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1947/11/29 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 海外同胞引揚に関する特別委員会 第15号
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1947/11/29 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 海外同胞引揚に関する特別委員会 第15号

#1
第001回国会 海外同胞引揚に関する特別委員会 第15号
昭和二十二年十一月二十九日(土曜日)
    午後一時三十八分開議
 出席委員
   委員長 天野  久君
   理事 根本龍太郎君 理事 若松 虎雄君
      川合 彰武君    高瀬  傳君
      成田 知巳君    松原喜之次君
      和田 敏明君    坂口 主税君
      中曽根康弘君    中山 マサ君
      村瀬 宣親君    最上 英子君
      竹尾  弌君    水谷  昇君
      亘  四郎君    吉川 久衛君
      内藤 友明君    受田 新吉君
 出席國務大臣
        厚 生 大 臣 一松 定吉君
 出席政府委員
        厚生事務官   葛西 嘉資君
 委員外の出席者
        厚 生 技 官 重田 定正君
        厚生事務官   小山進次郎君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 引揚者の受入態勢に對する豫算の件及び國立病
 院における傷病者保護對策に關し當局より説明
 聽取の件
    ―――――――――――――
#2
○天野委員長 それではこれから會議を開きます。
 本日の會議に付する議題といたしまして、引揚者の受入態勢に對する豫算の件及び國立病院における傷病者保護對策に關し、當局より説明聽取の件、この二つありますが、まず第一に引揚者の受入態勢に對する豫算の件を當局から御説明願うことにいたします。
#3
○小山説明員 今日は長官、次官ともに病氣になつて寢ておりましたりいたしまして出席できず、私から代つて御説明申し上げるわけですが、この點はひとつお許しを願いたいと思います。
 まず豫算の問題につきましていつも問題になります點は、その年の引揚人員が何人ぐらいあるかという見透しをつける點でございます。今年度の豫算に出ております引揚人員をきめます時期は、大體前年度の九月ないし十月ごろの情勢によつてきめますので、實際そのときになつてみますと、かなり違いが出てくる。こういうことでございます。今年度の分について多少詳しく申し上げますと、昨年の九月頃の情勢といたしましては、滿州地區等の引揚げは非常に順調に進みましたけれども、その當時まだマレー、ビルマ、蘭印等に約十六萬ばかりの人々が殘留しておりまして、これがはたして年度内に歸れるかどうかわからぬ。こういう情勢にございましたし、また今日問題になつておりますシベリヤ、樺太方面の引揚げは大體少しずつ引揚げることになりそうだという程度で、どの程度進むかという見透しも全然つかぬ、こういうような情勢でございましたので、當時の事情を基礎にいたしたして、昭和二十二年度の引揚人員としては昭和二十二年四月一日に海外に殘留すると思われる全人員が引揚げる、こういうことで豫算を組もうということにいたしまして、シベリヤ樺太南方方面を含めて、百四十二萬五千人という數をはじきまして、これが基礎になつて今年度の私どもの關係の豫算ができ上つております。ところがその後情勢が非常に好轉いたしまして、三月の末まで歸れるかどうかわからなかつた南方地域の十六萬五千人のうち、およそ十萬人近いものが三月までに歸りましたのでこの點で今年度の豫定人員よりも若干少い人間が海外に殘留する結果になるということがございましたのと、一、二、三の三箇月の間にソ連地區のうち大連地區から豫想以上の多くの引揚げがございまして、結局實際に四月一日に殘留いたしておりました人間は百四十二萬人からさらに十二萬人ばかり減じました百三十萬人ぐらいのものが殘留しておつた、こういうかつこうになつたわけであります。豫算としては百四十二萬五千人で組んでおりましたので、それをずつと實施しておる、こういうわけでございます。
 それからもう一つ、この問題について御理解を願うために多少くどくどなりますが、いきさつを申し上げますと、そういうぐあいで一應百四十二萬五千人という人間を今年度において全部引揚げ得るものと豫想したのでありますが、船の關係におきまして多少私どもと海運總局との間に意見の食違いが一時あつたのであります。と申しますのは、現在の引揚げは御承知のように全部日本船でやつておりまして、すべて石炭船でやつております。そういつた關係からいたしまして、船の側からいたしますと、百四十二萬五千人が全部今年度内に引揚げるというようなことをいつても、それを運ぶだけの船がないのだ、船の點からいうと――これは多少數字に違いがあると思いますので、この點御了承願いたいと思いますが、およそ八十五萬人ぐらいしか運べない。從つて昭和二十二年度の引揚人員としては八十五萬人で切つてほしい、こういうような申入れが豫算を技術的に締括ります今年の一月の初め、つまりぎりぎりのときにもちこまれてまいつたのであります。その點で私どもと海運總局との間に非常に大きな開きを示すことになつたのでありますが、政府としては少くとも殘留する人員が全部その年度内に歸るという前提ですべての施策を進めていくべきだ、かりにもその中の一部でももう一囘冬を越すというようなそんな豫算を組むべきではない。もう一つは船の點からみてなるほどコール・パーナーの船だけを使つていけばできぬかもしれねけれども、實際引揚げるということになれば、アメリカ船を借りるという方法もあるのだ、その點は必ずわれわれの方で解決する。從つてこの際ぜひとも百四十二萬五千人が歸るという當初の考え通りやつていきたい、こういうようなことを主張いたしました結果、大藏省もこれに同意いたしまして、今年度の人員としては百四十二萬五千人を基礎にして組むということに最終的にきまつたわけであります。