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1957/11/12 第27回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第027回国会 法務委員会 第5号
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1957/11/12 第27回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第027回国会 法務委員会 第5号

#1
第027回国会 法務委員会 第5号
昭和三十二年十一月十二日(火曜日)
    午前十一時二十一分開議
 出席委員
   委員長 三田村武夫君
   理事 椎名  隆君 理事 高橋 禎一君
   理事 福井 盛太君 理事 横井 太郎君
   理事 猪俣 浩三君
      犬養  健君    小島 徹三君
      小林かなえ君    徳安 實藏君
      林   博君    古島 義英君
      横川 重次君    神近 市子君
      坂本 泰良君    田中幾三郎君
 出席政府委員
        法務政務次官  横川 信夫君
 委員外の出席者
        判     事
        (大臣官房調査
        課長)     位野木益雄君
        最高裁判所事務
        総局      五鬼上賢磐君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局
        長)      関根 小郷君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局総
        務課長)    海部 安昌君
        専  門  員 小木 貞一君
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 小委員会設置に関する件
 委員派遣承認申請に関する件
  請 願
 一 中国商品展覧会準備工作員の指紋問題解決
   に関する請願(原茂君紹介)(第一三三
   号)
 二 更生保護事業の強化に関する請願(大石武
   一君紹介)(第一三四号)
 三 中国商品展覧会準備工作員の指紋問題解決
   に関する請願(田中次雄君紹介)(第三一
   五号)
 四 同(松平忠久君紹介)(第三一六号)
 五 中国商品展覧会準備工作員の糟紋問題解決
   に関する請願(杉浦武雄君外十六名紹介)
   (第五二九号)
 六 中之条町の法務局庁舎及び官舎建設促進に
   関する請願(福田赳夫君紹介)(第五三〇
   号)
 七 名古屋刑務所移転に関する請願(横井太郎
   君外一名紹介)(第六八二号)
 八 同(赤松勇君外二名紹介)(第六八二号)
 九 新潟刑務所移転に関する請願(大島秀一君
   紹介)(第七九三号)
一〇 名古屋刑務所移転に関する請願(江崎真澄
   君紹介)(第一二六六号)
    ―――――――――――――
#2
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。
 この際閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。すなわち
 一、裁判所法等の一部を改正する法律案
 二、違憲裁判手続法案
 三、裁判所法の一部を改正する法律案
 四、刑法の一部を改正する法律案
 五、裁判所の司法行政に関する件
 六、司法試験制度に関する件
 七、法務行政及び検察行政に関する件
 八、国内治安及び人権擁護に関する件
 九、外国人登録に関する件
 十、交通犯罪に関する件
 十一、売春防止法の施行に関する件
 十二、戦犯服役者に関する件
以上十二件について閉会中もなお審査を継続する旨議長に申し出たいと存じますが、これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○三田村委員長 御異議なしと認め、さよう決定たいします。
 なお、申出書の作成につきましては
委員長に御一任願います。
    ―――――――――――――
#4
○三田村委員長 次に、閉会中審査のため小委員会を設置することにつきお諮りいたします。すなわち、前回の理事会において御決定願いました汚職事件等調査に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○三田村委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。
 なお、小委員及び小委員長の選任は委員長に御一任願います。
