くにさくロゴ
1947/12/02 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第67号
姉妹サイト
 
1947/12/02 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第67号

#1
第001回国会 司法委員会 第67号
昭和二十二年十二月二日(火曜日)
    午後四時三十七分開議
 出席委員
   委員長 松永 義雄君
   理事 石川金次郎君 理事 鍛冶 良作君
      池谷 信一君    榊原 千代君
      中村 俊夫君    中村 又一君
      八並 達雄君    山下 春江君
      岡井藤志郎君    花村 四郎君
      明禮輝三郎君    大島 多藏君
 出席國務大臣
        司 法 大 臣 鈴木 義男君
 出席政府委員
        司 法 次 官 佐藤 藤佐君
        司法事務官   奧野 健一君
        司法事務官   岡咲 恕一君
 委員外の出席者
        専門調査員   村  教三君
    ―――――――――――――
本日の會義に付した事件
 國の利害に關係のある訴訟についての最高法務
 總裁の権限等に關する法律案(内閣提出)(第
 一一五號)
 副檢事の任命資格の特例に關する法律案(内閣
 提出)(第一一四號)
    ―――――――――――――
#2
○松永委員長 會義を開きます。
 副檢事の任命資格の特例に關する法律案について審査を進めます。
#3
○鍛冶委員 昨日次官との間に質問をしまして、政府の御趣旨はよくわかつたのでありますが、ここで最も考うべきことは、判檢事が少なくなつたので、その補充をしなければならぬということは、よくわかりまするが、補充をするがために、特別の手段として、こういう特例を設けられるということは、よくよくのことでなかつたら、考うべきことでないと存ずるのであります。そこで根本は、何ゆえに判檢事がこう少くなるのか、この點から考えてもらわぬと、できものができるときに――できたから膏藥をはらなければならぬということはよくわかりまするが、その根本において、どうしてこういうできものができるかということから考えていただくことが、根本だと思われるのであります。辯護士會のごときは、昨年から一年の間に、ほとんど倍になつておる。数百人の人が辯護士なつておる。これは辯護士になればいいと思つておやりになるのかもしれませんが、われわれから考えてみますと、そう辯護士がたくさんになるということは、將來に對して非常に憂慮すべきものではないかと考えられるのであります。まず私は本法を出される前に、それらの點についてお考えを願いたかつたと思いますが、司法大臣はお考えになつたか、そうしてこれを防ぐについては、どうお考えになつておるかを承りたいと思います。
#4
○鈴木國務大臣 その點は十分考えたのであります。しかし辯護士という仕事は、これは典型的な自由職業でありますから、來る者は拒まず、去る者は追わずという形になることはやむを得ない。ただ収入の點おいて、あまりに在朝の法曹と差があり過ぎるということが、わが國において一つの問題であると思うのでありまして、その點については、適當に考えなければならない。實はこういう立案のときに、關系方面ともいろいろ話合いまして、アメリカにおける實情等も調査いたしたのであります。あちらでは、非常に辯護士が多くて、氾濫しておる形で、辯護士というものは収入が少い。大學を出て辯護士になつて十年ぐらい經つても、三千五百ドルぐらいしか年収がない。ところが檢事になれば一萬ドル、判事になれば二萬五千ドルというような収入があるので、爭つて檢事となり判事とならんことを希望する。そこであちらでは選挙に名乘り出て、何とか檢事になりたい、判事になりたいという空氣だそうでありまして、それでこそ初めてよき判事檢事を得られると思います。わが國においても、ぜひゆくゆくはそれに似た状態になりたいと思いますが、わが國はまるで逆でありまして、判檢事をやめて辯護士になるという形をとつております。これは經濟界の現況がしからしめておるのでありまして、これが繼續するならば、國家のためにまことに困ることでありまして、むしろ平静の状態においては、そういう状態を脱出したいと考えておる次第でありまして、そういう意味において、將來辯護士の資格をもつ人が殖えることは、必ずしも憂うべきことでないと考えるのであります。但しそのために悪いことをするようなことがありますならば、これは非常に憂べきことでありますから、そういうことのないように、またできないように、十分適當な措置を講じなければならぬと考えております。今ここで副檢事を採用する程の増加は、そう御心配になるほどではないかろうと考える次第であります。
#5
