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1947/11/29 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第65号
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1947/11/29 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第65号

#1
第001回国会 司法委員会 第65号
昭和二十二年十一月二十九日(土曜日)
    午後一時五十五分開議
 出席委員
   委員長 松永 義雄君
   理事 石川金次郎君 理事 鍛冶 良作君
      井伊 誠一君    池谷 信一君
      榊原 千代君    安田 幹太君
      中村 俊夫君    山下 春江君
      吉田  安君    岡田藤志郎君
      明禮輝三郎君    大島 多藏君
 出席國務大臣
        司 法 大 臣 鈴木 義男君
 出席政府委員
        法制局長官   佐藤 達夫君
        司 法 次 官 佐藤 藤佐君
        司法事務官   奧野 健一君
 委員外の出席者
        專門調査員   村  教三君
    ―――――――――――――
十一月二十八日
 裁判所の一部を改正する法律案(内閣提出)(
 第一二六號)
十一月二十九日
 最高法務廳設置に伴う法令の整理に關する法律
 案(内閣提出)(第一二五號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 最高法務廳設置法案(内閣提出)(第一〇七
 號)
 國の利害に關係のある訴訟についての最高法務
 總裁の權限等に關する法律案(内閣提出)(第
 一一五號)
 副檢事の任命資格の特例に關する法律案(内閣
 提出)(第一二四號)
 最高法務廳設置に伴う法令の整理に關する法律
 案(内閣提出)(第一二五號)
 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 (第一二六號)
    ―――――――――――――
#2
○松永委員長 會議を開きます。
 これより國の利害に關係のある訴訟についての最高法務總裁の權限等に關する法律案につきまして察査を進めます。鍛冶良作君。
#3
○鍛冶委員 第二條の第一項を見ますると、「最高法務總裁は、所部の職員でその指定するものに前條の訴訟を行わせることができる。」と書いてありまするが、これは訴訟代理人としてやらせるという意味であろうと思うが、いかがでしようか。
#4
○奧野政府委員 これは民事訴訟法の七十九條にある法令の訴訟代理人ということであります。
#5
○鍛冶委員 そこで第七條を見ますると、「第二條、第五條第一項又は前條第二項の規定により」云々、「當該訴訟について、代理人の選任以外の一切の裁判上の行為をする權限を有する。」とある。これを見ると、これは代理人でなくて、やる者には當然の固有の權利をもたせるように認めるのですか。どういうことになりますか。
#6
○奧野政府委員 これはすなわち七條によりまして代理人を選任する以外の一切の裁判上の行為を有する權限を與えたのでありまして、これがすなわち法令による民事訴訟法の七十九條に該當する訴訟代理人ということになるわけであります。たださらに代理人を選任する權限だけはないが、それ以外の一切の裁判上の權限はあるのであります。たださらに代理人を選任する權限だけはないが、それ以外の一切の裁判上の權限はあるのであります。
#7
○鍛冶委員 七十九條から來るならば、こういうことを言わぬでも當然なるようじやありませんか。そういう裁判上のことをやる權限が當然に第二條によつてあるのじやありませんか。そうすると、復代理の選任ができぬというためにこれをつくられたのですか。それともほかの意味があるのですか。
#8
○奧野政府委員 これは復代理の選任ができないということも大きな意味をもつております。ただ二條によつて訴訟を行わせることができるというだけでも、大體七十九條の法令による訴訟代理人になると考えますが、その權限の範圍を明確にしておくことが必要であるのと同時に、わざわざ訴訟を行うために指定された以上は、その者が、さらにほかに委任をするということが適當ではないと思いますから、そういう復代理をする權限ということを、兩方から――消極、積極からこういうようにしたわけであります。
