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1947/09/15 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 治安及び地方制度委員会 第14号
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1947/09/15 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 治安及び地方制度委員会 第14号

#1
第001回国会 治安及び地方制度委員会 第14号
昭和二十二年九月十五日(月曜日)
    午前十一時八分開議
 出席委員
   委員長 坂東幸太郎君
   理事 門司  亮君 理事 矢尾喜三郎君
   理事 中島 茂喜君 理事 川橋豊治郎君
      笠原 貞造君    菊池 重作君
      久保田鶴松君    松澤 兼人君
      大澤嘉平治君    佐藤 通吉君
      坂口 主税君    千賀 康治君
      大野 伴睦君    大村 清一君
      中島 守利君    外崎千代吉君
 出席政府委員
        内務事務官   林  敬三君
        農林事務官   平川  守君
        運輸事務官   天坊 裕彦君
 委員外の出席者
        内閣事務官   前田 克巳君
        專門調査員   有松  昇君
    ―――――――――――――
八月三十日
 大阪市特別市制實施促進に關する陳情書(大阪
 市南區民大會)(第一四四號)
 神戸市特別市制實施に市民投票方法採用の陳情
 書(神戸製鋼所取締役社長町永三郎)(第一四
 五號)
 神戸市特別市制實施反響に關する陳情書(兵庫
 縣會議長正木定)(第一五一號)
 神戸市特別市制實施促進に關する陳情書(神戸
 市須磨區關守町瀧川儀作)(第一五五號)
 横濱市特別市制實施促進に關する陳情書外一件
 (横濱市磯子區民大會外一名)(第一六二號)
 國民酒場營業再開に關する陳情書(大阪府普通
 飲食店聯合組合酒場經營委員會)(第一六六
 號)
 地方職員給與に關する大藏省方針に反對の陳情
 書(宇都宮市役所勞働組合臨時大會)(第一六
 七號)
 京都市特別市制實施反對に關する陳情書外五件
 (京都府北桑田郡鶴ヶ岡村協議會外二千五百十
 二名)(第一六八號)
 武庫郡町村に對し行政上特例設定の陳情書(兵
 庫縣武庫郡町村長會長魚崎町長山路久治郎外七
 名)(第一七〇號)
 特別市制實施反對に關する陳情書(全國町村會
 長生田和平)(第一七一號)
 地方團體完全民主化等に關する陳情書(全國町
 村會長生田和平)(第一八二號)
 神戸市特別市制實施に關する陳情書外七件(神
 戸市青年大會外七名)(第一九五號)
 横濱市特別市制實施に閲する陳情書外五件(横
 濱市特別市制促進神奈川區民大會外五名)(第
 一九八號)
 特別市制實施反對に關する陳情書(神奈川縣町
 村會)(第一九九號)
 副知事公選制反對の陳情書(全國都道府縣知事
 會議代表東京都知事安井誠一郎)(第二一三
 號)
 昭和二十一年都道府縣職員待遇改善費国庫補助
 に關する陳情書(全國都道府縣知事會議代表東
 京都知事安井誠一郎)(第二一四號)
九月十三日
 神戸市特別市制實施に關し市民投票方法採用の
 陳情書(神戸市民大會責任者中野文門)(第二
 二四號)
 大阪市特別市制實施反對に關する陳情書(大阪
 府泉北郡八坂町農業會西田秋三郎外三名)(第
 二二五號)
 地方自治法一部改正に關する陳情書(神奈川縣
 知事内山岩太郎外四名)(第二三七號)
 京都市特別市制實施に關し市民投票方法採用の
 陳情書(京都市特別市制促進伏見區民大會委員
 長森川新太郎)(第二四二號)
 大阪市特別市制實施反對に關する陳情書(大阪
 府南河内郡高鷲村農業會長藤野竹藏外九名)
 (第二四三號)
 特別市制實施反對に關する陳情書(兵庫縣自治
 連盟理事長辻猛)(第二五三號)
 地方職員の給與に關し政府案に反對の陳情書(
 日本都市勞働組合同盟兵庫縣連合會結成大會)
 (第二六三號)
 横濱市特別市制實施に關し市民投票方法採用の
 陳情書(横濱市會議員待遇君)(第二七五號)
を本委員會に送付された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 地方出先官廳の整理に關する件
    ―――――――――――――
#2
○坂東委員長 これより治安及び地方制度常任委員會を開會いたします。
 日程に先立ちまして、今回この委員會に任用されました吉田嘱託を御紹介申し上げます。吉田嘉一郎君は早大出身で、外務省にはいり、ウラジオストツクあるいはロスアンゼルス及びリバプールに在任、これまでは東京裁判の警務課長だつたのでありますが、今囘この委員會にはいられました。御紹介いたします。なお今立つておりますのは、この委員會の書記に任用いたしました河原英夫君であります。この人は日大の出身でありまして優秀な前途有望な人であります。よろしく御鞭撻願います。
    ―――――――――――――
#3
○坂東委員長 これから日程にはいります。出先官憲の整理につきましては、すでに本會議でしばしば論議があり、これに對してはすべての者が賛成でありますが、當然この委員會はその整理について調査の必要を認めまして調査をしておりますから、まずもつて有松調査員からその調査の結果を御報告申し上げます。
#4
○有松專門調査員 各省の出先機關は最近著しくその数を増しまして、私の算えましただけでも七十有餘の多きに達しまして、そのうち地方自治行政運營上關連の比較的多いと認められるものを摘出してみますと、概ね左のごときものがあるのであります。