○鍛冶委員 辯護士の収入のいいからとおつしやいますが、わたしの言うのは、こう辯護士が殖えたのでは、辯護士の収入は、そう多いものではないと思います。これは鈴木さんが辯護士になられたらわかるでしようが、こう多くの人が辯護士になるということは、まつたく憂うべき現象ではないでしようか。そこへもつてきて錚々たる判事から辯護士になつて問題を起こしておる人がたくさんある。實際われわれは涙の出るほど悲しい状態であります。問題はそういうことでなるというよりか、今日の經濟状態では食つていけぬということが大きな問題です。これを解決しないで、副檢事のごときものをやられても、副檢事になつて食えないと思います。ところで今特別任用をせられようとしておる人は、行政官をやつておつた人である。行政官にはいわゆる役得があります。役得というと語弊があるかもしれませんが、民間と直接接濁しておるために、生活の便宜を得られることがたくさんあります。その人がここで副檢事の資格を得られ、さらに三年經と辯護士になれるというので、あこがれてくるのですが、判檢事が食えぬのに、食う途を知つておる人がはいつてきたら恐ろしい結果を生じはしないかと憂うるのでありますが、この點について、司法大臣はいかにお考えのなりましようか。
#6
○鈴木國務大臣 食べられるだけはいかなる場合でもやらなければならぬということを、私も考えておるのでありまして、ただいまのところは、いわゆる千八百圓ペースでやつておるわけでありますが、千八百圓ペースを維持することができないということになれば、さらにこのベースを上げることは當然でありまして、とにかく最小限度において食べられるだけでは上げるという建前で、ことを考えておるつもりであります。さらに判檢事という品格を重んじて仕事をしていかなければならぬ者は、たた食べられるだけでは足らぬのでありますから、そこであらゆる官吏に比して、最も優遇されたものでなければなれぬということが、私の信念でありまして、その意味では、よく閣議などでも、最高の官吏よりも上にするわけにはいかぬといういことを言いますが、イギリスなどでは、わが國の最高裁判所長官にあたる者が總理大臣の十倍に相當する俸給を取るのでありますから、裁判官とか檢事は、普通の官吏に比べて、数倍の俸給を取つてもよいと思います。わが國では官吏という名で、ずつと一色に塗りつぶしてしまつて、その中の一番高いところを優遇しているのでありますけれども、これはあまり感心したことではないと、私は考へておりますが、なかなかこれは裁判官及び檢事だけを一般官吏から引離して、ぐつと高い待遇を與えることは當分の間行われそうもないのであります。そこで官吏の中では、最も優遇されるものにするということだけは、私も努力いたすつもりであります。一部すでに實現されたのであります。すべては判事は一級とするというような御審議を賜わつたために、實現されて、檢事もこれにならわせることになつたのでありますから、公務員給與法が議會を通過いたしますれば、自然ずつと地位が高まるわけでありまして、待遇もよくなるのであります。その程度で當分がまんをしていただく。そのほかの厚生施設等については、われわれがまた心配をする。こういうことでいきたいと考えているのであります。どうかそういう意味で――食べられないじやないかと一言に言つてしまえばやむを得ませんが。この程度で食べられないということでありますると、あらゆる官吏がそうなる。副檢事だけを特に優遇するというわけにもいきません。最小限度の生活を保障するということで出發することだけは、お許しを願わなければならぬと思います。
#7
○鍛冶委員 御趣旨はよくわかりましたが、實際にはそれが行われておりません。待遇をよくするということは、俸給を増すことでありましようが、いかんせん今日の日本の實情は、金をもらつても、金をもらうというだけで、正當に物を得られない時代であります。もつと引詰めて言えば、やみをやらなければ生きていかれない時代です。ところが判檢事はやみをやれない、またやられたらたいへんです。この點に一番大きな問題があるのでありまして、食糧買出しに、判檢事がみずからリュックサックをしよつて出かけるわけにはいきませんし、住宅にいたいましても、どこへ行つても判檢事が轉任するときに一番心配になるのは住宅だと思います。行政官の二級以上の官吏で、住宅に心配している人は、ほとんどなかろうと私は思います。しかるに判檢事だけが住宅に心配している。さらに子供が三人以上おつたら食わせることができぬというこれらの状態が、一番の差迫つた問題なのでありまして、ただ優遇するすると言われても、この問題の解決ができないくては、判檢事になり手はありません。そうしてやめて辯護士になる。辯護士になれば食えるものだと考えられるかもしれませんが、なかなかそうはいかない。これらの點を根本的に改正せられるにあらざれば、ここに一年の間副檢事を特任すると言われるけれども、私は一年經つても二年經つても、日本の經濟が變れば別でありますが、この状態であれば、解決できないのではなかろうか、從つて本法はやむを得ざるものとするならば、今後こういう法律をつくらなくてもやり得るところの自信のある政策を施行していただきたい。こう私は衷心からお願いしたいのでありまして、この點を十分御考慮のほどをお願いいたしたいと思います。
