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1956/02/21 第26回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第026回国会 科学技術振興対策特別委員会 第5号
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1956/02/21 第26回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第026回国会 科学技術振興対策特別委員会 第5号

#1
第026回国会 科学技術振興対策特別委員会 第5号
昭和三十二年二月二十一日(木曜日)
   午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 菅野和太郎君
   理事 赤澤 正道君 理事 有田 喜一君
   理事 齋藤 憲三君 理事 中曽根康弘君
   理事 前田 正男君 理事 岡  良一君
   理事 志村 茂治君
      小笠 公韶君    小坂善太郎君
      須磨彌吉郎君    古川 丈吉君
      保科善四郎君    南  好雄君
      山口 好一君    岡本 隆一君
      田中 武夫君    滝井 義高君
      山下 榮二君    石野 久男君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       秋田 大助君
        総理府事務官
        (科学技術庁
        長官官房長)  原田  久君
        文部事務官
        (大学学術局
        長)      緒方 信一君
 委員外の出席者
        科学技術庁次長 篠原  登君
        総理府技官
       (科学技術庁原子
        力局次長)   法貴 四郎君
        文部事務官
        (大学学術局学
        術課長)    岡野  澄君
        厚生技官
        (公衆衛生局環
        境衛生部長)  楠本 正康君
        参  考  人
        (宇治原子炉設
        置反対期成同盟
        幹事)     川上 美貞君
        参  考  人
        (大阪府議会議
        長)      大橋 治房君
        参  考  人
        (京都大学工学
        部教授)    児玉信次郎君
        参  考  人
        (大阪大学理学
        部教授)    伏見 康治君
        参考人
        (大阪市立大学
        医学部助教授) 西脇  安君
    ―――――――――――――
二月二十一日
 委員木崎茂男君及び佐々木良作君辞任につき、
 その補欠として古川丈吉君及び山下榮二君が議
 長の指名で委員に選任された。
同日
 委員古川丈吉君及び山下榮二君辞任につき、そ
 の補欠として木崎茂男君及び佐々木良作君が議
 長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 科学技術振興対策に関する件(宇治市に予定さ
 れる研究用原子炉設置に関する問題)
    ―――――――――――――
#2
○菅野委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めたいと思いますが、本日は、宇治市に予定される研究用原子炉設置に関する問題につきまして、参考人より意見を聴取いたします。
 本日出席の参考人は、大阪府議会議長大橋治房君、宇治原子炉設置反対期成同盟幹事川上美貞君、大阪市立大学医学部助教授西脇安君、京都大学工学部教授児玉信次郎君、大阪大学理学部教授伏見康治君、以上五名であります。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中にもかかわらず、本委員会の調査のため御出席を賜わり、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げる次第であります。科学技術の振興を目的とする本委員会といたしましては、関西における研究用の原子炉の設置場所につきましても重大なる関心を持ち、本日ここに参考人各位の御意見を承わる機会を持ちましたような次第であります。参考人各位におかれましては、地元住民を代表する立場から、あるいは日ごろの御研究の立場より、忌憚のない御意見をお述べ願い、もって本委員会の調査に御協力を願えれば幸甚に存ずる次第であります。
 それでは、順次御意見の開陳を願いますが、御意見は一人二十分程度に願いまして、他は委員諸君の御質疑によりお答えを願いたいと思います。
 それでは、川上美貞君より御陳述を願います。
#3
○川上参考人 私はただいま御紹介をいただきました宇治に住んでおる川上美貞であります。私は現在宇治市の東宇治町木幡に住んでおりまして、お茶の製造、栽培をやり、またお茶の商いをもやっておる者でございます。今度宇治に設置せられるところの原子炉から最短距離五百メートルくらいの所に住んでおりまして、そしてお茶の工場を持ち、またお茶の販売にも従事しておるわけであります。つきましては、今日ここへお呼びにあずかりまして、地元の意見を開陳することのできたことを、まことに光栄と思っております。
 原子力というものは、われわれにはほとんど未知の世界でございまして、われわれは何ら意見は持っていないのでございます。しかしながら、原子力というものは今日世界の科学のホープであって、何にも知らぬわれわれといえども、これをおろそかに考えてはならぬということは十分存じております。それにつきまして、十一月の中ごろにどらやら宇治に原子炉が来るらしいということを聞いたので、これは一応黙って見ているわけにはいかぬと思い、十一月の中ごろに同郷の林屋真一郎君と――林屋真一郎君は、石川県から出ている参議院議員に林屋亀次郎さんという方がおいでになりますが、その人のおいになる人で、われわれと同じく茶を作り、茶を販売しておるものでございます。この二人が寄って、池本市長を訪ねて、申し入れをしたのでございます。何がゆえに申し入れしたかといいますと、原子炉というものはどうでも必要なものではあるが、このわれわれの知らない世界のものが来る以上は、こういうことについて少し知識を得ないことにはいかぬ。それについて池本市長に、どうかこの原子炉を宇治に持ってくる際には、あなたが簡単によろしいということを言わないで、いろいろの学者の意見を十分聞いて、われわれ地元の者にも十分聞かしてもらって、そうして宇治に持ってくることをオーケーするなりあるいは拒絶するなり、どっちかに踏み切ってもらいたい、そうしないと、あとで後悔するようなことがあってはならぬから、この点とっくりとあなたはお考え願いたいと言うて、最初に申し入れたのでございます。その後、だんだん新聞なんかの報道を見ますと、どらやら宇治にくるようなけしきが非常に多くなってきた。しかしながらわれわれは、宇治の市長さんにも、また市会議員の方々にも、学者の意見を聞く機会というものはほとんど与えられなかったのでございます。それについて、私ははなはだ不審に思っておったところ、一月に入って、原子炉がいよいよ宇治に設置されるらしいが、あなた方はどう考えるのだといって、私に新聞社方面からもお尋ねをいただいたわけであります。これは、われわれの考えていたことを早急に何とかしないことには、はなはだ窮地に陥るだろうと思っておりましたが、幸いわれわれ京都府茶業協会の会長をしております小山英二君の紹介をもちまして、あなた、一ぺん会うたらどうやというので、私は阪大の槌田教授に私の自宅へ来ていただいたのでございます。そのときに、土地の農業会の人とか、あるいは茶業者とか、またお医者さんとか、その他土地のいろいろな関係方面の方二十人くらいに来ていただいて、午前九時半から午後二時ころまで、槌田教授からいろいろなお説を伺ったのでございます。それについて槌田教授のおっしゃるのには、十分な施設をすれば、これはそう危険であるものではないというお説もあるが、またわれわれが考えなくちゃならぬことは、あるいは天災、あるいは水害、あるいは雷というよなこともあるから、そういう意味においては、十分の施設をしても絶対安全ということは言い得ない、そういうように承わったのであります。
 それから一日置いて一月二十五日に、宇治市の私の方の地区の東宇治町小学校において、初めて京大の先生あるいは阪大の先生がお見えになって、宇治市の主催のもとに説明会が開かれたのでございます。そのときに、京大の先生のお話を一々承わりましたが、われわれの聞いた範囲では、どの先生方も、一応設備のいかんによっては心配はないというお説であったのであります。しかしながら、そのときに、槌田教授は、そのときの説明の一員に置かれてなかったのでございます。そうしたところが、地元の聴衆の中から、槌田教授の発言を許せという声があちらにもこちらにも上ったので、最後に槌田教授が発言をせられて、一昨日私が聞いたのと同じような意見を繰り返し述べられたのでございます。そのときには三百人あるいは五百人くらいの聴衆があったと思いますが、いなかの会合としては、ほとんど類例のないほどたくさんの聴衆が熱心に日の暮れるまでみな聞いて帰ったのでございますが、やはり安全であるというお説よりは、不安であるというお説の方に耳を傾ける人が多かったように私は存じております。
 われわれは何がゆえに不安全であると感じるか、これはほかでもございません。それは十分の施設をすれば安全であるには違いない。しかしながら、一方には不安全であるというお説もある。そうして不安全であった場合には、確かに危ない。しかも、大阪、神戸のような大都市を下流に控えておる水源地である。その意味において、なかなかこれはゆゆしい問題である。しかも、安全であり不安全であるということは対々であるとしても、何がゆえに私は不安に思うかといえば、ほかでもない、当初先生方は何とおっしゃるかというと、地震、水害ということに重きを置かれるが、私は地震や水害よりは、なおかつ人の落度というものがあるだろうと思う。ことに科学というものは、一つを研究し、失敗してはまた進んで、そうして研究を完成する。この段階において、おそらく失敗ということがたびたび繰り返されるものであろうと思うのであります。未知の世界を研究するにおいて、初めからたんたんとして成功いちずにいくというようなことは、ほとんど想像することもできないと存じます。その意味において、水害だとか、あるいは地震だとか、先生方の言われること以外に、大きな問題が残されておるのじゃないか。何がゆえに私はそういうことを言うかというと、あの建物は、以前は火薬製造所であったのであります。私が過去四十五年向うに住んでおる間に、火薬製造所の大爆発が二回、小爆発が二回ありましたが、この四回ともいずれも人の手落ちであったのでございます。最初は、明治の末期か大正の初期と思いますが、火薬庫から火薬を本工場へ運ぶ最中に、トロッコがひっくり返って、大爆発を演じたのであります。そのときに、近所にある学校なんかは、ガラスが全部破壊いたしました。幸いトロッコを置いていた人がやぶの中へいち早く逃げ込んだがために、またそこがやぶであったがために、被害が比較的薄かった。次に起ったのは昭和十二年の八月十六日午後十一時ごろでありましたが、私はこの記憶はなまなまといまだに忘れることができません。ちょうど支那戦争が起ったときで、私は係であったがために、夜業をやっておったわけです。関西ではあの時分にはお盆であって、しかも十六日といえば、精進明けのために、皆一ぱい聞し召して仕事場に入った。その早々一つの工場が大爆発を演じて、そのときに従業していた者が七人か八人壁の下になったりなんかして、即死いたしました。周囲の家は倒壊したものもたくさんございますし、またわれわれの方は一キロ半も隔てていたが、屋根のかわらはほとんどめちゃくちゃにされました。そういうようなわけで、非常に悲惨なものをありありと見せつけられたのでございます。しかしながら、戦時中であったので、それは大した補償もいただけずに終ったわけであります。しかし、戦時中のことは仕方ないとしても、その後、昭和二十六年に解体工事をするときにも一回ございました。それがまた最近、二月十三日にもありました、これはまだなまなまとしたものです。それは、この間解体工事をしておるときに、火薬を入れていた桶のたがをアセチレン・ガスで切っている間に火薬に引火して、どのくらいの欠けちょこがあったか知らぬが、大爆発――大爆発ではなかったのです。これはほんのわずかであったけれども、地方の者が非常に驚いた。それはガラス窓が割れた程度であったから、非常に仕合せであったと思います。私は、五年ぐらい前にあの火薬製造所が復活するという問題が起ったときに、大反対したのであります。何がゆえに反対したか、これは国家存亡の場合ならいざ知らず、もう日本も軍備がなくなって、火薬なんかは緊急な必要でないときに、あの市中になった伏見や宇治に隣接しているところに火薬製造所を引っぱってくる必要はないと思うたから、宇治市の市内全体で七千名ほどの署名をとって反対をやったんであります。これは火薬製造所の場合でありますが、これは四回とも人の落度でございます。だから、科学者におかれても、十分の設備とまた細心の注意をせられても、ここに落度がないということは、私は言い得ないと思う。それがために私はやはり心配になって困る、たまらないのでございます。
 そういうわけで、今度置かれるところは宇治川の上流であって、下流には六百万といい、あるいは八百万という大都市を控えている。水というものは、赤ん坊から年寄りに至るまで一日も半日も欠くべからざるものである、その意味において事が重大である、そういう工合に感じるのでございます。われわれも地元で井戸を使い、また水道を使っているから、非常に関心は深いのであります。その以上に、私は地元においてお茶の栽培をやりお茶の製造をもやっておりますから、このお茶に汚染をするようなことがありとしたら、おそらく宇治茶の需要は半減するんじゃないかと私は想像するのであります。この間も、私どもは東京にも三十軒余り問屋さんのお得意を持っておりますが、私の方の店の者が東京へ来て、あんた方宇治に原子炉ができて、そしてこれが運営せられるようになったら、宇治の茶を買われるかと尋ねたところが、二十五人まで、そういうところの茶は買わなくても、茶というものには不自由がないから買わないということを言われるにおいては、われわれはこれは安閑としていられないということがはっきりと認識できるのであります。これは私の方の店が言うばかりでなく、この間もある人が、実は僕もこの間秋田県に行ったら、そういう話を聞いた。してみると、原子炉がいつできるかわからぬのに、もうお前のところの茶は買わないというようなことを言われるにおいては、われわれの立場は、これは食うか食われるかのような立場に追い込まれるのでございます。食うのでなく食われるのでありますから。そういう意味において、大阪では六百万ないし八百万の人口があるという。宇治茶は現在問屋業者が約百五十軒、扱うお茶が百二十万貫、金高にして十五億円の商売をやっておるわけであります。ですから、日本の人口一人当りのお茶の消費は一ポンド半と言われますから、百八十匁であります。そうすると、百二十万貫の茶は六百万の人が一カ年飲むところの茶でございます。してみると、これは社会的のゆゆしい重大問題であろうと思うのであります。大阪が六百万ないし八百万という人口の飲料水に関係があるということなら、宇治の茶は六百万の人間が一カ年飲む茶の量で、大阪の人口にも劣らざる膨大なる関係があるということを思うたら、われわれ茶を作り茶を栽培する者は、安閑としてこの問題を考えるわけにはいかないのでございます。しかしながら、この原子炉なるものも宇治に置かなかったら絶対置く場所がないというならば別として、宇治でなくともほかでもできる原子炉でないかということは、われわれしろうとの常識においても考えられることであろうと存ずるのでございます。おそらくこれは宇治ということをきめて、まず第一候補地ときめて既成事実ができ上っているから宇治にこだわられるけれども、私はそういうことではいかぬのじゃないかと存ずるのでございます。その意味において、われわれも先日からいろいろとお話を聞いてみますと、最近クリスマス島で英国が水爆の実験をやるというと、日本の国会を初めあらゆる人が反対しております。これは、東京でも大阪でも九州でも、全部この原子爆弾の被害の受け身になるから国会が反対せられるのであろうと思う。われわれは宇治といい、伏見といい、大阪、兵庫といい、受身になるものは真剣に反対するのである。これは食うのでなくて食われるから反対するのである。京都が同じ近くでいても、京都は水道は関係がない。水道は琵琶湖から疎水を取って引っぱっているから関係がないというので、案外京都の人は近くでありながらのんびりしている。同じ京都市でも、伏見は宇治川から水道をとっておるからのんびりしていられぬ。この間も伏見の月桂冠を作る酒造会社の重役に会うて私が尋ねたら、最近伏見においては、四十軒の酒造組合が反対の決議をして、要所々々へ陳情したということを承わったのでございます。これは当然のことと思います。ですから、受け身になる人は、思うことが全部痛切に感じる。受け身にならない人は、案外向いの火事のごとくのんびりしている。私はこの点は人情としてぜひはないとしても、これは少くとも私は当然の話とはいえはなはだ遺憾に存ずるのでございます。その意味において、私どもも、茶業者の意見を聞くのでも、先日も京都府茶業協会の会長をしている小山英治君が――この茶業協会には二十二人の理事がございます。茶業協会といえば、京都府の生産と販売の両面にわたった行政機関の団体でございます。そのアンケートをとってみましたら、ここにそのはがきも持っておりますが、二十二人のうちで十九人の理事の回答でございますが、反対が十三人、賛成が二人、条件つきの賛成が二人、中立が一人、多数決決定が一人で、大多数が反対ということになっております。これはまだほとんど説明を聞かない人が多いだろうと思いますが、何にしてもこういったような数字の回答が現われているところから見ると、茶業者は事のほか関心を持っているものと存ずるのでございます。ここにはがきがございますから、この実際問題を見ていただいたらわかると存じます。そうして、まだあまり長い話じゃないのですが、われわれ地元が先日も公民館へ寄りまして、宇治の原子炉反対期成同盟というのを作ったのでございます。それで、何がゆえにそういうことをしたかと申しますと、宇治の池本市長も市会の方もきわめて事が重大だと見ておりながら、市会なんかも何ら働いておりません。私は先日大阪の市会の事務局をたずねて、大阪の市会の御意見を聞いてみますと、非常に強い意味において反対の気分を持っておるということをおっしゃられました。このことはもっともであった、その背後には六百万の市民がおるということから見まして、私は、万一の場合のことを思っても、強い反対を示されるということは当然のことであろうと存じたのであります。私は、先日宇治の市会議長にさるところで会うて、お話を聞いたら、なに宇治みたいな小さいところの市会がそんなにやいやい言わぬでも、大阪がやってくれるじゃないか、あなた方の希望通りになるよ、そういう実に心もとないことを言われるにおいては、われわれははなはだ寒心にたえないものでございます。その意味において、私どもはこのわれわれの地区に、小さい地区でございますが、宇治の原子力反対期成同盟というものを作ったのでございます。この期成同盟を作った趣意は、こういう意味において、期成同盟を作って強く推進していこうじゃないかというのです。
 最初に、原子の三原則には、原子は公開であり、民主的であるということを承わっておるが、初めこの宇治にきめるということは、ほとんど天下り式にきめられたようで、それまで何ら公開の席でわれわれは聞かされたんでなかったのであります。かような重大なる炉の設置を、既成事実を先に作ってしまって、そうして押しつけるようなことをするということは、民主主義に反するのもはなはだしいものではないかと私は信ずるのであります。一昨日であったか、私がこちらへ立つ前の日に、京大の経済学部の部長さんと思いますが、出口教授が私をたずねてみえた。そうして、何か御用ですかと言えば、この原子炉についてお話があるのだというので、しばらくお話を承わったのでありますが、大体宇治に今だいぶ反対運動が盛んであるということを聞くが、どういう実情であるのか、私も地元に住んでいるのだから、一応あなたの意見を聞かせいというようなことで、この出口さんは重大なるこの問題に御関係ではなかろうが、部長会議なんかでそういうお話があるがために、ある程度の意見を持たねばならぬというお考えからだろうと思いますが、今時分になって宇治の反対の意見を聞いたり、あるいはまた宇治の実情を調査しようというようなことは、こういう重大問題の設置をきめるに当って事前にそういう調査をしないというようなことに至っては、あまりにもそこつでなかったかと私は言うほかはないのであります。そのほかにもまだ京大の先生がおられますが、この間も路頭で会うてちょっとそのことについてお話を聞いたら、私一個人としては反対だが、大学に勤めている以上は、そいつは表立って反対することもできないからということをおっしゃる、実に学者の良心にもそういうことがあるのか、私は学者という職についておられる方はみな人格のりっぱな方で、全くわれわれが敬意を表せられる方のように今日まで存じておったのであります。今もそう思うておりますが、この問題一つに至っては、私は学者の良心も疑うのであります。何がゆえに疑うかというたら、大阪、神戸を控えた、六百万の人口を控えた水源地である宇治にこれを置く、あるいは六百万人の人間が年中飲むお茶を扱う宇治にこういうものを置かれるということは、場所がいい、御自分たちの便利のために、人が心配であろうが、迷惑をこうむろうが、不安であろうがかまわぬとそこへ置くことを強調するということにおいては、これが果して良心でありましょうかどうか、私はこれを疑うのでございます。そういう意味においても、われわれは反対同盟を結成して推進せざるを得ないのであります。そこへ持っていってわれわれはいろいろ―先日も岡本先生が選挙区の立場でもあるので、わざわざわれわれの地区へ来ていただいて、熱心に、十分の説明をすれば、これは大丈夫であるから安心して可なりというお説やけども、私は露骨に、先生から幾ら聞かされても、僕には安心することができないのだ、できないから僕は先生には済まぬ、われわれのために好意的に忠告に来ていただいたのやろうけれども、私は済まぬ、私は幾ら親が勧めても、自分がいやなおなごと添えと言われても、自分はいやなおなごと添うことはできない、何としてもいやなものはどうすることもできないのであります。この意味において、岡本先生にも済まぬと思うたけれども、そう言うてお断わりしたわけであります。そうして、過去において火薬廠でのもう苦い経験は、この身をもって四回も体験したのです。その上に、先日も十三日のこの火薬廠の爆発は大爆発ではなかったけれども、そのときに女なんかは逃げ惑うて、こんな火薬でさえがこれなのに、このあと原子炉が来たらどうなりますというて、女子供は走り回っていたような状態を私はこの目で見たのであります。そういう意味から思うたら、われわれはあの火薬の爆発ぐらいでは大して驚きません。なぜなら、もう中にはそう大爆発をするような物はないのだから、ガラスが割れるぐらいに思っていたのです。その意味においては大して驚かなんだのですが、女や子供は、そういったような場面も見せつけられたわけであります。それで、ここは、火薬製造所の跡は、まだ土の中にも火薬のかけらもおそらくずいぶんあるそうです。私は、十三日の爆発は、――あれは財務局の管理であるそうでありますが、火薬の製造をした跡始末もしないで再々爆発する物をほったらかしておいて、そうして一円でも安く上げるような工事請負者に解体作業を行わせるというような無責任なことをやっておるようなことでは、財務局のやり方にも私は重大な責任がありはせぬか。おそらく火薬の爆発ぐらいをこわがっておるようなことでは、今日生活ができぬ、そう言われるかもしれませんけれども、不必要な人心を惑乱するようなことがあっていいものでしょうか、どうでしょうか。
#4
○菅野委員長 川上参考人に申し上げます。御陳述は一人二十分ほどと申し上げております。結論をお急ぎ下さい。
#5
○川上参考人 その意味において、私は宇治原子炉反対期成同盟の結成をしたわけでございます。それで、先日もわれわれはここに署名をとりましたら、木幡の住民は二千二、三百でございますが、およそ、小さい者以外に千五百の署名がわずか三日かそこらの間にここにちゃんとまとまったのでございますから、いかに地元の者は火薬にこり、また今度原子炉に驚かされるかということを心配しておることは、これをもってもわかると思います。そうして私は商人でありますから、かつて旅行をするときに、人から送ってもろうたようなことはございませんが、昨日木幡の駅を出るときには、いなかの駅には、珍しく七、八十人の人が、女もまた男も見送ってくれて、わしがカバンを持ってやろうというようなことで、私は出発して、全く感激したのでございます。その意味において原子炉が宇治にできるということになれば、この大阪六百万の人心の不安、またわれわれ宇治の茶業に携わる者、お茶を扱う人の非常な不安というものを思うと、政治に携わるこの委員会の先生方にも深甚の御考慮を願って、私は善処をしていただきたいと存ずるものでございます。
 はなはだ激越なことを申し上げて、失礼なことも数々あったであろうと思いますが、私の陳述はこのくらいの程度におきます。ありがとうございました。
#6
○菅野委員長 次に、大阪府会議長大橋治房君にお願いいたします。
#7
○大橋参考人 ただいま御紹介を受けました大阪府会議長の大橋でございます。今回、宇治に研究用の原子炉を設置いたしますことにつきましての可否について、本科学技術振興対策特別委員会が関係者の意見を親しく御聴取して下さる機会を本日ここにお作り下さいましたことを、衷心より感謝申し上げる次第でございます。
 私は、大阪府並びに府議会、大阪市並びに市議会その他淀川の水を飲料とする者、あるいはそれを灌漑その他の用水に使用しておりまする大阪府下市町村並びに議会を本日は代表しまして、今回、宇治市に研究用原子炉を設置されることに対しまして、まず結論から反対の意思を表明したいということを申し述べたいのでございます。
 御承知の通りに、去る一月九日に、第三回原子炉設置準備委員会で、研究用の原子炉設置の第一候補地を宇治に決定せられましたので、私どもは非常に驚きまして、去る一月十四日に大阪府知事、議長名をもちまして、また下って一月の二十八日には大阪府議会全員協議会、さらに二月一日、大阪市並びに関係市町村をもちまして結成しておりまする原子炉宇治設置反対協議会の名をもちまして反対の決議をいたしました。それぞれ関係者へ陳情いたしたのでございます。以下、この線に沿いまして、反対の理由を少し申し述べたいと存ずるのであります。
 まず最初に申し上げたいことは、私どもは、原子炉設置そのものには決して反対するものではなく、むしろこれが促進に協力を惜しむものではございません。ただ、宇治市に設置することだけに強く反対するものであることをまず御了承願いたいと思うのでございます。わが大阪府会におきましては、原子力の平和利用に強い関心を持ち、昨年の十二月、定例府会にて原子力の平和利用促進のため協議会を設置するための準備委員会を決定いたしまして、今日まで活発な活動を続け、近く民間の権威者をも網羅いたしまして、原子力平和利用の一大協議会が設置される段階になっておるありさまでございまして、むしろ原子炉を設置いたしまして、積極的にこれが利用を研究しなければならぬと努力しておるありさまでございます。ただ、宇治に設置することについて、次の理由によりまして絶対に了承することができないのであります。まず第一に、宇治は阪神六百万住民の給水源であるということでございます。第二は、今日まで学者の御意見が一致しておらないこと、この二点に要約されるのでございます。
 まず第一の反対理由といたしまして、宇治が研究用原子炉設置場所といたしまして適当かいなかということは、原子炉自身の安全性ということとは全く別個の問題であるということでございます。世間でいろいろと論議されておりますように、安全この上なしと折紙つきの原子炉でも、こんな場所には置くべきではないという立地条件があるのでございます。現に、日本原子力研究所の敷地が東海村にきまったときでも、土地選定委員会は、地表や上空の風向きと風速、空気中の塵埃、廃水の支障の少いこと、周囲の民家や工場との関係、農地や森林などの関係が重視された結果、東海村に決定されたと聞いております。この場合、廃水の支障の少いことということをいわれておりますが、宇治では、その下流に六百万以上の阪神都市を控えまして、しかもこれらの人々の唯一の飲料水源であってみれば、廃水に支障が少いとは絶対に言い得ないのでありまして、むしろ廃水の支障が多いのでございます。かりにこの選定委員会が今回の研究用用原子炉設置場所の選考にお当りになったならば、おそらく宇治市は不適当とされたでございましょう。大阪大学のここにおられます伏見先生は、こういうことを言っておられるのでございますが、原子炉の設置場所の条件としていろいろあるが、水源地でないということが本質的に条件として考慮されるべきだと言われております。さらに米国の原子力委員会の原子炉安全保護諮問委員会の三博士が、ジュネーヴの原子力平和利用国際会議で発表いたしました原子炉の安全性についてという論文の中に、原子炉の敷地外にいる一般住民に与える危険を最小にする方法は、原子炉を人里離れた遠い場所に置くことである、原子炉に伴う危険は、事実上、道徳的、倫理的な問題を起すものである、従って、原子炉の敷地は主要な流域地方に置かない方がよい、被害という観点からだけ考えるならば、原子炉の敷地は、人口の密集した地域や重要産業地域から遠く離れた方がよいのはもちろんであると言明されておるのでございます。