 第一が戰災復興院建築出張所であります。これは戰災復興院官制第十一條の規定により、昭和二十二年三月二十九日に設立せられたものでありまして、全國に四十六あり、職務権限といたしましては、一、臨時建築許可制限規則による許可その他の處分、二、資材の割當配分、三、建築に關する監督統計調査、四、繊維機械設備設置改造、運轉販賣許可等を掌つておるものであります。この設置理由といたしましては、戰災復興の総合的能率的遂行をはかり、また指定生産資材割當規則による府縣への資材割當を圓滑ならしめるというにあるのでありますが、これに對しまして地方廳側の意見といたしましては、第一に、総理廳技官たる出張所は、地方廳建築課長を併任しておりますから、この機關を地方廳に移管しても、實質上不便を認めないのみならず、第二、臨時建築等制限規則の施行は、戰災復興院総裁の権限であり、市街地建築物法其の他の建築法令執行の権限は知事にあつて、前者は資材の角度から經濟上の統制を行い、後者は保安衞生、都市計畫の角度からの建築制限を目的としておりますが、同一の建築行為に對する行政事務が二元的となつておるきらいがあるのであります。しかして現在の復興院の意画する線に沿つて、仕事を進めては、地方廳の復興計畫に支障を來すおそれがあり、不便な點が少くないのであります。
 そこで結論としては、新規則の關係は、一種の経済上の取締でありますから、復興院が末端まで一元的に處理できるとすれば理想的でありませうが、事實上は、地方廳と一體となつてやつていかねばならないのでありまして、むしろ地方廳を信頼して、建築出張所の事務は、すべてこれを委任する方がよいのではないかと考えられるのであります。第三には生産縣から消費縣への資財振出を公平にする上において、主務省において生産に第一次割當を行い、縣内需要者への資材割當は、これを地方の實情に精通しておる知事において行うようにする方がよろしいようであります。こういう意見を地方廳側は抱いているのであります。
 それから出先官憲の第二といたしましては、大藏省の財務局地方部であります。これは昭和二十一年十一月勅令第五百四十四號により設立せられたものでありまして、全國に四十二あります。その職務権限といたしましては、第一に預金部資金の運用及び経理、第二、雑種財産管理、第三、金融機關監督、第四、都道府縣に對する預金部資金の貸付及びその使用状況の調査、第五、自由支拂の許可等であります。本省側の設置理由をいたしましては、第一に、財政金融政策の施行は全國的統一を要すること、第二、都道府縣の割據的主張を排すること、こういうのにあるのでありますが、これに對して地方廳側の意見としては、これらの仕事は從來戰時中においてすら経済部において立派にやつていたとことであり、また書類にしても、從來は直接本省に提出していたものが、地方部の設置により、さらに二通ずつ提出せねばならねことになり、また一つのよけいな段階を純なければならなくなり、事務の煩雑と澁滯とを來すものでありまして、特に、起債等の場合には、大藏大臣の許可したものを地方部で再審査することになり、ために時機を失し、遺憾ないことが多いようであります。これが地方廳の意見であります。
 出先官憲の第三といたしましては、内務省駐在官であります。これは臨時物資需給調整法による内務省所管指定生産資材の割當を據當するものでありまして、全國に、國土局關係のものは四十六、調査局關係のものは七あります。この制度の目的は、主務大臣の責任において、末端需要者に直接需給事務を行う趣旨でありますが、知事は管下市町村及びその他の公共團體の事業を育成指導監督する立場にありながら、この市町村事業に對する資材事務に關與できないということは、はなはだ矛盾したうことであり、また諸團體よりの届出及び調査は、縣調査課と同樣な事務を重複してやつているばかりでなく、両者の間ほとんど連絡がないのであります。これらの仕事は縣一本に合すれば、経費豫算人員の上から見ても大なる節約となるのであります。こういうふうに地方廳側は意見を立てております。
 出先官憲の第四番目は、文部省教育施設局出張所であります。これは昭和二十二年六月、文部省分課規定第十二條の規定により、全國六箇所に設置が決定、各都道府縣に四十六の出張所分室を設置する豫定であるのであります。職務権限といたしましては、臨時物資調整法の規定に基きまして、第一、直轄學校の營繕、第二、教育施設の復興整備保全、第三、中等學校以下の各校、社會教育その他文化施設に關する指定生産資材割當を掌るものであります。府縣の意見といたしましては、つまり、都道府縣の計畫に基き、文部省が割當てたものを、さらに出張所が府縣内へ割當てるものでありまして、府縣としては、國からの割當さへ受ければ、自分の管内のものは、事情を一番よく知つている自分自身でやるのが、一番實際的かつ便宜であると言つております。
 出先官憲の第五は、厚生省醫務局出張所であります。これは國立療養所、國立病院の統括及び所要物資の入手斡旋につき地方廳と連絡をはかるため、昭和二十年十二月設けられたものでありまして、国立病院、療養所等は、時局の進展とともに地方廳へ移管すべきものでありまして、從つてこの出張所も地方廳へ移管するのを適當認めるものであります。
 出先官憲の第六は、厚生省地方引揚援護局であります。これは連合局司令部の指令によりまして、昭和二十二年十一月全國に十一設立せられたものでありまして、引揚者の應急援護及び防疫を掌つておるものでありますが、設置縣の知事は局長を兼ねているものであり、むしろ地方廳に統合する方が適當と認められるのであります。
