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1947/11/10 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第54号
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1947/11/10 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第54号

#1
第001回国会 司法委員会 第54号
昭和二十二年十一月十日(月曜日)
    午前十時四十九分開議
 出席委員
   委員長 松永 義雄君
   理事 荊木 一久君 理事 鍛冶 良作君
      井伊 誠一君    榊原 千代君
      安田 幹太君    山中日露史君
      打出 信行君    中村 俊夫君
      山下 春江君    北浦圭太郎君
      佐瀬 昌三君    明禮輝三郎君
      酒井 俊雄君
 出席國務大臣
        内閣總理大臣  片山  哲君
 出席政府委員
        法制局長官   佐藤 達夫君
        司法事務官   奥野 健一君
 委員外の出席者
        專門調査員   村  教三君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 罹災都市借地借家臨時處理法第二十五條の二の
 災害及び同條の規定を適用する地區を定める法
 律案(内閣提出)(第八〇號)
 平野國務大臣罷免問題に關する件
    ―――――――――――――
#2
○松永委員長 これより會議を開きます。
 罹災都市借地借家臨時處理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地區を定める法律案について審議を進めます。
 本案について討論に移ります。井伊誠一君。
#3
○井伊委員 私は日本社會黨を代表して、本案に贊成の意を表します。
#4
○松永委員長 荊木一久君。
#5
○荊木委員 私は民主黨を代表して贊成いたします。
#6
○北浦委員 私は自由黨を代表いたしまして、本案に全面的に贊成いたします。
#7
○酒井委員 私は國民協同黨を代表いたしまして、原案に贊成いたします。
#8
○松永委員長 討論は終局いたしました。それでは採決いたします。本案について原案に贊成の諸君の御起立を願います。
  (總員起立)
#9
○松永委員長 起立總員。よつて本案は全會一致をもつて原案通り可決いたしました。
 なお本案に對する委員會報告書は委員長に作成方を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
#10
○松永委員長 御異議がなければ、そのようにいたします。暫時休憩いたします。
    午前十時五十二分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時二十九分開議
#11
○松永委員長 休憩前に引續き會議を開きます。
 この際國務大臣罷免權の行使に關する問題について、本法解釋上の疑議を質すべく、政府の意見を聽きたいと存じます。この問題について委員の發言を許します。北浦圭太郎君。
#12
○北浦委員 國務大臣の罷免、この總理大臣の權限について、お伺いいたすのでありまするが、本年十一月五日の朝日新聞並びに讀賣、毎日、この新聞の記事によりますと、片山内閣總理大臣は、こういうことを言つておられる。「罷免権は新憲法に新しく規定された首相の獨自の權限に屬するのであるから、閣議に諮つたり、黨議に付する必要はない、やむを得ざる最後の手段としてとつたのであつて、決して違法ではない。」これは新聞記者に對する一問一答の答辯であります。それから社會黨の中央執行委員會にも同様の御答辯をしておられるのでありますが、罷免權は總理自身に與えられておるものであるから、黨や閣議に諮らないで發動できるものと思う。私がここに問題にいたしまするのは、黨議はこれを省きます。閣議であります。第一にこういうあとを記者並びに社會黨中央執行委員會で述べられたのであるか否か。そうして述べられた首相の信念が、かくのことしであるとするならば、閣議は開かなかつたかどうか。この點をまずお伺いします。