 また、小委員及び小委員長は後刻公報をもってお知らせすることとし、閉会中の小委員の異動、参考人の招致等、小委員会運営上臨機必要な措置につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○三田村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
 なお、当委員会所管に関する閉会中の審査に関しては、ただいま決定いたしました小委員会をもってあてたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○三田村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○三田村委員長 次に、委員派遣に関してお諮りいたします。閉会中審査案件が付託されました際には、その審査のため委員派遣をいたしたい旨議長に申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○三田村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
 なお、派遣委員の氏名及び派遣期間等につきましては委員長に御一任願います。
    ―――――――――――――
#10
○三田村委員長 次に、去る二日の当委員会で御報告申し上げたのでありますが、最高裁判所の機構改革問題に関連いたしまして、去る九月二十四日より約四十日間にわたり、院議により議員団が編成され、当委員会の委員が欧米各国の上告制度及び違憲立法審査制度並びにその運営状況を視察され、十一月三日に帰られたのであります。この際各派遣委員より帰朝の御報告を聴取いたしたいと思います。福井盛太君。
#11
○福井(盛)委員 それでは簡単に私から皆さんに対しましてごあいさつを申し上げます。
 ただいま委員長のお話がありました通り、最高裁判所機構につきまして、その調査、視察の目的をもって、去る九月の二十四日に出発いたしまして、この二日、詳しく言えば三日の午前にまた羽田に戻ってきたような次第でございます。一行は、自民党から高橋禎一君と私、社会党から猪俣浩三さん、それから専門員の小木君、最高裁判所の民事局長関根君、法務省といたしましては調査課長の位野木君、この六人が一行として出発したのであります。私が最年長者のゆえをもちまして団長ということを仰せつかりまして参ったのでありますが、非常に協力一致しまして、何のそごもなくその目的を達することを得ましたことを、私どもは、心から感謝しておる次第であります。
 まずサンフランシスコに着いてからは、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、シカゴ、ワシントン、ニューヨーク、オルバニー、ボストンを経まして、ロンドン、パリ、ボン、カールスルーエ、それからローマと、視察して参ったのであります。その間は四十日の期間でありましたが、私どもはいま少し日子をほしく思ったのでありますが、何分にもこの臨時国会にも間に合せたいという考えをもちまして、その日程の間をフルに動かしまして目的を達して帰ったような次第であります。
 いずれの土地におきましても、最高裁判所のあるところは最高裁判所の長官その他の判事、憲法裁判所のあるところは憲法裁判所の長官にも会いまして、つぶさにいろいろなことを質問もし、また意見も聞いて参ったような次第であります。こまかい点につきましては、いずれ機会を得て報告をし、できるならば一日も早く報告書を作成いたしまして御報告申し上げたいという考えを持っております。今日は、ただ、そういう日程のもとにわれわれが協力一致して、党派の別なくきわめて親密にその目的に向って行動することを得たということを私どもは重ねてここで感謝し、御報告申し上げる次第であります。各長官との面接等につきましては、いずれまた申し上げる機会があろうと存じます。
 さような次第でありまして、各国を回って参りましたが、最後になりまして、ドイツにおいて向うの法務大臣その他最高裁判所の長官等にも会ったのでありますが、実にいんぎんに、そうしてわれわれと手に手を取って話をすることを得たということは、われわれの忘れることのできない印象の一つであります。さような次第でありまして、多分ドイツであったろうと思いますが、招宴に招かれましたときに、その要路の方が杯を上げてわが日本の天皇のために乾杯するというようなことまでも言われ、それからまた、ある判事のごときは、自分のうちに日本の国旗を掲げてわれわれを招いてくれたというようなことまでもあるのでありまして、実に何となく相通ずるものがあるかのごとく感じて帰ったような次第であります。
 私は今日はただ簡単に――あとで猪俣君並びに高橋君から詳細に日程についてお話し下さることに相なっておりますから、私は、これだけをもちまして、皆さんに感謝し、留守中いろいろお世話になりましたことに対しまして厚く御礼を申し述べる次第であります。私の報告はこれで終ります。