 出先官權の第七は、勞働省勞働基準局であります、これは昭和二十二年五月勅令第百九十九號の規定により、全國に四十二設けられ、そのもとに三百三十六の勞働基準監督署を置いておるのであります。しかしてこれは勞働基準法の施行をその職務權限といたしておるものであります。本制度設置の理由は、事務の性質上、全國畫一的に統制運營するの要があり、他の考慮に煩わされない獨立機構によつてこの統制を行うべきであり、國際勞働會議及び關係筋からその旨の勸告があつた。こういうふうなことが設置理由として掲げられております。しかしながら、勞働組合法、勞働關係調整法とともに、元来一つであるべき勞働行政の一部である勞働基準法を別個機關で取扱う矛盾を排除する必要があり、かつ勞働關係事務、なかんずく勞働争議の斡旋調停につきましても、その發生原因、賃金待遇等の事務は、從來地方廳で行つてきた關係から、その實體把握により、争議の解決も容易でありましたものが、分離により、從來とまつたく逆な傾向となりまして勞働問題の解決が困難となるといつたような結果も現われてきておるのであります。
 それから出先官憲の第八が公共職業安定所、第九が公共勞働安定所、こういうものがあるのでありますが、これらの機關は昭和二十二年四月、勅令第百十八號によりまして各地方廳に設立せられたものでありまして、前者は勞務の公平通常な配置を掌り、後者は日傭勞働者の配置を掌るものでありまして、勞務の全國的統制、需給調整を目的としておるものであります。しかしこれらの機構は、人事につきましては原則として知事の内申により、豫算につきましては從來通り地方廳を通じて行い、業務におきましても知事が指導監督を行うことになつており、勞働大臣が直接管理するという理論的根據がないのであります。かつこれらの二つの機構は、一箇所で正確に効率的に事務を處理する方が適切と認められるのであります。
 次は農林省所管へ參りまして、第十としまして農林省作物報告事務所であります。これは昭和二十二年三月、勅令第百三號によりまして全國に四十六設立せられたものでありまして、名稱の示すかごとく、作物の作況に關する調査報告を掌つておるものであります。この役所が設立せられました理由は、第一、府縣廳は供出の責任者であるために、供出の基礎たる調査事項を實施せしめるためには不適當であり、かつ不正確であること。第二、府縣の調査は人員不足、調査設備方法の不十分のために不正確であることというのにあります。一言にして盡せば、中央官廳の公選知事に對する不信任とも覆すべきものであります。これに對して地方廳の意見といたしまして、作物の作況報告は府縣廳、食糧事務所作物報告事務所の一本建をもつて現在やつておりまして、末端の迷惑は一通りでない。あるからぜひ調査を單一化して、手續の繁激を除きたいというにあります。これを要するに、知事側から見れば、農林省の供出割當は苛酷であるから、作況報告はなるべく内輪にしておく方が安全であるという心理になりますし、また農林省側から見れば知事は府縣民から動かされて作況報告を少く見積つてくるから、なるべく多く供出割當をしないと實情に合致しない、こういうことになるのでありまして、結局両者がお互いに信頼し、眞實を報告し、誠意をもつて割り嘗てることにすれば、こんな役所は不要に帰するのである。両者は大いに反省すべきところである。かように存じております。
 第十一は、農林省農地事務局であります。これは昭和二十一年十月、勅令をもつて全國に六箇所設立せられたのでありまして、第一自作農創設特別措置、第二、農地關係の調整及び帰農、第三その他就農の調整、第四、直轄の開墾干拓、第五、農業水利改良工事に關する事務、これらを掌つておりまして、設置の理由とするところは、農地改良及び緊急開拓事業を急速に推進するにある、こういうのであります。これに對しまして、地方制度調査會の意見は、これを廢止の上、地方廳にその所管事務を移管すべしというにあるのであります。
 第十二、資材調整事務所、これは昭和二十二年五月八日、農林省令第四十五號、木材需給調整規則によりまして、全國に四十六設立せられたものでありまして、設置の理由は、臨時物資需給調整法に基く資材の直接割當を行うというにあるのであります。これに對しまして、地方廳の意見といたしましては、第一、農村生活、農村生産に不可分の關係にある物資の割當を、縣と無關係で行い、食糧や農機具の増産及び供出の責任を縣に負わされては責圧をもつことはできないこと。第二、生産資材は生産計畫に相應して行わねば意味がなく、農家と直接結びつきのある地方廳においてするのが適當であること。第三、配給割當は生産と密接な關係があり、この両者を關連させて初めて増産の目的を達することができるのであるから、生産の責任を負う知事に、一定數量の配給の權限を與えることが適當であること。第四、知事が資材面をもたなくては生産復興、民生安定上の重要資材の配給は實情に即應し得ないこと。第五、生産計畫の樹立に困難であること。第六、煩雜な書類と手續とを要し、かつ僅少なものでも非常な日數を要すること。これらが地方廳の意見であります。
 第十三、木炭事務所、これは昭和十五年三月木炭需給特別會計法によりまして、全國に四十六箇所設立せられたものであります。その職務權限は、薪炭需給調節に關する事務を掌ることであります。しこうして設置の理由といたしましては、都道府縣の利害に拘泥せず、全國にわたり総合的に薪炭需給調整特別會計の運營にあたる、こういうのであります。これに對しましては、地方廳の意見といたしまして、第一に、木炭事務所が買上、配給の権限を有し、生産資材の配給について縣を通さず、單に縣は生産責任のみであるため、生産者と縣とを遊離せしめ、薪炭行政の一元化が妨げられて、生産遂行上重大な支障があること。第二、改正案の薪炭需給規則によれば、木炭事務所が縣内配給にまで關與することとなり、縣は責任ばかり重くなつて、しかも實情に即した行政が困難になること。第三、生産者は木炭事務所の存在により、経費充當のため、多大の手數料を支拂わねばならず、ために生産者價格と拂下慣格との間に開きができて、生産者は收支償わないことになること、こういうのにあります。また地方制度調査會の意見は、都道府縣に統合する。ただし國の特別會計は存置する。こういうのが地方制度調査會の意見であります。