#9
○鍛冶委員 そうすると、第七條がなかつたらどういうことになりましよう。復代理を除いて、ほかになかつたら、できないのでしようか、それともできるでしようか。
#10
○奧野政府委員 そういたしますと、大體において民事訴訟法七十九條がそのままかぶつてまいる。從つて復代理の選任權もあるというふうに解することになるわけです。
#11
○鍛冶委員 復代理はわかりましたが、復代理でないほかのことは、これがなかつたら當然できることに民法七十九條によりますとなるのでございますか。
#12
○奧野政府委員 これがなければ、そういう解釋になると思います。要するに注意的であると同時に、復代理の選任ができないという兩方を表わしたものです。
#13
○鍛冶委員 そうすると、復代理の選任をやめさせるということと、あとは注意的だ、こう解釋してよろしいですね。
#14
○奧野政府委員 そうです。
#15
○鍛冶委員 その次は第四條ですが、「最高法務總裁は、國の利害又は公共の福祉に重大な關係がある訴訟において、裁判所の許可を得て、裁判所に對し、自ら意見を述べ、又はその指定する所部の職員に意見を述べさせることができる。」これは代理人が出ておるが、總裁みずからが意見を述べる、こう見られますが、その次のその「指定する所部の職員に意見を述べさせることができる。」をいうのは、これは第二條の第二項で、行政廳の所管については、その所部の者がやるとなつておりますが、これは代理人以外にも、なお述べさせることができる。こういう考え方でしようか。
#16
○奧野政府委員 第四條は、實は國がみずから當事者あるいは參加入ではない場合の規定でありまして、その場合でも、第三者間に行われておる訴訟が、國の利害または公共の福祉に重大な關係がある場合であります。
#17
○鍛冶委員 そうすると、これは一般のどんな訴訟にでもできる、こういう考え方ですね。國が當事業でない一切の訴訟という意味ですね。
#18
○奧野政府委員 そうであります。例として考えられますが、たとえば非常に重大な問題についての法案が違憲であるかどうかということになり、もしそれが違憲であるということになれば、國のいろいろな政策が重大な關係に立つといつたような問題が、他の當事者間の事件で問題になつておる場合に、裁判所の許可を受けて意見を述べることができるという意味であります。
#19
○鍛冶委員 そういたしますと、それはこの規定から見れば、そういうことも考えられるのですが、訴訟上よほど重大なことになりまする。訴訟法上さようなことは許されましようか、それともこれをもつて訴訟法の一部を變更するとか、訴訟法に代つた特別の效力を認める。こういう意味でできたものでしようか。
#20
○奧野政府委員 これはもちろん裁判所の許可を受けてやるので、みずから發言をするわけではないのであります。これはもちろん裁判所に對する單なる參考に供するにすぎないのであります。最高法務總裁が、國の法律的な意味においては、最高の顧問であるという意味で、そういつたような國の公益の辨というような意味で、これをいたすのでありまして、アメリカの例等にもこういう例があるのであります。なおまた現行法は廢止になつておりますが、行政裁判所においても、これとやや類似した公益のための辯護ということを、政府がやることを認めておる規定もあつたのであります。これは訴訟的な意味はないのでありますが、國の法律的辯護者という意味で、そういう意見の開陳をすることができる。もつともこの場合には結局裁判所の方の許可を受けてということは、大體求めに應じてやるということに實際にはなろうと思います。そういう場合に限つて、そういう意見を開陳して參考に供することができる機會を與えるということであります。
#21
○鍛冶委員 裁判所が調査のためにそういう意見を求め、また調査資料を求めるというのは、これは問題はありませんが、こう見れば進んで意見を述べることになりましようが、訴訟法では、そういうものは現在認められておらぬと思います。先ほど行政訴訟法と言われたが、行政訴訟法に書いてあればそれは行政訴訟でやれるということになると思います。普通一般民事訴訟法から考えてみましても、當事者以外のもので裁判に關與するということは、ちよつとわれわれの法律常識から考えられないのですが、一種のこれは訴訟法の特別規定と見なければならぬと思いますが、いかがでありましよか。
