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1956/04/16 第26回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第026回国会 運輸委員会 第23号
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1956/04/16 第26回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第026回国会 運輸委員会 第23号

#1
第026回国会 運輸委員会 第23号
昭和三十二年四月十六日(火曜日)
   午前十時四十五分開議
 出席委員
   委員長 淵上房太郎君
   理事 松山 義雄君 理事 山本 友一君
   理事 井岡 大治君 理事 松尾トシ子君
      伊藤 郷一君    生田 宏一君
      永山 忠則君    濱野 清吾君
      原 健三郎君    眞鍋 儀十君
      井谷 正吉君    小山  亮君
      中居英太郎君    正木  清君
      松原喜之次君    山口丈太郎君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中村 梅吉君
        運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君
 出席政府委員
        検     事
        (刑事局長)  井本 臺吉君
        運 輸 技 官
        (船舶局長)  山下 正雄君
 委員外の出席者
        運輸事務官
        (海運局海運調
        整部長)    辻  章男君
        運 輸 技 官
        (船舶局主席船
        舶検査官)   藤野  淳君
        海上保安監
        (海上保安庁警
        備救難部長)  砂本 周一君
        専  門  員 志鎌 一之君
    ―――――――――――――
四月十二日
 委員森本靖君辞任につき、その補欠として武藤
 運十郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十六日
 委員武藤運十郎君辞任につき、その補欠として
 井谷正吉君が議長の指名で委員に選任された。
四月十二日
 モーターボート競走法を廃止する法律案(井岡
 大治君外十名提出、衆法第二四号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 第五北川丸沈没事件に関する件
    ―――――――――――――
#2
○淵上委員長 ただいまより運輸委員会を開きます。
 第五北川丸の沈没事件について調査を進めます。本件につきましては去る十三日及び昨十五日の二回にわたって運輸委員打合会を開きまして事故の状況、対策及び保険関係等につきまして政府より実情を聴取し、委員より意見を述べた次第でありますが、報道によりますと、昨日第五北川丸は引き揚げられたとのことでありますので、その後の状況を当局より聴取いたしますとともに、この事件に対する政府当局の意見及びこのような事故を再び起すことのないような十分なる対策等を運輸大臣より聴取いたします。なおこの打合会において委員各位より出されましたこのような船舶の定員の問題、危険な岩礁に対する標識の増設、海上保安庁員の配置及びこのような事故に対する保険制度の問題等につきましても、あわせて大臣のお考えをお述べいただきたいと存じます。救難部長。
#3
○砂本説明員 今まで御報告いたしましたその後の状況並びにその経過につきまして御説明いたしたいと存じます。
 ちょっと今まで申し上げましたことに御訂正申し上げたい点は、船に乗っておりました全部の人員について変更がございます。今まで総計二百二十二名と申し上げておりましたが、現在まで判明した数字によると二百三十七名でございます。その内訳は十六日の午前八時三十分現在で申し上げますと、生存者百二十五名、死体七十三体、行方不明者三十九名でございまして、合計二百三十七名でございます。これはああいった非常な場合でございますから、いろいろダブつたのがございますし、当初こちらで発表いたしました二百二十二名の根拠と申しますのは、切符を販売いたしました数字を根拠にいたしたのでございますが、その後いろいろ調査の結果、関係機関との資料の持ち寄りによって検討いたしました結果が、現在のところ二百三十七名になったのでございます。以上訂正いたします。
 それから現場におけるサルベージ関係でございますが、呉の深田サルベージ会社が起重機船一隻、作業母船一隻、潜水船七隻、潜水夫七名、作業員五十名をもって十四日十一時より作業を開始いたしました。十六時五分寅丸礁の二百八十度九十メートル、水深三十七メートルの地点で船首を南方に向け、右舷に九十度傾斜している第五北川丸の船体を確認するとともに、死体一体を揚収して、十五日は四隻をもって十三時より作業を開始し、一隻は船体引き揚げ作業、三隻は死体揚収作業に当り、二十二時船内から死体十四体を揚収しております。十六日零時に、夜中でございますが、船体を寅丸礁南方九百メートルの地点に引き揚げ、座礁せしめるとともに排水し、本日の午前四時十五分死体二十四体を収容した次第でございます。以上が現地における状況でございます。
 なおたびたび御報告いたしておりますように、海上保安庁の巡視船は総計十八隻、それからヘリコプター一機、現地において沈没地点を中心にいろいろ死体その他の移動も考えまして、適切な調査範囲を決定し、六管本部長みずから現地で指揮をとっておりますので、今後も十分注意いたしまして、なるべく早く死体その他の収容に努めたい、かように考えております。
#4
○宮澤国務大臣 このたびの第五北川丸の事件につきましては、遭難者の方々またその御家族その他に対してまことにお気の毒にたえないところでありまして、この事件が社会的に見ても、また事件そのものから見ましても、かくのごときことが生じまするに至る責任はもとより、その他諸般の事情からいたしましても、今後再びかくのごときことが起らないよう、いろいろな手配をしなければならないと思いますし、また善後処置につきましてもいろいろ間然するところのないような処置をしなければならないと思うのであります。当委員会における打合会たおきましても、すでに定員の問題あるいは保険の問題その他警備の問題等につきましても、それぞれ御意見があったのでありまして、もとよりそれらは重要な問題でありますけれども、このたびのこのできごとに対する実情を見ますと、何としても予想外の非常に多数の定員外の人を乗せたということ、またそれをやむを得ず乗せたといたしましても、そのような場合に対する船主側その他乗組員の注意をもう少し十分にしてもらいたかったというようなことを深く感じておるようなわけでありまして、政府といたしましては、春の旅行シーズンに当っては、それぞれ間然するところのないような注意、手配は一応いたしておったのでありますが、その間においてことにこの航路等につきましては、海上保安庁の巡視船がこれを特に注意して歩いた。追っかけて調べて注意するというようなことまでしておったのですけれども、ちょうど巡視船が行ったときにはこの船が出たあとであったというような事柄から、それも直接に注意ができなかった。この春以来一般的の船主に対する警告、ラジオその他を通じまして、あらゆる方法をもってこういう事件の起らないように処置はいたしておりまするけれども、それが行き届かない。しかもこのように多数乗り込んだときに、たまたま十六才の少年がそのかじをとっておったというようなことで、それから起ったことでありまして、この難にあわれた関係各位に対しても、私ども衷心からお気の毒にたえないのでありまするが、しかし今後再びこのようなことの起らないように万全の処置をとりたいと、それぞれ手配と立案とをいたしておるようなわけでございます。
#5
○淵上委員長 小山亮君。
#6
○小山(亮)委員 ただいまの大臣のお言葉で、当局の方の相当これに対して今後の万全をはかりたいという御意思はわかります。しかし私どもが非常に残念に思いますのは、毎年の行楽季になりますと、必ず遭難、転覆あるいは墜落等の事故が起る。そうしてそれも相当おびただしい数字に上る人命の殺傷がある。まことにこれは私は遺憾なことに思います。ことに運輸大臣の監督下における海上の遭難は、すでに洞爺丸事件から紫雲丸事件になり、相模湖の事件があり、また今回の事件がある。このように相次いでいろいろな事件が起っている。何とかしてかかる不幸なできごとを根絶させたい、こうわれわれは思うのであります。当局においてもその点についてとくと留意を願いたい。すでに私は昨日海運局長にも意見を申し述べておきましたが、現在の規定である定員制を厳守すると申しましても、定員制を守らなかった場合には、船舶安全法によって船主が処罰される。その処罰が一万円をこえざる罰金であるというようなきわめて微温的なものなのです。それも大正何年かにできた法律でありますので、現状には即してない。こういうような点も考慮されて、急速に定員を順守しなければならぬというような実際に即した定員制を御制定になる必要がありはしないか。またあらゆる学識経験者を寄せ集めた審議会を作って、審議の結果やるというふうななまぬるい、今後何年かかってもかまわぬといういわゆるお役人のおやりになるような仕事でなしに、こういう事件が起きましたときには、急速にそれに対応するような態勢をとって、直ちに臨時の処置によってもある程度まであなた方の方で考慮して、実際におびただしく過剰に積載するケースがありますから、直ちにこれに対して注意を与え、あるいはある程度制限を加えるということが必要だと思う。そうでなく来年はやる、再来年はやるということだと、その間は、今まで通り七十七名の定員に対して、ただいま御報告を伺いますと二百三十七名、実におびただしい過剰人員を乗せておる、こういうことが平然と行われまして、危険この上もないと思う。これに対して何とか臨時の処置を早急に講ずる方法はございませんか。それを伺いたい。
#7
○辻説明員 ただいま小山先生の御意見まことにごもっともでございますので、私どもといたしましても定員検討の問題、また定員の違反に対する罰則強化の問題等について、早急に立案することにいたしたいと思います。
#8
○小山(亮)委員 もう一つ伺いたいのですが、実はこの事件が起きてから、十五日の新聞でありますが、当時山口市に出張しておられた中村法務大臣が、この事件に関係して意見を発表しておられる。これは内閣を代表しての意見だとは考えません。しかしその中に、「第五北川丸事件の原因は定員超過にあると思うが、客船の定員に関する制限について、将来何らかの処置を政府全体として考えるべきだ、今度の場合は会社が無力だから、補償など政府が責任を負わねばなるまい」ということが書いてある。これはどういう意味でこういう発言をされたか私は知りません。しかしながら担当の大臣でない大臣ですら、これだけの考えをすぐ持たれるのです。しからば直接担当に当っておるところの大臣ならば、さらにそれ以上に深刻にこういう問題をお考えになっておいでになるのだと思いますが、補償等に関するところの大臣の御意見はどうですか伺いたい。
#9
○宮澤国務大臣 ただいま御質問の通り、この事件が起きます当初から会社の実力その他から見まして、なかなか補償の問題は――遭難をせられた方に対して補償をもって足れりとはもちろん考えないのでありますけれども、結局遺族の方に補償でも行き届いたならばよかろうということはむろん私どもも考えまして、その場合にどういう方法でということはいろいろ研究しておりますが、第一段階として保険の問題がありますので、保険の成り行きを見まして、その後における政府としてとり得る処置の範囲については順次研究していきたい、かように考えておる次第であります。
#10
○小山(亮)委員 担当の運輸大臣がかような微温的なお話で私は非常に意外に思う。御承知のように乗客に対するところの保険は、本船に関する場合は定員七十七名に対して一人当り二十五万円の保険を四十九名だけつけておるのです。従ってこういう事件に対してたとえば保険会社が無条件でその保険の責任を負って、そしてこれに対するところの補償をしましても、四十九名の人に対して一人当り二十五万円、そうしますと二百三十七名の大ぜいの中で、死んだ人たちその他を入れまして現在百十一名ですか、その百十一名に対してこれではあまり少な過ぎて、私はかようなことで政府がその結果を見てやるというふうなことは、不親切千万じゃないかと思う。ことに事件の性質としまして、これは海難審判の決定を見まして、その責任が船長にあるかどうかというはっきりした最終的な判定がなければ、保険会社は支出しないのです。そうしますとその間少くとも一年ないし一年半というものは、遭難者は何の補償も受けないのです。こういう点に対して、これを見てからというふうなお話であったのでは、私どもは納得するわけにはいかない。もっと具体的なお話を伺いたい。
#11
○宮澤国務大臣 これにつきましては御承知の通り洞爺丸もしくは紫雲丸のような政府もしくは国鉄の所有しておるものの事変、または相模湖の事変等とがありまして政府としては全体に対してどういう処置をとるかということは先例もあり、今後のこともあり、これはやはり慎重に考えさしていただかなければ、速急にお答えを申し上げることは困難だと思います。
#12
