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1957/11/02 第27回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第027回国会 本会議 第2号
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1957/11/02 第27回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第027回国会 本会議 第2号

#1
第027回国会 本会議 第2号
昭和三十二年十一月二日(土曜日)
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二号
  昭和三十二年十一月二日
    午後一時開議
 国務大臣の演説に対する質疑
          (前会の続)
    ━━━━━━━━━━━━━
●本日の会議に付した案付
 国務大臣の演説に対する質疑
           (前会の続)
    午後二時十七分開議
#2
○副議長(杉山元治郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○副議長(杉山元治郎君) 国務大臣の
演説に対する質疑を継続いたします。勝間田清君。
    〔勝間田清君登壇〕
#4
○勝間田清君 私は、日本社会党を代表して昨日行われた岸総理の施政方針演説並びに一萬田大蔵大臣の財政演説に関連し、岸内閣の財政経済政策をたださんとするものであります。
 去る二十六国会において、わが社会党が、岸内閣に対して、石橋財政は重大なる経済危機を内包するがゆえに一応予算案を撤回し再提出すべきことを口をきわめて要求したことは、岸総理といえども記憶に新たなるところがあろうと思うのであります。(拍手)しかるに、岸総理は、貯蓄に見合った均衡予算であると強弁をいたし、それを無修正で踏襲し、今日の経済混乱を招いたのであります。昨日行われた岸総理の施政方針演説といい、大蔵大臣の財政演説といい、自己のこの重大な責任に対して片の良心だに示さぬことは、きわめて遺憾とするところであります。(拍手)私は、与野党ともに論議を尽して経済政策の大失敗の原因を追及し、そこに多くの教訓を学び取り、再び誤りなからんことを期すことが民主政治の大道であると思うのであります。(拍手)
 経済危機を招いた最も基本的な理由のつとして、私は、わが国の経済がもはや見えざる手によって導かれる自動的な調節力を失っておるにもかかわらず、経済を指導し、これをコントロールするに足るところの有効な手段を欠いておるということを指摘せざる乞得ないのであります。もし昨年下半期においてすでに経済の異常な状態が呪われた際に有効な手段がとられていたといたしまするならば、おそらく今日の危機を予防することができたと思うのであります。さらに、あの無謀な千億減税とか千億施策とかいったような無謀な拡大均衡予算には発展しなかったと思うのであります。言うまでもなく、今日の日本経済は、他の資本主義諸国とは違って、貿易依存度は高く、経済の底はきわめて浅いのであ
ります。その上に、金本位制もなく、自由為替レートの制度もないのであります。従って、弾力性が乏しく、さらに、国際収支が悪化すれば国内通貨が自動的に収縮するとか、あるいは円の対外価値が下落すれば輸入が抑制されて国際収支に復元作用が自動的に起ってくるとかいったような自由主義経済の自己調節力が今日失われておるということは、重大な事実であると思うのであります。(拍手)また、古典的な資本主義経済から言いまするならば、投資コストや貸し出しの金利が上下することが投資を自動的に調整すると言うことができるでありましょう。しかしながら、今度の経済危機を招いた異常な民間投資ブームというものが起きて参り、それがこうした自制力を突破して企業や銀行の貸し出し競争によって発生せられたということは、岸総理が昨日この壇上から大みえを切って、あの古くさい自由主義経済を謳歌したことの全く間違いであると同時に、こうした政策をもっていたしましては、貧乏の克服はもちろんのこと、経済の成長と安定を期すことは断じてできないと思うのであります。(拍手)事実、政府の経済分析は、トントン経済に見られるがごとく、常に予想は裏切られておるのであります。長期計画は紙にかいたもちのごとく、常に短期にかき変えられておるのであります。かくして、昭和の二十八年から九年に、昨年から本年にというように、きのうは暖め、きょうは冷やすといったような経済の不安定が続いておるのであります。われわれ社会主義経済は、こうしたことから起ってくるところの経済の小安定、あるいは独占資本の台頭、あるいはおそろしく膨大なる勤労大衆の窮乏ということを最も強く排撃いたすのであります。
 そこで、私は、萬田大蔵大臣並びに経済企画庁長官にお尋ねいたしたいと思うのであります。すなわち、日本経済の成長と安定をゆるぎなく達成し侍るところの有効なる金融資本の統制十段は果して何であるかということでのります。特に今回の危機を通じてきわめて明らかになったことは、金融機関の貸し付け競争によってこの混乱が生じたということであります。しかも、すべての金融機関は自己の配下に各種の系列企業を持っております。そして一大シンジケートを形成いたしておるのであります。こうした段階において、窓口指導による金融調整によって全体としての金融統制をそこに行うことは、絶対に不可能であると私は思うのであります。(拍手)中央銀行たる日本銀行といえども、外為会計と、租税の自然増収からくるところの未曽有の資金の引き揚げ超過と、各種銀行の強烈な貸し付け競争との間にはさまつて、実に五千七百億円に達するオーバーローンを現出いたしたのであります。金融の基調は一変いたしたのであります。かく見るときに、日本経済の安定と最大限度の建設速度を保障するところの手段というものは、独占金融資本の支配を打ち破ることであります。彼らをして経済の建設に協力せしむる態勢を整えることであります。そのためには、日本銀行を初めとして、現在の金融機関を根本的に再検討して、資金計画委員会といったような組織をここに確立いたし、長期計画に対する重点的投資を確保して、同時に撹乱的投資を排除するところの手段というものが今日考えられなければ、経済の安定を期することは断じてできないと思うのであります。(拍手)また、従って、政府は、今日のような間接統制とか窓口指導とかいうようなものではなくて、さらに一歩突き進んだ態勢をこの際とるべきであると思うのであるが、大蔵大臣並びに経企長官はいかに考えておるかを明らかにされたいのであります。(拍手)
 今回の経済危機の過程の中で、長期計画と同様に、短期的な経済の調整におきましても、多くの制度上の欠陥と、その機能の弱体性を暴露いたしたのであります。すなわち、貸し出し競争をした普通銀行は、資金不足をあげて日銀の貸し出しに依存し、ついに国際収支の危機を招くに至ったのであります。そして、この過程では、金融政策はきわめて脆弱でありまして従って、貸付の抑制的な効果はあげ得られなかったのであります。事実、昭和三十年八月から三十一年八月までの一年間は、公定歩合は据え置かれたのであります。三十一年八月に行われた高率適用、担保制度の改訂並びに三十二年三月の二銭から二銭一厘べの公定歩合の引き上げも、単なる警告程度のものにすぎなかったのであります。同年五月の二銭三厘への引き上げまでというものは、全く貸し出し抑制の効果を上げておらなかったのであります。ここに、短期的な経済調整機構の優柔不断、機能の脆弱性、こういうものが遺憾なく暴露されたと私は思うのであります。従って、今日、公定割引歩合、預金準備制度並びに公開市場操作の三位一体の体系を作るということが最も強く要望されなければならぬと思うのであります。(拍手)政府はこれがためにいかなる措置をとるのであろうか、今日これをここに明らかにする必要があると思うのであります。
 私は、以上、金融統制と短期的な経済調整の機構についての有力なる手段について質問いたしたのでありまするが、今回の経済の混乱や危機は政府の無謀なる財政政策にその根本の原因があるということを指摘いたしたいのであります。(拍手)
 すでに申し述べたように、経済の変調はすでに昨年の下半期から起っておったのであります。しかるに、政府は有効な抑制手段をとらなかった。その上に、火に油を注ぐような党利党略の予算を政府は提出いたしたのであります。(拍手)私は、この、ブームをねらった、人気をねらった、こうした財政政策の態度を根本的に指摘いたしたいのであります。本来ならば、経済の原則は、安定発展の段階においては、政府の政策は手控えるべきであります。経済が危機に陥り、あるいは下降の状況をとるならば、政府は積極的なる手段をとるべきであります。この財政の基本的な立場を忘れて、党利党略に走る財政に国民がどうして信頼することができるでありましょうか。(拍手)
 私は、まず、ここに、三十二年度のこれからの下半期と、来年の、三十三年度の日本経済の見通しと政府の政策を、次にお尋ねいたしたいと思うのであります。
 大蔵大臣は、昨日の演説において百万べん言辞を弄するよりも、今日のこの経済政策の見通しと政府の施策を明らかにすることが最も大切であったと思うのであやます。(拍手)何となれば、現在の経済は低迷いたしております。一時的に安定したかに見える国際収支も、あるいは現に内在いたしておる経済不安も、今後の見通しと、政府はこれにいかなる施策をとるかということを、これを今日明らかにすることによって経済の目標が正確に判断をされるし経済は安定をいたすのであります。その意味においては、昨日の大蔵大臣の演説は絶好の機会であったと言うべきであります。経済感覚を失うことこれに過ぎたるものはないのであります。
 政府は、一体、三十二年度予算編成に当って国民所得、工鉱業生産、国際収支等の一連の経済観測の上に立って、一千億の減税、一千億の施策を打ち出したのでありますが、この基礎条件は今日完全に変ったのであります。まさにくずれ去ったと言ってよろしいでありましょう。従って、政府は、あらためてここに、三十二年度の下半期の経済の方向は何であるか、情勢はいかに変化したのであるか、これを数字をもって明らかにする必要があると思うのであります。(拍手)同時に、神武景気を前提として立てられたところの税法上の一千億の減税というものも、どのように空文化したのか、単なるから宣伝であったのか、今日この実体を国民に知らせる必要があると思うのであります。(拍手)
 また、減税はあくまでも税法土の減税であって本年の税収絶対額というものは、昨年度よりも大幅に引き上げられておるのであります。従ってデフレ政策によって悩んでおるところの中小企業、特に中小法人、中小個人、これらは所得の評価を通じて苛斂誅求になるであろうという懸念一を今日持っておるのであります。(拍手)従って、政府は、これらに対して徴税上のいかなる措置を講ずるのであるか。私は、財政の見通しの誤まりから生ずるところの、こうしたしわ寄せの第一を、ここに明らかにいたしていただきたいと思うのであります。
 政府は、また、一律引き締め政策をとり、産投会計を一五%低く、公共事業費を百億削る、地方公共団体の単独を押えるといったような緊急総合政策を、かつて発表いたしたのであります。しかしながら、それが今日いかに行われておるかということは、今日何も示されていないのであります。われわれは、この予算の運営の実態を、この国会を通じて国民に明らかにすることを要求いたします。(拍手)特に、こうした大幅なる予算の縮減を、国会を通ぜずして、単に行政上の処置でこれを行うということは、議会制度を無視するもはなはだしいものであると私は思うのであります。(拍手)
 この際、通産大臣は、日本経済のボットルネックであった電力等のエネルギー産業に対する建設資金あるいは輸送力増強に対する建設資金というものがいかに確保されておるかを、数字をもってここに明らかにしていただきたいと思うのであります。同時に、自治庁長官は、これらの一般的な引き締めから、地方財政にいかなる悪影響を及ぼしておるか、それに対していかなる処置をとろうといたしておるかも明らかにする必要があろうと思うのであります。(拍手)
 最近、経済団体が、労働者の要求に対して、コストインフレなるものを提出いたしてゼロ回答を行なって労働組合に挑戦的な態度でおることは、きわめて遺憾とするところであります。(拍手)三十一年度の統計をもっていたしましても、設備投資は前年度を八割上回って一兆四千億が投資されたのであります。在庫資金は対前年比で四割増、六千四百億が投資されたのであります。鉱工業の生産は二三四%増、機械工業のごときは実に五九%増の驚異的な記録を示しておるのであります。しかも、労働者は、この間において、労働の生産性を二割高めたのであります。しかるに、所得においては、法人所得は四〇%の増大であります。勤労所得はわずかに一五%の増大にすぎないのであります。従って、一人当りの実質消費水準は、都市で六四%増、農村では一九%増、全く低い水準にあります。しかも、国民の限界貯蓄性向は四二の高水準であります。百円収入が増大すれば四十二円貯金をいたしておるというのが今日の勤労階級の性格であることを明らかにする必要があると思うのであります。こういう不公平な扱いを受けておる労働者階級が――鉄道料金、飯米価格の値上げ、さらには、ふろ代に至るまでの一連の値上げ政策に今日労働組合が反対するというのも、当然の処置といわざるを得ない。同時に、今日、賃金の正当な要求に対して、不当なる弾圧やら撹乱的な態度に出て参るということでは、公平なる判断ということは断じてできないと思うのであります。(拍手)政府は、経済団体がコスト・インフレを理由に労働者の要求を不当に弾圧していることに対して、いかにこれを考えるのであるか、石田労働大臣に答弁を促したいと思うのであります。(拍手)
 今日、石田労相は法の権威に隠れております。労使のよき慣行を美名にしたして労働者の利益を守らないのみか、かえって労働組合の弾圧や分裂政策を行なっておるのであります。私は、今日こそ労働大臣は労働者の利益を守るために最善の努力を払うべきであると確信いたすのであります。(拍手)しかも、今回の臨時補正予算において、政府は労働関係の予算を何ら提出しておらないのであります。経済政策を百八十度転換することによって受けるところの被害者というものは、中小企業のみでは断じてないのであります。(拍手)諸君も御存じの通り、社外あるいは臨時工の解雇が行われてまた、駐留軍労務者は今日七万の失業者を出しておるのであります。ここに、日本の完全失業者でさえも百万人の失業者を出しておるということは今日明白であります。(拍手)従って石田労働大臣は、真に労働政策に忠実であるといたしますならば、この際労働に関する追加予算を当然この国会に出しておくべきであったと思うのであります。(拍手)何ゆえに石田労働大臣はその行為を怠ったのであるか、労働大臣の答弁を促したいと思うのであります。次にお尋ねいたしたいことは、来年度の予算の見通しと、予算編成に対する基本的な考え方についてであります。政府はすでに三十三年度予算編成に着手しておる心でありますが、伝えられるところによると、余剰財源の利用方法において党内の意見が分れておると聞いております。漸次党略的なる予算に傾きつつあるとも伝えられておるのであやます。もし、岸内閣が、次期選挙とからみ合せて、無責任なる党略的予算というものを再び組むといたしまするならば、財政経済を全く私するものであります。やがて国民は自民党の頭の上に鉄槌を下すであろうことを確信いたすのであります。(拍手)
 三十一年度の剰余財源は一体幾らであるか、本年度並びに来年度の自然増収並びに剰余を幾らに見積っておるのであるか、概数をまずここにお示し願いたいと思うのであります。そもそも、三十一年度の余剰といえども、財政法に従って半額を減債基金に繰り入れるといたしますならば、本年と来年の経済を勘案し、さらに来年度の予算において人件費、義務教育費、交付税等の当然に支出が増大いたすものが約六百億円あるのでありまして、かく考えてくると、剰余財源必ずしも多額というわけには参らぬであやましょう。しかしながら、相当の規模の余剰財源というものを無責任に支出することは許されません。全体り経済の引き編めの中で必然的に起きてくる社会的不平等を断固払拭するごとなくしては、経済の安定と建設に国民の協力を得ることは断じてできないでありましょう。(拍手)従って、防衛三カ年計画を取りやめるとか、要すれば最も消費購買力の強いところの高額所得者に対する累進課税を回復するとか、そういう処置を講ずるならば、勤労階級の低所得階級に対する減税も、インフレの懸念な「くして実行できると確信いたすのであります。(拍手)ただ単に形式的に、健の政策とは無関係に、減税一般を否定するということは、政策の貧困を現わすものであると思うのであります。岸総理は、去る三十一日、大蔵大臣と二時間にわ「たって明年度予算の編成方針について協議したと伝えられておるのでありますが、来年度の予算の編成方針に対して、ここに基本的な態度を明らかにいたすことを要求するものであります。(拍手)
 私は、この際、特に農業政策並びに農林予算についての、政府の、無能の、しかも誤まった政策を、ここにただしたいと思うのであります。戦後の日本農業は、戦時に引き続き偉大なる農民の努力によって、困難なる条件の中にも、よく食糧生産の実をあげて参ったのであります。国民生活の安定の基礎を培養いたして参ったのであります。今日、三カ年間の豊作が続けられておるけれども、この豊作というのは、必ずしも自然的な条件によってのみなされたものではありません。農民の絶えざる努力、農民の絶えざる工夫によって今日の豊作がもたらされたものであると確信いたすのであります。(拍手)しかるに、政府は、農業政策のために一片の考慮も払っていないというのが、今日の状態であります。(拍手)
 事実、農林予算の今日の実情を見まするならば、昭和二十八年が千六百数十億円でございました。しかるに、今年の農林予算は八百数十億円にすぎないのでございます。いかに今日の政府が農林予算に不熱心であるかということは、この一事をもって明白であります。(拍手)余剰農産物の受け入れにきゅうきゅうとして眼内の農民の利益を顧みないのが保守党内閣の実体で赤ることを、ここに明らかにいたすものであります。(拍手)すべからく、農林大臣並びに総理大臣は、土地改良、畜産の奨励、あるいは畑作経営の改善等、一連の農林予算を一大飛躍発展せしめるべきであると確信いたすものであります。(拍手)なかんずく、今日の米価対策において、われわれは幾多の欠陥を指摘いたすのでありますけれども、外麦を輸入し、そして、麦の値段を引き下げようとする政府の態度に対しては、ここに根本から反対いたしたいと思います。(拍手)農林大臣は麦価政策をいかに考えておるのであるか、今日これを明らかにいたしていただきたいと思うのであります。
 要は、今日の自民党の政策は、独占資本に左右されて、多くのしわ寄せを大衆に行なって、これに対する何らの処置も行うことなく、しかも、今後における財政を党利党略によって行わんといたしておるのであって、われわれは、かかる予算の態度をとる限り、断じてこれに反対するでありましょうし、国民は同時に諸君に鉄鎚を下すであろうことを、ここに明言いたして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#5
○国務大臣(岸信介君) 経済、財政その他に関する御質問に関しましては、それぞれ主管の大臣からお答ををすることにいたします。
 私は音だけ申し上げておきたいと思いますが、われわれが予算を扱う場合において、もちろん、できるだけ正確な経済の見通しに立って、日本の経済を、安定した基礎の上にこれを成長せしめ、拡大していくということが根本の原則であることは、勝間田君と私は全然同感であります。従いまして、われわれが、いかなる場合において予算を作る場合におきましても、党利党略の見地からこれを作成することを絶対にしないということを申し上げておきます。
    〔国務大臣一萬田問登君登壇〕
#6
○国務大臣(一萬田尚登君) お答えを申し上げます。
 その一点は、金融機構を改革して資金を計画化する意思はないかという御質問であったようにとるのでありますが、今日この資金の流れをもう少し計画化していくということは、私は異存がありません。問題はどういう方法でやるかということにあると考えるのであります。私は、金融につきましては、どうしても、その性格からいたしまして、法的にこれを規制するということは適当でない、それは金融調整の弾力性を阻害するからであるのでありまして従来の統制等について、それが相当はっきりと証明がされておるように思うのであります。そうして、今回の景気の変動に関連いたしましての金融についていろいろと御批判があると思いますが、これにつきましては、こういうことも特にお考えを願いたいのであります。それは、日本の経済の客観的な条件が非常にでこぼこであるのでありまして、十分に調整ができていない、たとえば、金利にいたしましても、金利がなお本然の姿にないのであります。それから景気の観測ということ、これについても、公定その他から見まして、私は日本は非常に不十分であると思います。これについては、今後景気の観測について十分内外の情勢を把握するような機構を経済企画庁に一つ設けて対処いたしたい、かように考えております。なお、今後自主的な資金の流れを計画するにいたしましても、五カ年計画というような比較的りっぱなものが今後できるのでありまするから、よほどこれには自信がある、かように考えております。
 それから、第二の点は、短期の経済の調節の機能が不十分ではないか、こういうことで、公定歩合、支払い準備制度、市場操作を三位一体に運営するような意思はないかというお話でございますが、これはその通りでありまして、私も異議ありません。ただ、支払い準備制度というものをいつ導入するかという点については、今日の客観的な金融情勢から見て慎重に考えなくてはなりません。それから、来年度の予算編成に関連いたしまして、いろいろと御意見があったようでありますが、来年度は、私が申すまでもなく、日本の経済を安定さして、その安定の基盤の上に持続的に経済が拡大成長をしていくという、こういう準備時代でありますから、それにふさわしい予算を組むのでありますが、ただいまいろいス、と御意見もありました。社会党も御意見があるでし上う。そのいいところはちょうだいいたします。(拍手)そうして、国民が納得するような、なるほどという予算を組むつもりでおります。(拍手)
    〔国務大臣前尾繁三郎君登壇〕
#7
○国務大臣(前尾繁三郎君) お答え申し上げます。
 今回の引き締め政策によりましてエネルギー関係で資金の繰り延べをやりましたものは、御承知のように、電力におきましては一一%、石炭におきましては繰り延べをいたしておりません。石油につきましては一割程度の繰り延べをやっておるのであります。ただ、民間資金につきまして調達が思うようにいっておらぬというので、電力等におきましては二百億ほど不足いたしておるようであります。しかし、今後なお民間資金につきまして調達を促進するほか、時期を見まして政府資金の導入をやりたい、かように考えておりますので、将来のエネルギー資源について困るようなことは絶対にしないつもりでおります。(拍手)
    〔国務大臣石田博英君登壇〕
#8
○国務大臣(石田博英君) 私に対する御質問の第一は、生産性の向上に伴いまする労働者に対する分配の問題、麦るいは、それにからんで、経営者健が今コストインフレという問題を取り上げて労働者の賃上げ要求を押えようとしていることについて、どういう考えであるかという御質問であるようであります。私は、生産性の向上に伴いまする労働者の賃金収入の増加は、ほぼ生産性の向上に伴って進みつつあると考えておる次第であります。しかし、その分配のやり方につきましては、さらにより以上のよき方法を検討して参らなければならぬことは当然でありまして、大きな研究課題であると思っております。しかし、それは、やはり、あくまでも生産性向上に協力をしていくという基本的な建前の上でなければならぬと思います。(拍手)この問題について社会党の方々の良識ある御協力をお願いを申し上げる次第でございます。生産性の向上を考えないで、賃金の上昇のみを求めて参りますると、そこからコストインフレという危険を生ずるのでございます。先ほど勝間田君も御指摘になりました、ふろ代の値上げの一つの原因も、また、そのコストの上昇ということが二、の中の一つに含まれていることに思いをいたしますならば、やはり生産性の向上について社会党重賞を凌げて御協力を願い、その上に立って分配の公平と上昇を求めていくことが正しい方法でないかと私は考えておる次第であります。
 それから、労働関係の補正予算をなぜ今回組まなかったかということでございますが、その組むべきであるという御議論の前提といたしまして、雇用その他の労働関係の基本的な条件というものが、本年の予算編成のときに比べて著しく変化があったという御議論であります。これから、この一例として、駐留軍関係からだけでも七万人の失業者が今出ておるような御議論でございますが、駐留軍の引き揚げに伴って失業者がふえておりますることはきわめて遺憾であります。しかし、その数は、現在のところは、昨年度とほぼ同様の速度でございます。七万という、ただいまの御指摘の数字は、現在生じた全部の数字ではなくして、駐留軍に雇われておる労務者全体の数でございます。全体の数をとらえて、その全部が現在失業しているかのごとき議論は、私は議論の根底として間違っておると考えておる次第でございます。
 それから、私の……。(「労働者の数を知らない労働大臣がいるか」、取り消せ」と呼び、二、の他発一言する者多し)私は、七万という数字のうちで、一言だけ追加しておきます。それは間接雇用をしておる者の数字でございます。それから、もう一つ、私のやわ方に対して弾圧労政だということを御指摘でございます。しかし、しからば私がいかなる具体的な弾圧をやったか、御指摘を願いたいのであります。私は労使双方に対して労働関係のけじめをつけていこうと考、えているのでありまして、そのけじめを明確にすることが弾圧であるとするならば、私は甘んじて弾圧の非難を受けるつもりでございます。しかし、おかげさまをもちまして、毎年年中行事のようでございました国鉄の輸送状況の混乱も、労使双方の間に生じました良識の芽ばえによって本年は平穏に済んでおりますことは、労使関係が次第によい方向に向っている証拠であると確信をいたす次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
#9
○国務大臣(赤城宗徳君) ただいまお話にありましたが、政府は農業政策を全く放棄しているのではないかということでありますが、そのようなことは絶対にありませんので、御了解を願いたいと思います。
 三年続きの豊作も、土地改良等が非常に進んだことや、農薬等の散布が普及したごとや、あるいは早期栽培等の農業技術等の進歩によることと思いますが、これは、お話のように、農民のたゆまざる努力によることはもちろんでありますが、同時に、政府が長い間やってきました政策がようやく実を結んできたことと私ども考えております。(拍手)
 昭和二十八年の予算に一千六百八十億円であった、その後だんだん減っておるじゃないか、こういうお話であります。農林予算につきましては、昭和二十八年当時は、災害の頻発によるその復旧費、戦後の食糧事情に伴う輸入食糧関係経費等が相当額に上っていたのであります。しかし、その後は、これら経費の漸滅によって農林関係予算総額から見ますると、逐年減少していますことは、また御指摘の通りであります。しかしながら、食糧増産を初め、いわゆる一般の農林水産の振興の面では、必ずしも後退しておるとは考えません。しかし、最近の経済事情において農林水産業が他産業と所得面等で不均衡を生ずる傾向も見られ、かっ、食糧増産その他総合的需給力の強化の重要性は依然変らないのでありまして、今後、農林諸政策の遂行に当りましては、御指摘の点を“分配慮いたしまして、農林政策遂行に必要な予算を確保して参る所存であります。
 麦価政策につきましては、目下検討中であります。(拍手)
    〔国務大臣郡面一君登壇〕
#10
○国務大臣(郡祐一君) 地方財政への影響につきましてのお尋ねにお答えいたします。
 地方財政の運用には十分注意をいたしておりまするが、特に悪影響があるとは認められませんので、従いまして、三十二年度の公共事業費は地方財政計画の通り実行し得るものと考えております。
 なお、地方債につきましても、国の対策に即応はいたしておりまするが、地方行政の実情に即した運営に支障なきを期しております。(拍手)
#11
○副議長(杉山元治郎君) 多賀谷真稔君。
    〔多賀谷真稔君登壇]
#12
○多賀谷真稔君 私は、社会党を代表して独占禁止法緩和と中小企業政策の関連性並びに労働、文教の諸政策につき、政府の所見をたださんとするものであります。(拍手)
 戦後直ちに農民に対しては農地関係法が制定せられ、農亀の解放が行われ、労働者に対しては労働三法ができて労働基本権が付与されたにもかかわらず、ひとり中小企業者は何らの保護が加えられず、政府の政策のらち外にあって放置せられ、戦後十二年の今日、ようやくにして中小企業に関する法案が院の内外に脚光を浴びてきたことは、おそきに失するの感ありといえども、まことに喜ばしき次第であります。(拍手)しかし、しさいに政府の法案を検討するに、中小企業の最大の課題である独占資本の圧迫から中小企業を守れという、この点については、大いに欠けておる点にわれわれは気づくのであります。(拍手)
 独占資本は、中小資本の支配を、大体次の方式によって強行して参りました。その第一は、大企業が原料製造よリ最終製品まで一貫生産を行い、中小企業の強力な競争者として市場に現われてきたということであります。たとえば、紡績、化繊の大メーカーが染色加工から縫製工場まで手を伸ばし、自家商標マーク入りのワイシャツ、ブラウス、学生服まで製造しておるような現状であります。第二には、加工部門を下請として出し、下請の低賃金による収奪を行う一方、市況の変化に対処するために危険分散をはかりつつあるのであります。大企業の合理化対策は、まさに中小企業の不合理化強制と化し、その負担は全部中小企業に転嫁される仕組みになっておるのであります。第三は、生産制限、出荷制限等を行い、独占価格を形成して販売価格をつり上げているということであります。これが中小企業を、原料高、制品安に追いやっておる大きな原因であります。この三つの方式を強行することによって、独占集中は進み、わが国の独占資本強化の体制はますます確立されつつあるのであります。
 この中にあって真に中小企業を保護育成するためには、この独占資本強化の方式に対して徹底的にメスを加える必要があると思うのであります。(拍手)わが党提出の中小企業の産業分野の確保に関する法律案、中小企業に対する官公需の確保に関する法律案はまさにそれであり、独占資本の進出防止、中小企業の市場確保の法案であります。この法案について政府はいかに考えられておるか。もし反対であるとするならば、政府の中小企業対策は、独占資本との対決の意味における政策ではなくて、中小企業者間の調整または消費者の方に向っての対策のみであって、真に中小企業の保護育成をする何ものでもないことを立証するものであります。(拍手)
 しかも、さらに重要なことは、中小企業の保護を唱えながら、次期通常国会には、不況カルテル、合理化カルテルの条件の大幅緩和をなし、投資調整カルテル、価格安定カルテル等を届出制にして独禁法の骨抜きを企図せんとしておるようであります。独占禁止法は、過度経済力集中排除法とともに、経済民主化法制として発生したものでありますが、昭和二十四年、二十八年の再度の改正にあい、多くの適用除外立法の制定により、独占禁止法体制は漸次後退の一路をたどっておるのであります。独占資本強化の前に、この経済憲法の番人といわ拠る公正取引委員会が悲壮な決意をもって孤城を守っておることは、皆さん御承知の通りであります。(拍手)
 カルテルは、自由競争のもとに価格形成が行われる市場に人為的に干渉を加、にようとする組織であり、自由競争を制限するものであります。岸内閣は自民党の政党内閣であり、自民党は自由主義、資本主義をその党の党是とされていると聞いております。自由競争は、資本主義社会における進歩の原動力であり、各人が最大利潤の追求のもとに創意を搭難しながら自由に競争することによって往会における進歩があると説かれ、自由競争は資本主義経済における金科玉条のものと考えられておると、私ほ承知しておるのであります。ところが、カルテルはその自由競争を制限するのであるから、自由競争は進歩であるという看板をおろされたのであるかいなか。もし、政府が、カルテルを結成しても、なおカルテルの内部の競争をあげて弁明するとするならば、それはきわめて形式的、観念的口実であり、全く詭弁であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)カルテル統制が真に市場の安定をもたらすものとするならば、それは常に私的企業の利潤動機と結びついているところに問題があることを忘れてはならないのであります。カルテル統制によって真に経済の安定1を求めようとするならば、利潤追求乏結びついた私的独占を排除して、消費者、労働者にまって管理された社会的独占によって行われるべき竜のであります。(拍手)すなわち、わが党の主張する社会化に訣って行われるべきものであります。自民党政権の竜とにおける私的利潤追求の手段として行われるカルテル、トラストは悪の行為であるといわなければなりません。もし独占禁止法が緩和されるならば一般消費者が困ることはもちろんのこと、原料高も製品安に悩む中小企業はますます苦境に陥わも現在中小企業救済の福音のことといわれておる中小企業団体組織法案も、独占資本の猛威の前にはトウロウのおのにすぎなくなることは。火を見るよりも明らかでありますむ(拍手)これらに対する岸総理並びに前尾通産大臣の答弁を承わりたい。
 次に労働政策についてお尋ねいたしたい。岸内閣の労働行政は、ビスマルクの故知にならってか、あめとむちの政策を持っているといわれておるのであります。まず、その、あめといわれている最低賃金法案について検討してみたいと存じます。自民党の労働問題特別委員会において発表した最低賃金法要綱にまれば業者間協定を主体としてでき上っており、その業者間協定が一亀城において大部分の労働者に適用するに至ったときは他の労働者にも適用する等の、かなり細部にわたって作られておるのであります。しかし、問題は、業者間協定が土台になっておるということであります。もし業者間協定が自主的に結ばれないならば、法律そのものは全く動かない法律と化すの乏あります。死文と化するのでありますまた、その業者間協定がどしどル締結されて動く法律として活動する状態になるときには低賃金の固定化法案としての役目を果す結果を招来するのであります。(拍手)かように、政府及び自民党の法案は、低賃金を排除し、最低生活を維持すべき真の最低賃金法案ではなくして、ソーシャルーダンピングを初めとする内外の非難を糊塗する、まことに似て非なる最低賃金法案といわなければならないのであります。(拍手)政府が鳴り物入りで宣伝しておりました静岡県のミカン、マグロの業者協定も、実はもこの安い賃金では中学、高校の卒業生は全くそっぽを向き、清本のカン詰協会では、三十数名募集したにもかかわらず一八の応募者もなく、この賃金では新しい労働力は得られない実態であったといっておるではありませんか。業者間協定たる最低賃金法案に対して、労働大臣の答弁を承わりたい。
 石田労働大臣は、先般、労働基準法施行十周年の式典に当って、白の土着、黒のズボンといういでたちで現われ、労働者のサービスボーイだと強調されたそうでありますが、石田労政は、今やサービス行政より警告威嚇行政べ移行されたといわれておるのであります。公労法第十北条の統一的解釈を発表して、よき労働慣行を作ると称し、定時出勤、順法闘争まで違法なりときめつけておるのでありますが、公労法制定以来牲公労法をじゅうりんしてきた政府に軸一体よき労働慣行を作れと言う資格があるのかどうか。(拍手)政府はこの際謙虚に反省する必要があると思うのであります。争議権を奪われ、その代償たる仲裁まで履行されず、やむを得ず行なってきた、ささやかなる団体行動を、しかも、平常規律がルーズになっていることはたなに上げて労働運動のときだけ違法であるといも変則的解釈は、労働法の生々発展の歴史もわきまえす、労働法の精神を忘れた、まさに三百代言的言辞であるといわなければならないのであります。(拍手)
 杵島炭鉱の争議の支援ストに対する違法声明も、炭労の単一組合たるの性格を忘れ、直接間接の利害関係を持つ同種の労働者の同情ストは違法にあらずという多数説に反してまでこの警告を行なったことは、あまりに一方的解釈であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)公労法第四条第三項の逆締めつけの規定は、本来の労働法の大原則に違反するものであり、ILOで採択されました結社の自由及び団結権の擁護に関する条約にも抵触するものであり、民間労組であれば、使用者か従業員でなければ組合員または役員となることを得ないということを要求すれば、逆に使用者は不当労働行為に問われるのであります。このことは、昭和二十四年から二十五年、労働省の労政局長名をもって都道府県の知事に通達いたしましたその指導通牒に明白に書いてあるのであります。(拍手)かような不当な規定を法制化し、被解雇者が代表者になっておるということを理由に、団交を拒否L続け、昇給等を一方的に行なって組合を威嚇し、ついに組谷をして公労委あっせん案をのまざるを得ない状態に追いやり、まさに力関係において解決した事実を、われわれは見のがすことができません。これを推進した政府の行為は労働行政上許し得ない問題であると思うのであります。(拍手)なるほど、一時的には解決しておるようでありますけれども、決して根本的に解決したものではありません。
 公企体の労使関係の不安定な根本原一因は、当局にその団汰交渉の当事者能力がないということであり、労働組合に基本的権利がないということに起っておるものであります。団体交渉が十分行われず、政府は裁定を履行せず、いびつな闘争が行われ、そのつどに処分者を出すということは、本末転倒もはなはだしいものといわなければなりません。(拍手)これを幾ら繰り返してみても、問題は解決しないのであります。むしろ、組合に争議権を与えることによって労使の責任体制を確立し、世論の支持の中に問題を迅速に解決さすべきことが、私は至当であると思うのであります。私企業ならば争議を前にして瞬時にして解決する問題が、公否体落義権妻いが豊に庫も二年も延ばされておるという現実を直視しなければなりません。このことを政府はよく考えていただきたいのであります。関西労働法学界、関東労働法学界が、あげて、公企体労働者に争議権を許せと主張しているではありませんか。争議権を評すことは、むしろ紛争を少くするということを銘記していただきたいのであります。(拍手)
 さらに、最近における政府の和歌山県の公安調査局によるスパイ強要事件、福島大学の全学連スパイ事件、大分県菅生事件のおとり捜査等を見るときに、やがて岸内閣労働行政は、サービス行政より一警告威嚇行政べ、さらに特高謀略行政へと三転ずるのではないかということを憂慮するのでございます。(拍手)昨日、総理は、施政方針において、集団によるいわゆる実力行使によって法の秩序を乱し、あるいは公務の執行を妨害するような組織的暴力があると言っておるが、一体これは何をさすのか、不明にしてわからないのでありますが、もし軍事基地反対闘争あるいは労働争議等の社会運動をさしておるとするならば、全く近代的政治家としての適格性を疑わざるを得ないのであります。(拍手)これらに関し、民主的政治家として再登場された総理の所見を承わりたい。
 第三に、政府の文教政策について質問いたしたいと思います。
