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1957/11/05 第27回国会 参議院 参議院会議録情報 第027回国会 法務委員会 第2号
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1957/11/05 第27回国会 参議院

参議院会議録情報 第027回国会 法務委員会 第2号

#1
第027回国会 法務委員会 第2号
昭和三十二年十一月五日(火曜日)
   午後一時三十三分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     青山 正一君
   理事
           大川 光三君
           一松 定吉君
           棚橋 小虎君
           宮城タマヨ君
   委員
           秋山俊一郎君
           雨森 常夫君
           大谷 瑩潤君
           岡田 宗司君
           小酒井義男君
           辻  武寿君
  国務大臣
   法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
  政府委員
   法務政務次官  横川 信夫君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  説明員
   法務大臣官房経
   理部長     大沢 一郎君
   法務省刑事局長 竹内 寿平君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (売春防止法の施行運営に関する
 件)
 (昭和三十三年度法務省関係予算に
 関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(青山正一君) ただいまから委員会を開会いたします。
 初めに売春防止法の施行運用に関する件を議題にいたします。
 当委員会といたしましては、従来とも本法の全面施行を円滑に実施せしめるため、これに関する諸問題について検討を続け、法務、厚生当局を督励して参ったのでありますが、ここにはしなくもいわゆる売春汚職容疑事件が起りましたことは、当委員会といたしましても重大な関心を持たざるを得ない事案であると考えております。本日は、去る十月十五日の委員会に続きまして、この汚職問題のほか、業者、従業婦の転廃業問題について検討を進めたいと存じます。
 それではまず汚職問題について、前回、岡田、赤松両委員からの要求もありますので、その後の捜査の進行状況について説明願います。
#3
○説明員(竹内寿平君) いわゆる売春汚職の捜査につきましては、前回当委員会で御報告を申し上げましてから、すでに二週間を経過しておりまして、その間に若干の進展を見ておるのでございます。中途読売新聞の記事に関連いたしまして、名誉毀損の派生事件が出まして、本筋の汚職事件並びに名誉棄損事件、この両者ともただいま捜査中でございまして、詳細をここで御報告申し上げる段階には至っておらないように考えるのでございますが、なお両事件それぞれ許されます範囲におきまして、御報告を申し上げたいと存じます。
 まず、いわゆる売春汚職の本筋の事件でございますが、捜査の端緒となりましたのは、前回申し上げましたように、新宿カフェー喫茶協同組合理事長安藤恒に対する業務上横領被疑事件取調べ中に、全国性病予防自治連合会に相当な金が出ていることが判明いたしまして、その行方を追及しておりますうちに、同会の事務局長今津一雄の業務上横領の事実が発覚いたしました。去る十月一日同人を逮捕、取調べをいたしました結果、同会におきましては非常対策費という名義で昭和三十年、三十一年に相当多額の金を集めておることがわかったのでございます。また、転業資金という名義で三十一年中並びに本年にかけましてこれまた相当多額の金員を集めておることが判明いたしたのでございます。これらの金員は、すべてこれ政界の工作費というのではないようでございまして、そのうちの若干部分がそういう方面に向けられた嫌疑があるのでございます。そこで、この金の使い道を究明をいたしておりますうちに、同会の理事長鈴木明、副幹事長長谷川康、専務理事山口富三郎らが共謀いたしまして、衆議院議員眞鍋儀十に対しまして三十万円を法務委員及び売春対策審議会委員の職務に関して贈賄している容疑が発生いたしましたので、鈴木、長谷川、両名に対しまして、十月十二日、次いで山口に対しまして十六日にそれぞれ逮捕をいたしまして、取調べを進めた結果、前に申しました全国性病予防自治連合会の事務員の山田博一と申す者の証拠隠滅の容疑も生じまして、十月二十二日これまた逮捕して取調べを進めておるのでございます。その結果、眞鍋議員の容疑が濃厚になりましたので、十月三十日同議員に対しまして任意出頭を求め、取調べをしました結果、犯罪の嫌疑が一そう濃厚と相なって参りまして、かつ証拠隠滅のおそれもありましたので逮捕をいたしました。十月三十一日勾留をし、その後取調べを進めますとともに、一方、鈴木長谷川の両名につきましては、十一月一日勾留満期になりましたので、処分留保のまま一まず釈放するとともに、さらに眞鍋議員に対する別口の贈賄容疑によりまして、即日再逮捕をいたした次第でございます。
 次に、読売新聞関係の派生事件でございますが、本件はただいま東京地検において捜査しておりまする前に申しました売春汚職本筋の事件に関連いたしまして、去る十月十八日付読売新聞の朝刊に宇都宮、福田両代議士収賄容疑で召喚必至というような表題のもとに、衆議院議員宇都宮徳馬、回福田篤泰の両氏が売春業者から売春防止法の国会審議等に関連して、それぞれ多額の金員を収賄し、捜査当局より召喚されることが必至であるという趣旨の記事が載せられました。さらに同日、ラジオ東京から三回にわたって、読売報道と同じ内容の事実がニュースとして放送されたことに端を発するのでございます。で、宇都宮、福田両議員は、右のような記事及び放送は全く事実無根であって、事実を摘示して右両氏の名誉を棄損したものとして、十月十八日から同月二十二日に至る間、宇都宮氏は読売新聞の編集局長小島文夫、同新聞担当記者某、検事総長花井忠、東京地検検事正野村佐太男、同庁担当検事某の五氏を、福田氏は読売新聞小島編集局長、同新聞担当記者某、東京地検担当検事某、ラジオ東京編集局長今西潤三、同報道部長今井俊、同放送担当者某の六氏をいずれも名誉棄損罪で東京地検に対して告訴をいたしておるのでございます。右被疑事件は、いずれも事案の内容に照らしまして、東京高等検察庁で捜査処理するのが適当と考えられましたので、同庁において東京地検から事件の移送を受けまして、事案の性質にかんがみまして、早期処理及び真相の徹底的究明を目途として捜査を開始するに至ったのでございます。同庁におきましては、十月二十二日から同月二十四日に至る間に、告訴人両氏、東京地検関係者、読売新聞関係者等から事情を聴取いたしました結果、前に述べました読売新聞の記事は、大体同新聞社の立松和博記者の取材執筆にかかるものと推認されるに至ったのでございます。そこで東京高検におきましては十月二十四日、右立松記者の任意出頭を求めまして、被疑者として取調べを行ったところ、同記者は問題の記事は同記者が原稿を作成して記事として掲載さしたと認めたのでございますが、同記者の原稿作成の経過、これに協力をした考のあるなし等の点につきましては、同記者の供述と関係者との供述との間に著しい食い違いがありましたし、かつ名誉棄損の犯罪成立を阻却する原由である事実の真実性の証明に関する資料のあるなしというような点につきまして、これでは関係者の通謀その他罪証隠滅をはかるおそれがある、かように判断されましたので、同日裁判官の逮捕状の発行を得て、身柄を逮捕いたしました上、丸ノ内警察署に留置したのでございます。同記者が病後である事情等にかんがみまして、十分健康上の診断も受けたようでございます。かつそれまでの捜査の経過に照しまして、証拠隠滅のおそれという事情はなお続いておりましたので、十月二十六日に裁判官に対しまして勾留請求をいたしたのでございますが、翌二十七日、裁判官と見解を異にしまして、裁判官から勾留請求は却下せられました。従いまして同日午前十時四十分頃身柄を釈放したのでございます。立松記者についての勾留請求が却下せられまして、身柄は釈放されたのでありますけれども、その後も引き続いて任意捜査によりまして関係者の取調べを進めておるのでございまして、できるだけすみやかに結論を得たいと、鋭意努力をしておる状態でございます。以上が両事件の内容でございます。
#4
○岡田宗司君 ただいま御報告のうち、ちょっとお尋ねしたいことがある。それは宇都宮君から告訴された人の名前なんですがね。ある人はちゃんと名前が出ている。それからある人は某という、これは一体どういうわけですか。名前は出せないわけですか。
#5
○説明員(竹内寿平君) 某と申し上げたのは、告訴状に某と書いてあります。名前をはっきり申し上げましたのは、告訴状にそのように記載されておるのでございまして、まだ、某といい、名前が書いてある方といい、これらは最終的に果して被疑者に当るのかどうなのか、そういう点も明確でございませんので、さしあたり告訴状に書いてあります通りを御報告申し上げた次第でございます。
#6
○岡田宗司君 そうすると、某が二人出ているわけですが、片方の某は、これは立松記者ということになったわけですか。
#7
○説明員(竹内寿平君) 立松記者となったというふうに申し上げるわけにはいかないと思います。先ほども御報告申し上げたように、立松記者が自分が取材して原稿を響きましたということは、みずから申しておるのでごさいますけれども、新聞が作られます機構から申しまして、あるいはそれに協力をしておる方もあるでございましょうし、また、いろいろ某という中には、一人であるか二人であるか、これはまだわからないのでございます。
#8
○岡田宗司君 そうすると、この某は複数ですか。
#9
○説明員(竹内寿平君) 告訴状には複数とも単数とも書いてございませんが、私どもとしましては、単数であるか複数であるかは捜査の結果わかることだと考えております。
#10
○岡田宗司君 もう一点。じゃこの検事の方も単数か複数かまだ捜査中ですか。
#11
○説明員(竹内寿平君) 同様に考えております。
#12
○岡田宗司君 この検事はほんとうに捜査しているのですか。
#13
○説明員(竹内寿平君) 捜査をどういうふうにしているかとか、あるいはほんとうに捜査をしているかというお尋ねでございますが、捜査をしているとお答え申し上げるほかないのでございます。
#14
○岡田宗司君 いや名前は聞いているわけじゃないのですが、そうすれば高検の方へ、この何人かの、複数だとすれば、何人かの地検の検事さんをお呼び出しになったという事実はあるのですか。
#15
○説明員(竹内寿平君) 別に隠す筋合いではないかと思いますが、何と申しましてもこれは具体的捜査の内容に入ることでございますので、適当な機会には御報告申し上げられると思いますが、ただいまはお許しを願いたいと思います。
#16
○岡田宗司君 私、内容を聞いているのじゃないのですよ、呼んだかどうかということだけ聞いているのです。
#17
○説明員(竹内寿平君) それも供述の内容と同様に、どいう人を呼んだかというようなことも、やはり捜査の内容であろうと思いますので、お許しを願いたい。
#18
○岡田宗司君 それなら、なぜ立松という名をあなたは言ったのですか。立松記者の名をそれでは言う必要はないじゃないですか、同じに取り扱わなければならないでしょう。
#19
○説明員(竹内寿平君) 同じに取り扱うべきでありますが、この立松逮捕につきましては、いろいろ新聞等の議論も出ておることでございますので、捜査に支障のない限り、できるだけ御報告を申し上げたいと思いまして、かように判断して申し上げたのでございますが、先ほども申し上げましたように、告訴の、両氏を取り調べたこと、それから東京地検の関係者を取り調べたことも事実でございまして、この点は先ほど申し上げた通りでございます。
#20
○岡田宗司君 立松記者のことを明らかにするなら、たとえば立松記者と協力した方も捜査して、まだ捜査中か何かしりませんけれども、捜査しているのだ、それでこれこれの、まあわかっているなら立松記者と同じように報告すべきじゃないですか。一人だけ報告して、ほかの者は報告しないというのは、おかしいじゃないですか。
#21
