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1947/04/02 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第12号
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1947/04/02 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第12号

#1
第002回国会 司法委員会 第12号
昭和二十三年四月二日(金曜日)
   午後四時一分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○檢察廳法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○檢察審査會法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより司法委員會を開きます。檢察廳法の一部を改正する法律案が衆議院より囘付されまして、本委員會に本付託になりましたから、本日はこれを議題といたします。昨日に引續き質疑を繼續いたします。
#3
○星野芳樹君 この三項のところですね、二項目に檢察官適格審査委員會の内容があるわけですが、それに國會議員、檢察官、法務廳官吏、裁判官、辯護士、日本學士院會員という構成があるわけでありますが、國會議員は國民の代表であり、その他は學識識見を所有する人たちという意味だと思いますけれども、私共の了解に苦しむところは、檢察官の心身の故障及び非能率によつて害を被るのは、これは一般國民じやないかと思うのでございます。それで害を被る方の人たちを代表する者が入つていないように思われるのであります。國會議員は國民の代表でこれはいいですが、あとは全部いわゆる既存の……何といいますか、悪くいえば閥というようなものの範圍で、そうでない範圍の者の代表も參加すべきではないかと思いますが、その點について政府委員はどうお考えでしようか。
#4
○政府委員(佐藤藤佐君) 只今仰せのように心身の故障のある檢察官、その他職務を執るに不適格の檢察官の處分のために、害を被つた國民があるといたしますれば、その被害者の方から別に救濟を求める制度が講じられておりまするので、本法で適格審査委員會の議決を特に規定いたしましたのは、當該檢察官に職務を執るに適する、いわゆる適格があるかないかということの判斷を求むるための審査委員會でありまするので、審査委員會の審査委員の構成は、ここに列擧されておりますように、學識經驗の高い、そうして國民の公正なる意思を適切に代表せられる者という目標の下に、これらの方々を選んだのであります。
#5
○星野芳樹君 學識經驗が高いという意味で、特に檢察官の罷免というようなことに對して特定の知識を有するという意味では、檢察官とか法務廳官吏、裁判官、辯護士などは特別な知識があるわけですが、日本學士院會員というと、これは一般的な知識が高いというだけだと思うのであります。先程申されたように一般的な知識が高く、國民の要望をよく現わし得るということだつたら、これ以外にも考えられるものがありはしないか。それには、考えられるのは勞働組合とか農民組合というようなものもあるわけですが、その指導的な者には學識經驗も十分な者が當然組合の發達と共に附いて來るし、そうして又國民の意をよく現わすというような點でも十分である。そういう意味でこういう外のものも考えられるのですがそういう點はどういうわけで除去されたかその點をお伺いしたいと思います。
#6
○政府委員(佐藤藤佐君) 國民の意思を代表して、國民の意思を正當に適切にこの適格審査委員會に反映せしめ得るものとして、この構成員を選んだのでありまするが、仰せのようにこの外にもまだ國中を探しますれば、或いはあるかも知れませんけれども、審査委員會の構成と申しましてもその人數におのずからなる制限がありまするので、この程度の權威者を集めますれば、立派に審査委員會の目的が達せらるるものと、かような考えの下にこれに限定いたしたのであります。勞働組合の組合員が全國民の意思を代表するのに適切な方であるかどうかというようなことについては、立案當時は別に考えておりませんでした。
#7
○松井道夫君 審査委員乃至委員會の機構については政令で定められることになると思いまするが、この委員の任期などはどう政府はお考えであるか、その點を承つておきたいと思います。
#8
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察官適格審査委員會の委員の任期につきましては、政令の官制案として考えておりまするところは、委員竝びに豫備委員とも三年位の任期にしたらどうかというように考えております。
#9
○委員長(伊藤修君) この法令の中に豫備委員というのがありますか、官制豫備委員というものがありますか。
#10
○政府委員(佐藤藤佐君) あります。
#11
○委員長(伊藤修君) その選考はこの法令に基かず法務廳の方で自由にできるわけですか。
