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1947/06/08 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第37号
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1947/06/08 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第37号

#1
第002回国会 司法委員会 第37号
昭和二十三年六月八日(火曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○裁判官の報酬等に関する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
○檢察官の俸給等に関する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
   午前十一時三十二分開会
#2
○理事(岡部常君) これより司法委員会を開会いたします。本日上程いたしますのは、裁判官の報酬等に関する法律案並びに檢察官の俸給等に関する法律案を一括上程いたします。前回に引続き質疑を継続いたします。
#3
○中村正雄君 政府に対しまして御質問いたしますが、この度官吏一般の給與につきまして政府は職階制を採られて、從つて官吏の給與は職務の内容と責任によつて決めらるべきものだとこういうふうに言われておるわけですが、裁判官の報酬と檢察官の俸給、これにつきまして差を付けておられるのは、やはり裁判官の方が檢察官よりも職務の内容及び責任において重大であるというふうにお考えになつておるからだと考えるわけですが、この点につきまして政府のお考えを聽きたいと思います。
#4
○國務大臣(鈴木義男君) さようには考えておらないのでありまして、裁判官が普通の官吏に比して非常に責任の重い仕事をしておるということは考えております。そうして檢事の仕事は、行政部におりますけれどもその仕事の内容はほぼ裁判官のそれに等しい、こういうふうに考えておるのでありまするから、敢て差を付けるということはありませんが、ただ裁判官はあらゆる官吏の中でも特殊の地位を以て優遇せらるべきものである。それは憲法が特別に裁判官の報酬を決められてある。それでそういう趣旨に則りまして若干の地位の差を表現する方が妥当であると、こういうことで、判事にだけ一級あつて檢事の方ない給與を拵えたのです。そういう趣旨と御了解下さい。
#5
○中村正雄君 じや、官房長官にお伺いしますが、一般の行政官吏と檢事及び判事につきまして、非常な給與の差を付けておるというその趣旨はどこにあるのか、お伺いしたいと思います。
#6
○國務大臣(苫米地義三君) 只今法務総裁から答弁いたしましたような大体の趣旨でございますが、裁判官に対する報酬につきましては、憲法の上にもございます。かたがた予算の上におきましても裁判官を優遇しなければならんというような一般の空氣でもございまして、今回その趣旨を体して俸給令を作つたのであります。その際におきまして、今の檢事の方に対しての考え方は、只今法務総裁から申上げた通りであります。
#7
○中村正雄君 そうすると、今官房長官のお話、ちよつと納得できない点は、檢事の職務は準司法官的の職務であるというふうには誰も認めておるわけですが、やはり官制上から行けばこれは行政官である。そうすると、一般の政府職員と檢事との間に、重大な給與の開きを付けるという理由はどこにあるか。もう一度はつきりお答え願いたい。
#8
○國務大臣(苫米地義三君) もう少し詳しくそれじや申上げたいと思いますが、問題は裁判官と一般行政官との開きの問題であろうと思う。御承知の通り政府は今回臨時給與委員会の報告に基きまして、國家公務員の給與については、いわゆる職階制度を採ることにいたしたのであります。こういう考え方から、職務の内容、責任の軽量等を勘案いたしまして、今回提出しました程度の開きを適当と認めたわけであります。ただ檢察官と一般行政官との権衡の問題が、中村委員の御質問の点かと思いますが、これにつきましては職階制の立場からも議論が多少あると思うのであります。併し今回の職階制はそういう線に沿つた一つの一段階でありまして、外の行政官との釣合いが完全に或いは取れていないかも知れんと思うのですが、まあ暫定的にこういう方向に向つて行つたというふうにお願いができれば幸せだと思います。
 それから裁判官と檢事との、國民的な常識からいいますと、どちらも一つの裁判所におる建前からでもありましようが、同じような裁判をする職務として常識的に同じでありますから、やはり余り隔たつた給與をするというわけにも相成らんのでありますが、併し檢事の方は多少差が付いて行くのが本当であろうかと思います。無論判檢事が一般の行政官になれば、当然行政官としての地位と報酬を受けることになりまして、その点は問題ないと思います。ただ檢事が他の行政官との給與の差がまだぴつたり來ておらんというところに議論の余地があると思いますが、これは給與の改正の一つの段階として止むを得ない過程的のことであるというふうに一つ御了解をお願いしたいと思います。
