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1957/11/08 第27回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第027回国会 法務委員会 第3号
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1957/11/08 第27回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第027回国会 法務委員会 第3号

#1
第027回国会 法務委員会 第3号
昭和三十二年十一月八日(金曜日)
    午前十一時四十四分開議
 出席委員
   委員長 三田村武夫君
   理事 椎名  隆君 理事 高橋 禎一君
   理事 長井  源君 理事 福井 盛太君
   理事 猪俣 浩三君
      小林かなえ君    世耕 弘一君
      林   博君    古島 義英君
      横川 重次君    神近 市子君
      佐竹 晴記君    坂本 泰良君
      田中幾三郎君    吉田 賢一君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
 出席政府委員
        警察庁長官   石井 榮三君
 委員外の出席者
        検     事
        (刑事局長)  竹丙 喜平君
        警 視 総 監 川合 壽人君
        専  門  員 小林 貞一君
    ―――――――――――――
十一月五日
 委員宇都宮徳馬君、福田篤泰君、古屋貞雄君及
 び細田綱吉君辞任につき、その補欠として戸塚
 九一郎君、三木武夫君、風見章君及び片山哲君
 が議長の指名で委員に選任された。
同月八日
 理事小島徹三君辞任につき、その補欠として高
 橋禎一君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
十一月七日
 中国商品展覧会準備工作員の指紋問題解決に関
 する請願(原茂君紹介)(第一三三号)
 更生保護事業の強化に関する請願(大石武一君
 紹介)(第一三四号)
の審査を本委員会に付託された。
十一月六日
 売春防止法施行期日延期に関する陳情書(長崎
 県島原市島原商工会議所会頭松尾滋吉)(第五
 五号)
 中国商品展関係者の指紋押なつに関する陳情書
 (名古屋市議会議長近藤良吉)(第五六号)
を本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の互選
 法務行政及び人権擁護に関する件
    ―――――――――――――
#2
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。
 議事に入ります前に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。ただいま理事小島徹三君より理事辞任の申し出がありましたので、これを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○三田村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
 次に、ただいまの小島徹三君理事辞任に伴い理事が一名欠員になりましたので、高橋禎一君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○三田村委員長 御異議なければ、高橋禎一君を理事に御指名申し上げます。
    ―――――――――――――
#5
○三田村委員長 それでは法務行政及び人権擁護に関する件を議題として調査を進めることにいたしますが、この際私から二、三の重要な案件について法務大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
 第一はいわゆる汚職追放のための立法措置の問題、第二は暴力追放のための新立法の問題、第三は売春防止法の刑事規定実施に必要な立法措置の問題であります。
 岸総理は、今国会の施政方針演説でいわゆる三悪の追放、すなわち汚職、暴力、貧乏の追放を強調され、また、先般来行われた全国遊説の際にも、この新しいスローガンの実行を国民に公約してこられたのであります。その三悪の中の汚職、暴力の追放は当法務委員会の所管であるとともに法務省の所管に属する案件であります。法務当局においてもこの岸首相の方針に従ってそれぞれ立法上、行政上の措置について準備を進めておられることと思うのでありますが、汚職追放のためのいわゆるあっせん収賄罪等制定に関する立法上の準備及び暴力追放のための新立法についてどのような構想、方針を持っておられるか、伺っておきたいのであります。
