くにさくロゴ
1947/05/19 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第25号
姉妹サイト
 
1947/05/19 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第25号

#1
第002回国会 司法委員会 第25号
昭和二十三年五月十九日(水曜日)
   午後一時二十五分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○民事訴訟法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより司法委員會を開きます。
 本日は民事訴訟法の一部を改正する法律案について審議を開始いたします。先ず政府委員の本法案に對する各條の御説明をお伺いいたします。
#3
○政府委員(奧野健一君) 大體この前の提案理由を御説明いたします時に、大體のことを御説明申上げましたのでありますが、一應簡單に各條を逐つて御説明を申上げたいと思います。
 大體改正いたしました點について總論的に申上げますと、今囘の改正は御承知のように、すでに憲法及び裁判所法の制定によりまして必要な應急的な改正を、この前に審議を願いました應急措置法によつていたしておるのでありますが、この應急措置法は本年の七月十五日限り效力を失うことになつておりますので、一應この應急措置法にあります改正の個所を民事訴訟法の中に取入れた點が、整理と申しますか、形式的な改正の點であります。即ち憲法及び裁判所法、或いは民法等の改正によりまして、條文の整理をいたしました點、例えば戸主、家族、或いは又軍人軍屬といつたような條文の字句の整理をいたしました點が第一點であります。
 次に、裁判所法の改正によりまして地方裁判所は一人の判事でやる場合と三人の会議制でやる場合とを認めたのであります。從來裁判所構成法によりましては、地方裁判所は必ず三人で構成しておつたのを、一人の裁判官でやる場合、いわゆる單獨制でやることを認めた結果、それに應じて地方裁判所の手續を改める必要が出て參つたのであります。それに關する改正をいたしております。
 尚御承知のように、裁判所法では簡易裁判所というのを認めております。從來の區裁判所というのを廢めまして、簡易裁判所、それから地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所ということになつておりますが、新らしく簡易裁判所を裁判所構成法で認めまして、その手續は地方裁判所の手續とは違つた簡易迅速な手續で以てやるということにいたしておりますので、簡易裁判所の審理及び裁判についての特別な規定を設けたのが第三點であります。
 尚裁判所構成法當時におきましては、上告はすべて大審院で取扱つておりましたが、今度は裁判所法によりまして、簡易裁判所の上告事件は高等裁判所で取扱うということになり、地方裁判所の上告事件は最高裁判所というふうなことになつて參りましたので、上告制度について裁判所法の改正に伴いまして變つて參りました點、この點は大體應急措置法に規定をいたしておるのでありますが、その點を裁判所法の中に今囘取入れたわけであります。
 それから以下やや實質的な點につきましては、證人、鑑定人の證據調について、當事者の直接訊問權を認めました點、これが即ちクロツス・エキザミネーシヨンでありますが、この制度を取入れた點がその一つであります。
 それから又民事訴訟というものが當事者主義を徹底せしめることが適當であるという見解から、いわゆる從來裁判所の職權による證據調を認めておつたのを廢めた點であります。即ち證據調は必ず當事者の申出によつてやる。裁判所の方で職權で取調をやるという制度を廢めたのであります。