そういうふうにしてやつてまいりましたところ、その後いろいろの物の公定價格の引上げ等がありましたために、基準人員としては百四十二萬五千人を基礎にして組んでおりました豫算でも、實際上單價の値上げのために、これでは百四十二萬五千人を引受ける豫算としては不足してくるという事態が生じてまいりましたので、今年の七月の上旬ごろから大藏省當局と折衝をいたしました結果、そのときの情勢に基いて新たな角度から判斷いたしました結果、八月一日現在には九十五萬人海外に殘留する。こういう數字が出てまいりましたので、九十五萬人が全部今年度内に歸るとした場合に不足すると思われる金約三億五千萬圓を、さらに引揚げの豫算として追加をすることに話がきまつたのであります。普通の場合でありますと、これだけの豫算が、當然現在御審議を願つております追加豫算として出てまいるわけでありますが、さいわいなことには私どもの豫算におきましては、そういつた追加の措置をとらなくても問題が解決できる方法が見つかつたのであります。と申しますのは、ごらんを願うとわかるのでありますが、援護事業費の一番最後の補助負擔金及び交付金という項目がございますが、この一番最後の携帶通貨交換金として、七億一千二百五十萬圓の金が組んでありますが、これをある程度流用して問題の解決ができる。こういうことになつてきたのであります。と申しますのは、七億一千二百五十萬圓という金は、先ほど申し上げました百四十二萬五千人という人員を基礎にいたしまして、これまで海外から引揚げてきた人々が通貨の交換をする場合の平均單價を基礎にいたしましてはじき出した數字なのでありますが、その後の實績の示すところによりますと、今年度内にはいつてから交換すべき携帶通貨をもつてくる者が非常に少くなつた、一例を申し上げますと、たとえば舞鶴に最近引揚げてまいつております人は、平均して、一人當り五十六圓しかもち合わせておりません。引揚げの最盛期におきましては、おおむね平均いたしまして五百五十圓ぐらいもつておつたのでありますが、これが五十六圓に落ちているというのが最近の現状であります。そういつたようなぐあいは交換すべき携帶通貨の額が非常に減少いたしましたので、これに引當てておりました七億一千萬圓が、大部分餘つてしまうということになりましたので、そういつた事實を基礎にしてはじき直しました結果、少くともこれから四億圓程度は落すことができるという見透しがつきましたので、そのうちから三億五千萬圓だけを純粹の援護事業費の方に流用することにして、問題の解決をするということに相なつたのであります。從いまして引揚げにつきましては、まことにさいわいなことでございましたけれども、そういう事情でございますので、八月一日から確實に單價の引上げを實施することができ、豫算經理上も全然支障なく、今日までまいつております。かような經過に相なつております。その後中間におきまして、米ソ關係の最近の事情等からして九十五萬人全部は歸らぬかもしれぬから、多少三億五千萬圓を節約してくれ、こういう話が大藏省からありまして、私ども相談をいたしました結果、それでは五千萬圓くらい落してよかろうということで、三億五千萬圓の流用金額を三億圓に減少して、現在實施しておるのであります。その後さらにちようど半月くらい前、新しい追加豫算編成に伴つて、從前の豫算で節約できるものはするということがありました結果、さらに引揚民對策諸費から一億圓以上の金を節約してほしい、こういう申入れが大藏當局からあつたのでありますが、純粹の援護事業費でこれ以上節約いたしますと、八月一日を基礎にいたしまして、九十五萬人の受入れに支障を來すおそれがありますので、純粹の援護事業費では手をつけない、この一億圓は全部携帶通貨の方からまた落す、こういうことになりましたので、結局先ほど申し上げましたように、七億一千二百五十萬圓のうち、三億圓を援護事業費に流用し、一億圓を今度提出いたします追加豫算に參畫の豫算として入れる、こういうことになつたわけであります。今私どもとしては現状において九十五萬人の引揚げがありましても、大體やつていけると思いますが、何分にもその後じりじりといろいろの公定價格が上つておりますので、食糧費その他は逐次窮屈になつております。その場合のやりくりをどうするかということが、私ども事務を擔當しておる者の惱みの一つでありますが、どうしてもこれで豫算が足りなくなつた場合には、さらに携帶通貨の交換金から不足の分だけを流用するという考えによりまして、この點は大藏省の事務當局とも話がついております。問題としてはそういうふうに流用していつた場合、もしも携帶通貨の交換金が必要な金額以下に落ちてしまつた場合どうするか。つまり穴埋めをどうするかということですが、これはさいわいに政府と日銀との間の決濟をつけるだけの金でございますから、とりあえずその分だけは日銀に立替をさしておきまして、明年度の豫算においてその分だけを政府は返すという事務上の措置もとれますので、少くとも引揚援護の現業に關します限り、豫算的に行き詰まることがないというのが現状でございます。非常に長たらしくなりましたが、引揚げの基礎人員につきましては、さような問題がありまして、ただいま申し上げたような方法で今日までまいりましたし、また今後の問題としてはただいま申し上げたような方法で解決するつもりでおります。
 それから實質的な問題として、何と申しましても、私どもの豫算のうち一番問題になりますのは食糧費でございます。これは現在の單價でやれるかどうかという問題と、それから今後値上りをした場合どうするかということでありますが、さいわいにして現在の豫算單價でやつておりましても、大體局によつて多少の違いはありますけれども、一人當り二千四百カロリー程度の熱量を出す食糧を給與することができております。これはもちろん買入れ及び食糧の調理の上にいろいろくふうをしておるということもありますけれども、もう一つの理由としては、豫算外に多少從來の備蓄がありますから、これも加えておる。こういうことがこのように高いカロリーを出し得る原因になつておると思います。從いまして原料としてはまずこれで差支えないと思いますが、先ほど申し上げましたように、もしも過般の米價の引上げ、その他の影響が深刻に現われてまいりました場合においては、現在の單價ではどうしても引揚者に對する食糧の給與に事缺くことになりますので、その場合にはもう一囘大藏省と事務的な話合いをつけて、多少食糧費の單價を引上げるということをいたそうと思つております。