 また、売春防止法の刑事規定実施に必要な保安処分については、前国会の末期に法案提出の用意をされたように聞いておりましたが、現在どのような準備がなされているか。この法律の刑事規定は明年四月一日から自動的に発効するのでありますから、そのための必要な立法措置、行政措置は、本来ならば今回の臨時国会に提出されることが妥当でなかったかとも思われるのであります。
 御承知のように、次の通常国会においては前国会から継続審査されております最高裁判所の機構改革に関する法案の審査を完了しなければなりませんし、今申しました汚職、暴力追放に必要な新立法、売春防止法完全実施のための立法措置など、重要案件が本委員会に付託されてくることが予想されますので、政府においては、法案が一時に重なって提出されないよう、すなわち委員会における審議期間など十分考慮して提出されることを要望するとともに、当委員会においても、この際以上の諸案件について政府当局の準備、構想、方針の大要を伺ってあらかじめ審査の参考にいたしたいと思うのであります。
 以上の趣旨を申し上げ、法務大臣の御所見をこの際伺っておきたいと思います。
#6
○唐澤国務大臣 ただいま委員長から次の通常国会への法務省関係の立法措置についてのお尋ねがございました。大体三件になるかと思いますが、順次お答え申し上げたいと思います。
 まず、あっせん収賄罪についての立法措置でございますが、これは、次の通常国会、しかもなるべく早い機会に法律案を具して提案し、御審議を願いたいと思いまして、目下準備を急ぎつつあるところでございます。
 暴力追放に関する立法措置につきましても全て同様でございます。
 また、売春防止法関係の法律案でございますが、これは、大まかに申しまして、売春防止法そのものの一部改正の法律案と、また、別にかりに今補導員法案という名前で準備をいたしておりますが、別個の法律案、この二つの法律案、これは大体準備がもうできておりますから、次の通常国会の劈頭にも提案して御審議を願いたい、かように考えております。
#7
○猪俣委員 ちょっと今のに関連して……。あっせん収賄罪の問題でありますが、これは、議員立法といたしまして、社会党が全員の提案及び賛成を得まして第二十六国会に正式に提案をいたしておるのです。継続審議になっておると思いますが、政府はそんな苦労して新しいものを出さぬでも、これに同調してその審議を進めたらいいのじゃなかろうかと考えられるのですが、政府の御所見を承わりたい。
#8
○唐澤国務大臣 ただいま社会党提案の継続審議になっておりまする法律案についての御発言でございまして、これは政府も前々から十分研究をいたしております。ただ、政府の考えておりまする法律案は多少これと内容を異にいたしまするから、政府としては、独自の案を具して御審議を願いたい、かように考えております。
#9
○猪俣委員 社会党の提案は、実は、前にもたびたび、政府の原案として出しましたもの、それらをことごとく参照しまして、また各国の規定も参照しまして、練りに練って出したものであります。元来、三権分立の精神からするならば、立法は私は議員立法というものが理想的な形でなければならぬと思う。しかし、日本は何らか政府から出さぬとそれがほんとうのものじゃないような印象があるのでありますが、一体社会党の出した案と政府の案とはどこが違っているのでありましょうか。私どもは、理想的案として、ほんとうに政界の粛正をはかる意図のもとに出すとするならば、この法案以外の方法はなかろうかと考えて出しておるものですが、どういうところが政府の気に入らないで、政府は一体どういう独自のものを出そうとなさるのか。それも、何か出すのか出さぬのかときどきあいまいなような態度になっておるのでありますが、社会党の原案がどこが気に入らないで政府の原案を出そうとなさるのであるか。社会党の原案と政府の御構想との差異のおもなる点を御釈明いただきたいと思う。しからざれば、いたずらに時日をかせぐことになって、すでに法案が出て継続審査になっておるものを、また政府が新しい提案をするということになって、その審議を停頓させておるような形になる。もし異議なければ、社会党の原案を与党も支持してこれを通過させるならば、ほんとうに早くあっせん収賄罪を成立せしめたいならば、最もそれが近道のはずなんです。それを、何かああでもないこうでもないといって、政府の原案を出す出すといって今日まで延びてきているのでありますが、どういう点が違っているか、そこを一つ御釈明いただき、何がゆえに社会党の原案がいけないのであろうか、その点一つ御釈明願いたいと思います。そういたしませんと、世論は、あっせん収賄罪なんていうものは、出す出すというが、あれは遊説のときの道具で、出す意思はないのだ。ほんとうにやるつもりならば、社会党の原案があるのだから、それに同調してやってしまえばいいじゃないかという意見もあるのであります。そういう意味におきまして、どういうところが一体お気に召さないのであるか、政府はどういうところを違えて出そうとするのであるか、その点を御釈明いただきませんと、われわれがほんとうに苦心して出しておりますそのものがたなざらしになってしまって、今日まで審議が進められない。それが私どもには、何かあっせん収賄罪の成立を与党及び政府自身が妨害しながら、国民には出すぞ出すぞというような宣伝だけはやっておるというふうに受け取れるのです。だから、どういうところがいけないで、政府はどういうところを修正してどういう案として出そうとするのであるか、その点を肝心のところを御釈明願いたいと思います。