#13
○片山國務大臣 大體今お讀みになりましたことは、その通りであると思います。罷免權を發動するについては、閣議を開いておりません。
#14
○北浦委員 私はそれは大きな間違いであると思う。片山さんも法律家であるから、私がここで申すまでもなく、法律は法網であつて、網である。網の目の一つを見て、すべてを決しようということは、大いなる間違いである。殊に新憲法は、獨斷專行ということについては、もうきびしく、戒められておる。たとえば國會は國權の最高機關であるということは規定いたしておりますけれども、これはあなた方の考えによつて、天皇の解散命令によつて國會の機能というものは停止される。決して最高ではない。それから唯一の立法機關であると書いてありますけれども、われわれの立法は、最高裁判所によつて無效ということを宣言される。すなわち各條文は網の一方を引張ればすべてのものが動くがごとくに、互いに關連し、制限し、そうして牽制して、横暴なからしむるという點においては、實によくできている。なるほど六十八條の第二項を見てみますと、片山總理大臣のおつしやる通りに、内閣總理大臣は任意に國務大臣を罷免できると書いてある。あるけれどもこれは憲法全體の條文を見てみますと、明らかに大きな制限を受けておるということをお考えにならなければならない。そこでお伺いいたしまするが、平野君を罷免するということは、國務大臣の罷免でありますから、天皇の權限に屬する國事行為である。これは憲法七條の第五號にちやんと規定があるから、これは疑いない。そういたしますと、この國事行為に助言をする、また承認する、この權限は、片山内閣總理大臣ではない。内閣である。内閣という会議體である。これは片山内閣總理大臣もお認めになることであらうと思うのであります。明治憲法には、各國務大臣は天皇を輔弼してその責に任ずるということがあつて、その當時は各國務大臣が天皇を輔弼申し上げて、その責任は各國務大臣がとるということであつた。この新憲法になりましてからは、憲法第三條にも書いてある通り、また憲法第六十六條第三項にも書いてあります通りに、内閣が連帯で、内閣というところの統合體、会議機關、これが連帯して國會に責任を負う。そこで片山首相は平野農相罷免の認證を天皇から受けるということについて、これは明らかに天皇の國務行為であり、その責任は片山内閣總理大臣がひとり負うのではなくして、内閣全體が負うべきものであるということを認めなければならないと思いまするが、この點、片山首相の御答辯を煩わします。
#15
○片山國務大臣 國務大臣罷免の認證については、北浦君の申された通りと思います。
#16
○北浦委員 そういたしますと、責任を負うべきところのこの内閣が、一囘の會議も開かずして、その会議制行政官廳の意思が徹底されたということは、どうして言えるか。殊に内閣法の第四條であつたと思いますが、それに明らかに規定が置かれてあり、「内閣がその職權を行うのは、閣議によるものとする。」こう規定されている。平野農相は、天皇の認證あるまでは、その閣議に列席いたしまして、一身上の辯明をすることができると私は確信する。殺人強盗でも最後の辯明のチヤンスを與えられる。いわんや、いやしくも國務大臣として罷免されるときにあたつて、この閣議に出席して一言の辯明の機會も與えられないということは、これは、民主憲法の認めないところである。もちろんこの新聞紙を讀みましても、その當時の情勢から考えましても、さような、ただいま片山首相の御答辯の通りに閣議が開かれていないし、かつ最後の機會さえ與えられていない。これは私は多年よくその人格を承知いたしております片山首相であるから、まずまずわれわれはこうして今日まで黙しているのでありますが、將來どんな内閣總理大臣が出てくるかわからぬ。東條みたような者が出てくるかもわからぬ。それがただ一箇の條文だけ見て、他の條文を一切見ないで、これはおれの權限であるからというのでぶすぶす國務大臣を罷免するというようなことであれば、まつたくもつて東條軍閥の横暴な時代の再來であると憂えられる。そこでもう一つお伺いするのでありますが、この認證を受けるいうことについて、鈴木司法大臣が何でもその翌日、五日であつたか四日であつたか、九時ごろに宮中に參内いたされまして、認證を受けられたということでありまするが、この鈴木司法大臣の宮中に參内せられたのは、片山總理大臣の代理として行つたのか、あるいは内閣の閣議の結果――開かれていない閣議はやむを得ませんが、何の資格で行かれたか、この點お伺いいたします。
