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1956/04/16 第26回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第026回国会 科学技術振興対策特別委員会 第28号
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1956/04/16 第26回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第026回国会 科学技術振興対策特別委員会 第28号

#1
第026回国会 科学技術振興対策特別委員会 第28号
昭和三十二年四月十六日(火曜日日)
    午前十時二十六分開議
 出席委員
   委員長代理理事 赤澤 正道君
   理事 齋藤 憲三君 理事 中曽根康弘君
   理事 前田 正男君 理事 岡  良一君
   理事 志村 茂治君
      小笠 公韶君    小平 久雄君
      須磨彌吉郎君    保科善四郎君
      山口 好一君    田中 武夫君
      滝井 義高君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       秋田 大助君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   佐々木義武君
        厚生事務官
        (医務局長)  小澤  龍君
        厚生事務官
        (保険局長)  高田 正巳君
 委員外の出席者
        原子力委員会委
        員       藤岡 由夫君
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局アイソト
        ープ課長)   鈴木 嘉一君
        労働基準監督官
        (労働基準局労
        働衛生課長)  加藤 光徳君
        労働基準監督官
        (労働基準局労
        災補償部補償課
        長)      岩沢 克男君
        労働基準監督官 伊集院兼和君
        参  考  人
        (米国原爆障害
        調査委員会アソ
        シエィテッド・
        ディレクター) 中泉 正徳君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関
 する法律案(内閣提出第一二八号)
    ―――――――――――――
#2
○赤澤委員長代理 これより会議を開きます。菅野委員長が都合により出席できませんので、私が、その指名により、委員長の職務を行います。放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律案を議題といたします。本日は、まず参考人より意見を聴取したいと思います。出席の参考人は、米国原爆障害調査委員会アソシエィテッド・ディレクター中泉正徳君であります。
 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中にもかかわらず、当委員会の法律案審査のためわざわざ御出席を賜わりまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げる次第であります。本案は原子力基本法の精神にのっとり、放射性同位元素等の使用、販売並びに取扱い等を規制することによりまして、これらによる放射線障害を防止し、もって公共の安全を確保せんとし、政府より提出されたのであります。本委員会といたしましては、本案審査に当り、日ごろより放射線障害等の問題について研究し、造詣の深い参考人の御意見を承わり、もって審査の参考にいたしたいと思いまして、本日ここに御出席をお願いいたしました次第であります。何とぞ忌憚のない御意見の開陳を願えれば仕合せに存じます。なお、御意見は二十分程度にとりまとめをお願いいたしまして、あとは委員諸君の御質疑により、お答えを願いたいと思います。
 それでは、中泉参考人。
#3
○中泉参考人 御指名によりまして、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律案について、私の意見を申し上げます。
 わが国が放射線障害という事柄を行政的に取り上げましたのは、昭和十二年、診療用エックス線装置取締規則という内務省の規則が発令実施されましたのに始まるのであります。今回御審議中のこの法律案も、ほとんど内容的には今申しました内務省の規則と大同小異のものなのであります。
 それで、本案に対する意見を申し上げます前に、診療用エックス線装置取締規則という内務省の規則が発令実施されまして、その結果がどうであったかという過去を反省してみることが大へんに大切であろうと思います。今から御説明申し上げますが、この過去になめました苦い経験を、今度の法律につきましては決して二度と再び踏まないようにいたしたいと思うのが、私の最も大きな念願であります。
 診療用エックス線装置取締規則というものの内容は、当時といたしましては非常に進歩的の規則でありまして、その内容は、私といたしましては、八、九分通り妥当なものであったのであります。しかし、その実施に当りまして、最も大きな欠陥はどこかと申しますと、その規則に盛られた内容が、完全に国内で実行されなかったことであります。今、忌憚なく申せとおっしゃいましたから、私、今日は遠慮なしに何でも言うつもりでおります。少しお聞き苦しい点も出るかと思いますか、お許しを願いたいと思います。内務省は、昭和十二年にああいう内務省規則を出しましたけれども、その内容を完全に国内で実施するために、これを視察、監督する実力を持っていなかったのであります。現在でも厚生省は持っておりません。厚生省の技術研究所は、伝染病研究所、薬の研究所であります衛生試験所、それから国民の栄養の研究所である栄養研究所、このくらいが大きなものでありまして、放射線に関する行政技術の研究は、内務省から厚生省の現在に至るまで、その能力がないのであります。従いまして、診療用エックス線装置取締規則は、発令、実施されたとはいうものの、その内容に違反したものが世の中に用いられておりましても、それを発見する能力がないのであります。私に言わすと、発見しようともしなかったというふうに私は感じております。それで、今度の法律案が今御審議中で、内容を拝見いたしますと、内容は法律案として総括的のことが逐条書いてありまして、まことにごもっともなことばかりでありますが、今後制定されようとしております総理府令というような法律の下につく規則が非常に大切でありまして、それを十分御審議いただきたいと存じております。それで、今申しました通り、診療用エックス線装置取締規則の轍を踏みたくないということは、私もこの法律案の制定にだいぶ関係いたしまして、ずいぶん強く申し上げたのでありまして、この法律案の中にも出ております。それは要綱の八ページの「第二十三、放射線検査官、科学技術庁に放射線検査官を置き、立入検査、放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物の収去等を行わせるものとする。」という、これを生かしていただきたいというのが私の最も大きな念願であります。ほんとうに検査のできるような設備と、それから人の能力とを完全に実現していただきたい、これが私の一番大きな念願であります。何と言いましても、この放射線障害を予防するための検査と申しますと、その基礎的の技術は、本年度に設置されようとしております放射線医学総合研究所が最もその基礎的の研究をする場になることと存じます。ただいま申し上げました放射線検査官こいうものは、やはり放射線医学総合研究所と密接な関係において、物的にも人的にも第二十三条が完全に実行されるようにしていただきたいと思います。こういうわけでありましたので、ちょっと話が逸脱するようでありますが、放射線医学総合研究所という研究所は、今日のこの法律と密接な関係を持つ研究所とならねばならぬと存じております。つまり、放射線医学総合研究所というものは、行政技術と非常に密接な関連を持つ研究所でなければならぬと思います。この放射線医学総合研究所というものは、地理的にも人的にも中央行政官庁と密接な関連に置かれなくてはいけない、こういうふうに私は痛感しておるのであります。以上が昭和十二年に発令されました診療用エックス線装置取締規則の過去を反省いたしまして、今回の法律案に対する私の希望であります。
 今度は、今回の法律案の内容をもう少しこまかに拝見さしていただきますと、今回の法律案で放射線障害の防止対象となるものは、放射性同位元素等を取扱う当事者ばかりでなく、それと全く関係のない周囲の人、あるいは相当離れた場所の一般大衆にまで及ぶことと存じます。それから、人ばかりでなく、物的障害ということもあるいは考えていかなければならぬものと存じます。それから、法律案要綱の第六ページに、「第十九、危険時の措置」という条項がありますが、危険時でない平時は、放射線検査官がほんとうに実力を持って回って歩いて親切に指導されれば、この法律案の内容が実行されることと思いますが、この「危険時の措置」というのは、とっさの場合に起ってくるので、とても放射線検査官の活動は間に合わないと思います。この点は、「放射線障害が発生するおそれがある場合又は放射線障害が発生した場合においては応急措置を講ぜしめることとし、又その場合に科学技術庁長官は、必要な命令を発することができるものとする。」と書いてあるのですが、少し心配のような気もいたします。この点、もう少し具体的に、総理府令等で十分お考えおきいただいた方が安心ではないかと思います。ただいま申し上げました通り、放射性同位元素の放射線障害の及ぶところは、相当遠距離の一般大衆にも及びます。危険時と申しますと、火災であるとか、洪水であるとか、あるいは地震であるとか、そういったようなものが考えられます。ごく具体的に申し上げますと、コバルト六〇を大量に使いますときには、大体鉛の容器に入れて使います。その鉛の容器でコバルト六〇を大量に使っておるところが火災になりますと、鉛がすっかり溶けて流れてしまいまして、コバルト六〇が裸になって出るわけであります。そういう場合には消防夫も大へんでありますし、その周囲の一般大衆にも放射線障害が発生するおそれが十分とっさの場にできてくることと考えられます。それからそのほかに、大量の放射性同位元素を工業的にあるいは産業的に用いておるところが洪水等で浸水いたしまして、そういった放射性同位元素が川に流れ出して、その川がまた水道の水源地であったりいたしますと、その及ぶところは大へんなことになると存じます。こういうようなことを考えますと、危険時の措置というのは、火災、洪水、地震等に関しまして、十分な事前の考慮が必要ではないかというふうに考えておる次第であります。
 大体大きいところをかいつまんで申し上げましたが、この法律についてはこのくらいのことを申し上げまして、あとは御質問にお答えした方がかえってよいかと思います。
 少しこの法律を逸脱いたしますが、この法律でいう放射線障害でなく、一般世の中でいう放射線障害ということは、放射性同位元素ばかりでなく、エックス線によっても相当起ります。診療用のエックス線につきましては、医療法の中に規則がありまして、そちらで取り締られることになっておりますけれども、診療用以外のエックス線装置も、工業、産業、ごくまれには農業等においてもだんだんと使われるようになってくるのでありまして、そういった障害を取り締る規則はないんじゃないかというふうに考えます。その点、将来において何かお考えいただけたら仕合せではないかと存じます。