#10
○唐澤国務大臣 政府といたしましては、次の通常国会の、しかも早い機会に提案をいたしたいというつもりをもって目下準備中でございまするが、どういう規定、どういう内容で立案するかということは今研究中で、きまっておりません。猪俣委員も御承知のように、社会党から御提案になっておりまする法律案は、かつて昭和十六年かと記憶いたしまするが、その当時の国会に諮った案でございまして、よく御承知の通りでございます。今法務省におきまして研究、協議をいたしておりまする案は、多少社会党案と趣きを異にしておるのでございますが、御承知のように、法務省の刑法、民法、刑訴、民訴等に関する攻正案は、従来から法制審議会にかけ、また法制審議会以外の法曹会の権威者にも相談をいたしておるところでございまして、これはできてしまえば条文はきわめて簡単なものかもしれませんけれども、しかし、その内容をいかにするかということは非常にむずかしい条文でございまして、従来からそのために学者間にも非常に論議があり、意見の相違がある。その間に立ちまして、法務省といたしましては、でき得る限り慎重に調査をいたしまして、法制審議会の意見等も承わりまして、その上で提案したいと考えているわけでございまするから、どうぞ御了承願います。ただいまお言葉のうちに、出すの出すのといって、ついには流してしまうのではないかという御懸念のようでございましたが、さようなことは絶対に考えておりません。必ず次の通常国会には案を具して御審議を願いたいと考えております。
#11
○猪俣委員 そうすると、法務省の原案なるものができて、法制審議会で今審議中でありますか。まだ法制審議会そのものにも出ておらぬのでありますか。一体準備中と申しますが、どういう程度の準備をなさっておるのか、国民の疑惑にごたえまして具体的に御説明いただきたいと思います。
#12
○唐澤国務大臣 まだ法制審議会へかけるところまで参っておりません。部内で研究をいたしておりまするが、なるべく早く案を具して法制審議会にかけていきたいと考えております。
#13
○猪俣委員 そうすると、もうこの臨時国会には間に合わぬといたしましても、通常国会ももう十二月から始まる。そうすると、法制審議会にはいつごろ御提案の御予定でありますか。予定なしにやっておるわけじゃなかろうと考えます。国会の開会日はきまっておりますから。
#14
○唐澤国務大臣 先ほども申し上げました通り、次の通常国会にはでき得る限り早い機会、必ずでき得る限り早い機会に案を具して御審議を願う。それから逆算いたしまして、法制審議会へかけるという時期がきまってくるのでございまして、法務省といたしましては、でき得る限り早く案を具して法制審議会へかけたいと思っておりまするから、どうぞ一つ御了承願います。
#15
○猪俣委員 ですから、一体いつごろかける予定で今立案なさっているのか、大ていの予定があると思うのです。通常国会の開会は迫っておるし、しかも早く提案なさるという御意思であるならば、いつごろ法制審議会にかけて、いつごろ結論を得て、いつごろ提案するという予定が、もう十一月ですから、あらねばならぬはずでございます。そこで、法制審議会はいつ開いていつごろかけるような準備で進められているか、その具体的なことを承わりたいと思う。
#16
○唐澤国務大臣 今私が考えておりますところでは、まあ今月一ぱいあるいはおそくも来月には法制審議会にかけたい、かように考えております。
#17
○吉田(賢)委員 関連して……。
 ちょっと今の件ですが、大事なことでありまするので、その時期の問題を繰り返して悪いようでありまするけれども、これはやはり相当問題点もあろうと思いますので、ほんとうに成案を得て来国会におきまして成立を希望しておられる場合には、劈頭提案するとかなんとかしなければ間に合わぬのじゃないだろうか。あるいは人いわく、出すにしても四月になってから出す、そういうことさえ言っておる者もあるのであります。まさかそういう不誠意なことはないと思うのでありますが、これはやはり法務大臣が主管庁でありますので、国会の劈頭ないしは一月中にでも提案をするという準備を進める御用意はありませんか。法制審議会もいじくって数ヵ月これに時間をとりましたならば、おそらくは両院の通過はしないのであります。世論にこたえるゆえんではないと思うのであります。でありますので、休会明けにでも出す、あるいは一月中にでも出すようなつもりで準備を進める、こういうふうにでもできませんか。もしくはそういうような御意思も持っておられませんか。その辺をもう少し、審議会へかけるということでなしに、国会へかける時期を具体的にしておいてもらいたいと思うのです。
