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1957/11/02 第27回国会 参議院 参議院会議録情報 第027回国会 本会議 第2号
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1957/11/02 第27回国会 参議院

参議院会議録情報 第027回国会 本会議 第2号

#1
第027回国会 本会議 第2号
昭和三十二年十一月二日(土曜日)
   午前十時二十一分開議
  ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二号
  昭和三十二年十一月二日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
  (第二日)
  ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告
は、朗読を省略いたします。
昨一日本院事務総長から衆議院事務総
長宛、本院は事務総長に河野義克君を
選挙した旨通知した。
同日議長において、左の常任委員の辞
任を許可した。
 地方行政委員    加賀山之雄君
 法務委員      山本 米治君
 大蔵委員      吉野 信次君
 文教委員      岸  良一君
 予算委員      柴田  栄君
 同         仲原 善一君
 同        大野木秀次郎君
 同         有馬 英二君
 同         最上 英子君
 同         野本 品吉君
 同         関根 久藏君
 同         小林 武治君
 決算委員      中野 文門君
 同         江藤  智君
 同         三浦 義男君
 同         近藤 鶴代君
 議院運営委員    寺本 広作君
 同         宮田 重文君
 同         小幡 治和君
 同         木島 虎藏君
 同         森田 義衞君
 懲罰委員      館  哲二君
同日議長において、常任委員の補欠を
左の通り指名した。
 地方行政委員    岸  良一君
 法務委員      吉野 信次君
 大蔵委員      山本 米治君
 文教委員      加賀山之雄君
 予算委員      寺本 広作君
 同         小幡 治和君
 同         木島 虎藏君
 同         剱木 亨弘君
 同         三浦 義男君
 同         高橋  衛君
 同         本多 市郎君
 同         館  哲二君
 決算委員      宮田 重文君
 同         手島  栄君
 同         最上 英子君
 同         増原 惠吉君
 議院運営委員    柴田  栄君
 同         中野 文門君
 同         仲原 善一君
 同         江藤  智君
 同         島村 軍次君
 懲罰委員      小林 武治君
同日各委員会において当選した理事は
左の通りである。
 大蔵委員会
  理事 江田 三郎君(江田三郎君
   の補欠)
 文教委員会
  理事 野本 品吉君(有馬英二君
   の補欠)
 議院運営委員会
  理事 斎藤  昇君(寺本広作君
   の補欠)
  同  佐野  廣君(宮田重文君
   の補欠)
同日内閣から左の議案を提出した。
よって議長は即日これを委員会に付託
した。
 地方自治法第百五十六条第六項の規
 定に基き、放射線医学総合研究所の
 設置に関し承認を求めるの件
         内閣委員会に付託
 在外公館の名称及び位置を定める法
 律等の一部を改正する法律案
         外務委員会に付託
同日内閣から予備審査のため左の議案
が送付された。よって議長は即日これ
を委員会に付託した。
 一般職の職員の給与に関する法律の
 一部を改正する法律案
         内閣委員会に付託
 通商に関する日本国とオーストラリ
 ア連邦との間の協定の締結について
 承認を求めるの件
         外務委員会に付託
 租税特別措置法等の一部を改正する
 法律案
 設備等輸出為替損失補償法の一部を
 改正する法律案
         大蔵委員会に付託
 郵便貯金法の一部を改正する法律
 案       逓信委員会に付託
 昭和三十二年度一般会計予算補正
 (第1号)
 昭和三十二年度特別会計予算補正
 (特第3号)
 昭和三十二年度政府関係機関予算補
 正(機第2号)
         予算委員会に付託
同日各委員長から提出した左の調査承
認要求に対し、議長は、即日それぞれ
これを承認した。
   調査承認要求書
 一、事件の名称 租税及び金融等に
  関する調査
 一、目的 税制改正、租税行政の効
  果的運営、金融政策、制度の確
  立、専売事業の適正なる運営等に
  資する。
 一、方法 各方面の関係者、学識経
  験者等より意見を聴取するほか、
  資料を収集し、且つ、必要に応じ
  て実地調査を行う。
 一、期間 今期国会開会中
 右本委員会の決議を経て、参議院規
 則第七十四条の三により要求する。
  昭和三十二年十一月一日
     大蔵委員長  豊田 雅孝
   参議院議長松野鶴平殿
   調査承認要求書
 一、事件の名称 教育、文化及び学
  術に関する調査
 一、目的 教育制度、教育行政、教
  育財政及び文化、学術等の諸問題
  をつぶさに調査研究し、これら関
  係諸法律の改廃制定に資する。
 一、方法 関係者から意見を聴取
  し、参考資料を収集し必要に応じ
  て実地調査を行う。
 一、期間 今期国会開会中
 右本委員会の決議を経て、参議院規
 則第七十四条の三により要求する。
  昭和三十二年十一月一日
     文教委員長 秋山 長造
   参議院議長松野鶴平殿
   調査承認要求書
 一、事件の名称 社会保障制度に関
  する調査
 一、目的 社会保障制度の確立が現
  下の最も緊急な問題であるのにか
  んがみ、社会保障制度に関する各
  国の事例及び我が国の複雑な現行
  制度等の検討を行い、日本の実情
  に即した理想的社会保障制度を創
  設してその立法化に資する。
 一、方法 関係者から意見を聴取
  し、資料を収集し、又必要に応じ
  て実地調査を行う。
 一、期間 今期国会開会中
 右本委員会の決議を経て、参議院規
 則第七十四条の三により要求する。
  昭和三十二年十一月一日
      社会労働
      委員長   阿久根 登
   参議院議長松野鶴平殿
   調査承認要求書
 一、事件の名称 労働情勢に関する
  調査
 一、目的国際労働、失業情勢、失
  業対策、労働組合運動の動向等現
  下の労働情勢一般について調査研
  究を行い、労働対策に必要な労働
  関係諸法の改廃制定に資する。
 一、方法関係者から意見を聴取
  し、資料を収集し、又必要に応じ
  て実地調査を行う。
 一、期間 今期国会開会中
 右本委員会の決議を経て、参議院規
 則第七十四条の三により要求する。
  昭和三十二年十一月一日
      社会労働
      委員長   阿久根 登
   参議院議長松野鶴平殿
一昨十月三十一日委員長から左の報告
書を提出した。
 地方行政の改革に関する調査報告
 書
 刑法等の一部を改正する法律案審査
 報告書
 裁判所法等の一部を改正する法律案
 審査報告書
 恩赦法の一部を改正する法律案審査
 報告書
 幼児誘拐等処罰法案審査報告書
 検察及び裁判の運営等に関する調査
 報告書
 国際情勢等に関する調査報告書
 租税及び金融等に関する調査報告
 書
 農林水産政策に関する調査報告書
 電波法の一部を改正する法律案審査
 報告書
 郵政事業職員等共済組合法案審査報
 告書
 郵政事業の運営に関する調査報告
 書
 電気通信並びに電波に関する調査報
 告書
 昭和三十年度一般会計歳入歳出決
 算、昭和三十年度特別会計歳入歳出
 決算、昭和三十年度国税収納金整理
 資金受払計算書及び昭和三十年度政
 府関係機関決算書審査報告書
 昭和三十年度国有財産増減及び現在
 額総計算書及び昭和三十年度国有財
 産無償貸付状況総計算書審査報告
 書
 国家財政の経理及び国有財産の管理
 に関する調査報告書
昨一日委員長から左の報告書を提出し
た。
 入場税法の一部を改正する法律案審
 査報告書
 接収貴金属等の処理に関する法律案
 審査報告書
同日本院は、第二十七回国会の会期を
十二日間と議決し、即日その旨を衆議
院及び内閣に通知した。
同日衆議院から、同院は第二十七回国
会の会期を十二日間と議決した旨の通
知書を受領した。
同日内閣から、皇室経済会議予備議員
である左記の者から同会議予備議員辞
任の申出があったので後任者の互選を
願いたい旨の要求書を受領した。
     記
     参議院議員 津島 壽一
同日内閣から、北海道開発審議会委員
である左記の者から同審議会委員辞任
の申出があったので後任者の指名を願
いたい旨の要求書を受領した。
     記
     参議院議員 横川 信夫
同日内閣から、日本ユネスコ国内委員
会委員である左記の者から同委員会委
員辞任の申出があったので後任者の
指名を願いたい旨の要求書を受領し
た。
     記
     参議院議員 吉田 萬次
同日内閣から、左記の者を日本銀行政
策委員会委員に任命したいので日本銀
行法第十三条ノ四第三項の規定により
本院の同意を求める旨の要求書を受領
した。
     記
  (六月十六日任期
   満了による再任)原  邦造
同日内閣から、左記の者を鉄道建設審
議会委員に任命したいので鉄道敷設法
第六条第二項の規定により本院の同意
を求める旨の要求書を受領した。
     記
  (七月二十六日任
   期満了による再
   任)      佐藤 博夫
  (同      )平山  孝
  (同      )今里 広記
  (同      )関  桂三
  (七月二十六日任
   期満了の湯河元
   威の後任)   楠見 義男
  (同    日程
   期満了の迫 静
   二の後任   )酒井杏之助
  (七月二十六日任
   期満了による再
   任      )島田 孝一
  (同      )山崎 匡輔
同日内閣から、左記の者を八月二十三
日付をもって検査官に任命したので会
計検査院法第四条第四項の規定により
本院の承認を求める旨の要求書を受領
した。
     記
  (八月二十二日任
   期満了の東谷傳
   次郎の後任  )芥川  治
同日内閣から、左記の者を七月一日付
をもって原子力委員会委員に任命した
ので原子力委員会設置法第八条第三項
の規定により本院の承認を求める旨の
要求書を受領した。
     記
  (六月三十日任期
   満了による再任)有沢 広巳
  (同      )藤岡 由夫
同日内閣から、左記の者を七月三十一
日付をもって公正取引委員会委員長に
任命したので私的独占の禁止及び公正
取引の確保に関する法律第三十条第四
項の規定により本院の承認を求める旨
の要求書を受領した。
     記
  (七月三十日任期
   満了による再任)横田 正俊
同日内閣から、左記の者を八月一日付
をもって中央更生保護審査会委員に任
命したので犯罪者予防更生法第五条第
三項の規定により本院の承認を求める
旨の要求書を受領した。
     記
  (七月三十一日任
   期満了による再
   任)      木内 良胤
同日内閣から、左記の者を九月一日付
をもって社会保険審査会委員に任命し
たので社会保険審査官及び社会保険審
査会法第二十二条第三項の規定により
本院の承認を求める旨の要求書を受領
した。
     記
  (八月三十一日任
   期満了による再
   任)      簗   誠
同日内閣から、左記の者を六月十六日
付をもって運輸審議会委員に任命した
ので運輸省設置法第九条第三項の規定
により本院の承認を求める旨の要求書
を受領した。
     記
  (六月十五日任期
   満了による再任)岩村  勝
  (同      )中島登喜治
同日内閣から、左記の者を六月十四日
付をもって日本放送協会経営委員会委
員に任命したので放送法第十六条第三
項の規定により本院の同意を求める旨
の要求書を受領した。
     記
  (六月三日任期満
   了による再任) 阿部  清
  (同     ) 俵田  明
  (同     ) 伊藤 豊次
同日内閣から、左記の者を八月一日付
をもって労働保険審査会委員に任命し
たので労働保険審査官及び労働労険審
査会法第二十七条第三項の規定により
本院の承認を求める旨の要求書を受領
した。
     記
    (七月三十一
     日任期満了
     による再任)大西 清治
同日議長は内閣総理大臣宛、左の者を
第二十七回国会政府委員に任命するこ
とを承認した旨回答した。
    内閣官房長官 愛知 揆一君
   内閣官房副長官 田中 龍夫君
   同       岡崎 英城君
     法制局長官 林  修三君
     法制局次長 高辻 正巳君
   法制局第二部長 野木 新一君
   法制局第三部長 山内 一夫君
     憲法調査会
     事務局長  武岡 憲一君
  国防会議事務局長 廣岡 謙二君
    人事院総裁  淺井  清君
    人事院事務総
    局給与局長  瀧本 忠男君
  内閣官房内閣審議
  室長兼内閣総理大
  臣官房審議室長  磯田 好祐君
   総理府総務長官 今松 治郎君
  総理府総務副長官 藤原 節夫君
   内閣総理大臣
   官房公務員制
   度調査室長   増子 正宏君
    公正取引委
    員会委員長  横田 正俊君
   公正取引委員
   会事務局長   坂根 哲夫君
    警察庁長官  石井 榮三君
     警察庁長
     官官房長  坂井 時忠君
    調達庁長官  上村健太郎君
 行政管理政務次官  榊原  亨君
   北海道開発
   政務次官    福井 順一君
  自治政務次官   中島 茂喜君
 自治庁財政局長   小林與三次君
  防衛政務次官   小山 長規君
防衛庁長官官房長   門叶 宗雄君
経済企画政務次官   鹿野 彦吉君
経済企画庁長官
官房長事務取締扱   徳永 久次君
科学技術政務次官   吉田 萬次君
   科学技術庁
   長官官房長   原田  久君
  法務政務次官   横川 信夫君
 法務省保護局長   福原 忠男君
 公安調査庁長官   藤井五一郎君
  外務政務次官   松本 瀧藏君
 外務大臣官房長   田付 景一君
外務省アジア局長   板垣  修君
 外務省経済局長   牛場 信彦君
 外務省条約局長   高橋 通敏君
  大蔵政務次官   坊  秀男君
  同        白井  勇者
 大蔵大臣官房長   石野 信一君
 大蔵省主計局長   石原 周夫君
大蔵省主計局次長   村上  一君
  同        佐藤 一郎君
 大蔵省主税局長   原  純夫君
 大蔵省理財局長   正示啓次郎君
 大蔵省銀行局長   酒井 俊彦君
 大蔵省為替局長   石田  正君
   国税庁長官   渡邊喜久造君
  文部政務次官   臼井 莊一君
  厚生政務次官   米田 吉盛君
 厚生大臣官房長   太宰 博邦君
 厚生省保険局長   高田 正巳君
  農林政務次官   本名  武君
  同        瀬戸山三男君
 農林大臣官房長   齋藤  誠君
   食糧庁長官   小倉 武一君
   林野庁長官   石谷 憲男君
   水産庁長官   奥原日出男君
通商産業政務次官   白浜 仁吉君
  同        小笠 公韶君
   通商産業大
   臣官房長    齋藤 正年君
 通商産業省通商
 局長事務代理    杉村 正一君
   特許庁長官   井上 尚一君
 中小企業庁長官   川上 為治君
   中小企業庁
   振興部長    今井 善衞君
  運輸政務次官   木村 俊夫君
 運輸大臣官房長   朝田 静夫君
   運輸省鉄道
   監督局長    權  良彦君
 海上保安庁長官   島居辰次郎君
   気象庁長官   和達 清夫君
  郵政政務次官   最上 英子君
 郵政省貯金局長   加藤 桂一君
   郵便省電波
   監理局長    濱田 成徳君
  労働政務次官   二階堂 進君
 労働大臣官房長   澁谷 直藏君
  建設政務次官   堀内 一雄君
 建設大臣官房長   柴田 達夫君
   経済企画庁
   調整局長    大堀  弘君
同日内閣総理大臣から議長宛、内閣官
房長官愛知揆一君外七十八名(前掲の
議長承認のとおり)を第二十七回国会
政府委員に任命した旨の通知書を受領
した。
   ――――・――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。岡田宗司君。