#22
○奧野政府委員 現在の民事訴訟法では、そういうふうに、當事者あるいは參加入でない者が、そういうことを陳述するということはありませんし、證人、鑑定人等の場合は例外でありますが、その意味からいいますと、民事訴訟法等の例外ということになります。しかしながら、行政訴訟の關係におきましては、大體こういう建前をとつておるのでありまして、將來つくる豫定になつております行政訴訟に關する特例におきましても、これと似かよつたような規定をおくことになろうかと思います。
#23
○鍛冶委員 これは私ほかの方でも疑問をもつていおつたのですが、行政訴訟法にそういうことを書いてあれば、訴訟法ですから手續法としていいのですが、一種のこれは最高法務總裁なる者の訴訟に對する權限を規定した實體法と私は見るのですが、實體法でそういう手續法をかえ得るようなことがいいか惡いかということ、それからかりに效力があると言うても、いかにも非常識のように考えられるのですが、これはそういうことは差支えないでしようか。ほかの方でも私疑問をもつたところであります。實體法で手續法をつくるということは、效力があるかないか、かりにあるとしても、すこぶる不穏當のものと考えておつたのですが、それと同樣の疑問をもつて見られるのですが、いかがなものでしようか。
#24
○奧野政府委員 これは實體法と申しますよりも、むしろ訴訟法に近い、訴訟の代理を命じ、あるいは國を代表するという訴訟における代替、代表――訴訟行為等のことでありますから、むしろ實體法というよりも、訴訟法の特例というように見ていいのではないかと思います。
#25
○鍛冶委員 そう言われるならばそうも言えるのですが、實體法で訴訟法を動かす規定をおくということは、どんなものでしようか。
#26
○奧野政府委員 法律的に申しますと、やはり同じ法律でありますから、殊に實體法の中に訴訟法的なことを入れたり、あるいは訴訟法の中に實體的なことを入れた例が相當あります。理論から言いますと、同じ法律であるから差支えはないというふうに思いますが、なるべく混淆しないようにすることが、立法上いいと思います。理論上は差支えないと思います。
#27
○鍛冶委員 次は第五條でありますが、「行政廳は、所部の職員でその指定するものに行政廳を當事者又は參加入とする訴訟を行わせることができる。」これは國以外のものと言うと、行政廳は國以外のものはないので、行政廳としてもやはり國を相手にすることになる。國を相手にすることになりますならば、第一條で最高法務總裁が代表するのが當り前だと思いますが、第一條とどういう關係になるのでありましようか。
#28
○奧野政府委員 第一條は國が當事者になる、あるいは參加入になるという場合であります。第五條は行政廳が當事者、參加入になつておるのでありまして、實質をつきつめて考えれば、やはりその場合では國が當事者になるということも差支えないと思いますけれども、從來いわゆる行政事件というものは、行政廳が被告になつてやつておりますので、行政廳が當事者となつておる、すなわち行政廳のやつた處分の違法を理由としてその取消變更を求める行政訴訟を五條が表わしておるのであります。一條は要するに國が當事者となつておる民事訴訟を表わしておるわけであります。
#29
○鍛冶委員 私らはかりに運輸省を相手にして交渉をする場合、第二條によると、運輸大臣を相手にして交渉をしておるのですが、すべてそうなれば國が當事者ではないのですか。
#30
○奧野政府委員 もちろんそれは民事訴訟でありまして、國が當事者になると思いますが、たとえば税の課税が不當であるからその取消しを求めるとか、そういつたような各個の行政廳の處分の取消變更を求めるという訴訟が五條になるので、その場合には必ず行政廳を被告にするのでありまして、國を被告としないのであります。
#31
○鍛冶委員 今のような場合國の代理人としては大藏大臣ではないですか。
#32
○奧野政府委員 たとえばその課税をした官廳あるいは訴願に對して裁決したその裁決廳といつたように、國の行政官廳、あるいは行政廳が、いろいろ行政上の處分をやる場合に、その行政廳の處分の取消し變更を求めるという訴訟は、從來ずつとあつたわけでありまして、それを今まで行政訴訟と言つておりました。そうではなく、鐵道が人をひいたというような場合においては、國が被告となる。從來は運輸大臣がその場合に國を代表するという形でやられる、やはりこれは純然たる民事訴訟であります。それがいわゆる第一條關係であり、行政廳の不法な處分の取消變更というものに對する訴訟が五條であります。これは御承知のように、この前に民事訴訟に關する應急措置法が出ておりますが、その第八條に行政廳の違法なる處分の取消の變更を求める訴えというのがありますが、それがこれに該當するわけでありまして、從來の行政訴訟であります。