○説明員(竹内寿平君) その理由は、先ほど申しましたように、できるだけ御報告申し上げて御審議に資したいと、かような考えから、問題の立松記者につきましては、いろいろ御議論もあろうかと存じまして、捜査上支障のない範囲におきまして、御報告申し上げたのでございます。
#22
○大川光三君 ちょっと事務的に伺います。勾留請求を却下した裁判官、この裁判官は地方裁判所の裁判官、あるいは簡易裁判所、あるいは高等裁判所、どの裁判所に属する裁判官ですか。
#23
○説明員(竹内寿平君) 令状関係は簡易裁判所の裁判官が取り扱うことになっておりますが、本件の場合には、地方裁判所の裁判官に請求をいたしております。その場合、地方裁判所の裁判官は、簡易裁判所の裁判官としてこの事務を処理しているのでございます。
#24
○一松定吉君 今日、私はこの売春汚職問題に関しまして、自分の立場を明らかにすると同時に、捜査の手段、方法並びに読売新聞記者の福田、宇都宮氏に対する新聞記事の記載並びにこれに対する検察庁のとった処置及び裁判所の勾留請求を却下した事情、これに対する世論の状況等について一つお尋ねしてみたいのであります。
 まず、私の立場を明らかにいたしますが、私は法務委員で、しかも理事としてこの売春防止法についての審議に関与した者であります。また、売春の審査委員として内閣から任命せられてその方面の審査にも当った立場であります。しかして私は週刊朝日にもありまするように、わが国においていわゆる公娼というものを廃する問題が論議せられておりますときから、常に私はこういう考えを持っており、こういう考えを述べてきたのであります。公娼というのは人間の間に男女というものがある限りは、これはつまり男女の交りを結ぶということについては、とにかくこれを防止することはできない。それは人間の本能、生きものの本能、こういう意味において、わが国にも古来からこういう制度が設けられて、かの源平当時の虎御前並びに曽我十郎あたりのあの関係等から見ても、ああいう当時からあったのです。それが徳川時代になってから、結局これを地域を限って、そうして吉原だとか福原だとか島原だとかというように地域を限って公娼を認めておったことは御承知の通りであります。こういうようなことが、一体公けに認めるということそれ自体が、どうであろうかということは、これは大いに研究しなければならない問題であることも言うまでもございません。この点につきましても、一体外国にもこういうことがあるのだろうかというようなことで、私昭和十二年に欧米各国を視察いたしましたときにも、やはりドイツのある一部にこういうような公娼制度のあることを見て、私は実はびっくりして帰ったのであります。こういうようなことでありますが、しかしながら、一体これを公けに認めるというようなことはどうかというと、その国民のためにはほめたことではない。恥辱になることだ。だからこれを廃するということについては、私は決してこれには反対はしないが、ただ、廃するについては、今までの業者がにわかに生活ができないようなことにやってみたり、あるいは売春婦が直ちにその淫売行為をやめて正業につくということそれ自体に、政府が相当の力をかしてやらなければ、こういうことはできないのではなかろうか。しかるに、これが悪いからといって直ちに業者をやめさせるところの法律をこしらえて、淫売婦をしてやめさせることにして、これに反対すれば監獄に打ち込むというようなやり方は、これは政治としてまた政治家としてすべきものではないから、そういうようなものについては転業の方法を考え、更生の道を研究してやるということでなければならぬということは、私の常に主張してきたことなんです、そういうことがちょうどこの週刊朝日にもありまするように、これは私実は忘れておつたのですが、この記事を見て、昭和十年に東京の青山で全国貸座敷連合会の臨時大会のあったときに、私も出かけて行って演説をしたということになっておりますが、なるほどここに書いてあるようなことを言うたような記憶がある。ただ、これは今私が申し上げたような私の政治家としての立場から、そういうものに対してはとにかく相当保護を与え、転業については手を引いてやる。それから淫売婦等については更生の道を示して、再びそういう泥沼に足を踏み込まないようにしてやるということが政治家の常であるのだからして、そういう点については大いにわれわれは協力して、皆さんが生活に困らぬようにしてやるという考えを、私は述べたことと思う。そのことがここに書いてある。私はそういう意味においては常にこの法務委員会において、売春取締法の制定せられる当時にも、常にそういうことを根拠としてこの法案を審議し、この法案に賛成をし、そうしてこの法案の通過をはかった。それは法務委員会だけではない。いわゆる内閣のこの売春防止法についても常にそういう考えを持ってやっておったのであります。ところが、それがいかにも今度眞鍋君がこういうことになったために、私がやはり眞鍋君と同じような立場におったということで、いかにも私がわいろを取ったかのごときことが、新聞等に書かれたり、あるいは私の名前がちらちら新聞に出たりしていることを、私ははなはだどうも遺憾に思っておるので、こういう点は、この新聞記事にありますが、今ここに神近さんもおられるようだが、神近さんも私の名前をあげて眞鍋さんと一緒に大いに協力してやった云々というようなことも書いてある、そういうことをやりました眞鍋君が、やはり私と同じような意味において業者を転業のできるようにしてやらなければならぬ、売春婦については更生の道を示してこれを指導してやらなければならぬということを言うておった、ちょうど眞鍋君と私は同じような・意見を持っておったことは事実です。しかし、それがために眞鍋君が、三十万円の金を受け取ったとか、二十万円の金を受け取ったとかいうことについて、私などはびた一文も、金のかの字も、業者から聞いたこともなければ見せられたこともありません。これは、私は断じてこのことは明らかにしておきます。こういう意味においてこの売春汚職の問題が世の中に論議されるようになってから、私ちょうど大分に出張しておったときに、大分で新聞を見まして、さっそく唐津法務大臣に向って、こういうようなことは国会の威信を失墜するのみか、国会議員としての名誉を棄損するというようなことだから、かくのごときことは徹底的にこれを捜査して、そうして国会の品位を高め、議員の信用を回復しなければなりませんからということを、唐澤法務大臣に私は電報を打ったことは、これは法務大臣もお認になるであろうと思います。私は常にそういう意味においてこれを考えておりますが、今回のこの問題につきましても、今の眞鍋君がそういうようなことで逮捕された、もし検察庁のお見込みの通りの事実であれば、これはやむを得ない事実である、だからしてこれは徹底的に糾弾する必要があることは私も大いに双手をあげて賛成する一員でありますと同時に、この新聞記事に衆議院の法務委員会が何人、参議院の法務委員会が何人、あるいはこの委員でない者で大臣の経歴のある者は何人、合計三十人ばかりの者がいるというようなことが新聞等に書かれておりまするが、こういうことは何を根拠にしてこういうことを書いたのか存じませんけれども、そういうことがあるならば、徹底的にこれを調べて、そうして豪も仮借するところなく事実を明らかにしてそういう人間に対しては徹底的にこれを糾弾をし、そうして国会の信用を回復し、一面にはそういうようなきたない考えを持っておるような代議士をして、将来大いに反省せしめる必要があるということを私考えておりまするから、この点につきましては、検察当局に対して私は多大のお手伝いをする一員であります。大いにこれはつやってもらいたい。従って、また唐澤法務大臣も言われておりますように、指揮権発動をして、自分がこの捜査を打ち切らねばならぬということは絶対に――今の岸総理は三悪追放ということを主張しておるんだから、絶対にないことを私どもも確信しておるということを唐澤法相も言い、花井総長も言っておるようですが、これはぜひ一つそうしてもらたい。そういうようなことは絶対に――われわれはかの吉田総理が佐藤氏に対してこの捜査の打ち切り命令を犬養君に出したことについても非常に私は不満を持っておる一員でありますから、そういうことにならないように、ぜひお願いをいたすものであります。
 それと同時に、私は特にこれは検察庁にお願いするつもりであったのですが、きょうは検察庁の方がお見えになっておりませんから、検察官を指揮する立場にいらせられます唐津法相に一つ十分に申し上げておきたいことは、こういうようなことの捜査について、今刑事局長のお話では、業者の一員が横領したその関係からこれが端緒を得て調べたところが、眞鍋氏にこれこれの金を贈ったことが明らかになった云々ということがあるから、これは間違いない証拠によって検挙されたことであるから、けっこうなことであると思うのですが、よくこういう事件を検挙するときには、いわゆる被疑者が自白したとか、あるいは証拠について十分なる、心証を得ないのに、いろいろな投書とか密告だとか、告訴だとか、告白だとか、ある人の自白だとか伝聞だとか、見込み捜査とか新聞記事とかいうものによって捜査に手をつけることが往々にしてある。本件においても神近さんなどが検事総長なり、さらに唐澤法相をたずねて、どこそこの委員室において業者が、あの人間には三十万円与えておる、あの人間には何十万円渡しておる、けしからぬというようなことを申し上げたようなことが新聞に出ておりますが、あるいはここにいらっしゃる宮城さんが、自分がある所に行った時分に、自分の所に業者が来て袖を引っぱって、あなたはばかだ、この問題についてわれわれにお手伝いすれば金を何万円差し上げるのだというようなことを言うたけれども、自分はにらみつけたというようなことが週間誌に出ている。そういうようなことを、とってもって直ちにこれを捜査の基本としてお調べになるというようなことになってくると、往々にして間違いを生ずる。これは私は長らく自分が検察官として検挙に従事しておった関係からもよくわかる。そういうような、投書とか密告とか、あるいは伝聞とか見込み捜査とか新聞記事とかいうようなことは、捜査の端緒になりますが、それを唯一の証拠として、そうしてあれがどうだろう、これがどうだろうというて被疑者を追及して虚偽の自白をさして、それを証拠として起訴するというようなことになってくると、その事件の結果はよくありません。これは御承知のように国会議員に例をとってみれば、芦田均君に対する事件――検察官は有罪であるという意見を述べたが一審で無罪になっておる。それから田中万逸君の事件もそうだ、あるいは竹田儀一君の事件もそうだ、大野伴睦君に対する起訴の事件もそうだ、野田武夫君、藤田義光君でも岡田清一君でも森田豊寿君もそうです。みなこういうものは検事がいろいろなことを調べて、それを根拠にしてそれで起訴して、調べて、公判でみな無罪になっておる。こういうようなことは、これは検挙に従事する検察官なりもしくはこれを指揮する立場におる検事総長なり検事長なりが、十分に事実を究明をして、そうしてこれらは間違いないというほんとうの心証を得た上にこれを起訴して公判に回して、そうして判断をしてもらって、国民の信頼をつなぐような方法をとらなければいけないということを、私はこの際一つ法相なり刑事局長なりにも申し上げ、また、これらの点は御両氏を経て検事総長なり検事長なり検事正なりに十分一つ打ち込んでもらいたい。こういうことを私はお願いしておきます。他のことはともかく、一松が眞鍋氏と一緒に働いたがためにわいろを取ったかのごとく、あるいは業者のためにいろいろと利益な一主張をしたがために業者から何か特別のリベートを得たかのごときようなことを新聞に発表してみたり、あるいは私の身辺に疑惑をかけてみるようなことをする人は、私というもののほんとうの本質を知らない人のやり方です。私は長い間政界にもおるし、司法部にもおったけれども、いまだかつて不正なものに手をつけたことはありませんよ。神近さん聞いておいて下さい。そればかりじゃない、私はそういうことがあるときには必ずこれを送り返して、それらの人の反省を求めておるというような行動を今日までとっておる。