 第十四、食糧事務所、これは昭和十六年勅令第六十三號食糧管理局官制、農林省令第四十號主要食糧検査令の規定によりまして、全國に四十六設立せられたものでありまして、その職務権限とするところは、第一、米麥等主要食糧農産物の買入賣渡等需給調整に關する事務、第二、主食の検査であります。この役所を設置した理由といたしましては、都道府縣の割當に拘泥せず、全國にわたり總合的、一元的に食糧管理特別會計の運營をはかるというにありますが、地方制度調査會の意見といたしまたは、都道府縣にこれは統合あうる、ただし國の特別會計は存置する、こういうのであります。また地方廳の意見といたしましては、第一、食糧檢査と生産計畫、生産奬勵とは不可分の關係にあり、食糧行政の圓滑化をはかるためには、知事に還元せられたきこと。第二、麥ぬかは地方統制であり、食糧事務所の權限外であるのに、近時これを食糧事務所でやつておるところがありまして、ために配給遅延が多いこと、こういうのが地方廳の意見であります。
 次は商工省關係に移ります。第十五、商工省商工局、これは昭和二十二年勅令第百七十八號によりまして、全國に八箇所設立せられたものでありまして、その職務権限とするところは、第一、商工業中商工大臣の指定するもの。第二鑛業、砂鑛業に關する事務。第三、電氣發電水力に關する事務。第四、指定生産資材割當に關する事務。第五、隠匿物資緊急措置であります。その設置理由は、都道府縣の區域を超え、総合的行政を行う必要があるというにありますが、これに對しまして、地方制度調査會の意見は、原則として都道府縣に移讓し、移讓し得ない事務のため簡素な形で存置するものとする、こういうのであります。
 それから第十六、商工省商工局出張所、この役所は臨時物資調整法に基きまして、政府がみずから指定生産資材を割當てることを目的として設立せられたものでありまして、地方制度調査會の意見といたしましては、商工局と同樣、原則として都道府縣に移讓すべきものであるというのでありまして、地方廳の意見といたしましては、第一、商工局出張所は地方の實情にうといので、大規模は企業が優遇せられ、中小企業は無視ないし輕視せられるおそれがあること。第二、縣と出張所とは連絡がないために、知事が縣下の産業を把握する上に重大な支障があること。第三、住民は縣と出張所との両方へ連絡しなければならない。こういうのであります。
 それから次は第十七、自動車事務所、これは運輸省關係でありますが、設立目的は第一は、地方陸運行政の一元化、第二は、地方における輸送行政と資材行政の総合的一體化をはかるというのであります。職務權限といたしましては、第一、自動車運送、小運送。第二、自動車整備工事。第三、輕車輛工業。第四、指定生産資材の割當等に關する事務を掌るものであります。
 これに對しまして、地方廳の意見といたしましては、第一、國民生活安定に關係深い經済面の各種行政は、輸送によつて大なる制約を受けている現在、知事の權限から輸送を遊離いたしましては、總合的行政運營上支障を來すこと。第二、設備の性質上他府縣にまたがることはなく、一府縣限りの問題が多いから、知事の手から切り離す必要のないこと。第三、地方の實情に疎い出先官憲が資材の配給をなすことは、縣全體の産業から見て不都合が多いこと、第四、警察行政の上から見ても、都道府縣と關連のない事務所のやる仕事は弊害が多いこと。第五、住民からすれば、都道府縣廳と事務所との南方に連絡をとらねばなちず、不便が多いこと。第六、この制度は鐵道餘剩官吏の姥捨山との非難が多く、またタイヤ、ガソリン等、やみの本源地であるという疑惑が深いこと。こういうことを言つておるのであります。
 その他右に述べましたほかに、地方出先官憲といたしましては、ずつと讀み上げてみますと、地方經済安定局、地方物價事務局、戰災復興院特別建設出張所、復興院連絡局、地方復員局、上陸連絡所、掃海部、艦船部、宮内府京都地方事務所、外務省終戰連絡地方事務局、同出張所、大藏省財務局、税關、税務署、地方專賣局、同支局、同出張所、大藏省造幣局支局、同出張所、官財支所、同出張所、内務省土木出張所、文部省出張所、同工藝技術講習所、司法省司法事務局、同出張所、高等検察廳、地方検察廳、同支部、區検察廳、少年審判所、矯正院、行刑管區、監獄、同分監、厚生省機械技術員養成所、國立少年救護院、引揚援護院連絡事務所、厚生省檢疫所、農林省營林局、同營林署、同生絲檢査所、同動植物檢疫所、商工省地方貿易事務局、貿易廳出張所、輸出織物檢査所、運輸省鐵道局、同海運局、同港湾建設部、船員職業紹介所、同氣象官署、逓信省逓信局、それから、同通信官署、同貯金支局、簡易保険局、電氣通信工事局、電氣通信施設事務所、海底電線工事事務所、これらがありまして、これだけでも七十三になつております。もちろんこれらの中には、事務の性質上どうしても中央官廳が出先機關を置いてやらせなければならないものもありますが、地方分權の強く叫ばれる今日、まだまだ都道府縣に移讓すべきものが幾多殘つていると思うのであります。
 これをもつて專門調査員の調査報告を終ります。
#5
○吉田專門調査員 現在の出先官憲については、ただいま有松調査員から報告せられた通りでありますが、ここに昭和二十二年二月十七日附の地方制度調査會國政事務處理特別小委員會委員長青木泰助氏の名前で、時の内務大臣植原悦二郎氏に陳情した陳情者がありますので、これを朗讀いたしまして參考資料にいたしたいと思います。