#12
○政府委員(佐藤藤佐君) いいえ、これは本委員と同じ順序で同數の豫備委員會を設けるのであります。
#13
○委員長(伊藤修君) それは法の方になくちやいけないのじやないですか。同數の豫備委員を置くということは。
#14
○政府委員(佐藤藤佐君) 本法におきましては、單に十一人の委員を以て組織すると規定してありまするけれども、官制案におきましては、委員に差支のために審査委員會を開けない場合も考えられまするので、委員會に同數の、即ち十一人の豫備委員を置いて、そうして審査委員會を圓滑に運營し得るような方法を考えておるのであります。本法において豫備委員を置くということを特に決めておりません場合でも、委員會の運用上豫備委員を置くことは、政令で定めれば差支ないものではないかというふうに考えております。
#15
○委員長(伊藤修君) そうすると政令の第五項にそれが含まれるわけですか。「前四項に規定するものの外、檢察官適格審査委員會に關する事項は、政令でこれを定める。」という、その中に豫備委員のことが含まれるわけですか。
#16
○政府委員(佐藤藤佐君) お説の通りであります。
#17
○大野幸一君 ちよつとそれはおかしいと思うのですが、十一人が一人でも缺けると豫備委員が一人加わつて來るわけですか、その場合……。
#18
○政府委員(佐藤藤佐君) そうです。
#19
○大野幸一君 それでは全く五人になつたときに、この政令で定めた六人が入つて行つて、各團體から選出された委員は何にもならないで甚だおかしいと思いませんか。それは重大なことと存じます。
#20
○政府委員(佐藤藤佐君) 外の委員會におきましても、本法において委員を嚴格に定めて置く場合に、その委員會の運營上差支の場合には豫備委員を以て補充するということは、他の委員會の官制においてもすでに規定しておるところでありまして、その點は本法においてすでに「適格審査委員會に關する事項は、政令でこれを定める。」という場合に、政令に委任されておるものと解しておるのであります。
#21
○委員長(伊藤修君) ちよつと速記を中止して。
   〔速記中止〕
#22
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。先程大野君の質問の場合に、懲戒委員會に付託すべきような事項で罷免されるような場合、その場合どちらでも竝行的に進行するというお説があつたのですが、そのような事項の場合に、若し法務總裁において、この法律に基くところの罷免をした場合は、その罷免された人は、懲戒し相當するような事項で罷免されても辯護士になり得る。懲戒委員會にかかつた場合には辯護士になれないという不公平を生ずる。その場合の取扱いはどういうお考えだつたですか。
#23
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察官に著しい非行がありまして、それが一面において懲戒免官の事由にも該當し、他面において審査委員會の議決を要求する事由にも該當するという場合におきましては、そのどちらを選ぶかということは、この法律だけは解決せられておらないのでありまするが、恐らく法務總裁は懲戒免官に相當する場合には、懲戒免官の委員會の發動を請求することと思うのでありますが、ただ適格審査委員會がみずからそういう事由を發見いたしまして、そうして法務總裁にその旨を通知いたしたとしまするならば、その際に法務總裁はやはり審査委員會の議決に從つて、改めて懲戒免官の委員會に對する請求をいたすことと考えるのであります。從つていずれの場合にいたしましても、法務總裁の請求がなれれば懲戒免官の發動を見ることができないのでありまして、懲戒免官の事由がある場合には、必ず法務總裁の方において、懲戒免官の發動を促すことと考えまするので、法文上はどちらを先にするということを特に規定はいたしておりませんけれども、運用上は何ら差支えを生じないものと考えております。
#24
○委員長(伊藤修君) 他の御質疑ありませんか。……では次に檢察審査會法案を議題に供します。
#25
○星野芳樹君 第五條に關して、字句的に質問をいたします。第五條に「左に揚げる者は、檢察審査員となることができない。」と謳つて、その一號に「小學校を卒業しない者又は小學校卒業と同等以上の學識を有しない者」、これはすべてできないということになります。これを文法的に、文意通りに解釋すると、小學校を卒業していない者は全部できなくて、小學校を卒業したけれども、何かの加減で學識が下つちやつた者もできない。こう解されるのであります。併し私は提案者の立法の意思はそうでなくて、小學校を卒業した者は資格を與え、又小學校を卒業してなくても獨學を以て教養を積んだ、小學校卒業と同等以上の學識を積んだ者にも与えよう、ただ小學校も出てなくて、學識も積んでない。それだけを除外しようという意味だと思うのであります。それにはこの文意ではその立法の意思と文意とが違つておるのですが、これは政府委員、如何でしようか。
#26
