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1947/05/04 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第20号
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1947/05/04 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第20号

#1
第002回国会 司法委員会 第20号
昭和二十三年五月四日(火曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○戸籍手数料の額を定める法律案(内
 閣送付)
○裁判官の報酬等に関する法律案(内
 閣送付)
○檢察官の俸給等に関する法律案(内
 閣送付)
○行政事件訟訴特例法案(内閣提出、
 衆議院送付)
  ―――――――――――――
   午前十時四十八分開会
#2
○委員長(伊藤修君) これより司法案員会を開会いたします。本日は予備は附託になつております戸籍手数料の額を定める法律案、これを先ず議題に供します。政府委員の提案理由の説明をお伺いたします。
#3
○國務大臣(鈴木義男君) 戸籍手数料の額を定める法律案について提案理由を御説明申上げます。
 本年一月一日施行を見ました戸籍法を改正する法律においては、その第五條第二項により「手数料の額は、別に法律でこれを定める。」とされております。ただ同法第百四十三條には、この額は財政法第三條の規定の適用あるまでは、政令の定めによることを妨げないとされております。同條は財政法第三條の特例に関する法律により現在のところ一般には適用がないことになつておりますので、現行の戸籍手数料規則は現在もその効力を認められておりますが、成るべく速かに戸籍手数料規則を法律に切り換えるのを適当と考えます。これが本法律案を提案する理由でございます。
 本法律案の内容は、現行の戸籍手数料規則の定めるところと全く同一でありまして、即ち戸籍簿等の閲覧は一回につき五円、戸籍等の謄抄本は一枚につき五円、戸籍の記載事項その他の証明も一件につき五円となつております。この額は昨年政令第二百一号で從來各一円であつたのを増額し、十月一日より実施したものであります。何卒愼重御審議の上速かに御可決せられんことを御願い申上げます。
#4
○委員長(伊藤修君) 別に御質問なければこの程度にいたしまして、次の法律案を上程いたします。これも同樣予備付託になりました裁判官の報酬等に関する法律案、並びに檢察官の俸給等に関する法律案、両案を一括して議題に供します。先ず政府委員の提案理由の説明をお伺いいたします。
#5
○國務大臣(鈴木義男君) 只今議題となりました裁判官の報酬等に関する法律案の提案理由を申上げます。裁判官の報酬につきましては憲法及び裁判所法の規定に基ずき、昭和二十二年四月十七日第九十二回帝國議会におきまして、裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律が定められ、同年五月三日から施行せられたのでありますが、この法律はその名の示しておりますように裁判官の報酬等につきまして、終戰後におきまする國内の不安定な経済情勢に鑑み、應急的措置として一應の定めをなしたものでありまして、本年の一月一日からその効力を失うことになつておりました。併しながら経済情勢はその後も依然として安定するに至らなかつたので、第一回國会及び今國会におきまして、二回に亘りこの法律の有効期間が延長せられて参りましたが、この期間もいよいよ來る五月二日を以て滿了することになりましたので、これに對し何らかの立法的措置を講じなければならなくなつたのであります。然るに最近におきましては外資の導入、賠償の見通しその他等によりまして、わが國の産業、経済も漸く安定の曙光を見るに至り、一般の政府職員の給與は、この程公布せられました政府職員の俸給等に関する法律によりまして、平均月收二千九百二十円の基準で体系ずけられることになりましたので、この際裁判官の報酬その他の給與につきましても、これに対應して、その職務の特殊性と重要制とに鑑み、職階制を加味した新水準による給與を定めることにいたすべく、ここにこの法律案を提出いたした次第であります。
 民主主義國家における司法の職責の重要なることについては、今更申上げるまでもないところでありまして、新憲法下におきましては、裁判所は一切の法律上の爭訟に関する裁判権を有し、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定し、又訴訟公手続等に関する規則を制定する等の、重要なる権限を與えられておりますことは、夙に御承知の通りでありまして、而も終戰後の社会的経済的混乱、動搖の中に処して、國家再建のために、法的秩序の確立を保持する司法の任務の、至高にして且つ緊急なことについては、今更申上げるまでもないことであります。併しながらこのような重要な権限を適正に行使し、至高な任務を遺憾なく遂行することは極めて困難でありまして、その任に当る裁判官に人格識見共に高邁であつて、而も法律的素養豊かな適材を得て、而もその人が後顧の憂なく、その職務に励精することによつて、初めてこのことが望み得るのであります。然るに飜つて我が國の現状を見まするに、裁判官は、一般の日常生活は極めて困窮し且つ道義頽廃せる現下の社会環境の下において、窮乏に堪えつつ清廉よく身を持し、激増の一途を迫る諸案件を処理して、よくその任務を果しているのでありますが、その職務の重大且つ高貴なるに反し、その報酬は余りにも乏しく日々高騰する物價の波に押し流されて、経済的最低生活を維持することすら困難な状態にあるのでありまして、或いは職に斃れ、或いは病床に臥して回復せず、或いは生活難のため、心ならずも職を他に轉ずる者等が相次ぎまして、昨年中のみにても退職者は百十三名を数え、現在における裁判官の欠員数は、実に三百十名の多きに達しておるのであります。これは誠に憂慮すべきことでありまして、これを現状のまま放置するがごときことは、民主國家の國民として誠に恥ずべきことと存ずるのであります。新憲法が、裁判官の報酬について特に規定を設けておりますことは、誠に意義深いことでありまして、裁判官の担う事責と使命とを考えますならば、その報酬が少くとも、裁判官にとつてふさわしい生活を保証するに足るものであるように定めることは、國民の義務であると信ずるのであります。よつて裁判官が一般官吏に比し高い報酬を受けるべきは当然でありまして、最高裁判所の裁判官などは國務大臣と同等の報酬を、又その他の裁判官はこれに準ずる報酬を受けるのが相当であると信ずるのであります。米國及び英國の裁判官が他の官吏に比し、特に高い待遇を受けておることは御承知の通りであります。併しながら國家財政窮乏の現状にありましては、特に高い裁判官の報酬を定めこるとは不可能でありまして、又政府職員全般の給與体系との調和をも考慮しなければなりませんので、この法案におきましては、これらの事情をも考慮して、裁判官の報酬額を一應別表の通り定めたのであります。この金額と雖も物價指数、生計費指数及び所得税率等を勘考して、戰前の俸給と比較するときは決して十分のものではなく、むしろ甚だとしいものであることは御了解を願えることと信ずるのであります。この法案は裁判官の報酬の額を定めた外、その支給方法や報酬以外の給與に関する規定などを定め、尚その施行に必要な経過規定を定めたものであります。
 何とぞ愼重御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
 次に檢察官の俸給等に関する法律案を提案理由を申上げます。檢察官の俸給等に関しましては、檢察廳法第二十一條の規定に基き、先に檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律を制定施行したのでありますが、その後一般公務員の給與体系が確立しないために、檢察官についてもその給與水準を確立することができず、止むなく右應急措置の法律を二回にわたり延期を重ねて参つたのでありますが、來る五月三日を以て右延期の期限が満了し、檢察官の俸給についての根拠法律は、その效力を失うことと相成つているので、この際右應急措置の法律に代るべき、檢察官の俸給に関する法律を制定する必要を生じたのであります。
 この間國内経済情勢は刻々変化し、國家公務員全般の給與も、二千九百二十円の水準において体系付けられることに相成りましたので、檢察官についても、その水準における給與の体系を確立し、以て一般公務員の給與水準に即應せしめると共に、檢察官の職責に鑑み、その準司法官的性格を重視し、他の一般行政官とは異なり、裁判官に対する待遇に準じた給與を與うることといたしたく、ここに本法案を提出した次第であります。
 御承知のごとく檢察官は國内治安確保の中核を爲し、近時激増頻発しつつある兇悪事犯の檢挙や、経済事犯の処理等に忙殺せられているのみならず、最近は隱退藏事件の摘発処理に当り、顯著なる功績を挙げているのであります。その職責の重大にしてその任務の繁忙なるに引替え、その給與がこれに伴わないために、或いは病床に斃れ、又は生活難のため止むなく他の職に轉ずる等最近退職者の激増を來し、他方檢察官志望者も極めて少く、毎月の未済事件は処理件数を遥に凌駕し、累月未済の増加を見るに至り、遂に檢察機能の全面的後退の徴候すら看取せられ、治安維持上由々しき事態の招來を懸念せられるに立至つておるのであります。
 申すまでもなく、檢察官は極めて高度の素質と教養とも要請せられ、任用資格も嚴重を極める特殊の技能職でありまして、たやすく余人を以て代え難いものであります。その任務は最も嚴正、公平に是非曲直を明らかにすべき準司法官的の性格を有し、又その性質上副收入は全くなく、又あるべからざるものでありますので、その生活を維持安定し、安んじてその職務に專念せしむるためには、それに相應する待遇を與えなければならないのであります。
 勿論國家財政窮乏の折柄でありますから、檢察官の給與も、一應二千九百二十円水準の枠内において考うべきことは申すまでもありませんが、その枠における最大限の待遇を與えたいのであります。本法律案第一條は、檢察官も國務大臣及び一般官吏の給與体系に則ることを明かにし、但し超過勤務手当は支給しないことと定め、第二條において俸給の月額は別表に定める額によることとし、第三條において俸給の支給準則の規定を設け、第四條において、檢察廳法第二十四條の規定による廃廳の場合の、扶養手当等を規律したものであります。尚附則は本法施行に関して必要な細則を明かにしたものであります。
 何とぞ愼重御審議の上速かに御協賛あらんことをお願いいたす次第であります。
#6
○委員長(伊藤修君) では両案に対して御質疑のある方はお申出を願います。
#7
○小川友三君 裁判官と檢察官の報酬と俸給の問題でありますが、我々としては極めて審重に審議すべき問題でありまして、特にイギリス並びにアメリカが裁判官に対しまして、非常に手当が良いということは何人も知るところであります。そこで世界中で滅亡した國家の待遇がどうであつたかというと、殊にプロシヤの例を採りますると、裁判官と檢察官の待遇において、むしろ裁判官の方が悪かつたという國が滅びて行つておるという例からみまして、裁判官がいくらでも良いという建前が日本にも非常にいいのじやないかと思いますが、これに対しまして大臣の御所見を伺いたいと思います。
#8
○國務大臣(鈴木義男君) 実は新憲法におきましては、立法、司法、行政の三権を完全に分立させまして、それぞれの地位を殆んど同格に引上げたのであります。從いましてこれらの任に当つて頂きまする者は、それぞれできるだけの範囲において優遇をしなければならんことは勿論でありまするが、司法権は御承知の通り、殊にいわゆる世俗の権力或いは情実、その他のものに捉われずして、超然として仕事をして頂かなければならんのでありまして、殊に立法と行政とを監視し、或いは或る意味においてはこれを訂正するというような重い任務を持つておるのでありまするから、そこで是非とも司法官には最も高い優遇をしなければならん。これが恐らくはイギリスにおいて、或いはアメリカにおいて司法官が特に他の官職に比して高い待遇を受けておる理由であると思うのであります。殊に仕事の量というような問題でなくして、常に社会百般のことについて高い教養を持つて、高邁な見識の下に仕事をして頂かなければならんという意味におきましては、仕事が如何に少くとも十分安心して生活をし、いろいろな修養を積み、教養を重ねることのできる待遇を必要とすると考えるのであります。
 そういう意味において、政府は現在のインフレーシヨンの下におきましては、物價指数、生計費指数等と対比いたしまするときは、もつとずつと高い待遇を差し上げなければならないと考えておるのでありまするが、國家財政の現状がそれを許しませんために、又一般官吏との比較も多少は考えなければならんという見地から、大体は二千九百二十円を顧慮しつつ、最大限度まで優待のできる案というものを御提案申上げた次第であります。
#9
○小川友三君 簡單にこの機会に、大臣もお見えになつておりますからお伺いいたしますが、イギリス並びにアメリカにおきましては、裁判官に殆んど全部官舎を與えられておるそうでありますが、日本裁判官には、全國の裁判官で二十%以内の官舎があるけれども、あとの八十%以内には官舎なしで、借家か或いは自宅から通つて非常な汽車も混んで苦労せられておるということでありますが、將來において、事情の許す限り裁判官に、或いは檢察官に官舎を全部與えたいというような案がございますでしようか、それをちよつとお伺いいたします。
#10
○國務大臣(鈴木義男君) 生活の安定の第一の條件は、住居の安定にあることは申上げるまでもないのでありますから、政府といたしましてはできるなら、全部の裁判官並びに檢察官に官舎を給與いたしたいのであります。実際は併しながら御承知のように、今建築をいたしますることが非常に困難でありまして、資材、その他の関係からも困難でありまするので、仮りに法案の中にそういうお約束をいたしましても、急速に実現することが難かしい、空手形に終る虞れがあると考えましたので、最大限度実際の方面において努力いたすつもりでありまするが、法案の中に織込むことは暫く差控えて、許される時が参りまするならば、全裁判官、檢察官に官舎を給與いたしたいということを念願いたしておる次第であります。
#11
○大野幸一君 本法案を提案せられるに当りまして、法律廳総裁としてこういうことを順序として履まれたかどうかということをお飼いいたしたい。即ち最高裁判所は憲法違反を審議する点においては、或る意味においては國会に優り、国会における法律の制定が憲法に違反するかどうかということにつき、又アメリカの大審院が政治的にも非常に重要なる場合を場じて來るというようなこともあり得るでありますが、ところが最高裁判所としては予算の請求権を国会に対して持つていない。そこでそれは法律廳総裁を理じて國会に出す、現在のところそうなつておるようであります。
 そういう点を考えるときに、最高裁判所の職責を全うするためには、國務大臣としては、十分にその予算については、最高裁判所の意向を参酌する、むしろ最高裁判所の要求に対してはこれを拒否しないというような氣持で、將來やることが適当でないかと私は考えるのであります。何となれば、その予算が政府によつて制肘を受けるという、又予算だけは政府の勝手氣儘ということになつては、最高裁判所の独自の権威が保たれないし、又そういうことがないとしても最高裁判所はそれによつて制肘を受ける、政治的にも影響する、こういうような場合があつては面白くない。そこで本法案を提出されるに当りまして、法務廳総裁は自己の責任において、提出されることになりましたに対しては、これは最高裁判所の同意を得られたかどうかということをお尋ねしたいのであります。
#12
○國務大臣(鈴木義男君) 裁判所の予算を如何に取扱うべきかということは、憲法を制定いたしましたときから問題になつておるのでありまして、実は三権分立を嚴格に実行いたしておりますアメリカなどのやり方を参考といたしまして、或る程度の内規のようなものが出來ておるのであります。実際問題としては、裁判所が予算を作られてそしてこれを國会に直接御提出になる、そして國会は独自の見地からこれを御決定下さるということが、理論的に正しいのであります。併しながら実際問題として考えて見ますると、結局政府の全体の予算の一環を成すということは否定できないのでありまして、裁判所の方でおつくりになりました予算をそのまま、政府は何らの責任なく國会に提案をして、そして國会の方で独自の見地でお決め下さる。こういとになりますと、現在ここに現われておりますように、檢察官のごとく法務総裁の監督下にあります者との給與の比較、又一般官公吏との給與の比較というような面が直ちに起つてくるのでありまして、どこかでこれを調節しなければ不都合を生ずる。こういう見地から、理論上は如何ようにも考えられるのでありますが、実際的な見地から政府は一應裁判所の御提案を下さいましたものを、内閣の責任において檢討する。こういうことに相成つたわけであります。もとより裁判所の独自の立場というものを尊重いたしまして、できるだけこれを動かさないように努力はいたしたのでありますが、併し提案理由の中で申上げましたように、いろいろな考慮から若干の変更を余儀なくせられたのであります。そのことについては最高裁判所に大体の御了解を得たつもりでありますが、細部については、或は完全に同意をせられたということを申上げたことができないかと思うのであります。もともとこれは裁判所の完全な同意を得て國會に提案して、遮二無二これを通すという、こういうような立場にはないのでありますから、大体の御了解を得て提案いたしました以上は、國会が独自のお立場で御檢討下さり御決定相成るということは、適当でもあり、差支がないと考えるのであります。そういう意味において大体御了解を得て提案をした。こういうふうにお答えを申上げておきます。
#13
○星野芳樹君 裁判官、檢察官の俸給を改善するということは、誠に結構で、大いに賛成する者でありますが、私先日九州地方の司法の視察に参りまして、諸所の檢察官の方とお目にかかりまして、その方々の声に、俸給を貰つても裁判官、檢察官たる者は闇米を買うわけに行かないから、労務加配米のようにしてそういう問題を解決する方法はないか、特に縣廳の所在地から地方に出るとき、そういうようなときの加配米は出ないかというようなことがあつたんですが、そういうような点はどう御考慮なさつておるのでしようか。
#14
○國務大臣(鈴木義男君) 誠に御尤ものことでありまして、只今は貨幣俸給を殖やしましても、実際は幾らも必要なる物資が手に入らないというような実情にあるまするので、政府としては給與を増すことも必要であるが、それと共に福利厚生の施設、或いは消費配給の施設を完備して、そうして実際の生活内容を裕かならしめることを努力しなければならないというので、実は俸給の率を理想的な標準からいえばずつと低く決めたのでありまするが、その半面には是非そういうふうにして補おう。こういう考を持つておるのでありまして、その点は裁判所に対しましても、檢察廳に対しましても、政府としては今後最善の努力を拂うつもりであります。但し主食についてはこれはどうもちよつとむつかしい問題がありまするから、ここで直ちに責任あるお答えをし兼ねまするが、主食以外のものにつきましては、できるだけ公定價格で樂に手に入るように努力する。こういうことを申し上げて置きます。