#18
○唐澤国務大臣 審議会へかける時期よりは国会へかける時期の方がもちろん大切でございまして、それを中心にして、それから計算しまして審議会へいつごろかけようかというようなことをめどに準備を進めておるわけでございまして、時期の問題で、時期をずらしてそのために審議も十分にいかない、あるいは不成立になるというような御懸念でございますが、私といたしましては、必ず来国会の早い時期に提案をいたしまして、その時期の関係で法案不成立をはかるような、そういう不信義なことは絶対にいたしませんから、御了承を願いたいと思います。ただ、いつ何日という日にちを限って申し上げまして、もし準備の都合で一生懸命やってもそれに間に合わないと、約束を破ることになりますから、必ず早い機会に出すように準備をいたしますから、どうぞ御了承を願いたいと思います。
#19
○吉田(賢)委員 今御準備になっておる点につきまして、まさに法制審議会にかけようという際でありますので、今月中と申しましてもまさに三分の一を経過せんとするときでありますから、かなり内部的には論点が次第に固まったものと思います。一度固まっても、また再検討、また再検討というのが、これが常でありますので、そこで伺ってみたいのでありますが、社会党の案におきましては、犯罪の主体を公務員に限定しております。他国の立法例なんかによりますと、たとえばフランスの一九四五年の刑院法あるいはチェコの五〇年の刑法なんかによりますと、犯罪の主体は明確にいたしておりません。行為そのものによって犯罪性を認めるというような立法の形になっておりますが、やはりこの点は非常に重大なことであろうと思います。大体今議論になっております犯罪の主体につきましては、公務員に限定する方向でいこうとするのか、公務員たらずとも、やはり公正な公務員の職務に威力その他の影響を与えるような行為は、公務員以外といえどもあっせん収賄罪で縛っていこうとするのか、その辺はどういうようなふうに議論がされておりましょうか。最終の固まった意見として聞かなくても、法務大臣としては当委員会で相当な御所見は述べてほしいと思いますが、いかがですか。
#20
○竹丙説明員 私からお答え申し上げます。
 ただいまおっしゃるように、最終的に固まった案はできておらないのでございますが、事務当局におきまして検討いたしておりますところでは、犯罪の主体を、何人もとしないで、一応公務員にしぼりまして、その公務員の中には、戦刑法のように官公署の職員だけではなくて、刑法七条にいわゆる公務員を含む、全部を含む公務員というものを犯罪の主体ということに考えて準備をいたしておるところでございます。
#21
○吉田(賢)委員 なお詳しくは別の機会に伺うことにしたいと思いますが、そこで、国会議員などの活動になりますると、党の方針あるいは党の政策としてきまるということもあるわけであります。党の一般的な方針がある、もしくはある法案あるいはある事項について党の方針がきまった場合、たとえば政務調査会あるいは政策審議会、こういうところできめられたものとたまたま一致しておる、ある事項をあっせんするときにその事項が党の大きな基本方針に基くものと一致しておる、こういうような場合には、かなり実際問題としまして区別がしにくいようなことができるのではないであろうかと思うのであります。一例をあげますならば、一般的な文教政策というような場合におきまして、あるいはそういうような文教政策のある種の方針なり政策がきめられておる具体的原則がある、そういう党の政調会において決定しておりまするものと、そうして実際に部外から、一般国民からいろいろあっせん方依頼を受けるようなものと一致をする場合がいろいろと出てくると思います。そういう場合に、全部党の方針に従ってやっておるということでいくのだろうか、あるいは、個々のものとの混淆しておるものは、当事者の意思あるいは依頼者との関係などで具体的に区別して処理するということになるのであろうか。そういう部分については実際問題といった例示でずいぶんと承わらなくちゃならぬと思うのでありますけれども、相当重要な問題点でないだろうか、こういうふうに考えておるのですが、そういう点についてはどういうふうにお考えになりましょうか。
#22
○竹丙説明員 詳細にはいずれ提案をいたしました際に御審議をわずらわす問題でございますけれども、今の御質疑は、結局あっせんがいろいろ種類があって明確でないような場合もあるのではなかろうかという御心配もその背後にあっての御質疑のように伺ったのでございますが、その点につきまして、昭和十六年の政府案が否決を受けましたときのいきさつ等も詳細に検討いたしましてなるべく疑義のないような方法で案文ができないものかということに苦心をいたしておるのでございます。
