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1947/11/23 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第60号
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1947/11/23 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第60号

#1
第001回国会 司法委員会 第60号
昭和二十二年十一月二十三日(日曜日)
    午前十一時十八分開議
 出席委員
   委員長 松永 義雄君
   理事 石川金次郎君 理事 荊木 一久君
      井伊 誠一君    石井 繁丸君
      榊原 千代君    打出 信行君
      八並 達雄君    山下 春江君
      北浦圭太郎君    花村 四郎君
      山口 好一君    大島 多藏君
 出席國務大臣
        司 法 大 臣 鈴木 義男君
 出席政府委員
        法制局長官   佐藤 達夫君
        司法事務官   奧野 健一君
    ―――――――――――――
十一月二十二日
 最高法務廳設置法案(内閣提出)(第一〇七
 號)
 民法の改正に伴う關係法律の整理に關する法律
 案(内閣提出)(第一〇八號)の審査を本委員
 會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案
 (内閣提出)(第一〇四號)
 家事審判法施行法案(内閣提出)(第一〇九
 號)
 最高法務廳設置法案(内閣提出)(第一〇七
 號)
 民法の改正に伴う關係法律の整理に關する法律
 案(内閣提出)(第一〇八號)
    ―――――――――――――
#2
○松永委員長 ただいまより會議を開きます。日程により最高法務廳設置法案提案の理由につき政府の御説明を求めます。
#3
○鈴木國務大臣 唯今上程に相成りました最高法務廳設置法案の提案理由の御説明を申し上げます。
 この官廳の性質地位に鑑みまして、内閣總理大臣から御説明申上げるのが適當と存ずるのでありますが、内閣總理大臣の命によりまして、主としてその立案の任に當りました關係上、私から御説明申し上げることといたします。御了承を願います。
 御承知の通り新憲法においては、種々の制約と例外とはございまするが、立法行政司法三權の分立を大原則として樹立いたしたのであります。立法は國會が掌り、行政は内閣が掌り、司法は裁判所がこれに任ずるという建前であります。
 この三作用の分立を明確にいたしました結果、從來裁判所の人事、豫算及び事務章程の制定等に關する權限が、質實上司法大臣の手にありましたのが、あげて最高裁判所に委ねられたのであります。かくて、司法省の任務、その在り方がいかにあるべきかということが再檢討されなければならぬことになりましたのは當然のことと存ずるのであります。殊にこのことは、去る九月十六日附マッカーサー元帥から内閣總理大臣にあてられましたる書簡のうちに強く示唆されたのであります。
 政府はこの必要に鑑みましてて内閣に、警察制度とともに司法省の改廢問題に關する調査審議委員會を設けまして、不肖私がその委員長に指名せられまして、愼重審議の結果、今囘提案の如き結論に到達いたしたわけであります。
 私どもの考では、もしこれを司法省だけの改廢問題として考えますならば、裁判所が獨立をいたしました後は、その殘餘の所謂司法行政事務だけを取扱う官廳として殘すことも考えられまするし、又檢察事務は一個獨立の事務でありますから、檢事總長のもとにこれを獨立の官廳とし、登記戸籍等の事務、行刑及び司法保護等の事務もそれぞれ獨立の官廳に委ねまして、司法省というものは解體してもよろしいとも考えられるのでありますが、こういう消極的な解決だけでは不十分でありまして、さらにこの機會に、新憲法下における行政權行使の適法性を確保するために、行政部全體における法律事務を總合的に統轄して行くべき職責と任務とを有する新機關を設置することを構想したのであります。すなわち、新憲法は、國民の不可侵かつ永久の權利として、基本的人權を保障し、健全なる民主的政治國家の確立のために、最高裁判所に對し、一切の法律、命令、規則又は處分が適合するかしないかを決定する權限を與え、また、裁判所に對し、刑事の裁判權の外、すべての行政事件その他の法律的爭訟を裁判する權限を與えているのであります。從つて政府が、憲法及び法律を忠實に施行するためには、政府自體においても、憲法及び法律の解釋適用を統一して、自主的に法に則つた政治を確保することが絶對に必要でありまして、このためには、政府に一元的な法務に關する統轄機關を設け、法律問題に關する政府の最高顧問として、行政部門に對し法律上の意見の陳述又は勸告をさせることが適當と存ずるのであります。これがすなわちこの法案に所謂最高法務總裁でありまして、この最高法務總裁の管理する事務は、最高法務廳でこれを掌るのであります。
 こういう官廳は各省とは異りまして、行政部全體にまたがる任務を遂行するのでありますから、一つの省として考えられるべきではなく、獨立總合的官廳として内閣に設置せらるべきものと存ずるのでありまして、これを省と呼ばずして廳と名付けましたのも、そのためであります。
 この制度を立案いたすにつきましては、英米におけるアトーニー・ゼネラルの制度が參酌せられたのでありまして、殊に米國のアトーニー・ゼネラルの制度が參考となつたのであります。役所をつくるというよりは、行政部全體に對する最高法律顧問たる最高法務總裁というものを設ける、そしてその最高法務總裁が仕事をしていく必要上、諸々の補助官府をもつという建前でありまして、制度よりは人に重さをおくのでありますから、法案の建前は、先づ最高法務總裁をおく、これが最高の權威と權限をもつという意味で、特に最高法務總裁と名付けたのであります。そしてこの總裁のもとに、檢察長官、法制長官、法務調査意見長官、訟務長官及び法務行政長官の五長官を設けたのでありまして、この五長官は、米國のソリサイター・ゼネラル・アツシスタント・ツー・ザ・アトーニー・ゼネラル等に當り、それぞれ主管事務について、最高法務總裁を助けるのであります。
 この最高法務總裁は、きわめて重要な官職でありまして、不偏不黨公正に職務を遂行すを者でなければなりませんので、その選考を愼量にすることを期待いたしますために、その地位にふさわしい者の中から選ぶということを法分上特に明らかにいたしたのであります。しかしまた内閣の一員であります以上、常に國會に對して責任を負うものでなけれでなりません關係上、その者は常に國務大臣であることといたして居るわけであります。