○小山(亮)委員 私は相模湖のような事件がありましたから、政府は直ちに海上における遭難者に対する保険ということを考えなければならぬはずだと思う。今日再びこういう事件が起き上ってきて、今さら論議するということがすでにおかしいくらいだ。あなたは今洞爺丸の事件がある、紫雲丸の事件がある、相模湖の事件があるとおっしゃったが、なるほど洞爺丸、紫雲丸事件は相手が国鉄でありますから、あるいは九十万円あるいは八十五、六万円で話がついております。しかし相模湖の事件はどうですか。二十二名の遭難者に対して総体でたった五万円じゃないですか。一人当り二千円ないし三千円です。そういうものがあるのに、あなた方はごらんになってそれと見合わしてこういうことをやろうとおっしゃるが、それは話がむちゃじゃないですか。私はこういう事件に対しては船主が全力を尽して補償するのが当然だと思うのです。当りまえです。またそういうことができると考えておればこそ、政府はこれに対して認可を与えられたのでしょう。人の品物を預かってなくしただけでも、それに対する損害賠償をするのは当然です。大切な人の命を預かって、そうして料金を取ってそれを商売にしておる。そうすればその遭難者に対してはそういうことをするくらいの覚悟がなければ、用意がなければできないわけじゃないのですか。これに対して責任をとるのは当然ですよ。保険だけにまかせて知らぬ顔をする、その保険も当然にかけなければならぬ定員に対するだけの保険をかけていないじゃないですか。七十七名の、定員に対しては七十七名に対する保険をかけなければならぬでしょう。それを四十九名かけておる。その保険だってそうですよ。一人当り五十万円と二十五万円と二種類がある。そのうちの安い方の二十五万円をかけて、しかも七十七名の定員に対して四十九名かけておる。ほんの言いわけにかけておる。そういうような保険を当てにしてその保険の決定を待ってやるということは、あまりに当局としては誠意がなさ過ぎはしませんか。もう少し何かあなた方のお考えがありはしませんか伺いたい。
#13
○辻説明員 先ほど大臣から御答弁がございましたが、私から補足して申し上げます。ちょっと先に御了承願いたいのでございますが、私ども打合会の席上で少し間違ったことを申し上げて、小山先生の誤解を招いたのは私どもの責任でございますが、その点二青弁明させていただきたいと思います。
 ただいまの保険のかけ方の問題でございますが、確かに第五北川丸は四十九名保険をかけておるのでございますが、これは定期船協会と保険会社と団一体的に保険契約を締結しておりまして、実は第五北川丸が三時間以上の航路に就航した場合の定員が四十九名でございまして、三時間以内の場合が七十七名なのでございます。四十九名の保険をかけますと、大体百七十名程度の保険金が、精求する場合にはもらえるということに相なっております。百数十名といいますと実は定員をオーバーするのでございますが、これは臨時定員をとるとか、あるいは学童あたりにつきましては二人で一人分に計算するとかいうような算定のことがございまして、優に定員はカバーするだけの保険契約はいたしておるわけでございます。ただ打合会で申し上げましたように、この第五北川丸事件におきましては、定員オーバーの問題がございますし、また乗組員に重過失があれば、保険金は支払わないというような条項がございますので、今保険金がそっくり第五北川丸の船主に入りますかどうかという点につきましては、私ども自信がないのでございますが、その点一言弁明させていただきます。
 それからただいま小山先生から、保険がどうかわからないうちは、補償の問題がどうなるかわからないというのはけしからぬじゃないかという御質問でございますが、私どももちろん今政府から直接補償するというようなことは考えられぬと思いますが、会社に対しましては、この会社の不行き届きの点から申しまして、行政指導によりましてできるだけ遺族の方々に御満足のいくような補償の道を講ずるように、全力を上げて行政指導をいたしたいと思います。ただ保険金が入るか入らぬかによりまして会社自体の金繰りの問題等につきまして、だいぶ差が出て参りますので、そういう意味におきまして先ほど大臣は保険の問題の様子も見たいとおっしゃったのである、かように考える次第でございます。
#14
○小山(亮)委員 この保険の問題は、ただいまあなたのお話によりますと、今回の場合には百七十名の保険金が取れる、こういうふうにおっしゃいました。これだけ保険金が取れれば、あとの話は非常に楽になると思います。しかしあなたのおっしゃるただし書きが非常に気に食わないのです。保険会社は、契約によれば重大なる過失のあった場合には、この保険金をそのままスムーズに払うか払わないかということはその限りでないということを言われた。それに対してあなたは、船員が重大なる過失のあった場合ということをおっしゃった。しかしそれは違うのです。船員の過失のあった場合には、必ず保険会社がこれをカバーしなければならぬのです。船員、船長の過失はすなわち船主の過失なんです。商法によって船長は明らかに船主の代理人なんですから、その船長の過失の場合には、必ず保険会社が保険金をカバーしなければならないのです。ただしこれは重大なる過失という場合は、意味はまた違う。ある場合には、保険金を取ろうという目的のために故意に船を危険の状態に持っていくという場合があり得るのです。事実としてそういう場合があるのです。そういう場合には、この保険金に対する賠償の責に任じないということはあります。しかしほんとうに善意をもって船長が船の操縦をやっておった場合に起きた遭難事件、過失に対して、当然保険会社がその損害を填補すべきことは当りまえのことなんです。これは少しも疑う余地がない。この本件の場合を考えてみまして、北川丸の船長はたまたま切符を切るために六分間かじを離れたということを私は聞いておる。六分間十六才の若い船員にかじをとらしたということは聞いております。しかしながらそれは故意に船を危険なる状態に導くために、かじを離れたものだとは私は考えない。必ずそれはやはり船の安全ということを考えながら、大丈夫だと思ったその油断が、ついにこういう事件を引き起したのであって、これは過失ではあるけれども、決して故意に船を危険に導こうとする行為ではない。従って保険会社がこれに対して理由をつけて保険金を支払わないという態度に出ることは、許しがたいことであると私は思うのです。この点に対して見解を明らかにしていただきたい。
#15
○辻説明員 私先ほど申し上げた点につきまして言葉が足りなかったと思うのでありますが、第五北川丸のかけております保険には、故意または重大なる過失の場合には、填補の責に任じないという約款があるのでございます。これは法律上過失につきまして、業務上の問題といたしまして軽過失と重過失というふうに分けております。一体この本事件の船長その他の措置が過失があったかなかったか、かりに過失のあった場合に、それが軽過失に相当するものであるか、重過失に相当するものであるかという点によりまして、その約款の運用が違ってくると思います。でありますから、私ども小山先生のお言葉を返すようでございますが、故意でなければ必ず保険会社が填補の責に任ずるというふうには解釈できないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
#16
○小山(亮)委員 これは実に重大な問題だと私は思います。いわゆるあなた方の言われる重過失と軽過失という問題、海上における船員の重過失とは一体どういう場合をいうのですか。また軽過失とはどういう場合ですか。またそういうことに対する前例がありますか。あったらそれを説明していただきたい。
#17
○辻説明員 ただいま例を思い浮べてはおりませんのですが、よく調べまして御報告申し上げたいと思います。
#18
○小山(亮)委員 これは監督すべき責任の立場にあるところのあなた方が、この契約をする場合に重過失とは何であるか、軽過失とはどういう範囲であるかということを、大体御承知になっておるからお許しになったでしょう。そうでなくて、ただ何でもなしに、そういう契約をしたからそれでおれの方は見て見ぬ振りをしているということでは私はないと思う。定期船の問題はやはり海運局の監督下の問題なんですから、そういう問題はことに重大な問題なんですから、ことにこれは議会でもすでに問題になったことがあるのですから、この問題の重大なる過失とは何ですか。どういう場合をさして言うのですか。それを説明していただきたい。
#19
○辻説明員 重大なる過失がこの場合にどういう場合であるかということにつきましては、私今ここで申し上げる自信がないのでございます。保険の契約につきましては、私ども定期船の方は一般に監督いたしておりますが、保険の業に関しましては、私どもの監督ではないのでございまして、そういう契約を保険会社と定期船会社が結ぶという点につきましては、非常に望ましいことだとは考えておりますが、実はそこまで検討が及ばなかった点はあるいは不行き届きであったかもしれませんが、そういう事情であります。
#20
○小山(亮)委員 これはなるほど保険の問題は大蔵省の監督ではありましょうけれども、技術的に重大なる過失というのは何をさすのか、あるいは軽過失というのは何をさすのかということを、技術的に判断をなさるのはあなた方以外にはないのです。つまり運輸省以外にはない。そうしますと運輸省の技術関係の方がおいでになるでしょうからどなたでもよいのです。特に海上における船員の重過失と軽過失というのはどういう場合を言うのか説明していただきたい。
#21
○辻説明員 お言葉を返すようでございますが、もしある保険の問題に関しまして、軽過失であるか、重過失であるかということが問題になれば、やはり裁判の問題になるのではないかと思うのでございます。
#22
○小山(亮)委員 裁判というのは何ですか。海事技術審判のことを言われるのですか。普通の裁判のことを言われるのですか。
#23
○辻説明員 民事裁判の意味でございます。
#24
○小山(亮)委員 船員の重大なる過失とか、重過失とか軽過失ということは、これは海上におけるところの審判、海技審判でこれをきめるのではないですか。そうしなければわからぬでしょう。私はそう思うがどうですか。
#25
○辻説明員 私どもは船員法の関係につきまして、海難審判所というところが判定いたしますが、これは裁判を受ける権利を奪うものではないのでございまして、これが民事上の重大な権利関係になりまして、裁判上の問題になりますればやはり裁判所でそういう認定があるものと考えております。
#26
○小山(亮)委員 普通の裁判は罪が重いか軽いかということをきめるのでしょうけれども、技術上の重大なる過失であったかなかったかということは、海技裁判でなければわからないでしょう。だから海技裁判を先行しなければならぬ、普通裁判に先行して海技審判を先にやらなければならぬ、それがためにそういう問題が起っておる。もし普通裁判で一切が決せられるものなら、技術審判を先行する必要はないのです。技術審判を先行しなければ、ここに重大なる判断の誤まりがあるからいけないということで、技術審判を先にするということになっているのですよ。従って私は船員としての重大なる過失である、あるいは軽微なる過失であるということを決定するのは、これは海技裁判以外にはないと私は思うのです。私の言うことが違わないと思うのですが、どうですか。
#27
○辻説明員 私は小山先生のおっしゃるようには考えておりません。船舶職員の過失があったかどうかにつきましては、慣例といたしまして海難審判が先行しております。しかしそのことが非常に刑法上あるいは民事上の重大問題になりまして、個人の権利義務なり、あるいは一般の権利義務に重大なる作用を及ぼす場合には、裁判所が海難審判と違った判定をすることがあり得るという制度のように考えております。
#28
○小山(亮)委員 これは重大なる問題で、もしあなたがそういうことをおっしゃれば、今までの海員組合から、あるいは全海員団体から主張していることが全部くつがえされるわけなんです。もうすでに御承知のように大正十二年からこういうことが大きな問題になっております。昭和十二年三月十五日に時の司法大臣塩野さんに全海員団体から陳情した事件があります。これは法の改正に対して船員が二重の刑罰を受けなければならないという問題に対して全海員が奮起しましてそして大臣に要請しまして、大臣の処置によって海事技術審判を先行して、それの判定によって司法裁判をやるということを大臣が保証されたのです。これはもうあなた方御承知の事件でありますが、一応読んでみます。「船員ハ其職務二関スル取締二就テハ総テ其特別法タル船員法ニヨリテ規律セラレ、従テ其ノ業務上ノ過失行為二関シテモ同第七十三条ニヨリ船員が著シク其職務ヲ怠リテ一定結果ヲ惹起シタル場合、即チ其過失タルコト明確一点ノ疑無キトキニ限リ刑事訴追ヲ行フコトト相成居候処、明治四十一年刑法改正以来其業務上過失ヲ処罰スル新規定ニヨリ、過失ノ軽重ヲ問ハズ訴追セラルルコトト相成、船員ハ別ニ海員審判ノ制度ニヨリテ行政上ノ懲罰ヲ受クルモノナルヲ以テ、結局二重処罰ヲ受クルコトトナリ、船員一般二著シキ衝激ト恐慌ヲ来シ候、元来船員ハ海難ニヨリ自ラ生命ノ危険二曝ラサルルモノナルヲ以テ、日夜最善ヲ場シテ事故ノナカラムコトヲ祈願シツツアルモノニシテ、如斯生命ニ対スル脅威ヲ以テ最高絶対ノ取締ヲ受ケツツアルモノニ対シ、刑罰ヲ以テ臨ムモ何等注意ヲ深カラシムル効果無キモノニシテ、一面如斯ハ船員ニ対シ幾多不当苛重ノ結果ヲ齋ラシ、海運ノ能率維持上二於テモ憂慮スベキ影響少ナカラズト信ゼラレ、即チ百弊アリテ一益ナキモノナルヲ以テ、適当ノ方法ニヨリ速カニ船員ニ対シテハ其特別法タル船員法第七十三条ヲ刑法業務上過失処罰規定二優先シテ適用スルノ根本方針ヲ確立セラレムコトヲ切望シテ、当協会ハ既ニ大正三年以来屡々帝国議会並ニ政府当局ニ請願乃至陳情ヲ重ネ来り、就中昭和十年五月二十八日日本船主協会二於テハ本問題が独り船員ノ問題タルニ止マラズ、船舶所有者、海運業者ニ於テモ均シク利害ヲ共ニスル重要案件タリトシ、当協会ト連名ヲ以テ当局二陳情スルニ至リタル次第二候し」まだあとがたくさんありますが、これは省略しますけれども、これが要するに海上における技術上の過失であるか、あるいは過失でなかったかということは、陸上の司法裁判においては判定することができない。従ってどうしても技術審判を先行しなければならぬということになっている。従って保険会社が重大なる過失であるか、あるいは軽微なる過失であるかということを判定するには、やはり海上の審判を待たなければわからないのです。それを待たないで、司法裁判だけであなたがわかるとおっしゃるのは、これは重大な問題だ。従来までのわれわれの主張を全部くつがえすものであってしかもそれが運輸省における海運局の、所管しておられる最高首脳の方がそういう認識をもってこれから海運行政をおやりになるということになれば、これは非常に重大な問題だと思う。私は重ねて御所見を伺いたいと思います。