#12
○三田村委員長 猪俣浩三君。
#13
○猪俣委員 大体福井委員が申し上げたことで概要は尽きるのでありますが、私どもワシントンでアメリカの連邦裁判所の長官ウォーレンと会見したときに、彼は劈頭第一に、裁判制度というものはその国の歴史、伝統、慣習によっておのずから違ってくるから、他国の制度はどうもあまり参考にならぬものだということを前提にされて話されました。これは、われわれ世界のおもなる国々を視察いたしました結果、やはりウォーレンのこの言葉は相当の真理がある。ウォーレンという人物は非常にすぐれた人物だと私ども異口同音に認めて参りましたが、相当しっかりしておる。やはりウォーレンの言ったことは相当の真理ではなかろうかと思うのであります。英米法制度には英米法制度の長所、短所あり、大陸法制度には大陸法制度の長所、短所あり、われわれその長所と短所を相当鋭く見てきたつもりであります。幸いにして予定いたしましたる各国の最高裁判所の長官、司法部の大官ほとんどに面会する機会を得ました。これは非常に仕合せでありました。予定通りに視察が進行いたしました。私どもも遺憾なく鋭い質問を発しまして彼らに肉迫し、ある人は苦笑してどうもと頭をかくというようなことも起り、ある者は率直に自分たちの短所を認めてわれわれを参考にしたというようなことで、実は遠慮なくやったのであります。どうも日本人は遠慮深いたちでありまして、言うべきことを言わぬような傾向があったのでありますが、私どもはこの弊風を打破いたしまして、ウォーレンに対しましても徹底的な話し合いをいたしました。彼らはそれを非常に喜んでくれたのであります。
 さようなことで、非常に苦労、艱難をいたしましたが、私どもの心に得るところは多かったと存じます。かような機会を与えられましたる衆議院、そのまた中核体をなしました当法務委員会に対しましては、私ども個人としても感謝するものでありますが、このどこに長所があり短所があり、そして翻ってウォーレンの言うがごとくわれわれの歴史、伝統及び習俗に照らしてわが国の裁判機構をいかにすべきかというような問題につきましては、いずれまたゆっくり私どもも検討をいたしまして当法務委員会なり何らかの機会において意見を発表し、また法案の審議の際にもわれわれの得たるところをもって審議に貢献したいというような心がまえであるのであります。
 きょうは大体におきましてただほんのごあいさつ程度にとどめます。ただし、私どもの頭の中及び資料はこういう簡単なものではないので、たくさん持って帰りましたから、そこは御信用いただきまして、ただ私どもは漫然として四十日かそこらほっつき回って歩いたようなことではなしに、相当しっかりした資料を持って参りましたから、そして御期待に沿うようにできると思いますので、この点御報告申し上げたいと存じます。
#14
○三田村委員長 次に高橋禎一君。
#15
○高橋(禎)委員 私から御報告を申し上げたいと存じます。
 私ども衆議院各国最高裁判所機構調査団は、先ほども他の委員よりお話のありました通り、去る九月二十四日午後六時二十分羽田空港を出発いたしまして、十一月三日午前零時十分羽田空港に帰着いたしました。私どもがこの調査を衆議院から命ぜられました直後、私どもの一行は、まず、このたびの調査を最も有効にいたしたいという考えから、外務省その他国内機関に、私どもの外国における調査中いろいろと協力をしていただきたいということを申し出ました。そして、なお福井団長からは、わざわざ私どもの出張いたします国々の大使館に出向いて、これまた協力方を委嘱いたしたのであります。そしてまた、調査の一応の目標というものを、これは各国々において事情が異なりますから、その目標を定めておく必要があると思いまして、それを協議いたしました。
 その大体の要領を申し上げますと、第一に、アメリカにおきましては、審理手続運用の実際、特に審理期間、第一審から終審の審判までに要する期間なりあるいは上告審の審理期間、それに審理の方法、裁判の合議及び判決書作成の方法、調査官制度の運用等、次には、違憲審査制度運用の実際、立法を適憲としまたは違憲とした判決の模様なり、これらの判決における評決の状態等、三には、事件の統計、ことに最近における上告事件の概要、こういうことをアメリカの連邦最高裁判所及び州最高裁判所において十分調査いたそう、こういう計画を立てました。第二に、イギリスにおきましては、イギリスの貴族院及び枢密院司法委員会並びに控訴審裁判所について、一つ、上告事件の処理の概況、二つには、上告許可制度の運用の実際、上告審における審理手続、裁判の合議等、これをイギリスにおいて主として調査いたしたい。三には、ドイツにおいて、連邦憲法裁判所及び連邦裁判所等について、一、最近における法律改正後の憲法裁判所の実情二、連邦裁判所の事件の処理の概況、審理手続運用の実際、特に上告許可制度、民刑大部及び連合大部の構成方法、合議及び判決書の作成方法、三、調査官制度、これを中心にドイツにおいて調査いたしたい。四には、フランスにおいては、破棄院の事件の処理の概況及び審判手続運用の実際、審査部廃止の利害得失、五は、イタリアにおいて、憲法裁判所及び最高裁判所についてその事件の処理の概況並びに審判手続運用の実際、これをイタリアにおいて主として調査をいたしたい。もちろんこれは各国々において主としてこれを中心に調査をする。その他これに関連する諸般の事項を調査するという建前をとったわけであります。
