにやっていただきたいということを、老婆心から要請しておくものでございます。
#33
○逢澤委員長代理 ちょっと速記をとめて下さい。
    〔速記中止〕
#34
○逢澤委員長代理 それでは速記を始めて下さい。
 中山マサ君。
#35
○中山委員 これは、もう前にも私お尋ねした問題でございまして、労働省のお方の御答弁では、東京都、神奈川県あたりでは、一年間は県が身元引受人のようになって片親の子供に就職のあっせんをしてやったというお話でございまして、だいぶ好転してきておると思って、私喜んでおったのでございますが、ついこのごろ、また、朝の「国民の声」というのですか、私これを大阪で聞いたか、東京で聞いたか、はっきりいたしませんのですけれども、非常に親が嘆いてこの問題を訴えておりました。それは、姉を就職させる場合に、学科試験はパスしたのに、面接でもって、片親であるということのために落ちてしまった。それで、つまらない小さい会社に勤めるようになった。割方学問もよくできたのに、こういう目にあった。今度は妹の場合になってきた。それはことしの就職でございますが、むろん、本年は非常に失業者が多くて就職も困難だということは私も聞いておりますけれども、しかし、今度は妹の場合になって、何とか姉が見たそのうき目を見せたくないというので、母親が八方非常に努力はしたけれども、やはり同じ結果になってしまったということを言うておるのであります。しかも、これは遺族であります。「国のために父親をささげて、そうしてその子供が、ある場合には遺児としてお世話を願ったりすることができるのにもかかわらず、就職になったら、ここで特にそういうむごい目にあわせるということは、子供が国を恨むようになりはしないか、実は自分も恨みたくなるのだ、この子ができない子なら仕方がない、しかし上席で学校も出て、やはりこれも学科試験にはパスして、そうして面接でやられたということは、姉妹もうこれで二人目だ」といって、非常に訴えておったわけでございまして、私は、どうして、年月がたっていくにもかかわらず、こういう問題で国民の責任感というものがこれにこたえてこないかということを、実に不思議に思うのでございますが、まず第一に、引揚援護局長に、こういう面について何か指示あるいは要請、そういうものをなすったことがあるでございましょうか。こういう遺児の就職の問題について、いろいろと引き揚げの問題だとか、その他の問題で御心配いただいておることはわかっておりますけれども、こういう遺児の面までは自分の範囲ではないというお考えでございましょうか。やはりこれは一連の関係があると思って御努力いただいたことがあるかどうかということを、まず伺ってみたいと思います。
#36
○河野説明員 遺児の問題は、全然私ども関係がないのだという気持でおるわけじゃございませんが、やはり就職の問題になりますと、専門の方にお願いをしてお世話をするということがいいんじゃないかというふうなことで、かねがね労働省にお願いいたしまして、引揚者の問題とあわせて労働省の方で実はいろいろお骨折りをいただいております私の方といたしまして、積極的に、直接この問題をどうこうというふうな措置をとったことはないわけであります。
#37
○中山委員 それは、別に自分の範囲内でないとは思っていないとおっしゃるのでございますけれども、どうも熱が足らぬように私は思うのでございます。今後一つ、それも確かに関連性のある問題でございますので、その方も一つ各方面へ、――これも厚生でございますので、ぜひこういう気の毒な家庭の人を採ってもらうよう御努力願いたい。現に私も、そういう意味で、今度当選いたしましてから新聞広告をいたしまして、そして会館に置く女の子を採りましたときも、やはりそのつもりで、自分といたしましては片親しかない人を雇っております。私どもの家におきましても片親しかない人を女中として雇って、私自身としては、なるたけそういう面にも、自分の小さい範囲ではあるけれども、お手伝いがしたいということで、そういうふうに努力をいたしておりますが、私どものような小範囲では、いかんともすることができませんので、厚生省におかれましても、この問題について、ぜひ労働省にも強力な申し入れをしていただいて、どれくらいの範囲でそういう人が助かったかというようなこともお調べおき願いたいと思います。
