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1957/11/01 第27回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第027回国会 本会議 第1号
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1957/11/01 第27回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第027回国会 本会議 第1号

#1
第027回国会 本会議 第1号
昭和三十二年十一月一日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第一号
  昭和三十二年十一月一日
    午前十時開議
第一 議席の指定
第二 会期の件
第三 予算委員長の選挙
第四 特別委員会設置の件
第五 永年在職議員の表彰の件
    ―――――――――――――
 一 国務大臣の演説
    ━━━━━━━━━━━━━
●本日の会議に付した案件
 日程第一 議席の指定
 日程第二 会期の件
 日程第三 予算委員長の選挙
 日程第四 特別委員会設置の件
  海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査をなすため、委員二十五人よりなる特別委員会を設置するの件(議長発議)
  公職選挙法改正に関する調査をなすため、委員二十五人よりなる特別委員会を設置するの件(議長発議)
  科学技術振興の対策を樹立するため、委員二十五人よりなる特別委員会を設置するの件(議長発議)
  国土の総合開発についての諸法律案の審査及び諸施策の樹立のため、委員二十五人よりなる特別委員会を設置するの件(議長発議)
 日程第五 永年在職議員の表彰の件
 岸内閣総理大臣の施政方針についての演説
 一萬田大蔵大臣の財政についての演説
 国務大臣の演説に対する質疑
    午前十一時三十五分開議
#2
○議長(益谷秀次君) 諸君、第二十七回国会は本日をもって召集せられました。
 これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(益谷秀次君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。
 第四十七番、福島県第一区選出議員、小松信太郎君。
    〔小松信太郎君起立〕
    〔拍手〕
     ――――◇―――――
 日程第一 議席の指定
#4
○議長(益谷秀次君) 衆議院規則第十四条によりまして、諸君の議席は、議長において、ただいま御着席の通りに指定いたします。
#5
○議長(益谷秀次君) 日程第二、会期の件につきお諮りいたします。今回の臨時会の会期は召集日から十一月十二日まで十二日間といたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、会期は十二日間とするに決しました。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第三 予算委員長の選挙
#7
○議長(益谷秀次君) 日程第三、予算委員長の選挙を行います。
#8
○山中貞則君 予算委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#9
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は予算委員長に江崎真澄君を指名いたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第四 特別委員改設置の件
#11
○議長(益谷秀次君) 日程第四、特別委員会設置の件につきお諮りいたします。
 海外同胞引き揚げ及び遺家族援護に関する調査をなすため、委員二十五名よりなる特別委員会を設置いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
#12
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。
 次に、公職選挙法改正に関する調査をなすため、委員二十五名よりなる特別委員会を設置いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
 次に、科学技術振興の対策を樹立するため、委員二十五名よりなる特別委員会を設置いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
 次に、国土の総合開発についての諸法律案の審査及び諸施策の樹立のため、委員二十五名よりなる特別委員会を設置いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
 ただいま議決せられました四特別委員会の委員は追って指名いたします。
     ――――◇―――――
 日程第五 永年在職議員の表彰の件
#16
○議長(益谷秀次君) 日程第五につきお諮りいたします。本院議員として在職二十五年に達せられました砂田重政君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 ここに議長の手元において起草いたしました文案があります。これを朗読いたします。
 議員砂田重政君衆議院議員ニ当選スルコト十回在職二十五年ニ及ヒ常ニ憲政ノ為ニ尽シ民意ノ伸張ニ努ム衆議院ハ君カ永年ノ功労ヲ多トシ特ニ院議ヲ以テ之ヲ表彰ス
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
 この際砂田重政君から発言を求められております。これを許します。砂田重政君。
    〔砂田重政君登壇〕
#18
○砂田重政君 ただいまは、私が満二十五年間本院議員に在職したゆえをもちまして、恒例により院議をもって御丁重なる表彰の御決議をいただきましたことは、まことに身に余る光栄と存じ、つつしんで御礼を申し上げます。(拍手)
 顧みまするに、大正八年初めて本院に席を汚しまして以来、平々凡々、何らなすところなく、まことにざんきにたえぬところであります。
 今や、わが国も、終戦後十余年を経て、政治、経済の体制もようやく整備し、国際的地位もまた次第に重きを加えて参りました。これ、もとより国民のたゆまざる努力の結果であり、御同慶の至りにたえません。
 しかるに、近時における科学の進展はまことに驚嘆すべきものがあり、ややもすれば国際政治の動向も追随を許さざるやの感があります。この間に処して、わが国の進むべき道を誤まらず、国民生活の安定と国力の発展とをはかり、ひいては世界平和の確立と人類福祉の増進とに貢献するためには、さらに一段の自覚と奮起とが必要であることを痛感するものであります。(拍手)
 不肖私も、諸君の驥尾に付し、国民の信頼にこたえるために、及ばずながら全力を傾倒する覚悟でありますから、何とぞ将来も過去二十五年と変らぬ御支援を賜わり、さらに一そう多難なるべき今後の職責を全うすることができまするよう、ここに重ねてお願いを申し上げる次第であります。(拍手)
 簡単ではありますが、衷心より感謝の意を表し、ごあいさつといたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#19
○議長(益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。
    午前十一時四十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時六分開議
#20
○議長(益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
#21
○議長(益谷秀次君) 内閣総理大臣から施政方針について、大蔵大臣から財政について発言を求められております。順次これを許します。
 内閣総理大臣岸信介君。
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#22
○国務大臣(岸信介君) 私は、第二十六回国会終了後、二回にわたって海外を歴訪し、また、去る七月には内閣の大改造を行いました。その後、広く国内各地を回り、国民諸君と接することに努めて参ったのであります。そして、現下の国政を担当することは、国際場裏においても、また内政の面においても、いかに責任の重いかを身をもって痛感するとともに、国民から託されたこの大任を十分に果すよう、決意をいよいよ固くしたのであります。(拍手)
 国政の全分野にわたる施政の方針につきましては、近く開かれる通常国会において明らかにいたしたいと存じますが、本臨時国会開会に際し、前国会閉会から今日までにおける主要な国政の動向と当面する諸問題について所見を申し述べ、施政の方針を明らかにしたいと思うのであります。(拍手)
 私は、さきに東南アジアの諸国を訪問いたしました。また、九月には中華民国の張羣特使を、十月にはインドのネール首相を迎えたほか、多くの国々からの賓客の来訪を受けました。これら諸国の首脳者と胸襟を開いて会談し、わが国平和外交の基調を明らかにし、世界平和の確保にアジア諸国が一致協力すべきことを訴えるとともに、アジアの平和と繁栄のための経済協力と文化提携を強調したのであります。ことに、ネール首相とは、核実験禁止、軍縮問題などについて会談を重ねたのであります。各国首脳が、いずれも、多くの点において、私と同じ考えを持っていることを見出し、わが外交方針に一そうの自信を深めるに至ったのであります。(拍手)こうした積極的な外交の展開によって、アジア諸国家との友好親善はいよいよ深まるものと、かたく信ずるのであります。(拍手)
 本国会の終るのを待って、前回訪問することができなかった東南アジア諸国とオーストラリア及びニュージーランドを歴訪することとしているのであります。前回の東南アジア訪問と同様、この訪問も必ずやよき成果をもたらすものと確信するのであります。(拍手)
 次に、去る六月、私は、米国を訪問し、アイゼンハワー大統領を初め米国政府首脳と腹蔵なく話し合いを行いました。もともと、この訪米の目的は、日米平等の立場に立った強固にして恒久的な協力関係の基礎を築くことにあったのでありますが、この意図は十分所期の成果をおさめることができたのであります。(拍手)私は、この新しい日米協力の関係をさらに推し進めることを決意するとともに、国際政治において、自由諸国とわが国とが一そう協力関係を緊密にして、世界の平和と安全の維持にますます貢献し得るようにいたしたいのであります。(拍手)
 アジア諸国との善隣友好と、自由諸国との協調とともに、わが外交の三大原則の一つは国際連合の支持であります。わが国は、早くから国際連合への加盟を希望し、また、この加盟が実現する前におきましても、外からの協力を惜しまなかったのでありますが、昨年末宿望がかなって正式加盟を見ましてからは、国際連合の使命達成に努力を傾けてきたのであります。このたび加盟後一年にも満たないわが国が安全保障理事会の非常任理事国に当選することができましたことは、わが国の国際的地位の急速な向上と世界平和への貢献の能力とを如実に示すものでありまして、まことに心強く感ずる次第であります。(拍手)同時に、私は、国民諸君とともに、わが国が負うこととなりました責任の重きをあらためて痛感し、平和と安全の確保という人類共通の目標に向ってさらに一段と努力いたしたいのであります。
 以上、最近の外交の動きとその成果について触れてきたのでありますが、私の国際社会に対する基本的な信条は、世界永遠の平和を確立することであります。核実験禁止について、関係国に対し再三の申し入れを行い、また国際連合に訴えているのも、一にここに帰するのであります。今日世界の平和と人類の幸福が核爆発によって脅かされている事態に対処し、純粋な人道的な立場とわが国の全国民的感情に基く要請として、重ねて、ここに、核実験の停止とあわせて大国間の軍備縮小の実現を促進するため、たゆまない努力を続けようとするものであります。(拍手)
 さて、民主主義と自由とそして平和とをあくまで守り通すことは、言うまでもなく、国政の大体であります。私が暴力の追放を取り上げたのは、暴力が、国際的には世界平和の敵であり、国内的には民主主義の敵であるからであります。(拍手)暴力の横行は、戦後のわが国の病根の一つであり、現在もなおその病根は絶えておりません。ことに許しがたいのは、集団によるいわゆる実力行使によって、法の秩序を乱したり、あるいは公務の執行を妨害するような、組織的な暴力であり、また、これに便乗する反民主主義勢力であります。(拍手)このような暴力を徹底的に根絶しなければ、民主政治も、平和な社会も、決して安全ではないのであります。(拍手)暴力の根絶には、暴力を徹底的に憎み、これと勇敢に戦う国民的な背景が必要であります。(拍手)暴力を許すことが、やがては民主政治と世界平和を破壊する結果になるおそれのあることを国民諸君がよく認識し、暴力に対してきわめて峻厳でなければなりません。(拍手)
 汚職の追放も、私のかねてからの悲願とするところであります。さきに、すべての公務員に対し綱紀の粛正を促すとともに、自由民主党の総裁として、党風の刷新をはかって清潔な政治を行うようにいたしたのであります。(拍手)もちろん、一片の通達や内規の改正で能事終れりとするものではありません。国民の信託を受けて国政を議する者と、国民の奉仕者たることを本分とする公務員の諸君とが、自己に与えられた職責の重きを自覚し、国民の信頼にこたえられることを期するとともに、世のそしりを受けるような事態を招く者があるときは断固たる措置をとることを誓うものであります。(拍手)
 貧乏の追放を実現するためには、経済の繁栄に基く国民所得の増大と社会福祉の充実をはからなければならぬことは申すまでもないところであります。
 わが国の実情から見て、経済の長期にわたる安定的な発展の基盤を整備することは、わが国経済運営の第一義的目標であります。政府といたしましては、近時の国際収支の悪化に対処し、いわゆる緊急総合対策を樹立し、当面応急の措置を講じましたため、国際収支は相当に改善され、物価は一応の落ちつきを見たのであります。しかし、事態はいまだ必ずしも楽観できないと思われますので、なお当分の間は、特に投資と生産の調整をはかり、輸出の増大を期するなど、着実な経済政策を堅持していきたいと考えているのであります。(拍手)国民諸君におかれても、国内需要の増大によって輸出促進がはばまれることのないよう、貯蓄の増強と消費の健全化について十分の御理解を得たいのであります。
 なお、この機会に、中小企業の振興について一言いたしたいと思います。中小企業は、わが国の産業の構造の中できわめて重要な地位を占め、その生産額と輸出額は、ともに全体の半ば以上に達しているのであります。しかしながら、その規模は零細であり、かつ、過度の競争による経営の不安定に悩んでいるのであります。また、設備や技術が立ちおくれていることも否定できないところであります。このような中小企業の特質に応じた振興策を強力に講ずることは、わが国の経済を安定した基礎の上に発展せしめるためきわめて緊要なことであります。この見地から、さきに内閣が提出し、現在継続審査中の中小企業団体法案の成立を強く希望いたしているのであります。(拍手)政府といたしましても、国際収支改善のための緊急総合対策の実施に当り、金融引き締めの影響が不当に中小企業に及ぶことのないよう、中小企業金融の確保について特別の措置を講ずることとしたのであります。
 社会保障制度の充実と労働政策の推進につきましては、かねて政府が意を用いているところであります。経済繁栄の陰に、一家の支柱を失い、あるいは失業・老齢・疾病などのために、その生活を守り得ない人たちのために鋭意施策を講じているのでありますが、さらに、医療皆保険制度、国民年金制度、最低賃金制度などについて真剣な検討をいたしているのであります。私は、全力を傾け、すみやかに国民の期待にこたえ得る福祉国家の実現をはかる所存であります。(拍手)
 なお、ここで、労働組合運動につきまして、率直に所見を申し上げたいと存じます。健全な労働組合運動の発達が社会経済の進歩のために望ましいものであることは言うまでもありません。しかるに、なお、労働組合の一部には年々計画的に大規模な闘争を繰り返して顧みざるものがあり、中でも公共企業体等国民生活に重大な関係を有する部門の職員が、いわゆる実力行使を行い、国民のきびしい批判を受けておりますことは、最も遺憾とするところであります。(拍手)政府といたしましては、労働政策の推進と相待ちまして、よき労使慣行を確立し、正常な労働運動の実現を期して参りたいと考え、かねがね、仲裁裁定などの完全な実施に努めるとともに、違法な行為については常に厳格な態度を保持して参ったのであります。最近、政府のこの態度に対して、労使双方において、その真意を理解して、よき労働慣行を作ろうとする良識の芽ばえが見受けられることは、まことに頼もしいことであります。この際、特に労使の当事者が一そう法令の順守に意を用い、秩序ある行動をとられるよう、強く望むものであります。(拍手)
 なお、本年七月九州地方を襲った豪雨による災害に際し、私は、直ちに現地におもむき、惨状を視察して罹災者を慰問激励するとともに、鋭意復旧に努めて参ったのでありますが、このような連年の風水害等に対しては、進んで根本的な治山治水対策を講ずるよう努めていきたい考えであります。(拍手)
 最後に、次の世代をになう青少年諸君に対し、特に訴えたいのであります。申すまでもなく、わが国の将来の運命をになうものは青少年であります。国家興亡の世界歴史をたどってみましても、青少年が祖国を愛することを忘れ、民族の誇りを失った国は、永久に滅び去っているのであります。これに反し、一たびは亡国の危機に瀕しながらも、青少年が、国家のため、民族のため、ひいては世界人類のために立ち上った国は、やがて再び栄えているのであります。(拍手)それゆえ、青少年の諸君が、さらに道義心をつちかい、わが国の歴史や文化に対する正しい理解と愛情を深めていかれることに、限りない期待を託します。そして、私は、青少年を含め全国民が、強い自信と誇りを持って祖国の繁栄と世界の平和に貢献せらるるよう、切に努力を望んでやまないものであります。(拍手)
#23
○議長(益谷秀次君) 大蔵大臣一萬田尚登君。
    〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕
#24
○国務大臣(一萬田尚登君) わが国当面の経済情勢並びにこれに対処すべき財政金融施策につきまして、所信を申し述べたいと思います。
 申すまでもなく、国民経済の運営に大切なことは、安定と成長ということであります。国民生活の向上も、雇用の増大も、経済の成長なしには実現し得ないのであります。しかしながら、経済の安定が失われますと、この成長の基盤そのものがくずれてしまうのであります。政府といたしましては、従来とも、わが国経済安定の端的な表現としての国際収支の動向に常に留意して、この安定と成長との調和をはかりまして、経済の運営を進めて参ったのであります。
 しかるところ、輸出の増大を中心といたしまして着実に発展して参りましたわが国の経済は、昨年度下期ごろより、国内投資を中心とする膨脹に転じ、これがため、本年に入ってからは輸入の急増を引き起して、国際収支は急激に悪化の傾向を示すに至ったのであります。このような成長の行き過ぎを是正するために、政府といたしましては、五月以降、金融の引き締めを中心とする総合的な対策をとって参ったのでありますが、幸いにいたしまして、国民各位の御理解と御協力によりまして、現在までのところ、おおむねその所期の目的を達しつつあると考えられるのでありまして、年初来逆調を示しておりました国際収支も、九月以降、実質的に黒字に転ずるに至ったのであります。(拍手)
 しかしながら、このような国際収支の黒字が、単に過去における輸入の行き過ぎの反動としての一時的な現象にとどまるものであってはならないのであります。経済の実体そのものが、国際収支の均衡を回復し、さらに進んで過去の赤字を取り返し得るような実力を備えなければならないのであります。このような真の意味での国際収支の改善を実現し、経済の長期的発展の条件を整備することが肝要なのでありまして、問題はむしろ今後にあるというべきであります。
 翻って最近の国際経済の動向を見ますと、ここ数年来続いて参りました世界的好況にも漸次頭打ちの様相が現われ、世界経済におけるドル資金の偏在、後進地域における購買力不足等と相待ちまして、わが国の貿易環境は必ずしも有利であるとは申せないのであります。このような情勢のもとにおきまして、いわゆる縮小均衡に陥らぬようにするためには、さらに一段とわが国輸出の伸張をはかることが必要であるのでありまして、それにはよほどの覚悟と努力がなければなりません。
 すなわち、投資及び消費を通じ国内需要を抑制してこれを輸出に振り向ける態勢を整えることが、当面の経済政策の中心となるのでありまして、このような観点から、国民は消費を節約して貯蓄に励み、企業は投資を控えて経営の堅実化をはかり、財政もまた政府みずからの消費と投資とを控えるという態度が必要であると存じます。これがため、金融面におきましては、貯蓄の増強を推進しつつ従来の引き締め基調を堅持し続けるとともに、財政の面におきましては、特にそれが経済の基本的動向に対して大きな影響を持つことにかんがみ、ここ当分の間は、いやしくも景気に対する刺激的要因とならないよう、歳出の実質的増加を厳に抑制することを基本的な方針といたすべきものと考えます。このことは、さきに政府が昭和三十三年度予算に関する基本構想において明らかにいたしたところであります。
 政府といたしましては、以上申し述べましたような基本的な考え方をもちまして、今後の財政金融施策を進めて参る所存でありますが、今国会におきましては、輸出の振興と貯蓄の増大についてさしあたり必要とする措置につき、御審議を願うことといたしております。
 すなわち、輸出振興のため、税制上の特別措置についての法律案等を提出し、また、貯蓄増強推進策の一環として、郵便貯金の金利及び預け入れ限度額の引き上げ並びに国民貯蓄組合のあっせんによる預貯金等の非課税限度額の引き上げについて、所要の法律案を提出いたしたのであります。
 なお、当面特に配意をしなければならないものとして、中小企業金融対策につき一言いたします。財政金融を通ずる引き締め政策の推進に当りまして、政府が最も意を用いておりますのは、中小企業等経済的に弱い面にしわ寄せが起らないようにすることであります。(拍手)これがため、従来とも、中小企業金融については特に留意して参ったのでありますが、今回、中小企業金融公庫、国民金融公庫の資金源の増加につきまして所要の予算措置を提案し、今後の施策に万全を期することといたしました。
 以上、当面の財政金融施策についての考え方を申し述べましたが、かように経済の堅実な運営をはかり、将来の発展の素地を搾り上げるならば、わが国経済の前途はまことに洋々たるものがあると信ずるものであります。
 私は、国民諸君の深い御理解と御協力とを期待してやみません。(拍手)
     ――――◇―――――
#25
○議長(益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。
    午後三時三十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時八分開議
#26
○議長(益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
#27
○議長(益谷秀次君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。
 淺沼稻次郎君。
    〔淺沼稻次郎君登壇〕
#28
○淺沼稻次郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、岸総理の施政演説に関連し、岸内閣の重要政策について質問を試みんとするものであります。(拍手)
 先ほど本議場において岸総理の演説を伺いましたが、われわれが要求いたしました臨時国会の意義にはぴったりこないものを感じたのであります。あまりにも抽象的であります。二月に組閣して、その後十カ月を経過し、内閣の改造まで行なって新政策を発表して全国遊説をやったその内閣の施政方針の演説としては、あまりにも具体性を欠いており、あまりにもおざなりであるといわなければならないと思うのであります。(拍手)
 そこで、私は、まず第一に、岸内閣の政治運用の根本方針についてお尋ねいたしたいと思うのであります。
 わが社会党は、七月の二日、経済危機突破政策樹立、岸総理の東南アジア並びにアメリカ訪問の結果の報告、さらには災害対策のために、七月末日までに臨時国会を開くよう、憲法第五十三条第二項の規定に基きまして要求したのであります。しかも、両院議長を通じて、案件を付し、日時を切って、衆参両院とも三分の一の署名をもって要求したのであります。その後、内閣改造が行われた直後、七月十一日に、災害対策の緊急を要した八月二十八日に、さらに政府が消費者米価の値上げを決定した九月九日に、次いで十四日と、それぞれ五回にわたって要求をしたのであります。このわが党の五回にわたる臨時国会の開会要求に対し、政府は、憲法の規定にいつ開かなければならないという規定のないのをたてにいたしまして、重要な外交交渉を行い、また、財政経済政策の転換を行い、物価値上げ等によって国民生活を窮乏に陥れ、拱手傍観し、国民に挑戦をしたのであります。かかる政府に対し、わが党は、国民の知りたいと欲すること、国民の疑問を感じておることを公開質問状の形において発しまして、政府が臨時国会においてこれに回答することを要求し来たったのでありますが、政府は、みずからほおかむりをしまして、今日に至るまで臨時国会の召集をおくらせたのであります。しかも、政府は、新政策を発表したが、これを予算化することもせず、何らの予算の裏づけもなく、ただ宣伝に努めて参りました。(拍手)世上岸内閣は宣伝内閣とさえいわれておることを考慮しなければならぬと思うのであります。(拍手)
 臨時国会の召集要求に応ぜず、今日まで引き延ばして参りました政府の態度というものは、明らかに、私は、憲法の精神を無視し、政策対決の場所である国会の存在を軽視した反議会主義、独裁政治への道であるとさえ思われてならぬのであります。(拍手)ここにおいて、私は、議会政治の根本について政府はいかなる考えを持っておるかをお伺いしたいのであります。政府はもっと国会を活用すべきであろうと思うのであります。すなわち、野党からの要求がなくても、アメリカとの外交交渉をやるとか、あるいは政策の転換を行う場合においては、政府みずから国会を開いて、国会を通じて国民の了解を求めるのが政府のとるべき態度なりといわなければならぬと私は思うのであります。(拍手)
 また、岸内閣は石橋内閣総辞職のあとを受けて成立した内閣でありますが、第二次鳩山内閣以来、すなわち、この前の総選挙が終って以来、保守党は、第三次鳩山内閣、石橋内閣、岸内閣、岸改造内閣と、四たび保守政権のたらい回しをやっておるのであります。第三次鳩山内閣は自由党と民主党が合同して自由民主党の上にでき上った内閣でありますから、その政党的基盤が変ったからこれは当然解散すべきであるといって強く要求をしたのでありますが、われわれの要求はいれられなかった。さらに、石橋内閣の成立の際も、解散、総選挙を要求いたしまして、政権の移動というものは総選挙を通じて国民の意思に従うべきであるということを、われわれは高調して参ったのであります。(拍手)石橋内閣も、その当初においては総理自体もこの考えがあるように、われわれは感ぜられました。また、幹部の一部の中にもそういう考えを持っておるように伺ったのでありますが、党内から強い抵抗にあって実現しなかったようであります。石橋内閣が総理の病気のゆえをもって総辞職し、岸内閣成立の際も、強く解散を要求いたしました。しかし、岸内閣は、閣僚は石橋内閣の閣僚をそのまま、政策もそのまま、予算もそのままといったように、石橋内閣の遺産内閣として生まれて参ったのであります。岸内閣としては、その自主性のない姿であります。わが党は、岸内閣に対し、予算案の撤回、新政策の提示、解散、総選挙を迫ったのでありますが、これもいれられなかったのであります。私は、はなはだ遺憾といわなければなりません。
 特に私がこの際申し上げたいことは、岸総理は大東亜戦争の指導者としての責任者であります。その岸氏が、今、日本の政治の中心として、平和建設の指導者として登場して参っておるのでありますから、この立場に立った岸総理といたしましては、われわれが求めなくても、一ぺん総理大臣として内閣の信任を問うのが私は道義的責任なりといわなければならぬと思うのであります。(拍手)
 また、岸総理がアメリカから帰るや、全閣僚の入れかえを行い、内閣の改造を行いました。そして、全閣僚を不適格として辞職せしめたのであります。自分の推薦した全閣僚が不適格なら、推薦したあなた御本人も不適格ということにならなければ筋が通らないと私は思うのであります。また、これをすることが、私は内閣連帯責任制の基本でなければならぬと考えるのであります。七月といえば、五月の中旬に国会が終って、いよいよ予算執行という時期になりまして、予算案の作成に関係した閣僚、審議に参加した全閣僚を辞職せしめて、そうして内閣を改造したことは、明らかに予算の執行に対して責任を持たない岸内閣の姿なりといわなければならぬと私は思うのであります。これは、ある意味においては、総理大臣の持っておる、天下の公器である大臣の任免権を、自己の権力維持、派閥抗争に利用するものであって、納得のいかないところであります。いずれにいたしましても、岸内閣は一度衆議院を解散して信を国民に問うべきときがきておると私は思うのであります。
 特に、岸総理は、アメリカよりの帰途、ハワイに立ち寄り、新聞記者との会見において、社会党との対決を表明されました。この対決とはいかなる意味を持つかわかりません。私も野党といたしまして議員生活が相当長いのでありますが、政府から対決を宣言されたのは今度が初めてであるということを申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)しかし、総理より対決を宣言された以上、この挑戦に応ずる用意があることをここで申し上げておきます。さらに、わが党は、改造岸内閣と、福島県知事選挙、衆議院再選挙で対決をいたしまして、勝利を占めております。さらに、最近の地方選挙は、戦えば必ず勝つといった状況にあるのでありまして、これまさに社会党の前途を占っておるようなものでありますから、いかなる場合においても対戦に応ずる覚悟のあることを伝えておきたいと思うのであります。(拍手)
 そこで、岸総理に対し、対決とはいかなることを意味するか明らかにするよう要求いたします。政府と野党、また与党と野党との対決は、政策をもって国会において論議をいたしまして切磋琢磨するところにあろうと私は思うのであります。ところが、岸内閣は、その国会の召集をおくらしてきました。対決と言いながら対決を避けてきたのが政府の姿なりといわなければならぬと思うのであります。(拍手)さらに、私は、真の政府と野党との対決は、総選挙、すなわち解散、総選挙であると思います。国民を審判官として、政府と野党がその政策を中心に対決をして切磋琢磨するということであろうと思うのであります。すなわち、政府は解散、総選挙をいつに予想しておるか、率直なる意見を私は承わりたいと思うのであります。(拍手)
 岸総理は、解散の時期については、新聞記者に、今年中はやらない、こう言っておる。しかし、来年はやるかもしれぬということを明言しておるのであります。私も来年は解散の時期であるということを考えております。そこで、総理がいつ解散を断行するおつもりか、お伺いしたい。今直ちに行うことも私は一つの方法であろうと思うのであります。しかしながら、お互いに対決をするのでありますから、昭和三十三年度の予算を政府は編成し、通常国会の休会明けにおいて、今のような施政方針の演説でなく、ほんとうに国民に訴えるような岸総理の施政方針の演説、外務大臣の外交方針の演説、大蔵大臣の財政経済の演説を行い、野党社会党また鈴木委員長を初め代表者を立てまして、そうして政策の異なっている点を明らかにいたしまして、衆議院を解散し、国民に信を問うのが最も適当なりと私は考えるのであります。(拍手)この点について、岸総理の忌憚のない意見を伺いたい。
 第二に、岸内閣の外交政策についてお伺いしたいと思うのであります。第二十六国会が済んでから、世界の情勢は非常に変っております。岸総理は、この変っておりまする世界の情勢をいかに認識し、いかに対処せんとするのか、お伺いをしたいのであります。すなわち、ソ連の大陸間弾道弾の成功、人工衛星の打ち上げの成功は、最近の科学の進歩がいかにすさまじいものであるかということを物語っております。大陸間弾道弾は人類最終の兵器といわれ、人工衛星の打ち上げの成功は人類が宇宙に踏み出した最初のできごとだといわれております。すなわち、人間が自然を征服した勝利の姿であります。科学はまさに政治に優先をしております。今日われわれ政治家が思いをいたさなければならぬことは、この科学の進歩を戦争という悪魔の手に渡してはならないということであります。(拍手)このすさまじい科学の進歩を人類の平和と幸福のために使用することこそ、政治家に残された唯一の道であり、その責務と申さなければなりません。(拍手)
 このような核兵器、大陸間弾道弾、原水爆の時代に、わが国を防衛するものは、再軍備でも、日米安全保障条約のような軍事ブロックでもありません。ネールは「現代すでに二国間の軍事同盟などは、もはや古い時代の遺物と化した」と言っておるのであります。岸総理は、日本はいずれの軍事ブロックにも入らず、自主独立の外交を貫くことこそ、真に日本の独立と平和を確保し、世界の平和に寄与するゆえんと考えるが、いかに考えるか、一つお聞きしたいと思うのであります。総理の現在の世界情勢に対する外交の基本方針を伺いたい。
 日米安全保障条約、行政協定の解消、サンフランシスコ条約の改訂、中国と国交回復、すなわち中共の承認、ソ連との交流の活発化、歯舞、色丹、千島諸島の返還、小笠原、沖繩諸島の完全返還、この要求は日本国民が長い間要望して参ったところであります。そうして、また、現在も強く要求しておるところであります。岸総理は、先般アメリカを訪問、アイゼンハワー大統領、ダレス国務長官等と会見後、日米共同声明書を発せられました。これによってアメリカと日本との関係は新時代に入ったといわれておりまするが、日米共同声明によって日本の国民の要求は無視され、日本のアメリカ依存とアメリカの対日政策が再確認をせられ、国民は、深い失望と、深い疑惑と、憤りを感じておるのであります。(拍手)
 渡米前、岸総理は、この国会におきまして、安保条約は再検討の時期がきておる、沖繩の施政権の回復、小笠原島への日本人の帰島等を公約されたのであります。その公約はすべて裏切られております。日米共同声明では、現在日米間に横たわっている基本的問題は一切解決されておりません。これは一方的に日本の対米従属を深めておるのであります。すなわち、日米安全保障条約、行政協定の改訂問題は、日米安保合同委員会を作ることによって事実上のたな上げにされております。沖繩、小笠原諸島のアメリカによる半永久的な基地化ということを黙認し、教育権すら返還されず、砂川基地の拡張、核兵器の持ち込み等、日本をしてアメリカの原子戦争体制の一環に入れてしまったのは、岸・アイゼンハワー会見共同声明なりと言っても過言でありません。(拍手)岸総理はアメリカ訪問等の成果をたたえておるのでありますが、私どもは重大なる過失を犯したといわなければならぬと思うのであります。
 今、日本の当面しておる問題は、アメリカとの軍事関係を強化することではありません。アメリカとの軍事関係を解消することであり、切ることであるといわなければならぬと思うのであります。(拍手)すなわち、日米安全保障条約の解消であります。また、中ソ両国に対して、中ソ友好同盟条約中の軍事関係の解消を求めなければならぬと私は思うのであります。(拍手)そうして、日米中ソ四カ国並びに関係諸国が新しい安全保障体制を作って参らなければならぬと思うのであります。これらに対して岸総理はいかように考えておるか、その所見を承わりたいと思うのであります。
 また、日本外交の基本というものは、アジアとともに生きていかなければならぬと思うのであります。アジアの孤児になってはなりません。しかし、岸・藤山外交の今の情勢というものは、アジアの孤児より世界の孤児たらんとしておる傾向があることを指摘しなければならぬと思うのであります。(拍手)われわれは、いずれの陣営にも属せず、自主独立の立場に立って外交を展開すべきだと思います。現在の世界の平和は、不幸にして力関係の上の平和であります。アメリカ、ソ連を中心とする幾多の軍事ブロックによって保たれておるのであります。しかし、世界は二つの陣営に分れておるのではありません。二つの陣営の中に、戦後西欧植民地から解放されまして、いずれの陣営にも属せず、自主独立、世界平和のために戦っておりまするアジア、アフリカの民族国家あることを忘れてはならぬと思うのであります。(拍手)わが国にとって、このアジア、アフリカ諸国との提携こそが、日本の平和、アジアの平和、世界の平和に貢献する道であります。これを忘れてはなりません。
 岸総理は、さきに東南アジアを訪問され、また、この国会が終りまするならば東南アジアを訪問されるということであります。しかし、一貫せる基本方針なくして迎合することは何らの意義を持たないものであるということを、私は指摘しなければなりません。(拍手)すなわち、インドにおいてネールと会見すれば原水爆の禁止を言い、さらに、台湾に参って蒋介石に会えば、あなたの本土反攻を望んでおりますといったような、相反する言動をもってしては、私は信頼をつなぐゆえんではないと思うのであります。(拍手)従いまして、東南アジアを訪問せんとするならば、その基本的な立場をどこに置いておるのか、これを私は伺っておきたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、岸総理は東南アジア開発機構の設立を提唱しております。この間、石井副総理が帰られまして、この問題はまだ東南アジア諸国の了解を得る域に達していない、こう言っておられるようでありますが、私は、これに対する東南アジア諸国のいわゆる心配はどこにあるかといえば、この東南アジア開発基金というものは、アメリカのドルを日本の技術でオブラートしてそうして、日本がアメリカの東南アジア発展と帝国主義的な発展の仲介体の役割を務めんとしておるところに心配があると、私どもは思わざるを得ぬと思うのであります。(拍手)これを考えなければなりません。
 また、私どもは、一応日本保守政権の明治以来の外交の経過についても考えてみる必要があろうと思うのであります。すなわち、日本外交は、明治の末期から昭和の初め、イギリスと軍事同盟を結んで、イギリスの番兵のような仕事をやった。さらに加えて、大東亜戦争中は、これまた遠きドイツ、イタリアとの間に軍事同盟を結んで、中国に侵入し、東南アジアに侵入したところに、私は大きな誤りがあるといわなければならぬと思うのであります。加えまして、今また、岸・藤山外交は、遠きアメリカと結んで、アメリカの帝国主義的発展の媒介体をやろうとするところに、私は大きな外交の失敗があるといわなければならぬと思うのであります。かくのごとく遠くと結んで近くと対立する外交は修正をされ、改正をされて参らなければならぬと思うのであります。
 今、日本の外交が当面している問題は、善隣友好の関係であり、善隣友好の外交の推進であると私は思うのであります。それには、中国の承認から始められてこなければならぬと思うのであります。日中の国交回復よりなされてこなければならぬと私は思うのであります。現在、中国本土は、六億の人口を擁しまして、中華人民共和国としてその主人公として登場しておるのであります。従いまして、日本は満州事変以来一番大きな迷惑をかけたこの中華人民共和国との間の平和を持つことが善隣友好外交の端緒でなければならぬとも言い得ると思うのであります。(拍手)しかも、中国は、歴史的、地理的に絶対的に日本との協力関係に置かれ、さらに、経済的に見ても長き間の友人であります。中国の資源と日本の技術と結びついたところに両国の繁栄があるということを、私どもは考えなければなりません。問題は台湾との問題でありまするが、中国は一つ、台湾は中国の一部として解決すべきだと私は思うのであります。(拍手)政府は中国との国交回復についていかように考えるか、重ねてお伺いをしておきたいと思うのであります。
 さらに、中国の国連の加盟問題については、われらの支持するところであります。政府は、中国の国連加盟問題が論議される場合において、いかなる態度をとらんとするか、これを承わりたいと思うのであります。(拍手)
 また、東南アジア諸国のうち、インドネシア、ヴェトナムとの賠償も急いで行わなければならぬと思うのであります。
 次に、日本は国連に核兵器実験禁止に関する決議案を提出しておりますが、この案は東西両陣営のかけ橋をするというような立場において、非常にあいまいなものであります。このような期限付のものをやめて、広島に、長崎に、南太平洋に、三たび洗礼を受けておるのでありまするから、核兵器実験の無条件即時禁止という決議案がなぜされなかったのか、私は伺いたいと思うのであります。(拍手)日本が東西両陣営のかけ橋となるといっても、アジア、アフリカのグループと一緒になってかけ橋の役割を務めなければ、ついには世界の孤児になるということを、私どもは指摘しなければならぬと思うのであります。(拍手)しかも、岸総理は、インドのネール首相との共同声明において、国連において協力を誓ったのでありますが、その協力の結果を一体いかように処理されんとするのか、お伺いをしたいと思うのであります。
 第三点は、岸内閣の財政経済政策についてであります。まず、私は、岸内閣の財政経済政策の見通しの誤まりと、その行き詰まりの責任についてお伺いをしたいと思うのであります。
 わが党は、去る二十六回国会の、本会議においては河野密君、並びに、予算委員会においては和田博雄君を立てて、当時、石橋内閣、岸内閣、こう変って参りました内閣でも、財政経済の見通しの誤まりを指摘して勧告したのであります。すなわち、政府の言う一千億減税、一千億施策ということは、神武以来の景気という声に酔い、日本経済の行き方を、また、国際経済の動向を楽観的に見、かつ甘く見ている、そうして放漫なる政策なることを指摘して参りました。本年度予算において一般会計一千二十五億、財政投融資において六百六十億の増額は、民間投資を刺激し、ひいては輸入過剰となって、国際収支の急激な悪化を来たすことになり、また、政府の鉄道運賃の引き上げを初めとする諸物価引き上げ政策は国民生活を圧迫し、一千億減税政策は水泡に帰する結果を招来するということを予言し、政府に警告したのであります。この社会党の予言、警告は、まさしく的中をしたのであります。(拍手)政府の三十二年度予算は投資インフレを招き、国際収支は急速に悪化し、諸物価の高騰を招き、一千億減税、一千億施策の夢は消えたのであります。このような状態になって、政府は、その改造に当り、大蔵大臣池田勇人君にその責任を負わせております。緊急経済政策要綱を発表して、まだ自己の責任をのがれんとしておるのでありますが、これは単に大蔵大臣のみの責任ではありません。政策の見通しの誤まり、しかも、それが行き詰まったのでありまするから、この責任というものは当然岸内閣そのものが負わなければならぬ責任であろうと私は思うのであります。(拍手)これに対して岸総理はいかような感じを持っておるか、お伺いをしたいと思います。
 神武以来の景気から神武以来の不景気にしておいて、責任を感じませんというのでは通らない話であろうと私は思うのであります。(拍手)
 政府の転換をした緊急経済政策は、民間大資本の投資をそのまま自主的規制にまかせ、他方、金利の引き上げ、財政投融資の一律一五%の繰り延べ、地方債の繰り延べ等々でありまして、労働者、農民、中小企業者等、大衆生活を犠牲とするデフレ政策の強行となって現われて参りまして、デフレ一萬田大蔵大臣がその推進力となっておることは、現実の姿であります。政府の政策転換はまず中小企業者にしわ寄せされ、手形の不渡り、破産、倒産が次ぎ、労働者には社外工の首切り、臨時工の首切り、賃金ストップとなって現われておるのであります。現に、鉄鋼争議のごときは、資本家のゼロ回答が争議を深刻にしておるということを知らなければなりません。(拍手)
 現在の日本経済の悪化は、岸内閣の政策の見通しの誤まりであります。政策の急転換の結果である。第二十六国会を終えて一カ月半にして政策を転換しなければならなかったところに内閣の責任ありといわなければならぬと思うのであります。すなわち、岸内閣は立憲政治を解し、責任政治を解する、こういうような立場に立って静かに考えるならば、岸内閣は総辞職して国民にその罪を謝罪することが当然なりといわなければならぬと思うのであります。(拍手)
 次に、政府に来年度の予算編成の方針その他、その規模並びに内容等についてお伺いしたいのでありますが、これは、他の同僚、並びに、詳細は予算委員会に譲ることにいたしまして、今国会で問題になっております補正予算の問題について一言お伺いしたいと思うのであります。政府は、今臨時国会において、中小企業の年末金融のみに限定して補正予算を編成しておりますが、これは明らかに政府のごまかしであると私は思うのであります。すなわち、前国会終了以来、長野、岐阜、九州地方の自然災害、政府の経済政策の失敗を原因とする常用、雇用の減少、完全失業者の増加、駐留軍労務者並びに特需労務者の大量失業、政府の消費者物価のつり上げなどによる勤労生活者の家計の圧迫など、非常な深刻なる変化が来ておるのであります。従って、政府が予算を補正しようとするならば、これらに対応するような補正予算を組むのが政府のとるべき財政措置なりといわなければならぬと思うのであります。(拍手)すなわち、政府が補正予算の内容を中小企業者のみに限定して、一般会計の補正を無視しておることは、臨時国会における予算審議を通じて自己の失敗が国民の前に暴露されることをおそれる結果ではなかろうかと思うのであります。わが党は、政府に対し、災害対策費の増額、失業対策費の増額、公務員、日雇い労働者の年末手当の増額、中小企業者の年末融資等について、一般会計の補正予算を要求するものであります。(拍手)これについて政府の答弁を願いたいと思うのであります。
 さらに、今、日本が当面をしておりますところの日本経済について、次の三点が考慮されるのであります。この点について政府の考えを私は承わりたい。
 第一は、国際収支の改善をはかるためには、日中貿易を初めとするアジア経済との結合以外に最善の道はないと思うのであります。世界的にドル不足と輸出競争が激しく、ウォール街の株価暴落にも現われておるように、資本主義経済の頭打ちの傾向をわれわれは見のがしてはならぬと思うのであります。このときに、日中貿易の全面的拡大、ソ連とのシベリア開発計画の協力、インドその他との長期契約の拡大等が日本の輸出を直ちに好転させる最も手近かなる道であると思うのであります。しかるに、政府の不熱意によって日中貿易第四次協定が行き悩んでおることは、はなはだ遺憾といわなければなりません。
 第二には、日本経済、特に民間資金の統制を計画的にされることが必要と思います。政府は金融引き締めを声を大にして強調しておりますが、独占的な大企業に対しては、自主規制という名において、ゆるやかにしておるのであります。現に、日銀のオーバー・ローンは年末には六千億に及ばんとし、やみ金融も一千億に及ぶとさえいわれておるのであります。これらの規制なくしては、いかに財政のみを緊縮しても、経済の引き締めの実効は上らないと私は思うのであります。(拍手)いたずらに引き締めの犠牲を中小企業、零細企業にしわ寄せをしておるのであります。最近、政府、与党内にも資金計画機関の設置の声が上っておるのでありまして、これは聞くべき声であると私は思うのであります。これについて、総理はいかような考えを持つか、伺いたいのであります。
 第三は、来年度の予算に対し抜本的な対策をとるべきと思います。すなわち、今日のごとき大陸間弾道弾、人工衛星の時代には、国の防衛は軍事同盟や自衛隊のよく落ちる飛行機では何ら役に立たないというのが、天下の世論であります。(拍手)従って政府は、今日、アメリカに対し、防衛分担金の減額はもとより、防衛費の削減について交渉すべきであると思いますが、いかようにお考えになるか承わりたい。特に、予算の規模を押えて国民生活の安定、経済の拡大を行うためには、どうしてもこのような非生産的浪費を削る以外に道がない。従って、防衛費の最大削減ということが出てくるはずでありますが、これに対していかようなお考えを持つか、承わりたいと存ずるのであります。(拍手)
 第四点は、岸内閣の国内政治についてであります。岸総理の訪米による日米共同声明で、日本がアメリカの原子戦争体制の中に押し入れられたということは、先ほど申し上げた通りでありますが、それが日本の内政にどういう姿をもって現われておるかといえば、憲法改正、再軍備、さらに、労働、文教政策の反動化、労働運動に対する弾圧となって現れておることを指摘しなければなりません。(拍手)
 そこで、第一に憲法調査会の発足でありますが、憲法第九十六条は、憲法改正の発議が国会にあることを明記し、国会のみが憲法改正の発議権あることを明確にしておるのであります。従って、行政府たる政府に憲法調査会を置くことは明らかに憲法違反であるといわなければなりません。(拍手)憲法調査会法が多数で国会を通過したといっても、憲法違反の法律である以上、社会党が委員を送らないことは、これまた当然なりといわなければならぬと思うのであります。(拍手)しかし、政府は一方的にこの憲法改正を行わんとしておるようでありますが、かりに調査会において憲法改正の成案を得たと仮定しても、社会党は衆参両院に三分の一の勢力を持っているのでありますから、発案することはできないのであります。従って、政府の行動は、ただ憲法改正を取り上げて世論の分裂をさせているという役割以外に何もやっておらぬといっても、断じて過言ではないと私は思うのであります。(拍手)特に、わが党から第二十六回国会に憲法改正調査会の廃止法案を出しておりますが、この審議にも応じない、審議未了のままにしておいて発足するというところに、私は反動性の現われありといっても過言ではないと思うのであります。(拍手)
 次に、憲法改正の問題に関連をいたしましてお伺いをしたいのは、参議院の全国区制改正問題であります。政府は、最近、参議院の選挙区、全国区を廃止するために、これを選挙制度調査会に諮問したそうであります。果して真にそれを考えておるかどうか、私は承わりたいと思うのであります。参議院に全国区制のあることは、参議院に職能代表的な性格を与えようとする考慮があって行われたことであり、もし衆議院と参議院が同じ選挙区において選挙が行われるようになりますならば、参議院の存在はなくなって 一院制度でなければならぬという議論が出てくることは必然であろうと思うのでありますが、これに対する政府の考え方を承わりたい。(拍手)さらに加えて、多くの人はこう言う。参議院の全国区の改選に当っては常に社会党が多数当選をする、従って、社会党を当選させないためにはこの全国区制の改正が必要である、さらには、これを通じて憲法改正をするためにはどうしても全国区の廃止が必要であるといって、全国区の廃止は憲法改正に通ずるといっておるのでありますが、果してしかりか、私はお伺いをしたいと思うのであります。(拍手)さらに、全国区の廃止は小選挙区制の採用に通ずる結果を招来すると思うのでありますが、この点についても、私は政府の所信を承わっておきたいと思うのであります。
 第五点は、岸内閣の重大政策の一つとして主張しておりまするところの三悪追放についてお伺いをいたします。岸内閣は、その発足に当って、三悪、すなわち汚職、暴力、貧乏の追放を公約し、岸総理も全国遊説においてこれを公表したやに承わっております。しかし、あまり反響がなかったとも、私は伺っておるのであります。(拍手)これはなぜかといえば、三悪追放と自由民主党の現実政策の間にあまりにも隔たりが多い結果ではなかろうかと私は思うのであります。(拍手)
 三悪を追放せんとするや、まずその起ってくる原因を追及しなければならぬと思うのであります。汚職は何かといえば、政治家と資本家の金による結びつき、それによって職が汚されることで、さらには官僚と資本家との金による結びつきによって職が汚されることであります。金による結びつきからくる職を汚すことが汚職であるということを知らなければなりません。何から起るかといえば、この根本の原因はどこにあるかといえば、資本主義がその政権を維持するために金を使うという悪習が根本であるということを忘れてはならぬと思うのであります。(拍手)
 そこで、私は、単なるスローガンばかりでなく、具体的に汚職の追放を考えなければなりません。すなわち、あっせん収賄罪の制定、選挙法の改正による連座規定の拡大、買収の絶滅、さらに政治資金規正法の改正等を考慮しなければなりません。特に、政府並びに政党は、その身の回りを清潔にしなければならぬと思うのであります。現在、政府並びに与党の回りには、富山ダム、石狩漁業、西村金融、外車不正輸入、バナナ、売春疑獄等、多くの問題を投げておるのであります。(拍手)売春疑獄に関しては、読売新聞の記者の逮捕事件のごときものがあって、一種の言論弾圧が行われているということを指摘しなければなりません。(拍手)また、このような傾向に対しては、まさに岸内閣の末期的現象であるとさえ民間においては伝えられておるのであります。(拍手)内外世論が起っておることに政府は心せねばなりません。これらに対して政府は根本的究明をしなければならぬと思うのでありますが、その方途を承わりたいと思うのであります。
 暴力の追放、内外の暴力の追放をうたっておるのでありますが、日本の基本的な組織法であるところの憲法をじゅうりんし、しかも、日本の秩序の根源であるところの憲法をじゅうりんしておる政府に国内暴力追放を言う資格がないことを、私は指摘して参らなければならぬのであります。(拍手)そこで、国際暴力について私は承わりたい。国際暴力の最大なるものは何であるかといえば、戦争であります。その最大なるものは原水爆であります。従って、岸内閣は、戦争追放と原水爆追放のために最大の努力を払っていかなければならぬと思うのであります。戦争追放のためには、日本国民が敗戦という冷厳なる現実の前に二度と再び戦争を起さないようにするという国家体制を作るために自己反省を行なって制定した日本国憲法を守ることから始められてこなければならぬと思うのであります。(拍手)ことに、憲法第九条に、国際紛争を解決する手段としての戦争は永久にこれを放棄する、従って、陸海空軍及び一切の戦力はこれを保有しない、国の交戦権は行使しないと規定があるのでありまして、岸内閣は、国際的な暴力を追放せんとするならば、この問題に触れてきて、まず、日本国憲法、ことに第九条の擁護から始まって参らなければならぬと私は思うのであります。(拍手)しかるに、政府は――戦争追放を叫ぶ政府が、その憲法改正を主張し、国連においては原水爆の無条件即時禁止の決議案を出し得ず、さらに、核兵器持ち込み絶対反対とも言うことができない。こういうことは一体いかなるわけか。私は伺っておきたいと思うのであります。
 さらに、岸総理は、戦争がなぜ起るか、このことを考えてもらいたい。特に戦争執行の経験者たる岸総理はわかっておるはずであると思うのであります。(拍手)戦争は資本主義国家がその内部矛盾を外に解決せんとするところに起るものであります。また、資本主義国家の国際市場の争奪によって起るものであることを、われわれは考えなければなりません。(拍手)たとえば、岸総理の関係深い満州事変はなぜ起きたかといえば、当時の日本資本主義は、農村は窮乏のどん底に陥り、さらに都会には失業者があふれたのであります。この国内矛盾を満州に出て解決せんとしたのが、いわゆる日本資本主義の姿であるといわなければならぬと、私は思うのであります。戦争、それは資本主義の必然の所産であります。戦争追放というなら、資本主義そのものにメスを加えることから始められなければなりません。また、原子力が発見されて、それが人類の幸福のために用いられるならば問題はないのでありまするが、戦争という悪魔に用いられるところに問題があるのであります。原水爆禁止も、その根本的解決は、戦争を起さない、資本主義そのものにメスを加えなければ根本的に解決ができない問題であるということを指摘しなければなりません。(拍手)
