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1956/04/23 第26回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第026回国会 外務委員会農林水産委員会連合審査会 第1号
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1956/04/23 第26回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第026回国会 外務委員会農林水産委員会連合審査会 第1号

#1
第026回国会 外務委員会農林水産委員会連合審査会 第1号
昭和三十二年四月二十三日(火曜日)
    午前十時四十六分開議
 出席委員
 外務委員会
   委員長 野田 武夫君
   理事 菊池 義郎君 理事 須磨彌吉郎君
   理事 高岡 大輔君 理事 山本 利壽君
   理事 松本 七郎君
      愛知 揆一君    伊東 隆治君
      前尾繁三郎君    松本 俊一君
      松本 瀧藏君    大西 正道君
      岡田 春夫君    田中織之進君
      田中 稔男君    森島 守人君
 農林水産委員会
   委員長 小枝 一雄君
   理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君
   理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君
   理事 芳賀  貢君
      安藤  覺君    五十嵐吉藏君
      石坂  繁君    大野 市郎君
      川村善八郎君    木村 文男君
      草野一郎平君    鈴木 善幸君
      中馬 辰猪君    永山 忠則君
      原  捨思君    本名  武君
      松浦 東介君    赤路 友藏君
      伊瀬幸太郎君    中村 英男君
      山田 長司君
 出席政府委員
        外務政務次官  井上 清一君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
        農林事務官
        (水産庁次長) 奧原日出男君
 委員外の出席者
        大蔵事務官
        (主計官)   大村 筆雄君
        農林事務官
        (水産庁生産部
        長)      坂村 吉正君
        農林事務官
        (水産庁生産部
        海洋第一課長) 木田  繁君
        参  考  人
        (北日本イルカ
        漁業協同組合組
        合長)     川口 鶴松君
        参  考  人
        (北日本イルカ
        漁業協同組合専
        務理事)   浜田清右衛門君
        外務委員会専門
        員       佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約
 の批准について承認を求めるの件(条約第九
 号)
    ―――――――――――――
    〔野田外務委員長委員長席に着く〕
#2
○野田委員長 これより外務委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。
 慣例によりまして私が委員長を勤めますから、さよう御了承を願います。
 北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約の批准について承認を求めるの件を議題といたします。
    ―――――――――――――
#3
○野田委員長 まず参考人より御意見を聴取することにいたします。本日御出席の方々は、北日本海豚漁業協同組合長川口鶴松君、北日本海豚漁業協同組合専務理事浜田清右衛門君の二名であります。
 議事に入りますに当りまして、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は皆様御多忙のところ、特に当委員会のために御出席下さいまして、まことにありがとうございます。委員長より厚く御礼申し上げます。
 本日の議事の順序について申し上げますと、まず参考人各位からのおのおの御意見を開陳していただき、そのあとに委員から質疑がある予定であります。なお御意見の開陳は、一人約二十分程度にとどめていただきたいと思います。念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言はそのつど委員長の許可を受けることになっておりますので、御了承を願います。また発言の内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えないようにしていただきたいと存じます。なお、参考人は委員に対しましては質疑をすることができないことになっておりますので、その点も御了承を願いたいと思います。
 それでは参考人の御意見を聴取することにいたします。川口磯松君。
#4
○川口参考人 私は岩手の大槌に根拠を置いている北日本海豚漁業協同組合の代表の川口と申します。よろしくお願いします。
 去る三月九日オットセイの保護条約調印がなされまして、われわれイルカ漁業界は、戦後十数年にわたり猛烈な解禁運動をやったのでございますが、不幸にして保護条約になったことは非常に遺憾に考えたのでございます。このイルカの猟漁撈法とオットセイの猟獲方法は同じ漁法でございまして、さかのぼって明治年間の上半部におきましては、日本の近海までアメリカ、カナダ、ソ連の漁師が参りまして、数十万頭の猟獲を日本の根拠でやっておって、明治二十年来日本は遠洋漁業奨励法によりまして奨励いたしまして、逐次北太平洋に日本の猟漁法で押していったのであります。しこうしてべーリング海におきまして四つに組みましてオットセイ猟獲をやったのであります。日本のハンターの技術が非常に凌駕しまして敵を完全に征服しまして、明治四十四年に十数万頭の猟獲になったのであります。その当時のわれわれの先輩におかれましては、帆一枚、オール一枚でアメリカ、カナダ、ソ連の船は補助機関があったのでございますが、無線もない帆一枚でわれわれの先輩は北太平洋に奔闘したことは、この委員会を通して心から感謝しておるのでございます。日本の遠洋漁業の発端もこの遠洋術からきたのではないかとわれわれ考えております。そして明治四十四年に禁猟になりまして、一期十五年、その後二期の昭和十六年になりまして、日本はこの条約から脱退しまして、一方的に許可制をしきまして、終戦まで三カ年間に数千頭の猟獲をしまして、戦後マッカーサーが参りましてから禁猟になり、その後われわれはこれではならぬというわけで、イルカの漁撈法と同じでありますから猛烈な運動をしたのでありますが、ついかようなわけになったので、遺憾と思っております。日本の近海におけるオットセイとイルカの生態は同じで、水温五度から十三度の間に一緒におるのでございまして、イルカをとりながらオットセイに危害を加えるから、これを解禁してもらいたいということを心から願ったのでありますが、ついかような次第になったのでございまして、今後陳情、請願になっている通り、イルカ業界の苦しい立場をくみまして、われわれの生きるように取り計らわれんことを切にお願いいたします。あとは、うちの浜田専務から陳情の要旨につきまして、詳しく御説明申し上げます。