#29
○宮澤国務大臣 私参議院に参りますから今の問題についてちょっとお答えをいたします。今の法律上の相違点については私はよくわかりませんが、ただ今般の保険の問題については、この程度のことで保険は払わないでいいということになれば、保険の価値はないようにわれわれも思いますので、今小山委員の言われるような趣旨において私はこの問題を取り扱われるべきものだ、こう考えておりますので、その御趣旨によって十分行政的の指導、またその他のことをやっていきたいと考えております。
#30
○永山委員 ちょっと関連して申し上げたいのでありますが、現地の方の声は、どうも当局が定員過剰だというような、いかにも当局には何らその責任がないということをカバーするような宣伝が強過ぎる。実際上この定員という問題は、普通こういうような定員でやっておるのであって、ことに保険定員も百七十六名になっておるような状態であるから、ほんとうのこの原因はどこにあるかといえば、暗礁の保安装置ができてなかった、ここが重大なる原因であるということを、現地はもうほんとうに強く言うてきておるのであります。当局がただ警告をしたというようなことで、万全の措置をしたというふうに逃げているけれども、そうではないのである。やるべき一番大切な暗礁の保安装置ができてなかったというところにあるのだというふうに言っておるのでありますからして、これらの点から見ましても、私はどうしても重過失というようには考えられないのでありますから、ただいま大臣のおっしゃいましたように、保険会社に向ってぜひ一つ善処するように、強く要望を当局の方からでもやっていたかきたいということを、この場合に、大臣あちらへ行かれるとすれば申し上げておきたいのであります。
 これとやはり関連しまして、自動車の損害賠償保険はもう運輸省はおやりになっておるのであります。これは無過失損害賠償保険をかけておるのであります。これをなぜ船にやらないかということを、強くわれわれ委員会は要望いたしたのであります。でございますから、この場合に共済組合制度を確立して、そうして強制加入による無過失損害賠償、しかもそれは社会保障性を持っておるものでございますから、政府がその事務費を出して補助して強制加入の無過失損害賠償の線に、自動車さえもおやりになっておるのでありますから、勇敢にお取り組みになるというその決意を承わりたいのであります。
#31
○宮澤国務大臣 今度の問題について、定員を越えたという点の責任を追及して、事態をのがれようなどということはむろん考えておりません。この定員制についてもいろいろの場合に無理があり、また慣行がそうなっておらないのでありますから、お話の通りであります。後段の問題については、なお急速に一つこれを考えまして、何とかそういう方法を立てていくことが、日本のような、こういう小型船の木造船が盛んに運航しておるところではごく必要だと思いますので、善処したいと考えております。
#32
○小山(亮)委員 私はさっき船員の重過失、軽過失の問題に対する調整部長のお考えは、著しくわれわれの考えと食い違っておりますので、一応私の見解を申し上げましたが、これに対する御答弁がございません。一応伺いたい。これは重大な問題ですから……。
#33
○辻説明員 私少し思い違いをしておりまして、間違ったことを申し上げたかと思いますが、小山先生のおっしゃるように原則として司法裁判に先行して海難審判が行われるということが建前でございます。ただ重過失、軽過失の問題につきましては、なお海難審判庁その他と協議いたしましてお答え申し上げたいと思います。
#34
○小山(亮)委員 調整部長に伺いますが、ただいま大臣はこういう問題において遭難者に対する補償は、船主に何とかできるだけのことをさせたいということを言われた。なおそれについて、また調整部長も行政措置によってできるだけのことをしたいというふうにおっしゃった。私はその御両名のおっしゃった言葉を百パーセント信用したい。しかし私は一言ここで申し上げておきたいのは、こういうような場合に、えてして船主が金がないから払えないということを平然と言うのです。また中村法務大臣の山口で言われた言葉の中にも、船主がこれの負担能力がないから、ない場合にはどうだというふうなことを言われる。あたかもその負担能力がなければ、その責任はのがれるといったような感じを与えやすいのです、これは。私はこれは非常に遺憾だと思う。どんなことがあっても船主はその責任をのがれるわけには参りませんよ。もしいいかげんなことをやってそして人の命を失って、金がないからといってそのまま放置するというようなことが、至るところにどんどんと続出するようなことがあったらどうなりますか。これは重大な問題であって、またさような無責任なものに定期船というようなものをお許しになるわけがないと私は思う。りっぱな誠意のある、またこういう場合には補償する能力のあるものと認めて許可なさったことだろうと思う。従って船主はこれに対して全力を上げて誠意を示すべきものである。もしその全力を上げて誠意を示さない場合には、行政措置によってこういう商売を中止させるということも私はあり得ると思うのですが、御意見はいかがですか。
#35
○辻説明員 まことに小山先生のおっしゃる通りでございまして、私どももそういう決意をもって、会社側にできるだけ遺族の御満足のいくような補償の道を講じさせたいと存じております。
#36
○小山(亮)委員 ただいま保険会社に対しては運輸大臣が非常な強い決意を示されて、そして少くとも保険会社としては百七十人に対するくらいの保険料金は支払われなければならぬものだというような意味合いに私どもはとれるのです。また調整部長から伺っても、そういう工合にとれるのですが、もしそうだとすれば、死傷百十一人でありますから、これに対するところの保険会社の補償は、必ず政府の御協力によって取れることだと私は思います。同時にまた、あなた方の行政措置その他によりまして、船主から十分な補償料を、慰謝料を出させるという措置を御講じになれば、なくなった人たちは、満足するということはありますまいが、ある程度満足するような、我慢をされることのできるようなところまで行くのじゃないか、こう考えますので、その点について私は非常な期待をもってあなた方のおっしゃった言葉を信じて、この事態の推移を見守りたいと考えますので、十分な御措置を下さらんことをお願いいたします。
 以上が運輸省に対するところの私の質問の全部であります。もしこれに対しての御返答がいただけたらいただきたいと思います。
#37
○辻説明員 私どもは遺族の方を思いまして、当該芸備商船会社に対しましては、先ほど申し上げたように全力を上げまして、会社の力のある限り満足のいくような補償の道を講じさすようにいたしたい所存でございます。また保険会社に対しましても、できるだけ定期船会社の事情よりもむしろ遺族の方を考えて、そういう意味で好意的な扱いをお願いするつもりでおりますが、ただ先ほども申し上げましたように重過失、軽過失の問題につきましては、私どももなお検討しなければならぬと思っております。そういう問題、それからある一定の定員をオーバーした場合には金が支払われぬという条項がございますので、この点どういうふうになるかにつきましては、今のところ私どもといたしましては見通しがつきかねておるような事情でございます。その点御了承願いたいと思います。
#38
○淵上委員長 正木清君。
#39
○正木委員 今の辻部長の答弁に関連して私お尋ねしたいと思うのですが、問題の結論は海上運送法によって諸般の手続がとられておるわけですね。そこで、一体こういう事故が起きた場合、当該船会社が全責任を持って、遺族の方が納得するような処置がとられるのかとられないのかということが議論の中心になって参りますが、私のお尋ねしたいのは、この海上運送法の免許の基準の第四条の四号にこういう規定がございます。「当該事業を営む者の責任の範囲が明確であるような経営形態であること。と問題はここに落ちつくと思うのでございますが、あなた方がこの免許をされる場合、どういう点を基準として今日まで免許をしてきたか、その点をお伺いいたします。
#40
○辻説明員 ただいま御質問のございましたその責任の範囲が明確であるという基準の解釈でございますが、これは極端なものは名義貸しといわれるような制度がありまして 一応自分の名前で申請するが、実態は他の者がやるといったふうなことでは、業務遂行におきまする責任の所在が明らかでありませんので、そういう意味ではっきり申請者が全責任を持って、当該航路をやるのだということがはっきりしたものでないといけないのだというふうに解釈いたしております。
#41
○正木委員 そういたしますと、今回の第五北川丸のようなこうした事件が起きた場合、その船会社が賠償能力を持たないような場合、一体監督の立場にある運輸当局は、どういう処置をおとりになるお考えでございますか。
#42
○辻説明員 こういう事件が起りまして、補償の能力がないというふうな場合につきましては、遺憾ながら政府といたしましては今どうするという措置はないわけでございます。
#43
○正木委員 そこで重ねてお尋ねいたしますが、同法の第十九条の二に、今のような問題が起きた場合の処置としての規定が明確にされておるわけでございます。第十九条の二をごらん願いたいと思うのですが、第十九条の二に保険契約締結の命令事項がございます。後段を見ていただきますと、「当該旅客定期航路事業者が旅客の運送に関し支払うことのある損害賠償のため保険契約を締結することを命ずることができる。」こういう規定が明らかになっております。ですから私は法的に質問を展開いたしますことは、一体免許の基準というものはどこできめるのだ、これが明らかになり、そしてその免許の基準のワクの中でこうした不祥事件が起きたとき、当該事業者が支払い能力がない場合に一体どうするのだ、そして第三にはこういう事件があるであろうことは予想にかたくないので、法律の第十九条の二で、こうした損害賠償の保険契約を締結することを命ずることができる規定になっております。そこで当然運輸当局は、この芸備商船株式会社に対して第十九条の二を適用して、損害賠償の保険契約の命令を出しておる、こう考えておりますが、出しておるのか出していないのか、どういう契約を結んであるのか、契約してあるとすれば当然あなたの手元に一切の書類があると思いますが、それをここで明らかにしてもらいたいと思います。
#44
○辻説明員 お答え申し上げます。今芸備商船が保険会社と結んでおりまする契約は、今回のような事故が起りました際に、遺族その他の関係者に対しまする補償金を芸備商船が払った場合に、保険会社がその補償金を補てんするという保険契約でございます。これは十九条の二によって命じたものではございませんで、私ども今のところこの十九条の二の命令を発動してはおりませんが、できるだけ不測の事態に備えて、そういう保険をかけるようにということを行政指導いたしまして、相当数今申し上げたような保険を締結しておる次第でございます。
#45
○正木委員 私は新しい問題がここで提起されたと思うのです。十九条の二の法律規定によって行政的な処置として、あなた方が法律を忠実に守っていろいろの障害があろうとも、この法律命令を完全に実施さえしておれば、遺族に対する弔慰その他の問題で、ここまで議論沸騰しなくてもよかったのではないか。ところがなぜあなた方はこの十九条の二を発動して、損害賠償の保険契約の命令をしておらなかったのですか。おらなかった理由を当委員会で明確にしていただきたい。
#46
○辻説明員 今通例定期船会社がこういう事故に備えまして保険会社と契約をいたしておりますのは、先ほど申し上げましたように、遺族に対する関係におきましては当該会社が補償の責めに任じまして、その補償に対して保険会社が填補するという契約であったわけでございます。それで芸備商船につきましてはこの命令を発動するまでもなく、そういう契約を自発的に行政指導によりまして結んでおったわけでございます。ただいま問題になっておりますのは、その契約の条項に、船主側に故意または重大な過失のある場合であるとか、あるいは定員をオーバーして乗せた場合には、保険金を支払わないというふうな条項がございまして、そういう条項がどういうふうに解釈されるかによりまして、保険金がもらえるかもらえないかということが今問題になっておるわけでございまして、保険の契約は一応結んでおったわけでございます。
#47
○正木委員 ですから私はこの問題を大きく取り上げなければならないのです。あなたのおっしゃる船会社が行政的な処置によって、十九条の二の命令を受けずとも保険会社と締結しているというのは、船舶傷害賠償保険ではございませんか。そうでございましょう。
#48
○辻説明員 さようでございます。
#49
○正木委員 そこで船舶傷害賠償保険によると、その約款において定員をオーバーしたりあるいは重大なる過失であるとか軽過失であるとかいうことが議論になって、保険会社が常に有利の立場に立つような契約が結ばれておるところに問題がある。たぜ一体十九条の二をあなた方は発動して、厳重なる行政監督を行なって、いろいろのことを勘案して、いかなることが起きてもその遺族その他の損害に対しては、万全の処置がとられるような行政措置をとっておかないのか。では何のためにこの十九条の二という法律があるのか、その点を明確にしていただきたい。
#50