 最後に、わが国の放射線障害というものが、諸外国に比べましてどんなに違うか、つまり初めに申し上げました診療用エックス線装置取締規則の実施がいかに不完全であったかということを端的に示す例といたしましては、診療用エックス線装置に携わっております者のおそらく非常に多くの部分が、多少とも放射線障害をこうむっておったのでありまして、私どもももちろん例外でなくて、相当程度の放射線障害を身に受けておるのでありますが、放射線障害を職場で受けるというような例は、欧米各国ではほとんど皆無でありまして私どもが行きますと、非常に珍しいと見えまして、標本でも来たような取扱いをされます。外国でどうしてこういった防御の制度が完全に実行されるかということを不思議に思いましたのですが、もちろんその職場の衛生、人命等を尊重するという程度が日本は劣っておる、こういうふうに考えます。すなわち私にとってまことに珍しく感じましたことは、一九五三年にドイツへ行きましたときに、ドイツで聞きましたところでは、職場の放射線の衛生状態がいいか悪いかということは、ドイツでは労働組合がチュックするそうであります。それからもう一つは、健康保険の手でやはりチェックするそうであります。労働組合でチェックしまして、放射線の衛生上不適当な職場が発見されますと、そこから労働者を引き揚げるそうであります。それからもう一つ、放射線衛生上不適当な職場でかりに労働者が病気になりますと、健康保険の料金を払わないそうであります。これは一九五三年に私がドイツで聞いた例でありまして、現在どうなっておりますか、よく存じませんけれども、日本と違って、国が変ると非常に違ったことがあってそうして放射線障害の制度が完全に実行されておるものだという強い感銘を受けた次第であります。もう二十分になりましたので、これくらい申し上げまして、あとは御質問を受けたいと思います。
#4
○赤澤委員長代理 以上をもちまして、参考人の意見開陳は終りました。
 これより、参考人並びに政府当局に対する質疑を行います。通告に従いまして質疑を許します。岡良一君。
#5
○岡委員 中泉先生に、今お触れになった問題について率直にお尋ねを一いたしたいと思います。実は、今度国会に提案された障害防止の法律案は、同位元素等ということで、いわば放射線を発生する装置ないし物質を中心に規制をしようということになっておるわけです。今後、原子力の平和利用などの線に沿うて、あらゆる産業分野等においても、放射線というものが、いろいろ利用の道が広げられていくということになってくると、やはり放射線の障害の防止というものは、これを発生する装置ではなく、放射線そのものについての規制というような形をとるのが正しいのではないかという意見が、前々からこの委員会でも出ているわけであります。特に臨床的な立場から、この問題について造詣の深い先生として、この点いかがお考えでしょうか。
#6
○中泉参考人 放射線源が明瞭にわかっておる場合には、その放射線源を取り締ることが一番簡単で、また経済的に早くいくことと思いますが、放射線源が不明確な場合には、今、御質問のあったような点も十分考慮しなければならない事態になると思います。その具体的の例を申しますと、放射性同位元素を川の上流に流しましてそうして水流の時間的の経路を探索するとか、あるいは北海道の苫小牧の港でやっておりますような海の砂の流れがどういうふうに動いていくかというようなことを放射性同位元素で追究するのでありますけれども、これに似たような場合に、今、御質問の通り、放射線源がはっきりしないような場合があるいは将来起り得るかと思います。
 それからもう一つ、この法律でカバーできないかと思いますが、この法律は、みんな日本の国内で放射線を発生さし、放射線源を持っておってそうして起ってくるであろう放射線障害を防止するのでありますけれども、このごろでは、御承知の通り、外国から放射線源がどんどん日本にも入ってくるというような事態が現にもう発生しておるのであってそういうときには、なかなかその放射線源をつかまえるばかりではちょっと物足りないというような場合も起ってくるかと思います。そういう場合には、やはり放射線そのものをその場所において測定する、検出するということが必要でありまして、そういうような場合にも放射線検査官ですかが活動し、その基礎的の研究はやはり放射線医学総合研究所あるいは通産省の電気試験所というようなところで、十分時勢におくれをとらぬような研究の準備が必要であろうと私は感じております。
#7
○岡委員 先生が先ほどおっしゃったように、昭和十二年に診療用エックス線装置取締規則が内務省の規則で出ました。ところが、その後の放射線、エックス線を取り扱っておる人たちに、どの程度のいわば障害が起っておるかという統計――古い統計ですが、取締規則が出てから十四、五年間の、大体昭和二十五、六年までの統計があります。一九五〇年、五一年、これは日本放射線学会が、大学関係のエックス線業務従事者の血液を調べたところ、それぞれ血液像の異常があった者が五〇年には五四%、五一年には六九%になっておるわけです。さらにエックス線技術士会が、二百三十の病院について六百九十名の技術者について行なった調査を見ますると、これはやはり男で赤血球が四百万以下、女子で三百五十万以下が二十八、それからまた白血球でも、療養を要する者、一応最近の基準として四千以下の者が七、それから注意を要する者の五千から四千という者が二十八というふうに、やはり相当、取締りの規則がありながら、直接レントゲンを取り扱っておる諸君には、このような血液像の異常が出てきておるわけであります。そういうような事情でありまするので、私どもは――先生も御承知の通り、相当電圧の高いレントゲンがどんどん入っております。しかも、装置を入れる場所は、現在のところ、ともすればただ昔のポータブルを少し広げたところに入れるというようなことで、鉛当量なども十分でないというような事情も私ども見聞しておるわけです。そういう状態を放置しておいて、ただコバルトや燐についてだけこういう取扱いを設けるというようなことでは、やはり放射線の障害防止という目標から見ては、法体系として十分ではないのではないかという感がするのであります。その点、先生の率直な御意見はいかがでしょうか。
#8
○中泉参考人 法体系といたしまして、私法律のことはよくわかりませんが、診療用のエックス線装置につきましては、医療法の中のあの内容が完全に実行されれば、相当効果が上り得ると思います。私も初めに申しあげました通り、診療用以外のエックス線装置についての取締り規則というのは、全くないのではないかというふうに私感じます。この点、あるいは法体系として手落ちがあるのではないかというふうに感じます。それから今、日本医学放射線学会の発表で、診療に携わっておる職員がエックス線障害を相当程度受けておる、こういうふうに御指摘になりましたが、大体今、御指摘の点は事実であると私は存じます。その原因は、大体二通りありまして、一つは診療用エックス線装置取締規則が完全に実行されていなかった。それは、先ほど申しました通り、内務省あるいは厚生省にこれを完全に実行させるだけの能力がない、能力がないから実行させようとしないように私は見えるのです。それからもう一つ忘れてならぬことは、日本人は、仕事を能率的にやろうとする熱意が非常に強い。悪い言葉を使いますと、日本人は特攻精神が非常にあります。それで、法律規則では禁止されておるような事柄を、仕事の能率を上げるために、みずからの身を犠牲にして、放射線を故意に浴びるというような場合が過去においてあるのであります。外国人でも、程度の差はありましても、やはりこういった仕事の能率を上げるという熱心さは相当あるのでありますが、そういった特攻精神を発揮して故意かあるいは不用意に放射線を受けた場合に、その人が確かに受けるべからざる放射線を受けたということを、個々の場合に即刻に証明し得るような制度が欠けておったのであります。診療用エックス線装置取締規則も、規則内容は八、九分通りいい。十分いいと私申し得なかったのはその点であります。今度の法律におきましても、この内容はまことにりっぱなものでありますけれども、やはり日本人は仕事に熱心でありますからして、故意かあるいは不用意に放射線を受けるような場合も起り得ると思いますが、そういう場合に、個々の例について、その人が過去二十四時間あるいは一週間という間に、放射線を職場で受けたか受けないかということを、一々チェックするような制度を、信用のある場所で、きわめて安い経費で普及するように、国で取り上げていただかなければならぬ、こういうふうに考えます。
#9
○岡委員 御指摘のごとく、放射線の障害を予防するとすれば、やはり直接従事する人の心組みが一番大事な問題だと思うのです。しかし、私ども多少の経験から考えてみまして、集団検診で二、三百枚のレントゲン写真をとれば、おそらく二日間ぐらいで〇・三レンチェン・パー・ウイークの最大許容量に達してしまうと思う。そういうような規制が現在のところ事実上はできておらない。これは特攻精神といえば特攻精神ですが、法律上も、医療法施行規則の第四章を加えて、そこで詳しい個条書きの制限がありますけれども、そうではなく、やはり法律の根拠をもって国民の生命を守るという、国の責任と国の権限を明らかにした法体系の中で守っていかなければ、医療法の施行規則を間に合せに変えてみるというくらいの程度では、容易にこの問題の解決はつかないのじゃないかと思うのです。そういう点、いわゆる医療法施行規則第四章は一応つけ加えられまして、同位元素を含んでその障害防止のための規制をやっておりますが、これは法律として、やはり監督者の権限なり、あるいはまた取扱者の義務なり、それにそむく者に対する罰則規定なりを厳重に明らかにするというところまでいかなければ、ほんとうに放射線による障害防止というものは、少くともエックス線の場合はできないのじゃないか。そう考えてくれば、この法律の中にエックス線をも含む、これは診療用のみならず、他の分野にも最近用いられておるエックス線の使用に関しても、障害防止をしようという目的をこの法律の中に含んでいるというくらいに、この法律の適用範囲を広げていくというのが親切なやり方であり、また周到なやり方ではないかと思うわけなんです。その点、先生のお考えはいかがでしょうか。
#10
○中泉参考人 私はこの法律の案文を練ります仕事に相当突っ込んで関係いたしましたが、初めのうちは、御指摘の通り、エックス線発生装置も含めて審査しておったのでありまして、私も、もちろんその方がよいというふうに考えておりましたが、私がこの法律案の御相談にあずかることを遠ざかりまして後になって、どういう理由か知らぬ間に、このエックス線発生装置が除外されたのであります。私といたしましては、先ほど少し言葉をやわらかに言うたつもりなのであって、工業、産業方面のエックス線発生装置が全く野放しになるのではありませんか、こういうふうにやわらかに言うたのでありますが、私はもちろんこの法律の中にエックス線発生装置も含めて、工業、産業方面のエックス線発生装置も取り締らなければいけないものであるというふうに考えております。
 それから医療法施行規則第四章との関係でありますけれども、医療法施行規則第四章の方を、私今ここにその条文を持っておりませんので、ただ記憶をたどってみるだけでありますけれども、あの場合に、今度の法律にあるような、はっきりした放射線検査官というようなものはなかったのじゃないかというふうに考えております。この点、医療法施行規則第四章よりも、今度の法律の方が少し頼みがいがあるように私は感じます。医療法施行規則第四章の完全実施ということは、厚生省の仕事でありましょうけれども、やはり今度のこの法律にエックス線を含めてそうして同じことでありますから、診療用のエックス線発生装置についてもお役所の所管でどうにもならぬのかどうか、そういうことは私にはわかりませんけれども、この法律でいう放射線検査官が、やはり診療用エックス線発生装置の現場にも入っていって検査をなすって、親切に指導なさるということが大へんにいいのじゃないかというふうに感じております。今、御質問の中で、間接撮影などを集団的にやる場合には、二、三日で三百ミリレントゲンに達するであろうということは、まことにその通りでありまして、そういうことを強行しておったし、現在も大部分強行しつつあるのでありましょうけれども、そういう場合に、やはりその職場で働いておる人たちが、現実に過去二十四時間なり、あるいは一週間なりに何ミリレントゲン受けたかということを、信用のある方法で経済的に実行し得るように、普及し得るように、何らか制度が立てられなければならないというふうに考えます。
