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1956/03/28 第26回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第026回国会 建設委員会 第13号
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1956/03/28 第26回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第026回国会 建設委員会 第13号

#1
第026回国会 建設委員会 第13号
昭和三十二年三月二十八日(木曜日)
    午後零時四十五分開議
 出席委員
   委員長 薩摩 雄次君
   理事 内海 安吉君 理事 大島 秀一君
   理事 荻野 豊平君 理事 瀬戸山三男君
   理事 二階堂 進君 理事 前田榮之助君
   理事 三鍋 義三君
      逢澤  寛君    生田 宏一君
      伊東 隆治君    大高  康君
      高木 松吉君    徳安 實藏君
      堀川 恭平君    松澤 雄藏君
      眞鍋 儀十君    山口 好一君
      足鹿  覺君    井谷 正吉君
      佐々木良作君    多賀谷真稔君
      中島  巖君
 出席国務大臣
        建 設 大 臣 南條 徳男君
 出席政府委員
        建設政務次官  小澤久太郎君
        建 設 技 官
        (河川局長)  山本 三郎君
 委員外の出席者
        農林事務官
        (農地局管理部
        長)      立川 宗保君
        建設事務官
        (河川局次長) 美馬 郁夫君
        建設事務官
        (河川局水政課
        長)      国宗 正義君
        建 設 技 官
        (河川局開発部
        長)      小林  泰君
        専  門  員 山口 乾治君
    ―――――――――――――
三月二十八日
 委員片島港君及び中島茂喜君辞任につき、その
 補欠として木原津與志君及び眞鍋儀十君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員木原津與志君辞任につき、その補欠として
 多賀谷真稔君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 特定多目的ダム法案(内閣提出第九〇号)
    ―――――――――――――
#2
○薩摩委員長 これより建設委員会を開きます。
 特定多目的ダム法案を議題とし、審査を進めます。本案に対する残余の質疑を行います。足鹿覚君。
#3
○足鹿委員 私は昨日いろいろ資料の要求をいたしましてきょう質問をいたすつもりで参ったのでありますが、先ほどの農林水産との連合審査会におきまして、大体私の聞かんとしておったところも一応出尽したように思いますので、これとの重複を避けまして二、三お尋ねを申し上げておきたいと思います。
 昨日も大臣からお話がありましたが、特定多目的ダム法の運用に関する覚書なるものが、農林建設両省間において取りかわされている。それによりますと、先ほど来農林水産委員の同僚諸君からこもごも御指摘になった点はやや具体的になっているようでありますけれども、これを見ましてもなお私どもはよく理解のできない点があるのであります。たとえば特定多目的ダム法の運用に関する覚書によりますと、「一、法第四条の基本計画の作成、変更及び法第三十一条の操作規則の決定にあたっては、建設大臣は、農林大臣と協議をし、協議を調えた上でこれを行うものとすること。」以下項目がつけられておりますが、その中で操作規則というものはどういうものを予定されておるのですか。まずその点から伺いたいのです。
#4
○小林説明員 操作規則につきましては、その内容といたしまして、たとえば洪水期間においては貯水池の最高水位はこれ以上上ってはいけない、あるいは灌漑用水の補給期間においては何メートル以上貯水池の水位から下った場合にはどういうような放流をしなければならぬかという規定、あるいは灌漑期間、洪水期間いずれでもない期間では発電はこういうような範囲で水を使ってよろしいというような規定並びに洪水の参りました際に管理所長のとるべき措置または管理事務所長が水門を操作するに当りまして必要な細部の規定、そういったものが含まれることになるわけであります。
