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1957/11/12 第27回国会 参議院 参議院会議録情報 第027回国会 外務委員会 第6号
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1957/11/12 第27回国会 参議院

参議院会議録情報 第027回国会 外務委員会 第6号

#1
第027回国会 外務委員会 第6号
昭和三十二年十一月十二日(火曜日)
   午前十時三十二分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     寺本 広作君
   理事
           井上 清一君
           鶴見 祐輔君
           曾祢  益君
           佐藤 尚武君
   委員
           井野 碩哉君
           鹿島守之助君
           黒川 武雄君
           笹森 順造君
           加藤シヅエ君
           竹中 勝男君
           森 元治郎君
           吉田 法晴君
           石黒 忠篤君
  国務大臣
   内閣総理大臣  岸  信介君
   厚 生 大 臣 堀木 鎌三君
  政府委員
   外務政務次官  松本 瀧藏君
   外務省経済局長 牛場 信彦君
   外務省条約局長 高橋 通敏君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       渡邊 信雄君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際情勢等に関する調査の件
 (国際情勢に関する件)
○通商に関する日本国とオーストラリ
 ア連邦との間の協定の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(寺本広作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 本日は最初に国際情勢等に関する調査を議題とし、最近の外交関係諸問題について岸内閣総理大臣に対し、質疑を行うことといたします。
 御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
#3
○鶴見祐輔君 私は総理大臣が先般アメリカにおいでになって後の日米新関係についてお尋ねをいたしたいのであります。
 その第一点としては、まず中共と日本との貿易協定の関係からお話を伺いたいのでありますが、今回日中貿易交渉が一時中止になったということは、国民の遺憾とするところであります。その原因は一体どこにあったか、代表部の人数の問題とか、あるいは指紋の問題とかというような事務的なことが原因になって中止になったのか、あるいはもっと根本的な意見の食い違いがあって中止になったのか、また明年は再開になるということが新聞では伝えられておりますけれども、将来の見通しは一体どんなものか、これを総理大臣からまずお伺いいたしたいのであります。
#4
○国務大臣(岸信介君) 中共との貿易関係については、御承知のように民間で三次まで協定をし、過般来代表団が行きまして、第四次の協定に入ったのであります。いろいろ私、代表団が帰ってきてから詳しいまだ一々のことを検討いたしておりませんけれども、私の大体の報告を聞いたところによりますと、貿易の内容等に関する問題に関しましては、大体両者の意見が一致したけれども、一番最後に代表部の設置に伴ういろいろな関係、特に今お上げになりました指紋を取る、人数等についての両方の意見というものが食い違ったことが、最後において妥結を見なかった大きな支障のように思います。いろいろこの交渉に当ります前に、岸内閣の外交方針が中共に対して友好的でないというふうなことも宣伝されておりまして、そういうことが支障になったように一部の人たちは言っておりますけれども、代表団の私の聞いた報告においては、問題はそうじゃなしに、むしろ技術的な問題のために今回の最後の妥結ができなかったということであります。またこれの問題に関して、それじゃ今後どうするかという問題につきましては、実は外国人登録令の規定そのものにつきましても、いろいろの情勢を考えまして改正の必要ありやいなや、また改正すればどういうふうに改正するかというふうな点に関しまして、検討をいたしております。衆議院におきましては、社会党と自民党とが共同して、これが修正案を提案するというふうな機運も動いております。政府としてもこれが改正の要否及び改正の点等につきまして、検討をさせております。従いまして、技術的の問題である限りにおいては、私は少し時日をおいてそういう問題が解決されれば、自然貿易協定もできるものと考えます。私の考えではぜひ貿易に対しては、これを促進するという従来からのこれらの方針に従って、これを推進したいとかように思っております。
#5
○鶴見祐輔君 再開の時期はまだおわかりになりませんか。
#6
○国務大臣(岸信介君) まだそれははっきりいたしません。
#7
○鶴見祐輔君 それではこの日中間の問題は、ただいま総理のお話のように、貿易の技術的な点で支障を来したのであって、根本的な点においては食い違いはない、こういう御説明でありました。まことにそれはけっこうであると思いますが、しかし私は直接貿易関係に密接したということでなくても、日中の関係については非常に基本的な問題が残っておると思うのであります。その点についてお尋ねをしたいのでありますが、先般総理はアメリカへおいでになって、お帰りになってから日米共同声明をお出しになっておる。その中に国際間にある緊張関係の緩和ということを別にお話になっておらないのですが、しかしそれは日米間においてはもちろんお話し合いがあったことと思うのであります。これは総理がしばしば日本の外交政策の大綱は平和維持ということだということを言っておられるのでありますから、だから緊張を緩和するということが具体的な平和維持の方法でありますから、日米の間にこの話があったものと思います。それを一つ御説明を願いたいと思います。
#8
○国務大臣(岸信介君) われわれは日本の外交の基本方針として平和外交を進めるということを大きな眼目に言っております。しこうして私はあらゆる点からこの平和の確立ということはわれわれとして努力しなきゃならない大きな目的であると思っております。しこうして世界の平和に対する一つの脅威といいますか不安というものは、東西の勢力が対立してその間におけるところの緊張が世界の不安の基礎になっておるのですから、これを緩和するということが大きな目標でなければならない。従来アメリカは御承知の通り世界の平和の何に対しまして、いわゆる力のバランスといいますか、力の優越というかこれによって世界の平和が保てるというような意見を持っており、そうしてまた現実に世界の情勢はそういうような様相を呈しております。しかし何といってもこれを緩和するということが私は基本でなきゃならない。特にその平和に対する脅威の一つとしていわゆる原水爆の問題が大きな一つの何になっておる。あるいは軍縮の問題というような大きな問題がある。これらについてやはり国際的に一つの協定ができて、そういう原水爆の問題やあるいは軍縮の問題というものが解決されていくことが、その緊張を緩和する大きな一つの目標になるのじゃないかと考えておるわけであります。そういうことに対しましては、日米の会談の際にも出ましたし、日米共同宣言の中にもこのことにふれての見解を述べております。なお私はその考え方に基いて国連におけるところの、国の方針としてのいろいろの国連活動もその線によってやっていくというつもりでおります。アメリカとの間におきましても、私は今までとっておるアメリカなり、世界のいわゆる力の関係における平和ということであれば、どうしたってその緊張というものは緩和しないという点にふれて話はしたわけであります。
#9
○鶴見祐輔君 その問題についてお伺いしたいこともありますが、時間の関係もございますから、私、具体的の問題について緊張緩和のことをお尋ねしたいと思うのであります。
 日本の平和維持にとって一番具体的な危険な様相を持っているのは、台湾海峡における緊張関係だと思うのであります。ただいま世界の眼はトルコとシリアの緊張関係に集まっておりますけれども、台湾海峡の問題は潜在的にいつまた緊張関係が表へ出てくるかわからぬといったような情勢にあるのであります。それは国府と中共政府の通常でない、一種の異常な関係があるからだと思うのであります。ところがこの台湾の緊張関係がなぜ日本にそのように影響を具体的に持つかというと、日米安保条約の第一条におきまして、「この軍隊」すなわちアメリカの軍隊です。「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与」するために使用することができる。「極東における」という非常な広い範囲を書いております。言いかえれば日本に駐留しているアメリカの軍隊を、非常に広い範囲で使用することを、日本政府が承諾しているという点であります。従って台湾海峡で事件が発生すれば、日本の基地は、戦闘に使用されて、従って日本は間接にこれに介入するということになります。日本の自衛隊は海外に出動しなくても、日本は基地供与という点で広範な、総体的な防衛義務を担っていると思うのであります。従って総理大臣が先ほどるるお述べになりましたような、この世界の平和を維持し、日本の平和を維持するということに、一番具体的な関係を持っているのは、この台湾海峡の緊張関係だと思うのであります。のみならずこれは日本人の生存に関係するような重大な因子を持っているのみならず、日米関係調整の上においても、私は非常に大きな意味を持っていると思うのであります。また日本と中共とのもろもろの問題の解決にも、結局はこの緊張関係というものは左右してくる、かように思うのであります。そこでこの台湾海峡の重要性ということを首相はどういうふうにお考えになっているか、これをまずお尋ねをいたしておきたいのであります。
#10
○国務大臣(岸信介君) 御指摘のように台湾海峡の問題は、極東における非常な緊張の一つの事態であり、それが同時に日本の安全保障という点につきましても、非常な重大な意義を持っていることば御指摘の通りであります。現在御承知のように、台湾における中華民国政府も中国全土におけるところの主権を主張しております。また中華人民共和国の方においても台湾を含めた全土におけるところの主権を主張しておる。この両方の見解というものは真正面から衝突をいたしておる。しこうして現実の何から申しますと、国民政府は国連においての一員として代表権を持って、そうしてしかも安保理事会の常任理事国の一つであるという重要な地位にあるわけであります。しこうして中華人民共和国の方は国連においてはこれを加入を認めない。またかっての朝鮮と韓国との間の朝鮮半島における事件に関して、当時国連が議決した、その議決がまあ取り上げられずにいるというような状況でありまして、この根本の要するに中国におけるこの関係というものが何らか調整されない限り、この緊張というものはなかなか解決できない問題であります。ところがそれじゃその解決についてどういうふうな方法をとるかという問題に関しましては、まだ国際的にもまた中国内部の国内的におきましても、これが解決の方向が示されておらないと思う。先ほど申したように、面政府がおのおの主権を主張し、しこうして国連自身が今申しましたような従来の態度でおります限り、この問題は私まだ未解決だと思うのです。中国大陸自体におけるところの中華人民共和国の支配というものも、相当長きにわたっておりいろいろな建設も行われているという状態でありますし、また台湾におけるところの中華民国政府も依然として一つの力を持って、国際的な活動をしているという状況でありまして、また国際的の各国のこれに対する態度というものも、それぞれ中華人民共和国を承認している国もありますし、あるいは承認しない国もある。しかも承認していると承認せぬとにかかわらず、国連においては今申したような何において、これらの問題を調整するということがこれからの日本の一つの大きな使命であり、特に安保理事会の非常任理事国に日本が選ばれたということから私は見ましても、この問題は非常にむずかしい困難な問題を幾多含んでおりますけれども、この問題に関して今後日本としては、真剣にこれが調整解決の方途を考えて、そして国際的協力を求めていくということが大きな外交の問題であると、私はかように考えております。