#8
○明禮委員 副檢事に採用される人というのは、どういつた立場の人でありましようか、具體的にどんなのでありましようか、ちよつと伺いたいのであります。
#9
○佐藤(藤)政府委員 檢察廳法の十八条で副檢事選考委員會の選考を經る者は、高等試驗に合格した者、または三年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職にあつた者というふに制限されております。高等試驗に合格した者は、大部分行政科の者は行政官廳に採用なつておりますし、司法科合格者は司法部にはいつておるか、あるいは辯護士の職につかれておりますので、高等試驗に合格した者で、副檢事を希望して副檢事選考委員會の選考を經ようとする者は、ごく少ないだろうと思うのであります。大部分は三年以上二級官吏に奉職した經驗のある者が應募してくるのであります。大體は裁判所または檢事局において二級の書記長として三年以上の經驗を經た者、または行政官廳において、殊に内務省關係において、警視として三年以上の經驗を經た者が應募してくるのであります。また最近は、外地から集つてまいりました領事、副領事等で、三年以上二級官吏を經た者の条件にあたる者が應募してまいります。そのような者は大體においてすでに副檢事として採用し畫くしておりまして、今後副檢事の缺員を補充するためには、どうしてもまだ三年には満たないが、警察において副檢事の選考委員會に應ずるような經驗を經た者とか、あるいは裁判所または檢察廳において優秀な者で、しかも副檢事選考委員會の選考に應募することのできるような學識經驗のある者で、しかも三年の二級官吏はまだ勤めておらないという者に手を延ばさなければ採用しがたいので、ぜひこの三年以上二級管吏というで制限をはずしていただいて、この急場を切抜け、副檢事の採用を十分いたしたいという考えから、立案したのであります。
#10
○明禮委員 私はある人から聞いたのですが、警察の司法主任なんかやつて實務を扱つておるような人が、多少の經驗があるので、そういう所に採用される場合があるのでありましうか、そういうことを聞いたのでありますが……。
#11
○佐藤(藤)政府委員 現在は三年以上二級官吏經驗を經た者に限られておりますので、司法主任を勤めておるような方は、その資格がありません。しかしこの三年以上二級官吏という制限をはずされれば、現に司法主任を勤めておるような者でも、選考に應ずる資格を得ることになるのであります。
#12
○明禮委員 ここに副檢事現在員及び任命有資格調というものがありまして、二十二年十一月二十一日現在第一次に三名、第二次二十名、第三次三名というふうに書いてありますが、これはこういうものが現在あるのでありまいしようか。
#13
○佐藤(藤)政府委員 お手もとに差し上げました副檢事現在員及び任命有資格者調の副檢事現在員という六十七名は、これは十一月二十一日現在ですでに副檢事に採用した人數であります。第二の方は、これから應募するだろうと豫想される二級官吏たる司法部の職員、第三は内務省關係の二級官に在職しておる警視の數でありますが、このほかにも、現在は在職していないが、過去において經驗のある者も、あるいはいくらか應募し得る見込みがあるのではないかというふうに考えております。
#14
○明禮委員 私ども憂えますのは、國家試驗を受けて、どうやらみな今までは檢事のあるいは判事に採用されて、長い間試補の生活をして一人前になつていくのだありますが、もしこれが採用されて――試驗はあるようでありますが、その試驗もよく試補が受けております二囘試驗みたいに、一應檢事をした者なら第二囘試驗を受けるときに及第しない者はほとんどいないだろうと思いますが、あんなふうに、もし副檢事の人が採用されて、どんどん上がつていくとしますならば、これは弊害が全然ないとは言えない場合が起るだろうと思うのであります。大體はいいのかとも思いますが、今まで國家試驗という制度を行つて、一律に司法試驗としてむずかしいとなつているすべてのきめられた科目を全部通過した者が、ようやく檢事あるいは判事になつて、その人が試補として一年半もやつて實務を習つて、そうして第二囘試驗でパスしていくのでありますが、そこの形がもし二級官になるかならぬかぐらいの人々が、初めの國家試驗を受けないで、試補というような形におかれておるということになつて、非常に特典を受けるような氣持ちがする。それからその次に受ける試驗は、試補が受ける第二囘試驗みたいな氣持に考えられますと、非常な特典があるわけでありますが、これがもし弊害が起こるということでありますれば、あるいは國家試驗を受けるのはばかだ。今のように勤めておつて順々に上つていく方がいいということになると、非常に質を落とすと同時に、それがためにいろいろな弊害が起き、しかも辯護士道、判事道、檢事道というような意味におきまして、將來非常にをその格が下がるということの憂えなきを保しないのでありますが、この點に對する當局の御意見を承りたい。