#17
○片山國務大臣 つまりこういうふうに關係はなるのです。罷免をするについては、内閣總理大臣の獨自の權限で罷免をする。但し認證を得るについては、閣議を經て認證を得るのである。こういう二つの關係になるのであります。從つて閣議は別に、要式行為ではありませんから、望むところは會議を開きまして、閣議を決定することが第一の形でありまするけれども、時間的に、かつまたその場合の情勢によりましても、持ちまわり閣議で定めるということも在來許されておることでありまして、すでにわが國においては、持ちまわり閣議というものは、正式のものとなて認められておるのであリます。今囘は持ちまわり閣議で決定いたしました。なお鈴木法相が認證を得る書面をもつて參つたということは、これはたれでもいいのであります。私の代理でも、私の使いでもいいのでありまして、その意味において、鈴木法相が出たわけであります。
#18
○北浦委員 ただいまの首相の御意見の前半は、私の考えと同一なんです。六十八條の第二項の「内閣總理大臣は、任意に國務大臣を罷免することができる。」これは獨自の權限である。閣議は要らない。しかしながら、天皇の認證ということについては、閣議が必要だ。ところで片山さんのただいまの答辯は片山さん、まさかうそはおつしやるまいでしようが、持ちまわり閣議であるとか、さような簡單なものではないし、それから持ちまわり閣議をやつておられないということは、新聞紙によつて十分證明できる。一體平野君が當日あなたから罷免を申し渡されて、そうして首相官邸を出ておるのは翌日の午前一時ごろなのである。その翌日の九時に鈴木司法大臣が宮中に參内したのである。その間にどうして持ちまわリ閣議ができますか。これは先例になることであリますから、私は決してこれであなた方を抗議するのでも何でもない。こうすれば救濟できるということを相談かたがた申し上げるのである。そういうことをおつしやるものではない。どうして國務大臣を罷免するという重大事件を要式行為ではない――一體文書の作成には形式ということは必要でありますが、閣議なんかに要式であるとか無式であるとかいうことは、私は一つも尋ねてない。但し閣議を開いて、在京の國務大臣は全部寄つてきて、そうして先ほど私が申し上げまする通りに、平野君にも辯明の機會を與えて、そうして議論を闘わして、決議して、その決議をもつて鈴木司法大臣が宮中に參内しなければいかぬ。あなたの身代りだ。それは間違いだ。これは確かに間違いである。内閣の決議に基いて、内閣の代表でなければいかぬ。そうして鈴木さんは天皇陛下にお目にかかつて、アドヴアイス――助言と承認の大役を果さなければいかぬ。あなたにそんなことをする權限は一つもない。あなたが天皇に助言を與え、あなたが承認を與えたりする權限は、憲法に一つもない。内閣にある。内閣という会議體にある。それを代表するあなたならばともかくとして、どうもそのときはそうではない。殊に持ちまわり閣議でやつてもいいのだ。さようなことは、この重大なることについて言うべきことではない。それはきようから後に相談をなさつて、あのときは持ちまわり閣議としておこうとなるかもわからない。しかしそれは將來のためにいかぬ。初めから申し上げる通りに、あなただからいい。多年の間、私はあなたの人格というものを知つておるから、この人ならばまずます誤解してこういうことをしたのであろう。横暴のためにしたのではない。平清盛のような心持でしたのではない。東條のような考えでしたのではないということは、私にはよくわかる。將來を慮つて、私は言うのである。それだから、さような亂暴な、簡單な、いや持ちまわり閣議でもいいのだ、私の代理で、私の使いでもいいのだ。そうじやない。使いじやいかぬ。代表でなければいかぬ。重大事項を果す助言、そうして承認という國家行為を果す。この點は、あなた方のやつたことは間違いであるという結論に達する。次に結局われわれのただいま受けた印象といたしましては、正式な閣議を開いていない。また開いていないということを私は知つておる。通知するひまもない。