○辻説明員 ただいまおっしゃいますように、現在船舶傷害賠償保険におきましては、いわゆる定期船業者の故意、過失その他によりまして保険金がもらえない場合もあり得るのでありまして、そういう場合におきましては、正木先生のおっしゃる通り利用者の側から申しますと不備な点があるのでございまして、その点今責められるまでもなく、私ども今回の事件に遭遇いたしまして、保険が利用者の補償に対して抜かる点があったと痛感いたしておるのでございます。私どもの研究が足りなかったということを深く反省いたしまして、この点何とか定期船業者の過失とか故意にかかわりなく、無条件に遭難者には補償できるというふうな保険制度を保険会社とも打ち合せて考えてみたい、かように考えております。これは私の卑見でございますが、保険会社がそういう保険をどの程度受け入れるか当ってみたいと思っております。たとえば保険会社から直接遭難者に保険金を払っていくのだ、もし定期船業者に重大なる故意または重大なる過失があれば、保険会社はその定期船会社に求償権を持つというふうな保険制度が考えられるのではないだろうかというふうなことも研究いたしたいと思います。
#51
○正木委員 私は関連質問で質問をいたしましたし、責任ある大臣がおりません。私は私なりに問題の責任の所在が明確になってきたと思います。従って私の考え方からすれば、今回の事件の起きたこと、それから跡始末については、当然当該の役所である運輸大臣は相当の責任を持ってこの処置をしなければならない、こう考えますが、いずれにしても大臣がおりませんから、私の質問はこれで終っておきます。
#52
○小山(亮)委員 井本刑事局長が出ておられますからお伺いしたいのですが、今回の北川丸事件に対して検察庁のとられた処置はどういう処置をおとりになったか、伺いたいのです。
#53
○井本政府委員 私どもの方に入りました電報によりますと、広島地方検察庁の高橋次席検事がこの事件の主任検事になりまして関係の警察並びに海上保安部、それに神戸の地方海難審判理事所の理事官などと合同捜査本部を設けましてこの事件の過失責任者は刑事上だれであるかという点について、検察庁は検察庁なりに捜査を進めておるという状況でございます。
#54
○小山(亮)委員 新聞によりますと、船長を検事勾留か何かで取調べの後に、起訴されたか勾留されたかどっちかなさっておいでになるのですか、伺いたい。
#55
○井本政府委員 申し落しましたが、昨日付の電報によりますると、今月の十三日の午後三時、北川丸の船長川口信康という方に対しまして、業務上過失船舶転覆没並びに業務上過失致死傷の容疑のもとに逮捕状を請求いたしまして、結局身柄を拘束して過失の有無について捜査を進めておるという状況であります。
#56
○小山(亮)委員 先般紫雲丸事件のときにも同一の問題がありましたが、お取調べに際しましては、こういう技術上のことは海技審判の取調べを先行するというようなことを私が質問をしまして、井本局長がその趣旨を尊重してその通りにやるつもりだということをおっしゃった。当時の紫雲丸事件の取調べ中に、海技審判の方の関係者が、取調べの都合上容疑者を釈放しろ、しばらく自分の方によこせという場合は、快く釈放して海技審判の進行を妨げなかったということを私は伺っております。今回の事件に際しましても、証拠隠滅のおそれがあるとかなんとかいう事件ではないので、むしろこういう場合に検事が留置されるのは、自殺のおそれがあるとかなんとかいう意味でおそらく留置されるのだと私は思うのですが、まずどういう意味で検事がこれを勾留しなければならないか、それを伺いたい。
#57
○井本政府委員 これは小山委員がとくと御承知で釈迦に説法でございまするが、海技審判先行の原則は明治二十六年以来の原則であります。かような事件の際には海技審判をまず先にやるべきであるということで、明治二十六年以来当時の逓信大臣、司法大臣とが協議をいたし、その後何回もさような確認が行われておるわけでございます。ただ私どもといたしましては、専門的な知識をそれほど必要としないで、過失の有無が比較的楽に認定され得るという事案につきましては、原則といたしましては確かに海技審判先行ではございますけれども、事案の性質によってわれわれの方も一緒に調べをしなければならぬ場合も往々あるわけでございまして、海難審判所が審判を始めれば、あるいは調べが始まれば、われわれの方が全然調べができないというのでは私どもの方の職責も勤まりませんので、本件のような場合には海難審判所の理事官の方々とわれわれの調べ官とが並行して調べを続けておるというのが実情であり、この前の紫雲丸のときにも、われわれの方もわれわれの方の調べをしておりましたし、審判所の方も並行して調べを進めて別に支障はなかったように伺っております。
#58
○小山(亮)委員 私は刑事局長の今の御答弁に対して別に反対をしているのじゃない。ただあなたが今おっしゃるように、海技審判の調査を先行するという趣旨をどこまでも守っていただきたい。これは私が申すまでもありません。それも釈迦に説法で、あなたはよく知っておいでだろうと思いますけれども、警察であるとかあるいは検事局になれない者は、身柄を拘束されて取調べを受けますと、ただ早く釈放してもらいたいという気持のために、何でも検事や調査官の調査に迎合して心にもあらぬことを言う。全然身柄を拘束されてしまいますと、何となしに非常に心細くて、心にもないことを言いやすいものなのです。従って拘束して調べるということは、調べは非常に早く進むでしょうけれども、時には全く間違った自白をしいる結果にもなります。その点において、海上の技術審判の方は身柄を拘束するというようなあまり苛烈な調べ方をしませんから、従って時間は長引くかもしれぬけれども、正しい審判がいつでも行われておると私は思っております。海技審判に対して、今日までいろいろなケースがございましたが、自分は船を沈めなかったのに沈めたという認定をされて処罰されたというような事項は一つもありません。従って罪なくして刑を受けたというようなことは、海技審判ではいまだかってない。しかるに司法裁判ではしばしばある、しばしばあるどころではなく、のべつあるくらいに私は思うのです。というところから考えまして、その調べ方は技術審判を先行しないと、こういう場合には往々誤まる。あなたは今こういうような簡単な問題であって、大して頭を使わなくてもいい問題と言われたが、問題はそこにある。きわめてわかりやすく簡単なものだと考えておることが、非常に複雑でむずかしいことであって、罪のない者が罪になる場合があり得る。ただいまおっしゃた瀬戸内海の船の操作ということは、非常にむずかしい。瀬戸内海というところは、あなた方は日本の遊園地であって、非常に景色のいいところだと考えますが、世界にこのくらい船のくろうとを泣かせる場所はないのです。御承知のようにイギリスのドーヴアー海峡から北海にかけてのあの濃霧、潮流は海員を泣かせます。同時に朝鮮沿岸の激しい潮も海員を泣かせますし、北海道沿岸の濃霧であるとか、瀬戸内海には潮流と濃霧と島々がありまして、狭いところは非常にむずかしい。ここを卒業したら、もう海員の技術大学を卒業したと同じだといわれるくらいなんです。そのくらいむずかしいところです。世界でも有数な難所なんです。しかもきのうもよくはっきりしましたが、海の中に沈んでいる暗礁がある、出たり入ったりしている岩で、満潮のときには一尺五寸から二尺下にくぐってしまう。当時ぶっつけたときも、おそらく頭を出しておったか出しておらなかったかどうかわからなかったところです。標識も何もない、しるしも何もついていない、当然つけなければならぬところに標識がついていない、そういうところでこういう事件が起っている。それをきわめてわかりやすいことだからといって、簡単に司法官の頭で片づけて、お前は何をしたから罪があるという結果だけで判定されるということは、取り調べる方は楽でいいかもしれないが、取り調べられる方はこれくらい苦痛はありません。それくらいでありますから、簡単であるとお考えになればなるほど、慎重な御考慮を私はわずらわしたいと思うのです。そういう意味で、瀬戸内海で起ったような事件は、新聞でじゃんじゃん書かれますし、司法官としては自分の目の前で起った事件だし、司法官は何をしていると言われるのがいやだから、なるたけ早く手をつけたいでしょうが、往々にしてあまり早く手をつけ過ぎたために、事件を誤まるということがあり得る。だから私はこの点について特にあなたに伺っておきたい。特にこの事件を急いで身柄勾留をしてしまって、本人にどんどんとあなた方の方の調査を進めてしまって海技審判の方をあと回しにするという理由はないじゃないですか。要は話し合いの上で、少くとも海技審判の方を先にさせて、それからあなた方の方の取調べをお進めになったらどうですか。かつての申し合せ通り、しかも塩野司法大臣以来明言せられておる通りにおやりになったらどうかと私は考えるのですが、重ねて御意見を承わりたい。
#59
○井本政府委員 容疑者の勾留でございますが、これは刑訴法の六十条に規定がございます通り住所がないとか逃亡するおそれがあるとか、あるいは証拠隠滅のおそれがあるとかいう場合に、身柄をとめることができることになっておるわけでございまして、先ほど申し落しましたが自殺をするおそれがあるから逮捕、勾留してもいいという規定は刑事訴訟法にはございません。従っておそらくこの事案は逃亡とか住所がないとかという事案じゃないから――私まだ確かめておりませんが、証拠隠滅のおそれがあるということでとめたものと考えております。
 それから瀬戸内海が表向きは見たところは非常に静かな、景色のいいところであるが、非常に航海がむずかしいところであるというようなことは、確かに私どもも事件を通じまして大きな事故が何回も瀬戸内海にありますので、さように考えております。この事案につきましてお前の方は手を引いて海難審判所にまずやらせろというお話でございますけれども、現地の検察官といたしましては、先ほど申し上げましたように、確かに原則は海難審判先行であるけれども、これは必ず海難審判が済まなければ検察官が手を出してはいけないのだというようには理解していないので、この事案がまだ新しいうちに調べをいたしませんと、検察官としての職責の勤まらないというような観点から調べを進めてきたというように私は考えておるのでありますが、明治二十六年以来の申し合せもございますので、御趣旨の点はさらに広島地方検察庁に伝えまして、技術的の問題等につきましては十分検討するようにいたさせたいと考えております。
#60
○小山(亮)委員 あなたのおっしゃることを伺っておると、明治二十六年以来の申し合せなんか全然守っておらぬじゃないですか。紫雲丸事件でも今度の事件でもそうですが、紫雲丸事件自体そういうこともあったということは、その当時私が質問したときにあなたよく御承知なかったのです。井本刑事局長は取り調べた結果返事をするということで、一たん本省にお帰りになって取り調べられた結果、その当時は私の言ったことが事実であったと言ってお認めになったのです。そのくらいこれは忘れられがちな約束なんです。そのときは先に紫雲丸事件では高松検察庁が検挙したのだから、今さら釈放するわけにいかぬから、両方で話し合いでうまくやるということであったが、あなた方の下に対するはっきりした達しが行っていない。しかも検察官としては功を急ぐ、ほっておくわけにいかぬ。なまなましいうちに調べなければいかぬというのなら簡単なんです。何の申し合せが要りますか。大臣がそういうことを議会において言明したのです。そんなに簡単に捜査が自由に勝手にやれるのなら、何もこんな問題を明治二十六年以来申し合せなんかする必要はないじゃないですか。私はもう少し誠意のある話をしていただきたいと思うのです。そうしてなぜ勾留しなければならないのですか。自殺のおそれがないというのなら、逃亡のおそれはありませんよ。逃亡のおそれがあったら、自宅で監視すればいいじゃないですか。警察官は頼みもしないのに、尾行や何かする警察官がたくさんあるじゃないですか。よけいなことはどんどんうるさいくらい調べている警察官があるのです。それでありながらこういう大事な人間を、どうしてこういうものだけを検事局に検事勾留で勾留しておかなければ調べられないのですか。自宅でもってちゃんと待機さしておいてお取り調べになったらどうですか。過失はしましたよ。この船長のやったことはまことに申しわけのないことだが、しかし人殺しをしようとしてしたのではない、どろぼうしよう、強盗しようとしてしたのではない、まかり間違えば自分の命もなくなるのですよ。やったことはまことに申しわけのないことだ、世間に対して何と言ってあやまっていいかわからない問題でありますが、この人の行為は悪い動機でやったのではないことははっきりわかる。そういう人間をどうして勾留しなければ調べられないのですか。逃亡のおそれがあるのですか。もし逃亡のおそれがあるならば――あなた方の方で見張っておって逃げたから勾留したというのならわかります。逃げもしない。逃げたって警察で調べればすぐつかまりますよ。逃げもしない、静かに黙って頭を下げて、申しわけなかったと言っておるものを――頭を下げておればいつまでも勾留してぎゅうぎゅう締め上げなければならぬ、そんなばかなことはありませんよ。どうですか、すぐ命令を出して、自宅へ待機さしてお取り調べになる方法をお講じになるお考えはありませんか。少くとも二十六年鳳来とおっしゃったあなた方のお約束を実行されるお考えはございませんか。
#61