#33
○鍛冶委員 そうしてまた第六條では、その場合でも最高法務總裁が所部の職員にやらせることができるということになつておりますが、すべて國を相手にするものならば、全部法務總裁にやらせることにした方がわかりやすいのではないかと思いますが、それには何か特別に考慮しなければならぬ理由があるのでありますか。
#34
○奧野政府委員 行政廳が被告になるときでも、これは行政廳の具體的にやつた處分の取消變更を求めるという關係から行政廳が被告になつておるために、つきつめて考えますと、それは結局國の行為になるのでありますから、國を被告にしてもいいのではないかという議論は十分立つと思う。ただそういう場合に、むしろ行政處分をやつた行政官廳なり行政廳を被告にした方が、事情もわかり、最も密接な關係をもつておるというので、そういう訴訟は、從來から行政廳を相手にしてやつておる。これは今までずつとそういうふうな理論でやつておりまして、そういうものをすべて國を被告にすることに改めてしまうのでしたら、全部法務總裁がやつてもいいと思いますけれども、從來通り行政官廳あるいは行政廳が被告になるのを認めていく以上は、やはり行政廳の職員等にやらすことができる途を開いておく方が便利であり、よかろうと思います。しかしながら、實質から言えば、やはり國が被告になるわけでありますから、そういう場合に最高法務總裁も、場合によつてはそれをやめさして自分の所部の職員にやらす方が適當であると思うときは、そういうものに對する指揮權をもたすという意味で、第一次的な行政廳の職員でやらすことができます。しかし最高法務總裁は、その場合でもそれについて國を代表する意味で、場合によつてはそれを解任して、自分の所部の職員でもつて訴訟することができる途を開いてあるわけであります。
#35
○鍛冶委員 そうすると、府縣知事などは、やはり第五條でいくことになりますか。
#36
○奧野政府委員 さようであります。
#37
○鍛冶委員 わかりました。次に第六條の第三項ですが、なぜ適用を除外されたか、その點をお聽きしたい。
#38
○奧野政府委員 公正取引委員會は、獨占禁止に關する事柄について、いろいろな審決をやることになつておりまして、その審決に不服がある場合に、東京高等裁判所に不服が言える。その場合に公正取引委員會が當事者になるということに、獨占禁止法の法律ではなつております。その場合に獨占禁止法では、公正取引委員會が獨立してそういう場合に權限を行使することができるということになつております。すなわち公正取引に關する法律の第二十八條に、「公正取引委員會の委員は、獨立してその職權を行う。」ということになつておりまして、從つてその審決をするについても、裁判所と同じように獨立してやる。それに對する不服についても、やはりその不服の訴訟を行つていくについては、獨立して職務を行うという規定になつておりますから、この公正取引委員會の權限だけについては、やはり獨立性を與えることが適當であろうということで、これだけを例外にしたのであります。
#39
○鍛冶委員 そうすれば第六條で總裁の指揮を受けるとか、その部員をやらせるということがないだけで、第四條は公正取引委員の審決に對しても、これは適用であるわけですね。
#40
○奧野政府委員 これは最高法務總裁は、そういう場合に、國の利害、あるいは公共の福祉に重大な關係がある場合におきまして、第四條の適用があると思います。
#41
○鍛冶委員 大體わかりましたが、この第四條は非常に重大な規定でありまして、訴訟法のようなものでありますが、裁判所が研究の資料を求め、または參考として裁判所から意見を求めたときに答えるというならば問題はありませんが、進んでその訴訟の中へ飛びこんで意見を述べる。しかも最高法務總裁などという名前をつけて、最も高いものであるということの見出しをここにして、法務廳設置法案をきめておつて、そうしてその者が事件の中へ飛びこんでやるということになりますと、訴訟に重大なる影響があるばかりでなく、一種の裁判に對する干渉になりはせぬか。理論的にはそれは裁判所はそんなものは聽こうが聽くまいが、裁判所の獨自の權限でやるんだと言われるかしらんが、最高法務總裁というものが飛びこんでやることになると、どうも訴訟に對する干渉のように見えまするが、その點は差支えないものでしようか。