#23
○吉田(賢)委員 それは実際問題としての設例をもってお尋ねしておりませんので、きょうはそこへ入ることを見合せておきます。
 このあっせん行為の違法性の問題は、この法律のいわゆる事実上の難点だというふうにいわれておることであろうと思うのでありまするが、さらに、もう一つの問題といたしまして、最近の収賄罪の傾向が逐次直接の職務行為にあらざる関連行為の場合までかなり広範囲に違法性を認める傾向に判例はなっておるものと思われます。こういう辺はもう少しいわゆるある職務に影響を与えるというその範囲というものを、収賄罪の判例の傾向等にかんがみまして、できるだけ広くきめていくという方向に持っていくことが必要ではないだろうか。もっとも、これは、単にあっせんというような言葉で、あっせんして職務に影響するといいますか公務員が他の公務員などの職務に影響を与えるような場合を法律の文言上で限定するということは、相当技術的に困難かと思いまするけれども、私の言うのは、やはり収賄罪の判例の傾向にかんがみまして、できるだけ広くこれが違法の範囲を含めるということがこの際必要ではないだろうか、こういうふうに考えておるのですが、それらの点についての御見解は大体どういうふうになっておるのですか。
#24
○竹丙説明員 判例はだんだん、純粋に職務行為自体だけでなく、それに関連する密接なる行為にまでも百九十七条の単純収賄罪の規定の範囲が解釈上広められていく傾向にあるのではないかというお説のようでございましたが、最高裁の判例の傾向は、むしろその逆のように私どもは考えております。戦前の大審院の判例の傾向は、ただいま吉田委員が御指摘のように、かなり広い範囲を職務行為と見ておったようでございますが、最近の最高裁の判例は、かなり狭く解釈しておるのであって、むしろ狭い方向にしぼられておるように私どもは感じております。この点がやはりあっせん収賄罪をどうしても必要とするということになろうかと思うのでございまして、これらの点を、判例の傾向、学説等も慎重に検討いたしまして、立案に当っておるのでございます。
#25
○三田村委員長 世耕弘一君。
#26
○世耕委員 私は二、三点簡単にお尋ねしておきたいと思うのでございます。
 まず第一に、先般来この委員会で問題になりました黙秘権の問題です。ややもすると世間ではこの黙秘権の問題を非常に誤解して伝えられておるように心得られるのであります。なお、特にニュース・ソースの問題についてそれが深く感ぜられるのでありますが、この機会にあらためて政府側の言明をしていただくことが適当じゃないか、こう考えましたので、この点最初にお尋ねしておきたいと思うのであります。大臣からか、あるいは局長さんからか、御説明をいただきたいと思います。
#27
○竹丙説明員 黙秘権の問題は、刑事訴訟法の百四十六条に「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。」とあって、これは捜査にも援用されておりまして、要するに、自分に不利益な供述を黙秘することができるというのが、いわゆる黙秘権といわれるものでございます。新聞で報道されておりますところのいわゆるニュース・ソースの秘匿権という問題は、これとはまた異なりまして、新聞記者が、ニュース・ソースが何であるか、取材源が何であるかということを裁判上証言をしなければならぬ、こういう場合に、その証言を拒否することができるかどうかということが、秘匿権があるかないかという問題であると思うのであります。ニュース・ソースに関する証言の拒否の問題につきましては、刑事訴訟法には百四十九条に、業務上秘密とせられるものについては証言の拒否権を認めております。その規定によりますと、「医師、歯科医師、助産婦、看護婦、弁護士、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在った者は、業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するものについては、証言を拒むことができる。」こうなっております。この業務上の秘密という中にニュース・ソースが入るかどうかということでありますが、この点につきましては、すでに最高裁の判例によりまして、新聞記者の取材源につきましては証言拒否権はないのだということになっております。これは憲法上もそれで差しつかえないのだという解釈でございます。従って、今問題の立松記者の証言拒否で逮捕するんだということでこの委員会でも御議論になったのでございますが、立松記者の場合には、まだそのニュース・ソースの秘匿権の問題に入る前に、被疑者としてまず不利益なことを述べないことができる。その点からまず被疑者としての黙秘権があるわけでございまして、その黙秘権の行使ということと、ニュース・ソースの秘匿権と、やや観念的に混同されまして、ニュース・ソースの秘匿権という問題として取り上げられておるように思うのでございまして、事件の捜査とニュース・ソースの秘匿権というのは、その間にもう一つ被疑者の黙秘権という問題があるのでございます。その間少し議論が飛躍しておるように私どもは観察いたしております。