 第二の反対理由といたしまして、科学者の御意見が一致していないという点でございます。前述いたしましたように、道徳的問題を伴います原子炉設置の立地条件といたしましては、その敷地を人口密集地帯より遠く離すことをその第一要件といたしまするが、このたび準備委員会が宇治第一候補地決定の過程におきまして、大阪大学側、京都大学側が、その決定されるに当りまして、必ずしも意見が一致していたとは思えないのでございます。すなわち、私どもが両大学の委員並びに関係先生方からその意見を拝聴いたしましたところによりますと、京都大学の諸先生は、阪神の住民が心配しておるような淀川の汚染は全然ない、被害防止を完全にするための予算を獲得する確信がある、また、外国には大学の構内にさえ設置されているくらいで、今日の衛生学上から見ても安全であると、宇治設置を強調せられておりますが、大阪大学側の諾先生の御意見を総合いたしますると、必ずしも同調しておられるとは思われないのでございます。すなわち、第一候補地を宇治に決定するに当り、大阪大学側は次のように述べられておるのでございます。上水道の水源地ということを除けば、確かに宇治の方が舞鶴よりすべての点でまさっておる。しかし、水源問題は他の条件とは比較できぬほど重要であり、汚染防止ができるかどうかの研究は慎重でありたい、しかし結局宇治になったが、これはあくまでも第一候補地であり、今の淀川をこれ以上に汚染させないという条件が満されなければ、宇治を放棄すると言われました。さらに大阪大学の川上さんがおっしゃいました槌田、梶原両先生のごときは、学者の良心から、宇治設置に絶対反対を主張しておられるのでございます。その理由といたしまして宇治で予定されている実験の内容から考えると、放射能物質の処理が完全に行われないのであろう、すなわち、宇治ではおもに炉の操作で生まれる中間子を炉の中から取り出し、これをいろいろの物質にあてて、その結果を調べる実験が行われるので、その実験中、研究生が、この実験かすなり廃水なりをひょっと誤まって下水に流しでもすれば、それこそ大べんで、放射能で汚染された水が宇治川に流れ込んだらおしまいである。ことに、この廃水は一日相当の分量になるから、コンクリートや鉄板で原子炉を二重、三重に包んでみても、この廃水の処理が完全に行われなければ安心できない。まして実験とは、今、川上さんがおっしゃいましたが、命をかけたあやまちをやることであり、実験中にフラスコやビーカーを手からすべらして割るようなことはしばしばあって、はなはだ不安である。一月十九日の国際新聞によれば、設置賛成の人たちは、廃水が宇治川に流れても、淀川の水が現在含んでおる天然放射能より一%程度ふえるだけで、人体に影響はないと言っておられるが、大阪大学の梶原先生は、実際に放射能の人体許容量はこれからの研究で明らかになるもので、まだまだ不確かな数字で、どこまでが安全だという学問的裏づけはない。また同紙上で槌田先生も、廃水を川に流せば、どんな方法にしろ、群衆に向って鉄砲をめくらうちにするのと同じで、人口が多ければ多いほど危険が多いと言っておられるのでございます。さらに、同紙上での槌田先生の言葉を借りますれば、宇治が淀川震源地帯の真上にありながら、地盤を高めるなど洪水に対する処置は考えられてはおるが、地震については何一つ考えられていないと語っておられるのでございます。このように学者の間でも宇治に設置した場合にも、その設置に対し絶対安全ということについて意見が対立しておって、私ども阪神六百万住民の不安が去らないのでございます。少くとも学者の意見が絶対安心であると一致いたしても、万が一という天変地異、今まで体験したことのない災害が来たらどうなるかと思うと、市民感情といたしましては、絶対に宇治に設置されることに賛成はできないのでございます。われわれが最も憂慮いたしまする汚染防止施設の実現性の見通しについても、かかる対立的見解を見るということは、われわれとして、これらの学者たちのいずれの意見を信じてよいか迷うとともに、数々の不安と疑問を抱くわけでございます。
 以上私は宇治に設置することに反対する二点につきまして、その理由を申し述べたのでございますが、最後に研究用原子炉設置委員会が宇治を第一候補地とされたことにつきまして、少しく私の考えを申し述べて、皆様の御批判を仰ぎたいと存ずるのでございます。準備委員会が宇治を第一候補地とする理由は、第一にあげられていますのは、研究用設備としての利用率が大きい。第二は給水の便が大である。第三に管理が行き届く。第四に転用し得る施設が多数ある。この四項目をあげられておるのであります。まず説明の都合上、第四の転用施設が多いことにつきまして考えてみますと、これは宇治が国有地であり、その遊休施設を利用することが非常に安上りでいけるという、いろいろなことであろうと思いますが、第二の候補地の舞鶴も、御承知の通り国有地でありまして、また遊休施設もあることでございます。決して宇治のみに限られた利点ではないと思うのでございます。さらにまた第二の給水の点でございますが、これを宇治と舞鶴とを比較してみますと、多量の水があるという点におきましても、宇治と舞鶴は大差がないと思うのでございます。すなわち、舞鶴は、太平洋に面する東海村と同様に、日本海を控えまして、給排水の不便の地とは思えないのでございます。このように考えて参りますと、四つのうちの二つの問題は同じでございます。次の問題は、第一の研究設備としての利用率の高いこと、第三の管理の便の問題に集約されてくるのでございましてこれを簡単にわれわれしろうとが考えてみますと、こういうむずかしい言葉でおっしゃっておりますが、結局は研究に便利であるということになるかと思うのでございます。ここに、他の候補地と比べまして宇治を特に選ばれた理由は、研究するための便利ということのみがわれわれの頭に浮び上ってくるのでございます。このことは、京都大学のここにおられます児玉教授がそのお話の中で、京大の舞鶴にある水産科、高槻の研究所がともに不便であり、研究用、教育用施設である原子炉を遠くに置きたくないということを非常に強調されております。宇治に決定された最大の理由が、真にここにあったことを如実に物語っているのではないかと思うのでございます。
 それで、顧みまして、私ども阪神六百万住民の給水源でございます宇治に原子炉が設けられることは、公衆衛生上または遺伝学上からきわめて重大にして切実な問題でありますが、これをただいま申し上げました研究の便という理由で宇治を選ばれたということであるならば、これは研究の便のためには人間の命なんかはどうでもよろしいと考えておられるのではないかと思うのでございます。もうここまでくれば、科学的、技術的の問題の領域ではなくして、人道上の問題であると私は考えるのでございます。阪大の梶原教授は、あくまで実験の段階において何が起るか、専門家でもわからないはずであり、
  〔委員長退席、齋藤委員長代理着席〕
学問研究といっても、結局住民に支えられてできるものであると言われておりますが、まことに至言と言わなければならないと思います。実に科学者の研究の目的は、社会や人類の幸福をこいねがうものであるがゆえに、それが研究の便宜のために公衆に危険や不安を与えてはならないのではないかと私は思います。ここに至って賛成者側も反対者側も、この人道的立場を十分にお認めにならなければならないのではないかと思うのであります。
 以上で私の反対陳述は終りますが、私ども六百万住民のこの反対しなければならぬ事情をとくとおくみ取り下さいまして、他の適当な場所に変更されますようお願いいたす次第でございます。
#8
○齋藤委員長代理 次に、京都大学工学部教授児玉信次郎君の御意見をお願いいたします。
#9
○児玉参考人 ちょっと図面を説明させていただきたいと思いますので、そちらで説明させていただきたいと思います。
 ただいま御紹介にあずかりました京都大学の児玉でございます。われわれに説明の機会を与えられましたことを、深く感謝いたします。
 私は、本日、私たちの計画いたしております宇治の原子炉がどういうものであるか、また今までたびたびお話がございますように、水道の水源ということを考えましてどれだけ安全施設に考慮を払って、危険が考えられないことを確信しているものであるかということを、御説明申し上げたいと存ずる次第でございます。
 ただいまお話がございましたように、宇治の地は便利な土地でございまして、ここへ原子炉を置きたいと存ずるのでございます。しかし、これは単に便利であるから置きたいと存じておるのではございません。私たちも人命は非常に大切でございまして、学問研究に名をかりまして、たとい一人の人命はもちろん、健康を害するようなことをしてはならないと確信しておるのでございます。宇治に原子炉を置きます場合につきまして、この点非常に苦慮いたしまして、いろいろ考えてみたのでございますが、そういう危険は毛頭ない、大阪府市民に御迷惑をかけないことはもちろん、その周囲に対しても危険を及ぼすようなおそれはないということを確信いたしまして、こういうことを十分に関係諸氏に御納得を得るように御説明申し上げ、御納得を得た上で、宇治を使わしていただきたいと存じておる次第でございます。
 ただ研究の便利という点について一言申し上げさしていただきたいのでございますが、今度置かれます原子炉は、御承知の通り、全国の大学が共同で利用する建前になってございます。実際問題としては、東海村にできます原子炉の研究所はおそらく関東方面の大学が御利用になり、また宇治にもし設置されるといたしますと、この原子炉は関西方面のものが使うことになると存ずるのでございます。ただいままでの計画では、原子炉並びにそれに付属する実験室を設置するのでございまして、原子炉研究所を設置するのではございません。従いまして、このたびの計画に伴いますたとえば人員というようなものは、ただ原子炉を管理する人員が置かれるにすぎないのでございます。しからば、研究者としてはどういう人が研究するかと申しますと、たとえば大阪大学なり京都大学なりに在籍いたしまして、そこで研究しておられる人が、原子炉を使って研究をする必要が生じたときに出張してきてお使いになる、またそういう大学の学生の教育のためにこの原子炉を見せる必要がございましたときに、そういう学生を連れてきて見せる、こういう性質のものでございまして、われわれはどうしても近いところへ置いて研究能率を上げる必要があるように考えておるのでございます。宇治の土地の選定に当りまして、昨年の九月ごろから京都大学並びに大阪大学でいろいろ研究いたしまして、両大学で三十五カ所の土地を選びまして先ほど申されましたような十一カ条の条件を考えまして、その条件に照らし合せまして土地をいろいろ研究して参ったのでございます。その結果は、去年湯川教授を委員長といたしております準備委員会にも諮りまして、ただいまお話の一月九日の決定になった次第なのでございます。そういうわけでございますので、経過はそれほどにいたしておきまして、どういうものを宇治に置くかということを申し上げさせていただきたいと存ずるのでございます。
 宇治に置きます原子炉は、研究用の原子炉といたしましては小規模のものでございます。従いまして、動力用の原子炉であるとか、動力用の実験炉であるとかいうものと性質が異なりまして、外国では、ただいまもお話がございましたように、大学の構内に置かれたり、または都心の近くに置かれたりしているものなのでございます。型はスイミング・プールというのでございまして、つまり水泳プールでございますが、研究用として最も適当であり、かつ安全度もきわめて高いものであるというふうにいわれているものでございます。図のこの部分がいわゆる原子炉の本体と申すべき炉心といわれているものでございましてウラニウム二三五を二〇%に濃縮したものをアルミニウムの合金にいたしまして、アルミニウム板で包んで何枚も重ねたものがアルミニウムの筒の中に入っております。それが、設計によって違いますが、数十本この中につけてある。全体の大きさが、大体六十センチ角、高さ九十センチと申しますから、小さなものでございます。それが厚さ約二メートルのコンクリートで作った水槽の中に入っておりまして、この水が約二百トンくらいといわれておるのでございます。ただいまいろいろ爆発のお話がございましたが、宇治に火薬の製造所がございまして、たびたび爆発をいたしておりますので、付近の方が爆発ということについて御心配になるのはまことにもっともと存ずるのでございますが、私はその方の専門ではございませんが、すべての物理学者も、どんな誤まった操作をいたしましても、この原子炉が原子爆弾と同じように爆発するということはないということについては、意見が一致しておるのでございます。そして、たかだか起ります事故はどういうものであるかと申しますと、温度が上り過ぎて、水がふき出すという事故でございます。これの対策につきましては、あとで申し上げたいと思うのでございます。
 そこで、今問題になっております空気、土地並びに宇治川を汚染する問題でございますが、この汚染ということは、放射能を帯びた物質が原子炉から出て、ある場所に到達するということによってこそ、初めて汚染が起るのでございます。この原子炉の放射能それ自身は、二メートルの壁で吸収されまして、放射能それ自身が外へ出ることはございません。また上の方も高さ八メートルの水がございますから、水を通して放射能が出るということはございません。ここに手すりがございまして、人々が原子炉を見学いたしますときは、ここからのぞいて見学するという性質のものでございます。こういうわけでございまして、ここに水の層がございますので、この原子炉内の空気が放射能を帯びるということはまずございません。ごくわずかな放射能性のガスが少しできることはございますが、これはもう言うに足らない微量なものであるといわれております。そういうわけで、空気がこの原子炉によって汚染されるということはございません。それからまたウラニウムがここにございまして、このウラニウムはもちろん、原子炉の中の水も原子炉外に出るということはないのであります。しかし原子炉には冷却水が必要であるということがよくいわれているのですが、ここで一千キロの熱が出るわけでございますから、ほうっておけばこの水がわいて参ります。これを防ぐためにこれを冷却いたします。それで、どういうふうにしているかと申しますと、原子炉の水はしょっちゅう熱交換器を通しましてポンプで循還さしている。それで冷却水として宇治川の水を取りまして、熱交換器でこの原子炉の水を間接に冷すのでございます。この水は宇治川の水でございますが、原子炉内の水をパイプの外側から間接に冷しているだけでございますから、従って、冷却用水と原子炉の水とがまざるということはない。そういうわけで、原子炉の水が外に出るということはございません。従いまして、原子炉から放射性を持った物質が外に出るということはまず考えられない。そこで問題はどういうことかと申しますと、付属の実験室がございますが、この実験室では放射性物質を取り扱います。従いまして、これからの廃水に放射性物質を含んだ水が出て参ります。いわゆるホット・ラボラトリーといわれているのでございますが、ホット・ラボラトリーなるものは、別に原子炉に付属しておらねばならぬという性質のものではありませんので、どこへでも設置して――現に日本の中で、アメリカから多量の放射性同位元素が輸入されておりますが、こういうものは方々の大学ですでに研究に使われておりまして、それと同じような研究をこの実験室でやる。こういうわけでございまして、特別に危険な仕事をやるわけではないのであります。しかし、放射性物質を取り扱うものですから、こういう実験室は特別に注意せねばならない。これはこの実験室に限らず、一般のホット・ラボラトリーはみなそうでございまして、特別の注意をしなければならない。宇治ではどういうふうに考えているかと申しますと、この放射性を持った水を集めて蒸発しまして、水を蒸溜水にいたします。お手元のプリントにこれと同じものを差し上げてあると思いますが、いわゆるホット・ラボラトリーから出ます水が、放射性の弱い水と強い水がございます。弱い水は、これを蒸発して蒸溜水にいたします。その蒸溜水に、たとえばしぶきなんか一緒についてきまして、多少の放射能を持っている場合がありますので、これはイオン交換樹脂を通して放射能を取り、これを宇治川に流すなり、また繰り返して使うなりいたします。この水の放射能は、現在宇治川に流れております水の放射能よりもまだ低くして流す計画になっておるのでございます。それから、中程度の放射性の廃水も出ますが、それも濃縮いたしまして、これは出てきました水の中にまだ多少の放射能を持っておりますので、それを再蒸溜いたしまして、そうしてイオン交換樹脂を通して外へ出す。そうするとあとに非常に濃縮しましたどろどろになったような放射能を含んだようなものがたまりますが、こういうものはステンレスの容器に入れまして、そうして何年か保存しておくわけでございます。そうすると放射能がだんだん少くなって参りまして、それを適当な処置をする。イギリスあたりでは、これを大洋のまん中へ持っていって捨てるというようなことがいわれております。いずれ日本でもこういうものをどういうふうに処理するかということが、おそらく法律で国家的にきまった規定がされる時期がくるのだろうと思うのでございますが、そういう時期まで、宇治の地面に、ステンレスの箱に入れて保存しますから、外へ流れ出る心配は絶対にありません。そのほかに通常廃水というのが出ますが、これはたとえば食事をいたしましたあとで弁当を洗った水というような水でございます。
  〔齋藤委員長代理退席、委員長着席〕
そうして、また放射性物質を取り扱わない実験をやる水も出て参ります。そういう通常水は、普通ならそのまま流してしまってもいいのでごいますが、これも十分にためまして、そうして監視装置で放射能があるかないかよく調べた上で流す。間違って放射性物質がこの中へ入ることはあり得るのでございますが、そういう場合がもしあれば、ここで監視しておりますからすぐわかりますので、これを蒸発乾固の方へ持っていく、こういうことでございます。この実験室で非常に危ない仕事をする、また不時の災害が起るのではないかということも、これはごもっともな御心配でございますが、現在日本で方々に放射化学の実験室がすでにございまして、その設備は、たとえばビーカーが割れるというような事故を予想いたしまして、そういうようなことが起りましてもその放射能が外へ出ないというような工夫をしておるのでございます。たとえば、どういうふうにしておるかと申しますと、床に塩化ビニールの板を敷きまして、そうして、たとえばビーカーがこわれるといたしますと、その水だけをふき取る。そうすると塩化ビニールのシートの上によごれたものがつきますが、それはシートを取りかえて、そのシートは適当な処理をするというように、いろいろの工夫をされております。従ってそういう実験上の不時の事故が起っても、これが淀川を汚すというようなことはないと考えている次第でございます。それから、またこういうホット・ラボラトリーで取り扱います放射能を持った物質それ自身がそう多くはないのでございまして、その全部が、たとえばこういう処理をいたすことなしに全部淀川へ出ましたといたしましても、それは健康を害する程度の濃度に淀川の水をよごすことはございません。実際はそのようなことは決して起らないのでございますが、もし起ったと仮定しましても、今申し上げましたような次第でありますから、その点は御心配に及ばないものと存ずるのでございます。外国では、たとえばハーウェルというところに、この中にはごらんになった方もおいでのことと存じますが、大きな研究所がございますが、そこでは、水を処理いたしまして、そうしてある程度の国際的にきまりました放射能の許容度というものがございます。――それ以下の放射能を含んだ水なら、飲んでもいいという許容度がございます。――それを参考にいたしまして、ある程度まで廃水中の放射性物質の濃度を下げる操作をいたしまして、テームズ川の上流へ放流しているのでございます。われわれの計画といたしましては、それよりもなお厳重な蒸発乾固ということをいたしまして、建前といたしましては、宇治川へ放射性を持った物質を一滴も流さないことにいたしている次第でございます。そういうわけで、平時の運転におきまして、放射性物質が外へ出ないということは、確実に申し上げることができると思うのでございます。
 そういたしますと、いろいろの事故の問題になって参るわけでございます。すなわち今、御心配がございましたように、洪水のときにどうなるか、地震のときにどうなるかという問題が起って参ります。そこで、われわれは、まず原子炉の部屋をどういうふうに作ったかと申しますと、原子炉の部屋を三ミリの鉄板で包んでございます。三ミリの鉄板で包むという理由は、ただいま申し上げたように、そういう事故はめったに起らぬのでございますが、原子炉にはいろいろな自動的な制御装置もついておりますし、また人間もついておりますし、もし先ほど申し上げました水がふき出す事故が起る場合には、まず水の温度もだんだん上ってくるわけですから、わかりますので、そういう事故が起ってくると、すぐそれを防ぐ物質をほうり込むという方法もできますので、二重三重の安全度がございますので、そういう事故も起らないのでございますが、もし最悪の事態において、水が蒸気になって吹き出すということが起ったときの用意に、原子炉の建屋を鉄板でおおいまして、そうしてふき出した水が外に出ないようにする、それからまた、そのときの空気に多少放射能を持った物質が出て参ります。クセノンのようなものが出て参りますが、それもこの部屋を密閉に作っておきまして、もしそういう事故が起ったといたしましても、十日ほど置いておけばその放射能はなくなる、そういうふうな措置をとればよろしい。それでこの事故が起ったとしましても、原子炉の部屋から空気を汚染するようなものや放射性の水が外に出ることはございません。それからまた、ホット・ラボラトリーは放射性を持った物質がちりになって飛ぶことがございます。つまり、ちりによって空気が汚染されることがあるのでございます。この空気は、これはどこでもそうやっておるのでございますが、特別の濾過装置を通して外に出すということで、よごれた空気が外に出て、外の空気をよごすということがない装置をとっております。それから、洪水に対しましては、あそこに天ケ瀬ダムの建設ということが――建設の進行というまでいっておりませんが――少くとも緒についておりますので、もし宇治川の上流に天ケ瀬ダムができますと、洪水の危険が非常に少くなって参ります。しかし、さしあたっての問題といたしまして、原子炉並びにホット・ラボラトリーの建物を置く土地を盛り土をいたしまして、その高さを、計画堤防高というのがあるそうでございますが、その高さよりも一メートル高くしておく。すなわちこういう洪水というものはまず起らぬというその高さよりも敷地をなお一メートル高くしておくというような措置をとりたいと思います。そうして、地震に対してでございますが、あそこの地盤を三カ所ボーリングいたしまして調査いたしました。そうしますと、約十四メートル下に小石の入った引き締った砂の地層がございます。この地層の地耐力と申しますか、この上にものを置いてもいい重さというのが、約一平方メートル当り五〇トン以上であるということが明らかになっております。それで、原子炉は大体一平方メートル当り二〇トンの重さしかございませんので、この地盤に持たせば数倍の安全度があるわけでございます。そこで、この地盤までくいを打ちます。そうして、この原子炉のような重いものを持たせる基礎は、特にケーソンを使いまして、そうして、十四メートル下の固い層にこの重さを持たす、そういたしまして、その上にまだこの建屋の設計を〇・一二五g、――これは私もその専門のことをよく知らぬのでございますが、普通の耐震構造では〇・二gという設計をするのだそうでございますが、それを〇・三五g、約二倍の耐震度を持った設計をいたします。京都大学の佐々教授は地震の専門家でおられますが、〇・三五g以上の地震というものは、どこかでそういう地震が起りましても、ここの土地がそういう地震に耐えるだけの強さがないので、それでここまで地震の波が伝わってくるまでに〇・三五gよりも振動の強さが小さくなる、つまり言葉をかえて申しますと、ここの地盤では、〇・三五g以上の地震が起るということは、絶対にあり得ないのだということを佐々教授が言うておられます。そういう安全なところまで耐震構造にしたい、こういうふうに存ずる次第でございます。また、先ほど申しましたように、そういうことで実験をやりますときに、放射能を含んだ水がこぼれたりすることがあるわけでございますが、この水は内防水した層でまずとまります。それで、ここでこの水がとまりまして、外に出ることは絶対ないのでございますが、なお用心のために、この下にからの地下室を設けまして、そうしてもし床面にひびが入ったりして、水が漏ってくれば、ここにたまるようにしておきます。そしてこの土地の地下水の水位がマイナス三メートルくらいで、この辺が水位なものでございますから、地下水の圧力がありますので、地下水はむしろこの地下室へ入ってくるわけであります。そういうわけで地下室の水をしょっちゅう放射能があるかどうか調べて、もしあれば、この辺に亀裂があるとかなんとかで故障があるわけで、すぐ修理をする。またたとい放射性を持った水が地下室へ漏れてきてたまったとしましても、こっちの地下水の水位の方が高いのでございますから、地下室から外へ出ることはない。かえって地下水が地下室の方へ入ってくるということで、放射能を含んだ物質が地下水にまざるということはないという考え方をいたしておるのであります。こういうように、地震に対しましてもいろいろ対策をいたしまして、まず私たちの考えといたしましては、いかなる不測の事故が起りましても、大体において淀川を汚染することがないというふうに考えておる次第でございます。
 こういうわけでございまして、初めにも申し上げました通り、遠隔の地へ置きますと、多額の国費をかけて作りました原子炉をほんとうに使うことができなくなるおそれがございます。そういうわけで、私たちはできるだけ近い所へ原子炉を置きたい。いろいろ三十五カ所の土地を調べたのでございますが、なかなかいい土地がございません。宇治が一番いい土地であるということは、ただいまもお話がございましたように、学者がみな認めておるところでございます。ただ、問題は、何と申しましても水道の水源地であるという大きな問題がございまして、これに対しては万全の施策をとらねばならない。それと同時に、監視機構も厳重にしなければならない、こういうふうに考えておるのであります。ただいまも申しましたように、たとえばハーウェルのような例よりもさらに厳重な措置をいたしておるのでございまして、こういうことを御了解の上、一つ宇治へ置くように御尽力を願いたいと存ずる次第であります。
 そしてまた、もう一つ申し上げたいことは、この原子炉はわれわれの世代の学者なり研究者が使うだけでございません。こういう原子炉ができますと、今後何十年にわたってわれわれの後進がこれを使いまして、日本の学問と工業の進歩のために、この原子炉が利用されることと思うのでございます。私はわれわれの後進者に対しても、その研究能率を上げさすために、できるだけ安全な装置を施してそして地元関係諸氏の御理解を得るように努力をした上で、日本の学問のために、そういう長い将来のことも考えて、最も研究能率のよい土地に原子炉を置くことといたしたい、こういうふうに存じておる次第であります。よろしくお願いいたします。
#10
○菅野委員長 次に、大阪大学教授の伏見康治君。
#11
○伏見参考人 ただいま御紹介にあずかりました大阪大学の伏見でございます。
 御承知のように、京都大学の総長の諮問機関といたしまして、関西におきまする研究用原子炉設置準備委員会というのがございまして、私ただいまお話がございました児玉先生と一緒に、その準備委員会の委員を勤めさしていただいております。私がこの委員会に参加しておりますのは、日本学術会議の中にございます原子力特別委員会の委員長という資格で入っておりますので、大阪大学とかいうような立場でお話申し上げるのは少し工合が悪いのでございますが、今日大阪大学の方が見えておりませんので、私いろいろな立場でものを申し上げなければならない非常にデリケートな立場に置かれておりますので、発言がときどきあいまいもことなるかもしれないと思うのでございますが……。
 ただいま児玉先生から御説明がございましたように、今日の原子炉というものは、原子炉自体の持っております安全性というものが非常に高くなって参りまして、歴史的に申しますといわゆる暴走ということが起りましたのは、カナダのNRXという原子炉が暴走を起しまして、いささか不安を世界中に起させたわけでございますが、そういう原子炉は、あとで考えてみますと、元来内部的に不安定性を持っているような設計法であったということがわかりまして、その後の原子炉につきましては、そういう意味の不安定性のないような、きわめて安全性の高いものになってきているということは事実でございます。少くとも何十台という原子炉が現在世界中で運転されておりまして、それがほとんど事故らしい事故をかつて起しておりませんということは、実績から申しましても大へんりっぱなことであったと思うのであります。しかし、原子炉がそういうふうに安全に運転されましたということは、これはアメリカとかイギリスとかカナダとかフランスとかいうような、それぞれ原子力に関する先進国の科学技術者が細心の注意をもってこの原子炉のいろいろな事故を防ぐという立場をきわめて厳重にとられてきたというところにあるのだろうと私は思うのであります。それで、日本におきましても、この原子力開発がだんだん進行するに従いまして、その原子力の持っております潜在的な危険性というものが大きなものであるということは、否定し得ないことでございますので、そういう潜在的なものが表に現われてくるような危険にならないように、あらゆる意味で細心の注意を持って処理していかなければならない問題であろうと思います。
 で、この私たちの科学技術というものは、ある段階でこういうことが言えるということがございましても、その研究が進みますと、その次の段階では実はこういう条件を保ったときにのみそういうことになったのであって、その条件が守られなければ、またどうなるかわからないといったようなことがしばしば起りがちでございます。その例といたしまして、こういうところでお話するのはあまり適切でないかもしれませんが、水泳プール型原子炉に見ましたような、そういう一連の原子炉の安全性について行われております実験のお話を、ちょっと簡単に申し上げてみたいと思うのであります。