○政府委員(佐藤藤佐君) 第五條は檢察審査員となることのできない缺格者を列擧いたしておるのであります。第一號の「小學校を卒業しない者又は小學校卒業と同等以上の學識を有しない者、」こう規定いたしました立案の趣旨は全く仰せの通りでありまして、小學校も卒業しないし、而も小學校卒業の學識も有しない、そういう者を缺格者として除こうという趣旨なのであります。従つて檢察審査員となることのできる者は、その裏面解釋といたしまして、小學校卒業した者はすべて審査員になれる、又小學校は卒業しないけれども、小學校卒業と同等の學識を有する者も審査員となれる。それ以外の者は審査員となることはできない。即ち小學校も卒業しないし、小學校卒業と同等の學識も有しない、こういう者だけは審査員となれない。こういう除外の規定を缺格者として揚げたのであります。
#27
○星野芳樹君 今の政府委員の發言で、立法意思ははつきり分りました。それで、それならばこれは一號の「卒業しない者、」それから「學識を有しない者」、小さく分けて「ない」「ない」としないで、全體を否定すればそれで濟むのだろうと思うのであります。で、これについて私はこれは文法的に誤解を生むというより、文章を正解したら立法意思を誤解せざるを得ないというものでありますから、文章を直さなければいかんと思いますが、政府委員は如何でありますか。
#28
○政府委員(佐藤藤佐君) 第五條の第一號の書き方を、規定し方を變えまして、「小學校を卒業し、又は小學校卒業と同等以上の學識を有しない者、」こういうふうに最後の否定を持つて來るのと同じ趣旨と考えまして、この規定を立案したのでありまするが、若しこのままでは誤解を招く虞れがありまするならば、さように御修正なさることは一向に差支えないと存じております。
#29
○星野芳樹君 それから四號についてちよつと伺いますが、「一年の懲役又は禁錮以上の刑に處せられた者」といつて前科者を抜かしてあるのでありますが、これは他に前科が十年經てば抹消されるという法律があるから、これが一生附纏うのではないというので了解されるのですが、私共の考えとしては、この程度の委員會では前科者ももう少し早く參加させた方がよいと考えられるのですが、そういうお考えはないでしようか。
#30
○政府委員(佐藤藤佐君) 刑法において前科者は一定の年限の經過によつて處罰の效果と申しますか、刑の言渡しの效果を失うという、いわゆる前科抹消の規定が設けられておるのでありまするが、その規定を設けた趣旨は、二定の期間の經過によつて、世間一般がその者をして、刑の言渡しを受けなかつた者として、解扱うことのできる年限と考えておりまするので、本法の缺格條項においても同じような考えの下に「一年以上の懲役又は禁錮以上法刑に處せられた者」は、刑の言渡しの效力を失わない以上はやはり缺格者であり、刑の言渡しの效力を失えば同時に有資格者となる、こういうふうに刑法と同じ考えで進んで行く方が適當だろうというように考えております。
#31
○松井道夫君 この檢察審査會を置く裁判所について、裁判所の所在地に置くというふうになつておりますが、それが「政令で定める利方裁判所」云々ということになつて、地方裁判所所在地には必ずしも置かなくてもよいことになつておるようでありますが、その理由を伺いたいのであります。それから管轄區域でありますが、これは政令で定めることになつておるのですが、大體どういう管轄になるものか、その點それから二條の三項でありますか、職權で審査を行う場合でありますが、ここのところに、「自ら知り得た資料に基き」ということが書いてありますので、ちよつと考えますと何もさようなことは書く必要がなくて、單に職權でということだ結構だと思うのですが、特に「自ら知り得た資料に基き」ということを入れた理由を伺いたいのであります。先ずこの邊で一應お答えを頂戴いたしたいと思います。
#32
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察審査會法案の第一條におきましては、地方裁判所の所在地と地方裁判所支部の所在地に、檢察審査會を置くということを定めたのであります。すべての地方裁判所所在地及び地方裁判所支部の所在地の置くということ、全國に二百以上置くことになるが、どこにその二百の數を置くかということは政令で定めるという趣旨を規定いたしたのであります。區域はどういう區域かというお尋ねでありまするが、それは政令で詳しく定める豫定でおりまするが、急いで本法を提案いたしましたために、どこの檢察審査會の區域はどの範圍になるかという詳しいことはまだ確定いたしておりませんので、目下研究いたしておりますが、それはすべて政令で定めることにいたしております。
 次の御質問の第二條の一項でありまするが、檢察審査會の主なる職務は不起訴事件についてその當否を審査することでありまするが、その審査は大體は告訴人、告發人、請求人又は被害者の不服申立によつて審査を行うのが常でありまするけれども、その他如何なる方法によつても、例えば投書、密告或いは審査員自身が經驗したこと、どんな資料に基くに拘わらず過半數の議決があれば、職權で審査を行うことができる、そういう趣旨を規定いたした積りであります。
#33