#15
○佐藤(藤)政府委員 ただいま仰せのような御心配はごもつともでございますので、檢察官特別考試令という政令をすでに設けまして、これに基づいて三年以上副檢事の經驗を經た者が試驗を受けることになりますが、その試驗はただいま仰せのような、從來の司法官試補に對するいわゆる第二囘試驗とは全然異りまして、その内容は現在の高等試驗とはほとんど變りはないのであります。内閣總理大臣のもとに行われる、いわゆる國家試驗でありますし、相當勉強しなければいかに實務に堪能であつても、この國家試驗に合格することはなかなかむずかしいだろうと思われるのであります。副檢事を三年やつたから、あるいは五年やつたからといつて、必ずしもこれに合格するとは限らないのでありまして、將來この國家試驗はできるだけ厳重に慎重に行いまして、御心配のような點のないように、正規に採用された檢事と、特別選考によつて採用せられた檢事と間に径庭のないように、十分厳重な考試をしたいと考えております。
#16
○明禮委員 わかりました。
#17
○松永委員長 本案の討論に移ります。石川金次郎君。
#18
○石川委員 社會黨を代表いたしまして、本案に對する意見を申し上げます。區檢察廳における檢察官の充實をはかるためには必要やむを得ない處置と考えますので、政府提出の原案に對しまして贊成をいたします。
#19
○松永委員長 中村又一君。
#20
○中村(又)委員 民主黨を代表いたしまして、副檢事の任命資格の特例に關する法律案は、原案通りに贊成をいたします。
#21
○松永委員長 鍛冶良作君。
#22
○鍛冶委員 私は精神といたしましては、はなはだ本案ごときものをつくらねばならぬことを遺憾といたします、けれども現状においてやむを得ないとすれば、これで贊成するほかはなかろうと考えますが、ただ先ほど來申し上げましたように、今後において、かようなものを要せないような司法制度の確立をお願いいたしたいと思います。それから先ほど明禮君が言われたように、こういう試驗でやつた方が樂だというので、こういうところに流れこんで來ないように、試驗を厳格にやられること、この二つの希望を申し述べまして、本案に贊成いたしておきます。
#23
○松永委員長 大島多藏君
#24
○大島(多)委員 本法案は副檢事を急速に充足する必要があることから起りましたやむを得ざる法案と思います。しかしながら、それがためにもしもこの採用にあたりまして當を得ないということがあれば、國家の檢察事務に關しまして、重大な支障を來しばしまいかとういことを、私は心配する次第であります。そういうことがないように、政府におきましては、採用にあたりまして、慎重考慮をなさつて、善處なされることを希望しつつ、私は國民協同黨を代表いたしまして、政府原案に贊成いたす次第であります。
#25
○松永委員長 討論は終了しました。これより採決をいたします。本案について原案に贊成の諸君は御起立を願います。
    〔贊成者起立〕
#26
○松永委員長 起立總員。よつて本案は全會一致をもつて原案通り可決せられました。
    ―――――――――――――
#27
○松永委員長 次に、國の利害に關係のある訴訟についての最高法務總裁の權限等に關する法律案を議題といたします。本案に對し明禮輝三郎委員より修正案が提出されております。提案者の説明を求めます。明禮輝三郎君。
#28
○明禮委員 國の利害に關係ある訴訟についての最高法務總裁の權限等に關する法律案の一部を次のように修正する。第四條中「自ら意見を述べ、又は」というのを、これだけ削らんとするものであります。修正をいたします理由は、裁判の公平あるいは裁判の權威のため、あるいは裁判のある意味における干渉等に訴えて、裁判所の許可を得るといたします場合においては、最高法務總裁みずからが法廷に出頭して國の利害または公共の福祉に重大な影響がある理由についての意見を述べられることは、ややもすると、ただいま申しました裁判の公平獨立にあるいは干渉になる場合もありと憂えますがゆえに、かく修正をいたす次第であります。
#29
○松永委員長 それでは本察を討論に付します。石川金次郎君。
#30