 それから次に、直接審理主義というものをできるだけ徹底せしめるということで、從來判所が更送いたしました場合は、前の判事でやつた證人の調べというようなものは、ただ調書の上に現われておるだけで、そのままそれを後の判事が自分で直接調べないで、その調書を基礎にして裁判をいたしておりましたが、それではやはり直接審理主義の徹底を期せないうらみがあるというので、判事が更迭した場合に、前に調べた證人をもう一遍調べて貰いたいという要求があれば、必ず後の判事は自分で直接調べなければならないということにいたした點、それからこれと同じことは、證據保全の場合に調べた證人でも後でもう一遍本案の審理の際調べて貰いたいという要求があれば、必ず調べなければならないということにいたしたのであります。それから尚裁判所の權威の保持というために、證人が不出頭の場合に、これに對していわゆる科料及び拘留の制裁を科することができることといたした點であります。
 それから又訴訟記録の閲覽の公開制を擴充いたした點が一つの改正になつております。
 それから訴訟を遲延せしむる目的のためのみで上訴をした場合に、そういう上訴權の濫用をいたした場合に、これに對して制裁として上訴状に貼つておる印紙の或る一定倍の、十倍以下の金額の制裁的に負擔を命ずることができることにいたして、上訴の濫用を防止いたし、併せて上級裁判所の負擔の輕減に資そうといたしたのであります。
 次に、判決の言渡後、從來は單なる誤記とか、計算の誤りといつたような場合だけに限つて更正決定というものを認めておりますが、法律の適用を誤つたというような場合に、後で直ぐ氣が付いた場合に、言渡後變更判決をすることができることといたしまして、無用の上訴をする必要のない、無益な費用の負擔を當事者に拂わさないで、裁判所がみずから誤りを覺つた場合には、一定の期間内に限つて變更判決ができることといたした點であります。
 それから最後に、差押の禁止の範圍を從來と改めた點であります。
 これらの點が大體改正いたしました要點でありますが、以下簡單に各條に亙りまして御説明をいたしますと、先づ最初に從來判事とあるのを裁判官、これは裁判所法によりまして判事というのは地方裁判所と高等裁判所の判事だけを判事と申しますので、その他は判事補或いは簡易裁判所判事、最高裁判所判事とおのおの別になりましたので、そういう裁判官全體を現わす場合は、裁判官という言葉に直りました結果、判事を裁判官に改め、或いは受託判事とあるのを受託裁判官に改め、或いは執達吏を裁判所法では執行吏となつておりますので、これに合せたのであります。その他字句のここに現われておるものは、すべて裁判所法に基く讀替えの意味の整理な過ぎないのであります。
 三條の「東京市」というのを「最高裁判所ノ定ムル地」といたしましたのでありますが、これは東京都ができました關係で一應「東京市」とあるのを「東京都ノ存スル區域」ということに都制百九十一條でなつておりますが、併し簡易裁判所が東京都の區の存する所でも十數ケ所できておりますので、その管轄等の問題がありますから、むしろこれを最高裁判所のルールで決めるということにいたした方が、適當であるということで改めたのであります。
 それから第七條は「軍人、軍屬」というものを削つたわけであります。尚「艦船ノ本籍」というような文字を削つたわけであります。
 それから二十二條は、これは地方裁判所の管轄に屬せしめる場合の規定でありますが、五千圓を超える場合が地方裁判所に屬することになりましたので、「千圓」というのを「五千圓」に改めたわけであります。結局趣旨は變らないので千圓を五千圓に改めて、地方裁判所の管轄に屬せしめる。これは從來も地方裁判所の管轄であつたので、そういたしたのであります。
 二十四條は、裁判所法によりまして裁判所構成法十三條の二項というふうな規定がなくなりましたので、ただこれを整理いたしたのであります。
 三十條は、これは簡易裁判所の點につきまして管轄の融通性と言いますか、簡易化を認めたのであります。即ち地方裁判所はその管内の簡易裁判所の中で、そういう簡易裁判所の管轄に屬する場合に、相當と思えば申立又は職權で全部又は一部をみずから審理裁判することができる。ただ專屬管轄、例えば支拂督促手續というふうなものは、これは簡易裁判所の專屬に屬しておりますから、こういうものを除いては簡易裁判所の事件を、地方裁判所がみずから適當と思えば行えるということ。
 それからその次の三十一條の二は、やはりこれに關連がありますが、簡易裁判所の事件を、その土地を管轄する地方裁判所の方へ移すことができる規定であります。要するに地方裁判所の方が審理が丁寧である。大は小を兼ねると言いますが。簡易裁判所の事件を地方裁判所も自由にやり得るということにいたしたのであります。