#15
○星野芳樹君 私が特にお願いしたのはその主食の問題なんですが、裁判官、檢察官たる立場から、特に闇の米も買えないということを考慮すべきだと思うのであります。殊に山口判事というような事件も、これも給料が足りないというより、裁判官の立場として闇を絶対に買わないということから非劇が起つておるように、これを特に考慮すべきものだと考えるのであります。ちよつと速記を……。
#16
○委員長(伊藤修君) 速記中止。
   〔速記中止〕
#17
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて……。
#18
○小川友三君 裁判官と檢察官の欠員の数が非常に大臣もおつしやつた通り多いのでありまして、多いからその欠員の分だけはいわゆる檢察官としての仕事をしないで、或いは裁判官としての仕事をしないでおるかと申しますと、裁判官も檢察官も欠員者の分も仕事をいておるのでありますから、欠員者の総合計の俸給というものは当然仕事をやりました人に、これは完全配給さるべきものの性質だと思いますが、これを何とか特別に廻すということにしましたならば、仕事をやつておるのでありますから廻せると思いますが、これに対する御見解と、福利施設が檢察官も不完全であつて、殆れどないような状態であると聞いておりますが、これも積極的に福利施設或いは消費組合というものをやりましたならば非常にその点につきまして便宜がある。かように信じておりますが、これをもつと早くやつて頂きたいとかように思います。
 それから星野さんのおつしやる通り判檢事さんに主食を特別に配給する。これは当然しなければいけないと思います。政府は遅配、欠配をしないと言うておりますけれども、現在一週間ぐらいの遅配、欠配をしております。そうしますと判檢事さんは闇ができない。その間、食わないでおるというような情勢でありまして誠にお氣の毒に堪えない次第でありまして、それから主食は配給できないが他のものならなんとかなるということですが、その中で一番いいのが豚の肉です。豚の肉は政府のお蔭で自由販賣になつておりますから、判檢事さんに豚肉を一貫目でも二貫目でも配給するように、法務総裁の御盡力でなんとかして頂きたいとかように思つております。(笑声)それはこうした治安の紊れております時、第一線として檢事並びに裁判官が盡力しておられるのでありますから、こうした点に対しまして甚だ卑近な例ですが、豚肉を挙げまして総裁の御高見を拜聽したいと思います。
 それから労働組合ですが、労働組合に行つていろいろ意見を聞きますと労働組合には特別配給米というのがありまして、組合員が非常に喜んで今日は君のところは五合だ、一升だというふうに配給しておりますが、裁判官並びに檢事の方にああいう配給はないのでございますかお伺いします。
 それからもう一つ大事なことは時間外手当がないという問題ですが、余分に時間外に働いておるのに、時間外手当がなくして、特別に能率を挙げても、挙げないでも同じである。併し能率を挙げなければ毎日累積する裁判官や檢事のお仕事はできない。どうしても朝から晩まで勤務して参考書類などを家に持つて帰つて勉強しなければならん。政府は八時間労働ということをいつておられるのに、それに加配米がない。これは非常に大きな間違であると存じます。この点につきまして大臣の御高見を承りたいと思います。
#19
○國務大臣(鈴木義男君) 福利厚生施設につきましては、お言葉の通りでありまして、鉄道、逓信そういう方面には可なり良い病院もあり、配給の組織もできておりまして、何といつても生活内容が他に官公吏よりは裕になつておるのであります。これは裁判所や法務廳におきましても是非同じような施設をしなければならん。する権利があるとすら考えておるのでありますが、実際問題として運輸省、逓信省等では戰前からあるものが継続してあるのでありまして、裁判所や法務廳でこれをやろうとすると新しく作らなければならん。そこに非常に困難に当面いたすのでありまして、今直ぐにそれをやるということせお約束できませんが、私の考えておりまするところでは同じ國家の公務員でありますから、すでに持つておる役所の福利厚生施設を、裁判所や檢察廳においても、これを同じ條件において利用し得るような制度を開きたい。そして余裕ができまするに從つて裁判所、法務廳の独自の施設を作つて行きたい。こういういうふうに考えておる次第であります。
 それから加配米の問題はしばしば同じことを承るのでありますが、遺憾ながらこの加配米の制度は筋肉を多く使うために腹が減る、そういう労働の種類に対して設けてある制度でありまして、配給が少いから腹が減るという点は國民全体の共同現象になりますから、裁判官、檢事だけに加配米を與えると、他の同じような精神的労働をいたしまする官公吏からも同じ要求が出て來ますので、二合五勺の配給ですら滯り勝ちでありますときに、配給体系を紊しますので、できるだけ一つ國民全体に対しての配給を増すということに政府は努力しておるのでありまして、只今数字を申上げるわけに行きませんが、この秋頃からは著しく配給量を殖やすことができるのではないかという希望を持つておりますから、どうか御了承を願いたいのであります。
 それから時間外勤務に対してはこの給與は相当大幅に引上げて頂くのでありますから実際は時間外給與を差上げたいのでありますが本給も非常に上げた。その外時間外給與についても差上げる。こういうことになりますと他との均衡上いろいろ問題を生じまするので、今暫くそれは差控える。こういう建前を採つたのであります。
#20
○中村正雄君 判事と檢事の俸給の額につきまして、最初の閣議の決定として発表されましたのは、東京高等裁判所長官と、それから東京高等檢察廳の檢事長との間に差があつたわけであります。それは一例ですが、その他最初の閣議決定によりましては、判事と檢事を各段階において皆差を設けてあつたのであります。ところがその後判事と檢事の報酬については同額でなければいけないという、特に檢察廳側からの運動もあり、又一部新聞では、判事と檢事は任用資格が同じでありながら差を設けるならば、檢事を辞めるという檢事團の方の辞職といいますか、総辞職をするという運動があつた。又法務廳總裁が大阪或いは神戸におきましての、新聞に出ておりました談話によりましても、これは不合理だ。任用資格が同じであるのに差をつけるのは不合理だ。自分の留守中のことであるから、帰つて早速是正しなければならないということが新聞に載つておりました。その後帰られてからが最初の新聞に出ました閣議決定が変更になりまして、出ました法案によりますと、東京高等裁判所長官と檢事長とは、同額になつているという一事から推しまして、大体前の差が縮まつているという結果になつているわけであります。この最初の閣議決定と、その後の閣議決定が違つたという経過と、それからこれに対して檢事が各地方において辞職するという運動があつたということにつきましての実状を御説明願いたい。
#21
○國務大臣(鈴木義男君) 只今の御指摘はやや正確を欠くのでありまして、最初閣議において決定せられましたものは、二十六日の閣議の決定でありまして、新聞を注意深く御覧下さいました方は御了解下さると思うのでありますが、二十七日朝新聞に発表されておりますのは、本日御提案いたしているのて同じものであります。ところが二十七日私が神戸におります時に発表せられましたものは、それと違うのであります。千円ずつ差があるというものであります。そうして私が帰つて参りまして、再び確定案として御提案いたしたのが、本日提案になつておりますものでありまして、これは二十六日の閣議で決定せられたものと少しも違いはないのであります。実は二十六日の閣議で決定をして、私どもはそれぞれ決裁をして後に私は出発をしたのであります。これで決定したものと信じておつたのであります。それが変化するということは私に関する限りあり得べからざることである。然るに神戸におりますと、電報、電話で変化されたということを聽いて驚いたのでありますが、帰りましてから閣議に問いましたところが、それは一時の誤解から二十六日の閣議の決定は、二十七日の閣議のごとく解釋すべきものである。そう解釋をして事務当局が間違つた案を出したというふうに了解して、若干の訂正をしたのであるが。よく事情を聞いて見るとやはり二十七日の閣議が正しかつたのであつて、二十七日の解釋は間違つておつたということを皆御了解に相成りまして、それで二十六日の閣議はそのまま維持するということに相成つたわけであります。
 從つて檢事諸君が騒いだと、そういうことはこれに対してなんら影響がないのでありまして、又騒ぐ、騒がんというようなことと無関係に私は独自の見解を持つておりまする故に、その独自の見解からかくのごとき案を提案いたのでありまして、それは判事と檢事というものは、新憲法の下において差あるべしということは、私も考えておるのであります。新憲法は最高裁判所長官を総理大臣と対等ならしめておるのでありまして、從つて最高裁判所の判事というものを國務大臣と同格にいたしておるのであります。檢察陣營におきましては國務大臣と同格なるものは檢事総長ただ一人であります。それに対して裁判所の方では長官を入れて十五人というものは國務大臣、及び内閣総理大臣と同格なのでありまして、それで、すでに非常に高い地位にあるのでありますが、給與の問題ということに相成りましては、その他は同じでも大した差はない。國家最高の機関であるという嚴然たる事実が確立されれば、私は大した違いはないと考えておつたのでありまするが、併し二十六日の閣議において十分檢討いたしました結果、今少しどこかで差をつけて置くことが裁判官の地位を重からしめる所以であるという、こういうところから裁判官にだけ一級俸、特号とでもいうべき一号俸というものを設けて置く、これは檢事の方にはないのだ。そうすれば判事の一番上になつた人は檢事よりも一段上になり得る。但しそれが全國皆一齊にそういうことになつたのはこれ又弊害を生ずるから、特に東京、大阪というような大きなところの裁判所長というような方が、この特号俸というものに値する。その他は原則として裁判官、檢事の一番高いものは同じ俸給を貰うということでいつたならば、現行法としては妥当ではないか。若し新らしく制度を立てるならば、それは判事と檢事とを区別して待遇をするという制度を立てることは差支えない。今まで同じ試驗を受け、同じ学校を卒業し、同じ試驗を受け、同じ修業を受けてほぼ同格に扱われて來た判事と檢事が、ここで檢事の方を下げるというような形をとりますることは、いろいろ感情的にも面白からざる結果を生むということになりまするから、これはできるだけ避けたい。そういう見地から只今申したような妥協案ができたわけでありまして、近い將來において政府といたしましては、檢察官を採用する試驗は裁判官を採用する試驗と別にいたしまして、例えば法務廳でその試驗を行う。それから一方は最高裁判所において裁判官、弁護士等の試驗は行う。そういうふうにして試驗からして違つて來る。そうして任用も違うということにすれば、そこに俸給に差ができるということは、しかく不自然ではないというように考えますから、そういうようにして新らしい体系を作りたい。こういう考えを持つております。只今現在しておる判事と檢事とをしかく非常な差をつけるということは、政府といたしては賛成いたしかねる。こういう考えであります。
#22
○中村正雄君 総裁の御意見ですと、最高裁判所の判事だけは別格とするということによつて、制度上檢察官と裁判官との待遇上の差は認めるが、それ以外の判事については檢察官と大体同じにしてもいいと、こういう御意見なんですか。
#23
○國務大臣(鈴木義男君) そうです。
#24
○中村正雄君 制度として残せば、最高裁判所としてはこういうふうにしてあるのだから、それ以外は対等でいいという御意見なんですか。
#25
○國務大臣(鈴木義男君) そうです。
#26
○中村正雄君 もう一つお尋ねしたいのは、いわゆる任用資格が同じだから今差をつけることはいけない。いわゆる檢事を低くすることはいけない。こういう御意見ですが、檢事を低くすることについては恐らく誰も賛成しないと思いますが、そういう見方でなくして、判事の方を上げるというふうに考えられるのじやないかと思います。それから任用資格が同じだから今差をつけるということはいけないということになりますると、これは政府全般の問題ですが、官吏の給與体系というものができておりますが、これはやはり責任と、職務の内容、質、量における内容、これによつて官吏の給與は決めるべきだ、いわゆる職階制の理念によりまして、一般行政官吏の給與を政府は立案しておるわけなんであります。そういう同じ政府でありながら、司法官の方、いわゆる檢事、判事の方の給與を決める場合は職務内容でなくして、任用資格が同一だから同じにしなくちやいけないという理論と、行政官吏の給與を決める場合には、任用資格の同一は何も関係はないので、職務の責任、内容において給與を決めるのであるという、この二つの思想は全然違つたものじやないか。行政官吏の方においても、今檢事、判事と同じ論法を用いるならば、任用資格が同じであるから当然同じにしなくちやいけないにも拘わらず、職務内容によつて給與体系を異にしておる。それに対して御見解を承りたい。
#27
○國務大臣(鈴木義男君) それは御質問の通りでありまして、すでに提案理由の中で、何故裁判官と檢察官の俸給を普通の官公吏の俸給よりも高からしめたかということは、いろいろ御説明申上げたつもりであります。要するにその職務はいろいろ重要性を持つた職務であります。その地位が超然として、権力と誘惑との外になければならんという特殊の地位に対してこれは與えられる。それでありますから、只今何故に判事と檢事の給與をこの原案において差を設けなかつたという御質問でありまするが、その点についてだけ、同じ任用をして來たものであるから、これから任用する人について差ができるということならば問題はないが、今までの人の給與を差別するということは困る。こういう御説明を申上げたのであります。根本論は提案理由で申上げたつもりであります。
#28
○中村正雄君 だから私聞いてるんですが、行政官吏であれば、同じ任用であつても今度差をつけておるわけなんです。にも拘わらず檢事と判事は同じ任用であるからといつて差をつけないという理論は、どこにあるかと、お聞きしておるんです。
#29
○國務大臣(鈴木義男君) それは職務が全く同じような性質の職務である。一方は司法官といつて、他は準司法官と申しておりますから、仕事の性質が全く同様であるからと、こうお答えを申しておきます。
#30
○中村正雄君 そうすると総裁は、裁判官と檢事とは責任も職務の内容も同じもんだと、こういうふうにお考えになつておるわけですか。
#31
○國務大臣(鈴木義男君) そうであります。
#32
○大野幸一君 どうも法務総裁のお話まだ納得できないのであります。日本國憲法をお作りになるときには、みずからお作りになつたような立場であつて、裁判所の地位というものが憲法上非常に高まつた。こういうことはとうに御存じのはずであります。その地位は誰が高めたかというと、國会が高めたのであります、國会はすべての全國民の総意によつてできたのであります。檢事も亦裁判官の地位を高めることについては、これは國民の一人として高めたのであります。制度として裁判官の地位が高まつた以上は、檢事と裁判官とが同じだということは腑に落ちない。檢事は原告官であつて、それに相対するのが弁護士である。原告官と弁護士との間に超然として判断を下すのが裁判所の判事であります。こういうところから同じであるという御見解は、これは法務廳総裁曾つて佐野におつた当時は、これはそう考えられなかつたのでしようが、今日法務廳総裁として、あなたが朝におられるから檢察官の立場をそうお考えになつたのか。それでは日本の司法改革はできないと思うのであります。こういう点におきまして、我々は今にしてこの新憲法をいわゆる身に附けるという意味において、裁判官の地位を檢事の地位より優位におく。これが必要であると私は思うのであります。そこで高等裁判所の長官と檢事長とを同一にするということはこれは必要でないのであります。あれは昔我々の学校で習つた頃には、面白い先生がいて、檢事局とういものは裁判所に附置される、附置されるというのは、物置についておるようなものである。こういうことをいわれてどつと笑つたことがある。いわゆる地方裁判所所属の檢事局である。今度はそういう意味において独立したとは雖も、原告官である、何も責任はないのである。裁判所こそ最高の責任を持つておる。その点最高裁判所長官だけを國務大臣として取扱つたからいいじやないかといつても、それでも地方に行けば、最高裁判所なんかは頭にない。大阪に行けば大阪高等裁判所と檢事局との比較をしておる。そこの檢事長は、最高裁判所は頭になくて大阪を標準にしておる。例えば東京では我々は最高裁判所と接触があるからですが、仙台に行けばそうはいかない。この際檢事さんも一歩へり下つて、よき裁判官を作るために裁判官の地位を一層向上せしめ、檢事さんが一番口惜しいことは、原告官として法廷に立つて、裁判所のいわゆるその人を得ないことである。それが裁判所において賢明なる裁判官、聰明なる裁判官を得れば非常に嬉しいのです。弁護士にしてもそうであります。一番つまらないのは、余り有能ならざる裁判官に裁かれることが一番つまらない。そういう意味において、檢事も裁判官も國家のため奉仕するのである。何も俸給が同じであることはない。
 私はこの間、これは後からお尋ねしようと思つていたのですが、一体檢事と判事とは同じではないか、それでは俸給が違うなら辞める。こういつて辞表を提出された人に対して、法務総裁はどういう措置をとられるか、こう思うのであります。この点についても法務総裁の御見解を伺いたいと思うのであります。私は率直にいえば、この際思い切つて判事の地位を一段と上げるために、何らかの措置をとられんことを要望するのであります。又全國からいろいろ、日本弁護士連合会あたりからも、そのういうことを率直にいつて來ております。先程法務総裁は、大体において最高裁判所の承諾を得たと言われたけれども、この一点、即ち檢事と判事とを同一に取扱つた、という一点については、大いに不満の者があるということを洩れ承つておるのであります。こういう意味において、この際朝にあるから野にあるからといわなくとも、勇氣を起して、司法改革のために法務廳総裁が一つ、我々が若しここにおいて修正するような、私共は俸給を減額しろというのではない、僅かの差である。僅かの差で、司法官こそ國を誤らせるか、誤らせないか、これから頼るべき司法官に対して信頼するところが多いのである、僅かの國費であるから進んで國会は増額すべきである。増額するときに判事さんに少しぐらい多くても、檢事さんは嫉視の觀念を持つことなく、それに從つて地位が下つたというのでなくして、全く國家公務員として國家に奉仕せられんことを、司法官、檢事、司法警察官の方に、そういうことを心から念願して、この際裁判官の地位の向上を図られることこそ、私は大切であろうと考えるのであります。
#33