 次に法案の具體的な内容について、その概略を御説明申し上げますと、最高法務總裁は、法律問題に關する政府の最高顧問として、内閣竝びに内閣總理大臣及び各省大臣に對し意見の陳述又は勸告をなすとともに、政府における法務の總合統轄機關として、國の利害に關係のある爭訟に關する事項、内外法制の調査に關する事項、人權の擁護に關する事項等の外、從來司法大臣の所轄に屬した檢察事務及び檢察廳に關する事項、恩赦、犯罪人の引渡、戸籍、登記、供託、行刑竝びに司法保護に關する事項、從來法制局の所管に屬した政府提出の法律案又は政令案の審議立案、條約案の審議に關する事項を管理し、なおこれに關連して、昭和二十二年勅令第一號の規定による覚書該當者の觀察等に關する事項、竝びに從來内務大臣の所管に屬した國籍、外國人の登録、昭和二十一年勅令第百一號の規定による政黨、協會その他の團體の結成の禁止、連合國最高司令官の要求に基く正規陸海軍將校又は陸海軍特別志願豫備將校であつた者等の調査等に關する事項をも統合管理することといたしたのであります。この最高法務總裁は、先ほど申しましたように、その地位の重要性に鑑み、これにふさわしい者の中から、内閣總理大臣がこれを任命し、その者は國務大臣として内閣に列するものとし、また、この者はその擔當する行政事務については、内閣法にいう主任の大臣たるものとして、その職務權限については「省令」を「最高法務廳令」と讀み替えるほか、行政官廳法第四條ないし第七條の規定を準用することにいたしたのでありまして、これらのことは、この法律の第一、二條に規定しているところであります。
 次に最高法務總裁の補助機關について申し上げますと、最高法務總裁のもとに、檢察長官、法制長官、法務調査意見長官、訟務長官及び法務行政長官、の五長官を設けて各長官總務室及び所屬各局の事務を指揮監督させるほか、最高法務總裁官房長を置いて、總裁官房の事務を指揮監督させることとし、また、最高法務總裁の管理する事務所は、最高法務廳でこれを掌ることとして、最高法務廳には、總裁官房及び各長官總務室のほか、檢察長官のもとに檢察局及び特別審査局を、法制長官のもとに、法制第一局、法制第二局、及び法制第三局を、法務調査意見長官のもとに、調査意見第一局、調査意見第二局及び資料統計局を、訟務長官のもとに、民事訟務局、税務訟務局及び行政訟務局を、法務行政長官のもとに、民事局、人權擁護局、矯正總務局、成人矯正局及び少年矯正局を設けることにいたしたのであります。以下簡單にこれらについて御説明申し上げますと、まず檢察長官のもとにありまする檢察局は、從來司法省刑事局の所掌に屬した檢察の指揮その他の檢察事務及び檢察廳に關する事項、恩赦、犯罪人の引渡、犯罪捜査の科學的研究、司法警察職員の教養訓練に關する事項等のほか、檢察事務に關連する犯罪の豫防その他刑事に關する事項で他の所管に屬しない事項を掌り、また特別審査局は、昭和二十一年勅令第百一號の規定による各種團體の結成の禁止及び解散等に關する事項のうち、民事局の所管に屬する同勅令による政黨、協會その他の團體の財産の接収及び處理竝びに政黨の登録に關する事項を除くその他の事項、連合國最高司令官の要求に基く正規陸海軍將校又は陸海軍特別志願豫備將校であつた者等の調査等に關する事項竝びに昭和二十二年勅令第一號の規定による覚書該當者の觀察等に關する事項を掌るのであります。
 次に法制長官のもとにおける法制第一局、法制第二局及び法制第三局は、從來法制局の所管に屬していた政府提出の法律案及び政令案の審議立案竝びに條約案の審議に關する事務を掌るものでありまして、法制第一局は、主として外事財政又は金融その他法制第二局又は法制第三局の所掌に屬しない事項に關するもの、法制第二局は、主として産業、經濟、運輸または通信に關するもの、法制第三局は、主として法務、文教、厚生又は勞働に關するものをそれぞれ分擔するものとし、ただ、これら各局の事務は、相互に關連性を有して居りますので、法制長官は特に必要があると認めるときは、臨時に各局所掌の事務を變更することができるものとしたのであります。
 次に最高法務總裁は、法律問題に關する政府の最高顧問として、行政部門に對し法律上の意見の陳述または勧告をなし、その他法務に關する總合機關として重要な機能をもつているのでありますが、これらの機能を十分に果すためには、平素より廣く内外の法制及びその運用の實情に關する基本的であつてかつ總合的な調査研究をなし、またその資料を収集整備する必要があるのでありまして、このため規模の大きい調査機構を設けることが要請せられる次第であります。この意味におきまして、法務調査意見長官のもとに調査意見第一局、調査意見第二局及び資料統計局を設け、調査意見第一局において司法制度、民事及び刑事に關する内外の法制竝びにその運用に關する調査研究に關する事務を、(調査意見第二局においては、それ以外の内外の法制及びその運用に關する調査研究に關する事務を)また、資料統計局においては、内外の法令その他法制に關する資料の収集、整備及び編纂、法務に關する統計竝びに法令の周知徹底に關する事務を掌らせるほか、各局それぞれその所掌事務に應じて、内閣竝びに内閣總理大臣及び各省大臣に對する法律上の意見の陳述又は勸告に關する事務を掌らせることといたしたのであります。
 さらに訟務長官のもとに設けられまする民事訟務局、税務訟務局及び行政訟務局について申し上げますれば、これらの部局は、國の利害に關係ある爭訟に關する法務總裁の權限を輔佐するため設けられたのでありまして、民事訟務局は、民事に關する爭訟に關する事務を、税務訟務局は、租税及び關税に關する爭訟に關する事務を、また行政訟務局は、税務訟務局の所掌に屬するもの以外の一切の行政に關する爭訟に關する事務を掌ることといたしたのであります。