○井本政府委員 本件と類似の問題につきましては、前回も紫雲丸の事件につきまして小山委員からお尋ねをいただいたわけでございますが、終戦後には昭和二十三年に女王丸の事件がございましてそのときのわれわれの三代ほど前の国宗局長が通牒を出しておるわけでございますが、その当時にも確かに原則としては海事審判先行である応、これはあくまでも原則であって、例外はあり得るのだ。例外は、先ほど申し上げたような、事案の明白なもので、特に技術的な判断までも待つ必要のないものは、いろいろな事情を総合して一緒に調べてもよろしいというような通牒を出されております。従って、たまたま問題になりました例がこの紫雲丸事件といい、あるいは今回の第五北川丸事件といい、海事審判と一緒に検察官の調べをしておるので、何でもかんでも――何というか海事審判先行でなくて原則がこわれているじゃないかというおしかりでございますけれども、たまたま例外的な例がかようにあげられたのみでありまして、原則は確かにただいま申し上げましたように海事審判先行であると思っておりましたが、あくまでも例外はあり得るものだということを一つ御了承をいただきたいのでございます。
 なおこの問題につきましては、実は昨日付の電報をけさ見たようなわけで、それには十三日の午後三時に船長を逮捕したということが書いてございますが、詳しい事情はまだわかっておりませんから、私の方で事情がわからずに、身柄を逮捕したものを釈放せよというようなことはすぐには命令いたしかねますので、よく事情を調べてみたいと考えております。
#62
○小山(亮)委員 この問題は、戦争前からきわめて重大な問題でありまして、いつでもずっと海事審判が先行しておったのです。しかし戦後――私も追放されまして議会に議席を持っておりません間にいろいろな事件が引き続いて起りました。今あなたのお話を伺うと、戦争後起ったときに検察庁の方が取り調べたが、別に抗議をする者がなかった。従ってこれが一つの例になったというような意味にもとれるようなお話でした。さらにまた洞爺丸の事件もあるいは紫雲丸の事件も今度の事件も、相模湖の事件も、みんなあなた方はどんどん調べておりますが、それは全部例外ですか。これからの日本に起る海事上の海難、その他過失船舶覆没罪であるとか、あるいは乗客を死に至らしめたという事件が必ず起りますが、全部例外なんですか。例外があまり多過ぎはしないか、伺いたい。
#63
○井本政府委員 ただいまお話のような事件は、確かにお尋ねのようなことで検察官がまずというか、検察官の方でも調べをしておりますが、海難事件は、今おあげになりました洞爺丸事件とか紫雲丸事件とかという大きな事件ばかりでなくて、ほかにもたくさんあると考えております。従ってどの過失事件でも、船舶に関する事件を全部検事が調べるという気持になりましてもとうてい不可能で、技術的にもできないと考えますので、原則としては船舶の過失事件は海難審判先行主義であるべきだというように考えておりますが、いろいろの事情によりまして検察官の方でも調べをしなければならぬという場合もあるということを御了承願いたいと思います。
#64
○小山(亮)委員 その点においては私は異論がないのです。事件の性質によって、三人や五人の人間が死んだということで検察官が調べるというような点について、私は異論を言っているのじゃない。紫雲丸事件や洞爺丸事件――今度の北川丸事件は、小さい船の割に事件が大き過ぎはしないですか。だからこそこういうように議会の問題になるので、わずかな小さな船が沈んだ、わずかな数の人が死んだというようなことは議会の問題になりませんよ。百何十人というような人が死んだというような事件でありますから、きわめて重大な事件だ。従ってそれを例外にされるということは、あまり乱暴ではないかということを私は言うのです。
 それからもう一つは、犯罪の意思なくして罪を犯した、動機もすっかりわかっている人間が、自殺のおそれもないというのに、どうして拘束しているのですか。自殺のおそれがあるからといって拘束したのなら、御親切な御処置だといって感謝しなければならぬが、そうでないものをどうして拘束しておくのですか。私は、自殺のおそれがありと考えてあなたの方で親切に保護検束の意味で拘束しておいて、身柄も拘禁していると考えたら、そうではないのだ。それなら一体何で拘禁をするのですか。それからまたあなたのおっしゃるように、地元の方に大ぜいの警察官がおり、検事がおって、みんな出先の者がやることだから調べがわからぬ、こう言う、これは昔の軍部みたいなものですよ。昔の満州事変当時の陸軍大臣の答弁がその通りでした。出先の若い将校がやることだからわしにはわからぬ、よく調べてよく調べてといううちにあんなでかい事件になってしまった。出先だからわからぬ、わからぬと言うのです。えてしてあなた方がわからぬ、わからぬと言っているうちに、人権はどんどん無視されている。罪なくしてどのくらいの人間が悲しんで泣いているかわからぬじゃないですか。そういうことを平気でやるから、検察庁というものは国民に大きらいだと言われるのです。検察庁にいる人間はだれも同情なんかしはしませんよ。給料を上げろといっても全部反対だ。それはあなた方のやり方が間違っているからだ。なぜ人間の自由というもの、命あるいは権利というものをもっと尊重するという立場から――新聞をごらんになればわかるじゃないですか。新聞にちゃんと出ている。けさの新聞に逮捕して拘禁したということがあったから私は質問した。あなただってやはり新聞を読むでしょう。まんざら活字のきらいな方じゃないと私は思う。そうすれば、おわかりになっておいでになったら、私が質問する前に、長距離電話の一本もかけてお聞きになればすぐにわかることじゃないですか。どうして勾留されているのですか、どうして逮捕されているのですか伺いたい。
#65
○井本政府委員 これは何といいますか、刑事事件のうちでいろいろな事件かございますが、過失事件は外形的には軽い事件でございますけれども、捜査の立場からいいますと、非常にむずかしい事件でございます。たとえば失火事件、これも過失事件でございます。また過失による船舶覆没罪、あるいは自動車の過失事故、かようなものは刑罰の上からいいますと非常に軽い事件でございますけれども、なかなかこれの調べがむずかしいのでございまして、過失事件の調べがりっぱにできるようになれば検事も一人前だといわれております。ところが、この事件でございますけれども、自殺のおそれがあるからといって勾留することはできないのでありまして、刑事訴訟法上先ほどおっしゃられたように、住所不定であるとか、あるいは逃亡のおそれがあるとか、証憑隠滅のおそれがあるというようなことが身柄をとめる理由になるわけでありますが、本件は結局証輝隠滅のおそれがあるということでとめたものというふうに私は考えております。これは証憑隠滅のおそれがあるということになると、それはどういう事情があったのだろうということをよくお尋ねをいただくのでありますけれども、ほかの例をあげて恐縮でございますが、汚職事件などは、言葉だけの問題が事実の認定に非常に影響がありますので、しばらく調べの際には交通を遮断して調べませんと、事案の真相がわからぬということがあるわけでございまして、本件の問題でも、おそらく現地の検事は、しばらく交通遮断をして調べるのが適当であるということで、またそういたしませんと調べができないということで、判事の許可を求めまして、判事から許可をいただいて、結局逮捕、勾留したということになると思いますので、法律上の手続といたしましては別に欠くるところはないと考えております。しかしながらとにかくこれだけの事件を起しました方で、刑事的には相当責任を負っていただかなければならぬというようには考えておりますけれども、なお調べの途中でありますし、人権の尊重はもちろんあくまでもいたさなければならぬことは当然でありますから、その点についてはさらに人権は十分尊重するように私どもの方も配慮し、また現地にも、先ほどの海難審判先行の原則もあるということを再認識させまして、遺憾なきを期したいと考えております。
#66
○小山(亮)委員 法務省で有数な頭脳明晰な方だと聞いておりますので、いろいろああだこうだというような説明をされるが、説明を伺っておればおるほど、私はかえっておかしい気持がするのですよ。事件がむずかしい事件だ、むずかしい事件だから拘置したというような意味にもとれる言葉をおっしゃった。これは事件がむずかしくあろうが、むずかしくなかろうが、拘置するのは事件が大きいからとか、事件がむずかしいから拘置するというのじゃないと思う。それはあなた方の捜査の必要上拘置されるというようなことになるのじゃないのですか。私はそういう意味からいいまして、証拠隠滅をはかるということをいわれる――これはなるほど大きな船ですと、ちゃんと書類がすっかり整っておりますから、衝突事件なんかを起しましたときには、船が港を出帆してきて、次の港に着くまでの間の長い航海の航海日誌まですっかり直しまして、そうして自分の船にきわめて有利なように書類を書き直しておいて、審判廷に出てくるものなんです。ですから証拠隠滅の機会は、そうした書類や何かをたくさんに整えておるところの船こそ、証拠隠滅の機会があるのです。しかしながらこういうようなわずか三十九トンの小舟で、しかも二、三時間航海すれば、目的地へ行ってしまうのでしょう。そういうようなところの小さな船は、書類も何にも持っておりはしませんよ。持っておれば、乗客に売った切符くらいなものです。あとは自分の手帳とかいう所有物は持っておりましょうが、この船に乗客名簿なんかあってそれにちゃんと乗客の名前なんか書き込んであるようなりっぽな船でしたら、だれの死体かわからぬというような事件が起りっこないのです。何人乗ったかということがわかっておる。おそらく切符を買って乗るときにはわかっておるかもしれぬが、船にはそういう詳しい書類――船べ乗り込むお客さんの名前を記入するような名簿の設備は、こういうものには全然ありませんよ。そうすると、証拠を隠滅するといったって、隠滅すべきところの証拠物件になるようなものは、何もないじゃないか。何にもない。もし証拠を隠滅しようとしたならば、自分が死んでしまえば証拠隠滅になるだけだ。それ以外に何にもない。何を証拠隠滅するのですか。今あなたがおっしゃるように、大してむずかしい事件じゃない。目の前の事件だと言われるくらい、きわめて簡単な事件だということがわかっておるなら、証拠の隠滅のおそれはないじゃないか。複雑なものではないじゃないですか。あなたは自分のおっしゃる言葉で、問うに落ちず語るに落ちておるのです。自分のおっしゃることをあとからあとからみんなひっくり返しておいでになるのじゃないですか。私はどの面から見てもこれを勾留し、起訴して検事局に拘置する理由はないと思う。もう少しフェアに、ざっくばらんな気持になって、そして調べて、もし拘置する必要がないと思ったら釈放するというような、さらっとした気持で御答弁願えませんか。法務大臣に伺いたい。法務大臣は弁護士をしておって政治家をしておられるから、私はこの答弁を法務大臣から伺いたい。
#67
○中村国務大臣 この第五北川丸の沈没いたしました事件は、非常に遺憾のできごとでございまして、この責任者である船長を検察当局が逮捕して取調べをしておる。これには今まで御意見のありましたように、いろいろ問題の点があると思います。第一に海難審判所の審理が先行すべきであるということも拝聴いたしましたが、問題は、海難の場合には海難のよって生ずる状態が、やはり専門の人でないと明確な判定がつかない。従って海難審判所という専門の機関において、その海難のあり方を明確にする、こういうことが重大なポイントであると思うのであります。従いまして、そういうような原則が今までも打ち立てられてきておると思うのでありますが、本件の場合におきましては、御承知の通り非常に多数の超過人員を搭乗さしておりますので、まずこの点において船舶安全法の定めるところにも違反をいたしておりますし、船の責任者としては重大な過失が明らかであると思うのであります。その結果多数の人身事故を起しましたので、多分検察当局といたしましても、これを海難審判の進行並びにその結論を待つまで待っておるわけにはいかないという事情から、事件の捜査に着手したものと思います。ただそこで、今なぜ逮捕をしたかという御意見がございましたが、私どもしろうとでわかりませんが、この第五北川丸が転覆、沈没いたしまする際には、船長でなく十六才の少年が運転をいたしておったようでありまして、これらの関係から見ますと、結局検察当局が目をつける点は、なぜかような少年に運転をさしたのか、こういう点が大きなポイントであると思うのであります。たとえば船長がどうしてもやむを得ない、手を放さなければならぬ用事があって、十六才の少年にその時期に運転をさしたものか、あるいはそうでない、怠慢からきたものか、こういう点は、これだけの大きな人身事故を起した事件を捜査する検察当局としては、大きな一つのポイントになるので、そういう関係から、真相を究明する必要もあり、逮捕をしたのではないか、かように、私の観察でありますが考えておる次第であります。従ってこれらの点が明確になりますならば、逃亡のおそれも、他に証拠隠滅のおそれもない人間であるとするならば、あるいはたとい検事勾留の期間中でありましても、すみやかに釈放するのが当然であります。私どもとしてはそういう不当の逮捕をしないように、また必要がなくなったらすみやかに釈放するように、これは十分われわれの立場としても善処するようにいたしたいと思います。
 なお事件の取調べにつきましては、御説のように海難につきましては、海難審判所が海難のよって来たる原因及びそのあり方について、専門の知識を持って十分の審査をしてもらう、これは非常に大事なことでございますから、もちろん重大な過失が、過剰の人員を乗せた点やその他にあったにいたしましても、海難のそういう専門的な問題については、十分これは海難審判所の理事官なりそういった関係者と協議をいたしまして、それらの専門的知識の上に立った結論が出されなければならぬと思いますから、かりに刑事事件としての捜査と海難審判所の審判とが並行いたします場合がありましても、海難については海難審判所の審判を先行させる必要があるという原則が今まで打ち立てられてきた根拠から考えてみれば、そういう点にあると思いますから、さような根本の理論に反しないように、十分注意をするようにわれわれとしても善処をいたしたいと思います。私どもといたしましても、先ほど井本刑事局長からお答えいたしましたように、まだ現地の実情について十分つまびらかにいたしておりませんので、早急に一つ研究を重ねまして、遺憾のないように処置して参りたい、かように考えます。