#9
○中村正雄君 それは檢事の職務並びに責任の関係からいつて、一般行政官よりも給與面において上位に置くということは賛成しておりますし、又そういう考えであるわけなのですが、今判事と檢事において約一号の差を設けておりますが、この際現在の判檢事というのは、一般國民は司法官一般と考えておる。そうして同じような資格を持つて入つて來、同じような経歴を経て、現在同じ給與を貰つておるのが、今回の給與改正によりまして判事と檢事との間に差が付いて來る。從つて同じ資格を持ち、同じ任用の手続をしておる判事と檢事が、差へ付けられるのは困ると檢事諸君が今叫ばれておりますが、これに対しまして政府はどういうふうにお考えになつておるか、官房長官の御意見を聽きたいと思います。
#10
○國務大臣(苫米地義三君) これは、そういう希望を持つておられることは事実であります。併しこの職務の性質から見まして、裁判官ははつきり憲法でも規定してありますように、優遇の途を採ることになります。檢察当局の方はその点は多少行政官との間に近似性があると思うのであります。これを全然司法官と一緒にするということはちよつとどうかと思う。それで多少の差を付けた。こういうわけであります。
#11
○中村正雄君 そうしますと、政府の方の御方針としますと、判事と檢事との間に給與の差を付けなければいけない、こういうふうに拜聽していいわけですか。
#12
○國務大臣(苫米地義三君) 只今の考え方からいいますというと、任用の仕方及びそれから後の段階においては大体同等に扱つておるのでありまして、將來は裁判官は裁判官としての任用制度を採る。それから檢察当局には檢察当局としての任用制度を採る。そうしてそこに待遇その他の差を付けるということが自然起ると思いますが、今のところは、今までの慣行によりまして大体平等の扱いでなければならん。こう思うのですけれども、まあこの場合は一種の経過的な措置として多少差を付けた。こういうふうに御了解願いたいと思います。
#13
○中村正雄君 今の長官の御趣旨はよく了承いたしますが、そうしますと、現在の法務廳の職員と判檢事との給與の関係はどうなりますか。いわゆるたびたび申しますように、法務廳の重要ポストの人は、檢事判事として相当優秀の人を採つておる。ところが、法務廳の職員は一般行政官であります関係上、他の一般職員としての給與しか受けられない。やつと同等か或いわ同等以下のこれは俸給でありますが、判事檢事をしている人が非常に給與が高くなつて、政府は一般行政官吏であるという事由のみによつて、法務廳職員は非常に安い給與に釘付けられる。こういう点について政府はどういうふうに考えられるのですか。
#14
○國務大臣(苫米地義三君) その点は裁判官を優遇するという点に重点を置きまして、普通の職員に対しましては、官廳職員と同等に扱い。こういう建前を採るつもりでおります。
#15
○中村正雄君 どうも話がはつきりしないと思うのですが、現在の過程においては、判事と檢事は任用資格なり経歴が大体同じような制度でやつておるから、余り差を付けてはいけない、同等に扱いたい。こういう御意見と拜聽したわけなんですが、ところが、法務廳職員と判檢事との差については、これは一般行政官だから判事の方と差を付けるのだという御説明はどうも納得ができないように思います。
#16
○國務大臣(苫米地義三君) お説は、裁判官と檢事とそれから普通の職員と、高の三種類に跨つておると思うのですが、さつき申上げるように、今の司法官としての判事と檢事は、大体常識的に同等に扱われて來ておりますから、今の制度においてはほぼ同どような待遇を受けるのが穩当であると、こう思いますが、將來ははつきり差を付けるような制度を作りたいと、こう思つておる。ところが、それにいたしましても、檢事を普通の職員とそれは全く同等かと申しますと、多少そこに司法官的行政官と見てもよかろうと思いますから、普通の行政官と檢事との待遇は変つてもいい。これはそういう考えの下に三段階になると思うのです。つまり裁判官は普通の職員よりかも優遇されるのだというふうにして、特に職員が待遇を悪くされるということでなしに、裁判官のみが優遇されるのだというふうにお考え願いたい。
#17
○中村正雄君 まだ少しはつきりしないのですが、檢事と判事との場合は、これは判事の方が憲法に保障されておるし、憲法で言つておるので、檢事よりか優遇しなければならない。併し現行の制度においては、檢事も判事も國民の常識からいつても、或いは任用資格からいつても、やはり大体同じような振合いを取つて來ておるのだから、現行制度の上ではこれを違えていけないが、併し実際は差を置いた。こういう御意見と承るのですが、その点よく了承するわけですが、ところが、判事なり檢事なりの前歴を持つておる者が法務廳の重要ポストにおる。この人に対しては、一般行政官であるから、一般行政官の給與を受けるときには判檢事と差を付けなければいけない。給與の本質論から成るたけ同等にしようというときは任用資格が同じだからという、二つの理論を以て御説明されておる。そこの政府として給與に対する一貫した理論がないように思うのですが、この点について御意見を承りたい。