 それでは労働省の方に。これまで御努力いただきました東京、神奈川県につきましては、前に伺って非常に喜んだわけでございますが、そういう、ただ一年ではございますが、片親の人に対して、何とか県が保証人のような立場をとろうというような県がふえてきておりますかどうかということを、まず伺ってみたいと思います。
#38
○廣瀬説明員 お答え申し上げます。両親あるいは片親を欠く児童の就職問題につきまして、県が身元保証を行うということは、先ほどお話がありました東京、神奈川等が以前からやっておったのでございますが、最近の調べによりますと、ことしの八月末現在で四十五県、ほとんど全国でやっております。やり方といたしましては、県自体が身元保証をするというやり方もございますし、それから、社会福祉協議会等の機関が行うというやり方もございます。それから、市町村がやっている場合もございます。そういうものを全部見まして、県として行われていないのが一県だけ、あとは全国にわたってこういう制度は普及しております。
#39
○中山委員 そのやっていない県はどこでございますか。
#40
○廣瀬説明員 私の方の調べで上ってきておりませんのは、佐賀県でございます。
#41
○中山委員 この前、母子家庭の貸付の問題のときも全日本でやっておったのに、富裕県といわれる静岡県でやっていなかったことを私探し出しまして、やかましく言って、これもやってもらうようにしたのですが、佐賀県といえば、私も九州の人間ですけれども、これは九州一の貧乏県です。しかし、ぜひ督励をして下さいまして、県が何とか肩入れをしてくれるようにお話し願いたいと思います。
 それから、今、片親で就職のできた人数が、もしおわかりでしたらお知らせ願います。
#42
○廣瀬説明員 片親だけの統計というものをとっておりませんが、両親または片親を欠く児童の就職状況をとってございますので、それを申し上げたいと思います。ことしの三月卒業者について特別に調査をいたしまして、安定所が扱いました中学卒業者、その中で両親または片親を欠く児童で、安定所に求職の申し込みをいたしました者が八万一千百十五、そのうち、就職いたしました者が八万七百十一、就職率といたしましては九九・四%という数字になっております。それから、高等学校卒業者でございます。これも安定所に現われました者の数字でございますが、やはり両親または片親を欠く子供の求職者数、それが一万一千五百六十五名、そのうち、就職いたしました者が一万三百九十五名、就職率といたしましては八九・九%、こういう数字になっております。
#43
○中山委員 その率から見ますと、成績は悪いとは言えないと私は思いますし、労働省の方のいろいろな御心配を感謝しなければなりません。これに漏れた人が、あるいはひがみからそういうことを訴えているのかもしらぬとも思いますけれども、現状を見ますと、割方そういう立場に立っている人は、世間から、まあ両親がそろっている者ほどの応援をいただけない立場に追い込まれているものでございますので、国にささげて父親のない家庭の子供たちには、どうぞ一つ今後とも特に目をかけていただきまして、ごあっせんのほどをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
#44
○逢澤委員長代理 細田君。
#45
○細田委員 中山委員からいろいろお話がございまして、つけ加えることもなかろうと思うのでありますが、私はこの片親の問題、戦争という不幸な事態から生まれましたいろいろのみじめな現象というものを、自分自身が痛感しておりますので、本来ならば労働大臣あるいは厚生大臣に強く御要望申し上げたいのであります。ただいま課長さんのお話では、九九%の就職があるということで、非常にありがたい率でございますけれども、問題は質でございまして、どうも片親の者は、使用者あるいは企業家、相当大規模な仕事をやっていて、信用度も高いといったようなところにおきましては、どうもきらう傾向があるのです。私も、現に三越に人を入れます場合にも、親になりかわって私が一切の責任を持つということで、重役の諸君にもお会いしましてやった。それから、私保護司を長くやっておりまして、片親の子供たちの中で、因っている人たちの保証人になって就職させた例もございますが、十分りっぱな企業を営んでおって、むしろ国家の恩恵も受けておるといっても過言ではなかろうというような企業家の中において、これをきらう傾向がある。従って、この片親の方々は、むしろ零細企業に道を求めなければならぬということが実態ではなかろうか。