 これは児玉先生が御説明下さるのかと思っておったのですが、この紙に書いてございますボラックス実験というものがございます。アメリカで、原子炉をわざわざ爆発させまして、一体その結果がどうなるかということをしきりにためしておるわけであります。これはむしろ原子炉というものが安全であるということを納得さすために行われている実験でございまして、わざわざ爆発させましても、それが原子爆弾的なものにならないということは、これはもう先ほど児玉先生も言われましたように、どなたも納得しておられることでございます。これは、万一急激に熱出力が増大いたしまして暴走した場合に、一体どのくらいの被害があるか、その被害の程度を研究するための実験であろうと思います。そして、ある意味においては、むしろ今までの原子炉というものがあまりに安全性ということを過重視いたしまして、むやみに安全装置をつけましたために、非常に高いものについている、それを今後平和利用していくためには、少しでも安いものにしなければならないという観点をもし持つといたしますと、いろいろな意味で今まで尽しておりました手段の手を抜きまして、そして安い原子炉を仕立てて、しかもそれが事故を起しても実は問題が起らないというふうにしたいという、そういう意味の基礎研究であろうと私は考えております。そのボラックス実験も、いろいろな意味でこの原子炉の安全性と申しますか、もし暴走した場合の限度がどのくらいであるか、従ってたといそういうことが起っても、なおかつ皆さんに迷惑をかけないためには、どの程度の措置を講じておけばいいか、たとえば先ほど児玉先生がお話になりましたように、原子炉をそっくり建物の中に入れまして、その建物を全部三ミリの厚さの鉄板でおおってしまうというようなことでそういう暴走を防ぐことができるというふうな措置が、その次に考えられていくわけでございます。一応そういうような意味合いからたくさんの実験が行われまして、水泳プール型原子炉系統の原子炉というものは、一般に安全性のあるものであるというふうに考えられておるわけであります。
 ところが、また最近になりますと、SPERTという実験炉がございまして、これは原子力の出力が急激に増加した場合に一体どうなるかということを精細に研究する実験炉でございますが、そういう原子炉で原子炉のコントロールを全然はずしてしまいまして、やはり暴走を無理にさせましたときに一体どういうことになるかという実験がございます。その実験をやっております間に、今まで考えていなかったような新しい不安定性がその原子炉の中に出てくるということが見出されました。それは原子炉の出力が急激に増大いたしますと、水が熱くなりまして、そのために逆に原子炉の出力が減ってきて、自分で抑制するわけです、そういう意味の安定性があるわけでありますが、その安定性が、原子炉の出力が時間的に増大して参りまして、それがあるところで抑制されてもとへ戻ってくる、それが野放しをそのまま続けておりますと、また出力が増大してくるというようなことを周期的に繰り返すことになるわけでありますが、そういうことを何度かやっておりますうちに、だんだん振幅が大きくなって参りまして、ついにその原子炉から相当の勢いで水がふき出す程度の激しい出力異常が起ってくる、そういった実験が最近になって出て参りまして、AECが各方面に、そういう型の原子炉が野放しで安全であると考えてはならないという警告を出しているようなことがございます。そういうことがいつも起るというわけではございませんでして、あるきわめて珍しい条件のもとにそういうことが起っているわけなのであろうと思います。ただ、そういう珍しい条件がどういうときに起っているのかということが、現在の段階ではまだ的確につかまえられているわけではございません。従って、私たちの作ります原子炉がたまたまそういう奇妙な条件のもとに置かれてあるような原子炉を設計して作ってしまったものといたしますと、野放しでこの原子炉は暴走しないのだ、暴走しても大したことはないのだというふうに言い切れない面が多少は残っているわけであります。そういう面がほかにもままなきにしもあらずであります。
 原子炉そのものから離れまして、先ほど児玉先生のお話にもありましたように、原子炉にくっついておりますホット・ラボのようなものを考えてみますと、たとえば、そそうをいたしまして、強放射能の物質を含んでおりますビーカーとか試験管とかいうものを破壊いたしましたときに、それがすぐ始末できるようにいろいろな装置をあらかじめ備えておくということはもちろんでありますが、しかし、あらゆる場合のことをことごとくあらかじめ考えに入れるということはなかなか困難であろうと思うのであります。たとえば、昔は強放射能を取り扱いますのに、コンクリートの大へん厚い壁の向う側にいろいろな放射性物質を置きまして、マジック・ハンドを使いまして、いわゆる遠隔操縦で、いろいろな化学実験をやるというような場合に、その向う側とこちら側との間を目で見えますように間に窓を作っておく、その窓はガンマー線をよく吸収いたしますように、臭素化合物を溶かしました液体の窓を作っておきまして、それを通して中をのぞきながら仕事をするというのが一つのうまい工夫であるというふうに教えられて参りました。それでよかろうと考えておったわけなのでありますが、近ごろの考え方といたしましては、そういう液体の窓を使うことは危険であるということがだんだん言われるようになって参りました。つまり、そそうをいたしまして、その液体を入れておりますガラス窓にうっかりマジック・ハンドの金属をぶつけたりいたしますと、それが破壊されて液体が一時にあふれまして、その窓が用をなさなくなるということは十分あり得ることであります。従って、おそらく今後のホット・ラボにおきましては、そういう透視の窓は臭素化合物の溶液を使うというような方法がだんだんすたれて参りまして、おそらく鉛ガラスといったようなものを使うという、むしろ昔風な考え方の方がはやってくるだろうと思うのでありますが、そういうふうにいろいろな予防措置を講じておきましても、その予防措置が万全であるということを私たちは必ずしも申し上げることはできないわけであります。一つの科学的常識で、このくらい手段を講じておけば相当安全になっているはずだということはもちろん申し上げられるわけでありますけれども、絶対に安全だといったような言葉はもちろん使えません。どの程度に安全であるかということも、実は必ずしもはっきり言い切れるものではないということが一つ残された問題であると思うのであります。
 私は、初めのうちは、先ほど準備委員会の委員として、はなはだ発言がデリケートだということを申し上げましたのは、準備委員といたしまして、とにかく第一候補として宇治を選定いたしました委員会の委員の一人でございますので、今さら、宇治第一候補に対して反対するのは、立場上はなはだ困るわけなんでありますが、しかし、準備委員会が宇治を第一候補といたしましたのにつきましては、御承知のように、一月九日の準備委員会の決定の中にはただし書がついておりまして、いろいろな意味の防護措置を完全にするということが一つの条件になっており、またその防護の意味で十分なる監視組織を作るということがもう一つの条件についております。その条件が満たされる範囲で宇治を第一候補に推すということにしてあったわけでありますが、よく考えてみますと、その二つの条件がなかなか満たされないのではなかろうかという気がだんだん強くなって参りました。特にいろいろな方々に宇治に原子炉を置くというお話を御説明申し上げます際に、いつも率直になぜ宇治に置かなければならないのかという御質問を受けましたときに、どうもあまりはっきりしたお答えができない。先ほどの大阪府会議長の方からも言われましたように、どうも研究者の便宜ということだけでは、おそらく市民一般の方を納得させられないのではなかろうかという気分がだんだんにして参りました。科学的に今後十分研究を進めますれば、ある科学の知識の範囲内におきましてこの程度の安全性があるということを、私たちの宇治に置こうかと思っております原子炉について、あるいはその原子炉の付帯施設につきまして、十分方途を講ぜられるとは思っておるのでありますが、しかし、それが一つのポテンシャル・ハザードといたしまして、潜在的な災害の原因を含んでいるものであるということだけは否定し切れませんので、それが万一起った場合に、非常に多数の方に御迷惑をかけるという土地は、何といっても不適当ではなかろうかという気がだんだん強くなってきているわけであります。先ほど申しましたように、準備委員会としての方向とはやや逆行したような意見を申し上げますので、非常につらいのでありますが、私といたしましては、宇治にきめたという理由が、実は皆様に御説明できない程度のものである。つまり便利であるとかあるいはほかに条件がいいとか申しましても、その条件はやはりただ相対的にそうであるということだけであって、宇治の水源地であるという欠点を十分カバーするだけの大きな特徴にはなっていないと考えられます。それで、できればこの際もう一ぺん振り出しに戻って、そういう市民の皆様の声にも十分耳を傾けながら、あらためて敷地を選択し直すというのが、この際私たちのとるべき道ではなかろうかと思っておるのであります。しかし、これは準備委員会の皆様の御了解が得られるかどうか、私にはまだわかっておりません。私の申し上げたいのは、一応の科学的常識の範囲内におきましては、原子炉というものが安全であるということは繰り返して申し上げていいと思うのでありますが、それ以上に強い要求をつけられましたときに、絶対に安全であるということを言い切れる段階には私たちは来ていないということ、そして、とにかくそれがその内部に相当おそろしいものを含んでいるという点から、これは一つの科学的な問題というよりは、むしろ社会的な問題という観点からも十分考えてみなければならない問題であろうということを申し上げてみたいと思います。
#12
○菅野委員長 次に、大阪市立大学医学部助教授西脇安君にお願いいたします。
#13
○西脇参考人 私、伏見先生の弟子であります。それからまた大阪大学のいろいろな先生の恩師の方々と少し異なった意見を持っておりますので、非常に心痛であります。しかし、過去九年間にわたりまして、放射線の生物学的な影響、それから特に環境の放射能汚染という問題と取っ組んでおります関係上、もしも誤まった不安感というものが一般民衆に与えられまして、そのためにいろいろな動揺、精神的な動揺とそれに伴う不必要なエネルギーと時間とが費やされておるとするならば、これは私といたしましても黙って見ているわけにはいかない。そこで、一応放射線の生物学的な影響ということと、それから環境の放射能汚染という専門家としての立場から、どのようにこういった問題を考えるべきかという問題を、少し科学的な立場から議論させていただきたいと思うのであります。
 先ほどから放射線の影響ということはあまりよくわかっておらないというお話がございました。もちろんこういった分野におきましては、まだいろいろわからないところが多いのであります。たとえば、人間につきまして、いろいろな病気というようなことはずいぶんわかっておる。正常なときにはどうなる、病気になるとどうなる。しかし生命ということについては、だれもはっきりとした確答を与えることはできない。従って、よくわかっておらないという意味もいろいろな意味があるのであります。従って、どういう工合に作用するかという機構につきましては、まだいろいろ議論があります。私も一つの理論を昨年の国際遺伝学会に発表しております。それはともかくといたしまして、放射線が当ったときにどのようになるであろうかということについては、心配するにせよ、安心するにせよ、全然わかっておらないという非常な不確定な基礎の上に立っておるものではないのであります。といいますのは、人間の知識が発達して参りまして、放射線の検出法がだんだんと進歩してくるとともに、私たち人間というものは、生まれ落ちるとともに放射性物質の中で暮らしておるということが明らかになってきたのであります。事実、その辺の土も水も、すべて天然に存在しております放射性の炭素、放射性のカリウム、それからラジウム系統及びその崩壊生成物といったものを含んでおります。これが長い年月の間に漸次われわれの体内に蓄積しております。それから、これ以外に地球の外から地球に到達して参りますところの宇宙線、これは非常に透過性のいいものも含まれておりまして、数百メートルの水の底を突き抜けて、深い鉱山の中にまでも到達しますわれわれ人間として避け得られざるところの放射線であります。こういう工合に、毎代、何代にもわたりまして人類が放射線を受けながら生きておる。それにもかかわらず、みんながみんな放射線の影響で倒れてしまっているとは限らぬ。一体これはなぜかと申しますと、少くとも放射線の人間に対する影響の一部分というものは、一種の偶発現象とでもいうべきものであります。特に遺伝学者関係――私も日本遺伝学会の放射線遺伝学の委員をいたしております。これからもあまりむちゃなことをやっていかぬというので警告を出しました。その警告といいますのは、放射線の遺伝学的影響に関する、これ以下ならば絶対に影響が起らないと言い切れるところの下の限界は存在しない、これに対して生理学的変化というものはある限度以下ならば、これ以下なら起らないという限界がある。しかし、遺伝学的にはそういう下の限界はない。こう言いますと、そうするとこの意味がずいぶん取り違えられまして、いかに微量であっても、それ相応の影響がみなに残っているのだという工合に考えられますけれども、事実はそうではないのであります。非常に微量な放射線でありますと、たとえば一億人に与えれば一億分の一という確率で変化の起るような放射線でありますと、これは一億人のうち、だれか一人に何らかの影響が起るかもしれないけれども、ほかの人は何でもないということを言っておるのであります。この点、微量の放射線が行き渡った場合、みんながみんな影響を受ける、八百万人死んでしまうというような印象を与えることは、明らかに誤まった考え方と言わざるを得ないのであります。それで、一応われわれが天然にどの程度放射線を受けているか、まず最初に左の方のテーブルの宇宙線、いろいろなガンマ線、空気中のラドン、カリウム四〇、炭素の一四等でありますが、このうちカリウム四〇はベータ線を出しておりまして、おとなでありますと、三十八万カウントという放射能を受けております。それから炭素の一四もベータ線を出し、大体十五万カウント、それからラジウム及びその崩壊生成物によりまして、アルファ線の大体九千ないし一万八千カウントという放射線を受けております。そうして大体平均生殖年令である三十年間の線量が二・八五レントゲンないし三レントゲン、これも地域によってずいぶん違います。アメリカあたりでは、大体四ないし五レントゲンも受けておる地域があります。三十年間に受けるところの平均放射線量は、アメリカでは四・三レントゲンということになっております。
 次いで、宇治の原子炉の場合にいろいろ問題になるわけでありますが、原子炉で放射線を出す物質をいろいろ作るわけであります。いわゆるアイソトープといいますが、これが小型の研究用原子炉程度でありますと、そんなにたくさんはできない、むしろ非常に半減期の長い危険なものは、現在のところすでにアメリカのオークリッジ及びイギリスのハーウェルあるいはカナダあたりから輸入しております。現に大阪市内の国立大阪病院におきまして、五百キューリーの治療用のコバルトを持っております。私も障害防止の点でいろいろ相談を受けております。それからまた将来三千キューリーというコバルトを置くホット・ラボラトリー高放射能実験室が大阪市内に置かれることになっておるわけであります。そういう状態にあるわけであります。しかし、そういう三千キューリーも作ろうと思っても、この原子炉ではちょっとむずかしいのではないかと思われるのであります。しかも、そういう治療用に使うコバルトあたりでありますと、幾ら強いものを作りましても、大体そのまま治療用に持っていって使いますので、廃水というものは出てこない。従って、廃水が出るというのは、これはいろいろ実験の種類によっても違うと思います。初めからそう神経質にいろいろこまかい数字のけたまで考えることはできない。むしろその場合々々において、できる限りの対策を立てるべきではないかと思われるのであります。
 それから、今回の原子炉のスイミング・プール型につきまして、先ほど伏見先生からお話がございましたが、過去において非常に大きな事件というものがない、一部には大げさに報道されているが、万一の事故の場合にどうなるかということに関しましても、過去において非常に大きなスイミング・プール型での爆発というものは、実際上ございませんので、ただ実験的に無理やりに起させて、実験的に放置しておいて不安定な状態にしたというようなデータがわずか出ておる程度であります。従って、現在のところ、この万一の場合の障害というものを考えるに当りまして、まずそういう実験の結果というもの、それからもう一つは、理論的にどの程度の可能性があるかという二つに基礎を置いてものを考える以外にはないのであります。その第一の基礎といたしまして、先ほど伏見先生の指摘されましたボラックス実験における汚染度の分布――実際に故意にこれを爆発させて、このときの風速が大体時速八キロメートル、秒速にいたしまして約二・二メートル程度であります。そして非常にコンディションの悪い、インヴァージョンといいまして、気温が逆転して上の方の温度が高いために、煙が上ってしまわないで、たなびいて、逆におりてくる。このときに、下に二十メートルというスケールが入っておりますが、大体二十メートルの十倍の二百メートルぐらいしか飛ばない。青線の周囲の部分になりますと、最大許容量以下になる。この範囲の外は非常にわずかで問題にならない。それから上の風上の少ししか飛び散ってない方は、大体十メートルないし二十メートル以上で、完全な安全地帯に入るわけであります。
 それで、実際宇治のどの辺に原子炉が置かれるかということについては存じませんけれども、一応敷地の中央の部分に置いたといたしまして、百メートルごとに赤い点線で円を書いてございます。それに宇治地区の平均の風向きというものを考慮いたしまして、ボラックスの実験の結果を重畳して書いてあるのが、向うの赤いカッコであります。これが大体二百メートルも離れておりますと、それ以上にはほとんど散らないというのでありますから、これがどっちを向きましても、これで考えると、外部に対する危険性はない。従って、宇治川に到達するというようなことはあり得ないと考えられるわけであります。
 そこで、こういった実際の爆発実験によったものはどう考えても問題にならないわけでありますから、もう一つ次にもっと悪い条件を考えまして、一応宇治川の方に非常にきつい台風のような風が吹きますと、これはまた爆発しましても散ってしまいまして、逆に宇治川に入る量は非常にわずかになります。そこで、大体このボラックスの実験の倍よりちょっと多い、毎秒五メートルくらいの風速の場合を考えまして、これが宇治川の方に押し流された場合に大体どの程度か、こういった問題につきましては、アメリカのパーカー及びヒーリーという人が、原子炉設置の環境、条件ということに関していろいろ検討を加えておられますけれども、大体このような条件のもとでどの程度になるかといいますと、現在のところ、地図で、宇治のところが向うの赤まるであります。それから下の赤まるが、現在の取水口でありますが、大体これで見ますと、大阪市と阪神上水道の取水口は、淀川の下流に向って左岸、大阪府の方が右岸にある。大阪府下の大きなのは、大体その程度であります。それで、宇治川に入りまして、これが流れてくるというわけでありますが、現在宇治川について考えますと――英国のハーウェルでは、高放射能の方は濃縮して海へ捨てておりますが、通常汚水に相当する少量は、イギリスの医学委員会で定めました限界以下にして落しております。それがロンドンの下流のテームス川に流れ込んでおります。現在のところ放射能が弱く薄まって、流下距離とともにどの程度放射能が薄まっていくかということが正確に測定できないほど微弱なものであるということが、英国の供給省から公式に発表されております。その限度は、ニューヨークの市民が現実に飲んでおりますところの水の中に含まれておる天然のラジウムの大体六分の一以下であるということが報告されております。それから通常汚水にいたしましても、先ほど児玉先生のお話を聞きましたが、大体一カ年間にキューリー程度であります。しかし現実にアメリカのオークリッジの研究所におきましては、あそこにブランチ・リバーというのがありますが、これが流れ込んでテネシー川に入ってくるわけであります。文献によると、オークリッジで大体一日に五キューリー程度流し込んでおります。しかも、それを流しますのに、逆に土地の浄化作用を利用して、近くに池を掘り、その池の中に一たんためて、その池の中からじわじわ流れ込ませる。そうすると、土地は存外イオン交換度が高いので、天然の保護作用で危険な元素が一部取られまして、長い期間にゆっくり流れ出ていく。それが一日に大体五キューリーという程度になっております。それで、今ので大体どれくらい入るかという量を算定して、そうしてこれが淀川の大量の水の中に入りましてどのようになっていくかということを考えますと、これで見てわかりますように、万一攪拌がないとしますと、両側から木津川と桂川が来ており、取水口が両岸になりますので、余り入らないことになる。従って、危険な状態というのは、ある程度攪拌を考えなければならないことになる。それから、現在のところ、大阪市の水道局工務課長の好意によって調べていただいたわけでありますが、大阪、神戸地方の淀川からの総給水人口は約四百万人であります。
 次に地震に対しましても、大阪市の水道の取水口の耐震強度よりも何倍か安全強度をとっておきますと、大きな地震がいって原子炉がこわれる前に、今度は水道の取水口が先にこわれてしまうということになりましょう。また洪水にいたしましても、児玉先生がおっしゃいましたように、洪水のときの最高水位よりさらに安全係数をとって幾らか上にしておくと、原子炉のこういう実験室が水でつかるまでに、すでに周囲も相当被害を受けてやられてしまうということになるわけであります。そうすると、こういう工合に飛び込みましてもいろいろな元素がありまして、大体数十種類の元素が出ます。核分裂でウラニウムが割れますときに、大体いろいろな元素のできる割合というものが、実験結果から出ております。このできる割合が縦座標に出ております。横座標には、ほんとうは元素の種類で書けばわかりやすいのでありますが、放射性物質が核分裂とともにできましても、時間とともにどんどん元素の種類が変ってくるので、よけいややこしいことになって参りますので、質量数について横座標をとっております。上に高いこぶが二つありますが、軽い方は大体九十五くらいの質量数を持ったもの、重い方は百三十五くらいの質量数を持ったものが一番たくさんできます。そのうちでどの元素が一番危険であるか、その一番危険な元素について検討を加えてみて、そしてそう心配する必要がないという程度だと、他のものについてもそんなに心配するほどのこともないのです。このテーブルに、おもなものについて、大体生成率が高くて、しかも半減期がかなり長いものをあげてありますが、これについて考えますとき、かりにその割れた部分の軽い方としましては、ストロンチウム九〇とこれから生まれる子供のイットリウム九〇、これが生成率五・六%、半減期が二十八年で、一番厄介なものであります。その下のテクネシウム九九、これが六・二%、半減期が2・12X10の5乗年、半減期が非常に長くなります。半減期が非常に長いということは、同じ量であってもゆっくりと放射線を出すので、非常に弱い。従って、むしろ生成比率が割合に高く、しかも半減期が中程度であるというのが一番危険であります。重い方では、セシウム一三七とバリウム一三七、これが六・二%で、ストロンチウム九〇より少し長い三十三年程度の半減期であります。この二つが非常に厄介なのです。ストロンチウムは非常に厄介なもので、御承知のように、カルシウムとともに骨に入りまして、生理学的な影響を及ぼすのであります。しかし、生理学的な変化については、下の限界というものがあるだろうということが考えられております。しかも、骨に集まりますので、生殖器官にはあまりいかず、遺伝学的な影響、少しでも困るという遺伝学的な影響については、むしろ問題が少いのです。問題はセシウムの一三七とバリウム一三七、これが筋肉及び生殖器官に入ります。しかし、幸いなことに、これの生物学的な半減期、体内に入って出ていく半減期が、十七日程度の短かい期間なので、非常にありがたいのであります。
 次の表は、今のところ、これにつきまして考えてみます。大体現在の設計のように数ミリ程度の鋼板でもって囲んであるというような場合に、原子炉が暴走するという場合を考えます。これは人為的にやらして、そうして、非常に悪いコンディションで秒速五メートルくらいの風が吹いているという場合に、淀川に入る。大体そういった場合には、たまっている原子炉燃料内の総核分裂生成物の約一%程度の放出と考えるのが普通でありますが、それをもう一けた高い一〇%として、両方の場合を計算しまして、そのうちのストロンチウム九〇、セシウム一三七、これが千キロワットで、一年間オペレートしてできると考えられる最大量に放出係数を考慮して計算したものが表に掲げた値であります。大体ここに見られますが、放出係数が一〇%のとき、宇治川が風下になっているときでも、数キューリー程度(七ないし八キューリー程度)で、一%の場合ですと一キューリー以下に、セシウム一三七もストロンチウム九〇もいずれもなっております。このキューリーという単位は、そのままだと理解がむずかしいかと思いますが、これを現実にわれわれの頭上に降り注いでいる原水爆の放射能と比較してみるとよくわかります。最近アメリカの原子力委員会から発表されました原水爆の実験によって世界的に降り注いでいるストロンチウム九〇の平均量というものから、琵琶湖全面から宇治川の全域にわたって降り注いだ、すなわち現実に水道の上源に降り注いだ量を計算してみますと、最高大体二十八ないし二十九キューリーのストロンチウム九〇がすでに入っておることになります。つまり原子炉の最悪の爆発がすでに何回か起ったに相当するものが現実に入っております。従って、宇治の原子炉が先ほどのような万全の措置をもって運転されていると、平常の状態においては、現実に宇治川に入っておる原水爆の放射能の一部分さえ、蒸留水をさらにイオン交換樹脂を通して流すと、かえってとれるのではないかと思われるくらいであります。こういった状態から考えますと、少くとも放射能の専門家といたしまして、決してここに置いていけないという結論は出てこないと信ずるものであります。
 最後にもう一つ、ここにどの程度、すでに人工的な放射線を生殖腺が受けているかということを、天然放射線量を百として、これに対する割合で示します。これはイギリスの資料でありますが、診断用放射線量は二二で、放射線治療、これはわかりません。アメリカでは放射線治療と診断用と二つ合せて、大体天然の放射線量百に近い線量を受けておると推定されています。それから、くつの寸法合せが〇・一、夜光時計が一、夜光時計を持っておりますと、たとえばズボンのポケットに入れておきますと、これから出る放射線で生殖器官が直接放射線を受け続けていることになるが、これも天然の一%であります。イギリスでは、これは昼や明るいところでだてに使っておるのはいかぬという注意をしております。テレビジョン・セットは電子が当りますので、X線が発生する。これは特に電圧の高いものだと、かなり強いX線が出るだろう。しかし、現在のところは一以下、高高度飛行では宇宙線の強度が地上の数の十倍あります。しかし、現在のところ飛ぶ人が少いので、イギリス全体として〇・〇〇一五ぐらいと推定される。職業的照射、放射線学及び工業が一・六以上、イギリスの原子力関係、これが〇・一、イギリスの原子力関係というのは原子力の工場に働いておる人たちがずいぶんあります。その人たちの受ける線量であります。外部に対するのはほとんど零に近いというふうにみなされております。現在、宇治の原子炉で事故が起った、そうして遺伝学的に問題になるセシウム一三七が入ったと考えまして、一般の受ける線量を大体計算いたしました。このような想定のもとでも、まず絶体に大阪市の上水道の放射能が、原水爆のあとに降る強い放射能雨には達しない。これが一時ある学者が、放射能に騒ぐのはノイローゼだ、温泉の水でも飲めというようなことをおっしゃったときの高い放射能雨の程度には、絶対に達しないということがいわれます。
 これが生殖腺に対する影響を考えてみます。大阪の現在の給水人口が四百万人、これは大阪の水道局の工務課長に計算していただきました。そうして、遺伝学的影響を考えてみますと、大体この人口の約二分の一となる。なぜかと申しますと、四百万人のうちには、すでにこれ以上子供を作らないという人の数が含まれております。それから、乳幼児の数も含まれております。これは、将来大きくなって、次の子供を残すまでになくなる人の数も含まれておる。その二百万人をかけまして、この全体に対する遺伝学的に有効な総放射線量が出る。これをイギリスのスコットランド、ウェールズ、イングランドの総人口の天然に受ける遺伝学的に有効な総放射線量に対しまして、宇治の原子炉に最悪の事故が起ったと考えまして、〇・〇〇〇四%、つまり百万分の四ということになる。これを日本の総人口に対する天然の遺伝学的に有効な放射線総量と比較すると、その割合はそれよりさらに低くなりまして、大体百万分の一の〇・〇〇〇一%となります。こういう事故はしょっちゅう起るものじゃございません。しかし万一起ったとしても、その外部に対する影響は、一般に考えられているほど大きなものでないだろうということは言えます。
 次の表、天然の総放射線量(イギリス)と比較して、こういう割合になります。