 次の三十三條の改正は、從來は移送の裁判に對しては即時抗告ができるということにしておつたのを、移送するという裁判のみならず、移送の申立を却下した裁判に對してもやはり即時抗告を認めることが適當であるということで、移送をする裁判も、移送の申立を却下する裁判に對しても、同じく即時抗告ができることといたしたのであります。從つて三十三條の從來の二項というものが創られることになるわけであります。
 次の三十五條は、これは「妻」を「配偶者」に、或いは「戸主、家族」というのを民法に基いて改めたわけであります。
 次の三十九條は、会議裁判所の構成員の裁判官、或いは地方裁判所の一人の裁判官の除斥、忌避について、誰がその裁判をするかということに關する規定でありまして、これは從來地方裁判所は三人の合議體であつたのを、一人の裁判官の場合もありますので、この規定を置かなければならなくなつたわけであります。
 四十三條、これは從來、監督權ある判事とありましたのを、監督權はむしろ判事にはなくて、裁判所という合議體にあることに裁判所法の改正でなつておりますので、それに歩調を合せて民事訴訟法を改正いたしたのであります。
 次の四十四條、これは書記に關する囘避の許可等に關する事柄で、これは三十九條と相牽連した規定であります。
 それから五十條もやはりこれは男女平等ということから、即ち夫の許可というようなことを創つたわけであります。
 それから七十九條は、區裁判所を簡易裁判所に改める。これは辯護士にあらざる者が訴訟の代理を、許可を受けてできるというのは、從來區裁判所に限つておりましたが、區裁判所というものがなくなりまして、全部地方裁判所になりまして、新らしくその下に簡易裁判所というものができることになりましたので、簡易裁判所に限つては辯護士でない者でも、許可を受ければ訴訟代理ができるという規定にいたしたのであります。
 次の百十一條の規定は、從來訴訟が不適法で訴を却下する場合は、判決を以て訴を却下するのでありますが、これは口頭辯論を經ないで、相手方の陳述も聽かないで訴を却下する判決ができたのでありますが、苟くも判決によつて訴を却下するという終局的な判決をいたすのでありますから、やはり却下される訴を起した原告に意見を陳述する機會を與えるのが適當だろうという意見がありまして、即ち「原告ヲ審訊スルコトヲ要ス」ということにいたしました。即ちいわゆる意見を述べる機會を與えることにいたしたのであります。この規定と同じような規定が二百二條、三百八十三條等にありまして、この規定を準用いたしております。
 次の百四十條の改正は、一項を加えたわけでありまして、これは口頭辯論の期日に出頭しない場合に、いわゆる缺席判決をやることになつております。即ちこれは明らかに相手方の主張を爭わないものということにみなして、いわゆる擬制自白の規定を口頭辯論に出席した者に準用することにいたして、いわゆる缺席判決ができることにいたしたのであります。この點はこういう改正を行わなくても、從來判例によつてそういうように認められておつたのであります。ただここに特にそういうふうに準用するということをはつきり謳いましたのは、但書を出すためでありまして、即ち公示送達によつての呼び出しを受けた場合には缺席判決をやらない。大體公示送達の場合に、公示送達を受けた者は大體知らない場合が多いので、その場合に缺席判決をやることは酷に失する嫌いがありますので、普通の呼び出しを受けて來なければ、缺席判決はやられますが、公示送達によつて呼び出しを受けた場合にはこの限りでないということにいたしたのであります。
 百四十三條の改正は、裁判所法の改正によりまして、同じ判事の中で席次の順序をつけないことにいたしましたので、その席次の順序によつて署名するというのを止めまして、これは最高裁判所のルール等によつて、裁判長が調書に署名できないときには、その次席の者がやるということになつておつたのでありますが、その席次の順序というのを削りまして、誰がそういう場合に裁判長の代りに調書に署名するかということは、裁判所のルールで決めることになつております。