 地方制度改革に伴う地方における國政事務處理に關する件、都道府縣知事の公選の時期が迫るに伴い、中央各省が國政事務の統一的處理に名をかり、地方にそれぞれ直轄の特別行政機關を設置しようとする趨勢きわめて顕著なものがあり、地方行政の民主化を阻害し、新憲法の規定する地方自治の本旨に反することはなはだしきに至るおそれがあるので、この小委員會は、つぶさに各省の地方特別官衙の改廢について鋭意檢討を加えた結果、新憲法施行後地方における國政事務の處理については、左の通り措置することが最も適當と認める。
     記一新憲法の精神に則り、地方分權の趣旨を徹底するため、國政事務はこれ
 を大幅に地方公共團體に移讓するものとすること。二現在の地方長官の權限は、これをそのまま公選都道府縣知事及び特別市長に引き繼ぐこと。三現在の特別地方行政機關は、原則として廢止し、國政事務の性質上、やむを得ず新憲法施行後存置するを要すると認められるものに限り、法律によりこれを設置するものとすること。四前項により現在の特別地方行政機關は、次のように整理すること。
 (一)地方行政事務局は、廢止するものとすること。
 (二)地方商工局の事務は、原則として都道府縣(特別市を含む。以下これに同じ。)に移讓し、移讓し得ない事務のため、簡素な形で存置するものとすること。
 (三)臨時農地事務局は廢止し、都道府縣にその所管事務を移讓するものとすること。 (四)營林局は廢止し、都道府縣にその所管事務を移讓し、營林署は、都道府縣に移管するものとすること。
 (五)海運局の事務は、原則として都道府縣に移讓し、移讓し得ない事務のため簡素な形で存置するものとすること。
 (六)財務局地方部は廢止し、都道府縣にその所管事務を移讓するものとすること。税務署は廢止し、その事務は市町村に移讓するものとすること。
 (七)地方物價事務局は廢止し、地方における物價は、都道府縣相互の協議により調整するものとすること。
 (八)地方專賣局の事務中、賣捌に關する事務を殘し、葉煙草及び鹽等の事務は、都道府縣に移讓するものすること。
 (九)勤勞署は、都道府縣に移讓するものとすること。
 (十)食糧事務所及び木炭事務所は、都道府縣に統合する、但し國の特別會計は存置する。
 (十一)土木出張所、港湾建設部その他の一切の地方土木事業の施行機關は廢止し、これを都道府縣に移管するものとすること。但し特殊の國營事業については臨時に設置する
ことを認めること。
 (十二)終連地方事務局は、原則として都道府縣に統合するものとすること。
 (十三)地方世話部は、都道府縣に統合するものとすること。
 (十四)地方引揚援護局は、都道府縣に統合するものとすること。
 (十五)陸海軍病院であつた國立病院は、所在地の都道府縣に移管するものとすること。 (十六)戸籍及び公證に關する事務は、都道府縣に委讓するものとすること。
 (十七)普通師範教育に關する事務は、都道府縣に移管するものとすること。右答申する。
 昭和二十二年二月十七日
    地方制度調査會國政事務處理特別小委員會
      委員長 青木 泰助
   内務大臣 植原悦二郎殿こういう陳情書が出ておりますから、これを参考資料に提供したいと思います。報告を終ります。
#6
○坂東委員長 ただいまお聽きの通り、この委員會の調査は、大體その程度でありますが、現在政府の方が内務省、行政調査部、それから運輸省、農林省から來ておりますからして、今報告しました點につきまして、出席の政府委員に對し御質問がありましたら、この際質問をお願いいたします。質問いかがですか。質問がなければ、政府側から聽いてもよろしゆうございます。地方側の意見も今述べられましたが、それらに關しまして、政府側の意見を拜聽したいと思います。どなたかにお願いいたします。
#7
○林(敬)政府委員 ただいま御報告がありましたように、地方に最近におきまして、いわゆる中央各省の出先擬關が大變數多くできつつある趨勢にあることは、當局においても大いに關心をもつておるところでございます。この點については、一つ一つの機關について檢討いたしますれば、それぞれの相當な理由があるように認められるのでありますが、そのでき上りました結果を總括して、それぞれの地方についてこれをながめてみますときには、一つ一つのものについては、かりにそれぞれの見地からすれば理由があるにいたしましても、全體問題としては、何としてもこれは行き過ぎではないか。あるいは今後ますますこの趨勢にあるということは、將來地方自治の健全なる發達からも、また國策事務の總合的な圓滑なる處理のためにも、憂慮にたえないところであることにつきましては、まつたくただいま御報告のありました點と憂いを同じゆうするものであります。それで政府といたしましても、この問題については深刻な問題として眞劍にこれを取上げて善處いたしたいと思つて、目下鋭意研究をいたしておるところであります。從いまして、この出先機關があまりに多くなつて地方自治を侵害する、あるいは國政事務の圓滑なる執行に、かえつて總體的に計算してみますと、阻害があるのでなないかということにつきましては、大いに注目をいたしまして、今後かかる方向のないように、これを是正するような努力をいたしたいと考えておるのであります。そこで第一著手といたしましては、近く地方自治法の改正案を今議會に提案いたしたいと存じておるのでありますが、その中には、地方の自治を擔當し、かつは國の地方における行政を一般的に擔當する地位にありますところの都道府縣の知事の權限が不當に削減せられ、または影響をこうむることなきことを確保するために、今後國の地方機關、これは駐在機關をも含みますが、國の地方行政機關は國會の承認を經なければこれを設けてはならない、またそうして國會の承認を経て設けました地方機關といえども、その経費は國でもつてこれを負擔しなければならないという規定を設けまして、議會に提案して皆様方にお諮りをいたしたいと政府としては考えておる次第であります。