#11
○岡委員 原子力基本法の方では、「「放射線」とは、電磁波又は粒子線のうち、直接又は間接に空気を電離する能力をもつもの」、こう規定しておるわけです。こういう概念のもとにおける放射線が、身体に障害を及ぼすという場合には、やはり包括的にこれを予防する、あるいはまた防止するというような対策があってしかるべきだと私は思っておるわけです。ところが、先生が昨年いろいろ御参画になった放射線の障害防止についての原案というものも私承知しておりますが、エックス線がはずされてしまった。これはどういうわけではずされたのか。ここには原子力局長もおられるし、医務局長もおられるわけだが、どういうわけではずされたか。その間の経緯を承わりたいと思います。
#12
○佐々木政府委員 それでは、経緯を申し上げます。初めはスタックの方で二年ばかり中泉さんが委員長になってこの問題を取り扱っておったのでありますが、どうしてもこの問題の解決がつかなかったので、法案を国会に提出する運びにならなかったようであります。そこで、昨年科学技術庁ができまして以来、この問題の重要性を痛感いたしまして、自後引き続いて立案に取りかかったわけでありますが、取締りの対象を所持、使用その他云々といろいろございますが、そういうものに対しましては、各省ではあまり異論がございませんでした。それから取締り基準をどうするかという問題に対しましても、あまり問題ございません。しかしながら、問題はむしろ基準等を作りました際に、それを中泉先生も先ほど来申されましたように、実施の確保をどうするか、実効を上げるためにはどうするかというところで、各省間に非常に問題が起きたわけでございます。そこで実施を確保するというのはどういうことかと申しますと、ただいま端的に例をあげられましたように、まず検査官制度その他をどうするか。それは三つの範疇に分れておりまして、一つは労働のサイドから、言いかえますれば労働基準法的なサイドからこれを推進するという行き方も考えられます。また、事実各国ではそういうサイドからこれを扱っておるところもございます。それから衛生のサイドからこの問題を取り締ろうではないかということもございます。もう一つは、事業を監督しているそれぞれの官庁が、事業を監督する立場からそれぞれの検査官を置いてそうしてこういう取締りをやっていけばそれでできるのじゃないかというふうな考え方も成り立ちます。そこで、その全部の官庁の言い分はそれぞれの立場がございますから、おのがじし法律も持ち規則もできるようになっておりますので、そう言っては行き過ぎるかもしれませんが、それぞれの官庁がそれぞれのことをやりますと、そういう検査官制度ができておるわけでありますから、検査の実施に関しまして、あるいは許可等の行政処分に関しましては、各省がそれぞれやればいいじゃないかという議論が非常に強うございまして、それに対しまして私どもとしては、まず一つは国際的な義務、これは国連憲章並びに双務協定上どうしてもこういう保健的なものを十分に取り締らなければならぬという国際的な義務が一つ、それからもう一つは、何と申しましても、こういうものは一本にして、責任の所在を明確にしてしかも一番問題の現世並びに後代の民族の厚生のところまで考えて、その危険性を十分認識するところが責任を一本にして取り締るのが、国際的な意義から申しましても、あるいは現世、後代の日本民族に対する義務からいたしましても、一番妥当じゃなかろうかというので、あくまでも少数ではありますが、科学技術庁の原子力局が中心になって、責任を持ってこの問題に取り組んでいこうということにして、許可並びに検査官その他を一本にしようというふうに考えたわけであります。ところがただいま申しあげましたごとく、問題がなかなか広範でありますので、いろいろ法規等調べてみますと、エックス線に関しては医療関係がほとんど大部分でございまして、それはすでに医療法その他で規則もできておりますし、あるいは検査官制度その他も、不十分ではありましょうけれども一応できておる。工業その他に関しましては、そのようなものはないのでありますから、通産省、文部省等でそれぞれこれに準じて作ってもらいたい。そうすれば、少くとも放射線同位元素関係から生ずる障害に関しましてはまだ件数も少うございますし、これから発展していく問題でございますから、十分取り締れるのではないか。ただエックス線といたしましては、この前申し上げましたように、一万数千件もはや件数がございましてわれわれこれを一本で取り締りたいのでありますけれども、理論はわかるのでございますが、とても少数で、実行面で不可能であるというふうに考えたのでございます。放射線同位元素の方は各省でそれぞれ分散して、許可、取締り等をやりたいというのを一本に取りまとめましてこれでも大へん苦労したのでありますが、各省も納得なさいまして、この方はまとめたのであります。残るエックス線につきましては、理論から申しますとまさしく岡先生のおっしゃいました通りでありますが、むしろ先ほど中泉先生もるる申されましたように、この問題の本質は、基準その他の問題もありますけれども、実施の面においていかに所期の目的を確保するかというところに根本の問題がございまして、その実施の面を確保するという点からいきますと、遺憾ながら理論はそうでありますけれども、科学技術庁一本でやるということはなかなかできかねることでございます。しかも一これは過去何十来厚生省で手がけておりますので、その方を改善していただくというのが最も効果を上げる道じゃないか。ただ、ただいま申されたようなエックス線に関しての工業その他の取締りがないのでございまして、取締り法規はわずかに労働基準法でこれを取り締っておるというような状況でございますので、それに関しましてはむしろ通産省その他でこれに準じた新しい法規を作っていただいて取り締っていく、こういうふうに考えておるわけでございます。
#13
○小澤(龍)政府委員 この問題につきましては、かねてから厚生省と関係各省の間に話し合いがあったことを聞いてはおりますが、私就任してまだ日にちが浅いので、古いことは十分存じておりません。就任して以後のことは、ただいま原子力局長から申し上げた通りでございます。先ほど中泉先生から診療用のレントゲン線の取締りの規則は、規則としては大体よくできておるけれども、実行面において力がない、厚生省がだめであるという御指摘を受けまして、まことに申しわけないと存じております。しかしながら、私どもといたしましては、昭和十二年に制定されましたレントゲン取締規則というものは、十分だと考えておりません。そこで一昨々年でございましたか、日本医学放射線学会の方にお願いいたしまして、新しい基準を制定していただきまして、これをもって従来の規則にかえまして、しかも真に取締り、指導の上において実効を上げるために、関係各府県の担当官を招集して講習会等もいたしまして、今日以降は、形だけ、規則だけがいいということでなくして実行面においても実績を上げるようにという心がまえをもって、取り組んで参っておるのでございます。検査官という制度は診療エックス線の方にはございませんが、医療監視員という一制度がございまして、これは各都道府県に置かれてございます。従って、都道一府県保健所医療監視員が、全国に一万数千台のレントゲンがありますので、それぞれのものを、かような行政組織を用いて監督指導に努めておるような次第でございます。
#14
○岡委員 一万数千台のレントゲン装置がある、それについては、今、医務局長の言われたような形における障害防止のための取締りをやるといいますが、同位元素だって日本で国内生産ができるようになって、しかも応用の分野が広がれば幾何級数的にやはり持ち得るところも出てくるのじゃないか、そこで原子力局長の言葉をかりると、理論的には一つにまとむべきものだ、なるほど現在線源のいかんを問わず、線の性質のいかんを問わず、あるいは〇・三レントゲン・パ一・ウイークとか、三十才までは三十レントゲンであるというような国際的な水準もあるわけです。だから、そうしてみれば、理論的にはやはり一本の放射線障害防止法というものでいくべきだ。ただ実行面になると、とこうおっしゃいますが、実行面がさっき一申しあげたように、放射線学会の報告を見ても、特に専門に取り扱っておるレントゲン技術者の調べた調査の結果を見ても、取締りの規則はあるにもかかわらず、実際には実効を上げておらない。しかもコバルトや燐や沃度は、同じ病院で使いますよ。そうすると、一方ではレントゲン室では厚生省の取締りを受ける、一方ではまたこの法律の取締りを受ける、同じ放射線が診療に用いられたときには別な面から取締りを受ける。これは医学的な応用面において病院経営管理者にとっては迷惑千万だと私は思うのです。だから、実施面から見ても、当然一本にまとめた放射線の障害防止――基本法による電磁波あるいは粒子線が直接、間接に空気を電離する作用を持つもの、これが人間に障害を及ぼす限度というものをはっきり認定して、それを越えないようにという形で、一本の法律をもって障害を防止する、これは理論的にも実効的にも当りまえのことじゃないかと私は思う。中泉先生の当初のイデアが、なぜレントゲンだけはずされたか、どうも御説明では納得できない。こういうことが、何も理由がなく、いわゆる官庁のセクショナリズムというか、そういうことで出てくる。そこで今度原子炉の規制が出てくる。そうすると、核原料物質や核燃料物質については、なるほど障害防止は科学技術庁長官に委任されるかもしれないけれども、最終的の責任はやはり総理大臣にあるかもしれない。通産大臣あり、厚生大臣あり、科学技術庁長官ありというようなことでは、同じ放射線を、しかも、扱う人間がそれによって障害を受けないようにしようという法体系が、取締りのやり方一つを見ても、みんな所管省によって違う。迷惑を受けるものは国民なんだから、その国民の障害を防止してやろうというときに、そういう割拠主義的なものは私は非常に残念だと思うのです。この点は原子力委員会等でもいろいろ御論議になったと思うのですが、藤岡さん、どういうふうに御論議になったわけでしょうか。
#15
○藤岡説明員 お答え申し上げます。原子力委員会で論議いたしました折にも、当初はやはりこの法案にエックス線も含まれることが望ましいという希望を持っておりまして、私どももそういうふうに考えて参りました。しかしながら、この実際を見ますと、先ほど原子力局長から説明もありましたように、医療用につきましては、厚生省の法律があります。それから工業用レントゲンにつきましては、もしこれをきめるといたしますと、必ずしも原子力委員会ないし科学技術庁の、原子力局の所管事項ばかりというわけにもいかないので、とにかくこの際早く放射性同位元素に関係するものだけでも出すことが必要と考えまして、そこで原子力委員会並びに原子力局の所管でありますところの原子核変換によって発生するエネルギー、それに関連する機械、そういう内容のことにまず限るのやむを得ざるに至ったのでありましてまずこれに関してできるだけ完全な取締り規則を出したい、そういうふうに考えた次第であります。でございますが、御指摘の通り、私個人といたしましても、またおそらく原子力委員会の他の委員の方々も御同感であると思うのでございますが、やはりエックス線に関する取締り規則というものをもっと強化すべきであるということを感ずるのであります。まずこれは、とりあえず放射性同位元素を主とする取締り法案でありますけれども、できるだけ近き将来におきまして、レントゲンも含めて、より完全な取締り法によって規制され、そしてまたこれが厳重に行われることを希望いたしておるのでございます。
#16