○松井道夫君 今の「政令で定める地方裁判所」というふうに書いてありまするので、私の考え方からいたしますれば、少くとも地方裁判所の所在地には必ず置く必要があるのではないか、というふうに考えるのでお尋ねしたのであります。それから今の「自ら知り得た資料に基き」、こういう點でありますが、これは只今御説明のような資料でできるというのは、これは特に斷わらないでも自ら了得されるところで、特に「自ら知り得た資料に基き」という文句を入れた、特段の理由があるかどうかということをお尋ねしたのであります。今の管轄區域の點は御研究中であるということでありますので、了承いたします。
 小に六條の關係でありますが、檢察審査員は衆議院議員の選擧權を有する者の中から定めるということになつておるのでありますが、この六條の第一號に天皇ということが謳つてありますから、天皇は衆議院議員の選擧權を有するという見解に立つておられるのかどうか。それから五號と七號と八號でおのおの裁判所關係、法務廳關係、それから檢察廳關係で規定が違うのでありまするが、特にこの差別を認めた理由をお伺いしたいのであります。更に十五號で、現業に從事する者竝びに船員、これを除いてあるのでありまするが、その理由をお尋ねしたいと思います。
 それから第七條に職務の執行から檢察審査員が除外される場合が書いてありますが、これは分つておるようなことでも、やはり檢察審査員が被疑者であるときということを一項入れたらどうかと考えますが、それをお伺いいたします。
#34
○政府委員(佐藤藤佐君) 本法案の第六條は、その地位にあるために檢察審査員の職務を執ることが適當でないと思われる職務を列擧いたしたのであります。第一號に「天皇」と揚げましたために、只今お説のような御質問のあることは御尤もに存ずるのであります。これまで政府の行政解釋といたしましては、天皇は衆議院議員の選擧權を有しないものと一應解釋せられておるのでありまして、その解釋に從いますれば、第六條の第一號に天皇と特に揚げる必要はなかつたのでありまするが、併しその解釋は何人も異論のない確定的な解釋というふうにも言えないのではないかというような氣特からでありまして、ここには皇后、太皇太后、皇太后及び皇嗣も、同様に列記いたしたのであります。
 それから第六條の第五號以下第八號までは裁判所、法務廳及び檢察廳の職員を大體列記いたしまして、これらの職務を執つておる者は、その地位にある間は檢察審査員の職務を執らせることが適當でなかろうという考えの下に列記いたしたのでありまして、大體これで裁判所、檢察廳及び法務廳の官吏は網羅されておるものと考えております。それから同條の第十五號の「郵便電信、電話、鐵道及び軌道の現業に從事する者竝びに船員」と、こう特に揚げましたのは、これらの業務に從事する者はその業務の公共的な性質に鑑みまして檢察審査員の職務に就かせることが、やはり適當でなかろうという考えの下に除外いたしたのであります。ちよつと速記を……。
#35
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#36
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。
#37
○松井道夫君 今の七條の御説明がありませんでしたが……。檢察審査員が被疑者であるときということをお拔きになつた理由を……。
#38
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#39
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。
#40
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察審査會議が開かれますのは、檢事が或る事件について不起訴處分にした場合に、その不起訴處分について不服の申立によつて審査會議が催されるのでありますから、檢察審査員が或る事件の被疑者である場合には、その事件が檢察審査會議にまだ上つて來ないのでありまするから、特にそこまで除外事由として揚げなかつたのであります。
#41
○松井道夫君 それならば何故被疑者の親族は揚げられたのでありますか、被疑者の法定代理人も……。これを伺いたいと思います。
#42
○政府委員(佐藤藤佐君) 第七條の二號は、今申上げました不起訴事件について、曾て被疑者であつた人がおるのでありますから、その被疑者であつた人の親族、或いは親族であつた者が審査員となることができないという趣旨を規定したのであります。その除外事由から考えますると、仰せのように、曾て不起訴事件の被疑者であつた者が審査員となつた場合には、その審査員も職務の執行から除外せらるべきではないかという御意見のように承るのでありまするが、さように考えますると、曾て不起訴事件の被疑者であつた者が、審査員の職務から除外せられるというふうに特に揚げて置く方が、或いは適當かも知れないと思いまするので、その點は少し研究いたしたいと思います。
#43