 それから次は、先程申しました訴訟記録の閣覽公開制を擴張いたしたことであります。これは從來は當事者以外の者は、利害關係のあることを證明しなければ閲覽ができないことになつておりましたのを、裁判はすべて公開であるのが原則でありますし、又國民審査等の關係から言いましても、記録を何人も閲覽し得るという建前が適當であるという意見がありまして、訴訟記録は何人も閲覽ができる、ただ勿論いろいろ仕事に差支があるとか、或いは記録の保存上支障があるという場合、或いは又公開禁止の記録についてはこの限りでないことにいたしたのであります。これが百五十一條に關する改正であります。
 百六十一條は、これは區裁判所を廢めましたので、地方裁判所に改めたのであります。これは送達に關する規定であります。これは送達の囑託をする場合に、大體送達は執達吏、いわゆる執行吏がやるので、而して執行吏は地方裁判所に所屬して置いておりますので、地方裁判所に送達の囑託をやるということに改めたのであります。
 百六十七條を止めましたのは、軍用廳舎におる場合の送達でありますから、これは削除いたしました。
 百七十六條もやはり出頭軍人に關する送達でありますので、これを削除いたしたのであります。
 次の百八十條の改正は、外國においてなすべき送達について公示送達をやつた場合に、效力發生の期間が二週間でありましたのを、二週間では短かきに失するというので、六週間に改めたのであります。
 次の百八十一條は、區裁判所を地方裁判所に改めました。これはやはり執行吏の關係であります。
 それから百八十七條、これは先程申しましたように直接審理主義をできるだけ徹底せしむるというので、裁判官が變つた場合に前の裁判官のときに調べられた證人を、いま一度訊問して貰いたいということを當事者から申出られたときには、裁判所は必ずいま一度訊問しなければならない。即ち徹底して申しますならば、自分の調べない、直接自分が訊かない證人の證言を取つて裁判ができないということになるかも知れませんが、それでは裁判官が更迭した場合にすべてやり直すということになつて、煩瑣でもありますし、訴訟を遅延せしむることになりますので、當事者の方でいま一遍調べて貰いたいという要求があつた場合に限つて必ず調べなければならないということにいたしたのであります。会議裁判所の場合には過半數の判事が變つた場合、變つたと申しますのは、その證人の訊問を標準にして判事の更迭を見るわけでありますが、三人の中の二人、つまり即ち結局三人でその證人について調べた中の二人の判事が變つたという場合には、いま一度調べ直して貰いたいということであれば調べなければならないということにして、直接審理主義せ徹底せしめたのであります。
 次に、先程申上げましたように、判決を一度やつたが誤まりがあつた、法令に違背したことを自分が發見した場合には、言渡後一週間内に限つて變更判決ができることにいたしたのであります。これが百九十三條の二であります。即ち大體において愼重審議を加えて判決するので、まあ判決は誤まるということはありませんが、神ならぬ身のやはりそういう過ちを犯すということもなきにしも非らず、そういう場合にどうしても控訴をやらなければ變更ができないということでは、無用の上訴をするということになりますし、又裁判の威信ということから言つても、みずから過ちを改めるという機會を與えることが適當であろうということで、百九十三條の二というのができたのであります。尤もそれは法令の違背の點だけに限つて、事實の認定の誤まつたという場合はこの中へ含まないことにいたしておるのであります。殊に又そのために更に辯論をやらなければならないというような必要のある場合は、この適用がないことに但書でいたしたのであります。尚その前にもうすでに當事者双方が上訴權を抛棄したというようなことで判決が確定してしまつてからき直せない。變更ができないということにいたしたのであります。これが百九十三條の二であります。
 それから二百七條の二、これは裁判所法によりまして、判事補は單獨では、特に外に法律の規定のない限り発、別段の法律の規定がない限りは、單獨では裁判がやれないことになつておりますが、別段の規定としては、民事訴訟に關する限りにおいて判決以外の裁判、いわゆる決定とか命令とかいうふうなものに限つて、判事補でも單獨にこれをなすことができる。これは應急措置法で、すでに認めておりますので、それを踏襲してまでであります。