○岡委員 今、中泉先生も御指摘になったように、レントゲンが単に診療用だけではなく、理学、工業あるいは農業方面にも用いられ、これに対する取締りの法律が何もないわけです。ところが、原子力基本法では、放射線というものは一定の概念が与えられておる。しかも原子力委員会というものは、安全、障害の防止については、企画し、調査し、決定するという権限もあるわけです。ところが一方、ここでレントゲンをはずしてしまった結果として、原子力基本法にうたわれておる放射線の障害防止についての委員会の務めというものは、そこで空白ができてしまうというような点も、やはり原子力委員会としては十分考えていただかなければならないと思うのです。原子力というものは、私が申し上げるまでもなく、きわめて総合的なものであるだけに、法体系としてもあるいは行政機構としても、やはりできるだけ一木にまとまった形で進めていくということが、今後の日本の原子力の平和利用の裏づけですから、そういう心がまえで一つお進めを願いたいと思うのです。それは、明日大臣が来られるそうですから、一つ大臣からよくその意見を聞かしてもらいたいと思っております。
 この法律案は、一見いたしまして放射線の直接の影響というものがどうしても中心になろうとしておるようです。そういう懸念を私は感ずるのでありますが、事実上、放射線というものについては、直接、間接という概念は適用できないようなものであるはずなんですが、これでは、その放射線の直接の影響というようなところにきわめて関連をされておる、限定されようとする傾向があるのではないかと思うわけです。そういう懸念は私の杞憂なのでしょうか、その点、藤岡委員あるいは原子力局長の御意見を聞かしていただきたいと思います。
#17
○藤岡説明員 ただいまの御質問の御趣旨についてお尋ねいたしたいのでございますが、その直接ということは、この直接の障害ということで、遺伝の問題を考慮に入れてない、そういう意味と了承いたしましてお答えしてよろしゅうございますか――放射線医学のことは、何分私は専門でございませんので、果して私の説明が妥当であるかどうか、十分の自信を持ちかねるのでありますが、一応の見解を申し上げます。
 この防止法案は、御説の通り、主として直接の身体に対する障害、例を申せば、これの検出が、白血球の、ないし血液像の判断をもってなし得るというようなものに主点が向けられているように思うのであります。これは先ほどから御説明がありましたように、中泉博士が委員長として、この案のもとともいうべき放射線障害予防に関する勧告案というものをお出しになりました時代、今から三、四年前の時代には、遺伝に関する影響ということが調べられていなかったように存じます。従って、その当時調べられておりました障害というものは、主として直接影響に限られております。それがずっともとになってきておりますが、この遺伝に関する問題が非常に大きく取り上げられて参りましたのは、比較的近ごろのように存じます。これにつきましては、まだ定説、つまりどれぐらいまでが危険であるかということの定説がないように存じます。先ごろ日本遺伝学会並びに日本人類遺伝学会で発表されましたものを見ましても、この遺伝に関しましては、少しでも放射線に当ればそれだけ害になるんだ、これ以下ならばいいということがない。つまりこれ以下ならば回復をするというのがないという点が、直接の障害と違うのだと思うのであります。そういうような意見で、これは正しいと存じます。しかしながら、先ほど岡委員からも御指摘のありましたように、イギリス、アメリカなどの学会におきまして、生殖の遺伝と申しますか、あるいは三十才未満までにこの程度まではよかろうというふうな意見も出ておりますが、現在私の聞いておりますところでは、その学者の意見にもかなり幅があるように存じます。そういうことは将来は当然法案に取り入れられるべきものであると思うのでございますが、現在の段階におきましては、これに関する通説というものがない。近き将来におきましてそういう方面の学会の意見が確立して参りましたならば、当然そういうことはこの法案に取り入れられるべきものと考えますが、現在の段階におきましては、これが取り入れられなかった、そういうことかと存ずるのであります。
 なお、この問題は、私よりも中泉博士がその御専門でございますから、あるいは御意見が伺えれば、私も幸いだと存じます。
#18
○岡委員 では、あわせてこの点、先ほど中泉先生もおっしゃいましたので、お伺いをいたします。この間ロンドンへ行かれた松下特使の随行として道家教授が行かれましたが、道家教授がロンドンの方で発表されておられる資料と称するものを見ると、ストロンチウム九〇の耐容量というものは、五年後にもうこえるのではないかという。またこの委員会で先般都築博士は、今日のような形で水爆実験が行われれば、十年を経ずして耐容量をこえるであろう、こう言っておられました。それから、この間新聞を見ると、福岡で二十二万カウントが検出されたというような報告もあるわけです。この間の福岡の特別な検出は別といたしましても、すでに昨年の九月中旬の雨などで見ても、九月十七日には一万六千五百カウント・パー・リットル、これは秋田、一万四千五百カウント、これは仙台というふうに、一万台がずらりと並んでおるわけであります。しかも今日遠慮会釈なくソビエトもやっておるし、アメリカも来月の十五日からやる、クリスマスの水爆実験も英国はあくまでもやると言っておる。そういうことになると、カウントを換算をして7・4)(10−5乗マイクロc/cc大体そういうような程度で、飲む水としても許容量をはるかに突破しておる。五百倍も突破しておるというような状態になってきておるわけです。そういうわけで、人為的にわれわれが浴びる放射量というものは、水の場合において、あるいは大気の汚染において相当深刻なものがある。そこに持ってきて、今度は同位元素を扱うということによってあるいは部分的な、あるいは全身的な曝射にさらされるということになるわけです。さっき申し上げたように、間接撮影二、三百枚をやれば、二日間で〇・三レントゲン・パー・ウイークという許容量に近い状態になるというように、今後はこういうふうな格好で直接間接に――というのは、この取締りの対象となっておる放射能の線源とか物質発生装置以外のものからも、われわれはいろいろな形で人為的な放射能の曝射の中におるわけであります。こういうような事態を考えた場合に、もっと根本的に人類の放射能の障害を防止するという方向に大きく進めたような法体系というものを持つ、そういうものがあって初めて原子力の平和利用というものも並行的に国民が安心をして進めることができるのではないかという感じがしてならないわけなんです。今、藤岡先生のおっしゃった遺伝の問題等も含めまして、中泉先生は、どういうふうに国としてなすべきであるかというふうな点について、まとまったこれという具体的な御方針でなくても、先生の構想の一端というようなものでも、この機会にお示しをいただきたいと思うのであります。
#19
○中泉参考人 ちょっと私にはむずかしい御質問なんで、少し困るのですが、具体的なお答えしやすい点から申し上げます。ただいま御審議中の法律案は、その放射線を受けました個体が死ぬまでの間に起ってくる障害を予防しようという法律案でありまして、それの子孫に起ってくる障害は予防し得るかどうかわからないのであります。これはつまり、直接という言葉をお使いになりましたが、そういうわけであります。どういうわけでこういうことになっているかということは、藤岡さんが御説明になりました通りでありまして、子孫に起ってくる放射線障害は予防しなくてもいいというふうに考えているわけでは決してないのであって、できれば子孫に起ってくる放射線障害を予防する妥当な方法を講じたいということは、世界中で考えているところであります。しかし、藤岡さんのおっしゃった通り、遺伝学者は放射線に対しては遺伝学的に考えて、許容量というものはない、少しでも放射線が当りますと、その分量に相当する障害が必ず起る、そうしてそれは回復しないものである、こういうふうに言うのでありましてそういう観念からいきますと、放射線というものは遮蔽はいたしますけれども、遮蔽という言葉は大へんにけっこうなように聞えますけれども、必ず何がしかは外へ出ていくのであります。お金を金庫の中にしまうように、外へ決して出ないというふうに完全にしまえるものではないのであります。でありますから、遺伝学者が心配するように放射線をほんとうに閉じ込めようとすれば、仕事は一切できない。それで今、世界中でいろいろ考えておりまして、現在人間も何がしかの奇形をみな生んでおります。職場で少しも人為的の放射線を受けない人類も、何がしかの奇形を必ず生んでおります。そのうちの大部分が宇宙線によるものであろうというふうに考えられておりますが、人間の奇形のうちどの部分が宇宙線の奇形であり、どの部分がほかの奇形であるか、その辺もはっきりいたしません。それで仕方がありませんので、動物を使いましてその動物が人為的に放射線を与えられないで生みます奇形が、人工的に放射線を与えることによって、どのくらいの放射線を与えれば倍になるであろうかという研究を遺伝学者が世界中でやっている次第であります。現在その動物が生んでいる奇形を倍にする放射線量というものは、どの程度であろうかということを世界中の遺伝学者が研究しておりますが、その結論がまだ実は出ないのでございます。その結論が出ませんで、世界中どこの国でもこれを行政措置として取り上げるに立ち至っておらぬのであります。子孫に起る障害はかまわないという意味では決してないのでありまして、非常に大切なことであるけれども、まだそれを行政措置として取り上げるだけの資料が、学者の間で一致しておらないという段階であります。それが一つのお答えです。
 それからもう一つ、これははっきりした御質問ではないのですけれども、二、三の方々のお話を承わりまして私が感ずるところでありますが、放射線の障害ということは、やはりいろいろな技術官庁で、この放射線を応用していく場を所管するわけでありましょうが、しかし、この放射線障害を予防するという仕事は変りはないのであります。一つであります。お役所の機構上、その所管がいろいろであって、診療用の方は厚生省の医療法施行規則第四章に盛られてある。それから放射性同位元素の方は、原子力局でこういうふうにおやりになる。それから工業用エックス線装置は近き将来にどこかのお役所で規則ができることを期待するというようなお話でありましたけれども、これらの放射線障害の二つ以上の幾つかの規則を完全に実施するという手段は、全く同一であります。そういった障害予防を完全に実施する手段が同一であるのでありますから、私の考えとしては、やはり法律も一本にすべきであるというふうに考えます。そうでありませんと、方々の役所で作られました法律を完全にその役所で実施いたしますためには、相当の資本投下を二重にして、しかるべき検査施設それから検査官ということを重複して持たなければならなくなると思います。そういうことは国家的に考えて非常な損失でありまして、やはり放射線検査の物的、人的施設、制度は一本化すべきである、こういうふうに考えます。小澤医務局長が各府県の検査官にエックス線の診療装置を検査に歩かせる、こういうふうにおっしゃっておられますけれども、私忌憚なく申せば非常に不安心に考えます。現在厚生省には放射線衛生技術の研究所というものはないのでありまして、相当これは難事業じゃないかと思います。何か国で放射線障害につきまして一本化した法律で、障害予防の実施を推進するたった一つの、二重資本投下にならない強力な制度が生まれることを衷心から望む次第であります。
#20
○岡委員 私どもはぜひそうあるべきだと思っておるわけです。そこで、これはこの法律のいわゆる政令とか総理府令の内容になるわけでありますが、この最大許容量は今度のこの法律に基く政令ではどこに求められますか。
#21
○藤岡説明員 現在の段階におきましては、一週間三百ミリレントゲンということを基準にいたしまして、その計算をしております。これは職業人にいたしております。そういうことがやはり基準になると考えます。しかしこれは国際的の勧告というふうなものがまた変りますし、また日本のこの基準のもとは厚生省できめておりますので、それが変りましたならば、また変ることもあり得ると思うのであります。なお鈴木説明員が説明をするのが適当かと考えます。