#18
○國務大臣(苫米地義三君) ちよつと御質問の点が……判檢事から一般行政官に変つたときの場合、これは一つであろうと思う。この場合は行政官としての待遇を受けることは止むを得ないと思います。但し重要なポストに就いた場合は、何か優遇する途は同じ行政官でも考えられると思うのですが、大体行政官に待遇になることはこれは止むを得ないと思います。それから今の檢事が行政官と非常に差があるというようなことにつきましては、これは全然独立したような特殊の職階でありますから、別の考慮の下に、待遇の途が採られてもよかろうと、こう思うのであります。そこが將来、一貫したことにはならんかも知れませんが、普通の行政官に変つた場合は、はつきりと行政官になる。併し檢事という特殊なこの独立式な事務に対しては、待遇を少く考えて行く、別個に扱う、こういうふうなことになると思います。
#19
○中村正雄君 その点は了承しました。それでは念のために將來のことについてお伺いしたいわけですが、現在判事若しくは檢事の前歴を持つておるところの法務廳の一般職員、これに対しまして、いわゆる一般今後の人事の交流その他の問題につきましても、給與の面において非常な差が付いておる関係上、やはり法務廳の重要ポストの職員につきましては、やはり判事若しくは檢事の経驗者の中の優秀な人を選ばなければ司法行政は運用できないだろうと思う。そういう関係から、判事若しくは檢事の前歴のある法務廳の一般職員につきましては、何らかの優遇の途を付ける意思があるかないか、この点についてお伺いしたいと思います。
#20
○國務大臣(苫米地義三君) その点に関しては十分考えるつものでおります。
#21
○中村正雄君 ではもう一つ、官房長官がお出でになつておりますので、一般行政官の給與につきまして、これに関連がありますのでお聞きしたいと思うわけですが、一般行政官の給與につきましては、いわゆる職階制の採用によりまして、任用資格或いは経歴その他が同等なものでありましても、現在就いておる職務の内容に從いまして、給與の差が付くわけですが、例えば運輸省なら運輸省を例に取つて見ますと、同じように大学を出て、高等試驗を通つて、運輸省に入つて來た人で、現在或る所の長をしておる人と、或いは本省の事務官をしておる人、これは給與が現在同等でありますが、職階制の採用によりまして、長としての責任が重いという関係で、長をしておる人は非常に給與が高くなるが、本省の事務官をしておる人は非常に低くなつておる。こういう不合理が行政官廳の内部におきまして生ずるわけなんですが、これは職階制の給與の建前から見て止むを得ないと思うわけですが、これにつきまして政府としてはどういうふうにお考えになつておりますか、お聞きしたいと思います。
#22
○國務大臣(苫米地義三君) 職階制を採りまして、そして地位の保障をし、待遇の途を講ずる以上は、やはり同じ学校を出て、同じ年限を経ましても、その職階制により差が付くことは、これはどうも止むを得ないと思います。
#23
○中村正雄君 行政官の内部におきましても、給與の本質上差が付くのは止むを得ないわけなんです。今官房長官の御説明のように、いわゆる同じ資格を持ち、同じ経歴を持つておつても、現に携わつておるところの仕事によつて差を付けるのは、給與の本質上止むを得ないという、これは行政官につきましては理論一貫した御答弁であつて、納得できるんですが、又元に還りまして、檢事と判事の関係でありますが、同じような学校を出て、同じような任用資格で入つても、檢事と判事において、今度は差が付くわけですが、これは差ができるといかないから、判事と檢事は今の制度においては、できるだけ同じようにしようという御意見でありまして、從つて一般行政官吏内部におけるところの給與の方針と、檢事と判事との給與の方針につきまして、政府の方針が二つに分れておるように考えておりますが、その点についてどういうようにお考えですか。
#24
○國務大臣(苫米地義三君) 先刻申上げましたように、判事と檢事との從來の経過から考えて見て、余り差を付けることは面白くないと思つておりますが、併しこれは本当に過渡的な問題でありまして、今後は、さつき申上げるように、おのおのの採用の途を別個にいたしまして、そうして待遇を変えるのでありますから、今は從來の行き懸かりがありますから、その制度がはつきりしない間は、暫定的に接近した待遇を與える。こういうことであります。
#25