 こういうふうに調査の目的を決定いたしまして、いよいよ出発、調査に取りかかったわけでございますが、これにつきましては、当委員会の委員長を初め委員各位から寄せられました絶大な御支援があり、それに訪問先の米、英、仏、西独、伊各国政府の諸機関のきわめて友好的で適切な御協力があり、それにまた在外公館の方々の心からなる御支援、なお、同行の国会議員団のメンバーではございませんでしたが、法務省の調査課長なり、あるいは最高裁判所の関根局長なりがいろいろとこれに関して調査に御協力をいただいたわけでありまして、私はここに深甚な謝意を表する次第であります。視察調査の結果につきましては、先ほど福井、猪俣両委員よりお話がございましたように、できるだけ早く詳細な報告書を作成し衆議院に提出いたしたいと存じております。従いまして、本日はその調査のほんの概要を申し上げて報告といたしたいと思うのであります。
 そこで、まず私どもの調査いたしました訪問先について申し上げますが、これは印刷して手元に配付いたしましたけれども、なお若干言葉をもって申し添える必要がある点もありますので、この印刷物に基いて申し上げたいと思いますが、九月二十五日にサンフランシスコに到着いたしまして、その翌日の二十六日午前十時から州の最高裁判所長官のギブソン氏に会見いたしました。それから、翌九月二十七日は午後五時半からロスアンゼルスにおいて上級裁判所裁判官の、これは日系の方でありますが、アイソ氏に会っていろいろ事情を聴取し、九月三十日は、午前十時からシカゴの控訴裁判所裁判官のフェインバーグ氏に会見し、午後は合衆国法曹協会のウィンタース氏、合衆国法律家協会のハイドマン氏その他に会いまして、おのおの長時間にわたって私どもの調査事項についての意見を聞き、資料等を提供していただいたわけであります。十月二日は、午前十時三十分からワシントンの最高裁判所前事務局長チャンドラー氏、午後四時からは上院議員のマックレラン氏に会見をいたしました。三日は午前十時から下院議員のフェーガン氏、四日は午後四時から連邦最高裁判所長官のウォーレン氏、午後六時からはウォーレン氏のカクテル・パーティに出席いたしまして、この席上においてもいろいろと調査事項に関しての意見を聴取いたしました。ウォーレン氏との会見についてきわめて印象的であったということは、先刻猪俣委員も申された通りであります。十月七日は、午前十時からニューヨークにおいて州の最裁判所を視察し、ニューヨーク法律家協会のレップ氏に午後六時から会いました。そうして調査を行い、八日は午前十時四十分から最高裁判所の上訴部裁判官のペック氏、十月十日午後二時からオルハニーの州最高裁判所のコンウェイ長官その他全裁判官に面会いたしまして、いろいろと意見を聞いたのであります。特にコンウェイ氏は同夜私どもを招かれまして盛大な宴会を開かれまして、その席上においてもきわめて終始活発なこれに関するお話がございまして、非常に肝胆相照らしての意見の交換があり、調査には非常に役立ったことが印象的でございました。十二日は午前十時からケンブリッジにおいてハーバード大学を訪れまして、同大学の教頭グリスワルト氏、教授のフォンメーレン氏等に会いました。この方々もやはり司法関係においてはきわめて識見の高い人でありまして、その間においてもいろいろ意見を聞くことができたのであります。同日午後八時はボストンの州最高裁判所裁判官カッター氏その他にお会いいたしました。
 そうして米国の調査を終りまして、英国に参り、十五日の午前十時二十分からロンドンにおいて枢密院司法委員会の委員長シモンズ卿、午後は下院議員のヒュージス氏その他に会い、十六日午後三時十五分から法曹評議会のボルドン氏、十七日午後四時からは上院議員のシモンズ卿、デニング卿その他を訪れまして、いろいろと調査をいたしたのであります。
 フランスにおいては、二十日午前十一時からパリにおいて。パリ弁護士協会会長のマルタン氏、二十一日は、午後三時十五分からは破棄院長のバテスチーヌ氏、検事総長のベッソン氏、午後五時から参事院副院長カッサン氏等に会って、フランスにおける先ほど申し上げた調査目的についていろいろ調査をいたしました。