#42
○奧野政府委員 これはもちろん裁判所といたしまして許可は與える必要ばないと思う場合には許可しないのでありまして、また述べた意見に對しても、もちろん單なる參考にすぎないのでありますから、實質上は法律上の見解を參考のために聽くという程度のものになるのではないか。從いまして、これがために裁判に影響を及ぼすということは、全然ないというふうに考えております。
    ―――――――――――――
#43
○松永委員長 次に副檢事の任命資格の特例に關する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案、最高法務廳設置に伴う法令の整理に關する法律案の三案を議題といたします。まず以上三案について政府の説明を願います。
#44
○鈴木國務大臣 副檢事の任命資格の特例に關する、法律案の提案理由を御説明申し上げます。
 檢察廳法においては、簡易裁判所に對應する檢察廳として、區檢察廳を設けましたが、すべての區檢察廳に嚴格な任命資格を要する檢事を配置することといたしましては、とうていその人を得る見込みがありませんので、新たに、區檢察廳の検察官の職に補すべき副檢事の制度を設け、その任命資格については、同法第十八條第二項において、副檢事は、同法第十八條第一項の規定にかかわらず、高等試驗に合格した者または三年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職にあつた者で副檢事選考委員會の選考を經たものの中からもこれを任命することができるものとされているのであります。
 終戰後惡質の犯罪激増し、治安惡化の一途をたどつておりまする現況に観みまするとき、檢察機能の充實は焦眉の急を要するところでありますので、政府においては、鋭意副檢事の新規採用に努力いたしたのでありますが、副檢事定員四百三十人に對し、副檢事現在員六十七人にすぎず、これ以止前述の副檢事の任命資格を有する者を求めることがきわめて困難な實情にあります。しかるに、檢察事務官、警察官などの中には、多年檢察事務に携わり、實質的には副檢事の職務に必要な學識經驗のある者が相當多いのにかかわらず、從來これらの者の昇進が遲いため、副檢事に任命される資格のある者が少い事情に鑑みまして、今後一年を限り、副檢事の任命資格に關し特例を設け、副檢事は、檢察廳法第十八條第二項の規定にかかわらず、副檢事の職務に必要な學識經驗のある者で、副檢事選考委員會の選考を經たものの中からも、これを任命することができることといたしたいのであります。
 以上がこの法律案提案の理由であります。何とぞ愼重御審議の上、速やかに可決せられんことを希望いたします。
 次は裁判所法の一部を改正する法律案の説明を申し上げます。
 裁判所法は、御承知のごとく、本年五月三日から施行されておりますが、その後半歳の間に情勢も變化し、その上裁判所法施行の實績に徴しまして、同法を若干改正する必要が生ずるに至りました。そこで政府はこの法律案を提出いたした次第でありまして、改正の要點は、次の四點であります。
 第一點は、從來地方裁判所のみに屬していた刑法第二百三十五條の窃盗罪及びその未遂罪に關する裁判權を簡易裁判所にも與え、簡易裁判所は、これらの罪について、三年以下の懲役を科することができることとした點でありまして、裁判所法第三十三條の改正がそれであります。現行法の下では、これらの罪は地方裁判所のみの權限に委ねられておりますが、現下の不安定な經濟情勢を反映して、窃盗罪を初めとする各種の犯罪は激増の一途をたどり、地方裁判所には、刑事々件が山積して、現在の状態では、とうていこれを處理し得ない窮状にあるのであります。そこで犯罪件數の最も多く、しかも、事案が比較的簡單な窃盗罪及びその未遂罪を、簡易裁判所でも審理できることとし、ただ簡易裁判所の裁判官が、必ずしも法律專門家であるとは限らない點に鑑みまして、懲役三年以下の懲役のみを科し得ることとし、この制限を超えて刑を科すべき場合は、地方裁判所に事件を移送すべきものといたしました。この改正によつて、地方裁判所の負擔は大いに輕減され、事件の迅速處理に役立つものと信じます。