 簡単ですが、あいさつといたします。
#5
○野田委員長 次に浜田清右衛門君。
#6
○浜田参考人 私はただいま御指名を受けました浜田でございます。川口組合長から明治年間以来のオットセイの概要につきまして申し上げた通りでありますが、これはすでに各先生方が御承知の通り、明治四十四年に保護条約が締結されて、その当時四十九隻の――今で言えば母船であろうと思いますが、その四十九隻に対して転廃業資金として政府が百数十万円の資金を出したのでございます。この条約は十五カ年後に失効になるという内容を持っておったので、日本政府においては大正十五年かと思いますが、相手国に対して通告を発してこの改訂を要請したわけでございますが、相手国からこれに何らの回答もなかったので、その後十五年にして自然失効となる内容であったので、日本政府においては昭和十六年にこれを失効に移したわけでございます。従って昭和十七年より日本政府においては許可制をしきまして、六十隻の漁船に対して農林大臣の許可をくれたのでございます。この六十隻からなる漁船が、当時われわれの持っておるイルカの鉄砲による漁撈法に目をつけまして、この場合われわれの団体が中心になってこのオットセイ狩をしたような次第であります。御承知のように、すでに戦争下に入ったので、非常に危険な漁業を続けたのでありますが、当時軍需省から、せめても飛行士の服の関節部分だけにもオットセイの毛皮を使いたい、なお高層圏飛行の潤滑油としてマシン油かイルカの脳油が必要であるから、一つこれに対して協力してもらいたいというような要請がしばしばあったので、危険を冒して北海道から三陸にかけてオットセイ並びにイルカの漁業に当ったわけでございます。この間敵の機銃によって死傷を受けたもの、あるいは敵弾によって沈没したものもございます。しかしながら、敗戦によってわれわれはいかようにも救いの手を求めるわけにいかなかったのでありますが、必ずやいつかはわれわれの希望が達せられるだろうという望みを持って今日まで参ったような次第でございます。昭和十七年に解禁になった後、昭和三十年でありますか、連合軍最高指令部の命によって、その権利が剥奪されたのであります。自来われわれは海上猟獲を主張して政府並びに国会にも陳情、請願を続けたようなわけでございます。
 その後昭和二十三年にはアメリカの生物学者が乗り込みまして、三陸の岩手を中心に北海道沖の調査に当ったのでございます。この場合には日本国政府においても協力し、なおかつわれわれの団体においても協力して参ったのでございます。直来二十四、二十五とアメリカ並びに日本政府において調査を続けたのでございますが、二十七年に至って日米加の三国の合同調査が大々的に行われたわけであります。その間政府においては、昭和二十五年法律の一部を改正したのでございます。これはアメリカの要請によって法律を改正したようでございますが、この場合には、衆議院にあっても参議院にあっても、各先生方がこの法律の改正には反対しておったようでございますけれども、遺憾ながらマッカーサー司令の命令でございますから屈せざるを得ないのでこの昭和二十五年の法律改正を通したような次第であると聞いております。それから昭和二十六年でございますか、吉田総理大臣とダレス長官の問において書簡の交換がされ、これによって条約同様にわれわれが縛られて参ったのでございます。その商水産庁なりあるいは外務省に対しまして、われわれはこのダレス・吉田書簡なるものを失効させるわけにいかないかということをしばしばお願いして参ったのでございますが、条約に準ずるものであるからこれはなかなか容易でないというので、本会議に持ち込むはかなかろう、こういう結論に達しましたので、それからというものは年に数度も足を通わして陳情請願を続けたようなわけでございます。それで昭和二十九年に東京において日米加の三国の学者会議が開かれたのでございます。これは昭和二十七年の合同調査に基きまして開かれた生物学者の会議でございました。この場合においては、この会議終了後すぐさま条約会議に持ち込まれるような空気でございましたが、ソ連並びにカナダ等の都合によって延期されたのでございます。それでわれわれといたしましても、もう近々に海上猟獲が可能になるだろうという客観情勢に基きまして、いろいろと準備態勢に移って参ったのでございます。それから昭和三十年の三月でございましたか、それらの関係漁民が非常に困っているので、政府当局に対して何らか救済方法を講じてもらいたいという嘆願をなしたのでございます。その場合に、でき得るならば相当大規模の生態調査をやらしてもらいたいという計画書まで出したのでございますが、相手国から了解をとるに容易でないという外務省の見解なので、これもどうしても実現できなかったのでございまして、いろいろな方法をもって一時的に漁民の救済策をわれわれ自体において講じたような次第でございます。その後三十年の十一月から御承知の通りワシントンにおいて本会議が開かれたのでございまして、最初三週間の予定で日本代表が参ったように聞かされておりますが、約一年半を要してこの暫定条約ができ上ったようなわけでございます。基本的には、われわれはこの条約には賛成しかねるのでございますが、何せ力の前には屈せざるを得ない日本の現状をながめた場合においては、いたし方がないというよりほかにないのでございます。従いまして、その間、われわれは少くとも五万頭の海上猟獲を許してもらいたいというように、政府当局に対しても要請を続けておった手前、その計画に基いていろいろの準備態勢を整え、またかつて六十隻の漁船をもって昭和十七年にやったそのハンターなりあるいはその乗組員が、現在百七十一隻になっておるのでございますが、この漁撈法というのは簡単に修得できない漁撈法で、われわれ自体においては、日本の国技は相撲と柔道であるが、このオットセイなりイルカをとる猟銃の漁撈法というものは、まさに日本の国技であるという信念を持っておるのでございます。というのは、一級ハンターになるには、最もすぐれたもので五年を要するのでございます。従いまして、必ずや海上猟獲ができ得るものと、虎視たんたんとしてその腕をみがいて参ったようなわけでございますが、今日に至ってそれができないというので、漁民大衆が非常に失望感を持ったようなわけでございます。けれども、一たん条約が締結された以上においては、われわれは国民として守らざるを得ないので、この政府が調印されました条約を守るためにも、進んで協力を惜しまないということに意見が一致いたしまして、現在では、かつては密猟呼ばわりをされて遺憾ではございましたけれども、おのおの自粛自戒して、この条約調印と同時に、密猟などという考えを放擲いたしまして、まじめな漁業に携わっておるような次第でございますが、何せ生活に困窮しておる漁民でございますし、このオットセイか猟獲できなければイルカ漁業というものも成り立たない――ということは、同水帯におる関係から、どうしても今まではオットセイに手をつけざるを得ないというようなうき目を見て参ったような次第でございます。その間いろいろな事故が発生いたしまして、無事の漁民が何回となく懲罰を受け、苦しみを受けて参ったのでございます。それで、われわれはこの条約を守るために、完全に鉄砲を捨てなけれな条約が守れないから、このイルカ漁業を廃止するために、これらの漁民に対して転換させる方法として、モウカザメはえなわ漁業に転換さしてもらいたいというような基本線に立って、政府当局にお願いをいたして参ったのでございます。従って、水産庁なり大蔵省の深い御理解のもとに、現在ではややわれわれが希望しておるこの転換問題を具体的に進めているような状態でございまして、一日も早くこの問題を解決してもらいたい、こういうようにお願いするほかないのでございまして、よろしくこの点を国会を通してお願い申し上げる次第でございます。