もちろんこの地方行政機關は、一切國會の承認を経なければ設けてはならないということにいたしましても、この趣旨は本來都道府縣知事の權限との間に摩擦を生ずるおそれのない仕事のみを行う國の機關は、これから除いてもよいわけでありまして、その見地から、たとえば鐵道官署でありますとか、あるいは港湾建設の官署でありますとか、電信電話郵便というようないわゆる現業的施設、あるいは文教施設、あるいは國立の病院でありますとか、療養所、氣象室、營林署、あるいはもつぱら國費をもつて行う工事を施行いたしますところの機關、そういうものには適用しない。それ以外の一般的の地方行政機關は、すべて國會の承認を經て嚴重なるここの審査を經た上でなければこれを設けない。かような規定を提出いたしたいと存じます。これが續々設けられている趨勢は、今後これによつて矯正阻止せられることと存ずるのであります。なお今まですでにできている機關については、この法律は及ばないのでありますけれども、現行のものにつきましては、これは關係方面とも打合せの上、それぞれの理由もあることと存じますので、愼重な態度をとりまして、これが整理につきましては、内閣が中心になりまして、鋭意速やかにその成案を得て、整理の方向にでき限り實現させるように努力を今いたしている最中であります、概要政府のこれに對する所見を申し上げました次第であります。
#8
○坂東委員長 行政調査部の前田総務部長が來ておりますが、御意見いかがでありますか。
#9
○前田(克)説明員 政府の本問題に對する態度といたしましては、ただいま内務省の政府委員よりお答えをいたしましたことで大體盡きているのでありましてただ既往の機關につきまして、できるだけ地方側の要望にも副いまして、整理でき得るものは整理いたしたいと思いまして、ただいま行政調査部が中心になりまして案を作成中であります。ただ既往にできましたものにつきましては、その設立に、先ほど專門調査員から御報告になりました以外にいろいろ經緯もありますので、非常に大規模の整理を行うともうことにつきましては、相當の困難があるのではないか、かように考えている次第であります。いずれにせよ、近く一應の試案を得まして、政府部内で關係當局打合せをいたしたい、大體そのような段取になつております。
#10
○坂東委員長 農林省総務局長の平川守君が來ておりますが、ひとつ簡單に御意見を伺います。
#11
○平川政府委員 農林省の出先機關といたしましては、作物報告事務所、あるいは食糧事務所、資材物資調整事務所というようなものが問題になつているようでございますが、これらの一つ一つにつきましては、それぞれの理由からたとえば各縣の事情にあまり強く拘束されることなしに、全國的の見地において食糧の供出なり、あるいは資材の配給なり、あるいは薪炭の需給の調整というような事務を取扱つてまいらなければならないというような事情、あるいはそのほか營林局署のごとき現業的な事務というようなものに、大體限られておるわけでありまして、それぞれの理由があるわけでありますが、先ほどから他の政府委員よりお答えの通り、これらにつきましては、政府部内において、なおよく檢討をいたすことにいたしております。
#12
○坂東委員長 運輸省の官房長天坊君。
#13
○天坊政府委員 運輸省の出先機構といたしましては、大きなものといたしましては鐵道局、海運局、あるいは氣象観測所というふうに、大きなものは大體專門的な特殊な仕事になつておりますので、先ほどの御報告にもございましたように、たとえば海運局關係の仕事でも、やはり專門的な分が殘るということはお認めになつておるように考えるわけであります。從いまして、先ほどの政府側でもいろいろ出先行為について檢討をされます場合にも、現業的な部分につきましては、現在のまま殘ることになつて回收からははずれることになる部面が外いのではないかというふうに考えております。ただ自動車事務所につきまして先ほど御指摘があつたのでありますが、これの存廢につきましては、別途地方でいろいろ研究中でございますから、どうなるかわかりませんが、ただ先ほどの御報告でも自動車事務所のなかみが、あるいは鐵道關係の古いものの姥捨山になつておるというようなお話、あるいはこれがやみの根源になねておるというようなお話がございましたが、これはそういう話もあるというお話でありますから、別に論はないのでありますが、特に自動車事務所の設置につきましては、從來の府縣との経緯でございますので、優秀なメンバーを相當出しておるのでございまして、決して姥捨山というような考え方をいたしておりません。また自動車事務所だけが特にやみの根源であるというふうにも、私ども聞いておりませんので、一應辯解だけいたしておきます。
#14
○坂東委員長 政府側の御意見あるいは辯明はお聞きの通りであります。次に政府委員に罰する質問なり、もしくは各委員諸君の御意見の發表をひとつお願いしたいと思います。
#15