○國務大臣(鈴木義男君) 大野議員のお言葉は尤もでありまして、御意見として承りまするが、政府としては只今申上げまするように、現在の檢事、判事というものをどう扱つて行くか、これは長い歴史を背中に背負つておるのであります。新らしい制度をこれから立てるという場合ならば、如何ような理想と雖も立てられますが、現在の判檢事というものは、はぼ同格に扱よれて來たということは、大野議員と雖も否定になるまいと思うのであります。そうでありますならば、只今申すように、制度の上において、一番高いところまで行くとどこまで行けるかということの比較をすると、段違いなんです、裁判官と檢事では……。檢事は一番高いところへ行つても、而もただ一人であります、十五人というような多数がそこの地位に上れないで、檢事総長になり得るだけであります。そうして檢事総長は僅かに八人しかない、その他の檢事は全部、先程申すように、一格下つたように考えられるのでありまして、これは法廷における構成として、私は檢事と弁護士というものが相対立して、そうして裁判官が一段高いところからこれを裁く、こういう法廷の構成を作りたいということを希望しておつたのでありまして、在野時代において、そういうことを私は考えておつたのであります。その考は今も変りません。併しそれは個々の檢事を、或いは判事を、同じ月給にするということによつて何ら妨げないのであつて、殊に檢事長とか檢事正というものは、法廷に現れざる監督官の立場に立つのであつて、いわば出世の一番最後の段階に來たときに與えられる待遇に過ぎないのでありますから、その人が仮に高等裁判所の長官と同じ俸給を貰つたからといつて、この法廷において一段下つておるという構成を、少しも紊ることはないと考えるのであります。況んや新らしい制度において、それを明確に一つこれから樹立して行こう、政府はこういう考えを持つておるのでありますから、その点についても、大野議員の御希望は十分に達せられる、こう考えておる次第であります。
#34
○中村正雄君 私最後にもう一点お尋ねしますが、先程総裁は、判事と檢事は、地位、職務の内容が同一だから同じようにする。こういうお話がありましたが、この点については、私は不満がありますが、これはさておきまして、任用資格が同じだから、今まで同じようにやつて來たところの傳統がある、仕來りがあるから、これを今直ちに変えるわけにはいかない、新らしき制度になつた場合に考える。こういうお考でありますが、併し法務廳総裁を含めた政府が、二百六十万からなる官公吏に対しては、今までの仕來りを一擲いたしまして、職階制というものを確立する。私はこの制度には賛成なんでありますが、それだけの勇氣があるならばなぜ全官公吏の一%に充たない司法官、檢察官に対して、こういう制度を今やれないかという、この点についても政府のお考を伺いたい。
#35
○國務大臣(鈴木義男君) 近く政府は、檢事につきましても、そういう立法をいたすつもりでおりまするので、今できないということは、たとい立法いたしましても、檢事というものは、全然普通の公務員と違うのでありまして、國家公務員法の中にも、すでに檢事は除外例を設けられておるのであります、檢事の特殊の職能、地位に伴いまして、全然別個の立案をしなければならん。こう考えておるのであります。そうでありまするから、その点はたとい全然新らしい職能、職階制に基は立案をいたしましても、檢事については、ほぼこれと同じような趣旨においても、官吏の中では一番高級な裁判官に準ずべきものとして、立案をするのだということには変りはないのでありますから、その点は一つ誤解のないようにお願をいたしておきます。
#36
○中村正雄君 私の質問は、今のお答とはちよつち違うのですが、いわゆる行政官吏は任用資格が同じであつても、今度職階制によつてはつきり差を附けられる。二百六十万からなる官公吏に対しては、今までの経緯を一擲して、同じ任用資格でなつたものであつても、現在携つておる職務の内容に應じて給與の差を認めておるにも拘わらず、判事と檢事に対して任用資格が同一である関係上、今までの、從來の傳統から今直ちには差を付けられない、こういうお考は、おかしいのじやないか。政府全体として一般行政官に対しまして、今こういう職階制という大きな制度を確立したなれば、判事と檢事と同じ資格であつても職務内容は違う、或いは制度上は違う。それに今こういう制度をできないという理由はどこにあるか、こういうことをお尋ねしておるわけです。
#37
○國務大臣(鈴木義男君) できないという理由は別にないのであります。やろうと思えばできるわけでありまするが、判事も檢事も同じように職階制で改訂はやつたつもりなのがこれなのでありまして、この辺がちようど妥当である。こういう見解に立つておるとお考え願いたいのであります。
#38
○宮城タマヨ君 世の中がこんなになりません時でも、私聞いておりますところでは、判檢事の子供達が司法官を志望しない。そうして司法官を志望する親を調べて見ますと、大抵所長だとか檢事正だとかという長官の息子であつたということが、随分事実に現れておるらしいことから見ましても、世の中がこうならない前でも、どんなに司法官の生活が苦しかつたということがわかると思います。私が結婚する時も司法官は一生塩を嘗めて生活をしなければならないがいいかということを念を押されております。司法官は塩を嘗めた生活を今まで長い間して來たという苦しい生活から、今度上げられますということは、本当に有難いことだと思うのであります。そこで先程も大野委員からおつしやつたように、裁判官にその人を得なければ、公判廷において事件の結末に非常に不満がある場合に大変だというお話、誠に御尤もでござまして、できるだけ裁判官を優遇いたしまして、いい判決をして頂きたいということは、國民全体の願つておるところだと思つております。と同時に、檢事の仕事は公訴官でそれこそ起訴、不起訴を自分の手の中に握つております。このことは一般の民衆に一番接近して、一般の民衆の利害を、最も判事よりも握つておるものだと私は考えております。つまりちようど檢事は犯罪においての窓口の取扱をしております関係から、この窓口におりまするところのものに、本当の人を得ておりませんでしたら、世の中は私は大変になると思つております。でございますから、判事にいい人を得るために待遇をよくするということと同時に、私はこの民衆に接近しておりまして、重大な職務を持つております檢事にも亦本当にいい人を得なければならない。そのためにはやはり待遇をよくして頂くと同時に檢事は詰らないものであつて、判事は特別のものだということを一般の人々に思わせるということが、この犯罪全体について、殊に刑事政策を円満にして参ります上について、どんなものかというように考えておりますが、法務総裁の御意見がございましたら……。
#39
○國務大臣(鈴木義男君) それはお言葉の通りでありまして、法廷の構成は、成るたけ檢事と弁護士は一段下で、裁判官というものは一段高いという建前をとつて行きたいということを考えておりますが、人としては檢事も判事も國家最高の人格識見者でなければならん。その点においては差別あるべからざるものであると考えております、
#40
○小川友三君 俸給問題ですが、一つの例を申上げますと、この間上野の駅に参りまして駅長に会いまして、駅長さんは月給は駅で何番目かと聞きましたら、位は一番上で月給は七番目ですという話を数日前に聞きましたが、これは駅長だから一番高くならなければならん。月給が七番目でも駅長でやつておるのですから、俸給問題はこうしたインフレの高まつた時代にそう問題はないのじやないかと思いますが、その点につきまして法務総裁のおつしやつたことが、私は現在状況においては首肯できるのじやないか、いいのじやないかと思つております。それから判事さんが非常に高い地位まで上がれる、檢事さんは一人しかしがつて行かれないという例もありますし、この点現在のインフレの状況から推して地位を確立する一番の重い任務である点において、甲乙はつけたいが、ここが非常にむずかしい所でありまして、法務総裁の御意見に大体賛成します。
#41
○委員長(伊藤修君) それではこの法案に対するところの実際家の意見を聞きたいと存じます。裁判官、檢察官並びに弁護士の代表、こういう人々の意見を本委員会で徴したいと思いますが、この人達と人数は、委員長にお委せ願い、証人を喚問いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○委員長(伊藤修君) それでは適当に委員長において選考して、午後の委員会に承認を求めるようにいたしたいと存じます。それではこれを以て休憩いたしまして、午後一時から開会いたします。
   午前十一時五十七分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時五十七分開会
#43
○委員長(伊藤修君) では午前に引続きまして司法委員会を開会いたします。
#44
○中村正雄君 法務廳総裁がお見えになることになつておりましたが、お見えになりませんので、政府委員の方にお尋ねします。午前の私の質問に対しまして、総裁は檢事と判事は任用資格が同じである関係上、今差を設けるこは困るというような意味のお答併があつたのですが、現在の法務廳の事務官、これは大体判事或いは檢事のうちの優秀な方が携わつていると思いますが、今度一般行政官の給與法というものは未だ國会に提出されておりませんが、大体内容につきましては、新聞その他で承知いたしておる程度のものであろうと思うのです。從つて一般の行政官は最高一万円で止まるだろう。從つて法務廳の事務官、判事なり檢事なりをして、今法務廳の事務官をなさつておる方は、幾ら優秀でも最高一万円で止まつてしまうのですが、ところがそれと同じように同じ任用資格により、同じ時期に採用されまして、今判事、檢事をしておる人はこの法案によつて相当高く給料が貰える、こういう関係になりますと、同じ任用資格であるから余り差をつけるわけにはいかない。こう法務廳総裁は回答しておきながら、同じ判事ならば判事、同じ檢事ならば檢事として從來職を執つておつた者が、今一方は判事の現職にあり、一方は法務廳の事務官であるという関係で、一方は一万七千円、一万八千円も取り、法務廳事務官は最高一万円止まり、この不合理はどういうふうに是正なさるのか、それを伺いたいわけであります。
#45
○政府委員(岡咲恕一君) お答え申上げます。今のお尋は誠に御尤もございまして、本法律案が幸い國会によりまして、御決定になりました曉には、法務廳の事務官と裁判官、或いは檢察官のこの報酬は、いわゆる給與との間に非常な開きができますことは、御指摘の通りでございます。で法務廳の事務官というものが一体どういう性格を持ち、どういう職能を持つかということから考えますと、これは裁判所、或いは檢察関係と非常な深い関係を持ちますし、法務廳の事務官を裁判所或いは檢察廳からその適材を迎えるというふうにいたしませんと、法務廳の本來の使命を達成することは困難であろうと思います。そういたしますと、裁判官或いは檢察官が非常に高い給料を貰いながら、法務廳の事務官がその給與に比較にならない低い給與のままで置かれるということになりますと、ここに非常に困難を生ずるだろうと思います。從いましてでき得べくんば適当な措置を講じまして、裁判官或いは檢察官であつた者が、法務廳の事務官になるという場合には、裁判官或いは檢察官に準ずる給與を、支給することのできるような処置を講ずることが、適当ではないかと考えております。法務総裁は今朝の御答弁によりまして、その任用資格の点から考えて、裁判官と檢察官とがほぼ同等の待遇、給與を受けることを至当としたというふうな趣旨のことを申しておりましたけれども、それは必ずしも職責或いは任用資格という点だけではございませんで、総裁の申しておりました趣旨は、その職責におきましては準司法官的な仕事をやつており非常に重要である、殊に現下における國内情勢から見ますと、犯罪は激増しておりますし、國内の法的秩序というものが甚だ危險な状態にありますので、檢察官の職責というものは平常状態に比較しまして非常に重大である、その職責においては勿論裁判官の職責は非常に重いものでありますけれども、それに準ずる程度の重要な職責を持つておる、從つて給與におきましても、ほぼ裁判官に準ずる程度の給與を與えることが適当である。こういうような趣旨で答弁いたしたのではないかと私は了解しております。法務廳の職員につきましては、非常にこれは司法的とは申されませんけれども、純粹の政府機關と違いまして、むしろ裁判所と政府との緩衝帶とでも申しますか、そういう趣旨の重要な職責を持つておりますので、その点から申しましても、裁判官或いは險察官に準ずるような練達堪能の士を迎える必要がございます。從つてその給與につきましても只今申上げましたように、裁判官、檢察官に準ずる給與を與え得るような処置を執することが必要ではないかと、かように考えておる次第であります。
#46
○中村正雄君 そういう措置をとることが必要だという点は、それは法務総裁の午前の答井から当然出て來るわけでありますが、必要であるかないかの問題ではなくて、現実の問題として、この法案がこのまま通るか、或いは修正されるかは別といたしまして、この数日の中に通過するわけでありますが、そうなりますと、直ちにこれが実現する、一般公務員に対しましての法案も、近日中に恐らく成立するであろうと思います。ところが現在の給與法から行きますると、何とかして適当な処置を講ずるといいましても、新たな法律を制定しな限りにおいては、法務廳の事務官に対して一万円以上の俸給を支拂うということはできないのでございますが、それに対する具体的な措置についてお考えがあるかないかという点をお聽きしたいわけであります。
#47
○政府委員(岡咲恕一君) これは法務総裁が御答弁するのが適当ではないかと考えておりますが、実は私の答弁をお許し頂きますならば、近く制定される給與法、或いは給與法の中に、若しそういう政府の決定を得れば大変結構と思うのでありますが、法務廳の事務官で裁判官或いは檢察官であつた者は、裁判官、檢察官に準ずる給與を受けることができるというふうな規定でも置くことによつて、或いはその問題を解決し得るのではないかと思いますが、これはまだ研究中でございまして、ちよつと私から申上げるのは少し越権ではないかと考える次第であります。
 それから例えば安本におります民間出身の職員は、民間の会社に在職中に與えられていた給與よりも低い俸給で迎えられた、就職したという場合に、伺かその差額に相当する手当か何かが支給されておるようなことも承つてありますが、或いはそういうような方法によつても、この給與の凸凹を調整し得るのではないかと考えておりますが、いずれにいたしましても、政府といたしまして適当な措置を講じませんと、法務廳に適材を迎えることが困難になるということが明らかでありますので、そういう措置を講ずる必要があり、その措置に対して政府は緊急にいたさなければならないと思います。
#48
○中村正雄君 次に午前中に裁判官の報酬等に関する法律案と、檢察官の俸給等に関する法律案、両案の提案理由の説明が法務総裁からあつたわけでありますが、この提案理由の説明につきましてちよつと疑問の点がありますので、お伺いしたい。最初裁判官の報酬等に関する法律案の提案理由の終りの方に、こういうことをいわれております。「最高裁判所の裁判官などは國務大臣と同等の報酬を、又その他の裁判官はこれに準ずる報酬を受けのが相当であると信ずる」、こういうふうにいつておりまして、いわゆるその他の裁判官は最高裁判所の裁判官に準ずる報酬を受ける。この場合の準ずるというのは、法案にもありますように、相当低い意味の、これに次ぐという意味の準ずるというふうに解釋されておるわけであります。ところが別個に、檢察官の俸給等に関する法律案の提案理由の説明の場合に、冒頭にこういうことがあります。「檢察官の職責に鑑み、その準司法官的性格を重視し、他の一般行政官とは異なり、裁判官に対する待遇に準じた給與を與うることにいたしたく」、ここに又準ずるということをいつておりますが、この場合の「準ずる」というのは、司法官、裁判官と同等にするという意味の「準ずる」、こういうように伺えるわけでありますが、別々な法律案で見ればいいのですが、こういう二つの法律案が同時に出まして、同時に提案理由を説明されまして、この「準ずる」という意義につきましても、私をして端的に言わしむれば、その法案々々について勝手に解釈しておる、自分に有利にように解釈しておる。裁判官の報酬の場合には、「準ずる」というのは、これは次ぐという意味に「準ずる」を使つており、又檢察官の場合には同等という意味で「準ずる」を使つておる。なぜならこういうように同じように表現した「準ずる」ということを、裁判官の場合には次ぐとし、檢察官の場合には同等というように解釈するのか、この点についてお伺いいたしたいわけであります。
#49
○政府委員(岡咲恕一君) 裁判官の報酬等に関する法律案の提案理由の説明には、今指摘になりましたように、この「準ずる」は必ずしも同格という意味ではございませんで、國務大臣に次ぐ程度の報酬という趣旨でございます。それから檢察官の方も……。
#50
○中村正雄君 私の言つておるのは國務大臣でなくして、最高裁判所の裁判官に対して、その他の裁判官はこれに準ずる、國務大臣と関係ないわけであります。最高裁判所の裁判官とその他の裁判官……。
#51
○政府委員(岡咲恕一君) その他の裁判官は國務大臣に準ずる報酬、これに次ぐ程度の報酬という趣旨でございます。それから檢察官の方は、これはここにございますように、「檢察官の職責に鑑み、その準司法官的性格を重視し、他の一般待遇に準じた給與を與うる」、これは裁判官全体を見まして、その裁判官に大体同格、必ずしも同格ではございませんので、大体同じような趣旨で裁判官に次ぐ程度の給與を與える。こういうような趣旨で御説明いたしたいと思います。
#52
○中村正雄君 どうも今の答弁は曖昧で分りませんが、いわゆる法務総裁も、最高裁判所の判事はそれは別格であるが、それ以外の判事と、檢察官とは、これは責任も職務の内容も同一であるから、同一待遇をすべきだということを午前中にはつきり答弁しておるわけです。又別の理由からは、任用資格が同一であるから、こういつておるわけであります。從つて檢察官の俸給等に関する法律案提案理由の方の「準ずる」というのは、同一というこの面から見ても解釈できますし、これは実際の待遇案も同一である。反対の、裁判官の方は、これは上は二万円からずつと最低の三千五百円になつておるのですから、相当の差を設けてある。このいわゆる同じ表現方法としての「準ずる」という綺麗な言葉を使つておるが、法案によつてはその準ずるという意味が違つておる。こういう点を私は御回答を願いたいと言つておるわけです。
#53
○政府委員(岡咲恕一君) お答えいたします。この檢察官の方は必ずしも同額ではございませんで、裁判官の待遇に対比いたしますと、全体としては多少低目になつておると思います。ただ檢事総長が國務大臣と同額で、それから檢所長がそれぞれ対應しておる。高等裁判所の長官と同額になつておりますが、一般下級の裁判官と他の一般の檢事と比較いたしますと、大体一籌の差別ができておるわけでございまして、完全に同等というふうには案はなつておりませんので、この準ずるも大体それに近い待遇、こういう趣旨でこういう言葉を使つておるわけであります。
#54