 さらに、またその他の法務行政を擔當する部局について申しますれば、民事局は、從前司法省民事局の所掌に屬していた戸籍、登記、供託公證、司法書士及び司法事務局に關する事項のほか、これまで内務省の所管に屬していた國籍及び外國人の登録に關する事項、昭和二十一年勅令第百一號の規定による政黨の登録竝びに政黨協會その他の團體の財産の接収及び處理等に關する事項、竝びに民事に關する事項で、他の所管に屬しない事項を掌るものであり、人權擁護局は新憲法によつて認められた基本的人權の確保のために、人權侵犯事件の調査及び情報の収集、民間における人權擁護運動の助長、人身保護及び貧困者の訴訟救助その他人權の擁護に關する事項を掌らせるため、とくに新しく設けられたものであります。また矯正總務局、成人矯正局及び少年矯正局は、從來、司法省の行刑局及び保護課の掌つていた行刑及び司法保護に關する事務を統合してこれを一元的に取扱うものでありますが、最近における犯罪激増の傾向に鑑み、行刑及び司法保護に關する機構を整備するため、新たに三局を設け、そのうち矯正總務局においては、犯罪人に對する行刑及び保護に關する企畫及び事務の調整に關する事項、刑務所、拘置所、少年審判所、矯正院その他の官公立の少年矯正施設に關する事項、矯正職員の教養訓練に關する事項竝びに犯罪人の指紋に關する事項、その他行刑及び司法保護に關する事項で他の所管に屬しない事項を掌らしめ、成人矯正局においては、成人に對する刑及び未決勾留の執行に關する事項、成人犯罪人の保護に關する事項竝びに成人に對する司法保護事業に關する事項を、また、少年矯正局においては少年に對する刑及び未決勾留の執行に關する事項のほか、少年法の改正によつて設立しようと考へて居りまする少年裁判所によつて保護處分に付された罪を犯した少年その他の少年の保護に關する事項、竝びに少年裁判所によつて保護處分に付された少年に對する司法保護事業に關する事項を掌らせようとするものでありまして、以上の五局及びその事務を指揮監督せしむるため法務行政長官を設けたのであります。
 なお以上各局のほか、各長官の下には、長官所屬の各局の指揮監督に關する事務を掌らせるため、各長官總務室を置くことといたしましたが、事務の統一保持の點から、この種の機關は必要と存ずるのであります。
 さらに、總務官房について申しますれば、ここでは、從來各省官制通則等で官房の所掌事務として定められていた、機密に關する事項、總裁の官印及び廳印の管守に關する事項、所管行政の考査に關する事項、公文書類の接受、發送編纂及び保存に關する事項、職員の進退身分に關する事項、經費及び収入の豫算、決算、會計及び會計の監査に關する事項竝びに最高法務廳及びその所管各廳の管理に屬する財産及び物品に關する事項のほか、皇統譜令に基く皇統譜副本の保管に關する事項、辯護士法に基く辯護士及び辯護士會に關する事項、廳外機關たる最高法務廳研修所に關する事項、竝びに連合國最高司令部との連絡その他の渉外事務に關する事項をも掌るものであります。
 以上最高法務總裁の主なる補助機關及びその所掌事項について申し上げましたが、これらのことがらは、この法律の第三條乃至第十一條に規定しているところでありまして、もしこれらの規定によつて所掌部局の定まらない事務があるときは、その事務は最高法務總裁の定める部局がこれを掌るものとし、またこの法律に定めるもののほか、最高法務廳の職員竝びに廳外機關である最高法務廳研修所の設置その他について必要な事項は政令でこれを定め、廳内各局、各長官總務室及び官房の分課について必要な事項は、最高法務總裁がこれを定めることといたしたのでありまして、これらのことは、第十二條及び第十三條に規定して居ります。
 次に經過規定について申し上げますと、この法律は施行の準備の都合上、公希の後六十日を經過した日からこれを施行することとして、第十四條にその旨を規定いたしました。また、從來司法大臣管理に屬した私立の矯正施設に關する事務及び罪を犯すおそれのある少年の保護に關する事務は、從來の實績に鑑み、暫定的には最高法務總裁にこれを取扱わせるが、將來はこれを最高法務總裁の權限から除外することとして、これに關する經過規定を設けたものでありまして、その詳細は第十五條に規定してある通りであります。
 以上この法案の提出の理由及びその内容の概略について申し述べましたが、初めに申し上げましたように、わが國が將來健全なる民主的法治國家として發展するためには、新しい職責と機能とをもつた最高法務廳のような機構が絶對に必要であるのでありまして、この點は、十分に御了解をいただけるものと確信いたすのであります。なお詳細につきましては、ご質問に應じお答え申し上げることといたしまして、この邊で説明を終りたいと存じます。何とぞ愼重御審議の上、御可決あらんことをお願いする次第であります。
#4
○松永委員長 速記を止めて……。
    〔速記中止〕
#5
○松永委員長 速記を始めてください。
 次に、訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質議を行います。山口好一君。
#6
○山口(好)委員 今囘最高法務廳設置法案の提案をいたされることに相なりましたが、そのことと關連して、私が常に考えておることについて、特に行刑の問題について、いささか御質問をいたしたいと思います。
 言うまでもなく刑の目的というものは、裁判の審理がなされて、しかして判決をいたされる、この判決をもつて終るものではないのであります。事件を審理して、これに適切なる判決をくだしたということだけでは、刑の目的は達し得ないのであります。しかして從來のある種の考え方のごとく、惡法には惡科をもつて報いる、こういうような考え方であつてはもちろん相ならないのでありまして、新憲法に基く個人の權利の尊重と、個人の基本權の尊嚴という點から申しましても、從來とても、この點については、判決後の處遇及びその刑を離れたあとの保護の問題を完璧にいたさなければ、刑の目的、裁判の目的は達成されないことは、論をまたないところであります。しかして、むしろ裁判竝びにその判決をいかに適切にいたすかというその苦心よりも、さらに以上に關心が拂われなければならないのが、刑の執行後の保護問題であると、私は痛感いたすものであります。しかし惜しむらくは、この行刑方面竝びに保護事業方面においては、從來その關心は非常に淺いのであります。民主主義の國家ということでありましたならば、まずもつてこの方面をまつさきに取上げて考えなければならないと思うものであります。殊に現時のごとく種々なる刑罰法規が濫發され、刑務所はほとんど滿員という状況を呈しているこの現状においては、さらに一層これを考慮いたさなければならないと思うのであります。過日所々の刑務所を訪ね、あるいは行刑局を訪問いたしまして、その現状を尋ねてみまするのに、行刑局としては、あとからあとから出される刑罰法規のために、犯罪者は急速度に増加をいたしております。しかもこれに對して刑務所における施設、あるいは必要なる人員というものは、少しも顧みられておらない状況にありますので、これがために刑務所におけるところの監視についても、種々なる缺點を生じ、過般來續出しましたところの事故なども、これに多くの原因を派生しておることは、われわれのよく看取しなければならないところだと思うのであります。行刑局におきましても、議會においては、ただ法律をつくることだけを考えておつて、殊にその刑罰につきましては、それがために行刑方面において、あるいは保護事業方面において、いかなる考慮が拂わなければならないかというその點については、いささかも關心がもたれておらないということを指摘しておるのでありまして、われわれ國會に携わる者も、この點については、深く思いをいたさなければならないと思うのであります。まずもつて私はこの刑罰法規の濫發ということについて、司法大臣がいかに考えておられるかということを第一點として質問をいたします。