○大野幸一君 ちよつと、これは法務総裁に参考までに申上げて置くのでありますが、お聞きしたいと思うのであります。我々は本案が付託されたときに、檢事と判事との差別論に非常に力を注いだというものは、やはり制度上裁判官というものを上に置きたいというので、さてそれでは現実に給與ということになると、これは別に檢事さんが少い方を喜ふというわけではなかつたので、制度上どうしても檢事より裁判官の方を優位に置きたいという念願から、差別論が多かつたのだろうと思います。そこでこの制度の変革と共に、今まで同等なものが一躍差等が付くということについては、理窟はともかくとして、感情上面白くない。やはり人間を働かせるためには感情も斟酌しなければならんと、こういうようなことになりまして、この悩みが全委員の胸中にも私はあると思います。つきましては、衆議院の方でも、この点について何か救済方法ということを、個個の委員は抱いておられたと思いますが、究極において、これが表化さないというので、これが衆議院を通過して來たと思います。そこで参議院において、仮にこの点にもう一度考慮を繞らされて、いわゆる先程政府の方から説明があつたように、從來のいわゆる現実をどうか打開したいという氣持であるならば、そこに経過的の何か救済方法を講じたいと思うという人もあると思います。例えば、その救済方法が、どういうように現われて來るかも分りませんが、ただ特殊な場合、特別な場合には、優秀な人もある。それを制度上どうしても一級を下げて置かなければならん、制度上下げて置かなければならん、人物としては優秀であつても、制度上下げて置かなければならん。それがこの制度の改革によつて行われなければならんというような場合に、これを救済するために、特別な場合を限定して、考慮に入れることとする。その特別の場合というのは、例えば六大都市の優秀な檢察官とか、或いは又その他重要な位置なり、重要な地方においては、特に良い檢察官を持つて行かなければならん。こういうような場合に限る。或いは又制度上からいいまして、現在任用によつて、現職の檢察官であつて新らしく採用されて來る人に対しては、これを除外しようとか、こういうような場合を予想して、特別な場合を一つ考慮に入れるというような場合があつたとしたならば、そういうことに対して、実際それを適用するに当つて、その趣旨をよく斟酌し、考慮に入れて、法務総裁はこれに善処する用意があるでございましようかどうか。
#26
○國務大臣(鈴木義男君) 大野委員の御質問は、誠に條理を盡しておられる御質問でありまして、如何にもその通りなのであります。衆議院の方では、ややこのあるべき制度というものに囚われ過ぎて、現実今までまやて來ており、又現在檢事正と裁判長、檢事長と長官というものは対等に扱われておる世の中の見ておつて、それを一挙に差を付けようというような形にせられましたことにつきましては、理論上は別として、実際問題として甚だ面白くない空氣を釀すことに相成りますので、政府といたしましては、極く少数の例外だけ、裁判官の中でも優遇される人を作り得るという制度にいたしたのでありますが、只今大野議員の仰せられるところは、逆に檢事の優秀な者をやはり裁判所長と同じように優遇し得るという、こういう途を開くことはどうか。政府といたしましてはどこまでも原案を御協賛願いたいのでありますが、万止むを得ない場合におきましては、そういう方法に出でて下さいますことも、時宜に適したることと考える次第であります。
#27
○理事(岡部常君) 他に御質疑がございませんか。
#28
○松井道夫君 先程からの鈴木総裁と官房長官の御答弁を聞いておりますと、多少違つた点があるように考えられるのであります。初め中村委員からの質問に対して、檢事と判事とは給與を区別すべきものとは思われないという趣旨の御答弁が、鈴木総裁からあつたように思うのであります。その後官房長官の御答弁によりますと、檢事と判事とは職務責任その他からいえば差別を付けるのが当然である、併しながら過渡的な事情によりまして、成るべくその差を少くしたのであるという趣旨の御答弁であつたと存ずるのであります。鈴木総裁と官房長官の御意見が違うのか、或いは官房長官のお答えになつたように受取つてよろしいのか、その点はつきりさせて頂きたいと思います。
#29
○國務大臣(鈴木義男君) 言葉が短かかつたために説解を起したかも知れませんが、原則として判事と檢事、現在の判事と檢事とは同じく待遇せらるべきものであると考えておることは繰返して申上げておるところであります。ただ新憲法の精神に基きまして、裁判官を重んずるということを何らかの形で表現するために、同じく待遇はされて行くのであるが、一番上に行つたらずつと高くなる、こういう建前を採つた。檢事はどうしてもそこへ行けないという一つの地位がある。こういう意味において差を設けた原案を出しておるのでありますから、そういう意味で申上げたわけでありまして、結局私の答えも官房長官の答えも同じことに帰着するのであります。
#30
○松井道夫君 職階制を作つた意味合におきまして、今の職務の性質とか責任とか、そういつたような意味合からいいまして、判檢事は別個に取扱うべきものである、判事の方を檢事よりも上にすべきものであるという見解があるのでありまして、その見解を衆議院で採つたと私存ずるのであります。政府におかれても、原案におきまして多少の差があるのであります。その職務の性質、責任といつた点におきまして差異があるとお考えになつておりますかどうかということか伺いたい。
#31
○國務大臣(鈴木義男君) 理論上から申しますれば、若干の差があるものだと思います。併しそれをどういうふうに給與の上で表現して行くかということは、將來職階制の審議に当りまして、十分あらゆる方面から考慮して決せらるべき問題でありまして、これが一定の帰着点に到着いたしますのには、相当時間も掛かり、審議を重ねなければなるまい、こういうふうに考えておる次第でありまして、只今のところは、過渡的に原案のような提案をいたしておる次第であります。