  〔岡田宗司君登壇、拍手〕
#4
○岡田宗司君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日の岸総理の施政方針演説につきまして、若干の質問をいたしたいと存ずるのであります。
 十月四日、ソ連において打ち上げられました人工衛星は、全世界に異常なセンセーションを巻き起し、ことにアメリカを先頭といたします自由国家群に激しいショックを与えたのであります。この人工衛星は、今も地球のまわりを、われわれの頭上を、驚くべきスピードをもって飛び続けておるのであります。人工衛星の成功は、科学の発展の上においてエポックを画するものであり、人類に対して偉大なる貢献をなすものであることは疑いをいれません。だが、このことは、科学と技術の面においてエポックを画したばかりではないのであります。国際政治の上に深甚な変化を引き起しつつあるのであります。人工衛星が今なお地球を回り続けているという事実は、すでにソ連の大陸間誘導弾が実験の域を脱し、実用の段階に入ったこと、ソ連の豪語するごとく、地球上のいかなる地域べもこれを打ち込むことのできることを物語っておるのであります。ICBMと人工衛星においては、アメリカはソ連に一歩を先んじられた形でありますが、しかし、やがてアメリカでもこれらを完成し、両陣営の間に、原水爆と、ミサイルの軍備競争はいよいよ激しくなるでありましょう。これは人類にとりまして、まことにやりきれないおそろしいことであります。原水爆の出現は戦争の様相を一変させたと言われておりますが、原水爆の弾頭をつけましたミサイルの発達は、さらにこれをいわゆるプッシュ・ボタン・ウォーの完成にまで推し進めることは疑いをいれません。地球のいかなる地点も、もはやこの新しい武器に対しまして完全な所はなく、全人類は今や原水爆とミサイルの死の翼のもとにおののかなければならないのであります。もし、かかる武器を持つ強大な国家が戦争を始めますならば、それは両者ともこれによって共倒れ的な壊滅的打撃を受けるのみならず、全世界を戦争に巻き込み、諸国民を破滅のふちに追いやることは必定でございます。この新しい武器の出現は、戦争の様相を一変させ、従来の武器と防衛体制を無価値ならしめ、また国際政治の上にも深甚な変化を引き起すものであります。世界の主要国は、このミサイル時代の到来とともに、それぞれ自国の平和と安全のための政策を再検討し、転換して行かなければならぬときに当面しておるのであります。(拍手)
 日本もまた、かかる新たなる事態のもとにおいて、わが国の平和と安全を守るために、従来の外交政策並びに防衛政策を根本的に再検討し、日米安全保障条約に具現されております対米一辺倒政策と、アメリカの対ソ戦略につながる防衛体制を、ここに根本的に転換しなければ、日本の安全はかえって危険に直面し、国民の不安はいよいよつのり、悔を千載に残すおそれがあるのであります。(拍手)
 しかるに、岸総理は、七月アメリカを詰れ、アイゼンハワー大統領、ダレス国務長官たちと会談した後、日米関係は新時代に入ったと誇らしげに公言しておるのであります。これは、日本がアメリカの世界政策から離脱し、その独自性を回復して行くことを意味するものではなく、かえってアメリカとの防衛的関係を緊密化することを意味しておるのであります。ダレス氏は、九月十八日に発行されたアメリカの政治雑誌フォーリン・アフェアーズに、「米国の政策における挑戦と反応」という論文を寄稿しております。これは、最近のアメリカの戦略と外交政策を体系的に明らかにしたものとして、世界の注目を浴びておるのでありますが、この基調をなすものはあくまでも武力であり、アメリカ自身、大量の航空機、核兵器、長距離ミサイルを備蓄いたしまして、大量報復の準備を強化するとともに、小核兵器を技術的に可能なる味方の国々に保有させまして、戦術的、地域的に使用させる計画を持っていることを明らかにしておるのであります。ダレス氏は、核兵器を持たせようとする国々の名を具体的にあげてはおりません。しかし、UPのヘンスレー記者は、世界でも第一級の進んだ科学と技術を持つ日本は、核兵器による地域的防衛に参加するだけの技術的な能力を持った国であるとし、日本はここ数年中に、この戦術的兵器を自衛のたあに装備するか、あるいは原子力時代に事実上無防備にとどまるかをきめなければならなくなるだろうと、ワシントンの外交筋は見ていると伝えておるのであります。ダレス氏のこの外交方針に合わせまして日米関係を調整することが、岸総理の言う日米関係新時代の到来であるならば、日本はこれによってかえって危険に直面することになるのであります。アメリカの核兵器と長距離ミサイルがソ連より優位にあることを前提としておるこのアメリカの戦略と外交とは、ソ連におけるミサイル、人工衛星の成功によりまして根本からくつがえされたのであります。しかも、ソ連がしばしば言明しておるように、もしアメリカの与国が、アメリカの供給する核兵器、ミサイルをもって武装され、これを使用するならば、同じ武器をもって報復を受けるであろうということを言っておりますが、これは単なるどうかつではないのであります。すなわち、われわれはこの可能性を今日はっきりと見せつけられておるのでありまして、今や、日本がアメリカの戦略と外交にたより、アメリカ陣営の一員といたしましてアメリカ軍を駐留せしめ、原水爆とミサイルの時代においては旧来の武装平和の考え方は無意味であり、放棄されなければならないのであります。
 そこで、まず岸総理にお伺いしたいのは、ソ連のICBMび人工衛星の成功が国際政治に重大な影響を及ぼし、世界の主要国がその外交並びに防衛政策に再検討を加える必要の生じたことを認められるかどうか。第二に、岸総理は、かかる新しい事態のもとにおいて、日本の外交並びに防衛政策を再検討して、アメリカ一辺倒の外交、防衛政策を、いずれの陣営にも属せず、その争いに巻き込まれない政策に、すなわち中立主義的政策に転換することを必要と考えられないかどうか。また、原水爆とミサイルの軍拡競争のもとに、不安におののき、一たん戦争になれば壊滅的な飛ばっちりを受ける国といたしまして、そういう立場にある世界の国々とともに、両者の対立を牽制し、戦争を起させないようにし、世界の世論によって軍縮を達成せしめ、核兵器、ミサイル等の使用を禁止する、そして戦争の防止と平和の確立に向って進むような方針をとられるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
 次に、私はミサイル時代における防衛の問題につきまして、総理並びに津島防衛庁長官にお伺いしたいのであります。大陸間誘導弾を初めといたしまして、中距離、短距離ミサイルが完成されると、戦争の様相が一変するであろうということは、多くの軍人並びに軍事評論家の指摘するところであります。従来の兵器または軍隊組織が全く無価値になり、その価値をはなはだしく減ずるであろうことは明白であります。日本は日米安全保障条約に基きまして、アメリカの要求に従って、自衛隊を拡張強化しつつありますが、現在の自衛隊は、各種ミサイルの発達とともにその力を失い、無意味な存在となりつつあるのであります。しかるに、防衛庁は、アメリカとの話し合いに基きまして、三十三年度に陸海空自衛隊をそれぞれ拡張する計画を持っており、膨大な予算を大蔵省に要求しておるのでありますが、かかることは全くナンセンスでありまして、いたずらにどぶに金を捨てるようなものと言わなければならぬのであります。(拍手)防衛庁長官は、防衛計画が新たな情勢のもとに検討されなければならない、ICBM、IRBM等の実現を見た時代に、従来の自衛隊がその価値を失いつつあることを真剣に考えておるかどうかをお伺いしたいのであります。また、無意味な来年度の拡張を取りやめ、さらにF86のような飛べない飛行機の生産等を直ちに中止されまして、無価値なことの明らかになったものは、この際廃止するようにお考えになるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。(拍手)
 次に、ミサイルの競争時代におきまして、日本はアメリカのミサイル発射基地として利用されるおそれが十分にあるのであります。これはダレス長官のフォーリン・アフェアーズの論文からも、先に申し上げましたように明らかでありますが、原水爆弾頭をつけたミサイルが日本に配備され、また自衛隊がこれで武装されることを押しつけられたのでは危険この上もないのであります。また、かかる新しい事態のもとにおきましては、アメリカの陸海空軍が日本に駐留することが、いよいよ日本にとりまして危険を招く要因となって参るのであります。アメリカ軍の撤退並びに軍事基地の返還、すなわち日米安全保障条約の解消をはかるべき時が、このミサイルの時代の到来とともに来たと考えられないかどうか、その点をお伺いしたいのであります。また、当面の問題といたしまして、総理はしばしば核兵器の持ち込みはお断わりをすると言明しておるのでありますが、それはもちろんのこと、ミサイル基地を設けることも同じように拒否されるおつもりであるかどうか、この点をはっきりとお伺いしたいのでございます。(拍手)
 次にお伺いしたいのは、原水爆実験停止の問題であります。昨日は世界の各地におきまして、日本におきましても各都市において、原水爆の使用、実験停止を要求する大衆運動が展開され、国民に大きな影響を与えておるのであります。この要求が日本国民こぞっての悲願であることは、岸総理もよく御存じのところであり、そのために、先に米英ソに実験停止を要求し、また国連総会に核爆発実験停止の決議案を提出されたと思うのであります。だが、この案の取扱い方につきまして、私どもは政府のやり方に納得できないのであります。総理並びに外務大臣は、日本案こそ、相対する両陣営の主張をまとめることのできる最も現実的な提案だと言っておるのでありますが、果してそうでありましょうか。なるほど原水爆の実験停止は、本質的には軍縮、核兵器の製造の中止と不可分の関係にあるのであります。しかし手続的には、まず実験停止を一定期間取りきめまして、その間に軍縮、核兵器の製造中止の取りきめを討議し、協定に達することができるのであります。社会党はしばしば、まず実験の停止を提案することを要求して参りましたが、なぜ政府はかかる方式を提案しないのでありましょうか、米英がかかる日本案に反対することをおそれておられるのでありましょうか、また、ソ連案と同一となることをおそれたのでありましょうか。米英に気がねをして出された案でさえ、これら両国から反対をされ、他方、何か奥歯に物のはさまったようなあいまいさのために、アジア、アラブの国々の支持も得られずいたしまして、日本案は全く孤立無援の状態にあるではありませんか。さきにネール、インド首相が来日しましたときに、国連において日本とインドとが協力することの申し合せがなされたのでありますが、両国の国連代表の間で話し合いがまとまらないで、核爆発実験停止案を一本にすることのできなかったことは、まことに遺憾なことであります。一体、核兵器を持たざる二つの国の提案が一本にまとまり得なかったことはなぜでありましょうか、まことに不可解と言わなければなわません。私には、両者の間にそれほどの大きな差があるとは思われないのであります。日本政府は、インド案と一本になる場合、それがソ連によって支持されるかもしれないこと、そしてそうなるならば、日本の立場が米英から離れ、それと対立することになることをおそれまして、インドと一本になることを手控えたのではないかと疑われるのであります。かような考慮のためにインド案と一本にする努力を放棄したとするならば、それこそ、国民の悲願を裏切ることになり、国民を失望させ、また、他の実験停止を望む国々からは、一体、日本はほんとうに実験停止を望んでおるのかどうか疑われ、支持を得られない結果になるのであります。米英の支持拒否にあいながらも、なおそれに気がねをするがごとき態度はおやめなさい。原水爆を持たざる国、その被害を現実に受けた国としての立場に立って、もう一度インド案との一本化をはかることこそ、日本が他の原水爆を持たざる国、実験停止を望む国の支持を受け、孤立を脱する道なのであります。かくしてこそ、たとえこの案が今回の国連総会におきましては少数で敗れましても、将来、より多くの支持を得まして、核爆発実験停止の実現を促進することになると私どもは確信しておるのであります。
 そこでお伺いしたいことは、総理は米英の鼻息をうかがうことなく、手続上実験停止を軍縮と切り離しまして提案するよう再考するおつもりはないかどうか、また、インド案との一本化を実現するために、もう一度インド代表との間に交渉を開始するおつもりがないかどうか、さらに、日本案が否決された場合に、日本は米英側の提案に賛成するつもりであるかどうか、これらの点につきましての御答弁を承わりたいのであります。
 次に、私は東南アジア諸国に対する外交政策についてお伺いしたいのであります。岸総理がこれらの国々を歴訪されまして、友好親善の関係を打ち立てられようとされる努力に対しましては、われわれも賛意を表することにやぶさかではありません。しかし、何かその成果につきましては危ぶまれるものがあるのであります。友好的な共同声明等にもかかわりませず、何かそのうちに空虚なものが感ぜられるのは、どういうわけでありましょうか。私は一つには、日本の外交政策が、やはりあまりにもアメリカ一辺倒であり、そしてアジアとの連帯という点において欠けるところがある、こういう点からいたしまして、中立的立場に立つ国々はもちろん、自由主義陣営に属するアジアの諸国におきましても、何か日本に対しまして物足りないものを感じておるからであると考えられるのであります。岸総理は、東南アジアに対する外交の最も重要な政策の一つといたしまして、東南アジア開発基金の構想を打ち出されたのであります。総理は、これを打ち出したときには自信満々たるものがあったでありましょう。しかし、あてにしていましたアメリカからは、ドル資金を一ドルも出資させることはできませんでした。また、東南アジアの国々は、日本がこれによりましてアメリカのエージェントとなりまして、経済進出を企てるのではないかという警戒をしておるのであります。こういうふうな危惧の念がアジアの国々にはあるのであります。そしてこのためにアジアの国々からの支持も得られなかったのであります。かくて岸構想は風にあって飛び散るシャボン玉のごときものとなって、もはや実際跡形もなく消え去ってしまったのであります。(拍手)こんな無用意な思いつきが成功するなぞということは考えられないのであります。東南アジア諸国との外交は、戦時中、日本の侵した国もあり、また、民族主義の非常に強い傾向もありますので、そう簡単に行くものではありません。私は東南アジア開発基金の構想を、この際もうお引っ込めになるがよろしいと思うのであります。そして、それぞれの国との間にバイラテラルに、開発のために長期の円借款を与えるなり、技術的援助を与えるなりいたしまして、あるいはまたその他の経済協力の方針をとる方が、現実的でより効果的であると思うのであります。なお、賠償問題の解決しておらない国、インドネシア、ヴェトナム等につきましては、賠償問題の解決が先決問題でありまして、この賠償により、また、それに付随いたします経済協力を誠実に進めることによりまして、かえって効果を上げるものと信じておるのであります。岸総理は、東南アジア開発基金の構想は、この際たな上げされまして、各国と側々に協力する方式に切りかえられるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
 次に、インドネシアの賠償につきましてお伺いしたい。前副大統領ハッタ氏の在日中に、大綱さえまとまらなかったということは、まことに残念でございます。社会党といたしましては、賠償問題の解決につきまして政府に協力することを、鈴木委員長と岸総理との会談におきまして表明しておるのであります。われわれはインドネシアの賠償につきましては、すでに総額の一致を見ております。またもこげつき債権につきましては、インドネシア側といたしましても、これを支払うことに同意しておるのであります。従いまして、残るところは形式的、技術的の問題であります。もちろん、これにはいろいろむずかしい点もありましょうが、このことでこじれてしまって解決がおくれるということは、日イの親善友好関係を促進する上に、きわめて損であります。日本にとりましても非常な不利益であると思われるのであります。総理がインドネシアを訪問されるまでに、これらの形式的あるいは技術的な点を大乗的見地から解決されまして、向うで話を本ぎめにするように努力しなければならないと思うのであります。岸総理はその点についてどうお考えになっておるか、はっきりお伺いしたいのであります。なお、ヴェトナムにつきましても、同じように解決を促進されたいのであります。
 さらに、アジアにおける不安定を除き、平和を確立するためには、諸国が中国を承認いたしまして国交を正常化することが必要であります。台湾政府を中国の正統政府として扱うことは、きわめて不自然なことであることは言うまでもありません。わが党はアジアの平和のため、また、日中両国民の利益のために、一日も早く北京政府を承認いたしまして、両国の国交を正常化すべきであるということを主張してきたのであります。岸総理は、中国人民共和国が国連において正常な地位を占めるように促進するつもりはないかどうか。また、北京政府を中国の正統政府として認め、これと国交を正常化するような努力をするつもりはないのかどうか、この点をお伺いしたいのであります。