#28
○世耕委員 次にお尋ねいたしたいのは、過日の委員会で委員の方から発言された中に、造船疑獄の指揮権発動云云ということが論議されたのであります。私の聞いた範囲では、どうも事件がくさかったのだけれども、指揮権を発動して、その事件の発展を指揮権によって中止せしめたというふうな印象を深く与えたのでありますが、さようなことがかりにあり得るとすれば、非常に司法権の権威のために私は不都合じゃないかと思う。この点に対して当局側が御答弁がなかったように実は記憶いたしておるのでありますが、この点はいかがでございますか、一応伺っておきたいと思うのです。それについては、まず第一に、指揮権の内容並びに指揮権のあり方について現在どう取扱っておられるか。むしろ、指揮権の結果において事件が明朗に処理されていない、はなはだしく司法権が乱用されているような印象を非常に世間に与えておる感が深いのでありますが、この際この点について明快な御答弁をお願いいたしたいと思います。
#29
○唐澤国務大臣 例の造船疑獄の際における指揮権発動でございますが、これは御承知のように検察当局の意見と政府の意見とが違いました。つまり、法務大臣の考え方とが違いましてああいうことになったのでございますが、そのどちらがよろしかったかというようなことにつきましては、私としては今ここで申し上げることを御遠慮しておきたいと思います。
#30
○世耕委員 私は重ねてお尋ねいたしたいのは、指揮権の内容なんです。その点がどういうふうになっておるか世間では、政府側に都合が悪くなってくると指揮権を発動するのだ、こういうふうな印象を与えられておる。だから、この際、法務大臣なら法務大臣の持っておる指揮権の内容というものはどういうもので、検事総長の持っておる指揮権の内容はこういうものだということを世間に明らかにする必要があるのでわないか。それはなぜかと申しますれば、この間の委員会でもその印象を受けたのでありますが、また今度の売春汚職も指揮権発動をしそうだというふうな前提のもとに質疑が進められているように感じたものですから、この機会にその点を誤解のないように、司法権の確立の意味において明快な御説明をいただくことが必要じゃないかと思いましたので、お尋ねしたのであります。
#31
○竹丙説明員 法務大臣の指揮権と言われますのは、検察庁法の十四条に規定しておるごとく、法務大臣は検察官の事務に関して検察官を一般に指揮監督することができる、ただし個々の事件の取調べまたは処分については検事総長のみを指揮することができる、とあります。この規定の趣旨は、検察という仕事が裁判に準ずる準司法的な行為であるという考え方からして、なるべく純粋な形において、政治から離れた形においてその良心に従って行動してほしいという趣旨を一面においては表わしております。他面においては、なお検察の事務はこれを質的に分けてみますと、やはり本質は行政事務なんだ、従いまして、その行政事務についての国会に対する責任が法務大臣にあるのでございまして、その法務大臣が責任を持つ以上は、ある程度の指揮監督が認められていなければならぬという、この二つの要請を表現したのがこの十四条の規定であると解釈されておるのでございます。そこで、この十四条の運用につきましては、右のような、国会に対する責任と、事件を外部の力から影響を受けないような形において純粋に処理してほしいという、この二つの要請をどういうふうにして満たしていくのが一番よろしいかということが具体的に法務大臣の事件に臨む態度ということになろうかと思うのであります。従いまして、重要事件につきましては、事前に法務大臣に検察当局から、少くとも検事総長から報告を受けるのでございますけれども、その処理に当りましては、一々ああせいこうせいという指図をしないで、その処分が違法であり不当であるというような場合においては、法務大臣としてチェックするということがその職責だと思うのでございます。そういう違法、不当という処置でない限りにおきましては、これを見守っていくという態度が、従来大臣と検事総長との間のあり方として慣行的に行われているところでございます。
#32
○世耕委員 大体御説明でわかりましたが、結局、純粋な法律理論と政治的な扱いとの上に明瞭性を欠いたから、実は造船疑獄の指揮権という問題が世論に批判されたのではないかと思うのです。この点に関しましては、このたびの汚職事件に直接携わる唐澤法務大臣のような人格・識見ともにりっぱな方はそういう憂いはなかろうと思いますけれども、特にこの点を慎重にお取扱いを願っていただきたいということを希望しておきます。