 本件につきましてもありますよ。本件につきましても、今ここで明らかにしますが、私のところに鈴木明という人が高島屋から座ぶとんを六枚送ってきた。鈴木明という秋田県だったですかから出ておった進歩党時代の代議士これは私はちょうどそのときに幹事長をしておった関係で非常に懇意にしておった。私が帰ったところが家内が、鈴木明という人から高島屋から座ぶとんがきておりますと言う、はては鈴木明君はよほど久しく音信不通だが、何のために送ったかというので、いずれそのうち鈴木君から手紙でもくるだろうから、まあくるまでそのまま手をつけぬで、あけぬでおけというので置いたところが、ちょうどこの売春問題について、この業者を証人として内閣の審査委員会に呼ぶということに決定いたしました。多分私が転業問題についてこれら業者を呼んで意見を聞こうということで、たしか小委員長の私の名前で召喚したかもしれません。今そこを覚えておらぬ。ところがそれは、今の委員長はわれわれに対して冷淡だから、そういう委員長の下におる人から調べられることはきらいですといって、鈴木という人が断わってきた。そのときに私は鈴木明という名前を見て、はあ、これだな、これが持ってきておったのだなと、思って、私は帰ってすぐそれを私の書生に持たして、そして虎の門のところのどこかへ持っていって返さした事実があります。私は常に自分の行いについては潔癖であって、ほんとうに一松という男はもうあの男にはいろいろなことを頼んでも金も取らなければ品物も取らぬ、だめだということは、これは評判になっておる。こういうときに、私に対してどうもおかしいなんていうような疑惑を持つということは不都合千万だ。これは徹底的にこの機会に私は明らかにしておきます。そこで、私はこの事実を明らかにお取り調べになることについては、徹底的に賛成です。もし何か材料でもあれば、今言うような材料も提供いたしますが、それ以上に私は材料がありませんが、ただ、どうも来年四月一日から実施することにきまっておるのに、ある者は何とかいう特別の委員会をこしらえて、これを延ばしてはどうだなんていうようなことを主張するとは不思議なことをするものだ、法務大臣の唐澤大臣もお出ましになっている、堀木大臣も出ておるときに、しきりにそういうことを言うて……、四月一日に実施することは両院で満場一致できめられたもので、それを今さら延ばすとは何事だといって私が反駁した事実のあることは、法務大臣も御記憶があるでありましょう。こういうような不思議なことがあるのだから、私は眞鍋君のようなことがあるいはあるのじゃないかと思うけれども、それは証拠をつかんでおりませんから、私はそういうことはもちろん言いません。が、徹底的に調べて下さい。これを調べることによって、われわれ国会議員がほんとうに正しい国政に参与しておるということによって、国民の国会議員に対する失墜したる信用を回復し、国会の威信を高め、国会議員の人格を尊重することになろう、こう思うのでありますので、これはぜひ一つ徹底的にお調べを願うと同時に、科学的の捜査をしなければいかぬ。ただあれがこうだからこうだ。あれの態度はああだからこうだというような、想像をたくましゅうしたり、見込み捜査をしたり、伝聞を基礎にしたり、新聞記事をもとにしてやったりすると、先刻私が言いましたように、国会議員のほとんど大部分が無罪になっておる源はそれだ。こういうことのないように、十分注意するようにお願いして、この点に対する質問を終ります。私が今申し上げましたことについての御意見を一応承わってから、次いで読売新聞の記者の問題についてさらに質問を試みたいと思います。今私が申しましたことに対して、法務大臣並びに刑事局長等の意見を十分承わりまして、われわれの納得のいくようにこの捜査をお進めいただきたいことを、特にお願いいたしたいと思います。
#25
○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいま一松委員からいわゆる売春汚職については徹底的に捜査を遂行して、事態を明らかにするようにというお話でございます。この点につきましては、私もしばしば言明をいたしておりました通り、検察当局に対しまして、今日この汚職問題が世間の疑惑の焦点になっておりまするから、徹底的に捜査を進めまして、いやしくも疑わしき証拠がございますならば、どこまでもこれを追及して、事の黒白を明らかにするように指示しておる次第でございます。なお、指揮権発動というような言葉もございましたが、かようなことのあろうはずはございません。私は他のいかなる外部の勢力にも動かされることなく、この方針を堅持して捜査を遂行いたしたいと考えております。
 さらに引き続きまして、この問題は世上に非常なうわさになっておるけれども、捜査の方法については、世にいわゆる見込み捜査とか、その他道聴塗説に迷わされるというような行き過ぎの捜査はいけない、すべからく科学的な方法で捜査するようにという趣旨の御注意がございまして、これももとより当然のことでございます。検察権の動くところは、すべて証拠によって導かれていかなければならぬと考えておるのでございまして、今日までも、また将来におきましても、ただ莫然と人のうわさによりまして、人の名誉を傷つけ、人権を蹂躙するようなことはないということだけは、気をつけてやっておりますから、御承知を願います。
#26
○一松定吉君 唐澤法相の御意見を承わりまして、私は非常に心中喜んでおります。あなたが常に職務を遂行なさるについて公正無私、情実因縁に左右されないお立場を今日までとっておられたことは、よく承知しております。あなたが今回法相の地位におつきになったについては、その意味において私は深く賛成をしておる一人でございますから、ただいまの話を承わりましてほうとうにうれしく感じます。どうか一つそういう意味において徹底的にこれをお調べになって、世の疑惑を解消し、国会の信用を高めるように、一そう御尽瘁あらんことを特にお願いいたします。
 その次の私がお尋ねしたいことは、新聞記事の報道であります。読売新聞が宇都宮君と福田君がわいろを取ったんだ、収賄容疑で召喚必至であるというようなことを、十月の十八日の記事に書かれまして、私どもはこれを見てびっくりしたというような関係で、両君がそういうようなことをしたんだろうかと思っておりました。これを見ますと、今のわいろ事実を、この押収した帳簿に比較して見ると、いわゆる三十年の十二月に四百七十万三十一年の六月に五百二十万さらに転業資金の名義で三十一年には千二百万、三十二年に千五百万計三千六百九十万円が四回にわたって本部に集金せられておる。こういうようなことで、これらの金が、すなわち眞鍋代議士に次いで福田、宇都宮両代議士に、いずれも二十万から五十万の工作費が送られておる事実が明らかに出たんだ、こう書いてある。こういうような記事を見ますと、新聞だけを見た人には、宇都宮も福田もやはりわいろを取ったのかと思うのが当然です。そこで、そういう身に覚えのない福田、宇都宮両氏がこういうことをして、実に不都合千万だということで、これらの関係者を名誉棄損で告訴したということは、私は当然の帰結だと思う。そこで検察庁が調べた結果、これはこの出所を明らかにしなければならぬということのために、つまり立松記者を逮捕して調べに従事したことは、私は当然だと思う。一体この新聞記者というものは、今日憲法において言論の自由を保障せられておりますることは、これはもういわゆる憲法法二十一条において言論の自由ということを認められておる。だからして、この言論の自由の範囲内において自分らが勝手に報道するというようなことは、これは新聞記者の当然に与えられた憲法上の権利だ、ところがこれには制限がある憲法十二条と十三条において、ただしこれらの権利は、国民の不断の努力によって、これを保持する)同時に、国民は常にこれを乱用してならないということがある、憲法の十二条に。それからまた、これらの自由等は、公共の福祉を害しない限りにおいて自由だと、こうある。だからして言論の自由ということは二十一条に認められておるからというて、何でもかんでも切り捨て御免で、何でもかんでも思う存分のことを新聞に書いて、人の名誉を傷つけようが、何しようが勝手だということは、これは断じて許しません、こんなことは。これは憲法の十二条及び十三条の規定によって制限されなきゃならぬ。のみならず、新聞記者が名誉を棄損しても、それは刑法のいわゆる二百三十条の二、これに新聞記者等に関する名誉棄損についての刑罪の成否というものがちゃんと規定されておる。ただだれでも彼でも、ある事実を書いて、人を侮辱をしたり、名誉を棄損したりする。すぐにそれが犯罪だということには、刑法はなっていない。特にこの刑法の二百三十条の二の一項と三項、二百三十条の二の一項には、「事実ノ真否ヲ判断シ真実ナルコトノ証明」のあったときはこれを罰しない。また二百三十条の二の第三項のいわゆる「公務又ハ公選ニ依ル公務員ノ候補者ニ関スル事実ニ係ルトキハ事実ノ真否を判断シ真実ナルコトノ証明アリタルトキハ之ヲ罰」しない。だから新聞記者はいろいろなことを、名誉棄損に関するようなことを書いても、これはこの刑法の要求しておるところの、いわゆる「真実ナルコトノ証明」をしたときには、これは罰せられない。ところが「真実ナルコトノ証明」ができないときは罰せられるのです。それで、こういうような読売の記者が宇都宮、瀬田両氏がわいろを取ったというようなことを書いた以上は、このいわゆる「真実ナルコトの証明」をすれば、この記者は罰せられない。「真実ナルコトノ証明」ができなかったら、当然罰せられるのです。だからして、この新聞の記事に出たことだけで、この新聞記者は有罪であるというようなことは、すぐには言えない。だから検察庁が立松氏を呼んで調べて、お前さん、この記事はどこから出たかと、真実なることを証明しなさい。そうすればあなたを起訴しませんよと言うのは当りまえなんです。それを黙否して答えない時は――黙否して答えぬということも刑事訟訴法で認められている権利ですから、これは異存はありません、黙否して答えないということも。黙否して答えないということになると、事実の証明をしないことになる。私がこういうことを書いたのは、かくかくないわゆる「真実ナルコトノ証明」をする資料があるのです。その資料はこれこれである。検察庁の事務官が私にこういうことを話したのです。あるいはどこそこの記事において私はこれを見たのですとか何とかいうことの、「真実ナルコトノ証明」をしたときに初めて立松氏はいわゆる責任を逃れることになるわけです。それを証明せぬで、その種の出所を言わなければ、証明ができないのですから、これは明らかに有罪の認定を受ける。起訴せられる。勾留されることは当然なんです。だからいろいろな世論がありまして、新聞記者がその種の出所を言わないことは、新聞記者の道徳だという。それは道徳でしょう。道徳であるが、自分はそういうことを書いた以上は、自分はその責任を明らかにして、自分が無罪になるか有罪になるかということを明らかにするためには、出所を明らかにしなければならぬ。これは何の何某がこういうことを言いましたから、これは私は真実なりと信じて書きましたと言えば、それは無罪だ。その立証ができなければ、いいかげんなことを書いたのだと言えば、当然この刑法の規定によって処分を受けなければならぬ。それを明らかにするために、検察庁がこれを逮捕して調べたのは当りまえじゃありませんか。検察庁のやったことは、検察庁が立松氏を逮捕したのは不都合だと言うのは間違いです。不都合だと言うのは、刑法の解釈を知らない人だ。だから立松氏は逮捕された。自分のこの書きましたこの出所は、これこれ、誰かがこういうことを言ったから書いた。私は事実存するものと思って書きましたと言えば、これは無罪です。それを言わなかったら、自分も証明を明らかにしないのですから、立証できないのですから、罰せられることは当りまえだ。しからば、これを勾留しないで釈放したら証拠隠滅のおそれがないかの問題、これは高等検察庁の検事も証拠隠滅のおそれがあると。私をして言わしめれば、証証拠隠滅の恐れがある。なぜというと、新聞に書いただけで証拠隠滅のおそれはないじゃないかということは、書いたこと自体は隠滅も何もできません。ところが、書いたもとが隠滅する、こういう根拠に立って書いたのだということについては証拠隠滅のおそれがあります。証拠隠滅はできる。たとえば立松氏は書きました。それは何の何がしがそういう種をくれたのですと。それでこの何の何がしと打ち合わせて、何の何さんが種をやったのだということをこしらえて、現に私は何の何がしから聞いたのですと言って、次から次へと証拠をこしらえて偽造することがあるから、証拠隠滅のおそれがある。だからそういうことをなからしめるために、立松氏を裁判所に勾留の請求をするというのは当りまえなんです。勾留を請求したのは悪いということは、この刑法の解釈を知らない人が言うことなんです。また立松氏の立場に理解のない人の言うことです。この立松氏がこの種のありかを言わないことによって無罪になりませんよ。種明しをしたのは何々さんがしたから、私はそれを信用して、これを書いたのだとおっしゃれば無罪です。その立証ができないとすれば、いわゆる刑法の要求するところの「事実ノ真否ヲ判断シ真実ナルコトノ証明」がないものだから有罪だということになる。決して検察庁のやり方が不都合じゃない。それを不都合だといって非難することが間違いだ。ただし、種の所在を言わぬでも、それでもよろしいが、そのかわり罰せられるのです。種の出所を言うて真実の証明をせぬければ罰せられるだけです。罰せられるのがいやなら、根拠を明らかにして身の明しを立てなければならぬ。それは立松氏のお考え通りでどちらでもよいが、それを、検察庁が勾留したのは検察庁が出過ぎだ、越権だとか言うことは、われわれ専門家から見れば、こんなことはこっけいな理論です。私はこういう意味において新聞記者諸君も、自分がこういう記事を書いた以上は、その責任は自分が持たなければならぬ。これについては、ただ読売、だけではありません。東京新聞等にもいやたれさんに金をやったのだというようにして、ほかの代議士の名前がやはり出てくるというようなことも、やはりその代議士から告訴されれば、いまの立松氏と同じような境遇になって、それはなるほどそういうことを書いたけれども、その根拠はこうこうであるということを立証すれば、この記事は犯罪は成立せぬということになる。どうも近ごろ新聞社の諸君がそういうことをあまりお考えになっておらぬのか知らぬが、しきりに人の名誉を棄損するようなことを書く。これはどうも私はよほどつつしんでやはりこの憲法の言論は自由であるが、自由であると同時に、公共の福祉を害したりあるいは乱用するようなことのないように、憲法の十二条や十三条の規定のやはり制限を受けるということを御存じの上で、こういう記事をお書きになるということが必要であろうと思うのであります。