 また、日中第四次貿易協定のための交渉がついに物別れになったことは、まことに遺憾なことであります。この不成立は、私は多分に政府の責任に帰せらるべきものがあると思うのであります。中国側の譲歩によりまして、大部分の点は両者の意見の一致を見るに至りました。ただ、問題は、代表部設置の一点にしほられてきておるのであります。政府は、この問題の解決の難関となっておる指紋採取の問題を、この際すみやかに解決するつもりはないのか、その点をお伺いしたいのであります。日本の指紋採取のお手本となっておりましたアメリカでさえ、つい最近、これがいろいろ不都合があるというので、指紋採取をやめてしまったのであります。何ごともアメリカ追随で、アメリカのやることのお好きな国でございますから、この際この点だけは、一つアメリカにならって、早くおやめになったらどうかということを、岸総理にお伺いしたいのであります。
 最後に、沖繩の問題につきまして総理にお伺いしたいのであります。総理は訪米いたしました際に、沖繩、小笠原の問題につきまして、アメリカ当局と話をされたようでありますが、何の結果も得られなかったのであります。これは明らかに失敗であると認めなければなりません。沖繩の人々はもちろん、私どもも、これには非常な失望を感じているのであります。われわれはアメリカの剣もほろろな態度に憤りをさえ感じているのであります。岸総理並びに藤山外相は、再び執拗に沖繩の土地問題並びに施政権の返還の一部としての教育権の返還の交渉を、直ちに開始すべきではないかと思われるのであります。この点につきまして、今までの交渉の経過を一つ御発表願いたい。そして今後どうするか、また、その見通しはどうであるかということを、はっきりとここにお示しを願いたいのであります。本日の新聞によりますというと、アメリカは沖繩をミサイルの基地として手放さないという方針をきめているように思われるのであります。これは日本にとりましても脅威、また、沖繩を私どもの手に戻すにつきましても、大きな妨げになるものであります。これらも私どもは岸総理として十分にお考えになっていただいて、日本の外交政策の再検討と関連いたしまして、沖繩が戦争の基地となることを阻止されるようにお願いをしたいのであります。(拍手)
 最後に、私は日本が今回、国連安保理事会の非常任理事国に当選したことにつきまして、これは私どももまた喜びにたえないところと思うのでありますが、これによりまして、日本はあらゆる重大な国際問題に対処しなければならなくなったのであります。これにはもちろん日本に直接関係のない問題も多く含まれているのであります。こういうような問題に対処いたしまして、日本としては、常に明確な態度をもって理事会に臨むことが必要であろう、そしてその明確な方針によって問題を処理して行くことが必要であろうと思うのであります。われわれは日本が世界の平和に寄与するためには、ただアメリカの政策、アメリカの態度をうかがいましてそれに追随していてはならないのであります。日本はあまりにも西欧陣営にくっつき過ぎている、こういう感を世界中が持っているのであります。私どもはアジアの一国であります。特にアジアとの連帯性ということをわれわれの外交の基調として行かなければならぬのであります。(拍手)ことにこのミサイルの時代におきまして、戦争が全世界をおおうようなこの時代におきまして、私どもはアジアの国々、すなわち両陣営に属せずして、この両陣営の戦争によって最も惨禍をこうむる国々といたしまして、われわはこの安全保障理事会におきましても、私どもはアジアの国々の立場において、平和のために、また、この平和の確立のために努力をしなければならぬのであります。こういう点につきまして、岸総理は、やはりアメリカ一辺倒、あるいは西欧の立場に追随した態度をとって行かれるのか、あるいはまた、この安全保障理事会におきまして、アジアの代表としての立場を強く押し出されて、世界平和に寄与されようとするのか、その点についての明白なる御回答をお願いしたいと存ずるのであります。
 これをもちまして私の質問を終りたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 近時、科学の発達が非常に目ざましいものがあり、特にソ連における人工衛星の発射の問題や、あるいは大陸間弾道弾の実験の問題等が報ぜられまして、この問題が将来いろいろな点においてわれわれ人類の生活の全面に影響を持つことはお説の通りであります。ただ、具体的にこれがいよいよいつ実用に供せられ、どういう何であるかというこの現実の問題と十分にらみ合わして、現実の外交政策や防衛政策はこれを検討して行く必要があると思います。(拍手)私はこういう科学の発達は、岡田君もお話のごとく、これが人類の幸福のために、福祉のために、平和的に利用されることをわれわれは心から念願し、従って、これが破壊兵器として人類の平和を脅かすということのないように、大国間において軍縮の協定ができ、こういうものがそういう破壊的に用いられないという事態を作り上げなければならないと思っておりまして、この方向に向って、国連を中心としてあらゆる努力を続ける考えであります。
 次に、核爆発禁止の問題に関しての日本の提案でありますが、御承知の通り、今度の国連におきましては、ソ連、西欧、インド及び日本から四つの提案がされております。そして、ソ連及び英米はおのおの自分で原水爆を持っており、従来もわれわれの熱心な真摯な抗議にもかかわらず、これをやめないという立場におりまして、それは自分たちがいかなる場合においても、この問題に関して優位を失うまいという底意があることは想像にかたくないのであります。しかるに、われわれ日本とインドはその点におきまして、持っておらない、将来持つ意思を持たない、そして、あくまでも人道的にこれをやめようという立場におきましても、私は立場を一にしておる。従って、ネール首相とその点において、できるだけこの実験禁止をさせるように共同して努力すべきである。ただ問題は、この両陣営のかしらに立つところの三国が、これの主張が全然反対であり、相対立しておるから、これをいかにして現実に譲り合わして、結び合わせるかということにわれわれの努力が向けられなければならぬ。理論的に核実験禁止と一般軍縮とを離すとか離さないとかいう理論的な問題ではなくして、現実にこれらの国々をして譲り合わすというところに、どこにその妥協点を見出すかということが現実の問題として問題である。従って、われわれが提案しておる字句にとらわれずして、その精神に基いて今後とも協力しようということを話し合ったのであります。従いまして、その後、国連におきましても、そういう話し合いをしたのでありますが、今日までのところ、両方の具体的な一致を見るに至っておりません。しかし、なお両国の代表は国連において十分に協力して、そうして今の立場を理解せしめるということに努力しようということになっております。
 東南アジアの問題に関しましては、御承知の通り、東南アジアの経済開発ということは、東南アジアの民族が願っておる独立を完成する上から言ってきわめて必要であります。しかして、それの上において欠けておるものは資金と技術の問題、そうして資金は従来アメリカ等から援助資金も与えられております。二国間における資金の援助もやられております。あるいは世界銀行等の銀行もあります。しかし、問題はできるだけその資金が中立的のものである。それから現在の事態においては、銀行の対象としては適当でないということから考えまして、私は東南アジア開発基金というニュートラルな、しかも単純な銀行の技術ではない基金を作りたいというのが私の構想の基礎であります。しかして、この考え方につきましては各国が漸次これが理解を深めておるのであります。今お話のように、シャボン玉が飛んでしまったような事態では絶対にございません。(拍手)私はこういう案は、将来われわれは長くこれを理解せしめ、それがほんとうに東南アジアの開発のために資するゆえんであると考えておりますから、私はこの案を捨てる考えはありません。しかし、同時にこれと並行して、二国間における経済援助ということも、これはもちろん考えて差しつかえない問題でありまして、その点は決して相いれない問題ではないのであります。
 次に、賠償問題の解決につきましては、インドネシアもヴェトナムも、できるだけ大乗的な見地からこれを決定しろというお説に対しましては、私も賛成でありまして、大乗的な見地からこれを早く決定して、そうしてこれらの国との正常国交関係を開きたいと、かように考えております。
 中国の承認問題につきましては、しばしばお答えを申し上げましたごとく、今日、中国に対する主権を北京政府も台湾政府もともに主張しているという状態でありまして、しかも日本は台湾政府、中華民国政府との間に友好関係があり、これとの間に条約関係を結んでおります。また国連におきましても、現実にこれが正当なる中国の代表として安保理事会の一員であることは御承知の通りであります。こういう事態におきまして、直ちにこれを承認しろということは、私はいまだその段階にあらず、かように考えております。(拍手)
 第四次貿易協定の問題が北京におきまして交渉せられ、それが妥結をみるに至らなかったことを私も遺憾としております。近く代表団も帰って参りますことであります。十分事情を検討いたしまして、できるだけこれが成立を促進するように努力したいと考えております。
 次に、沖繩、小笠原問題についての御質問であります。これが去る七月の私のアメリカ訪問の際において、私どもの希望しているように実現しなかったことは、はなはだ遺憾でございます。しかしながら、私はこの問題は国民的要望であり、われわれの主張はあくまでも、あらゆる機会を通し、あらゆる努力を通じてこれを実現するように今後も努力するつもりであります。(拍手)
 最後に、安保理事会の非常任理事国の一に選ばれまして、今後、日本の国連におけるところの責任が重加されました。さらに日本がアジアの一国として、アジアのこの国々の共通の目標に向って、さらに強力に努力をしなきゃならぬという責務が加わったことは、岡田さんのお話の通りでありまして、私もその点に関しましては、今後、国連におきまして、われわれはアジアのやはり一国としての任務を、使命を十分に果して参りたい、かように考えております。(拍手)
  〔国務大臣津島壽一君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(津島壽一君) 岡田議員の御質問に対してお答えいたします。
 岡田議員は質問中の御所見として、ミサイルの異常な発展、開発、進歩が、今後の国際外交、政治並びに防衛に対して大きな影響を及ぼすであろう、こういう点でございまするが、仰せの通りと思います。ただ、このミサイルの異常な発展がどういったような結果をもたらすかということについては、いろいろ観測が行われておるのは御承知の通りと思います。これによって直ちに通常兵器による防衛というものを無意味にする、無価値にするということは、いまだそういった見解を述べておらぬようであります。現にこれらのミサイルを持っておる国においても、まだ通常兵器に対する必要とその質的強化ということを主張しておるわけでございまして、これは世界全体の防衛体制の中に私どもは認めなければならぬ点でございます。こういったICBMまたは人工衛星のために、直ちに通常兵器の必要がなくなったと決断するということは、私は非常に飛躍したものであって早計であると考えるのでございます。(拍手)そういう意味におきまして、私はわが防衛体制につきましても、通常兵器の質的強化という方向に向い、ミサイル誘導兵器の研究を開発して行くということについて、さらに重点を加えて行くということの必要を痛感し、この点において、来年度以降の予算においても適当の措置を講ずると、こういうことに相なったのであります。また、御質問の中に、ミサイルなきわが国において、その防衛は何らする必要はないという御所見であれば、これは全然見解の相違でございます。また、日米安全保障条約は今日の段階では解消すべきであると、こういうことでありますが、御承知のように、わが国の防衛体制は、ここ二、三年にやや発展の階梯を競けておる状態であります。もとよりわが国の防衛は、わが国の手で守るという第一義的の任務を忘れるわけではありませんが、今日の世界情勢において、一国の防衛を一国でやり得るという国は、おそらくないと思うのであります。その意味において、私は日米安全保障条約というものの柱と、特に国際連合憲章による安全保障体制ということによって、防衛を固めて行くということの必要というものがなお解消しておらぬ、こう思うのでございます。特に私に米駐留軍の撤退、削減といった事態に応じて、わが国の防衛体制を自分の手で強化するという必要が一段と高まり、新しい事態に入っておるということを認めなければならぬと思うのでございます。その意味におきまして、私は今日の防衛体制において、自衛隊の強化ということは、これは基本的の方針であり、また今後の世界の情勢から察して、この強化ということが必要であるということを痛感するものであります。(拍手)そういった意味におきまして、私は岡田議員の質問に対し、自衛隊は昔のものであるということに対しては絶対に承服することができないものでございます。(拍手)
  〔岡田宗司君発言の許可を求む〕
#7
○議長(松野鶴平君) 岡田君の質問はすでに時間が一ぱいでございますから、再質問の時間はありません。(「答弁漏れがあるじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)答弁漏れがありますか。(「そうだ」「指紋問題はどうした」と呼ぶ者あり)
 それじゃ答弁漏れの点を御指摘を願います。
#8
○岡田宗司君 第一の点といたしまして、私は日本にミサイル基地を置くということを求められる際に、岸総理はそれを拒否するかどうかということをお伺いいしておる。
 それから指紋の問題につきまして、アメリカでもすでに廃止されておる。この点につきましては、日中貿易促進議員連盟の方からも、これを改正しようという案が出されようとしているのであります。政府はこれに対していかに対処されるかという点を御答弁願いたいと思います。
#9
○議長(松野鶴平君) 総理大臣、お聞きの通りでありますから御答弁願います。
  〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(岸信介君) 指紋の問題につきましては、第四次貿易協定の代表団が行きます前におきまして、私ども、ある程度これについては緩和した一つの考え方を持っておったのであります。交渉の具体的内容及びこれに関する中国側の主張ということの具体的なことが、いまだよくわかりませんから、代表団が帰って参りました上において、十分に検討してみたいと思います。現行の指紋法につきましても、私はこれは完全なものとも思いませんから、指紋をとるこの法律につきましても、いろいろ改正の要否等についても主管官庁に研究を命じております。代表団の帰って参りました上において、十分検討して善処したいと思います。
 それからミサイルの基地の問題につきましては、ミサイル兵器の発達の現段階から見まして、私は従来は原水爆及び核兵器の持込みについては、非常な厳格な態度をとって、これを拒否するということを今日もなお一貫して考えております。しかし、ミサイル兵器と称せられるところのものの内容を十分に検討して見ないというと、直ちにこれを私は拒否するとか、しないとかということを申し上げることは明確でないと、こう思っております。いずれにしても、この核兵器の持込みを禁止しまして、これを拒否すると同じ気持で、この問題についても検討をしてみたいと思います。(拍手)
  ―――――――――――――
#11
○議長(松野鶴平君) 中山福藏君。
  〔中山福藏君登壇、拍手〕
#12
○中山福藏君 私は緑風会を代表いたしまして、政府に若干の質疑を試みたいと存じます。
 第一点は、首相は、しばしば国民に対して言明せられた通り、わが国の外交というものは、国連を中核として、その線に沿っての外交を推進して行く、こういうことでございますが、諸君御承知の通行へ現在の国連の姿というものは、自由主義陣営、あるいは共産主義陣営といったものがあって、おのおの国が結局表決に際しては、両陣営の蔭にみずからおさまって、そうしてそれによって投票というものが行われておるという実態でございます。もし現在の自由主義的な考え方に対する多数の表決というものが、将来世界情勢の変化に伴い、自由主義と対照的な立場にある共産主義的色彩を帯びた際、投票総数の上に非常な差異が生ずるでありましょう。諸君御承知の通り、従来わが国は歴代内閣、共産主義に対して絶対に反対しておるのであるが、かかる状態に陥った場合においても、なおかつ政府は、あくまでも国連中心主義の外交方針を持続して行かれるかどうか、まずこの点について、政府の明確な答弁をわずらわしたい。