 なお、その次にお尋ねしておきたいのは、一たん逮捕した被疑者を勾留期間が切れたとして釈放する。そうしておいて、検察庁の出口まで来てまた急に逮捕するというようなことがよく繰り返されることで、最近もそういう実例が二、三あったように新聞に報道されているのでありますが、かような事実があるのかどうか。あるとすればはなはだ不手ぎわな扱いではないかと思うのです。これは実際問題として局長からお答えになってもいいと思いますが、いかにも何か法律をたてにとって人権を軽く扱っているというような形が、これも被疑者を扱う上において非常に不明朗な感じを与える。実は、一種の言いがかり、理屈をつけて再逮捕するというようなことは、なるべく避けるべきではないか。この点について非常に疑問を残しているのでありますが、この点についても御説明を願いたい。
#33
○竹丙説明員 再逮捕の問題が、どうもへ理屈をつけて身柄を拘束する手段に使われるのではないかという御指摘でございます。一度釈放をして、まだ家へも帰らぬでまごまごしているうちにまた逮捕するというような形のみをとらえて見ますと、いかにももっともな御疑念であろうと思います。私ども、検察の仕事を遂行していきます上においてこの再逮捕というような処置はなるべく避けなければならぬということにいたしております。しかしながら、御承知のように、人を逮捕する強制処分を用いますることは、非常に厳格な条件のもとにおいてのみ許されることでございます。刑事訴訟法の諸規定はすべてその点について詳細な規定を設けているのでございます。一方において、犯罪を捜査して真相を明らかにいたしますために、また検察庁としてなし得る方法として逮捕という強制処分を認めておるのでございます。逮捕の条件というものはきわめて厳格になっておりますので、その逮捕の条件を備えた事情が起って参ります場合には、また引き続いて身柄を拘束しなければ真相を明らかにし得ないというような事案も、これまた絶無ではないのでございます。そういうようなことになって参りますと、こういう再逮捕のようなものは避けなければならないのでありますけれども、匂留期間というものは制限がございます。そこで、その制限の期間中に処理ができなくて、さらにまた新たなる事実によって逮捕の事由が発生したような場合、避けたいのでありますけれども、もしそれを再逮捕しなければ事案の真相が明らかにならぬ、こういったような場合におきましては、人権侵害との関係も十分考慮の上、その法に従って再逮捕をする場合もあり得るのでありまして、しばしばそういう事案があるのではございませんので、真にやむを得ない場合にそういう処置がとられておるのでございます。
#34
○世耕委員 私の聞くのは、人権を擁護する建前と、もう一つは、世論のつまらぬ批判を受けてかえって司法権の尊厳を傷つけるような行為はなるべく避けた方がいいんじゃないか、こういう意味で、むしろ端的に言えば権力を悪用せぬことを注意願いたいというのが私の今の質問の要旨であります。
 さらに、もう一点伺っておきたいのは、この間法務大臣もおっしゃったし、検事総長もおっしゃったと思いましたが、逮捕あるいは証拠調べをだんだんして、最後に起訴なり逮捕の形をとっていくという経路を御説明になつたと思いますが、たとえば眞鍋君の事件をかりに想像してみますと、もう一カ月くらい前から、逮捕される逮捕されるという新聞記事が盛んに出ておったのです。まあ犯罪人じゃなくても、そういううわさがたつと、もう証拠隠滅をはかるくらいのことは、人情として被疑者としてありがちなことだと思うのです。眞鍋君の例を一つとっては失礼になるのですが、実例として申し上げますならば、もう一ヵ月も前から逮捕するぞ逮捕するぞと言うておったくらいだから、十分証拠資料を集めておったのではないか。集めておったんなら、むしろ逮捕、勾留する必要はないんじゃないかというふうに実は考えられるのです。そういう点はどういうふうに判断していいのか。逮捕それ自体が、証拠隠滅ということを防止するための逮捕勾留であるなれば、かえって人権をじゅうりんした形という結論が出るのではないか。この点はどう判断していいか。これも世間に一つの誤解を起しておる。ただ単に突然逮捕されるというならいざ知らず、新聞では一ヵ月前から逮捕されるだろうということが盛んに書かれて聞くところによると、新聞記者から追い回されていたようにも、ラジオであったか何かの座談会で本人も言っております。むろんそうだと思います。それが事実だとすれば、検察庁側は相当の資料をすでに収集されておったのではないか。その上に逮捕しなければ証拠隠滅のおそれがあるというようなことは、考えられないのである。国会議員としての地位を持っておる人を扱う上において、その点が少し軽率ではなかったかというふうに実は私は考えられるのです。また世論もそういうふうに見るのでありますが、この点はどういうふうに……。私は捜査内容についてお聞きしようと思わないが、過去にとった扱い方について少し行き過ぎた点があるのではないか。あるいはどうしてもそうしなくちゃならなかった何か特別な事情があるなら、これはいたし方ない。この点について、少し人権上の建前から御説明をしておいていただきたい、こう思うのです。