#7
○野田委員長 これにて参考人の意見の開陳は終りました。
 これより質疑を許します。鈴木善幸君。
#8
○鈴木(善)委員 ただいまの参考人の御意見を伺っておりまして、私ども本条約を審議するに当りまして、いろいろな重大な問題が伏在いたしておることを承知いたしたわけでございます。まず第一点は、参考人の御意見によりますと、関係漁業者、特にオットセイの回流する海域で生活しておるところの、北海道、三陸、常磐の漁業者は、今回のオットセイの条約の交渉に当って、海上猟獲を認めるような条約であってほしい、年間少くとも五万頭程度の海上猟獲が認められる内容のものであってほしい、これを強く期待しておったようでありますが、この日本側の主張が米、加、ソ連の三ヵ国に容認されずに、暫定的な形の、調査を内容とした条約になったようでありますが、この漁民の期待に反して暫定条約になったいきさつを、簡単でもよろしいですが、外務当局よりお伺いしたいと思ます。
#9
○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。このたびの交渉におきましては、日本側としましては、やはり海上猟獲が可能である――可能だと申しますのは、オットセイの繁殖に海上猟獲が影響を与えるものでないというような主張で、ずっと参った次第でございます。ところ、か米国その他は、海上猟獲をいたしますと、雌雄の別、年令の別なく海上猟獲が行われることになるのではないか、そうしますと繁殖に非常に影響があるのではないかという向うの主張でございます。ところがわが方としましては、そういうことには大して影響がないのである、しかも、海上獲猟を許さないということになりますと、繁殖いたします結果、御承知の通りサケ、マス、ニシンという魚族に食害と申しますか、非常な影響を与えますし、また漁具を非常に損傷するというふうな主張をいたしたわけでございます。そこで、彼此主張を戦わせました結果、結局、それではどれくらい害があるものであるか、どういうふうな結論になるかということを調査の上に決定しようということになりまして、五ヵ年間の調査計画の条約を作った次第でございます。従いまして、この条約では、決して海上猟獲を禁止したということはないのでございまして、その調査の結果、海上猟獲を禁止するかどうかということも含めて決定して、将来の最良の猟獲方法を考えよう、こういう結論に達した次第でございます。
#10
○鈴木(善)委員 ただいまの当局の御説明によりますと、このオットセイの資源はすでに満限に達しておる、特にアメリカ系のオットセイは資源的に満限に達しておって、これを相当量海上で猟獲しても資源には影響がないだろうという政府の見解、さらに、オットセイはサケ、マスその他、日本近海の重要魚族に相当の被害を与えておる、こういうような、ある意味においては漁業者にとっては害獣ともいわれるようなオットセイは、これは海上でとることを認めて差しつかえないのだ、こういうような基本的な考え方で折衝をされたということでありますが、今でもさような信念に変りはないかどうか、この点をお聞きしておきたい。
#11
○高橋(通)政府委員 われわれの現在の調査では、大体そのような考えで参っているわけでございます。たとえばアメリカのプリビロフ島のオットセイは、もう満限に達しているのではないかというふうな考えを抱いております。しかしながらロベン島及びコマンダー島のオットセイにつきましては、満限に達するにはまだまだよほどほど遠いものがあるのじゃないか。おのおの大体五万頭前後でございますし、今後とも非常に増殖すべきではないかと考えております。そうなりますと、われわれが海上猟獲をいたします場合に、御承知の通り、アメリカ系とアジア系とがどの程度混よくをしているかというようなことも問題になりますので、一応はそのように考えておりますものの、やはり客観的に完全なデータを出すためには、この五ヵ年間なお一そう共同調査をする必要があるのではないかと考えております。
#12
○鈴木(善)委員 次に、今回の条約の締結及び発効によりまして、従来日本が拘束を受けておりましたところの吉田・ダレス書簡の効力、外交上の拘束力というようなものは全く解消するものであるかどうか、その点をはっきり確認しておきたいわけであります。
#13
○高橋(通)政府委員 暫定的ではございますが、この新しい条約によって前の約束は終了したものであると考えております。
#14
○鈴木(善)委員 次に、条約の第九条には、日本がこの保護条約をまじめに守って参りまして、オットセイ資源の保護に協力をいたします場合においては、アメリカ及びソ連から島で捕獲したところの獣皮の一五%を配分する、こういうことがうたわれておるわけでありますが、この条約が締結される以前におきましても、吉田・ダレス書簡に基きまして、日本政府は国内法に基いて海上猟獲を許可しない、実質的にオットセイ保護に協力をしてきた建前になっておるわけであります。従いまして吉田・ダレス書簡で日本が実質的に協力をしてきたこの期間における毛皮の配分というものも、当然今回の条約締結の際にさかのぼって取りきめらるべきものであると思うのでありますが、その点はどうなっておりますか、お伺いしたいと思います。
#15
○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。その点に関しましては、その事情を説明してアメリカ側に申し入れております。そこでアメリカ側としましては、それではその間の詳細なデータの提出を求めて、それによってアメリカ側は考慮しようということを申しておりますので、今後ともこの線に沿って折衝していきたいと思っております。
#16
○鈴木(善)委員 そういたしますと、この条約の締結とは別に、外交交渉によって別途その問題は処理する、こういうことに解釈してよろしいのですか。
#17
○高橋(通)政府委員 さようでございます。
#18