#5
○足鹿委員 そうしますと先日来またきょう問題になった私が先刻指摘しました洪水時の場合、渇水時の場合、そういうようなものに対するところの措置は、この操作規則によって定められ、それに基いて運営をするわけですね。だれが運営するのですか。
#6
○山本政府委員 運営をするものは、建設大臣または河川管理者である知事が運営するわけであります。
#7
○足鹿委員 これは先ほども言いましたように、渇水対策の場合はそうでもありませんが、洪水時の場合におけるところの運用というものは、きわめて敏速に行わなければならぬと思うのです。そうした場合に一番影響を受けるのは、農民が影響を受けるのです。それに対するところの適切な措置というものは、私はやはり農林省なり知事を通じて行われるというよりも、むしろそれに対しては意見を徴する、運営上に当って緊急な措置を誤まらないためには、いわゆる何か農民の利益を代表する者、あるいは農業を代表する者、そうした者の意見を徴していかないと、適切な運営ができないのではないかという心配を私は持っておるのです。そういう点については、農林省と建設省の間には何らのお打ち合せなり検討が加えられておらないのでありますか、その点を農林省なり建設省の方なりにお伺いしたいのであります。
#8
○山本政府委員 法律の三十条に操作の基本原則という規定がございます。「多目的ダムの操作は、流水によって生ずる公利を増進し、及び公害を除却し、又は軽減するとともに、ダム使用権を侵害しないように行わなければならない。」と規定しておりまして、この基本原則にのっとりまして操作規則が定められるわけであります。その操作規則を定める場合に、先ほどからも申し上げておりますように、農林省初め関係行政機関の長に協議するわけでございます。また使用権者の方にも協議するわけでございます。ただいまのお話は洪水等のときに操作を急に行わなければならぬような場合がある、その場合に下流に対して被害が生ずるおそれがあるというような点の御心配だと思いますが、その点につきましては、放流に関する通知等という条項が三十二条にございまして、従来もダムの水を放流いたしたりする場合におきましては、下流の方々に被害防止の処置を通知いたしまして、危険を防止するような処置は、県の条令なりでやっておったのでございます。今度の法律におきましては、第三十二条にその点を明定いたしまして、「建設大臣又は多目的ダムを管理する都道府県知事は、多目的ダムによって貯留された流水を放流することによって流水の状況に著しい変化を生ずると認める場合において、これによって生ずる危害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、あらかじめ、関係市町村長及び関係警察署長に通知するとともに、一般に周知させるため必要な措置をとらなければならない。」と、こういうふうな新しい法文を挿入したわけでございます。
#9
○足鹿委員 その点は了承いたしました。
 次にこの覚書の二項の、「法第三十四条の規定による許可その他の処分にあたっては、建設大臣は、農林大臣と協議をし、協議を調えた上でこれを行うものとすること。」とあるが、協議をととのえるということはどういうことですか。
#10
○山本政府委員 それは結局建設大臣が農林大臣に協議いたすわけでございますが、考えが違うまま処置をするということじゃなくて、協議をととのえた上で、まあ、そこに書いてある言葉通りでございますけれども、一致さしてやる、こういうことです。
#11
○足鹿委員 一方的にはやらないということですね。
#12
○山本政府委員 一方的にはやらないということでございます。
#13
○足鹿委員 次に三の「河川法第十七条から第二十一条までの規定による水利権の協議は左の各号の原則に則りこれを行うものとすること。」こういう覚書があって、以下二、三の取りきめが行われておりますが、その場合「(イ)農業水利その他農林水産業に影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがある場合は、利害関係者の具体的意見を十分尊重すること。」この利害関係者とは一体だれを指すのですか。
#14
○山本政府委員 流水の処分でございますから、その流水によって、水利権を持っている人あるいはその水をとつたために影響を受ける人など、その水を利用している方々の意見を十分聞く、こういうことでございます。