○中村正雄君 その点はこのくらいにして置きまして、次に、午前中に私もちよつと質問しましたし、又大野委員からも質問したわけですが、その時に法務廳総裁の答弁がなかつたわけでありますが、と申しますのは、この法案がこの前原案で通るか、或いは判事と檢事に対しましては差別を設くべしという議論の方が勝を制しまして、差が附けられ、修正されるという場合に、現在全國の檢事たちが、判事と檢事は同一でなくてはいけない。若しも判事と檢事の差を附ける場合は、檢事は総辞職をするという声が新聞その他に載つておりますが、若し本國会が判事と檢事に差を附け修正した案が通るといつた場合、今まで、盛にいわれておる檢事の総辞職の件、こういう状態はどうなるのか、又これに対する見通しとして法務廳はどういうお考になつておるか伺いいたしたいと思います。
#55
○政府委員(岡咲恕一君) この問題は非常に重要な問題と考えますので、法務総裁より答弁せいたすことにしたいと思います。
#56
○委員長(伊藤修君) では午前に決定いたしました、本案に対するところの証人の証言を求めることにいたします。証人のお方には二十分以内におきまして、問題は本両法案に対するところの待遇案の全体の中、判事と檢事との待遇を同等にすべきや否や、この一点に問題を限つて御証言を願うことにいたします。では証人の方の宣誓を先ず求めたいと思います。
 尚証人の指名は午前中に委員に御一任願いましたが、裁判所側といたしましては最高裁判所判事の岩松三郎君、高等裁判所半事の石坂修一君、檢察官側といたしまして、最高檢察廳檢事宮本増藏君、東京地方檢察廳檢事馬場義績君、それから弁護士側といたしまして、日本弁護士連合会の副会長松井久市君以上五名を証人にお願いすることにいたします。証人の方の宣誓をまずお願いいたします。
   〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕
    宣 誓 書
 良人に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 岩松 三郎
    宣 誓 書
 良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 石坂 修一
    宣 誓 書
 良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 宮本 増藏
    宣 誓 書
 良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 馬場 義績
    宣 誓 書
 良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 松井 久市
#57
○委員長(伊藤修君) では最高裁判所判事岩松三郎君の御証言をまずお願いいたします。
#58
○證人(岩崎三郎君) 裁判官の報酬と檢事の報酬というものと同一にするしないの問題だけ、ということでありますからその点だけにいたします。
 裁判官は新憲法の下で憲法上の保障をされた裁判権を行使する唯一の機関であるという点で、檢事というものと職責上重大な差異があると思うのであります。この司法権の行使ということが國家の行政権、立法権と三つに分けられる、いわゆる三権分立の関係で國権の作用上重要なものであるという点から、憲法もその條章において司法権の独立を規定したものだと思うのであります。そういう点に鑑みまして先程からちよと伺つつおると、檢事が司法官に準ずるものとか、司法権に関與するようなお話もあつたようにちよつと聞いておりましたが、私共は檢事というものは司法官ではないというふうに考えております。これは補助機関に過ぎないものと思つておりまして、起訴、不起訴を決定するといいましても、あれは裁判ではございません。何等の既判力も何もないのでありまして裁判ではないと思います。結局檢事というのは裁判するものではございません。憲法が一番重大に考えられておる、いわゆる個人の人権の自由の保障という、そういうものを保護する最終の決定権を持つ、裁判権を行使する裁判所というものとは非常な違いがあるのじやないかと思うのであります。そういう点でそういう裁判官と檢事というものと同等に取扱うことは、憲法自身が明文上同等に取扱つておらないものを、報酬の点で同等に準ずるように、殆んど有名無実な違いを附けてこれを待遇するということは、やはり憲法の精神に反し、又一般に司法権というものの重大性というものを誤解せしめる虞れがあるのじやないかというように私共は考えております。そういう点でこの憲法の精神を一日も早く國民によく分からせるという意味からいつても、これを同等に取扱うようなことに処置するということが、私共遺憾に思うのでありまして、そういう点で制度の確立の上から、やはり裁判官と檢事というものの区別をはつきりさせるという点で、この報酬の方とても、僅かなことのようにお考えになられる点があるかも知れませんが、やはり重大な意義を持つて來るんだという点に、私共は関心を持つておるのであります。その外実際において、この檢事のやる仕事と、判事のやる仕事の量とが、忙しさという点では、それはおのおの忙しさはあるのでありますが、ただ性質上違う点は、今のこの裁判するということのために、檢事の方の仕事は何といつても行政事務に過ぎないのであります。從つて、新憲法の下において、行政官廳である法務総裁の命令に属する檢事と一体として、すべての処置が行われておるのでありますが、判事は下級裁判所の一番下の判事でも、自己の責任において、直接何人の指揮をも受けないで、そうして正邪を決め、人権を擁護するということを、自己の責任においてやつて、そうしてその責任は國民に直接負つておるという点で大変な違いがあると思うのであります。そういうまあ裁判官の地位と、檢事の地位というものが、ごつちやにされるという危險のある法制は、私共は絶対に賛成できないというように考えておるのであります。いろいろ細かい点で申上げたいことがありますが、大体私共は今度の法案のことなどについては、そういう点を憂慮して申上げておきます。実際上判事は数多くあるが、檢事は割合に少く、殆んど半数くらいだろうと思うのでありますが、実際僅かな違いを附けたのでは実際上報酬の面では区別が附かなくなるという事実もあるのであります。現に現在のこの高等裁判所長官と檢事長と比べて見ましても、勤務年限でも判事は三十年何ケ月になつており、殆んど三十一年くらいになるのに、檢事長の勤務年限というものは、二十八年くらいじやないかと思います。所長、檢事正と比べても、一方は二十六年くらいに引退して、片方はやはり二十五年くらい、年齢は勿論それに準じて、差があるのでありまして、僅なの報酬の違いを附けたのでは、実際は全く同じになる却つて有利になるんじやないかというように我々は考えております。それと任用資格の点などは同じだからといつておるが、実際は任用資格は今までは同じであるが、実際今の制度では司法修習生は修習期間を終り、いわゆる任官試驗を通れば檢事になれる。判事は判事補ということになりまして、十年の間判事にはなれない。いわゆる判事補ということになつておるのであります。この副檢事と、判事補というものは、法文上同じようにちよつと考えられておりますが、実は大変な違いがあるんじやないかと思います。そういう点でも判事補を十年やつても当然判事になれるわけじやございませんで、その時の都合で判事に任官できない場合もありますし、当然直ぐに順々に上つて行くというわけではないと思うのであります。そういう点の考慮もされて区別されないと、政府が出した法案のようでは、全く区別のないのと殆んど同じになるのじやないか、というふうに私共は考えるが故に憂慮しておる次第であります。まあそのくらいで……。
#59
○委員長(伊藤修君) 証人に対する御質問は、便宜後に一括してお願いすることにいたしたいと思います。
 次に最高檢察廳檢事宮本増藏君。
#60
○證人(宮本増藏君) 私は檢察官側の意見を申上げたいと思います。檢察官としましては、その報酬を裁判官と絶対に平等にしろということを申してはおりません。概ね同等にすべきもので、これはすでに明治初年以來、通俗的な言葉ですが、判事も檢察官も司法官として俗称され、大体同じ屋根におつて同じような、同じようと言つてはいけませんが、同じ関連のある仕事をして來たために、大体において待遇も同等でありました。過去におきましてはいろいろの消長はありましたが、最近におきましては殆んど同樣の待遇を受けて來たわけであります。新憲法によりまして最高裁判所の絶大な権威が認められ、この裁判官の待遇に対しては、憲法上相当額の報酬を給與するというような保障もあるのでありまして、私共が裁判官に対して、檢察官は絶対に平等でなければならんということは毫も申しておりません。過日司法法制審議会におきまして、檢察官の待遇は概ね司法官の待遇に準ずべきものであるという決議をしております。この決議につきましては、当時その起草の一人に当りました、現東京高等檢察廳檢事長の佐藤博氏からお聽きしましたが、大体において最高裁判所の判事を別格にする、その他の判檢事については同等にする、絶対の同等ではないけれども、最高裁判所の判事外の判檢事は同等にするという意味で、概ね準ずるという言葉を使つたということを私は聞いております。そういう意味で冒頭におきまして、絶対平等論を主張するのではない。概ね平等論を主張するのであるということを御了承願いたいと思います。なぜそれならばそういう待遇の準ずべき主張をするのかていう御質問があると思いますので、その点について二三申上げたいと思うのです。一般的に裁判官の仕事と司法官の仕事は、おのおのその職務内容を異にしておりますけれども、重大な関連性があるのであります。刑事裁判は、檢察官の起訴がなければ裁判できない、不告不理の原則は申すまでもないことでありまして、如何に優秀な裁判官でありましても檢察官の起訴がない限り裁判に入ることはできない。その起訴の良し悪しからしまして、裁判の結果も或る場合において左右される。良質でない檢察官の起訴は、自然裁判の内容にも影響するのじやなかろうかと思いますので、この檢察官の仕事というものは、刑事裁判の実質に非常な影響がある。その意味において私は重大な関連性がある。これは公訴権の問題でありまするが、公訴権の問題外に、裁判檢察官は公訴も不起訴処分もいたします。これは先程岩松証人から、起訴は裁判ではない、勿論これは行政処分ではありましようけれども、國民にとりましては、自分の行爲が起訴されるか、或いは不起訴に付せられるかということは重要な問題であります。現在におきまして司法の実際から申しますると、不起訴の事件の方が数が非常に多い。その比率について私は承知しませんが、後程馬場証人から説明して頂きたいと思うのでありますが、犯罪行爲の相当の部分が檢察官の不起訴によつて決定されておる。この点を十分委員の各位に御了承を願いたいのであります。この檢察官の職務が若し誤まつたならば不起訴にすべからざるものを不起訴にする。或いはその反対の場合がありましてもそれは由々しき重大事であります。御承知のようにこの檢察官の不起訴処分につきましては、最近國会におきましても檢察参與法というものが上程さるるように私は聞いておりますが、國会においてもこの檢事の職能について非常な関心を持つておられるということは、如何にもこの檢察者の仕事が純粋な司法権の行使ではありませんけれども、それに近い、いわゆる準ずべき重要な職務である。以上の理由によりまして、私は檢察官は司法官ではないけれども司法官に準ずべきものであると断じて、私はそういうやうに申したいと思うのであります。次によく問題になりまするのは、裁判官の責任というものは個々独立である。併し檢察官は上司の命令を受けてやつておるのじやないかということがよくすわれるのであります。この点について私は檢察官と雖も個々独立の責任を持つておる。これは檢察廳法に立派に書いてあります。檢察官の仕事は檢察官が独自の立場において執行するのであります。勿論上司の指揮命令はあります。指揮命令はありますけれども、一般行政官のように上司の名において職務を執行するのではありません。檢察廳の檢事と雖も自分の名で起訴するのであります。その起訴の良否については、その区裁判所の檢事はどこまでも責任を追及される。いわゆる上司の指揮命令は内部関係に過ぎないのであります。ここに強氣な檢事がおりまして、上司の不起訴命令を受けたとしましても、その檢事が自分の直接の上司の命令に反しても、自己の名において起訴できるのであります。これは外部に対しては立派に適法な起訴でありまして、上司とも雖も如何ともできない。殊に現行檢察廳法によりますると、法務総裁と雖も個々の檢事に対して指導命令ができないということが、立派に規定されております。この点からいいますると、個々の檢察官が責任を負う、個々に責任を負うということはいえると思うのであります。そういう理由からいいまして、裁判官の責任というものと檢察官の責任というものは、内容において違うかも知れませんが、その個々の責任を負うという実質においては、私は軽重がないのじやないか、さように信ずるのであります。次にこれもよく申されることでありますが、我々の最も重要視しておる問題でありますが、裁判官と檢察官の待遇に差異を附けるという議論について、私は先程申すように最高裁判所の裁判官の待遇以外は、一般の判檢事の待遇について差異を附けることの不合理なことを一言申したいのであります。それにつきましては現行制度上、裁判官も檢察官も同一の試驗を受け、同一の修習過程を経まして、一方は判事補になり、一方は檢事になるのでありますが、その判事補で十年経過しますれば当然判事になり得る。いろいろ予算上の関係があつて遅れることにありましようが、資格上は判事になり得る。その判事杯十年やつた判事と、檢事になつてから十年勤めた檢事との間に、待遇上の差別を附けられるということについては、どうも私は合理的な根拠を発見できないのであります。先程も申しましたように任用資格において全然同一でありますから、若しその差別論を徹底されるならば、現在の任用制度を根本的に改めて、檢事又は弁護士から判事を採るというような制度を確立した上におきましては、私は双手を挙げてこの判事と檢事との待遇を差別することに賛成したいと思うのであります。私は抽象的に憲法の保障から見まして、判事が優位な地位にあることは申すまでもないと思いますが、現在の制度を睨み合わせてみまして、尚又今日檢事がこの社会治安の責任上、重大な難局に敢然として起つておるという現実の事態と対比します場合、待遇の相違を附けるということについてはどうしても承服できない。この点を十分皆さんに御留意を願いたいと思うであります。もう一つ申上げれば、仮に差異を附けた場合を予想しますると、今日まで司法界によい空氣を入れて來ました司法の民主化ということについて重大な影響を來たすのじやないか。勿論弁護士から檢事になる人は恐らくないでしよう。又檢事を最初から志願する人も恐らく少なくなる。結局檢察陣営が非常に寂寥になる。或いは優秀者を失なう。勿論判事の方から檢事に來て下さるという人はないのであります。優秀な分子がすべて裁判官の方に行つてしまいます。檢察陣営が非常に衰える。ところが現在の時局下如何に檢察官の任務が重大であり、又その職責の重要なことは、皆さんすでに御承知の通りでありまして、今日の複雜な社会問題、労働問題にしても或いは経済事犯にしても、優秀な檢事がなければ、要するに捕える者を逃がしてしまう。結局社会不安がいよいよ多くなる。この現在の社会不安を避けるためには、どうしても優秀な檢察官をして、その職に熱を以て当らしめるということが必要じやなかろうか、廣い意味における司法民主化のため、檢察陣営の充実のためにも絶対的差別論はよろしくない。最後に申しましたように私共は絶対に待遇の平等論を主張するのではない。最高裁判所が、現に今度の法案においても、最優位の待遇を受けておるのでありますから、最初に申しましたように、概ね準ずべき裁判官と檢察官の待遇は同等にすべきものであるというに確信いたします。あと足らんところは外の証人から申します。
#61
○委員長(伊藤修君) 小に東京高等裁判所判事石坂修一君。
#62
○證人(石坂修一君) 御紹介に預かりました石坂であります。いろいろ議論を拜聽しておるのでありますが、結局私はやはりいろいろな点から観察いたしまして、裁判官と檢察官との報酬につきまして、ここに明確な一線を引かれることが、最も今後の法律を民主的に運営し、又その民主化の実現を図る上において、得策であり又かくあらねばならんということを申上げたいのであります。これを裁判官と檢察官との待遇に関しまして、沿革的に見ますならば、明治憲法下におきましても、すでにこれは十分なとは行きませんが、絶対引かれない線までの点において、一線から引かれておつたのであります。第一にこれを大審院長と檢事総長との間の差別を見ますと、檢事総長というものは先ず最初は勅任待遇を以つて遇されておりました。然るに大審院長は当初から親任官でありました。國務大臣と同等な地位、枢密顧問官と同等な地位を持つておりました。それから私が司法官試補に入りましたのは大正八年でございますが、その頃、今日私は自分の家でもいろいろな文献を失いましたし、裁判所の中でも文献を失いましたので、直ちに証拠を各位の前に提出することは困難ではございますが、私どもが入りました当時の裁判官及び檢察官に対する待遇を比べて見ますと、檢察官の方が低いのであります。それから裁判官の方の待遇がよかつたのであります。それをどの点からお前はそういうか、かように申されますと、先ず大審院長と檢事総長との差異、それから各地における長官、つまり檢事正に対しまして、裁判所の長官である裁判所長で、優位な地位におりました裁判所長は、四十幾人かおりましたが、その非常に多数の所長が勅任でありました。又檢事正はそれに反して低く待遇されておるました。現に私が司法官試補として、最初出ました横浜司法裁判所におきまして、最初は所長、檢事正共に勅任でございましたが、次になりました所長はこれは勅任でありました。併し次になつた檢事正は奏任でありました。比率は所長の方の勅任官の数が、檢事正の数の比率においてずつと上であつたのであります。それが如何なる意味におきましてか漸次向上いたしまして、江木翼司法大臣の時に至りまして全く平等化されてしまつた。これは当時の憲法及び法律が、檢察官及び裁判官は、同一の司法大臣の下に身分監督を受けておりましたので、これは同一の職責、同一の性質の官吏であると、かように観念されておつたからではなかろうかと思うのであります。そこでこの憲法が施行されまして、裁判官と檢察官との職責が異なつておることを最も明かにし、而してその職域の分野も違うのだということは、憲法はもとよりこれを明らかにしておりますが、法律も明かにしております。これは私がここに申上げるまでもなく、各位の專門及び專門家でいらせられなくとも、立派なる法律的な常識、社会的の常識をお持ちの各位はよくよく御存じのことと確信するのであります。現在におきましては然らばどうなつておるか。過去の沿革は最初は非常に違つておつたが、後には水準を上げて、現在はどうなつておるか、現在はもう各位御了承の通り、檢事と判事との待遇が違つておつて、判事は多少の優位の地位にあります。俸給も皆上におると信じておるのであります。そういう沿革、最初檢察官と裁判官との水準が同一になつたと同時に、國内的にこれを我々の歴史的な眼を以て観察しますと、これは因果関係であるかどうか、尚多少の……多少どころでない、尚多くの詳しい調査と資料がなければこれは言い切ることはできないのでありますが、極めて客観的な事態から見ますると、國内がフアツシヨ化すると同時に、檢事の地位は上つて來ました。私はやはり檢察官というものは、これは行政系統の一系列だと思つております。丁度もとこれは甚だ私の歴史観が間違つておれば申訳ありませんが、どうしてもこれはつまり陸軍でも、海軍でも一つの技術を担当しておるものが政治までにのし上つて來た檢事も、檢察官も一つの技術を担当しておるのであります。この起訴すべきや否やという一つの技術を担当しておるのであります。その技術を担当しておる者がずつとのし上つて來るということは、結局私は宮本とは非常な親友なんでございまして、昔から一緒に机を並べて仕事をしておりますが、併し私は理論をここで申上げるのですからお許しを願いたいと思うのですが、行政系統の同じ系列の中にある者が、どたつとのし上るということが非常に危險な一つの現象だ、かように考えるのであります。