 それから、その次の二百四十九條の辯論の準備手續に關する規定であります。從來地方裁判所は必ず三人の判事でやつておりまして、その中の一人の受命判事をして準備手續をやらせるということになつておりまするが、今囘地方裁判所は單獨判事の場合もあるし、三人の会議制の場合もある。殊に單獨判事である場合には自分一人で裁判をやるのでありますから、その場合に特に受命判事をして準備手續をやらすといつてようなことは無意味になりますので、準備手續をやるのは会議裁判所で裁判をする場合に限つて受命裁判官により準備手續を命ずることができるということにして、單獨制でやる場合には、地方裁判所と雖も準備手續の制度はないことにいたしたのであります。準備手續の制度は從來餘り成績を擧げていないので、むしろ止めてはどうかというような、餘程特別な計算關係とか複雜な場合だけに限つてしてはどうかというくらいの議論もあるくらいでありますので、むしろ單獨判事でやる場合には準備手續の制度はなく、会議でやる場合に始めて必要があると思えば準備手續を命ずることができるということにいたしたのであります。
 次に證據の關係でありますが、二百六十一條といいますのは、先程申しましてように從來當事者の申出た證據を調べて見ても、結局裁判所は十分な心證を得られない場合に、裁判所みずから職權で尚更に證據調ができるという規定があつたのでありますが、それを止めたのであります。即ち現行の民事訴訟法のその前の舊民事訴訟法では、やはり職權の證據調を認めてなかつたのを、この前の改正法で職權の證據調を認めたのでありますが、又再訂いたしまして、結局立證責任というのは各當事者がみずから自分の責任によつてやるので、裁判所の方から職權調査までやると、一方をむしろ援助することになつて、當事者の自由なる競爭といいますか、當事者の處分主義という民事訴訟の根本原則にむしろ反するので、立證しなければその不利益は立證しない方の當事者が自分の責任において負擔すればよいので、裁判所がそれを援助してやる必要はないのではないかという有力な議論がありまして、これは職權による證據調という制度を止めたわけであります。尤も公益的なものであります人事訴訟或いは行政事件の場合に限つては、例外として職權による證據調を認めております。これはこの前御審議を願いました行政事件の特例或いは現行法の人事訴訟におきまする條文によつて明らかでありますが、民事訴訟法だけは当事者主義を決定いたしたわけであります。
 次の二百六十五條というのは、これは單なる裁判所法に基く整理に過ぎないのであります。
 それから二百六十九條は五百圓の科料を千圓と改めてのであります。
 次の二百七十三條、これは證人訊問の場合における内閣總理大臣等の國務大臣を證人として呼ぶ場合には、内閣の承認を得なければならんということであります。
 それから二百七十四條は、「貴族院若ハ衆議院」とあるのを「衆議院若ハ參議院」ということにして、院の許諾を必要とする證人の訊問の規定であります。
 それから二百七十七條の二というのが、先程申しましたように證人が正當な事由がなくして出頭しない場合の規定であります。從來は五百圓以下の科料であつたのを、これを改めまして二百七十七條の二で「證人が正當ノ事由ナクシテ出頭セサルトキハ拘留又は科料ニ處ス」ということにいたしたのであります。これは英米等におきましては、やはり裁判所の出頭命令に應じない場合は、法廷侮辱罪として拘禁、拘束並びに罰金、これを併科或いは別々に科するということになつておるそうでありまして、或いは我が國においても、裁判所の權威及び訴訟の促進というようなことからいたしまして、ただ罰金や從来の過料だけでは不十分であるというので、拘留、科料に處する、これは拘留、科料はすべて刑法の規定によつて規定されております。又これも檢事の起訴を必要とすることは一般の通りであります。
 二百八十條はやはり單なる整理であります。民法に基く「戸主」を削る等の整理であります。
 二百八十四條は、これは證言を拒んだ場合の制裁を從來の五百圓を千圓の過料に値上げいたしてのであります。
 それから、二百九十三條これも整理に過ぎません。