それから殘る問題は被服でございますが、被服は先ほど申し上げましたように、今年度百四十二萬五千人が還つてくるものとして、これに必要な被服を調達する資金ございますが、もちろん引揚援護に關する相當多量の被服の備蓄がございますから、その分だけは差引いてあります。從いまして豫算面から申しますれば、少くとも今後歸つてまいります人に全部必要な被服を給與するまでの豫算の用意はあるわけであります。しかしながら何分にも豫算を組んだ當時に比べますと、被服の單價が非常に値上りを示しておりまするので、十分のこともできないという憾みはありますけれども、大體事缺ぐことのない程度の給與はできるようになつております。問題はこの面ではむしろ豫算上の問題よりも現物を確保するということが非常な惱みになつております。待に現在引揚者の給與に一番苦しんでおりますのは毛布とくつであります。さいわいにして毛布の方は最近現物の入手ができまして、今後先ほど申し上げました八月一日を基礎にして九十五萬人が全部引揚げてまいつても、一人一枚ずつ支給し得る程度のものの入手の見込みがついたのであります。問題はくつでございますが、これは未だ見透しがついておりません。九十五萬人歸るといたして、くつの用意がありますのはせいぜい七十萬見當でありまして、二十五萬人分程度が不足しております。これについては極力努力をしておりますけれども、現在の皮革事情その他から皮くつでこの不足の分を補給するということは非常にむつかしい情勢にあります。從つてズツクぐつで何とか補給をしたいというので目下苦心をしておるようでありますが、これについては確實に補填ができるということを御報告申し上げるまでの段階に至つておりません。このくつが少いために、たとえば舞鶴に引揚げてきた人に對しましては、引揚者に對して三割程度しか新しいくつの支給ができない、そのために新しいくつの支給を受けない人が非常な不滿をもつ、こういうようなことがありまして、私どもとしていつも心を悩ましておる問題でございます。豫算上の問題といたしましては大體そのくらいが大きな問題であります。
 もう一つ問題として殘つておりますのは人件費の問題であります。御承知のように引揚援護局は現業官廳ではございませんけれども、非常に現業的色彩が強い官廳でございまして、一局平均五百五十人ないし六百人程度の實員を要しておりますが、このうち本官以上の者がわずかに六十五名から七十名程度でございまして、それ以外はすべて囑託、雇用人というような人々から成り立つております。本官以上の人間については問題がございませんけれども、囑託以下の人間につきましては、これだけの多數の人間がおつてもなおかつ十分用を辨ずることができかねるという惱みを現在もつております。と申しますのは、豫算を組みますときの人員のとり方としては平均の仕事の分量を考慮に入れて人員をとりますけれども、實際の船のはいり方はかなり亂雜でございまして、あるときには三日おきに千五百人ないし二千五百人程度の人間を乘せた船が一艘ずつはいるというふうに、非常に規則正しくはいるという場合もありますが、ある場合には十日くらい間をおいて一度に二艘ないしひどいときは三艘飛びこんでくるというときがあるのであります。そういう場合にはどうしても既存の人員だけでは賄いきれないというようなことが起りまして、かなり苦しむといつたような問題がございます。おそらく今後冬期に向いますと、引揚援護局のあります地域は函館、舞鶴、というふうに雪の非常に多い地方でもありまして、活動にかなり困難を來す次第でありますので、人員不足の問題が一層大きく出てくるおそれがあるわけであります。その點については事務的に隨時大藏省と折衝いたしまして、きわめて小刻みではありますけれども、少しずつ囑託、雇用員以下の人員の増員を行つてきておりますが、冬を控えてもう少し増員しなければならないのが現状でございます。この點も最近は話合いまして増員しないという政府の根本限則もあるから、配置轉換によつて、ある程度ほかの分野から引揚援護局にもつてくるということで、問題を解決しようじやないか、打明けた話を申しますとそういうようなことで事務準備を進めておりますから、やがて解決ができると思います。
 非常に亂雜でございましたが、以上が受入れに對しまする本年度の豫算の概要でございまして、過般對日理事會における審議の問題とも關連しまして、受入れについての準備は萬全かどうかというお尋ねでありまして、厚生大臣が萬全なりということを申し上げましたところ、全然追加豫算を組んでないではないかというお尋ねがありました。追加豫算を出さなくても受入れができる事情は、ただいまこまごまと申し上げましたような事情でございますので、御了解をお願いしたいと思います。
#4
○天野委員長 早速大臣が見えますが、それまでに次の國立病院における傷病兵士の保護對策に關して當局の説明を聽取いたします。
#5
○重田説明員 終戰後本年の九月までに引揚げてまいりまして、ただちに國立病院に入院いたしました患者は、元陸軍関係で十萬三千二百三十人、元海軍關係で一萬七千二百三十五名に相なつております。最も最近の調査によりますと、十月二十四日現在でありますが、國立病院の入院患者二萬二千二百三十二名のうちで、傷病軍人は七千百八十九名三二・三%、約三分の一を占めております。外來患者の方では、二萬五千九百八十六名のうちで四百九十八名、わずか一・九%というごく少數であります。これらの傷病者の中には、傷病恩給を受けまする資格のある者が相當數おりますので、各病院では、恩給診斷證書の作成につきまして十分意を加えております。それぞれ恩給局にこれを申達して、それらの人の利益を守るというようにいたしております。
 なおこの委員會で先日お話がありましたが、國立病院の職員醫官と申しますか、これは元全部軍醫でありましたが、だんだん軍醫の諸君もやめられまして、一般の醫師が奉職するようになりました。それらの人の中には恩給のことについて十分知識をもつておらない方もありますので、そういう技官の人に對して恩給に關する講習會を恩給局と共同して行つております。そうして傷痍者たちの利益が侵されることのないように十分留意しております。