 第二點は、裁判官任命諮問委員會に關する規格を廢止した點でありまして、第三十九條の改正がそれであります。現行法の下では、内閣が最高裁判所長官の指名または最高裁判所判事の任命を行うには、裁判官任命諮問委員會に諮問しなければならないのでありまして、第一囘の指名及び任命は、御承知のごとく、同諮問委員會の諮問を經て行われたのでありますが、その實績に徴しますと、この方式はどうも形式的に流れすぎて、所期の效果を得られないという憾みがあり、かつ指名及び任命に關する責任の所在を不明確ならしめるおそれがあるのであります。そこで、裁判官任命諮問委員會に關する規定を廢止して、内閣が最高裁判所長官を指名し、あるいは最高裁判所判事を任命するについて諮問するかどうか。諮問するとすれば、何人に諮問すべか等の點は、一切内閣の自由裁量に任せ、その代り指名または任命に關しては、内閣が一切の責任を負うということにいたしました。
 第三は、裁判官の任命資格の中に司法教官を加えた點でありまして、第四十一條、第四十二條及び第四十四條の改正がそれであります。その趣旨は、司法省研修所の教官たる判檢事出身の司法教官の在職を、司法事務官と同樣に、裁判官の任命資格の中に加えようとするものでありまして、裁判所法案の提案當時には、司法省研修所が設立されるかどうか未定でありましたために、現行法には司法教官が裁判官の任命資格のうちから漏れており、今囘その補正を行うことにいたしました。
 第四點は、簡易裁判所判事の定年を、年齡六十五年から七十年に引上げた點でありまして、第五十條の改正がそれであります。御承知の通り、簡易裁判所判事は、國民と最も密接に接觸する裁判官であり、特に老熟練達ね法曹が任命されることが望ましいのでありますが、それにもかかわらず、定年が六十五歳であるために、多くの老練な退職判檢事、辯護士が、簡易裁判所判事に任命されることを躊躇しておられる事實が、裁判所法施行後次第に判明してまいりました。そこで、定年を年齡七十年に引上げることにいたしましたが、この改正によつて政府は老練な退職判檢事辯護士が、續々簡易裁判所判事に任命されることを期待している次第であります。
 以上がこの法律案提案の理由であります。どうぞ愼重御審議の上、速やかに可決されんことをお願い申し上げます。
 次に最高法務廳設置に伴う法令の整理に關する法律案の提案理由を説明いたします。
 政府はさきに最高法務廳設置法案を國會に提出いたしましたが、最高法務廳の設置により、司法省及び法制局は廢止されることになりますので、これに伴い、關係各法令に所要の變更を加える必要が生ずるに至りました。よつて政府はこの法律案を提出いたした次第であります。
 改正の要點を申し上げますと、第一は、司法省及び法制局を廢止し、關係法令よりこれらに關する規定を削除し、「司法省」「法制局」とあるのを、必要に應じて「最高法務廳」と改めた點でありまして、第一條ないし第三條、第十一條及び第十五條かそれであります。
 第二は、從來司法大臣に屬していた權限は、最高法務總裁に移されることになりますので、關係法令中「司法大臣」とあるのを「最高法務總裁」と改めた點でありまして、第七條、第十三條及び第十五條の規定がそれであります。
 第三、從來内務大臣に屬していた國籍、外國人登録、昭和二十一年勅令第百一號の規定による各種團體の結成の禁止及び解散等に關する事項に關する權限が、最高法務總裁に移されますが、内務省解體に關する法律案において、これらに關する法令中「内務大臣」とある部分は一應「主務大臣」と改められることになつておりますので、さらにこの法律によりまして、關係法令中「主務大臣」とあるのを「最高法務總裁」と改める點でありまして、第十四號の規定がそれであります。
 第四は、法制局長官は廢されますので、關係法令中よりこれに關する規定を削除し、なおこれと關連して、今囘最高法務廳に置かれる各長官の職を、その地位職責等に鑑み、國家公務員法にいう特別職といたした點でありまして、第四條、第五條、第九條ないし第十一條の規定がそれであります。
 第五は、從來裁判所法及び檢察廳法において、裁判官及び檢察官の任命資格の中に掲げられていた司法次官、司法事務官及び司法教官が廢されますので、これを任命資格の中から削除し、これらに相當するものとして、最高法務總裁官房長、最高法務廳事務官及び檢察官の任命資格の中に加えることとし、また司法次官、司法事務官及び檢察官の在職は、これを裁判官及び検察官の任命資格の年數に算入することといたし、なお大正十二年勅令第五百二十八號(司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に關する件)に「司法事務官」とあるのを、以上と同樣の趣旨で「最高法務廳事務官」と改めた點でありまして、第六條、第七條、第十二條及び第十八條の規定がそれであります。