#11
○鶴見祐輔君 ただいまの総理大臣の御説明で、従来総理大臣の方々の委員会、本会議等で御説明になったように、御決意を発表しておられると思って非常に満足するのでありますが、それは台湾の緊張関係というものをこのままにしておいてはいけない、困難な問題ではあるけれども、一つの決意をもってこれらの解決をはかりたい、こういうお話であります。
 そこで私は具体的にそれではお伺いしてみたいのです。これに対するいろいろな方法があると思いますが、一つは日米安保条約を改正いたしまして、あの冒頭の「極東に」という字を改正するということにいたせば、日本が条約上当然台湾海峡の問題に引き込まれるということではなくなるというような観点もございます。しかしそれを私は今こまかくここで論じようと思いませんが、それが一つ。
 それからいま一つは、私もさらにそれより悪くなるという心配をもちますのは、最近のイギリスの総理大臣とアメリカの大統領との会見の結果、英米は非常な決心をもって世界に対するところのソ連対策を変えていこうというつもりのようであります。そういたしますと、ただいまは北大西洋機構だけの問題に具体的に入っておるようでありますけれども、行く行くはあるいはバクダード条約やSEATO条約、あるいはもっと新しい条約を方々で結んで、そして東西両陣営の対策をはっきりしていこうという考えをもっておるようでありますが、そうすればまた日本に対しては、今日の安保条約以上な積極的な、進んだ要求が出てこないともいえないというような様相もあると思うのであります。そこで私は日本と中共との貿易協定の一時的頓挫ということが、単に技術的な問題ではないと私は思っておるのであります。そのうしろに非常に基本的な問題があるから、日本と中共との問題の解決がなかなかむずかしい。こう思うのでありますが、そこで今、総理大臣から、台湾と本土との間の緊張関係の御説明がございましたが、一体どうしてこういう緊張関係が出てきたかといえば、これは具体的には台湾政府の方では本土に進攻する、こういうことを始終言っておった。また中共政府の方では台湾を武力的にでも解放する。こういうことを両方で言っておりましたから、従って非常な緊張関係を生じて、現に実際上の武力も使用されておる。ところがその二つの国だけの関係ではなくして、実はその背後にアメリカの政策があると思うのであります。アメリカは一時は台湾海峡の問題に対しては、非常に強硬な態度をとっておったと思うのであります。ところがその時分が一番緊張関係の危なかった時代でありますが、最近に至ってこれがだんだんと緩和されておるような形勢をみる。なぜかといえば一方におきましては、たとえば中共側においても、最近は武力解放ということを言わなくなってきた。周恩来首相が台湾自治論というものを話したということが、朝日新聞の十一月一日に香港電報として出ておりましたが、これは一体どういう意味の自治論か私どもにはわかりませんが、とにかく武力進攻、武力解決ということでないような考えを出したということが一つの変化だと思います。また台湾政府の方におきましても、最近は本土進攻ということをあまり言わなくなってきた。これは緊急関係が非常に緩和しつつあると思うのであります。ところがその背後にあるアメリカの態度は一体どうかということを検討してみますと、ウォルター・リップマンのように初めからアメリカの台湾政策には無理がある、これを変えなければならぬという議論をする人もあり、またアメリカの政治家の中でもそういう意見をもっておる人がだいぶあると思うのです。ところが最近のワシントンからの電報によりますと、国務長官のダレス氏は、この点については今までの政策は変ってない、というふうに書いております。そこで私ども感じますことば、アメリカの共産主義陣営に対する態度は、中共に対する態度の方がソ連に対する態度よりも非常に厳格であって、融通性がないというふうに私どもには考えられるのであります。従ってこれを背景としておる今日の日本としては、中共との関係を基本的にだんだんと正常関係にするということは、非常にむずかしいという事実があると思うのであります。総理大臣はアメリカからお帰りになってから、日米の新関係が生じたということをしばしば言っておられます。これはどういうわけかと言われると、それに答えられて、今や平等と独立の立場で話し合うことができるようになったのだ、こういうことを言っておられるのであります。それでは台湾海峡のような日本にまことに致命的な重大な関係のある問題についても、総理大臣は米国と平等に話し合って、数年前と今日との事実あるいは事情の相違を基礎として、アメリカ側においてもっと新しい融通性のある態度をとるようにこれを説得することのお考えはないか。私がこういうことを申し上げますのは、そうすることが日本のためであり、アメリカのためでもあると思うのであります。日米関係をほんとうに正常にいたしまして、これを明朗のものにいたしますためには、こういう懸案について日本が総理の言われるように、歯にきぬ着せず、平等な立場で話し合うという時期に日本はだんだんと到着しておるのじゃないか。日米安全保障条約のできました当時の事情を伺ってみても、平和条約と同時にあの条約ができました関係上、日本においても平等なことを主張することができないいろいろの事情があったと思います。しかるに事情はだんだんと変化しておる。世界の情勢も変化しておる。ゆえに私はこの際総理大臣が、この日本という新しい回復をした国の力を、あるいは世論を背景とされて、日米関係を基本的に調整されるために、この緊張関係について新しい話し合いをされることも必要ではないかと思うのであります。というのは、今度中共との貿易の問題がうまくいかなかったことも、結局はアメリカに対する遠慮からきておるのじゃないかというような疑問が国民の間にあります。そういうことを払拭する意味からいっても、この問題を取り上げて、一時にはいかないにいたしましても、基本的に解決するという意図をもって御交渉になるときがきておるのじゃないかと思うのであります。台湾海峡の具体的な緊張緩和に関する方途は私はいろいろあると思うのであります。これは総理大臣としても公けの席上でお話はできぬでありましょうが、私はこれは困難であるからといってこのままにしておくというのではなくて、具体的方途はいろいろあると思うのでありますが、この点についてはまず米国の理解を促進するために、総理大臣がお帰りになってから言われたように、日本としてはアジアとアメリカとのかけ橋になりたいということを言っておられます。これは明治維新以来日本の長い国民的の一つの眼目であって、東西文明を融合したいといっておるその一つであると思うのであります。その一つの目標を国民に示すという意味におきましても、この具体的な台湾海峡の緊張関係緩和のためにアメリカを説得いたしまして、そうしてアメリカの態度をもう少し融通性のあるものにするというような方途をお考えになることはできないか、ということを私は具体的にお伺いしておきたいのであります。
#12
○国務大臣(岸信介君) 私は日米の関係を、日本が独立の両方が平等の立場で、これからすべての問題を話し合い解決していくという基礎の了解を、過般の訪米によって十分話し合ったつもりでございます。その一つの大きなアイテムを今鶴見委員が御指摘になりました。要するにアジアの問題に関しましてアジアの一国として、非常に密接な利害関係や各種の密接な関係を持っておると同時に、われわれはアジアの問題に関しては、少くとも長い経験と長い歴史の間におきましては、今日から反省してみて幾多の失敗もあります、またお互いに共通の心理の上に立って物事を話し合うという点において、他の西欧の国々よりも日本が恵まれておるいろんな点もあると思います。そういう意味において特にアジア問題については、少くとも日本は今後今までよりも積極的に一つの考え、われわれの長い経験なりあるいはわれわれの共通の心理的なものの考え方というようなものに基いて、公正妥当な一つの案をもって、そうして大きく言えば国連におけるところのわれわれの活動の中心をなして、このアジアの繁栄と進歩を通じて平和を作り上げていくという必要があると思うし、特に日米の関係におきましては、それは二面において日本の利益であり、また御指摘になりましたようなアメリカのためにもなる、さらに大きく言えばアジア全体のためであり、世界平和のためである。こういう意味からこのアジア問題に関して日本としては、少くとも今後、より積極的な発言をし活動をすべきものである、こう根本においては考えております。アメリカと日本との独立自主という立場における、対等の立場でものが言えるという一番大きな問題は、アジア問題だと思います。経済問題その他について幾ら平等といいましても、国力の違う点その他もでございますけれども、少くともアジア問題については、それだけの覚悟と従ってそれだけの研究なり勉強をして、今後そういう行動に出たい。その一つの大きな問題は要するに中国問題だと思うのです。今具体的にどういうふうにこれを解決するということは、今私も多少の考えを持っておりますけれども、さらに研究いたしまして極東の平和のためにさらに積極的に努力をしたい、その必要に応じてアメリカ自身と話し合うことも、理解を深めることも必要でありましょうし、また国際的な一つの機運を作っていくことも必要でありましょうし、またわれわれと同じ考えを持っておる人々とともに、そのことを推し進めるということも必要でありましょうし、あらゆる面において外交をそういう方向に今後発展させるということは日本の務めである、かように思っております。
#13
○鶴見祐輔君 ごく簡単に結論を一つ。その御決意のほどはそれでわかりましたが、私も抽象的にお伺いしておるのでありますが、私のお伺いしておる根本は、アメリカは世論の変化する国でありますから、今日のダレス長官の意見がいつまでも続くとは思わない。これに対して日本側において、政府として非常な決断をもって今から案を立てておいて、日本国民にもそれをよく理解してもらって、新しい日米関係をお打ち立てになる時期であると思ってお尋ねいたしたのであります。
#14
○委員長(寺本広作君) よろしゅうございますか。
#15
○鶴見祐輔君 終りました。
#16
○委員長(寺本広作君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#17
○委員長(寺本広作君) 速記を起して下さい。
#18
○竹中勝男君 厚生大臣が来ておられますのでまず厚生大臣にお伺いしたいのですが、順序を変えて総理にお伺いした上で厚生大臣にお伺いいたしたいと思います。
 すでに日本人の戦犯が釈放されてその帰国を天津において、五カ月近くも待っておるのですが、これに対して今日まで政府がこれを引き取りに行くところの船を出していない。こういう事実は国民がひとしくこれを非常に遺憾としておるところでありますが、総理においてはなぜこれがこんなに、同胞の戦犯が釈放されていながら数労力もそれを放任しておかなければならなかったのか、またそれに対してどういうようにその釈放された戦犯を引き取りに行くところの船を考えておられるかをまずお伺いしたいのです。これはちょっと総理に。
#19
○国務大臣(堀木鎌三君) 事実問題ですから、私から……
#20
○竹中勝男君 それはなぜ日本政府として今日までそれを放任されておったか、そういう事態は国民が非常に疑問を持っておる。総理から一応お答え願いたい。
#21
○国務大臣(岸信介君) 政府は決してこれを放置しておいたわけではございませんで、いろいろな点から、鋭意これが早く帰れるように政府としては努力いたしておったわけであります。その具体的の内容につきましては厚生大臣から一つお答えすることにいたします。