 なおこれらの傷痍者の入院料の問題でありますが、これは毎々お耳に入れておることでございますので詳しくは申し上げませんが、生活保護法の適用を受けます者は、その適用を受けて自分で入院料を拂わなくてもよろしいように、その適用を受けるには至らないけれども、實際上長期にわたります入院中の費用を支辨できない者に對しましては、國立病院の入院規程中に病院長の計らいによつて入院料その他の處置料の減免をいたすことができるようになつておりますので、この規程を活用いたしておりまして、現在その趣旨が徹底いたしておりますために、實際問題としては私どものところへ傷痍者が入院料等の問題で問題をもちこむ者はまつたくその跡を絶つておる状態であります。
 一般の病氣は比較的簡單に扱えますが、保護の問題では、手足のない諸君、義足なり義手なりをつけなければならないような状態の方に對しましては、特に氣をつけておりまして、ただいま相模原東京第二病院、龜川、新發田、仙臺、岐阜、小倉、善通寺、岩國、大阪、札幌、これらの病院に義肢をつくつたり直したりする工場を設けております。それらの病院にはその方の專門家、すなわち整形外科に明るい醫師を配置いたしまして、最もよい義肢を最もよい状態において装著できるようにいたしております。義肢の、製作、修理數も國立病院ができました初めにはきわめて少量でございまして二、三百というような状態でございましたが、最近はいろいろな困難があるにもかかわらず、約千二、三百というところを毎月製作し得るようにいたしております。從いましてさような患者が義肢の不足のために困るようなことがだんだんなくなるように私ども努力いたしておるのであります。
 次に病院として心配しておりますのは義眼であります。これは特殊の技術が要るのであります。ただ入れ眼をつくつてはめてやるだけではいけない場合があります。眼の近所のいろいろな負傷がありまして、それを治して整形外科的の手術をして、そうして眼のくぼんだ所へうまくはまるような義眼をつくるというのはなかなかむつかしい技術なのでありまして、これはただいま九十七箇所あります病院のうちで、東京第一の病院だけでその方の專門の技術者を置いていたしております。從いまして東京第一病院はかような患者が全國から集つてくるようになつております。この方はただいま技術者が二名おりまして、一日平均五箇くらいしか調製ができない状態であります。
 なお口の近所の戰傷で、あごが飛ばされるというようなことがありますので、そういうのはまた特殊な整形手術を行いまして、あごと、そのあごにはまるような入齒をつくるというような仕事もいたしております。これまたどの病院でもできるというわけにまいりませんので、東京第一病院が主としていたしております。
 これらが國立病院内における傷痍者に對する保護でありまするが、御承知のように入院患者で長いことはいつております間に、生活の方面の問題もありますので、病院といたしましては、作業療法というようなことに關連いたしまして、それらの患者の職業能力を向上させる、あるいは技能の補導を行う、そして退院後に自力更生できるように考えまして、國立病院の中に授産施設を設けるようにいたしまして、この運營は財團法人共助會があたるように先年から指導をいたし、それには病院長がその施設の長になりまして、運營に間違いないようにいたしております。ただいま相模原病院等では鼻緒をつくり、あるいは木工をやる、竹細工、時計やラジオの修理、あるいは封筒はりというような仕事をいたしておりまして、醫學による治療のほかに、その方向の補導もいたしまして、傷痍者諸君の保護に遺憾のないようにいたしておる次第であります。
 それからなお國立病院には、先ほどちよつと申し上げました軍醫の方がまだ相當おられるのでありまして、それらの方は、先日官報にも出ましたように、一應該当者として指定をされ、そうして退職すべき者として公表されたのでありまするが、この國立病院の性質、それからまた先ほど來申し上げましたような特殊の技能を要する場面が多いのであります。從いましてそれらの醫師がただちにその職場を離れますことは、國立病院の運營に大きな支障を來しまするし、事實治療にも差障りがあることは當然考えられます。從いましてただいま厚生省といたしましては、總理廳と連絡いたしまして、目下それらの優秀にして必要な職員が留任できるように申請中でございます。國立病院におきまする傷病者の保護對策については大要ただいま申し上げたようなところで盡きると思います。
#6
○天野委員長 それではこれで説明の聽取は終りましたので、これから質疑に入ります。質疑を許します。受田委員。
#7
○受田委員 先ほど引揚關係の豫算の内容を伺つたのでありますが、昭和二十二年一般會計豫算補正に出されてあります厚生省關係の第三十三項、「未復員者に必要な經費の減少しとしてありまして、この中に「本年七月以降在外元軍人軍屬の復員豫定の減少に伴い、二億三千三十五萬五千圓を厚生本省第一復員局より修正減少した。」というこの内容は、先ほどの御説明のどの部分が當るのか、ちよつと御説明願います。
#8
○小山説明員 ただいまおつしやいました中の一億六百三十二萬圓何がしというのが私どもの關係のものでございます。おそらく殘りが第一復員局關係のものだと思います。
#9
○受田委員 そうすると引揚援護院關係の豫算しかおわかりになりませんか。
#10
○小山説明員 そうです。
#11
○受田委員 實は私未復員者の給與状況その他についての豫算の内容をお伺いしたかつたのです。
 それからもう一つお尋ねしたいのは、先ほど援護院のお方が、引揚者に對して被服の用意があるということで、毛布は見透しがついておる。くつは七十萬足しかない。しかるに舞鶴に揚つてくる者の約三割しか與えることができないというこの現状は、七十萬足用意してあれば當然その用意してある分を復員する者から給與することにしたらいかがなんですか。そこをちよつと伺います。
#12
○小山説明員 ただいまお話のありました點は、私たちも一番惱んでおることなのでございますが、あとから來る者のことも頭におきまして、そのときの着裝状況等を考慮に入れて支給しております結果が大體三割になつております。問題としては、今おつしやいましたように、九十五萬の需要に對して七十萬だから、何も支給率を三割にする必要はないという點があるわけなのでありまして、この點は私ども氣にしておるのでありますが、今後もくつの入手の見込みが全然ないといたしますれば、ほかの函館なり佐世保からくつをとつてまいりまして、大體九分の七の支給を續けていくということをいたすわけなのでありますが、なかなかその踏み切りがつかない。そのためにはせつかく引揚者に對してほとんど全部支給できるような状態になつておる函館、佐世保のものを動かしたくないというようなことで、踏切りがつかないでおる現状が、ただいま申し上げたような状態であります。もし今後も努力をいたしまして、どうしてももうはいらぬということになりますれば、お話のように全部どこへ揚つても、同じ割合で支給されるということに、大體九分の七程度の支給に平準化しよう。かように考えているわけであります。
#13
○受田委員 厚生大臣がお出になつているので、特に大臣に御答辯願いたい重要な問題をお尋ねいたします。先ほど病院課長から病院政策の大略をお聽きしたのでありますが、その中で國立病院の技官で終戰當時高級軍醫であつた人たちが、今日追放の關係に指定されて近く退職しなければならないような運命になつているが、これに對しては總理廳と連絡をとつて何らか打開策を講すべく努力しているというお言葉があつた。私はこの點についてもつとはつきりした立場で問題を解決していただきたいとお願いいたします。何となれば先般東京の第一國立病院の視察をし、さらに山口縣に歸つたときに三つの國立病院を慰問してしみじみ感じたのでありますが、患者は、今熱心にほんとうに親子のような關係で治療に當つてくれている優秀なお醫者さんを失つたならば、あとはいかに殺風景な悲惨な運命におかれるだろうかと憂えておるのであります。ほんとうに親子の情ともいうべきこのお醫者との氣持は、お醫者さんの退職によつてその美しい關係が阻まれると同時に、殘された患者がやがてどんな非痛な運命になつていくかということを考えると、希わくばこの追放に指定された技官を患者が完全に治療の目的を果して、再び明るい社會に出るその日まで留めておいていただきたい。一箇月一萬も二萬も收入を得る途があるのにかかわらず、ささやかな待遇でがまんしているお醫者さんに對してまことにお氣毒である。こうした人道上の問題のために今何らの欲望を感じていないお醫者さんに對して、その追放の緩和策をとつていただきたい。復員局の復員事務官は元正規の軍人として追放該當にひとしいものであるにかかわらず、特殊な復員事務というもののために現にりつぱに復員完了の日まで任務をとることを許されている。そういうことから考えて、この軍醫だつた技官の立場は、復負事務官と比べて危い立場におかれているということについては、何らか政府の努力の足りなかつたところがあるのではないか。むしろ復員事務官以上の大きい人道的な意味を含んでいる點において、こういう聲の起つてくる前に何らか策を立てておくべきではなかつた。手落ちがあつたのではないか。この點については國家全體の立場と人道という立場から他の何ものにも代ることのできない軍人醫學の權威者として戰傷者を取扱つてきたこの優秀な技官に對しては、きわめて速やかにわれわれの念願する方向へ取扱つていただくようにお願いしたいと思います。その點についてお尋ねします。
#14
○一松國務大臣 受田委員のただいまの御質問はごもつともな御質問であり、あなたが國立病院を視察して受けられたお感じと、私が視察してきたその當時の感想とはまつたく一致する次第であります。こういうような優秀な技術をもつている人が、これら哀れな、まつたく生れもつかぬような不具にされた人々に對し世界有數の技術を驅使して、これらの人々をとにかく人間らしいあたりまえの容貌にまでこしらえあげるという神のごとき技術に對しては、多大の敬意を拂つている一人であります。これらの人々が、不幸にして戰犯というような立場から、追放されるということはやむを得ないことであります。そこで問題は、今あなたの仰せになるような人道上の問題から、それらの患者の治療の終るところまでの間、その追放という地位から去らせずして、その地位に留め置く手段はないものだろうか。こういうような熱心なる御希望のようでありますが、私まつたくあなたと同感でございますから、この點については、それらの理解を十分もつておられます連合軍の方に私からお願いをいたしまして、これが實現に努力せんとし、現にいたしつつあります。これは今のお話のように、第一復員局、第二復員局ともに、すでに追放せられて戰犯者であるにかかわらず、その業務がこれらの人をもつてでなければ他に代る人がないという立場において、追放される資格のある人がそれらの仕事を完遂するまで留任を許されていると同じ精神において、多分許されることであろうと私も確信しております。これがきつと實現するかどうかという點は、私ここで言明できませんが、多分許されることであろう、のみならずこれについてはでき得る限りの努力を拂つて實現を期したい、こういう決心をもつており、現にそれらの實行に努力中であるということで、ひとつ御了承を願いたいと思います。
#15
○受田委員 將來の見透しについては……。
#16
○一松國務大臣 これは見透しですから、多分實現しようと思います。きつと實現するということは神ならぬ身の私は言明できません、それ以上は向うの御意向ですが、私の立場から見れば實現の可能性は十分ある。これ以上のことは向うでないとできませんから、それはひとつ御了承願いたいのであります。
#17
○受田委員 大臣の御答辯で、非常に努力をしておられることを了承いたしました。その點については復員事務官と比較して、むしろそれ以上に長期の特殊な業務でありますから、これは一段の重要性があると考えております。政府の努力を熱願し同時に私自身もこの點には人道主義を標榜せられる關係方面の意圖が決してゆるがせにされるものでないとを信じます、從つてこれに對しては速やかな措置をとつていただくよう政府から要望していただきたい。今病院で不安のどん底にある患者の實に痛ましい心境を早く明るくしてあげていただきたい。その點において、地方の病院でも中央の病院でも患者が不安な氣持になつております。あの慈父のような技官、そして親を慕うようなあの患者、あのうるわしい場面を見て、苦痛をあえて冒しつつも、やがて光明の日をめざしているこの人たちに再起の日の一日も速やかならんことを念願してやまないのであります。この點において、私は自信ある當局の措置の一日も速やかな實現を願うとともに、政府當局は病院の動搖を未然に防止するように、さらにあの患者の親たち、家族たちが心配をしておるその氣持をほんとうにお察しいただいて、何らかここに病院自身に對する對策も用意していただきたい。たとえば追放されたあとへある技官を用意しておるというようなことでなくて、このお醫者は皆さん必ずいてくださると思うというように、患者に明るさを與えていただきたいと思うのであります。
 もう一つ併せて、先ほど病院課長から、傷病者に對して傷病恩給が與えてあることのお話があつたのでありますが、あの額を見てもほんとにすずめの涙ほどで、形式的のもので、恩給に關する講習を開いたり何かしたつて、あのささやかなわずか何圓という單位のものを講習をしても、ほんとうにこれは机上の空論のようなささやかな結果に終ると思うのでありますが、この傷病者に對して終生生活を保障するよいな失業保險、失業手當兩法案が先般通過しましたが、あれらに對し、また勞災法に對してでも、もう少し公務傷害者として、この傷病患者の將來に光をもつていくような政策をとつていただきたいのであります。この點において豫算の上に相當な増額をしていただきたい。
 併せてこの公務による死亡者に對して、先般厚生省の政府委員が、戰死者に對してはまた次に考慮するということがあつたのでありますが、終戰後現地で勞務に服して、たとえばシベリヤで石炭を掘るとか、木を伐るとかでけがをしてついに死亡して歸つた人がある。これはもう戰爭によるのではなくして公務による死亡者なのである。この公務による死亡者が歸つてくると、依然として三百十圓の遺骨受取りの旅費しか與えられていない。これは非常に不公平であるので、何らかの方法でこれらの人に對して、たとえば勞災法によるほどの額でなくても、それに近い程度の家族を扶助するところの對策をとつていただきたい。これは人道上の立場からも考えられる問題でありまして、戰爭という立場でなくて、公務傷病及び公務死亡という二つの立場から、以上の傷病年金とそれから公務死亡に對する一時金の附與に對する政府のお考えをお伺いしたいのであります。
#18
○一松國務大臣 今お話のような種類の人々に對しまして、非常に同情すべき境遇であるということは受田議員とまつたく同感でありますが、これらの人に對しまして、今わが國の財政上の方面からと、關係方面の意圖するところ等からいたしまして、今にわかに特別にこれを待遇するということは、まことにお氣の毒ではあるけれども、實現が不可能な状況にあることは、ひとつ御了承を願いたいのであります。ただ、しかしながらこれらの人がすずめの涙くらいのものによつて、生活を保障することのできないことはよくわかつております。こういう點につきましては先刻政府委員から答えたそうでありまするが、軍人の傷病年金とか、あるいは生活保護法の金を増額するのだとか、あるいは失業手當法というものが通過した後においては、そういうようなものに準じて適當に處置するとかいうことは、現在の法律の範圍内において考えられることであります。ただ私は何とかしてこれらの人に向つて、他の特別な方法ということにできぬにしても、とにかく何とかしてやりたいというつもりで今いろいろ考え、努力は試みておりますけれども、これは容易に實現ができないような事情にあるのでありますから、結局やむを得ず生活保護法の金額がすでに十一月から上りましたけれども、なお物價の騰貴が停止することを知らぬということになりますれば、この生活保護法の規定による金額もまた増額しなければならぬ、こういうように實は考えております。要するにできるだけの生活の緩和をすることに努力する、しかしながら特にそういう方であるがゆえにという待遇のできないことだけは、努力は續けて見ておりますけれども、なかなかこれは容易に實現のできないことを御了承願いたいのであります。
 それから終戰後においてかの地におつていろいろな勞務に服しておつたような人が死んだこれらの人に對するやり方が今までと同じじやないかという點についても、私はまことにごもつともな御質問だと思つておりますが、これらの點に對しましても、現行の法律では特別な取扱いができないのでありますが、今の公務による傷害とか、死亡とかいうことの解釋いかんによつては法の運用上で適當にできるじやないかと思います。こういう點につきましては十分に事務當局にこれらのことを調査させまして、關係方面とも了解を得られるならば得て見たい、こういうように考えております。今ここでこうする、ああするという斷言は、今日のポツダム宣言における無條件受諾のわが國においては、できないことだけは御了承を願いたいのであります。
#19
○受田委員 せつかくおいでの機會でありますのでいま一つお尋ねいたします。これは豫算關係でありますが先ほど引揚援護院の政府委員からの御説明の中に、この豫算を組むときは殘留者の全部が引揚げることを豫想して豫算が組んであると言われたのです、それで非常に大きな額に上る。今八十五萬殘つておるならば、この八十五萬すべてを引揚げるための豫算がこれに組まれてあるというお話でありましたので、從つてそのうちで融通のつく金は流用をしておるというお話があつたのであります。この點においてこれだけの相當額の豫算が組んであるならば、これに對して流用をするということも一方法でありますが、併せて引揚者が引揚地でもう少し優遇をされて、あの衣類、くつのようなものを一そろえでなく、しばらくの間、何日間の生活ができる程度の保障金を與えるとかいうような方法をとつてやつて、ほんとうに悲慘な立場で歸つてくるこの引揚者を、もう少し潤いのあるもので引揚をさせるような豫算化をはかられてはどうだろうか、こう思うのであります。また配船計畫などで船が實際に要らないので船員なども遊んでおる。そういうところで相當のむだが起ると思うのであります。こういうむだの排除についても何らかの對策をとつていただきたいと思います。こういう點で厚生省關係では相當金の融通がつく省でありますから、この省としてはみんなを喜ばせるような豫算が相當都合がつくのじやないか、こう考えますので、以上の點について御答辯を願いたいと思います。
#20
○小山説明員 大臣の旨を受けてお答え申し上げます。最初の問題は結局おつしやつたような方法を實行いたしますと、實質的には單價の引上げになると思います。そうしますと、もつております豫算では、歸つてくる人員が非常に殖えたという場合に賄いがつかなくなるということになりますのと、豫算實施上の徳義といたしまして、やはり單價は當初事務的に打合わせましたもので實施をする。もしそれをかえる場合はまた別個に打合わせをしてやる。これは徳義上の建前でございますので、現状においてはおつしやることをただちに實行することは非常にむずかしい。しかし現にもつておりまする被服等でやりくりのつきますものについては、現在でもかなり御趣旨に副つた方法で實行しております。從つて最近引揚げてまいります人々に對する被服その他の支給の割合は、從前に比べればかなり引上げられております。たとえば、從來ですとくつ下は一足しか上げられなかつたというのを、現在量をにらみ合わせました結果、二足ずつ上げる。あるいは冬服と夏服を現在は一着ずつ上げております。從前は冬歸つてまいりますれば冬服一着、夏歸つてまいりますれば夏服一着、かようにしておりましたが、現在は今のようにいたしておるわけであります。そういつたわけで努めて御趣旨に從つてやつておりますけれども、何分にも先ほど申し上げました事情がありますので、そう放胆な思い切つた經理ができないという事情のあります點は御了承をお願いしたいと思うのであります。
#21
○天野委員長 それでは委員長として一つお尋ねしたい。先ほどの御説明によりますと、病院の醫者に對してはそれぞれ補充をいたして不足がない、こういうように言われております。私の承るところによりますと、終戰後軍醫として國立病院に移管されたのが大體二千名、八月末あたりの現在になりますと六百二十三名に減つてきております。それが十一月のうちに全部追放該當者として發令されておりまして、これをこのままおくときには十二月二十八日には確定されるということになつておるのでございますが、なおマ司令部から指令でどうしても追放しなければいけないということで、高級將校、いわゆる大佐以下中佐以上くらいの人に對してはそれぞれ辭表を出すようにという話もされておると聞いておりますが、この高級軍醫追放の結果は、全國にある九十七箇所の病院の相當な幹部が追放になつてしまうということになります。かりにたとえて第一病院で申しますならば、出月元大佐以下五名くらいの幹部が追放されてしまうという結果になると、病院の運營に支障を來す。數の上において補充はできても技術上において格段の差が出てまいるという結果になりますので、先ほど大臣はそれぞれこれらの留任の手續をしておるというお話であつたが、この元高級將校に對しての手段はどういうふうになされておるか、そのほか六百二十三名の軍醫の留任申請に對してどういう手段、どういう方法でやつておられるか、その現實の状態をお示し願いたいと思います。
#22
○一松國務大臣 速記を止めていただきたい。
#23
○天野委員長 速記をやめて。
#24
○天野委員長 速記を始めてください。
#25
○村瀬委員 お忙しい厚生大臣がわざわざお見えになつてくださつておりますので、簡單に三點ほどお尋ねとお願いをいたしたいと思うのであります。
 第一點はたびたび申し上げました生業資金の問題でありますが、これは本會議におきましても大臣から御答辯いただいたように思つておるのでありますが、なおその後の實際の支出上で三億一千餘萬圓當然出せるということを伺つておるのであります。これはこの十二月中には全部出していただける状態になつておるでありましようか、その點をお尋ねいたしたいと思うのであります。これがためにせつかく計畫を立てながら、引揚者の中では手をこまねいて、ますます死地に陷りつつあるという實状が數多くありますので、この點特にお尋ねをいたし、またその實現方をお願いするわけであります。それから生業資金の五千圓を、全連の方では一萬五千圓くらいにしてもらいたいという希望があるのであります。七千圓くらいには近くできるというようなことも伺つたかと思うのでありますが、その經過もお尋ねいたしたいと思うのであります。
 第二點は引揚者に對する越冬對策であります。いろいろ團體協約權とか、組合の力というもので要求いたしますると、大きく取上げられるのでありますが、その數幾百萬に及ぶ引揚者たちは、あまり過激な手數には訴えておりませんけれども、ひとしくこの冬を迎えて、寒さに震えておるのであります。昨年もこれに對しましては、木炭の割當等の指令もありましたし、またふとん、毛布等の配給の計畫はあつたのでありまするが、私も引揚者でありますが、配給が實際に行き渡りましたのは、もうぼつぼつ暖かくなつたころであります。今年はこれらに對しまして、どの程度の御計畫があり、またその實施が眞にこの年内に行き渡る状態に立ち至つておるのでありましようか、どうでありましようか。その點が第二點のお尋ねであります。
 第三點といたしましては、これは勞働省の關係かとも思いまするが、多くの引揚者が歸つてまいりますのは、まつたくこれは失業そのものなのであります。それにつきまして失業保險の範圍を擴げて、何らかの温情をもつて、ある期間を限つて適用していただくという方法をお考えになつておるかどうか。この三點についてお尋ねをいたします。
 それだけでありますが、最後にもう一つ、先ほど委員長から詳しくお話になりましたから、重ねて申し上げる必要はないと思うのでありますが、先般厚生大臣のお勸めによりまして、私たちも第一國立病院へ見に參つたのでありますが、まことにその技神に徹すというような、あの神わざに近い醫官、すなわち整形醫官に對しましては、えりを正してわれわれは感涙にむせんで歸つたのでありますが、先に天野委員長がお話になりました通り、かくのごとき醫術は實に天下の至寳である。決して簡單に傳授のできるものではありません。その人一代ただ一人、その人にのみ行えるものであつて、これは各藝術家の名人といえども、かくのごとき域に達し得ないものと思うのであります。この點をよく御説明くださいまするならば、關係當局においても十分、人命救助の大博愛の眞髄に徹したこのことに對しましては、御了解いただけるものと存ずるのでありまして、特にこの點は先に天野委員長が申されました通り、私からも重ねてぜひ、大佐級であろうと、これほどかけがえのできない大事な仕事はないのでありますから、十分目的の達しまするよう、御盡力をお願いいたす次第であります。
#26