 西ドイツにおいては、二十三日午前十時十五分からボンで法務省を訪問いたしまして、いろいろの施設を視察するなり、そのあとで法務省関係者多数列席のもとにいろいろのことについて説明を聞いたのであります。午後零時からは法務大臣の午餐会、午後七時からは議会の議員連盟の招宴に出席をいたしましたが、これらも単なる宴会というのでなくして、その席上きわめてこの調査に有効な意見を聴取することができたのであります。そして、二十四日ボンにおいて、午前九時三十分からボンの地方裁判所の視察、同午後零時半からは同裁判所長のショルン氏の招宴がございました。先ほど福井委員が日章旗を掲げて大いに歓迎してくれたとおっしゃったのは、このショルン長官でありまして、ここでは関係者の他の方々が出席しておられまして、私どもの調査事項を中心にいろいろと意見の交換があったわけでございます。二十五日は、午前九時三十分からカールスルーエにおいて連邦裁判所長官、その他三裁判官に会いまして意見を聞き、午後四時からは連邦憲法裁判所長官のヴィントリッヒ氏、そのほか四裁判官に会見いたしまして、これらはきわめて長時間にわたって、おそらく私の記憶では午後八時ごろまでいろいろの意見を聞き得たのであります。
 イタリアにおきましては、二十八日、午前十一時からローマの憲法裁判所の長官アザッチ氏、午後は破棄院第一部長のエウラ氏ほか数名の部長判事に会見をし、二十九日は午前十時三十分から訟務局の訪問をいたしまして、その際は引き続いて法務大臣にも面会をしました。法務大臣ゴネラ氏も非常に私どもを歓迎して、法務省関係の局課長等ほとんど全員出席をして、私たちの調査事項を中心に、いろいろと説明があり、あるいは意見の交換があったわけでございます。私は会見を始めました時間を申し上げましたが、その会談はいずれも相当長時間にわたって行われたということを申し添えておきます。
 きわめて短い期間でございましたが、以上申し上げたように、他に目をくれるいとまもなくこの問題と取り組んで、米国、英国、フランス、西ドイツ、イタリアで調査をいたしたというような実情でございます。
 そこで、その調査いたしました事項、聴取した意見というものも、先ほど申し上げましたように非常に多岐にわたっておりまして、その詳細は報告書で提出をいたしますことは先ほど申し上げた通りでございますが、ただ、注目すべき非常に興味のある問題だと思えるものを、ここに代表的なもの数点をあげてみたいと思うのであります。もちろんこれには私どもの意見というものは全然入っておりません。これらは、私どもの調査によって得た資料を基礎として国会において検討さるべきものだと考えまして、ことさらにその意見を避けておるわけでございます。その点を御了承願いたいと思うのであります。
 まず、米国におきましては
 一、最高裁判所の裁判官を増員して数部に分けて審理、裁判するという方式は、「よく調和のとれた法律知識」――ウェル・バランスド・ノレッジ・オブ・ローという最高裁判所裁判官に対する要請に反するものである。従って、裁判の専門がマス・プロダクションの弊に陥るものであると考える。これは会った相手の方の御意見でございますが、だれがどうおっしゃったとは申しませんが、そういう意見がありました。
 二、訴訟遅延の防止策として、弁論終結後九十日以上経過しても判決書を作成しないときには、裁判官にその月給を支払わないことにしておる。こういうお話がございました。但し、これに対しては、他の場所においては、月給支払い停止とはまことに驚くべきことであるというような意見を述べられた方もございました。
 三、合議方法といたしましてはコンフアレンスメモ、カレンダー・メモを作成する。コンフアレンスメモは上告を受理するかしないかについての合議メモである。カレンダー・メモは上告が受理せられたものについての合議メモである。しかしてこのメモには事件に対する学説、判例及びメモ作成者の法律的見解を明示する。メモ作成者すなわち事件の担当者は順番によってきめられる。メモ作成者以外の各裁判官も事件に対する自己の法律的見解を十分調査準備して合議に臨んでいるから、合議にはあまり多くの時間を必要としない。ことに枝葉末節の議論はしない。大多数の場合においてはメモ作成者の意見にほとんど同意、賛成ということでたちどころに解決し、上告受理後六ヵ月以上かかることはまれである。大体二カ月以内で事件は処理せられる。こういうお話もありました。
 四、裁判の遅延は裁判の否定である――ジャスティ・スディレイ、ジャステス・ディナイドということが一種の標語として高く評価実践されておるのだというようなお話も聞きました。
 五、米国のような上訴制度、及び最高裁判所をそのまま日本に移すことはむずかしいことと思う。すなわち、日本は米国のように連邦国家ではなく、また日本においては陪審制度が採用されていないからである。
 六、現在、民事事件について、八十六連邦地方裁判所においては事件の受理から終了までおおむね十四ヵ月十分の二、上訴部においては七ヵ月十分の一、最高裁判所においては七ヵ月十分の六を要しているが、いずれも六ヵ月を目標として努力をすることになっている。