#22
○国務大臣(堀木鎌三君) 先方から戦犯八名が釈放されたから、これを引き取りに来てもらいたいという通報がありました。私どもとしては戦犯八名を直ちに引き取るべく、運輸省の練習船を差し向けても早く引き取りたいという考え方で、三団体を通じまして先方と相談をいたしましたわけでございます。ところがそれに対しまして、私どもの考え方では、その戦犯八名の問題にほかの問題がからむために、先方の快い返事を受けることができません。三団体を通じて中国の紅十字会と交渉してもらいたいということを申し上げたのであります。その点について三団体がいまだ納得される状態になっておりませんために、非常に残念なことには、じんぜん今日に至っておるような次第でございます。
#23
○竹中勝男君 それでは政府は八名の戦犯を引き取る問題、また日本の三団体が中国と協約を結んでおる一般帰国者、里帰り、それがまだ今天津に帰国を待っておる、これに対してはどういうように対処するお考えですか。
#24
○国務大臣(堀木鎌三君) これはむしろ竹中委員もよく御承知だと思うのでありますが、私どもとしては戦犯八名の人数は知っておるわけであります。一般帰国者につきましては私どもも、いかなる都合をしてもこれを引き取りたい。従いましてこれらの数がわかりますれば、それに応じて配船その他を考慮いたしたいという考え方であります。ただいわゆる里帰りにつきましては、御承知の通りに三団体と私どもの間に意見の相違があります。一方いわゆる里帰りにつきましては私どもとしては、まだ三団体との間に交渉の余地があるというふうな状況でありますが、戦犯八名及び一般帰国者の数がはっきりいたしますれば、これに対して私どもは配船を講じたいということは、初めから三団体に対して申し上げておるような次第でございます。
#25
○竹中勝男君 それでは三団体に対して、一般帰国者がどれくらいあるかを問い合せてくれ、ということを政府当局からは交渉されましたか。
#26
○国務大臣(堀木鎌三君) これは三団体の方も十分御了承になっておることでございまして、一般帰国者に対して私どもは配船するということを決心すれば、それらについても紅十字会との間に配慮するということは、私どもと三団体の間に了承しておる事項でございます。
#27
○竹中勝男君 開くところによると三団体はまだ、政府から配船をするから一般帰国者がどれくらいあるかを尋ねてくれ、という申し入れは受けていないと聞いておりますが、どうですか。
#28
○国務大臣(堀木鎌三君) 私前後二回の三団体の方々との交渉を通じまして、その意については光力も御了承である、ことに三団体の間でいろいろとこの問題につきましては御相談があってできておるわけです。いろいろと論議をされたわけでございます、御承知の通り。従いましてこちらの意向は十分御承知のはずである、こう私は考えております。
#29
○竹中勝男君 それでは政府は、厚生大臣は三団体に対して、一般帰国者がどれくらいあるかを問い合してくれ、と要求されたと解釈してよろしいですか。
#30
○国務大臣(堀木鎌三君) こちらの今申し上げました意向は三団体の方で十分御了承になっておるはずであります。その点は私どもも間迷いなく言えるだろうと思います。三団体の間でいろいろ論議をされておりますときに、問題に上りましたのは一般、里帰りだけでございます。
#31
○竹中勝男君 その一般、里帰りなのですが、里帰りというのは二種類のものがあります、日僑と、華僑とあります。日僑に関しては政府は里帰りを認めておるわけなんです。三団体も当局も最初の里帰りというものについては、これは一般帰国者に準ずるものとして、すでにその帰りの旅費までも保証するという条件をつけてこれを認めておるのですが、従って一般帰国者及び最初の里帰りというものについては、同時に三団体がその数を問い合すということになるわけですが、その点もお認めになりますか。
#32
○国務大臣(堀木鎌三君) これも竹中委員がよく御承知だと私考えておるのでありますが、要するに戦犯と一般引揚者は私どもの方で何といたしても引き取る当然の義務がある。で、私どもはそれに対して万難を排して配船をするということは当初からの方針でございます。しかしながら里帰りにつきましてはただいまお話のように、実は運賃片道という問題は、むしろ衆議院にあります引揚特別対策委員長の廣瀬氏の一つの案として、片道運賃を持つことで各党と円満に話し合いができないであろうか、そして三団体に御了承方を願おうではないかというふうな提案が行われたわけであります。しかしながら里帰りについて私どもが配船をするという方針につきましては、私どもとしては持っていないわけでございます。で、戦犯と一般引揚者に対しては配船する。しかしながらいわゆる最初の里帰りにつきましては、これは当初からいわゆる廣瀬試案なるものが出ます前から、私は実際生活上お困りの方に、運賃がないためにお帰りになることができないというふうな要請に対しては、非常に私どもとして配慮いたしたいということが、原則的に一つの方針として廣瀬試案として出されたわけであります。運貸問題は今おっしゃいました通りでありますが、これを一般引揚者と同等に扱わないで、中共との間に便船もあることですから、お帰りを願うならお帰りを願う。その際に内地から御帰国なさるときに運賃がないというふうな場合には、これは政府として考えましょうということに相なっておるのでありますが、問題の要点は、要するにこれに特別の配船を考慮するかしないかという問題が、一般引揚者及び戦犯と異なる点であります。またその点が三団体とわれわれの見解の相違の点でございます。そういう点が解決いたしません。いろいろな問題の解決に当って参りましたが、それらの問題が未定のために三団体としては結局のところ、まだ今後に交渉の余地を残したいという御意向があるようでございます。そういう点で戦犯及び一般引揚者まで引き取りにくい状態にあるということは、まことに残念なことでございます。
#33
○竹中勝男君 時間の制限がありますので詳しく質疑応答ができませんので残念ですけれども、しかしながらすでにこういう長い期間にわたって同一の問題が未解決のまま今日に、まだ五月に帰った里帰りも華僑も寒さに向ってどうなるんだろうという不安を持って、国内に千数百人の人が今おるということは、大きな問題だと思うのです。里帰りについてはすでに配船の準備もできておるようですが、同時に華僑については四百数十名の人が日本にほったらかしにされておる、自分の国に帰れない、鳥流しにあったというような形で、それらの人たちは便船を利用してくれというような形でおくということは、これは大きな問題だと私は思います。すみやかに一つ戦犯及び一般帰国者を迎えにいく配船を急速に決定していただきたい。そしてしかもそれについては五十人くらいか乗れいなという船でなくて、相当の人数が乗れる船の配船をすみやかに一つ決定していただかなければ、この不安な状態は解消しないと思いますので、これは強く希望をいたしておきます。
 それに関連することですが、このような日中の国交及び人道上の問題、あるいは経済的な問題というものが行き詰っておるということが、この第四次貿易協定についてもこれが根本なんです。こういう日本の政府の態度があり、それの背後になるところのアメリカとの関係があるということを向うが敏感に察しておるがゆえに成立しない。第四次協定の交渉は、先ほど鶴見委員の質問あるいは与党としての意見の中にもあった通り、これの成立しないことは、ただ単なる技術の問題、団の構成の問題ではなくて、実はその根本に貿易の再開、貿易の拡大を望んでおる政府が、それがやれないというところに大きな根本問題があるということははっきりしておるわけであります。総理にお尋ねしたいのですが、日米の会談において日中の国交回復問題についてどのように触れられたのですか。すなわち岸総理が当初はっきりしておられたように、貿易や文化の交流、人道問題の交流はやるけれども、国交回復はやらないという線を今も人工衛星が上って共産主義国家群というものが相当強力な、国交の中で新らしい位置を持ち初め、そしてアメリカにおいても中共の承認の世論が高まってきつつある今日、依然として岸総理は日中の国交回復はやらないという態度をとられるのか、あるいは情勢を判断しておられるのか。そういう態度が結局第四次貿易協定の締結に対する一つの障害あるいはそれが促進になると思いますので、岸総理のお考えをあらためてお伺いしたい。
#34
○国務大臣(岸信介君) この問題につきましては本国会におきましても委員会等において御質問がございまして、私の考え方は申し上げておるわけであります。私は現在の状況においては、かねて考えておりますように貿易、経済の問題であるとか、あるいは文化の交流の問題であるとか、あるいは人道上の問題であるとかいうものを積極的に日本としてこれを解決するという、またそれを増進するということにつきましては、政府としても大いに努力する考えでございます。しかし現段階においては、この中華人民共和国というものとの間に正式の外交関係を開く段階にはまだ達しておらない、というのが従来から私がお答えしておることでありまして、今なおそういうふうに考えております。
#35
○竹中勝男君 時間も経過しましたので私はこれでやめます。
#36
○佐藤尚武君 私は単に一つの問題について総理大臣に御質問いたしたいと思います。
 それはインドネシアに対する賠償問題であります。この賠償問題を解決しなければ、日本の南方方面に対する将来の発展に非常に大きな障害を来たすことは、だれもが言っておることであり、政府もその点に関しましては、しばしばこの委員会においても政府の意向を言明しておられるところで、早期解決を希望するのであって、そのためには万全の努力を払っておるというようなこともしばしば承わっておるところであります。しかるに先般日本を訪問されましたインドネシアの前副総理ハツタ氏の来訪の機会に、その賠償の問題が取り上げられて、そうして政府の当局との間に数日間にわたってその交渉が行われた模様でありましたが、ついに何らの結果をおさめることができずしてハツタ前副総理が帰国してしまった。こういうような結果になったのでありまして、このことにつきましては日本の心ある人たちは非常に憂慮しておるのであります。日本としましては、南方に対しましての平和的発展の可能性をもたらすために、どうしてもこの問題は早く解決しなければならぬということをしきりに望んでおるにかかわらず、ついに岸内閣においてもそのことがいまだにできずに、そうしてあのいい機会をのがしてしまったというように私たちには見えるのであります。その難点はどこにあったかはわれわれにはよくわかりませんけれども、おそらく閣議がまとまらなかったためであり、そうして閣議がまとまらなかったということは、多分財政当局において非常な難色を示した結果であろうと推察されるのでありまするけれども、それは噂に数億の金をよけいに日本が負担するとかしないとかいう問題ではなくして、日本の将来のために南方における広い地域にわたる世界を日本に開放するかどうかという問題なんです。わずかに数億の問題によってその日本の将来発展すべき地域をふさがれてしまうというようなことは、実に私は政策としてもとうてい賛成のできないところであろうと思うのであります。もしそれで南方に対して日本がこれから先平和的に発展するというためには、どうしても附方諸国の信頼を得なければなりません。彼らの信頼を裏切るというようなことがあってはならないということは、これはだれしもが考えるところでありますが、そのためには今の賠償問題の解決こそが最も大きな問題であり、そうしてそれを解決することによってこそ、初めて南方諸国の信頼をつないでいくことができるわけであります。単にこれはインドネシア一国の問題ではなくして、もしインドネシアとの間に話し合いができないとするならば、これはアジア・アフリカ・グループに対して非常な失望を与えることになるだろうと思うのであります。当事国であるインドネシア国民の失望というものは、これは非常なものであろうと思うし、従って日本は口先では親善々々と言っておるけれども、これは何ら頼むに足らないものだというように彼らをして思わせてしまうというようなことがありましたならば、これは日本の将来にとりましてゆゆしき大事でなければならぬ、こういうふうに考えるのであります。それで先ほど総理大臣は、日米関係におきましてアメリカと対等の話ができるのはアジア問題であるというように言われました。私も全然同感であります。しかし対等の話をするというためには、日本の道義的な責務を果した上でなければ大きな発言権を持ち得ないということはこれまたわかったことでありまして、それだけのことをしないであって、そうして大きな発言権を持つこともなく、日本の地歩を築くことなくして、そしてどうしてアメリカと対等の立場に立って話すことができるかということになるのであります。すでにインドネシアとの関係におきましては長年この賠償問題においてひっかかっておる。戦後すでに十二年も経過しており、平和条約ができてからさえ六年も経過しておる今日、まだお互いの意思が疎通できないのだというようなことはとうてい考えられないことでありますが、しかるに総理は近々のうちに南方を訪問されるということですが、単に儀礼的に親善関係云々ということで行かれるのでありましたならば、決してそれはほんとうの親善関係の回復にはならないのであります。むしろ先方の信頼感を裏切ってしまうというような結果になりはしないかということを非常に私はおそれるのであります。これは緑風会の一員としての私の心配でありますが、そういう点に関しましての総理のお考えを伺っておきたいと思っております。