#15
○足鹿委員 具体的意見を十分尊重するということになっておりますが、その方法は、何か委員会のようなものを作るとか、あるいは会議形式のものを設けるとか、何らかの措置を講じて行うのでありますか。具体的な意見を十分尊重することという具体的な方法は、どういうことを指しているのですか。
#16
○山本政府委員 今のお話の水利権の処分は、知事が水利権を許可する場合のことをいっているわけでございまして、その際建設大臣の認可を受けて知事が処分するわけでございます。その際に、十分に関係者の意見を聞くということは、知事が水利権を許可するに当って、あるいは大臣の認可を得て許可するに当りまして、自分の管内の水を使っている者、そういう者の意見を十分聞こうということでございまして、従来の処置といたしましては、地元諮問というような形式をとっておりました。
#17
○足鹿委員 これは農林省なり建設省、両方に伺いたいのですが、農林省は関係するかどうかわかりませんけれども、さっき久保田君が質問をしておった点なんです。河床の低下あるいは河心の変更というような点が、現に木曽川に設けられた既存の関西電力発電によって、私ども愛知用水の現地を見たときに、用水の取入口が河床の低下によって非常に高くなって水が入らないという重大異変が起き、また河心の変更によっていろいろ支障が起きているという具体的な事例を、幾たびか聞いたし、現地でよく見たわけです。全くその通りなんですが、そういったような、現に――あれは多目的ダムをこれから作るわけなんですが、要するにあの比率はどういうふうになっているか知りませんが、結局愛知用水というものは、電力、工業用水、水道、農業用水と、これは全く多目的ダムですね。既存の関西電力が行なったものにおいてすら、木曽川にあれだけの変異が起きている。いわんや今度王滝ダムを作ってさらにダムの規模を拡大するということになると、非常にそこに大きな変化がなおさら起きてくるというのが、地元民の悲痛な陳情の趣旨であったのです。その後それは河川法に基いてどういうふうな措置を行われているか。あるいは農林省はそれらに対するところの、具体的にはどういう措置が講じてあるか。さっき久保田君が言われたことは、きわめて一般的、抽象的なことでありましたが、現にそういう事態が起きているのです。それに対してどういう措置が講じられているか、具体的に一つ説明を願いたいのです。
#18
○山本政府委員 今のお話は愛知用水の問題でございますが、(足鹿委員「それは一例ですよ。」と呼ぶ)愛知用水の問題は、まだ具体的に処分もしておりませんが、私の考えといたしましては、ダムを作りましたために下流なりあるいは上流なりで明らかにそのために起ったそういうふうな事態は、ダムをやった者がそれに対して施設なりをやってやらなければならぬと考えております。それからダムにためた水を使うということによりまして生じた被害は、その水を使う人がやるべきだ、こういうふうに考えております。
#19
○立川説明員 ただいまのお話のような問題がいろいろ出て参ると思います。そのために新しい施設をやらなくちゃならないといったようなことが出て参ります。そこで今回の特定多目的ダムの法律の制定に関連いたしまして、従来もいろいろ両者間にお話し合いをして参ったのでありますが、今後は特にさような場合は農林省側の意見も十分聞いてみる、その際にはまた関係者の意見も尊重いたしまして、今のような著しい影響のある場合にはこれを回避する方法を講ずる、あるいは著しい被害がある場合にはそれを補償する措置を講ずるというようなことを両省間で十分相談して参りたいと思います。
#20
○足鹿委員 両省間の相談ということですが、既存のものにああいう重大異変が起きておってもほったらかしてあるのです。今後こういうりっぱな法律をお作りになって多目的ダムを随所に築造していく、そういった場合には必ずそういう変異が起きてくることはもう事実によって証明されておるのです。それに対してすらも何ら具体的な措置が講じられておらぬことは非常に遺憾に思うのです。愛知用水の問題が起きたのはあれはおととしですが、既存の関西電力のダムによってすらもああいう重大異変が起きておるのです。いわんや今後大規模な多目的ダムが方々に構築されるということになりました場合は、法律的根拠に基いてこれに対する措置を講じなければならぬ段階に来ておると思うのです。そこで法第四条に基いて基本計画を定めるときに、建設の目的、位置及び名称というようなことはこれは問題でないので、第三の規模及び型式、これが問題になってき、次いで四の問題にいろいろと関連が出てくると思う。