○中島(守)委員 ただいま有松委員より御報告になりましたのは、委員の出席が少うございますから、速記には載つておりますが、しかしあれを簡單な印刷に付しまして、各委員に配付せられることを希望いたします。出先機關はもう議論をすることはないと思つております。日本の國情からみましても、現在の中央集權を地方分權に移さなければならぬと思います。そのために各種の問題が片づくのではないか。ただいま非難されておる官僚の問題であるとか、あるいはまた民主政治につきまして國民に與える知識の涵養であるとか、すべての問題はもうきりがないほど得るところがあるのではないか。また仕事の上にも能率的であり、経済的であり、また國民が國政を監視しやすいように、地方分權が徹底すればなるのであります。地方分權と申しましても、私の申すのは、國政の大部分を地方に移すべしというのであります。一遍に移すことが困難ならば、順次に移していつたらよいのではないか。すべての國政事務は、その地方公共團體を通じて國政を行うという形にしていくことが、私は現在の日本の國情においては、適當ではないかと考えます。一面に國政がばらばらになるという批評があるのであります。しかしながら、ばらばらになるというのは憂えである。やつてみれば、私は完全にこれは成功するのではないかと思います。一體政治はなるべくただいまでは知らしめなければならぬ。國民がすべて國政を了解しなければならないのであります。その運營は、政府が人を得れば、私は完全にいくものと思うのであります。ただいま林政府委員から將來の問題については御説明がありましたから、将來の問題については論及しません。これまでできております出先機關は、順次これを專門委員の方で調査して政府に報告しておりましても、過去の歴史においてまつたく進捗しないのであります。われわれは立法府の權威におきまして、法令の改正で出せるものは出す方が適當ではないかと考えます。こういうわけですから、出先機關に對する法令を調べて、その法令のうち地方自治に權限を與えるように修正すべきものは、これを國會の力においてなすということは、目下のわれわれの立場において當然なすべきことであり、また國民大衆がかようにすることを希望していると、私は申してはばからないと思うのであります。簡單でありますが、所信を述べまして、委員長の御考慮を煩わしたいと思います。
#16
○千賀委員 特別市制を研究しているうちにぶつかつてきた問題ではございますが、出先機關の整備ということに、相當に大きな關係があると思うので、この際政府當局に御意見を伺い、また私の見解も申し上げておきたいのであります。
 特別市制を斷行するに際しまして、たとえば愛知縣の尾張の國であるとか、京都府の山城の國であるとか、中心地を拔き取られた殘存部分をいかに處理をするかということは、相當に大きな問題で、これは特別市制とともに宿命的な問題でございます。しかしながら、この問題に必ず逢着すべきはもちろんでございますけれども、前國會におきましても、この問題について相當に憂慮されて、附帶決議もついておりますけれども、最近の趨勢におきましては、前國會において豫想しなかつた地方自治の完全達成と申しましようか、現在の地方自治よりも、もつと強度な地方自治が要求をせられている。これはポツダム宣言に服從する、この意味からよつて起るところと思ふのでございますが、完全地方自治、たとえばアメリカの各州におけるような制度をわが縣に移しこむということになりますと、とうてい現在の區域では不可能であります。経済の樹立も不可能であります。その他經済の樹立に副いまして、他の面の樹立も不可能であります。かような點では、現在の日本の縣をそのまま地方廳の擴張の基盤にするということは不可能でございましよう。してみれば、當然特別市制のために起つてくる殘存縣の處理ということと前後いたしまして――前後ではない、竝行いたしまして、ただちに完全地方自治に適當なる行政属域の設定ということが問題になつてくると思います。これはもちろん小さくするはずはない。大きくしなければならないのでございましよう。北海道縣、九州縣、四國縣、かようなものは土地の區域の上から非常にやりやすいようにも思いますが、本州をいくつに切るか、三つに切るか、四つに切るか、五つに切るか、かような問題が起つてまいりますと、相當にめんどうな問題が起つてまいります。そこで現在の出先官廳でありまするが、こういう出先官廳の中にも、相當に新しく生れ出でる大きな地方廳、新地方廳と申しましようか、こうしたものの結成には、相當に機能の活用を要求しなければならないものもありましようし、ただちにそうしたものが新しい縣の相當有力な構成分子になることも考えられるのでございましよう。ここまで考えてまいりますると、ただ一つの流行言葉として、出先官廳をたたきつけるということであつてはどうかと思います。私は政府當局がここまで思いをいたして出先官憲の整理について考えていただきたい。また考えるべきである。この用意もあらなくてはならないということも、ぜひわれわれ委員も、當局も、これを深刻に新しい問題として受取らなければならない問題だろうと思います。この點に關して當局はどうお考えになつているか、御發表を願いたいと思います。
#17
○林(敬)政府委員 ただいまの地方自治の完全なる達成をはかるためには、とうてい現在の區域では不可能であるという御所論については、私もまつたく御同感であります。現在のような四十六にわかれております區域では、財政の問題を一つあげましても、完全に自治體として成り立つていくということは、とうてい不可能であつて、おのずからそこに限度があると存じます。現在のままといたしますれば、まだやる豫地は若干殘つておるだらう。それを努力するというところであつて、現在の區域というものを前提とすれば、おのずからそこに限度があると存じます。なおしかし廣く申しますれば、資源の乏しい日本をどのようにわけてみても、アメリカのステートのように、ほとんど完全に近い獨立は困難であろうと存じますが、しかしそれにしても、やはり自治の完全なる達成を念願いたしますれば、當然區域の問題にぶつかつてくるわけであります。