 次は、これによって大体どの程度遺伝学的影響が起るか、天然に起っておりますのが、アメリカとイギリスで推定されております。昨年の六月の十二日にアメリカの科学アカデミーの総裁ブロンク博士から非常に強い勧告、すなわち将来原子力発電が大規模に行われれば、その放射能が非常に厄介なものになるだろうというような報道がなされている。アメリカの科学アカデミーの勧告のときに出されております報告によれば、大体天然にでも一億新たに生まれておる世代につき、約二百万人というものが、何らかの天然の原因――放射線以外の原因もありますが――によって、遺伝的異常をもって生まれてきておるものであるというふうに推定されております。そして一世代当り、平均一人当り三十ないし八十レントゲン受けると、この割合が倍になります。しかし、今申しましたような警告というものは、よく読んでみますと、大体一九八〇年ごろのアメリカを対象としておる。大体日本の総電力の半分以上というものを原子力発電に置きかえ、しかも宇治の原子炉を毎日爆発させたときに出る量よりも、もっと多い量をたれ流したようなときの警告であります。その程度のオーダーが、すなわちけたがだいぶ違うのであります。これを今の量で、すなわち宇治の原子炉でめったに起らないような大事故をわざわざ起したとして計算しまして、どの程度の遺伝学的な変化が起るかを推定しますと、大体有効生殖人口二百万人、平均生殖期間三十年間にセシウム一三七で〇・〇〇〇四人ということになります。そうして飛び出してきたものは、すべて遺伝学的に最も危険なセシウム一三七ばかりだと仮定いたしましても、三十年間に大体〇・四人――〇・四人とか〇・〇〇〇四人とかいうことは、これはもちろん大体の程度の推定ですが、おそらく一人も出ないだろう、少くとも一般に考えられているほど、この程度の原子炉だと、大阪市民に対する危険性が高いものではないだろうということを言って差しつかえないのじゃないかと思うのです。
 これをほかの危険性と比較してみますと、これはイギリスで調査されました一九五〇年における人口十万当りの事故死の割合ですが、漁業が年間にして百十三人、ほかはずっと下っておりまして、大体これら事故死を含めました全部が、天然の原因たとえばインフルエンザとか肺炎とか結核による死亡数の全体として十分の一、ところが交通事故について日本で調べて見ますと、これは大阪警視庁交通第一課の御好意によって調べてもらいましたが、三十一年度の年間統計によると、死傷者の総数が大体十万人以上になっております。この割合でいくと、三十年間では三百万人以上になる。つまり死んだ人を含めまして、手や足の折れたかたわ者及びかすり傷を負った者を含めると、大体一年間に十万人。そして三十一年度のこの十万人の総人口に対する割合は、大体イギリスの一九五〇年度の漁業程度。その次は、京阪神地区だけ見ましても、これは三十一年度警視庁調べのもので、大体この割合で年々ふえておりますけれども、今のままでいくとしまして、大体三十年間に総計五十五万人、こういった交通事故だけでも死傷が起るということになるのであります。もちろんたとい〇・〇〇〇四でも、こういった潜在的な危険性というものをゼロに持っていくということが理想であるかもしれませんけれども、しかし、われわれ科学者としての義務――文明の進歩に伴って、いろいろな潜在的な危険性というものが上昇するわけでありますが、しかしながら、そういったいろいろな社会の危険性の相対的な、危険度に応じた妥当なる感覚というものを、一般大衆に与えるべく努力するのが責任であります。目に見えますものは、小さいものを大きく言えば、だれにでもうそだということがおわかりになるでしょう。しかし、放射能というような、しろうとによくわからないものは、アリのように小さいものを象のように大きく言うことはできるかもしれません。しかしながら、これは、私は何らかのためにするところの悪質の扇動であるという工合に考えておるものであります。原水爆とこれを混同してもらうということは非常に困るので、原水爆のような、そもそも殺戮の目的を持って行われておる実験に対しましては、これは道徳的な絶対悪であります。たとい全人類中の一例たりとも、これは重罪である。実罪がなくとも、殺人を意図したということでもって、これは重罪に問われるのであります。こういったことに対しましては、少しでも平時において潜在的な危険性を不必要に上昇させてはいけないという定性的な絶対論を適用して差しつかえないと思います。しかしながら、もしも原子力の研究に対し、そういった定性的な絶対論というものを適用いたしましたならば、これは、原子炉というものは、先ほど伏見先生もおっしゃいましたが、起る起らぬは別にしまして、潜在的危険性というものは存するものであります。従って、人間が利用し得る範囲内に置く限りにおいては、どこに置いても潜在的な危険性は完全にゼロになるとは考えられない。自動車を一台でも走らせる以上は、事故の起る起らぬにかかわらず、交通事故等の起る潜在的危険性というものは、完全にゼロとは言えない。従って、原子力研究に対しまして、少しでもいけないという絶対論を適用いたしますことは、これは研究をやめてしまえということになります。ここでもって原子力研究をやるかやらないかという問題になります。もしやるならば、ここでわれわれは定性的絶対論から相対的定量論に進まなければならない。相対的定量論と申しますのは、他の社会のいろいろな危険性と比較いたしまして、どの程度までを許すかというアローアブル・リスク、すなわち許容量の限界という概念が初めて生じてくるのであります。
 以上で私の現在の知識並びに現在まで出されております私の知る限りの放射線生物学の知識において、できる限りの妥当な推定を行なったつもりでありますけれども、どうかこれらの数字に基いて、相対的定量論の立場から、皆様方の賢明な御判断をお願いいたしたいと思います。
#14
○菅野委員長 以上をもちまして、参考人各位の意見の陳述は終りました。
 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時半より再開し、質疑を行います。
  これにて暫時休憩いたします。
   午後零時四十四分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時五十一分開議
#15
○菅野委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 参考人に対する質疑に入るわけでありますが、文部当局より発言を求められておりますので、この際これを許します。緒方大学学術局長。
#16
○緒方政府委員 研究用原子炉の設置の問題につきまして、この際、文部省といたしまして進めて参りました経過につきまして、御説明申し上げたいと存じます。
 文部省といたしましては、関係大学からの要望もございまして、大学の利用に供しますために、関西地区に研究用の原子炉を設置する計画を立てましてこれは科学技術庁の原子力局とも連絡いたしまして協議をいたしたのでありますが、昨年の十一月に、原子力委員会におきましても、関西方面に研究用原子炉一基を設置して、これを大学の共同利用として運営すること、それからさらにその具体的な措置については文部省において検討するようにというような決定がございまして、科学技術庁の方から私どもの方に御通知がございました。これに基きまして、文部省としましては今日まで検討を進めて参っておるのでございます。関係方面にもいろいろと連絡をいたしたのでございますが、研究用原子炉設置準備委員会というものを設けたのであります。これは全国大学の共同利用の研究施設でございますので、特に関西の京都大学、大阪大学のほか、東京の東京大学あるいは東京工業大学からも関係の学者、教授に参加を願い、それからなお原子力研究所長あるいは科学技術庁の原子力局長、それから原子力委員会の委員というような方々に御参加を願いまして、この研究用原子炉設置準備委員会を設けまして、具体的な問題につきまして検討を進めたのでございます。問題になります事項といたしましては、その設置の計画全般でございますけれども、特に原子炉の型、設置場所、管理運営の方法等につきまして研究を願っているのであります。
 準備委員会として、第一に、研究用原子炉としてどういう種類を選ぶかということにつきましてまず審議を願いまして、研究用あるいは教育用として最も適当であるというので、スイミング・プール型の原子炉を選ぶということをまず決定をしてもらいました。それから次には設置場所の問題でございますけれども、これはいろいろな条件がございまして、いろいろな条件を総合勘案いたしまして、全国三十五カ所ほどの候補地を選びまして、それから順一次検討いたしまして、結局最後に宇治の元の陸軍造兵廠宇治製造所分工場跡を第一候補地として決定をしたのであります。これは準備委員会を幾回か開きまして、一月九日の準備委員会でこれを第一候補地として決定いたしたのであります。この選定について考えました条件といたしましては、いろいろございますけれども、気象の条件、地質の状態、あるいは給水の便、廃水の処理が適切に行われるかどうか、管理が十分行き届くような場所であるか、それから、これは何と申しましても大学の共同利用の施設でございますから、研究施設としての利用率が高いということも考えなければならない。従って、交通の便等も勘案しなければならぬ。そのほかにもございますけれども、こういうふうな条件をいろいろと勘案いたしまして、準備委員会では、今申しましたように、一月九日に宇治を第一候補地として選んだ、かようなことでございます。これを決定いたしますにつきましては、宇治川が阪神地方の水源地の上流であるという点が問題でございまして、この点につきまして十分慎重な検討が遂げられました。それで、先ほど申し上げましたようなスイミング・プール型の原子炉ということを基礎にいたしまして、いろいろ宇治川の汚染対策というものにつきまして慎重に検討せられました結果、科学的、技術的にはこれは全く安全である。特に平常時においては全く安全であるという結論を得ました。ただしかし水源地という関係もございますので、平常時におきましても、さらに特に天災事故等の場合に備えましても十分に対策を検討しなければならぬということで、科学的にこれを検討せられまして、いろいろな措置を講じたならば、科学的に大丈夫であるという結論でございました。文部省といたしましてはこの設置準備委員会の結論を尊重いたしまして、その線によって今日まで進めてきておるような次第でございます。しかし、非常に重要な問題でございますので、さらに準備委員会におきましてもなお検討を願いまして、その準備委員会の成案がさらに出ましたならば、原子力委員会に報告いたしまして、原子力委員会においてさらに慎重御検討を願いまして、その結論を尊重して最終的には決定していきたい。現在の段階はさような段階でございます。
 以上、経過につきまして御報告申し上げます。
#17
○菅野委員長 以上をもちまして文部当局の発言は終りました。
 これより、参考人並びに政府当局に対する質疑に入ります。質疑は通告に従ってこれを許可いたします。岡本隆一君。
#18
○岡本委員 まず最初に学術局長にお伺いいたします。先刻来、両大学の方々から御意見を承わっておりまして、現在の宇治という位置の選定は、これは予算を取るために一応便宜上宇治としたのであり、そしてこれはあくまでも第一候補地であって確定的ではない、こういうふうな意見を大阪の大学の方から聞きました。今、局長のお話を承わっておりますと、準備委員会では一応宇治と決定した、文部省としては宇治という方針でやっていきたい、しかしなお異論があるので、もう一応準備委員会に検討してもらう、こういうふうな御意向を今、承わったのでありますけれども、局長の言われるのが正しいのか、あるいはあくまでもこれは第一候補地であって、まだ未決定のものであるという阪大の先生方の言われる御意見が正しいのか、その辺を一つはっきりしていただきない。
#19
○緒方政府委員 私は、実は午前中参議院の文教委員会に呼ばれておりまして、参考人のお話を承わることができなかったのでございますが、同じ準備委員会に私も出席いたしましてきめられたことでございますから、あるいは言葉の使い方が若干違うかもしれませんけれども、実質は同じことをおそらく私も申し上げたと存じます。ただいま申し上げましたように、準備委員会におきましては、平常運転の際にはおそらく安全であろう、天災、事故等に備え十分な対策をするならば、別に宇治でも危険はないであろうということでございまして、その前提のもとに宇治を第一候補地として決定したことは、ただいま申し上げた通りでございます。そういうふうに私は了解いたしております。
#20
○岡本委員 それでは、文部省としては、現在の方針は、宇治を設置場所として進めていかれるおつもりでありますか。
#21
○緒方政府委員 これはただいま申し上げましたように、非常に重要な問題でございますから、私どもは準備委員会の結論はさように受け取っておりますけれども、なおいろいろ御意見もございますとするならば、十分念を入れて、さらに準備委員会を開いていただいて検討してもらう。あるいは原子力委員会におきましても御検討を願って、慎重に審議、御決定を願いまして、それを尊重して進めていきたい、かように考えております。
#22
○岡本委員 局長は今朝おいでにならなかったので、お聞きになっていないと思いますが、もちろん大阪府の各方面の方々、あるいは神戸方面の方々からも兵庫県の方々からも、反対の声が出ておる。同時に、設置される地元、宇治の中の木幡というところですが、その地元の人々の間で猛烈な反対運動が起っておる。それはきわめて素朴な、とにかくそういうふうな危なっかしいものが来てもらっては困る、こういうふうな反対の強い意向が出ておる。折も折、あそこは旧火薬製造所の跡であったかと思いますが、一週間前にまた残っていた火薬が爆発いたしまして、付近の民家のガラスの損害高十二万円、こう言われておりますから、相当大量になりますが、破損しております。そういうようなことから非常な恐怖心をかきたてられておるわけであります。従って、こういうふうな意向というものは、私は相当尊重しなければならぬと思います。そこで、文部当局としては――こんなことは聞くまでもないことかもしれない。しかしながら、念のためお伺いしておきたいのでありますが、一応学者の意見が完全に一致し、準備委員会の意見が完全に一致したら、地元の意見というものは強く考慮に入れないで進めていかれる方針か。どこまでも反対しておられる大阪府下の人々及び地元の住民の納得の上に立って計画を進めていかれるおつもりか、その辺のところをあらかじめ承わっておきたいと思います。
#23
○緒方政府委員 お答えは、言葉の使い方が非常にむずかしいかと存じますけれども、何と申しましても、これは学問的にまず検討さるべき問題だと存じます。学問的に危険が全くないということであれば、おそらくは地元の方々にも十分御協力していただけるのではないかと考えます。ただしかし、現在そういう不安があり反対があることは、私どもも承知いたしております。このようなことでございますので、先ほど申し上げましたように、文部省といたしましても、慎重な態度をとって今後進めていきたい、かように考えております。
#24
○岡本委員 理性と感情というものは別なんですね。学問的に安全であるという学問的な結論と、それから住民が持つところの恐怖心というものは別なんです。だから、そういうふうな恐怖心を持っているところへ――朝からの意見では、ともかく何が何でもいやだ、そういうふうな危なっかしいものは困ると言っている。だから、いやな女房に添えと言われても困る、こういうことなんです。従って、学問的に意見が一致いたしましても、そうして安全であると阪大の先生方がかりに言われたといたしましても、結局持っていくところの原子炉というものは押しかけ女房になるのです。そこで、委員会で意見が一致したらやむを得ない、持っていくという方針をおとりになるか。そういう抑しかけ女房の形であってでも、あるいはそういうふうに意見が一致したら、徹底的に納得工作をした上で持っていくか。もし納得が得られなければ他へ持っていくというふうなお考えがあるかどうか、これを承わりたいと思う。
#25
○緒方政府委員 原子力研究を今後進めていかなければならぬ重要性、これは申し上げるまでもないことでございますが、ただ一般にそういう不安があるということは事実でございましょう。ただしかし、先ほど私の申し上げました気持は、学問的に全く保障し得るものでありますならば、その点は一つ十分地方の方々にも御説明申し上げて、そうして御了解をいただくような努力をしなければならぬ、かように考えている気持を申し上げたわけでございます。そうでございませんと、ただいま最後にお話がございましたように、かりにほかに持っていくというようなことにいたしましても、問題はまた起るかと存じます。従いまして、そこの点が一番大事なところであって、もし講ずべき対策がありますならば、それは十分に検討していただく、そういう十分な配慮の上に進めていきたい、かようなことでございまして、先ほど申し上げましたように、さらに準備委員会の結論のみならず、原子力委員会の御結論をお願いしたい、かように考えております。それらの点を十分総合的に勘案されまして御決定いただき、その決定の上で事を進めるようにする、そこの段階において私はお話を申し上げているわけでございます。
#26
○岡本委員 ちょっとくどいかもしれませんけれども、そうすると、準備委員会はそういう地元の意見も考慮に入れて決定するであろうから、決定されたとするなら、そういう点については考慮する必要がない、こういう意見のように聞えますが、そうとっていいですか。
#27
○緒方政府委員 それは地元の御意見も十分尊重いたしたいと思います。
#28
○岡本委員 そこでもう一つ次に大阪の府会議長さんに承わりたいと思うのです。先般来御陳情の書面をいただきました。その書面を見ますと、宇治に原子炉が設置されることは、淀川の水を汚染するおそれがある、その安全性の問題について学者の意見の間に一致を見ない現段階においては反対である、こういうふうな御陳情の趣きをちょうだいいたしましたが、準備委員会において十分検討されて、学者の意見が一致を見た場合には、大阪方面の方は宇治の設置に御同意なさるのでしょうか。あるいは、先ほど伏見先生のお話を承わっておりますと、十分なことをしても、どうしてもそこにはある程度の危険性というものが内蔵される、危険性が包蔵されている限り、下流にいる幾百万の人たちの給水源になっておる限り、これは困るんだというふうな意味のお言葉がございましたけれども、そういうことになって参りますと、かりに学者の意見が一致をし、十分な上にも十分な防護措置を講じましても、それは程度の差の問題であって、百万分の一が一千万分の一になるかならないかというふうな問題になるわけであります。従って、いつまでたっても、とにかく宇治には置けないんだという意見のように聞えるのでありますが、大阪府下の皆さん方の御意向はどのようになっているでありましょうか、その点をもう一度明らかにしていただきたいと思います。
#29
○大橋参考人 先ほど私が供述申し上げましたように、原子炉の安全性とその設置場所ということとは、おのずから異なっておると思うのでございます。京都の大学からのたびたびのお話を私たちは承わったのでございますが、これだけの予算をもってこれだけの防備をすれば大丈夫だとおっしゃっております。しかし、そのことによって、われわれは宇治に設置していただいてけっこうだという結論は出ないのであります。それは、今申し上げました通りでありまして、もし一致したならばとおっしゃいますが、それは原子炉の安全性についての意見の一致でございまして、位置の選定についての議論とはおおよそかけ離れておると考えますがゆえに、私たちは宇治に置いていただくことは絶対反対をしたい、こういう考えであります。
#30
○岡本委員 そういうことになりますと、少くとも大阪方面の給水源になるところには放射能の汚染源になるようなものは何も置けないという結論が私は出て参ると思います。この問題は、私は非常に重要であると思います。私は今宇治の研究用原子炉が、その設置の位置の問題について――宇治というと語弊がありますが、関西の研究用原子炉が、その設置の位置の問題について紛争が起り、それがおくれておるということは、私は日本の原子力研究のために非常に残念なことであると思っております。従って、早く各方面の意見を調整して、どこでもいい、とにかく早くこれを作って、世界に立ちおくれておる日本の原子力研究のために大いに学者にがんばってもらわなければならない、こういうふうに私は思っておるのです。
 ところで、その位置の設定の問題でいろいろ意見が分れて、今日こういうふうに皆さんにも御足労をわずらわしているようなわけでありますが、今の御意見でありますと、給水源の上には放射能汚染源になるようなものは絶対に作れないということになってきますと、これは炉だけの問題ではなくて、研究室の問題にもなってくると思います。今も放射能の研究、アイソトープの研究に従事している人はたくさんある。京都大学でも幾つかの研究室ですでに何百人という人がアイソトープの研究をやっている。その研究をやっている放射能によって汚染された水はどんどん下水にすてられている。そうして加茂川は現実にどんどんそういうふうなもので汚染されている。その水は大阪の方に流れていっている。この問題を無視して、炉の問題だけを言っていたのでは、私は話にならないと思う。毎日々々相当量の研究所の汚染水が流されている。この汚染の問題を、今われわれの方でこれを防護するために何か方法を講じなければならぬという意見が出て、立法措置も講じられようとしておりますが、現実には、そういうふうに上流でもってどんどん研究が行われている。そういうふうなことになりますと、将来研究所設置の場所ということにまで問題が波及してくると思う。従って、そういう給水源とアイソトープの研究所の位置の関係というものを明らかにしておかないと、これは将来大きな研究上の支障の問題が起こってくると思うのであります。そういう問題について、学術局長から一つ御意見を伺いたいと思います。
#31
○緒方政府委員 実は、私も学問的なことは存じませんので、非常に専門的なお話でありますから、お答えは非常にむずかしいわけでありますけれども、しかし、お説の通り、原子炉のみならず、そのほかの放射性物質を扱う施設につきましては、十分な慎重な取扱いが必要であると存じます。その意味におきましても、今度のこの原子炉の問題につきましては、学者の間で十分な御検討をいただくことが非常に重要になってくるのではないか、かように考えます。
#32
○岡本委員 今の御答弁であると、ただ学者に研究してもらわなければならないということであって、政府としての意見は何にも出ておらない。現在アイソトープの研究が至るところで行われている。その汚染水はどんどん下水に流されている。それが私はいいと言うのではありません。それはやはり半減期の非常に長いものをどんどん多量に流せば危険でありますから、それは適当な処理をしなければならない。しかし、現段階では野放しに放流されている。そういう問題と関連して考えていくときに、大阪の給水源にそういう研究機関、汚染源というものが現在あるのです。京都大学あるいは京都に府立医科大学というものがあります。あるいはその他の公立病院の大きな研究機関を持っているようなところでは、みなアイソトープの研究をやっております。そういうような研究所がたくさんあって、しかもそれは現在淀川の給水源の中に、水道設備の中にその放射能がどんどん入っていっている。しかも、現在それでもって大阪の水道は汚染をされても、問題になるほどの程度のものが出てきていない。現在大阪の水道は飲用することができないような状態には入っておらぬわけですね。そして、今度は宇治へ原子炉を置くという。しかもその汚染水は単にたれ流し、野放しではなくて、蒸発乾固というような非常に完全なものにするわけですね。そういうふうなものができる場合に、それは何万分の一か何千万分の一かの率において危険性がある、だからそういう汚染源は水道の上流においてはならないということまで成立いたしますと、それは将来のアイソトープその他原子力関係の研究に相当支障が出てくる、こういうふうに思うのですが、それについて伏見先生に一つ御意見を承わりたいと思います。
#33
○伏見参考人 いろいろな実験室で放射性物質を取り扱っておりまして、それの跡始末に、御指摘になりましたような不完全な点が現にあるということは、ある程度は事実であるかと思いますが、それは要するによいことではございませんので、建前といたしましては、そういう放射性物質を取り扱いますところは、すべて完全に処置するようにしておかなければならないものだと思っております。そのほか、私の専門に近い方の学問でありまして、たとえば大阪大学でサイクロトンを動かしているというようなことがありますが、そういうサイクロトンの施設から出て参ります放射性物質ではなくて放射線そのものが、付近の方々に影響を及ぼすかもしれないというわけで、特に厚い遮蔽壁を作っていただいたりしております。そういう壁にして、起るいろいろな障害が起らないように、少くとも気がつきます範囲内におきましては万全を期してやっておりますので、御指摘になりますような粗漏な点が間々あるといたしましても、それは全体として考えれば少いのではないかと思います。
 それから、そういうことが間々あった上で原子炉を考える上においては、原子炉だけ非常に神経質に考えるのはおかしいではないかというような御意見であったかと思いますが、放射能の害と申しますのは、人体に対しましては加算的と申しますかアディティブに、だんだん積み重なって参るわけでございます。すでにいろいろな意味でよごれているから、もう少しよごしても差しつかえないというような考え方は通用しないのではなかろうかと思います。今までよごれておりましたのをさらにふやすということを、むしろできるだけ減らすように努力すべきなのであって、よごれているから、さらによごしても差しつかえないという観点は出てこないものであろうと思っております。
#34
○岡本委員 蓄積するから危険であるというふうな御意見でありますが、研究室から少量のものが絶えず野放しに流れておっても、それは私は蓄積するという点において危険であると思います。だから、それは適当な処置をしなければならないということには、私はあなたの御意見に同感であります。ところが、原子炉の場合には、先ほどの説明を聞きますと、汚染水は全然出さないようにする、こういうふうな考え方の上に立って築造され、同時にまたそういうような防護措置のために相当莫大な経費がかけられるのです。そういたしますと、これは平常運転の場合には決して汚染しない。汚染する危険が出てくるのはどういうときかというと、何か異常な場合、暴発かあるいは災害が起ったか、それは数年に一度あるいは数十年に一度というふうなそういう災害の場合か、あるいは過失による人災の場合、これを地元の方々は一番おそれておられる。何ぼ完全なものをやってもろうても、人のあやまちというものはこれははかりがたいものだ、だからそれが一番おそろしい、こう言っておそれられているわけであります。しかし、人災といえども、一年に一ペんか二年に一ぺんか、そんなに毎日人災があるということは考えられないと思うのです。そういうことになって参りますと、これは蓄積作用の問題よりも、やはり一時的な汚染の強さの問題、汚染の濃度の問題になってくる。従って、かりに減速材にされておる炉の四トンの水が一ぺんに流れた、中のパイプの破裂によってどんどんあふれていったとすると、あの地下室に私はどの程度のキャパシティがあるか知りませんが、相当ひどいことになる。それが外部に漏れるということが万一あったとして、それが淀川の水に対してどの程度の汚染源になるかということを私たちは考えなければならぬと思う。そういうふうな現実的な問題の上に立脚して、この炉の設定というものが大阪府の方々に危険を与えるか与えないかということを私たちは考えなければならぬと思うのです。ただ漫然と、もう原子炉といったら原爆みたいなもんや、そんなものはこわい、おそろしい、こういうふうなことを近代人が言ってはならないし、また伏見先生もそういうふうなことはお考えにならないと思うのです。従って、そういうふうな意味において、減速材として使われる四トンの炉の中の水がかりに全部こぼれて地下室へたまり、排水ポンプの運転がそのためにとまってしまって、ポンプを新たに持ってこなければ蒸発乾固ができないというふうな形になったと仮定して、それが私は最大の災害だと思うのです。その最大の災害の場合に、どの程度の汚染が行われるかということです。そのときには私はおそらく外へしみ出るか、あふれ出るかというふうな形で出てくると思うのです。その場合に、土壌というものがその放射能をある程度吸収する、それを抱いている力がある、あるいはさあっとそのまま半透膜のようにその汚染物質を通してしまう、そういうふうな点と、この二点についての御意向をもう一度承わりたいと思います。
#35
○伏見参考人 お説のように、いろいろな事故の場合を想定いたしまして、その際にどういう被害が起るかということを、相当考えられるいろいろな場合について研究して参りましたし、目下研究もしつつあるわけでもございます。先ほど西脇助教授が説明されたのも、そういう一つの想定された場合の計算の例を示されたわけであります。そういうことを全然やっていないわけではございませんでして、そういういろいろな、具体的に起り得べき場合を想定して、現実的な危険の状態というものをいろいろ考えて研究しているのだと思うのであります。そういう点から申しますと、常識的に起り得る場合を想定いたしますと、大体において危険がないものであるというのが皆さんの一致している意見だと思うのであります。そうであればこそ一応宇治ということを考えても、それほど私たちは神経質にならずに済んだのであろうと思うのです。しかし、相当常識的にはあり得そうもないような、しかし絶対にないということも否定できないようないろいろのケースの場合をさらに考えなければいけないと思うのであります。それでなければ、そういう場合にも対処し得る道をちゃんと講じておきませんと、少くとも一般市民の方々に納得していただくわけには参らないと思うのであります。たとえば先ほどの西脇助教授の御計算は、一つのあり得る、しかも相当そうだろうと思われるケースを計算しておられるわけでありますが、そういう計算の中で、たとえば淀川の水の中に飛び込みました放射能物質が、淀川の水によって薄められるということを計算しておられる。その場合に、どのくらいの水に薄められるかということは、もちろん仮定しなければ出てこないわけでありますが、その仮定にはある程度任意性が入るわけです。それですから、人によって、その計算の見積りによって、三けたも四けたも計算の結果が違い得るということが起って参ります。ですから、相当具体的に考えたつもりでも、ある程度極端な場合を想定いたしますと、今日の段階でもって、少くとも私たちが今日まで考えてきた場合の範囲で、まだ十分自信を持って一般の方々にお答えできる段階には来ていない、そういうふうに私は考えております。京都の先生方はまた別な立場だと思います。
#36