#27
○委員長(青山正一君) 一松さんに御注意申し上げます。一つ質問に移っていただきたいと思います。
#28
○一松定吉君 これをもとにしてこれから。こういうような私は考えを持っておりまするから、刑事局長の今言われたように、立松記者が自分が事実と信じて書いたのであるという立証をしない限りは、これは直ちに無罪であるということは認められぬが、そういう意味において立松氏を逮捕し及び勾留状を請求したのではありませんかと、こう聞くのです。それを一つ刑事局長から……。
#29
○説明員(竹内寿平君) ただいま一松委員からほとんど私の申し上げたいことを申していただきました。御趣旨の通りの意味におきまして逮捕状の請求、勾留をなされたと考えていいと思いますが、ただ、今の御指摘の説明によりますると、取材源を言わないから逮捕したかということになるおそれがあるわけでございますが、検察庁としまして、取材源を言わなかったから逮捕したという考え方にはなっておらないのでございます。その点、誤解のないようにお願いしたいと思います。なるほど、立松記者個人につきましては、今も法律解釈上の御見解の御披瀝がありましたように、この記事につきまして真実であるし立松記者が信じたといたします。しかしながら、その信ずるについては相当な理由がなければならないわけでございます。その相当の理由と申しますのは、自分が信じたことが客観的な資料に基いて、そうして健全な常識によって判断した結果、さように信じた、こういうことになった場合に、初めて犯罪の成立を阻却するというのが、この二百三十条の二の学者一般の解釈、通説となっておるのでございますし、裁判例もさように解釈をいたしておるのでございます。従いまして、その信じ方がさような意味においての信じ方であったかどうかということが、検察庁としては犯罪の成否を決定される上に必要でごさいますので、調べなければならないのでございます。他面これは立松氏個人の問題の関係でごさいますが、逮捕、勾留をしたいという気持は、立松氏個人とその他の関係者の、先ほど単数、複数の御議論も出ましたが、これの協力者は一体、だれであるか。ことに告訴によりますると、検察官が漏らしたのではないかということになっております。しかもそれは検事正とか、検事総長とかいう指揮官もこれを許可しておるのではないかといったような、重大なものを含んでおるのでございます。そういう関係を究明いたしますためにも、隔離しておかなければ、その間に供述の食い違いその他が、あいまい模糊となってしまって、その関係の解明ができなくなるというおそれがあるわけでございまして、これらの点をいろいろ考えました結果が、逮捕をしななければならないという結論を出しておるのでございます。今のどこから聞いたかという、その、どこから聞いたかということのみを対象にして逮捕、勾留をいたしたわけではないのでございます。
#30
○一松定吉君 私の質問の趣旨もそういうことです、つまり立松氏を逮捕したということは、立松氏が果てし犯罪が成立するかしないかということについては、その刑法のいわゆる二百三十条の一項並びに二百三十条の二の一項の「真否ヲ判断シ真実ナルコトノ証明」をすることができるかできないかということを明らかにするために逮捕して、そうして犯罪の成否を決するためにしたと、こう私は見ておる。これは種を、明かさぬから云々ではない。そういう意味においてお尋ねしたのですが、しかし、私は、この検察庁のやり方が違法であるとか行き過ぎであるとかということは考えておりませんが、世間がいろいろなことを批判しても、検察庁は検察庁の信ずるところによって、その厳正なる態度において事を処理していただきたいということを、ただ申し上げるだけであります。
 それから次に私がお尋ねしたいのは、この読売の記者の書いたところを見ますと、これはなかなか普通の人から種が出たと認められない、こういうようにこまかい具体的な事実が出ておる以上は、これは私は検察庁のこの捜査に関係しておる検事か、しからざれば関係している公務員、それはまあ書記官か雇か知りませんよ、そういう人間がこの材料を提供したのでなければ、こんなにこまかいことが書けるはずはない、私はこう思うのですが、こういう点について、一つ十分に検察庁当局としてはその部下をお調べになって再びこういうことのないようにしなければ、こういうことをやるだけやって新聞発表することによって、証拠の陰滅をはかり、せっかく検挙しようと思ったのが検挙ができなくて、うやむやになるというような、おそれがなきにしもあらずですから、綱紀粛正の意味からしても、部下を十分に戒飭して、そうしてかくのごとき秘密が外部に漏れないようにするということについては、一段と御注意を払わなければならないと思うのでありますが、そういう点について一つ法務大臣の御意見を承わってみたいのであります。
#31
○国務大臣(唐澤俊樹君) 新聞に出ておる記事があまりに精密な数字等も書かれているから、これは検察当局の側から漏れているのではないか、こういうお疑いでございますが、この点につきましても十分取調べをいたしましたけれども、その報告によりまして、私は絶対に検察当局から漏れて、いるものではないという確信をいたしております。しかし、御注意でございますから、十分注意はいたします。
#32
○一松定吉君 私、もうよろしゅうございますが、どうぞ最後のお願いですが、ほんとうに徹底的におやりになって、そうして世の疑惑を明らかにしていただくということを、特にお願いいたしまして、私の質問を終ります。
#33
○岡田宗司君 ただいま法務大臣のお言葉ですと、検察庁からこういうような捜査上の秘密を漏らしたことはない、こういうことはお認めになっておるわけですね。ところが、宇都宮君の方の告訴ですというと、これは漏らした、こういうことになっております。聞くところによると、いろいろ私も聞いておるのですが、新聞社の方で、これは検察庁の方から出たのだ、こういうことを言ったということに基いて検事を告訴したというふうに聞いておるのですが、果して新聞社の方でそういうふうに言ったということが、宇都宮君が検事を告訴したそのもとになっておるのですか。その点おわかりだと思うのですが……。
#34
○説明員(竹内寿平君) 昨日の衆議院法務委員会におきまして、宇都宮議員から一身上の弁明がなされました。これは御承知の通りであります。その陳述の中に、読売新聞編集局長に会って、記事をどういう根拠で書いたかということを質問したところが、検察庁の筋から聞いたのである。しかも確実なるものであるということであったそうであります。私の承知しておりますことはそれたけでございますが、東京高検の捜査を担当しております係りの者も当然新聞社を調べておるということでごさいますので、その点に関しましては取調べを進めているものと考えております。
#35
○岡田宗司君 ただいまの法務大臣のお言葉だと、ない、こういうことですが、あなたの方はまだそういう言葉に基いて当然捜査を進めている。どうもおかしいと思うのですが、ないならないで、はっきりして別の方面の捜査をすべきじゃないか。
#36
○国務大臣(唐澤俊樹君) 先ほど一松委員に対してのお答えの中に、私はないと確信しておるということを申し上げましたが、私は今もないと確信をいたしております。しかしながら、詳しく申し上げますれば、すでに宇都宮、福田両氏から名誉棄損の告訴も出ておることでございまするし、これはまた新聞社側に対する告訴とも関連いたしまするから、事実はどこまでも明らかにしなければなりません。その意味におきまして、検察当局といたしましては、果して検察側からそういうことが漏れておるかどうかは、これはこの起訴、不起訴を決定する上におきまして、当然捜査を遂行していっておることと私は思います。しかし、今まで私が内部を取り調べて、そうして受けた報告によりますと、内部からは漏れておらないと、私はそれを信じておりますが、捜査といたしましては、それはどこまでも続けて調べていかなければならぬこと、かように考えておる次第でございます。
#37
○岡田宗司君 立松君の勾留請求に対して、裁判所の方で却下しましたね。これに対して検察庁側の方では不満のようであったのですがこの点について、一体法務大臣はどうお考えになっておるか、これをお伺いしたい。
#38
○国務大臣(唐澤俊樹君) 先ほど刑事局長から経過の概要を御報告いたしました際に申し上げました通り、当時の状況といたしまして、証拠隠滅のおそれがおりましたから、逮捕状を請求して、裁判所から発布になりまして、その逮捕状によりまして逮捕をいたしましたが、引き続いて勾留をする必要を認めて、それを請求した。これは今度は却下になりました。検察当局といたしましては、どこまでもこの勾留状を請求したことはその必要ありと考えておるわけでございまするが、たまたま裁判所側と意見を異にしたわけでございます。裁判所側からその請求が却下されましたので、さらに慎重に考慮をいたしまして、今度は裁判所の決定に服する。考えは変っておらないけれども、たまたま考え方を異にいたしましたから、不本意ながら裁判所の決定に服するという判断をいたしたわけでございます。
#39
○岡田宗司君 そういう客観的に進行していった事実をお伺いしているのではない。この裁判所の判決に対して、あなたはどうお考えになるかという、あなたの判断をお聞きしているので、それをはっきりお伺いしたいのですよ。
#40
○国務大臣(唐澤俊樹君) 私は、当時の状況をよく聞いてみまして、裁判所がこの勾留状を発布してくれた方がよかったと考えておりまして、検察当局が勾留状の発布を請求したことは、当時としてやむを得なかったと考えております。しかしながら、裁判所と考え方を異にいたしまして裁判所はこれを却下いたしましたから、その際に裁判所の決定に従う、こういう判断をいたしました。検察当局の判断は、これは私は正しいと考えております。
#41
○岡田宗司君 今の法務大臣のお説ですと、やはり逮捕した方がよかった。つまり前半はあなたの判断だと思うのですが、そういたしますと、そこで問題が起ってくるわけなんです。つまりあなたは原則的にこういうふうな事態、つまり新聞記者が今言ったような名誉棄損の疑いのあるような記事を書いた。そして、それがたまたま告訴をされたという場合には、これは逮捕をする方がいいというお考えのように聞こえるのですが、これだと大へんなことだと思うのですが。
#42
○国務大臣(唐澤俊樹君) 一般的にどう考えておるということを申し上げておるわけではございませんで、当時の状況として、検察当局のとった措置はやむを得なかったと、かように考えておるわけでございます。
#43
○岡田宗司君 しかし、それはこういうなにがあるのじゃないですか。たとえば宇都宮君なり福田君なりの訴えたのは、その両人が名誉を棄損せられた、こういうところから訴えたと思うのです。そうしますとその訴え方の諸君が、一体はっきりそうでないという事実がまだ、つまりそういうような何というか、事実がないということがはっきりしないうちに、また、その方のことが明らかにならないうちに、どうしてすみやかに立松君を逮捕しなければならなかったか。また、あなたがその検察庁の態度を支持しなければならなかったか。どうもそこのところに私は割り切れないものがあると思うのです。これは、先ほど一松さんが大いに見込み捜査はいかぬというようなことを言っておられましたが、私はこれは見込み捜査のひどいものじゃないかと思うのですがね。それはあなたはやはり支持されるのですか。
#44
○国務大臣(唐澤俊樹君) 何がゆえに逮捕したかということにつきましては、先ほど刑事局長から申し上げた通りでございまして、関係者の供述にも食い違いがございましてどうしても身柄を拘束しておかないと、証拠隠滅のおそれがあると、こういう観点から捜査の過程におきまして逮捕をいたしたわけでございます。
#45
○岡田宗司君 裁判所はとにかく勾留の請求を却下して、それで立松君は自由になった。その後、検察庁の見たところでは証拠は隠滅されたようなことがありますか。そういうふうにお認めになっていますか。
#46
○説明員(竹内寿平君) お答え申し上げます。具体的に隠滅されたかどうか、これはちょっと御説明しにくいのでごさいますが、そのために捜査がやりにくくなったということは、想像するにかたくないと思います。
#47
○岡田宗司君 これは言論に対するいろいろな抑圧の問題ということと密接な関連のある問題なんですが、こういうような事態の場合に、常に捜査がやりいいとかやりにくいとかいうような、そういう検察の見地からだけのことでもっておやりになるということになっていきますと、これは常に言論に対しましてはこういうようなことがつきまとうのだというおそれが、私は今後も生じやしないかということをおそれるのです。たまたま今度は宇都宮君なりあるいは福田君が代議士であって、そうしてしかも自民党の代議士であって、これが自民党の政府に対してまた法務大臣に対しても相当な発言権をお持ちになっておるからこういうことになったのだろうと思うのですけれども、今後たまたまこういうような事態で、ある人が疑われた。新聞記者がそれを取材をして発表した、こういうときに、一々そういうような有力な人たちからの告訴なりあるいはまた第三者の告発によって、新聞記者がそのために一々捜査を受け、そうして今言ったようにこれは証拠の隠滅があるというので逮捕されるというのでは、これは言論の自由ということは保障されないわけなんです。そこで、私はそういうようなここに例を開くことになると思うので、今度のことは検察庁としてまことに軽卒なそしりは免れないのじゃないか。それからまた、福田君なり宇都宮君なりのことでございますが、これがはっきりそうでないということは、これは今行われておる売春汚職事件の捜査の進行に従って明らかになる。明らかになってきたときに初めて立松記者の書いたことがはっきりこれが間違いであったか、あるいはそうでなかったかということもわかってくる。それらが行われない先に、告訴に基いてただ新聞記者を逮捕するというようなことは、私は言論に対する大きな圧力を意味するものじゃないかというふうに考えるんですが、その点は、法務大臣どうお考えになっていますか。
#48
○国務大臣(唐澤俊樹君) 新聞、言論の自由はどこまでも尊重しなければならないということはお示しの通りと考えます。それと同時に、一方におきまして名誉棄損の訴えが出てきております。新聞の記事によりまして個人の名誉や信用が著しく棄損されるというような場合におきましては、やはり人権を擁護する、人権を尊重するという立場から、もしこれが検察当局の仕事の範囲に入って参りまするならば、これも真剣に考えなければならぬ問題だと考えるわけでございます。一方において言論の自由はどこまでも尊重する、他方において人権もどこまでも尊重する、これはともに民主主義憲法下の大事な原則であるように考えるわけでございます。たまたま本件におきまして検察当局といたしましては、事態を明らかにしなければならないという必要に迫られまして、そうして捜査技術上証拠隠滅の疑いありとして、逮捕をいたしたわけでございます。これによって新聞、言論の自由を圧迫しようとか、あるいは先ほどちょっとお言葉の端にありましたように、何か政治的の意図を持ってやっておることではないかというようなあるいはお疑いかもしれませんが、さようなことは絶対ございません。私も事後にその報告を受けて、どういうわけでそういう事態に立ち至ったかを説明を受けたような次第でございまするから、その点は、どうぞ御了承を願いたいと思います。
#49
○岡田宗司君 立松君に対して告訴がされ、目下捜査中なわけですが、それが起訴され、さらにこれは裁判になっていく、そして白か黒かきまるわけですが、それの一番きめ手になる問題は、何と言ってもこれは宇都宮君と福田君がこれに関係しているか関係してないかという点だと思うんです。で、この点についてきのうは福田君と宇都宮君から一身上の弁明があったわけですが、この問題は、今の立松君の問題と非常な密接な関係があるんですが、この点について、一体法務大臣はその両氏のこの売春汚職事件との関係について、どういうような報告を受けておるか、それを聞きたいんですが。
#50
○国務大臣(唐澤俊樹君) 宇都宮、福田両氏につきましては、私の知っておりまする――受けておりまする報告の範囲におきましては、容疑は全然ございません。
#51
○岡田宗司君 それは今のところですか。
#52
○国務大臣(唐澤俊樹君) 今のところという言葉を使いますると、非常に誤解を生じまするが、私が受けておる報告のうちにはございません。
#53
○岡田宗司君 これは非常に大きな関連を持った事態で、たくさんの人が関係しておるといううわさがされておるんです。で、まあおそらく立松記者もそういうようなことから、この二人についてのことをいろいろ書かれたんだと思うんですが、それじゃこの二人だけ特別にお調べになって、はっきりそうでないというふうに断定されたものなんですか。
#54
○説明員(竹内寿平君) 私からお答え申し上げます。
 今の御質問でございますが、特に二人を調べた結果、嫌疑がない、あるいはそういう報告を受けておらぬという趣旨で大臣はお答えをなさったのではないと思います。これは昨日の衆議院の法務委員会でも検事総長が出席されまして答弁をされておりますが、この記事の出ました十八日現在において、両議員に対する容疑というものは全然捜査の上に浮かんできていなかった、しかもです、昨日現在においてもそういう容疑はないということを明言されておるのでございます。従って、そういう意味においてのお答えであるというふうに了承いたします。
#55
○岡田宗司君 そのほかに代議士数名、参議院議員数名、みんなして何名とかいうようなことをよく新聞に書かれておるが、実際に逮捕されたのは眞鍋儀十氏一人。すると、あとの諸君はやはり十八日にも十九日にも全然捜査に浮んでおらぬ、こういうことなんですか。
#56
○説明員(竹内寿平君) それは捜査の内容にわたることでございまして、お答えできないのでございますが、ただ、両氏につきましては告訴が出ております。ついでながらお答え申したいと思うのでございますけれども、なるほど先ほど御指摘のように、本体は今後の捜査によって出る可能性があるというようなことであるならば、この名誉棄損もおかしなものになるのではなかろうか。もしそういうふうに考えられるのに、先走ってこの捜査を早くやるのはいかがなものであるかという先ほど御意見であったように承わったのでございます。それがひいてはこの検挙が不当ではないかというお言葉にも相なったかと思うのでございます。そこで、概要説明の際にも申し上げましたように、検察――地検当局にも意見を聞いておるのでございますが、それによりますると、確信を持って漏らした事実はないということを言っておるのでございます。事件がだんだん発展して参りましたので、その確信を持って漏らしたことがないというのはいかなる確信に基くのかということを、また法務省といたしましても調査したところによりますると、十八日、その新聞記事が出ました当時においては、まだ捜査線上に浮んでいない。全然浮んでいない。浮んでいないものを漏らすはずはないではございませんかと、こういうの、が地検当局の信念の基礎になっておるのでございます。で、昨日検事総長も昨日現在においてもそういうものは出ておらぬ、こういうことを言っておられるのでございまして、しかも、先ほど申しましたように被疑者は読売新聞の関係者だけではなくして、検事までも被疑者になっておるのでございます。で、その検事は担当検事ということになっておりまして、本来の売春汚職をやっております担当検事が、一応の嫌疑をかけられておる、こういう状況下におきまして、国会の激励を受けてはおりまするものの、そういう方面から制約を受けるということになりますると、力が入らないということは、これは見やすいことでございまして、従いまして、そういう嫌疑は出てないということからして、これはどうしても早く捜査に着手いたしまして、そうしてその間の黒白の解明をいたしまして、もしぬれぎぬでありますならばぬれぎぬを取ってそういう心の重荷なく売春汚職の捜査に精進してもらうというふうに打っていきたいというのが、この検挙に早期着手いたしまして、そうしてしかも早急に解決をはかる趣旨であろうというふうに私は考えておるのでございまして、この点、誤解のないように……。
#57
○岡田宗司君 この問題については、私は、立松記者だけでなくて、係の検事が、これは某という名前になっておりますけれども、担当検事だろうと思うのですが、そういう人が告訴されたということが、これはどうも今後の捜査にブレーキをかけるようなことになる、それはまあ御本人は名誉棄損のためにやられたんだろうけれども、そのことの政治的な結果として、捜査がどうも鈍るように、牽制されるんじゃないかということを非常におそれるのです。しかもまあ高検の方でもってああいうふうなことをおやりになっているということになりますと、これはどうも捜査陣の方が何か足踏みをするというようなことも起りゃせぬかということも、私はおそれるのです。同時に、世間もそういうふうな印象を受けやしないか、こういうふうに思うのです。
 また、先ほどから指揮権は発動しないということを言われておる。まさかああいうことはもう二度とないと私は信じておりますけれども、こういうような事件の捜査を妨げる方法はまだほかにもあるだろうし、また、こういうことがあるいはつまずきにならぬとも限らぬと思うので、そういう点で、私どもは、これは世論が今非常にこの問題については沸き立っておりますので、従って、こういうような派生的な事態によって捜査が鈍らされて、あるいはこの担当検事の決意が曲げられたり鈍らされたりするようなことになると、これは大へんだと思うのですが、その点について、法務大臣はどうお考えになるか。
#58
○国務大臣(唐澤俊樹君) さような心配は絶対にないと考えております。その後も検察の当局の方から私のところへもだんだんと報告をいたしておりますが、検察当局といたしましては、私の指示いたしました通り、徹底的に証拠によってこの捜査を遂行しよう、こういうことに相なっておりまするから、その心配はないと思います。
#59
○岡田宗司君 先ほどの刑事局長のお話ですと、まあ宇都宮、福田両君は十八日、十九日には全然捜査線上に浮んでおらぬ、こういうお話でした。ほかに、眞鍋君以外の人で新聞なんかでもだいぶ人数をあけたり、あるいはそのイニシアルをとって書かれたりしておるような人もあるのでありますけれども、まだそういうふうな浮んでおるという報告はないんでございますか。
#60
○説明員(竹内寿平君) その点は先ほども申し上げましたように、具体的捜査の内容に触れる問題でございますので、今後適当な時期に報告ができるかとは思いますが、今この段階におきましては、差し控えさしていただきたいしと思います。
#61
○岡田宗司君 これはまあ宇都宮君なり福田君なりが一身上の弁明をされて、ほんとになければそれは非常にけっこうな話だと思うのですけれども、立松記者がそういうふうに信じた、あるいはまあどこから聞いたか、私それもわかりませんけれども、そのうちに、たとえば宇都宮君なり福田君なりがそうしたということを信じておる、これはもうそう信じるの、が当りまえだというようなことがあれば、これはさっき言ったように、立松君が名誉棄損にならぬわけですから、たとえば宇都宮君や福田君が知らないときに、たとえばその関係者が宇都宮君や、あるいは福田君の名を称して、もしそういうことがあったとすれば、これはどういうことになりますか。
#62
○説明員(竹内寿平君) これは法律論みたいなお話になりまして恐縮でございますが、真実だと信じた、この信じ方が風評によってそう信じたとかあるいは信用のおけない人から聞いて信じたというようなことになりますと、先ほど申しましたように、客観的な資料に基いて健全な常識によって判断して、さような信念が出てきたというふうには見られないわけでございまして、こういう場合には、犯罪を阻却しないという判断をいたしております。
#63
○岡田宗司君 私、質問を申し上げたのは、昔ある大臣であった人――戦前の話ですけれども、これは涜職罪でもってやられたことがあるのです。その人は直後わいろを取っておったわけではない、収賄しておったわけではないのですけれども、その秘書がそれを取っておったというようなことで、これは結局秘書の名で取っていたわけですけれども、そういう事態があって、そういうことでやられたのですけれども、これは例ですけれども、そういうふうなことがあって、そういうふうなことについて何か報道を得たということで、宇都宮君、福田君自身は何でもなくても、そういうような場合があったときに、立松君がああいう記事を書いたとして、それが一体名誉棄損になるかどうか、それを一つお伺いしたい。
#64
○説明員(竹内寿平君) 一方において立松逮捕という具体的な事件がありまして、それに似通った仮定の議論でここで議論いたしますことははばかるべき事柄だろうと思います。私どもとしましては、現に高検が一生懸命で捜査を続けておるのでございますので、あげてその捜査の結果によって結論をすみやかにとるように私ども期待いたしまして、その結果によって自然事柄ははっきりと、かようにするものとかように考えておる次第でございます。
#65
○岡田宗司君 もう一つ。これは本筋の方の問題ですが、今のところ全国性病予防自治会の鈴木明外数名が逮捕されておるわけですが、その後九州だとか東海の方の有力者なり業者が取調べを受けておるのです。だからこれは全国的に相当なつながりを持っておるということなんですが、しかも金を全国から集めておるのです。全国においてそれぞれ、猛烈な運動をやっておったということは事実ですし、明らかなんです。これは東京だけの問題として、つまり東京の検察庁だけでやって、他の地方の検察庁においてはこの問題は取り上げておらぬのでありますか。その点をお聞きしたい。
#66
○説明員(竹内寿平君) この点も具体的捜査の内容になることでございますので、私からお答えしにくいのでございますが、昨日衆議院法務委員会において検事総長が明らかにせられましたところによりますと、何も東京に事柄を限定して、それ以外の所はやらぬという趣旨ではない、すべて証拠を追って捜査というものは進めるものであるから、事態が全国的になりますならば、必要なる検事を動員し、また必要があれば警察の協力も得て、万遺憾なきを期していきたい、こういう御趣旨の答弁がございましたので、私どももさよう信じております。
#67
○岡田宗司君 きょうはこれで。
#68
○大川光三君 岡田委員の質問に関連いたしますので一点だけ伺いたい。今回検察当局が立松記者に対する逮捕状を請求されたのは、もちろん罪を犯したことを疑うに足る理由があるという一つの確信と、そうしてかつ強制捜査の必要があるという判断からなされたものと思うのでありまして、これは捜査権の範囲に属するのみならず、裁判官もまたこれを是認して逮捕状を発しておるのでありまするから、私はこれをもって不当逮捕の論議をすることはとらないところであるのであります。ただ一つ、はなはだ遺憾に思いますることは、検察側が勾留の請求をされた、しかも、証拠を隠滅すると疑うに、足る理由があるという確信を持ってこれをなされたと信ずるのでありますが、たまたま裁判官はこの勾留請求を却下をいたし、そうして一たん逮捕された被疑者が即日釈放されたというこの事実について、一般国民といたしましては、いかにも検察当局が理由の弱い逮捕ないしは勾留の請求をしたとの印象を受けておると思うのでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)果して検察当局は逮捕並びに勾留請求について確信を持ってこれをなされたかどうかを伺いたいと思います。
#69
○説明員(竹内寿平君) ただいま御指摘のように、裁判所と見解が違いましたために、何か検察庁のとった態度が無理であったのではなかろうかというような印象を与えておるやに新聞報道等も見えております。この点は、はなはだ私どもも遺憾に存じております。逮捕に当りましては、先ほども明らかにいたしましたように、立松記者は自分が原稿を作成したのであるということを述べておるのでございまして、少くとも立松記者に関する限りは、あの十八日の新聞報道、あの記載は立松記者の執筆にかかるものであるということでございますので、これは逮捕に必要なる相当な理由はあったものと考えられますし、また、検察官の方はそう信じておるのでございます。で、証拠隠滅の点につきましては、先ほど申しましたように、立松記者の犯罪成否を決定する部分と、それからさらにそれだけではなくて、立松記者に対する協力者の範囲、それは新聞社ばかりじゃありません。検事もまたその容疑を受けておるのであり出す。その協力者が一体どこまであるのか。まだ、その協力者たちの認識はどうかということが、これは隔離しておかなければ、相互に話し合いをしてしまいますると、事柄は明瞭になってこないのであります。要するに、うやむやになってしまうおそれがあるのでございまして、この点、身柄拘束ということは強制処分でございますので、できるだけ避けなければならぬのでありますけれども、必要やむを得ないものというふうに先日ほど大臣からも御答弁があったような次第でございます。で、検察側ではこれは当然なことであるという考えのもとにいたしたのでございます。従いまして、裁判所と見解の分れましたことは、これはまあひとり立松逮捕の問題に限りませず、検察側が勾留を必要とした案件につきましても、必ずしもその勾留理由をそのまま了承せずして却下の決定をなした裁判の事例は、これまた枚挙にいとまがないほど多数あるのでございまして、本件の場合におきましても、不本意ながら裁判の結果を承訳するという態度をとったのでございまして、立松逮捕の場合に特に自信がないからそういうふうな態度をとったというふうなわけではないのでござします。
#70
○大川光三君 ただいまの御説明で、逮捕は必要やむを得ないものであるし、検察当局ではこれは当然のことだと考えているのだというお話でございますが、もしその建前から参りますと、裁判官が勾留請求の却下をしたということを、単に不本意ではあるがというような弱い言葉ではなくて、なぜ検察当局は堂々として準抗告をもってその主張を貫かなかったか、その点をお伺いしたいのであります。
#71
○説明員(竹内寿平君) 御指摘のように、却下になった場合には、なお話訟法としましては準抗告という手続があるのでございますが、この点につきましての検察側の判断は、先ほど来申し上げましたように、遺憾ではあるけれども、不本意ではあるけれども、裁判の結果を尊重していこうという態度にきめたというふうに私ども了承いたしております。
#72
○大川光三君 申すまでもなく、一たん勾留が却下されますれば、被疑者は直ちに釈放されてしまうのでありまするから、準抗告はいかにもあとの祭であるという感じは、これは免がれません。しかしながら、少くとも検察当局が信念と強い判断をもってこれを要求される以上は、あくまでもその主張を通すという厳然たる態度をもって私は今後も捜査に臨まるべきだ。それが検察庁の威信を保つゆえんだと考えておるのでありますが、いかがでごさいますか。
#73
○説明員(竹内寿平君) 御指摘のように、信念を持って進まなければならぬと思うのでございますが、これは訴訟手続一般に関する問題でございますけれども、たとえば検事が信念を持って起訴いたします。これは起訴でございます。公訴を提起いたします場合のごときは、自信がなくて公訴を提起するということは、一般的に申しましてあり得ないわけでございます。しかしながら、第一審の裁判の結果は、検事の意思に反して無罪になる場合もございますし、あるいは刑の量定においていろいろ見解の相違を示す場合もあるのでございますが、これに対しましては控訴、上告という手続もありますし、さらにまたその間に、その中間の裁判に対するいろいろな抗告手続も規定しておりますが、これらはやはり訴訟手続一般のこれまた健全なる常識的判断をしなければならないところでございますけれども、それらによりまして、不本意ながら裁判の結果を承認する場合もなかなか多いのでございまして、本件の勾留につきましても、まずまず健全なる刑事司法の運営という観点から見ますると、こういう判断に検察庁が到達したことは、私どもが見ておりましても相当であろうというふうに考えておるのでございます。
#74
○岡田宗司君 今のに関連して。先ほど法務大臣は検察庁の逮捕の理由等についてまあ御支持の立場をとっておられたし、それから裁判所の方の却下についても、これは不本意ながらというふうな御意見のように先ほどのお話から承わったんです。で、この点についてお伺いしたいのは、新聞記者の逮捕というようなことは、相当これは言論界とのあつれきもあるし、また新聞記者を逮捕するということが、言論圧迫の疑いを引き起すであろうということは、これはまあ常識上だれでも考えられることなんです。これはもう一体検察庁が事務的にただどんどんと運んで逮捕して、そうしてあとで刑事局長なりあるいは法務大臣が報告を受けたのか。この新聞記者の逮捕というようなことの社会的な反響というようなこともありますので、あらかじめこれは逮捕をする必要があるということについて、法務大臣、刑事局長は相談を受けたのか。その点が一点。それから今度裁判所の方でもって勾留請求却下の結果、不本意ながら検察庁は準抗告しなかった。その点についても、刑事局長なりあるいは法務大臣に御相談があってそうなったのか。その二点を一つ。
#75
○説明員(竹内寿平君) 逮捕に先立って報告があったかという点につきましては、これは報告を受けておりません。それからまた準抗告をしなかったということについて、事前に相談があったかという点につきましても、事前に相談をいただいておらないのでございます。
#76
○岡田宗司君 この逮捕の事件ということは、これは社会的関係は非常に大きい。これは、起ってから大きいということは、だれでもわかることでありますけれども、少くとも新聞記者の逮捕ということは、これは相当大きな社会的反響を起すだろうということは想像にかたくないことだと思うのです。そういう点について、一体法務大臣は、あらかじめ考えたことがあるかどうか。この告訴が出たときに、そういうことを考えたことがあるかどうか、この事態は相当大きな社会的な反響を起すだろうということについて、検察当局がそういうことをどんどんやることについて、これが単に検察当局の捜査という技術士の問題だけでなく、それの及ぼす社会的影響についての判断ということを、どうお考えになっておったか。その辺を一つ法務大臣からお聞きしたい。
#77
○国務大臣(唐澤俊樹君) 言論の自由を尊重しなければならぬということは、前々申し上げておる通りでございまして、この立松記者の逮捕ということもそれに関連をいたしまするから、逮捕したという事実が重大なことであるということは、私もよくわかっておりまして、それらを考えながら、どういうわけで逮捕するに至ったかという事情を聴取いたしまして、そうしてやはりこれはやむを得なかったと、かように判断をいたした次第でございます。
#78
○宮城タマヨ君 法務大臣と刑事局長に一点ずつお伺い申したいと思うのであります。
 汚職のうちでも売春汚職という最も不潔な問題がこんなに起っておりますし、それは非常に根深いものだと私は考えております。そこで、このいい機会に全部洗っていただきたいというように私は思っておりますが、先ほど法務大臣のお言葉の中に、指揮権の発動は絶対にやらないと、非常に私はそのことは力強くお伺いしたのでございますが、実は吉田内閣のときに、あの佐藤問題が起りましたとき、とうとう指揮権を発動されまして、私ども大へん無念残念でございます。が、そのときの法務大臣でありました犬養さんが、その指揮権を発動されて、多分数日のうちに大臣をおやめになったことから考えますと、必ずしも大臣の意思によってのみ決定されることでないのじゃないかというように私は考えております。そこでお伺いしたいことは、現内閣、ことに内閣総理大臣は、この問題に対して指揮権を発動するなどというような、そういうことをなさらないだろうと私は思いたいのでございますが、そういうお話がございましたでしょうか、どうでごさいましょうか。つまり私はこの内閣の意思、総理大臣の意思がいかがでございましょうかということをお伺いしたいのであります。