○一松國務大臣 私がお答えをいたしまして、なお殘りの點は事務當局からお答えいたしますが、まず生業資金であります。これは過般本會議でも申し上げておきましたように、十億圓竝びに六億六千六百萬圓というような金が、請求しておる人々の手もとにすでに大部分渡つておるのでありまするが、まだこの十一月までの間に三億一千餘萬圓というものが手に殘つておりましたが、その半分の一億六千何百萬圓というようなものは、十一月中にすでに放出濟みであります。また放出しなければならぬことに、それぞれ先端にまで命じてあります。殘りの一億何千萬圓というものは、この十二月中に必ず完了することに、手はずを今とつております。これは今一度催足して、必ずそれが實行のできまするようにして、今お話のありました金を使用して、仕事に著手しようとしておる人が、金のないために蹉跌をするようなことのないように、今一應それぞれ手當することにいたしましよう。それから一世帯五千圓というものを七千圓に増額ということは、私この前責任をもつて申し上げたのであります。五千萬圓のものを一億五千萬圓くらいにという御請求もごもつともでありますが、わが國の目下の財政上ではその點までいきませんので、せめて七千萬圓くらいにはしたいと努力いたしまして、ほとんど目鼻がつきまして、見込みができました。しかしまだいよいよこうなつたということを斷言することは、關係方面とのこともありますから、お許しを願いたいのであります。
 越冬準備といたしましての衣類、住宅、資金。資金の點は今申し上げた點でお許しを願いたいのでありますが、衣類等は引揚げました人に到著港においてまず外套とか洋服とかいうものを差上げております。先般も私の甥のソ連に抑留されておりました元陸軍大佐が歸つてまいりまして、函館に著いたときに、厚生省から出張しておりまする人々の手によつて、非常なりつぱなオーバーもしくは洋服をいただいて、非常にどうもありがたかつた。さすが自分の生れた故國だと言つて、その當時將校が數百人、兵も大分おつたようでありますが、その私の甥に向つて、おまえの叔父が厚生大臣だそうだ。おまえ東京に歸つたらよくお禮を言つてくれとことづけられてきたと言つて、喜んで涙を流して報告しておりました。非常に私も喜んだのでありますが、それ以外に毛布とか、ふとんとか、そういうものをたくさんではありませんが、とにかく引揚げた人々がどうかこうか寒さを震えないで凌ぐことができる程度のものは準備いたして、それぞれ配給の手續をとりつつあります。それ以上に暖かく著るという程度まではできないかもしれませんが、その他の點は必要に應じまして資材はそれぞれ確保しておりますので、そういうことによつてどうかこうか冬を過すことのできる手配は進め、また進めんといたしておりますから御了承願いたいと思います。住宅の點はこの間申し上げましたように北海道、東北六縣方面にそれぞれ建設をいたしておりまして、十一月中にほとんど完成することになつております。地方の方はそれぞれ自分の故郷もしくは友人、親威というようなものに頼つて、しばらくのがまんをしていただく、あるいは同居生活、あるいは寺院、會社、公會堂というようなものにそれぞれ手配をしておりますから、のき下に寝るというようなことはなさらぬで濟むだろうと考えております。失業保險の適用云々でありますが、これは御承知の通り、職をもつておつた者が職につくことができないというような場合に、これが適用されることは失業保險制度の示すところでありますが、向うから歸りまして、どうしても職を見つけ出さぬというような場合には、相當の期間を經過いたしますれば、職業を見つけ出しまするまでの間においては失業保險においてそれらの人の生活ができるように手當を支給する。そうしてその以外のことは、御承知の生活保護法の規定によつて保護される。こういうことでありまして、特別に引揚民であるがゆえにどうということは、ただいまのところではただちにこれが實行できてはおりませんが、まあまあ失業保險竝びに生活保護法の規定によつて、とにかく一時的の保護はこれで十分とは言えませんが、できることになつておりまするから、さよう御了承を願いたいのであります。その後におけるものは、生業資金とか、あるいは職業紹介とかいうようなこととにらみ合せまして、これらの人がまつたく仕事ができないようにはせぬ。大いに働いて國家再建のために努力してもらいたい。こういう考えで、それぞれ法律の許す限りにおいて手を打つております。さよう御了承を願いたいのであります。
#27
○村瀬委員 小さいことでありますが、昨年は木炭を配給してやれという指令が府縣に出まして、皆もらつたのであります。今年はそういう通牒がないようでありますが、お出しになる御方針てありましようか。
#28
○小山説明員 木炭の問題につきましては、ただいまお尋ねがありましたような點を一應今のところ準備を進めております。それで通牒は出す豫定にしておりますが、何分出した以上ある程度實際に行われないといけませんので、その方面のあたりをつけるということで今折衝しております。殘念ながら今のところ確實にできるという見透しがつきかねておりますので、まだ出す運びにいたつておりません。今後とも折衝を續けまして、ある程度見透しがつきましたならば、その際に通牒を出して、確實に交付されるようにいたしたいと思つております。ただ北海道については、時期も非常に差迫つておりますので、ごく最近の機會に石炭及び薪等の配給をするようにという通牒を出しまして、これは現に實行されております。さような事情でございますので一應御了承を願います。
#29
○村瀬委員 引揚げて歸りました者は、何から何まで困つておりますので、暖くなつて炭をもらつてもあまりありがたくないのでありますから、特にふとん及び木炭は寒い間に、ぜひ少しでもよけい出していただけるようにお手配をお願いしておきます。
#30
○小山説明員 ただいまおつしやいました通り、特に今度の越冬對策につきましては、先ほどもお話がありましたように、暖くなつて行つたのでは意味が半分以上なくなりますので、必ずこの嚴寒に間に合うようということで進めております。この點につきましては大臣からも特に強い御命令もありましたし、また實は關係方面の係官からも、まさか暖くなつてからいくことはありますまいねという皮肉もありまして、努力をしております。さいわいにして今年度は毛布類は大體現物がすでにでき上つておりまして、殘る問題は配給だけでありますのと、それから被服類もその相當な部分、現在地方の引揚援護局に備蓄してありますものの中の餘剩分を充てることになつております。ただいま現物がありますので、まず昨年度のようなことはなく、確實に嚴寒期に間に合うようにいけることと思つております。木炭についての御注意はよく承つて努力いたします。
#31
○天野委員長 他に御質問はありませんか。
 それでは本日はこの程度で散會いたします。
   午後三時七分散會
ソース: 国立国会図書館
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