あなた方は平野君と九時、十時、十一時ごろまでやり合つて、そうして新聞記者とあなたはお會いになつておる。平野君はまた、何派か知りませんが、平野派でありましよう。そういう代議士と會うて話をしておる。それから閣議を開こう。持ちまわり閣議を開こう。できることじやない。この點あなた方は間違つたことをやつておる。すなわち結論といたしましては、六十八條の第二項、あなたは平野君に對して、ある理由によつて君を罷免する。これは正しい。ここは正しい。それから向うの天皇に認證を受けるということは、憲法上無效だ。これはできていない。そこで天皇の認證が完全に行われていなければ、憲法のいわゆる最高法規の條文に照らしまして、今囘やられた平野農相罷免の行為の一部だけ無效であるという結論に到達いたします。そこで私はあなたに進言したい。鈴木司法大臣の得たる認證は、越權行為である。閣議の決議のもとにやつていないから越權行為である。越權行為である。無效である。平野君でなくても、最高裁判所に訴えれば必ず負けである。私はさように思う。そこで天皇の認證を受けた部分だけは無效である。片山さんが憲法第六十八條第二項によつて平野君に罷免の申渡しをされた。これは適法である。しかし認證を求めるということについて、閣議の決定に基かなかつた點は無效であるから、どうすればいいか。これはあなた方やろうとやるまいと勝手でありますが、あなたがやりもしない持まわり閣議をやつたと言つてつつぱねて通そうということは、將來のために非常に惡いことであるが、それでもあなた方やろうと思えばやりなさい。しかし憲法六十八條の第二項は立派に有效であるから、内閣の認證という憲法の事項を適法にやれば、速やかに圓滿に解決がつくと私は思う。速やかに内閣法第四條の正式の閣議を開いて、その決議でもつて再認證を得ればいい。天皇には拒否權がない。私はそう思う。けれどもあなたは今日まで閣議を開いていない、開く必要がないのだと新聞に言うておられる。きようになつて持ちまわり閣議は開いてもいい。私はあなたの人柄として深く追究しようとは思わぬが、將來を慮らなければいかぬ。今後を思わなければいけない。はたしてあなたは、こんなできない時間で翌日の午前九時までに持ちまわり閣議をやられたのであるか。持ちまわり閣議をしてもいいのだということと、持ちまわり閣議を完了して、鈴木司法大臣は行つたのだ、あなたが、私の代りでもいいのだ、私の使いでいいのだと言うのは、言い過ぎだ。それは間違いだ。その點を伺つておきたいと思います。
#19
○片山國務大臣 私の今まで申しましたのは、罷免權發動について私のとりましたことと、その意見を申述べただけであリます。罷免權の發動については閣議の協議を要しない、獨自の立場でよろしいということと、それに基いてとりましたことを説明していつたのであリまして、この點は北浦君の先ほど言われたことと一致するのであります。その後の行為は、法制局なり關係者の報告によりまして、適法に進行しておつたと了承しておるのでありまして、私自身の行為は罷免權發動ということで適法なりと考え、かつまたそれで十分であると了承しておつたのでありまして、その二つの關係を今混同されてお話のようでありましたから、それは區別してお考え願いたいと存じます。
#20
○北浦委員 混同されたのは、あなたが初め混同されたので、私は初めからこれは別だという觀念でお問い申し上げておる。前後一囘も閣議を開かなかつたというのは、そこに含みがある。それよりもあなたのおつしやることはますますよくない。内閣會議を開いて、陛下の所に認證を受けるために行かなければいけない、と私は言うておるのに、あなたは法制局の連中がやつたのだと言う。あなたは内閣議長だ。私の考えによりますと、内閣の總理大臣は上級官廳と思つておる。こういうことを言うておる學者もある。そうして各國務大臣は、その下級官廳である。閣議はあなたが議長としてやる。法制局とかそんなものがやるものではない。あなたがおやりになる。そこでいかなることがありましようとも、かりにあなたがおつしやるように法制局がやろうが、係のものがやろうが、責任は内閣にある。あなたにあるとは言わぬ。しかしこれ以上追究いたしますまい。法制局の連中が適法にやつたと思つていると言うので、事案はもう明白である。善處せられんことを進言して、私の質問を終ります。
#21