#37
○国務大臣(岸信介君) インドネシアの賠償問題を早く解決しなければならないという、その必要性及びその理由につきまして佐藤委員の御意見は私も全然同感でございました。私が政局を担当するようになりましてからも、これが早期解決をぜひはかりたいというつもりでいろいろと努力をいたして参っておるのでございます。幸いに小林移動大使を東南アジアの諸国に派遣するに際しましても、特派大使のある一つの試案として向う側に提案したものがございます。それにつきまして大体インドネシア側におきましてもその方向に沿うて解決したい意向が明らかになりました。ハッタ氏がちょうどこちらへ参りました。これは言うまでもなく非常にインドネシアの有力者でございます。ただハッタ氏の立場としては自分は賠償問題について日本側と交渉する権限を持ってきているわけではない。しかしこの問題をほんとうに両国の理解の上に立って、将来の日本とインドネシアとの長い関係を正常化する意味において、これが早く解決されるということについては自分は非常にそれを希望し、またそのことに関する日本の各界の人たちの意見も一つ聞いてみたいというのが主たる目的であり、その具体的の交渉については自分が連れて一緒に来ておるスジョノ局長と一つ十分に話をしてもらいたいというようなことでございました。私も数回ハッタ氏とも会い一般問題についても話をし、根本的の了解は、両方の考え方は一致いたしております。ただ御承知のように、インドネシアの賠償問題には焦げつきの債権である一億七千五百万ドルですか、これの取扱いの問題がやはりこの問題と従来もずっとあわせて考えられてきております。これの扱いについても根本的の考え方は、賠償の問題は賠償の問題として解決し、焦げつき債権の問題は債権としてインドネシアに払うという、根本の考え方も大体われわれの考えと一致しておるのであります。あとはいろいろな年限の問題であるとかあるいは利子の問題であるとか、いろいろ具体的の問題についていまだ向う側とわれわれの間において意見の一致しない点もございます。しかしなおその点についてはいろいろインドネシア内部の意見の統一をはかる必要もありますし、またわれわれも国内において関係間におけるところの意見を調整する必要もあると思っております。しかし私が今回インドネシアを訪問することになっておりまして、多年の問題であり解決を急がなければならない問題であり、根本的においては、最近において両国の首脳部の間における意見というものが、方向において大体の考え方において一致しておることがはっきりいたしました現段階におきまして、私がインドネシアをたずねる際におきましては、この問題について解決に向ってさらに一段と私は努力をいたしまして、今、佐藤委員のお話の通り、この問題のもっておる意義を十分に体してこの問題の解決にさらに努力をいたしたいと考えております。
#38
○佐藤尚武君 一言つけ加えさしていただきます。ただいまの総理の御説明、それは全面的に交渉の衝に当られた総理の御説明でありまするから、私どもはそれを正直に受け入れるという以外にはないと思うのでありまするが、ただしかしハッタ氏が日本を立ったときに、果して満足して立って行ったかどうかということについては、今の総理の御説明にかかわらずいささか私どもに不安な念を与えるものがあるように思っております。ただ幸いに総理大臣は南方においでになることでありまするから、今度こそは多年の問題を、根本において両国の間に完全な了解ができるところまでこぎつけていただくということ、さもなかったならば、先ほども申しました通りに非常な日本にとりましては不利な情勢をかもすということは、これはだれも考えてもそう言えるのでありまして、そういう点に対しまして万全の御処置をお願いしたいことを重ねて申し上げまして質問を終ります。
#39
○笹森順造君 現在この委員会は、内閣から提出されました日本国とオーストラリア連邦との間の通商に関する協定の締結について承認を求められております。私もこれを審議しておる現状でありますが、これは関税及び輸入制度上の最恵国待遇を与えられる問題でありまして、私どもとしては内閣がここまでこの協約を進め得ることに至ったことについては、大いに多としておる次第であります。これを審議しております段階に、私どもはむろんこれはどなたも御不同意はない、むしろ賛成でまた支持せられるものと承知して、将来こういう工合に日本の海外貿易が進んでいきますことについて喜びにたえない状況でありまして、新しい内閣としての外交方針の一部を切り開いていく道だと考えておるわけであります。
 ところがこれを審議しておりまする段階において、私どもがぜひ一つこの内閣において明らかにしてもらいたいと思いますることは、今まで通商航海条約が各国と締結されまする場合には、やはり居住の自由というものが必ずそこにあり、両国の間にその国民の交流というものが盛んに行われるというのが大体の原則であるように考えられます。ところが豪州と日本との間にせっかく通商に関するいい道が開かれましても、なおその間に私どもが希望しておりながらも全くその希望に合わような点があるように思いますので、この居住及び両国の移住の自由ということに関して、どれだけのこの条約をおやりになさいますときに御配慮があったか、その点をお尋ねしておきたいと思います。
#40
○国務大臣(岸信介君) 実は今回の主として一番の問題は、貿易通商の問題に関連をいたして両国の協定を取りまとめることであります。豪州にとりましては御承知の通り他からの移住という問題に関しましては、非常にデリケートな関係もございますので、今回の交渉にはその問題はもち出してないように私は承知いたしております。なお詳しい経過等につきましては事務当局からお答えをさせます。
#41
○笹森順造君 それでは引き続き、その問題に関して事務的なことを私はここでお尋ねしなくても、せっかくの大事な時間でありますから、もっと根本のことでお尋ねしたいと思います。
 それは今総理のお答えのごとく、豪州は自分の国に移民を入れるということについては、いろいろその国自身の国内問題として考えておる点は、これは私どもも了承しております。しかるに特にその移民問題につきましても、居住の自由あるいはまた両国民の交流にいたしましても、白色人権と有色人権との間に非常に差別があることを私どもはよく承知しておるわけであります。
 そこでお尋ねしたいのは、日本の国がせっかく新しい立場においてこれから岸内閣が外交の方針を進めていかれますについて、先ほど来だんだんお話の世界の平和あるいはまた日本の国自身の独立、そうして特に平等ということを主眼にしておやりになっておりまする点に関して、私は非常な期待をもつわけでありますが、申し上げるまでもなく第一次世界大戦ののちに、あのベルサイユの条約で日本が一番世界に大きな一つの問題を投げかけたのは、いうまでもなく人種平等であったと記憶いたしております。あれは西園寺さんがこの面に向っては非常に努力せられて、世界各国がこの人種平等に関しては、国際外交において何ら反応を来たすことがなかった。しかし内心はなかなかそうはいきませんで、時期尚早ということでこの問題は外交のあらゆる面において適用されずに済んだ。しかしその後同じ線であの民族の自立、自決という問題は第二次世界大戦まで引き続いてきて、現在においては世界各国がこの民族自決ということについては、ずっとでき上ってきたように考えられます。ところが人種平等という理想は、せっかく日本の第一次世界大戦後の大きな一つの柱でありながら、まだあまりこれが主張せられておらぬ。ところが国連において今度日本の国がそのメンバーになってこれから活動するにおいても、やはり世界の四分の一の白色人種、四分の三の有色人種との間に大きないろいろな問題が起ってくると思う。こういう点に対しては私は岸外交がこの原爆禁止に人道主義的に大きな柱を立てるということは、これはたゆまずまずおやりなさることについては大いに敬意を表するわけでございますが、特にこの人種平等ということをぜひお考え願わなければならぬではないかと思う。これが国連においてもあるいはまたアジア、アフリカの外交においても大きなものとしていく。これは平等を説くのでありますから決して白人種を圧迫するとかあるいはそれに反抗するという意味ではなくて、真の先ほどからお話の平等であるということであるならば、これは人種平等ということについてどういう一体お考えを持っているか。これが結局今の移民問題等にも関係してくるのではないかということから、岸外交の人種平等に関する根本的なお考えをお聞きしておきたいと思います。
#42
○国務大臣(岸信介君) 笹森委員の御意見のように、私はやはり人種の現在世界の情勢を見ると、形式的に一応平等のような建前をとっておりましても、人種的にいっていろいろな差別的な待遇がなお存しておるということは、これは大きくいえば世界平和の上から申しましても望ましい状態とは見ることはできぬと思うのです。あくまでも人種は平等に扱われ、平等な立場において権利義務その他実質的な活動ができることが認められてこそ、初めて真の人類の平和と福祉が増進される問題でありまして、これは大きな人間の一つの理想を示しておるものであると思います。従いまして、われわれとしてはあらゆる機会に、人種平等の原則が制限されたり、あるいはこれが妨げられているというような事態をなくすることに努力をしなければならぬと思います。国連におけるいろいろ問題にも関連をいたすと思いますが、また私ども日本の立場から考えますと、いわゆる人口問題という日本の立場から申しましても、これが解決をみるにおいて人種が平等に扱われるということで、移民につきましても、移住につきましてもわれわれがより自由な何ができるということは、日本にとっても非常な現実の問題としてありますから、しかし何といっても大きな理想として人類の平等、人種の平等ということを唱えることは、これは一貫してその実現を期するようにしなければならぬとかように考えております。
#43
○笹森順造君 今までは人種の平等ということは、実際国際外交の面においては表われておらないので、むしろ豪州は白人豪州主義、ヨーロッパが白人ヨーロッパ主義、あるいはアメリカが白人アメリカ主義、カナダは白人カナダ主義をもってそして有色人種を拒否しておった、あるいはまた差別待遇をしておった。一面においてはドイツその他において特に黄禍論を掲げて、それが第一次世界大戦前における大きな国際の紛争をもたらすもとになっておったような感じがある。ところが第二次世界大戦以後において、やはり世界の一つの外交の進展、進歩はこの人種の偏見がなくなってきているということに私は考えていいのじゃないかとまあ思う。これはアメリカあたりにおいでになって岸総理はどうお感じになったかしりませんが、従って黄禍論によって排斥されておった日本が、これをやはり取り去るために特別な配慮がなければならぬし、もはやそういう問題がここに起されなくてもいいのではないかという工合にさえ、実は世界の世論が日本に対してよくなってきていると私は思うのでありますが、今特にお触れになりました日本の将来の移住問題に関しても、この点はよほど一つ岸総理において、日本の外交の方針に大事なものとしてお考えなさるということでありますからけっこうだと思いまするが、それにつきまして私は短い与えられた時間で一言だけお尋ねしておきますが、これは南米に関する問題よりも特に北米に関した問題でお尋ねしておきたいと思います。
 これはすでにこの委員会でも一、二度話しになったことでありまするが、日本とアメリカの間に御承知のゼントルマンズ・アグリーメントというものがあって、自主的に日本から移民を北米合衆国にやらぬ、あるいはまたその周辺の近い所かカナダなりメキシコに日本の方から移民をやらない。こういう了解のもとにできておったのでありますが、戦後いろいろな状況によって日本から北米合衆国にいろいろな形においてこの移民が行っておる。この新段階において特に指摘されなければならぬ問題は、この三年間の契約で行っております短期移民の問題であります。これはすでに一年の経験を経たわけでありますが、さらに今日本の政府とアメリカの政府との間に引き続きもう千人の短期移民が行くようになっておるか、なっていないか。また向うの方では希望しておりながらもこのものがまだ明確に行くとも行かぬとも発表されておらぬ。そこで多分政府においてはもう千名の者がもう行くことにはっきりなったのかまだはっきりなっていないのか。またその問題はどうなっておるのか。これは非常に関係者が大きな関心を持って見ていることであり、将来の日本民族が平和移民として諸外国に進出する試金石だと思いますので、現状についてのお話、将来の見通しについてのことをお示し願えたら仕合せだと思います。
#44
○国務大臣(岸信介君) これは私ども非常に実は大きな期待をかけている問題でありまして、従来から日米間におきましても、いろいろな支障もありますけれども、これが実現については政府としては絶えず努力をいたしております。本年度の問題につきましては、私具体的の事実をまだ承知いたしておりませんから、承知しておる者からお答えを申し上げます。
#45
○政府委員(松本瀧藏君) ちょっと私補足して説明さしていただきます。いろいろと労働組合との関係もありますのと、スポンサーとの新しい関係も生じて参りましたので、これらの問題を克服すべく目下アメリカ行政府におきましては、わざわざカリフォルニアに出向きましていろいろ調整をしております。なお第一回の経験から徴しまして、いろいろと誤解あるいはまたいろいろ不備の点等ありましたので、これらを是正いたしまして二四、三回と続いてこれをやるべく、アメリカ行政府とは密な連絡をとって大体見込みはいいような感じを抱いております。
#46
○加藤シヅエ君 総理大臣にお伺いいたしたいと思います。
 総理は、訪米の前に日韓問題については必ず何とか解決のめどをつけるというようなお言葉であったのでございます。まさにそのお気持で十分に御努力をなさったことだと私も信じておりますけれども、不幸にしてその成果が表われておりませんのです。新聞によりましては日韓会談は決裂状態というようなことも出ているのでございますが、私は必ずしも決裂したとは思わないのでございますが、それではこれは暫時休憩の状態というふうに見たらよろしいのでございますか。またいつまでこれは休憩をお続けになっていらっしゃるのでございまいますか。どういうふうにして日韓会談をもう一度お始めになるか。その辺の御事情を差しつかえない限り承わりたいと思います。
#47
○国務大臣(岸信介君) 日韓問題につきましては、私今加藤委員の御指摘がありましたように、私は訪米前に解決するつもりであらゆる努力をいたし、私の見通しでは実は大体できるものだと非常に自信を持ったわけであります。というのは、わが方として、従来韓国側におきまして日本に対して要求をしておりました大部分の点について、韓国側の主張をいれて条件を示して、韓国側としても私は納得するものだと実は確信をいたしたのでございます。従来この問題について加藤委員からも御質問があり、またその他の何に対してもいろいろ御意見や御質問がありましたときにお答えをしておきました、韓国側の気持というものも十分取り入れたつもりで実は最後の案を提示したのでございます。ところがいろいろなその他の状況では、手続上のためについに時日として私が立つまでに間に合わないが、その後においてはこれに対して大体承諾が得られるような向う側の代表部の話であったと思います。ところがそれがこじれまして、またいろいろ新しい向う側の希望等も出てきまして、これに対しても私は数回外務大臣とともに向うの代表とも会いまして、従来の経過もお互いがここまできたのであって、大体この線でまとまるようにさらに韓国側においても努力してもらいたいというような話をいたしまして、その後交渉を続けておったわけであります。さらに多少のこれの修正につきましても、われわれもある程度の幅をもって交渉したのでありますが、実体的には私はもう譲るべき何ものもないという考えでおります。そこで最後のわれわれの考えをもって柳公使が帰国いたしまして、向うの代表その他のなにとも話し合いまして、最近柳公使が帰って参りました。そうして中絶しておる交渉を再開したいということを申し入れております。われわれもできるだけ早くこの問題を解決するという従来の意図につきましては一貫して持っておるわけであります。しかし実質的にはわれわれとしては、私が訪米前に日本側の主張を韓国側の要望に従って緩和し、両方の話合いができております大体線を堅持して、それで妥結したいというつもりでおります。また韓国側の柳公使が帰りましてからの具体的な向う側の要望につきましては、まだ明確にいたしておりませんが、続けてやるつもりでおります。
#48
○加藤シヅエ君 そういたしますと、続けて会談をなさいますその時期は、東南アジアに御旅行においでになるというようなことも伺っているのでございますが、その時期はいつごろになるのでございましょうか。
#49
○国務大臣(岸信介君) この問題は外務大臣今かぜを引いて少し伏せっておりますけれども、これも回復すると思います。私が東南アジア訪問のいかんにかかわらず、できるだけ早くこれを続けて交渉を再開したいと、かように思っております。
#50
○加藤シヅエ君 日韓会談が非常に手間取っておりますと、釜山に抑留されております邦人も非常に困難をきわめていらっしゃると思うのでございます。御承知のようにこの間ニューデリーの赤十字大会にこの問題を持ち出されて、画国政府に早いところ釈放するようにという申し入れをするというようなことが新聞に出ておったのでございますが、何かお申し入れをお受けになったのでございましょうか。またお受けになった場合に会談と切り離して、抑留者の釈放というようなことか何かお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
#51
○国務大臣(岸信介君) まだ正式には何も申し出はございません。これがもしも切り離して解決できる問題であれば、われわれもそれを実は一番先に望んだわけでありますけれども、韓国側としては次に開かるべき正式会談の予備会談において、正式会談において取り上げる問題のうち、おもな問題について大体の両方の意向を一致せしめることと、それが不可分になっておるものですから、私は本来言えばこの問題は人道的立場から釈放し合って、そうして財産権の問題であるとか将来の李承晩ラインの問題であるとか、ずいぶん解決のむずかしい問題については正式会談できめるべきものだ。まず両方の人道的立場で釈放し合うということが、実は私ども最初の主張であったのでありますけれども、それは韓国側はどうしても認めないということで、今言ったようなことが起っているわけでありまして、抑留されておる人及び抑留されておる人の留守家族の人々、また赤十字でニューデリーに集まった、おそらく世界の良識ある人々は、そういう交渉とこれが不可分の条件にされておること自体は非常に不合理であり、従ってこれをまず早急に釈放し合うべきだという議論が当然起ってくる問題であり、あるいはそういう問題が両国政府に提案されますならば、一応とにかくそういう問題として話し合いをするということも私は必要であろうと思います。しかしなかなかそれで解決がそれじゃできるという見通しがあるかということになれば、今言ったような経過をとっておりますのでなかなかむずかしいと思いますが、しかし抑留されている人々のことを考え、その留守家族の人々のことを考えると、一日も早くこの釈放を実現するということは私の強く念願しているところでありますから、そういうものが正式に出てきますれば取り上げて話をするつもりでおります。
#52
○加藤シヅエ君 赤十字代表の方からそういうお申し入れが両方の政府にあるということは非常にいい機会でございますから、できるだけこれを人道問題の見地からというわけで、切り離して御解決できるように努力していただきたいと要望いたします。
 なお最近また東南アジア親善旅行においでになるということを伺っているのでございますが、今度はどことどこにおいでになりますか。
#53
○国務大臣(岸信介君) 今度はこの前訪問をいたすことができなかったヴェトナム、カンボジア、ラオスそれから最近独立をいたしましたマラヤ、それからインドネシアさらに豪州とニュージランドを回りまして、帰りにフィリピンに立ち寄るつもりでおります。
#54
○加藤シヅエ君 これは非常に重要な御旅行だと思うのでございます。で総理大臣もせんだって渡米なさいました当時、国際連合における日本の立場というような問題についてもいろいろとお考えがあったと思うのでございますが、日本の国際連合における立場は、あくまでもアジアの中の一環としての日本という立場を主張なすっていらっしゃることは、非常に正しいことだと思うのでございます。従ってこの総理の今回の東南アジア親善旅行は、単なる儀礼的旅行に終ったのではいけないので、これらの国々の国民の心をかち得るということが非常に大切なことだと思うのでございます。で私もせんだってマキノの大会に参っておりまして、アジアの方々とたくさん接触いたしておりましたときに感じましたことは、何と申しましても公式の席ではそういうことを言われないにしても、国民の一人々々の心の中には、日本から侵略された当時の心の傷というものが、まだ完全にいやされていないということは事実だと思うのでございます。従ってこの戦争のときに方々にはびこった雑草を今こそ刈り取らなければならないという、まだこの時期であるということを絶えず念頭にお持ちになって御旅行なすっていただきたい。で、この前に総理大臣がビルマにおいでになったときには、向うの政府当局の方々に対して、率直に日本の犯したあやまちというようなものについて遺憾の意を表明された。その態度は非常に向うでも受けがよかったと思うのでございます。今度もやはりそのお気持を持って旅行し、最初の御発言はまずそういうところから始めていただくということは、これは非常に日本にとっても正しいやり方ではないか、こう思ってまあ要望いたすわけでございます。で、特に豪州においでになりましたときに、幸い今度は通商協定もできる時期でございますから、非常に時宜を得た御訪問だと思うのでございますが、せんだって新聞の報道によりますと、何か総理のおいでになるのを迎えて排日運動が起っている、というようなことも報道されているのでございますが、こういうことに対して、総理大臣はどういうふうにして、この排日の空気をむしろ親日の空気に変える、というような努力をどういうところに着目してなさるお心がまえでございましょうか。
#55
○国務大臣(岸信介君) 豪州におきましては、この通商に関する協定は、従来の日本の立場から申しますと、私は非常に濠州としては日本に対していい感じを基礎に置いてこの交渉が成り立ったものだと思います。また四月に御承知のようにメンジース首相が日本を来訪いたしまして、その際にわれわれが話し合ったこと、またその際に話し合った豪州関係の戦犯者を、その後全部釈放されたこの事例を見ましても、私は豪州全体におきましての空気そのものは日本に対してよほど戦後において、最近におきまして理解を深め、よほど日本に対する感情も変っておると思います。しかし豪州におきましては、御承知のように従来長く日本に対しては相半排日的な気分の強い所であり、また戦時中においても相当な豪州としては日本側に対して脅威を感じ、同時にいろいろなそれから起ってくるところの感情が残っておったと思います。しかし幸いに今申したように、政府対政府の関係におきましては諸種の従来の行きがかりを一掃して、親善し協力をするという態度について、首脳部の間に根本的な理解ができておるわけでございまして、私はできるだけ今度の旅行におきまして、短い旅行ではありますけれども、各地において政府の首脳部の方とひざつき合して話をするばかりでなく、できるだけの機会において広く国民の人々にも接して、日本の真意なりまたその地におけるところの人々の考え方というものも謙虚な気持で聞き、また話し合いをするという機会を持ちたいと思います。豪州におきましてもただ単に政府側だけでなしに相当に各方面の人々に接して、そうして日本の真意なり、また日本に対するいろいろなこれらの人々の忌憚のない意見も謙虚な形で開きましていきたい、こういうふうに考えております。
#56
○加藤シヅエ君 豪州においでになりましたら、野党の労働党の議員の中にも、ダッシイさんとかビィズレイさん、チャーレイ・モルガンさんという方は、今まで排日演説をやって投票を取った方なんですけれども、そういうようなことによって自分の地位を守るということは正しくないというようなことをお考えになって、その考え方を変えて今非常にむしろ親日的に努力をしておられる方ですから、ぜひそういうような方にもお会いになっていただきたいと思います。
 なお最後にちょっと伺いたいのは、今総理大臣は外務大臣の席にはおられないのでございますけれども、まあ岸外交というような言葉をもって表現された場合に、岸外交は非常な経済外交、経済に非常な主力を置いていらっしゃる。これはもちろんけっこうなことでございますけれども、その経済外交がややもすればそろばん外交というようなことに陥ってしまって、もう目先のそろばんということに非常に重点を置かれるために、肝心の外交の本質を忘れてしまうというような結果に陥るようなことがあっては大へんに大きな、目先の得を取って将来大きな損をするということになるおそれがあることだと思います。先ほど佐藤委員からもインドネシア賠償の問題についてもいろいろ御発言があって、私も佐藤委員に非常に共鳴するのでありますけれども、インドネシアの賠償問題もいろいろ技術的な問題がおありと思いますけれども、やはり私は目先のそろばんにあまりに重きを置かれて、東南アジア全体と日本の関係というような大きな点を見逃されるというようなことがないように、特にお願いいたしまして私の発言を終りたいと思います。
#57
○森元治郎君 大体三つくらい伺います。核爆発実験禁止案を中心にお伺いしますが、この案を見て感ずることは、アメリカ案のようでもあるしソビエト案のようでもある、どうもはっきりしないということは、同僚議員がすでに衆議院においてあるいはここにおいて指摘したところでありますが、一番欠けておるのは本当にやる気があるのかどうかということであります。何か木に竹ついだようなところが中小企業団体法の案とちょっと似たような感じがする。ソビエトがおれとお前の案と似ておるじゃないかというのもこれは当然、一体誰がこの案を作った、おそらく総理は、あるいは閣僚諸公はなかなか専門的な問題だから事務当局に立案さしたんだと思います。こういう大きな問題は総理の哲学的な思想の上から大きな方針を与えて、事務当局がそれに基いて案を立てるというのでなければならないと思うのですが、その経過はどうであったか。
 時間がないから立てつづけに質問を並べてしまいます。どうして私がそういう印象を受けるかというと、第一点は国連に入ったんだから一言なかるべからずということが一つ。第二点は核爆発実験というものは、西欧陣営との提携が、岸内閣の外交方針の三つのうちの一つである、西欧陣営を侵略から守るためには実験をしてもらいたい。しかし国内の世論がだいぶうるさい、国会も衆議院三回、参議院一回、四回も中止を要望しておる。こういうことから腹の底では一つ実験はやって力強くなってもらいたいと思うが、片方でそういうことがあるからしなければならないというような割り切れないものをお持ちじゃないかと思います。それからもう一つはアメリカ、イギリス、ソビエト三国に自分の案ができたときに、どうか日本案に同調してくれということを事前に要求した。どうしてその他の国々に一体要求しなかったか。これは当局の中でも出すか出さないかではだいぶ問題になったように聞いておりますが、自分の案をほんとうに国連で決議案を通すというならば、その他の国々全部に向って、一つわが案に同調してやってくれないかという措置をとらなかったのか。こういう点が私をして本気にやる気があるかどうかと疑わしめるところであります。
 もう一点は軍縮の促進ということを言われておりまするが、これは将来当然考えなければならぬ問題であるが、この段階においては自分の国の憲法は再軍備を禁止し、しかも兵力らしい兵力を持っていない。しかも兵力というものは今日は装備によって決定する時代である、装備については何も持っていない。最新の知識もない者が軍縮などと大国ぶった、大国の錯覚に陥ったようなものを持ち出して水を割るというようなことは、どうも本気に思えないのであります。その点についてお伺いいたします。
#58
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。森委員の御質問でありますが、私がこの核爆発実験禁止の問題に関して、従来一貫してとってきておる考えは、言うまでもなくこれを一日も早くやめさせるということでございまして、まだ私の真意があるいは今十分に徹底をいたしておりませんために、森委員のような御質問を受けることは、私みずから甚だ遺憾と思うのでございます。私はあくまでもこれが禁止を実現しなければならないということにつきましては、何人にも劣らぬだけの強い熱意を持って実は当っておるつもりでございます。核爆発実験禁止に関することを一日も早く実現するということを考えてみますると、西欧側とソ連側と、いうまでもなく英米ソがこの実験をやっておるわけでありまして、しかも英米は自由主義の陣営であり、ソ連とこの二つが対立してやっておる。しこうして両方がこの核爆発実験禁止に関しての提案を国連にするという情勢であるが、その主張は従来相反しておって、平行線的で両方の主張というものは全然一致しておらない。従ってこれが、提案されていくということはどういうふうな議決を見るにしても、結局は実験禁止ということは実現できぬのじゃないか。そうすればやはり何かこれは両方で譲り合ってそうして実験をやめる、人道的立場からこれをやめるという見地に立って、そうして従来ロンドンの軍縮委員会においても対立した両方の主張というものを、そのまま両方が固執する限りにおいては一致点というものはできない。何かこれは両方が譲り合ってそうして一致点を見出して、これの実現を一日も早くしなければならないという立場から、実は私はこの両方の主張を十分に検討して、これを両方から譲り合ってそうして実現する可能性がある案はどういうものであるか、そういうものを作れということが私の初めからのこの案に対する態度であったわけであります。従いまして決して、今お話がありましたが、こういう重大な問題について事務当局に任せきりで、その案を見てどうするという問題じゃありませんで、方針としてはこれを授けて、そうしていろいろな技術的な問題その他のことについては、もちろん事務当局の研究によったわけであります。私は決して、国連に入ったから何かこちらが一言なかるべからずだとか、あるいは案につまして西欧側に遠慮してどうするとか、あるいはいいかげんな腹の底に何か削り切れなもいのを持ってこれに対するということでなくして、ほんとうに真剣にこの実現を早くさせるためには、今の国際情勢から見れば両方から譲り合うという以外には一致点を見出すことができないのであります。その譲り合うということについてはどういう点が一番いいかと言えば、やはり軍縮という問題も、これは西欧側としては軍縮問題というものと不可分であり、軍縮の一部としてこの問題を考えておるということでありますけれども、一般軍縮問題についても非常にむずかしい問題がある。まずやめて軍縮の問題は引き続いてこれをやる。今永久にこれをやめるということであると、なかなか両方の主張が何しないから、まず一年やめてみてそうして軍縮の方は引き続いてやる。その間に軍縮ができればよろしい、できないということであれば、また禁止を延長するというふうなことが一番実現可能性のある案という立場に立って提案いたしたわけであります。
 英米ソに対してだけ賛成しろということを出して、そうしてほかの国に出さなかったのはどういうわけかというお話であります。それはいろいろ御意見はあろうかと思います。しかし要するにこの問題について鍵を握っておるのは英米ソであり、ほかの国は実験をしておるわけではありませんし、また人道上の理論も私はよくわかります。ただ英米ソではおのおの原水爆を持っておる、依然としていかなる場合においてもその優位の地位を失うまい、という考え方が底流をなしておるという現状でありますが故に、この英米ソがほんとうに日本案に賛成するということであれば、他の国々は賛成を得ることができるし、この三国が依然として反対をしているということであるならば非常にむずかしい。だからまずこれに真剣に考慮してもらうという態度をとったわけであります。
 また軍縮の問題につきましては、日本の現状からいって世界の軍縮を論ずるような実力もないじゃないかというお話でありますが、これは安保理事会の非常任理事国の一員に選ばれました以上、どうしても軍縮会議のメンバーになるわけでありますから、われわれもあらゆる点から研究して、日本としても世界の平和のために、軍縮の問題についても十分発言もし努力もしたい、かように考えております。
#59
○森元治郎君 幾らお伺いしても、どうも総理にここで伺うような気持が案に出ていないということは明らかで、論争しても仕方がないからやめます。
 次に今イギリスに向って水爆実験をやめてくれという交渉をしている。この実験をやめてくれというのは条件はつけてないはずです。やめてくれ、あそこならいい、ここならいい、いつならいいというのではない。これは条件がないはずです。しかも即時であり、総理はいやな言葉と考えるでしょうが、実質は無条件即時にやめてくれということです。これまではそれでいいのです。ところが国連であういうふうな案を出してしまったあとではこれは意味がなくなる。即時無条件禁止ということは言ってない。もやもやと人の読みようによって意味が変るような変な案ですから、これは幾らでも逃げられる。その証拠にはロイド外相は軍縮協定ができるまでは遺憾ながらやらざるを得ないと、さっと逃げてしまう。これはもう実験禁止というのは無意味になった、こういうふうに思うのですが、いかがですか。それが一つ。
 もう一つはかりに軍縮を例にとりますが、ソビエトと同じであった場合は、どうもソビエトと同じでは一緒にやれないというのか。自分の主張と同じならソビエトでも一緒になる。結果的にアメリカとは反対の立場になる、そういうときに一体どっちの態度をとられるか。この間の様子を見るとソビエトはなかな外交上手ですから、君の言うのはおれに似ているじゃないか、一緒にやろうじゃないか。それは曲解だとあわててとめた。しかしそれは曲解ではなくて、アメリカの言うようにどうも正解のような感じがする。ですからこれは大問題です。いいことでもあいつが言うならいやだ、この点どうですか。
#60
○国務大臣(岸信介君) これはなかなか外交の問題は複雑でありまして、今の森委員のお話のように、私は本来言葉が正しくあれば、その人によって左右すべきものにあらずという東洋流の考えは正しいと思います。しかし外交のいろいろな裏やいきさつというものもまた全然これを無視しましたら、現実の外交は行われません。私は決してソ連がこれを曲解したとか、あるいはアメリカがどういうふうに言うたとかいうようなことを顧慮して言っているわけではございませんで、あくまでも両方から譲り合わなければならぬということを主眼にこの案を提案いたしたのでありますから、初めから今森委員のお話のように、こっちからみればソ連案のようにみえるじゃないか、向うからみれば西欧案のようにみえるじゃないかということは、むしろ妥協案として非常な巧妙なものであったということを(笑声)意味しておるものである。私はそういうよりも何とかして両方からとにかく誠意をもって譲り合って、ほんとうにやめるという意味であって、ある程度譲り合うということがない限りにおいては、結局両極端な主張をして、おのおのそれが理論的に正しいとか、一つの徹底している割り切っている案だといばっておっていても、結局はやめることができない。こういうのが現状である以上は、何とかこの歩み寄りをさせようというのが目的であります。しかし私どもの案が決して、軍縮が前提となり、軍縮をしなければ原爆実験をやめるのをそれに引っ掛けているということではございません。ロイドがそういうことを言っているということは、自分たちの従来の西欧側の主張をそのまま言うているにすぎないのであります。現に藤山外相がロイド外相と会ったときに、この問題について話をしておりますことについて、藤山外相の言っていることと、ロイドの言っていることとは相反しているのでありますが、まずやめてそうして軍縮の問題を解決する、軍縮の問題ができ上ってからそうしてやめるということではこれはいかぬ。まずやめてそうして軍縮の問題をやったらいいじゃないかというのが、藤山外相なりわれわれの主張であります。その点については英米側の主張は違っておるというのが実情であります。
#61
○森元治郎君 今までは無条件即時のああいう申し入れをして、向うがああいう案ができて、日本の大きな案として出てきたあの趣旨からいくと、意味がなくなるじゃないかということです。
#62
○国務大臣(岸信介君) 案をよくごらん下されば、われわれの何が決して軍縮を条件としておるものではないという、その意味においては無条件の、やはりいわゆるソ連側がわれわれの案だというゆえんのものはそこにあると思うのです。決して軍縮をわれわれの条件として考えておらないということです。
#63
○森元治郎君 あと短かい質問を一つ。これはちょっと迷い話ですが、遠くて近いのが今の宇宙の様子ですから、(笑声)総理大臣という固苦しい立場でなく、あなたの私はものの考え方を伺いたい。むしろ岸さんと言った方が質問の趣旨に合うと思うのですが、宇宙は一体だれのものか、一体月はだれのものか、こうやって何とかというので勝手に空を人の上でも何でも飛び回って、一体領空という問題はどうなるのか、アメリカの方からまた飛ばしましょう。従来室といえばプロペラ飛行機の一万メートル以下、このごろジェット機が出て一万五、六千メートルが空ということになっておりますが、これを突いてだまっておっていいのかどうか、この点の総理の深いお考えがあれば承わりたい。
#64
○国務大臣(岸信介君) 非常な大きな問題でございまして、確かに森委員の言われる通り、遠くて近い問題だと思いますが、従来国際法その他において世界的の常識から見ますと、やはり人間が支配し得ると考えておるものについてのいろいろな規則はできておるわけであります。従来は領空という観念も、ああいう大気外の宇宙の問題には人間が従来は支配ができなかったということで、そういうものについては何にも考え方なりあるいは取りきめとかあるいは一つの法則というようなものはなかったと思います。しかし科学の発達がそういう新しい従来は人力が支配できなかったけれども、そういうものを人間の支配下に置くということになれば、それに対する一つの原則といいますか法則というものが生れてこなければならぬ。これをどういうふうに作り上げるかということはまだ私ども結論的にどうということはありませんけれども、これが勝手にできるというものでもなかろうし、そこの間に一つの法則が生み出されなければならぬだろうと、こういうふうに考えております。
#65
○吉田法晴君 先ほど来同僚竹中委員から、中国から里帰りをしました一千名近い婦人の帰国配船について質問をしておりました。担当大臣がおられませんが、問題は日中両国の問題に関連をいたしますし、総理にお尋ねをいたしたいと思います。行方不明者の調査について、衆議院の引揚特別委員会あるいは政府においてもその点については関心があったと思うのですが、こちらから参りたいというときに断わられたということについては御存じだろうと思います。こちらから言いますと、遺骨を送り届けたい、里帰り婦人を帰したい、それから向うからは釈放された戦犯を引き取らなければならぬ、あるいは帰国を希望しております帰国者、あるいはさらに里帰りをしなければならぬということがあるのですが、そういう点を総合的に解決をしたいという意思表示は厚生大臣から聞いたことはございます。こうした問題を総合的に解決するために、配船をしたいという一般的な方針は聞いたのでありますが、最近に至りましてこの問題が解決をまだ見ないでおります。そこでこういう点について総理として、あるいはきょうは外務大臣の代りの臨時的の役割もお持ちになっておるようでありますけれども、配船問題について片づけられることが望ましい、こういうふうにお考えになりますか。総理としての所見を一つ伺いたい。
#66
○国務大臣(岸信介君) 先ほど竹中委員と担当の堀木厚生大臣との間にいろいろ従来の経過についてのお話もありました。私も実はこの問題がいろいろ問題を引き起しておるということを知っておりますし、またこちらへ里帰りをした婦人から親しく陳情を受けたこともございまして、この問題の解決をなるべく早くして、そうしてその不安を取り除くようにということを厚生大臣にも申しましたし、厚生大臣から聞きますと、衆議院の引揚特別委員会の方において、いわゆる引き揚げ関係の三団体との間にいろいろ交渉しておると、その間にまだ意見の一致を見ない点があるので行き悩んでおるんだ、という報告も途中で受けたのであります。先ほど来それの具的体のこともここで応答があったわけでありますが、何と言ってもこういう問題をいつまでも懸案にしておいてそして未解決の状態に置くことは、当該の関係者の立場において困られるばかりじゃなしに、そういうことが不必要に日本と中国との間のいろいろな問題にも関連しての悪い影響を持つことも、これは望ましくないことでありますから、できるだけ早く適当な案によって解決されて配船され、そして里帰りの人が向うへ帰る、またわれわれが迎えようとしておるところの、戦犯で釈放された人やあるいは引揚者等を日本に迎え入れる、というように処置したいと考えております。
#67
○吉田法晴君 それでは念を押しますが、厚生省事務局では、あるいは里帰り婦人の中に売春をいたしたりして問題をこじらせたりしておりますが、総理としては、だんだん冬も近ずいてくるし期限も切れるし、陳情も受けたことであるから、里帰り婦人の帰国なりあるいは遺骨、戦犯あるいは日本に帰国を希望しております、そういう問題を総合的に解決するために配船問題も片づけたい、こういう御趣旨と解釈してよろしゅうございますか。
#68
○国務大臣(岸信介君) その通りに考えております。
#69
○吉田法晴君 次に日中貿易協定、これはきのうもちょっとお尋ねをいたしましたけれども、経済外交あるいはアジアの隣国あるいはアジア諸国との間に貿易を進める上に、一つの大きなかぎになっております。その日中貿易協定がこの間できなかった。そのできなかった原因がどこにあると総理は考えておられますか承わりたい。
#70
○国務大臣(岸信介君) まだ私具体的に詳しく代表団からの報告に接しておりませんし、まだこの際検討いたしておりませんが、大体の筋道の何につきましては、私の理解しておることは、最初はやはり相当向う側におきまして、日本側の真意についての誤解もあったようでございます。しかし、それは代表団の人々の説明によって相当誤解もとけたようでありまして、協定の具体的内容に入りましてからのいろいろな折衝におきまして、この貿易の実態に関する点については、両国の間において大体の意見の一致をみたようでありますが、代表部の設置問題に関連して、指紋をとること並びにその人数等を制限するとかいうような問題に関連しまして、両方の一致点をみることができなかったように私は報告を聞いておるのであります。従って、その支障をなしておったと認められる具体的な事態につきましては、これが解決につきまして、すでに衆議院におきましても外国人登録法の改正についての議もあるようでありまして、また政府部内におきましてもこれが検討を命じておりまして、できるだけ早くこれらの障害になっておる事項を緩和して、そうして第四次貿易協定がさらに円満に成立するように努力したい、かように考えております。
#71
○吉田法晴君 指紋の問題が大きな障害であったのじゃないか、あるいはその他商品分類その他についても話は片づいたが云々というお話でありますけれども私の見ましたところでは、これは私だけでなくして、事情を知っております多くの者が考えておりますことでありますけれども、通商代表部を置きたいというならば、その通商代表部の任務、仕事をし得るほどの通商代表部を置かなければならないじゃないか。しかるにその任務については話し合いができたのに、三名とか五名とか根拠のない数字を固執するのは、アメリカに遠慮をして日本の政府が、民間代表あるいは通商代表部と言おうとも、代表部らしいものは置かせたくない、こういう態度だと私は感じられたと思うのであります。もしそういうことであれば、これは政府のやっぱり基本的な態度にかかって参りますので、総理にその辺についてはどういうふうにお考えになるか承わりたい。
#72
○国務大臣(岸信介君) 私はこの日中貿易の点につきましては、別にアメリカに遠慮もいたしておりません。またアメリカの根本の考え方は、日中貿易が日本と中国との間に促進されるということは喜ばないことは、従来からもよく承知しております。チンコムの制限の問題に関しましても、両方の意見が一致しなかったことも御承知の通りの経過をとっております。しかし日本は日本の立場からこれの貿易関係を促進するということについては、私はやはり日本の立場からこれを主張し実現しようとしておるわけであります。
 通商代表部及びこの取扱いの問題につきましては、そういうことではなしに、日本内部の国内法の問題であり、日本が独立国として立っておる以上、日本の国内法の施行の問題でございまして、これを改正するとか、あるいはこれの解釈上どういうふうな扱いをするというようなことは日本が独自に考えていいことであります。私どもはそういう立場をとっておるわけであります。
#73
○吉田法晴君 それでは指紋の問題についても、法律の改正の議もあるし、それについても異議はない、貿易はやりたいから通商代表部を置くことについて異議はない、通商代表部の人数について、あるいは五名であるとか何とかいうような制限も、しいて求めようとは考えない、こういうことですか。
#74
○国務大臣(岸信介君) 今私ども考えておりますのは、通商代表部の名称の問題というだけではありませんが、実態としてやはり根本には、中華人民共和国との間に正式の外交ルートをまだ確立する時期ではない。こういう方針でありますから、従って中華人民共和国政府の代表としての代表部という意味では私どもは取扱いたくない、というのが根本でございますが、しかし実際の貿易事務を円滑にし、これを促進するための事務所と申しますか、その事務をやるための人々というものに対して、ある点において保護を加え、またそれが十分にその業務を行えるようにしていくということは、これは私ども貿易促進の上から必要であろうと思います。その人数という問題は、必ずしも私ども何人でなければならぬということを考えておるわけじゃございませんけれども、しかし従来いろいろな国との間の何につきましても、そういうふうにお互いにある程度の保護なり便宜を与えるというような場合においては、相互主義で全然無制限でどういうふうな人が来ても、というような扱いには国際的にはなっていないと思う。全然自由である国家が特別な保護であるとか便宜を供与するものでない、あるいはこれは人数には制限はないけれども、それが両方でそういうような便宜を供与し合うというような場合におきましては、ある程度相互主義的にその人数をきめるというようなことも、国際慣例から言うと私は普通のことである、こういうふうに思っております。