#22
○鈴木説明員 ただいまの藤岡委員がおっしゃられた大体その通りでございますが、目下のところ〇・三レントゲン・パー・ウイークというのが世界の一応定説になっておりますので、これを最大許容量にいたした、こう考えております。
#23
○岡委員 最大許容量がどれだけかということは、放射線が広く応用されるに至ってから非常な変化を来たしておるようです。私が多少文献を調べてみると、一九二五年には、アメリカのムッチュラーというプロフェッサーが、病院のレントゲン室に散乱しているエックス線を基礎として、一カ月六レントゲン、一日〇・ニレントゲンということを発表し、一九三一年、それから一九三七年にも、国際放射線学会においては許容量の問題は大体この線に沿うということで、そこで昭和十二年の診療用エックス線装置取締規則においても、大体その許容量をここに置いたわけです。ところが一九四六年のアメリカのNBCが発行したハンドブックの中では、私どもも資料としていただきましたが、その半分の〇・一レントゲンということになっている。ところがさらに三年たったチョークリバーの会議、あるいはその翌年の国際放射線学会では〇・〇五レントゲンということになっている。従って〇・三レントゲン・パー・ウイークということになっている。ところがこれはいずれも壮年を対象とするものであるというような限定条件もついておるわけです。そういうことから一般人の安全率はその十分の一にすべきだというようなことも、大体常識になっておるようです。ところが最近またアメリカあたりの文献を見ると、やはり相当な教授が一般人に適用さるべき安全率の〇・〇三レントゲン・パー・ウイークを原子力工場などで用いろという勧告をしているようです。ロチェスター大学のクィップルという教授がやっております。そういうふうにだんだんとこの最大許容量が下げられていっていることです。私ども初めてここに一つ基準を設けようというわけで、〇・三レントゲン・パー・ウイークというのをこの前厚生省で出しておりましたが、いよいよ具体的に現場で放射線が用いられるこの障害防止の法律を作ろうというときに、〇・三レントゲン・パー・ウイーク、これでいいのですか。もう少し考えなければならぬのじゃないか。というのは、最近どんどん許容限度というものが引き下げられていっているという実勢にかんがみて、下げるべきではないかと思うのですが、これは私ども学問的な基礎から申し上げるのじゃない。ただこれまでの傾向から考えてみて、というのは、もし下げないでおいて、許容量を突破してしまったということになったときには、事、重大で、場合によれば生死にかかわるような問題になるわけです。そういうふうなことを考えた場合に、もう少し下げて、安全性というものを考慮すべきではないかと思うわけですが、こういう点はいかがでしょうか。
#24
○藤岡説明員 ただいまの御趣旨は私も同感に存じます。〇・三レントゲン・パー・ウイークという数字は、一応国際勧告になっておりますけれども、なおこれについては十分に慎重に考慮すべきであると存じます。すでに数年前におきましても、スエーデンなどは、この〇・三に対して、〇・二という数字をとっておりますし、昨年あたりアメリカ、イギリスのいろいろな学者の見解でも、これは〇・三は多過ぎる、〇・一ぐらいが適当であるということも耳にいたしております。なお、一般人に対してはその十分の一をとるということも大体常識のようになっておりますが、この放射線のこの規則には直接にあまりこの問題に触れていないかと存じます。ただ御趣旨は全く私も同感でございます。ただいまのところ、厚生省で出しておりますのは、〇・三を基準にいたしておりますけれども、現在ジュネーヴで国際連合のその方面の会議も開かれておりますし、なお近き将来にいろいろ資料も集まることと存じますので、その方面の専門の方々にお集まりを願い、御意見をよく聞きまして、ほんとうのこの省令を作りますときに、さらにその基準につきまして慎重な検討を加えるのが妥当な措置じゃないかと考えております。
#25
○岡委員 この許容量の問題など、あるいはまたそれを変更しなければならない場合に、原子力委員会あたりの御意見が中心になって動いていただかなければならないと思うわけです。そこで、原子力委員会を何とかして強化しようという希望は私ども強く持っておるわけなんですが、この法律案を見ますると、この法律案の限りでは、原子力委員会の原の字も実は入っておらない。原子力委員会は行政的な機構ではありませんから、ないのではありましょうが、こういう重要な立法について、科学技術庁と原子力委員会とは、どういう経過で、たとえば原子力委員会が発案をする、庶務をつかさどる原子力局が要綱をまとめる、委員会の承認を得る、これを成文化した法律とする、国会へ提出する、それまでの過程で、どういう接触をされてきておるわけなんですか。この点の経過について一つ承わっておきたいと思います。
#26
○佐々木政府委員 委員会との経過を申し上げます。この法案の立案と申しますか、先ほど中泉先生からお話がありました法案を受けまして、真剣に検討をいたしましたのは、去年の夏以降かと思いますが、その前からも研究はしておったのであります。それで、幾つかの問題がございまして、たとえばただいま問題になりましたエックス線の問題、あるいは所管の問題、あるいは取締りの態様の問題等、いろいろ大きい問題がございましたので、そういう大きい問題の点に関しましては、要綱の形で委員会におかけしたわけです。委員会では原子力局の意向だけでは自分らの判断にならぬので、ついては学術会議の意向あるいは委員会の下部機関に放射線の専門委員会が二つございまして、一つは法律的な問題を取り扱う、一つは放射線医学総会研究所のその専門委員会がございますので、そっちの意見も聞かしてもらいたい。各省の主張の根拠を整理して、そうして何省は法律のどういう根拠でこういうものを提出するか、整理して聞かしていただきたいというお話がございましたので、それぞれお話のありました各機関にお集まりを願って、そうして問題点を整理して、整理したものを再三委員会で御審議をいただいたわけでございます。そうして昨年の十二月の末かと思いますが、湯川先生がまだ委員で見えられたのでございまして、この問題の所管あるいは範囲等を一体どうきめるかという非常にエキサイトした委員会がございまして、その際、その問題は、先ほども申し上げましたように、民族、後世にも影響を与える問題であるので、この際、全責任を一つ原子力委員会並びに科学技術庁で持って、そうしてきぜんとしてこの問題の処理に当ろうじゃないかという点に関しましては、委員の皆さん、特に宇田委員長も大へんな御決意でございまして、それではということで、私ども踏み切って、各省に力強く折衝したわけでございます。その結果の過程は逐次委員会の方にも申し上げまして、そうしてこの法案がまとまったような経過になっております。それで、この法案に、委員会との関連がないじゃないかというお話でございますが、もちろん重大な基準等をきめます際には、委員会の本来の任務でありますので、この審議会でおきめになった事項は、そのまま委員会の方に持ち込みましてそうして委員会としてもさらに自分の角度から検討するという点は、法案になくても当然のことかと思います。ただ実施の取締りとか許可ということまで一々委員会にかけましたのでは、委員会としてもそれ以上に重要な任務もございますので、そういう点はむしろ行政事務というふうに考えまして、この法案では行政事務という面だけにとどめた次第でございます。
#27
○岡委員 法案の三十九条を見ますと、審議会を設けるということがあるわけなんですが、しかし原子力委員会設置法を見ますると、いろいろ委員会に課せられたお仕事が規定されておるわけです。この中にははっきりと、「原子力利用に伴う障害防止の基本に関すること」とあるから、まあ一々許可事務まで委員会がなさる必要はありません。がしかし、発案権はあるわけですね。ここには「事項について企画し、審議し、及び決定する。」とあるのですからね、発案権はあるわけだ。そこで委員会としては、やはり十分にこの発案権に基いて発案をせられるという権限があるわけですね。そうすると、審議会がきめる前に、やはり国際的な基準の変化その他に基く委員会としての発案権はやはりある。発案せられたものについては、この法律は、委員会の発案に従って変更をするというようなことも当然あってしかるべしと私は思うわけです。そういう意味で、この法律案の中には、原子力委員会の設置法にうたわれた権限に基く、この法律の運営上の必要な事項は、やはりはっきりと書くべきじゃないのでしょうか。というのは、尊重すべきである――私に言わせれば、原子力委員会の決定は、総理大臣は尊重しなければならない、各省の省庁の主管者も尊重しなければならないと書いてあるけれども、一向尊重されないというのがこれまでの悪い慣行であったわけです。だから、これは尊重しなければならないということを受けて立つ、この発案権に基く委員会の意向は、こういう委員会の重大な、調査し、企画し、決定をする権限を与えられている決定事項にかかわる部分については、受けて立つこの障害防止法の中にも、原子力委員会の決定というものを十分に生かしていくというような明文があって初めて、原子力委員会というものの権威づけがあるのじゃないかと私ども思うわけなんです。そういう点はどうなんでしょうか。
#28
○佐々木政府委員 私どもこれを起案しまして、委員会にもお諮りしたのでありますが、この審議会というものは、文字通り単なる諮問機関でございまして、いろいろな技術的な点を、あるいは技術的な面あるいは医学的な面から、あるいは雇用される面から、あるいは各省の事業監督の面から等、多方面から審議いたしまして、そうして答申案を作っていただくわけですが、その答申案がそのまま採用されるということはございませんで、御承知のように、諮問機関はそういう答申を書くのが一つの任務でございますので、それを受けまして、そして原子力委員会には専門委員その他もございますし、あるいは委員の皆さんもその間のきめました状況を十分参酌し、あるいは注文に応じてその他の広範なデータ等を集めまして、そして委員会としてはこの基準でいくべきだろうというふうに御決定になりますのが至当じゃなかろうか。ただ、審議会なり許可事務なりという、常時の行政事務的なものまであまり入って参りますと、かえって大きい問題に精力をさく時間がとられますので、むしろ基礎的なもの、あるいは審議される際の注意事項、あるいは指示事項をいただきましてその結果をさらに検討するという方が妥当じゃなかろうかというふうに与えましてこういうふうにしたわけであります。
#29
○岡委員 そこで藤岡委員にお尋ねするのですが、原子力委員会が、放射線の障害防止のために、設置法に基く権限を行使する。その場合には、障害防止法の中に、原子力委員会の決定をどう取り扱うかという明文が、私はあってしかるべきだと思うのです。一々の許可事務なんかは、原子力局でやっていただけばけっこうですが、そういうことまではっきり明文化されるということが、やはり原子力委員会の強化の大きな一助になるんじゃないか。原子炉の規制等に関する法律案なども、やはり原子力委員会というものの権限というものは十分尊重しなければならないと書いてあるけれども、尊重しなければそれまでだということでなく、今度は受けて立つ、この原子力委員会の決定は具体化されなければならないということの趣旨の明文が、この法律案の中に必要ではないかと私は思うわけなんです。これは委員会の立場から、藤岡先生の御意見はいかがでしょうか。
#30