○片山國務大臣 一言言つておきますが、認證についてのことを私は初めから言つておりませんのでありまして、罷免權發動という問題を、新聞でも話をしますし、これは總理大臣の獨自の權限でやれることであるということを中心として申したのであります。その後の認證行為につきましては、適法なる方法によつて行使されたものであるということを、今日においても考えておる次第であります。
#22
○北浦委員 それではもう一言申し上げておきますが、理論的には私も申し上げるし、あなたもおつしやつた通りに、罷免權の發動は總理大臣がやつていい。しかし完全なる効力發生は認證がなければいけない。理論的に二つに分れますけれども、罷免ということは一つなんです。認證なくして罷免の效果が發生しますか。そうするといやが應でも閣議を開かなければいけないということを頭にもつていなければいけない。あなたの新聞記者におつしやつたことを讀んでごらんなさい。罷免權は總理自身に與えられているものであるから、當夜閣議に諮らないで發動できるものと思う……。この閣議に諮らないでもやれるということは、まるで認證ということを眼中においていない發言である。一つなんです。あなたのやつたことは、一體あなたがそれを申し渡しても、どの學者といえども、認證なくしてそれで效力が發生したとは言わない。完全に平野農相を罷免せんがためには、あなたの意思表示と閣議と理論上は二つにわかれても、實際の手續は、閣議を開いて、いろいろしようと思うとあなたが發言してから、みな贊成する。そこで平野君にも發言の機會を與える。もちろん採決のときは退場を命ずることはできましようけれども、機會を與える。そうして多數できまつたら、そこで初めて多數できまつて、憲法第六十八條第二項によつて、君は罷免する、こう出るのが、ほんとうである。それでも最も愼重なる態度は、天皇の認證も獲得してから、あなたはそれを發するのが、これが一番完全だ。とにかくこの點についてあなたのとられた點に缺陷がある。何としても閣議を開いていない。その點は十分お考えになつて、そうして善處されんことを望んでおきます。
#23
○松永委員長 鍛冶良作君。
#24
○鍛冶委員 引續いで私のお伺いしたいことは、六十八條の第ニ項には先ほどから述べられたる通り、「内閣總理大臣は、任意に國務大臣を罷免することができる。」とあります。けれども、この任意ということは總理大臣の專恣であるということとは違うと私は考える。もし專恣に任せるというならば、何でもかでも理由をつけてやつつけてしまう。これはまつたく專制政治になる。いやしくも憲法のありまする以上は、さような專制政治は許されないことは論をまたぬことと考えますが、首相はどこまでも任意とお考えになるか、それには一應の公明なる理由がなくてはいかぬものとお考えになるか。まずその點を伺いたいと思います。
#25
○片山國務大臣 先に北浦君にお答えいたしました通り、總理大臣に與えられたる權限でありまして、任命するときには、組閣いたしまして政策遂行上必要なるものと考える場合において、これを任命し、また政策遂行上遺憾のある場合においては、任意にこれを罷免する。こういうことが憲法によつて許された新しい制度である。決してそれ專制政治じやない。議會で選んだ建前において、さような權限を新しく與え、政策遂行に遺憾なからしむるというところに特色があると考えております。
#26
○鍛冶委員 ただいまお述べになつた政策遂行上遺憾の點がある。こういうことが必要ではありますまいか。あいつは氣に食わぬから首を切る。あれは蟲が好かぬからやめさせるというものでなからうと思います。今言われる政策遂行上遺憾の點があるという、かようなことが私の申しまする一つの基準と考えまするが、それは基準でないとおつしやるのでしようか、基準なのでしようか。その點をお伺いいたします。
#27
○片山國務大臣 憲法では特に制限はしていないで、そういうような事項が考慮せられて、任命權、あるいは罷免權が與えられておるということで、條文のできました根據は、相當廣範圍であると思つておりまするが、もちろん濫用を愼しみ、專制的にならないように努むべきは當然のことであると思つております。
#28