 第六は、警察法及び官吏懲戒令の各細部を改正して、國家公安委員會の警備すべき官廳の中に、最高法務廳の名稱を加え、また内閣及び總理廳に設置せられる官吏普通懲戒委員會の委員長には、内閣官房長官を、最高法務廳に設置せらるべき同委員會の委員長には最高法務總裁官房長を充てることといたした點でありまして、第八條及び第十一條の規定がそれであります。
 以上がこの法律提案の理由であります。何とぞ、愼重御審議の上、可決されんことをお願い申し上げます。
#45
○松永委員長 以上三案については、本日は説明に止め、暫時休憩いたします。
    午後二時三十二分休憩
     ――――◇―――――
#46
○松永委員長 休憩前に引續き會議を開きます。
 最高法務廳設置法案を議題といたします。本案に對しさらに社會、民主、自由、國協の各黨共同提案になる修正案が提出せられております。提案者の説明を願います。石川金次郎君。
#47
○石川委員 各黨において共同して最高法務廳設置法案に修正案を提出したいと存じます。以下讀み上げます。
 最高法務廳設置法の一部を次の通り修正する。
  第一條第三項中「内外」の次に「及び國際」を加え、第八條第一項中「内外の法制」を「内外及び國際法制」に、同條第二項中「内外の法制及び」を「内外及び國際法制竝びに」に改める。
 結局この案は國際法制調査の一つの事項といたしまして插入したわけでありますが、最高法務廳の職務といたしまして、當然必要なことと存じますので、この修正案を提出いたした次第でございます。
#48
○松永委員長 引續き本案に對する討論を繼續いたします。明禮君。
#49
○明禮委員 各黨共同提案になる修正案に全部贊成いたします。次に最高法務廳設置法案につきまして、鍛冶良作君の修正案五項目全部に贊成いたします。贊成の理由は字句でありますから、概括して贊成の意を述べて十分であると思います。
#50
○松永委員長 井伊君。
#51
○井伊委員 ただいま提案になりました各黨共同提案の修正案に對しましては、社會黨を代表して贊成であります。
#52
○中村(俊)委員 民主黨を代表いたしまして、ただいま提出になりました各派共同提案の修正案に全面的に贊成いたします。
#53
○松永委員長 大島多藏君。
#54
○大島(多)委員 ただいま共同提案になりました點につきまして、外務省條約局の事務管掌と抵觸しないという條件をつけまして、この修正案に贊成いたす次第であります。
#55
○松永委員長 これで通告者の發言は全部終了いたしました。他に御發言はありませんか――なしと認めます。それではこれより採決いたします。採決はまず鍛冶良作君提出の修正案について採決し、次に四黨共同提案になる修正案、最後に原案の順序を行います。鍛冶良作君修正案のごとく修正するに贊成の諸君の御起立を願います。
    〔贊成者起立〕
#56
○松永委員長 起立少數、よつて本修正案は少數、否決せられました。
 次に共同提案の修正案のごとく修正するに贊成の諸君の御起立を願います。
    〔總員起立〕
#57
○松永委員長 起立總員。よつて全會一致をもつて提案のごとく修正するに決しました。
 次にただいま表決に付しました部分を除いては、原案通り決するに贊成の諸君の御起立を願います。
    〔總員起立〕
#58
○松永委員長 起立總員。よつてさきに表決に付した部分を除いては、原案通りに決しました。
 最後にただいま修正に決しました部分を除いては、原案に贊成の諸君の御起立を願います。
    〔贊成者起立〕
#59
○松永委員長 起立多数。よつて修正に決した部分を除いては、多數をもつて原案通りに決しました。よつて本案は多數をもつて民主、自由、國協、四黨共同提案の修正案のごとく修正議決せられました。
 なお本案に對する委員會報告書の作成方は、委員長に御一任願いたいと思います。御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#60
○松永委員長 御異議なしと認めます。それではそのようにいたします。
 本日は、これにて散會いたします。
    午後三時三十一分散會
ソース: 国立国会図書館
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