そういう点におきまして、いろいろ心配をして、府県にもお話をいたし、あるいは安定所にも通達が出ておるとは思いますが、その町内なり、その市内なり、その町村内において理解を深めて、どこから見てもりっぱな方々、この人が親がわりになるならば安心で、いかなる場合が起きても支障がなかろうということで、使う方においても安心して使えるというような点まではまだまだなかなか啓蒙とか御理解を求める点においての努力が行き届いておるとは言いかねると思うのであります。とにかく、戦争という事態によって親を失ったということ、これは国家の責任でもございますから、こういう人が差別待遇を受けなければならぬ、就職の機会を均等に受けられないということは、これは涙なくしては見られない情景でございます。こういう点で、先ほど来の中山委員の叫びというものは、深刻な叫びでございます。私、今途中から参って失礼でございますが、常々身の回りにおいてこのような事態を直視して、非常に残念なことだ、困ったことだ、どうしたらいいんだということで、私どもに尋ねられた方々については、私どもはそれぞれ処置をしておりますが、しかし、全国的には九十数パーセントというように、ほとんどの人が就職しておるということは、帳面づらにおきましてはりっぱでございますが、質的には、必ずしも満足すべきものではない。この点については厚生省もさることながら、労働省におきましても――私は、安定所長などを他のことで集めた場合にも、こういう点を強くお願いしておるのでありますが、まだまだ行き届いておる、十分であるということは申し上げられませんので、御要望でございまするが、このかわいそうな子供たちが一人前に、ひがまずに、再建のために汗をしぼって仕事ができまするような配慮が強く望まれるわけでございますから、両大臣にもよくこの旨をお伝え願いまして、中山委員の仰せられたようなことが心配なくやっていけまするように、私もなおお願いを申し上げるものでございます。
#46
○廣瀬説明員 ただいま御指摘の通り、数字としては九九・何%あるいは八九%というように、中学、高校とも両親がそろっておられる方々とほとんど変りない率を上げておりますが、私どもといたしましても、今おっしゃられましたように、これには質の問題がある。実はそれにつきましての統計的な資料が残念ながらございませんが、いろいろわれわれも第一線の安定所長から耳にいたします範囲におきましては、大企業の一部においては、やはりそういう方をなかなか採っていただけない、そういうような事情もある。率としてはいいのでございますが、やはり、これが中以下の規模の事業所に入っておられる方が多い。それで、私どもといたしましても、決してこの数字で安心しているわけではございません。この問題につきましては、今後とも安定機関といたしましては、こういうことのために不当な差別待遇があって、将来ある、特に戦争等で両親あるいは片親を失った子供たちがすこやかに伸びていく機会がつみ取られることがないように、全力をあげて努力して参りたいと思っております。
#47
○逢澤委員長代理 受田君。
#48
○受田委員 今の問題の就職率ですが、九九%とか八九%というように、中、高卒とも非常にいい成績のように言われておりますけれども、実際は、細田委員御指摘のように、質の問題があると思います。私は、この質の問題を具体的に表示するのは、すなわち、問題は、就職して、特に中小企業など、あるいは零細な企業などの経営困難なところ、労働過重で低賃金で食っていけなくなるようなところで、あたかも奴隷のごとくに使われておる人々が相当おることを確認しておるのです。そういうところへ就職させられたために、むしろ、その人がひねくれる。そういうような環境への就職ということも起っております。そういう実態を調べたことがあるかどうか。片親がないために、両親がないために、自分はこんな不幸なところへ就職させられた、両親がそろった者は条件のいいところへ就職して、われわれはこんな苦しいところへ就職させられたといって、ひねくれている結果を招いておる子供が相当おります。現実におる。そうした人々の実態を知る一つの資料は、たとえば、就職して一カ年後に離職したのが何人おるか、二カ年後に離職したのが何人おるかという、離職を調査しておられるかどうか。これは重大な資料なんです。就職だけさせた、とにかく、何とかかんとかいって入れたけれども、耐え得ないところで、がまんしきれなくなって、ついにそこを離れて、転々としておるというような実情を、労働省としては十分調査されなければ、まことに責任のがれの就職奨励ということになるんですが、それを調べられた資料はありますか。就職して一年後、二年後に離職した者の数、これを、両親、片親のない者で離職した数、両親のそろっている者で離職した者の数と、分けて調査したその資料を一つ……。