 それから二百九十四條というのが先程申しましたようにクロス・エグザミネーシヨンを採用したのであります。憲法におきましても、刑事の關係は主でありますが、直接證人の訊問權というものを認めておりますので、殊に段段英、米方式に訴訟法がなつて參ります關係から、いわゆるクロス・エグザミネーシヨンの制度を認めたのであります。即ち自分の方で證人の訊問を申出た場合には、その申出をして當事者が、先ずこれを訊問して、それからその訊問が終つた後に他方の相手方の當事者が訊問する。それから後裁判長が補充的に當事者の訊問の終つた後に證人を訊問するということにいたしたのであります。勿論裁判長は法廷の指揮權を持つておりますので、いつでもみづから訊問し、當事者の訊問を許可するという法廷の指揮權は持つておるわけでありますが、原則として原告が申出た證人を先ず原告の方で訊問し、それから後で被告側で訊問して、最後に裁判長が訊問するというふうな建前にいたしたのであります。併し當事者の訊問が場合によつては重複することもあるし、爭點に外れた場合もありましようし、その他必要ありと認むるとき、例えば誘導訊問をするとか、或いは人格を誹謗するようなことに亙るとか、或いは脅迫的な言辭を弄するというような場合においては、裁判長はこれを制限することができるという法廷指揮權的な權限を與えて、この當事者訊問の濫用を避けることにいたしたのであります。
 その次の二百九十五條、これは現在でも大體二百九十九條の二項と同樣な規定でありますが、これはクロス・エグザミネーシヨンに對する異議があつた場合におけるその異議をどうするかという異議權を認め、尚異議權に對する裁判に關する規定を設けたのであります。後はずつと大體整理であります。五百圓とある場合を千圓ということに改めたのであります。その他字句の整理をいたしてあるのであります。
 三百五十一條の二というのがやや實質的な改正でありまして、先程も申しましたように、今度は原則として直接訊問の主義を徹底いたしたいというので、證據保全の際に調べた證人について今度は本當の公判、本案の審理に入つた場合にもう一度その證人を呼んで貰いたいという申出があれば、裁判所は再びその證人を呼ばなければならないということにいたしたのであります。尤もその場合に、もう證人が死亡してしまつたとか、或いは外國へ行つてしまつたというようなことで、證據保全はそういうことの必要でやるのでありますが、そういう死亡してしまつたような場合は勿論問題にならないのでありますが、本案のときと雖も、尚證人がそこに生きておつて、いつでも呼べるという状態であれば、調接調べて貰いたいと言えば、どうしてもこれはもう一遍調べなければならないというのが三百五十一條の二の改正であります。
 それから次の三百五十二條以下が簡易裁判所における特別な簡易な手續であります。即ち三百五十二條では「簡易裁判所ニ於テハ簡易ナル手續ニ依リ迅速ニ紛議ヲ解決スルモノトス」という大前提を置きまして、以下簡單なる手續で審理が行われることにいたしたのであります。即ちその三百五十六條の二では、呼出の方式を非常に簡單な送達以外の方法でも、例えば電話でも使いでも葉書でもいいというふうな簡易なやり方を認めたのであります。
 次の三百五十八條というのは、現行法の百三十八條というのは、最初の口頭辯論だけに來ない當事者が缺席した場合に規定がありますが、そういう規定を最初でなくても、續行の口頭辯論に來なかつた場合も、同樣に大體記録だけで裁判ができるということにいたしたのであります。
 それから又調書の記載方法の三百五十八條の二で、裁判官の許可があれば省略することができることにいたしております。
 それから又三百五十八條の三で、「裁判所ハ相當ト認ムルトキハ證人又ハ鑑定人ノ訊問ニ代ヘ書面ノ提出ヲ爲サシムルコトヲ得」、即ち一々證人を呼ばなくても、こういう事項について書面で答えて呉れということで、書面による訊問ができることにいたしたのでありまして、これによつて一々證人を呼出さなくてもいい場合を認めたのであります。勿論これは宣誓等をいたしませんから僞證とかいつたようなそういう問題は當然起らない、非常に輕い意味のもので、併しそれは單に書證ではなくて、やはり證人の證人調べということになるわけで、その記載が單に書面の書證という、書面の證據ではなくて、證人の證言ということになるわけであります。これはまあ戰時民事の特例法で、こういう規定を設けたことがありますが、ドイツにもこういう規定がありますが、それを簡易裁判所に限つて採用いたしたのであります。