 第二点は、欧州共同市場の出現によって、ただいまベルギーの外務大臣でありましたスパークが事務総長という形で、パリに駐在しておる。そしてこれがやがては欧州連邦の実現という段階に達しておる。しかもこれを、今回の総選挙によって、二百七十名の絶対多数を獲得したドイツのアデナウアーが、従来のフランスに対する外交方針を一擲して、フランスと提携して欧州連邦の組織に乗り出しておる。そのねらうところは、もし欧州が共同して連邦を作れば、地上資源、地下資源、人的資源において、米ソと対立ができると、この態勢さえでき上れば、その上に立って、アメリカ並びにソ連に対し、あらゆる面において角逐ができるとの確信を持っておる。この問題は、早晩現実となってくるに違いない。その場合に、驚くべき良質低廉の生産品が、どこにはけ口を求めるかと言えば、言わずもがな、中近東並びに東南アジアに怒濤のごとく押し寄せるであろう。これに対して政府はいかなる見通しをしておるのか。従来わが国の中近東、東南アジアに対する外交方針として、あるいはコロンボ計画、あるいは東南アジア開発基金計画によって、何とかそこに先手を打って、これを防波堤として打開策を講じて行こうと考えておられますけれども、私はそれくらいの手の打ちようでは、とうていこれに太刀打ちはできぬと見ておる。この点に対し、政府の所見並びに対策を講ぜんとしておるのであるか。
 第三点は、先般、日本に参りましたハッタ氏が、去月二十九日に本国に引き上げて行きましたが、これはインドネシア政府の正式の外交代表権というものを持って来たのかどうか、これがまず一つ。その次に、八億ドルという賠償の総額を交渉の冒頭になぜおきめになったか。承わるところによると、純賠償二億ドル、贈与的経済援助二億ドル、民間ベースの協力金というものが四億ドルということになっております。そうしてこの贈与的の経済援助二億ドルというものについて、なぜこれを純賠償としないかという点についての双方の食い違いと、一億七千万ドルのこの焦げつき債権というものに対する無利子、賠償完了後の支払いに関する食い違いの結果、交渉が妥結せなんだと言われておる。政府はこれらの点について、その経過並びに交渉失敗の原因を明らかにしていただきたい、そうして国民に、将来この賠償の姿というものを熟知させるということが必要であると思う。御承知の通り、私どもは、かつて岡崎君が外務大臣のみぎり、すなわち昭和二十八年にフィリピン賠償二億五千万ドル、ビルマ賠償七千三百万ドル、インドネシア賠償一億五千万ドルという線を打ち出しておる。それがなぜこういうふうな膨大な賠償総額として現われなければならないのか、国民の代表として確かめておきたいのであります。
 第四に、先般、新聞紙の報ずるところによりますと、日本駐在の韓国公使が、もし日韓会談が結実しないならば、日本の漁夫をどしどし逮捕するのだということを言明しましたが、果してその事実があったかどうか、またあったとすればこれは一種のどうかつである。このどうかつに対して政府は屈服的な態度をとり、あくまでも日韓会談をやるのかどうかお伺い申し上げます。
 第五点は、さきに政府は経済外交推進のために移動大使を相当数任命ぜられておる。しかも実業界におけるそうそうたる人物がこれに選ばれておる。しかしながら、およそ外交というものは、目先だけのそろばんづくでは、とうていその意図した目的を達成することはできないと私は信ずる。民族、思想、歴史、地理、宗教等々、あらゆる関係、こういうすべての条件の上に立って総合的な断案を下し、その総合的判断の上に立った適切、妥当なる外交方針を樹立して初めて真の外交というものが実を結ぶのではないか、しからざればおそらくその外交は失敗に終るであろうと私は考えております。一例をあげますれば、私が本年八月十三日にエジプトのカイロに行って、日本の医薬品というものをアフリカに売ることができるかどうかということを調べてみますと、それはそう早急にはできないでしょう。なぜできないか、エジプトにおける医薬品の販売路は、すべての医者というものが英仏の教育を受けて、英仏の医薬品でなければ効果がない、これが先人的に頭に入っておる。その段階を踏んで初めて英仏の薬が売れるということでありました。外交の種をまく、有効なる種を芽ばえさせようと念願いたしまするならば、すべての条件を考慮いたしまして、その上に立った外交でなければ、とうていりっぱなる花を咲かせることはできないと思量する。ゆえにこの場合、移動大使を任命せられたそのお気持を、私どもの前に披瀝していただきたい。
 第六点、私の見るところでは、すべてこれはという国は、一つの国民共通の大きな理想を掲げておる。たとえばネールの平和五原則、あるいはアメリカの宗教を基盤とした自由主義の確立、あるいは共産主義を徹底せしめんと欲するソ連の行き方、おのおの国によって最高の共通した目標を持っておるように私は思う。この際、私が政府にお尋ねしたいのは、世界人権宣言でも、あるいは国際連合憲章の前文をひもといて見ても、必ず平和と人類の福祉を拡大して行かなければならぬという文字が使ってある。平和とは何でございましょう。人類の福祉とは何です。人に飯を完全に食わせるということが平和の基礎である。幾ら階級闘争をやっても平和はこない。御承知の通りに、平和の和という字をごらんなさい。禾べんに口が書いてある。禾という字は中国では「カ」と読む。「力」とは何ぞや、これは五穀を総称しておる。五穀を口にすれば、天下平らかなりというのが平和の真髄である。このいわゆる平和の基礎というものを頭に会得せずして、あらゆる運動というものを展開してみたところで、それは岡田君の言われる通りに、シャボン玉が飛び散るのと同じだ。そういうふうなくだらないことは、とうてい幾ら人類の平和を唱えてみたところでだめだと思う。だから私はお尋ねしたい。この日本の共通した世界に恥じない高い理想は、私は地球を人類に開放することだと思う。この高い理想を掲げるところに、日本の特異性を打ち立つべきだ。そのときにこそ人類は安心して飯が食える。換言すれば、世界連邦建設を日本の最高外交方針として進むべきではないか、それさえ実現すれば平和がくる、飯が食える。しかし、この理想は対外的なものである。対内的には、政府が今少し確固たる信念と気魄を持つことを要求する。たとえば砂川事件の場合のごとき、相馬ケ原事件の場合のごとき、少しも国民に対し、その真相を知らしむる解明工作というものがなされていない。だから闘争があれば政府が必ず負けるのだという印象を与えておる。なぜ政府は断固たる態度に出て政府の所信を明らかにせないのか、なぜ堂々と押して行かれないのか。対外的にも、対内的にも、国民の共通した最高目標をお示しになる必要があると信ずる。こういう点について、総理大臣の明快なる御答弁をわずらわしたい。
 第七点、次にお尋ねしたいのは、これは首相並びに文相に対して答弁を求めるのでありますが、現在わが国において、思想的に二つの国民が同居しておるようなものであると私は見ておる。いわゆる旧憲法時代、この旧憲法と表裏一体をなす教育勅語で教育をせられた人々と、戦後、新憲法のもとにこれと教育基本法とを表裏一体として教育を受けられた青少年と、その中間に一種の断層を生じておるのであります。この断層を補てんするということが教育の任務でなくてはならぬ。しかるに、この工作が何らなされていない。たとえば絵画であろうが、演劇であろうが、あるいは紙芝居であろうが、これらの演出いたしております事柄は、おおよそ戦前の道徳、風俗、習慣というものが背景となっておるのであります。しかして、口に唱えるところは、新憲法時代の講義をいろいろあちらこちらでやっておられる。しかしながら、この社会に展開せられておりますところの教育のそれらの問題というものは、ことごとく旧憲法時代のものである、この間の結びつきをどういうふうに取り計らって行くつもりか。ことに世間の非常な批判を浴びております日教組に対する一貫した政治工作というものはない。こういう点についての政府の所見を承わっておきたいと存じます。
 その次には、近時、政府は修身道徳いう科目を取り上げて、これを中小学校の生徒の頭に入れなければならぬとおっしゃっておる。まことにこれはけっこうでございます。しかしながら、やり方によっては封建的な思想を強制するということになるのじゃないか。これが私どもの危摂するところであります。ゆえに私は、松永文部大臣並びに首相に対しまして、今採択せられんとしておる修身道徳の内容というものがいかなるものか、これを承わってみたいと存ずるのでございます。
 第八点、最後に私が経済企画庁長官にお伺いしたいことは、先般、政府は、政府の総合的な施策によって一まず経済界というものが安定したとおっしゃっておる。しかしながら、これは一面的な見方であって、楽観に過ぎるものがあるのではないか。現在世間にはすでに経済界の不況のために倒産せんとするものが相当多数あるということを見逃すことはできない。もしこのままに放置するならば、わが国の経済界は前途実に暗たんたるものである。これに対する政府の見通しと対策は果していかなるものであるかお伺い申し上げる。
 私はまだ時間がありますから、政府の答弁次第によって再質疑をするということを申し上げておきます。(拍手)
  〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(岸信介君) 私どもが国連中心の外交を推進すると申しておるのは、国連がどういう国によってリードされておるかということを頭に置くわけではないのであります。あくまでも国連憲章の目的と原則に基いて、公正妥当に進んで行くというのが、われわれの国連中心主義でございます。従いまして今御質問のありましたような、実際国連においてだれが指導力を持つかというようなことは問題にはならない、かように考えております。
 欧州共同市場の問題についての御意見がございました。これは私どもも非常に重大な関心を持っております。特に輸出貿易で立たなければならない日本といたしましては、欧州共同市場が確立されまして欧州の産業国の間の産業合理化が行われ、その商品が中近東や東南アジア等にはんらんするというような傾向に向って行くとするならば、日本の貿易拡大の上に非常に大きな影響を持つことは言うを待たないのであります。しかし、貿易の問題は言うまでもなく、あくまでも自国の産業というものを確立して、自国が、いい品物を安く作るところの基礎を作ることが何よりも大事だと思います。従いましてわれわれは日本産業の合理化、日本産業の基礎の確立、その設備の近代化等を行うとともに、日本の輸出貿易上の一つの弊害を除き、秩序のある進出という、過度の競争によって日本の商人がみずから市場をこわすということのないように考えて行かなければならない。また同時に、さらに進んで、日本がこれらの地域に経済協力を進んでやりまして、そこに日本の産業がその国の資本や産業と結びあって、そうしてその国の経済を繁栄せしめるというような方向に努力をいたしまして、欧州共同市場に対抗して行かなければならぬ、かように考えております。
 インドネシアのハッタ氏の資格の問題についてお話がありましたが、これは言うまでもなく、インドネシア政府の公式の代表権を持って賠償交渉にこられたわけではないのであります。しかしながら、ハッタ氏のインドネシアにおける地位、重要な発言権を持っておることにかんがみ、また同氏が、この問題を早く解決して両国間の正常なる国交を回復したいという熱意を持っておられましたので、そういう点について十分な話し合いをして両方の理解を進めたのであります。賠償額や賠償の内容等につきましては、今両国の間におきましては、向うのスジョノ博士がやはり局長として権限を持って来ておりますので、事務的に交渉を続けております。できるだけ私は先ほど岡田君の質問に答えたように、大局的な見地に立って、これを早期に解決したいという考えであります。
 次に、何か韓国の公使の発言が云々ということがありましたが、私は全然そういう事実は知りません。私どもは誠意をもって日韓の交渉を続けて、できるだけ早く妥結して、この抑留されておる漁民を日本に迎え入れたい、こういう何で、鋭意これが妥結に努力をいたしております。
 移動大使の問題でありますが、お話のように、外交というものは、ただ単に経済だけの点できまるわけではございませんが、最近の日本の立場から申しますというと、経済問題は、経済外交は非常な重要なものであることは御理解いただけると思います。しこうして、従来外務省の役人には、ややもすると経済のほんとうの生きた知識が欠けておるということにかんがみまして、経済界におけるいろいろな経験を持ち、見識を持っておる人に、これらの地を、都市を回ってもらって、その意見、報告を受け、総理とし、外務大臣として、日本の最後の外交方針をきめるという資料を得るために、これを出したわけであります。
 次に、それぞれの国はそれぞれの大きな目標を持って進んでおる、日本の目標は一体どこに置くべきかという御質問でありますが、私はいろいろな意見があるだろうと思いますが、日本の一番必要なことは、われわれが民主政治を完成する、この民主主義に反対するところの勢力に対しては、あくまでもわれわれの自由とわれわれの生活の平和を守るために民主政治を完成する、このことに対して国民がさらに強ぐ熱意を盛り上げて行くようにいたしたいと思います。
 思想の問題についてのお話でありましたが、いろいろ戦後、思想が混乱しておることも御指摘の通りであります。しかしやはり思想の問題というものは、思想の自由を持つことにおいてそうしておのおのの思想がお互いに切磋琢磨されて、そうして国民の間に浸透し、正しい道が立てられるということが思想対策としては一番望ましい、かように考えております。(拍手)
  〔国務大臣松永東君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(松永東君) 中山君の御質問に対しまして文部省所管の事項について御答弁を申し上げます。
 まず第一は、文教政策の基本はどんなふうにやって行くつもりかと、こういう御趣旨のようでございます。すなわち仰せによりますというと、戦前の思想と戦後の思想との間、その断層がある、それをどう結びつけて行くかと、こういうような御意見のようでございます。まことにその通りです。そこで、これから先の教育は、もちろんのこと戦前の教育そのままではいけないことは、これはもう論を用いません。わが国の今日の実情から見まして、人の信頼と尊敬を受けるに足る個性豊かな品位の高い国民の育成が必要でございます。また、わが国の当面しております産業経済の振興のためには、科学技術を身につけた国民の育成が必要であります。また、教育は政治的に中立でなければならないということは、これはもうもちろんのことでございます。私はこのような事柄を文教政策の基本として考えておるのでございます。
 次に、道徳科の問題について、どういうふうに考えておるかというような御質問でございますが、現在、小中学校における道徳教育は、社会科を初め、各教科、その他教育活動の全体を通じまして行われておるのでございますが、その実情は必ずしも所期の効果を上げておるということは申されません。今後もこの学校教育の全体を通じまして行うという方針は、すなわち道徳教育を行うという方針は変更いたしておりません。しかし現状を反省して、その欠陥を是正し、進んでその徹底強化をはかるために、新たに道徳教育のためその時間を特設したいというふうに考えております。その具体案につきましては、教育課程審議会に諮問いたしまして、慎重検討を願っておるのでございます。いずれにいたしましても、その内容は、文化的民主的国家の成員としてふさわしい徳性の涵養に資するものでなければならないと考えております。
 最後に、日教組問題のお話がありましたが、日教組問題については、この組合が健全な発達ができるようこいねがっております。すなわち愛される組合、好まれる組合に発達するように私どもはこいねがっておる次第でございます。
 以上、答弁いたします。(拍手)
  〔国務大臣一萬田尚登君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(一萬田尚登君) 企画庁長官に対しての御質問に、私お答えを申し上げます。
 国際収支の改善のために今とっております総合施策の結果、日本の経済が非常に悪くなりはせんだろうかという御心配であったと思うのでありますが、御承知のように、この日本の経済の基調というものの健全性はそこなわれておらないのでございます。ただ健全が進み過ぎ、勇み足と言いますか、行き過ぎたと言いますか、そういう関係から投資が行き過ぎになりまして、今やっておりますことは、この行き過ぎの投資を是正しよう、こういうことであるのでありまして、従って、是正するその過程におきまして、いろいろと困難な問題は生じます。しかしこれはむしろ経過的であります。従いまして、かようにいたしまして経済も徐々に均衡を回復しておりますから、この是正の過程において生じます中小企業とか、あるいはまた雇用とか、こういう問題について十分留意して行きますれば、そう心配もありません。現に貿易も徐々に好転をしておりますし、あるいはまた繊維等の倒産についても、今日はずっと減って参っておるような状況であるのです。