#35
○竹丙説明員 今御指摘のような御疑念は、世間にもあるようでございます。新聞にもそういうのを見たような気がいたします。その点ごもっともでございます。一ヵ月も前から、逮捕されるであろうというようなことが新聞には出ておったようでございますが、検察庁としてはさようなことを考えた事実は少しもないのでございます。現に、大臣も私に、逮捕されます日の朝、きょう任意出頭を求めて取調べをするということでございまして、それから調べの過程におきましてどうしても逮捕しなければならぬような形勢になってきたからという報告を受けておるのでございまして、事態は一ヵ月も前から予見されておったものではないのでございます。のみならず、相手方の贈賄者につきましては、ずっと前に、十月十二日、次いで十六日でございますが、三人の者がそれぞれ逮捕されております。これらの人たちは、真鍋議員に贈賄をしたという嫌疑で逮捕されて取調べを受けております。今のお話のようなことでございますと、そういう嫌疑があるなら収賄者も当然嫌疑があるだろう。こうおぼしめすかもしれませんが、さようではなくて、増賄者の方はそういう嫌疑を受けましたが、これはわいろ罪には限りませんが、ことに、物的証拠に乏しい。関係者の供述によって明らかになってくるような事件におきましては、わいろ罪に例をとって申しますれば、金をやった、もらったというだけでは、決してわいろ罪は成立しないことは、事の道理上当然でございますが、ことに、先ほども申しました職務に関しというようなこと一つをとりましても、果して職務に関する行為であったかどうか、またそれが趣旨を了として贈ったか受け取ったかという点は、非常にデリケートな証拠関係があるのでございます。贈賄者側が金をやったということをかりに申したといたしましても、受け取る人が果してそういう趣旨で受け取ったと客観的に見得るかどうかということは、贈賄者並びに関係者の取調べを進めていかないと判断ができない。簡単に申せば、固まってこないのでございます。それが、月末になりまして、そういう容疑が濃くなったということで、任意出頭を求めるというように捜査は進んでいったのでございまして、決して一ヵ月も前からさらしものにしておいて逮捕するといったようなものではなかったというのが真相でございます。そういう意味におきまして、捜査というものが、証拠を追って証拠を積み重ねて、そうして慎重な態度で身柄の逮捕というふうに段階が進んでいくということに御理解を願いたいと存ずるのであります。
#36
○世耕委員 御説明をいただいて大体了解いたしましたが、もう一点最後にお尋ねいたしたいのは、逮捕しておいて一向調べない。そうしてほかの方を調べておる、これはずいぶん非難があるのです。今度の事件ばかりじゃなしに、多分に人権がじゅうりんされておる。これは選挙違反なんかによくあることです。ほうり込んでおいて、そうして調べないでおいて、ほかの方を調べておる。調べてみたところがなかったから、何とか難くせをつけて、まあいい、きょう帰ってくれというような例がよくあるのです。今度の事件でもそれに似たようなくさみがあるのですが、さようなことはございませんか。あれば私は非常に遺憾だと思う。なるほど、つかまえてほうり込んでおいて調べることは非常に便利かもわかりませんけれども、人権の尊重というか、そういうところから考えていただかないと、ほんとうの司法権というものは尊厳が維持されないんじゃないか。むろん、当事者として、調べる上において、便宜でもあるし、またいろいろな点について必要があるかもしれませんけれども、もう最小限度の範囲内において考えなくちゃならぬ問題ではないか。そうしないと、ほんとうの自由を尊ぶ文化国家としての権威は維持されないんじゃないか。これはよけいなことかもわかりませんが、最近ややともすれば司法当局に対する国民の信頼が薄らいできているような感じがする。これを私は維持していただきたい。この意味において、一つ法務大臣から御所見をいただけばけっこうだと思います。
#37
○唐澤国務大臣 ただいま世耕委員から御指摘になったような事実、もしありといたしますれば、まことに遺憾なことでございまして、私も法務大臣に就任いたす前しばしばそういうようなことも聞いております。これらの点につきまして、かねがね重々申して注意をいたしておることでもございますし、将来ともそういうことのないようにやっていきたいと考えております。
#38
○三田村委員長 本日はこれにて散会いたします。
 次会は公報をもってお知らせいたします。
    午後零時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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