 次にこれは行政的な、極めて法律論から申しますならば、先程から極めて沢山出たのでありますが、裁判官は憲法上の職責なんでありまして、旧憲法でも、何人も法律による裁判を受ける権利を奪われることなしという、憲法上の制度にあつたのであります。現在は憲法の民主化と同時に、一層そのことの趣旨が徹底されまして、三権分立は明白に区別されました。そういうようなわけで、我々は憲法によつて相当の報酬を與えられなけばならん。我々の報酬というものは憲法、檢察官の報酬は法律によるのであります。法律と憲法との差異、自から性質の差異があるということは、賢明なる皆様に、私から縷々申上げる必要もない。
 それから一体報酬というものを何によつて決めるかということは、むずかしい問題だろうと思う。先程なされた参議院の方の御質問には、非常に妥当な、我々の尊敬すべき、我々がこれから考えなくちやならんいろいろの思想があつて、私は非常にそれに対して敬意を表しておるのでありますが、一体能率給であるのか、資格給であるのか、その他等々いろいろあると思います。私はやはり法律的な制度の段階に從つて與えるべきものだと思う。憲法によつて與えるべきものは憲法に從え、法律によつて與えられるものは法律に從え、こう考えるのであります。裁判官に対する報酬は憲法によつて與えられる。その他の行政官というものは、他の法律或いは命令によつて決つて來る。そこによつて非常に相違がある。職務が忙しいとか、それは先程ここにおられる岡咲君も非常に墾意な、親友なんでありますが、岡咲君が仰せられるのは、どうもちよつと曖昧で私は分りませんでしたが、これは批評を申上げて申訳ありませんが、岡咲君の説明でも法務廳の職員も準ずべきものだ、こうおつしやるのでありますが、それは私はちよつとおかしいと思います。飽くまでこれは憲法によつて定めた制度ということを考えて行かなければ、どうしても決つて來ない。だから法務廳の役人諸君は、行政官ですから行政官待遇、その特殊行政官のおのおのの特殊な職能に從つて、俸給が定まつて行く、能率給もよかろう。併し私のいうのはこれは何というのですか、比較給というのですか、憲法によるものは憲法による、法律によるものは法律による。その段階に相應する職務を與えられるべきものだと思います。それからよく私は素人の方に檢事というものは忙しい、判事は余り忙しくないのじやないか、こういわれます。併しこれは客観的な見方によるものであります。例えばこれはもう実に忙しい仕事がある。全く隙もない。一刻も目を離せない。丁度紡績工場の女工を私は一遍見たことがありますが、絶えず流れが來る、一刻でも間誤つくと工場全体の機械ががしやつと止つてしまう、それはもう実に忙しい職業である。併し忙しいからといつても、それよりまだ他に多くの給與を與えなくてはならん者もある。これ閑繁によることではない、併し閑繁ということもこれは又考えなくちやならん。ただ一生懸命に朝から晩までやつておるから忙しいということじやいけない。そこに如何なる深刻な思考というものが要るであろうか。或いは如何なる勉強というものが要るであろうか。何にもしないけれども日夜常に考えていなくてはならんこともある。だからそこは給與を決めるのはなかなかむずかしいところがある。單に外見なり感覚的な、極めて客観的なこの事実を捉えて忙しいとか暇だということはいえない。これは宮本君も非常によく知つておられるでしようが、裁判所の忙しさということはわかるんです。檢事の忙しさということと裁判所の忙しさとは違うんです。性質が違うんです。性質が違うのに忙しいから余計やる、忙しくないから余計やらないということはいえなのです。それから次は起訴云々といわれますが、何といつても、宮本君もいろいろいわれますが、檢事の決定ということは檢察廳集團の決定になります。裁判所はどこまでも一人の決定なんです。最高裁判所のように十五人で決定することもありますが、十五人より以上上ることはない。十六人で決定するということはしないのです。我々は常に自己によつて一人でやるのです。何人の防衞も受けないで、我々自身であらゆる攻撃に対する防衞をやり、あらゆる人のいうことを攝取して、そうして我々が裁断を下すのであります。檢事は非常に技術的である、裁判所はやや政治的であるということがいえると思います。私は政治と技術ということをここに申上げることは憚ります。時間もありません。要するに一方は技術的であり、一方はやや政治的ある。併し裁判所と雖も実に技術的な仕事が多いのであります。ただ何でも適当なようにうればいいというのではないのであります。一切のことが法律によつてやらなくてはならんという非常に技術的な仕事が多いのであります。檢事は刑事訴訟法を行うという仕事なんです。捜査して起訴すべきか、起訴すべからざるかを決めて、そうしてこれを執行するということが檢事の仕事なんです。判事はそうじやない。世の中の或る人は判事というのは人間を掴えて來て、自分の前で判決をして監獄に送り込むというように考えておりますが、これは飛んでもない間違いである。私共は單に刑事訴訟法ばかりでなく、人の出生から死亡に至るまで扱つておる。そうして刑事訴訟もやる、民事訴訟もやる、非訟事件もやる、人権の基本的な証明もやるということをやつておるのであります。今はそれを除きまして戸籍とかいうものは除かれましたが、曾てはそうであつたのであります。現在においても民事訴訟も刑事訴訟もやる、あらゆる一切の法律事務というものは、一切裁判所に集中されるのでありますが、檢事の方は刑事訴訟が集中されるだけであります。そこは刑事訴訟という一つの部分であります。裁判所は法律の全体であります。それは三権分立からいつても、内閣というものは、予算と法律というものを作る案を立てるのである。それから立法府は予算を決め、法律を決めるのです。そしてその責任をとられるのです。その責任をとられることに対して十分な報酬或いは地位、或いは待遇を與えようと我々は思つておるのであります。我々はそれに対して一切の法律による紛糾を、ここで終止符を打とうという職責を持つておるのであります。檢事とは土台あくまで違つた職責を持つておる。それを同じと思うことは飛んだ間違いである。これは旧來の旧憲法の封建的な、独り善がりの、成るべく國民の権利を制限して、そうして官僚が成るべく有利な、便利なような憲法を作つた、その陋習を今日そのまま持つておるわけであります。これは昨日も議会の憲法発布記念式でお分りの通り、檢事が出て來るわけではない。衆議院、参議院、内閣総理大臣、それから最高裁判所長官、これが日本の政治を動かす三つの機関なんです。一番高い機関だから一番いい報酬を與える。これはもう最も妥当なことなんであります。それからそれならばすべて法曹一元化ではないというのです。が、如何にも尤もらしくてこんな馬鹿げた議論というのは、天下普通なんです。裁判所というのは裁判というものを中心にした機関です。法曹一元化というのは、それを中心にみんなで集まつていい裁判をやつて行こう、それによつて人権を保護しよう、人権を確立していこうというのが裁判の建前なんであります。それでございますから、裁判所はその裁判ということを中心にして、と法曹が集まらなければならん。法律の專門家がそこに集まらなければならん。その機関を中心にするより外に、何にも中心にする所がない。ここに弁護士も出ておられますけれども、弁護士を中心にしようとしても、これは中心にできません。檢事を中心にしようとしてもできません。裁判という機関を通じなければならんのです。そこで裁判官というものは、先つきから資格が云々、教養が云々ということが度々出ますけれども、我々はその同じ資格云々ということで以て、この裁判官の報酬というものは、上にならなければならんということを主張するのではないのです。裁判という人権保護の立派な制度を如何に運用して行くかという、そこに中心を持つておるのです。人の問題をいつておるのではない、人にどれだけ金をやるかということをいつておるのではない。経済問題をいつておるのではない。ここに如何にいい人を集めようかということを我々は念願しておる。又我々の主眼であるところのものなんです。そこで法律を見ますと、十年判事補をすれば判事になれる。一人前の裁判官になる。弁護士でも、檢事でも、大学の先生でも、或いは苟くも法曹の者ならば、或る一定の教養と、勉強をした者はみんな半事にすると法律に書いてある。私が言うのではない、法律が言つておる。だから檢事でも適当とする人があるならば、この裁判所に入つて貰わなければならん。弁護士も無論入つて貰わなければならん。それかかその他の学識経驗者もこれに適する人は皆入つて貰わなければならん。人物の一大集成をしなければならん。裁判所という、そういう機能を司る裁判官という人を、一大集成しなければならん。能率のある人、能力のある人を……。現在の人間が屑である。そんなことを考えておるのではない。私もその屑の一人です。いい人が集まれば私はいつでも御免蒙る。現に私自身御免蒙ろうと思つておる。これはおどかしに言つておるのではない。待遇をして呉れないからといつて何通でも辞表を出したり、参議院、衆議院に電報を官報でぶち込んだり、私はそういうことを言つておるのではない。私は適当な人があればいつでも、今でも直ぐ退く。いい待遇を受けるために退きましようかというのではない。いい人が出たら退くというのです。これは私共皆同じような考え方です。そこで立派な判事補からも採る、弁護士からも採る、檢事からも採る、大学教授からも採る、その他の学識経驗者の資格のある人からも採るというためには、立派な待遇を與えて置かなければ、檢事からも來て呉れません。檢事は実際、こういうことを申すと甚だかおしいのですが、経済的な裁判官よりいいように思う。それは実証しろとおつしやればいろいろのことで実証できるのではないかと思うのです。思い附きですから差控えますが、よくなつていなければ來ないのです。無論それはちよつとぐらい良くしても來ないです。けれどもそこが人間です。少しでも色を附けてやれば、色に引かれて、行こうかという氣持にもなるのです。どうしても人間の個人々々の権利を守り、私権を守り、人権を確立するには裁判所というものが、良くならなければできないことですから、そこで裁判所というものを少しでも良くして置いて、そこへ立派な檢事、立派な弁護士、立派な大学教授又立派な有識者を集めようというのです。裁判官法には、ちやんとそうなつておるのです。そこを私共の狙つておるのです。今檢察官と裁判官と同じ試驗を受けて、同じ教養であるのだから同じにしなければならん、そういうことを言つておるのではないのです。將來のこれから五年十年先のそこを見越して、我々はどうしても優遇を與えて下さいということを各位にお願いするのであります。
 それから又、私はこういうことを聞いておるのであります。裁判所というものは、刑事訴訟法については、檢事が皆お膳立てをして持つて來る。そうして弁護士がこれに対して批判を與えて裁判を下す。民事訴訟法は原被両告が各々準備して、それに対して攻防して、そうして裁判所へお膳立てをして裁判を求めるだけだ。だから裁判所はじつと坐つておればそれでよろしい。お前が勝つた、お前が負けたと、断を下せばそれでいい。そんな簡單なことはないのだから、余り給料もやらんでいいということを言う人がある。これは飛んでもない間違で、そういうことを言えば、此処におられる委員長でも、参議院、衆議院の議長でも皆同じわけで、それだから議長は少くていいのだ、議員が質問して政府が一生懸命やるので、それでいいのだということはない。議長は議長たるそれがあるのです。裁判官もこれは法廷の議長なんです。何時でも議長を勤めるのです。そんなに議長というものは樂なものではないのです。どんな難局に立つても、どんなに風波があつても、いつも舵をうまく取つて船を向うへ着けるのが、議長の職責です。裁判官も同じことであります。それですから議長はどうしてもよく待遇して置かなければならないと思います。これには御異議ありますまい。檢事も当事者として出て來る、弁護士も当事者として出て來るのであります。そこに坐つておるのは議長たる裁判官であります。その裁判官が一人であるか、三人であるか、五人であるか、或いはそれ以上で以て十五人くらいかということの差異はある。それから大勢、例えば裁判官が十五人おつて檢事総長が一人だ。それで待遇は裁判官は相当の待遇してあるから、十五対一であるから、一の方は余計やつても差支えないだろうという議論もあるそうでありますが、これは飛んでもない。これはまるで人間の目方でやるような話で、飛んでもない話であります。要するに職務の内容であります。議員は百何十人おるから一人々々は値打がない。そういう馬鹿な議論をする人は一人もいない。千人になろうと一人一人が大切な方で、これに対しては相当の待遇と報酬を與えるということは、これはどうしてもやらなければならん。だからそういうことは議論になりません。
 尚今一つ二つ思い付いたのですが、ちよつて忘れましたので、尚お尋ねに從いまして何程でもお尋ね下さいますれば、それに対してお答え申上げたいと、かように思うのであります。一應私の証言を打切らして頂きます。恐れ入りました。
#63
○委員長(伊藤修君) 次に東京地方檢察廳檢事馬場議續君。
#64
○證人(馬場義續君) 只今御指名を受けました東京都地檢察廳の檢事の馬場でございます。檢事の待遇を裁判官と全然同一ではないが、概ねこれと同一にして頂くことが相当であるという理由につきましては、先程宮本証人から大体御説明がありましたが、私はこれを補足する意味におきまして二、三の点につきて御説明をいたしまして、皆様の御了解を頂きたいと、かように考えておる者であります。今度の新憲法下における裁判制度というものは、大体アメリカの制度にならつたものであるように承知しております。ところが最高裁判所につきましては正にその通りでありますが、下級裁判所の判事の任用の方法は、これと余程異つておるように承つておるのであります。即ちアメリカの制度におきましては、先ず司法官たらんとする者は檢事なり弁護士になりまして、相当の年数が経つてから、その中から裁判官に選拔されて行くという制度になつておるやに承つておるのであります。そういたしますと裁判官になるときには、相当の年数を経て老棟にもなつておりますし、声望もできておる。そういう任用制度の下における裁判官に、高き地位と報酬を與えることは、これは誰も異論のないところで、私どももさような制度の下に高き報酬を與えられることについては、全然異存はないのであります。ところがすべて制度の改革というものは、一朝にして変ることはできないのであります。即ち過渡的な方法といたしまして、我が國の裁判官任用制度には、判事補という制度を設けておるのであります。判事補というのは司法科試驗を通りまして司法修習生というものに採用されます。これは檢事志望者も、弁護士志望者も、將来判事たらんとするいわゆる判事補、皆一樣に司法修後生になりまして、二年間の修習を経て、そこで二回試驗と私どもの方で申しておりますが、その二回試驗を経て、おのおの判事補なり、檢事、弁護士というものになつて行く制度になつておるわけであります。かような制度の下におきまして裁判官、檢察官の仮に差別を設けるということになりますと。先程石坂証人からも裁判所に優秀なる人物を採るためには、色をつけなければならないと言われましたが、正にその通りで、そういう制度になりますと恐らく試驗の結果と申しますか、優秀な者は全部判事補になりまして、その残りが檢事に任官するということになろうと思うのであります。私はそれでも立派な國の司法が行われるということでありますならば、それでも差支ないと思う。併しながら、私共はそれでは決して國の司法というものは立派に行われないということを断言して憚らないのであります。と申しますのは先程宮本証人からも申しましたが、我が國の刑事裁判制度におきましては不告不理の原則と申しまして、檢事が起訴をしなければ裁判官はこれを裁判するということはできないことになつております。即ち沢山起る犯罪を優秀な檢事がおりまして、本当に檢挙しなければならない事件を檢挙して裁判に廻す。それを優秀な裁判官が適正に裁いて行くということで、初めて司法の運用というものは全きを得るのではないかとかように考えておるのであります。若し裁判官だけ良ければすべて國が治まるということになれば別論でありますが、只今申し上げた一点を御理解下さいましたならば、私のいうことは決して無理な議論ではないのじやないかというふうに思うのであります。ことにアメリカの制度は犯罪の嫌疑があれば、檢事のところではただその下調べをして全部起訴をする。檢事のところで許して帰すという制度はないそうであります。まあ例外はあるようですが、一般的にそうである。ところが日本の檢察制度の刑事訴訟法におきましては、檢事のところであら選りをいたしまして、これは公判に廻して人前に晒すよりも、ここでよく説諭をして帰しておく方が日本が更生をする機会が多いというようなものは、これを裁判所に廻さないでよく説諭をして帰して、或いは司法保護とかいろいろな制度を以てその人の甦生を助けるという制度をとつておるのであります。即ち檢事の仕事は法律的に申しますと、成る程行政事務でありますかも知れませんが、いわゆる一般の行政事務とは余程趣きを異にしておりまして、これを私共は準司法的な仕事という誇りを持つて、時流に阿ねらず、権勢に抑えられずにやることを念願としておるのであります。かようなときに若し差別を設けられますならば、先程申しましたように優秀なものが檢事にはならない。そうすると今申しました搜査とか、或いは起訴、不起訴の決定というようなものに非常な障害を來しまして、正しい檢察というものは行われないのじやないかと思うのであります。そこでもう一点申上げたいことは、檢事は活動的であり、裁判官は靜止的であるということは常識になつております。即ち若い活動的な方は檢事をしておつて、それから相当社会の表裏に通じ老練になつて裁判官に行くというのが、アメリカの制度のようでありますが、若しそうでありますならば、私は決して檢事の素質は低下しないと思います。即ち修習生から檢事になり、弁護士になる。そうして弁護士からも裁判官に拔けて行く、檢事からも裁判官に拔けて行く。こういう制度の下において差別待遇をせられるということは誰でも不服を申さないと思いますが、その制度を採らないで、即ち制度においては英米式にしないで、待遇だけを直ぐ英米式に持つて行くというところに非常に無理があつて、檢事の中に非常な不満を起す者も出て來る所以であろうと、かように考えております。