 貧乏の追放、まことにけっこうでありますが、しかし、貧乏も資本主義の所産であることを忘れてはならぬのであります。資本主義は、生産機関を独占する資本家階級と、生産機関から切り離され、日ごろ持っておりまする労働力を資本家に売って、その代償として労働賃金をもらっておる労働階級と、二つに分れておるのが、資本主義の姿であります。従って、資本主義は、富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなっていくという傾向にあるということを忘れてはならぬのであります。(拍手)現に、貧乏追放を叫ぶ岸内閣のもとで、鉄道運賃の値上げ、消費者米価の値上げ、さらには一般物価の値上げによって国民生活は圧迫をされておるのであります。貧乏を追放するという岸内閣によって貧乏が製造されておるということを指摘しなければならぬと私は思うのであります。(拍手)
 三悪追放――汚職、暴力、貧乏、ともに資本主義の所産であります。資本家的政府、資本家的政党がこれを叫んでも、スローガンたり得ても、実行することは私はできないと思うのであります。(拍手)これを実行するものは、資本主義を打倒して社会主義を建設するわが社会党の任務なりと言って、断じて過言ではないと思うのであります。(拍手)そこで、私は、資本主義と三悪の問題について総理大臣はいかように考えるか、答弁を承わりたいと思うのであります。
 これで私は演説を終りますが、答弁いかんによりましてはもう一ぺん演壇に立つことを留保いたしまして、私の演説を終ります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#29
○国務大臣(岸信介君) 各般の問題について非常に広範にわたっての御質問でありました。私から要点について明確なお答えを申し上げます。
 第一点は、社会党の臨時国会の要求に対して今日までなぜこれを遷延したかという点であります。社会党から数度国会開会の要求のありましたことは、私どもよく承知をいたしております。従いまして、これに対して、誠意を持って、われわれとしては適当な機会に臨時国会を開くために、あらゆる準備を進めてきたのであります。その途上におきまして、社会党首脳部の方々とも政府は数回会っております。そうして、政府の意図しておること、また、社会党がそれに対して御要求になっておること等につきまして、意見の交換をいたしてきたのであります。もちろん、私は社会党の主張がわれわれの主張をそのまま認められたとは考えませんけれども、しかし、政府として、臨時国会に提案すべき諸案件を整えて準備をするという以外に他意あって今日までおくれたわけではありませんから、御了承を願いたいと思います。
 第二は、社会党と対決するという意味はどういう意味であるかというお話であります。私は、対決という言葉をそのまま使ったかどうかは、はっきりした記憶はございませんけれども、しかしながら、二大政党になりました以上、お互いの主張をはっきりさせて、そうして、立場なりその主張の根拠がどこにあるかということを国民に十分に理解せしむるようにして、そうして国民の批判を待つということが、私は民主主義の二大政党のあり方と考えます。(拍手)このことは、あるいは国会におきまして、あるいはその他の機会におきまして、できるだけわれわれはその点を明確にして、国民の正しい批判を求めることにしたい、かように考えております。(拍手)
 次は、解散に関する御質問でありました。解散については、従来の国会におきましても、しばしば御質問がありました。今淺沼君のおあげになりました、解散を即時やれという理由につきましても、私は常にその理由に対しては承服しない、立場を違えて考えるということを、前国会におきまして、幾たびかお答えをいたしております。今日におきましても、前国会においてお答えしたことと少しも意見は変っておりません。(拍手)
 次は、外交政策に対してのいろいろな点に関する御質問でありました。まず、最近、大陸間における誘導弾が(「誘導弾とは何だ」と呼ぶ者あり)弾道弾ができ、また人工衛星が打ち上げられておるような時代に、科学がいわゆる政治に優先すべきものであって、外交の政策の根本についても考え直さなければならぬのではないかという御質問でありました。私は、これらの科学の非常な発達というものが、世界の文化や、あるいは政治の上に大きな変化を今後もたらすということは、さように考えております。しかし、今日の状態において、すべての今までの外交政策の根本を直ちに変えるということは、時期的に申しまして適当なことではないと思う。私どもは、科学の発達が――淺沼君もその意見を強く述べられておりますが、われわれは、あくまでも、これが人類の福祉のために、平和のために、こういう新しい科学の進歩が用いられなければならない。(拍手)これが破滅的な利益に用いられるということは、われわれがあくまでもこれを阻止することに努めなければならぬ。この意味において、これらを持っております大国間において軍縮の協定ができて、そうして、こういうものを兵器に用いないということを、今後とも、あらゆる努力をして作りあげるようにいたしたいと考えております。
 日米の関係につきまして、領土問題あるいは安全保障条約等につきましての御意見であります。私も日本人の一人としてこの領土問題を解決し、また、安保条約というような条約がなくなってくることを心から望んでおるものであります。過般のアメリカを訪問した際におきましても、私はそういう見地に立って私の意見を述べた、しかし、残念ながら、現在のところにおきまして、アメリカ側がこれを承服するに至っておらないということは、私どもが非常に遺憾とするところであります。国民の総意をあげて、これが実現に今後とも努力したいと思うのであります。(拍手)
 それから、むしろ日米安保条約というようなものは解消し、また、中ソ間に存する条約もこれをやめて、そうして、ソ連、中国、日本、米国というようなものが一緒になった安全保障体制ができることが望ましいのではないかというお話でありました。私は、これが望ましいことは全然同感であります。ただ、その実現性につきましては、今日の国連の実情をお考えになりましても、そういうことの実現性が非常に遠いということが、実に遺憾にたえないのであります。(拍手)
 次に、東南アジアを私が歴訪したことに関連して、この私の東南アジアにおける各国に提案をいたしました東南アジア開発基金の構想に対しての御批評や、あるいは、東南アジアの諸国において中立主義をむしろとって、両陣営のいずれにも属せない立場においてアジアの勢力を結合して世界の平和に努むべきではないかという御意見の御質問でありました。私は、アジア諸国において、この長い願いであった植民地から解放せられて独立を回復し、これらの国々において民族主義が非常に強く盛り上っておるという実情をよく承知いたしております。しかし、私は、これらの東南アジア諸国を歴訪してみまして、これらの国々が、同時に、共産主義の脅威に対して、あくまでも民主主義あるいは自由主義の立場を堅持して進んでいかなければいかぬという考え方におきましては、私が歴訪しましたところの国々の首脳者は、いずれも私と同意見でございます。(拍手)従いまして、私は、この点において、アジアが一面においては民族主義を考えており、一面においては民主主義であり、自由主義であるという立場において、われわれは十分に協調できるものであって、決して矛盾するものでないという結論を得ておるのであります。(拍手)また、東南アジア開発基金の問題に関しましては、これは一つの構想でありまして、まだこれが具体化されるのには、私はさらに研究を要する点が幾多あると思います。しかしながら、今淺沼君が質問をされたように、この構想は、アメリカの資本主義の手先となって、日本が技術を提供することによって、その資本主義的帝国主義の役割をこれで演ずるのではないかというような疑いが東南アジアの諸国にあるのじゃないかということであります。従来、東南アジア諸国に対しましては、御承知の通り、アメリカは一国で相当な援助をいたしております。これがうまくいっていない。今お話のような点を、これらの国々のものが非常に心配しておる。私がこれを提案したのは、この東南アジアの開発については二つの大きなものがある。それは、一つは資金であり、一つは技術である。この二つがなければ、東南アジアの経済開発といっても、それはできない。ところが、その資金を――できるだけ中立性を持った、そういう疑いが持たれない、ある資本主義的な一国がこれを支配するという懸念を持たれないような資金を作ることが必要じゃないか、従って、これに対しては、アメリカだけじゃなしに、各国がそれぞれのなににおいてこれを出す、そうして、それの運用については、資金を出した国だけではなくして、これを使うところの国の代表も入れてその資金の運用を考えるというところに、今淺沼君が御心配になっているような懸念をなくしようという考え方であります。(拍手)十分に私はこれを説明し、今後実現することに努力をしたいと考えております。
 次に、日中国交回復に関する問題であります。私は、日本の外交が善隣友好を進めるということにその基礎がなければならぬというお考えも、私が施政演説に述べております一つの項目でありまして、全然同感でありますが、そのために日中国交回復を今やるかという問題に関しましては、私は従来もお答えを申し上げておりますが、まだその段階ではないという考えでおります。国連に加盟する問題に関しましても、私は、この中華人民共和国が、国際間において、国際間の仲間としての一般の信をかち得るという段階に達することが前提として必要である、かように考えております。(拍手)
 インドネシアとヴェトナムの賠償問題につきましては、これはできるだけ早く解決して、これらの国々と正常なる国交を回復したいと考えて、いろいろと交渉をいたしておりますが、まだ結論を得ておりません。(「台湾はどうなんだ」と呼ぶ者あり)台湾につきましては、御承知の通り、中国におけるところの主権を台湾の政府と中華人民共和国と両方が主張しておるというのが現状でございます。しかも、われわれは、この台湾の政府との間に、いわゆる中華民国政府との間に、正式に国交を回復し、これとの間に友好関係を作っております。これを無視するということは、日本の国際的信義の上からも、これは容易なことではないのであります。これらのことを十分調整するにあらざれば、中国の承認問題というものは具体的にならないということを考えます。
 次に、財政経済に関する御質問にお答えを申し上げます。経済財政の問題につきまして、この前の国会におきましていろいろの論議が行われたことは、御承知の通りであります。これらの問題に関して、私どもできるだけ実情に即した政策を常にとっていくということは、政府としてはその責任があると思います。もちろん、私は、一切の見通しについてわれわれが完全であったということは申し上げません。しかし、われわれは、この傾向に対して、いち早く緊急総合対策を作りまして、これが実行によりまして、今お話がありましたような最悪な事態を引き起すことなくして、国民の協力を得て推移しておることは、御承知の通りであります。
 さらに、憲法問題に関する御質問でありますが、憲法調査会の問題は、御承知の通り、あれは調査会法にはっきり書いてありますように、日本の現行憲法を検討し、これに関連する諸問題を調査審議して、その結果を政府及び政府を通じて国会に報告するということになっております。今おあげになりました国会の憲法改正に関する発議権というものには全然触れておらないのでありまして、従って、これはちっとも発議権を制限したり、あるいはこれを妨げたりするものでないのでありまして、この点において、私は、その理由によって、憲法違反となるという社会党の御主張は、どうしても納得できないところであります。(拍手)私は、この重大なる憲法の問題に関して、あの権威ある調査会に、社会党の方々が従来の考えを修正されまして、一日も早く参加せられることを、今なお心から願っておるものであります。(拍手)
 参議院の全国区及び衆議院の小選挙区に対する御質問でありましたが、参議院の全国区の問題に関しましては、従来の施行の成績にかんがみましても、いろいろな批判があるのであります。たとえば、全国区というような関係では、選挙民と選挙される被選挙者との間の関係が非常に薄くなる、これは選挙の本質からいってどうだ、あるいは、地方区の選挙権及び全国区の選挙権と、二票国民が持つということが適当であるかどうかというような、いろいろな点から、これは論議されております。従いまして、われわれは、これまた権威ある調査会において十分に審議をしてもらうつもりであります。その審議の結論を待って政府としては善処いたしたい考えであります。衆議院の小選挙区の問題につきましては、これは、かねて私の持論として、二大政党を健全に育て上げる上から申すと小選挙区が望ましいと自分も今なお考えております。しかし、その小選挙区制をいかにするかということについては、この前の国会においても非常な御議論があったように、公正な第三者によってこれが決定されなければならぬということを強く感じております。
 次に、三悪追放の問題に関連しての御質問であります。いわゆる三悪追放は、私の政治家の信条として、ぜひともこれを実現したいというのが、私の念願でございます。これは、実際は、言うはやすくして、実行につきましては非常にむずかしいことがあることも、よく承知しております。しかしながら、私は、真に日本に平和な民主主義を作り上げ、世界の平和を作り上げ、国民全体の福祉を増進するために、この三悪追放は、政治の目標として、ぜひともこれに全力をあげていくということを示さなければならぬ。
 暴力の追放につきまして、いろいろ法制の改革を必要とするものもありましょう。あるいは、国際的に、先ほどの――私も同感でありますが、世界の平和を一番脅威しているのは原水爆であるから、これが禁止についてさらに強力なことを推し進めるということにつきましても、全然同感でありまして、私は、国内、国外を問わず、あるいは、組織的な暴力と、そうでない単独の暴力とを問わず、われわれの平和と民主主義を守るために、ぜひとも暴力はなくしなければだめだ。われわれが話し合いによってものごとをきめていくということが言うまでもなく民主主義の根底でありますから、そういう平和な事態を作り上げたい。
 それから、汚職の問題につきましては、これまた私はきわめて峻厳な態度を持して、汚職を、政治家の仲間からも、あるいは公務員の中からもなくしたいというのが、私の念願であります。それには、まず第一に、政局を担当しているわが党において率先して自粛自戒する必要があるということを考えまして、私は、党内におきましても、清潔な党風を作ることに全力をあげております。売春汚職の問題がいろいろと喧伝をされておりまして、私は、いかなる汚職よりも、この問題については実に深刻に考えております。(笑声)従いまして、政治の清潔と品位のために、そういうことに対する疑惑を一掃して、そうしてこれを明瞭ならしめることが、今日の段階において最も必要である、かように考えております。(拍手)
 それから、もう一つ、この三悪というものは、結局資本主義の所産であって、社会主義になったらそういうことはないのだというお話でありますが、私は、残念ながら、そう考えるわけにいかない。たとえば、国際間の暴力たる戦争の脅威が、今日共産主義のもとであるソ連にも、少くともその一半が存しておるというこの事実を見ましても、社会主義になったら戦争がなくなるなんてやさしいものではないと私は思います。また、国内におきましても、私は、貧乏が社会主義の世の中になれば一切なくなるということは絶対に考えておりません。貧乏をなくするためには、経済の繁栄と、そうして社会保障制度をやらなければいかぬ。(拍手)経済の繁栄は、われわれの過去の経験から見ても、あるいはイギリスの実例から見ましても、重要産業を国営にするようなことで能率を下げて、産業は決して繁栄するものではないのであります。(拍手)私は、この意味におきましても、これらの三悪というものが資本主義に結ばっておって、社会主義の国家ではなくなるということは、信ずることができないのであります。(拍手)
#30
○議長(益谷秀次君) 淺沼君から再質疑の申し出があります。これを許します。淺沼稻次郎君。
    〔淺沼稻次郎君登壇〕
#31
○淺沼稻次郎君 今総理の答弁を伺いましたが、答弁によって外交上の不安を取り除くわけには参りません。これは、ただ単に私どもが考えるばかりでなく、日本国民全体が私は岸・藤山外交に対する不安性を持ったことであろうと思うのであります。
 さらに、三悪の追放については、あまり具体的な答弁のないことを、私は非常に遺憾に思うのであります。もっと具体的にやってもらうことがけっこうと思います。
 さらに、財政経済の政策について私は申し上げたのでありますが、この国会における重大なる課題であるにもかかわらず、これが答弁をそらしたことは、はなはだ遺憾に考えるのであります。しかし、これ以上私はこの席上において追及しようとはいたしません。従いまして、この問題は委員会において詳しく伺うつもりでありますから、政府においてもその覚悟を願いたいと思うのであります。
 ただ一点だけお伺いしたいのは、解散の時期であります。これは政府は来年中にはやるということを言っておるのであります。少くとも政府側において来年にやるということを総理大臣が言った以上は、やはり私はその時期を明白にすることが必要であろうと思うのであります。やると言いながら時期を明白にしないことは、政治を不明朗にするものであると言っても、断じて私は過言ではないと思うのであります。その点について、また総理が新聞記者に語るときに、きょうは是と言い、あすは非と言うならば、これはまた何をか言わんやということになるのでありますが、いずれにしても、自分の発言に対して責任を持つということは、私は必要だと思うのでありまして、来年中にやると言うなら、私どもの望むところでありますから、時期を明白にしていただきたいと思うのであります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#32
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。私自身が解散ということを考えておらないということを申し上げておるのであります。従って、時期につきましても、解散を考えるということであれば初めて時期が問題になるのでありまして、私は考えておらないのでありますから、時期についても考えておらないということであります。(拍手)
     ――――◇―――――
#33
○山中貞則君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#34
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後六時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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