#32
○松井道夫君 私の質問しておりますることは、これはいわば理論的のことをお尋ねしておりますので、鈴木総裁のお答弁は現在の判檢事をどうするかというようなことをおつしやるので、そこに多少食違いがあるのでないかと思うのであります。憲法で裁判官について相当の報酬というものを規定しております。これは鈴木総裁御自身憲法制度のときの御審議に当られたわけで、裁判官について特に憲法で相当の報酬を保障せられておるということは、漫然とそういつたような規定を設けたのでなくて、その裁判官の職務の性質、責任ということを勿論考慮して、そういうふうなものができたんでないかと存ずるのであります。現在の判檢事にどういう給與を與えるかという問題を別といたしまして、判事と檢事とその職責等を職階制で考慮せられるというような標準におきまして、その間差別を設けるのが当然でないかと私考えることがあるのでございます。その点について御答弁を煩したい。
#33
○國務大臣(鈴木義男君) 理論上の問題といたしましてならば仰せの通りであります。いろいろ細かく申上げなければ誤解を起しまするが、大体におきまして、松井議員の仰せられる通りでありますが、それは飽くまで遠い將來に実現せらるべき問題で、今直くに実現することは無理があるということを申添えて、理論上は賛成であるとこういうふうに申上げます。
#34
○理事(岡部常君) 別段御発言ございませんければ、これで……。
#35
○宮城タマヨ君 ちよつと法務総裁に伺いますが、私は厚生委員会の方もございまして、この大事な審議に出たり引込んだりいたしまして、重複することもございますかも知れませんが、只今おつしやつていらつしやいます。將來は制度上この採用の方法を変えてということ。勿論そうでございますけれども、そのことは俸給の点について判事と檢事とに差を付けるごとくに、人人においても幾分か檢事は下つていいという考えがあるのでございませんでしようか。その点如何でしようか。どういうことになるわけなんでございましようか。
#36
○國務大臣(鈴木義男君) それが非常に誤解を起しておるので、残念に思うのでございまするが、こういうふうに説明すればよく分つて頂けると思うのです。我々の考えておりまする「差別あるべし」ということは、裁判官というものは法廷において一段高くしなければならん。檢事と弁護士とは同格において相鬪う、そうして裁判官は高いところからこれを判断する、こういう建前を採ると一段高い地位に立つわけであります。それには年齢も上の人がなるべきであり、弁護士というものは古い人も多いのでありますから、これは比べ物になりませんが、檢事と判事とを比べるときには、年齢も上であり、社会的地位も上であり、俸給も上である人が坐る、それで初めて法廷の構成というものが理想に合致するのであります。今までの法廷には、檢事の方が、官等も俸給も上の人が裁判官を威圧するがごとく臨席したというようなことも稀にあつたのであります。そういうことは面白くない。そういう建前を採るためには、どうしても官等の低い檢事がより高い判事の前で働くような建前を法廷で採ることになるのであります。併し今度は俸給の問題でずつと出発すると、十号から出発して一号に至る、一号というような檢事は法廷には立たない、法廷に立つのは比較的若い人達が立つておるのです。檢事正となり或いは檢事総長となる、そういう人は社会的地位において、裁判官と対等であることは少しも妨げない。こういうふうな意味なのでありまして、そこのところを説解のないように願いたいと存じまするが、例えば行政における官吏でありましても、司法部における裁判官と同じ待遇を受けるということがありましても、將來職階制が実施せられます場合に、そういう決め方が行われましても、少しもそれは不自然ではない、そういうこともあり得ると私共は考えております。当然下らなければならんというようなふうに考えておるわけではないけれども、私共の考えておる採用制度の改革というものは、若し御賛成を得られまするならば、そういうふうにやつたらいいのじやないかと思つておりますが、先ず國定試驗を行いまして、通つた者は弁護士が檢事になることができるということにいたしまして、そうして弁護士となり、檢事となつて五年十年を経た後、その中から優秀な人が判事となる、こういうふうな採用制度に改められまするならば、必然的に判事は高いものになり、学識経驗も豊かな人だけが判事になつて行く、そこでそれは社会的にも実際的にも重視せられる人になると思うのでありますから、待遇も亦一般的に見て、少数の人は高いところへ行けば檢事も判事も同じであります。檢事総長まで行つても國務大臣と同格でありますから、最高裁判所長官までには至ることができない、それは檢事総長を止めてからそう又おなり下さればよろしい、又なれるように制度はなつておるのであります。併しその高いところへ行つて対等の地位を持つておる人が至るところにあるということは、そういう制度を立てることとは矛盾しない、そういう意味であります。御了承を願います。
#37