 それから法曹一元ということについて、先程石坂証人からこれは宮本証人の言うところとは異なるんだ、裁判所を中心に檢事と弁護士と協力して行く制度であるというふうに言われましたが、正にそういうこともあろうと思いますが、私共が理解しておる法曹一元というものは、すべて人間の仕事というものは、自分の立場だけ考えておつたのでは決して公正に行われない。即ち日本のこれまでの裁判官、檢事、弁護士というのは大体において終身その職に止つて、相手方の地位に立つ機会がなかつた。即ち檢事であるものが、裁判官になつて立場を変えてものを見れば、私は余程その色合が変つて來る、又裁判官が檢事になつて搜査をして見ると余程又色合が変つて來る、又在野におられる方が在朝の法曹になつて來られると、又いろいろ立場が変つた見方をされる、これが渾然一体をなして、初めて國民が要望するような常識のある、勘所を突いた裁判なり、檢察というものが行われるという点になろうかと思うのであります。そういう法曹一元を考えて見ますと、今日差別待遇をされるということになりますと、判事から檢事になつて來る人というのは、恐らく全然予想もされませんし、又今日のような社会情勢の下においては、弁護士から非常に低い俸給の檢事に轉じて來る人も恐らくないと思うのです。折角最近在野からも相当の人が入つて來られまして、多少司法の民主化ということが、その緒に附きかかりました際に、今度のような若し非常な差別を設けられるということになりますと、司法の民主化にも非常な障害を來すということになると思うのであります。
 次に先程裁判官の報酬は、憲法に規定されておる、檢事の報酬は憲法には規定されてないと、これはその通りであります。ただ私どもが了解しておるところでは、この法憲の裁判官の報酬は、例えば憲法八十條に「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、」云々とありまして、その末項に「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」即ち憲法が規定しておりますのは、減額をしちやいけないという点に重点があるものと考えられるのです。即ち実際の報酬額を決めるのは、やはり檢察官と均しく法律によつて、本日ここに上程されましたように法律をもつて決められるという点にあろうかと思います。
 それから一般行政官と同じではないかというような御議論もよく出ると思いますが、これまでの國民の常識から考えましても、又檢事の仕事の特殊性、それから檢事の氣持から申しましても決して私どもは一般の行政官と同じようなものではないという、長年の傳統に培われて今日にいたつておるのでありまして、これは又決して私は、正しくない傳統ではない、ますますこの傳統は築き上げて行くべきものであろうと思います。即ち司法官的な、一つの準司法的な一つの氣持を以て時の勢いに左右されずに、正しい氣持を以て仕事に向い、又正しい生活をするということが必要であろうと思います。私どものことを申上げて甚だ失礼でありますが、私の部下について起りました一つの事実を申上げて、檢事がどういう氣持で仕事をしておるかという御参考に供したいと思います。最近或る若い將來を嘱目されておる檢事が、私に辞任をしたいということを申出て來たのです。そこで私はどういうわけだということを聞きますと、実は自分は経済檢事をしておる、そのために自分は勿論、自分の兄弟間でも違反を犯すというような者が出ては、自分の職責を全うすることができないので、実は自分の兄貴が商賣をしておつたのを止めさした、そうして自分は家族を東京に置いておつては、とても闇買いしなければ生活がしにくいので、独身で或る家に泊つて、自炊をして役所に通つておつたのだそうです。あとで聞なますとそのために去年の夏頃は非常に痩せて、田舎から通つている同僚が氣の毒がつて握り飯を持つて來てやつたというような例もあつたようですが、そういう非常に思い詰めた氣持でやつてきた。ところが今日もう到底これ以上続かぬということになつて、自分は、少くとも檢事をしている間は正しくやつたということを記念にして辞めたい、こういうことを申出てきたのです。そこで私は、それまで思い詰めなくていいんじやないかといつていろいろ説いてどうにか今のところ思い止まつておりますが、あとで、次席檢事は、自分の本心を理解しないと言つて、むしろ不満の意を表したというくらい、非常に眞劔な氣持でおるのです。これは一つの例であります。即ち今日までの檢事というものはそういうような氣持で職務に対しておるということを御了解いただきまして、どうか將來制度が全然変りました場合は、当然差別待遇を設けられるについて不満はないのでありますが、今日の情勢においては、今日の情勢に應じた措置をとつて頂きますように、切にお願いする次第であります。
#65
○委員長(伊藤修君) 日本弁護士連合会副会長松井久市君。
#66
○證人(松井久市君) 御紹介に預かりました私は日本弁護士連合会側の証人といたしまして、本日各位の前で証言をさしていただきます光栄を感謝いたします。この問題は先程來裁判官側、及び檢察廳側からのおのおの待遇に関する法律的、又事実上の理由付けがございましたので、その点を一々私共連合会側としては申上げないことにいたしまして、ただ双方の御主張に対しまして、私共の考えておりますことを附加え、又は多少の異なつた意見を申上げた見たいと存じます。
 御承知の通りこの問題を御判断頂きますには、今度の憲法が一体どういうことで生れて來ているか、そうしてその重点はどこに置かれておるかということを、具さに御檢討願いますれば、おのずから私は分つて來るのではないかと思う。今度の憲法で、御承知の通り最も力を入れましたのは立法府であります。それに次ぎますのは司法であります。この特別な権威を與えました、この制度を頭におかないで、この問題を論ずることは、私は枝葉末節になつておると思うのであります。立法と司法とは、從來の國家機構からは飛び離れた大きな機構になつております。かような見地からいたしますと、裁判官の待遇というものがもうおのずから出て來るのじやないか。相当の待遇をしなけりやならない。殊に憲法は相当の待遇、殊に相当の待遇といつておるところに私は重要な意味があると思う。御承知の通り專制國では、檢事檢察官の役目を持つ者は、名前はいろいろありましよう、ドイツあたりシュターツアンワルトというようなこともいつておりますし、日本では檢事といつておりをすが、とにかく專制のときには檢事の待遇も、権力も、それはとても強いのでありますが、恐らく民主國におきましては、やはり裁判官が最も優位に待遇されなければ眞の民主化は得られないと考えておるのであります。こういうような我々連合会の在野側の考えからいたしますと、法律上の根拠は、先程來申上げております通り、やはり憲法の八十條によらなければならない。又七十九條にも一つの意味がございます。從いまして新しい制度を打ち立てようというので、すでにこの憲法施行後、臨時措置令で以て何がしかの差等を附けております。これをやはり今度はもう一段と恒久的な法律によつて、暫定的ではありますが、とにかく今の措置法のように、一年ぽつきりで延期々々ではなくつて、もつと裁判官の生活その他の考慮し、又職務の内容等を考慮して見て、現在のインフレ下ではありますが、それに相應するまず待遇案というものが法律化されておると思うのでありますが、これを実現させるや否やは、マッカーサー元帥が、新聞紙上で御承知の通り、認めております通り、裁判官が特別な、快適な生活をして行かなければならん。そうしてその職務を、どの権力からも犯されないで、安心して生活ができるという立場を置くには、やはり相当の待遇をして、生活上の一つの安定感を與えなくちやいかん。いわゆる檢察官、一般官吏と裁判官を特に挙げて、この待遇をいかにするかは國内問題であつて、少くとも國会がお決めになることだ。而もこの國会は必ずやこの趣旨はよく御理解していられることであろうというような意味が、終りに述べられております。これが私はもうこの問題の中心になつて、解決点はここだけでよろしいんじやないか。こういうふうに我々は考えております。從いまして沿革とかその他の法的根拠を申上げずとも、大体裁判官はやはり今日の憲法の建前上、立法と司法と、この從來の國家機構からは、特段な権威を與えられたのでありますから、このいわゆる司法権の運用に当つても、責任者はやはり最高裁判所長官を始め、下級裁判所に至るまでの裁判官でありますから、この精神に則つて、國家は相当な待遇を與うべきが至当である。かように考えておりますので、先程趣意書も出しましたし、決議もいたしておるのであります。然らば檢察官は如何にすればということになるんでありますが、これも檢察廳側で今までお述べになつた通りでありまして、私なぞも檢察官もやはり行政官よりずつとレヴエルを上げた待遇をして頂かなければならん。その職務の内容、その國家治安の一端を握つていられる、重要な役割を果していられる。こういう関係から見ますと、廣い意味では行政官ということになりますが、やはり特殊な職務内容を有しておるのでありますから、檢察官はやはり一般官吏よりずつと上位へ待遇せらるべきである。かように決議もいたしておりますし、又趣意書でも繰返しておるのであります。でありますから、在野側の弁護士團といたしましての本問題に対する裁判官と檢察官との待遇を如何にするかということになりますれば、ここにどうしても天秤にかけざるを得ないのであります。この天秤にかけた結果は、先程來私の申します通り、日本の憲法、政治機構から來るこの三権分立の形から來る重味でありますから、やはり一方が低くして一方が上らなくちやならない。多少は上らなくちやならない。御承知の通り三権分立といいますが、今度の憲法は、この立法府の目醒しいお働き、これに対しまして、又行政府がございまして、内閣が行政を担当いたしております。そうして又それに司法が加わりまして、非常に調節を図つておるのであります。併し繰り返して申します通り、何といつても日本の將來、――現在から將來に掛けましては、やはり民主化をいたさなきやならんのであります。だからこの意味でやはり司法というものに権威がございますれば、そう國家が右傾化するとか、或いはフアツシヨ化するというような心配はないと我々は考えておるのであります。
 それから我々がここに將來の制度のために何がしかの差等を付けて頂いてもこれは止むを得ないじやないか。全くスタートを同じにいたしまして、ここ十年二十年と判事さんとなり、檢事さんとなつている方々には、差別待遇だということに観念せられれば誠に不愉快なことと考えられますが、私は憲法というようないわゆる我々日本國が始まつて以來の大変革に遭遇した。その制度の結果として何がしかのここに天秤で秤の差等が付くのは止むを得ないじやないか。若しこの地位を甘んずることができないとなりますれば、恐らく檢事さんや何かばかりではありません。どの官廳の行政官、どの職域のいわゆる勤勞者といたしましても、相当の変動は皆あるのでありまして、ここに実例を申上げますと、同じ学校を出まして行政科をパスしておりますが、最近の例で見ましても内務省に入る人と、大藏省に入る人と、鉄道省に入ろ人、厚生省に任官される人、あの行政科試驗を通つて殆んど同年でいずれも任官いたしますがこれがおのおの待遇が同じであるかというと、決してそうじやない。多少の差違はは職務の内容によつて、又その責任内容によつて違つておるのでありまして、これが人生のいわゆる分れ道であります。一方は順調、よく相当の……大藏省あたりは從來やられておりますし、この問解体とれました内務省は最も成功の早道の人生の登龍門であります。ここに入つた人と農林省とか、商工省に入つたお役人とは、御承知の通り比較にならん。任用が同じだからという理由は絶対にないのでありまして、これは恐らく又甘んずると思います。私はいつぞやの機会にも言いましたが、私は弁護士として、任官するならば、自分の性格といい、自分の仕事から行きまして、むしろ檢事を志願するのだと私は確信しております。在野側として必ずしも百円や月五百円の差があるというので、あの職務の窮屈な……、御承知の通り判事さんのあの生活は実に窮屈なんであります。これは一つ弊害であります。過去に特に見られたことは、社会との交際が縛られておることであります、友人、知己、弁護士その他との交際も日常繁くございません。これはどうかと言いますと、これをやつておれば人情その他の事情で公正な裁判ができない虞れがあるからでありまして、この点から行きましても私は日常生活の窮屈さは相当判事さんの方は檢事さんより持つているのだ、こういう事実もあります。
 それからこれはどうしてもこの際將來の制度として私共は何がしかの差等を付けて頂きたいという考えでありますが、それは極く卑近な例で申しますと、裁判所に中等学校の生徒が二、三年頃からぞろぞろ毎日傍聽に來ておりますが、あれは初めて法廷の構成を見て、檢事さんと判事さんと並んで坐つております。これはこの際の廊下に出て聞いておりますと、一体あの赤い服の檢事さんと、青い方の眞中におる人とどつちが偉いのかというと、氣の利いた青年はあれは眞中におる裁判長の方が偉いのだ。こう子供は言つておるのでありまして、これが從來の我が國では裁判官が偉いのだという、國民常識に伴うた結與その他の待遇がなかつたから、非常な弊害も生じたのであろうと思うのであります。かように考えましてとにかく新らしい法廷の機構からみましても、どなたが御覽になりましても、新らしい機構では檢察官の原告官としての地位は一段下つたところにありまして、私共と並んでおるのであります。この法廷に來る傍聽人の子供達は、判事が偉いか檢事が偉いかというような疑問は生じません。当然に判事の方が、裁判官が偉いのであつて、我々と檢事の方は原被告の関係にあるのだという関係がはつきりして参つておるのであります。このような僅かな形式機構でも、やはり著々とやつて頂きたいように、我々は木村法相の時から進言しておるのでありますが、これが問題になるのは……、私の知つている宇都宮の例は、一旦裁判所長が下げることにしましようというので、席を下に持つて行つた。ところが檢事局の方でそんなべらぼうなことはない。おれの方は上に行くのだというので、到頭破れて上に來ておるのでありますが、これは勿論待遇が対等だからこういうことになるのだという論拠にはなりますまいが、とにかく裁判官は何程か優位に待遇して頂くことが、今度の日本の憲法を土台としての將來の政治機構といいますか、國家の統治権の運用機構というものが確立される。勿論將來のことではありますが、その第一歩としてやはり今日の法令から何がしかの実現の一歩を辿つて行きたい。殊に現在すべて差があるのに拘わらず、この際の給與令に同じような数字になつたように聞いておるのでありますが、その理由というものは、結局現在の最高裁判所の人事も、予算も、司法の権威し認められた結果與えられたのであります。司法大臣、法務総裁の支配下から独立しております。眞に國会と同じように司法というものが最高裁判所長官として独立はされたのでありますが、併し予算につきましても、内閣でこれが審議されます前に、やはり最高裁判所は法務廳の、法制局の方へその予算案を廻わさなければならない。そうしますと、結局法務廳の方は、裁判所はこういう立場で、こういうような俸給予算をして來ておる。それじや我々の方もというようなことになるのは、これは人情の然からしめる所でありまして、現在の鈴木総裁の相当苦しい微妙な立場にあることも我我には分るのでありますが、併しそういうことは私的なことでありまして、とにかく自分の方の所管で以てその法律案を一々調べる場合でも、やはり進んで私などはやはり檢察官側の方で、先程もその点のようなことをちよつとお触れになつた証人の方がありますが、進んで何活しか、裁判官に準じての待遇でよろしいのだというふうにこの問題には進んで讓歩を願いますというか、御寛大なお考えが望ましいと考えておるのであります。今度のこともああこうと紛糾的になりますことは、全く國家のために遺憾なことになるのでありまして、我々在野側はその点を憂えておるのであります。でありますから、この裁判官の待遇につきましては、とにかく名分土何にがしかの差等はどうしても付けて頂きませんと、將來の裁判官のいわゆる司法の権威を示すという点においても、不備がありはしないか。かように考えておる次第であります。で、檢察廳側の方からのいろいろな御意見はございましたが、併し今り通り任用が同じであつても、又或いは月給が安いから來る人が少いということは一應は言えますが、決してそうでなく、現に我々弁護士会の中でも、むしろ半事さんよりかは職務の内容その他で檢事さんのお職務の方が、我々弁護士の日常の職務とも相似寄つたところがありまして、その方に希望される人が相当あるのであります。でありますから、その点は私はそう心配ないのではないか。殊に現在のように裁判官は三百何人も欠員でありまして、今現在我々が裁判を受けております民事は、一遍調べますと、次は三ケ月先になつております。これでは國民がとてもやり切れないのでありまして、大体一年に二度ぐらいしか公判が開かれない。それじや一個の事件がもう三年も四年もかかるというようなことでは、こういうことでは國民の権利義務関係が早く安現されませんから、結局直接行動に出る。家屋受渡しのごときも面倒くさいということで、いわゆる單刀直入に家宅侵入もやれば、器物を毀棄するということもありますので、この方から言いましても早く待遇を上げて頂けば、恐らく在野側からでも、檢事さんの側でも、裁判官の側でも、今度の給與法が通りますれば相当私は希望がある。実は連合会所いたしましても、若しこの案を國会の皆樣で今申上げます通りの何がしかの差を以て通過すれば、必ずこれに伴ウて直ちに人員を、在野法曹一元のために人を選びたい。かようにすでに我々理事者は考えておる次第であります。大体私達の連合会としても、裁判官を何がしか優位に、勿論檢察官にいたしましても、待遇はいたさなければならんのでありますが、何がしかはやはり制度上付けて頂きたい。それから連合会といたしまして檢察廳の方とお話が始終ありましたが、檢察官はやはり裁判官に準ずべき待遇であるが至当だと、こういう決議をいたしましたことが世間の人の誤解を招いておるようであります。これは全く「次ぐ」という意味に解したのでありまして、法律の準用という意味で解したのではありません。そちらからこつちにそつくり持つて來るというのではなくて、ともかくも重要な役割、職務の内容から言いましても、重要な役割を演じられるのでありますから、これはやはり「裁判官に次ぐ」と、その「次ぐ」は一ヶ月に千円差を附けるか、五百円差を附けるか、三百円の差を附けるかは國会の各位でお決め願うことにして、在野側としましてはとにかく何がしかの差があればいいのだと、かように考えておる次第であります。
#67
○委員長(伊藤修君) 以上で各証人の方の証言は終りました、これより各証人に対する質疑を許可いたします。
#68
○大野幸一君 最高裁判官の若松証人にお尋ねいたします。十五人の最高裁判所の判事のうちで檢事の職にあつた人から選ばれた方が何人でございましようか。
#69
○證人(岩崎三郎君) 今正確にはよく分りませんが、齋藤判事が大阪の檢事長から轉じて判事になつておられる。尤もこの齋藤君は前は判事であつて、一時檢事長になつた人で、生粹の檢事ではありませんでした。まあ最高裁判所へ來る時は、前は大阪の檢事長だつと思います。その外に弁護士の方で前に檢事をやつていたお方があるかも知れませんがそれはよく分りません。その外にはないと思います。