#79
○国務大臣(唐澤俊樹君) いわゆる売春汚職の問題につきまして、世上で非常にうわさが高くなって参りました。岸総理も非常に、心配をしておられます。で、談たまたまこれに及びますと、岸総理からは、自分としては汚職追放ということを強く主張している。だからしてこの問題はどういう結果になろうと、徹底的に捜査を遂行してもらいたいという話は、しばしばございました。さような次第で、私といたしましては指揮権発動などということは想像もできません。また、私といたしましてはしばしばはっきり申し上げました通り、外部からのいかなる勢力によっても制肘を受けてはおりませんし、また将来ともさような勢力に制肘をされるつもりもございません。また、私から検察当局に対してこの捜査を徹底的に遂行するように指示こそいたしますれ、これを牽制するようなことは絶対にいたしません。
#80
○宮城タマヨ君 安心いたしました。どうぞしっかり根本を掘っていただきたいというように私はお願い申しておきます。
 刑事局長に一つ伺いたいのでございますが、聞き伝えますところによりますと、業者が大へん証拠を隠滅しておりますので、もうこの事件もこれで大体山は見えているというように世間で申しておりますが、そういうことが少しでもございましょうか、どうでしょうか。
#81
○説明員(竹内寿平君) 私どもは、ただいまのところ傍観者の立場でございまするけれども、そういう山が見えているというようなことではなくして、むしろ最近の検察庁の動き方は、相当活発に動いているのではないかというふうに見ているのでございます。さようなことはないというふうに私は思います。
#82
○宮城タマヨ君 検察庁が大へん政治的に動いているのだというようなうわさも一方に飛んでおりますが、私はもちろん検察庁を信じております。検察、裁判をせめて国民として信じたいと思っておりますのでございますが、大へん今度の事件などは検察庁が政治的に動いているようなうわさが世間にごさいますが、その点はいかがでございましょうか。
#83
○説明員(竹内寿平君) 政治的に動くという意味がよくわかりませんが、さようなことはもう絶対ないと私は確信いたしております。主任検事を初めといたしまして、関係検事は毎日おそくまで小菅へ出張して調べているようでございます。その間に他意あることはないのでございまして、熱心に私はやっていると確信いたしております。
#84
○委員長(青山正一君) 本件に関する質疑は次回に譲ります。
  ―――――――――――――
#85
○委員長(青山正一君) 今度は昭和三十三年度法務省関係予算の概算要求額及びその内容の概略について法務省当局の説明を求めます。
 法務省の経理部長の大沢さんが見えておりますから、大沢さんから御説明願います。
#86
○説明員(大沢一郎君) ただいまより法務省所管昭和三十三年度概算要求の概要を御説明申し上げます。
 法務省所管昭和三十三年度概算要求の数字的な御説明を申し上げる前に、概算要求に当りましての基本的な態度について簡単に申し上げることを御了承願いたいと存ずる次第でございます。
 法務省所管事務は基本的な法令の立案あるいは法令の執行という、きわめて重要ではございますが、じみでかつ人を中核として行われるという性格のものでございますだけ、その予算要求もおのずからじみでございまして、人件費を中心とした事務的な予算にならざるを得ないのであります。従いまして昭和三十三年度予算要求に当りましては、まず法律上義務づけられました新規事業を除きまして、いたずらに新規事業を追うことなく、法務省所掌の本来の事務を確認した上、その事務の遂行に必要な経費を確保すること。
 第二に、各組織におきまして、中央機関、地方機関の事務分配の合理化を検討して、その円滑な運用を実現すること。
 三、各組織におきまして所掌事務を分析して人員の合理的配置、機械化の可否を検討して、他方研修、講習等によりまして事務能率の増進をはかるということ。以上のことを勘案しまして増員の要求、事務能率の向上に必要な経費を検討してこれを要求すること。
 第四に、全般的に、特に新規事業につきましては、その必要性、緊急度合等を考慮しまして、可能な限り年次計画化して要求すること。
 第五に、ことに営繕費につきましては所管施設全部につきまして、老朽度合、立地条件等をしさいに調査、検討しまして、年次計画化して要求することといたしたのでございます。その結果、昭和三十三年度予算要求に初めて姿を現わしたという新規要求は、新立法に伴いますもの並びに選挙関係事項を除きましては皆無となっておるのでございます。
 国会提案を予定されております新立法で、予算措置を伴いますものを参考までに申し上げますと、売春防止法の一部改正法案、婦人補導院法案、証人等の被害保障に関する法案、法律扶助法案、裁判所法の一部改正法案、矯正医官修学資金貸与法案等でございます。
 次に法務省の予算が人件費を中心としたものにならざるを得ないという点に関連しまして、人員要求は所管全体を通じまして昭和三十三年度におきまして三千九百五名となっておるのでございますが、これは各組織の所掌事務を分析し、機械化の可能なものは極力機械化しまして、人員配置の合理化も検討した上で算出したものでございます。
 以上の観点に立ちまして、概算要求の内容について申し上げたいと存じます。組織別の事項別経費の詳細につきましてはお手元に資料として昭和三十三年度予算概算新規要求額事項別一覧表を差し上げてございますので、これによりまして御承知を願いましたら幸いに存ずる次第でございます。所管全体の概算要求総額は三百六十四億七千三百十四万八千円でございまして、うち官庁営繕費として三十二億六千八百三十八万四千円が計上されております。また、これ以外に在外公館駐在官四名の要求が外務省所管に計上されるはずでございます。前年度すなわち昭和三十二年度予算額二百三十一億八百十七万五千円に比較いたしまして、百三十三億六千四百九十七万三千円の増額要求となっております。右の要求総額中百五十一億六千六百二十八万四千円は標準予算でございますので、新規要求額は二百十一億六百八十六万四千円となるわけであります。
 なお、御参考までに申し上げますと、三十二年度の概算要求額の三百五十六億七百七万一千円に比べますと、八億六千六百七万七千円の増加となっておりますが、標準予算におきまして十六億三千二百五十二万四千円の増額を示しておりますので、差し引き新規要求額といたしましては七億六千六百四十四万七千円の減少となっておるのでございます。
 なお、この新規要求額二百十一億の中には標準予算百五十三億の不足分として要求いたしたものや、また実質は経営的な経費すなわち標準予算に組まれて差しつかえない経費も相当多額に存するのでありまして、結局その余りの金額が新規事業の経費ということにもなろうかと存じます。
 以上総論的に御説明を申し上げましたので、次に各論的な御説明を申し上げる次第でございますが、次のように分類して順を追うて御説明申し上げることといたしたいと存じます。
 すなわち第一に一般事務費のうち標準予算に準ずるような経営的経費に関する新規要求、第二に事務費中、政策的重点経費に関する新規要求。第三に営繕費に関する新規要求の順に従って御説明申し上げたいと思います。
 第一に経営的経費でございますが、要求総額は百九十四億九千八百二十五万六千円でありまして、その内訳は、標準予算額百四十五億三千百七十四万二千円、新規要求四十九億六千六百五十一万四千円となっております。そのおもな内容を列挙いたしますと、一、既定の事業計画の完全な遂行を目的とする増額、二に事務量の激増に対処するための増額、一に職員の素質向上のための増額、四に従来の予算の不合理の改善、五が従来の一律的予算の節約、削減に伴う絶対的不足経費の増額等でございます。御参考までに資料として提出してございます説明参考資料をごらんおき願いたいと存じます。
 第二に政策的経費でございますが、その要求総額は百二億九千五百二十二万八千円でありまして、その内訳は、標準予算額六億二千九百九十三万一千円、新規要求額九十六億六千五百二十九万七千円となっております。そのおもな要求内容について御説明申し上げますと、その一が治安対策経費でございまして、その費用としまして十七億一千四百四十一万四千円を要求しております。ここに治安対策と申し上げましたのは狭義の治安対策をさすものでありまして、国の内外のいわゆる公安情勢にかんがみまして、法務省所管治安関係者機関の機能及び活動力を整備充実し、能率的な運用をはかるものでありましてこれに関する事業計画はおおむね次の通りでございます。
 すなわち刑事同検察庁関係につきましては、最近の公安労働情勢に対処しまして、外国からの治安撹乱工作の実態を把握するための調査活動、公安関係事犯の捜査並びに裁判の適正迅速化、その他公安検察の全般にわたりましてその機能を充実するため基礎的な資料の収集整備を初め、採証設備、無電施設等の整備拡充をはかろうとするものでございます。その要求額は二億九千六百八十一万三千円となっております。
 次に入国管理局関係といたしましては、諸外国との交通ひんぱん化に伴いまして、出入国審査業務の充実をはかる必要がありますとともに、在留外国人に関する記録を整備しまして、外国人の実態を把握しつつ、出入国管理行政の適正な運用を期し、あわせて不法出入国、不法残留容疑者等の取締りを強化しようとするものでございます。そのほか韓国側の強制退去送還者の引き取り拒否によります収容の長期化に伴います処遇面等の改善充実をはかりたいと存じておる次第でございまして、その要求額が二億八千六百五十八万四千円となっております。
 次に公安調査庁関係について申し上げますと、調査活動をさらに刷新強化しまして、事務の運営の適正強化を期したい、かような意味合いで要求額は十一億三千百一万七千円を計上しております。
 第二に、(1)として法務行政刷新強化に関する経費でございまして、その一が総合的刑事政策の樹立に要する経費でございます。従来犯罪防止の施策を総合的見地から統一的に検討する機関がございませんために、各担当機関の処理方針がともすれば統一を欠きまして、また総合的な犯罪学研究機関がございませんため、犯罪の社会的、個人的な原因を総合的、科学的に調査分析してその成果を集積することができず、さらに刑事政策の担当者が主として法律家によって占められておりましたため、社会学、精神医学、心理学、統計学等の諸科学を十分に活用することができなかったうらみがございます。このような認識の上に立ちまして、最近の犯罪の激増と悪質化に対処して、適正有効な刑事政策を実施するため、まず少年非行の早期予防に関する調査研究、量刑の地域的、個々的の不均衡に対する量刑の科学化に関する調査研究、犯罪原因の科学的調査研究を行おうとするものでございます。その所要額として八百四十二万七千円を計上しておる次第でございます。
 次に(2)としまして、涜職事犯等に要する経費でございます。御承知のように涜職事犯あるいは補助金関係事犯の徹底的な検挙を期します上には、的確な捜査の端緒の把握が要請されるのでございます。この要請に応ずるために、地検に調査室を設置しまして、基礎的な資料を収集整備し、この種事犯に対する検察の強化をはかろうとするものでありまして、その所要経費として三千五百三十五万円余りを要求しております。
 次に(3)、公判審理の適正化に要する経費でございますが、第一審強化方策要綱が最高裁判所によりまし策定されましたに伴いまして、検察庁の公訴維持のための体制を整える必要がありますし、また刑事事件の証人が他人から危害を加えられることを防止するため、適切な措置を講じまして、刑事司法に対する国民の協力を確保することが喫緊の要務と存ぜられるのであります。暴力事犯の証人保護措置の一環といたしまして、証人の公判への出頭に際しまして、検察事務官等をして身辺を警備せしめ、その安全を確保して公判審理の適正化を期そうとするものでありまして、その所要経費として六千八百九十万六千円を要求いたしております。
 (4)に、非行青少年対策並びに犯罪者更生保護に関する経費でございます。犯罪全般の増加、非行青少年の増加の傾向にかんがみまして、社会保障の一環として更生保護活動を活発ならしめるために、保護観察所の機能を充実いたしますとともに、更生保護会及び保護司の方々の活動を強く援助いたしまして他方少年院におきます補導能力を強化するため、教官の充実をはかろうとするものでございます。