 七、最高裁判所の機構をどうするかということは非常に困難な問題である。すなわち、国によって諸事情が異なっているし、この問題自体の中に外くのファクターが包含されているからである。米国においては法律家は非常に議論好きであるから、最高裁判所裁判官を三十人にも増員すると、どういう事態になるであろう。われわれ米国人は、最高裁判所裁判官は九人で十分であると思う。しかして、最高裁判所は、違憲問題を含む事件であるとか、あるいは国民生活に関するきわめて重大な法律問題を含む事件を管轄すればよい。一般の法律問題は中間の上級裁判所に処理させればよい。最高裁判所の合議方法としては、イ、意見はまず長官が述べ、先任、後任の順序で述べる。ロ、評決は逆に後任から先任の順序で行われる。毎週月曜日から木曜日まで弁論を開く。金曜日には全事件を処理する。合議は金曜日の午後五時ないし六時半までにはおおむね終る。こういうお話も聞きました。
 八、上告制限策として敗訴者に記録の印刷費を負担させている。印刷物は十九部であるから、費用は少くとも千五百ドルを必要とする。
 以上はアメリカにおいて調査した事柄であります。
 イギリスにおきましては
 九 上訴は非常に希限せられ、海外領土の上告は枢密院の司法委員会、国内の上告は上院の司法部会がそれぞれ管轄している。しかして、オーストラリアのごときは、連邦組織をとっているから、憲法問題が枢密院司法委員会で審理されることもあり得る。年間の事件はその年のクリスマスまでには全部処理することになっている。
 十、次に、上告制限策として、弁護士費用ソリシター、バリスターに対する報酬及び印刷費用を敗訴者に負担させている。しかして弁護士費用は莫大であるから、上告はきわめて高価――エクスペンシブなものとなる。しかも上告には法律扶助が適用されない。
 次に、フランスにおきましては
 十一、破棄院の事件数は民刑事ともそれぞれ八千、しかして時間のかかる事件は非常に多い。破棄院においては二万件の未済事件があったが、最近一万五千件になった。
 十二、中央集権国家である日本が違憲裁判制度をとっておることについては非常に興味を持っておる。
 次に、西ドイツにおきましては
 十三、通常裁判所のほかに行政裁判所、財政裁判所、労働裁判所、社会裁判所、以上合計五種の裁判所が設けられておる。これら各種の裁判所は三審制度をとっておる。従って、同一法律問題について各種裁判所間に意見の不統一を生じ得る。この不統一を避け、法律解釈の統一をはかるために、西独基本法は連邦最高裁判所――ダス・オーベルステブンデス・ゲリヒトの設置を予定しておるが、いまだにこの連邦最高裁判所は設置されていない。しかして、この法律解釈の統一事務を連邦最高裁判所――ダス・オーベルステブンデス・ゲリヒトに管轄させるか、さきに述べた五種の最高裁判所――ダス・オーベルステブンデス・ゲリヒトの協議会に管轄させるかについては真剣な論議が戦わされている。ドイツの最高裁判所の問題についてこういうふうに非常に向うでも熱心に研究しておるという状態であります。
 十四、連邦憲法裁判所は、一九五六年七月二十一日の法律改正により、第一部、第二部とも裁判官はそれぞれ十名に減員せられた。一九五九年九月一日からはさらに各部ともそれぞれ八名に減員されることになった。われわれはこの改正をボンに行って初めて知ることができました。しかし、このような減員改正については、現にわれわれの面前において憲法裁判所裁判官相互間で率直真剣な討議が展開されました。このドイツの憲法裁判所の裁判官は、ちょうど受命判事とでもいいますか、私どもの調査事項について責任を持って報告を担当しておる裁判官が一人ありますが、その人が印刷物に基いていろいろ説明しておりますと、横からも、長官も他の裁判官も、自分の考えはそれは違うとか、おれの意見はこうだとか、そこでお互いに真剣な討議をするというような状態でありまして、やはり向うでもこの憲法裁判所等の問題についてはいろいろやかましい議論があるのだなということを看取したわけであります。そこで、向うでは、このような改正を断行するに当っては、日本のように世界各国の制度をじっくり調査研究をなすべきである、こういうふうな意見も聞きました。改正の結果未済事件数は増加の傾向にある。
 十五、先ほど申し上げた、イ、五種の各種裁判所、ロ、連邦憲法裁判所と最高裁判所の分離、ハ、連邦最高裁判所の未設置等はきわめて大きな欠陥であるようなふうの意見を持っておると看取されたのであります。
 十六、そこで、一九五六年末における連邦裁判所の未済事件は、刑事事件が二百三十七件、民事事件は千七百七十五件であります。
 次に、十七、日本の裁判所機構は、胴体においてはドイツ式、頭は米国式であるから、うまく運営されないのではないか、なかなか御苦労でしょうねというようなことを、これはやや冗談まじりでありましたけれども、最高裁判所の長官は申しておられました。