○鍛冶委員 もちろんさようあるべきことと思います。また新憲法を忠實に施行することをもつて現内閣の使命と心得ておると言われた片山總理大臣としては、しかあるべきものと私も信じております。しかし政策遂行上支障があるということについては、先ごろの本會議において内閣不統一の理由をもつて罷免した。こうおつしやつたのでありますが、その不統一という事實は、あつたに相違なからうと思いまするが、間違いなくあつたのでございましようか。その點をお伺いいたします。
#29
○片山國務大臣 どういう不統一であるとか、政策遂行上遺憾の點があつたかというようなこまかい點はここに申し上げることを不適當と考えまするので、總理大臣の權限として許されたる範圍内において、もつとも愼重に、もつとも適當と思う方法をとつたのでありまして、憲法に違反のない方法で、しかも今日の情勢ににらみ合わして考えた上、處理した方法であります。
#30
○鍛冶委員 そこで問題になるのは、内閣總理大臣の專恣ではいかぬ。相當の專制にわたらざる理由がなくてはいかぬということをお認めになつて、平野の行為は、政策遂行上支障ある、内閣不統一の所為をやつている、このことからやられたということは明白になりました以上は、憲法の七條に基く天皇の承認を得るために、内閣の責任においてその承認を得るように、助言または承認をするのでありまするが、この點は内閣全般に對してあなたの考えておらるる平野の行為は、政策遂行上妨げになるものである。内閣の統一を缺くものである、これを明確にしてかからなくては、内閣としての責任ある助言竝びに承認を得られぬものと考えまするが、その點はいかがでありますか。
#31
○片山國務大臣 内閣の承認を得ております。助言をするについて認證を得るについては、内閣の承認を得ておる次第であります。
#32
○鍛冶委員 これは先ほど北浦氏から質問しましたから、私は重ねてお伺いすることは避けたいと思いまするが、さようなことは先ほど言われた持まわり閣議とか、法制局で手續をやつたというようなことで、各閣僚に明確になりましようか、はたして今言うたような平野の行為は政策遂行上妨げにするものである、内閣の統一を缺くものであるということが明確にできておりますか。これは何人が聞いてもさようなことは首肯できませんが、片山總理大臣としてはどこまでもそれでその點は十分にやつたとおつしやられるかどうか、重ねて私は承リたいと思う。
#33
○片山國務大臣 助言をするについて、認證をするについて、内閣の承認を得ているということは申し上げることができます。
#34
○鍛冶委員 これは北浦さんの質問もあつたので、それでは私も打切ることにしましよう、持まわり閣議においてさようなことはわれわれはできるとは思いません。けれどもやつたとおつしやるならば、やつたる事實ということに對して、われわれはまた別の方法で考えなければならぬと思う。
 そこでさらに私がお伺いしたいのは、政策遂行上妨げになる、内閣不統一の行動をなしている、この理由でやつたということであれば、もちろんそのことは國政上すこぶる重大なことであつて、その理由が明白になれば、なるほど片山總理大臣の言われたことはもつともだと、これは考えます。從いまして、今日この問題は天下の疑惑の的になつているが、この點をただ單に首相の責任においてやつた、憲法六十八條において許されたる權限の範圍内でやつた、これだけでは、私はいかぬと思う。何としてでも天下に對してこの點を明白にして、疑惑を一掃することが、内閣總理大臣としての責任であると私は考えまするが、その點はいかがでございますか。
#35
○片山國務大臣 憲法上の問題といたしましてお答えする點は、先ほどからの説明で盡きておると私は考えております。その他の、もちろん内容に觸れるとか、いきさつを述べるとかいうようなことは、内部問題と申しまするか、別個の問題でありまするから、憲法上の疑義を正す場合においては、そこまでお答えせぬでも御了解を願えると、私はかように思つておる次第であります。
#36
○鍛冶委員 しからば伺います。われわれはそういう手續はとつておられぬものと認めるほかないと思つたが、あなたはとつたとおつしやるならば、これはとつたことにいたしましよう。とつたかとらぬかは事實問題ですから別問題としますが、とにかく閣議に對してそれだけのことは明白にしておると言われるなら、その明白にせられたことは最も重大な國務である。あなたはそれ以上説明する必要はないとおつしやるけれども、七十二條をごらんなさい。「内閣總理大臣は、内閣を代表して議案を國會に提出し、一般國務及び外交關係について國會に報告し、」とあります。この重大なる國務を、私の權限にあるからこれ以上説明する必要はないとおつしやることは、われわれは腑に落ちない。國會に報告する義務がある。内閣總理大臣はこれをおやりにならなければ、あなたは專恣專制であると言われても辯明の餘地がないと思う。この報告を求めた場合に報告をなすべき義務あリと私は考えますが、首相はどうお考えになりますか。