これは私もまだ研究が足りないが、補償の問題については特別立法を起すか、あるいはこのような特定ダム法を制定するような場合には、当然それらに対する措置が織り込まれなければならぬはずのものだと私は思うのです。ただ今までの御答弁を聞いておりますと、既存のものはほったらかしてあるがこれからは一生懸命やるというのではちょっと私は納得がいかぬと思うのです。現実にどういうふうにされるか、これは農林、建設両大臣に私はお尋ねをしたいと思うのです。昨日も申しましたように、基本的な問題として国土の総合開発と農業との調整の問題ですが、これをどういうふうにやるかということが今後一番大きな問題になってくると思う。それについて建設政務次官もおいでになっておるようでありますが、これは一事務局の答弁では済まぬと思う。どういうふうに御措置になる考えでありますか、これをお尋ねしたい。
#21
○小澤政府委員 これまではダムの管理につきましては確かにお説のようなことがございました。そういう点を排除するために、今回のこの特定多目的ダムの法律におきましてはそういうことのないようにしたいと思います。
#22
○足鹿委員 いや、私は法的措置等をお講じになる考えはないかということを伺っておるのです。現在までに起きたそういうものに対しても何ら手が打ってない。これは私は重大な怠慢だと思うのです。これだけの構想を持ってダムを築くことに対しては非常に熱意を持っておられるが、それから及ぼす重大な影響等に対しては何らの具体的な措置がはかられておらない。これは私は片手落ちじゃないかと思うのです。それを法律的な立場なり政府の責任において今後どう措置されるかということをもう少し明確にしていただきたいと思うのです。大臣がおいでになれば両大臣に対して私はもっとお伺いしたいのでありますが、その点を端的に一つお答え願いたい。
#23
○小澤政府委員 そういう点につきましては今後法的措遣を講じたい、そういうように考えております。
#24
○足鹿委員 この法案とは別途に法的な措置を講ずる、こういうことですね。
#25
○小澤政府委員 そういうようなことであります。
#26
○薩摩委員長 多賀谷君。
#27
○多賀谷委員 まず法理上の問題から一、二点お聞きいたしたいのですが、このダム使用権という中には流水占用の権利は入っているのですか。
#28
○国宗説明員 ダム使用権は、この第二条の定義にも書いておりますように、流水を一定の地域に貯留する権利でございまして、流水占用権は入っておらないわけでございます。
#29
○多賀谷委員 この法律では流水占用の権利あるいは流水を使用する権利、ダム使用権というものを分けられておる。これは最近発電の方式が変りまして、流れ込み式発電が大容量貯水式発電に変ったために、水利権の内容においてあるいは水の貯留の分を含めるかどうかということは学界で議論のあることも私どもは承知しておる。しかしこういうダム使用権といわゆる貯留の権利と水を使うという権利を別個にして一体どういう効能、益があるか、流水占用権を別にしたらダムの使用権というものは意義がないと思うのです。ダム使用権だけでは意義がないでしょう。
#30
○国宗説明員 御指摘のように従来も水利権の内容に貯留の権利を含むやいなやの議論がございまして、含むのじゃないかという少数説もございますが、われわれとしてはさような説をとっておらないのでありまして、河川法第十八条の流水占用の許可と申しますのは、あくまでも流水を排他独占的に占用する権利を考えておるのでございます。従いまして流水を占用いたしますためには、ダムあるいは取り入れ口等の施設を持たなければ具体的に貯留もできなければ引用もできない、かように考えておるのでございまして、相当数多くあります遊休の水利権などは法律上は引水する力を持っておりますが、具体的にはさような施設を持たないから引水は可能ではないわけであります。
 第二点の水利権を持たなければダム使用権は意味がないのじゃないかという点につきましては、経済の目的から申しますと大体仰せの通りでございまして、水利権を持った者があわせてダム使用権を持つところに経済目的を果し得る結果になると考えております。
#31
○多賀谷委員 ダム使用権の中に流水占用権というものを含まない、全然別個の概念とすれば、権利として保護する意義がないのじゃないですか。流水占用権というものを含んで初めてダム使用権というものが意義がある。この流水占用権というものとダム使用権というものを概念上全然分断をすれば、保護の対象にするダムの使用権というものは権利の保護としての意義がない、かように考えますがどうですか。