 次に三百五十八條の四では、丁度家事審判所の場合に參與員という者を立會わし、或いは調停の場合に調停委員を立會わしておりますと同樣に、司法委員というものを補助員として和解をしたり、或いは審理に立會わしめて意見を徴することができるという途を開いたのであります。大體これは家事審判所の參與員或いは調停の調停委員と同じような選び方で選ぶのでありますが、司法委員というものを簡易裁判所の民事に限つてつけるということにいたしたのであります。これは臨時法制審議會等によつてこういうことが決定されておりますので、それに從つて入れたわけであります。
 次の三百五十八條の五、三百五十八條の六というものが今言いました司法委員に關する規定であります。
 それから三百六十條におきまして、これは大體應急措置法でこういうことになつておりますが、結局高等裁判所におきましては、控訴といいますのは、地方裁判所が一審とした場合に高等裁判所に對する控訴、それから簡易裁判所の終局判決に對して地方裁判所に控訴するという場合であること、又裁判所法によつても明らかでありますが、その点を特に民事訴訟法で明らかにいたしまして、後の又上告の點におきまして、それに繋がつて簡易裁判所の方の判決に對する上告が高等裁判所、それから地方裁判所に對する控訴、それに對する上告に最高裁判所ということにいたしております。これは三百九十三條がそれでありまして、應急措置法の四條と同樣であります。
 それから三百八十四條の二というのが先程申しましたように控訴の濫用、上訴權の濫用の場合に制裁を加えて、これによつて無默な上訴を防ぎ、併せて上級裁判所の負擔の輕減を圖ろうというのであります。即ち控訴を棄却する場合に、その控訴が全く訴訟の完結を遲延せしめる目的のみに控訴をした場合と認められるときには、控訴状に貼用すべき印紙の額の十倍以下の金銭の納付を命ずる、これはむしろ國庫への納付命令、丁度過料と同じようなことになるわけであります。この強制執行の方法は、丁度過料支拂いの執行の場合と同じような方法で執行いたすのであります。即ち控訴棄却、それから印紙の金額の三倍以下の範圍内における金銭の納付命令というものを發することができるという規定であります。
 次の三百九十三條は先程申しましたように、上告が普通裁判所法によりますと、最高裁判所の管轄にやはり上告というものがあり、それから高等裁判所の管轄にも上告がありますので、どの上告がどこに行くのかということが裁判所法でははつきりいたしませんので、ここで最高裁判所の方に行く上告は、地方裁判所の判決に對して高等裁判所に控訟をし、その判決に對して最高裁判所に對し上告する、それから又簡易裁判所の判決に對しては地方裁判所に控訴する、それに對する上告が高等裁判所に廻るということにいたしたのであります。これは應急措置法からそういうことになつておるのであります。
 それから四百六條の二、これも亦應急措置法の五條にあります通りでありますが、高等裁判所が上告事件を取扱つておる場合に、最高裁判所のルールで決める事由があるときは最高裁判所に移送するということになつて、例えば判例を變更する必要があるかも知れませんようなことの場合に移送しなければならないことにいたしたのであります。
 それから四百九條の二というのも、やはり應急措置法の六條の通りでありますが、高等裁判所を上告審とした終局判決でも、違憲の理由ありという場合には、更に最高裁判所に上告ができる。即ちこの場合には事實上四審級になるわけであります。簡易裁判所の判決に對して高等裁判所に上告しておりますが、併しそれが違憲問題を爭う場合におきましては、やはり憲法八十一條で最高裁判所が終審としてやらなければならないということになつておりますので、最高裁判所に更に上告できる途を開いたのであります。四百九條の三はその手續に關する事柄であります。