#37
○片山國務大臣 七十二條に掲げてある事項は、議案を國會に提出し、一般國務及び外交關係、こういうふうに非常に重大なる大きな問題について指示されておるのでありまして、この點につきましては、政府としては、萬遺憾なきを期して、各般の問題についてすでに報告もし、國會に對してお示しいたしておるような次第であります。今囘の問題は、閣議の手續その他内部のいきさつというような問題でありますから、内部手續きのことにつきましては、この際は差控えておいた方がよかろうと考えております。
#38
○鍛冶委員 私は手續のことを承つておるのではありません。先ほど言つたように、國策の遂行に妨げがある、内閣の統一を亂すものである、こういう理由によつてやつたとおつしやるのだから、その點は閣議に諮つたとおつしやる。これは重大なる國務ではありませんか。天皇の認證を得なければならぬようなことが重大な國務ではないのだ、こうおつしやるなら、ほかに重大なる國務は何がありますか。私は、どんな手續でおやりになつたか、何時何分にこういうことでこの理由をもつてやつたというような、手續を聽いておるのではありません。天皇に對してこれこれの理由をもつて平野を罷免するということの助言及び承認をせられたのでしよう。それはもう一段國務として最も重大なることだと思う。その國務を報告するにあらざれば、内閣總理大臣は專恣專横をやつたと言われても辯明の餘地がないと心得るから、その國務を議會に報告する義務があると私は思うが、これが重大なる國務にあらずと考えられるのかどうか。その點を明確にお答え願いたい。
#39
○片山國務大臣 罷免權を發動したという點は、すでに國會に御報告いたしておるのです。あとのことは、その効力發生に至る手續その他内部のいききつでありますから、先ほど申した通りでありまして、罷免權發動に關する問題については、すでに御説明いたしておる通りであります。
#40
○鍛冶委員 どうもわが意を得ません。罷免權發動は、それは任意でよろしい、これはたれも言わない。そこを言つておるのではない。けれども、あなたの專恣に任せるものでない。少くとも閣議において首肯できる理由がなければいかぬ。天皇自身に對して助言及び承認をされるというならば、專恣專横をもつてやるべきものでない。りつぱにたれにでも説明のできる理由がなければいかぬ。その理由のあることが、この六十八條第二項のあなたの權限を遂行する上においての必要條件だと私は思う。その必要條件の内容、それによつてあなたは行使されたということは、最も重要なる國家の一つと私は考える。それが重要なる國務と考えられないのか。これを私は聽いておる。これこれの理由によつて農林大臣を罷免する、理由のないものはやらない、これだけのりつぱな理由があるのだ、それを閣議にかける。このことが最も重大なる國務の一つであると、私は考える。また天皇の認證を得なければならぬほどの重大なるものが重大なる國務にあらずとは私は言えぬと思うが、それはどうだ、と私は聽いておるのである。その點を明確にお答え願いたい。
#41
○片山國務大臣 その點はすでに明確になつておると思うのです。すなわち、政策遂行上遺憾があるので罷免權を發動したのであるということについては、すでに國會に報告濟みである。さらに認證を得るについてのことについては、認承をすでに得て閣議を經ておるのである。こういうことも御報告いたしたのでありまして、あと殘つておりまするのは、内部の手續關係のみでありますから、重要事項を報告していないというようなことはない。これはすでに報告しておる通りである。かようにお答えいたしておるのであります。
#42