#49
○廣瀬説明員 ただいま御指摘の、両親または片親のない子供たちの就職後の就業ないし離職の状況につきましては、実は、今のところ資料はございません。しかし、全体としての新規学卒者の半年後、一年後ないしは一年半後の離職状況を規模別に調査したものがございますけれども、その中の、両親または片親を欠く子供たちについての調査というものは、まだ実施しておりません。
#50
○受田委員 それが大事な問題なんです。形式的な就職をさせたというだけでは、中山委員が指摘されたような人道的な問題の解決にはならぬ。私はそこまで掘り込んでめんどうを見てあげるというところに、引揚者あるいは遺児の就職問題の解決のかぎが握られておると思う。政府は、われわれの側からしばしば申し入れた、引揚者や遺児に対して優先的にその就職の道の便宜をはかってやれという要望に対して、努力すると言いながら、具体的にどういう方法をもって通達を出して、その引揚者及び遺児に対する就職に心づかいをしているか、具体的に指示をした事項等をお示し願いたいと思うのです。
#51
○廣瀬説明員 孤児、片親児の就職の促進につきましては、ちょっと手元に資料を持って参りませんでしたが、三十年でございますか、三十一年でございましたか、厚生、労働両省の両局長名でたしかで都道府県に通達を流しまして、その後も数回それに類した通達を流して努力をして参ってきております。その内容といたしましては、都道府県知事が、あるいは都道府県の認める公的な機関が身元保証をやっていただく、それは、就職の際に一年間程度身元を保証する、そして、もし就職した孤児または片親のない方によって損害が起きたときには、知事あるいは知事が認める公的な機関がその損害を補慣する、そういう形でやっていただきたいということで、これは労働、厚生両省において大いに推進をいたしました。その結果といたしまして、今度全国の大部分の都道府県にこういう制度が確立されるに至った。それで、具体的に通達等を流しまして、都道府県に指示したことはその点でございます。その後、そういう制度の普及に伴いまして、多少はよくなっているかと思います。しかし、今御指摘がありましたように、非常に過酷な労働条件のもとにある方がおられるようなお話でございましたが、安定所がみずからの手によって就職させた方々につきましては、安定所は常に事業主訪問ということをやっております。その際に、その後の状況はどうですかというようなことで、常に就職後の補導ということに努力いたしておりますので、そういうところで個別的に事情がわかったものもございます。先ほどの御質問が、数字がないか、こういう御質問でしたので、実は全国的な調査がなかったもので、そういうふうに答えましたけれども、事実問題としては、安定所が就職後の補導の際に非常に気をつけてやっておりますが、なお漏れて、御指摘のような問題もあるいはあるかと思います。そういうものがないように、われわれも今後十分注意をいたします。
#52
○受田委員 厚生、労働両省の局長通達というものがされており、都道府県知事が身元保証を引き受けてめんどうを見てあげている、これは非常にけっこうなことです。これは、われわれの要望を具体化された一つの事例だと思います。ところが今お示しになられた、都道府県知事が身元保証して就職させている数、引揚者とか、あるいは遺児とかで、就職の際の条件の悪い人人に対して心づかいをされた数はどのくらいあるか、都道府県知事からの報告を徴せられましたか。これは府県の職員の関係官を通じて報告を求められれば、すぐわかることですが、やられておりますか、どうですか。
#53
○廣瀬説明員 ただいま手元に持って参っておりませんが、ことしの八月に調査をいたしました。それは、役所に帰りますれば数字がございます。案外利用が少いということでございます。
#54
○受田委員 都道府県知事の身元保証の実施状況が悪い。そういう意味ですか。
#55
○廣瀬説明員 さようでございます。
#56