 以上のように御了承願いたいと思います。(拍手)
#16
○議長(松野鶴平君) 松澤兼人君。
  〔松澤兼人君登壇、拍手〕
#17
○松澤兼人君 私は日本社会党を代表して、総理の施政方針演説に関連して、総理及び関係閣僚に質問いたしたいと思っております。すでに同僚岡田議員より、外交、防衛、経済、外交等に対して質問があり、それに対し、政府の見解を伺ったのでありますが、私は主として政治運用、財政、経済、民生等の国内問題に重点を置いて質問いたしたいと考えるのであります。
 本臨時国会は、総理岸信介氏を首班とする新内閣として、われわれと相まみえる場でありまして、国民に対し、国会を通じて総理の第一声を発する機会であるのであります。われわれの強い要求により、自民党、政府は、おくればせながら臨時国会を開き、最初の方針であった所信表明という総理の演説形式を変えて、施政方針とすることに決定され、ここに新総理の第一声が発せられたのであります。二大政党対立の現在としては、与野党が国会を通じて語り聞くことは最も肝要なことであり、内容はともかく、昨日施政方針を述べられたことは、民主主義のルールの上から見て妥当であると考えるのであります。しかし、施政方針演説を聞いて国民が期待した新総理の第一声としては、まことに無味乾燥、内容蕪雑、施政方針演説としてはまれに見るお粗末なものでありまして、われわれの落胆は言葉に絶するものがあるのであります。一国の総理大臣は、政府のなさんとする万般の施策に関し、国会において明確に所信を発表すべきであるにかかわらず、これを聞くことができなかったことは、まことに遺憾であります。
 第一にお伺いいたしたいことは、先般、岸総理は訪米の帰途ハワイにおいて、日本社会党と対決すると報道関係に発表した由でありますが、われわれは、この発言についてきわめて重大な関心を持っているのであります。二大政党対立の現在、政策の相違はもとより当然のことであり、それぞれ政党はその政策の実現に努力することも当然であります。しかるに、もしも対決の意味を、実力による対決、対決による相手政党の抹殺などと理解するならば、事態はきわめて重大であります。総理は、民主主義政治の運用に関して、二大政党対立の問題についてはいかなる見解を持っておるのか、特にわれわれは、かかる言葉を帰国の途上、米国の領土内で発言されたことについて、種々憶測をせざるを得ないのでありまして、この国会において、まず第一にお聞きしたいことであります。(拍手)
 第二は、同じく民主主義政治原則の堅持に対する総理の所信を伺いたいのであります。最近における政府の言動を見るときに、深く心を痛ましめるものがあるのであります。それは、憲法第九十九条に明らかであるごとく、国務大臣、国会議員、その他の公務員は憲法を尊重し、擁護する義務を負っているのでありまして、政府は本来、いかなる勢力からも憲法の条章を守り、これを堅持して行かなければならない義務を持たなければならないのであります。しかるに現実は、政府がみずから憲法改正のために保守勢力を結集して、あえて違憲の疑いのある憲法調査会を設置し、改憲的な人物を網羅して憲法改正の準備を進めつつあることは周知の事実であります。さらにまた、憲法に規定されている勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権に制限を加え、自由を拘束したり、最近その上に、一部の首長の任命制を採用して、憲法の保障する地方自治の本旨をじゅうりんしようとする地方制度の改革を断行しようとしておる。また、言うまでもなく、憲法において学問の自由が保障され、思想及び良心の自由は侵してはならないことになっているにかかわらず、政府は反動的、独善的教育方針を国民に押しつけようとして、重大なる憲法違反をあえてしょうとしておるのであります。さらに重大なことは、憲法違反の批判を受けつつ自衛隊を増強するのみか、最近は、自衛のためならば、ある種の弾頭兵器を所持することすらも違憲にあらずとするごときは、政府の憲法擁護の精神いずれにあるやを疑わざるを得ないのであります。(拍手)かかる憲法違反、あるいは違反の疑いのある政府の言動の積み重ねは、結果的に見るならば、平和主義と民主主義を基盤として、国家の将来をトし、国民に由来する権威を国民の代表者が行使し、国民がその福利を亨受するという、人類普遍の原理を泥土にゆだねて顧みない結果となることをおそれるのであります。特に総理の戦争中の政治経歴から見て、これを深く憂えるとともに、戦後は、自由党の憲法調査会の会長として岸私案を発表された、その政治的立場について、国民の一人として深く心痛するものであります。ここにあらためて、総理の憲法擁護と尊重に対する所見を承わりたいのであります。
 次に、総理の施政方針演説の中では、三悪の追放が依然として大きく取り上げられておりますが、中でも汚職の追放は総理の悲願であることが述べられております。悲願とは、仏の衆生済度の慈悲の誓願であるということでありますが、総理の悲願にもかかわらず、行政部における問題は跡を絶たず、総理が総裁である自民党の国会議員で疑惑のある人々が相次いで現われていることは、遺憾のきわみと言わなければなりません。特に最近の売春汚職というがごときは、問題が問題であるだけに、総裁として、党風の刷新をはかって清潔な政治を行う信念から見て、あきれ果てた行為であり、国民の痛憤を禁じ得ないものであります。(拍手)総理は、売春汚職がどの程度に発展するか、疑惑のある者が他に全然ないと言えるか、自民党の党員であり、国会議員である容疑者が今後も出ることになったとしたら、総理としてまた総裁として、いかなる責任をとられる所存であるか、伺いたいのであります。さらに、聞くところによれば、当時赤線業者や従業婦が、ボスたちの命令によって強制的に自民党に集団入党せしめられ、党費というか、献金というか、相当の金額が本部または地方支部に納められたということを聞くのであります。総理は、かかる事実を御存じであるかどうか、明確に御答弁を願いたいのであります。(拍手)
 なお、これに関連して、一人の新聞記者が東京高検によって逮捕拘留されていたのでありますが、ニュース・ソース追及のため、記者を逮捕するというがごときは、明らかに取材の自由に対する侵害であり、何か政治的意図が隠されているのではないかとの疑惑を感じさせるのでありますが、総理はこの問題についていかにお考えでありますか。
 第二の項目としてお伺いいたしたいことは、財政経済に関する問題であります。われわれは第二十六回国会において、政府の三十二年度予算審議に際して、経済の見通しの甘さを追及し、政府の積極拡大経済政策が日本経済の現状から見て、きわめて危険な見通しの基盤の上に立てられていることを指摘したのであります。特に国際収支の問題につきましては、本年二月四日、本院議場において、三十二年度予算に関し、同僚羽生議員の質問に対し、当時の池田大蔵大臣は、「本年十二月末までは一億六千万ドルぐらいの黒字でございます。一月になりまして相当輸入がありまして、今年大体五、六千万ドルぐらいの黒字に終るのではないかと思っております。」と述べております。この見通しが、当日から二、三カ月を経ずして全くくずれ去り、引き締めとなったのでありますが、この見通しの誤まりは単に池田大蔵大臣一人の責任ではなく、内閣全体の責任であると申さなければなりません。総理は、一体かかる重要な経済見通しの誤まりに対して、いかなる責任をお感じになりますか。中小企業者、勤労者がこれだけ苦しんでいる現状に対してほおかぶりで過ごすということは断じて許されません。明確なる御答弁を伺いたいのであります。(拍手)
 かくして国会開会中、国際収支の危険信号が政府みずからの手によってあげられることになり、あわてた政府は、逆に緊縮消極政策をとらざるを得ない立場に追い込まれたことは、私の指摘するまでもありません。しかるに、すでに自民党の内部においては国際収支のやや改善の徴候を見て、あるいは手直しの時期であるとか、総選挙気がまえにより、おみやげ予算の編成要求などが現われている由でありますが、来年度経済の見通しと予算編成方針について明確に伺いたいのであります。政府の発表した昭和三十三年度経済通常の基本的態度を見ても、来年度もまだ決して楽観すべき経済状態ではなく、不景気予算を組まざるを得ないものとわれわれは考えているのであります。次の諸点につき、総理並びに大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。
 一、明年度経済成長率は本年度以下、約三%以下ということでありますが、本年度以下に押えるということを余儀なくされている。これは資本主義経済政策をとる岸内閣が、外貨危機克服のためにとらざるを得ない必然的な方向であり、明年度もデフレ政策が続行され、そのしわ寄せば引き続き中小企業者、農民、労働者等勤労国民に押しつけられることを意味するのであります。これを勤労国民に押しつけないという保証があるかどうか。
 二、現在の経済危機突破のために、輸出の増加、輸入の抑制、国内消費の抑制を主張しているが、いずれも長期見通しに基く具体策を欠いております。これでは出血輸出と国内価格の割高という二重価格制が横行し、利得を得るものは独占大企業のみとなるのであります。チープ・レーバーとソシアル・ダンピングにより、日本商品に対する海外の信用を失い、国民は消費者物価の上昇と雇用減少に苦しみ、経済危機はますます深くなる結果となりましょう。これに対する見解はどうでございますか。
 さらに、明年度予算の歳入面において、前年度余剰金と租税の自然増収見込みを加えますと、本年度に比べて一千億を越える歳入増となるが、政府は財政の膨張が景気に及ぼす刺激的影響にかんがみてこれをたな上げして、景気調節の財源に充当すると宣伝しておりますが、来たるべき総選挙目当てに総花式に、かつ無計画に支出されることは必至であって、国民の貴重なる血税は、資本家と地方ボスの食いものになると考えられる方法に使用すべきではなく、本年度に比較しての歳入自然増の処理としては、家族五人、月収三万円まで免税とする減税と、主として社会保障関係の民生安定のための歳出増加に充当すべきであって、景気調節資金としての特別会計繰り入れのごとき処理はすべきでないと信ずるのであるが、御所見を承わりたい。(拍手)
 さらに、歳出面において、政府は極力支出の圧縮をはかると称しておりますが、現実には、むしろ岸渡米を契機として、再軍備態勢は強化され、アメリカ政府の要請により防樹関係費の増額は必至となっております。緊縮政策を徹底せしめるとすれば、かかる不生産的、消費的な経費は思い切って削減すべきであると思われるが、政府の所見を承わりたいのであります。(拍手)
 第三としましては、政府の労働政策について伺いたいのであります。昨年来の神武景気と政府みずから自認したほどの景気にもかかわらず、雇用問題は一向に解決の方向にすら傾いていないのであります。完全失業者は依然として六十万人台を割ることができず、不完全就業者は一千万人をオーバーして、さらに増加する傾向にあります。しかも、政府は引き締め後の経済見通しにより発表したところによると、明年度の経済成長率を三%に押えると述べておるのでありますが、これによると、要就業者で就業不可能者は少くとも三、四十万人となるはずであります。引き締めによる離職者を加えるならば、来年度には完全失業者は百二、三十万になる見通しが強いのであります。これは最近における最高の数字であります。政府が針小棒大に宣伝している雇用増加も、この内容は臨時工、社外工、さらには日雇の増加であって常用雇用は全くふえていないのであります。すなわち、わが国の就業状態は不健全で不安定で、そうして変則的なものであり、引き締め政策により、雇用面では最悪事態に直面する様相を示しております。こうした雇用の危機は、就業者に対しては労働強化、労働条件の切り下げ、臨時工、社外工としての身分の固定化を伴い、労働者の雇用条件を低下せしめ、労働者にしわ寄せされてくることは必至であって、自民党の完全雇用は跡形もなく吹き飛んでしまったのであります。政府の雇用政策、特に最近の緊縮政策とこれに関連する失業対策に関して真剣なる方針を承わりたいと思います。
 さらに、この上に駐留軍労務者の大量解雇が行われておるのでありましてすでに七、八月の解雇予告者は三千名余に達しておるのであります。これら駐留軍労務者は一般の労務者と異なり、日本と米国との基地提供協定に基く労務者であり、これらの労務者の失業に伴う生活保護、あるいは企業の転換、就職のあっせん、生活保障は政府の全責任において解決さるべき国家的の問題であります。これを従来のごとく、単に都道府県あるいは民間企業に危険負担を依存するがごときことはとるべきでなく、確固たる対策を打ち出すべきであります。これに対する所見を伺いたい。
 さらに、政府は三公社、五現業の労働組合の争議行為を規制するため、去る九月二十七日、公労法の統一解釈を明らかにいたしましたが、これは明らかに正常なる労働運動に対する挑戦であります。すなわち、政府が統一解釈という美名のもとに、公労法を労働組合に不利に解釈し、これを政治的、謀略的に強行しようとしているものであります。法律の解釈は司法部においてなすべきであって、行政部がこれをなすことは三権分立の趣旨にも反するものであります。かかる行政措置は、憲法に保障された労働基本権に対する重大な制約であり、労働者の永久に侵されない基本的な権利を奪うことであります。明らかに憲法違反であると言わなければなりません。かかる制約は、公正なる労使関係を規律し得ないのみならず、かえって労使関係を刺激し、悪化させる以外に何らの意味を持たないのであります。従って、政府の見解は思想的には反動的であり、政策的には正常な労使関係の発展をまっこうから阻害するものであると言わなければなりません。われわれは、公共企業体職員に対してはスト権を回復せしめて、労働運動の正常なる発展を期すべきであると考えております。しかるに政府の見解は、職場大会その他慣行上承認されている組合戦術を非合法としたり、組合費の天引きを禁止しようという一連の政府の政策を強行しようとしているのであります。これは明らかに健全なる組合運動に対する挑戦であって、われわれは断じて承服できないのであります。この点に関する明確なる方針を伺いたいと思います。(拍手)
 さらに、文教政策についてお伺いいたします。まず、教育財政についてであります。岸総理は組閣以来、労働、文教を二大重点政策とすると言明し、義務教育の水準確保と父兄負担の軽減を文教政策の重点施策として実施すると声明しているのであります。しかしながら、この線に沿って文部省が立案してきた義務教育費国庫保障法案は、現在見送りの状態となっているのであります。果して総理は文教政策振興ということを一片のほごとする考えであるのか、いかにしてこれを表現しようとするのか、その信念を承わりたいのであります。もとより教育は国の重要なる行政であり、現在叫ばれているすし詰め教室の問題や、百六十億にも上る父兄負担の軽減は、最も緊要かつ必要な問題であります。そのためには、教員配置の適正基準の設置、教室の増築整備、不正常授業の解消等、いずれも国の財政の裏づけを必要とするものでありますが、文教政策を重点的に取り上げるという公約の建前上、総理は具体的な方策をどのようにお考えになっているか、その所信を承わりたいと思います。
 次に、教育の自主性についてお尋ねいたします。さきに藤山外務大臣が渡米した際に、いわゆる藤山・ダレス会談において、ダレス長官は日本の教育制度について批判し、一民間団体である日本教職員組合の活動についての疑問を理由に、沖繩の教育権返還を拒否し、さらに日本政府に対し、決意のあるところを示せとの希望を述べたということを、新聞報道その他によって聞いているのでありますが、この真相は一体どうでありますか。かつて池田・ロバートソン会談においても、日本の教育に対する干渉が行われたと言われており、今また藤山・ダレス会談において現われたこれらの問題は、明らかに日本の教育に対するアメリカの干渉を如実に物語るものであり、きわめて重大に考えざるを得ないのであります。(拍手)われわれは、日本の教育はいかなる他国からも干渉されず、日本人の手によって行われ、その自主性を堅持すべきものであると信ずるのでありますが、総理並びに外相に対し、その真相の発表を伺うとともに、日本の教育の真の自主性についての所信を承わりたいのであります。
 次に、教育の中央集権化についてお尋ねいたします。教育の地方分権化、教育の自由は、言うまでもなく民主主義の基本原則である。しかるに、現在、国民道義の高揚とか、愛国心の涵養とかという美名のもとに、教育課程を改悪して、国家統制のカリキュラムを押しつけたり、実質的な修身科の復活を企図したりしていることは、教育の国家統制の再現をもくろむものであり、また公務員法制定以来、今日まででき得なかった教師の勤務評定を強行しようとする意図は、これまた教科書の国定化推進とともに、教育の中央統制、集権化以外の何ものでもありません。これまで勤務評定が実施され得なかったのには、それ相当の理由があるのであります。政府は、その原因をこの機会に検討し、真に教育が自由なる雰囲気のもとで行われるよう、十分配慮すべきであると考えるのでありますが、総理の所見を承わりたいのであります。(拍手)
 次に、年末手当増額について伺いたい。官公労の諸君は、現在、年末手当として二ヵ月分を要求しているのでありますが、これに対して政府はいかなる見解を持っているか、伺いたいのであります。なお、政府はこの国会に法律改正のみを提案する所存のようでありますが、これに対する予算の裏づけをなさなければ、地方公務員は昨年と同様、支払いできないような状態になるのではないかと心配するのであります。こういう実情を考えれば、当然補正予算を組むべきであると考えるのであるが、なぜこの国会に補正予算を組まなかったのであるか、その見解を承わりたいのであります。
 これらのことを非常な心配をもってお伺いするわれわれの気持の中には、総理が遊説に際し、労働者である教員に子供を預けることができないと述べ、一部の喝采を博したということを新聞で拝見したのであります。この見解は労働者に対する一つの大きな侮辱であると考えるのであります。(拍手)労働者である教員に教育を預けられないということは、労働者である公務員に行政がまかせられないということと同様であり、労働者である職員に国有鉄道はまかせられないということと同様であります。これが岸内閣の真意であるとするならば、われわれは、これまで岸総理が民主主義に関して述べられたことを疑わざるを得ないのであります。一国の総理として、教育者の悪口を遊説中にぶって歩くがごときことは、不謹慎もはなはだしいと言わなければなりません。(拍手)
 最後に、本国会は、中小企業団体組織法の成立が中心の議題であると言われておりますが、われわれは衆議院において共同修正を受けた送付案を検討して、プラス・アルファをつけて成立せしめたいという基本方針を持っております。総理は施政方針演説の中で、団体組織法案の成立を強く希望しているのでありますが、われわれに言わしめるならば、団体組織法案はもとより必要であると思うのでありますが、しかし、政府としてはこの法案に加えて、われわれが提案しております大企業と中小企業の産業分野確立に関する法案、小売商業振興法案、家内労働法案、最低賃金法案等の一連の法案の審議を促進し、総合的な対策の上に中小企業の安定と振興をはかるべきであると思うのでありますが、政府はこの種の法案を提案せず、またその審議を促進していないことはいかなる理由に基くものであるか、中小企業に対する政府の施策の貧困をまことに遺憾と思うのであります。(拍手)
 以上をもって施政方針演説と財政演説に対する私の質問を終ります。(拍手)
  〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。御質問がいろいろ具体的な、詳細にわたっての御質問でございまして、これらにつきましては、担当の国務大臣より答弁いたすことにいたしまして、私は全体の問題についてお答えを申し上げます。
 社会党との対決云々という問題でございますが、私は二大政党になりまして、二大政党が健全に発展して発達して行くためには、あくまでも政策を中心としてその政策に対する各党の見解を十分に国民の前に明らかにして、国民がこれに対する正しい批判ができ、国民の批判に待つということが二大政党の当然努めて行かなければならぬことであるし、また、それによって二大政党が発展するものだと、こう考えております。その見地に立って、両党は十分に一つ切磋琢磨をして行くべきであるというのが私の信念でございます。
 民主主義の見地から現行憲法を順守すべきこと、これは当然に言うを待たない。われわれはこの現行の憲法を尊重し、これを順守すべきことは言うを待ちません。しかし、憲法の改正をするかどうかということに対する議論をいたし、研究をすることはちっとも私は差しつかえないと思うのであります。(拍手)また憲法調査会というものが憲法違反であるという社会党の御意見もありますが、私は、憲法調査会の規定をごらんになりますというと、現行憲法を検討し、これに関連する諸問題を調査、審議して、その結果を政府並びに政府を通じて国会に報告するということでありまして、社会党があげておられるように、国会の発議権というものに対して何ら触れておらないし、これを制限するものではありませんから、これは憲法違反ではないという考えであります。(拍手)
 言論の自由であるとか、あるいはその他の自由の擁護の問題は、当然憲法の大事な原則としてわれわれも十分考えていかなければならぬと思いますが、それに関連していわゆる売春汚職の問題、記者の逮捕の問題等についての御質問であります。私は汚職はこれはほんとうに真剣にこれをなくするということにあらゆる面から努力をいたしていきたいと思います。民主政治というものは、国民の信頼の上に成り立つものでありまして、国民の信頼を失う――これより大なるものはないと考えますので、公務員の汚職はもちろんのことでありますが、さらに大事なことは、政党及び政治家が真に清潔な政治を行うという、国民が信頼を持つような姿にしたいというのが私の念願であります。(拍手)売春汚職の問題は、お言葉のようにこれは非常に目下いろいるとうわさされておりまして、私は遺憾千万であります。一日も早くこの事情が明確にされて、そしてこれに対してそれぞれ断固たる処置がとられることを私は望んでおるものであります。集団入党云為とのお話がありましたが、そういううわさをわれわれは、私が当時党におりまして聞きまして、総務会においてそれは拒否いたしまして、そういう事実は全然ございません。(拍手)記者の逮捕云々の問題でありますが、われわれは記者が報道の自由を持ち、それの記事をいろいろの方向からとってくるということについて自由を持っていることは、もちろんわれわれはこれは尊重しなければならぬと思います。ただ、同時に、報道は一方においてはちょうど標語のごとく「報道には大胆、人権には小心」というように人権が十分に保護され、尊重されるということが、私は同時に民主政治の基本であると思います。(拍手)従ってこの自由と人権の擁護という問題は、これはおのおのの良識に立って解決せらるべき問題でありまして、もしも不幸にして、全然事実のないことが事実であるがごとく報道されることによって当の本人の名誉が傷つけられ、あるいは社会的地位が危うくされるというようなことがあるとするならば、これまた民主政治の上から申しまして、私は非常に嘆かわしいことと思います。これを適当に、良識に基いてそういう点が調整されることが民主政治の行われる前提であると、かように考えております。(拍手)
 文教、労働政策の問題につきましてでありますが、文教の問題に関しましては、お説のごとく、私はこれに重点を入れていきたいと思います。それは現在の文教施設の不備を整備するということももちろん一つの内容でありましょう。また、先ほども文部大臣が申しましたように、教育の内容についてもわれわれは考えていかなければなりません。あるいはさらにこの教員諸君が教育の使命を十分に達する上におけるところの待遇の問題であるとか、あるいは勤務の条件というようなものも考えなければならないし、また同時に、教員諸君の私は心がまえの上においても、大いに反省を促さなければならぬ点があると思います。(拍手)しかし、御質問のように教育というものは、自由中立の雰囲気の中において行われなければならぬということは、これは当然でありまして、国家がこれに対して権力で統制するというような考えを持っておらないことは言うを待たないのであります。(拍手)
 もう一点、藤山外務大臣がおりませんので。
 藤山外務大臣とダレスの会談において、日本の沖繩の教育権返還の問題を交渉した際に、日本の教員組合及びこれに対する意見が出て、日本の教育に干渉しておるというふうな御質問でありましたが、そういう事実は私は全然報告を聞いておりませんし、またそういうことはあり得べきことではございません。あくまでも自主的に日本の立場から教育は考えていきたいと、かように考えております。(拍手)
  [国務大臣一萬田尚登君登壇]
#19
○国務大臣(一萬田尚登君) お答えを申し上げます。
 一つは、三十二年度の経済の見通上、国際収支の見通しについての御質疑であったと思うのでありますが、まあ私は、あとから考えるといい知恵が出ますが、(笑声)それですべてが、見通しのすべてが私は当っているとは申しません。申しませんが、大きな筋から申しますると、国際収支について申しますれば、三十二年度の輸出は大体二十八億ドルというものを考えておったのであります。ところが、二十八億ドルは私は達成をすると思います。あるいはも少したくさんするかもしれません。これは間違っていない。一番大きな柱が、私は見通しは間違っていない。しかるに、なぜそれなら国際収支が悪くなったか、そこが問題である。それは二つある。その一つは、日本の経済というものが若い、若いですから、いろいろと合理化であるとか、あるいは産業設備の拡大が要るが(発言する者多し)静かに聞いておいて下さい。(笑声)それではどういうところにこの設備の拡大があったかといえば、電力、鉄鋼、造船、これは日本の基幹産業でありますが、これは日本の経済が拡大するときに、常に隘路になってくる産業なんです。ですからこういうものをなるべく早く合理化、拡大しようというのが、当然の経済政策であります。ところが、そのすべての、それに持ってきて、国内需要がいろいろな関係から、輸出景気あるいは農村が非常に豊作であったとかいろいろなことから、国内需要がそれにプラスして、また物を需要してきた。そこで、そういうことでもあるならば、やはりいろいろ物を輸入せねばならぬのですから、外貨をたくさん使って輸入した、そこにある、そのこと自体何も悪いことではない、ただ、あまり急激に一ぺんに行き過ぎたのが悪い、こういうのが現状であります。その点についてなお今後御討論があれば、幾らでも私は応じます。(拍手)それから、しかしそういうふうにして行き過ぎではありますが、これを押し戻さなければならない。そこで今日の経済の困難というものがあるのでありまして、これには輸出の決意と努力がないと、それが達成ができませんから、今日、消費、特に国内的な消費を押えて、それで輸出に向けることを、私どもが皆さんにお願いするゆえんであります。来年度の、明年度の経済の成長が三%、製造工業の伸びが四%、こういうふうにしてありますのは、何分にも三十年、三十一年の日本の経済の伸びが、三十二年も大体八%くらいに押えたいとしておるのですが、私はもう少し、これは伸ぶかもしれません。こうずっと伸びが激しいのですから、三十三年度において三%の伸びにとどめるということは、これはやむを得ない。この三%の伸びを実現するのに、なおかつ三十一億五千万ドルの輸出はどうしてもせなくてはならぬということに当面いたしておるのであります。しかしながら、大いに今後日本の経済を進めていく上におきまして、国内消費を押えなくてはならないということは、おわかり願えるかと思うのであります。(拍手、笑声)こういう結果、この中小企業、私はこの点が非常に重要であると思いますから、今ここで詳しく申し上げておるのであります。この結果、中小企業は雇用についていろいろな問題が生ずることもよく考えております。従いまして、これにつきましては、政府としても特別に配慮をする考えでおります。
 それからもう少し具体的な御質問として、三十三年度の予算につきまして若干の御質問がありました。歳入は相当多いじゃないか、これは一つ民生安定に使ってはどうか、こういう御意向である。申し上げるまでもなく、今日財政が先ほど申しましたような日本の経済の状態でありまするから、財政が景気に対しまして刺激的要因になることは、この際どうしても避けなければなりません。従いましてこの歳出の実質的増加というものを、私は極力押えたい、こういうふうに念じておるのであります。その結果財政に余裕が生ずるかもしれません。あるいは生ずるでありましょう、これをどう使うかは、今後日本の経済の状態を見つつ考えていく、かように考えておるのでありまして、その際この民生安定というようなことも、十分考慮さるべきでありましょう。
 それから年末手当の問題がありますが、年末手当につきましては、人事院の勧告通り〇・一五ヵ月分を出しますが、ただ、これは人件費等の節約によりまして、既定の予算の範囲内においてまかなえますから、それで予算の補正はいたさないのであります。(拍手)
  〔国務大臣石田博英君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(石田博英君) 私に対する質問の第一点は、離職者、失業者の増加に伴いまする政府の施策いかんということでございます。(「完全雇用」と呼ぶ者あり)昨年の暮の完全失業者の数は六十一万人でございましたが、本年の八月末日では四十九万人で十一万人の減少を示しております。しかし、国際収支改善に伴いまする緊急施策の影響、あるいは駐留軍の引揚げに伴いまする離職等によりまして、相当数新たに離職者の増加することは見込まなければなりません。これに対しましての基本的な施策は、これは当然経済の成長によって見ていかなければならぬのでありますが、本年及び明年度におきましては、先ほどから御議論になっておりますように、緊急施策の実施に伴いまして思うような成長率を期待するわけには参りませんが、これは将来にわたっての、大きな健全な発展の土台である一時的な現象であると、私どもは考えておるのでございまして、その一時的な期間的なズレの見方については、万般の失業対策を講じて参りたいと思っております。その中で明年度からさっそくやりたいと思っておりまするところは、現在、ただいま御説明申し上げましたような完全失業者の数があるにかかわらず、一方職業安定所の窓口を通しまして調査をいたしますると、未充足求人の数が十三万人余りにも上っているのであります。これは主として技能、技術の不足によるところでありまして、失業者、離職者の多い反面、特殊な職業あるいは特殊な技能、技術を要する仕事には、ただいま申しましたような現象がございますから、明年度は職業訓練制度を総合的に、かつ積極的に拡大をいたしまして、これは予算等につきましても、十分要求をいたしまして実現したいと思いますから、この計画の実施に当りましては、この上とも御声援のほどをお願いを申し上げる次第であります。(拍手)
 次に、政府が九月に行いました公労法の統一解釈について御議論がございました。私は法を執行する責任を持っておりまする政府が、その法の解釈について統一しておくということは、むしろ行政府として当然の責任であり、義務であると考えているのでございます。(拍手)また、そのことがよく公労法の解釈、あるいは公労法それ自身につきましても、憲法の中にございまする労働者の団結権、あるいは団体行動権というようなものに違反する、すなわち憲法違反であるという御議論をなさいますが、憲法は、総合的に他の条章と関連を持たせて解釈していくのが普通でございます。憲法第十二条には、明らかに公共の利益の方が優先するということを規定していることは御銘記願いたいと存じます。(拍手)
 また、政府のとって参りました労働政策も、労使の関係を悪化せしめるものであるという御議論でございますが、事実は私は、全く反対の方向に向っていると信ずるのであります。例年春と秋に必ず行われました国鉄の運転の混乱は、本年は国鉄労働組合内部の諸君の良識の芽ばえによりまして、あるいは世論の動向によりまして、本年はこれは行われずに済みました。これは明らかにいい方向に、労使の関係が向いつつあるという有力な証拠であると考えている次第であります。(拍手)
  〔国務大臣松永東君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(松永東君) 沖繩の教育問題についてでございますが、われわれ同胞の教育は、われわれの監督のもとにおいてわれわれの手で実施したい、こういう考えのもとに先般藤山外務大臣が渡米せられたときに、このことを先方に交渉せられたのでございます。しかし、それは直ちに向うから快諾を得ることができなかったことは新聞等にも出ておったようでございます。私もまたそのことを承わっております。しかし、この問題については、今後も機会あるごとに強く主張したいと覚悟いたしておる次第でございます。決して外国の干渉をこの独立国であるわれわれが受けるべき筋では断じでございません。この決心のもとにやるつもりでございます。(拍手)
 さらにまた、教育につきましては国家統制をもくろんでおるのじゃないかというようなお話でございまするが、断じてさようなことはございません。私どもは現状のままに、そうして教育の機会均等を叫んで一生懸命努力するつもりでおります。さよう御承知を願います。(拍手)
  〔国務大臣前尾繁三郎君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(前尾繁三郎君) 松澤君御指摘の通りに、中小企業の安定につきましては、中小企業団体の組織に関する法律だけでは十分でないことはわれわれも承知いたしておりまして、すでに小売商業特別措置法は衆議院に提出いたしておる次第であります。また、社会党御提出の中小企業の産業分野の確保に関する法律あるいは商業調整法案につきましても、衆議院でいろいろ御審議を願っておるのでありまして、われわれもこれらの審議が促進されることを切に希望いたしておるのでありまするが、ただ中小分業団体組織に関する法律と全く不可分ということでもありません。むしろこれが基礎になりますので、この法案の成立を急いでおるような次第でありますので、御了承願いたいと思います。(拍手)