#32
○国宗説明員 御指摘のようなお考えもあるいはあるかとも考えますが、従来におきましても水利権を持っておるならばすべては足りるのじゃなくて、やはりそれに必要なる施設を設けて初めて貯留を確保いたしましたのでございます。今回も水利権を持っておるほかにダムを使い河川敷を使い、そして工事をやった上でさような貯留を確保するという権利は、別に財産権として規定するのに何ら不思議はないのじゃないか、かように考えております。
#33
○多賀谷委員 私は貯水式発電所の用水権といいますかそういう権利の一義的なものが水の貯留という点に重点が置かれたということを否定するのじゃない。それはそうだ。二義的に水を使用するということに漸次移り変りつつあるという事実はその通りだ。しかしながら水の使用権というものを全然別個にして、水をためるということだけを権利として保護しても何も意義がないじゃないか、こう言っているのです。ですからそれはあくまでも水を使用するという前提でなくてはならないわけでしょう。ところがあなたの方は章まで設けてダム使用権という権利を持たせておる。しかもこれは物件だと言っておる。一体水を使用する権利というものがなくてダム使用権というものが権利の対象として意義があるか。権利という権を書きさえすれば何でも権利だというわけではない。これは経済的意義がなければ権利の対象にはならぬ。保護の対象にならぬ。これは法律の大原則だ。それをダム使用権といって流水使用権と全然切り離してあなた方は大胆にもここに法概念を規定されておるけれども、私はそれはきわめて疑義があると思う。この点をもう一度お聞かせ願いたい。
#34
○国宗説明員 御指摘の第一点のダム使用権があっても水利権がなければほとんど無価値であると言われます点につきましては、そう異存はない、その通りであろうと考えるわけであります。しかしながら従来も、しからば経済的に申してダムの所有権あるいはダムの敷地の所有権というものを持っておっても水利権を持たなければ意味がなかったじゃなかろうかと言われると、経済的には何ら異ならぬのではないかと考えるわけでございます。
 なお、これだけを独立の物件といたすことについて不都合じゃないかということにつきましては、従来は共有による所有権という支配形態を持っておったのでございますからこれを特件に置きかえたということでありまして、さような財産権自身は独立に法の保護を受けるのに十分な経済内容を持っているのじゃないかと考える次第であります。
#35
○多賀谷委員 経済内容を持っているというのは、水を持っているというのは、水を使うという前提があるから経済内容を持っている。水を使わないで、ただダム使用権だけ持って水の権利は別個だと法概念ではっきり規定されると、これは全く意義のない権利だ。権利の権さえ書けば何でも保護の対象になるわけじゃない。水を使って初めてその使用権としての意義を持つでしょう。ですからここにダム使用権という法概念を初めて規定されておるけれども、水を使うという権利を全然別個にして使用権だけを保護されておるのはきわめておかしい。むしろ使用権と言われるならば、流水占用権を含むのだというなら話はまた別です。この点どうですか。
#36
○国宗説明員 御指摘のような立法論はおそらく可能であろうと思うのでございます。水利の引用の権利と財産権と何もかも含めてこれを水利権なりあるいは特別水利権なり特別ダム使用権なりに打ち出すというものの考え方も、抽象的に考えれば立法論としては可能であろうと思います。さらに水道の水の供給を受ける。各家庭のように水だけ供給を受ける。しかもエネルギーのついた水だけ供給を受けるというものの考え方も可能であろうと思います。先ほど理論的に申し上げましたが、経過的に申し上げましても現在多数の水利権で遊休の水利権という権利だけを持っている状態もございます。そして水利権と今の施設所有権あるいは施設を支配する権利とは一応別に考えておる。こういう実際上の経緯からいたしましても、このダムを支配し敷地を支配し、流水を確保するものを独立の権利といたす方が、わが国の法体系上、特に河川法体系上最も実情に会うのではないか。かような実際上の見地からもさようにいたしたのであります。
#37