○藤岡説明員 原子力委員会の任務から申しまして、原子力に関します重要な事項に関しましては、科学技術庁長官の決定に当りましては、十分に原子力委員会の意向を聞かれることと期待いたしておりますし、またたとい聞かれない場合でありましても、原子力委員会として、自発的に総理大臣に向っての勧告をするということは、当然すべきであると考えております。ただいまの法案には、原子力委員会のことに言及されていないようでございますが、重要な事項につきましては、つまり委員会の設置法その他によりまして、委員会の意見を述べる機会が十分にあるものと考えております。なお別の規制法におきましては、原子炉の役職に関する許可、これは非常に重要なことでありますので、これにつきましては、特に原子力委員会の意見を聞いてということが書かれておるように思うのでありますけれども、たとい書かれていないといたしましても、重要なことにつきましては十分にその意見が尊重されることと期待いたしております。
#31
○岡委員 どうもこれまで審議会のようなものができたりしましても、聞きおく程度で打ち捨てられても、文句の言いようがない。せっかくアメリカが行政の民主化ということで、民間の有識者を集めて審議会を作ってみても、これは全く床の間の飾りものになっている傾向があります。そういう方向へ原子力委員会がいくのでは、私は一大事だと思う老婆心から、今後の運営においても、きぜんとして原子力委員会としては権限に認められた諸決定については実施し得るように御努力願いたいと思うのです。
 それから今、局長のお話の中に、放射線審議会の委員の構成メンバーの中には、現場に従事する者も含めるというようなことがありましたが、別にこの条文の中には、何もそういうものはないんじゃないですか。私が申し上げたいのは、この同位元素が、民間産業なり、あるいは国家機関なりでどんどん用いられるということになれば、やはり審議会の中には当然そこに働く者の代表を加える。これは一番身近かに利害に直結しているんですから加える。これは明文化すべきだと思うんです。中小企業安定法なんかにちゃんと明文化してある。そういう形で明文化すべきじゃないでしょうか。
#32
○佐々木政府委員 ここでは「関係行政機関の職員及び放射線障害の防止に関し学識及び経験のある者」ということで範囲をしぼっておりまして先ほど申し上げましたのは、こういう事業に従事する労働者という意味で私申し上げたのではなく、そこまでをまだ実は学識経験者の中に含めるかどうか、決定していないのでございます。そうでなくして、たとえば労働省とか、あるいは現地で実際に監督している官庁とか、あるいは地方行政機関の人たちとかいうような者は、当然学識経験者の中に入るだろうと思います。ただし、お話のように、そういう実際にみずからその事業に従事して、それは労働者でありますか、あるいは使用者でありますかわかりませんが、そういう学識経験を持つ人が身近かな体験で、こういう審議会にお入りになっていろいろ体験上のお話をなさるのも非常に有意義なことでありまして、その点は十分考慮いたしたいというように考えております。
#33
○岡委員 とにかく万一不幸にして障害を受ける、再起不能の欝血病になるとか、黒内障になるとか、ガン腫になるというようなことで、そういう手痛い犠牲者は、労働者あるいはそこに働く人なんですから、予防の完全性については、当然働く者の立場からいろいろと要求する権利があるはずです。そういう点は、労働組合というか、そこに働いておる人たちの意見も聞く。この諸君はやはりフィルム・バッジを持ったり、ポケット用の線量計を持っていろいろ現場における実態を、自分の問題として彼らは知ることができるし、また知らしめなければならない法律の建前になっているということから、この諸君をやはり当然参加させ、そうして関係の行政部の諸君も、原子力委員会の関係の人もいいだろうが、とにかくみんなで万全を尽してこの障害防止に当るこの審議会を設けて、少くともそういう取り扱いをしていただきたいと思う。
 それから二十一条から二十五条には、予防あるいは事故の発生した場合におけるいろいろの措置が書いてあるわけです。予防規定というのは、何か準則のようなものの腹案がありますか。
#34
○鈴木説明員 放射線の障害の防止につきましては、前の方の条で使用する施設その他いろいろなことにつきまして基準を設けるわけでございますが、これは何と申しましても、アイソトープの使用は多岐多様にわたっておりますので、どうしても前の基準というものは、それの平均値的な、最大公約数的なものになると思います。ところが現実にアイソトープを使っておりますところは、それぞれ特殊性がございますので、大体の基準は前にありますけれども、それぞれの職場独得の、その場その場の状況に応じた規定というものを各職場で作っていただきましてそれを科学技術庁に届けていただく、そういうつもりでおります。従いまして、前に盛られましたような基準のことは全部ここに入って参りますし、その他それぞれの特殊性に応じたものを書くようにというような総理府令になるかと存じております。
#35
○岡委員 いわゆる科学技術上の水準というものの内容も、いろいろ専門の方々に御意見を聞かしていただいて照らし合せることが、私はこの法律案の審議の上で忠実な態度だと思いますが、それはまた別な機会にいたしたいと思います。
 そこで問題は、この間の委員会でも出ておった問題ですが、中泉先生もおられますので伺いたい。いわばかりに私が四十なら四十といたします。四十の私が今日まで受けた全部の放射線量というものをはかり知るということは、なかなか困難なことだが、そうして今度は放射線に曝射される現場に行って、そこで曝射されている放射線量を知るということ、そこに最大許容量という問題が一つ出てくるのじゃないかと思うのですが、こういうようなことについて、具体的にどうしたらいいのか。今日まで私どもが天然の放射線を受けておる、これは一応学問的にわかるかもしれませんが、そのほか水爆実験などで、雨で受けたり、いろいろなことをやっておるわけです。こういうものもあまりはっきりしたものはわかりませんが、胸が悪くてレントゲン写真を受けておると、それも加わるかもしれませんし、あれやこれやあるでしょうが、一つの年令的な基準として、どの程度の放射線の曝射を受けておるか、学問的な基準として、一応こういう程度だという推定というものはないのでしょうか。
#36
○中泉参考人 それは大へん重要な問題であります。国民一人々々がその年令までにどのくらいの放射線を受けたかということは、知りたいのはやまやまでありまして、非常に努力するわけでありますが、なかなかこれはむずかしい問題でありまして、日本などではなかなか手が出ないのであります。最近英国では、医者が患者をエックス線によって診療した場合、どのくらいの放射線をどういう条件でその患者に与えたかということを、いわば放射線手帳というようなものを作って渡して、そうしてその人の一生の間に受けるであろう放射線を積算していこうという企てがあるやに聞いております。ただいま人が受けるであろう放射線のいろいろな源をおあげになりましたけれども、診療用で受けるという放射線は非常に大きいのであります。宇宙線だの外来放射能などで受ける放射線よりも、診療用で受けるという放射線は非常に大きいのであります。この診療用の放射線を受けた場合に、与えた医師からその線量をちゃんと知らしておいてもらうというようなことも非常にけっこうなことであって英国ですでに企てておるやに聞いております。そのほか職場で受ける分は、フィルム・バッジであるとか、ポケット・チェンバーであるとかいうものを使いまして職場において受けました線量を一生の間に積算していくということがやはりできると思います。それからまたフィルム・バッジやポケット・チェンバーを使うということは、こういうふうに一生涯に受ける線量を積算するという一つの手段であると同時に、先ほど申しました特攻精神を予防する。この人は非常に仕事に熱心過ぎて、過去一週間に特攻精神を発揮し過ぎたというようなことがすぐ職場でチェックできるような目的に使われるのでありまして、非常に大切なことだと私も考えております。
#37
○岡委員 これは、それでは政府の方では、今後原子炉等の問題もあります一ので、やはりポケット・チェンバーなりフィルム・バッジなり、あるいはレントゲン手帳というか、そういうようなもので、最初の皮切りには、慎重な用意をしてこの法律を運営されるというお気持でしょうか。
#38
○佐々木政府委員 そういう方針で進みたいと思います。
#39
○岡委員 それから、これは中泉先生にお伺いいたしますが、この法律では、精神病者と、そして十八才未満の者が従業員としての資格がないということになっております。遺伝の問題は将来の問題で、はっきりしたデータがないとおっしゃいましたが、広島等のデータを見ますと、十一例で、当時妊娠中の婦人から、ミクロセファルスが出ておる事例がある。これはかなり稀有な事例だというのですが、そういう点を考慮いたしますと、やはり従業者としての資格制限の中に、妊娠しておる婦人も加わるのではないかと思いますし、あるいは肝臓障害なりじん臓障害なり、そういうような解毒的な、あるいは排泄的な臓器の機能障害を持っておる者もやはり考慮しなければならぬのではないかと思うのです。従って従業員を採用する場合における健康診断も非常に重要だと思いますが、先生の御意見では、どういうような項目についてこの従業し得る資格を限定さるべきであると思われますか。
#40
○中泉参考人 十八才未満が除外してありますが、これはやはり十八才未満の者に対する最大許容量は三百ミリレントゲンパー・ウイークではなしに、三十ミリレントゲン・パー・ウイークにするというのが世界的な一般常識であります。しかるにこの法律は、三百ミリレントゲン・パー・ウイークを標準にして総理府令等が作られることになっておりますので、十八才未満の人には当てはまらないわけであります。それから妊娠中の婦人、その親はとにかくとしてお腹の中にある子供はやはりいけないのでありますから、十八才未満として取り扱うというわけにはいかないでございましょう、やはり除外した方がいいのではないかというふうに私は考えます。それから、放射線職場に就職する前に身体検査をするということは、もう常識であります。この法律にはむろん出ておりませんけれども、おそらく総理府令等に出るのだろうと思いますけれども、今、御指摘のような放射線職場に適当しない身体条件の者をあらかじめ除外するということは、非常に必要であろうと感じております。放射線を受けますれば白血球は減るのでありますから、ごく端的に申し上げまして、放射線ですでに白血球がほかの職場で減っておる者を、またこちらで引き受けるということも考えものでありますし、あるいはほかの原因で、放射線以外の原因で貧血状態にある人を、また放射線職場に働かすということも不適当である。適当した職場を与えるべきである。これらのことはおそらく総理府令で考慮されるのではないか、こういうふうに私は期待しております。
#41
○岡委員 そこで、具体的に、私が従業することを希望して身体検査場に臨んだとした場合に、まず血液を小耳からとって、白血球、赤血球その他皮膚の異常も調べる、レントゲンの診断を受けたことがあるかというようなことを問診で聞かれる。それ以外に何をしなければならぬか、慢性の心臓病等があって、白血病がレントゲンで起ったのか放射線で起ったのか判別がわからない場合があるのですから、これは当然調べなければなりません。なお、放射線発生の現場で働く場合、よけいに障害を早く引き起す、重大な結果を引き起すような内臓の疾病、機能不全ということもあり得ると思うのです。こういう点はやはり機能検査というものもやるべきではないかと私は思うのです。こういう点、何と何をやったらいいかという点ですね。
#42