#68
○小山(亮)委員 法務大臣は、山口県の方からずっと旅行されてきたのですから、大体いろいろのうわさでお聞きでございましょう。けれどもこの事件は、当時の状況から申しますと、わずかに三十九トンの小舟です。三十九トンの小舟というと、ほとんど引き舟くらいな小さなものです。それで、それの乗り組み定員が七十七名、それに二百三十九名乗っているわけです。三倍乗った。この船はどんな人が見ましても船令が古いのです。木船で三十三年六ヵ月ですから、もう相当古い船で、その船に三倍も乗るということは、ちょっと想像がつかないのですよ。これはちょうど生口島のお寺のお祭に出かけていきましての帰りの花見客ですから、みな相当行楽気分で、酒なんか飲んでおったものと私は思う。それで帰りは、離れ島ですから帰ってくるときに船がない。船がないから、この船は、人が多過ぎて困るというので臨時に出されたように新聞で見ております。そうしますと、それに乗り込んで定員以上に乗ったけれども、まだどうもあとに残されそうで、残されちゃかなわぬので、団体客がどんどん乗り込んだ。団体客の性質として、大部分の人が乗ってあとに三人や五人残されるということはいやなものですから、ことに酒気を帯びておれば、無理やりに乗りたがるのが人間の普通の考え方です。ことに国税庁の役人が二十人も乗っておったということを聞きますと、こういう人たちも相当帰りを急いだことだろうと思う。そこで、船の者が制止しましてもなお乗り込んだ。従ってある新聞によると、生き残ったお客さんが、この船は乗ったときから妙な船だった、右や左にぐらりぐらりゆれて妙な船だったということが出ている。私はそれを見て実に戦慄したのですよ。定員以上に乗せて、しかもそんなに大ぜいの乗るべからざる人間が乗ると、船の復元力というものがなくなっているから、ほとんど危ない状態になっている。そのときには船は頭が重くなりまして、ぐらりぐらりする。だから岩にぶっからなくとも、突風か何か起きて一波くると、片方の船ばたから波が入っただけで、お客さんはみな反対側に逃げますから、それだけでもひっくりかえる危険性を持っているのです。そういうことを考えると、船員が、自分は乗せないと思っても、わずか四人しかおらぬのですから、四人の船員が、しかもその中の二人は十八才と十六才です。それがどんなに乗せない乗せないと言ったところで、二百何十人がわっと乗られたら、もうそれでおしまいです。それでこわごわ出たものだろうと私は思う。ただそういう場合に、十六才の者にかじを持たせておくのはけしからぬということは成り立たないのですよ。広い安全なところだったらだれが持ったっていいのです。ところが私が非常に残念に思うのは、そのかじを十六才の子供に預けた場所が、佐木島の西海岸の寅丸礁という岩が波の上に出たり入ったりするその暗礁のところで、その十六才の子供にかじを預けた。これは切符を見に行ったとかなんとかいう話を聞きます。しかし長い間の航海に一人でかじをとらなければならぬということはない。便所へ行く時間でもかじをとって、そこで用を足せというわけにいかないので、必ずそれはちょっと人に預ける場合がある。それは安全な場所に限る。この場所は岩に近い危険な場所だ。しかも聞いてみれば、潮が満潮になれば一尺五寸か二尺岩の頭が引っ込む、干潮になればその岩の頭が大半出るというような場所だという。そういう危険な場所に標識がないということがすでに間違っておる。私はきのうは海上保安庁の長官にこの責任を追及した。結論は日本の大蔵省が金を出さぬからできぬというのだ。私はこんなことに金を惜しまないで、世界の公園であるとか観光地であるとかいって風光明媚を誇っておる瀬戸内海が、だれが航海してもちっとも危険のないような状態にまでするのには、そういう暗礁なんかというものを親切に教えてやるような標識を完全に整備するのがほんとうなんですよ。そうでなくて外客を誘致するなんというおおそれたことをやらぬ方がいい。それにもかかわらず、何にも措置がない。それではからずもかじを六分間子供にまかせておる。そして岩に近づいて、しまったと思ったときには、やっちゃった、こう言う。新聞の報ずるところでありますが、私はそれを聞いて、なぜそういうところでかじをこんな少年の手にまかせたかということだけが非常に問題だと思うのですよ。そのほかに悪意を持って船を沈没させようと思った形跡は一つもない。証拠を隠滅しようと思ったって、どこから見ても隠滅のしようがありません。しかもこれを取り調べるためにその道の練達堪能な、長い間海上の経歴を持った審判官が調べる場合に、この三十才の若い二等運転士の免状を持った船長がごまかしようがないのです。それを警察官が調べれば、人をみんなどろぼうと思って調べるのですから、どれもこれもみんなけしからぬやつだと思うかもしれませんが、そうじゃないのです。どろぼうしようと思ってやったのでもなければ、船を沈めてやろう、人殺しをしようと思ってやったのじゃないのですから、動機が違うです。ですからなぜ勾留して調べなければならないか。人がたくさん死んだから勾留しなければならないのか、それとも新聞に大きく書かれたから手荒く取り扱った方が受けがよくなるからやったのか、あるいは人間の権利とか自由とかいうものを全然無視して、元来そういう頭だから自然にこういうことを考えずにやってしまったのか、私にはわからぬ。わからぬが、こういうことはやってもらいたくない。この点重ねて法務大臣の御所見を伺いたい。
#69
○中村国務大臣 確かにこの事件をわれわれから考えても、乗せた者にも責任がありますが、むやみに乗った人たちにもそういう責任があると思いますので、これの責任は一カ所のみにあるとは言い切れないように考えます。同時にそういう場所に行政庁として標識を設置しておかなかったということも、考えれば責任の一つかとも思いますが、ただ小山委員からも御指摘がありましたように、非常に危険な場所で一体なぜ船長はかじから離れて十六才の少年に運転させたかということが、私はこの事件の非常に重要なポイントであると思うのであります。従って検察当局でこの船長を逮捕して取調べをしているというのは、まだ連絡がなくつまびらかな事情はわかりませんが、多分そういうようなことについて後日争いや疑義の起きないように、さような点を明確にこの際しておきたいということからの処置であろうかと考えるのであります。いずれにいたしましても、これは責任必ずしも一人のみにあるのではなくして、いろいろ関係方面にもあるものでございますから、問題は十分慎重に処理されることが必要である。また海難そのこと自体については、海難審判所の審判官あるいは理事官等の専門家によって十分判断せられるように進めていくべきであると思いますので、さような点につきましては、御指摘の次第もありまするし、われわれとしては十分善処して参りたいと思います。
#70
○小山(亮)委員 私は先ほど井本刑事局長に申し上げたのですが、同じものを調べるにしても、外界と交通を全然遮断された場所に人間を置いて取り調べるという場合には、いろいろな心理作用がありまして、つい取調官の言うことに迎合して、自分に覚えがないことでもあるという答弁をしやすいのです。また事件を早く解決して釈放してもらうために、心にもないことを言いやすいものなんです。ですから身柄を拘束して調べるということはよくないことだと私は思っている。しかし法務省の考えは、必ず何でもかんでも外界と交通を遮断して調べるのが、当りまえの調べ方だという考え方なら、私と考え方が違うのです。人間の権利、自由というものに対しての解釈の仕方が違うのですから、私は別な場合にまた質問したいと思いますが、願わくは今度のような問題があるときは、そういう処置をとらないで調べてもらいたい。どんなことがあっても、そういう危険な場所でかじから離れたという船長の責任はのがれはしないのです。それは船員として最も重大な過失をしているのですから、その責任はのがれはしない。証拠の隠滅もしようがないのですから、私は特に勾留したりなんかして過酷な取調べをするようなことはしない方がいいということを申し上げておるのです。
 第二に伺いたいことは、法務大臣がたまたま山口県に行かれて、山口県で新聞記者に話された言葉でありましょうが、第五北川丸についての発言であります。新聞ですから、あるいは多少字句の相違があると思いますが、第五北川丸事件の原因は定員超過にあると思うが、客船の定員に関する制限について将来何らかの措置を政府全体として考えるべきだ、今度の場合は会社が無力だから、補償など政府が責任を負わねばならないということを言っている。これは非常に親切な話です。さすがに法務大臣としてのお言葉で、われわれも何かほのぼのと明るいような気持がするのです。従ってこの客船の定員に関する処置に対しては、昨日来運輸当局に対しても私は強く要求してすみやかにこれに対しては適切なる規則の改正をなさるべきだということを申し上げておるし、この定員違反に対してはもっと強力な罰則を行う、しかもそれを来年やるとか再来年やるとかいうのではなく、臨時に何らかの方法で、そういうあまりひどい定員超過のないような、適切なる処置をおやりになるような方法をおとりになることを運輸大臣に要求しておきます。同時にまた法務大臣が言われた、会社が無力だから補償など政府が責任を負わねばなるまい。これはどういう方法で政府は補償を負うような方法ができるでしょうか。その点は法務大臣がそういうことを言われると、ともすれば金がなければ会社が払わなくてもよいのだという観念に陥りやすい。そうでなく、どんなことをしても、いやしくも人の命を預かる商売をしておる者は、身代限りをしても過失に対しては補償の責任を果さなければならぬという観念は、どこまでも植えつけなければならぬと私は思う。そうでない人間にこんな大事な人の命を預かる仕事を認可することは、すでに間違いだと私は思う。ですからこれは船主が全力を上げて、だれが見ても誠心誠意この補償に任じたという態度をとってもらいたいと同時に、将来の問題に対しては、こういった問題は政府が、金のないような事業家に対して相当のバックをしてやって、その賠償の責任を果させるような新しい機構をお作りになったらどうか。保険制度にしても再保険制度で、政府がその再保険を担当してやって、金を払えない場合には、政府がその補償をあとからバックしてやるというようなシステムを急速にお考えになるのがいいじゃないか。ことに瀬戸内海のようなところは、私はこういう事件を今後絶滅したいとは思いますけれども、瀬戸内海は行楽シーズンになりますと、金比羅さんのお祭であるとか、いろいろな行事があって、お客が小舟に乗って非常に激しく往来するところなんです。日本において一番激しく船の往来する場所なんです。世界においても有数な場所なんです。一時間に通る船の数は、統計をとりましてもすばらしい数になるのです。そういうような特殊の小舟の往来の激しい、船に乗るお客の多いところなんですから、また事件も多いと思う。司法事件なんというものはこれから相次いで起ると思う。でありますから、こういうようなところには特別なる御考慮をなさって、人命の安全をはかるとともに、またこういう場合には相当の補償のできるような処置を講じていただきたいと思う。ちょうど大臣がここに発言をされましたから、法務省でこれを考えてもだめだと言われるかもしれませんが、内閣全体として考えなければならぬことだと言われたのでありますから、内閣全体として考えていただくように――少くもこうおっしゃったことに対しては責任を持っていただきたい。あなたがこういうことをやる意思はなくておっしゃったとすれば、こんな選挙運動を法務大臣がやったのはけしからぬということになります。実現すればこれは選挙運動をやったのじゃない、無責任なことを言ったのじゃないということになりますから、これは無責任でないということにするのにはどうしても実現していただきたい。御所信を伺いたい。
#71
○中村国務大臣 お話の通り私は船舶については所管でございませんが、ちょうど私が飛行機で岩国へ着きましたところが、岩国におります新聞記者諸君との会見を求められまして会見をいたしました際に、あそこは非常に事件の場所と近いものですから大へんな問題でございまして、そこでいろいろな議論が出たわけであります。私として考えます点をその際雑談的に話したのでありますが、船舶安全法によりますと、定員超過の乗船をさせてはいかぬということになっておりますが、これらも御承知の通り刑罰が非常に軽くて、一万円以下の罰金というようなことであります。しかしこれは刑罰を幾ら重くしてみても――先ほど小山委員からもお話があったように、船の責任者が乗せまいと思っても、乗客の方が用事を急ぐとか一緒に乗りだいとかいうことで、無理やり乗り込むような場面もあり得ると思う。従ってこれは海上保安庁、その乗船地の警察、こういう機関が協力する方法を考えて、過剰人員は乗せない、乗りたい人があっても、船の当事者とともに力を合せて乗せないようにすることも、こういう事故を防ぐ根本であろうと考えます。
 ただ問題は今の補償の問題でありますが、私はその船会社が有力な会社か貧弱な会社か知りませんでしたが、新聞記者の諸君が言うには、その船会社は非常に貧弱な会社で、あれだけ大ぜいの人の事故が起きて、とてもあの補償はできませんよ、これは何とか考えてやらなければ、ここで死んだ人たちは浮ばれないのではないか、こう言って私に迫るものですから、実際そういう貧弱会社がこの船の所有者であって被害をこうむった人たちが償いを受けられないということであれば、常識的にも一大事だから、われわれとしては何か一つ工夫するなり努力はしてみる必要があると思う。こういう話をした範囲なのでありますが、今もお話のように、それでは私がそういう具体的の知識を持っておるかというと、知識は別段ございませんけれども、しかし今後こういうようなできごとが各地にありましょうし、今度の場合等も考えまして今後これらのできごとの起りませんように最善を尽しますと同時に、また起ったことの処置についても、私が東京へ帰ったら、こういうことを出先で聞いてきたと運輸当局に話をして、運輸当局を中心にわれわれ知恵をしぼって最善を尽すべきである、かように考えておったのでありまして昨日帰ったばかりでまだ話をしておりませんが、運輸大臣にも出先におけるそういうような模様を話しまして、政府としてもとれる処置があればできるだけ最善の方法をとりたい、かように今日も考えております。