○多賀谷委員 これはきわめてむずかしい法理論であり、また議論の多い点であろうと思う。できれば学者に来ていただいて十分に解明をしていただいてやるのがほんとうであろうと思いますけれども、この委員会ではそうなっておりませんし、これ以上申しますと水かけ論になってしまうから、私はこれは問題がある、疑問に思っておるということだけを申しておきます。
 それから二十二条、ダム使用権の処分の制限のうちの建設大臣の許可という建設大臣とは、所有者である建設大臣をさすのか、行政官庁としての建設大臣をさすのか。この点をお伺いしたい。
#38
○国宗説明員 二十二条の建設大臣の立場は、所有者としての立場ではございませんで、この法律を主管する主務大臣としての立場であろうと考えておるわけでございます。
#39
○多賀谷委員 ではダムの所有者という建設大臣ではなくて、監督官庁としての、主務大臣としての建設大臣、こう理解してよろしいわけですね。そうしますと、私は時間がありませんから、基本的な問題を一言質問したいと思います。
 それは農林省関係、灌漑用水を主体とするダムについてはこの法の対象にならない。その場合でも発電、水道、工業用水の用途に供される場合がある。こういうことがあると思います。また本案の場合は、建設者が主体になって、発電、水道、工業用水の用というのが主たる目的である。こういう場合に本案の適用を受けるのだ。こういうことになると考えます。そうしますと、たとえばダム使用者、あなたの言われるダム使用権者、こういう場合において、日本の法体系で二つ異なったものができる。あるいは使用権ではなくて、農林省の方は共有だ、こう言われるかもしれませんが、要するに同じ発電の電気業者が一方においてはダム使用権者となって現われ、一方においては共有の持ち分関係において現われる。こういうことは日本のこの関係の法体系を乱すものだと考えますが、あなたの方ではどういうように御理解になっておりますか。
#40
○国宗説明員 言われますように二つの支配形態が併存するわけでございますが、それは両立するものと考えておるわけでございます。ただ将来建設大臣が直轄でこの法律に適合するような多目的ダムを建設する場合には、常にこの法律の規定によってダム使用権という関係になるだけでございます。
#41
○多賀谷委員 矛盾しはしませんか。同じような形態の場合に、一方においてはダム使用権者となり、一方においてはダムの所有者の一部の持ち分、共有という形になって現われる。日本の法体系で建設省と農林省と役所が違うだけで違った扱いをする、こういうことになりはしませんか。
#42
○国宗説明員 御指摘のようなことをすべて画一の支配関係、法律関係にいたすことも一つの考え方ではございましょうが、世の中の一般の所有関係について、たとえばビルディングの所有関係についても、このような物件に近いような用益物件を持っておる関係もございますし、共有の場合もございます。二種類ある場合がございます。でありますから、この際強行法規としてすべてのものをこれに合せなければならない、さようには考えておらないわけでございます。
#43
○多賀谷委員 それは権利のとり方が、あるいは用益物件なのか、いろいろな所有権になるのか、それは任意法規ですから個人の勝手です。ところがこの法律ではそうではないのです。発電業者の側がいかに考えようとも、この法律で一方の場合はダム使用権者として現われ、一方の場合は所有権の持ち分関係になって現われるでしょう。ですからそれは権利者の方が任意選択の形にあるべきものではない。法律でそうなっておるのです。しかもこれは法律で使用者の側が好むと好まざるとにかかわらずはっきりそういう立場になる。ですから日本の法体系を非常に乱すものだと思う。少くともこれでやられるなら、この通りを農林省関係でもおやりになったらいい。それができなければ、役所の関係で管轄争いがあるならば、総理大臣がおやりになれば一本でできる。同じ多目的ダムで二つの取扱いをしておるというところに非常に問題があると思う。
#44
○国宗説明員 御指摘のような現象はきわめて理想的とは私も考えませんが、とりあえず農林省のダムと建設省の方のダムとの相違を申し上げますならば、御承知のように河川法第三条によりまして、河川並びにその敷地もしくは流水は私権の目的にならないように規定されておるわけであります。それが第四条の二項におきまして堤防、護岸とともにこのダムを付属物として認定いたすことにいたしておるわけでございますが、さようにいたしますと第三条の規定によりまして私権の対象にならないわけでございます。私権の対象にならないところにもってきて従来、昨日も御指摘のありましたような法関係を規定いたしておったわけでございますが、やはり適用河川におきましてはわれわれの今お願いしておるような法律関係の方がわれわれ河川法関係においては望ましいと思うわけであります。