 まず保護関係におきましては、保護観察の強化充実、更生保護会に対する補助金、保護司に対する実費弁償金等の適正化をはかりたいと思うのであります。その費用としまして七億二千四百四十四万三千円を要求しております。
 少年院関係につきましては、少年院におきまする教化活動の充実、精神医の配置、職業補導の拡充等、処遇の科学化、刷新をはかりますとともに、食糧費、特に菜代の増額等をお願いしまして、処遇の充実を期したいと存ずる次第でございます。その費用といたしまして、七億六千六百十八万八千円を要求いたす所存でございます。
 次に(5)、売春防止法の全般的な施行施策に関する経費の要求を申し上げます。刑罰規定の施行に伴いまして事犯の効果的な処理をはかりますとともに、売春婦に対しまする補導処分の実施、売春婦の更生を円滑ならしめるために、検察庁に身上調査室を設置しまして、また更生保護会を拡充し、婦人補導院の新設、少年院の整備拡充をはかりまして、さらに人権擁護活動の一環として特設人権相談所を開設するに必要な諸経費を要求したのであります。
 まず検察関係でございますが、売春、人身売買等の事犯の処理の厳正適確をはかりますとともに、主要地検に身上調査室を設けまして、売春婦に対する事犯処理の適正化を期そうとするものでありまして、その所要経費として六千五百四万三千円を要求しております。
 次に矯正関係におきましては、補導処分を実施いたしますために、婦人補導院全国七カ所の新設、既設女子少年院六カ所の整備拡充をいたすことにいたしております。その要求額は、八億七千八百四十八万一千円となっております。
 これに関する人権擁護関係につきましては、温泉地、都市等の売春婦の多い地区に婦人相談所を設置いたしまして、売春婦の更生と転落の防止に寄与したいという趣旨で、五百八十四万三千円の費用を、要求しております。
 次に保護関係につきましては、主要地検に更生保護相談所を開設いたしますとともに、これに対応いたしまして、更生保護会を増設充実しまして、売春婦を収容して保護更生に当ろうとするものでありまして、その費用として一億一千三百五十七万七千円を要求いたしております。
 次に(6)、法律扶助法案立法による施策経費について申し上げます。法令の複雑化及び訴訟手続の専門化、技術化に伴いまして、貧困のために法律の保護を受けられない者が激増する傾向が見受けられますので、法務局、地方法務局に法律相談室を設置いたしまして、無料法律相談を行いますとともに、民間の法律扶助事業を助成強化しまして、貧困者の権利の保護を強化しようとするものでございます。その所要経費として、三百七十一万四千円を要求いたしております。
 次に第三に人権擁護活動、これに関する経費でございます。人権擁護活動の強化拡充は法務行政の重点の一つとなっておるのでございます。人権侵害事件につきましても、まず予防施策を実施しまして、従来の侵犯事件調査と相まちまして、人権擁護活動の強化をはかりますほか、人権擁護委員制度の拡充とその画期的な運用を期したいという考えのもとに、その所要経費として五千二百五十一万六千円を要求いたしておるのでございます。
 第四に、矯正行政の刷新充実についての経費でございます。矯正機関におきましては、監獄法の改正事業と相まちまして、矯正行政の刷新と充実を期日するものでありまして、その目的達成のためには、収容者に対する処遇の問題、特に科学的方法の導入、収容者に対する部外者の協力、医療施設の充実、食糧費、原材料費等の増額等を計画しておるのでございます。すなわち犯罪者矯正の具体的方策につきまして科学的に調査研究を行うための矯正科学研究室の設置、精神障害者の処遇対策として医官の増員、菜代の増額、作業賞与金の増額等をはかろうとするものでありまして、その所要経費として五十億八十五百十五万七千円を要求いたしております。
 第五、基本法典の立案並びに諸法令の整備に関する経費でございます。これは前年度に引続きまして、これが法令の整備充実をはかろうとするものでありまして、おもなる点を列挙いたしますと、特別顧問室の整備拡充、所要図書の購入、司法制度の改善、法制審議会の活発な運用、民法財産法、民法身分法、商法、強制執行法、国際私法の改正作業の推進、民事行政審議会の運営の強化、刑法、刑事訴訟法、少年法の改正及び各種行政取締法規の整理改廃、改正監獄法施行規則の制定、矯正審議会の運営強化、少年鑑別所法の制定、少年法、少年院法の検討、犯罪者予防更生法、執行猶予者保護観察法、更生緊急保護法、保護司法等の改正についての調査、出入国管理関係法令の改正、登記台帳の一元化に関する制度の準備等、その他現行法令の整備等の調査研究を行うための経費を計上しておるのでございまして、それに要する経費として一億一千六百二十三万円を計上しておる次第でございます。
 次に第三の営繕費について申し上げます。営繕費は要求総額は六十六億七千九百六十六万四千円でありまして、その内訳は官署施設費三十二億六千八百三十八万四千円、収容施設費二十四億八千百三万九千円、各所修繕費七億七千百七十二万六千円、不動産購入費一億五千八百五十一万五千円でありまして、それに先ほど申し上げました売春関係の施設費六億七千四百九十万五千円を加えますと、計七十三億五千四百五十六万九千円と相なるのであります。この営繕の方針といたしましては、四つの方針のもとに計画いたしておるの参でございます。
 まず第一に、新営、整備の年次計画を考えて計画したのでございます。御承知のように法務省所管には三千四百有余に上る所管施設がございますが、その大半が木造建築でございまして、ほとんど老朽廃しているばかりでなく、その広さ、間取りとかあるいはまた設備等内容におきましても、事務能率上遺憾のものがきわめて多いのでありまして、早急にこれを恒久性の建物といたしますとともに、快的な施設に改めて、執務環境の改善、事務能率の高揚をはかることが喫緊の要務と存じておるのでございます。しかし、国家財政の上からこれを一挙に解決するということは困難でございますが、そうかといって漫然これを放置いたしますると、近い将来これが対策にかえって一時に莫大な出費を要することになろうかとも存ぜられるのであります。そこで全施設の現状を個々に精査いたしまして、緊急度に応じた長期にわたる年次計画を立て、計画的に新営、整備をはかろうとしておるのでございます。
 第二は庁舎の集約化ということでございます。前にも申し上げましたように多数の施設が全国に散在いたしておりますが、組織が多岐にわたるために、現在地方の小都市におきましてさえも出先機関の数が二、三にとどまらないのであります。国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法の制定の趣旨にかんがみましても、国土の利用、国費の節約の面からゆるがせにできないことは申すまでもないことでございますが、国民の利便、所管機関相互間の連絡の上からも深く考えねばならぬ問題だと存ずるのであります。そこで将来に向いまして、これらの庁舎の集約化を実施しようとするのでございます。
 第三には地方財政依存の脱却ということでございます。国家機関の施設はすべて国有としまして、国費をもってまかなうのを理想と考えるのでございますが、遺憾ながら当省の下部組織におきましては、今日なお市町村等地方公共団体に依存しておるものがきわめて多いのでございます。たとえば法務局出張所のように全国千八百庁中三分の二以上のものが市町村等から無償、または無償に近い条件でその施設を借り上げているという状態でありまして、地方財政再建促進特別措置法の建前から申しましても、はなはだ好ましくない現状であります。なおまた矯正施設関係におきましても、代用監獄制のもとに警察署の留置場が拘置所化いたしまして、処遇上、捜査上問題を起しているばかりか、その通常上都道府県の財政に影響を及ぼしている例が少くないのでありますが、その好意に甘えてこのまま放置すべき筋合いのものではないと存じます。いわんや昨今では地方公共団体から買い取りの陳情を受け、あるいは正規の収容施設の新設を要望されるもの等も数件ございまして、供手放任すべきときでないと思量いたします。そこでこれらに対しまして、すみやかに国有施設を新営して、地方財政の負掛軽減をはかり、その依存から脱却しようとするものであります。これも目標の一つに加えているのであります。
 第四には立地条件の是正という点でございます。所管の組織中その多くは終戦後独立しあるいはまた新設されましたものでありまして、これらは当時の状況といたしまして急場をしのぐのあまりに施設の立地条件等を考慮するいとまなく設けられましたために、今日環境不適の場所やあるいはまた関係諸機関と隔絶した地にあるものが多いのでございまして、その機能を十分果していないと思われるものが少くないのであります。なおまた最近の傾向といたしまして、都市計画あるいは都市発展の見地から、都会地に現在する矯正関係施設の移転を要請する声が各地に起りつつありまして、現在その対象となっているものがすでに二十カ庁に及んでいるありさまでございます。これは国家機関としてのその機能発揚の面からも、あるいはまた国民の福祉増進の面からも、早急に解決すべき重要問題と存じております。そこでこれらの施設の立地条件をつぶさに検討して、その是正をはかろうとするものであります。以上申し述べました諸点を交えて営繕費を要求いたしているのでございます。
 これをもちまして法務省昭和三十三年度概算要求の御説明を終ります。
#87
○一松定吉君 ただいまの説明したのを一つ印刷にしてわれわれに回していただけませんか。ただこれだけじゃわかりはしません。それをお願いしてお行きます。
#88
○委員長(青山正一君) それとこの営繕費の内容をちょっとやはり法務委員会として検討する必要もあると思いますから、なおお力添えする点も相当あると思いますから、内容を一つ提出していただきたいと思います。
#89
○岡田宗司君 ちょっと一、二点お伺いしたいと思います。まあ営繕関係その他についてはやや詳しく御報告になったんだが、公安調査費の要求が本年のものに比べてずいぶん多い。特にそのうちで団体調査経費、これが非常に多額に上っている。調査の科学化経費というのもこれもいわゆる本年の予算に比べると多額のものを要求している。一体その公安調査庁の費用をこういうふうにどんどんとふやして要求していくということは、相当まあ破壊活動が行われているというそういう感がだんだん広がっていくということを前提としなければならないが、唐沢さんは昔は警保局長をやっておったんだから、あるいはそう考えられてこれは大いにふやされるのかもしれないけれども、僕らにすればはなはだこれはおもしろくないことだ。これはなんですよ、政治活動を対象とする取締りなんだね。しかもその団体調査経費、というのは、主としてこれはスパイに対する給与もしくは褒賞なんです。このごろまあ学生の中へスパイを入れてそれに金をやっているとか何とかいうことが暴露されているんです。
 それからその次に科学化経費というのはね、これはまたなんでしょう、プリミティヴなやつだけれども、とにかく盗聴器を備えつけたり、何かする費用を、それをふやそう、あるいはもっと精密なものをふやそうという答弁だろうと思うのだけれども、一体非常におもしろくない経費ですね。こういうものをふやすというのは。私は、こういうものをふやすことを、こういうように大幅にふやすことを要求することは、これは国の治安の問題に対する認識と非常に関係がある。あなたに今これを聞いたってしょうがないのだから聞きませんけれども、しかしこれは私はもう承服できない。そしてさっき言ったように、団体調査とか、それからそれの科学化ということは、みんなそれに関連しているのだとすると、一体法務省というものはそういうものを一生懸命おやりになるつもりなのかどうかを聞いてみなければならぬと思うのだが、まあきょうはそれだけにしておきますが……。
#90
○委員長(青山正一君) 来年度の予算について、ただいま大沢部長から説明がありましたが、御質疑もあろうかと思いますが、次の機会に譲りまして、本日はこの程度で散会いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#91
○委員長(青山正一君) 散会いたします。
   午後四時一分散会
   ――――・――――
ソース: 国立国会図書館
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