○宮城タマヨ君 よく分りました。いま一つお伺いしたいと思いますことは、まあ理論上は何もかもよく分つておりまして、今のところ止めを得ないと思いながら、併しこれで決まつてしまつたら、実際問題としたらどういうことになるであろうかということを私は心配しておる者でございます。それで國民常識としても、國民の希望としても、本当は事件の最後的決定をいたします判事を非常に高いものにし、そうしてその適当な人を選んで、その任に当つて頂くということは、そうして俸給も高く待遇されるということは、実に大切なことでございますけれども、國民に一番身近に感じますところの檢事に、本当の人格者と申しますか、正義の信念に燃えて、そうして確信を持つて事件の処理をして呉れるという公平無私な人を選んで貰うということが、今日國民の本当の要望じやないかと思います。殊にこんなに犯罪の質も日に日に悪くなりますし、量もとても今まで考えてもおらなかつたという数を数えなければなりませんし、これではもう國民は非帶に枕を高くして寢られないという非常に紊れた治案状態において、本当に命を賭けて仕事をして呉れます檢事がほしい、治安の任に当られます者がほしいということは、本当に私共の願うところなのであります。それでこの間神戸に、朝鮮人問題、あの事件で参りましたときに、神戸の檢事正が語られました中に、もう命を捨てる覚悟だつた、そうして自分の家内も妻も皆命懸けで刺し殺されることを覚悟しておつたというようなお話を聞きましたときに、本当に襟を正して聞いたのでございますけれども、併し檢事の職に在ります者は、もう職に在る者は勿論のこと、その家族までが命懸けであるということは、もうこれは覚悟の前のことで、特に感服することもございません程これは重要な仕事だと思つております。將來のことはともかくといたしまして、現在においてそれだけの覚悟を持つて当られる人に國家が生活の保障をしないということは、これは治安を維持しないという結果になるのだと思いますので、これはどうでもこうでも今のところ何とかして頂かなければならないじやないか、それでこの檢事官の俸給等に何する法律という中にも今少し加えて頂きたいような條文もございますし、更に超過勤務手当なんかのことによりまして、実際物質上の裏附けがあつて十分な働きができるとように考慮して頂きたいと思いますが、そういう点についての法務総裁の御意見を伺いたしと思うのでございます。
#38
○國務大臣(鈴木義男君) 宮城委員の仰せられることも誠にその通でありまして、一つの異議を申すべきところはないのであります。全体として賛成であると申上げる外はないのであります。ただこれが現在は全く生活ができないという程度の給料なんであります。これが解決といたしまして、幸いに原案が御協賛願えましても、実は大変樂になるというわわけには行かないと思うのであります。今の日本ではとにかく生活を支えるということが最大限の脅威になつておるのであります。待遇は生活が支えることができないような状態であります。將來樂に生活給以上のものを体面、地位に対して差上げることができるようになつたときには、余りに三百二百の差というものをやかましく言わないような氣持になつて頂けるであろうし、そういう習慣を作りたいと考えますが、併しとにかく職階制に基く給與としては、恐らく行政官の中では檢事が最高の待遇を受けることになるというふうに、御審議頂きましても、相成らんのではないかと想像いたしております。私共の理想を言えば、裁判官とほぼ同じくあつてほしいと思いまするが、併しそのことは將來職階制を実施した上で、具体的ないろいろな事実を調査して決めることでありますから、只今申上げたのでありまするが、事情の許す限りにおいて、最高限の待遇を與えてほしい、こう考えておるというふうにお答をいたして置きたいと思います。
#39
○松井道夫君 只今の問題に関連いたしましてでございまするが、檢事は一般の行政官と比較して、相当の優遇を受けるということになつておるので、私は檢事の現在甚だしい劇務、又責任の重いことを考えまして、非常に結構だと思つておるのであります。ただここに超過勤務手当というものが支給されないので、事実上外の行政官よりは結局給與は少いようなことに相成りはせんかというようなことを、檢事の中の或る人々は考えておるのであります。その点について、例えば俸給の何割かの範囲内で超過勤務手当に代るべきものを支給することができるとか、或いは一般の行政官に支給すべき額の三分の一でも半分でも支給することができるとか、そういつたような方法を講ずる必要があるんじやないかということも考えられるのでありまするが、これはなかなか客観的な情勢からいつて実現が困難なのであります。それで只今の檢事の憂えておられる実際の待遇が、やはり優遇すると言いながら、優遇にならんじやないかという、これは判事のも通ずるのでありますが、その心配についての総裁の御意見、並びに給與局長もお見えのようでありますから、その点についての御意見を承わりたいと思います。
#40
○國務大臣(鈴木義男君) 御説御尤もでありまして、そうでありますから、原案はもつとずつと高いものであつたのであります。それがいろいろ他の方面との釣合上可なり減額せられまして、提出したような原案になつておるのでありますが、これを御審議を願つておる間に又別な方のベースが上つて、二千九百二十円、立案したときは千八百円ベースであつたのでありますが、二千九百二十円に上り、近く三千七百円に上るであろう、或いはそれ以上上るかも知れないというようなことになつて來まして、政令でやれる方は簡單に行くのでありますが、法律で御審議願う方はなかなか審議に時間を要しますので、追付かないというような形をとりはせんかと存じますが、併しとにかく一應この案が通して頂けますならば、他の官吏と比較して優遇するつもりでこれは立てておる案でありまするから、実際は優遇にならんという事態が生じましたならば、号俸の上で高いものを給與するようにいたしますとか、いろいろやりましても尚及ばないならば、次の國会において更に増額について御協賛を仰ぐ、こういうふうな考えでおります。
#41
○政府委員(今井一男君) 超過勤労のお話がございましたが、大体今回の檢事の標準は、一般官吏の約二倍乃至三倍程度の超過勤務を毎日して頂くという計算で、尚且つ二割強高い、こういつたところが狙いになつております。
#42
○理事(岡部常君) 御発言もございませんければ、質疑はこの程度で打切つて、討論、採決の段階に入りたいと思いますが、休憩いたしまして午後再会いたします。
   午後零時二十四分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時二十二分閉会
#43
○委員長(伊藤修君) 午前に引続きましてこれより司法委員会を閉会いたします。午前中質疑を打切りましたところの裁判官の報酬等に関する法律案、並びに檢察官の俸給等に関する法律案を一括して議題に供します。両案に対してこれより討論に移ります。
#44
○松井道夫君 この際裁判官の報酬等に関する法律案、及び檢察官の俸給等に関する法律案につきまして修正の動議を提出したいと思います。この修正の動議は各派共同提案という形で提出するものでございます。先ず裁判官の報酬等に関する法律案についての修正点を申上げますと、第九條中「國務大臣の例に準じ」とあるのを「内閣総理大臣等の俸給等に関する法律の例に準じ、」に改めます。それから第十條中「最高裁判所は、」の次に「別に法律の定めるところにより、」を加え、「支給することができる。」を「支給する。」に改める。それから檢察官の俸給等に関する法律案に対する修正点でありますが、第一條中「國務大臣の例により、」とあるのを「内閣総理大臣等の俸給等に関する法律の例により、」に改めます。それから第八條の次に、次の一條を加え、第九條として、「檢事の俸給月額は、特別のものに限り、当分の間、第二條の規定にかかわらず、一万四千円とすることができる。」、以上の通りであります。
 簡單に理由を説明いたしますと、裁判官の報酬等に関する法律案の第九條でありますが、「報酬及び退官手当以外の給與は、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官には、國務大臣の例に準じ」ということになつておるのでありますが、諸般の均衡上、別に定められる内閣総理大臣等認証官の俸給に関する法律の例に準ずるのが適当と認められるのであります。これは高等裁判所長官についてお考え下さればその趣旨のあるところは察知して頂けると存ずるのであります。
 次に第十條でありまするが、物價の変動、生計費の変動その他の理由によりまして、一般の官吏について俸給その他の給與が増加したという場合、裁判官の報酬も当然上げなかつたならないのでありますが、それは別に法律の定めるところによつて支給することができるということにして、新らしい報酬を定め得るということを明らかにいたしました。原案によりますと、それがはつきりしておりませんので、それをはつきりさせたのであります。
 次に檢察官の俸給等に関する法律案の修正点を御説明申上げます。原案によりますと、「檢察官の給與に関しては、檢察廳法及びこの法律に定めるものを除くの外、檢事総長、次長檢事及び檢事長については、國務大臣の例により」となつておるのでありますが、裁判官の方の第九條の修正と同じ趣旨を以ちまして諸般の均衡上同様の修正を致したいと存ずるのであります。これも次長檢事及び檢事長についてお考え下さればこの趣旨を概ね察知して頂けると存ずるのであります。次に第九條に「檢事の俸給月額は、特別のものに限り、当分の間、一万四千円とすることができる。」ということにいたしましたのは、これは過渡的の事情といたしまして、高等檢察廳の所在地或いは横浜、京都、神戸のごとき大都市におきまして、例えば檢事正の俸給がこの原則の一万三千円という程度では諸般の事情上やや少きに失する場合があり得るという意味合からいたしまして、今の高等檢察廳所在地、横浜、京都、神戸に限りまして場合によりましてこの一万四千円を支給することができることにいたすことが、先程申しました諸般の客観的の情勢上当分の間適当であるという結論に達しました次第なのであります。
 以上を以て修正の動議の提出を終ります。
#45
○委員長(伊藤修君) 討論の通告を順次に指名いたします。大野君、