○中泉参考人 放射線発生職場で放射線障害を受ける場合はいろいろございましょうが、全身的の障害として一番厄介なのは、白血球が減る場合でありまして、白血球が減るということを非常に懸念すべき健康状態にあるような人は、どうしても除外されていかなければならぬ、こういうふうに考えます。それでは、具体的に病名をあげて、どういう病気がある人はいかぬかということになりますと非常にむずかしいのでありますが、医学常識といたしまして白血球が減少いたしますと、その身体の外力に対する防衛力が減少するというふうにどうしても考えなければなりませんので、そういう見地で身体検査をやるべきである、こういうふうに考えております。それから、就職後につきましても、白血球が減少するおそれがありますので、白血球が減少しては非常に不利益になるような疾病にはかからないように、気をつけるような考慮はどうしても必要である、こういうふうに考えます。そこいらは、ほかの職場で働く人よりもある程度制限を受けるのではないか、こういうふうに考えます。ごく具体的に申しますと、急性伝染病にかかりますと白血球が非常に働かなければなりませんので、よけい白血球を必要とするのでありますが、そういう場合に放射線で骨髄が障害を受けておりますと、その補充が十分に行きませんで、急性伝染病に対する養護が不良になるであろうというような懸念が十分あります。それで、私なども白血球がもっと少かったころ、それからもっと日本の衛生状態が悪かったころなどは、決してなまのお刺身などを食べないで、急性伝染病にかからないように十分注意しておったというようなこともあるのであります。どうも御質問に対して十分なお答えが具体的にできませんで、はなはだ申しわけないのでありますが、この辺で一つ……。
#43
○岡委員 なお、先生にお伺いいたしたいのですが、許容号の問題でございます。生体内の照射の場合、この量を一体どの程度が許容量であるかという決定は、私は非常に困難じゃないかと思うのですが、やはり突き詰めて、ある程度のものをつかむべき必要があると思うのです。ですから、一般の許容量が〇・〇三レントゲン・パー・ウイークといたしましても、おのおのの放射性元素の種類だとかあるいはべータ線のエネルギーの個々の元素によっても異なると思うのです。あるいは体内の分布状況あるいは物理学的な半減期と同時に生物学的な半減期も見なければならない。こういうものを総合的につかんで、やはり今後あらゆる種類の放射線というものが平和な産業分野に利用されてくるという場合には、科学者の努力として、こういうものをつかんで、これが障害防止の一つの大きなきめ手になってくると思うのです。こういう努力がなされているのか、どの程度まできておるのか、その点はどういうことになっておりますか。
#44
○中泉参考人 全くお話の通りでありまして放射性同位元素が使われるようになりましてから、放射線は体外からばかりでなく、体の中からも受けるようなはめになって参りました。それで、またいろいろな元素が体の中に入り得るようになってきましたので、ただいまお話の通り、その放射性元素の物理学的の半減期であるとか、あるいは生物学的な半減期であるとか、あるいはその元素が特に沈着する組織、臓器であるとか、そういうようなものを一追究いたしまして、結局その内部照射の場合でも、許容量の水準点は、その組織に対して一週間三〇〇ミリレントゲンというところに置くよりほか、現在のところきめ手がないのでございます。それで、国際放射線学会に国際放射線障害委員会というのがありまして、そこでただいまおあげになりましたような因子を考慮に入れまして、各放射性同位元素につきまして、内部照射の場合吉の組織内の濃度の標準をきめております。しかし、これはみんな机の上の仕事で現在のところはあるのであります。
#45
○岡委員 これは総合医学センター等もできて、そういうところで大いに一つはっきりしたものをつかんでいただきたいと私は思うわけです。
 それから、これは労働基準の方に、田中さんがお尋ねになったことなんですが、重ねて承わっておきたいのですが、問題は、放射線による障害というものは、非常に微量でも継続的に照射された場合には、病状は非常に緩慢かつ慢性的である。従って、健康体との区別が非常に困難であるわけです。従って、当人自身も何ら病患がない。しかも、いつの間にかずるずると引きずられて高度な障害に移行する。そういうことだから、一応採用時を含めて年四回血液像、皮膚等をよく検査する。しかし同時に、これが労働基準法施行規則第三十五条第四号の取扱いについてというこの指示の一、二、三項目に該当しない場合でも、やはり職場において配置転換をやるとか、あるいは就業時間の制限をやるとか、いろいろコントロールしないと、私は障害防止はできないと思う。こういう点は、これは労働省の方ではどういうふうにやっていこうと思われるのであるか、具体的に何か成案があったらお示しを願いたい。
#46
○加藤説明員 今、御指摘になりましたような慢性的に障害を受けて参りました者に対しまして、健康診断をさせることによって、その障害の起っております状態を見て参ろうということにいたして参っております。特に昭和二十七年と思いますが、障害の取扱いにつきまして、労災の方の立場の指示を出して参りまして、その程度の者につきましては労災の補償で取り扱うということにいたしております。しかしながら、今、御指摘になりましたような点で、必ずしもその血液像がその程度の者以外の者で、あるいはそれ以前の者でありましても障害ということを考えられますので、その者につきましては、その後の通牒等によりまして、要注意者の範囲というものをきめて参り、そうしてなおその要注意の範囲におきまして医療を必要とする者に対しましては、医療を施すと同時に、その職場におきます指導というものをやっていくという一本立てのことをやりましてこれの指導をいたしておるというのが現状でございます。なお昨年から特殊の健康診断等を励行することをさらにやって参りまして特にその方面の障害の発見に努めていくというような考え方でございます。
#47
○岡委員 先ほど私が数字を示しましたレントゲン技師などが放射線に長時間照射されて、そのために血液像の要注意者などが相当出ておるわけであります。こういうような取締りは、あなたの方でやっているのではないですか。
#48
○加藤説明員 基準法に該当いたしておりますものにつきましての問題は、こちらの方でやっておりますが、国家公務員等につきましては、人事院関係でやられておるわけであります。
#49
○岡委員 いただきましたこれを見ると、そういう関係などが全然入っておらないようです。いずれにいたしましても、この法律によっていろいろ予防はしていただくが、なお現場で放射線障害による疾病が発生をしたという場合、私ども見ておりますと、労災病院に行ける人はいいけれども、労災病院がそうたくさんあるものではなし、また一般の病院にも行くわけです。そういう場合、この診療は、大体労災病院に行った場合でも、健康保険並みな診療が与えられるというようなことに、この労災の医療保障については、方針として大体健康保険法が適用しているような診療基準で行くということになっておるわけでございますか。
#50
○岩沢説明員 労災保険の医療につきましては、現在のところ健康保険と同じような点数単価方式を採用しておりません。特定の医者につきましてはこれを指定いたしまして、被災の労働者がそこに行けば無条件で療養ができる。療養の内容につきましては、今のところでは全く医師の良心におまかせしておるわけでございまして、特別の指示はいたしておりません現状でございます。
#51
○岡委員 こういう放射線の職場で働いて病気になった場合、この前ビキニの被災者の場合は、船員保険で行くのだと当時の厚生大臣は言っておったのだが、実際問題として、放射線の障害というものは安静も第一だろうし、あるいは栄養補給の意味でビタミンをどんどん注射する、あるいはメチオニンを注射する、かと思えば、化膿性の疾患になってはいけないというので、マイセチンとかマイシンを注射する、輸血をするということで、いわばそういう予防的な処置が非常に多くて、現在疾病そのものに対する積極的なきめ手というものはあまりないのじゃないか。これは中泉先生の御専門でございますが、そういう意味からいえば、健康保険の診療基準からいうと濃厚診療になってくるという状態になって参る。そこで、これはあるいは国家公務員でもいいが、健康保険の被保険者証を持ってこられますと、一般臨床医家としては、この診療基準によって非常な制約を受けてくるわけです。これはやはり保険局長、一つこういう法律ができて、もうすでに国なり民間の産業において放射線発生の現場ができてそこであやまって障害が起り得るということが想定されることになってくると、健康保険の診療基準というものも私は相当考えていかなければならぬと思う。こういう点はどう考えておいでですか。
#52
○高田(正)政府委員 御指摘のように、放射線を受けまして、それからいろいろな身体上の障害が出て参るというふうな場合は、おおむね、ほとんど全部といってもいいくらい業務上の災害であろうかと思う。従いまして健康保険が適用され、健康保険の被保険者証をもってその給付を受けるということは、実際問題としてはあまりないのではないかと思います。それで、現実の問題といたしましては、そういうことになると思いますが、それにいたしましても、今、労災の方では、労働省からお答えになりましたように、その治療の内容についての規制がございませんので、そういう意味では問題だと思っております。船員保険は、業務上の災害につきましても、相互保険として一本で運営いたしております。その意味で、船員保険の分野におきまして、先生の御指摘の問題が私どもの方の関係として起って参るわけでございます。船員保険の給付のやり方につきましては、大体健康保険と同じように、一つのルールというものがございますから、それに従って給付をやっていただいておるわけでございます。その限りにおいてその問題が起ってくるかと思います。先生の御引例になりましたビキニの被爆者の関係の治療につきましては、これは船員保険のワクの中で一応実施をいたしましたけれども、しかしこれは非常に特殊な例といたしまして、その財源も米国から参っておるようなわけでございまして、一応船員保険のやり方でそこに場所を借りて、ああいうことを特殊な事例としてやったということでございます。その際の治療のやり方としましては、いわゆる従来の船員保険の治療のやり方についてのいろいろなルールというものは、新しい事態でございまするので、きまったものもございません。従って、先生もよく御存じのように、それぞれ医療機関におきまして、自由に御診療をいただいたという格好になっておるわけでございます。さような実情でございますので、御指摘の点は、今直ちにどうこうという問題が起って、早急に処理しなければならぬということではないかと思いますが、将来の問題といたしましては、私どもも十分に検討を加えて参りたい。できるものならば、学会でそういう障害についての一定の治療指針というものがまとまるような時期が参りますれば、もちろん健康保険の中にも――これは実際問題として健康保険の該当者はあまり出てこないと思いますが、そういうものを採用いたして参りたい、かように考えております。
#53
○岡委員 いずれにいたしましても、こういう放射線による疾病が発生をしたという場合、もちろん労働基準法に基く業務上の疾病として、国家公務員法の災害補償法なりあるいはまた労災によって治療を受けるのは、当然なことだと思うのです。ただ、しかし、先ほど中泉先生も御指摘になったように、また今日までの事例にかんがみましても、この放射線は、いかに散乱を防いでも、やはりなかなか防ぎがたいものであるということから、直接アイソトープを扱っていなくても、放射線障害というものが現場で起り得ると思うのです。こういう場合には、労災もつかず、結局健保の保険証を持っていくということがあり得るわけです。そういう場合は、ぜひ診療基準等を専門の委員会なり学会と相談されて、給付内容の中に作っておいていただいてそこでこの治療を与えていただかないと、これまでの健康保険の診療基準となってくると、全く不必要な診療ではないかという疑点が起ってくると私は思いますので、こういう点は十分一つ御考究を願いたいと思います。
 それから、労災保険で見まして、いわゆる症状が固定した、なおったという概念があるのですが、白血病なんて、なおったようで、それは見せかけのなおり方で、突如としてこれが内部出血をして死んでしまうこともあり得ると聞いておのです。だから、こういう場合の取扱いはどうしますか。
#54