○岡本委員 私は、この問題は重大だと思うのです。ということは、宇治の原子炉は、とにかく現地の人が非常に反対なんです。現地の人の非常な反対と、とにかく淀川の水を汚染するというふうなことで、その説が通って、そうして宇治に炉が置けないということになると、原爆のお見舞を受けて、とにかく放射能というものには非常に神経質になっておる日本人は、今度はもう炉の設置ということになると、何かしら大きな不安を持つようになると思うのです。だから、宇治にあえて持ってこなくてもいいという御意見には私もそれは賛成です。別に宇治でなくちゃならぬということもないでしょう。それは宇治のほかにどこへだって持っていけるところがあれば持っていって早く作ればいいと思うのです。しかし、それには持っていって、せっかく国費をかけて作った炉が十分に、百パーセントに使用されるということが私は必要だと思う。その使用が減殺されることでは、なけなしの、この乏しい日本の財政の中から炉を築くのはもったいないと思う。そういう意味においては、できるだけ交通の便利なところへ私は持っていってもらいたいと思うのです。そういうことになって参りますと、これは交通の便利なところには、どうしたって人が大勢住んでいる。だから、そういうようなところに設定の場所を求めようとすると、宇治が危険だからというゆえをもって締め出されたら、おそらく今度はまた行く先の至るるところで締め出されて、炉はうろうろ宙に迷わなければならぬ。大きな幽霊ができちゃう。だから、とにかく場所が、これは宇治に設定されないにしても、とにかく炉というものはそんなに危険なものじゃないということを、委員会の皆さん方が協力して国民に徹底さすような努力をなされなければならないと思う。ところが、現在の模様を見ておりますと、必ずしもそうじゃないのです。大阪の先生方が伏見や宇治に来て、どんどん危ない、危ないと言って住民に火をつけておられる。そうすると、原子力とかアイソトープとか放射能というものを知らない人は、それはそんなにこわいのか、そんなこわいものは何でも反対だ、そういうことになるのです。伏見の酒屋さんが私の方に陳情書を持って参りました。それは、井戸水が汚染されるから、酒造業にとっては大迷惑だ、だから反対だというのです。宇治へとにかく炉が作られたら――そこから二キロほど離れているところの伏見で酒を作っている。酒はみな井戸水から作りますから、その水の中に放射能が出てきて酒が売れぬようになるから反対だ、こういうふうな論法で酒屋さんが反対してくるのです。そういうことになって参りますと、私は炉の持っていき場所がなくなってしまうと思うのです。だから、そういうふうな点で、現在大阪の大学も京都の大害も、とにかく炉の安全性というものについて啓蒙、啓発するような努力をするという点において努力が足りないだけじゃなしに、のみならず、そういう点についての誠意がないと思うのです。そこで、今後そういう点について努力をしていただくことを、特に私は阪大の先生にお願いしたいと思うのです。それともう一つは、伏見先生にこの前私どもの党の政策審議会の会合に来ていただきましたときに、伏見先生から、炉の設置の問題は経過的にどうも納得いかぬものがある。京大がかねてから計画していたものをわれわれ阪大の方に押しつけてくるような傾向があるので、そういうことが問題である、事件をこじらしているような気がするというような話がありましたが、そのときに私らは、管理の問題について話し合いがつけば、ある程度意見がうまく調整できるのじゃないかというふうな感じを持つたのであります。どうですか局長さん、文部省直属の、京大にも設置せず、阪大にも設置せずに、文部省の直轄の研究所にする。そうして両方の大学から交代に所長を出す、あるいは両方の大学から特定の、同数あるいはある程度の委員を出して、あるいは多くの大学から運営委員を出して、その中から選挙によってその所長を出すというような形で、どこかの大学に付設された研究所とせずに、文部省が直轄のものとして運営していく、こういうことはできないでしょうか。
#37
○緒方政府委員 これは、ただいまの問題の重点は、おそらく私はそこではないと思いますけれども、このお尋ねに対しましては、私はこれはやはり大学の共同利用の研究所でございますから、多くの大学に付置いたしまして、そうしてこれを各大学が共同に利用していく、やはりこういう方式が一番適当であろうと存じます。その具体的な運営の方法等につきましては、関係の大学におきまして十分これから検討していただけば、おのずから問題は解決するだろうと思います、現在におきましても、すでに御承知のように、東京大学に付置いたしまする原子核研究所、そのほか大学の共同利用の研究所として設置いたしまして運営いたしております。これは、そうして各大学が十分共同で利用しまして成果をあげておりますから、このたびの原子炉におきましても、同じような方方式で私は十分じゃなかろうかというふうに考えております。
#38
○岡本委員 この問題は、今こういうことでなにしない方がいいと思いますから、その問題はまた折をあらためてなにしたいと思います。
 今度は、もう一ぺん伏見先生にお伺いしたいのですが、その節、阪大としては現在の災害防止対策では不十分だ、もっと金をかければ相当安全なものができる、それについては今大学でもって研究中である、検討中であるというふうな御意見がございましたけれども、京大が今示されましたところのその設計について、先生方としてはどこが不十分であり、どうすれば十分になるというふうにお考えになるのか、その辺、御意見がございましたら一つ伺っておきたいと思います。
#39
○伏見参考人 それにお答えいたします前に、先ほど申されたことに対してもお答え申し上げておきたいことが一つございます。原子炉ができましたときに、その利用率を高めるということから、交通の便利なところに原子炉を置きたいということは、これは私たち研究者としては最大の願いなんでございます。一方もう一つ私たち研究者といたしましてこういう欲もたくさん持っておるわけでございます。たとえば、原子炉の出力を現在一千キロワットということを一応予定しているわけでありますけれども、その出力を実験用に使います場合、より大きな中性子束がほしくなって参りますことは当然でございますので、研究者といたしましては、原子炉の出力をもう少し増したいという欲が出て参ることは、必ず出て参るはずだと思うのでございます。それからまたホット・ラボというようなことを計画いたしますにつきましても、ことに全国のいろいろな先生方にお集まり願って共同に研究するということになりますと、できるだけ規模を大きくしたくなるということも一つの研究者としての願いだと思うのでございます。そういう建前から申しますと、いろいろ御心配をかけますような土地は、できるだけ避けるのが適当ではなかろうかということもございます。その研究者の立場からいえば、便利なところがいいとばかりも一概に断言はできないということを一つお答えを申し上げておきたいと思うのであります。
 それから大阪大学の教授方がいろいろと放射能のおそろしさと申しますか、あるいは原子炉の不安定性といったようなものを宣伝して歩いているというおしかりを受けたわけでございますが、そういう方が二、三おられるということは事実であろうと思うのであります。しかし、そういう方々がやっておられますのは、必ずしも学問的な見解だけで行動されているものではなかろうと思う。もう少し広い、社会的な問題を背景に背負って行動されていると思うのでありますので、その方々御自身に一々お尋ねしなければわからないことでございますが、大阪大学という一つのまとまったものとして何かそういうことをやっているというふうにとられますと、はなはだ残念でございますので、そういうことは毛頭ない、少くとも大阪大学の大部分の先生は、純科学的にものを考えているということを申し上げておきたいと思います。
 肝心の一番最後の御質問の要点がちょっと……
#40
○岡本委員 京大の今立てておるプランについての先生方の御批判といいますか、そういうもんです。
#41
○伏見参考人 この原子炉の設計上の問題につきましては、私は原子核物理学者でございますが、そのほかにこういう建物を建てます以上は、建築の方の先生方とか、地盤の強さといったようなことになりますと土木関係の先生方とか、いろいろな方々のお知恵を総合しなければならないわけでございます。それで、目下京都の先生方の方でもそういう総合的な研究をやっておられますが、阪大でも、京都ほどのりっぱな陣営ではございませんけれども、一応集められるだけの知恵を集めていろいろ検討しているわけでございます。別に今ここで即座にどこがどうということを申し上げることはできないのでございますけれども、十分にそういう意味の検討はしております。ことにホット・ラボ並びに原子炉のまわりの地盤であるとか、その近所の汚染水の漏洩に関する措置といったようなことに関しまして、今いろいろとその方面の専門家が寄り集まって検討して、いろいろ予算的な勘定もしておられます。そういう結果は、実際また京都の先生方の方のブランとつき合せましていろいろ討論していきたい。そういう段階でございますので、そのことだけお答え申し上げておきます。
#42
○岡本委員 そうしますと、阪大でもこれはもう一月近くなるのじゃないかと思うのですが、やはりこういう問題は拙速ではいけないという考え方もありますけれども、しかしながら、検討検討でそう日にちが長くかかっても困る。従って、早く結論を出していただかなければならぬと思うのでありますが、近くそういうようなあれができて、そして京大との間に、この程度のものを作れば、考えられるいろいろな天災に対しては大丈夫だ、またこの程度ならば、今おっしゃった人災、いろいろ手落ちによって起ってくる最大の事故、そういう一番大きい事故に対しても安全である、淀川の水を汚染しないで済む、付近の住民にも迷惑をかけずに済むのだ、こういうふうな結論がこの設置準備委員会で出るという現在見通しを持っておられるか。あるいはそういうことは、どうも自分らとしては、この水道源、給水源の上流である以上、そんなものはとても出ないんだ、こういうふうなお考えをお持ちになっていらっしゃるか。これは私は重要だと思うのです。先ほどのあなたの御意見を承わりますと――とにかくまた大阪の府会議長さんの言われるように、炉の安全性とその設置場所の適、不適とは別の問題だ。これは楠木さんはそういう御意見なんです。それで楠木さんは、今まで安全だと思う、しかし場所が悪いのだ、町のまん中へ結核の療養所を持っていったり、らい療養所を持っていくのと一緒だ。だからそういうことはせぬ方がいいという御意見ですね。これは大阪の府会議長さんの御意見と同じなんです。だから、やはりそういう意味において、あなたも学者として、そういう強い意見とまでいかなくても傾向、そういうふうな意向をお持ちになっておるとすると、これはもう意見の一致というもの、よしこれなら安全だ、これで行こうという案は出てこないと思うのです。それだったら、もういつまでも論議を重ねていないで、早く結論を出して、これはだめだ、よそへ持っていこうということて、よそへ持っていくように、早く結論を出していただいたらいいと思う。ただ問題は、その場合、字治へ原子炉を置くというのはあぶないから、よそへ持っていくのだ、こういうふうな結論でよそへいくことになると、またよその方でひじ鉄砲を食らう。どこへ持っていっても押しかけ女房、うろうろして歩かんならぬ、こういうことになるわけですね。だから、そういう点においては、炉の安全性というものを強調して打ち出していただかない限り、これからの日本の原子力研究の発展のためにも、また日本の原子力工業の発展のためにも、それが重大な問題になってくると思うのです。これから至るところに、こんな小さな一千キロくらいの炉じゃない、何十万キロワットという発電炉を据えなければならない、それが日本のこれからの姿なんです。それがわずか一千キロの炉でもって押しかけ女房がうろうろして回る、ついには行くところもなくて、いつまでも行かずの娘で終ってしまうというようなことでは困ると思うのです。だから、そういう点については、一つ真剣に考えていただきたいと思う。阪大の先生方の御意向は、いろいろ検討してみて、これなら絶対安全だと強く主張できるような結論というものが出るか出ないか、その見通しを一つ承わりたいと思います。
#43
○伏見参考人 どうも――私がと申しますか、あるいは大阪の先生方の大多数の方々が考えておられることは、こういうことなのでございます。つまり、今、白紙の状態で新しく敷地を選ぶということになれば、宇治は除外したであろう、こういうことだけなのであります。今、宇治を一応の目標といたしましてそれに対してできるだけ皆様に御心配をかけないように作業をしておるのであります。その作業の結果がどうなるか、実際作業をやってみませんと、私たちがただ気持の上でどうであるといったことに左右されるような作業では困るのでありまして、ほんとうに客観的な基準というものに早く到達できるかどうかということだけを私たちは作業しておるつもりなのであります。別に私たちがある方向に心の傾向を持っておるから、そのために科学的な結論が左右されるということがないように、少くとも心がけだけは持っておるつもりであります。その点をどうぞ御了承願いたいと思います。
#44
○岡本委員 西脇先生にお伺いしておきたいのですが、先ほど私が申しました炉から循環させます第一次熱交換器へ行くまでの間に、導水管がパンクして、破けてじゃじゃ漏りになったというようなときには、私は四トンの水が全部下に落ちると思うのです。そういうふうにして地下室へ四トンの水がたまったときに、そういう場合でも給水ポンプはちゃんと役に立つように、四トンの水がすぐタンクに収容できる設備になっておるのか、それが一点。それから、そのときポンプも故障した、悪いことが二つ重なった、火事があったというときに、消防のポンプがいたんでいたということもあり得る場合がありますから、そういうふうな場合に、地下室が長時間にわたって汚染水のために水びたしになった。そういう場合に、淀川の水に対する関係、そういうようなものを一つ承わっておきたいと思います。
#45
○児玉参考人 ただいまの岡本委員の御質問の数字が、私の申し上げ方が悪かったためと存じますが、私の申し上げたのと違っております。あの中の水は、百トンないし三百トンでございます。私の申し上げ方が悪かったと思います。実は、この水の放射能がどのくらいあるか、まずそれを申し上げますと、しょっちゅうイオン交換樹脂を通して精製して循環いたしておりますので、いつかの朝日新聞にも出ておりましたが、アメリカの海軍研究所に同じものがあるのですが、あの中の水を飲んでも大丈夫なんだということが、朝日新聞の特派員の談として出ておりました。これは文献の記載でございますけれども、この水の放射能は大体マイクロ・キューリーという単位で申し上げますと、10−5C/CCであるということが書いてございます。たとえばストロンチウム八九の許容限度が7X10の−5乗でありまして、原子炉それ自身の放射能が許容限度以下のものなんでございまして、おそらく飲んでもいいという根拠もそこにあるのだと思うのでございます。ですから、そのまま流れたといたしましても、――ああいうふうに一たん炉室にたまり、さらに地下室へためるようになっておりますので、それからさらに外に流れるということは、建屋がこわれないと流れなくなっておりますので、そんなことは絶対にないと思いますけれども、―流れるようなことがありましても、平常ならそのままでも許容限度以下のものでございますので、淀川へ入りましても大きな影響はないのはもちろんでございます。ただ問題は、こういうことがあり得るのだそうでございます。操作を誤まりました場合に、一時的に非常に熱が出まして、燃料が溶けることがあるそうでございます。そういたしますと、燃料の中にあります分裂物質が水に溶けて参ります。そうすると、あの水の放射能が相当ふえて参ります。しかし平時でありますと、そのままイオン交換樹脂を通して循環いたしておりますと、その放射能が精製されまして、またもとのきれいな水に返ります。また燃料が溶ける事故があっても、監視しているわけですから、すぐにわかるわけで、処置できるわけでございます。もし燃料が溶ける事故が起り、それと同時に何かの事故でその水が淀川へ行くというようなことが起るといたしますと、どういう計算になりますか、よくやってみないのでございますけれども、多少そういうことを当ってみたことがあるのでございます。そうしますと、許容限度にいろいろございまして、非常時の許容限度というのがございます。非常時の許容限度というのは、何か非常事故が起った場合に、十日間はその水を飲んでもいいという許容限度でありますが、おそらくその許容限度には達しないであろうという専門家の見通しであります。ただこれは大体どういう仮定で計算したらいいかということははっきりわかりませんので、はっきりしたことは申し上げられません。ただそういうことを考えておるということを申し上げます。
 それから、このパイプの故障でございますが、ああいうところのパイプは二重管にいたしました上、また建屋の中に何もかも全部入れてありますので、もし故障が起りましても、水はそこにたまるようになっております。それからもう一つはチェック・バルブと申しておりますが、もしもパイプがこわれますと、自動的にバルブが締って、水が外へ出ぬような安全弁を方々へ入れております。そういうようなことで、第一、パイプが二重になっていてこわれない、もしこわれても安全弁がある、それがまたどこへたまるかというと、実験室へまずたまります。実験室にクラックができると、地下室へたまる。そういうような非常に何重にも、今申しましただけでも四重でございますが、安全装置がしてございますので、あの水が、しかも燃料が溶けたような事故が同時に起り、かつ淀川へ入るというようなことは、ちょっと考えられないと思います。
#46
○西脇参考人 先ほどから岡本議員より、パイプが破れたとか、そういった場合にどうなるかという、いろいろ非常の場合に際しての御質問があったわけでございます。実は、私も宇治が第一候補地と決定されます前、阪大及び京大の一部の先生から個人的な御相談を受けまして 一番初め宇治にとにかく原子炉が置かれるというときに、あまりそこでルーズなことをやってもらっては困ると思っていたのでありますが、具体的に第一候補地と決定いたしましてから、いろいろ正式な意見を聞かれた。そうして具体的な設計のいろいろなことを突っ込んで聞きました。阪大だけではわかりませんが、また京大の先生方のところへも直接出かけて参りまして、いろいろ心配になったものですからお聞きしました。お聞きしました結果、先ほど申しましたような、これがもしできるとすると、むしろ模範的な実験室である。先ほど岡本議員のおっしゃったように、現在のところ三万五千ミリ・キューリーという放射性物質が日本に輸入されまして、それがあちらこちらに分配され、――数年前の統計によりますと、そのうちの四割程度は、東京都へ流れております。それから本年に入ってからは、毎月二千ミリ・キューリーぐらいの放射性の燐と沃度というものがオークリッジから輸入されて、どこかに消えております。そのうちの大部分のものは、愚者さんに直接打たれる。放射性の気体にいたしましても、沃度の一三一というようなものを打ちますと、これから放射性の気体のクセノンの一三一というものが呼気とともに出て参ります。その辺の患者さんとかお医者さんとか一般の人々に知らず知らずのうちに当っております。そういうような状態と比べますと、何のために反対するか。むしろ模範的なものではないかということが、放射能と取っ組んでおりますと、すぐにぴんと来るわけであります。それから、特に原水爆の強い放射能雨なんかを現実にかぶっておりますと、おそらく平常運転では、放射能の強い雨にずぶぬれになるよりも、おそらくこの研究室から出てくる水の中へつかっていた方がよけい安全ではないかということは、すぐに、数値、それから設備の要件を見まして、われわれは感じられるわけでございます。従って、そういう場合には問題がないのですけれども、先ほど伏見先生からお話がありましたが、非常に広い見地から見まして、一部の先生方が非常に反対されて、ここまでこういう工合になって、そんなに心配が要らないはずだと言いますと、次にまた反対のための反対が出てくる。出てくる条件と申しますのが、だんだん極端になり、たとえば金閣寺の坊主がダイナマイトを抱いて飛び込んできたらどうなるかというような議論まで出てくる。これには弱りまして、いろいろあちらこちら当ってみましたが、この厚さ二メートルのコンクリートで鉄筋を組んで、それを鋼鉄板で囲んである原子炉を外から破壊するのには、大体何キロぐらいの火薬が要るかわかりませんが、おそらく一トンぐらいでも、そうやすやすと外からは破壊できないであろう。そうなると、それからまた今度は爆弾になる。万一戦争によって爆弾が落ちたらどうなるか。私は放射能の環境汚染とその影響ということに非常に関心を持っております専門の関係上、非常に心配になりましたので、わざわざ元海軍におられました火薬の専門の人にいろいろ意見を聞いてみました。そうすると、おそらく一トン爆弾ぐらいでは大丈夫だろう。まず鋼鉄で包まれた中にある原子炉の小さな穴の中へきっちり落すということは非常にむずかしい。何万フィートの高度から落すかどうかしらないけれども、それと同時に、またこの建物の横に落ちたくらいでは、これだけの強度をとってあると、おそらく横に落ちたのではだめだ。一トン爆弾が原子炉のまん中にすぽっと入る。そして周囲に何もないときの直接破壊半径というのは、大体二十メートルくらいで、この範囲内では非常に大きな被害だ。それから爆風が生じて、ガラスが割れたりするのが二百メートルくらいまでいきます。しかしながら、おそらく数百メートル以上離れておりますと、爆風は到達しても、爆発地点の破片がこれ以上には届かない。周囲に、宇治のごときは二百メートル以上の空地がとってあるので、おそらく淀川の中にもほとんど入らないのじゃないか。アメリカ海軍及び日本の旧陸海軍のいろいろな爆発実験というものが行われておりまして、その結果をいろいろ文献によって調べていただいた結果によりますと、大体水が大量の場合においても、百二、三十メートル水が垂直に上る。しかし、相当風が吹いておっても、大部分その近くに落ちる。二百メートル以上に行くということは、爆風は届いても、物質自体が届くということとは話は違います。原子炉は厚さ二メートルの鉄筋コンクリートで、さらに鋼板で囲まれているので、ちょうどこの中で爆発すれば、かえって周囲に対する影響力はかなり弱まる。淀川にそんなに入らない。また非常な強風が吹いておれば、水しぶき等は薄く散ってしまいますから、単位面積当りの濃度が低下する。宇治川自体にはあまり入らないというような結論が推定されております。しかも、今の場合はパイプが破裂してしまったというような場合でありますけれども、これはアメリカにおいても、特にジョンス・ホプキンス大学において放射性廃水がどのように地下へ浸透していくかをずいぶん研究されております。しかし、そうやすやすと危険な元素が地下水へ入っていかない。またハンフォードのプルトニウムの製造の原子炉におきましても、コロンビア川の上流においてもかなりの放射性物質のものを、万一の事故じゃなくて、毎日流しております。場所によっては、大量地下に埋める。特に大きな原子力発電でもやった場合には、ウエースト・ディスポーザル、すなわち放射性廃棄物の処理をするために、海や川へ持っていくのはどうかというので、地中に何百万キューリーというものをどんどん埋めた場合にどうなるかということをやっております。そういう場合には、また話が違うのであります。今のような場合に、多少亀裂が生じまして出ましても、むろんそういうものをわざわざ出すということはいけないわけですが、そんなに容易に、すぐに地下水に抜けていくということはちょっと考えられない。たとえば放射能雨が現在どんどん降りそそいでおりますが、これで最も危険な放射性物質というものが地中にずっと浸透してしまいますと、むしろ地表面の濃度が薄くなって心配がないのです。逆にわれわれの測定によっても、またアメリカの原子力委員会でサン・シャイン・プロジェクト、日光計画というものを作って、もとシカゴ大学のリビー教授が指導しております。そこから出されておる文献によりますと、大体地表面から二インチぐらいのところで、非常に危険なストロンチウム九〇等がほとんど土のイオン交換能で吸着されていく。これはカルシウムと性質が似ておるので、それがカルシウムとともに植物に行き、動物に行き、人間に来るという工合に循環していくので、非常に危険である。こういう場合に、むしろ地下水まで素通りして入らないで、地表近くにたまるというので、非常に危険があります。従って今の場合、平常運転でわざわざ毎日大量の放射性廃棄物を地下水へ入れるというのではないので、そういった心配というのは、この場合あまり神経質になるほどのことはない。
 それからもう一つ注意しておきたいのは、この放射線障害というものについての的確な知識というものが一般によく普及しておらぬ。従って、特にこれは今度の国連の会議からも、お医者さんとか、そういった人に対しても、一般の人に対しても、放射能の的確な知識を授けるように――放射能は確かに危険であります。不注意だというといけないわけで、できるだけ注意しなければならないのはもちろんだが、万全の科学的対策をもってすれば、決して不必要におそれることはないということを、一般にもっと深く認識してもらいたい。ところが、明らかに恐怖と真相の誤解から、一部の人々は放射線の影響というものを大きく考え過ぎている。また全然無知な人というものは、恐怖というものを知らない。従って、われわれとして努力しなければならないことは、将来、原子力の平和利用に当りまして、大量のヒステリー患者あるいは気の狂った群衆とか、あるいは誤まった指導者たちを出さないように、日ごろからよく真相を伝え、そうしてこの的確な判断ができるような基礎知識を作っておくことであります。放射能の影響というものはアディティヴ、相加的であるといわれております。これは確かに相加的でありますけれども、その相加的という意味は少し違います。たとえば、交通事故に一ペんあって、手がはずれて、二回目あって、足がはずれたというのと同じような意味である。たとえば交通事故が多くなると、死ぬ人の数というものはふえてくる。ところが、こういう場合に相加的なんでありますけれども、もしも遺伝学的な影響が相加的で抜けないとしますと、人類は毎代にわたって大量の放射線を天然に何万年にもわたって受け続けておりますので、悪影響がたまってばかりおれば、もうすでに地上から消滅しておらなければならないという計算になる。それが消滅せずにおるということは、その中で、つまり有害な遺伝子というものが一定の割合で抜けていっておる。そうして有害でないものは残り、それによって変った種類のものができて、進化してきたのじゃないかと考えられている。すなわち突然変異の圧力、それから今申しましたように、有害なものが自然に抜けることの自然淘汰の圧力とが一定の平衡状態を保って、現在のところ、現在の環境に最も適したと思われるところの遺伝学的な遺伝子の組み合せを持ったもののみが、生存し続けておるのじゃないかということになる。現在の環境に適したものだけが残っているという意味から、少しでもこれ以上変ったものが出るということは好ましくないということになる。今も申しましたように、原子力の平和利用というのに当っては、少しでも困るというのではどうにもならないので、どこで線を引くかという線が出されておりますが、民族全体に対して現在のところ最も厳重な限界というのは、胎児の時代から大体三十年間に一人当り十レントゲンというのが限界であります。そうして今の場合、万一の事故の場合、極端な非常識な場合を除きまして、科学的に可能だと考えられるような計算をしてみますと、大体そんなにしょっちゅう事故ばかり起るものではない。すなわち原水爆のように勢いよく繰り返し爆発させるものではない。一回起ると、そう近い将来には起らぬだろう。このような場合に対して計算しますと、万一の事故の場合でも、大体三十年当り十レントゲンという限界の大体一千万分の三くらい放射線量を受けることになるということが推定される。これはもちろん大体の程度の大きさを推定したのですが、たとえ、これが千倍でも、これによって生ずる影響というものも、他の危険性と比べて、決してそんなにおそれるべきものじゃない。しかし、この潜在的な危険性を少しでも減らすということは非常に大事なことであります。しかし、それにも限度がありまして、私はこういった許容問題についてはずいぶん何回もいろいろな人と議論しております。原水爆というようなものに対しましては、許容限界というものは適用すべきものじゃない。不必要なものに対して平時に潜在的に少しでも危険性を上昇さすということはいけない。しかし、原子力の研究とか平和利用に当ってこそ、こういった許容限界という概念を適用すべきである。それよりも非常に低いならば、そんなにやいやい言うことはない。理想から申しますと、宇治とか舞鶴とか三つや四つではなく、日本の端から端までくまなく何万本とボーリングを打ちまして、徹底的に調べ上げて、最善のところをきめればいいじゃないかということになる。それも時間も費用も労力もかからずにできればもちろんけっこうでありますが、一カ所でボーリングを打って調べるのに五十万円ぐらいかかり、しかも非常な時間を要するとしますと、一千カ所調べますと五億、そうすると、それだけの費用と時間を他のより大きな社会の危険性を低下さすために使うと、社会全体としての危険性をはるかに有効に低下させることができるだろう。それで、現にアメリカのパーカー及びヒーリーの論文によりましても、大体今計画されておる程度の設計が行われますと、核分裂物質の放出係数は大体一%程度と考えるのが妥当だと思う。現在まで理論的に起し得ると考えられるような、そんな大爆発はなかった。そうすると、大体十方キロワット程度までの原子炉であれば、古い、原子力以外の工場と比べまして、その外部に対する危険性は、それより非常に大きいとは考えられない。従って、その限界までは、普通の工場と同じ程度に考えればいいのじゃないかと結論されている。それから、同時に、原子力平和利用会議に出されておりますところのイギリスのファーマーという原子力委から出されてれる原子エネルギーの安全度に関する論文によりますと、いろいろ他の工業の事故と比較しております。将来可能な危険性、事故の起った場合の危険度についても考えております。その一番最後の結論として、イギリスにおいては、今までわれわれの新しい分野に対する無知のために、安全度に対して費用をむしろかけ過ぎた。今後もしおやりになるというところがあるなら、われわれの経験を生かして、あまりむだな費用がかからないように、費用がかかったのはわれわれの無知と同時に、大衆の恐怖によってそういう工合になった。従って、工学者も物理学者も医者ももっと協力して、自信を持って一般の説得に当るべきであるという工合に結んでおられる。極端に非常識なことを考えると、むろん危険であるということを無理に結論に出せる……。