#72
○淵上委員長 山口丈太郎君。
#73
○山口(丈)委員 私は各関係当局にお伺いをしたいと思いますが、まず法務大臣にお伺いをいたします。今小山委員から法務大臣に質問された中に、今回の事件についてきわめて適切な見解を発表されて、それを実行に移してもらうように強い要望の発言があり、法務大臣もまた適切に答えて、善処するとのことでありますが、私がこの運輸委員会に来てからたびたびこのような事件に遭遇をして、そのたびに当局から御答弁をいただいております。去る二十九年十月八日に起きた相模湖における内郷丸の事件のときにも、法務省、運輸省関係の当局に御質問申し上げましたが、実はそのときの答弁の内容をつぶさに検討してみますと、いろいろと実行すべきことが約束せられております。けれども今日見ますると、どうもその約束はそのときの答弁であったようでございまして、実行されていないのははなはだ遺憾に思うわけであります。それが実行されていないために、法務大臣の言葉があたかも新しい見地に立って処置をするというように発表になったと受け取れるのであります。実はこの昭和二十九年の事件のときにも法務省では、業務上の過失を適用する場合は船長だけではなく、もっと広範囲に取り締る必要がある、こういうふうに言っておるのであります。今度の事件に対しましても、わずか船長以下四名の船員が乗り組んでいて、そしてそのおのおのの職務を専属に忠実に実行せしめるような環境に置かないで、いわば船長をして切符の整理をせしめるとか、あるいはまた乗客の整理をせしめるとかというふうな、いわゆる雑務もあわせ行わしめるというところに、こういう甲板員をしてその船長の職務を代行せしめるような事態が発生する。でありますから、この意味はもっと広範にそれを取り締るということをさす。しかもこの定員の規定の問題については、その基準について法律上はっきりしていない。従ってこの事件を契機として、いわゆる定員問題その他の基準については、法制的にはっきりさせたいという言明をさせられておるのであります。その後この言明の通りに諸般の実行をされたかどうか、されているとすれば具体的にどういうことになっておりますか。私はただそのときに起きた事件によってそのときの場当りのことで為政の責任を負われるわけには参らないと思います。私どももまた重大な責任を持っておると思うのであります。従って今日までどういう処置をとられたか、これを具体的に一つお答えをいただきたい。
#74
○中村国務大臣 主としてこの種の事件の根本原因は、船舶の状況の安全性、こういう点につきましては海上保安庁が常時検査をして、検査証を交付しておるのでありますから間違いないと思いますが、この種の事件が起る根本の一番難点をなしておるものは、法律の定められた船舶の安全性を確保するために、いろいろな角度から検査調査をして、そして検査証を交付する際に最大積載量、及び最大定員というものは定められておるわけでございますから、これが励行されるかされないかという点に大きな根本の問題があると思うのであります。この点につきましては私ども運輸当局でないからわかりませんが、それを所管しております運輸当局としては、その後言明を励行するような努力を訓令その他の方法でやっておると私は考えます。ただやっておりましてもこのように励行されない事例がなおかつ起きて参ります。これはなるほど船の所有者あるいは船長、船員、これらの人たちでは先ほど小山委員もお話のように防ぎ切れないで乗員過剰になる場合が、世の中の一般情勢から見て、他の乗りものの場合等を勘案して考えますとあり得るじゃないか。そこでこれを防ぐ工夫をさらに今度は積み重ねていかないと、その目的が果せないような気がいたします。従いましてこれらの点につきましては、もし警察がお手伝いをするとするならば、これは警察を担当する大臣の所管でございますし、海上保安庁の協力によって目的を果し得る範囲ならば運輸大臣の所管でありますが、私どもも閣員の一人として責任を持っております以上は、できるだけわれわれの私見のある点も所管大臣に伝えまして、最善を尽すようにいたしたいと思います。私の立場から実はただいまお話のような点につきまして直接お答えするのはどうかと思いましたが、せっかくのお話でございましたから以上のことを申し上げまして、われわれとしても所管大臣の諸君と協議をして最善を尽すような努力はいたしたい、かように考えております。
#75
○山口(丈)委員 ただいまの御答弁は、私は法務大臣として最も適切な御答弁だと思います。しかしもうすでに三年も四年も前の事件のときにもこの種の問題について司法上、行政上、法務相は非常な不便を感じ、かつ矛盾を感じておられたがゆえにこういう言明をされておると思います。今の大臣の答弁を拝聴しておりましても、そういうようなきわめて不便な状態の存在することも、私はお認めになっておるのではないかというふうに考えるのです。そうすればもうすでに三年も四年も経過した今日において閣僚内においてこれに対しての改善を要することを知りつつも、その措置を具体的に運ばれないということはまことに遺憾に思うわけであります。こういう事故が起きまして、その起きたときにいろいろの問題を論じましても、もうすでに起きたこと自体は取り返しのつかないことであります。従ってこれらについては私はこの三年前に言明された通り、責任を持って早急にこの問題を善処していただきたい。これを強く要求しておきたいと思います。定員の問題は、一応の基準に基いて定員がきめられておる。これは船に限らず、自動車あるいは電車汽車等、すべての交通機関がそうであります。特に陸上交通などにおきましても、定員を守っていたのではラッシュ・アワーなどに電車は一台も動かすことはできません。当然取り締らなければならない行政官にいたしましても、つい無理に他の群衆と同じ動作をもって乗ってしまうのが常であります。こういうわけでありまするから私が思いまするに、それでも事故がなければ事は済んでおるわけです。事故が起きますとそこで問題が起きる、実はこういうのが常識になっておると思うのであります。しかし特に危険度の多い船舶、あるいは航空、こういうようなものに対しましては、私は厳重なる定員励行の措置をとらるべきだ。同時にこのようないわゆる小さな業者といいますか、資力の非常に乏しい弱小業者が、こういう小型船舶等を用いて人命の輸送に当るというような場合におきましても、やはりこの起きました事実にかんがみて、すなわちその職務の遂行をその職務管掌に従って完全に遂行し得るような、言いかえますと他に転用せしめないような法的措置を厳重にすべきではないか。船長あるいは航海士は、その船の運航にのみ必要な職務を遂行するというのは当然の話であります。ところがそれに対しまして、船内におけるいわゆる秩序、あるいはサービス等々、他の遂行すべき職務もあわせ行わしめるようなことを放置しておきますならば、これは重大なる過失が起る大きな原因がここに私は存しておると考えるのであります。こういう点について職務管掌の区分を明確にするということが、より一そう重要なことではないかと思いますが、これらについて司法行政上困難があるのかどうか、一つ大臣から伺いたい。
#76
○中村国務大臣 この船舶の問題につきましては、法務省として直接所管として関与すべき事項はきわめて少いように思いますが、先刻申しました船舶安全法の定員確保に関する罰則等につきましても、われわれとしては検討いたしまして、運輸当局と連絡をして事態に沿うような改善について一つ考慮してみたい、かように考えます。
#77
○山口(丈)委員 それでは私は運輸当局に、海上保安庁にお尋ねいたしますが、この種のいわゆる座礁後の沈没事件というものは、これは航路標識の航路に対する安全性というものが私は確保されていないからだと思う、少くともこの安全航路の表示ということが私はより一そう緊急な要件ではないかと考えますけれども、その安全航路の表示、これは終戦後には、瀬戸内海におきましては、敷設機雷あるいは浮遊機雷を警戒して、そうして指示航路といいますか、そういうような標識があって、安全度を保っていたわけでありますが、最近ではそういう必要がなくなったので、一般航路の指定というようなものはなくなっておるのじゃないかというふうな気がいたしますが、特に瀬戸内海のような狭いところで暗礁の多いところでは、私は一番安全なことは、その安全航路を指示する、こういうような指示標識をもってそれを表わすということが必要ではないかと思うのですけれども、今やっておる航行安全の航路の指定、もしくは指示はどういうふうになっておりますか。
#78
○砂本説明員 御説のように船舶の安全確保につきまして、航路標識の非常に重大な意義を持つことは私ども重々承知しておるわけであります。この問題の整備につきましては、本委員会におきまして長官から質問に対する答弁として所信を申し述べておりますが、一般的に申しまして、航路標識の整備は今後も十分やらなければいけない、かように考えます。もっとも私は直接の所管でございませんから、具体的なことはここで申しかねるのでありますが、すでに長官も答弁しておりますので、それで御了承いただきたいと思います。ただ特殊の場合における特殊の航路標識とか、船舶に対する特殊の航法につきましては、すでに例も多多ございますが、今後一般的にもやはり常時改善をしていかなければならない。私どもも巡視船を多数持っております。巡視船そのものの航行にも直接関係することでありますし、巡視船そのものも私どもの警備救難部の仕事といたしましても、すでに一般船舶の安全確保の見地でいろいろ地形、その他も調査しておりますし、その点につきましては御趣旨の通りいろいろ改善の余地はある、かように考えます。
#79
○山口(丈)委員 私は瀬戸内海におきましても、危険区域を定めて、その危険区域に指定した区域の航行については、安全航行の指示、あるいはまた航行路の指定、こういうことが行われるということが、私は海難防止上特に必要な要件ではないかと考えるわけでありますけれども、これについて何らの措置をとっておられないとすれば、今申し上げたような措置をとるようにしなければいかぬ。またとられているとすれば、今どういうような措置をとっておられるか、それを伺いたい。
#80
○砂本説明員 ただいまのお尋ねの点は、今回事故を起しましたその地点に対する今後の措置でございましょうか。
#81
○山口(丈)委員 一般です。
#82
○砂本説明員 それはいろいろの事態に対応いたしまして、現在も先ほど申しましたように特別の地域における特別な航法に対する指示も瀬戸内海についているわけでありますし、また航路標識にもいろいろございまして、その地点に適切なものを設置しております。なお今後いろいろ改善の余地はあると思います。その事態に応じて適切にやっていきたい、こういうふうに考えます。具体的にはちょっと申し上げかねるのでございます。
#83
○山口(丈)委員 それがしてあるとすれば、今度の遭難個所等は特に危険なところだと考えます。潮の満ち干によって障害物の出没が自由だ、こういうようなところでは当然、そういう措置がとられているとすれば、これはとられていなければならぬと思う。特に定期船でありますから、その船はどこにどういう危険があるということも知ってはいたでありましょうけれども、少くともそれを知っているだろうということで安全を確保することはできないのですから、私はそこに適切な施設を設けているということは当然だと思うのですけれども、それがなくしてあわてて沈没後旗を立てて標識にしているということが写真にまで現地に一出ております。こういうようなことがやはり航路管理上から見て非常に手抜かりではないかと思うのですが、どういうことになっておるのですか。
#84
○砂本説明員 先ほど申し上げましたように、現在の航路標識が完全であるとは私どもは考えておりませんので、さらにたくさん航路標識を必要とする場所はあると考えます。海上保安庁におきましてもかなり長期計画も立てて、最も効率的に順次その整備に当っております。それともう一つは、これは航路標識がいかに完全になりましても、変化の多い、しかも非常に広い地域でございますから、船を安全に航行しますのにはどうしても人の素質の問題、気がまえの問題が必要だと思うのでございます。これにつきましても、政府としても各機関においてそれらの改善向上をはかっておることは承知しております。なお私どもの所管といたしましては、船の安全航行に最も重要な海図の問題でございますが、これもあらゆる努力をいたしましてその改善、改訂、しかもこれを利用者の便利のようにいろいろ改善を加えていく、こういう方面と相待って船舶の安全は期せられる、かように考えます。
#85
○山口(丈)委員 どうもその場当りで、事故が起きるとその事故が起きたときにいろいろと政府の計画、方針が示されます。すでにもう二十九年の十月に起きました相模湖の内郷丸の事件のときにも、私の質問に対していろいろなすべきことを運輸省では約束しております。これはただ相模湖だけではなしに、今申したように瀬戸内海等における航行の安全のためのいろいろな措置等について、あるいは灯台を設け、あるいは航路指定を行う等のことはやって下さい、やります、そういう言明をすでにいただいておるわけです。ところがそれが一向に行われておらぬ。それからまたこの船令を超過した老朽船に対して人命を預けておくということは非常に危険だ。特に弱小企業においては船の新造等は非常にむずかしい。そこで政府が何らかの措置をとって、人命の安全輸送のために最大の努力を傾けてもらいたい、傾けます、こういう御答弁をすでにいただいておる。ところが実際にはそれらの効果が現われているとは考えられない。あるいはまた実行に移されているとは考えられない。それはこの事故によって現実に物語っていることだと私は思うのです。そういうことでは、単にときどきに応じて適切なる答弁でその場をのがれる。悪く言えばそういうような気がしてなりません。一体今までこれらの点についてどういう処置を具体的にとっておられるのですか。こういう老朽船に対する新造、頻繁化する海上輸送の近代化に対応するための具体的な処置、これはどういうふうにとられたのであるか、一つこの点をここでお示し願いたい、かように考えます。