#70
○大野幸一君 法務総裁のお話によりますと、最高裁判所の方は長官まで上られる。檢事としては檢事総長までで止まると、こういうようなお話があつたのですが、そういうことは今最高裁判所判事が檢事から任命される例を開ればあながち出世の止りが檢事総長には限らんと、こういうことになりますがどうですか。
#71
○証人(岩崎三郎君) 私共は檢事でも判事でも結局最高裁判所の判事として適当な人であれば、その経歴、法律上の資格は、十五人のうち十人は法律上の資格が要るのでありますが、五名は差支ないようになつております。これは御承知の通りでありますが、その十名の中でも檢事をやつておつた人でも、判事をやつておつた者でもどちらでも適当な者が私はなるべきだと思います。それでこそ法曹一元ができるのではないかと思います。いわゆる檢事総長をやつた人がむしろ最高裁判所の判事になるべきものだと思つております。今度の法案で檢事総長が最高裁判所の判事と同じことになつておるけれども、おかしいと思つております。
#72
○大野幸一君 高等裁判所の石坂判事に伺います。先程の御証言中お述べになりました一体司法フアッシヨというようなことが考えられるのは、今から何年前ぐらいからでありますか。
#73
○證人(石坂修一君) これは先程申上げた通りそこに因果関係があるかどうかということは、これは尚非常に精密な調査と愼重な観察が要るということを申上げました。ただそういうことが並行されておつたということだけは言い得るだろう、かように申上げました。それはやはり大体日本が戰爭に突入する因を撒いたその頃からではないかと、かように思います。私の考えるところによりますと、これは私が多少そういうことに興味を持つて見ておるからでありますが、どうもこういう思想が檢察陣営に……、今はそういう人はおりませんで、残つておる人には、そういう人のおらないことは事実でありますが、曾ては檢事こそ世の中を救う途だ、かようにして考えておつた思想が充滿しておつた時代があるのじやないかと思います。そういう考え方の一番ひどい人などは今は市ヶ谷におられましてかれこれ申上げる必要はありまんが、そういうことも公然と申されますし、何かそこが文部省でもあり、檢察官でもあり、道義の本源だというふうにまでよく言われておつた時代があつた。私は今でもそう信じております。そういうことが海軍でも陸軍でも俺こそ道義の本源だと考えておつた。そういう部分であるものが全体を制圧しようというところに非常な危險さがある。私は今日いろいろな政治論は申上げたくない。私の個人的に観察ですが、一体が一つの系列であるべきものが、その系列から外れて強大な力を持つて、その自己にある系列を利用して自己が強くなろうというところに危險さがあろうと思う。そこがフアッシヨの原因になりはしないか。かように考えるのであります。それが要するに満洲事変等いろいろな一連の事件と同樣になつていつたということがいい得るのじやないか。併し私はこれは極く個人的な観察であるから誤つておるかも知れません。
#74
○大野幸一君 宮本証人にお尋ねしたい。あなたの御証言加、司法民主化と裁判官と檢事と同一の関係があると御証言になりましたが、その意味をもう少し詳しく述べて頂きたい。
#75
○證人(宮本増藏君) 結局待遇が差等を附けられることになりますと、優秀な者は待遇の良い方に行くのが人情の自然で、即ち裁判官の志望者が多くなり、檢事の志望者が少くなるということは人情の自然だと思う。從つて判事から檢事になる人はなくなり、弁護士から檢事になる人はなくなる。先程も馬場証人が申しましたように、檢事と判事、弁護士の人事の交流ということが延いて司法の民主化になる。その人事の交流が妨げられると、結局その結果司法の民主化を妨げるという趣旨で、私は申したつもりであります。
#76
○大野幸一君 そうすると民主化ということがフアッシヨという意味と関係がないのですか。
#77
○證人(宮本増藏君) 私はないつもりです。
#78
○大野幸一君 若し差別待遇をされれば檢事の皆さんは辞職するというような空氣が本当にあるのでしようか。如何でしようか。
#79
○證人(宮本増藏君) 私共に対して激励の電報は來ております。その中に現在の待遇では食えないから辞めなくちやならない。是非待遇改善のたるに努力をして呉れという意味の電報もありす。中にはやはり檢事と判事の待遇を差別されるようなことがあるならば、自分らとしては重大な決意をしなくちやならんという意味の電報をこれは檢事局宛で來ております。これを別に外部に発表してくれという趣旨ではありません。無論私共はそのままそれを上司の閲覧に供しておりますし、その一部について檢事総長と法務廳総裁宛の電報もあります。多分上司からは法務廳総裁に通じておるだろうと思いますが、これは全然地方の個人的な立場からの我々に対する激励の意味であるというように私は解釈しております。それが團体的にそういう辞意を表明して、それによつて國会に対する刺激剤にしようというような趣旨があるとは私共は勿論考えておりません。
 尚ここでちよつと御附言いたしたいのですが、最近或る新聞に浦和の檢事局が殆んど全員辞表を出して、一千数件に及ぶ事件に手を着けずに放擲したというような記事があつたように私は聞きましたが、これは辞職したかどうか私共の耳には入つておりません。勿論仮に辞表を提出したといたしましても、上司ずその辞表を受理しない限り、自分の担当している事件を放棄するというようなことは、現在の檢察廳の機構においては絶対にないというように私は思料しますので、あの記事を見て驚かれた方があろうかとも思いますが、是非そういうことは現在我々の同僚の中にはあり得ない。その檢事正が然るべく配慮をし、又そういう間違のないようにしているだろうということを確信しております。
#80
○大野幸一君 例えばもう一遍、あなたの感想では今度は相当法案によりましても、檢事の方も裁判官の方も高くされるのですが、仮りにこの法案よりも少しでも裁判官を余計……、檢事さんを減らすのじやなくて、まあ先程証人の方から申されたように、裁判官の地位を尊敬する意味において、少しでも増額したということに対しては、檢事の方は少なくするのぢやなくて、特に裁判官を國民全体として崇めようとして増額しても尚不満でしようか、如何ですか。
#81
○證人(宮本増藏君) それは私の個人としての意見で、事実の証言ではないわけですね。
#82
○大野幸一君 そうです。
#83
○證人(宮本増藏君) 私は不満であります。そういう趣旨で、私は縷々申上げたつもりであります。これは先程申上げたように一般の檢察官についてですね。
#84
○鬼丸義齊君 一、二点伺いたいと思います。あなたの御見解によりましても、新憲法下において司法官の地位というものが、從來とは飛躍的に高く認められるという趣旨にあられることについては、同じ御見解をお用つになつておりますか。
#85
○證人(宮本増藏君) さようであります。
#86
○鬼丸義齊君 そこで先程もどなたからかの証言がございましたが、そうした意味において今回一般官吏よりも特に裁判官の待遇を良くして、そうして司法権の存在をいよいよ多くしようという趣旨に朝野共に努力いたしておるのであります。そこで若しこの檢察官が成る程一般の官吏と似て非なるものであるということについては、いろいろ御説明活あつて分りましたけれども、若しも檢察官が司法官にあらずして、一般官吏と、即ち行政官だと仮にいたしますならば、ひとり行政官中檢事だけを特に一般官吏よりも飛躍的に待遇を良くしたということにいたしまするならば、果してこの一般官吏の人がそれに承服されるだけの有力な理由が特にあるかどうか。その点について特に重ねてもう一度一般官吏と檢察官との待遇を良くする所以のものをもう少し打ち碎いてこの際御証言を願いたいと思います。
#87
○證人(宮本増藏君) 実は私もその点は重要視して申上げたつもりでありますが、至らなかつたかも知れません。要するに、行政官と又行政官の一部である檢察官の待遇を異にする、引上げるという根拠は、檢察官が先程申したように司法官ではありませんが、司法官に準ずべき、私は準ずべきという言葉を……、先程弁護士さんの代表のおつしやられたように進むべきものだとは解しておりません。要するに、異つたものを同一の取扱いをする。大体「準」という言葉を私から御説明する必要もないくらいに、ものを同じくすること、異つたものを同じく取扱うということの語源のようでありますが、これは法律的に申しましても、「適用」と「準用」、或いは「準正」というような規定もありますように、違つたものを同時の取扱いをするということに私は解釈をしておりますので、その司法官と司法官にあらざる檢察官はその職務の内容、責任によつて異つておりますが、非常に類似しておる。從つて取扱は同一にすべき立場において準司法官であるということを申したのでありまして、要するに行政官と檢察官の待遇を異にすべき根拠は、この檢察官の特殊な職務、それから先程も申しましたようにその責任の重大性、個別的責任、上司の名において職務を執る……、自己の名において職務を執らざるべからざる責任がある。私はこの責任の独立性とあいもの、それからその職務の内容が準司法官的なものである。この二つの理由から当然行政官に対して待遇を上ぐべきものであるというふうに確信いたします。
#88
○鬼丸義齊君 先程の証言中に、檢察官は不起訴という重要なる、裁判とやや同等なるようなふうな処分すらやるような職務を持つとかいうようなことが証言中にございました。私共も実は一般國民の立場から見ました場合に、若しもこの際裁判官の待遇を著しく飛躍的に良くし、ここで行政官である檢察官として、又それに同じく準ぜしむることになりました時分に、この実情を知つた一般官吏が果してそれを承服するかどうか、若しも今の官吏の待遇を非常に良くするから、我々も同等にこれに準じて上げようという檢察官の運動がありまするごとく、若し一般官吏が、檢事を上げるならば我々も上げよ、こういうようなことになつた時分に、一体國家の財政というものは果してこれに應ずることができるだろうか。そこで私共非常に憂えますることは、若しも今檢察官の運動が熾烈なために、一般官吏に同樣なようなことが波及いたしましたならば、折角ここに新憲法下において、司法権の大きなる飛躍的存在を生まんとしておりまする時に、併せて、今度は引戻すようなことになりはしないかということを非常に憂うるのであります。只今私が特に一般行政官と檢察官とを区別する所以のものを、具体的に御説明を重ねて伺いましたことは、それに備うる意味において私が伺つたわけであります。只今の御説明で以て、從來の官制による司法官に対して、大体檢事はこれに殆んど並行して來て、同等なる氣持を以て、司法官の一人というような氣持で以て來ておつたんだからというような理由では、どうしても一般官吏に対する私共の説明がどうも薄弱に思いますので、できるならばもう少し一般官吏よりも非常な激職、或いは檢事というものをどうしても大きな格式に置かなければならないという、何かの理由があるならばとにかくとして、只今の御説明の沿革だけの理由ではどうかと思うのですが、その点について重ねて……。
#89
○證人(宮本増藏君) 私は沿革だけで申したつもりではありません。司法官的というのは、これは必ずしも沿革だけではありません。現在の法規からもさように申したのであります。殊に行政官と違う責任性、これが一番私は大事じやないか。とにかく行政官であれば上司の名において仕事をする。ところが我々は先程申しましたように、区檢察廳の檢事と雖も自分の名でやるのですから、自分で責任を負わなければならん。例えば上司の指揮があるときでも、交通不便な関係においては、全然指揮を待たないでも急速に事件の処理をしなければならんというふうな、責任の重大性が行政官と全く違つておる。そこに私は差異を附ける十分な根拠があるというふうに信じております。
#90
○鬼丸義齊君 その点においては一般官吏の中にも、その責任において職務を処理しておる者が決してその例の乏しくない。又一面に檢事一体の原則によつて責任などの檢事においても同等である。これは議論が出て來やせんかと思う。ですから責任とか、司法官の一員であるというだけでなく、もう少し大きな、有力な一般官吏と異なつて格段なる待遇をすべき國家的立場にあるという理由があるならば承りたいと思います。
#91
○証人(宮本増藏君) 大体今まで説明した点で足らなかつたら、別な証人から又申上げます。
#92
○前之園喜一郎君 連合会の副会長さんに伺います。副会長の御意見よく承つたのでありますが、御意見は連合会の総会、或いは役員会の意見を相當織込んだ御意見であるのか、或いは副会長個人の御意見であるのかということを先ず承りたい。
#93
○証人(松井久市君) 連合会で理事会といたしまして、数会檢討した趣意書、決檢であります。それの根拠になつておることを掻い摘んで申上げたので、自分の考もこの連合会の決議、趣意書ができ上る過程におきまして、同じような意見を織込んでおりますから、それが出たのでありまして、主として連合会の決議した趣旨を申上げたのであります。
#94
○前之園喜一郎君 連合会の綜合的な御意見と承つてよろしいのですね。
#95
○証人(松井久市君) そうであります。これはまだ確報を得ておりませんが、檢事さんの方の猛烈な御運動のために、確か松山市の弁護士会、これは二十人くらいの会だと思つておりますが、連合会の決議と違つた、同等に待遇せられるという決議をせられたという報道を得ましたので、実は意外に思つておりますが、その外はこの連合会の決議した趣意書に反するような意向でなくして、むしろその点の激励の報道が関西方面からも傳わつて來ておるわけであります。
#96
○前之園喜一郎君 理事会の決議が結局結論になるわけだろうと思いますが、結論は結局理事会全会一致の意見であるのか、或いはそれに対する多少の反対もあつたわけですか。
#97
○証人(松井久市君) ございません。
#98
○前之園喜一郎君 全会一致ですね。それからもう一つ連合会から、地方の弁護士会に対してこの問題について意見を求められたことはないわけですね、積極的に。
#99
○証人(松井久市君) 西日本弁護士会の方、大阪を中心としての方への代表を出しまして、この決議の趣旨と、決議をもたらして、向うの方の意見を徴しました、そういう事実がありますが、それに對しましてもむしろ連合会の決議を全面的に支持するということで、たしか大阪朝日新聞にも出たと思います。
#100
○前之園喜一郎君 そうすると、今のところ連合会の意思に反対するのは松山の弁護士会だけですね。
#101
○証人(松井久市君) そうです。ちよつし附加えさして頂きたいのですが、御承知の通り全國に六千百有余の弁護士がございます。そうして各地に、松山地方裁判所所属の松山弁護士会、或いは廣島弁護士会、大阪弁護士会等がございますが、この帝都におきまする東京弁護士会は千六百の会員を擁しておりまして、全國の四分の一を擁しております。第一が六百以上おりまして、第二と合せまして東京で大体少くとも半数の弁護士がおるのでありまして、主として連合会の決議、その他を運営いたしますのは東京弁護士の理事者と、特別委員とで構成されておるのでありまして、少数の者によつて本決議ができたというわけではなく、千五百を擁する東京弁護士会は本問題に対して、率先して実行委員まで挙げまして、全会員の意思としまして、裁判官を優位にということで、連合会の意思をむしろリードして來た事実関係になつておりますことを申上げておきます。
#102
○前之園喜一郎君 宮本証人が最初のお言葉の中に、自分としてき必ずしも判事と檢事が同等でなければいかんという意味ではないというようなことに私は承つたように考えますが、私の聞き違いですか。
#103
○証人(宮本増藏君) 絶対平等ということを主張するというのではないのであります。
#104
○前之園喜一郎君 全般的にそういうことをお考えになつてないわけですね。例えば高等裁判所の裁判官と高等檢察廳の檢察官との比較において、或いは又地方裁判所長と檢事正との比較においても、やはり絶対に平等でなければいかんという御意見ではないのですね
#105
○証人(宮本増藏君) それはちよつと違うと思います。私は制度と現在の実情と勘案して考うべきもので、そういうことを無視して絶対平等は主張できない。だから具体的に申しますれば、最高裁判所判事というものは特別な任用制度でありまして、特別な方法で選任される。ここで私どもは絶対平等を主張する根拠はないと思います。それ以外の判事は先程も申しましたように、資格任用等において大体同一であります。同一な條件の下においては同一な待遇を受けるのが合理的である。その関係におきましては私は絶対平等でなければならん。概ね平等でなくちやならんということであります。
 それから先程の鬼丸さんの御質問にちよつと補充したいと思いますが、あなたから御質問のありました行政官と檢察官の待遇を区別すべき根本的理由で、私の説明したのが不十分のようでありましたが、主たる原因は私の述べた二点でありますが、尚檢察官というものは裁判官と同樣に資格が相当嚴重に決められております。普通の行政官にないような資格制度があります。それから檢事になつてからも常に適格檢査、今後三年ごとは適査檢査を受けることになつております。それから先程もちよつと申しましたが、檢察官が不起訴処分をした場合に、やはり檢察参參と申しますか、これを監督する機関によりまして、自分の行動を特別な國民審査式は制限を受ける。そういうことも附加えて制度上これは一般行政官と異つたものと見ておる。從つて待遇についても相当開きがあつて然るべきだと思う。今の任用資格に制度があるということは、適格審査を受けることを更に先程の理由の中に附加えた趣旨であります。
#106
○松村眞一郎君 檢察官の方の側にちよつとお尋ねいたします。準司法官という言葉をお使いになつておりますが、いろいろな事柄をいろいろお説明になつておるのです。そういうような事柄があるから司法官に準ずるのであるという御見解なんですね。別にそれでは準じていると思わないと言つてもそれきりですね。準ずる準じないということは、これは見解の問題じやないかと私は考えるのです。こういうことがある、こういうことがあるから司法官に準ずるという御意見である。こういうことに解釈してよいだろうと思いますが、それは今の法律にそういう字が書してあるわけじやありませんが、如何ですか。
#107
○証人(宮本増藏君) ありませんが、我々は確信する意見であります。私ばかりでなく、私の同僚の大半の意見です。それから先程ちよつと申しましたが、その根拠としましては、法制審議会、法制調査会等において檢事は概ね判事の待遇に準ずるべきであるというような決議をしておりますから、これ等も待遇に準ずべき取扱をするということが、やはり仕事の内容も大体準ずべきであるという裏付になるというふうに考えます。
#108