○鍛冶委員 政策遂行上支障がある。内閣不統一の所為がある、これは抽象的であります。そんな抽象的のことではわかりません。少くとも閣議にかけられる以上は、今までやつてきたこれこれのことが内閣不統一である、かくかくのことでわが内閣の政策の遂行上支障がある、これがなければいかぬ。ただ抽象的な言葉をもつてやるというならば、專恣專横と變りありません。その點を、專恣專横にあらずと明確にすることが、内閣總理大臣の任務だと私は心得る。それを明確にすることが國務である。私はかように考える。それは、ただ、いいのだ、抽象的に言えばいいのだ、あとはこつちに任せておけ、こういうことになれば、まつたくこれは專恣に任せるということになりますが、それを私は聽いておる。それも必要ないと言われるのか。その點をもう一度承りたい。
#43
○片山國務大臣 見解の相違になるかもしれませんが、こまかいことを一々ここで申上げる必要は私はないと思うのです。包括的にまとめて、政策遂行上遺憾があつたという、こういう理由で十分であろうと考えております。憲法上與えられたる權限は、この程度で十分なりと考えて、任意という一項目を特に設けられた趣旨から考えてみましても、總括的に説明をして十分であらうと考えております。こまかいその内容は、行政權執行についての各般の内部問題になつてくる。これを區別してお考え願いたいと思います。
#44
○鍛冶委員 それ以上は見解の相違だと言われればやむを得ませんが、私は重ねてこれに對して結論を與えておきますが、そういう抽象的のことをもつてやつていいものだといえば、一種の專恣專構なりと言われても辯明の餘地がない。少くとも、國民に對して、國會に對して首肯できる具體的のことをお示しにならなければいかぬ。また、かようなことは、この新憲法のもとにおいて最初のことでありますから、將來に對して前例となる。判例と同一の效カがあるものでありまして、片山首相としてはこの新憲法を十分忠實に行使することをもつて本使命とせられるならば、どこまでも明確に、いわゆるあなた方の明るい政治をやるというときには、そのことではいかぬと私は考えます。なおこれにお答えがあるならば結構ですが、お答えがないならば、私はそれでは明朗ではない。さようなことでは專恣と言われても、辯明の餘地のないものだと申しておきます。
#45
○北浦委員 私は總理大臣に最後にもう一點明らかにしておきますが、かうなつております。時間の關係は、平野君は最後に九時五十分に首相官邸に引返しておる。これが最後です。そうしてあなたはその日三日の夜十一時十分になつて新憲法第六十八條により罷免するよりほかなし、こう申し渡しておられる。それから引續いて四日十一時半院内官房長官室で内閣記者團と會見して、罷免權發動の理由、後任農相問題、社會黨内收拾などについて一問一答をやつておられる。これをしまつたのが十二時、それから四日朝せ九時に鈴木法相が宮中に參内しておる。あなたの先ほどからおつしやつたそれらの手續を法制局その他の營局が適法にやつたと思つているということは、この十二時から九時までの間にやつたということを意味されることに相なると思うのですが、いかがでしようか。
#46
○片山國務大臣 その閣議の手續その他の内部の經緯については、内部手續のことですから、ここで御説明することは控えておきたいと思います。
#47
○北浦委員 それはいかぬ。閣議を開いたか否かということに關係するのですから……。
#48
○片山國務大臣 持まわり閣議として、閣議の承認を經たのである。認證については閣議の承認を經ておるのであるということをお答えしておきます。
#49
○北浦委員 それはあなたのさつきおつしやつたように、持まわり閣議ですか。
#50
○片山國務大臣 そうです。
#51
○北浦委員 夜の夜中に國務大臣の家にどんどん使いを走らせたとするならば、これは新聞に出て顯著な事實になるのですが、それはあなたの何かの考え違いではないですか。きつぱり言う方がいいと思います。
#52
○鍛冶委員 私はこれに關連して、同じ意味で明確にしておかなければならぬと思うのは追放の問題ですが、これも抽象的のことであつて、何でも任意にやろうと言う。この點に對して追放の範圍ということについて質問の要求をしておきます。
#53
○松永委員長 暫時休憩いたします。
    午後零時二十六分休憩
     ――――◇―――――
 (休憩後は開會に至らなかつた)
ソース: 国立国会図書館
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