○鈴木(善)委員 先ほどの川口、浜田両参考人の御意見にもございましたが、三陸、北海道の漁民、特に銃砲を用いてイルカを猟獲しておりましたところの零細な漁業者の諸君は、オットセイが猟獲を禁止されない際におきましては、イルカ漁業とオットセイの猟獲を合せ行うことによって、ようやく漁業経営を維持して参った。従ってその当時から、これらの零細漁民の立場からいいますと、イルカ漁業とオットセイ漁業というものは全く切っても切れない関係にあったわけであります。それが吉田・ダレス書簡によりましてまた今回の条約によりまして、今後厳重にオットセイの海上猟獲が禁止をされる、こういうことになって参りますと、イルカ漁業者は転換をするかあるいは廃業するかしなければならぬような事態に立ち至るわけでありまして、先ほどの参考人の御意見によりましても、このような条約ができた以上、自分らはこれに協力せざるを得ないのであるから、漁業転換のためにあたたかい、十分な政府の対策、措置を要求いたしておられるのであります。
 そこで私はお伺いしたいのでありますが、条約の第十条の第一項、第二項についてであります。第一項につきましては、この条約を順守して参るために締約国はそれぞれ法令の整備をやるとか、そういうような主として取締りの強化というようなことをうたっております。この取締りの強化につきまして、条約の締結に伴って、政府は新たなる法令の制定なり、あるいは既存の法律の改正なりをなさる御意思がありますかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
#19
○奧原政府委員 当面いたしておりますオットセイの海上猟獲の禁止に関しましては、明治四十五年に制定いたしましたラッコ、オットセイに関します法律がまだ有効な法律として残っておるのでありまして、それに基きまして、昨年の十二月に農林省令をもちまして、従来許可制でありましたオットセイの猟獲を禁止するという措置をいたしたのでございます。しかし、これは当面の措置でございまして、ただいまお話に出ましたように、今後のイルカ漁業の対策等を含めました新しい排律を制定する必要があるのではないか、その中には現在の漁業法あるいは水産資源保護法ではまかない切れない事項が出て参るのではないか、こういう点を検討をいたしておるところでございます。
#20
○鈴木(善)委員 従来のオットセイ関係の国内法は、主として禁止に関するあるいは実質的に禁止するための許可を要するという内容の法律であり、またラッコ、オットセイ等の獣皮の所持、販売を禁止するというようなそういう側面からの禁止制限に関する法律でございまして、イルカ漁業者等の転換、あるいはオットセイ猟獲を漁業者の協力によって完全に条約を実行していくというような面からいたしますと、業者に対する転換なり、あるいは補償というようなもう少しあたたかい内容を盛った法令の整備ということが必要になってくるのではないか、こういう点につきましては、ただいま奥原水産庁次長から当局においてもそういう面を十分考慮した法令を検討中であるという御趣旨の御答弁がありましたが、私も同様の意見を持っておるものであります。
 次に私は、零細なこのイルカ漁業者等の生活の実態からいたしまして、取締りだけではとうてい条約順守を期することができない。またイルカ漁業とオットセイの関係からいっても、取締り一本ではこれを期することができないということで、特に条約第十条の第二項に適当なる措置を講ずるということをうたっておるのでありますが、この「適当な措置を執る」ということの内容はどういうことを意味するのであるか、この点を外務当局よりお伺いしたいと思います。
#21
○高橋(通)政府委員 この第十条二項は「目的を達成するために適当な措置を執ることに関し相互に協力することに同意する。」というのでありますから、この条約の当事国同士でいろいろな協力をすることを考えておるわけでございます。従いまして、たとえば各自の調査の結果を通報し合うとか、取締りの措置を通報し合う。またそういうような共同の取締りについて協力するというようなことを考えておるのではないかと思います。
#22
○鈴木(善)委員 私はこの十条の二項で、実はもっと関係漁業者の救済等、そういう面からの適当なる措置を並行してなさるべきである、こういう工合に解釈しておったのでありますが、今の外務当局の御答弁ではいささか失望いたしておるわけであります。と申しますことは、ワシントンにおける会議の進行の途上におきまして、アメリカ及びカナダの代表の諸君は、日本でかつて三国の共同調査をやった経験からいたしまして、日本のイルカ漁業者等の実態、漁業の実情というものをよく承知をいたしておりまして、この条約を完全に守らせていくためには、どうしてもこれらの関係漁業者を救済していかなければならない。こういう工合に一五%の皮の配分がなされるのであるから、この中からそういうような措置を十分講ずるのが適当であるというような意味の意見を開陳されております。このことを承知いたしておるわけでありますが、政府はこの条約の十条によりまして、ただ法令を整備強化するだけで、また取締りを強化するだけでこの条約が完全に実施できると考えているのか、この点を一つお伺いしたいと思います。
#23
○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。確かにただいま御指摘の点は非常に重要な点でございますし、われわれといたしましても大いに考慮しなければならない点であろうと考えております。しかし実はこの条約の第十条二項が直接に考えているところは、その点までは実は至っていないのではないか。ただこれは「適当な措置を執ることに関し相互に協力する」すなわち国と国との関係における協力の問題を直接の規定事項としているものではないかと思っております。御指摘の点は非常に重要な問題でございますが、それは各国が個別的にその国の国内の問題として取り上げていくことにまかせているものであるというふうに考えております。十条自体が直接目的としている点は、国と国との関係で問題になる点であるというふうに考えております。
#24
○鈴木(善)委員 私は水産庁当局にこの際お伺いしたいのでありますが、それはこのオットセイの条約を完全に守って参りますためには、取締りを強化することも一つの方法かとは思いますけれども、実際にはオットセイに往々にして被害を及ぼすであろうおそれのあるこの銃砲を用いてのイルカ漁業というものを、これを食える形で漁業転換をさせることが一番適切なる方法である、こういう工合に考えるわけでありますが、これに対しまして漁業転換の措置に対して水産庁当局はどういう工合にお考えになっておりますか、大体の基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
#25
○奧原政府委員 ただいま鈴大先生から御質問がありましたことは、前回松本先生からもお尋ねをいただいたのでございます。前回はまだ政府部内におきまする協議が十分結論に到達いたしておりませんでしたので、大体の考え方、だけをお話を申し上げたのでございますが、本日ちょうどよい御質問をいただき、御答弁申し上げる機会を得ましたので、さらに具体的に申し上げたい、かように考えます。