○松井道夫君 二十二條に「地方裁判所長又は地方裁判所支部に勤務する裁判官は」云々ということになつておりまして、地方裁判所長、これははつきりいたしておりますけれども、地方裁判所支部に勤務する裁判官というのは、例えば裁判官が二人以上ある場合には、やはり上席とかいうことに一定したらよろしくはないかと思われるのですが、その點の御意見を伺いたい。
 それから第二十七條に、檢察審査會が云々の日には開かれなければならないと書いてあるのでありまするが、これは何も事件がないのに開かなくてもよさそうに思うのでありまして、この審査會についての、どういう仕事をするかというようなことも何もないのであります。こういう第一項の規定を設けられた理由をお伺いしたいのであります。
 それから第三十六條に、「裁判所法第十六條第四號に規定する事件竝びに私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律の規定に違反する罪に係る事件については、この限りでない。」とありますが、只今この法律が手許にありませんので實は分らないのでありますが、その兩方を除かれた理由を伺いたい。
 それから第四十七條に、檢事正は「公訴を提起すべきものと思料するときは」云々となつておりまして、檢事正の自由裁量に起訴が委されておるのであります。この法律を作られる趣旨が、檢事としてのすべての生活體驗、職務體驗から出て參りまする常識と、社會一般の常識と異にする、その場合に社會一般の常識によるべき場合がよい方が多々あると存ずるのであります。特に非常に多忙でありますのでよく不起訴で片付けてしまうということがあるのであります。それで檢事正の自由裁量にするということは、一面止むを得ない事情もあるかと存ずるのでありまするが、そこに或る程度のやはり擔保がないと、この法律が必しも圓滑に運用されない。立法が必しも理想的に實現できないということが憂えられるのでありますが、その點についてどのように考えておられるか伺います。
#44
○政府委員(佐藤藤佐君) お尋ねの第一點でありまするが、本法の第二十七條に「檢察審査會は、毎年三月、六月、九月及び十二月の江十五日に、」定期的に檢察審査會議を開かなければならんというふうに特に定めましたのは、審査すべき事件があつてもなくても、少くとも三ヶ月に一遍は開いて、そうして不服申出がない場合でも一般に檢察事務の改善に關して、建議勧告をなすことを考えて貰おうというような趣旨も含めてあるのでありまして、要するに檢察審査會議が三ヶ月に一遍、即ち審査員の任期が六ヶ月でありますから、任期の間に少くとも一囘は開かれるように、つまり檢察審査會議が活用されるようにということを期待いたしまして、特に三ヶ月に一遍は定期的に開かなければならんというような規定を設けた次第であります。
 それからお尋ねの第二點は第三十六條の但書であります。「裁判所法第十六條第四號に規定する事件」と言いまするのは、刑法の内亂罪に關する事件は高等裁判所の専屬管轄になつておるのであります。又「私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律の規定に違反する罪に係る事件、」この事件は東京高等裁判所の専屬管轄になつておりまするので、さような事件は檢察審査會の審査に付するのは、適當ではなかろうという考えの下に除外いたしたのであります。
 次は第四十六條の規定でありまするが、檢察審査會の議決書の謄本が檢事正に送付せられましたならば、檢事正は再度の考案をいたしまして、そうして公訴を提起すべきものと思料した場合においては、自己の責任において起訴の手續をしなければならない、こういう規定を設けたのであります。特に議決書の謄本の送付があつた場合には、その議決書に示されておる通りの處置を必ずしなければならん。言い換えれば議決に盲從しなければならんという窮屈な制度を採しなかつたのは、公訴の提起はどこまでも檢察官が責任を負つてなすべきものではなく、檢事正が議決を尊重して、そうして自己の責任において起訴の手續をしなければならん、こういう趣旨で規定いたしたのであります。
#45
○松井道夫君 二十二條は上席の裁判官ということに一定したらよいのではないかということについて、お伺いしたいと思います。それから五十一條の罰則の點でありますが、「不正の請託をした者」ということになつております。正當な請託ならばよろしいという意味にも解されまして、正當な請託か不當の請託かということの主觀的の見分けが相當むづかしい、而も正當の請託でも甚だ面白くないのでありまして、いやしくも請託をするということを禁止した方がよいのではないかと考えられるのでありますが、その點についてお伺いいたします。
#46
○政府委員(佐藤藤佐君) 本法第二十二條に「地方裁判所長又は地方裁判所支部に勤務する裁判官」といたしまして、支部に勤務する裁判官が二名以上あつた場合に、どの裁判官が二十二條に規定する職務を行うかということは、本法の規定だけでははつきりいたさないのでありまするが、二人以上の裁判官の勤務する地方裁判所支部において、どの裁判官が本法第二十二條の職務を行うかということは、その地方裁判所の裁判官會議で決められることを豫定いたしておるのであります。御承知のように新らしい裁判所法では、すべての行政事務が裁判官會議の意向によつて運營されるようになつておりまするので、この場合にも裁判官會議の意向によつて何人が第二十二條の職務を執行するかということが定められることと存ずるのであります。