#86
○辻説明員 お答え申し上げます。相模湖の事件が起りましてからいろいろおっしゃる通り御要望がございまして、私どもも誠心誠意できるだけの措置をしたつもりでございます。二、三例をあげますと、船舶の設備規程につきましても三十年の十二月に改正いたしまして、特に旅客安全の見地から改正をした次第でございます。また相模湖事件が起りました当時は、そういう法令の違反に対する罰則は別にいたしまして行政措置として営業の停止を命ずるとか、あるいは免許を取り消すとかいう措置は、法律上制度がなかったのでございますが、非常に悪質なものにつきましては、営業の免許を取り消すとか、あるいは一時的にも事業を停止さすというふうな措置ができるように、海上運送法の改正を三十年にいたしております。
 それから先ほどお引きになりました定期船、特に小型の船につきましては、おっしゃる通り非常に老朽船が多いのでございます。これらにつきましては一部開発銀行、一部中小企業金融公庫の方に資金のあっせんをいたしまして、これらの新造、改造につきましてできるだけの努力をいたしております。ただこの第五北川丸でございますが、これはおっしゃる通り船令は相当経ておりまして新鋭船とは申し上げかねるのでございますが、御承知のように船舶につきましては定期的に検査をいたして、新旧にかかわらず航行に安全であるかどうかということは厳重に検査いたしております。この第五北川丸について申しますと、昨年の五月に定期検査をいたしました。これは厳重にいたしまして、運航上の点におきましては支障なしということを検査官が認定いたしております。
#87
○山口(丈)委員 私が申し上げるのは、昭和二十九年に約束された中に、私の質問に対してこういう答弁があった。現在は――その当時ですが、船の検査官が約五十人くらいしかおらぬ。これでもって一万九千隻という膨大な船があってとても検査は満足にできません。だから一つこの検査を完全にするために検査陣を強化していきたい、こういうことを約束された。もし検査が確実にされているとすれば、こういうような失策は起きぬのじゃないかというふうに思うのですけれども、その後の検査の状況を具体的に知らしていただきたい。
#88
○辻説明員 おっしゃる通り、予算の関係等もございまして必ずしも検査要員が十分であるとは申し上げかねるのでございますが、限られた人員ではございますが、それをもちましてできるだけ能率よく働かしまして、船舶安全法に定められております検査につきましては、間然するところのないように検査をいたしております。
#89
○山口(丈)委員 私は船にしましても、ただ製造年から年月が経過しておるから危険だという定義は成り立たないと思います。その中には改造もし、あるいはまた不良部分品の取りかえもやり、船令は古くてもほとんど新造船にひとしいような大改造が行われれば、必ずしも船令だけをもって危険なりとは考えませんけれども、しかし今日のような中小企業の実態を見ますと、私は必ずしもそういうような大改造をやって新造船にひとしいようないわゆる補修修理等が完全に行われるような状態にできないのではないか。このために、今までに開銀あるいは中小企業金融公庫等を通じてこれらの老朽船について融資をした額、あるいは改善を加えられた船の数等々を具体的に私は知りたいと思っておるのです。これは後日また質問をいたしますが、資料を具体的に年次別にお示しをいただきたい。それからさらに一つ、こういうような損害を受けた場合に、その損害賠償の強化をはかりたいというのも、すでに私は約束をしてもらっていることです。今度の事件によりますと、新聞の報ずるところによれば、定員までのものは補償できるが、定員以上に乗せている分については補償の責任がない、補償する道がないというような報道がせられております。もしそうだといたしますと、私はこのときにすでに約束していただいていることと若干違うのではないか、約束されたことが行政庁として守られていないのではないか、努力がされていないのではないかというふうに私は考えるわけです。このお約束通り賠償の強化ができて、支払いが支障のないように――洞爺丸あるいはその他今までの海難によりまして救護せられております補償額は、万難を排して政府も責任をもってこの賠償をなさしめるようになさるつもりでありますか、どうでありますか。この点を一つ伺います。
#90
○辻説明員 先ほど申し上げたのでございますが、ああいう事件がございましてから、私ども行政指導をいたしまして不測のこういうような災害に備えまして、それの会社から補償をいたしまするその補償を填補する保険につけております。定期船関係者に徳通して参りまして、現在総トン数にいたしまして定期船の総トン数の約八割近いものがそういう保険に加入しておるのでございます。ただ先ほどいろいろ論議になりましたように、この保険が一口に申しますと、会社側に落度があれば、保険会社から金がもらえないおそれがあるという条項がございますので、その点遭難された方々に対しましては、会社を通じてではございますが、その保険によって補償金が得られないおそれがあるという御指摘は御趣旨の通りでございまして、その点私どもも不勉強と申しますか、手落ちがあったかと存ずるのでございますが、この機会に、会社側もたとい落度がありましても、それは保険会社と会社側との関係におきまして、遭難された方は無条件にもらえるというふうな保険ができないかどうかということを至急に検討いたしたい、かように考えております。
#91
○山口(丈)委員 今検討するのでは役に立たない。すでに二十九年のときに賠償責任は強化する、こういうふうに約束済みなんです。それをまだ依然として三年たった今日においても、その三年前の約束と同じことでは、これは百年河清を待つがごとしです。たとい船主または船長と当事者に過失があってもなくても、その事故によって生命を奪われたことには間違いはないわけです。災害をこうむったことに間違いはないわけです。しかもその災害をこうむったのは純然たる第三者であって、その無過失、有過失のそのような論議の原則にかかわらず、この補償がされるということでなければ、危くて安心して船に乗るわけには参らないのです。ですから二十九年の当時に私はこの点を指摘した。しかもそれを強化すると答弁されているのです。そういうふうに約束をしておいて、今ごろになってもまだ三年前と同じことだ、これではあまりにも私は不親切であると考えるわけですが、ほんとうに真剣にそれをやる気ですか。
#92
○辻説明員 私どもその当時そういう御意見に対しまして全然同感でございまして、先ほど申し上げましたように、保険の勧誘を行政指導したのでございますが、私どものその当時の気持としましては――結果としては見通しが甘いということになったかもしれませんが、各定期船業者も船の運航につきましては、定員の三倍もの人を乗せるというふうな、そういう非常識な措置に出ぬであろう、不幸にして今回のような事故が起った場合には、無条件に保険会社から払われる、そういう定期船業者におきまして非常な落度がないのだと、当然自粛するだろうというふうな前提でものを考えておったわけでございますが、その点先ほど申し上げましたように、疑義が起るというふうな点、この定期船業者を少し信頼し過ぎたという意味におきまして、私どもの見通しが甘かったということを認めざるを得ぬのでございまして、こういう事態も考えねばなりませんので、先ほど申し上げましたように、定期船業者の過失のいかんにかかわらず、乗客の方には保険にかけた者だけは填補できるというふうな制度を真剣に検討していきたいということを考えております。
#93
○山口(丈)委員 甘かったと言われますけれども、私は不可解に思うのです。船主を信頼し過ぎたと言われますけれども、内郷丸事件なんか五倍の定員を乗せておる、そういう事故はかつて広島においても沈没事故が起きていますが、それらの事故はみなこの定員過剰あるいは職務の怠慢の点等々より、そういうような事故が起っておるので、それがなければ天災地変による事故というのは洞爺丸がありましたけれども、これにしたところがもっと適切にやれば、ああいうような事故が起らなかったと今でも思っています。実際にそういうような、いわゆる信頼できないことが行われているから、ああいう事故が起ったのです。その事故のときの答弁では、人災を少くする、それに対する賠償をやるということを約束されておる。それを今なお当時の意見から一歩も出ないということでは、はなはだもって行政府は遺憾ながら怠慢と言わざるを得ない。なるほど定員以上の者が保険において補償されないとすれば、それを超過する向きについては行政指導上欠陥がある、その欠陥を認めて、政府においてもその超過分の補償されない分については当然補償をして、そうして人災を少くするということに努められることが、私は行政府の当然とらるべきことであると思うのであります。こういう点について何らの考慮が払われないのかどうか、私は一つこの点だけは明確にしておいてもらいたいと思います。
#94
○辻説明員 私どももできるだけ行政指導及び政府の力でできますことにつきましては、全力を上げまして遺族に御満足のいけるように努力いたしたい所存でございます。ただどうもいろいろ建前の問題等がございますので、どういうふうな結論になりますかは検討してから申し上げたいと思います。
#95
○淵上委員長 井谷正吉君。
#96
○井谷委員 時間がありませんから、一点だけ簡単にお尋ねしたいと思います。実は私はこの北川丸には数回乗っております。そしてまたこの北川丸に乗っていた乗客のおもな人が、耕三寺参りの団体客だった、こういうことで私も非常に感無量なものがある。というのは、私は昭和十三年から十九年までかかってあのお寺を建てた。そこにお参りをしてきた人が御利益がなくて、あそこで沈んだということは胸を打つものがございます。先ほどお話がありましたが、北川丸は定員程度で走っておればそう悪い船じゃない。それから航路標識とかいろいろなお話がございましたが、あそこは実に安全な個所です。あそこにそういうことをやるのだったら、瀬戸内海にはたくさんやらなければならぬところがございます。結局は私の考えでは、あの船に非常にたくさんな人を乗せたということと、十六才ですか、そういう者にかじを渡したということが、大きな原因であろうと思うのです。これで考えられることは、あの生口島という島のお寺に、これは私の調べですけれども、三月から六月の間は平均一万人、多いときには二万五千人のお参りがある。そうしてその程度の船がすべて満員でやっておるわけです。超定員でお寺へ運んでおる。また北川丸のこの事件を見ても、船長が切符を集めに回っておって、若い人にかじをまかしたというようなことは、たまたまこういうことがあったからわかったけれども、常に付近の船はやっておるのです。まだ六月には間もあります。毎日一万、二万の人がここへ運ばれる。島ですから自動車はないので、みな船で行くのです。今度の間違いは仕方がないが、これからこういうもっと人出がふえるときに、どういう取締りをしていかれるか。私はこれから先のことの心配がありますから、この一点だけ一つお伺いをしたいと思うのです。
#97
○砂本説明員 定員の厳守につきましては、先ほど来いろいろ御意見もあったのでありますが、そういう法規の励行につきまして海上保安庁が一つの責任を持っておるのでありまして、これはその規則を励行させたいという強い意欲をもってやっております。それで、この行楽シーズンには、特に平素よりいろいろの手を打って関係者の注意を喚起して参ったのでございますが、非常に悲しい結果になりましたことを、そういった責任者として非常に遺憾に存じておるし、また相済まぬという感じでおります。それで関係者の自覚を促すようにいろいろ手を打つと同時に、先ほど来御意見も出ましたように、船主とかあるいは船長の意に反して無理に乗るようなことは私も多々承知しております。そういう場合には船主並びに船員が協力して、海上保安官も現地に参りまして、そういう無理な乗船を抑止する、こういう実例もあるのでございまして、そういうふうにして定員過剰防止に備えて参ったのでありますが、これはただ現場の実情から考えます私の一個の考えでございますが、今お話のように、乗る船の量と実際に動く人の数の問題がございますので、非常にむずかしい問題があると思います。ただ私どもに許されました範囲におきましては、安全なる船をなるべく多数配船せられて、ぜひ定員が守り得るような実態を希望するものでございます。
#98
○井谷委員 これは考えとか意見とかいうことではなしに、きょうからどういう手を打たれるかということなんです。たとえば警察官に頼んでどやどや乗るのをそこで制止してもらうとか、私は今しゅんですからこういう早急の手配を考えられたいというのです。その先の話はこれからゆっくりやられてもいいが、さしむきこれは次々に出ていく今の状態において、どういう手を打たれるかということです。
#99
○砂本説明員 ぜひやらなければならぬ方法といたしまして、今申しましたように現地に海上保安官を派遣いたしまして、船員並びに関係者と協力して定員の励行をいたします。
#100
○井谷委員 やっているのですか。これからやるのですか。
#101
○砂本説明員 これはやっておると信じます。
#102
○淵上委員長 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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