 ただいま御質問にございましたように、この条約の目的を完全に果しますためには、日本政府としては海上猟獲の禁止ということについての責任を負う次第でございまして、それは同時に猟銃をもって海上動物をとりまする唯一の日本の漁業形態でありますイルカ漁業を他の漁業に転換さして、オットセイを混獲する可能性をふさぎまするとともに、関係漁業者の終古を安定するということを、ぜひやらなければならない、かように考えておるのでございます。オットセイの回遊いたします期間かちょうど一月から六月、イルカの漁業もその期間東北海区において操業されるのでございますが、ちょうどこの期間において転換さしていきます漁業といたしましては、モウカザメのはえなわ漁業というのが適当な漁業である、かように考えております。イルカ漁業の漁船の中で三十トン以上の規模を持っておりますものは、そのままモウカザメのはえなわ漁業に従事することが可能であろうかと思うのでありますが、三十トン未満のもの――実は現在のイルカの突きん俸漁船の大部分は十トンから二十トンの間にあるのでありまして、こういう船に関しましてはこれを廃船いたしまして、そして三十トン以上のモウカザメのはえなわ漁業に従事し得る船を建造させるということをいたさなければならぬ、かように思うのであります。そこで三十トン未満のイルカの突きん俸漁船に関しましては、これは漁船としての性能も特殊な構造のために非常に劣りまして、またこれを残すことが今後オットセイの密猟の可能性というようなことにも相なっては申しわけないのでありまして、従ってこれらの船につきましては、その船の残存価格を政府が金を交付するということによりまして、これを沈船してつきいそとして利用する、こういうことにいたしたい、かように考えております。その価格といたしまして約一億五千万円の金を考慮いたしております。またモウカザメの漁業に耐えまする三十トンの船を作るのに当りまして、その船の建造に必要な経費に対しまして補助金を交付するという
 ことも必要であるのでございまして、その経費といたしまして二億五千万円交付するということに考慮いたしております。またモウカザメの経営をいたしますのには、はえなわに関しまする漁具、施設を必要とするのでありまして、これに対しまして約一億円を補助金として交付をするということにいたしたい、かように考えております。合計いたしまして約五億円、これに、半端な額が多少オーバーするかと考えておりますが、約五億円の金をこのために引き当てる考えであります。
#26
○鈴木(善)委員 ただいま奥原次長より、銃砲を使ってのイルカ漁業者を転換をさせる、その転換の対象は三陸、北海道等で行われておるところのモウカザメはえなわ漁業に転換をさせる、そのために転換漁具の補助金が一億、さらに廃船になりますところの不適当な現在の船の、廃船に対するところの措置として一億五千万円、さらに新しいモウカザメはえなわ漁業に適する船を建造するための補助金として二億、五千万、合計約五億程度を政府が措置を講じて、これが転換を推進するという明確な御答弁があったわけでありますが、このオットセイの条約の締結によりまして、先ほど申し上げましたように一五%の皮の配分が日本政府に対してなされる。その金額は約三十億であり、皮のなめしの費用その他を差し引きましても十五億円ないし十七億円程度の収入が日本政府にあるわけであります。その中からわずか、五億円程度の、三分の一に満たないところのこういう対策費を出されるわけでありますが、これによって関係漁業者は十分安定したところの漁業経営が、確保できるかどうかということについての水産庁当局の確信のほどを一つお伺いしておきたいと思います。
#27
○奧原政府委員 現在イルカ漁業という漁業形態は決して有利な漁業ではないのであります。ただオットセイが混獲されるということによってようやく体をなしておる、こういう状況にある次第でございます。モウカザメのはえなわ漁業は、この期間におきまする、あの地帯における漁業としては経営の安定のし得る漁業であります。現在イルカをやっておるよりは漁村の経済の作興に資し得るのじゃないか、かように考えております。
#28
○鈴木(善)委員 私は、水産庁の指導よろしきを得まして、この新たに転換いたします漁業で、関係漁業者が生活の安定を得て、そうしてこの暫定条約が効力を持つ間オットセイの密猟等がなされないことを、政府のただいまの御説明を信頼いたしまして、強く期待いたすものであります。
 そこでただこの際お伺いいたしたいのは、大蔵省もお見えになったようでありますからお伺いをしたいのでありますが、ただいま奥原次長から御説明になりましたこれらの転換の措置というものは、すでに三十二年度の予算も成立した今日でありまして、補正予算で組むか、あるいは三十三年度予算に計上するのか。この点は政府はどういう工合にお考えになっておりますか。その点をお伺いしたいと思います。と申しますことは、オットセイの日本近海への回遊は、先ほど御説明がありましたように一月から六月までの候であります。そこで少くとも条約を確実に守って参りますため、転換の目的を十分果しますためには、オットセイが日本近海へ四海いたしますつまり一月になる前、今年の十二月までに一せいにこのイルカ漁業者が、今政府がお考えになっておりますモウカザメはえなわ漁業に転換の態勢を整えなければいかぬ、こういうことになりまして、もし補正予算を組まないといたしますならば、三十三年度予算では間に合わない、こういうことになるわけであります。そこで閣議等で今御説明かありました措置の内容を明確に閣議決定なり、はっきりおきめ願って、それを裏づけとして農林中金その他の金融機関、あるいは漁船建造につきましては農林漁業金融公庫等から融資の措置を講じまして、そうして転換の態勢を早急に整える。そうして二十三年度の予算措置によってそれを補完する、こういうような措置がなされなければならぬと思うのであります。その辺の予算措置あるいは金融措置等につきまして、どういう工合にお考えになっておりますか。その点をお伺いしたいと思います。
    〔野田外務委員長退席、山本(利)外務委員長代理着席〕
#29
○奧原政府委員 予算といたしましては、三十三年度の予算に計上いたして参りたい、かように考えております。ただいまお話がありましたように一月からオットセイ及びイルカの猟期に入るのでございまして、その以前におきましては融資等の措置によりまして、できる限り一斉転換が達成するように努力いたしたい、かように考えておるのでございます。そういう措置をいたしますためにも、この対策を何らか政府の高いレベルにおきまして一つの既定事項に固めなけれ、はならないのでございまして、これに関しましては、近々に閣議において御審議を願い、閣議了解とでもいうような形に取りきめていただきたい、かように考えております。
#30
○鈴木(善)委員 予算措置が昭和三十三年度予算に講ぜられるということでありますれば、どうしても融資に待たなければなりません。そこで融資の際にはっきり裏、つけになりますように、明確なる閣議決定なり、あるいは閣議了解なり、その点を重ねて当局に私は強く御要望申し上げておく次第であります。
 それからもう一点お伺いしたいのは、そういうような補助金等の措置を講じて漁業転換を進められるせっかくの財政支出が税の対象になりましては、何のことやら意味をなさぬと思うのでありますが、この補助と申しますか、転換の交付金と申しますか、そういうものに対しての税の措置はどうなりますか、お伺いしたいと思います。
#31
○奧原政府委員 資本的支出に対しまする補助金というものは課税の対象にならないということは、従来の取扱いがそういうことに相なっておるのであります。問題は沈船交付金という形のもの、か税の関係でどういうことに取り扱われるかという点にあると思います。これに関しましては、われわれの方でもまだ十分な研究の結論は出ておらない次第でございますが、今まで底びき、あるいはビキニの問題等で、いろいろ国税庁と折衝をして参りました経過もございますので、十分御趣旨の点を貫けるように努力をいたして参りたい、かように考えております。
#32
○鈴木(善)委員 生産手段に対する補助金等に対しては課税されないという御説明がありました。ただ古い船の沈船に対する交付金と言いますか、その点は今後研児の対象になる、研究せにゃいかぬ、こういうような御答弁でありました。この点が従来ビキニの補償の際にも、最初は課税の対象にならないような政府の見解でありましたが、いろいろ税法上研究をいたして参りますと、それがぼけて参りまして、結局ある地方の局におきましては実際上課税をされた、こういうような事例もあるわけでありまして、この点は閣議でおきめになります際に、将来にそういう取扱い上あやまちのないように解釈がはっきりいたしますように、明確に税務当局ともお打ち合せをいたしまして、課税をされないという措置を講じていただきたい、こう思うのでありますが、これに対しまして大村主計官もお見えになっておるようでありますから、大蔵省の御研究がなされておりますれば、お伺いいたしたいと思います。
#33
○大村説明員 お答え申し上げます。税の点でございますが、実は目下主税局に研究してもらっておりますが、あるいは多少法律上の問題として特別立法を要する点もあるかもしれないという見解であります。なおさらに研究を進めて至急に結論を出してもらいたいと思っております。
#34
○鈴木(善)委員 もう一点大蔵省にお尋ねしておきたいのでありますが、先ほど私が申し上げましたように、三十三年度予算にこの措置が組まれる。その三十三年度予算の成立を見ない間に閣議の決定を裏づけにして融資の措置を講じて、この十二月までに一斉転換をするように能勢を整えなきゃいかぬ、こういうことで予算の成立よりも、実際の転換措置というものは少し先に進むわけなんですね。その際に、そういう先にすでになされている漁船の建造なり何なりに対してあとで補助金を出すという面について、予算上の取扱いとして疑義がないかどうか。あとでこういう点が問題になりますと大へんなことになるのですか、その点を明確に御説明願いたい。
#35
○大村説明員 ただいまの点に、つきましては、特に問題はない、かように利考えておりますが、せっかくの御質問でございますから、さらにもう一回研究してみますけれども、まず問題はない、かように考えております。
#36
○鈴木(善)委員 この点があいまいでありますと、せっかくの御措置をいた、だきましても、非常に関係漁業者も心配するわけでありますから、閣議決定までの間に、この課税の問題と今の予算上の、取扱いの問題について、一点の疑義のないように明確に政府の見解を御決定願っておきたいということを強く御要望申し上げる次第であります。
 私は最後に、今回のオットセイの保護条約の締結に当りまして、外務あるいは農林、大成当局がオットセイのこの条約を守らせるために、零細なるイルカ漁業者の転換対策につきまして、不十分でありますけれども、相当真剣に取っ組んでいただいて、ただいまのような措置を講ずることに大体政府の態度が内定されたということを承わりまして、関係漁業石も一応の、安堵をすると思うのでありますが、私はこの際六年後のこの条約の改訂に当りましては、日本が年来主張しておりますところの海上の猟獲は、オットセイ資源の現況から見ましても、またオットセイが日本近海の有用漁族に与えておりますところの相当大きな被害からいたしましても、従来の日本の海上猟獲をすべしという主張は、あくまで貫いていただきたい、今後調査もそういう点に重点を置いて進んでいただきたいということをお順いいたしまして、私の質疑を終る次第であります。
#37
○山本(利)委員長代理 田口長治郎君。
#38
○田口委員 今まで鈴木委員からいろいろな質問がありまして、この零細漁業者に対する政府の対策か非常にはっきりしたのでございますか、このモウカザメ漁業を経営いたしますためには、えさの問題が非常に重大である。御承知の通りイカかあるいはサンマ、こういうものを、ある時期に漁獲されたものを冷蔵しておきまして、そうしてこれを使用しなければならぬ、こういうような関係にあるのでございますが、政府といたしましては、このモウカザメはえなわ漁業を円滑に漁業者に運営させる意味におきまして、このえさの問題、ことにある時期にとれるえさを長い期間貯蔵しておかなければならぬ、この問題につきまして特に御配慮になった点がありますれば御答弁を、願いたいと思います。
#39
○奧原政府委員 モウカザメはえなわ漁業の運営上冷蔵庫の施設が必要であるということは、ただいま御質問のありました通りにわれわれも考えております。これに関しましては農林漁業金融公庫の融資等の面において、できる限りのあっせんを申し上げたいと思うのでありますが、また一方におきまして、モウカザメはえなわ漁業に転換する漁民の方々も政府の方から交付いたします金を消費的な支出に浪費することなく、モウカザメはえなわ漁業運営に必要ないろいろな施設に活用して使っていくということをぜひお願いしたい、かように考えております。
#40
○田口委員 ただいま水産庁次長からの答弁によりますと、えさの問題につきましてはどうしても冷蔵庫が必要である、この冷蔵庫設置について今回の各漁業者に対する政府の助成金をこの方にもできるだけ他を節約して共同して出資をし、そうして冷蔵庫を作る、こういうようなお考えでございますが、私らの考えといたしましても船を作ること、漁具を整備することと同様な冷蔵庫を設置するということがきわめて必要でありまして、この設備がなければせっかく始めましたモウカザメ漁業というものが円滑にいかないのでございますから、この点については一つ政府といたしましても、大部分の金は融資に待たなければならぬと思いますので、農林漁業金融公庫その他と強力なる折衝をしていただきまして、この設備がぜひ実現するように御努力を願いたいのでございます。
 第二の問題といたしまして、二十トン以下の漁船を廃船するというお話でございますが、この廃船された船は、今水産庁で持っておられるところの浅海増殖費の賞品内におきまして処理されるのであるかどうか、あるいは新たに何らかの予算でこれに対する処置をされるつもりであるかどうか。またこの廃船を引き受けて、そうして各漁業組合等が魚礁を設置する、その場合におきましては船のからだけもらってしまってもあとが相当やはり金がかかると思うのでございます。石を積んだり、あるいはえさをその中に入れたり、あるいは沖合いにその廃船を持っていって沈める、こういうような作業に対しましては相当金が要ると思うのでございますが、この経費というものは水産庁にあるいわゆる浅海増殖費というものでまかなわれるつもりであるか、別に予算を考えておるかどうか、その点をお伺いいたしたいと思うのであります。
#41
○奧原政府委員 ただいま二十トン以下の廃船というお話がございましたが、実はわれわれとしては三十トン以下を考慮しております。これをつきいそに利用する際に浅海増殖の既定予算の中で処理できるのか、こういう御質問でございましたが、実は浅海増殖の既定予算の項目の中では、これをつきいそに利用する場合に助成する費目はないのでございます。とにかく船がただでございますから、従ってその点において、一般の浅海増殖の三分の一助成というものに比べますれば、これを利用してつきいそをやるのに相当手厚い一種の助成がそこにいくのではないか、かように考えるのでございます。
 なお、これが引き受けの組合等に関しましては、まだそこまで具体的には進めておりませんが、この対策について県といろいろ打ち合せをいたしました際においても、これ相当利用する希望組合が出てくるのではないか、かような見通しを持っておるのでございます。
#42
○田口委員 ただいまの奥原次長の説明によりますと、廃船をもらうというそのことだけは非常に大きな特権で、喜んで各漁業組合がもらうだろう、こういうような御見解のようでございますけれども、これは現地の実情をよく御存じない御答弁ではないかと思うのでございます。廃船そのものは、これは従来の中型底びきの整備、その他につきましても、その際にやはり実際としては大した価値がなかったのでございまして、ほんとうに経費が要るのは、この廃船を沖合いまで持っていく、あるいは船、だけ沈めてもなんだから、石を積み、えさを積む、そういうふうなその他の資材費と労働資金と、こういうものが相当経費がかかるのでございまして、引き受けるところの漁業組合としては、当然にこの廃船以外の経費に対する幾分の国の助成、こういうことを期待しておると思うのであります。水産庁としても新たなる予算ということはむずかしいでしょうが、何とか今の増殖費の流用というか、解釈というか、そういう方面からも助成されることを工夫していただき、さらに県とも強く折衝されて、このつきいその経費というものを、からだけくれるから、あとの経費は全部各漁業組合、地元で負担しなさい、そういうような無理な処置がないような御配慮をぜひこの際お願いしておきたいと思うのであります。
 それからもう一点は、先ほどの冷蔵庫の問題でございますが、これら転換した漁業者というものは、どうしても地元の漁業組合が中心になって、そうしてあらゆる世話をしてやる、こういうことで円満なる転換ができるのではないか、こういうことを私は強く考えるのでございます。かかる点から申しまして、何か漁業組合との特別のつながりを必要とする、このつながりのためには漁業者が共同してどうしても使用しなければならぬいわゆるえさの冷蔵庫、この設備がそのつながりのために最も重大なることであると思うのでございます。私自身から言わせますと、今回のこの政府の助成というものは、その漁業組合と漁業者のつながり、このつながりをうまくさせる意味におきまして、そのような条件をつけてで各漁業者が応分の冷蔵庫取置費を負担をする。この負担によりまして、将来長く漁業協同組合と業者とか冷蔵庫を通じてつながる。そういうような機構ができることが、せっかく転業した者を落後者がなしにうまくいかせる唯一の方法ではないか、こういうふうに考える次第でございますから、冷蔵庫の設置につきましても、できるだけその方向に御指導になることを要望いたしまして、私の質問を終る次第でございます。
#43
○山本(利)委員長代理 松本七郎君
#44
○松本(七)委員 さっき鈴木さんの御質問の、予算の措置とそれから融資の関係でございますが、この場合の融資額、たとえばさっき言われた転業に要する金が大体五億円を予定されておる。それの予算措置が講じられないから、それまでの同融資でもってやろう、こういうわけですが、その場合に五億円の予算で予定されておる金額を限度にして融資されるのか、あるいは予定金額よりも実際に転業する場合にもっと金がかかるかもしれない、そういう場合には、それをこえてでも完全に転業できるだけの金を融資されるおつもりか、その点を一つ。
#45
○奧原政府委員 これは、転換をいたします際の金を借ります主体の信用力の問題ということが非常に関係いたすか、かように思うのであります。私たちとしましては、今回の転業資金の融資も、組合の転貸という形で融資するということが適切である、かように考えておるのでございます。従って、そういう意味におきまして、先ほど田口先生からも今後転換及びその後の漁業経営について、組合と転換漁業者との間のつながりを十分指導せよというお話しがあったのか、かように考えるのであります。これに対して融資の世話をいたします際には、今度閣議で御了解を願います金額に限界を置く考えはございません。金融機関とも十分相談をいたしまして、融資に当りましての融資額の限度につきましては、転換に必要な額をできる限りあっせんし、またそれに必要な信用条件等について協議をいたしたい、かように考えております。
#46
○松本(七)委員 信用力と言われる、その通りだと思うのです。そこで私どもは問題にするわけですか、要するに、これこれのものは必ず政府が完全に転業させる、転換させるためにはやるのだ、そういうはっきりした政策が打ち出されれば、信用力がずっと増すのですから、やはり政府の政策がどういうふうに決定されるかがこの際大事だと思うのです。私どももこの条約を審議するに当って、これを認めるかどうかという一つの分かれ目は今そこにあるのじゃないかと思う。そこでそういう政策を検討するそのときになって検討するのでなしに、今から完全な転換にはこれこれの金が必要なんだ、それは何としても政府が予算に組むなり、あるいは融資あっせんなり、保証するなりというようなところまで出さなければ、私は十分円滑に転換できないと思う。それで一つお伺いしたいのは、さっき三十トンの船を建造するための補助金として二億五千万ということだったのですが、鈴木さんもちょっと触れられておったが、アメリカ及びソ連からの毛皮の収入か国庫に二十億近くも入るのですから、その金額からいえば五億というものはまことに少い金額だと思う。まあそれは別としまして、建造費は一隻について大体どのくらいを見積ってこの一億五千万というものを計算されたか、その計算の基礎をちょっと伺いたい。
#47
○奧原政府委員 建造費に関しまする補助といたしましての二億五千万円の算出の基礎は、一トン当り六万円、かように考えております。
#48
○松本(七)委員 私専門家ではありませんからはっきりしたことはわかりませんか、おそらくこれじゃうんと足りないだろう。その場合に、この建造についても足りない分は場融資をされる御方針かどうか。
#49
○奧原政府委員 もちろん建造費の全体に対しまして足りない分を融資をする所存であります。
#50
○松本(七)委員 ちょっと参考人の方にお伺いしたいのですが、今の二億五千万円の補助金をもらって、十分な転換に必要な建造ができるお見込みでしょうか。
#51
○浜田参考人 今の建造費は大体トン当り三十万になっております。従って、政府当局で考えております新造の補助並びに廃船による交付金等を合せましても、平均して大体三割程度かと考えておりますので、残りの七割は融資を仰がなくてはならない状態にございます。
#52
○松本(七)委員 その場合に、組合として自力で融資できる能力はどの程度あるのでしょうか。
#53
○浜田参考人 今のところ組合で融資できる力はないのでございますが、今までの金融公庫のあり方としましては、六割くらいを融資しておるようなのでございますが、結局あと一割オーバーした七割を政府のごあっせんによりまして融資を受けたい、こういうふうに考えます。
#54
○松本(七)委員 政府側としては、今の組合側の御希望に応じて政策をすみやかに立てられる御意思がございますか。
#55
○奧原政府委員 一方において沈船に対する交付金が、沈船のトン当り大体六万円ちょっとこすと思っております。両方合せますと、率としましては、今三割というお話が出ましたが、もう少し高い率になるのじゃないか、かように考えております。どちらにいたしましても、これは国が一つの施策として転換をしてもらうのでございますので、従来沿岸の小型漁船の転換につきましては、われわれとしても今日まで公庫との間の連絡をとっておりますが、大体円滑に融資の措置が進行いたして参っておるのでありまして、本件の場合におきましても、しかく非常に困難な事態を起すとは実は考えておらないのでございます。
#56
○山本(利)委員長代理 赤路友藏君。
#57
○赤路委員 この際、国内問題については鈴木委員なり、あるいは今、松本さんからお話があったので、その点については触れませんが、外務当局と水産当局にお尋ねしてみたい。
 先ほど外務当局の方から、今度のこのオットセイ条約締結についての日本側の主張は承わったわけです。また事実、当初の予定よりも非常に難航いたしまして、長時日かかったことから見ましても、相当な日本側の主張をなされたこととは思うわけです。私どもこのオットセイの保存ということについては意義ありません。しかしこの条約締結の際、特に考慮に入れなければならないということは、先ほども御答弁の中にありましたように、このオットセイ繁殖による魚族資源への影響、これを考慮の外に置いてこういうような条約締結がなされていくということが今後も行われたのでは、私は大へんだと思うのです。特にこれからの日本漁業というものは国際的な関係が非常に多面に広がってくる、こういうふうに考える。なぜ私がそういうことを申すかといいますと、御承知と思いますか、一昨年の十一月、カナダでアメリカとカナダの漁業者が大会を持った。それにオブザーバーとしてソ連の代表も出、日本の代表も出た。その席上で言われましたことは、日本は北洋においてサケ、マスを乱獲しておる、従って日本の北洋におけるサケ、マス漁業は二千万尾で押えるべきであるという線が打ち出されておる。それに呼応いたしましたか、ソ連の方は昨年の場合二千五百万尼であるという線を打ち出しておる。今度のこの問題になりました日ソの漁業条約にも、御承知の通り十二万トンという数字で押えられておる。こういう実情なのです。一面、これは小学校の生徒の算術のようになりますが、今度オットセイ条約でオットセイの現在の頭数を大体百五万頭と押えたと聞いておる。これが百五十万頭であるか、あるいは二百万頭であるか、もっと正確に調査しなければわからぬと思いますが、私どもは過去の資料から言ってすでに繁殖はピークに来ておる、こういうふうに考えておる。おそらく百五十万頭というふうな数字ではなかろうと思う。かりに百五十万頭といたします場合、これらのものはちょうど一月から六月までが猟期でありますが、サケが北洋へ遡上する時期とこれがかち合っておるわけです。そこで亘五十万頭のものがかりに一頭が一日に一匹ずつサケなりマスなりを食ったとするとどういう計算になるか。三月から六月まで、三ヵ月間、九十日それをやったとすると一億三十五百万尾になる。トン数にすると二十五万トンから六万トンになる。日本の乱獲どころの騒ぎじゃないのです。今度の日ソの間で決定した北洋における十二万トンからいうと、倍以上のものがこのオットセイによってやられるという計算が成り立つわけですが、この話し合いをするときにこういうことを一体考えられたのかどうか、水産庁の方からは水産部長も行っておられるが、一体オットセイはどの程度サケを食っておると思うか。課長も来ておられるが、調査しておられますか。
#58
○奧原政府委員 ただいま御指摘のありましたオットセイの食害の問題は、日本側といたしましてもきわめて重大なる関心を持っておるのでございます。この条約にオットセイの食害に関しますいろいろな言及が前文以下各条に頭を出しておるのであります。ただ現段階においては、かつて昭和二十七年に、東北の沖合い及び北海道東南部におきまして、三千頭のオットセイを海上でとりまして、その胃袋の内容を調査したところデータ以外には、日本側としましては十分なる資料を実際まだ持っておらないのでございます。これは今度の海上調査が調査項目の中のきわめて重要なる一内容をなしておるのでありまして、これに関しましてさらに科学的な究明をずっと継続をいたして参りたい、かように考えておる次第であります。
#59
○赤路委員 今の答弁を簡潔に言うならば、そういう資料を持っていない、今まで調査をしておりませんでしたということなのです。率直に申し上げまして、これが一審欠陥なのです。水産日本であるとか、海国日本であるとか、口の先だけではそんなことを言っておる。ところがこういう海の調査というのはほとんどできていない。それを言うと予算がないという。大村君が来ておるが、これがすぐ予算がないという。それで一つも調査ができていない。オットセイにしても今が始まったものじゃない。しかも北洋におけるサケ、マスというものは、日本の漁業の中で一番大きなウエートを占めている。日本の水産の三割五分をあげる重要なものであるのに、何を今までやっておったか。それができていない。そうして事が起ってからあわを食ってばたばたしている。これが今までのやり方なのです。これば私は水産庁だけを責めるのではありません。幸い大蔵省の方から大村主計官もお見えになっておりますが、橋を作るとか、道路を作るとか、口に見えたことなら何ぼでも金を出すか、調査研究ということには一つも主力が注がれていない。私はそこにやはり行政の大きな欠陥があると思う。大村主計官が何か言いたそうな顔をしているが、しかしこれは事実なのです。私はただいやみを言うのではありません。外務省の方でも考えていただきたいことは、今後ますます日本の漁業というものは国際的な関連というものが広がって参ります。従って国際的な条約というものが今後ますます多方面にわたって出てくると思う。だから、一つのものを保存する、これを守っていくということも必要ではあるが、それと同時に、それの及ぼす関連性と申しますか、影響というものを十分考えて一つ慎重におやり願いたい。私は今度のオットセイ保存の条約にけちをつけるわけではありません。努力をされておることは十分わかる。わかるわけではあるが、なお今後もあることでありますから、将来のことを考えまして、一言皆さん方にお考えおき願いたいという要望をいたしまして、これで終ります。
#60
○山本(利)委員長代理 ほかに質疑はございませんか。――もし質疑がなければこれにて連合審査会を散会いたします。
    午後零時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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