 さらに第二點としては、今までの行刑局が今度廢止され、民事局の中に包括せられることになるようでありますが、さらにこの行刑竝びに保護方面については、行刑局が設けられ、少年行刑局あるいは青年行刑局というように分類いたされて、この點については、さらにその考慮を進められつつあることは、認められますが、實際において、この行刑竝びに保護事業について、さらに突き進んだところの、民主國家として必要なるべきその施設なり、設備なりについて、さらに一段の御考慮を拂われておられるか、できるならば具體的な計畫について承りたいと思います。これが第二點であります。
 さらに第三點としては、從來行刑方面においての監督官である行刑局長は、檢察畑から選任せられておるのであります。檢事をもつて行刑局長ということに從來の慣例でなつておるようでありますが、行刑方面、保護方面も深く考えましたならば、これはやはり行刑畑において、深く現實問題を檢討して、その體験を有する行刑の畠からこれを、選び出すのが妥當でないかと、私は早くから考えておるのでありまするが、さきの議會におきましても、木村司法大臣にも、その點は十分お尋ねをいたし、またお願いもいたしておつたのでありまするが、この點についての鈴木司法大臣の御意見を伺いたいと思います。
 第四點といたしましては、とかく行刑及び保護方面におきましては、社會の關心も薄いのでありまするが、さらに當局におきまする關心も薄いことは、先ほど申し上げた通りでありまして、この事業は、いわゆる縁の下の力持ちで、非常に重要ではありまするが、地味な忘れられがちな部面であるのでありまして、こういう方面にこそ、私は一層の注意を拂うことが、民主主義の實現に副うことであると考えるのでありまして、行刑方面に携わります人々の待遇改善、それからただいま申し上げました行刑の最高官になつておりまする人々の人選、竝びに保護事業に對しまする監督なり補助なり、こういうことについて一層の努力を拂うことが必要であるということは、先ほど申し上げた通りでありまするが、さらにこの保護事業などに携わつておりまするほんとうのピユーアーな考えで、自分を犠牲にして、何十年となく不良少年とか、あるいはその他感化を要する人々を救い上げておりまするその事業に携わつておる人々の取扱い方、待遇がわたしはまつたく閑却せられておるように思うのであります。これからはぜひともこの方面に携わつております人々、竝びにその機關に對しましては、殊にこの施設のそういう事業に對しましては、十分な保護を與えてもらわなければならないと考えるものであります。一例を申し上げますならば、このたび刑法の改正にあたりまして、前科抹消の規定が設けられました。これは少なくとも行刑及び保護方面についての一層の關心をもたれまして、これを刑法に表わし、そして眞に更正した人々を救い上げる、こういう目的に副うておるので、刑法におけるこの條文の盛られますことは、一大進歩であり、われわれの非常な喜びであるのでありまするが、そうした問題について盡力をしてきたところの下積みの人人、あるいはこの國會におきまして、これらの問題を何囘となくて取上げておられますような人々については、特にその勞を賞しまして、たとえば感謝状を適切な方法において供するというような方法をとつてもらいたいと思います。一例を上げるならば、同僚の庄司一郎代議士は、昭和十二年以來、この前科抹消の點につきましては、建議案として六囘、請願四囘、その他本會議や豫算總會で、十七囘にわたりまする涙ぐましい實に赤誠溢るるところの演説をいたしてきておるのであります。その他庄司氏は個人といたしましても、二十數年來保護事業を營んでおりまして、まつたく自分の私財をなげうつて、犠牲的にこれらの事業をいたしておるのであります。その他につきましても、かようにわれわれの存じておりまする範圍においても、たくさんのそうした世問に知られない、ほんとうに下積みな、地味な仕事を、自分では何ら利益にならない、しかもこの民主國家建設のためには、礎石としてぜひとも必要であるこれらの事業に携わつておる數多くの人々があるのであります。これらの人々を適當なる方法において表彰し、またその事業について社會に關心をもつべく政府當局においても最大の努力を拂われてしかるべきであると考えるものでありまして、第四點としては、これに對する司法大臣の御意見を承りたいと存ずるものであります。簡單ではありますが、以上四點について行刑竝びに保護事業方面についての御質問をいたします。
#7
○鈴木國務大臣 お答えをいたします。非常に適切なる御意見でありまして、大體においていずれも私の心から贊成いたすところであります。刑罰法規の濫發ということは、まことに遺憾なことでありまして、刑政の目的は刑なきを期するにあるのでありますから、できるだけこういう法規はつくりたくないのでありますが、御承知のごとく、非常に刻下經濟の状態が逼泊いたしておりますために、種々の方面に制裁法規をもつて當らなければならぬような状態になつておりますために、お言葉のような非常な罪人が殖える、怪我人が殖えるということに相なるのでありまして、これに對しまして適切な對策を講じなければならないということはもちろんであります。できるだけ刑罰法規を少なくすることは、私どもの望んでおるところでありますが、不幸にして刑罰法規が現存する以上、それに觸れるものがありますならば、それを適正に處斷していかなければならぬ。必ずしも全部それを監獄に入れるというような意味ではなくして、適當な對策を講じなければならぬのでありまして、その意味においてこの保護事業がいかに大切であるか。ある意味においては、現下における國家第一位の重要性をもつておる仕事であるとすら私は認識いたしておるのであります。そこで行刑につき、保護についてどういう抱負なり對策なりをもつておるかというお尋ねでありますが、行刑につきましては、他の機會にも詳しく參議院等でお答えをいたしたのでありまして、近く次の議會には提案ができると存じますが、監獄法を改正いたしまして、もつと文化的な、教育的な、合理的な行刑をやつていきたい。こういう考えでおりまして、ぜひその際は御審議を煩わしまして、よき行刑法規の確立のためにご協力を願いたいと思つております。