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#23
○議長(松野鶴平君) 大竹平八郎君。
  〔大竹平八郎君登壇、拍手〕
#24
○大竹平八郎君 私は無所属クラブを代表いたしまして、岸総理大臣並びに一萬宙大蔵大臣に二、三の点に関しまして質問をいたしたいと存じます。
 まず、岸総理にお尋ねいたしたい第一点は、昨年第二十五国会におきまして締結批准せられました日ソ共同宣言に対する領土問題についてでございます。当時この問題の審議の中心が一にかかって領土問題にあったことは総理もすでに十分御承知のことと存じます。少くとも共同宣言締結と同時に、無条件にまず歯舞あるいは色丹島は、わが国に即時返還せられるものと国民は期待していたわけでありますが、この重大な領土問題が両国間の意見の一致を見ず、とわあえず暫定的に国交を正常化するとのことで、一応この共同宣言は可決せられ、歯舞、色丹は平和条約確立とともに、また、他の領土問題全部は継続交渉になるとの政府の答弁があったのでございますが、すでに施行せられて一年、日ソの国交に特別の支障のない状況より見まして、政府はすみやかにこの領土問題の返還交渉に当り、国民の輿望に私はこたえるべきものではないかと思うのでございますが、この際、総理の所信をお聞きいたしたいと存じます。
 一方また、ソ連といたしましても、積極的に本問題の解決に乗り出すことこそ、共同宣言の意に忠実であると言わねばならないと思うのであります。
 次に、第二十六国会より継続審議といたしましてただいま審議中の中小企業団体法案について、特に総理より重要な二、三の点についてお答え願い、もって今後の審議促進の質にいたしたいと思うのであります。本法案の審議は、実に参議院の良識がここに集中されていると申しても決して過言ではないのであります。また、それだけに疑義の点につきましては、あくまでも政府の答弁を促し、真に国民経済の寄与するところの理想的法案を作りたいのが、われわれの念願であることをこの機会にはっきり申し上げておく次第であります。
 それで第一にお尋ねいたしますることは、昨日の本会議場におけるところの総理の演説の中にもございました通り、わが国の生産額と輸出額の半ば以上を中小企業の手によってなされていること、これはきわめて重要な立場にあることを証明するのでありまして、その点は全く同感でございます。ただここで指摘をいたしたいことは、中小企業と申しましても、その中に非常にたくさんの零細企業を含んでいるということでございます。従って、この両者は、必ずしも利害は一致はしないのであります。そこで本来ならば、目下通産当局において調査中と思いますが、中小企業の本格的実態調査の上において本案を提出されてもおそくはなかったと考えるのでありますが、本案成立後、この中小企業と零細企業との調整をいかになされるか、その点の御所見をお伺いいたします。
 次に、本案の成立が、かつて戦時中強制せられました一種の中小企業整備法になる懸念はないか、この点をあわせて伺いたいのであります。
 さらに、本案の最大の問題となっており、総理も両国会において御答弁をなされたと思いますが、強制加入の問題でございます。この点は関係当局の答弁を拝聴し、また、審議が進むにつれまして、現憲法に抵触するのではないかという一つの疑念がますます深められてくるのでございます。この際、本会議を通じまして総理の明確な御所信を伺いたいと思います。すなわち現憲法は、結社の自由を保障していることは申すまでもございません。これを裏を返せば、いやな団体なら入らなくともよい自由もあるわけでございます。でありまして、現在の中小企業安定法でも調整事業を守らせることは大臣命令によってできるのでございます。組合に入らなければ調整事業ができぬということは、いささか不審に思うのでありまして、結局組合に入ることが目的ということになるのではないかと思うのでございます。
 さらに、官僚統制とボスの支配化についてお伺いいたしたいと存じます。
 本案の成立に伴いまして、業者の最も危惧いたしておりまする点は、許可、認可、あるいは状況の認定等があまり多いので、勢い官僚統制の弊というものが起きるのではないかという懸念でございます。それといま一つは、なれない組合活動は業者の優劣は問わずして、勢い専従者をしてボス化する傾向になるのではないかと思うのでございますが、この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
 最後に、総理にお伺いいたしますことは、大企業との系列化によりまして、貿易振興に長年貢献をして参りました中小企業が、この系列化が断ち切られまして、このため輸出を阻害するおそれが生ずるのではないか。この点をお伺いいたしまして、大蔵大臣の質問に移りたいと思います。
 大蔵大臣は、国際収支の均衡を得させるために、経済総合政策を実施した、こう言っておりますが、最近になって均衡を得つつあることはまことに同慶にたえないのであります。大臣自身も言っているように、それが単に輸入の行き過ぎの是正にとどまり、輸出の増大を伴った均衡でなく、いわゆる縮小均衡に過ぎぬとするならば、これは大問題であります。その意味におきまして、輸出振興について特に政府は留意する必要があると思うのでございます。西独の今日の著しい経済復興の影に、西独国民の生産意欲のたくましさと、その技術の優秀さのあることは申すまでもございませんが、西独が経済政策のすべてをあげて輸出の振興という一点に集中したことは忘れてはならないのであります。その意味におきまして、私は政府の為替、金融等におきまするところの所信をお伺いいたしたいのであります。
 その一つは、九月二十五日から実施をされておりまするところのポンド先物相場の自由化に対するところの政府の処置でございます。ポンド為替は輸出入とも政府が保証していたのが従来でございますが、ポンド相場の不安化に伴いまして、今度は先物は銀行、商社にまかせ、ために市場は一大混乱を来たしまして輸出を阻害すること、はなはだしかったのでございます。政府はポンド先物不安のためこの処置をとったものと思いまするけれども、国全体から見まするならば、政府が損をするのも、民間が損をするのも同じではないですか。こうしたところに輸出に対するところの政府の徹底した対策がないように考えるのでございまするが、この点について御所見を伺いたいと思います。
 第二点は、貿易の振興に伴いまして為替銀行の育成強化という問題があるのでございますが、聞くところによりまするというと、政府は、すでにこの問題に関しまして研究調査を進めておるように聞いておりまするが、この際、本問題に対しまして大臣の所信を明らかにいたしてもらいたいと思います。
 次に、租税特別措置法において輸出損失準備金制度が来年七月末で廃止されることになっておりますが、これはすこぶる遺憾のことでございます。契約の取り消し、クレームの損害保証等の危険をカバーするには、この案を継続しなければ、なかなか業者としてはたえられないのでございまするが、この意味においてあえてこれを廃止をやめまして、恒久制にするのお考えはないかどうかということをお尋ねいたします。
 最後に、来年度予算はただいま編成中であろうと思いまするけれども、輸出の重要性にかんがみまして、輸出振興に必要な経費については大いにこれを認める方針であると、私どもは推察いたすのでありますが、この際、大臣の査定方針をお伺いいたしまして、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 日ソ間における領土問題の解決の問題でありますが、これは御承知の通り、日ソ間において従来意見が真正面に衝突している問題でありまして、われわれとしては、少くとも南千島は当然われわれの領土であるという主張を従来貫いてきておるわけで、これに対してソ連側がこれを認めない。ただ歯舞、色丹については、領土問題について最終決定されたときには、これを返そうということが共同宣言に出ておるわけであります。この問題はわれわれの国民的要望であり、ぜひとも実現しなければならぬ問題であるけれども、それを解決するのには、従来の交渉にかんがみて、まず日ソ間の友好親善の関係がもう少し進められて、日本の国情、国民の要望ということに対してソ連と正しい理解を持つところの素地を作って行かなきゃならぬ。そのためにはまず積み重ねて行って、漁業問題を解決するとか、あるいはソ連に残っておるところの未帰還者を帰還せしめるということに対して、ソ連側の協力を求めるとか、あるいは貿易協定を作って貿易をやって行く、こういうことを積み重ねて、最も適当な時期に、なるべく早い時期にこの領土問題を解決するように進んで行きたいというのが方針でありまして、今日の状態において貿易協定の話がある程度進められておりますが、まだ今までのところでは領土問題を解決するべき適当な時期ではないと思っております。しかし、これをいつまでもこういう事態に置くことはいかないのでありまして、できるだけ早い機会をつかまえてこの問題を解決したいと、かように考えております。
 第二は、中小企業団体法に対する御質問でございます。お説のように、中小企業の内容というものはまことに千差万別で、その状態がよほど梅雑な関係がございます。従いましてこの団体法の運用に当りましては、十分それらの事情を考えて行かなければなりませんが、今御心配になっております中小企業といっても、規模が違っておって零細なものが非常に多い、これらのものが、この団体法によって自分たちの権益というものが守れないのではないかという御心配でございますが、この団体法におきましては、企業の規模にかかわらず、民主的に同じ議決権を持っておりまして、従って民主的に運賞するという建前になっております。ただ、御心配のように、そうは言うけれども、実際業界において組合等を指導する場合に、いわゆるボス的な存在の人のために、そういう人々の利益が害されるというようなことが皆無というわけにはいきませんから、十分それらについては、やはり公共的立場からの監督をして行かなければならない。しかし、同時にそれが官僚統制とか、あるいは官僚によって干渉するという、そういう弊害を生ぜないように行かなければならぬのでありまして、その間の運営につきましては、十分に民間の意見等も取り入れて、これの万全を期して行く必要があると思っております。
 それから、これが企業整備になりはしないかという御懸念でありますが、戦時中における中小企業の企業整備ということは、あの当時の戦時経済上の必要からきたことでありまして、私は、この団体法によって、かつて戦時中に行われたごとき企業整備を、これで行おうという考えのないことはもちろんのこと、そういう結果にはならぬと思います。
 それから強制加入の点に関して、憲法違反ではないかという御懸念であります。こういう議論もわれわれも聞いております。しかし私ども十分研究して見まするというと、この加入命令というものを出すという場合は、中小企業全体が過当競争のために非常な危殆に瀕するとかいう特別な場合に限っておるのであって、いわゆる公共の福祉のために必要やむを得ないために出す場合でありますから、憲法違反ということは私はないと、かように考えております。
 なお、この団体法が輸出振興上、阻害になるのではないか、これは重要な問題でありますので、お答えをいたします。下請の場合もありますし、あるいは輸出産業自体に関する場合もありまして、いろいろな事態があります。が、輸出産業の場合においては、過当な競争が輸出をむしろ妨げておるのであって、これによっていわゆる秩序ある輸出がむしろできるという、これは従来の実際の例でも、そういう例が織物等その他に少くないのでありまして、また下請の場合における、下請がこの団体ができれば、当然、上の元請のところから切れるというふうな御意見でありましたが、私どもはむしろこの団体法によって中小企業が組織されて、そうして正常な下請関係ができるということを望んでおるのであって、下請関係がこれによって切れるというようなことは、私どもは想像しておらないのであります。
  〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕
#26
○国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。
 ポンド為替の先物の買い入れをやめましたので、これは輸出を阻害しないかという御質問であります。御承知のように、ポンドの貿易は日本は輸入の方が多いのであります。従いまして為替から言いますと売りの方が多いのであります。従いまして、これを市場にまかせても、買わなくても、買いと売りがカバーされまして、むしろ売りが残ると、こういうのがほんとうを言えば日本の市場の現状であります。ですから、特に政府がこの買いをやめたからといって、その為替の上においては、何も不便があるわけではありません。それから、政府が為替の先物を買っておるというような所は、日本だけでありまして、世界のどこにも、こういうことをやっている所はありません。しかるに、これがなぜ貿易を阻害するかと言えば、ポンドが当時弱いために、何でもかんでもリスクは、為替銀行であれ、業者であれ、政府にみな持って行けばよいという意味になるので、これはやはり私は、行き過ぎであると思うのであります。そういう見地から、実は、これはもっと、ほんとうをいうと、やはり早く取りやめておけばよかった。ポンドが少し弱くなった、そういうときに問題にいたさざるを得なかった、こういうことで問題になった。それで、ポンドについて不安が去ったときに一つ考えよう。ちょうど私はIMFに行きましてイギリスの大蔵大臣の意向も十分徴して、同時に世界のポンドに対する見方が変りまして、もうポンドの防衛は十分だという情勢ができましたので、それに応じまして、日本も先物を買うことをやめたのでありまして、そういうことをやれば、むろん一時幾らかの困難が生じますが、これは、なれればむしろそうあるべきなんでありまして、それで初めて為替というものが生きてくる、そういう意味でありますので、さように御了承を得たいと思います。
 それから、為替銀行を育成統一するような考えがあるか、こういうことであったと思います。そういう考えは持っておりません。今日、日本の為替銀行は、公認為替銀行と専門為替銀行がありますが、この為替銀行につきましては、それぞれこれを強化して、そうして適正な競争のもとに運営をして行こう、かように考えております。むろん貿易や為替の事情に応じまして、客観的な情勢に合いますように、適切な措置をとるということはありますが、特にこの為替銀行を一緒にするというような考えは合持っておりません。
 もう一つ、輸出準備金制度が期限がくるが、これはそのままにしておいてほしいという御意向であったと思います。今これにつきましては検討を加えております。御意見のところは十分参考にいたしたいと思っております。(拍手)(大竹平八郎君「輸出振興の来年度の予算の査定についての方針と述ぶ)
 お答えいたします。予算につきましても、そう言えると思いますが、要するに、来年度以降において、日本の輸出をいかにして増大させるかということが中心でありますから、税の上におきましても、輸出振興にほんとうに役立つという見通しが立つものにつきましては、私は十分考慮して行きたい、かように考えております。(拍手)
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#27
○議長(松野鶴平君) 市川房枝君。
  〔市川房枝君登壇、拍手〕
#28
○市川房枝君 議員になりまして、初めて実は総理の施政方針演説に対して質問する機会を与えられました。もっとも時間は五分でございます。三人の会派に五分は、だいぶおまけをしていただいたことになりましょうが、今日のような場合には、最低を十分ないし十五分ということにしていただいて大会派の持ち時間や人数をもっとおふやしいただきたいと思います。この本会議で、多数の方々が十分に質問されることは、一般国民、有権者の方々も望んでおられるのではないかと思います。私には、言論の最も自由であるべきはずの国会が、どうも最も不自由な場所のような感じを受けております。
 さて、総理にはいろいろお伺いをしたいことがございますが、今日は汚職の追放に関連した問題だけを取り上げたいと思います。総理は、政治の基本として、前から三悪の追放を取り上げておられますが、特にその中の汚職の追放につきましては、毎日々々、新聞が汚職の記事を出しておりまするだけに、国民に非常な関心を与えております。ところが、昨日の施政方針の御演説の中では、汚職追放については何らの具体的な提示がございません。なお迫力も、ほかの事柄と比較して、非常に弱いように見受けました。その点で私は非常な失望をしたのであります。もっとも総理は、汚職の追放につきましては、かねてからの私の悲願とするところでありますとおっしゃっております御心事は疑いません。また、一片の通達や、内規の改正で、能事終れりとするものではないとおっしゃっているのも信用いたしますが、それなら、どうして汚職を追放して下さるのか、それを伺いたかったのであります。汚職追放の具体策としてただ一つ、あっせん収賄罪の制定を唱えておいでになったようでありまするが、どうしてきのうの御演説の中から消えたのでありましょうか。今度の臨時国会に直接関係のない国民年金制度とか、最低賃金制度をうたいながら、この問題をはずしたのは、総理の汚職追放に対する決意のよろめきを示すものではないかと思います。(笑声、拍手)
 そこで、汚職に関係の深い幾つかの問題についてお伺いしたいと思います。
 一、一般公務員だけでなく、国会議員をも対象としたあっせん収賄罪の制定を通常国会に提案して成立させる御意思かどうか。
 二、政党が選挙費用として、あるいは党運営費として、資本家、業者等から多額の金を受けることは、汚職の根源と思われますが、それを禁止もしくは制限するために、政治資金規正法を改正する御意思はないか。
 三、現職大臣が営利を目的とする私企業の役職を兼ねることは、これまた汚職を引き起しやすいので、これを禁止すべきだと思います。この法案は、同僚の八木議員が主となって提案、継続審議となっておりまするが、総理はこの法案には御賛成かどうか。
 四、一般公務員の汚職、国費の不正不当使用につきましては、会計検査院から国会に報告され、決算委員会で審議されておりまするが、それら公務員に対する法的処分、行政処分が実に軽いと思います。官庁には、仲間をかばい合う風習があり、中には栄転さえさせられている人もあります。この実情を総理は十分御承知と思いますが、これに対し、どんな手を打っておいでになるか、伺いたい。
 五、政府は、参議院の全国区織を廃止する公職選挙法改正案を通常国会に提案されるようですが、汚職追放の立場から言いますれば、選挙が公明に行われ、選挙費用が少くて済むことが最も肝要だと思います。そのためには、公営の範囲を拡大する一方、英国で行われているような厳格な連座制とすることにあると思いますが、総理は、それらについてどうお考えになっておられますか、伺いたい。
 六、右の立場から、私は選挙違反は厳重に取り締るべきであると考えますのに、昨年の暮、国連加盟の際の恩赦で、悪質の違反者まで全部棒引きにしましたのは納得できません。このことについての総理のお考えを伺いたい。また、このようなお手盛り恩赦をなくするための恩赦法の改正案が緑風会と無所属から提案されておりまするが、御賛成下さるかどうか、伺いたい。
 七、現在摘発されておりまする売春汚職は、まことに遺憾であり、その内容は全世界に知られていることと思います。日本は国連の安保理事会の非常任理事国に選挙されましたが、国内においてこうした汚職が出てくるのでは各国から尊敬をされないと思います。それだからといって、政府が捜査に圧力を加えて、もみ消しをしたり、あるいは指揮権を発動する等のことは絶対に許されないと思いますが、総理のこの問題についての御決意を伺いたいと思います。また、この汚職の源を断つためには、この法律を来年四月一日の期日通り厳正に実施する旨の明確な態度を示すとともに、このために必要な予算を計上すること、及び二十四年の国連総会で署名されました人身売買及び売春により利益を得る行為の禁止に関する条約を早く批准する必要があると思いますが、いかがでありましょうか。
 これらについて明確なお答えをいただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 あっせん収賄罪の規定は、私はぜひ次の国会に案を出しまして、これを成立せしめるという考えであります。
 政治資金規正法の改正の問題でありますが、これはいろいろな点におきまして、政治資金規正法の改正ということも研究はいたしておりますが、まだ成案を得ておりません。今お話になりました会社からだけ得ることを禁止するというだけで、この政治資金の公明を期するというわけにもいかない。いろんな点を研究しなければいけませんから、まだ成案は得ておりません。
 第三の、閣僚が営利会社の役員を兼ねないという、これの法制化の問題でありますが、私はこれは国務大臣になった人、内閣総理大臣その他、当然これに対する良識から、そういうものは一切やめるべきだ。私の内閣改造に当りましても、各大臣をしてそういう営利会社の何はやめさしております。これを法律を制定してやるということが適当であるかどうかは何としまして、趣旨は賛成でありまして、これを実行いたしております。
 第四の公務員の汚職に対する従束の処罰がきわめて寛大であり、またそのためにかえって世の疑惑を招いているという御指摘であります。私もそういう批判に対しまして、いろいろ検討いたして見まするというと、はっきり汚職の事実が明確になり、裁判等において判決された場合において、これに対して処罰が加えられておることは当然でありますが、起訴されておる起訴中に、休職でなしに、やめさしてほかの方の職につける、そのために退職金ももらうというような事態が従来あったことは事実でありまして、そういうことは合後厳になくして、法の最後の決定を待ってはっきりする、それまでは休職にするという措置をとりたいと思います。
 それから選挙法に関連して、選挙か金の要らない公明な選挙が行われる、私はこれは非常に大事なことであり、また政治をきれいにする上からいって、非常に大事なことであると思います。そのために連座制の強化ということに関しましては、御趣旨は私賛成であります。ただ御承知の通り、法律技術的に相当研究しないというと、かえって角をためて牛を殺すような結果になってもいけません。これは私は趣旨においては同意であり、また同時に公営制の拡大ということを考えて行く必要があるというふうに考えております。
 それから恩赦につきましては、従来いろんな場合においての恩赦が行われてきたのでありますが、これに対していろいろな世の批判もあることを承知をいたしております。従って、これを将来良識に合うように、また世の人々が納得するようにするために、権威のある審議会にかけてきめたらどうだという御提案につきましても、十分一つ検討をいたして参りたいと思います。
 それから売春汚職の問題は、御説のごとく、これはいまだ事実が明瞭ではございませんけれども、いろんな今まで伝えられておりますことだけでありましても、非常に日本の政治のために遺憾であります。しかし遺憾であるからといって、私はこれを押えたり、あるいはこれにふたをすべきものではなくして、はなはだ残念であるけれども、どういう事実があるかということは、調べの結果を待って見なければわかりませんが、あくまでも厳正に、これの事実を明瞭ならしめて、そうして不幸にしてそれに関係のあるような事態がありますならば、これに対して断固たる措置をとるほかはない、かように考えております。それからこれに関連して、法律施行を来年の四月一日から必ず実行するようにということは、私どもも全然同感でありまして、わが党としてもさようにきめております。またこれに関連して、この施行を円滑に行うための予算措置等につきましても、新年度の予算におきましては十分考慮する考えであります。(拍手)
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#30
○議長(松野鶴平君) 岩間正男君。
  〔岩間正男君登壇、拍手〕
#31
○岩間正男君 私は日本共産党を代表して質問します。
 第一は、核実験禁止に対する岸政府の態度についてであります。岸総理はきのうの演説で、今日世界の平和と人類の幸福が核爆発によって脅かされている事態に対処し、純粋な人道的立場と国民感情に基く要請から、たゆまない努力を続けようと述べておるのであります。果してしからば、政府の方針はこのような態度によって貫かれておるのであろうか、ここ二カ月半にわたる国連での言動は、全くこれに反しておるのであります。禁止の期間を一カ年とし、これがもし否決された場合には、西欧案に同調するという日本案は、わが国民の燃えるような意思の表われでもなければ、世界の多くの国民の要望でもありません。それは腹の中では西欧案を支持しながら、日本国民の世論に押されて、やむなく事態をごまかそうとするものにほかならないのであります。この八月東京で開かれた第三回原水爆禁止世界大会では、核実験禁止を軍縮から切り離し、無条件に直ちに禁止させること、そのために米英ソ三国禁止協定を結ばせることをきめ、国連と各国政府に働きかけることを満場一致決議したのであります。昨日現にそのための世界的統一行動が行われ、日本国内でも数百カ所、約百万人の人々がこれに参加しておるのであります。もし政府がこれら国民の要望に耳を傾け、努力するものであるならば、国連における態度を直ちに変えなければならないはずであります。しかるに政府は、無条件、即時を主張するソビエト案やインド案と、軍縮とからませて、核実験禁止をたな上げにしようとする西欧案の間をよろめきながら、今や全くその面目を失墜しておるのであります。平和を愛する世界の国々は、核実験禁止に対する日本の立場をよく理解し、これに支持と激励を送っております。しかぞに政府は、みずからその期待を裏切り、墓穴を掘っております。最近、岸総理は、米英ソ三国首脳に、日本案を支持してもらう書簡を出しました。これに対し、米英は断わり、ブルガーニン首相は同意と協力の返書をもたらしました。しかるに外務省筋は、これを喜ばず、いろいろ難くせをつけておるのであります。一体、総理はブルガーニン書簡をどう思うのか、直接、当の総理から所見を伺いたいのであります。過般の東京新聞は、その社説の中で、日本という国が、アメリカとの密接な間柄にもかかわらず、核実験禁止についてだけは断じて妥協しないという決意を持つこと、ソ連案の思惑がいかようであれ、核実験禁止について、わが要請と同じであれば、あえてこれを支持するということが、われわれの言う人道的立場なのであるという評論を加えております。これは正しい。核実験禁止については、赤も白もない。日本国民の願いを率直に伝えておるのであります。
 そこで、私は岸総理並びに藤山外相に伺いたいのであります。総理の言う人道的立場ということは、果してどういうことを意味するのか、国民感情の尊重ということはどうすることなのか、もし政府が文字通りこれを実行に移すなら、国連においていかなる事情があっても、無条件即時禁止のために努力せねばならぬと思うがどうか。そうしてまたそのためには、目的を一つにするいかなる国とも協力しなければならないと思うがどうか。率直にその決意が披瀝されたいのであります。もしそれができないとするならば、それこそは岸渡米の結果もたらされた、いわゆる日米協力のためと断ぜざるを得ないのであります。
 岸ゴルフ外交というものがあります。私は岸総理のアメリカでの大写しのゴルフの写真の姿を見たとき、これは危いと思いました。なぜなら、ゴルフは穴に落ち込むものだからであります。(笑声)果して岸ゴルフ外交は、アメリカのしかけた原子戦略体制という大穴に落ち込んでしまった。最近の中国との関係も、またまさにこのゴルフ外交の現われであります。岸内閣は中国との友好を深めるどころか、これを敵視し、蒋介石一味との協力を公言し、国連でも、日本代表は中国を侵略者として、その国連復帰をはばもうとするアメリカの提案に賛成投票をしているのです。一体、岸総理は、あなたは本気で中国を侵略者と見ているのかどうか、その見解を明らかにされたい。
 さらに、日中貿易第四次協定は不調に終り、その交渉を中止して帰国せざるを得ない羽目に立ち至った。その原因と責任は、言うまでもなく政府の非友好的な態度にあります。これを改めない限り、アジア諸国の協力を得て、平和共存の方向に祖国の繁栄をかちとることは絶対にできない相談であります。わが国民の多年の宿願である日中貿易を拡大し、蒋介石政権との悪関係を断ち切り、中国との関係を正常化するためにいかなる策を有するのか、また、当面する貿易協定に対する中国代表の指紋や安全のための政府保証をどうするか、岸総理並びに藤山外相の明確な答弁を要求するものであります。
 最後に、私は岸総理の政治責任と、国会の解散問題について一言したい。岸総理は三悪追放を口にしながら、貧乏と汚職征伐は少しも実現しないばかりか、ますます拡大しているのが実情であります。岸総理の真のねらいは、昨日の演説でも示されましたように、暴力追放の名のもとに、憲法で明確に保障された国民の集団的実力行動の権利を抑圧することではないか、これはまさに政府の権力による暴力であります。この権力による暴力政治は、最近、労働政策のみならず、文教政策や選挙法改悪、地方制度改悪等、さらに経済政策の中にもはっきり現われているのであります。このような内外政策の破綻による反動的な諸政策に対し、国民は反対して立ち上っているのであります。岸首相は、国民のこの要求に従い、政府の内外政策の破綻の政治責任を明確にし、即時、国会を解散すべきであると思うが、これに対する所信をはっきりと承わりたいと思うのであります。
 ソビエトの人工衛星の成功は、人類多年のあこがれを実現し、社会主義体制が資本主義体制より、いかにすぐれているかということを如実に示したばかりでなく、それは平和への限りなき保証でもあります。今やアメリカの力の政策、原子戦略体制は大きくくずれ始め、世界は平和共存の方向に大きく動いているのであります。この明らかな情勢の変化をはっきり把握し、見きわめることなしに、政治担当者の資格はないと言わなければなりません。
#32
○議長(松野鶴平君) 岩間君、時間が参りました。
#33
○岩間正男君(続) このような現実をも念頭に置いて岸総理並びに藤山外相の明快な答弁を要求するものであります。(拍手)
  〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(岸信介君) 原水爆の実験禁止の問題に関しましては、従来わが国としては一貫して、これが禁止の最も早く実現するように、あらゆる努力を続けてきたのであります。国連における提案につきましては、御承知の通り、西欧案とソ連案、そこにインド、日本が出ておりますが、西欧案、ソ連案、ともにおのおの自分で原水爆を持っており、実験をいたしておる国であってこの提案の中には、おのおのの立場を悪くしないようにということをおのおのが考えております。私どもはそうじゃなしに、こういうものを持ってもおらぬし、将来持つ気もないし、あくまでもこういうことが人類の平和を脅威し、また核爆発が行われることが大気を汚濁するという見地に立って、これを一日も早くやめさせよう。それには相隔たった主張を持っておる西欧とソ連との案を、できるだけ歩み寄らせてやることが、実際の上からいって必要であろうという意味において提案をいたしておるわけでありまして、この見地から、インドの立場とわれわれとは同じであるがゆえに、できるだけ協力しようということをネール首相とも話し合い、また国連におきましてもそういう努力を続けております。
 第二の解散の問題に関しましては、しばしば御質疑に対して回答いたしておるのでありますが、私は解散ということは全然考えておらないということで、一切御了承を願いたいと思います。
 それから第三の、世界の科学の非常な発達から、世界の将来に向って、やはり今の二大陣営の対立と緊張ということは望ましくないので、あくまでも平和共存、両方の陣営において、おのおの他の立場を尊重しながら、この間の緊張を緩和して行くということは、私は国際的に大きな一つのわれわれが努力しなければならない目標であると考えております。国連を通じてあくまでも努力する考えであります。(拍手、岩間正男君「ブルガーニン書簡と中国を侵略者と見るかどうか、この二点の答弁を」と述ぶ)
 中国に対しましては、中国の立場をわれわれはすぐ承認しろという御見解に対しましては、一貫して今その段階ではないということを申しております。
 それから、侵略者であるかどうかという問題は、実は国連において、これはわれわれが加盟する前に、国連がそういうふうな決定をいたしておりまして、取り消しをされておらないという問題であります。私どもは、今日そういうことに対する別に意見を発表する必要はないと考えます。(拍手)
#35
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は、終了したものと認めます。
 本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後一時十九分散会
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○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関
  する件(第二日)
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ソース: 国立国会図書館
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