#45
○多賀谷委員 法制局は見えてないですか――大体こういうむずかしい法概念を出すとき法制局を呼んでおらぬというのは――法制局は来てないですか。
#46
○薩摩委員長 来てないです。――ほかに御質疑はごいざませんか。――なければ本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。
 この際足鹿覚君外九名より本案に対し修正案が提出されております。提案の趣旨弁明を許します。足鹿覚君。
#47
○足鹿委員 日本社会党を代表いたしまして、特定多目的ダム法案に対する修正案を提出いたします。すなわち件定多目的ダム法案の一部を次のように修正するのであります。
 第四条第三項中「関係行政機関の長に協議する」を「関係行政機関の長の同意を得る」に改める。
 第十条を次のように改める。
第十条 前条第一項の負担金は、新築される多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水をかんがいの用に供する者からは、これを徴収しないものとする。
  第十一条中「前二条」を「第九条」に改める。
  第三十六条第一項中「、第九条第一項若しくは第十条第一項」を「若しくは第九条第一項」に改める。
  第三十七条第六号中「、第九条第一項若しくは第十条第一項」を「若しくは第九条第一項」に改める。
  附則中第三項を削り、第四項以下を順次一項ずつ繰り上げる。
 以上の修正案でありますが、修正案提出の理由を簡単に申し上げて御賛同をいただきたいと思います。
 本特定多目的ダム法案の問題点は大別いたしますと二つの点にあるのであります。すなわち第一は設置管理の過程における各種利用段階についての建設、農林両省間の調整の問題、二に農民の負担の問題であります。以下簡単にこれに対して私どもの見解を述べ、提案の理由にかえたいと思います。
 両省間の調整の問題は、第四条のダム建設上の基本計画を作成変更する場合、三十一条の操作規則制定の場合、三十四条の流水に関する水利権の処分の場合、付則第五項河川法による一般水利権に関する処分の場合、以上いずれも建設大臣が関係行政機関の長に協議することになっております。協議して話し合いがつかない場合が問題となるわけでありますが、この点は別紙のごとき覚書を交換して、話し合いがつかない場合には工事を行わないことにした。別紙は省略いたしますが、事務次官の間に多目的ダム法の運用に関する覚書、農地局長、河川局長間の細目協定を御参照願いたいと思います。従って実質的には農林大臣の同意を得なければならないものと農林省では解釈しておるようでありますが、しかしこれは法律上において保証が与えられておらないので、この点を明確にする必要があると認めるのであります。
 次に負担の問題でありますが、一般受益者の負担の規定は第九条と第十条とに関係がありますが、当初第九条の規定のみに限定すべしとの農林、建設両省間での意見であったものが、伝え聞くところによると、大蔵省の強硬な申し入れによって第十条の規定が追加されたのが法案作成の過程の真相のように私どもは考えておるのであります。これによって農民の負担を増加されたこととなるのでありまして、従来は事実上全く負担しておらないものを新しく農民に負担せしめることになりますので、この点は当然是正をする必要を認めた次第であります。
 なおこの機会に、その他の問題点について私どもの見解を明らかにし、法案につきましての一応の態度をここで表明しておきたいのであります。すなわち第二条で多目的ダムの規定をしているが、農業の用に供するのが主で治水を従たる目的とするものはどうかとの意見もあり、この点は多目的ダムは治水を主とするものに限定するということに大体なっているようでありまして、第三条の特定用途に灌漑が入らないためにダムの使用権はない。この点特定用途に入ると使用権は生ずるが、アロケートした金額を負担せねばならず、しかも工事中に出さなければならなくなるために、そのような扱いにしたということになっておりますが、しかし使用権がないということは、あとで述べますような種々の問題をはらんでくることになるのであります。すなわち第四条による基本計画の作成に当って、ダム使用権者からは意見を徴することになっておるが、農民は使用権がないため意見を述べることができない。ただ大臣や知事があらかじめその意見を聴取するわけで、いわば間接的にしか意見の主張ができないという点が明らかであろうかと思います。
 次に洪水期等におけるダムの操作、特に放水量の調節の問題等がありますが、これは操作規則を定めて処理するのであるが、洪水の場合などは判断に急を要するということになります。従って農民に影響するところがきわめて大きく、使用権者のみの発言権に左右される懸念が多分にあると言わなければなりません。この点あらかじめ補償問題等をも明記させる必要があるように私どもは思いますし、また渇水の場合においても放水量の減少により農民は影響を受けることが大きく、この点も洪水の場合と同様に十分明らかにする必要があるものと私どもは考えておるのであります。要するにこれは農民が使用権がないため発言権がないというところから問題が発生してくるというふうに私どもは考えまして、この際建設当局においても、現在の法案をもって足れりとせず、今後十分御検討になりまして、完璧を期する必要があると思うのであります。
 なお最後に申し上げておきたいことは、先刻大臣が出向いておられましたので、政務次官におただしをいたしましたが、このダムの構築によりその下流におきまして河床の沈下あるいは河心の変化等によって用水導入施設に非常な影響をもたらしておることは先ほどの質疑においても明らかであります。たとえば木曽川水系におきまして濃尾用水その他が河床の低下及び河心の変化等によりまして取り入れ口に重大な変化が起き、そのために関係農民はこの点を非常に苦慮し、政府にしばしば陳情し、国会にもこれをなしておるのでありますが、今もってこれが解決しておらないということはまことに遺憾であります。従って政府はこれらの実情に徴されまして、今後この補償等をめぐる基本的な対策を独立法案として独立法を起され、すみやかにかかる農業との調整問題を十分御検討せられることが私どもは必要であると認めたのであります。先ほど小沢政務次官の責任ある御答弁によって、政府としては今後単独法を検討し、これを提出する用意がある旨の御答弁がございましたので、この点は附帯決議等を付することなく、ここに問題を明らかにして、私は今後の政府の善処を要望してやまない次第であります。
 以上はなはだ要を得ませんが、ただいまの特定多目的ダム法案に対する修正案提出の理由といたす次第であります。
 何とぞ同僚委員の御賛成をわずらわしたいと思ます。(拍手)
#48
○薩摩委員長 ただいまの御説明について御質疑があればこれを許します。――御質疑はないようでございますから、この際国会法第五十七条の三の規定によりまして、本修正案に対する内閣の御意見を聴取いたします。
#49
○南條国務大臣 ただいま修正案が野党側から提案されておりますが、政府といたしましては、ただいままでの審議の過程におきまして、ただいまの修正案の内容につきまして懇切な答弁をいたしたつもりでございます。従いまして、その御修正になりまする内容につきましては、今後運営の面におきまして、十分皆様の御期待に沿うように善処したいと考えますので、原案の通り御可決あることをお願いいたします。
#50
○薩摩委員長 これより本案並びに修正案を一括して討論に付します。
 討論の通告がないようでございますから、討論はこれを省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と、呼ぶ者あり〕
#51
○薩摩委員長 御異議なしと認めます。
 これより採決を行います。まず足鹿覚君外九名の提出の修正案について採決いたします。これに賛成の諸君の御起立を願います。
  〔賛成者起立〕
#52
○薩摩委員長 起立少数。よって足鹿覚君外九名提出の修正案は否決されました。
 次に原案について採決いたします。原案に賛成の諸君の御起立を願います。
  〔総員起立〕
#53
○薩摩委員長 起立総員よって原案は可決いたしました。
 なお本議決に伴う報告書等の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#54
○薩摩委員長 御異議なしと認め、さよう決します。
 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
  午後一時五十八分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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