 十八、イタリアにおきましては、第二次大戦後憲法裁判所が設置された結果、上告事件が非常に増加し、民事六千件、刑事二万五千件の未済事件を数えておるという実情であります。
 十九、欧米各国の裁判所には、法廷の雰囲気を作るにいろいろとりつぱな歴史的な壁画あり、彫刻ありして、私ども調査いたしました五カ国の法廷を見ますと、いかにも国宝の中で仕事をしておるというような印象を特に受けたわけでありまして、その歴史の非常に古いということも、裁判問題を研究するのに重要な点ではないかということ、これは意見と申しますより、委員同士雑談をかわしたというようなこともございました。
 以上、ほんの印象的に問題を取り上げたところでありまして、まだまだこれにはいろいろ資料に基いて報告いたしますと非常に深いものがある、学問的にも十分研究すべき幾多の資料があるということを申し上げておきます。
 はなはだ簡単でございますが、これをもって一応報告を終らせていただきます。冒頭にも申し上げましたように、私どもの調査に対して御協力下さいました委員長初め委員各位その他の方々に対して重ねて謝意を表しまして、報告を終る次第であります。
#16
○三田村委員長 以上で二君の報告は終りました。
#17
○三田村委員長 これより請願の審査を行います。
 請願の審査は、紹介議員が御出席になっておるものにつきましてはその紹介説明を聴取し、紹介議員が御出席になっておらないものにつきましては、その内容は文書表によってすでに御承知のことと思いますので、朗読は省略し、直ちに関係当局の意見を求むることにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○三田村委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。
 まず、日程第一、第三、第四、第五は、いずれも中国商品展覧会準備工作員の指紋問題解決に関する請願でありますので、一括議題とし、政府当局の説明を求めます。横川政務次官。
    〔委員長退席、高橋(禎)委員長代理着席〕
#19
○横川政府委員 この請願は、御承知のように、中国見本市等に出席をいたしまする職員に対しまして、滞在期間六十日をこえますると指紋を押捺いたしまして関係書類を提出しなければならないという外国人登録法がございまするが、この適用を緩和してほしいという請願でございます。政府におきまして、去る八月に、特に日中貿易の重要性にかんがみまして、中国見本市に参加いたして参りまする中国人に対しましては、特に期間をこえましても指紋の押捺をいたさなくてもよろしいというような特例を設けまして、実施をいたしております。なお、中国貿易関係の三団体からは、外国におきましても最近指紋押捺の取扱いは非常に期間が延長されまして、アメリカにおきましては従来非常に短期間でございましたものを一年間以上滞留する者ということに取扱いを変えておるような事例もごいますので、特に早急にこの緩和をはかっていただきたい、法律的な処置をしていただきたいというような強い御要望もございます。政府におきましては、近い機会に何らか法律改正をいたしたいというような考えも一面持っておるのでございます。この請願の御趣旨に沿うように現在すでに取扱いをいたしておるのでございます。
#20
○猪俣委員 中国人の産業関係者の指紋の問題につきまして何か立法化があるということを聞いておりますが、政府はそういうことに対してどういう御用意があるのであるか、それをちょっとお尋ねいたしたい。実は、最近社会党からも訪中使節団がまた出るわけでありまして、そこで、向うへ行きますと、それが当然問題になると思います。もし事前にわかっておれば大へんそれはいいみやげになると思いますが、この問題はどういうふうに解決なさる意思であるか、はっきりしたことを政府の御意見を承わりたいと思います。
#21
○横川政府委員 先ほども申し上げましにように、中国関係の三団体の関係の議員の方々は、この臨時国会中に議員提案として一年に延期するという法案を出したいというような強い御要望もあったように承わっております。法務省といたしましても、延期する事柄に対しましては異存がございません。むしろ政府提案として取り扱う方が望ましいのではないかというような考え方で私どもはおるのでございまして、ただいま取り急いで検討いたしておるところでございます。
#22
○高橋(禎)委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。――なければ次に移ります。
    ―――――――――――――
#23
○高橋(禎)委員長代理 日程第二、更生保護事業の強化に関する請願を議題とし、政府当局の説明を求めます。
#24