それでお話のように、特別官廳の整理の問題、あるいは特別市の設定の問題、そういうものと附帶いたしましては、常にこの區域がこれでよろしいかどうかという檢討の必要が出てまいるわけでございまして、もちろん政府當局としても、たえずこの點は内部的研究においては、それとにらみ合わせながら、この間のところをどういうふうにうまく線を引いていくか、現實の要請と將來の理想、そういうところをにらみ合わせて、どういうふうにその間の調和をとつて、そのときどきの政策を立てていくかということを考えていかなければならないと思つて、非常に苦心をいたしておる點でございます。ただ私も將來理想に進んでいく問題としては、府縣の區域を當然取上げて問題にしなければならないものと存じます。しかしただ現實の問題、現在日本がむしらその日暮しといいますか、その日その日をどう切り拔けていくか、あるいはその月その月をどう切り拔けていくかというようなせつぱ詰まつたやりくりの生活をいたしておりますときに、風俗、習慣、あるいは郷士意識、沿革、そういうものを永らくもつてまいつておる府縣を、輕々に手をつけていくということも、相當困難な問題が伏在していることも、十分考えられるのでありまして、その間のところをまた現實に即して反省しつつ、現在の日本の姿、現在の日本の動き方ともにらみ合わせ、しかしそれだけに膠著して理想がなくてもいけないのでありまして、その間の理想の部面とも、その方に向つての努力というものも考え合わせ、この両方をにらみ合わせて、適當なるところを出していかなければならない、かように考えております。政府の内部における研究の部面としては、この面のこともお話のごとくもつとものことでございまして、この點はにらみ合わせております。しかしこれが具體的な政策としてそこまで現わし得るかどうかということになると、日本の現下の情勢ともにらみ合わせて、相當また複雜な問題が生じてくるわけであります。まだ確定的ないろいろな結論には至つておらないわけでございます。もちろん研究としては、兩方にらみ合わせてやつてまいりたいと存じますし、御意見は大いに傾聽して、將來の参考にいたしたいと思います。
#18
○千賀委員 特別市制の問題で、私どもが本委員會において假決議をして以來、その決議をします以前とほとんど同樣な論旨で、同様な猛運動が私どもに浸透してまいるのであります。これは賛成側の市及び反對側の府縣ともに相當な猛運動を集中しておいでになります。しかしながら、この運動を通じまして、私どもが殊に強く感じますことは、將來地方自治を確立するために、もつと完全地方自治の顕現のために、府縣の區域は非常に大きくならなければ、經済の獨立ができなければ、また文化、思想の獨立もできないという點に關しまして、ほとんど見え透いておる状況でございます。ただ現在の實際の現實の縣の中におきまして、たとえば横濱市が飛び出したらあとの神奈川縣はどうなるか、あるいは川崎市はどうなるかというような蝸牛角上の觀念ばかりに囚われて反對の陳情もし、あるいは賛成の議論も行われております。ところが、一たび眼を轉じてアメリカの洲ほどとは言えないまでも、相當に縣の行政區域を擴大して、經費、文化、思想ともにアメリカの洲に接近した地方自治を出現するということを考えてみますと、現在の縣から特別市を拔き出すことがよいとか悪いとか、今まで行われておる議論、また現在でもわれわれに働きかけられておる議論というものは、雲煙過眼と申しましようか、まつたくあたらない議論ばかりでありまして、この豫想する大きな區域から、横濱、名古屋、京都、大阪、神戸、こんなものを拔き出すことは、まつたくこれは今まで考えられたところとは違つた意味で、かような觀點から考えますと、特別市制のごときは、その都市の人々が適當であると思うならば、これを特別市制にするということは當然でありまして、殘る大きな形の府縣に、今言われておるような弊害は絶對に起るはずはないのでございます。かような點もやはり府縣の完全自治を目標としての大きな集散離合、これに對して大きな關係もあり、また考え方の一つの展開もしなければならない事情がたくさん含まれておると思います。これはやはり單に出先官憲の整理のために研究ということばかりでなしに、ひいては同時に特別市制というような大きな問題も、やはりこの中に包含せられて、ともに解決してゆく宿命的な運命におかれておるのでございます。私どもは最近常にこのことを強く感じ出したのであります。政府當局もどうかかような點もよく念におかれまして、もしも私どもの意見に同意されるならばその趣旨における取扱いをせられんことを要望する次第であります。
#19
○坂東委員長 ちよつと今千賀委員からの發議がありましたので、特別市制の假決定のその後の經過を御報告申し上げます。それは當時關係方面の要望に基きまして、當時の出席者の賛成反對の意見を全部整理いたしまして、なおさら當日の會議録の一部を抄録いたしまして、たしか三十何ページにわたる文書ですが、それを英譯いたしまして、それを四通携えまして、私と門司君、中島君も參りまして、その關係方面の係に渡しました。詳細に説明し、また向うから質問がありました。從つて兩三日中には、この點に關しまして、向うから挨拶があります。そのとき御報告申し上げます。經過はその通りであります。
 なお今日は出先機關の整理に關しましての報告並びに質疑應答かあつたのでありますが、さらに適當の機會にもう一囘開きまして、先ほど中島君も申しましたように、速やかに立法すべきものは立法し、改正すべきものは改正し、もしくは決議すべきものは決議して政府に要望するということも、次の機會に十分檢討して、そういうように進みたいと思います。
 本日はこれにて散會いたします。
   午後零時十一分散會
ソース: 国立国会図書館
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