#75
○吉田法晴君 問題は何も中華人民共和国の政府の代表を日本に置こうという話ではございません。それは民間通商代表部ということで民間だということははっきりしておる。相互主義という点もこれも原則的には異議はないわけだ。ただ通商代表部を置くという話になって、三名とか五名とか根拠のない数字を固執しようとされるものだから、それでは通商代表部を置いて貿易をしたくないのか、こういうことになるわけです。しかも日本に参ります通商代表部は向うの利益のためというよりも、むしろこちらの品物を買ってもらうために置く、これが通商代表部であります。そういう点に関連をして根拠のない数字が出されるから、先ほど申し上げましたような通商代表部を置きたくないのだ、それがアメリカに遠慮をしてこういうことになるわけであります。それなら先ほど言われるように民間代表部を置くならば、通商代表部を置いても異議はないということであるならば、数の制限についても異議はない。しかも指紋なら指紋については、改正をやろうということについて異議はない。こういうことならば私は人数についてのいろいろな制限というのも、そういうものが公式にしろ非公式にしろ、政府から出されるべき何らの理由もなかろうと思う。重ねてお伺いいたします。
#76
○国務大臣(岸信介君) 今申し上げておるように、私は必ずしも具体的に何人でなければならぬとかいうようなことを申しておるわけではもちろんございません。必要なものとして、両国の間に意見の一致する相互主義の点において、適当な数が両方できめられるということであれば、これは十分に尊重していかなければならぬというふうに思っております。
#77
○吉田法晴君 それでは、民間において相互に話し合ってきめられる数については異議はない、こういうことですね。
#78
○国務大臣(岸信介君) 今申し上げるように、具体的に幾らということを前提として私は議論しているわけじゃございませんで、十分両方の話し合いできまるところのものを一つ尊重して考えていったらいいじゃないか、こういうふうに思っております。
#79
○委員長(寺本広作君) 時間がきておりますからごく簡単に願います。
#80
○吉田法晴君 それじゃ簡単に申し上げておきますが、チンコムを打破しますときの態度、これはイギリスから始まったわけですが、イギリスに対する態度というものと、それからそのときの日本の態度というものがやっぱり一つの影響をしつつあるように私ども見るわけです。それから、見本市を相互で開催しようということでありますけれども、これも先ほど言われたように相互主義、そこで福岡あるいは名古屋において見本市を開催したいということでありますが、それも協定には出ましたけれども、通商代表部についての政府筋の意向というものが反映してなかなかむずかしい。そこでそれについての障害を取り除くべき責任は私どもにもあると思う。
 最後に具体的な問題で新聞記者の問題でございます。先般こちらに参りました新華社の新聞記者の滞留期間の延長の許可をされなかった。そこで貿易協定の代表について参りました共同通信の新聞記者の方が、協定交渉代表と一緒に引き揚げて参りますとともに、全然北京には新聞記者の人は一人もいなくなっております。これは国交についての態度が政府がどうだろうと、あるいは貿易を進めようといたしましても全然とにかく中国というものについて情報が入るソースがなくなっている。日本になぜ新華社の新聞記者がこられることについて許されなかったのか、きわめて不可解でありますが、この点についてはこれは再考せらるべきだということを新聞協会その他からも申し出ているかと思うのでありますが、日本全体の問題として貿易をやる、あるいは通商代表部も置こうという際に、私は当然政府において再考さるべきだと思いますが、この点について総理の御見解を承わっておきたいと思います。
#81
○国務大臣(岸信介君) よく具体的の事実につきましては私承知いたしておりませんが、私の承知している限りにおきましては、今はとにかく外国人の登録法がありまして指紋をとることになっております、ある一定の期日以上とどまる方には。今の具体的の問題は、これを延長すれば指紋を法令によってとるという、そのことに対しては反対だということが原因であったようであります。また両国の間のこういうことはやはり相互主義に考えられることは当然のことだと思いますけれども、常置ということはまだ両国の間に認めておらないということからきているわけでありまして、ほかに他意があったわけではないように承わっております。なお詳しいことにつきましては、もし御必要があれば外務当局からお答えいたします。
#82
○吉田法晴君 こまかいことはいいのですが、こういう点についてはこれは再考すべきだとお考えになりませんか。
#83
○国務大臣(岸信介君) 今私が申し上げたことだとちょっと再考するといいましても、再考ということが考えられないのでありますが、将来外国人の登録法が改正されたり何かしまして違うようになれば、これは扱いが変ることは当然であります。今まで聞いているところによると、非常に間違いのことがある場合には再考する、こういうことでありますが、今までの扱いは私は間違ったことはないように聞いております。国内法がそういう非常に窮屈な制限があるのはいかぬじゃないかという問題はこれは別として、国内法通りやっているように聞いております。
#84
○委員長(寺本広作君) 社会党に対する割当時間が超過しておりますので、ごく簡単にお願いいたします。
#85
○曾祢益君 一点だけごく簡単に伺いたいのですが、それはこの前予算委員会でも申し上げましたが、ソ連がミサイル及び人工衛星等における戦略的な優位に立ったことに対応して、アメリカがいろいろ戦略上の関係の調整をはかる。その一つの現われとして、日本を含めたいわゆる同盟国に、ミサイル基地、はっきり言えばいわゆる中距離弾道兵器の基地を設けるというような方向がはっきり現われている。それに対して、そういう場合に、はっきりとそれは原水爆持ち込みと同様な意味で断わるということを言明されたわけであります。
 それからいま一つの問題は、御承知の通り近くNATOの会議が開かれてアイゼンハワーがヨーロッパに参りまするが、すでにその場合の大きな問題の一つとして、この間のアイゼンハワーのテレビ放送等でも言っておりまするように、科学のプール、その科学のプールも軍事的な意味を持った科学のプールということを大きく呼びかけている。これはNATO同盟諸国に対する、一方においてはアメリカの原子力法の改正による核兵器を持たせるという問題もありましょうが、さらに根本的ないわゆる自由諸国間における軍事科学のプールと言った方がいいと思いますが、そういうことが構想であるのみならず、これは具体的に進められているというふうに考えていかなければならぬ。これが日本の場合も必ず含めて考えておることは、アイゼンハワーの言葉の中にも、日本の非常にマグネチックス、何というのですか磁気学ですか、を非常にほめて、要すると各国の科学を自由諸国の結束のためにプールしなければいかぬということを言っておる。そこで問題は、日本の科学というものがそういうような世界の平和のため、あるいはアジアの後進国開発のため等に使われるならよいけれども、いわゆる自由諸国、特にアメリカの軍事的優位を助けるような意味でプールしたいというようなことに対しては、特に日本は言うまでもなく平和憲法があり、さらに原子力基本法というようなものがある建前からいって、アメリカでも果して日本が加わってくれるかどうかという疑いをもっておる。これは当然だと思う。日本の政治の基本というものがはっきりしていないと、そういうところからアリの穴から堤防がくずれてこういうことになる。こういう問題はいわゆる政治の基本に関することですから、そういう軍事的科学のプールということはやらない、これが日本の建前だということを言明される気持がおありかどうか伺いたい。
#86
○国務大臣(岸信介君) 今NATOの会議に関連してそういういろいろな質問が出ておりますが、具体的にわれわれは何にもそういう会議とかあるいはそういう呼びかけを受けておるわけではございません。従いましてこの場合における内容等も現実に出てくればもちろん内容等を検討しなければいえないことでありますが、私は本来しばしばお答えをしておりますように、科学の問題それからいろいろな技術的な発達というようなものが、人類の平和及び福祉に用いられる場合においては、その思想のいかんを問わず、国のいかんを問わず、これを越えて協力するということが世界人類のためであるということを思っております。しかしそれが特定の軍事的目的のために何かするということは、いろいろの軍事協定があり、軍事的な特別の関係にある国々の間にそういう何がされることはこれはありましょうけれども、日本としてはそういう他の軍事同盟に入るとかということも憲法上できない立場にあり、また日本の国の立場としてはあくまでも今申しました私の理想の方向に向っていくべきものであって、限られた軍事的目的のためにそういうことをするということは、私は日本としてはすべきものじゃないというのが従来から私が唱えてきておることでありまして、ただNATO云々の問題に関しましてはそういう事態があるわけではありませんし、またもしそうであればその内容等も十分に検討してみなければ結論は出ないと思いますが、一般原則としての考え方は今申し上げた通りであります。
#87
○委員長(寺本広作君) 岸内閣総理大臣に対する質疑はこれで終局いたしまた。
 速記をとめて下さい。
  〔速記中止〕
#88
○委員長(寺本広作君) 速記を起して下さい。
  ―――――――――――――
#89
○委員長(寺本広作君) 次に、通商に関する日本国とオーストラリア連邦との問の協定の締結について承認を求める件を議題といたします。
 本件に関しましては前回において質疑は終局いたしております。よってこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。……別に御発言もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#90
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。
 通商に関する日本国とオーストラリア連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方は挙手をお願いいたします。
  〔賛成者挙手〕
#91
○委員長(寺本広作君) 全会一致でございます。よって本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりましてこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#92
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。
 それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりまするから、本件を承認することに御賛成下さいました方は順次御署名を願います。
  多数意見者署名
    鶴見 祐輔  笹森 順造
    井上 清一  石黒 忠篤
    佐藤 尚武  井野 碩哉
    黒川 武雄  曾祢  益
    竹中 勝男  吉田 法晴
    森 元治郎
#93
○委員長(寺本広作君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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