○横川政府委員 ごの御請願は、三十二年度の更生保護事業の予算を増額していただきたいという請願でございますけれども、すでに三十二年度は半分を過ぎておるような状態でございますし、この御請願の趣旨のように三十二年度の予算を増加することはきわめて困難かと思うのでありますが、この御請願の趣旨に沿うようにいたしまして、三十三年度の保護更生事業の予算の増額をはかりたいと、ただいま予算の折衝をいたしておる段階でございます。
#25
○高橋(禎)委員長代理 御質疑はありませんか。――なければ次に移ります。
    ―――――――――――――
#26
○高橋(禎)委員長代理 日程第六、中之条町の法務局庁舎及び官舎建設促進に関する請願を議題とし、政府当局の説明を求めます。
#27
○横川政府委員 中之条の法務局支局は、ただいま裁判所の建物の一部をお借りいたしまして仕事をいたしておるのでございますが、きわめて狭隘でございます。非常に不便を感じておりますので、三十三年度の予算におきましてはこれが新設を期待いたしまして、ただいま予算折衝中でございます。
#28
○高橋(禎)委員長代理 御質疑はございませんか。――なければ次に移ります。
    ―――――――――――――
#29
○高橋(禎)委員長代理 日程第七、第八、第一〇はいずれも名古屋刑務所移転に関する請願でありますので、一括議題とし、政府当局の説明を求めます。
#30
○横川政府委員 名古屋の刑務所は明治三十一年の新築でございまして、すでに六十年をこえようとしておるようなきわめて老朽の施設でございます。新設いたしまする当時は、名古屋市外千種町という地域に属しておったのであります。当時の名古屋の人口はわずかに二十五万という時代でございましたが、現在におきましては、名古屋市の発展に伴いまして、町のほとんど中央に位するようなところになっております。名古屋市の発展のためにもまことに不適当と考えられます。さようなことから考えまして、かえ地を急速に求めまして、なお予算の獲得に努力いたしまして、この請願の御趣旨の実現に努力いたしたいと考えておるところでございます。
#31
○高橋(禎)委員長代理 御質疑はありませんか。
#32
○横井委員 この名古屋の刑務所でございますが、今お話しの通りにほとんど市の中央部になってしまったのでございますが、新市部の合併によってそういうことになったのでございますが、特に大道路網の計画のまん中に入るので、非常に市の発展上にも困っておるので、ぜひこれは今お話のあったように運んでいただきたいと思うのでございますが、その用地の問題でございます。今用地についても心配をするというお話がありましたが、そういうのは地元でやるものか、それとも法務当局の方でもお考え下さっておるのか、その点を一つ伺っておきたいと思います。
#33
○横川政府委員 もとより法務省が中心になって考えなきゃならぬ筋合いのものと思いますが、いずれにいたしましても、市御当局の御了解なり御支援なりを得なければなりませんので、率直に申し上げまして、市が積極的にこの問題の解決に当っていただきますれば非常に促進するのではないか、さように考えるのでございまして、法務局としましては地理不案内でございまして、市御当局の御支援をぜひいただかなければならぬこともございます。市もまた重大関心を持って御検討願えれば、非常に幸いだと考えます。
#34
○高橋(禎)委員長代理 ほかに御質疑がなければ次に移ります。
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#35
○高橋(禎)委員長代理 日程第九、新潟刑務所移転に関する請願を議題とし、政府当局の説明を求めます。
#36
○横川政府委員 新潟の刑務所も名古屋の場合と同様でございまして、これは明治十九年に新設されたものでございます。非常に老朽の施設でございます。また、御承知のように、この刑務所は、当時は郊外に建てられたものでございますが、新潟市の発展に伴いまして、ただいまでは町の中央と申してもよろしいくらいのところになっているのでございます。名古屋と同様に、至急にかえ地を検討いたしまして、同時に予算措置を講じまして、移転をはかって参りたい、かように考えているのでございます。
#37
○高橋(禎)委員長代理 御質疑はありませんか。――以上をもって政府当局よりの意見の聴取は終りました。
#38
○高橋(禎)委員長代理 この際お諮りいたします。本日の請願日程第一ないし第一〇はいずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#39
○高橋(禎)委員長代理 御異議なければ、さよう決定いたします。
 なお、本委員会に参考送付せられました陳情書はお手元に配付いたさせましたから、御了承願います。
 本日はこの程度にとどめ散会いたします。
    午後零時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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