 それから少年保護につきましては、特別の配慮を必要といたしますから、特に法務廳において三局を設け、特別の制度の上で改革をいたしますだけでなく、その保護のやり方につきましても、特に從來施設の怪しげなる保護團體というようなものは弊害があることを看取いたしまして、できるだけ短期間の間に私立の保護團體を全部官公立の保護施設に改組いたしまして、國家が責任をもつてこれらの施設を經營していく、こういう建前にいたそうと考えておるのであります。そうしてほんとうに愛と權威とをもつて、行刑なり保護なりに當る人材を得まして、この仕事をほんとうに實のあるものにいたしたいということを願つておる次第であります。
 從つて第三點の御質問でありまする行刑局長なり、あるいはその他行刑保護の職員が、單に檢事の古手であるとか、あるいは檢事畑から起用する、そうして一時の出世の腰掛にするというような弊害がありはしないかというお尋ねでありまするが、それまでの弊害はないと思いまするが、元來がすべての仕事はできるだけ専門家を配置し、殊にその仕事に熱と理解とをもつておりまする人を用いることによつてのみ成績をあげることができるのでありまするから、私は行刑の方面につきましては、行刑に特殊の經驗と抱負と見識とをもつた人をぜひ迎えたい、在朝であろうが在野であろうが、どちらでもよろしいのでございますから、そういう人をぜひ用いたい、こういう考えをもつておるのでありまして、そのことは參議院の司法委員會でも明らかにいたしておいたのでありますが、ただ實際の人は、どの人がよいかということになると、非常にむづかしい問題でありまして、長し短かしなかなか適當な人がその専門の畑にすらも見出すことがむつかしいのであります。けれどもたとい多少の長し短かしはありましても、そういう方針で實行をいたすつもりでありまするが、なおそれを補うために、私は民間における有識者、殊にこういう方面に經驗と功勞の多い人を顧問のようなものに御委囑いたしまして、そうしてその足らざる點を補つて、新しい機構でこの仕事を進めていきたいというような考えをもつておる次第であります。
 それから最後に第四點といたしまして、もつとこういう地味なほんとうの仕事をするところの人々に對して、何らかの國家として表彰の途を考えるべきではないか、あたかも私の考えておりまするところに觸れていただいたのでありまして、先日イギリスの勞働黨の代議士のランゲ氏と會いまして、食事をともにしながら詳しく話したのですが、あの人はほとんど勞働黨の代議士で、政治家というよりは、監獄改良だけに専心しておりまして、全世界を歩いて、インドの監獄はこうなつておる、シヤムの監獄はこう、中華民國の監獄はこうで、日本の府中の刑務所はこうで、川越の方はどうだというようなことで、實に世界の監獄の實際について、よく御存じになつておられ、そうしてりつぱな意見をもつておられる。それを専門にあの人はやつておる。こういう人が英國勞働黨の代議士にあるということは、勞働黨の非常な強みであり、わが國の庄司一郎氏に比すべえきものであると考えたのでありまするが、こういう人に對しては、また國家としては特殊の表彰が然るべきである。決して庄司君一人に限つた問題でなく、一般社會事業あるいは保護事業等に功勞のある人こそ、平和的文化國家においては、第一に表彰を受くべきものと私は考えております。實は内閣におきまして、ただいま榮典制度の改革を審議いたしておりまして、私も委員の一人でありまするが、今までは軍國主義的な勳章を差上げておつた。これはやめなければならぬことは當然でありまして、そうでなくても、ただ官吏として年限が經てば勳章を上げるというようなことは、どうかと思うのでありまして、少なくともまず第一には社會事業、保護事業等に、ほんとうに貢獻した人たちが表彰を受くべきである。その意味において、新しい榮典などは考慮すべきものであると考えておることを、この際一言申し上げまして、私のお答えにかえたいと思います。
#8
○山口(好)委員 司法大臣の御熱誠な、私の心配いたしました事柄についての御理解を伺いまして、意見を強ういたす次第であります。ただいま仰せられました精神に基いて、著々とこの方面の仕事を實行していただくように希望いたします。
#9
○松永委員長 暫時休憩いたします。
    午後零時十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十二分開議
#10
○松永委員長 休憩前に引續き會議を開きます。打出信行君。
#11
○打出委員 訴訟費用の點について御質問申し上げます。今囘の改正によると、訴訟を提起する者、あるいは裁判を受ける者は、相當額の費用を負擔することになるのであります。時局に鑑み物價高等によりまして、いたし方ないとは思いますが、貧困者が訴訟を起す場合、訴訟費用救助の制度が設けられておるにかかわらず、手續が非常に煩瑣で、訴訟費用を支辧することができないという證明書を提出させるについて、區裁判所において非常に嚴格にやるために、事實上はわれわれの淺い經驗によれば、ほとんど救助を仰ぐことができないような状態になつておりますが、今日全國的に見てどれくらいの件數のものが訴訟費用救助法によつて訴訟を提起しておるか承りたいと思つています。
#12
○奧野政府委員 訴訟費用の救助につきましては、民事訴訟法に規定がありますが、それに基いてどれだけの件數があるかということは、今手もとに資料がありませんので、お答え申し上げかねますが、訴訟法では今お示しのように、大體訴訟の見込みがあるといつたような疏明を必要としておる關係から、訴訟費用の救助が、たやすく得られない憾みがあろうかとも思います。しかしこれはやはりもう少し自由に、たやすく訴訟費用の救助を受ける途を考えることが必要であろうと思うのでありまして、今囘提案になつております最高法務廳法案の中に、人權擁護局というのがありますが、その局において、訴訟の救助、あるいは官選辯護といつた事柄のことを主管いたしまして、廣く人民の權利の保護に當ることになつておりますから、もしそういう官廳ができれば、今までよりもそういう點について何らかの效果をあげていくことと考えております。
#13
○打出委員 大體了承しましたが、なお一點御質問申上げたいのは、今囘新憲法の施行によりまして、今までは有名無實であつた刑事事件の官選辯護人、これについても國家で費用を負擔するというようなことになつておりますが、これは全國的に統一された金額を支給されるのであるか、あるいは地方によつて差額を設けてやられるのか、また官選辯護人に對する費用等はもちろん豫算に組んであると思いますが、大體どのくらいの程度をお組になつておるか、また官選辯護と申しましても、簡單に濟む事件もあるし、檢證、證人調べ、鑑定というようなものに立會うということもあるのでありまして、その點について、どういう考慮をお拂いになつておるかを承りたい。
#14
○奧野政府委員 その點は刑事訴訟法の改正等と關連して、ただいま研究中でありますが、これは先ほど申した人權擁護局等において、それら官選辯護等のことについても、これから科學的に研究を續けていくことになろうと考えております。その點については、刑事訴訟法の改正と相關連して、官選辯護の費用等について増額の豫算等出すことになろうと考えておりますが、それにただいまの人權の擁護局においてもさらにその點を考慮して、できるだけ豫算を要求することにいたしたいと思うのであります。
#15
○打出委員 私の承りましたところでは、九州の例を申し上げますと、福岡の地方裁判所關係においては官選辯護人に對しまして三百圓、しかるに熊本の地方裁判所においては、豫算がないとかいうような關係かしりませんが、二百五十圓だというようなことを承つておるのであります。そういうように、各地方において官選辯護人に立つ者が差額をつけられるということは、これは法の建前からもいかがなものでああろうかと思うのでありまして、もしそれが事實とすれば、そういう點は深甚の御考慮をお願いいたしたいと希望を申し上げておきます。
 なおまた執行吏の點につきまして一、二お伺いいたしたいと思います。かつて執達吏華やかなりしころは、監督、書記あたりが喜んでなつておりまして、その収入も相當多額な収入を得ておつた時代もあつたのであります。しかるに近時においては、裁判所から支給される俸給、あるいは自分の収入になる手數料が、非常に安價にすぎたために、執達吏代理の給料を拂うのみで、自分は一文も手にしないというような状態であつたために、今までの執達吏がだんだんやめてしまいまして、熊本のごときにおいても、熊本地方裁判所の司法事務局においては、たつた一人しかない。あの廣い區域にたつた一人で、一名か二名の代理者を使つて執行しておるために、非常に執行が延引したり、時機を失したりするような點が再三あるので、今囘待遇改善の意味をもちまして、相當手數料等も値上げになつておりますが、これで安心して執行吏が仕事ができるかどうか。その點の見透しを承りたいと思います。
#16
○奧野政府委員 實は執行吏の収入状態ははなはだ稀薄なものでありまして、ただいまお話しのように、從來は非常によかつたのでありますが、戰時中竝びにその後の状況は、きわめて稀薄になりまして、昨年度におきましては、一人一箇月平均二百八圓十九錢、本年度では一月から六月まで半箇年間におきまして、一人一月平均四百九十圓七十六錢というような、非常に問題にならぬ収入になつております。そこで御承知のように、執達吏に對しましては、一定の金額まで収入が達しない場合は、その差額だけを國庫から補助されております。そのいわゆる國庫から補助されております額は、一年六千圓となつておるのでありますが、昨年度におきましては、全國の執達吏が二百四名ありますうち、百七十九名が國庫補助金を受ける有樣でありまして、要するに六千圓以上の収入の者は、二百十四名中百七十九名を除いた者しかない、大多數が六千圓未滿ということになつております。政府といたしましても、この法律案によりまして、執達吏の手數料等を相當増額していただけることになつておるのでありますが、それのみでは、やはり生活がほとんど滿足にできかねるのではないかというふうに考えますがゆえに、この國庫補助金の點につきましても、現在の六千圓というのを増額するように、できるだけの努力をいたしまして、豫算等の増額を要求いたし、もつて執達吏の生活を保障することに努力いたしたいと考えております。
#17
○打出委員 執達吏の生活等について、その向上に努力されるということは、まことに結構なことであります。われわれの經驗によりますれば、執達吏が一番収入が多かつたのは、不動産の競賣、強制競賣、抵當權の執行、そういうようなものが地方におきましてはたくさんに出てくる。あるいは金錢債務の強制執行というようなものが、ほとんど大部分を占めておりましたが、今日は不動産の値上り、あるいはこういうような經濟状態となりまして、もうすでに不動産の強制執行というようなことは、ほとんどないというてもよいような状態になつております。抵當權でも執行しようとすれば、ただちにそれを賣拂つてしまつて、拂うというような状態となつておりまして、われわれの知つている範圍では、假處分とか假差押とか、こういうようなものがよけい出て、判決による執行は非常に少なくなつているのであります。從いまして、執達吏の手に殘る金は、きわめて小額なものである。しかしただいま御意見を拜聽いたしまして、この上とも執達吏の優遇に、層一層の御研究をお願いいたしたいと思うのであります。殊にある地方に參りますると、訴訟が起きれば相手方に對して怨恨を抱く、裁判があれば裁判官をあるいは相手方の辯護士に對して反感をもつ、それがいよいよ執行に移つてくると、今度は執達吏に對しての怨恨となつて、かつては執達吏に對して傷害を加えるとか、あるいは鐵砲をもち出してねらい撃ちにしたというような事件も、私どもは承つておるのであります。そういうことになれば、生命の危險も負擔しているという氣の毒な立場にある執達吏であります。それに對しては、今後できるだけ十二分に優遇の途を講じていただきたいという希望を申し上げておきます。
#18
○石川委員 お伺いいたしますが、この民事、刑事の訴訟費用及び執行吏の手數料増加いたしますことは、やむを得ないことと存じます。本案は現下の物價状態から見まして、法律であると思いますが、左の二、三點だけをお聽きしたいと存じます。
 この費用及び手數料を増額いたしました基準に何によつているのかという點であります。たとえば第三條における改正でありますが、二十五倍に相當する増加をいたしましたことは、何を基準としてこのように一切の増額を求めてこられたかお聽きしたい。
#19
○奧野政府委員 民事、刑事の訴訟費用、執行吏の手數料につきましては、昨年九月に訴訟費用等臨時措置法の改正をいただきまして、相當増額してまいつたのでありますが、同時にその後一年間の經濟情勢の變遷が、さらにこれを増額せざるを得ない事情に立至つたわけでありまして、すなわち本年六月の物價指數に例をとつてみますと、總理廳統計局調査の東京における消費者物價指數表では、昨年の九月すなわち昨年増額していただいたときの状態の物價に比べて、約三倍となつておるのでありまして、そういう關係から、裁判所に出頭いたします訴訟關係人の宿泊料、旅費、日當というようなもの、あるいは執行吏の収入が實質上非常に低下いたしまして、執行吏の生計を維持することができないというような状態になつておりますので、今囘の増額をお願いした次第でありますが、大體におきまして、そういう意味で約二倍半から三倍、昨年九月との物價の比較状態によつて上げております。ただ多少各具體的な場合において、ものによつて違つておるのでありまして、全部が全部三倍ということではありません。ただいまご指摘の二條でありますが、これは民事訴訟費用法の關係で、いわゆる書類とか書面の書記料、飜譯料等の増額であります。これは結局現行、つまり昨年九月に改正されましたものを、物價指數を標準として二倍半に引上げたことになるのであります。ただ表現が同法に定むる額の二十五倍に相當する額というふうになつております。これはこの前の書き方をいたしますと、百分比でこの前は百分の九百を増加するということになつておりますが、それをこんどの二倍半引上げるというふうにいたしますと、百分の二千四百を増加すというふうにいわなければならないので、いかに體裁が變でわかりにくいと考えまして、むしろ現行の額、と申しますのは大正十年の法律六十七號てありますが、それを百分の百として今まで計算してまいつたのを、最近では百分の九百を加えて五十錢になつております。それを今度は百分の二千五百に増額して一圓二十五錢ということに、すなわち書類の書記料が紙半枚について一圓二十五錢というふうに相なるわけであります。
#20
○石川委員 それでよく比率の點はわかりましたが、そこでこれはお聽きすることが變になるかもしれませんが、政府の新物價對策というような關係から、この問題の比率というものは、相對應して考えられておりますかどうか聽きたい。
#21
○奧野政府委員 この點は政府内におきまして、物價廳あるいは大藏省、また國際的には關係方面ともよく了解をとげて、この程度の増額によつては、いわゆる物價體系が維持できるという政府全體の意見の一致の上、提出いたしておるわけであります。
#22
○石川委員 三にお伺いしたい點は、小額債權とでも申しまするか、小さな權利者が權利救濟に非當に困難になつておるかと思われます。非常に費用がかかつてまいりますために、小さい權利は放棄せざるを得ない、こういうことになりますと、せつかく權利というものは認めてやる、義務は誠實に履行する。こういう建前で將來法は運用されるにかかわらず、小さい權利はこれを捨てなければならないという状態になりはしないか、こういう點に對して政府は特に御考慮があるかどうかをお聽きしたいのであります。
#23
○奧野政府委員 その點でありますが、今囘はいわゆる證人とか鑑定人、そういう者の旅費、あるいは日當といつたものは増額いたしましたが、いわゆる訴訟を起すための印紙、いわゆる訴訟の金額に應じて拂います印紙につきましては、全然手を觸れないことにいたしたのであります。從いまして、そういう意味の訴訟費用は、全然増加されていない。もつとも旅費、日當が上がりましたがゆえに、もし原告なり被告なりが敗訴するというようなことになれば、あるいは訴訟費用の負擔とかは相當増額した負擔になるかもしれませんが、ほんとうの權利を實行するという場合においては、そういう意味で、この本案によりましては惡くなつておると思います。
#24
○石川委員 一旦訴訟が開始いたされますと、それに貼用いたします印紙のみが費用でございません。それはわずかに費用の一部にすぎません。民事訴訟を最終まで議しますためには、證據の提出等による費用がかえつて多いのであります。今の制度でありますと、民事においては訴訟の救助の制度、刑事においては先ほども問題になりましたが、官選辯護の制度と、二つあるのであります。しかしこれのみをもつていたしては、政府が法務廳を新たに設けまして、總務局をおきまして、國家の一つの訴訟に對する體制を整えるとき、一方國民の側においては、何らの制度をもつておらないという状態にありますので、こういう點について、やはり政府が民事費用、執達の手數料等を改訂いたしますについて、將來この點について、さらに御考慮を拂つておる點があるかどうかお聽きしたいのであります。
#25
○奧野政府委員 その點につきましては、最高法務廳設置の意味におきまして、人權擁護の局を設けております。すなわちこれは民事刑事全般に通じて、貧困者の救濟というようなことも、その中の大きな事業としてやつていくことになろうと考えます、しかもこれは同時に民間におけるそういつたようなものの團體の育成竝びにその指導補助といつたようなことを行つていくことと存じますので、そういう面におきまして、いわゆる貧困者訴訟の救助ということは、實質てきに相當増進されることと考えております。なおその他の點につきましても、この點は今後とも研究をいたして、そういう方向に向つて進まなければならないと考えております。現在におきましては、御承知のように、調停等によつて、その手數料がきわめて低く、しかも權利の保護も相當厚くできる機關もありますので、そういう方法を利用することによつて、貧困者の機利の保護ということは、法制的にある程度できるのではないかというふうに考えます。
#26
○石川委員 今度は法の内容についてお伺いしたいのでありますが、第三條に旅費の規定があるようであります。それは三圓を八圓、こういうふうな旅費の規定でございますが、この旅費の規定は、近く鐵道運賃等が再び改訂値上げされるといううわさがありますが、そういうことを豫想してなされておるのか、現在の運賃でこれを増額を決定されまた値上げがありますと再びこの法を直さなければならなくなるのかをお伺いしたいのであります。
#27
○奧野政府委員 この點は民事訴訟費用法の十三條、刑事訴訟費用法の第四條の當事者、證人、鑑定人、通事あるいは鑑定書の説明者の旅費の増額に關する事柄でありますが、これは現行法では、大體鐵道または汽船を通ずる水路を除く場合で、一里ごとに最高三圓でありましたのを、今度は改めたので在りますが、その改めた根據は、大體官廳職員の二級官の車馬賃が一キロ六十錢となつておりまして、三級官の車馬賃一キロ五十錢ということになつておりました。ちようどその中間におつたわけでありますが、本年の七月七日以降、官廳職員の車馬賃が厚則といたしまして一キロ二圓以内というふうに相なつたのであります。それでこれらと物價指數及び都電の電車賃等をも考慮いたしまして、右の當事者、證人等の旅費の額も、すなわち一里について八圓以内ということに引上げに相なつたわけであります。そういう意味で汽車というようなものについてはその方でまいりますので、ここに觸れておりませんが、もし將來交通費全體についてまた値上げがあるというふうな場合には、さらに檢討をいたさなければならぬようになるかと思いますが、現在におきましては、現在の状態を標準にいたしておるわけであります。將來のそういうものの値上りを見こんではおらないのであります。
#28
○石川委員 最後に一點、これはもつともだと思うような規定ではありますが、念を入れてお聽きしておきたいのであります。それはこの法律案中の第四條の末尾でありますが、「特別區ノ存スル地、京都市、大阪市、名古屋市、神戸市及横濱市ニ於テハ二百圓以内、其ノ他ノ地ニ於テハ百五十圓」と差等を設けてあるのであります。この差等は、宿泊料であると思いますが、これは公定價格に差等があつたからといつてつけたのか、あるいはその他これに記載いたしました都市以外では安く上るのか、どうしてこの差等をつけたのかお聽きしておいた方が、一般の人たちにわかると思いますから、お聽きしておきたいと思います。
#29
○奧野政府委員 大體從來これらの宿泊料につきましては、官廳の職員のニ級官の宿泊料、あるいは三級官の宿泊料との中間に標準をおいておつたのでありましたが、今囘官廳職員の宿泊料は、本年七月七日以降原則として六大都市、すなわち甲地方というふうになつておりますが、甲地では二百圓、その他の地、乙地では百五十圓というふうになりまして、この額は大藏省の給與局で最小限の必要費を基礎として、關係方面の了解のもとにきめた合理的な根據のあるものと考えますので、この標準に從いまして、さらに物價指數をも基準として、大體これがよかろうというふうに考えまして、この官廳職員の宿泊料に一致せしめたのであります。
#30
○石川委員 終わります。
#31
○松永委員長 ほかの御質疑はありませんか。――ないものと認めます。
    ―――――――――――――
#32
○松永委員長 それでは次に家事審判法施行法案を議題といたします。本案については御質疑はございませんか。
#33
○石川委員 ちよつと一點だけお聽きしておきたいと思います。非常に自明の理のようでありますが、伺つておきたいのであります。それはこの民事法つまり民法中親族編及び相續編においての事項を、家事審判所に管轄いたしまする件と、普通裁判所に管轄いたしまする件とにわかれるのでありますが、この場合においてお聽きしておきたいことは、裁判所の管轄事項と、家事審判所の管轄事項が、どうして家事審判所に對する審判請求權を與え、普通裁判所に對する裁判請求權をも與えないかというその理由を、この際伺つておきたいと思うのであります。
#34
○奧野政府委員 大體におきまして、基本的な身分關係の發生、消滅、變更という關係になるものが、從來訴訟手續をとつて訴訟の形式によつておつたのでありまして、身分關係の中で、どういう事件を家事審判に屬せしめ、どういう事件をいわゆる原告、被告という對立關係において爭ういわゆる訴訟の形態をとらしむるかという標準は、實はあまり明白ではないのでありまして、大體におきまして、家事審判法にいわゆる九條の乙類の事件、いわゆる調停に適するような事件を審判所に屬せしめまして、その他の基本的な身分關係の發生、消滅變更に重要なる影響を及ぼす、たとえば婚姻無効、あるいは婚姻の取消、離婚の訴え、あるいは嫡出子の否認、あるいは認知の請求、あるいは養子縁組の無効あるいはその取消、裁判上の離縁といつたような身分關係の存否に重大な關係をもつもの、及び財産關係に關しては相續囘復の訴えであるとか、遺留分減殺の訴えといつたようなものは、やはり從來通り訴訟の形式において處理していくことが適當であるというふうに考えたわけであります。それ以外のものは、大體家庭の事件につきましては、家事審判所で行うことにいたしました。そういうわけで、原告、被告の利益がほんとうに相對立して、しかもそれが基本的な身分關係の發生、消滅、變更を目的とするものというふうな大體の標準で、訴訟と調停にふりわけました。しかしながら、そういうものにつきましても、やはり一應家事審判所の調停にかかるようにいたしましたので、大體におききしては、そういう事件でも、すべて一應は家事審判所の門をくぐり、どうしてもまとまらないときに訴訟の方法によつて解決するということにいたしたわけであります。
#35
○松永委員長 ほかに御質疑ございませんか。
    ―――――――――――――
#36
○松永委員長 それでは次に訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、討論に付します。石川金次郎君。
#37
○石川委員 社會黨を代表いたしまして意見を申し上げます。訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案につきましては、贊成いたします。現在の物價の状態竝びに經濟上の事情は、この改正を適當と存じまするので、贊成する次第であります。
#38
○打出委員 民主黨を代表いたしまして、御提案の訴訟費用等臨時措置法の改正につきましては、贊意を表します。今日の時世において當然の改正と存じますので、これに贊成をいたします。
#39
○北浦委員 日本自由黨を代表いたしまして本案に贊成いたします。
#40
○大島(多)委員 私は國民協同黨を代表いたしまして、政府原案は適當なる改正だと考えまして贊成いたします。
#41
○松永委員長 討論は終局いたしました。これより採決いたします。本案に贊成の諸君の起立を願います。
    〔總員起立〕
#42
○松永委員長 起立總員。よつて本案は全會一致、原案の通り可決いたされました。
    ―――――――――――――
#43
○松永委員長 次に家事審判法施行法案を議題とし、討論に付します。
#44
○石川委員 さきに家事審判法が通過いたしましたが、その施行のためには、當然本法を必要といたしますので、社會黨を代表いたしまして、この法案に全面的に贊成をするものであります。
#45
○八並委員 民主黨を代表いたしまして、贊成の意を表わす次第であります。民法も改正となりまして、家事審判法も制定され、これが昭和二十三年一月一日から實施されることになつております。今日早急に、この家事審判法の運用を規定する施行法が制定されなければならぬことは、當然のことでありまして、これに全面的に贊成を表する次第であります。
#46
○北浦委員 私は日本自由黨を代表いたしまして、本案に贊成いたします。
#47
○大島(多)委員 私は國民協同黨を代表いたしまして、政府原案に贊成いたします。
#48
○松永委員長 これで討論は終局いたしました。これより採決いたします。本案を原案通り可決するに贊成の諸君の御起立を願います。
    〔總員起立〕
#49
○松永委員長 起立總員。よつて本案は全會一致をもつて原案の通り可決いたしました。
 なお以上可決いたしました兩案に對する委員會報告書の作成方、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#50
○松永委員長 御異議なしと認めます。それではそのようにいたします。
 本日はこれにて散會いたします。明日は午前十時より開會いたします。
   午後二時二十五分散會
ソース: 国立国会図書館
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