#46
○大野幸一君 私は本修正案について賛成する者であります。提案者より説明をせられましたから省略をいたしますが、ただ檢察官の俸給等に関する法律案の、第九條を挿入するという点であります。第九條の「檢事の俸給月額は、特別のものに限り、」、この「特別のものに限り」という意味につきましては、多くとも十一名、即ち高等檢察廳所在地の檢事正と横浜、京都、神戸の各檢事正を指して、それ以上はいけない、これだけはできるならば残さず皆一万四千円にするというようなことは成るべく避けて貰いたい。これは提案者から説明があつた通り、全く現在のこの法律の制度を裁判官と檢察官との間において差等を設けるべきだということが輿論で、政府としては裁判官を尊重したいと、こういう意味でありまするけれども、從前までの各実情は同等の立場にあつた点を斟酌いたしまして、この修正案を出したのであります。從つて今後例えば民間から檢事正が採用されるような場合、弁護士から採用されるような場合には、この「特別のものに限り」という中には入らないといと考えの下の提案であります。「当分の間」ということにつきましても今申しましたような点を斟酌しての提案であるということを御説明を申上げたいと思う次第であります。
#47
○星野芳樹君 私に無所属墾談会を代表して本委員委の席を汚す者として本修正案に対して賛成であります。理由は一々申しませんが、この本法案は、裁判官の重要なる責務と責任と職務に対し十分なる報酬をするという問題ですが、更に檢察官というものが裁判官に準ずる仕事をしておる、更に今までの経過がその採用について余り変らなかつた状態があるというようないろいろな議論があつて、その結果非常に複雜した結果として最も妥当なる解決がこれであると信じまして賛成いたす者であります。
#48
○遠山丙市君 本案に対する修正案は、只今松井君の修正案に対しまする御説明によつて明瞭でありますように、誠に時宜を得た修正案であると考えるのであります。民主自由党を代表いたしまして賛成の意を表したいと思います。
#49
○小川友三君 裁判官の報酬等に関する法律案に関する修正案は前議員からいろいろお話がございました通り、この修正案に賛成する者でありますが、この第九條中の修正点は修正したくなかつたのでありますが、これは修正案に賛成いたします。又檢察官の方の第一條中の修正点は修正したくなかつたのでありますが、この修正案に賛成いたします。治安を確立するために御盡力下さる裁判官並びに檢察官の待遇はまだこれで適正でないと思いますが、現下の情勢から本案に賛成いたします。
#50
○委員長(伊藤修君) 他に御発言ありませんですか。……では討論はこれを以て終局することに御異議ありませんですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#51
○委員長(伊藤修君) 御異議ないものと認めて討論は終局いたします。では、直ちに採決に入ります。先ず両案に対するところの修正案について採決をとります。裁判官の報酬等に関する法律案に対する修正案を問題に供します。この修正案に対して御賛成の方の御起立を願います。
   〔総員起立〕
#52
○委員長(伊藤修君) 全会一致、修正案通り決定いたします。
 次は檢察官の俸給等に関する法律案に対する修正案について採決をとります。修正案全体を問題に供しまして、この修正案に対して賛成の方の御起立をお願いいたします。
   〔総員起立〕
#53
○委員長(伊藤修君) 全会一致、修正案通り決定いたします。
 次に修正個所を除く原案に対して両案を一括問題に供します。修正案を除く原案に対して御賛成の方の御起立を願います。
   〔総員起立〕
#54
○委員長(伊藤修君) 全会一致原案通り可決すべきものと決定いたします。では本会議における委員長の口頭報告については予め御了承を願います。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#55
○委員長(伊藤修君) 尚この法案に対する御賛成の方の御署名を願います。
   〔多数意見者署名〕
#56
○委員長(伊藤修君) 本日はこれを以て散会いたします。
   午後三時四十一分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           岡部  常君
   委員
           大野 幸一君
           中村 正雄君
           水久保甚作君
           遠山 丙市君
           宇都宮 登君
           松井 道夫君
           宮城タマヨ君
           星野 芳樹君
           小川 友三君
  國務大臣
   國 務 大 臣 苫米地義三君
   國 務 大 臣 鈴木 義男君
   法務廳事務官
   (調査意見第一
   局長)     岡咲 恕一君
   大藏事務官
   (給與局長)  今井 一男君
ソース: 国立国会図書館
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