 次に四百九條の四・五・六という規定は、先程申しましたように變更判決に關する事柄であります。上告審の裁判と雖も場合によつては法令に違背した場合がないとも限らないわけであります。この場合もやはり最後の段階であるからして法令違背があつたことが分れば變更判決ができる途を開くのが相當であるということで、この場合は法令違背を理由とするときは、その上告裁判所に異議の申立てをすることができることにして、異議は判当の送達から十日以内に必ずやらなければならない。そうしてそれに對して異議が、理由があれば上告裁判所は變更の判決をするが異議がなければ、決定をいたして却下する。そうして上告裁判所の判決が決定するということにいたして、異議がある間は確定しないということにいたしたのであります。
 次の四百十二條の三項、これはまあ整理であります。四百十九條の二、これ又應急措置の七條をそのまま承けて來たのでありまして、決定いたしまして、やはり決定に對して不服を申立てることができない決定でも、違憲問題を理由にする場合には、最高裁判所へ特に特別抗告ができるという途を開いて、憲法八十一條の、最高裁判所は違憲問題についての最終審の裁判所であるという趣旨を徹底いたしたのであります。その後は大體整理でございます。ずつと整理で、ただ差押の點につきまして六百十八條というのが即ち從來給料等の差押につきましては年額三百圓を超える場合、その半額を差押えることができるということになつておりますが、現在の經濟事情から見て、三百圓だけを保障して、その超える部分の半額を差押えられては非常に生活上脅威でありますので、その點を改めまして、最低の生活の保障するというのが差押え禁止の趣旨でありますから、然らばどの程度で最低の生活權を保障してよろしいかということになりますと、こういうふうに物價或いは通貨の變動の際におきましては一線を畫することが非常にできない、むずかしい問題でありますので、結局分數的にやりまして、一年間に受くるべき總額の四分の三を超える部分に限つて差押えることができる、即ち全收入の四分の一だけを差押えることができるということにいたしました。併し月給の四分の一くらい差押えられても何ら痛痒を感じないような特別な人もあるかも知れませんので、そういう場合に但書で以て、差押えによつて債務者がその生活上窮迫の状態に陷る虞れのないときは裁判所の許可を得て、その二分の一までの範圍内において差押えることができることに許可することができる、そういう場合には二分の一まで差押えられるが、そうでない限りは、普通は四分の一だけ差押えることができる、併しながら四分の一差押えられても、逆に今度は、到底そのために生活ができないという場合もあるかも知れないということが考えられますので、六百十八條の二で、現行法の五百七十條の二の規定を準用して、そういう場合には又差押えを禁止し、更に差押えをしてはならないという財産を定めることができるという五百七十條に二の規定を準用いたしたのであります。大體そのあとの規定はすべて整理に關する規定であります。尚附則は從來の通り新舊の經過的な規定に過ぎないのであります。甚だ簡單でありますが、大體逐條的に御説明申上げました。
#4
○委員長(伊藤修君) では、これより質疑に入ります。……速記を止めて。
   〔速記中止〕
#5
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて……。それでは尚御研究を願つて、質疑は後日に讓ることにいたします。本日はこれを以て散會することにいたします。
   午後二時二十六分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鈴木 安孝君
           岡部  常君
   委員
           齋  武雄君
           中村 正雄君
          大野木秀次郎君
           水久保甚作君
           鬼丸 義齊君
          前之園喜一郎君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           星野 芳樹君
           小川 友三君
  政府委員
   訟 務 長 官 奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト