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1957/11/02 第27回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第027回国会 法務委員会 第1号
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1957/11/02 第27回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第027回国会 法務委員会 第1号

#1
第027回国会 法務委員会 第1号
昭和三十二年十一月二日(土曜日)
    午前十時二十九分開議
 出席委員
   委員長 三田村武夫君
   理事 小島 徹三君 理事 椎名  隆君
   理事 長井  源君 理事 横井 太郎君
   理事 菊地養之輔君
      犬養  健君    宇都宮徳馬君
      小林かなえ君    世耕 弘一君
      中村 梅吉君    花村 四郎君
      林   博君    福田 篤泰君
      古島 義英君    山口 好一君
      横川 重次君    神近 市子君
      佐竹 晴記君    坂本 泰良君
      田中幾三郎君    古屋 貞雄君
      細田 綱吉君    武藤運十郎君
      吉田 賢一君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
 出席政府委員
        警察庁長官   石井 榮三君
        法務政務次官  横川 信夫君
 委員外の出席者
        警  視  長
        (警察庁刑事部
        長)      中川 董治君
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
        警 視 総 監 川合 壽人君
    ―――――――――――――
十月十五日
 委員伊瀬幸太郎君及び田中織之進君辞任につき、
 その補欠として細田綱吉君及び岡田春夫君が議
 長の指名で委員に選任された。
同月三十一日
 委員岡田春夫君、五島虎雄君、辻原弘市君、古
 屋貞雄君及び細田綱吉君辞任につき、その補欠
 として菊地養之輔君、風見章君、片山哲君、武
 藤運十郎君及び坂本泰良君が議長の指名で委員
 に選任された。
十一月二日
 委員戸塚九一郎君、中村梅吉君、三木武夫君、
 風見章君及び片山哲君辞任につき、その補欠と
 して宇都宮徳馬君、山口好一君、福田篤泰君、
 古屋貞雄君及び細田綱吉君が議長の指名で委員
 に選任された。
同日
 理事池田清志君及び菊地養之輔君委員辞任につ
 き、その補欠として小島徹三君及び菊地養之輔
 君が理事に当選した。
十一月二日
 違憲裁判手続法案(鈴木茂三郎君外十四名提出、
 第二十六回国会衆法第一五号)
 裁判所法の一部を改正する法律案(鈴木茂三郎
 君外十四名提出、第二十六回国会衆法第一六
 号)
 刑法の一部を改正する法律案(鈴木茂三郎君外
 十二名提出、第二十六回国会衆法第二七号)
 裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
 第二十六回国会閣法八九号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の互選
 国政調査承認要求に関する件
 法務行政及び人権擁護に関する件
    ―――――――――――――
#2
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。
 本日はまず国政調査承認要求に関する件についてお諮りします。すなわち、衆議院規則第九十四条により常任委員会は会期中に限り議長の承認を得てその所管に属する事項について国政に関する調査をすることができることになっております。当委員会といたしましては
 一、裁判所の司法行政に関する事項
 二、法務行政及び検察行政に関する事項
 三、国内治安及び人権擁護に関する事項
 四、司法試験制度に関する事項
 五、外国人の出入国に関する事項
 六、交通犯罪に関する事項
 七、売春防止法の施行に関する事項
 八、戦犯服役者に関する事項以上の各事項につきまして議長に対し国政調査承認を要求いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○三田村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
 なお国政調査承認要求書の作成並びに提出手続については委員長に御一任願います。
    ―――――――――――――
#4
○三田村委員長 次に理事の補欠選任についてお諮りいたします。すなわち、委員異動に伴い理事が二名欠員になっております。理事に小島徹三君、菊地養之輔君を委員長より指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○三田村委員長 御異議なしと認め、両君を理事に御指名申し上げます。
#6
○三田村委員長 これより本日の日程に入ります。本日の日程は、去る三十日の理事会で御決定願った法務行政並びに人権に関する調査を行うことになっておりますが、会議に入る前に、前国会から本国会に至る当委員会所管事項の経過について一、二点御報告を申し上げ、委員各位の御了承を得ておきたいと思います。
 その一つは、当委員会の海外調査団派遣の件であります。御承知の通り、前国会において当委員会に付託されました裁判所法等一部改正法律案、すなわち最高裁判所機構改革に関する法案は継続審査となっておりますが、議案審査上、米、英、仏、西独などの最高裁判所並びに憲法裁判所の制度及び運営の実情等をさらに詳しく調査する必要を感じたので、前国会の最終日に理事会において海外調査団派遣の件を決定いたしておったのであります。準備の都合上出発がおくれておりましたが、九月二十四日、諸般の手続を終り、当委員会から委員福井盛太君、同高橋禎一君、同じく猪俣浩三君、及び専門員小木貞一君の四名と、法務省位野木調査課長、最高裁判所関根総務局長の二名が加わった一行六名の調査団が羽田を出発、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、イタリアなどの視察を終え、本日夕刻羽田に帰ってこられることになっております。一行はいずれも経験の深い専門家ばかりでありまして、必ず貴重な資料と調査の結果を携えて帰朝され、本案審議の上にきわめて有効な資料を提示されることと信ずるのであります。
 第二の問題は、世上にいわゆる売春汚職事件に関する件でありますが、御承知の通り、先月十四日の各新聞紙上で一斉にいわゆる売春汚職事件なるものが報道されて以来、当委員会に対して世上とかくのうわさや疑惑の目が向けられてきたのであります。同日偶然に開会された法務委員会において、当委員会の態度、すなわち徹底的に事態の真相を究明する方針を明らかにし、法務大臣に対しては検察当局の厳正にして迅速なる捜査の励行を要望し、すみやかに事実の真相が国民の前に明らかにされることを強く期待しておいたことは委員各位御承知の通りでありますが、同月十八日、読売新聞紙上に宇都宮徳馬君、福田篤泰君の両君が本事件に関係あるが如き記事が大きく報道され、この報道に関して、宇都宮、福田両君から検事総長及び東京地検検事正並びに読売新聞社を被告訴人とした名誉棄損の告訴が提起されたのであります。この告訴事件すなわち刑法上の名誉棄損事件の捜査に当り、当該記事の取材者と目される読売新聞社の立松君が逮捕取調べを受けたことから、報道の自由と基本人権の問題が世論の焦点となり、言論報道関係団体の抗議あるいは決議、学者の論評など、やかましい問題となって参りました。存日外人記者の間においてもこの問題が取り上げられ、大げさな言い方をするならば国際的な反響すら呼んでいるようであります。言うまでもないことでありますが、近代の文化的民主国家においては言論の自由と基本的人権が忠実に厳正に守られることが基本原則となっているのであります。特に基本人権の擁護は民主社会の絶対条件でありまして、人権の中でも人格権すなわち個人の名誉が不当に侵害されてはならないのであります。すなわち言論の自由もまた基本的人権擁護の原則の上に立たなければならないことは当然でありますが、今回の宇都宮、福田両君の告訴事件によって、はしなくもこの二つの基本原則をどのように解釈し、またどのように調和せしめて近代国家の社会的規範たらしめるかという点に関し、世論も重要な関心を持っておるように考えられるのであります。裁判、司法、検察に関する立法事項を管掌し、国民の基本的人権の擁護と法の権威並びに秩序に関する国会の調査活動を担当する当委員会においては、以上の諸問題について厳正なる調査審議を行い、事実の真相を究明し、国民の前に国会の権威と当委員会の立場を明らかにする必要があると思うのであります。
 以上の点御了承の上、審査に御協力賜わらんことを切望して経過の御報告にかえたいと存じます。
 それでは日程の法務行政及び人権に関する調査に移ります。
 前回の委員会で法務大臣よりいわゆる売春汚職事件に関し次回の委員会においてその後の経過を御報告願うとになっておりましたので、まず唐澤法務大臣の報告を求めます。唐澤国務大臣。
#7
○唐澤国務大臣 売春防止法関係の汚職事件の捜査状況につきまして、過般の委員会におきましてそのときまでの経過を一応御報告いたしておるのでございまするが、ただいま委員長からりお求めがございますので、さらにそり後の状況等を刑事局長から御報告いたさせたいと存じます。どうぞ御了承を願います。
#8
○竹内説明員 いわゆる売春汚職の捜宜経過でございますが、御承知のようにただいま鋭意捜査を進めておる段階でございまして、捜査に支障を生ずる尺を除きまして、できるだけ中間的に御報告申し上げたいと存じます。先般もちょっと触れたのでございますが、本件の捜査の端緒となりましたりは、新宿カフェー喫茶協同組合理事長、安藤恒に対する業務上横領被疑事件の取調べ中に、全国性病予防自治連合会、以下全性連と呼ぶことにいたしますが、に相当な金が出ておることが判明をいたしましてその行方を追及しておりましたところ、同会の事務局長今津一雄の業務上横領の事実が発覚いたしまして十月一日、今津を逮捕、取調べをいたしました結果、同会においては非常対策費という名義で昭和三十年、三十一年の両年にわたりまして多額の金を集めております。また、転業資金という名義で、三十一年から本年にかけましてこれまた多額の金円を集めておることが判明いたしたのでございます。これらの金は、すべてこれ売春防止法等にからむ国会対策の工作費として使ったものとは認められないのでありますけれども、そのうちの相当額のものはそういう方面に使用されたのではないかという推測が立てられるのでございまして、そこでこの金の使途を究明をいたしておりまするうちに、同会の理事長でありまする鈴木明、副幹事長であります長谷川康、専務理事の山口富三郎等が共謀いたしまして衆議院議員眞鍋儀十氏に対し三十万円を法務委員及び売春対策審議会委員の職務に関して贈賄している容疑が発生いたしたので、そこで、鈴木、長谷川を十月十二日に、山口を十六日に、それぞれ逮捕いたしまして取調べを進めたのでございます。その間、全性連の事務員で山田博一と申す者がございますが、その者の証拠隠滅の容疑が生じましたので、十月二十二日これを逮捕して取調べを進めております。その結果、眞鍋議員の容疑が濃厚となって参りましたので、去る十月三十日同議員に対しまして任意出頭を求め取調べを進めた結果、犯罪の嫌疑が濃厚となって参りましてかつ証拠隠滅のおそれがありましたので、これを逮捕いたしました。次いで翌三十一日勾留をし取調べを進めるとともに、鈴木、長谷川両名につきましては、十一月一日勾留満期となりましたために、処分留保のまま釈放をいたしました。さらに同日、眞鍋議員に対する別口の十万円の贈賄の容疑によりまして即日右両名を逮捕した次第でございます。
 この捜査の過程におきまして、読売新聞記者等に対する名誉棄損被疑事件の発生を見ましたことははなはだ遺憾に存じておるのでございますが、この捜査の概要につきましてもこの際御報告をさしていただきたいと思います。これまた現在捜査中のものでございまして、実は事案の詳細もいまだ判明していないのでございますが、ただいま私どもの承知しております限りにおきましてその概要を申し上げたいと思います。
 本件は、地検で捜査いたしております売春汚職事件に関連して、十月十八日付読売新聞朝刊に、宇都宮、福田両代議士収賄容疑で召喚必至という標題のもとに、衆議院議員宇都宮徳馬、同福田篤泰の両氏が売春業者から売春防止法の国会審議等に関連してそれぞれ多額の金員を収賄し捜査当局より召喚されることが必至であるという趣旨の記事が掲載されたのであります。さらに同日のラジオ東京より三回にわたりまして読売の記事とほぼ内容同一の事実がニュースとして報道されましたことに端を発するのでございます。宇都宮、福田両氏は、右のような記事及び放送は全く事実無根で、公然と事実を摘示して右両氏の名誉を棄損したものとして、十月十八日より同月二十二日に至る間に、宇都宮氏は、読売新聞編集局長小島文夫、同新聞担当記者、検事総長花井忠、東京地方検察庁検事正野村佐太男、同庁の担当検事某の五氏、福田氏は、読売新聞小島編集局長、同新聞の担当記者某、東京地方検察庁担当検事某、ラジオ東京の編成局長今道順三、同報道部長今井俊、同放送担当者某の六氏を、いずれも名誉棄損罪で東京地方検察庁に対し告訴をいたしておるのでございます。
 右被疑事件はいずれも事案の内容に照らしまして東京高等検察庁において審査、処理するのが適当と思量されましたので、地検におきましてはこれを東京高等検察庁に送致をいたしました。事件は東京高等検察庁において処理することとなったのでございますが、事案の性質にかんがみまして早期処理及び真相の徹底的究明を目途として捜査を開始するに至ったのでございます。東京高等検察庁におきましては、十月二十二日より同月二十四日に至る間に、告訴人である宇都宮、福田両氏、東京地方検察庁関係者、読売新聞関係者等から事情を聴取した結果、前に申し述べました十八日の読売新聞の記事は、大体同新聞社の立松和博記者の取材執筆によるものと推認されるに至ったのでございまするそこで、東京高等検察庁におきましては、十月二十四日右立松記者の任意出頭を求めまして、被疑者として取調べを行なったのでございますが、同記者は、問題の記事は同記者において原稿を作成して記事として掲載さした事実を認めたのでございますが、同記者の原稿作成の経過、協力者の有無等の点につきましては、同記者の供述と関係者の供述との間に著しい食い違いがありましたし、かつ名誉棄損罪の犯罪の成立を阻却する原由である事実の真実性の証明に関する資料の有無等の点につきましても疑問の点がありまして関係者との通謀、その他犯罪の隠滅をはかるおそれがあると判断されましたので、同日裁判官の逮捕状の発付を得て身柄を逮捕した上丸の内警察署に留置したのでございます。同記者が病後である事情等にかんがみして、記者の健康状態については二回にわたって医師の診断を求め、旬日の勾留には耐え得るという診断を得まして、かつそれまでの捜査の経過に照らしまして、罪証拠隠滅のおそれがあると認められたので、十月二十六日に裁判官に対しまして勾留状の発付を請求いたしたのでございますが、翌二十七日裁判所からは請求を却下されましたので、同日午前十時四十分ごろ身柄は釈放したのでございます。立松記者につきましての勾留請求が却下され、身柄が釈放されたあとにおきましても、引き続き任意捜査によりまして関係者を取り調べる等の方法によって捜査を続けておるのでございまして、できるだけすみやかに結論を出すように鋭意努力中でございます。
 以上が両事件の捜査の概要でございます。
#9
○三田村委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。林博君。
#10
○林(博)委員 売春汚職問題につきましては、ただいま刑事局長から経過の御報告がございました。私どもも、この問題の捜査に関しましては、これは厳正なる捜査当局におまかせすべきであって、それ以上の報告をこの法務委員会に求めて捜査の支障を来たすようなことはいたしたくないと存じまするので、これは厳正なる捜査当局におまかせして、これ以上の追及はいたさない所存でございます。ただ、私どもがこの汚職事件に関して非常に不愉快に感じておりますことは、世上におきましても、あるいは議員の方々におきましても、この法案に反対した方々の立場を理解せずして、何か業者に悪因縁があるから、あるいは利害関係があるから反対しておるのだというふうに頭からきめてかかっておることでございます。私どもは国会議員として私はもちろんこの売春防止法には賛成した一員でありますけれども、しかしながら、その反対した人々に対しましても、おそらくその人々が自己の国会議員としての信念から、政治的信念に基いて行動したものであることを確信いたしておるのでありまして、これらの人が単に業者との悪因縁あるいは利害関係から行動したものであるということは絶対に思っておらないのであります。この意味におきまして、捜査当局におかれましても、もちろんこれはおわかりのことと存ずるのでありますが、かかる世上の予断にまぎらわされることなく、厳正公正なる立場からこの捜査を追及されることをお願い申し上げる次第でございます。
 私は、先ほど申し上げましたような意味におきまして、これ以上売春の捜査問題については質問をいたしませんけれども、ただ、私が当法務委員会として最も重要なる問題であると考えますのは、やはり人権の問題であると存ずるのであります。ところが、たまたま、先ほども御報告がありました通り、宇都宮、福田両氏に関しまして、読売新聞が重大なる人権に関する報道をなしておるのであります。先ほど御報告にもありました通り、十月十八日の読売新聞におきまして、宇都宮、福田両代議士が収賄容疑で召喚必至というような記事を出しておるのであります。ところが、これに関しまして、宇都宮、福田両氏は、これは全く事実無根であって捏造されたる記事であるという観点のもとに、直ちに読売新聞桂並びに検察庁を告訴せられたのであります。ところが、検察庁は、これに対処いたしましていろいろお調べを願いました結果、読売新聞社の立松記者を逮捕せられました。ところが、私ども考えまするに、この新聞の報道の自由ということはもちろん重要なる問題であるけれども、しかしながら、新聞が政治家を切り捨てごめんにするということは許されることではない。そこで、もし新聞が事実無根のことを報道したのでありまするならば、これは重大なる人権問題であると考えるのであります。ところが、読売新聞社の記者を検察庁は名誉棄損の容疑をもって逮捕せられた。私は法務大臣にこの点をお伺いいたしたいのでありますけれども、新聞記者を名誉棄損であるといって検察庁が逮捕するということは、その前提として、宇都宮、福田両氏に対する容疑事実がない、あるいは証拠関係において宇都宮、福田氏に対する証拠資料というものが何らない、それだからこそ名誉棄損になるという見解のもとに私は新聞記者を逮捕せられたものであると考えるのであります。もしそうでなくして検察庁がかりに福田氏にあるいは宇都宮氏に対する容疑を持って、あるいは証拠資料を持っておりながら、新聞記者を逮捕したということでありますならば、これは新聞記者の報道の自由に対する重大なる制限であり、報道の自由に対する抑圧であると考えるのでありますが、私は、検察庁ではそのようなことはするはずはない、おそらくこれは宇都宮、福田両氏に対する容疑事実がないからこそ名誉棄損の逮捕をされたものであると考えるのでありまするが、この点に対する法務大臣の御見解を、あるいは御報告を承わりたい。
#11
○唐澤国務大臣 ただいまお尋ねの中にもありました通り、新聞、言論の自由はどこまでも尊重しなければならぬと考えます。従いまして、いわゆるニュース・ソースの秘匿性というようなことにつきましても、検察当局として十分これを尊重しなければならぬと考えております。また、これと同時に、ときに新聞記事によりまして個人の名誉あるいは信用が著しく棄損されますような場合におきましては、これはまた人権尊重の立場からこれを擁護しなければならぬと考えましてこの言論の自由を尊重するという原則と、また一方において人権を尊重しなければならぬというこの二つの原則は、ともに民主主義憲法治下において大事な原則であると考えております。検察当局といたしましても、しばしば、この二つの原則の間に立ちましていかにこれを調和していくかということは非常な問題になる次第でございまして、このたびの事件につきましても、新聞紙の報道に端を発して名誉棄損の告訴が出た、しかも検事総長以下検察当局も訴えられているような重大な問題でございまして、慎重に慎重をきわめて処置をいたしたようでございます。もとより私は事後に報告を受けたことでございますが、その報告によりますと、宇都宮、福田両氏には、私の聞きました範囲では容疑が全くなかったようでございまして、それならば、容疑のないことを書けば直ちに名誉棄損の罪が成立するかと申しますと、これは法律上むずかしい議論になるかもしれませんけれども、かりにその事実なしとしても、事実がありと信じ、しかもありと信じたことに常識から考えて相当の理由がある、だれが考えてもそういうような条件があるならば事実があったろうと信じてもそれは当りまえである、こういうようにその記事をした者が考えて書いたならば、これは刑法の理論から申しまして犯罪の成立を阻却して罪にならないのでございます。かような次第で、その点をどこまでも捜査しなければならない、こういう関係から立松記者にこれを尋ねたようでございますが、ついに身柄を拘束する必要に立ち至りまして逮捕いたしたようなわけでございます。当時の状況を聞いてみまして、まことにやむを得たかったものであったと考えております。
#12
○林(博)委員 ただいまの法務大臣の言明によって私は重大な事実が明らかになったと思うのであります。それは、少くとも、かくも新聞にでかでかと報道され、宇都宮あるいは福田氏の政治生命を抹殺するような重大な記事が報道されているにもかかわらず、その当時において――その当時ではない、現在においても、宇都宮、福田氏に対する、この売春汚職に対する容疑は全くないということが法務大臣の口から明確に言明せられたことでございます。そうしますと、私はこれは重大な問題であると思う。これは、新聞によって少くとも現職の宇都宮、福田氏がこのような記事を出されるということは、政治的には全く致命的なことである。ただいまの法務大臣の言明によって、宇都宮氏の選挙区の方々も、また福田氏を支持する方々も、ほっとして安堵の胸をなでおろされたことであろうと思うのですけれども、しかしながら、この二人の方々が、こういうふうな事実が全くないにもかかわらず、読売新聞によってこういう記事が書かれたということは、私は宇都宮、福田両氏の怒り心頭に発したものであると考えるのであります。もしも私がかりにこういう立場においてこのような記事を捏造せられたといたしましたならば、私自身もおそらく憤りのほとばしるところを知らないであろうと思います。単に百万円、二百万円の金をある人から記事を書くぞといって恐喝したとか、あるいは一千万円の金を恐喝したとか、そのような小さな問題でない。二人の政治生命に関する問題である。それでありますから、新聞がこのような記事を取り扱う際においてはほんとうに慎重にやる、またかりに自分が誤まった場合にはその責任をとるということは、私は当然であると考えるのであります。新聞というものは、片一方においては報道の自由が保障されなければならないと同時に、それだけの責任を持たなければ、新聞記者にのみ切り捨てごめんの特権を与えるという、重大なる人権侵害をさせるというような暴力を新聞に与える結果となると私は考えるのであります。この意味におきまして、果して新聞の名誉棄損が成立するかどうかということは、ただいま法務大臣のおっしゃったように、いろいろ構成事件の問題がありますから、問題であると思う。しかしながら、少くとも検察庁におきましてこれら二人の方々の名誉を尊重して新聞記者を逮捕したということは、私は当然の措置であると考えるのでございます。ただ、問題は、この逮捕の理由について、読売新聞その他の報道を見ますと、何か取材源をあかさぬから新聞記者を逮捕したということが書いてあるのでありますが、私どもから言うと、これはちょっとおかしいと思う。というのは、現在は被疑者にも被告にも黙秘権が認められておるはずである。それでありますから、取材源をあかさぬからといって逮捕するというのは、いかにもおかしい。私は逮捕の理由はそうでないと思う。先ほど法務大臣の言われたように、あくまで証拠隠滅ということを理由にして逮捕せられたと思うのでございますけれども、この間における検事長の言明等において、いかにも一般に誤解を生んで、何か新聞報道に対する自由を抑圧するというような感を抱かせておるのでありますけれども、いま一度その逮捕の理由について法務大臣並びに刑事局長から明確なる理由をお示し願いたいと存ずるのであります。
#13
○竹内説明員 立松記者逮捕の理由について申し上げますと、本件の名誉棄損は、記事の内容である事実が真実であることが証明されれば罰せられないこととなっておるのでございます。従って、立松記者がどのような根拠に基いて真実と信じていたかどうかという点が問題になるのでございます。立松記者が真実であると信じたことに相当な理由があったかどうかを調べないと、犯罪の成否を決定することができないのであります。ところが、同記者はこの点について弁明はいたしておりまするが、他の関係人の供述との間に著しい食い違いがあります。もし身柄を拘束しなければ、互いに通謀をいたしまして、その結果は犯罪の成否までもあいまいになってしまうおそれがある、そういうふうに考えましたので、この場合はまさに証拠隠滅のおそれがあるという事由に該当する、かように考えて身柄を逮捕した次第でございます。
 なお、ただいま御質問の中にありましたが、新聞において、高検の岸本検事長が、ニュース・ソースを言わないから逮捕したと語ったというような記事が報道されておるのでございますが、この点につきまして、私どもの方で、その事実の有無、もしそういう事実があったとすればどういう根拠でそういうふうなことを述べられたものであるかというような点を調査いたしたのでございますが、その結果によりますと、大体次のような次第でございます。すなわち、十月二十五日の正午過ぎころ、新聞記者の会見の申し入れがありまして、岸本検事長が検事長室で各社の記者十数名と会見をしたのでございますが、その際いろいろな話も出たでございましょうが、問題の点でございます立松記者を逮捕する必要があったかどうかという点に関連いたしまして、検事長は、関係者の供述に重大な食い違いがあって、釈放したならば証拠隠滅のおそれがあった、十八日の読売の記事が作られたいきさつを検察庁としては知りたいのである、それを明らかにするために逮捕せざるを得なくなったという趣旨の発言をいたしておるようでございます。さらに、ニュース・ソースを言えというのであるかというような質問が出まして、これに対しまして、原稿作成のいきさつを調べるのだから、自然ニュース・ソースも捜査の対象になるだろう、しかしながら、そればかりが目的ではないのだと答えたそうでございます。さらに続きまして、ニュース・ソースを秘匿する権利があると思うかというような質問が出たのに対しまして、捜査当局としては真実の発見に努めなければならないという趣旨の答えをされたというふうに承知しておるのでございます。もし岸本検事長の発言が新聞に報道されたような趣旨に受け取られたということになりますと、これは何らかの行き違いに基くものではないかというふうに考えておるのでございます。
#14
○林(博)委員 ただいまの御説明によりまして、私は少くとも今回新聞記者を逮捕したということは当然のことであると考えるのであります。ニュース・ソース秘匿だけの問題で逮捕したのではない、少くとも証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕しておるのでありますから、私は検察当局がこれを逮捕せられたことは当然だと思う。新聞記者なるがゆえに逮捕せられないというようなことは、あり得ないことである。ところが判事はこれを却下しておる。これは裁判所側はここにおいで願っておるわけではないので追及するわけにいかないのでありますが、私はなお現在において法務大臣が逮捕したことの正当性を信じておられるかどうかということについて伺いたいのでありますが、これを判事側が逮捕を却下したことは、私どもから見ればきわめて不当であると考えておる。というのは、福田氏並びに宇都宮氏の政治的生命が犠牲になったというような、この名誉棄損事件というような重大な事件において、その担当記者を釈放したということは重大なことだと思う。というのは、今までの事件において、この程度ですべての事件が勾留を却下されておらないと思う。私の今までの経験から言えば、この程度の事件においては一般人ならばすべて勾留されておると思う。どうも、いろいろ考えてみますると、あるいは客観的な判断があったのかもしれませんが、一般人であるならば当然逮捕されておるのに、新聞記者なるがゆえに却下されておるというような印象を受けておるのでありますが、この点に関しまして法務大臣の御見解を承わりたい。
#15
○唐澤国務大臣 これは非常に重大な問題でありますので、当時におきましては十分考慮に考慮を重ねたようでございますが、何分にも犯罪が成立するかしないかという分れ道でございまして、その点について証拠隠滅のおそれがございましたので、捜査の段階において逮捕するようになったのでございます。当時の事情を聞いてみましてまことにやむを得なかった処置であると考えております。
#16
○林(博)委員 私はそういう考え方を持っておるのでありますが、これは法律技術上の問題でありまして、それ以上は、裁判所も見えておりませんし、捜査中の事件に私の私見をさしはさむことはいかがかと存ずるので、この点についてはその程度で打ち切ります。
 ただ、いま一点私はお伺いしたいのでありますが、この売春汚職等に関しましていろいろな流言が一般に流説されておる。あるいはいろいろ新聞記事その他、ここにもあるのでありますが、いろいろなことが言われておるのであります。また、ある人は、どの業者がだれに幾らやった、それをちっとも動かぬと言っておるのを国会の廊下で聞いたというような説が報道され、これが検察庁の一つの資料となっておるというようなことも言われておる。また全性の本部に済というようなしるしのついた文書があって、その済になっておる人はあるいは金をもらったんじゃないかというようなことが(「そうだ」と呼ぶ者あり)報道されておる。私はこれは重大な問題であると思う。一人縛られたって、これはほかの議員に関係はない。国会の廊下においてあの議員に業者が幾ら持って行ったということが言われていたからといって、その議員が皆さんもらったということには私はならないと思う。私どもの経験によれば、あの弁護士に幾ら出せば事件をたのんでやるといって金を出しても、その金がどこかへ行っちゃった場合が幾らでもあるのです。このような事件の場合、業者が国会の廊下で幾らやったということを言ったって、私は決して議員の手には渡っておらないと思う。それが中間でなくなってしまうのが全部であると私は考えておるのであります。そういうような情報をもとにして、軽率にも、いかにも議員の間に汚職が行われるというような考え方をすることは、国会議員に対する侮辱であり、またみずから国会議員としての権威をそこなうものであると私は考えるのであります。
 そこで、私の伺いたいのは、問題の焦点をしぼって参りまするが、済ということに関する文書である。この済という文書が非常に問題になって、週刊朝日にも東京都選出の議員八名の名前に済というのが書いてある。しかし、かりにもその名前が発表されれば、この人の選挙区においてはそういう人は何か売春汚職にでも関係があるだろうというので、大へんな迷惑をこうむる。そのようなことは果して捜査当局から漏れたものであるかどうか、そういう事実が捜査当局にあったのかどうか。もし末端から漏れたとすれば、これは捜査当局の重大なる失態であるというふうに考えるのでありますが、この点に関する明確な御答弁を法務大臣から願いたいと存ずるのであります。
#17
○竹内説明員 大臣からということでございますが、私から答弁させていただきます。
 今御指摘のようにいろいろ風説はあるようでございます。さような風説のあることも当局は承知しておりまするが、捜査は御承知のように証拠を追って進められていくものでございまして、風説によって捜査をいたすものではございませんことを御理解願いたいと存じます。
#18
○林(博)委員 私はただいま刑事局長の言われた通りであろうと思う。捜査というものは、少くとも贈賄があったか、収賄があったかということは、業者が金をやったからとか何とかいうようなことによって左右されるものではない。徹底的に調べて、そうして直接その議員に渡ったかどうかということが検察当局によって証明され、裁判によって初めて立証されることであろうと考えるのであります。それだから、こういう記事に関してはきわめて慎重に取り扱わなければならないと思うのであります。捜査当局からこのような情報が漏れたのか、あるいは事実無根のことであるのかわかりませんけれども、そういうようなことがかりにも末端から漏れて、それが報道機関に取り上げられ、一般国民に対する誤解を与えて、国会に対する信威を失墜させるようなことがあったならば、これは重大なる問題であると考えるのであります。
 そこで、私は、捜査当局に対しまして、かかる事件の捜査に当りましては、一方において厳正徹底を期すると同時に、かりにも仮借なくこの事件の真相の究明に当ると同時に、少くとも何らこの事件に関して関係のない議員諸公その他の方々に対しまして末端から機密が漏洩することによって少しの迷惑でも与えてはならないという心がまえをもって、捜査を進めていただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
#19
○古屋委員 関連……。
 今の林君の御判断は自由なんですけれども、問題――は法務大臣に答弁していただきたいと思う。責任ある御答弁を願いたい。一番問題は、検察当局は勾留の必要ありという主張をされて、これは正しいという御議論のようですが、裁判所においてこれを却下しておるのです。その却下がけしからぬという御意見がありましたのですが、法務大臣がこれに対して答弁していないのです。その裁判所の却下を正しい正当なるものと信ずるか信じないか、簡単に御答弁願います。それでどちらが正しいかという問題が結論が出てくるのです。
#20
○唐澤国務大臣 第一段といたしまして逮捕状を請求いたしました。これは発付になりました。この逮捕状に基いて逮捕いたしました。次に勾留状の請求をいたしました。ところが裁判所はこれを却下いたしました。だんだん検察当局の話を聞いてみますると、検察当局といたしましては、勾留状請求が至当である、その必要ありと考えて請求いたしたのでございまして、裁判所がこれを却下いたしましても、それは考え方の相違ということに相なります。検察当局といたしましては、どこまでも勾留状の発付を希望しておったのでございまするが、たまたま裁判所と意見が違ったのでございまして、その際に裁判所の却下という新しい事実がまたここに加わりましたので、それで、かれこれ慎重に考慮いたしまして、この際には再び準抗告と申しますかさらに第二段の手続はとらないということに決定いたしたのでございます。
#21
○古屋委員 そうしますと、裁判所の決定を一番正しいものと信ずるという御心境ですか。この点一体どうです。法務大臣に聞くのです。局長ではだめです。重大な問題で、国民として日本の制度を信用し、法律を順奉する義務のある法務大臣の立場からも、裁判所の決定に対して絶大なる信頼を国民は持っておって、日本人はかれこれ文句の言えないはずなんです。法務大臣は、絶対信頼するかしないかのはっきりした御答弁を願いたいと思う。この点、林君に対する答弁があいまいなんですから、はっきり御答弁願いたい。
#22
○唐澤国務大臣 検察当局といたしまして、勾留状の発布をしてもらいたいとして請求をいたしましたことにつきましては、検察当局といたしまして、それ相当の理由があったと信じたからでございます。しかしながら、不幸にして裁判所と考えを異にいたしまして、裁判所はこれを却下いたしました。検察当局といたしましては、まことに不本意でございます。不本意でございますけれども、この際裁判所の決定を尊重して、これに従うことに決定をいたした次第でございます。
#23
○三田村委員長 吉田賢一君。
#24
○吉田(賢)委員 私は第一に包括的に二、三の点を伺うことにしたいと思います。
 そこで、いわゆる売春汚職の追及の問題につきましては、ようやく世論もだんだん高まって参りました。しかし、一方におきまして新聞記者逮捕の事件なるものが突発いたしまして、いろいろな風説が流布せられまして、国会議員が登場してくると汚職はつぶれるのである、由来疑獄事件の検挙、捜査は、国会議員に波及する情勢が願事になってくるとつぶされるのである、過去の造船疑獄において見ても、あるいは先般の全購連事件等に見ましても、とかく途中において汚職、疑獄というものが腰折れになるということを国民はいたく憂慮いたしております。そこで、まず検事総長に伺うのでありますが、検事総長は新任せられまして、この問題につきましても相当新しい関心と熱意を持っておられるものと知は考えます。一方告訴もせられておるのでありますけれども、それだけ一そう身近にお感じになり、部下が告訴せられておるという事実にかんがみましても、検事総長の重責から非常に大きな関心を持ってこの事件に対処せられておるものと思います。そこで、あなたは検事総長といたしまして、この世論が沸き、国民が大きな期待と、もしくは非常な不安を持ちながら捜査権の活動状況を注視しておるこの売春汚職の追及につきまして、一体どのような決意をもって臨んでおられるのであるか、これを一つはっきりとしていただきたいのであります。
#25
○竹内説明員 ちょっと弁明をさしていただきますが、検事総長はただいま……。
#26
○吉田(賢)委員 ちょっとお待ち下さい。検事総長に聞くのです。
#27
○三田村委員長 吉田君に申し上げますが、検事総長はきょう何かやむを得ない役所の都合でまだ出席になっておりませんから……。
    〔「検事総長はどうした」「事務局はそう言ったじゃないか」と呼ぶ者あり〕
#28
○吉田(賢)委員 事務の方から検事総長は出席しているとおっしゃったじゃないですか。
#29
○三田村委員長 委員会を続行いたします。
#30
○吉田(賢)委員 委員長に聞きますが、検事総長は当委員会に出席をしておることになっております。これについて刑事局長が何か説明しようとするのだが、これはどうしたのですか。委員長、何かそこにいきさつがあるのですか。こういう重大な質疑応答の機会に検事総長が黙って偽わりの報告を事務当局にさせて、そして来ておらぬというのは大きな失態です。
#31
○三田村委員長 吉田君に申し上げますが、法務当局が偽わりの報告をいたしておるかどうか、これはちょっとここでは問題でありますから……。(「国会の事務だ」と呼ぶ者あり)この問題については検事総長の立場は即法務大臣の立場であられると思いますから、一応法務大臣の御答弁を願って、その上どうしても検事総長の出席が必要な場合は……。
#32
○吉田(賢)委員 それはいけません。今法務大臣に質疑をいたしますから、その間に即刻出頭するように手配してもらいたい。これは前回の理事会におきまして決定せられたことです。
#33
○三田村委員長 吉田君に申し上げますが、この前の三十日の理事会でそのことは御決定願っておりますから、そのように委員長は手続をいたしておりました。ところが、きょうどうしても公務の都合上出席はできないということを今伺ったのでございますから、どうしても必要があるならば、またあらためて要求することにいたします。御了承願います。
#34
○吉田(賢)委員 きわめて重要な事項かと思いまするので、お呼びしておるのであります。だから、質問継続中にすぐ手配して呼んでもらいたい。そして、どういう事情で来ないかということを明らかにしてもらいたい。そういうふうに手配してもらえますか。委員長、どういう公務で出頭しなかったかということも、あわせて明らかにしてもらいたい。検察庁が告訴をせられて大きな疑惑をかけられておるようなときに、単に抽象的に公務に藉口して、理事会で決定し、また事務当局が出席しておると報告したその検事総長が姿を見せぬということは、国民の疑惑を深からしめるものであります。すみやかに手続をしていただきたいと思います。
#35
○三田村委員長 吉田君に申し上げますが、検事総長が出席されていないことについて法務大臣の御発言を求めます。法務大臣の御答弁を求めます。その検事総長が出て来られない立場の説明を法務大臣から伺います。
#36
○吉田(賢)委員 せっかくですが、ちょっとお待ち下さい。これは筋が違います。委員会の運営はやはり委員長の権限であり、また職責であります。当日検事総長を当委員会に出頭せしめることは、これは委員長の職権の行使でありましたのに、その出てこられない理由を第三者の当局に説明させるということは、これはいかがかと思います。委員長みずから一つ御説明願うか、さもなければ……。
#37
○三田村委員長 委員長は、今申し上げました通り、今委員部から伺ったのですが、検事総長は、きょうはどうしても公務の都合上出席が不能である、だから検事総長としての答弁は、法務大臣に全部委曲報告してあるから、こういう連絡でありましたので、御了承願います。
#38
○吉田(賢)委員 それはいかぬですよ。検事総長と法務大臣は違う。
#39
○三田村委員長 ですから、検事総長を呼ぶ必要がありますれば、またあらためて手続をいたします。
#40
○吉田(賢)委員 委員長にお尋ねいたしますが、理事会の決定は委員長はやはり尊重していただかなければなりません。理事会におきまして検事総長を呼ぶことにきめてあるのであります。きめてありますので、それはやはりどうか忠実に実行してもらわねばなりません。差しつかえがあるから、法務大臣に報告してあるからということは国会侮辱であります。――そういう言動は。そもそもそういうことを国会に通告してこないということでは、私は証人として喚問してもいいと思います。それならば証人の喚問でもいいと思います。けれども、本日は検事総長として御出席願うということにすぎないのでありますから、そういう筋の通らないことで、出席しないということを簡単に受けて委員会に御報告なさるということは、いかがなものであろうかと思います。そこで、他の事項について法務大臣に質疑を継続中に、いま一度直ちに電話その他の方法によってすみやかに当委員会に出席方を要求するような御手配を願います。いかがなものでございますか。
#41
○三田村委員長 了承いたしました。検事総長を呼びます。
#42
○吉田(賢)委員 それでは質疑を続けます。
 唐澤法務大臣に伺います。あなたは、前回の委員会におきまして、この売春汚職の追及については相当な熱意をお示しになっておるのであります。ところで、巷間伝えられるところによりますと、いろいろな政界の事情等もあって、容易にこれは力強く追及することは困難である、むしろだんだんと困難の要素の方が増しつつある、こういうことさえ伝わってきておるのであります。まさかあなたのような硬骨の人に政治の圧力が加えられておるということはないと思いますけれども、あなたの立場から、この検挙、捜査の進行について、今の御決意はどのようにあるのか、最初に聞いておきたい。
#43
○唐澤国務大臣 このいわゆる売春汚職の捜査につきまして過般の委員会におきましても吉田委員からお尋ねがあり、いろいろと御忠言をいただきました。私は、その際に表明いたしました私の決意、今日も少しも変っておりません。世上非常な疑雲に閉ざされておる問題でございますから、検察当局に対しましては、ほんとうに厳正公平な態度で、いやしくも容疑がございましたならば徹底的に捜査を遂行し、事の黒白を明らかにするように指示もいたしております。何かいろいろ政界の事情等から想像をしてあるいは私がやりにくくなったような事情でもありはせぬかという御心配のお尋ねかしも存じますが、さようなことは絶対ごございません。また、私の信念といたしましても、外部から不当な勢力の制肘や牽制を受けるつもりは全然ございません。徹底的にこれは究明をいたす所存でございます。
#44
○吉田(賢)委員 ところが、これもまた巷間伝えられるところによりますと、地検の捜査陣は、ことに応援検事などのごときも、もう大半の仕事は終るのでやや終末に近づいてきたのである、こういうようなことが伝わっておるというのであります。まさかそんなことはなく、これはためにする者のデマであろうと私は信ずるのであります。人はいろいろな立場もあり、考え方もあり、あるいはまた利害のこともあるかもしれませんけれども、やはりこの際は良心的に職務に忠実に一生懸命になっておりますたとえば地検の捜査陣などに対しましても、これは徹底的な支援を与えてそのなすところ一切の疑惑を一掃する、こういう支援能勢こそ私は必要であろうと思うのであります。ところが、そういうようなことが伝わるというゆえんのものは、やはりそこに何か疑惑があるのではないか。現に、たとえば宇都宮君が配付いたしました文書によって見ましても、この文書の末尾には、事実無根の報道を掲載した悪意のニュースを提供した嫌疑のある検察庁の最高責任者としての検事総長を告訴した、このようなことが書かれておるのであります。言いかえますと、いろいろと疑惑の中にあるようなことが外部では流布され、こういう記載がどの程度の信憑性があるか私は知りませんが、これを受け取った都民は、やはり検察庁というのはいろいろの事情もあってなかなか複雑怪奇なものだなということの印象を受けるおそれもあるわけであります。そこで、あるいはいや気がさす、あるいは勇気がひるむ、あるいは誠実なその立場をいろいろ疑われることによって仕事がしにくくなる、こういうこともいろいろわれわれは推測し得るのであります。そこで、私どもは、そのように良心的に誠実に一生懸命にやっておるような検察陣に対しましては、国民の大きな支援のもとに徹底的に悪徳の売春汚職を追及していくということを、それこそ検察行政、法務行政の大きな力をもってこれを押してやるべきではないだろうか。幸いにあなたは総長の上に立って指揮しておる法務大臣でありますから、そういう決意をあらゆる意味において浸透さすということは当然である。いたずらにそこいらの小さなことに頭を使うのではなしに、ほんとうに追及していくという決意を前線の末端にまで浸透させていくということ、そして一体の態勢をなしてぐんぐん押していくことが必要ではないかと思う。このようなことが流布されるのは、何かそこにいろいろと意味があるのではないか、いろいろと意味があるということ自体がこれもまた終りに近づいたのではないか、大山鳴動してネズミ一匹ということになるのではないか、これを心配しておるのです。そんなことになりましたら、百年河清を待つにひとしいことで、そんなことはできはしません。あなたがどんなに力みましてもだめです。それは口だけに終ってしまうのです。そんなことならわれわれは聞きたくない。口頭禅ではだめなんだ。徹底的に実行してもらわねばいけない。このようなことは風説か何か知らない。宇都宮君があとで弁明されるだろうから、風説ではないでしょうが、いずれにしましても、部外でこのようなことが言われるようなことであっては、本家本元、本尊に何かあるのではないかという疑惑を国民は持たれると思います。そんなことをあなたが口先で言われるだけではだめです。検事総長が出てこない態度の不遜なことについて見てもわかることです。そんなことではやれません。その点についてどうお考えになりますか。
#45
○唐澤国務大臣 この汚職事件の捜査が近く打ち切りになるというようなうわさが世上にある、こういうお尋ねでございますが、私はさような報告は受け取っておりません。また、宇都宮さんから名誉毀損の訴えが検察当局に対して出されておる、また印刷物も出ておる、こういうようなことのために検察当局がこの事件を捜査する手が鈍りはしないかというような御疑念でありますが、私は絶対にさようなことはないと考えております。
#46
○吉田(賢)委員 それならば私は続いて聞きますが、一体、この事件の背景なり沿革なり、歴史的な売春法案の成立、その後のいろいろな方法の戦い、大きな渦、国会対策と莫大な金が集められたこと、陳情団が何名押し寄せてきたかということ等々、あなたは十分に御研究になっておると思います。そこで、たとえば、国会議員がどの程度関係しておったか、それは存じません。いずれもこれらはあなたの方の部下並びにその他の手によって最終的に明らかになることと思います。しかし、反面から見るならば、一体それならばその金は天から降ってきたものであろうか。決してそうではない。これは一万数千の業者が持ち寄った金であります。あるいは何十万円か知りません。あるいは何百万円か何千万円か、数億に達するかもしれないのです。その金は一体どうしたのであるか。業者が銀行から出した金だけではありません。これは従業婦が出した金が莫大なものになっていることも御承知だと思います。たとえばこれは亀戸のカフェーの協同組合の調査でありますが、三十年度の決算によりますと、集めた組合費の約七割が従業婦の出したもので、主人の出した百六十四万円に対して従業婦の出したものが三百三十六万円に上っておるのである。よろしゅうございますか。ところで、全般的に見ますと、あるいは臨時費が出る、あるいは負担金が出る、非常対策費が出る、これが全国的な実情です。そうしますと、十数万人の従業婦がからだを売ってかせぎ上げた金というものがその中の何割かを占めておる、こういうことになっております。それは、一人、二人の代議士の名誉も、あるいはまた政治生命も大事なことはもちろんでありますが、かりにそういう金が横領されたといたしますと、金の被害者というものは全国に散在しておる。何万人の業者かもしれない。何十万人の従業婦かもしれません。そうしますと、これは東京の地検だけの五人や七人の検事の手ではどうにもならない。御承知のように検事は直接警察官を持っておらない。全国の警察を動員して被害者の数字についての実情を調べて、だれが一体この莫大な非常対策費を出したのであるか、だれが一体莫大な金を出してそれを横領されてしまったのであるかということを当然追及しなければならぬと思います。そういうような捜査陣を用意することによって、初めてこの売春汚職事件というものは国民の期待するがごとく徹底的にこれを究明し得ると私は思う。法務大臣、こういうことについてどうお考えになりますか。あなたは検事総長を直接指揮される検察行政の最高の責任者といたしまして閣議に列して一切のこれらの検察行政、法務行政のそれぞれの報告をなさることと思う。広範な全国的なこういう視野に立って捜査を進めることが当然である。どういうふうにお考えになるか。
#47
○唐澤国務大臣 ただいまのお尋ねのうちにありましたように、この売春防止法関係といたしまして相当多額の金が集められたということは承わっております。この金がどういうふうに使われておるか、どういう運動費に使われておるか、事務費に使われておるか、あるいはその中から誤まって犯罪の金が出てはしないかというようなことが、捜査のまず一つの中心になるのではないかと思います。おそらくは検察当局においてそれらの点を十分捜査を進めておるものと考えておるのでございます。ただ、今お話のありましたように、いかにもこの背景が大きいからして、もう少し警察陣を総動員してこれの捜査にかからなければならぬという御意見のようでございまするが、私一々指図をいたしておるわけではございませんから、具体的なことはよく調べてお答えしたいと思いますが、おそらく検察当局といたしましては、ただばく然たる風評というもので発足するわけにはいきません。確固たる証拠、疑いがございまして、それからして発足いたさなければ、これは人権じゅうりんになります。そこで、今日の検察陣はこの問題のために相当強化されております。地検といたしましても、あるいは刑事局長といたしましても、今の容疑の捜査のためには今の布陣で十分であると考えておるものと私は考えております。
#48
○吉田(賢)委員 しかし、これは、本気にあなたがおやりになるのならば、私がこういう事実を指摘しておるのですから、また、刑事局長が先ほど御発言になった中に、要するに全国の業者から非常対策費等の名前によって集められたものが全性連の中央の幹部によって国会対策費に相当の割合が流れておるということが報告になっておる。それはそういう東京都下の業者だけではないのであります。そんなことは常識です。東京都下の従業婦だけじゃないのであります。全国一万数千の業者、全国では十万の従業婦、それがうしろに控えておるのであります。刑事局長が報告しておるのであります。国会対策費に何割かが使われておるのは重大なことであります。そんならばこれは全国的に動員するのは当然です。もう一度読んでみます。これは第何区に属するか知りませんが、北品川のカフェー協同組合、これは赤線業者がたった十八名しかいないのにかかわらず、この負担金はどれほどしておるかといいますと、二十六万円しておるのです。他の組合の場合は、負担金という名目によって、非常対策費という名目によって、理事長の交際費という名目によって、あるいは役員の接待費という名目によって、財務諸表を一見してあまりの不相応に実は驚いておるのであります。千住にしましても、非常対策費十七万円、寄付金十三万円、あるいは調査研究費が二十七万円、こういうように、このちっぽけな千住あたりにおきましても非常対策費が十七万円も出ておるのであります。こういうようなことは赤線業者だけではなしに従業婦も負担しておるということは当然推定し得ますから、どうして捜査陣あるいは警察陣の全国的な力を動員しないかというのです。検察行政の最高の責任者はあなたです。この際法務大臣としてはいいかげんなことでは逃れられないと思う。一たん国会対策費に何割かが出ておるということを法務省から言明した限りは、国会対策費はだれにまいたのか、国会対策費は途中で横領をされてしまったのか、議員の手に金が行ったか、それを飲み食いに使ったのか、そうすると収賄、贈賄にならないか、あるいはあっせん収賄罪がないといたしましても、これは委員会だけをねらうのではなしに、おそらく一般の常識として全議員をねらっていろいろな法律の延期を画策する。法律の延期を画策しようとするならば改正案を提起しなければならぬ。発案権を個々の議員は持っております。発案権を持っておる議員にこれがかりに何万円か行ったといたします。何千円か行ったといたします。それは収賄にあらずと断定ができますか。そういうことを思えば、私は国会の名誉を維持ずるためにも徹底的にこれは調べなければならぬと思う。
 警察庁長官に伺いますが、あなたは全国の警察を指揮しておる立場なんです。全国の全性連は御承知のごとく北海道から九州まであります。九州に大きな幹部もあります。北海道から九州の全国の業者が全性連の中央に向って莫大な負担金をしておるという事実、第一次、第二次の非常対策費をそれぞれ持ち寄っておる事実、こういうようなものが何割か国会対策費になっておるということであります。一体全国の警察力を動員して犯罪の端緒を見つけるようにどうして努力しないのでありますか。それもきょうはまだ御報告できないというならば、われわれはしばらく待ちます。手をこまぬいてぽかんとしておるときじゃありません。法務大臣もそんなに力んでおるのでありますから、国警大臣がいないのでやむを得ませんけれども、あなたは留守を承わっておるから、全国の警察力を動員しなければならぬと思うのです。これについてはどうしました。何かやりましたか。やらずに手をこまぬいて待っておるのですか。
#49
○三田村委員長 ちょっと吉田君及び委員の皆さんに御相談申し上げますが、ただいま参議院の本会議より、同じ案件の問題に関して質問が始まっておるのだそうでございまして、法務大臣の出席を要求して参りましたので、一つ大臣だけに……。
#50
○吉田(賢)委員 警察庁長官の答弁はちょっとあと回しにします。大臣が急ぐようでありますから、大臣に続いて質問いたします。
 あなたは新聞記者逮捕で非常に重大なうずが巻いておることについてよく知っておることと思うのであります。そこで、この新聞記者逮捕事件はいろいろな角度から見て重大な問題が起っておるのであります。これは申し上げるまでもございません。そこで、聞きますが、このニュース源を秘匿したかどうかということについて、これは新聞の自由の観点からいたしましても、また検察行政、捜査の性質からいたしましても、逮捕の本質から見ましても、非常に重大なことであります。これはやはりその翌日でありますか、各社と検事長との会談の際にも問題になったことは、今あなたの方から御説明があった通り。そこで、あなたに伺いますが、名誉棄損罪の成立の成否にニュース源というものは必要でないと思うのだが、そういう点についてはどうお考えになるか。非常に大事な点ですから……。
#51
○唐澤国務大臣 先ほども申し上げました通り、名誉棄損罪が成立するかしないかということは、書かれた事実があったかどうか、かりになかったとしても、これがあったと信ずるような相当の理由があって、そしてあったと思って書いた場合においては犯罪は成立しません。そこが犯罪成否の分れ道でございます。そこで、たとえば関係者の供述にもありましたように、もしこれが誤まって、この事件に関係を持っておる検察当局の中から、この記事の原因となるような、誤解を生ずるような言動があったといたしますれば、その記者が検察当局から聞いた話であるからほんとうだろうと思って書いたということになりますれば、それは無理もないことでございまして、犯罪にならないのでございます。その意味におきまして、どこからその材料を入手したかということを、捜査といたしましては追及しなくてはならないのでございます。そこにおきまして、この新聞言論の自由と申しますか、あるいはニュース・ソースの秘匿性の尊重という原則と、一方におきましては、検察当局として事実の真相を探求しなければならない、これが検察当局の法律上の義務である、この義務遂行上の仕事とタッチしてくるのでございまして、この間の調和が非常にむずかしいと私は考えておる次第でございます。
#52
○吉田(賢)委員 ニュース・ソースの問題につきましては、二十七年の例の最高裁における長野の朝日の記者の証言の拒否の問題等につきまして、有名な判決が出ておりますので、従って、新聞記者に特権があるわけでないということはよくわかるのであります。しかしながら、同時に名誉棄損罪の構成に直接関係はない、もしくは、新聞記事自体は、十八日の新聞は天下公知の事実で、どこにもあるのでありますから、との新聞紙自体によって大半の事実認定はできるわけです。従って、裁判の上におきまして、この記事だけで大部分の判定ができるのでありますから、そのような大部分が判定可能な状態に置かれておる場合には、とかく微妙な問題の多い、限界線のむずかしい、そういうようなニュー子ソースの追及ということに力を入れるということ、――少くとも立松記者がいろいろ語ったところによりますと、非常にそこに力を入れたという印象を受けておるのであります。りっぽな常識のある記者であります。りっぱな新聞の記者がそのような印象を受けておる。今の説明によりますと、むしろ重点をそこにお置きになったのじゃないかということになるのであります。これは後日岸本検事長に来てもらわぬとわからないかもしれませんが、今の説明によりますと、ほんの一部にすぎない、関連性があるというような御説明でありますけれども、相手の調べられた者の受けた印象は、ニュース源の追及というものにほんとうに重点が置かれておったような印象を受けておる。それならば、これは全く名誉棄損罪の追及ということではなくして、あなたが今おっしゃられたごとくに、また宇都宮君の文書によるがごとくに、内部から出たのかわからぬ、こういうことに疑いを持ってそこへ追及を向けていきよった。言わないから逮捕していくのだ、さらに引き続いて勾留の請求をするということになったということであっては、これは犯罪の捜査ではなくして、犯罪の捜査の目的を逸脱いたしました捜査行為ではないであろうか、こういうことにも考えられるのであります。
 なおもう一つ言うならば、一般国民としての黙秘権を持っておる。これは証人の証言ではないのです。だから、逮捕された場合に氏名の拒否すらもできるというのは通説であります。でありますので、この黙秘権を持っておるし、この種の一流の新聞記者はニュース源を秘匿するということは常識であろうと思う。あらかじめ事前に明白に判断し得たと思うのです。だから、これを秘匿しておったものを吐き出させるような、発表させるような何ら期待性も客観的にはないでしょう。これは常識上明らかなんです。それにもかかわらず、これを追及していって、そして証拠隠滅のおそれありとして勾留請求までさらに続けていこうということになるのでありますから、その観点だけからいたしましても、私はこの逮捕は少し行き過ぎであったというのがほんとうじゃないかと思うのです。そこで、あなたに心境を聞きたいのですが、今あなたのお立場は厳正公平でなければならぬ。いたずらに検察庁の肩を持つことは許されません。でありますから、行き過ぎであったということぐらいはあなたはお認めになるのが当然だったと思うのですが、それはどうですか。
#53
○唐澤国務大臣 私が先ほど申し上げましたことが、あるいは言葉が足りなかったか、表現がまずかったかで十分御了解を得ておらないようでございまするが、その名誉棄損の訴え、つまり犯罪が成立するかしないかという分れ道の重要な点でございまして、この記事のような内容の事実がかりにないといたしましても、これを事実と信じ、また信じたことに相当の理由があって書いたのならば犯罪が成立しないという問題でございます。そこで、さようなことを信ずるだけの理由があったかどうかということでございまして、道聴塗説を信じて、そうしてあったものとして書いたならば、これは信じたことに相当理由があったとは言えません。しかしながら、関係者の供述のうちにもございます通り、検察当局の側から種が出ておるというようなことでございまするから、それならば、もしほんとうに検察当局のたれかから聞いたならば、それを信じて書くのは当りまえではないか、そうすればあの犯罪は成立しないということになりまするから、ニュース・ソースという問題にもどうしても触れてくるわけでございます。そこで、その点を捜査して追及をしていったわけでございます。
 それから、私の立場といたしまして、あの際の処置についてどう思うかということでございましたが、これは先ほど申し上げました通り、当時の事情を聞いてみまして、まことにやむを得なかった措置と考えております。
#54
○吉田(賢)委員 しかし、従来におきましても、ニュース源の追及をして、それを言わないということを一つの理由として勾留を請求するというのは異例なことでありますが、そんなことにつきましてはあなたも御承知であろうと思うのであります。まことに異例なことであります。また刑訴の百九十九条の第一項の規定の精神から見てみましても、これはやはり被疑者の定住所があったり、あるいは出頭の求めに応じて逃亡のおそれのないような者、こういったような者を逮捕するということは、この規定の精神にも反するということは明らかなのです。むしろ、あなたが今みずからおっしゃったごとくに、内部から漏れたんじゃないかということであれば、一体内部の捜査を先行すべきじゃないですか。一体行政の責任者であり監督者が内部の捜査をしないでいいのですか。国家公務員法百条、同百九条によって見ましても、その秘密漏洩に対して相当の監督権の行使ができるのであります。そうして、それをしなかったことについては、これは少くとも行政官としての職員を監督もしくは指揮する責めを全うしておらぬ、こういうことを言われても仕方がないと思うのであります。それはいかがですか。
 もう一つ。もしニュース源を黙秘する、それを言わぬと、言え、言わなければ強制処分する、勾留する、こういうことで追及するということは、国民の黙秘権の行使の点から考えても、一般論から考えてみても、記者にとってはえらい迷惑な話です。その迷惑にかかわらず、これを強要するということ、威圧を加えるということ、勾留をもって威嚇していくということは、刑法の義務なきことを行わしむるということになるんじゃありませんか。職権乱用罪になるんじゃありませんか。それならば逮捕権の乱用である、職権の乱用罪になる、こういう疑いすら生ずる案件であります。そういうことを一体捜査しますかどうか。そこまで追及しなければいかぬ問題じゃないかと思う。いたずらに世間に対して弁解に努め、そうして新聞記者を圧迫をし、内部を不安動揺せしめるというようなこと、そういうような筋違いのことに力こぶを入れておることは、とんでもないことであります。この意味におきまして、義務なきことを行わしめ、逮捕権の乱用になる、こういうような疑いが顕著な事件であるならば、むしろ岸本検事長を調べるということがほんとうじゃないですか。果してそういうようなことであったかどうかということも十分お調べになるということがほんとうじゃないですか。それが検察行政の監督官の責任でございましょう。そういったことを私は検事総長にも聞きたかったのでありますけれども、法務大臣のあなたとしましては、ともかく個々の事件についての検事指揮の権限はないけれども、しかし一般的に検事に対する指揮権、監督権を持っておるのであります。でありますから、法務大臣は、こういうふうな観点からするならば、この逮捕事件というようなものは、また勾留の請求というものは非常な行き過ぎであったということを私は考えざるを得ないのでありますが、意味なきことを行わしめ、逮捕権の乱用というふうにすらお考えにならないのでありますか。この点について明確な御答弁を聞いておきます。
#55
○三田村委員長 法務大臣の御答弁の前に申し上げますが、参議院の方から再々通告が参っております。両院相互の信義の問題もありますから、法務大臣の答弁はこれで退席をしていただきます。御了承を願います。
#56
○唐澤国務大臣 参議院の方から出席を要求されておりますから、簡単に要点だけを申し上げます。検察側から漏れたという疑いがあるならば、まずそれを調べたらばよろしいではないかというお考えでございまして、まことにごもっともでございます。検察当局といたしましてはその点を十分調べたのでございますが、どうも検察当局から漏れたような事実があがりません。そこで、一方立松記者の方を調べて、だれからそれでは漏れたかということを聞きますれば捜査を遂行できますから、それを尋ねたわけであります。なお、ニュース・ソースを言わないから逮捕した、こういうことは申しておりません。先ほども申し上げました通り、証拠隠滅のおそれがありましたから身柄を拘束したわけでございます。なお、あの処置につきましては、先ほども申し上げました通り、当時の検察当局としては捜査の必要上やむを得なかったと考えております。
#57
○吉田(賢)委員 私の法務大臣に対する質疑はそれでは保留しておきまして、一点だけ警察庁長官に伺って、そして質疑を他に譲ります。
 あなたに聞きますが、さっき問いました問題でありますが、非常に重大なことでありますので、全国の警察を指揮監督しておるあなたとして答弁していただきたい。
#58
○石井(榮)政府委員 目下東京地検において行われておりますいわゆる売春汚職事件の捜査につきましては、先ほど法務大臣よりお答えがありました通り、検察当局におかれましては必要な十分なる陣容を整えてそれに当っておられるようでございます。今後この事態の推移発展いかんによりまして、私ども警察に協力を求められるようになれば、私ども警察の立場において検察陣に協力をいたしまして問題の究明に当らなければならぬ、かように考えております。なお、全国的な問題といたしまして、いわゆる全性連が売春防止法成立をめぐって当時いろいろ活発な動きもあった、従ってまたその活動のために必要ないろいろな面の金の動きがあったのではないかというようなうわさは、私どももかねがね耳にいたしております。従いまして、もしその金にいわゆる犯罪成立の容疑がありますならば、これはわれわれ警察の立場といたしましてはどこまでも究明いたして参らなければならぬことは申すまでもないことでございますので、かねがねこの点につきましては全国の都道府県警察ともその点については着意をいたして内々努力はいたしておったのでございます。御承知の通り、犯罪の捜査というものは、ただ単に一片の風評に基き軽々にこれに手をつけるということはいわゆる人権侵犯等の問題も起しますので、あくまでも慎重でなければならぬことは申すまでもないところでございまして、犯罪成立の容疑濃厚なる端緒を得ますならば、そこから警察としましては捜査に着手していく、こういうことでなければならぬと思うのでありまして、現在におきましても、全国の各都道府県警察におきましては、この問題については深い関心を持ち、もし警察が捜査に乗り出すべき有力なる手がかりを得られますならば、直ちにこれに着手していく、こういう心構えをもってこの問題について対処しているような実情でございます。
#59
○吉田(賢)委員 しかし、あなたに伺いますが、非常対策費という莫大な金額が中央に集められて、これがある程度国会対策費になって、これによって陳情の猛烈な運動を行なってきた、これは明白な事実なんですよ。そこで、あなたの方は、この金が東京だけではなしに全国の連合会の業者を中心といたしましたものから集められて、責任者が持って東京に来たというくらいなことは御承知だと思う。――深い関心を持ってやっているというのであれば。そこで、そういうような全国の業者団体、そういうものに対しまして、少くともこの中央において横領せられあるいはこれが贈賄の資金になったという以上は、利害関係だけではなしに、被害者の立場において取り調べるというくらいのことをすることが、積極的なあなたの立場から当然だろうと思うのであります。警察は何も検察庁の指揮を一々受けていなければ動けないのではありません。捜査の端緒を得るならば独立してあなたの方はやはり捜査権があるのでありますから、当然やるべきなんです。事は明瞭なんです。明瞭なんだけれども、検察庁が陣容強化を着々とやっておられるからじっと待っておられるというような態度では情ないことなんです。だから、重ねてその点についてのあなたのお考えを聞いておきまして、どうぞほかに質問をやっていただきたいと思います。
#60
○石井(榮)政府委員 私、先ほどお答えしましたのは、現に東京地検でやっておられます事件の扱いについては、検察庁が幸い有力な捜査陣容を整えてやっておられますので、それで十分目的が達せられるものと信じているのであります。今後事態の推移いかんによりまして、検察陣だけでは手が足りないから警察にも協力してもらいたいという要請がありますならば、もちろん協力するつもりであるということを申し上げますと同時に、現に東京地検においてやっておられる事件の端緒以外に、私ども警察独自の立場において、全国的に、どこかの府県におきましてもし犯罪容疑ありと思量せらるるような、いわゆる捜査の端緒になるようなものを得ましたならば、そこから、警察は警察としまして、検察庁東京地検で現在やっておられる捜査と別個に、独自の警察の捜査を進めて参るつもりである、そういう意味におきまして、全国の各都道府県警察は、この事件について深い関心を持ち、もし有力な手がかりを得られますならば、直ちに捜査の開始をするということを申し上げたつもりであります。
#61
○三田村委員長 質疑は後日続行することとし、本日はこれをもって散会いたします。
    午後零時八分散会
ソース: 国立国会図書館
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