○受田委員 わかりました。それでは、そういう結果だという御回答でございます。これは、私は、都道府県知事がそういう問題に対する関心を十分かり立てる努力を続けてやられないと、ただ単に一片の通牒にとどまって、実態はこれに伴っていないという結果になると思うのです。厚生省、労働省としては常に連絡をされていると思いますが、厚生省からは、自分の所管事項の中に、ぜひ優先的に就職等を取り扱ってもらいたいという問題があれば、それを労働省に連絡する、連絡と同時に、労働省はこれに対して厚生省と相談して、その具体化をやるというのが常にやられていると思いますが、やられておりますね。それがやられている以上は、双方の協議の結果、どういう形の上にその精神が現われてきたかという実例を常に徴して、それの努力が足りなければ、さらにハッパをかける、こういうことを繰り返していかなければ、行政事務というものは形式に流れて、なかなか実態は伴わないものですね。お役人の数が少いといって、皆さんの方では特に事務量なども多くて――労働省や厚生省などというものは大衆サービス省でありますから、ほかの省と比較して一そう御苦労が多いと思いますけれども、しかし、一日の勤務を大いに能率を上げて、こういう人道的な問題を解決するためにお役人が精を出すということは、やはり非常に意義のあることでありますから、お骨は折れましょうけれども、少し馬力をかけて実態を調査してもらいたい。形式に流れるよりか、実態が大事なんです。形式はよくやっていても、実態が伴っていないということが、多くの行政事務の結果なんです。ここに大臣や政務次官を呼んでいろいろとお尋ねしたって、部下の職員にこうせよという指示を与えるだけで、実際の仕事をされるのは事務当局なんです。事務当局が本気にならなければ、大臣命令するといえども、下これに従わず、何言うか、大臣はいつかわるかわからぬというようなことで、小ばかにして、事務官たちがこれを取り扱ってくれたならば、国民の全体の奉仕者としての立場にあられる皆さんの任務を果したことにならぬのですから、私は、この委員会ができて十年以上もたっているのに、こうした問題をあとからあとからと政府に問いただして御督励申し上げねばならぬということは非常に残念ですけれども、大体機先を制して、国会の発言を待つまでもなく、もうおやりになっておらなければならぬはずなんです。だから、具体的な数字等をそのつど国会にお示しを願いまして、都道府県知事が身元保証をやった数はどうであるか、身元保証をやった者が就職後一年後において、あるいは半年後において離職した数がどうであるか、その就職先は、大企業、中企業、小企業あるいは零細規模の家内工業等までも分けて、どういうふうに就職しておるかというようなところもお示しをいただけば、われわれは非常に参考になると思います。これらの諸君が、住み込みなどで寝食をともにしているところは、また別の意味で実態収入があるわけでありますけれども、給与がどういうふうなところで、初任給どの程度これらの者がもらっているか、これは安定所を通じて調べればすぐわかることです。そういうものも一つお示しをいただきたい。また、今、両親または片親のないものの中で就職のできなかった一%とか一一%とかいう、残された人は一体どういう形になっているのか、ほとんどが救われておるように見えますけれども、救われなかった方が大事なんです。全然就職の道を閉ざされた人々、こういう人々が今何パーセントか残っている。その残った人を一体どういうふうに補導していくかということ、これは路頭に迷っておるということでは済まされないのですから、これは一〇〇%就職というところまでいかなければならぬ。十分満足できるところへの就職は不可能でも、次善の策として、ある程度の希望を持って働けるようなところへ道を開いてやる、これは親にかわって国家がやってあげなければならぬ。国家の命令でなくなられた人々の場合とか、あるいは国家の命令で外地へ出されて、祖国へ帰ってみたら就職の道は閉ざされておるというような人々に、優先的に道を開いてあげる努力が必要なんですから、その具体的な努力の過程をそのつどお示しいただき、政府も国会も一体となって、この長期にわたる戦争の痛手を受けた人々をお助けするという大事な仕事を達成したいと思うのですが、どうでしょう。大臣の命令一つでやられるのでなくして、国会の発言を待つまでもなく、みずからどんどんそういうところへ――頭のいい人がお役人になっておるはずです。その他の人は公務員試験にパスしないし、あるいは官庁へ就職されないはずなんですからね。非常に優秀な人が公務員の地位にあられるのですから、そういうところは消極的でなくして、積極的に行政事務を担当するという面を、一つお持ちいただきたい。特に労働省、厚生省というお役所は、そういうところに積極性を持って大衆にサービスするというところに、こういうお役所に勤務される人の光栄があると思うのです。御決意のほどをお示し願いたい。
#57
○廣瀬説明員 いろいろお教えをいただきましたが、われわれとしても、熱意を持ってこの仕事に当っておるつもりでございます。しかし、外部からながめますと、必ずしも十分でないというふうに思われる点が多々あろうかと思います。ただいまおっしゃいましたように、実態がよく把握できていないじゃないか、これはまさに御指摘の通りで、十分という資料も実はできておりません。そういう資料がなければ、それがどういう方向かはっきりしないじゃないか、これは御指摘の通りでありまして、われわれとしては、そういう欠陥を是正する、是正するだけでなくして、さらに新しい手を打つために現在若干考えていることがございます。これは事務当局だけの考えで、ここで申し上げるべき筋合いのものでないと思うのでありますが、大いに努力をしていきたいと思います。
 なお、不十分な点につきましては、さらにいろいろ御指摘をいただいて、やはり安定機関というのは、国民全般の協力を得て仕事をやっていくべき筋合いのものでございますから、職員だけでわからないようなことがございましたら、いろいろ御指摘を願って、直すべきことは直して、努力して参りたいと考えております。
#58
○受田委員 厚生省の、この席に列せられた最高の地位にある援護局長として、いろいろ厚生省側からも常に要望されている諸般の事項について労働省と折衝し、労働省がそれをどういうふうに具体的にやっておられるか、ただこれを労働省にまかせてあるということだけで、ほうりっぱなしにしてはいけないのであります。その結果がどうなっておるか、常に連絡しなければいかぬ。厚生省側の要望を常に具体化するための努力が必要なのですが、こうしてほしいとかいう、そういう努力の跡が私はどうも拝見できないのです。労働省は、私の方の所管ではないと、逃げ腰でおられる悲しい御発言があった。そんな逃げ腰じゃいけないのです。やはり、厚生省としては厚生省の事業の一環として、就職等も労働省にお骨を折っていただいておる事情をよく調べて、満ち足りないところがあったならば、これを埋めるためにもう一ぺん努力するとか、そういう努力が厚生省に要ると思いますが、どうでしょうか。
#59
○河野説明員 御指摘の通りでございまして、労働省と十分連絡をとりまして、一そう事態の改善に努力いたしたいと思います。
#60
○受田委員 質問はこれで終りますが、舞鶴の引揚援護局が十一月十五日をもって廃庁されるわけです。私もその廃庁式の御案内をいただいております。それまでに委員会が開かれるとは思いますが、この長期にわたって引き揚げ業務に非常な努力をしてもらった舞鶴引揚援護局の存在がなくなるわけです。これはまことにわれわれとしては感無量のものがあります。この委員会と非常に縁の深い舞鶴引揚援護局であったことを確認しておるわけであります。あの土地に上陸して、祖国に再び帰られたその人々の胸にも、舞鶴引揚援護局が廃庁されるということで、どのように強い衝撃を受けておるかと私は思います。そこで政府は、このお役所が廃止されるということに対して、何か、廃庁式ということもありますが、そういうことに対して、もっと大きな意義のある行事を考えるとか、あるいはここにおられる職員に対する優遇措置というようなものに対して心づかいをするとかいうような、具体的の用意がされておるのじゃないかと思います。この行事及び舞鶴引揚援護局が廃庁されると同時に、その職を失う人々に対する対策、それは再就職の問題もあるし、退職金の問題もあろうし、年末手当の問題もあるし、それらについて、政府で用意されておるところを一つお示しいただきたいと思います。
#61
○河野説明員 援護局廃庁に伴います職員の身の振り方の点をこの春から特に心配いたしまして、いろいろとお世話をして参っておるわけであります。定員といたしまして三十人の職員がおりまして、この春から逐次配置転換を計画いたしまして、春のうちに約八名ほどの人を国立病院その他にお世話いたしまして、残りました二十数名の者を、この秋までにいろいろお世話をするように努力をいたしておるわけであります。現在まで大体何とか目鼻がつくまでの段階にこぎつけております。ただ二、三の方で、舞鶴をどうしても離れられないというふうな方がまだ残っておられます。これらの人につきましても、最後まで何とか路頭に迷うことのないように十分努力をいたしたい、かように考えております。
 それから退職金等の問題につきましては、配置転換をした人につきましては問題ないわけでありますが、民間の事業に行く、あるいは府県に行くとかいう人も中にはあるわけでございます。それから、自発的に郷里にお帰りになるという方々もあるわけでございます。そういう人たちにつきましては、御承知かと思いますが、指名退職等の制度がございまして、退職金の倍額支給、それから勤務年限に応じまして、一定期間、最高十カ月まででございますが、給与を差し上げるといふような制度ができております。この制度を今回も適用するようにいたしたいと考えております。
#62
○受田委員 そうした退職金の支給規定というものは、国家公務員等退職手当暫定措置法その他の規定で特別増額支給の規定があるわけです。現在の規定以外のもう一つの問題は、十一月十五日でこの人々はやめるわけです。十二月十五日に退職すれば期末手当がもらえるのですが、十一月十五日にやめるために、もう一カ月おそければ六カ月以上在職者としての期末手当が、今度増額される部分を入れて一・九カ月分というものが政府案によっても支給されるわけなんです。ところが、一カ月前にやめるためにそれがないわけなんです。そうすると、ほとんど二カ月に近い期末手当が、もう一カ月勤務したらもらえるんです。ただ一カ月早めたばっかりに、それがもらえないのです。こういうときに、国会議員の秘書の期末手当などにおいても、六月、十二月の十五日現在在職していなくても、それ以前に解散された場合には在職したものと認めて支給するという規定もあるのですからね。そういう措置をとられて、今度期末手当の一部改正法が出ておるそういう際に、官の都合によりやめた者は、一カ月前にやめた場合においては、それの一割引きなら一割引きという割引支給という規定でもいいけれども、何かの措置をとって、もうちょっと勤務したら二カ月分もらえる――これは公務員にとっては大きい金ですよ。官の都合で、本人の都合じゃないのです。政府の命令でやめさせるのですから、何か改正措置をとるという、そういう心づかいをされましたか、あるいは忘れましたか、率直に言って、どうなんですか。
#63
○河野説明員 ただいまの点も十分検討はいたしたわけでございます。省内といたしまして、また人事院等ともいろいろ相談をいたしたわけでございますが、実は、今回初めての例でもないわけでございます。ただいまのように、期末手当がその当日勤務しておった者に出すというのは、実は離職者の問題でなしに、公務員制度全体の問題であろうかと思います。たとえば、その前日に公務上の傷害によってやめるというふうな事態が起りましても、実は同じような規定の適用を受ける。そういうふうに、公務上の傷害でやめるとか、あるいは官の都合でやめるとかいうような者に対しましては、その期末手当と別な制度でものを考えるというふうな建前に今なっておるわけであります。たとえば、今の指名定員外の制度あるいは退職金の増額の制度というようなものが、そういう官の都合によってやめるという人のために特に設けられた制度であります。期末手当の方は、公務員制度全体の問題として、その当日おった者を対象として出すというふうな立て方になっておりまして、その立て方が違うので、この制度を離職者の場合に適用するということは非常に困難だという結論に到達をいたしておるわけであります。一応検討はいたしたわけでございますが、今申し上げましたような理由によって、今回そういうふうな措置をとるというふうなところまでは考えなかったわけであります。
#64
○受田委員 これは、このままで捨て去るべき問題でないと思うのです。これは公務員の給与制度を改正するいい機会だと思うのです。こういうチャンスをのがしてはいけないのです。それは給与法の改正をすればいいのです。ごく簡単なんです。つまり、ちょうど十二月十五日現在、その職務にありたる者がその一カ月前にやめた場合には割引減額制度で支給するという新しい制度を作ればいいのです。それを、ずっと前にさかのぼるということは私は問題だと思うのですが、非常に接近している場合、しかも、官の命令で――公務傷害などの場合もやっていいと思うのです。事実調べてみられましたか。資料があれば、一つ示していただきたいのですが、公務傷害の場合に、十二月に入って、期末手当支給前にやめたというのがどれくらいあるか。そういう場合には、期末手当を支給する日まで普通は延ばしております。私は、具体的の例として、そういう仮定のものでなくて、具体的に期末手当支給二、三日前にやめさせられた、公務傷害で退いたという例があれば、示していただきたい。そういう場合は、とにかく、もう四、五日がんばらして十二月の半ば過ぎまで勤務させるとか、手が尽されております。私が行政官であればそういう措置をとります。死亡した場合はありません。それは現実に姿がないのですから。けれども、やめる時期がもう一カ月でというときには、せめて一カ月くらい前まではやるとか、特に今度の舞鶴の職員だけに特別の規定を作ってもいいと思う。廃庁に伴う関係法律を作って、その規定の中へ期末手当は今回に限り特に何カ月分支給する、そういう処置ができるはずです。そういう取扱いは、あとへ尾を引くということはないと思う。一カ月前に役所を廃庁するというようなことはめったにないことでありますから。大体十一月十五日やめるというのが間違いで、三月三十一日までやっておけば問題なかったのに、大急ぎでやったから、こういうやっかいな質問を受けなければならなくなった。これは現地の局長さんも、三月のころまではまだ引揚者があるかもしれないから、とにかく、役所を年度末まで引き延ばしていただきたいと、われわれがあすこへ行ったとき盛んに言っておられたんです。それを、あなた方が十一月十五日でぴしっと打ち切ってしまったんです。そういう跡始末の心づかいを、他に類例もないようなことでありますから、やられてもいいでしょう。どうですか、与党の方も……(「よろしいですよ」「特殊なものだから」と呼ぶ者あり)与党の方も、もちろん異議はありません。今満場一致で、そういうことに対しては異議ないですね。(「異議なし」と呼ぶ者あり)異議ないということになったから、その点について改正法律案を直ちに用意して、十五日に間に合うように出すよう、一つ政府に……。
    〔「大臣の交際費もあるじゃないか」と呼ぶ者あり〕
#65
○逢澤委員長代理 援護局長、何か話がありますか。
#66
○河野説明員 実は、舞鶴の閉庁も、昨年の法律によりますれば、ことしの五月に閉めなければならないような事態であったわけであります。それを特に半年延ばしていただいて十一月十五日というふうになったわけでございます。
 それから一カ月前ということでございますが、実は、一般援護局全体の整理が年々五月十五日に行われている。五月といいますと、やはり上半期の期末手当のちょうど一カ月前ということで、ずっときておりまして、舞鶴だけが実は特殊事情にあるわけではないのでございます。今までずっとそういうことでやってきたようないきさつもございますし、この際、特に舞鶴だけについて特別の制度を設けるということは非常に困難でございます。かように考えております。
#67
○受田委員 それは、未帰還調査部の問題もあるようでございますから、それで、そういうことを言われておると思うのでありますが、それは勇気をふるってやれば、これから後、右へならえになるんです。たとえば、今出たように、大臣の交際費もあるんだから、特別になにしてやったら――これは全会一致の要望が、与党の諸君の御共鳴をいただいてできているのでありますから……。
 委員の皆さんがあまりここにお集まりにならなくなった、この問題に対して、十二時にならぬうちから与党の委員諸君がみな退席するというような、非常に誠意のない事態が発生したので、私は、委員の方々がおらぬのに質問してもしようがないから、これは機会をあらためて早急に委員会を開いて、この問題に対する政府の御見解をただし、われわれ両党共同提案によるところの法律案を早急に、会期を延長しなくとも間に合うようにやるか、あるいは行政措置でやるか、あるいは大臣のポケット・マネーでやるか、いずれかの方法によってこれらの人々を優遇することについて、一つ委員長、あなたの決意を表明していただきたい。
#68
○逢澤委員長代理 理事会等にもよく諮りまして、善処いたしたいと思います。
#69
○受田委員 私の質問をこれで終ります。
#70
○逢澤委員長代理 それでは、本日は、これで散会いたします。
    午後零時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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