○松村眞一郎君 御見解であるということに私は了解します。次に弁護士側の御意見を承るのでありますが、御説明のうちには、新しい憲法は立法権というものを最高に見ておる。次に司法権を見ておるという意見に御説明になつているように思います。勿論憲法には最高の機関とありますから、そこで裁判官は、外の機関に從事する者よりも、最高の俸給を受けなければならんということまで御議論なさらなかつたと思いますが、それは如何ですか。その意味は三権分立ということになりますと、内閣というものを國会というものと裁判所というものがあるわけですね。それは三権分立のゆえんはどれを高くしなければならんという意味じやありません。分立ということを要求しているのである。高くせよ低くせよということを要求しているのではない。分立したその機関は低くても構わない。理論上そういう意味に考えますが、あなたの言われました國会が最高であるという意味は、報酬というようなものを考える場合にも、國会については最高に考えなければならんというお考えであるかどうか。その意味は相当の報酬ということを御引用になりました。それは議員にも相当の歳費を給するということは憲法に書いてある。やはり相当ということは、最高ということを意味するものでもないと私は思います。結局職務に相当な程度と私は思います。職務に不相当なる報酬を與えてはならない。職務の重要さに相当するところのものを與えなければならないというだけの意味であつて、それが最高ということを意味しているとは私は考えませんが、どういうようにお考えになつておりますか。
#109
○証人(松井久市君) 只今のお説の通り大体なるのでありまして、最高とは申上げなかつたのでありまして、とにかく從來の裁判官、檢察官の待遇等は、今度の制度の改革からして、殊に裁判官を中心として相当の待遇をする必要があるということでありまして、実はその相当が、実際上具体的に、今日の通貨で言う月幾らの額が相当かというところまでは、在野弁護士会としては考慮檢討をしたのではないのでありまして、要するにお説の通り、一般行政官並びに今度出ております給與法等を土台として見た上で、なんとかそこに裁判官にはこの際將來の制度確立の一歩として、他の行政官及び檢察官より何がしかの差等をつけて頂きたい。大体この意味を引つくるめて申しますと、まあ裁判官はとにかく現在の制度であるところの、國家にある行政官、廣い意味の行政官と司法官、その中で行政官の中で特殊なものとして、檢察官が特にということになるのでありますが、大体大別された二つの中では、やはり裁判官を優遇して頂きたい。結論はこういうことになるのであります。
#110
○松村眞一郎君 裁判所側の方にお尋ねしたいのであります。今日の証言は裁判官と檢察官との関係に限られております。併しながらこれは憲法から出ておる問題でありますから、現行法では「最高裁判所長官の受ける報酬の額は、内閣総理大臣の受ける俸給の額と同額とし、」と書いてあります。これは結局憲法上の三権分立の思想から内閣というものにやはり相当の重点を置いてあると考えます。最高裁判所のお考は、現行法は先ず総理大臣の方を考えて、そうして最高裁判所のことを考えておるわけでありますが、最高裁判所の長官の俸給は総理大臣よりも高かるべきものであるということまでお考えになつておるかどうかこの点を伺いたい。
#111
○証人(岩崎三郎君) これはいろいろ裁判官会議で別に決議したわけでありませんが、裁判官会議の席上でこの問題が取上げられた時にいろいろ話をいたしました。理想としてはやはりアメリカやイギリスのように、最高裁判所の長官は、行政部の部官よりは高い俸給を與えられるのが、相当じやないかということの意見が多うかつたのであります。併し御承知の通り敗戰後の財政経済の困難な時代に、やはり國として相当な制約を受けることは当然だと思いまして、今現在すぐにそうした制度を要求するという考が、適当でないだろうというように多く考えておるようであります。又私自身もそういうふうに考えておる一人であります。
#112
○松村眞一郎君 イギリスの例を御覽になりますればすぐ分りますが、貴族院の議長、即ち大法官、これは貴族院議長であります。或る意味においてこれは裁判官でありますけれども、貴族院議長であります。それは一万パウンドの報酬であります。総理大臣も一万パウンドであります。総理大臣よりもこの表では高くはなつておりません。アメリカの例をおつしやいますが、アメリカの方は大統領というものは行政官の方の最高のものでありますが、それとちよつと比較はできないと思います。日本の官吏ということは私は重点でない、行政官なり司法官なり、立法府なりの最高のものを私は眺めておる。最高のものについて、裁判官が他の三権分立の機関より高かるべしとお考えになつておるかどうかということが、私の質問の要点であります。
#113
○証人(岩崎三郎君) 他の行政官と比較して、高くあるべきだということは、これは一般の行政官と裁判官の違いとして、これは私は高くてよろしいじやないかというように考えております。これはやはり独立の関係から、何ものにも圧迫されないで公正な裁判をされるという点の必要から、相当な報酬が與えられておる。その報酬が與えられるということと、與えられた報酬が減らされないという点からでも、保障もできるのでありますが、尚現在の制度のようになりまして、裁判官の任期が前の憲法のときのように、終身であるということでなくなる限りは、やはり一定の期間内で任期がなくなるわけなんでありまして、任期がなくなつた後で、もはや裁判官になれない。勿論重任を妨げないようにはなつておりますが、そういう期間の制限が附きますと、その間辛うじて食つて行くというだけでは、やはり安心して裁判の事務が執れないのじやないかと、こう思つておるのであります。尤も行政官もそういうことをいえば同じなので、馘首になればそうだということをお考えになりますが、地位の保障をする必要が絶対にある限りは、やはり期間が附きますと、その間安心をして裁判をされるためには、辞めた後でも直ぐに食うに困るようになるというような地位に、置いて置くべきでないと思いますので、その間は相当な余裕のある生活ができる。そうして辞めても直ぐに路頭に迷うようなことがないことが必要なのじやないかという点から、外の行政官よりは多少優遇されて、國家の財政の許す限りは優遇されて然るべきじやないかと思つております。ただ報酬のことで良い裁判をされるというような、地位の保障のことが考えられることは、何と申しますか、卑しいような、保障的な生活ができなければ、良い裁判ができないというのは情ないという感じも少しはありますが、実際においてはやはり快適な生活ができ、安心して生活ができるということの一助になると思うのであります。そういう意味でやはり必要なのじやないかと思つております。
#114
○松村眞一郎君 私のお尋ねしたのは、一般行政官でない、総理大臣と最高裁判所の比較をいたしておる。檢事総長はとにかく総理大臣より、最高裁判所の長官よりも、低いところから改正案が出ております。一般の官吏の議論は私はいたさないのであります。上の頂上を眺めて今お尋ねしておる。最高裁判官の長官は総理大臣よりも高かるべきものとお考えになつておるかどうか。その点であります。
#115
○証人(岩崎三郎君) 長官だけの点でも私はやはり高い方がいいのだ。こう思いますが、これは高くなければならんという理論上のあれはないのじやないかと思います。
#116
○小川友三君 馬場檢事さんにお伺いいたします。この委員会は非常に重大な問題に実はぶつつかりまして、本委員として一番心配しておりますのは、弁護士さんの御意見では差を附けるのだ。差を附けられた方は、安い方は非常に困るであろうと私は想像します。そうして差を附けた場合に、優秀な檢事さんが出て來ないというこいを馬場先生はおつしやいましたが、そうした状態に事実上なつてしまいますと、今治安が相当に、予想以上に乱れておりますので、我々國民として非常な困難に逢着せざるを得ないのであります。それにつきまして、実際これで差が附いた場合に、優秀な檢事さんが來なくなつてしまうということに本当になるでしようか。
 それから今日法務総裁に質問したのですが、裁判官と檢察官に官舎を政府は余り與えていないけれども、全部の檢察官と裁判官に官舎を與えて呉れということを法務総裁と話したのですけれども、できる範囲内で努めて研究するという答弁があつたのでであります。それから今までの任用資格が同じだつたから、余り差別が附けられないという御意見も相当あつたのですが、治安が乱れてしまう。檢察が困る、捜査が困るということが事実あるかどうかということをちよつとお伺いいたします。
#117
○証人(馬場義續君) 第一点の待遇に差ができた場合に、優秀なる者が檢察官を志望しなくなるのじやないかという点は、前回も申しましたように、これはその虞れが非常に多いと思います。現に最近二回試驗を行いまして、檢事志望と判事志望をそれぞれ提出した後で、最高裁判所からマッカーサー元帥の書翰が発表せられましたために、檢事志望の者が判事志望に変つた例があるということであります。これは或る期間檢事をやり判事をやれば、その仕事は必ずしも判事だけでなく、檢事の仕事に非常な生き甲斐を感ずるということは考えられると思います。だから先程申上げましたように、英米式に初めは弁護士から檢事になつた、それから裁判官になるという制度でありますならば、將來差ができましても、私はこれは理の当然だろうと思いますが、今日判事補という制度がありまして、同じように司法修習生から育つて行きます場合には、私は人情の自然として、どうしても優秀な者は全部裁判官の方に行つてしまうと思うのであります。これも裁判官にいい人が集まることは結構でありますが、前に申しましたように、裁判官の裁判というものは、檢事の起訴がなければ、如何に犯罪があると裁判官が思われても、裁判できないのでありますから、やはり優秀な檢事がおつて、いわゆる呑舟の魚を逸しないで、正しい犯罪の檢挙をするということが、正しい裁判の行われる前提ではないかということを考えております。そういう意味で、私が檢事であるという繩張り根性ではなくて、正しい裁判が行われて行く上において大きな暗影を投ずるのじやないかということを考えます。
 それから官舎のことでございますが、これは特に今日のような交通事情の下において、例えば先般神戸に起きましたような事件が起きました場合に、直ちに檢事を動員するということを考えましても、東京の実情を見ましても、埼玉縣下、千葉縣下、遠くは茨城縣というところから通つておる檢事並びに檢察事務官が相当にあるのであります。例えばざつと概数を申上げますと、私の方の職員のうち、神奈川縣から通つております者が四十三人、千葉縣から通つております者が二十七人、茨城縣から通つております者が八人、群馬縣から通つております者が一人、こういう状況であります。こういう者は到底そういう急場の間に合わない。それから東京都内でも相当遠隔の地から通つておる実情でありますから、この問題も早急に解決されることを非常に熱望しておる次第であります。
#118
○宮城タマヨ君 ちよつと馬場さんにお伺いいたしますが、起訴と不起訴の数が分つておればおつしやつて頂きたい。
#119
○証人(馬場義續君) これは時によつていろいろ消長がありますが、今日でも半分は不起訴で済んでおります。恐らくそれ以上と思いますけれども、こういう席で確実なところを申上げますならば、半分は不起訴で済んで、あとの半分が起訴という程度まで行かんだろうと思いますけれども、少くとも半分はそういうことになつておると思います。
#120
○宮城タマヨ君 それは東京だけでございますか。全國的に……。
#121
○証人(馬場義續君) 全國的に見てそうでございます。
#122
○小川友三君 それから檢事さんには大臣待遇の人は一人、判事さんには十五人ということに対しては、不満はないのですか。
#123
○証人(馬場義續君) これは憲法でそういうことになつておりますから、だから法律制度がきちんと決つておるのであれは、それはそういうのは当然であります。ただ私が先程繰返して申上げますように、任用制度が英米式になつていない部分について、待遇だけを英米式にされるところにどうも矛盾があるように考えております。
#124
○小川友三君 非常にむずかしいので委員会で困つておるのです。
#125
○委員長(伊藤修君) 両案に対する……。
#126
○岡部常君 私は判事、檢事どなたでもよろしいのでございますから両方の方にお伺いいたします。それは裁判官の判事の方から見て、現在出ておりまする改正案に現れただけの差別、差等だけでもこれは認められないのであるか、判事側から見て認められないのであるかどうかという点、それから檢察官側の方に対しまして、やはりこの改正案に現れておりまする差等が忍べない程度のものであるかどうかという点でございます。殊に檢事のお方に対しましては他の行政官、殊に手近なところの法務廳の壁長、課長連と比較して非常に差等がついておるのでありまして、その点につきましては本廳側の政府委員から先程御答弁もあつたのでありまして、あの点は随分むずかしい問題が存在しておると思うのであります。そういう点も御考慮に入れられて御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
#127
○証人(馬場義續君) 檢察側として御答弁申上げます。第二の良の法務廳との関係でございますが、これは私は新憲法下における檢事正の地位というものは余程変つて來たと思うのであります。と申しますのは、警察の制度がああいうふうに地方分権になりまして、この檢察をいい意味で連絡統制して行くということが非常に要請されておるのであります。例えば最近の神戸の事件を一つ考えて見ましても、連絡がうまく行かなかつたために、事態を未然に防止することができなかつたということも聞いておるのであります。そういうふうにこの檢事正の地位というものは非常に大事なことになつて参りますから、從來は法務廳の局長が、檢事正よりも上位にあるというようなことになつていましたのでありますが、私は今後は法務廳の局長から檢事正に出て行くというように変るべきものだと思います。それから又檢事長は認証官ということになつております。從來は檢事長から司法次官に就くというような制度でありましたが、認証官ということを一つ考えて見ましても、又先程のもつと廣域の警察をいい意味において、連絡統制して行くという意味から申しましても、檢事正の職責は非常に重くなつております。そういう点から今後は法務廳の長官とか、檢事長に出て行く。こういうふうに変つて行くべきものではないかと、かように私は考えております。
 それから差別待遇の問題でございますが、先程小川委員からも御指摘がありましたように、とにかく新憲法の要請する理論的な面は、少くとも最高裁判所の長官、それから裁判官というものの地位が、非常に高くなつておるという点で、すでに現われておるのでありますから、その他の裁判官と檢察官は任用制度が同じである現状におきましては、あくまで同一であるのが相当ではないかと、かように考えておるのが私は全國の檢事の僞わらぞる眞情であろうとこう思つております。
#128
○証人(石坂修一君) 裁判官側からも、御要求がありましたので、ちよつとお答え申上げます。先程からいろいろの論議がありまして、この待遇で我慢できるかどうかというお尋ねでございますが、私も、又私共と同じように裁判官の職にあるものは、この待遇において我慢するかどうかということになりますと、皆我慢すると思うのであります。それは何故かといつたならば、やはり私は、西洋にもよく格言があるように、「王のものは王へ、神のものは神へ」と、私は憲法の機関であるものはその憲法にふさわしく、法律によつて待遇されるものは法律にふさわしくと、こう思うのであります。そこで法律というものよりも憲法が上位にある以上は、その憲法によつて待遇するのが、上位にあるのがこれは当然だ。これは私は法律家であるからかく申上げます。それで私はその法律の建前を、どうかして通したいもんだということを、強く念願しておる次第であります。
 それから先程、制度よりも……現に同じような出身で、同じように待遇を受けておる。制度々々といつたつてしようがない。こういうふうなお話でありますが……。
#129
○委員長(伊藤修君) 質問の範囲内で……。
#130
○証人(石坂修一君) しかしそういつておつたんでは制度とか法律の改正というものは、これは永遠に來ないのであります。こういうふうに思いますので、そこはどうも我慢できないというふうに、そういうふうにこの二点で我慢できないという点に帰著すると思うのであります。
#131
○委員長(伊藤修君) それでは証人に対する質疑はこれを以て終ります。本案は明日午前十時から引続き審議することにいたします。次に行政事件訴訟特例法を議題に供しますが、本案につきましては討論は終結したおる次第でありますが、採択だけ残つております。ちよつと速記を中止して下さい。
   〔速記中止〕
#132
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて……。それでは只今議題になつております法案につきまして直ちに採択をいたしたいと思います。先ず松村委員提出に係かるところの修正案について、採択をいたしたいと思います。この修正案に対して御賛成の諸君の御起立を願います。
   〔総員起立〕
#133
○委員長(伊藤修君) 全会一致と認めます。修正案通り可決いたします。
 次に修正案を除く原案に対しまして採決いたします。これに対して御賛成の方の御起立を願います。
   〔総員起立〕
#134
○委員長(伊藤修君) 全会一致と認めます。修正案通り可決いたしました。
 次に修正案を除く原案に関しまして採決いたします。これに対して御賛成の方の御起立を願います。
   〔総員起立〕
#135
○委員長(伊藤修君) 全会一致原案通り可決することに決定いたします。では本会議におけるところの委員長の口頭報告については予め御承認を願つて置きます。では御署名を願いたいと存じます。
   〔多数意見者署名〕
#136
○委員長(伊藤修君) では本日はこれを以て散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。
   午後四時四十一分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鈴木 安孝君
           岡部  常君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           中村 正雄君
          大野木秀次郎君
          池田七郎兵衞君
           鬼丸 義齊君
          前之園喜一郎君
           宇都宮 登君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           星野 芳樹君
           小川 友三君
           西田 天香君
  証人
   最高裁判所判事 岩崎 三郎君
   最高檢察廳檢事 宮本 増藏君
   東京高等裁判所
   判事      石坂 修一君
   東京地方檢察廳
   檢事      馬場 義續君
   弁  護  士 松井 久市君
  國務大臣
   國 務 大 臣 鈴木 義男君
  政府委員
   法務廳事務官
   (法務廳調査意
   見第一局長)  岡咲 恕一君
   訟 務 長 官 奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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