 それから最後の御質問の第五十一條の「檢察審査員に對し不正の請託をした者」という點でありまするが、檢察審査員に對して、あの事件を起訴するように決議して貰いたい、或いはあの事件は不起訴處分に付せられておるが、その不起訴が相當であるというふうに議決をして貰いたいというような請託ならば、これは不正の請託であることは明瞭でありまするけれども、例えば第三者があの不起訴事件についてはこういう事情がある、或いはこういう事實があるということを審査會に申告をいたした場合には、それは、その事件についてこういう證據があるから、起訴するのが相當であるという主張になりまするので、その不起訴事件を起訴する、その不起訴事件について起訴することを請託したものと考えられるのでありまするが、左樣な場合には何も不正の請託ではないのでありまして、具體的な場合に不正の請託であるか否かということの區別の標準は、非常に微妙なことになるのでありまするが、單に請託をしたという者を全部罰するということになりますると、不正でない請託、只今申上げたように、あの不起訴事件についてはこういう起訴すべき事情がある、こういう起訴すべき證據があるということを提供した者までを、請託した者として處罰の對象にするようなことがあつてはならない。かような含みで特に不正の請託という文字を用いたのであります。
#47
○松井道夫君 只今の御説明の中で、被疑者が不起訴の請託をなし、或いは被害者乃至は告訴人が起訴の請託をなした場合には、これは不正の請託と見るという趣旨の御説明があつたのだと思うのでありますが、左樣聞いて間違いないかどうかということを伺いたいのであります。
 それから遡りますが、第四十七條の今の檢事正の起訴不起訴を決める場合でありますが、どうも私はこの所がやや氣掛りなのであります。例えば起訴の議決がありましても、これが法律上罪にならんとか、起訴する場合に、著しい不都合な結果が起きるとか、何かそういつた特段の理由がある場合にのみ起訴しないことができる。そういつた個條でも書いてその據保といたすということが望ましいのではないかと存ずるのであります。立案の當局におかれましてもそういう點は十分に研究されたとは思いまするが、更にその點の御意見を伺いたいと思います。
#48
○政府委員(佐藤藤佐君) 只今御説のように、告發人とか告訴人、或いは被害者が請託をした場合には必ず不正となる、或いは被疑者が不起訴を請託した場合には必らず不正となる、こういうふうに私は例を取るつもりはなかつたのでありまして、抽象的に、何人の請託である場合でも、その請託が客觀的に見て不正であるかどうかということによつて區別しなければならないのでありまして、特に不正の請託といたしましたのは、先程申上げましたように、その審査に付せられておる事件について、起訴又は不起訴に關する有力な證據を提出するというものまでも、不正の請託をしたものとして處罰の對象にしてはならないということを慮りまして、特に不正の請託だけを罰して、不正でない請託の場合には罰しないというふうに、審査に付せられておる事件に關するいろいろな情報であるとか、或いは證據、資料を提供するところの途を開いておるのであります。
 それから最後のお尋ねの第四十七條の、檢事正の起訴についての最後の考案をする機會を與える點についてのお尋ねでありまするが、檢事正が起訴相當であるという議決書の謄本を受取つたといたしましても、その議決書に基いてもう一度最後の考案をする機會を與えて、そうして起訴相當であると思つた場合には、檢事正の責任において起訴しなければならないという規定を設けておるのでありまして、この規定の趣旨は、どこまでも公訴權の實行は檢事正が責任を負うべきものであるという趣旨を徹底させておるのであります。若し議決書の謄本の送付を受けた場合に、檢事正はその議決通りの處置をしなければならないことになりますれば、その起訴の責任は審査委員會が負わなければならないことになりまして、檢事正は起訴の責任を負わないで、公訴維持の職務を執行するということになりまするので、さようなことになりますれば起訴の實行について、全責任を負うべき檢事正としては、十分職責を盡し難いものと考えたので、檢事正が議決書の謄本を受取つたならば、その議決を尊重して善處するということを期待いたしましてかような規定を設けたのであります。
#49
○齋武雄君 第四十七條に「檢事正は、前條の規定により議決書謄本の送付があつた場合において、」こういうことがありますが、これは期間の定めはないでしようが、例えば何日内にそういうことをするとか……。
#50
○政府委員(佐藤藤佐君) 特に本法ではその期間の定めはしておりませんけれども、審査委員會で議決をして、例えば起訴を相當とするという議決をしておりましても、速かにこれを檢事正に送らなければ、その間に時效の完成というようなことも考えられまするので、審査會においては議決次第、早速その寫を檢事正に送るであろうということを考えておるのであります。
#51
○齋武雄君 私はこの審査委員會の送る場合を話しておるのでないのであつて、檢事正の考えを纏める期間に、檢事正は何日間にそれを決定しなければいけないか、こういうことでありまして、審査委員會のことではない、往々にして檢事正は起訴という審査委員會の決定がありましても、一年も二年もそのままにして置く恐れがあるのでありまして、そういう場合はどういうものでしようか。
#52
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢事正が議決書の謄本の寫を受取つてから、起訴の手續をするまでの期間でございまするが、その期間については特に本法で定めはいたしておりません。一般の捜査事件について起訴の手續の期間が定めておらないのと同樣でありますが、ただ、今申上げましたように公訴時效の制限がありますので、檢事正としてはその範圍内において、できるだけ早く起訴の手續をすることが當然であろうというふうに考えておるのであります。
#53
○松井道夫君 最後に確めて置きたいのですが、第七條の被疑者である場合でありまするが、檢察審査員が被疑者であつた場合、その場合は職員の執行から除外されないという趣旨で立案されておるのか、或いは除外されるという趣旨で立案しておるのか、その點を確めて置きたいのです。
#54
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察審査員が被疑者であるという場合は、先程申上げましたようにちよつと想像ができないのでありますが、曾てその事件について被疑者であつた場合ということは考えられまするので、その自分が曾て被疑者であつた事件について、審査委員會の議題になつたというような場合は、お説のように職務の執行から除外するのが、寧ろ相當ではないかというふうにも考えられまするので、その點はもう少し研究いたしたいと存じます。
#55
○松井道夫君 今の被疑者である場合はちよつと想像ができないということで、その被疑者ということの意味合の問題になろうかと思いますけれども、私の申しました趣旨は、要するに檢察審査員が告發なら告發されまして、これが不起訴になります。ところがそのことにつきまして告發人から請求がありまして、これが檢察審査會でとり上げられる。その時に不起訴になればもう被疑者でないというそういう意味でございますれば、意味は分るのでありますが、その人がそこに加わるというのが、ちよつとおかしいのではないか。私は當然そういうものは除外されるべきものというような解釋で、事理の當然から申しまして除外されるものと考えておつたのであります。そういう場合を私考えているのですが、政府委員の考えておられるところと同一なことになるのがどうか。
#56
○政府委員(佐藤藤佐君) お話御尤もでございまして第七條の第七號に、「檢察審査員が事合について被疑者の代理人又は辯護人となつたとき。」その事件について曾て被疑者の代理人であつた、或いは辯護人であつたという人は、檢察審査員の職務の執行から除外されなければならないという規定を設けてありますので、勿論、檢察審査員が被疑者自身であつた場合には、やはり職務執行から除外されるのであるというふうに、勿論、解釋で除斥理由になるものと解釋ができないことはないのでありますが、或いは明瞭に一號か二號の邊に、檢察審査員が被疑者であつたときというふうに揚げるのが、或いは相當かとも思われるのであります。
#57
○松村眞一郎君 四十七條でありますが、「その議決を參考にし、」ということはどういう意味でありますか、非常に議決そのものを輕く見ているように私は感じるのであります。元來參考と言えば、それを考えに交えるということでありますから、この文字に示すごとく、この議決そのものを檢討するのではないかということに私はなると思います。むしろ議決そのものが相當であるかどうかということを檢討しなければならん、參考ではない。私はどうしてもこれは「議決を相當と認め、公訴を提起すべきものと思料するときは起訴の手續をしなければならん。」と書かなければならんのであつて、この檢察審査會法案に詳細な規定がありまして、いろいろと檢討した結果決議をいたしたのであります。それは單に參考に過ぎないのであるというがごとき感じを抱かせる文字でないかと思います。議決そのものを眞劍に檢討しなければならない。議決そのものが目標である。檢事正そのものが何をなすかということは、そういう意味におきまして、私は「議決を參考にし」ということは、これは文字としてよくないのみならず、非常に誤解を招きますから、先程申しましたごとくその議決を相當と認めると改めることが適當であると考えます。
 それはこの檢察廳法の一部を改正する法律案の第二十三條の三項の規定にはこういうことがあります。「議決の通知のあつた場合において、その議決を相當と認めるときは、當該檢察官の罷免の勸告をしなければならない。」これは言葉を換えて言いますと、議決そのものを檢討しまして、それを相當と認め、罷免すべきものと思料するときには、罷免の勸告をする。こういうことをこれは約めて、檢察官の罷免も勸告しなければいかんと書いてあります。審査會の方の規定を申しますれば、手續というものがありますから、先ず公訴すべきものと考えたときに、今度は手續の方で起訴の手續をしなければならん、こういうことを書いておるのでありますから、その前後兩方の法案を對照いたしましても、四十七條の「議決を參間にし、」ということは、私は適當な文字でないと考えますが、どういうように政府委員はお考えになりますか、お尋ねいたします。
#58
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察審査法案第四十七條の規定でありまするが、檢事正が議決書の謄本を送付せられた場合においては、その議決を尊重して善處しなければならん、こういう起旨を言い現わす起旨の下に立案いたしたのでありまするが、「議決を參考にし」という言葉は、仰せのように、或いは不適當な言葉であるかとも思われるのでありますが、立案者の意圖する所は、この議決を尊重し、公訴を提起すべきものと思料するときは、起訴しなければならん、こういう趣旨なのであります。
#59
○松村眞一郎君 今日はこの檢察審査會法案だけの議題でありまして……。
#60
○委員長(伊藤修君) 兩方とも議題になつておる……。
#61
○松村眞一郎君 檢察廳法の一部を改正する法律案について、昨日この檢察官適格審査委員會なるものは、法務總裁の諮問機關であるというがごとき言葉についての、いろいろの問答がありましたことを私は靜かに聽いておりまして、その言葉が、甚だ誤解を招く政府委員の答辯であるということを私は考えるのであります。政府委員のお考えは、審査會の議決があつたからといつて、直ちにそれに拘束される意味ではない、その議決を檢討し、尊重し、そうして相當し認めた場合に勧告をするのであるから、議決があつたからといつて直ちに拘束されるものでないから、いわゆる諮問機關というようなものに性質が似ておるということの意味での答辯と私は考えます。
 凡そ從來の諮問機關という用語は、諮問がなければ動かない團體について申すのでありまして、この適格審査委員會なるものは、法務總裁の諮問を待つて動くところの機關でないのでありますことは、第二十三條の第二項に明瞭に書いてある通り、當然三年ごとに定時審査を行うのでありまして、これは何ら法務總裁の諮問によつて動くのじやありません。そういうわけでありますから、ただ拘束をされないというだけの意味であつて、議決と法務總裁の勸告と兩者が合して罷免の勸告が行われるのであるという、はつきり兩者の對等を示す意味において、拘束を受けないから諮問という言葉を使われたのであるということに私は解釋するのであります。元來政府委員の答辯通りに默つておるというと、我々が立法の際において、その説明を是認したごとく思われる虞れがありますから、委員會としては、委員單獨にこの文字について自分自身の解釋を持つておるのでありまして、私は諮問というような解釋はいたしておりませんということをここに明言しまして、政府委員の考えも恐らくはただ言葉をその際にお使いになつただけのことであつて、私共申すところの趣旨に全く一致しておるのじやないかと私は考えますので、その言葉尻を捉えるのじやないが、本質について明確なる御答辯をお願いする次第であります。
#62
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察廳法の一部を改正する法律案第二十三條に規定しておりまする、檢察官適格審査委員會の議決と法務總裁の勸告と、兩々相俟つて檢察官の罷免をすることができるということを説明する過程におきまして、或いは諮問機關というような言葉を用いたかも存じませんが、どうも諮問機關という言葉は、従來の用例に從いますると、仰せのように、諮問がなければ發動ができない、その諮問に應じて答申するという輕い意味に使われておりまするので、それは全く本法の適格審査委員會の職能には不適當な言葉でありまするので、その點は訂正いたしたいと存じます。本法の規定するところは、只今仰せの通りでありまして、檢察官を罷免するには、審査委員会の議決と法務總裁の勸告と、二つの條件が備わらなければならないということを規定いたしたつもりであります。
#63
○委員長(伊藤修君) それでは本日はこれで散會いたしまして、月曜日に午前十時から開會いたします。
   午後五時三十三分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事      岡部  常君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           中村 正雄君
           水久保甚作君
           鬼丸 義齊君
           來馬 琢道君
           松井 道夫君
           松村眞一郎君
           星野 芳樹君
  政府委員
   法務行政長官  佐藤 藤佐君
ソース: 国立国会図書館
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