#47
○岡本委員 あまり長くなると他の方に迷惑しますから……。
 最後に学術局長にお願いしておきたいと思います。午前中にお見えにならなかったからお聞き及びでないかもしれませんが、地元の人は、非常に強い恐怖心を持っておる。従って、今持っていっても、これは押しかけ女房になる。従って、京大、阪大の両先生方の御協力によって結論が出ましても、十分地元に納得工作をして、今のままの形で持っていったら、私の想像ではおそらくむしろ旗を立ててすわり込みになると思う。そんな空気の中へ炉を持っていくということは、私はできないと思うのです。従って、そういう面において十分な了解工作を、宇治と決定するまでの間にはしていただくこと、これをお願いいたしまして、私の質問を終らして、いただきます。伏見先生にはいろいろ失礼なことを申したかもしれませんが、どうぞこの場限りでお許しを願います。
#48
○菅野委員長 次に、田中武夫君。
#49
○田中(武)委員 私は、政府委員と参考人の方々に、一、二の点をお伺いいたしたいと思います。まず第一に、われわれが宇治に原子炉を置くということにつきまして話を聞いたときに、まず不思議に思うのは、先ほど来、大橋参考人あるいは川上参考人等々から述べられているように、ことに宇治の現地におきましては、反対の期成同盟を作ってまでも強い反対をしておられる。だのに、なぜ宇治でなくてはいけないのかということ、もう一つは、この問題に対して、危険度のことについて、専門の学者さんの間に意見が異なっておるということ、この二つについてわれわれは疑問に思ったわけであります。そこで、まず緒方局長とそれから児玉参考人にお伺いいたしたいのでありますが、むしろ反対の立場をとっておられる大橋参考人からは、具体的にこの宇治にきめられた場合の条件として四項目があげられて、それに対する反駁とともに、ただ便利であるからという一語である、こういうように述べられておると思います。二人の方にまず宇治を選ばれた理由と、なぜこの反対があるにもかかわらず、宇治でなくてはならないのかということと、先ほどもちょっと岡木委員からも質問がありましたが、もし他に適当な地があるならば、変える余裕があるのかないのか、この点についてお伺いいたします。
#50
○緒方政府委員 宇治を第一候補地として準備委員会が決定されました経過につきましては、冒頭にちょっと御報告を申し上げましたのでありますが、相当多数の候補地を、一定の条件に照らして順次具体的に検討していって締めてきた。そうして最後に宇治が候補地として残った、かような経過でございます。その条件といたしまして、これは専門的には児玉先生からお話願った方がいいかもしれませんが、先ほどちょっと触れましたけれども、大学の研究機関でございますから、研究のための利便ということももちろんございます。ただ山の中に持っていけば、ほかの問題はあるいはよろしいかもしれませんが、全国の大学の研究をそこでやるということになりますから、やはりその点は一つのポイントにはなっております。しかし、それだけではないのでございまして、そのためにいろいろ危険の防止等の観点からいたしましても、あるいは気象とか地盤とか、それからまたこれは水を使うことが多いのでありますから、給水の便、あるいは排水の便、これは危険防止の観点にもなりますが、廃水の処置が適切に行われ得るというようないろいろな条件がございまして、そういうものに照らしまして、たくさんの候補地からだんだん検討して、最後にここを候補地とした、かようなわけでございます。なお、専門的な関係につきましては、児玉参考人から……。
#51
○児玉参考人 経過はただいま緒方局長からお述べになった通りでございます。この問題が起りましたのは、われわれが大学に原子炉を置いていただきたいということを表明いたしましたのは、昭和三十年八月ごろであったかと思います。そのころから京都大学におきまして、どこに置いたらいいかということで非常に調査いたしておりまして、約二十五カ所ほど一応調べたのでございます。そのころ、同時に大阪大学でも、枚方に原子炉を置きたいという御計画があって、文部省に予算を提出しておられたと聞き及んでおりますが、三十年の九月九日でございますか、両方の大学で別々に予算を要求しても、十数億要るものが二つできるはずがないのだから、一つ一緒に使うことにして、大阪と京都と共同して、共同で使う予算をお願いしようじゃないかということで、現在文部次官をしておられます当時の稲田大学学術局長に、阪大の代表者と京大の代表者、私もその一人として参りましたのですが、お願いに上ったことがございます。そういうところで話が出て参りまして、原子炉をどこへ置くかということをいろいろ調べておると、二十五カ所ございました。その当時、京都大学といたしましても、大体いろいろの条件を調べてみますと、宇治が一番いい。そうしてその当時われわれ原子炉並びに付属施設というものは、宇治川なんかの汚染を防ぐように完全にできるものだ、外国でも大学の構内に置いているじゃないか、ハーウェルなんか、ロンドンの水道の上流地へ置いているじゃないかということで、これはもう宇治へ置いて差しつかえないということに疑問を持たなかったのです。今から思うと、多少どうもそこにわれわれの考えの甘いところがあったかと反省するのでありますが、少くとも当時のわれわれの常識では、反対が起るということは夢にも考えていなかったのであります。そういうわけで地元の方の御了解を得ることに非常に手抜かりがあったということを、私は今から考えると認めざるを得ないのでございますが、当時われわれの心境はそういう心境でありましたので、この点は御了承願いたいと思うのでございます。その後、今、緒方局長からおっしゃいましたように、準備委員会というものができまして、その席上であらためてこの土地の選定を問題にされたわけでございます。その前に、昨年の六月ごろから、阪大と京大との間でいろいろの打合せをやっておりまして、両方に準備委員会というものを作り、また合同の準備委員会を二度も開いております。昨年の六月と九月と二度も開いておりますが、その合同委員会の席上でも、阪大側でも大体宇治でよろしかろう。しかし水道の水源地であるから、その点は十分考、えてもらいたいというようなお話はもちろんあったのでございます。それから、そのときにちょうど動力試験炉を関西に置くという話が出まして、一緒に宇治に置いたらどうかというような話が出まして、そうすると宇治では不適当ではないかというような話も出たのでございますけれども、結局それは切り離してものを考えよう。そうして九月の何日でしたか、阪大と京大との両方の合同委員会でも宇治に置くということを再確認した、こういうことを新聞に発表いたしております。なぜ私がそういうことを申し上げるかと申しますと、つまりこれほどやかましい問題になりましたのは最近の話でありまして、阪大の当事者も京大の当事者も、当時宇治でそういう大きな反対が起るとは考えていなかった。もちろん水源地であるから、十分なことをしなくてはいかぬということは言うておったのでございます。しかし、それの汚染を防ぐだけのことができるという十分の対策も持っておった次第でございます。そういう状況で推移して参りまして、そこで今、緒方局長が申されました準備委員会ができたのでございますが、その準備委員会で土地をあらためていろいろ検討をしていただくことになりまして、そのときに下調べを―京都大学と大阪大学のおのおのに立地小委員会というものを作りまして、しかもその立地小委員会を数回にわたって開催いたしまして、いろいろのディスカッションをしたのでございます。そのときまず京大であげました候補地が二十五カ所、それに大阪大学がお出しになった候補地が十五、六カ所あったかと思います。ただし、それが重複しておるのがございますので、三十五カ所というわけではございません。そこで、どういう条件でその土地を選定していったかと申しますと、第一が敷地面積が相当にあること、それからこれは近接人家がやはりない方がいい。外国には、大学の構内や都心地にあると申しても、やはりない方がよかろう。それから飲料水の水源地はできるだけ避けた方がよかろうということが、そのときに条件の考慮に入っていたのです。それから気象条件を考える。地質の問題はどうか。第六番に廃液の処理が正しくできるところでなくてはいかぬ。それから事故の場合の処置も考える。八番目に冷却用水の給水排水の便。九番に研究者の利用能率、施設の管理能率、これは不便なところに置きますと、管理が悪くなって、かえって危険になる、そういう点も考える。十番に転用施設の有無、転用施設があるかないか。それから十一番に天災の憂いの少いところ、こういう条件をあげまして、非常に活発な論議をいたしまして、最後に三カ所選びましたのが宇治、舞鶴、信太山でございます。そうして、京大と阪大との合同委員会でそれのおのおのの得失をあげまして、準備委員会でその判定を願ったわけです。準備委員会ではこれに基きまして十分の考慮をいたしまして、ただいま緒方局長が申されましたような線の結論を一月九日に出されたわけでございます。経過を申し上げますとこういうわけでございまして、そういう経過で宇治がきまったわけでございます。
 そこで、なぜ宇治じゃないといけないかという御質問でございますが、ただいま申しましたように、三十数カ所調べて、みなの意見が宇治が一番いいということに一致しました。先ほど申しましたように、これが実際に水道を汚染する危険があるのならば、私でも宇治なんかに置くべきじゃないと考えております。しかし、そういう危険がないのならば、あの一番利用能率のいい場所へ置いていただくことが、日本の将来の学問の進歩のためにいいんじゃないか、こういうふうに考えた次第でございます。
#52
○田中(武)委員 先ほど緒方局長、それから児玉参考人から承わったところによると、大体十二項目ほどの項目をあげて検討した結果だ、こういうことであります。しかし、大きなものとしては、排水給水の問題及び敷地面積、あるいは付近に人家があるかないか、こういうようなことが大きな原因だと言われました。そうするならば、第一という以上、第二もあるはずだ。そうしたら、今舞鶴とか信太山ということも出されております。そうするならば、こうした問題を第二あるいは第三の候補地と当てはめて、今、問題になっているような大きな反対運動とにらみ合せて、比較検討する余地があるのじゃないか、このように思うのです。人家があるかないかというようなことも選定の一つの条件であったということである。先ほど来、反対の立場をとっておられる各参考人の御意見を伺っておると、阪神間六百万人の給水源である、こういうところが一番の大きな問題になっておる。また、われわれも心配するのはその点であります。そうするならば、他の第二、第三の候補地とあわせて再度検討することができるんじゃないか、このように思うのです。また同じ準備委員をしておられるところの伏見参考人の御意見によると、宇治がきまった一月九日の状態でなく、現在もし新たに選定をするならば、宇治は入らなかったであろう、こういうようにも言われております。また伏見参考人の公述の中には、こういう問題があるので、できるかどうかわからないけれども、なお宇治からよそへ変えるような努力もしてみたいといったような意味の意見も述べられておるわけです。そうするならば、同じ準備委員の中で意見が食い違っておるのじゃないか、このように思うわけです。そこで、児玉参考人、伏見参考人、それから緒方局長にお伺いするのですが、これは白紙に戻して、あるいは第二、第三の候補地とともに並行線に置いて再検討する余地があるのかないのか、この点をお伺いいたします。
#53
○緒方政府委員 宇治のきまりました経緯は、先ほど申し上げた通りでございます。私は一月九日の準備委員会では、意見が完全に一致した、かように了解いたしております。ただ、水源地の関係で、そこに非常に重点を置いて研究をし、これだけの対策は必要だという条件がついておることは申し上げるまでもございません。しかし、そういうことで関係の大学、また関係の大学のみならず原子力委員会委員、原子力研究所長、原子力局長等も加わりまして、権威のある学者の方々の集まる準備委員会が決定されたことでございますから、私はこれを尊重していかなければならぬ、かように考えます。そこで、最後に、今お話がありましたように、宇治のほかにも二カ所ほどのものが残りました。最後には舞鶴等も比較になりましたけれども、あらゆる観点から見て宇治が最適だという結論になったわけであります。ただし、先ほど申しましたように条件がついております。従いまして、その条件の点におきまして論議が他にあるならば、その点は十分論議を尽していただくことが必要じゃないかと思います。そして、あとう限りの完全な防護対策を考えまして、そしてその危険がないということが再確認できましたならば、私はやはり関係の権威ある学者の決定されました線に従ってやっていくことが適当じゃないかと考えます。ただし、現地等の事情もございますけれども、それは先ほども申しましたように、十分に勘案して参りたい、かように考えます。
#54
○児玉参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。意見の不一致があるじゃないかというお考えでございますが、伏見さんも今おっしゃいました通り、前には宇治でよいと考えておったというお話でございまして、少くとも私の知っております範囲内で、今、局長からもお話がございましたように、一月九日の準備委員会では全部あの決定の線でよいということに同意されました。その限りでは委員の間に意見の不一致というものはございませんでした。そういう意見が出ましたとすれば、それからあとのことでございまして、それからあと委員会もまだ開かれておりませんので、その委員会が開かれて、そういう問題が出るか出ぬか存じませんが、もし出たとしてどういうことになるか、そのときはそのときで私の意見を申し上げたいと思っております。ただいまのところ、私は委員会の意見の不一致はなく、一月九日はみな御納得の上であの線で一致されたと考えております。
#55
○伏見参考人 ただいま児玉さんのおっしゃいましたように、書面に書きました文字の上ではもちろん一致したのでございますが、文字の解釈には多少のニュアンスの差があったのではなかろうかと思います。たとえば、水源地であるために、特に念を入れてくれという二つの条件をつけましたが、その二つの条件が満たされない場合にはどうするという考え方の差が相当にあると思うのであります。つまり、その差が、たとえば条件が満たされない場合には、最初の企画を著しく縮小してもなお宇治にするという考え方もございましょうし、それからあまりに全体の規模が小さくなってしまうようなことは残念であるから、その場合には第二の候補地の方に移すというような考え方、つまり条件が満たされなかった場合の処置についての心づもりという点では、必ずしも意見は一致してなかったと思います。それからもう一つ、書面の上には書かれておりませんが、書面を書きましたときに、附帯決議的に委員会できめましたことは、地元の納得がいくように大いに説明して歩くということが条件になっております。と申しますのは、そもそも一月九日の決定をいたします最中に、大阪府や大阪市の方々から不安を感ぜられる旨の電報が届いております。そういう雰囲気の中で決定したのでございますから、そういう方々に十分な御納得がいくということを前提としなければ、そう勝手な決定もできないわけでございます。地元の御納得が得られるということが、やはり宇治第一候補地ということに対する一つの条件となっておったと思うのであります。そういう点においても、考え方が、多少ニュアンスの差としてはあったのではないかと思いますが、大綱としては、もちろん委員会として決定したのであります。
 それから、午前中に私が申し上げましたことを、自分であいまいなことを申し上げたかもしれないということを申し上げた点は、準備委員会の委員としてお話申し上げる立場と、それ以後の、いろいろな皆様とお話した後に得られました考え方に多少変化がございます。その変化した上での考え方というものとの表現が差がございますので、それがデリケートであるということを申し上げたわけで、その限りにおいては、やはり多少の、児玉先生方と意見の差があるだろうと思うのであります。
#56
○田中(武)委員 二人の準備委員の方の意見に若干の差があるということは認められると思います。それから、緒方局長の御意見によると、一月九日に全員一致できめたのだから、もう変えられないといったような印象を受けるわけであります。また、児玉参考人は、先ほどの御答弁のときに、われわれにも若干の手落ちがあったということをお認めになっております。その後いろいろな地元における問題が起きてきた。いわゆる一月九日に準備委員会においてきめたときと違った状況が現在起ってきておる。先ほどの児玉参考人の御意見によると、そのときはまさかこれほどの反対が起るとは思わなかった、こういうわけです。そうするならば、きめた後にいろいろのこういう問題が起ってきた、しかも阪神六百万人の飲料水の給源地である、こういう点も考えた場合、なるほど学問的には心配はない、こういうことであろうが、感じの上においては、やはり心配は除くことができないと思う。そういう状態にあるならば、私はもう一度考え直して、協議をし直してもいいんじゃないか、このように思うわけなんです。また一月九日に決定をなされるに当りましては、二つの条件がついておった、ただし書きがついておった、こういうことです。その一つは、完全な防護措置を行うこと、もう一つは、地元において十分納得をしてもらうということであります。そこで、お伺いいたしたいのでありますが、これは緒方局長が適当かとも思いますが、他の関係の二人の参考人の方にも御意見があれば承わりたいと思います。
 まず第一に、完全な防護措置をするならば、こういうことでございまするが、先ほど来、説明を受けましたような防護設備をするのには、一体幾らほどの金が要るのか、これに対して幾らほどの予算が盛られているのか、しかも、私の聞いておるところによると、この装置をするについての予算といいますか、経費の問題についても、各学者において大きな、けた違いの数字もあげられておるということです。従って、その点について、完全であるということなら一体幾ら金があったらいいかということは、われわれにはわからない。そういう点はどうなっておるのかということ。もう一つは、これは西脇参考人も先ほど来いろいろ学問的な立場から心配はないのだ、そうおっしゃいまして、交通事故の例をとっても話しておられました。西脇参考人が学者的な立場から、学問的な立場からこれをおっしゃることは、私大いに敬意を表しておるわけです。また原水爆とこの種の問題とは別だともおっしゃる。私もよくわかります。また、日本がこの原子力の平和利用のために、立ちおくれているところの体制をすみやかに立て直して、世界の動きにおくれないだけの技術あるいは知識を上げていかなければならないこともよくわかります。しかしながら、先ほどの大橋参考人からの話も出ておりましたし、あるいは伏見参考人も、科学的な問題でなく、社会的な問題だと思う、こう言われておったわけですが、率直に言って、今われわれ日本人の、原子力という言葉から受ける印象は、やはり長崎、広島のあの惨事であり、かつての福龍丸のあの惨事であります。それがやはりわれわれの頭の中、胸の中にあるわけです。それをいかに学問的に大丈夫だと言われても、ここで長らく西脇先生あるいは児玉先生の話を聞かされても、われわれ聞いているときはそんなものかなあと思いますが、やはり心配はあるわけです。そこで現在そういう不安な念をもって、むしろ原子力に対して恐怖の考え方をもって臨んでいるところの日本の国民に、どういうふうに納得させ、どのように教え導いていくのか、こういうことについての対策がありましたら、文部省としてお伺いいたしたい。
#57
○緒方政府委員 質問の第一点でございますが、防護対策費といたしまして、三十二年度の予算案に、政府といたしまして計上いたしております金額は六千五百万円でございます。これは先ほど申しました一月九日の委員会の際にその条件がつきまして、そのときに、京都と大阪の両大学の専門家の両方打ち合せの上、立てられました計画をもとにいたしまして、そうしてこれは年次計画でございますから、初年度の計画として六千五百万円を要求いたしまして、それが計上されております。これは年次計画でありますから、今後におきまして十分検討しまして、さらに大蔵省と折衝していくということに相なっております。
 それから第二点でございますが、お話のような点は私ども十分わかります。学問的にこれが大丈夫であるという結論――すでに結論が出ていると私どもは考えますけれども、しかしなおいろいろな点におきまして論議があるようでございますから、先ほど申しましたように、準備委員会、さらに原子力委員会、これらの委員会にさらに慎重な御審議をお願いいたしまして、それらの結論に基きましてなお努力いたしまして、地元の方面の御理解をいただくようにいたしたい、かように考えております。一般的な問題につきましては、これは文部省だけのみならず、あるいは科学技術庁、そのほか政府全体といたしましても、そういう一般的な、何と申しますか、啓発の仕事はやらなければならぬ、かように考えております。
#58
○田中(武)委員 六千五百万円の予算を持っている、こういうことなんですが、完全な防護装置をやるには二億円かかるとか、あるいは二十億円かかるとかいうようなことも聞いているわけなんです。そういう点はわれわれにもよくわからぬのですが、これは専門の児玉先生あるいは伏見先生あたりから、果して六千五百万円程度で――どこに置くにしても、完全な、心配のない装置ができるのかどうか、お伺いいたしたい。
#59
○緒方政府委員 ちょっと補足いたします。ただいま申し上げましたように、六千五百万円は初年度の計画でございまして、なお今後検討いたしまして大蔵省と折衝する、かように申し上げたわけであります。ただ一応の計数といたしましては、二億七千万円だったかと思いますが、その計画はできております。そういう基礎計画に基きまして、さらに準備委員会におきましても御検討になることだと考えます。
#60
○児玉参考人 この防護対策につきましては、目下京都大学の主として土木、建築、それから汚水処理の先生、それから同様に大阪大学のそういう方面の先生方に委員会を作っていただきまして、再三会合して検討中なんでございます。それで、先ほども、両方で意見一致した防護対策の計画を樹立し得る見通しがあるのかという御質問もございましたが、ただいままで両方集まった委員会が二回、日まで申しますと、一月二十六日と三十日です。各大学別には何度もやっております。それでだんだんと意見の一致を見て参りました。意見の一致を見て参らない部分が多少ございます。しかし大綱は意見が一致しているのでありまして、ただ設計のディテール――土木工事ということになりますと、安全率とかいろいろな点で見解の違いがあるのでございます。その他二、三の点に、主としてディテールでございますが、まだ意見の一致を見ておりません。従いまして、計画ができ上っていないので、防護対策費が幾ら要るというようなことが巷間伝えられておりますが、これは憶測でございまして、両方の大学でこのような数字を出したことはまだございません。まず計画ができ上ってから幾ら金が要るかということになるだろう、こういうふうに考えております。
#61
○田中(武)委員 そういたしますと、児玉参考人が先ほど図をもって御説明になりましたような設備をやるには、一体幾らくらい金が要るのですか。
#62
○児玉参考人 あれは建屋を入れてでございますけれども、本来、建屋の費用は、そのまま防護対策費に入れてはいけないのです。つまり防護対策としての費用はどういうふうに見るべきかといいますと、普通の建屋に要らぬ部分で、鉄板を張るとか、二重底の地下室を作るとか、そういうものが防護対策費として見るべきものだろうと思います。でありますから、先ほど申しましたように、計数もまだ出してございませんし、普通の建屋なら必要ないが宇治へ原子炉を置くために必要な二重底の地下室とか防水装置を厳重にするとか、そういうふうな費用が幾らかということは、もう少しディスカッションを行い、計数の整理ができ上らないと、確実なことは申し上げられないのではないかと思います。
#63
○田中(武)委員 そうしますと、先ほど来心配はないのだ、こういうふうに説明をせられたのは、あくまでもこれは一つの学問の上に、科学的の上に立っての机上の画というか、机上の理論ではないか、このようにも考えるわけなんです。そこで一つ緒方局長にもお伺いしたいのですが、これは宇治を意味しているのではないのですが、いずれどこかに置くとして、完全な防護装置をするのにはこれだけの金が要る、こうなった場合に、それにふさわしい予算をつけ得る自信はおありですか、その余裕はおありですか。
#64
○緒方政府委員 これは今後の問題でございますけれども、先ほど申しました一応の案につきましては、その計画通り大蔵省に要求いたしまして、そして初年度計画として六千五百万円を計上いたしたのでございます。今後の問題は今後の問題として十分努力していきたい、かように申し上げるよりほかございません。
#65
○田中(武)委員 今後の問題は今後の問題として十分に努力していくと答えるよりほかいたし方ございません、こういうことなんですね。それでは、もしかりに置いてしまう、そうしたときに、予算の都合とか何かの都合で、ある程度工事に手を抜くというようなことも考えられる。それでも一般の人にはわからない。学者のえらい先生が来て、むずかしい宇を書いて、絵を書いて説明せられても、そんなものはわからない、こういうことに終るのではないか。それで先ほど来、説明を受けた児玉参考人のあの図面の説明は、あくまでも机上の計画である、こういうふうにしか理解できないのですが、どんなものでしょうか。
#66
○緒方政府委員 私ちょっと言葉の使い方が悪かったかもわかりませんけれども、やはり現実に予算に計上されておるのは六千五百万円でございますから、その先のことをここで私が確言することはできないのでありまして、そういう慎重な考え方から今のような言葉を使ったのでございますが、これは完全な防護対策をすることは必要でございますので、予算につきましても十分に考慮いたします。
#67
○田中(武)委員 それでは、防護対策については、学問上もあるいは理論上も完全なものをやるということを考えておる、こういうふうに理解してよろしいのですか。
#68
○緒方政府委員 そういう条件で第一候補地を宇治ときめた、こういうことでございます。
#69
○田中(武)委員 先ほど、反対の立場をとっておられる大橋参考人は、学問的に理論的にこの炉が完全であるということと、これを宇治に置くといういわゆる立地条件の問題とは別個の問題である、こういうようにも言われております。また、伏見参考人でしたかは、これは科学的な問題でなく、社会的な問題である、こういうようにも言われております。私も、学問的に科学的におそらく心配はなかろうということについては一応理解するといたしましても、今やこの大きな反対運動あるいはまた六百万人の飲料水のもとをなしておるという点から考えるならば、一科学的な問題でなく、社会的な問題であり、かつ政治的な問題であろうと考えられるわけなんです。今、東海村に原子力研究所が建設せられておりますが、あれができるときにも、やはり賛成、反対もあったと思います。しかしながら、誘致運動を起したところもあったわけです。そういうところはあるいは科学的に水準が高く、理解があるのかもわかりません。しかしながら、どの観点から見ても、私、東海村にも行って参りましたが、ああいう松林の中で、やはり宇治のようなところとは環境も違うのじゃないかと思うのです。先ほど伏見参考人も言われておりましたが、万々大丈夫と思うが、万一のことを考えた場合に、できるだけ多くの人に迷惑をかけない方法を考えるべきである、こういうような意味のことを言われております。そうだと思うのです。また第二、第三の候補地となっておるところも、交通の上の便利という点からいくならば、舞鶴あるいは信太山等々に置いても、それほど大きな違いもないじゃないか、ことに地元に大きな反対の声があり、すわり込んでもというようなときに、押してやられるというような大きな理由もないじゃないか、このように考えるわけなんです。そこでお伺いいたしたいのですが、もう一度検討するというようなお話でありますけれども、地元の人たちが十分納得ができないままに、押してもあくまで設置するだけの気持を持っておられるのかどうかをお伺いいたします。
#70
○緒方政府委員 これは、先ほども岡本委員の御質問にもお答え申し上げましたけれども、地元の方々のお気持も十分尊重して、十分納得を得てやらなければならぬ、かように考えましたことは、先ほど申し上げました通りでございます。ただ、私といたしまして、先ほどから申し上げます通り、準備委員会を開きまして、関係の学者に集まっていただいて、権威のある決定をしていただいたものでございますから、やはりこれは学問的には十分尊重していかなければなりませんし、今後の原子力の研究あるいは平和利用の問題を進めますためにも、学問的な基礎の上に物事が進んでいくように努力をしなければならぬと、さように考えております。しかし、ただいま申しましたように、現実の問題といたしましては、十分地元の御意向を尊重していかなければならぬ、かように考えております。
#71
○田中(武)委員 学問的にこれは大丈夫だということも、先ほど来、児玉先生あるいは西脇先生のあのいろんな統計なり図面を見てお話を伺っている委員も、おそらく先生たちが言われるから大丈夫だろうくらいのことなんだろうと思うのです。私もそんなむずかしいことはわかりません。問題は、その話をしておられる先生方を信用するということに尽きると思うのです。それならば、やはり精神的な問題じゃないかと思います。先ほどもちょっと出ましたが、もちろん今そんなことを言っておるのは時代おくれであり、あるいは考え違いであるかもしれぬが、日本人の多くが、原子力という言葉から受けるものは、長崎、広島、そして福龍丸なんです。この恐怖心をどう除いていくか、こういうことなんです。それがない限り、今後この種の問題はいつも問題をかもしてくると思うのです。従って、日本の原子力平和利用の推進もはばまれてくるようなおそれもあると思うのです。これについては、文部省あるいは科学技術庁、各大学等が、こういうものはこわくないのだということをもっと指導しなくてはいけないと思うのです。そういう点も抜かっておると思います。
 そこで、西脇さんにちょっとお伺いしたいのですが、なかなかいい御意見を聞かしていただいたのですが、あなたのそういう心配ないのだということを、どうすれば一般の人に理解させることができるか。あなたも学者として研究せられたことを、ただ机の上で言っているだけでは何もならない。一般の人がほんとうに安心できるような方法はどのようにしたらいいか。それはどのようにお考えになりますか。簡単でけっこうですから……。
#72
○西脇参考人 将来、原子力の研究の発達という観点からいたしますと、今お話のありましたように、この際何としてもわれわれは原子力の研究という面と原水爆というものをはっきりと切り離して考える。つまり原子力の発達のために、われわれに人類の最大の科学的成果ともいうべき原子力にいつまでもおびえ続けることはできないのであります。あくまでも、原子力の悪い反面である原水爆を極力抑えるが、一方研究は推進しなければならぬ。そのためには、最もいい方法は何かと言われますけれども、それはまず最初に学者の一致であると思います。私は、原子力時代に当って、いろいろな利益を人類が受けると思いますが、そのうちの最大なる幸福というものは、われわれ人類が、お互いに、反対のための反対といったような、憎しみの感情を好むと好まざるとにかかわらず捨て去って、私たちがもっと平和のうちに、心からお互いに協力しなければならないということを強く悟るに至ることであると信じております。
#73
○田中(武)委員 悟ることであると信じておる、こういうことですが、それは哲学だと思うのです。問題は、やはり心配しなくてもいいのだということをどのようにして一般に知らすか。これはもちろん学者の仕事じゃないかもわからぬ。しかし、先生としてはどういうことを望まれておるか。それから、アメリカにおいてはこうやっておるとか、イギリスにおいては川に流しておるとか、こう言われますが、イギリス人やアメリカ人の受ける感じと日本人が受ける感じとでは、先ほどから言っているような理由によって、原子力に対して相当ギャップがあるということも考えていただきたい。そこで先生は、どのようにして当局において宣伝してもらうならばいいとお考えになっておるか、こういうことを私は聞いているわけです。
#74
○西脇参考人 非常にむずかしい御質問を受けまして、これは非常にむずかしい問題だと思いますけれども、最も大きなことといいますのは、やはり教育だと思います。従って、まず最初に教育機関における諸先生の意見が一致するということが大切だと思います。先ほどから川上さんとか大橋さんの反対意見のときにしばしば引用されました阪大の先生の名前がございますけれども、しかし、この先生方は、はっきり申しまして、決して放射能の専門家とはいえないと思います。従って、もしもそういう人が、それでなくても私たちが一般を説得するために努力をしなければならないのに、放射能問題に関する深い認識も持たずに、一般に対してより大なる危惧を与えるような扇動演説を行なって参るということに対しましては、私ははなはだしく遺憾に思っておる次第でございます。
#75
○田中(武)委員 緒方局長は急いでおられるようだから、一言だけ最後に申し上げて、私の質問をおきたいと思います。これは同時に準備委員であられる二人の参考人の方にも申し上げておきたい。
 いろいろ申し上げましたが、結局は、一月九日以来出てきたところのいろいろの問題を、もう一度あわせて準備委員会において検討していただきたい。そうして地元が納得をしないのに押しつけるようなことは断じて避けていただきたい、こういうように考えております。そこで、政府といってもあなたしかいないのだから、気の毒だけれども、あなたに聞いてもらわなければしようがないが、絶対に押しつけることはやらないということを、言っていただきたい。それと同時に、これは宇治だけの問題ではない。現にきょう大阪の府会議長さんが参考人として呼ばれてれるということは、その水を飲んでいる大阪であり、尼崎であり、この阪神間六百万人問題である。これは学問的には大丈夫だというかもわからぬ。しかし、六百万の人に大丈夫だということを西脇さんが一々知らすということはむずかしいと思う。それにはやはり納得した上でないとだめだと思います。絶対に地元が納得しないのを押しつけるようなことは避けていただきたいと思いますが、いかがですか。
#76
○緒方政府委員 先ほど来申し上げますように、十分念を入れて進めていかなければなりませんし、十分御納得の上で進めたい、かように考えております。
#77
○菅野委員長 通告順によって、山下榮二君に発言を許します。
#78
○山下(榮)委員 岡本、田中両君によって大体言いたいところは言い尽された感じがあるのですが、二、三それに関連をいたしまして参考人の方に伺っておきたいと思うのであります。
 原子力の研究はもちろんのこと、平和利用に対しましては、だれ一人として反対する者はありませんし、むしろ国民は原子力の平和利用を大いに推進してもらいたいことを熱望しているに間違いないのであります。こういう観点からいたしまして、今回関西に研究用の原子炉を設置しようと試みられておることは、きわめて適切なことであろうと私ども考えておるのであります。ところが、その準備委員会で―先ほどいろいろ繰り返されておりまするが、一月の九日にいろいろ相談されたことは、設置条件として、気象、地質、廃水、管理、利用の便利なこと、あるいは転用敷地等があるということ等がおもな中心だったように拝承いたしたのであります。ところが、放射能についての国民の恐怖心ということについては、ただいま田中君も申し上げましたように、日本国民は長崎、広島、ビキニの水爆実験等によって、きわめて、放射能といえばその恐怖におののいておるというのが国民の実情であると申さなければならぬのであります。ここに私は大きなポイントがあるのではなかろうかと考えておるのであります。イギリスの原子力公社の投機条件の発表等を見てみますと、たとえば、水道の水の取り入れ口はいけない、あるいは一般国民の行楽地はいけないというように、いろいろ条件を具備してこれを社会的に発表いたして参っておるのであります。どうも準備委員会で検討されるときに、これらの点に関しての検討がいささか私は足りなかったのではないか、こういう感じを受けるのであります。そこで私が伺いたいと思うのは、児玉教授は先ほどから、外国は大学の中にもある、こうおっしゃるのでありますが、それならなぜ大学の中に設けるということをお考えにならぬのか。宇治というところに考えられるところに、水源地がその下にあるというところから問題を起してくるのであります。あるいはまた大学と申しましても、日本の大学と外国の大学とはその規模において、敷地等の関係からもって無理であろうということもわかるわけですけれども、どうもそこに理屈のこじつけがあるようにわれわれは考えられるのであります。もう少しそういう点は国民に納得のいくような説明がされなければ、おそらく阪神間の住民は納得しないのじゃないか、こう考えております。設置の際において二つの安全保障の条件は出されております。しかし、今の応答の中に繰り返されておりましたように、これには相当多額の費用が必要であろうことは論を待たないのであります。しかし、私がここで申し上げたいのは、いかに安全保障が完備されると申しましても、宇治でこの前火薬庫が爆発いたしましたのも、火薬庫の火薬の貯蔵についても、そう無計画な、そう冒険的なことが行われておるとは思わないのであります。それ相当のやはり貯蔵するに安全な条件が具備されて、そうして貯蔵されていなければならぬはずであります。しかるに、ああいう災いが一度ならず何回か過去に繰り返されて参ってきておるのであります。これは事実が示しておるのであります。さらに私は、皆さんは学者でありますからおそらくお調べになっておわかりのこととは思うのでありますが、一昨年アメリカのアイダホ州のアーコというところで、原子炉の操作から何か技術者のあやまちで、わずか二秒間燃料を燃やし過ぎたというところから、非常に大へんな問題が起きておるのであります。政府はその原子研究所自身を直ちに全部密閉いたしまして、一カ年間放置して、今後の貴重な資料にするようにされたと報じておるのであります。もう一つ同じアーコの研究所で同じような災いが起きておるのであります。それはその研究所にあります廃棄物の処理タンクから汚水が漏れて、近くのスネーク川という川にしみ出て、その下流でその水を飲用に供しておる人たちが非常に問題を起したということが報道されておるのであります。これらを思い合せてみますると、宇治に設置するということはきわめて重大な問題ではなかろうか、こう考えられるのであります。こういう点に対して 一体準備委員会の方ではいかような配慮をされたのであるか、その点を明確にこの際明らかにしていただきたい、こう思うのであります。
#79
○児玉参考人 アーコのことは私よく存じません。よく調べてみたいと思いますが、とにかく千キロの原子炉というものは動力用の原子炉なんかとはけた違いでございまして、先ほどから御説明申し上げましたように、爆発に類する事故というものは、せいぜい水が吹き出す程度のものでありまして、原子爆弾のような爆発の絶対にないことは、これは万人が認めるところでありますし、また水が漏れるようなことがございましても、先ほどから御説明申し上げましたように、二重、三重の設備をいたしておりますので、そう御迷惑をかけるような事態は起らないと存じておる次第でございます。
#80
○山下(榮)委員 私は、さっきから同じことを同僚諸君が申し上げましたから申し上げませんが、参考人の方々の話を伺っておると、どうにも無理にこじつけられるような感じがするのであります。たとえば西脇さんのお話を伺っておりましても、危険性について、交通事故を取り上げて、交通事故はこうだけれども、これはそう大したことはない、こういうようなことを言われるのです。私は、交通事故というのは事故そのものが直ちに発生する問題でありますが、放射能というものになって参りますと、おそらくその自覚症状というものがいつ現われてくるのか、こういう点等が未知数であろうと思うのであります。きわめて危険なものではないかという感じを持っておるのであります。これらに対して学者として研究をして、それはこうなんだ、一体どれほどしたら自覚症状が現われるのだ、こういうことがいまだに対外的に一般的に明確になっていない、こう思うのであります。ただひょっとすると子孫に影響があるだろう、いろいろ人に恐怖心を与えるようなことのみが流布されて、安全に対するところの言葉というものが一つも現われて参っていないのであります。もう少し、そういう点について、こうなるということを、国民が納得と理解のできるような方法をとられることが必要じゃないか。交通事故を取り上げて言われることは、それは、交通事故は直ちに目に見える問題ですから、われわれはこれはこじつけて言っているのだとしか理解できないのであります。そういう点をもっとはっきり、どうなるということが学問的に証明できるような方法を考えてもらいたい。もう一つは、いずれにしても、潜在的に危険は免れないものだということは言われておる。これは宇治であろうと、どこであろうと、一緒であろうと思うのであります。そういうことに対しまして、放射能の危険性というものについて、皆さん方の、もう少し国民を納得させるような方法を明白にしていただかなければ、どうも理解ができない。
 もう一つわれわれがふに落ちないことは、先ほどから申し上げ、また西脇さんが申されておりましたように、学者の間にややともすると意見が相反しておるのではないかといううらみが少くないのであります。これは、学者は一致してだれもかれも同じ意見であるということであれば、これは何をか言わんやであります。しかしながら、学者の間でも多少意見の相違がある、こういうことになって参りますと、われわれは学者をたよる以外にその理論は持っていないのであります。そういうところに今回の問題に対する世間の人の大きな不安、動揺がある、こう申さなければならぬと思っておるのであります。先ほど西脇さんも学者の統一がまず第一だということを言われております。こういう点は一体どこにその危惧があるのか。またそこまで徹底的に学問的に学究が行われていないのか、その辺がわれわれにはわからないのであります。どこで意見のそごを来たしておるのであるか、どこに研究が足りないのか、まだ研究の過程であるのかという点を一つこの機会にお知らせ願いたい。
#81
○西脇参考人 非常に長い質問でありまして、全部覚えておったかどうかわかりませんが、私の覚えておる範囲内でお答えさせていただきたいと思います。
 交通事故との比較というのも出しましたし、またほかの英国における事故の比率というものも出しましたけれども、これは放射能に対する最大許容量というものを考える基礎になっておる。これはすぐには目に見えない危険性を目に見えるものと比較することにより、その相対的な危険性の程度をはっきりと認識していただくためのものです。私たちが命がなくなるということは、たとい交通夢故でありましても、放射能によるものでありましても、やはり同じくこれは悲しいことでありまして、決してあとで起ろうとその場で起ろうと変ったものではないのであります。目の前で死んだからといって、悲しさが少いということにはならないのであります。われわれとして特に考えなければならないのは、特に科学者として注意しなければならないのは、世の中におけるいろいろな社会の危険性の相対的な危険度に応じた妥当な感覚を大衆一般に与えるように努力すべきである。非常に小さいものを非常に大きく言うようなことはいけない。特に放射能のように目に見えない、われわれの本能的な感覚に直接訴えることのないものに関しましては注意しなければならない。確かに放射能は、今申しましたように、本能的な感覚に訴えることがないのであります。従って、できるだけ冷静な科学的判断に待たなければならぬ。従って、たとえば、研究所の内部とか、そういったところにおいては、よほど注意しておかなければならない。こういう目に見えないものであるだけに、監視機構というものを厳重にして、そうして安全度ということをわれわれは確認してもらいたい。よく監視機構をつけるということは危険な証拠ではないかと申されますが、決して危険にするためにやるのではない。かつてマグロの放射能の汚染がありました。現実の汚染でありました。ところが検査が廃止されたときに、一般の方々は安心されたかもしれませんが、われわれ専用家はかえって心配したのであります。監視機構というものは、目に見えないものを皆さん方に目に見えるようにする。つまり自動車の走る道を歩いて渡るときに、目をつぶって渡ると危ない。だから目をあけて渡ってもらいたい。目をあけて渡るということが、これが監視機構であります。目をあけて渡らなければならぬということは、潜在的に危険であるから渡ってはいけない、そういう理論は成り立たないのであります。従って、もちろんこの場合においてもあまり無神経に油断させるということはいけません。しかし、万全の科学的な対策を講ずれば、決して不必要に心配することはないということを一般の人々にもっと深く認識させることが大切です。わからない、わからないといわれますが、現在のところ、特に国際放射線防御委員会というものが毎年――毎年ではないかもしれないが、定期的に開かれている。放射線防御に関する研究会が毎年開かれておる国と、それから二年間に一ぺんとか三年間に一ぺんとか開かれておる国があります。これは一九二〇年以来、定期的に国際的にも集まられて相談されまして、大体この限界以下だったら決して不必要に心配する必要はないという限界が出されている。これが最大許容量という名前でもって国際的に勧告されておるわけです。従って、こういった最大許容量というものをどういうふうに適用するかといいますと、原子力の研究あるいはその利用に当ってこそ、こういった考え方を適用すべきである。むしろ原水爆の汚染とかそういったものに対しては、最大許容量の概念は適用すべきでない。そういう殺戮の目的をもって行われるものによって、たとい一名の障害も起らなくても、潜在的な危険性が少しでも上昇することは、われわれとしては極力避けるべきだ。これに反対するのは、むしろ将来原子力の平和的研究を進めなければならないがゆえに、われわれは極力反対しなければならないと思います。
#82
○山下(榮)委員 最後に伏見参考人に伺っておきたいと思うのですが、イギリスのような、財政上日本より相当豊富な国でさえ、こういうことに対しては、水の取り入れ口は避けなければならぬとか、いろいろの条件を出しておるのですが、イギリスといえども、防護施設というものは完全なものを行うに間違いがないのであります。まして日本のような財政規模の乏しい国においては、それらの完全な防護施設が行われなければならぬといういろいろの条件はあるにいたしましても、私は、でき得るならば、水源地であるとかそういうところは避けて、万が一いかなることがあっても、災いを最小限に食いとめることができる地方を選ぶことが、私は日本の実情から考えても、きわめて適切ではなかろうかと考えられるのであります。こういうことに対しまして、委員会としての皆さんのお考えを伺っておきたいと思うのであります。
 もう一つ、政府当局の方が今いらっしゃいませんから、いずれ機会を得まして伺いたいと思うのですが、先ほどからの田中君との応答の間に、宇治は第一候補地にはあげられているが、あるいはそのほかに舞鶴あるいは信太山という名前もあがったということも伺ったのであります。第一候補地ということには決定をされたけれども、これに設置するという決定的な決定はまだ行われていないのであります。その後に、阪神間の住民がこのことを知るや、大阪を始め、阪神間のそれぞれの地方議会が立ち上って、反対の声を上げていることは皆さんの御承知の通りであると思うのであります。こういう観点からいたしまして、第一候補地にはあがったけれども、こういうことでは工合が悪いから、他に適当な土地を求めるべきである、こういうふうにお考えにはならぬかどうか。まだ宇治といえども決定的に決定されたわけではないのでありますから、この点に対して委員としてのお考えのほどを伺っておきたいと思うのであります。
#83
○伏見参考人 先ほどから何度も申し上げておりますように、純科学的に申しますれば、これこれの設備が整えば、まず普通科学的常識の判断におきましては安全なものが作れるということは、何度も繰り返して申し上げた通りでございます。これに関しましては、学者の仲間で別にどなたも不一致がないと思います。絶対安全なもの、科学的常識の範囲内で安全なものができないというのはうそだと思うのでありますが、その条件が整うか整わないかということは、私たちの力だけではできることではございませんので、文部省当局に大いに努力していただくことも必要でございましょうし、それから皆様方の御努力にも大いに待たなければならないところだと思うのでありますが、そういう意味においてできるだけ完全なものが整いますように、少くとも予算面においていろいろの意味において今後御援助をぜひお願いいたしたいと思うわけであります。ただし、そういうものが十分整いましても、原子力に関します私たちの勉強と申しますのはまだ始まったばかりでございますので、私たち自身が、現実のものに対して十分な自信を持っているということでは必ずしもないわけでございます。日本にはまだほんとうの意味での原子力の専門家というものは一人もおらないと思うのであります。みな要するに書物の上で勉強したり、あるいは外国へ行って原子炉のそばでしばらく実験をしていたというような経験を持った方が二、三おられるというような程度であります。御自分で原子炉を作るのに参加されたというような方は、一人もおられないであろう。そういう意味において、現存私たちが持っておる自信というものは、どれほど信用できるものであるか、理論的には、これならば大丈夫だという十分な自信を持っておりましても、現実のものを動かすという段階において一体どれだけ自信が持てるか、こういう疑問がないわけではない。そういう意味において、できるだけ用心いたしまして、危険の大きいようなところはできるだけ避けるということが、賢明な方法であろうと考えるわけであります。
 それから、第二番目の御質問は、これも先ほど来何度も申し上げたことでございますが、委員会といたしましては、一応ここを第一候補ということでもっていろいろな心づもりをし、設計をしたりしておるわけであります。その条件が整わないというような場合であるとか、あるいは地元の方々の御納得が十分にいかないというような場合には、第二候補ということを考える余裕があると私は思っております。しかし、これはほかの方々の御意見では違うかもしれませんが、私といたしましては、そういうふうに考えております。
#84
○児玉参考人 ただいま、こういう事態になったから、第二候補地もあることでもあるし、宇治をやめて、この原子炉を設置する場所をほかにするつもりはないかどうかというお尋ねのようであります。実を申しますと、私は大学の教授でありまして、行政官でも政治家でもないのであります。できることは、学問的にどういうことであるかという結論を出すことであり、また、それが私たちの任務であると考えております。それで、この準備委員会におきましても、今までは学問的に十分安全なものができるという点で意見が一致しておると思うのであります。伏見さんもこれはできないとは言えないとおっしゃっておりますが、いろいろ議論が出まして、今後の準備委員会でそういう点が検討されるかもしれません。その結果、学問的にできないということが明らかになれば話は別でありますが、私自身は専門家ではございませんけれども、今までいろいろの方の御意見を伺いまして、十分安全な原子炉が設計できると考えております。と申しますのは、原子炉々々々と申しますけれども、別に特別のものではございませんで、普通の化学工場などでやっておりますものと危険な部分は同じなのであります。アンモニアの合成をやっていて、高圧パイプが破れて、火がついて、大きな事故を起した例もあります。そういう危険が起り得ること、並びにその防護対策というものも、化学工場などと全く同じような気がいたすのであります。私も化学工場に八年間勤めておりまして、いろいろな経験をしたのでありますが、そういうような観点からいたしまして、私の感じといたしましては、学問的に、また技術的に安全なものができるというように感じております。そこまでの結論を出すのが私たちの任務でありまして、そういう結論を出して社会的な不安があるとか、地元が反対するとかいうこととは別問題だと思っておるのであります。そういうことは、その衝に当られる方が適当な処理をされるだろうと私は考えておるのであります。そこで、私個人の人間としての意見はどうかと言われますならば、私は学問的に安全なものなら、できるだけ御説明をして、地元に納得をしていただいておきたいと考えております。これは個人の考えです。そして、そういうふうに努力し、説明することだけが、われわれの義務でもあり、またほんとうに国民は、一般大衆の方もいつかはおわかり願えるだろうという信念を持っております。ただ、これが学問的に見て安全であるのに、ただ恐怖感のようなところから反対であるというようなことで、よそへ簡単に持っていくという性質のものではない、私個人はそう考にておりますことを申し上げます。
#85
○山下(榮)委員 今、学者としての立場からお話を伺ったのでありますが、特に私がこの機会に申し上げておきたいと思うのは、最近日本は染色工場あるいはその他いろいろな化学工場がたくさんふえて参るのであります。あるいは化学工場に限らず、鉄鋼その他の機械工場にいたしましても、クレーンであるとか、いろいろなものに対しましても、いろいろな規則で、安全装置の設備をしなければならぬというきびしい規則のあることは、皆さん御承知の通りであると思うのであります。ことに、化学工場等についての、いわゆる工場から放出する水等に対しましても、相当浄化装置をしなければならぬとか、きびしい条件がつけられて、それで工場設置が許可されることも御承知であろうと思うのであります。しかるに、それらの工場から出ますところの多くの悪水というものは、その付近の河川というものを極度に汚染しておることも御承知であろうと思うのであります。私は尼崎でありますが、尼崎の川といえば、私がこまい時分には、きれいな川で、魚がよく取れて、その川で泳げるものであったのが、最近ではまっ黒けの色の水になってしまった。泳げるどころか、魚どころか、何もいなくなってしまったのであります。これは、パルプ工場、染色工場その他化学工場の設置によって、工場から放流する悪水によってそういう結果を招いておることは、論を待たないのであります。尼崎の小学校の子供に川をかけと言えば、水の色を黒くかくという、まるで奇怪な話すらわれわれは聞くのであります。これは要するにいろいろな条件がありましても、それらの条件を完全にそれぞれの工場が守り得ないというところに、私は原因があろうと思うのであります。行政官のそれらの監視の機構がありまして、あるいは県その他行政官がそれぞれの工場を回って監視はいたしておるのであります。しかしながら、その監視の目をかすめるというのですか、目が届かないというのですか、悪水が放流されて参ってきておるのであります。こういう過去の現実からわれわれは考えて参りまして、放射能というがごとききわめて危険なもの等については、十分な準備とその対策の上にも対策を立ててかからなければならぬことは、論を待たないのであります。それよりもむしろ、私が先ほどから繰り返しますように、水道の水の取り入れ口というようなところは避けて、万一災いがあっても、最小限度に食いとめるという場所を選ぶということが、私はきわめて賢明な策ではなかろうか、こう考えられるのであります。学問的に、理論的にいかようにりっぱにそれが安全なものであると証明されましても、その上にも万が一ということがありますから、そういう点を今後準備委員会の方ではとくとお考えいただきたいことをお願い申し上げまして、私の質問を打ち切ります。
#86
○菅野委員長 次に岡良一君。
#87
○岡委員 時間もおそくなりましたので、簡潔にお伺いをいたします。今度いよいよ原子炉を運転されるという場合に、平常運転の場合における事故の安全の保障、あるいはまた万一の事故の場合における安全の保障等についていろいろなる御見解を承わりましたが、そこで最終処理の問題です。原子燃料の最終処理について、その防護の対策というものはどういうふうにお考えでございますか。
#88
○児玉参考人 ただいまの点は私は詳しく存じないのでありますが、ウラニウムは借りることになっておるのだそうでございます。使いましたウラニウムはアメリカに返すことになっております。
#89
○岡委員 ところが、現に、御存じのように、今度の細目協定の改訂で、買い取るということの交渉を進めておるのです。また一方では、アメリカ側とすれば、一般協定の名のもとにこのウラニウムそのものを売却しようという協定を結ぼうということを向うから内示しておるわけであります。従って、これからは、実験原子炉であろうとも、これを建設し運転しようとする場合には、やはり単にアメリカに返すのであるからということではなく、最終処理に対する安全保障について、やはりみなの納得のいく対策がなければならない。これがないという点、これではなかなか下流の諸君も安心がなるまいと思うのです。
#90
○児玉参考人 お説の通りかと存じます。原子炉の、管理ということは、何か法律ができるのだそうでございますが、どういう趣旨の法律ができるかまだ私はよく存じませんが、燃料の処理についても法律ができるか、できたかよく存じませんが、燃料の処理は、燃料公社一本でやるんだということも聞いております。いずれにしても国家的にそういうことが規定されてくるんじゃないかと思いますが、ただ、ここで私が申し上げておくことができますのは、照射済みの燃料を処理いたしまして、いろいろ化学的な加工をするということは非常に危険を伴う仕事でございまして、これこそよほど慎重に特別な場所でやらなければいけないと思うのでございます。それで、これはいずれ法律で規定ができるだろうと思いますが、少くとも私たちは、もし宇治へ原子炉が置けるといたしまして、その燃料を買うことができたたといたしましても、これはきっと大学のものになるんじゃなくて、原子燃料公社のものになるだろうと思いますが、そういう燃料を宇治で大量に処理するようなことは絶対にいたさないということを申し上げて差しつかえないと思います。
#91
○岡委員 いずれお説の通り管理に関する法律ができ、あるいは燃料公社等によって譲渡あるいは移転その他の一切の処理はすることになろうと思いますが、ただ問題は、今のところそのめどが何ら立っておらないということ、そこに私は一つの問題があるのではないかと思うのです、宇治に建設するという点について。
 それから、先ほど山下委員からも申されましたけれども、アーコのあの事故による暴走でございますが、これは十分専門家の方々の御研究を願いたいと思います。あれは二秒間ばかり制御棒をそのままにして加熱をいたしまして、原料が溶解してしまっておる。その後、実験動力炉の貯水槽から相当強い放射能を持った水が漏れておるというので、問題を起しておるわけです。こういうことは、今後も宇治のみならず、日本の原子炉にとって教訓的な事例でありますから、アメリカ原子力委員会は、発表をきわめてしないような形のように見受けますけれども、十分やはり御調査あって、万全を期すべきであろうと私は思うわけでございます。
 それから西脇さんにお尋ねをいたしますが、先ほどおっしゃいました最大許容量の十レントゲンでございますが、これは非常に可変的なものではないかと私は思うのでございます。いろいろ数字をお示しになりまして私ども非常に感銘深く承わったのでございます。ただ、現在の数字でございますが、最も重要な胎児から三十才までにおいては、最大許容量は十レントゲンであるということは、これは非常に可変的なものではないか。皆様方の今後の御努力によってずっと数字は改められていくという要素が多分に含まれておる数字じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
#92
○西脇参考人 この胎児から三十年に至るまでに十レントゲンという数字でありますけれども、これに関しましては、もちろん可変的でありまして、これよりは別に、従来は原子力工場の中で働く職業的な最大許容量がきまっております。この職業的な最大許容量は、御承知のように一週間当り〇・三レントゲンということになっております。そうして、一年間で大体十五レントゲン、十年で百五十レントゲン、三十年で四百五十レントゲン、こちらの方が今まで職業的許容量として出ておったのです。これは少し高過ぎるのでもっと下げるべきであるという意見もある。ところが、昨年の六月十二日に、初めて最低限はこれ以下で食いとめろ、民族全体に放射線が及ぶ場合には、平均一人当りこれ以下で押えてもらいたいという下側の限度が出ております。現在下側と上側ではさまれておるという形になっております。もっと研究が進められますと、上の方が下って、下の方が上るかもしれない。実際上の方の職業的許容量の方をもっと少くするべきだということも考えられていますが、現在のところ、下の方の民族全体に対する許容量の限界である三十年間に十レントゲンというのは、十分安全係数がとられているので、これよりもさらに下るというようなことは、今のところ考えられないと思います。
 それからもう一つ、先ほどから紙上あるいは机上計画といろいろ出ております。また原子炉がよく爆発する。原子炉にももちろんいろいろな型があるので、高速中性子炉とかいうものは不安定な、危険性の高いものである、そういったものであります。もちろん、こういった計画に当りまして――これは何をやるに当ってでもありますが、まず最初に紙上であるとか机上であるとか、徹底的に計画を立てまして、それから実行に移すことが必要なのであります。紙上計画あるいは机上計画、そういったものも立てずに反対をしておられるような学者も一部にあることは、われわれ非常に遺憾に思うのであります。
 それから、先ほどから完全に防護対策を作るということが出ておりましたけれども、いかに完全なものを作りましても、これに対して作為的な破壊行為という要素を加えますと、これは必ず危険になります。危険にする方法がございます。しかしながら、作為的な破壊行為というものまで考えますと、これは近代文明の否定になる。近代文明はそもそも相互信頼という基礎の上に成り立っているもので、たとえば万一電車、汽車、自動車の運転手が、自分で脱線さしたり転覆さしたりしたらどうなるかとか、水源池の管理人自体が毒薬をほうり込むとどうなるかというようなことを言っておりますと、これは近代文明ほど危険なものはない。従って大阪のような潜在的危険性の高い大工業部市は、そもそも存在さしておくこと自体がいけないというような自己否定になってくる。従って、この点もやはり科学的な、普通の可能な常識に従いまして、妥当なところに落ちつけていただきたい。ときには非常に危険であると科学者が言っていることでも、一般の人が安全だと思っていることよりはるかに危険性の確率の低いことを言っていることがある。
#93
○岡委員 私は今おっしゃったような、いわゆる自然放射能をこえる放射線に対する許容量を、受胎から三十才まで十レントゲンに限るべきであるというのが――これはなるほどアメリカの科学アカデミーが新しい報告に沿うて勧告も出しております。ところが、遺伝学者は――私はここに文献を持っておりませんが、それでもなお許容量としては多過ぎるという説も私は二、三見ておるのです。でありますから、あなたはこれがだんだん上るとおっしゃいますけれども、まだあるいは下るかもしれない。上るか下るかということは、やはり今後の原子力の平和利用を十分に徹底するためには、重要なファクターでありますから、今後も科学者の努力によって、あくまでも人間の福祉のためにというならば、その限界を十分に定めていくべき努力があってしかるべきだと思うので、直ちにこれが上るだろうというような見通しは、科学者としては科学的ではないと私は思うのです。実は、先般都築さんがいらっしゃいました。都築さんが国連科学委員会の方にお出になって、その国連科学委員会――これは去年の三月でありますが、そのときにこういう決定がなされておるわけなんです。それは原子力施設から流出する液体廃棄物の放射能が下水系統に流れ入るときには、国際的な関心を持つべきである。ゆえに国連及び専門機関関与の国々は、一九五六年、つまり昨年の八月一日まで、これらの問題についての予報的な情報を提出してもらいたい。この上に立って国連科学委員会としても対策を考えたいという趣旨だと私は思うのですが、こういうことが決定されておるのです。その後、私ども寡聞にして、一九五六年八月一日までに提出されたこれらの情報が、どのように国連化学委員会で取り扱われているか、これもやはり原子炉の液体廃棄物の問題としては、今後日本に作る場合における参考資料に十分なると思うのですが、この点は何か情報は御存じありませんか。
#94
○西脇参考人 これはけたが違うのでありまして、現にイギリスのウインズケールというところにプルトニウムの生産炉がございます。これはちょうどカレー・ドーバー海峡に面しております。そうして、大体海岸から二マイル程度鉄のパイプを出しまして、そこから一日数十キューリーないし百キューリー近くのかなり大きな量を流しておりますけれども、日本の海岸ではおそらく――この前、原子力研究所の保健物理部長とも話したのでありますけれども、二マイルくらいじゃ日本の海岸ではだめだろう。イギリスのカレー・ドーバーというようなのは、有名な潮の満ち引きの激しいところだからできるのだろうということでありました。宇治でこれだけ流しますと、今、児玉先生のデータから見ますと、一日に流す量というのは、今考えられているもののおそらく何万倍だと思います。従って、それだけ流しますと、これは当然問題が起るのではないかと思います。
 それから、先ほど申されました遺伝学的に見まして、もちろん絶対に少しでもふやしてはいけない、遺伝学的には許容量はないということになる。しかし、これはちょうど交通事故を起すべからずというのと全く同じでありまして、だから自動車を走らせてはならないということにはならぬ。原則論としては、大衆に対しては少しも迷惑をかけてはならない。だから大衆にできるだけ迷惑をかけないようにやろうというのに、それでもいけないというのはどうかと思う。こういった定性的原則論を原子力の平和利用に適用しますと、原子炉を日本じゅうのどこに持っていきましても、潜在的危険性は完全にゼロではない。従って、原子力の研究をやる以上、定性論から定量論に移して考えなければならぬ。宇治の原子炉について万一の事故の場合でも、暫定的ではございますけれども、現在のところきめられている平均一人当り、三十年、十レントゲンという現在のところ一番きつい民族全体に対する許容量の限界よりも、はるかに低いものであります。従って、将来許容量が変ることがあっても、この程度だと、他の危険性と比較して、そんなに心配する必要はないと思われる。どこかで押えないと、これは話にならぬ……。
#95
○岡委員 僕も委員会でおしゃべりが多くてしかられるのですが、あなたもだいぶ長い。(笑声)あなたの御答弁はまっとうに過ぎているのです。私は何も、放射能の全然ない地球を作れと言っているのじゃない。ただ、どの程度まで耐えられるかという量的な原則がいいのです。この量が可変的であるということ、従って、あなたのお示しのいろいろな数字のデータというものは、可変的であるという前提から、われわれは解釈すべきじゃないかということを申し上げたわけです。それから今ウインズケールのお話が出ました。ボンベイの話も私は知っておりますが、しかし、そういうことじゃない。私はウインズケールの問題を取り上げているんじゃない。今申し上げましたように、これは原子力施設から液体廃棄物が下水系統へ流れるということを否定しているんですよ。ですから、国連科学委員会が、こういうことについて、八月一日までに情報を集めておるのです。特にまた最近行われておりますが、何か結論を出しておるかどうかということをお聞きしたいのです。あなた、そういう点、非常に博学だからぜひ教えていただきたい。
#96
○西脇参考人 私がわざわざウインズケールを持ち出しましたのは、その決定がございましてから、昨年の十月に国連の放射能会議が開かれておりまして、そのとき問題になったのがウインズケールから海に放射能をどんどん毎日大量流す問題であったからであります。結局、下水を流れても、最後に海に入ることが国際的な問題となる。その海に入ることに対する国際的な危険性、その災害の対象というものは、もちろん原水爆が一番多い。これは一発の爆発で数千億キューリーに及ぶものが、何のコントロールもなく、次から次に世界中にほうり出されておる。小型の研究用原子炉など問題にならない。こういったものによって、世界じゅうの空気、水あるいは土地全体、食糧全体がかなり汚染されており、動物や人間の中に入ってきておる。われわれはこういったところから環境の放射能汚染の研究を行なっておりますけれども、こういったものに対して、貴重な許容量の幅が少しでも狭められることは困る。そういう不必要なものによって、よその国から流され、それによってほかの国が汚染を受けるようなことになると困るというので、何らか国際的な協定を作らなければいけないという見地から考えられているんじゃないかと思います。日本で幾ら注意しておりましても、よその方から、外来放射能の大きな量を降らされるのは非常に困るわけであります。これは現実の問題であります。
#97
○岡委員 そういう荒唐無稽なことを私は聞いておるんじゃないのですがね。これは、簡単に小さい原子炉を作り、そこからの液体廃棄物が下水に流れ込むということについていろいろな資料を集めて、もし対策が必要なら対策を講じようじゃないかという国連科学委員会のことを聞いておるのです。よその国の発電炉からどんどん太平洋のまん中に流れ込んで、流されたのが日本の東京の水道に入るということは、何も言っていやしないのですよ。それはそれでいいでしょう。
 今、英国のある科学者が、それも原子力委員会を代表するような科学者が、先般のスイスの平和利用会議で何か発表されたということで、非常に安全であるということを発表されたということなんです。ところが、これは朝日新聞に載っておる記事でございますが、やはりハーウエルの近くのドーテェスターというところの近郊のウインクリスピースという奇妙な名前のところに実験用原子炉を増設しようとしたところ、住民が反対したと書いてあります。これは児玉さんも読んでおられると思う。前段のアメリカの方も読んでおられると思うのですが、そのときに有名なホッククロフトは条件を八つ出しているのです、一々その条件を読みませんが、その中でも今問題になっている環境衛生的な条件とすれば、まず冷却用水が安い、これは環境に間接に関係があるということだと思う。海に近い、それから人口密度が少い、それから水道の取り入れ口でない、こういうことを条件に出しているわけです。私どもはこの新聞を読みまして、前段では、先ほども児玉博士が言われたように、アメリカのワシントンの海軍研究所の原子力次長は、ワシントンに作った原子炉の中の水を飲んでも大丈夫ということを言っておるのですが、それは去年の六月から作り始めて、予算はきまりましたが、まだできていないと思うのです。予想上そういうものだろうくらいのところで、軽はずみに言っているのではないかと思う。竣工は来年の春だと去年言っております。それはわかりません。あるいはできておるかわかりません。いずれにしましても、これと対照的なことで、ホッククロフトが、今申しましたように海に近いあるいは人口の密度云々、水道の取り入れ口でないということを言っておるわけです。ここで私はもし西脇さんが言われたように、スイスの平和利用会議では、私も出席しておりましたが、もしこういう発言があったとすれば、これは科学者の発言としては非常に尊敬してもいい。しかし、ホッククロフトは有名な原子力の科学者であるが、きわめて良識を持っておると思う。やはり原子力を発展させるというためには、科学者の結論だけで、数字の魔術で、心配要らないのだと言うべきでないと私は思うのです。だから、やはり一般的に恐怖感がある。なるほど科学者はこの恐怖感に迎合してはいけないと思う。迎合してはいけないけれども、しかし、恐怖感があるということは事実なんです。この事実と科学的な真理というものとをどうその間に縫うて、そして一歩々々平和利用に進めていくか、ここに政治的な良識というものがあるのです。そこに私は問題があろうと思うのです。そういう点で、今、西脇さんは若い学徒として、非常に熱情のまにまにお話になったのですけれども、やはりそうはいかないのじゃないかと私は思うのです。ここに環境衛生部長がおられるが、どうですか、宇治川というのは非常に大きな水道の水源と聞いておるが、あなた方は行政の衝にあるものとして、宇治にやっていいかどうか。黒か白か、あなたは勇敢に言って下さい。
#98
○楠木説明員 私の申し上げたい点は、先ほど岡本先生からも引き出しが出ておりましたので、私ども率直に申し上げまして、あの問題が起きると同時に、原子力委員会の方々ともたびたび懇談をいたしまして、なお私の手元の専門家も加えまして検討をいたしました。やはり先ほど来、参考人の方々のお話のように、現段階の科学技術として予測される範囲においては、心配はない設計である。しかしながら、その場合にはもちろん絶対に燃料を扱わないということと、それから計画通りの施設が設けられるという条件において、現在予測される範囲において安全だというふうに考えております。しかしながら、私はただいま岡先生の御指摘のように、これを単に安全だから、それならどこへ作ってもいいということとは、ちょっと問題が違うのではないかと思うのです。ことにこの場合に、どうしても私としては、そこでなければ原子炉が設けられないという必然性を、現在も実は納得し得ないのでございまして、どうしてもここでなければならないという必然性に乏しいのでございます。たとえますれば、水の問題ということは、この必要なことはわかります。しかし、私は水道も同時に所管しておりますので、もしどこか非常に適当な場所で、しかも水がないというような場合には、私は原子力の発展のために大いに水道も引いてあげましょうということを、実は申し上げた次第であります。つまり何と申しましょうか、私といたしましては、安全ではあるが、しかし現地でいろいろおっしゃっておることも、私としては納得のできる御意見だと思います。そこで、そうなってきますと、やはり他に適当な場所があったら、私はそちらの方を選ぶべきものだという考え方を現在でも持っておるわけでございます。この点はきょうは緒方さんもどこかへ行ってしまって、政府の意見を統一しないようでまことにうまくないのでございますけれども、この点はなお文部省等ともよく相談をいたしまして、一つ円満な解決方法を持つために慎重に研究をいたしたい、かように考えております。
#99
○岡委員 とにかくこうして、大学側の方でも京都大学の意見と大阪大学の意見にかなりかけ違いがある、また水道を通じて何百万の市民の福祉をあずかっている厚生省の責任ある部長さんの意見と大学の意見との間に食い違いがある。とにかく見方によっては吉良上野介になったり、そうかと思えば浅野内匠頭になったりする格好である。問題をもっと一本にすっきりまとめなければいかぬと思います。これは私は正直のところ、原子力委員会が悪いと思うのです。原子力委員会は去年の十一月関西の原子炉準備委員会からの意見を文部省から具申されたときに、一体それにどういう返事を与えたのですか。正式に原子力委員会を開いて、よろしいと言われたのですか。よろしいと言われたのなら、その内容はどんなことを言われたのですか。
#100
○秋田政府委員 本日ちょうど正式の原子力委員会の会合を午後の一時半から開いておりまして、委員も全部出席し、関係の科学技術庁の原子力局の者もそちらに出席いたしておりますので、ことに旧聞に属しておることでございまして、私として承知をいたさない過去のことでございますから、的確に直ちに御答弁できなくてまことに遺憾と思いますが、聞くところによると、関西地方に置くことが適当であろうという意味を答えておるというようなことを聞いておる次第でございます。
#101
○岡委員 とにかく予算が二億七千万円で、当初予算が六千五百万円と、ちゃんと年次計面的に予算が組まれているのです。そうすれば、どこに置いて、どういうものを転用するなんということが積算の基礎として出てこなければ、この予算が組まれるはずがない。そうすれば、予算に組まれている以上、原子力委員会は正式に許可しているものといわざるを得ない。しかも原子力委員会の任務にはちゃんとあるじゃありませんか、「原子力利用に伴う障害防止の基本に関すること」と。ところが、この災害をめぐって政府部内の意見も統一しない、大学の意見も統一しない、こんなことのもとの責任は、あなたのことを言うのじゃないのですが、原子力委員会にあると思うのです。これは原子力委員会として、この問題を一つ白紙に返して、原子力委員会の責任において、原子力委員会の権威において、もう一度再検討してもらわなければならない。そうして、その結果をこの委員会に報告してもらって、その上で、せっかく参考人の方もたくさん来られたのだから、きょう聞いた御意見を中心に、最終的な結論が出せるかどうかは別にしまして、この問題についてはわれわれとしても十分検討する必要があると思うのです。とにかくこれは、私どもの委員会の取扱いとしては、審議の目的がはずれてしまっておるものですから、どうにもならぬと思うのです。
#102
○秋田政府委員 ただいまの岡委員の御意見は、ごもっともであろうと思うのでございます。ただ、宇治に大学連盟の実験用の原子炉を設置するということは、もちろん学術研究のためのものでございまして、原子力の基本法の中にも、学問研究の自由独立という見地から、純学問的原子力平和利用の問題は、原子力委員会の任務から特に取り除かれておるということは、御承知の通りであります。この宇治に設置さるべき大学研究用の原子炉は、大学における研究という問題と密接に関連がございますので、やや問題処置にデリケートな点がございますが、もちろんここに原子炉を置くということは、単に大学の研究のためばかりでなく、同時にそれが外部に及ぼす影響、社会的な不安の問題、あるいは申すまでもなく、ただいままで論ぜられました通り、公衆衛生の見地からこれは行政的により高い見地において考えられなければならない、その上において決定されなければならないことは理の当然であろうと思います。従って、これが最終決定は、当然原子力委員会において慎重討議の上結論が出され、その結論をもって最終的結論にすべきものであろうと原子力委員会では考えておるようでございます。
 ただいま申し上げました通り、原子力委員は、今日委員会に出席のためおりませんが、この問題処理の取扱いにつきましては、協議をしておりました際に、私オブザーバーとして陪席をしておりましたから、委員会としての意見は便宜私からこの場で申し上げられると思うのでありますが、それは文部当局から大体正式の結論を得られたならば、これを原子力委員会に御報告を願い、原子力委員会において慎重決定をいたしましたその結論をもって、一つ最終的結論にさせていただきたいということであります。しかるに、今までいろいろ事実の上においてはお話がありますけれども、まだ実態は中間的連絡と申し上げるのが正当な段階でございまして、正式な詳細な御報告がないのでございます。炉をどういう炉にするかということは、大体スイミング・プールというようなことでございますが、その規格とか、燃料処理はどうするのであるとか、その廃液をどういうふうに処置をするとか、やはりそういうことに関する詳細な御報告を得てその上で宇治に置きたい、その理由はこうというような御報告を待たなければ、原子力委員会としては正式の討議に踏み出せない。こういう立場になっておりますから、正式の御報告は、おそらく文部当局におきましても、ただいま各委員が御心配の点あるいは参考人が申し述べられた点等を考慮して、慎重に考慮の上で御結論が出、御報告が出ると思いますが、それを待ちまして、原子力委員会としても慎重にこの問題を取り扱い、そして最終決定を出したい、こう考えておるようでございます。
#103
○岡委員 私は今あなたの責任をどうこうと申し上げるわけじゃないのですよ。しかし、手続上、この問題がきわめて軽率に、かつむぞうさに扱われていると思うのです。なるほど私どもは、大学の自主的な研究を認めようじゃないかという附帯決議の発議者になっておるが、それは大学がどこでどういう条件ででも作っていいというわけじゃない。もちろん大学の方でも、先ほど来の参考人の御意見のように、種々安全の保障についての御研究をしておられることはわれわれも十分可とするわけです。しかし、ここでは、先ほどお聞きすれば、すでに六千五百万円というものが今年度予算に計上されておるのです。原子力委員会設直法には、ちゃんと「関係行政機関の原子力利用に関する経費の見積及び配分計画に関すること。」として、さらにその決定を原子力委員会の権限、責任にゆだねておりましょう。それから、そういうふうにして大学が自主的に建設されたものをいかに具体的に運用された場合におけるその障害の予防、障害の防止ということは、原子力委員会の機能、責任になっておるのです。ですから、こういう点が予算では出ておる、障害のことでは、今地元で問題が起っておるということで、非常に行ったり来たり、複雑怪奇な格好になっておる。これは、今後の原子力委員会も、いよいよ原子炉の規制等の問題もありますし、やはりこれは重大なきっかけになると思うので、ぜひ政務次官も委員長とも相談になりまして、この問題に対する取扱い方については、いやが上にも慎重に、しかも、原子力の開発については総合的に、一元的に原子力の権威のもとにやっていただくということを私は強くお願いをして、私の質問を終ります。
#104
○秋田政府委員 岡委員のお考え、ごもっともでございまして、原子力委員長にもよくお考えのところをお伝え申し上げまして善処いたしたいと思います。
#105
○菅野委員長 古川丈吉君。
#106
○古川委員 時間もだんだんおそくなりましたので、簡単に申し上げます。われわれきょう議論しておることは、原子力に関する科学的知識は、何年かの後にはあるいは一笑に付せられる議論かもしれませんけれども、今日の状態においては、非常に慎重に考えなければならぬことだと思います。放射能に対する科学的知識は、われわれとして非常に不完全であり、国家として放射能による人体の障害などの治療についても、科学的な、根本的な方針が立たないというような現段階においては、やはりわれわれが不安に思うのはもっともであると私は思う。ことに具体的の問題につきましては、従来われわれがお話を聞いておるところによっても、また本日の参考人の意見によりましても、学者の間においてすらまだ絶対に安全感を持って処しておるというところまでいっておらない。そうなりますと、われわれ一般人が不安に思うのは当然であります。そうして、従来のような戦争はおそらくないとおっしゃるかもしれません。従来の戦争のようなことが起りますれば、原子炉を爆撃されれば、一朝にして大阪を中心とする六百万、八百万市民が害を受けるわけであります。そういうことはないにいたしましても、あるいは天災地変で――これもまあいろいろな設備をすれば安全だとおっしゃるかもしれませんけれども、地震とかそういうような場合にも、やはり一まつの不安を持っておるわけであります。この問題は、要するに一般人としても非常に不安を持っておる。しかも、学者の中にもやはり宇治のようなところでない方がよい、こういうような人がおる。こういう学者は専門家でないとおっしゃるかもしれませんけれども、少くともわれわれよりも科学的知識のある方々がそういう心配を持っておられる段階においては、われわれ一般人が心配するのは当然である。従って、この問題は学問的な知識はともかくといたしましても、先ほど来、田中君などからお話がありました通りに、十分に関係者の理解と納得がいかなければ、この問題は手をつけてはならぬ、こういう考えを私たちは持つのであります。準備委員の方々は科学的なことを御研究なさるとともに、政府当局と連絡をしていただきまして、国民が十分納得するように将来とも努めていただきたい。現在の段階では、これがもし現在のような状態で強行されるならば、私は、おそらく大阪あたりから汽車を何台か買い切って、東京に押しかけてくるようなことが起ろうと思う。そういうわけで、現在のような段階でこれを実施しようとすれば、おそらく政治的にはできない、こう考えます。従って、先ほど来、環境衛生部長からもお話のありました通りに、できればほかの方で第二候補地を考えられぬかということを中心にお考えを願いたい。当面の責任者の文部省の局長がおられませんから、委員の方々の御意見を伺うのでありまするが、どうしても宇治でなくちゃいかぬ、第二候補地ではどうしてもだめなのだ、こういう理由がありましたら一つお聞かせ願いたい。でき得べくんば、まさかの場合でも被害が非常に少くて済むようなところに変更していただくようにお骨折りを願いたい。この変更をされるかどうか、この点につきまして一つ委員の方の御意見を伺って、私は質疑を打ち切りたいと思います。
#107
○児玉参考人 先ほどからたびたび同じような御質問をいただきまして、御答弁申し上げたような通りでございまして、つけ加えることがないのであります。先ほどから申し上げておりますように、三十何カ所調べまして宇治が
 一番よろしい、それからいろいろ御説明申し上げました通り、宇治に置いても大阪府市並びに地元の住民の皆さんに御迷惑がかかるようなことはあるまいということを確信いたしておりまして、そういうことがないならば、宇治に置かしていただきたい、こう申し上げておるわけであります。
 それから、先ほども申し上げましたように、準備委員会で、技術的に学問的に、原戸炉というものは安全かどうかという結論を出すのが大学教授である私の任務でありまして、地元が反対とか不安があるとかいうことに無関心であるわけではございませんが、これは行政官であり、政治家である別途の方々が解決される問題ではないかと思います。
#108
○古川委員 宇治は比較的京都大学に近いから便利だというだけですか。
#109
○児玉参考人 先ほど申し上げましたように、今計画中の原子炉というものは、原子炉とそれに付属する実験室が置かれるのでありまして原子力研究所が置かれるのではないのであります。それを人で申しますと、管理の技術者並びに工員のようなものがおるだけでありまして、研究者はいないのです。研究者は大阪大学なり京都大学なりあるいはそのほかの大学、これは全国にわたっているわけでございますが、主として使用する人はおそらく関西の学者であろうと思うのですが、そういう人が行って使うのですから、遠い所では非常に利用能率が落ちる、そういう事情があるということを申し上げます。
#110
○古川委員 今のお話を聞いておりますと、結局学者が不便だということだけで宇治が第一候補地になっておるように思いますが、そういうことでしたら、一つ根本的に考えを変えてもらいたい、こういうことを御希望申し上げて、私の質問を終ります。
#111
○菅野委員長 齋藤憲三君。
#112
○齋藤委員 私は質問は申し上げないことにいたしますが、この問題の取扱い方について、委員長に一つ希望申し上げておきます。私の記憶いたしておりますところによりますと、大学の研究はこれを除くという、いわゆる原子力問題のらち外にあったために、三十一年度に予算がついた。その計画はたしか何カ年計画、十数億の予算の建前で三十一年度に三千万円か四千万円の予算がついている。そうして、ただいま政務次官が申された通りに、これを原子力委員会に持ち込まれましたときに、慎重協議をいたしまして、その際に原子炉を置くことの必要性を認めたというだけにとどまっておるのでございますから、この問題が正式に結論を得まして、原子力委員会に持ち込まれましたときには、また科学技術特別委員会としてこれをさらに議題にかけて、慎重協議のために論議を戦わしたい、さように考えるのであります。
 本日は、終始参考人の御意見も熱心に拝聴いたしましたし、また同僚委員各位の熱心な御質問も承わったのでありますが、国会において、原子力平和利用に関してかくのごとく熱心に論議が行われたことは、私はこれが初めてだと考えておるのです。宇治問題は私も軽々に考えておったのでございますが、事、非常に重大であります。というのは、この宇治問題を契機といたしまして、原子力平和利用問題というものが、国会の重要な問題として取り入れられたということを私は直感いたしたのであります。特に今後、私は本日おいで下さいました参考人の方にお願いいたしたいことは、やはりこういう問題はおのおのの立場において、信念で立ち上向わなければならない問題である。常に科学の進歩過程においては、いろいろな問題が起きる。例は違いましょうけれども、コペルニクスの地動説がローマ法王から弾圧を食ったという私ら子供時代に聞いた話からいたしましても、やはり原爆の恐怖から平和利用の間までに至ります道程においては、かくのごときことが毎日のように繰り返し論議されて、初めて私は原子力の平和利用というものがわれわれの人類に非常な幸福をもたらすものだと思うのです。それでございますから、学者は学者の立場において、ほんとうに信ずるところに勇往邁進せられることによって、この問題に対して知識の少い大衆を率いていくことができる。その勇敢さがなければ、私はとうていこの原子力の平和利用を国際水準に早く追いつけることはできないと思うのです。ですから、私のお願いいたしたいことは、いやしくも科学者である、おれは原子力学者で立つのだという良識と自信のある科学者は、勇敢にこの問題に取り組んで、何人も了承のできる結論を出していただくことで、その結論によって、われわれ政治に携わっておる者も勇敢にこの問題を処理していくということでなければ、私はできないと思うのであります。
 私は、本日の委員会は非常に有益であった、今後われわれもますます勉強したいということを申し上げて質問にかえたいと思います。
#113
○菅野委員長 参考人よりの意見聴取は、以上をもって終了いたしました。
 参考人各位には、長時間にわたり貴重なる御意見を開陳せられ、まことにありがとうございました。本委員会の調査に資することきわめて大なるものがあったと存じます。委員会を代表いたしまして、私より厚くお礼を申し上げる次第であります。
 次会は明後二十三日、午前十時より開会いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時七分散会
ソース: 国立国会図書館
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