 岸総理は、全国遊説において、総評をたたき、日教組を目のかたきにして攻撃してきたようであります。岸内閣は、労働、文教の二政策に重点を置いて、保守政権の長期安定化をはかり、民主的諸勢力弾圧の上に、アメリカヘの従属体制をますます強化しようとしておるようであります。このことは、労働運動の弾圧と教育の反動化を意味するものであり、特に教育は、内容、制度の両面から国家統制、中央集権化がはかられ、戦前教育逆行への真に憂うべき様相を示しているようであります。教育の地方分権化、教育の自由は、言うまでもなく、民主主義の基本的原則であり、戦後の民主的教育を貫く大きな柱になっておるのであります。しかるに、現在、国民道義の高揚、愛国心の癒養という美名のもとに、教育課程を改悪し、国家制統の疑いのきわめて濃厚なカリキュラムを押しつけたり、実質的修身科の復活や、あるいは教科書国定化の方向を企図している事実は、明らかに教育反動化の推進を物語るものと考えなければなりません。(拍手)
 われわれも、決して道徳教育の必要性を否定するものではありません。しかしながら、きわめて重要なことは、道徳の教育は、他の教科のように知識体系としての教科によってはならないということであります。かつて、ペスタロッチは、生活が陶冶するという原理を発見し、教育の歴史に偉大な貢献をいたしましたが、道徳の教育は、なすことによって学ぶのであります。道徳の教育は、特定の科目を設けることによって行うのではなくて、全教科の中においてこそ取り上げていくべきものであってこれが児童の生活の中に血となり肉となって入っていくのであります。修身科復活は、論語読みの論語知らずを作るものであり、まさに無用の長物といわざるを得ません。もし政治家が道義の頽廃を感ずるならば、われわれは、政治の貧困こそその最大の原因であることをお互いに反省しなければならないと思うのであります。(拍手)
 次に、教員の勤務評定の問題でありますが、地方公務員法が制定されて以来、久しく実施を見なかった評定を急に強行しようとする意図は、これまた教育の自由を侵し、教育を中央集権化する以外の何ものでもないと考えるのであります。地方の委員会においては、教員の勤務評定は不可能だといっているところもあるごとく、今日までできなかったというのには相当の理由一があるのであります。(拍手)教育に従事する教員の勤務評定は、最終的にはその教師が行なった教育の効果そのものを判定しなければなりません。画一教育を排し、個人の尊厳を前提に、二、の完成を目ざしていく新教育の効果が、一校長や一教育委員によって果して評定が可能でありましょうか。主観によって評定されるがために、教師は、子供に情熱をささげる前に、まず校長、教育委員の顔色をうかがわなければなりません。そういう卑屈な雰囲気で、どうして自由な教育ができるでありまし、占うか。教師が自由に情熱を持って教育に打ち込める雰囲気を作ってやることこそ行政官の役割であると思うのであります。(拍手)今まで評定が実施されなかった真の原因を、この際真剣に再検討すべきではないでしょうか。労働運動弾圧の一環として、この問題が取り上げられたことは、きわめて遺憾であり、われわれはここに教育の危機を感ずるのであります。
 政府が真に教育に重点を置くならば、修身科復活や勤務評定以上に緊急なる問題が山積しておることを指摘せざるを得ないのであります。一学級六十名に上るすし詰め学級の解消、百六十億に上る父兄負担の軽減は、一体いかにするつもりであるか。義務教育水準の確保、父兄負担軽減の公約は、いつ果されるつもりであるか、これらに対する総理並びに文部大臣の御意見を承わりたい。(拍手)修身科の復活、勤務評定の強行、紀元節の復活等は、撃ちてしやまん、――撃ちてしやまんという戦争愛国心を鼓舞する教育であり、労働運動の弾圧とともに、再軍備べの基礎工作であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 わが党は、かかる労働運動と教育の危機に際し、平和と民主主義を守るために党をあげて戦うことをここに強調し、質問を結ぶ次第であります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#13
○国務大臣(岸信介君) 独占禁止法につきましては、独占禁止法審議会を作りまして、目下検討いたしておりますが、成立後日まだ浅くありまして、その結論はもう少し時間がかかると思います。これが審議の結果を待って政府としては善処したい考えであります。中小企業団体法の問題は、すでに衆議院におきましては満場一致これが修正可決になって参議院で継続審議になっております。私は、衆議院の意思通り、これが早く成立することを、心から願っておるものであります。(拍手)
 なお、文教政策についていろいろお話がありましたが、私並びに岸内閣におきまして、特に文教政策に重点を置いて考えたいということを、かねて声明もいたしております。それは、言うまでもなく、現在文教政策の各般のことを検討してみますると、あるいは今御指摘になりました設備等において不完全な点もありますし、教科の内容についても十分考えなければならない点がありますし、教員のあり方につきましてもまた考えなければならぬ点が私はあると思います。こういうような点を十分に検討して国の将来、民族の将来の運命をになう青少年の諸君をりっぱな社会人として成人せしめるように教育することは文教政策の最も大事なことでありますので、これに重点を置いて考えたいと思っております。(拍手)
 その他の点につきましては、担当の大臣よりお答え申します。(拍手)
    [国務大臣前尾繁三郎君登壇]
#14
○国務大臣(前尾繁三郎君) お答えいたします。
 中小企業団体法は、御承知のように、調整事業を行うとともに、協同事業も一緒にやりまして、中小企業者内部において強化をはかろうというのでありまするが、その反面におきまして、事業活動規制命令あるいは組合交渉というようなものを通じまして、大企業からの不当な圧迫も排除しよう、こういうねらいを持っておりますので、ただいまお話しのような大企業進出に対する防止の目的も兼ねておるわけであります。
 また、独占禁止法の改正につきましては、ただいま総理もお答えをいたしました通りに、現在、学識経験者によって審議をしていただいておるわけでありまするが、御承知のように、独占禁止法は二十二年の制定で、ちょうど十年たっておるわけであります。そ、の間、二十八年に改正をいたしましたが、最近の科学技術の進歩等によりまして、いろいろ合理化を促進したり、あるいは過当競争に対処して安定した経済の発展をはかっていくためには、もう一度見直すべきだという議論が相当あります。そうして、また、当面の問題といたしましては、投資の調整のために、また、あるいは輸出を阻害しているのじゃないかというような面から、いろいろ議論がありますので、この際もう一度振り返って、公正な態度でこれを議論していただいて結論を出していただきたい。かような意図を持っているのであります。決して資本の隻中をはかろうとか、そういうような考えは毛頭ありませんので、どうぞよろしく。(拍手)
    〔国務大臣石田博英君登壇〕
#15
○国務大臣(石田博英君) まず先に、先ほど不規則発言が多かったために明確を欠きました点を、もう一度申さしていただきます。それは、勝間田君の御発言の中の七万という数は、現在米駐留軍の陸軍関係に間接に雇用されておる者の総数が六万六千人でございますが、その全体の数字とお間違いではないでしょうかということを申し上げたのであります。
 それから、今の多賀谷君の御質問にお答えをいたしますが、第一は、最低賃金制についての御質問でございました。政府が今の勤労者の賃金の状況を見てみまするときに、昭和二十五年は、大企業及び公企業の貸金を一〇〇といたしますと、中小企業の賃金は六〇%を上回っておったのであります。ところが、昨年度から本年にかけましては、その格差はいよいよ開きつつございまして、現在は五八%程度になっているのでございます。この格差を縮小することが、現在労働者の福祉を向上いたしまする全般から見て、一番重要なことと考えますことが第一点でございます。それから、第二点は、過当競争を防止して、中小企業の経営の健全化をはかりまするとともに、その生産性の向上を求めて参りまするためにも最低賃金制を現在施行する方がよいと考えることが第二点でございます。第三点は、輸出振興のためにも、国際信用を維持いたしまするために必要だと考えることが第三点でございまして、誠意を持って通常国会に提出するよう、目下準備を進めておる次第でございます。案の内容につきましては、ただいま中央賃金審議会に諮問中でございますが、その結論を待ち、さらに与党及び政府において検討を加え、要すれば社会党その他の御意見をも十分尊重いたしまして、万全を期したいと考えておる次第でございます。
 しかしながら、先ほど、多賀谷君は、最低賃金固定法になるのではないか、業者間協定に重点を置けばそうなるのではないかという御指摘でございましたが、ただいままで行われて参りました実例に徴しますると、すべて約一〇%程度の賃上げとなっておることは、おそらく多賀谷君もよく御承知であろうと存ずるのであります。いずれ詳しい資料が必要でございましたら委員会等で申し上げたいと思います。
 それから、公労法につきまして、いろいろの御意見がございました。特に四条三項をたてにして公社が労働者の組合の団交の要求に応じなかった点に御非難がございますが、これにつきましては、本日一時過ぎ地方裁判所の判決がございまして、機関車労働組合の請求は却下されました。政府といたしましては――しばしば、法の解釈については行政機関がなすべきでなく、司法部の決定に従うようにどいうのが、社会党の御意見でございます。私は、行政機関も法の執行をいたしまする前に当然法の解釈をする責任と義務があるものと考えまするけれども、司法部の御意見に従えという御趣旨も尊重いたしまして、この裁判の決定に従って四条三項の取扱いを進めて参りたいと思っておる次第でございます。(拍手)
 それから、将来にわたってよき労使の慣行を作るために、特に公共企業体につきましては公社のあり方、及び、公労法において公社労働組合にスト権を与えることが前提ではないかという御意見でございました。公社のあり方につきましては、ただいま内閣において審議会を設置いたしまして鋭意検討中でございます。再検討の必要は十分これを認めるのであります。スト権の問題につきましては、私は、やはり、労使双方の間によき慣行を作り上げることが前提であり、同時に、労使ともに現行法規を守るのであるということが前提とならなければ、どんな法の改正を行なっても、法そのものを無視する人を相手によき効果をあげ得ないと思うのでございます。(拍手)
 それから、今まで政府は公労法を守ってこなかったではないかとおっしゃいますが、政府が公労法に違反した事実は現在までございません。(拍手)
    〔国務大臣松永東君登壇〕
#16
○国務大臣(松永東君) 多賀谷君の御質問の中で、文教政策に関する問題について答弁をいたしたいと思います。
 まず、御指摘になりましたもののうちの道徳教育から申し上げてみたいと存じます。現在、道徳教育は、小中学校における社会科を初め、各教科その他の教育活動の全体を通じて行われておることは、御承知の通りであります。その実情は、まだ必ずしも所期の効果を上げておるとは言えません。今後も学校教育の全体を通じて行う方針は、これは変更いたしません。やはりこれでいくつもりでありますが、しかし、現状を反省いたしまして、その欠陥を是正し、その徹底強化をはかるために、新たに道徳教育のための時間を特に設置したい、こういうふうに考えておるのでございますが、その具体策につきましては、目下教育課程審議会に諮問しまして、慎重に検討を願っておるところでございます。いずれにいたしましても、その内容は文化的、民主的国家の成員としてふさわしい徳性の涵養に資するものでなければならないと考えております。決して、昔の修身科の、その復帰をするとかなんとかいうことは、寸豪も考えておりません。これは一つ御了承を願いとうございます。
 さらに義務教育水準の確保ということについて御質問がありました。文部省といたしましては、いわゆるすし詰め学級の解消のために、学級編成についての明確な基準を法定したいと考えておるのでございます。このためには、学校施設の整備、教職員配置の改善等についての予算措置が伴わなければならないので、来年度予算編成につきましては、これらの点に関しまして、できるだけ努力をいたしておるところでございます。また、父兄負担の軽減をはかるため、学校に要しまするところの設備、教材費に関する国及び地方財政の措置を強化したいと考えておるのでございます。
 その次は勤務評定の問題でございます。この勤務評定の問題は、目下盛んに議論が取りかわされておる問題でございますが、しかし、何と申しましても、教育はりっぱな教師によって行われなければなりません。従って、教育行政の責任者は、教師に人を得ること、りっぱに職責を果してもらうように常に留意しなければなりません。このためには、職員の勤務の実績並びに勤務を通じて、そうして、その見られた性格、徳性、能力等を的確に把握することが必要でございます。勤務評定はこれらを的確に把握するために行われるものでありますから、勤務評定を実施することは適正な人事管理を行うに役立つものでありまして、成績優秀な者には特別昇給を行い、また、校長、教頭に抜擢するなどによって、むしろ職員の勤務能率の増進をはかり、教育の効果を上げられ得るようになるものと信じております。
 右、御了承願います。(拍手)
#17
○副議長(杉山元治郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#18
○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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