○岩沢説明員 ただいま御質問になりました、なおったという基準につきましては、一応強性症状が消退して固定した、そうして、医療効果が期待できないというような場合に、一応なおったという考え方をいたしております。そこで、非常に変動のある、波のある症状に対してはどうかということでございますが、その場合一応の基準は定めてありますけれども、再発としてこれを認めるかどうかということが問題になってくると思います。私ども専門的な知識はございませんけれども、そういう場合には、権威のある医療機関の判定に従って処置させるという方針をとっておりまして、もし再発と認むべきものであるならば再発の処置をとる。医学的な判断に基いて行政的に処理いたしておるのが実情でございます。
#55
○岡委員 これは中泉先生にお伺いをいたしますが、広島、長崎などで、去年もやはり何十名かなくなっておる方があるようです。こういう方の血液像は変り、一応健康な状態に復している場合が多いと聞いているのですが、その間の事実はどうなっているのですか。
#56
○中泉参考人 広島や長崎で、新聞でいういわゆる原爆犠牲者として、白血病患者が死んでおるということでありますが、あの原爆によって白血病患者がふえておるということは、確実なのでございます。と申しますのは、原爆の地理的分布を調べていきますと、爆心地に近いところによけい発生することだけでもう明瞭なのであります。しかし、一つ一つの原爆患者を取り上げてみますと、広島で発生しておる白血病と、東京で少しも放射線を受けない人に発生しておる白血病と、少しも区別ができない。広島でもやっぱり放射線でない、ほかの原因の白血病も発生し得るのであって、一つ一つの患者につきまして、この患者さんは原爆の結果に違いないということを証明することは現在のところできません。
 それからもう一つ、なおっておったときの血液状態はどうかというような御質問かと思いますが、白血病という病気は、これは現在一度かかりましたらば絶対死ぬのでありまして、厳格に言いますと、よくなった状態が治療のたびに現われまして、そうしてその治療を何回か繰り返しますと、治療に対して少しも反応しませんで、遂に死んでしまいます。こういう運命をたどるのであります。従いまして、平たく言いますと、なおっておった時代、医学的に正確に言うとよくなっておった時代の血液像といえども、やはり健康人の血液像とは違うのであります。もう少し申しますと、よくなりまして、その患者がもう生業を営むことができるというような状態になりましても、白血球の数は依然として正常の人よりも多い場合が幾らもございます。それから数はそれでは正常の値くらいまで下ったといたしましても、白血球の中にはいろいろと種類がございまして、その種類の分布の割合が、健康の人の白血球の種類分布と違っておりまして、多くの場合、骨髄中で作られます病弱な白血球が、末梢血液の中にも見られるというような状態にある場合が多いようであります。
#57
○岡委員 そこで一応白血球の状態が健康な状態に復帰したごとくに見えても、事実はなおっておらないという判定は、今、中泉教授が指摘されたように、やはり相当綿密な顕微鏡検査等で確かめなければならぬ。ただ、耳の端から取った血液を、血液計算機や何かで調べたぐらいではいけない。やっぱりあらためて顕微鏡によって厳密に調べるというような手のこんだ親切なやり方をやってもらわないと、症状の固定だなんということで簡単に取り扱われてしまうと、困る事態があるということです。もう一つは、そういうことから非常に菌に対する抵抗力が弱い。だから白血病そのもので死ななくても、万一不幸にして何らかの菌が体内一に入った場合、化膿性疾患というようなものから敗血症になって、命をなくすというようなことがある。そういう間接的な死亡というような不幸な結果になる場合が多いと思いますが、こういう場合は、これまで労災の取扱いその他はどういうふうに取り扱っておられますか。
#58
○岩沢説明員 間接的なものということにつきましては、従来私どもの扱っている考え方といたしましては、第一段階におきましては、業務と相当因果関係があるということが、まず業務上の傷害疾病ということになるわけでございます。そこで、業務上の疾病が原因となって二次的な症状が現われたということが明瞭に証明される場合は、これも相当因果関係の範囲内として、業務上の取扱いをいたしております。問題はそこらの点における判断の問題であると思いますが、それらの点につきましては、やはりこれは医学的な判断を基礎にして、いわゆる二次的な障害というものを判断する以外にないと思いますので、権威のある医学機関の判定のもとに、これらの取扱いをするという扱い方をいたしております。
#59
○岡委員 いずれにしましても、いろいろと新しい疾病、そのための治療また補償等が起ってくるので、こういうことはいずれもう少し詳しくお聞きしたいと思いますが、きょうはこの程度で終ります。
#60
○赤澤委員長代理 齋藤君。
#61
○齋藤委員 ただいままでの中泉参考人と岡委員との質疑応答で、私のお伺いいたしたいと思いますことも大体尽きたのでございますが、ただ一言直接にお伺いして、直接に御答弁をいただいた方がよろしいと思う一点につきましてだけ、重ねてお伺いをいたしたいと思うのであります。それは、昭和三十年の十月に、われわれが国会議員といたしまして原子力問題を大きく政治面に取り上げる段階といたしまして、放射能の問題が将来大きく響いてくるだろうというので、放射線の障害に関する法的措置を講じなければならぬということから、当時のスタックにおきまして取りまとめられました放射線障害に関する法的措置の結論というものを詳しく拝聴いたしたのでございます。そのときは、委員長として中泉博士が二年にわたってあらゆる方面から御検討になりまして、放射線の障害防止法にはエックス線を当然加えるべきものであるという結論に到達されたというので、私もその線に従って研究をいたしたのでありますが、エックス線とガンマ線の性質から検討を加えまして、これは照射を受ける方の側からいきましても、当然法制は一本化して、ただその取扱いは、その担当各省において、それぞれの現場の相違もあるであろうから、こまかいところにおいてはその差異があるだろうけれども、法的措置としてはこれは一木化すべきものであるということで、今まで私もそのつもりでおったのであります。と申しますのは、このガンマ線の取締法に完璧を期しますならば、それは当然エックス線の障害に対しても完璧を期し得られるのであって、このガンマ線とエックス線と電磁波という性質から、また波長からいきまして、ほとんど同じものを取り締るという法令に二途はない、これは一本でよろしい、こういうことで、私も科学技術庁におりますときも、当然エックス線は放射線の取締法案というものの中に包含せらるべきものであるということを主張して参ったのであります。しかし、事務当局に言わせますと、各省間の折衝においてどうしてもこれでなければ法案がまとまらないというようなこともあったらしいのであります。そこで立法府といたしまして、この法案を今日取り扱って何らかの結論を得なければならないのであります。私は専門的にここで論議を戦わせようというのではありませんが、この法律を決定いたします場合に、中泉博士といたしまして、このままの形で法律を通過せしめますと、近き将来において、放射線障害取締りの上において大きな支障がくるかどうかということです。しかし、この法律をこのまま通過せしめても、現在の状態よりはベターになることになるか、その点がこの法案を取り扱っておりますわれわれにとりましては、今、非常に大きな問題となっておるわけであります。過日の参考人の御意見を拝聴いたしましても、理論的には、当然エックス線を包含せしめた放射線障害防止法案というものがあるべきだ。しかし、それがどうしても事務的に取扱いができないというなら、厚生省は厚生省における現行の取締り法規により、それから通産省及び文部省においては至急に法律案を作ってこの取締りをやる。それも私はどうかとも思うのですが、その点一つ参考人として、この問題に取り組んで心血を注がれた中泉博士といたしまして、もう一度ざっくばらんに端的に御意見を聞かせていただければ、われわれ今後この法案を取り扱う上において、非常に参考になると思うのですが、一つ忌憚ない御意見を拝聴いたしたいと思います。
#62
○中泉参考人 ざっくばらんに申しますと、やはりエックス線は含めなければいけない、こういうふうに私はどうしても考えます。観念的にそれがすっきりするという問題よりも、私最も心配いたします点は、厚生省に同じようなものがあり、原子力局にも同じようなものがあり、通産省にまた同じようなものがある、こういうことになりますと、今のお役所じゃなかなかうまく連絡融通がとれないんじゃないかという心配を持っております。それで、診療用エックス線装置取締規則が完全に実行されないで、さっき岡先生が御指摘になったような放射線障害が現実に出てしまったというのは、やはり検査制度が十分でなかった、厚生省にあの内務省令を完全に実施するだけの能力がなかったからであります。今かりに原子力局がこういう法律を出し、それから厚生省がああいう法律案だか、規則を持っておって、通産省がまた出す、そうしてお互いのお役所はなかなか融通連絡がむずかしいというようなことになりますと、果してその三つともが、その法律の完全実施ができるかどうか、非常に疑わしいと思うのです。完全実施をしようとすれば、二重投資になりますから、非常にお金がかかります。その三カ所で十分な検査制度を作る、物的の設備をしなければならぬ、それで三重になります。そこが大蔵省の考え一つで、放射線障害というのは非常に大事だからお金をうんと出してやれ、こういうふうにおっしゃれば三つできるかもしれませんが、そういう仕事を担当する技術者が、大蔵省の考え通り、あしたから生まれるものじゃない。そういうことを担当する人間の数というのは、日本に非常に少い。でありますから、この法律にエックス線を含め、そうして、将来通産省などにはそういうものは作らぬ。私が初めから考えておったのは、厚生省のあの規則も、どこか一本にしてしまう。日本じゅう放射線障害については一本にしてしまう。そういう考えでスタックの時代に相談を始めておったのでありますけれども、不幸にしてそういうことが事務的にできなかっただろうと私は思うのです。そうしてお役所のいかにむずかしいかということを、身をもって痛感したのでありますけれども、ただ観念的にエックス線を入れる方がしっくりする、筋が通るというようななまはんかな問題でないので、これを方々で作って、それを完全に実行するためには、国家の二重資本投下が起るということが一つと、それからそれを担当する人的資源が日本に現在ありますかという点と、その二つの点からして、やはり放射線障害の予防は、なるべく集中的に取り扱わないと実効一が上らない、そういうふうに私は確信するのです。もちろんこの法律ができれば、現在よりベターであります。しかし、すべてを一本化して、その一本化した法律を完全に実施するために、十分な物的、人的の準備を整えていくのが一番いい方法である。事務的にいろいろむずかしい問題は起るでありましょうけれども、そこのところは事務的に何とか――私はわからぬけれども、解決していただきまして、技術的に一番むだのない方向へ進んだらいいんじゃないかというふうに私は感じております。
#63
○赤澤委員長代理 他に御質疑はありませんか。――なければ、質疑はこの程度にとどめます。
 参考人には、長時間にわたり、いろいろ貴重なる御意見を開陳していただきましてまことにありがとうございました。本案審査の参考に資することきわめて大なるものがあったと考えます。委員会を代表いたしまして、私より厚く御礼を申し上げます。
 次会は明十七日、午後一時より開会いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後一時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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