○石川委員 社會黨を代表いたしまして意見を申し上げます。ただいま明禮委員から提出せられました修正案に對しまして反對いたします。修正案提出の御理由をお伺いいたしましたが、その御見解に對しましては、私たちは別の見解をとるものであります。本案はさきに可決せられました最高法務廳設置法案の精神を活かすためには必要な法案でありますので、原案に贊成する次第であります。
#31
○松永委員長 中村又一君。
#32
○中村(又)委員 民主黨を代表いたしまして、ただいま明禮君の提案に係ります修正案に對しては反對の意見を表明するものであります。しこうして原案に贊成いたします。
#33
○松永委員長 鍛冶良作君。
#34
○鍛冶委員 私は明禮君の修正案に贊成いたします。修正案に反對の方々の理由は、遺憾ながら承ることはできません。ただ精神上とか何とかいうことですが、われわれはそんな意味で言うておるのではないのであります。あまり、長く言うことを避けますが、第一國の利害または公共の福祉に重大な關係のある訴訟というものがいかなるものであるか、政府委員の説明を求めましても、その限界ははつきりいたしておりません。殊にわれわれの考えられるのは、將來多く出るであろうところの國家賠償法については、すべてこの條文が適用されるのではないかと思われるのであります。あの法律について、原告側に立證責任をもたせるということについても、われわれは非常に反對したのであります。さらに裁判所に對して最高法務廳總裁ともあろうものが意見を述べられることになりますと、せつかくあの法律でできました國民の權利を尊重するということに重大なる影響があるのでなかろうかという憂いを國民に植えつけると思います。それから裁判所の許可を得てというのだからよいではないかと言われるのであります。もつとも最高法務總裁というものは、行政官であつて、司法官ではないとは言いますけれども、同法律にはもつたいぶつて國の最高顧問だなどという前代未聞の言葉を使つてある。そういう法律上の最高顧問だというものが、裁判所に來てやられるということになると、われわれは裁判官の氣質等を知つておりますから、そんなものが來だつてどうでもよいということも考えられないでもありませんが、一般國民に與える感情というものは、實に偉大なる影響があると思うのでありまして、願わくは本條を削除してもらいたい。これがなくても、いくらでも國家としての意志表示の方法はあるわけであります。こういうもののない方が一番よいのでありますから、昨日來いろいろお話の結果、明禮君の修正のごときものにすれば、折衷案としてよいのではないかと云つてわれわれは出したのであります。それにもかかわらず、理由を承ることを得ずして、ただそれには反對だと言われることは、まことに遺憾千萬だと心得ます。殊に法律家であられる委員方におかれては、私のこの説明は十分おわかりのことと思いますから、とくと御遠慮の上、明禮君の修正案に贊成せられんことを希望いたします。
#35
○松永委員長 大島多藏君。
#36
○大島(多)委員 本案は、先ほど明禮君から修正意見が出ました第四條を除きましては、ほとんど議論の余地のないところと思うのであります。この四條につきまして、最高法務總裁は國の利害または公共の福祉に重大な關係のある訴訟において、裁判所において意見を述べるということは、これは裁判の公正を期する上からも、司法權の獨立という點からも、贊成ができないというような見地から、修正をもち出されたように思いますが、私はこれに對して、違う意見をもつておる次第であります。と申しますのは、政府の法律の最高顧問であるところの最高法務總裁が、一國の利害に重大な關係を有し、公共の福祉に非常に重大なる關係をもつておる訴訟について、意見を述べるということは、むしろ國家のために望ましいことだと私は考えるわけであります。そしてまたそういうことを認めてやつても、それがために私は弊害が起ろうとは考えられない次第であります。
 簡単でありますが、以上が明禮君の修正意見に對しまして贊成できない理由であります。従つて政府原案に私は贊成をいたす次第であります。
#37
○松永委員長 討論は終局いたしました。これより採決いたします。
 まず明禮委員提案の修正案について採決いたします。提案のごとく修正するに贊成の諸君の御起立を願います。
    〔贊成者起立〕
#38
○松永委員長 起立少數。よつて本修正案は少數をもつて否決せられました。
 次に原案について採決いたします。本案について原案に贊成の諸君の御起立を願います。
    〔贊成者起立〕
#39
○松永委員長 起立多數。よつて本案は多數をもつて原案の通り可決せられました。
    〔拍手〕
#40
○松永委員長 なお本日採決いたしました兩案についての委員會報告書の作成方は、委員長に御一任願いたいと存じます。
 本日はこれにて散會いたします。明日は午後一時より開會いたします。
   午後五時十八分散會
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト