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1947/09/16 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第12号
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1947/09/16 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第12号

#1
第001回国会 労働委員会 第12号
昭和二十二年九月十六日(火曜日)
    午前十一時三分開議
 出席委員
   委員長 加藤 勘十君
   理事 辻井民之助君 理事 山下 榮二君
   理事 川崎 秀二君 理事 原   侑君
   理事 三浦寅之助君 理事 相馬 助治君
      荒畑 勝三君    菊川 忠雄君
      島上善五郎君    土井 直作君
      前田 種男君    天野  久君
      尾崎 末吉君    小林 運美君
      倉石 忠雄君    栗山長次郎君
      古島 義英君    河野 金昇君
 出席國務大臣
        勞 働 大 臣 米窪 滿亮君
 出席政府委員
        勞働事務官   上山  顯君
    ―――――――――――――
八月二十八日
 失業手當法案(内閣提出)(第五二號)
 失業保險法案(内閣提出)(第五三號)
八月二十九日
 舞鶴市の地域給を甲地に引上の請願(大石ヨシ
 エ君紹介)(第二九七號)
八月三十日
 地域別賃金の是正に関する請願(赤松君紹介)
 (第三九九號)
の審査を本委員會に付託された。
八月三十日
 乗合自動車運輸業につい勞働基準法適用除外規
 定の陳情書(廣島縣乗合自動車運送事業組合理
 事長多山恒次郎)(第一七五號)
九月十三日
 勞働基準法第四十條に基く特別設定に關する陳
 情書(日本鐵道會長村上義一)(第二二七號)
を本委員會に送付された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 失業手當法案(内閣提出)(第五二號)
 失業保險法案(内閣提出)(第五三號)
    ―――――――――――――
#2
○加藤委員長 これより會議を開きます。
 前會まで質疑竝びに意見を述べてまいりました職業安定法案については、次會に各黨の態度を決定していただくことにしまして、本日はなお審議の途中ではありますが、失業保險法案竝びに失業手當法案と併せて審議することにいたします。つきましては、勞働大臣からの提案の理由をお伺いすることにいたします。米窪勞働大臣。
    ―――――――――――――
#3
○米窪國務大臣 今月初めに國會へ提出しました失業保險法及び失業手當法、兩法案の提案の理由を御説明いたします。失業保險法案を審議せられるにあたりまして、その經過についてちよつと御説明申上げます。
 失業保險法の立案に關しまして、昨年八月十五日衆議院の生活保護法案の委員會の附帶決議におきまして、失業保險の創設に前進すべしという御希望がございましたので、政府におきましても昨年の秋以來、社會保險制度調査會におきまして審議いたしまして、その答申に基きまして、その調査立案の準備を進めてまいつたのであります。しかるに去る六月、現下の經濟危機突破の綜合的な對策として樹立いたしました經濟緊急對策の一環として、失業手當ないし失業保險の制度を實施いたすこととなり、爾來、立案を急ぎました結果成案を得、本國會に失業手當法案とともに本法案を提出の運びとなつた次第であります。
 失業保險法制定の目的は、この法案の第一條に明記いたしましたごとく、失業保險の被保險者たる勞働者が失業いたしました場合に、失業保險金を支給いたしまして、その生活の安定をはかることにあるのであります。
 思うに、失業對策と理想としては、完全雇傭ないし完全就業を實現することが望ましいのでありまして、これがためには産業を振興して、これに勞働力を吸収し、國民生活の安定向上をはかることが必要であり、憲法第二十五條におきましても、國民が健康で文化的な最低限度の生活を營み得るように、國が社會福祉、社會保障の向上及び増進に努めなければならないことを規定いたしているのであります。
 政府は、これらの目的達成のために、一般經濟の再建のための施策と相まつて、職業紹介機關の效率的な運營を初めとして、公立事業、職業補導の擴充等、失業對策には、鋭意努力いたておりますが、やむを得ず出てくる失業者に對する恆久的な社會施設として、すでに歐米におきましては長歴史を有しております失業保險制度を創設することといたしたのであります。しかしてこの失業保險制度は社會保障の一環として、その重要な役割をもつものでありますが、生活保護法のような單なる社會救濟制度と根本的にその性格を異にするのでありまして、職業紹介機關の運營と密設不可分の關係を保たせることによつて、失業者に就業の機會を與えようとする積極的な意味をもつているのであります。
 次に本法案の各條章の概要を御説明申し上げたいと存じます。まず本保險におきまして、保險料を徴收し、保險給付をなす等、保險事業經營の主點である保險者には政府がこれにあたることいたしておりまするのは、危險分散が大であることの必要と職業紹介組織等との關係を考慮いたしたからであります。
 次に本保險の適用範圖は、健康保險の強制適用を受ける事業所に雇われる者を當然被保險者といたしまして、當然適用の事業所以外の事業所に雇われる者につきましては、任意包括加入をなし得る途を開いたのであります。しかしながら、海上勞働者たる船員保險の被保險者に關しましては、陸上勞働者と異なる特殊な勞働事情を有する點に鑑みまして本保險の被保險者より除外いたし、船員保險中にこれを吸收することといたしました。なお、國都道府縣、市町村等に雇れるいわゆる官公束につきましては、それらの者が離職とた場合に受ける諸給與の内容が、本法による保險給付の内容を超えると認められる場合には、被保險者より除外することといたしました。
 次に本法案の眼目でありまする失業保險金の支給に關しましては、六箇月の資格期間及び離職後定期的に公立職業安定所に出頭して失業の認定を受けることを受給の要件とし、支給日數は受給期間の一年間において通算して百八十日、すなわち六箇月といたしましたのは、現下の離職、就職の状況及び各國の失業保險の實情に照しまして決定いたしたのであります。なお失業保險金の額は標準報酬日額の百分の六十を基準といたし、それよりも低額の所得者には支給率最高百分の八十まで遞増して支給し、それよりも高額の所得者には支給率最低百分の四十まで遞滅して支給し、努めて最低生活の維持をはかり、社會会險たるの實を完うすることといたしました。
 次に本保險の運營に要する費用の負擔につきましては、被保險者たる從業員及び被保險者を雇用する事業主は、おのおの標準報酬月額の千分の十一に相當する保險料を負擔することといたしました。なお保險者たる政府は、保險給付に要する費用の三分の一及び事務費の全額を支出し、他方失業保險特別會計を設けて、これらの收支にあたらしめることといたしました。
 次に本保險事業の運營につきましては、事業主、勞働者、公益を代表する者よりなる失業保險委員會を設け、重要事項の審議にあたらしめ、もつて本保險を民主的に運營いたすことといたしました。最後に保險給付に關する異議の申立に關しましては、失業保險審査官及び失業保險審査會を設置いたしまして簡易迅速に裁決を行うことにいたしました。
 以上失業保險法案の大要を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ御審議の上、なるべく早く御可決あらんことをお願い申し上げます。
 次に失業手當法案を審議せられるにあたりまして、本法案の提案理由を御説明申し上げます。
 ただいま説明しました通り、失業問題に對する恆久的對策の一つとして、本法案とともに失業保險法案を提出したのでありますが、失業保險は保險給付が開始されるまでに、最短六箇月の期間を必要とするものであります。
 しかるにその間において今日と日本の經濟實情から見まして失業者の發生することが豫見されますので、この六箇月の期間は失業對策上これを等閑に付すことができません。何らかの措置が要請されるのでありまして、ここに失業保險法案の足らないところを補う意味をもちまして、本法案を提出した次第であります。
 從いまして本法案は、失業保險法案の構成と密接な連關をもちまして、その考え方も、失業保險法案と軌を一にしているのであります。ただ本法案の失業保險保案と違うところは、本制度は保險としての本來の資格期間を滿たしていないにもかかわらず、國庫の特別の負擔による給付であるなどから考えまして、この點より失業保險法案に比べまして受給要件、給付額、給付の制限等について特別な規定を設けました次第であります。以下本法案のおもなる條項について御説明申し上げます。
 本法案の目的は第一條に明らかでございまする通り、失業保險の被保險者を對象とするものでありまして、第二條におきましては失業手當金の受給資格として、本法施行の日から昭和二十三年三月三十日までの間に、すなわち失業保險法による保險給付開始の直前までの間に離職したことを、資格要件として規定してあります。
 次に失業手當金の支給につきましては、前述の理由により、失業保險法案にくらべまして若干異なる規定が設けてあるのであります。すなわち支給金額につきましては、第五條におきまして失業保險法案の給付額に比べて、若干低額となるごとく規定し、支給日數につきましては第八條におきまして百二十日分、すなわち四箇月と規定し、また支給の制向に關しましては、第十條及び第十一係におきまして、支給が全面的に停止されることを規定しているのでありまして、いづれも失業保險法案の當該事項に比べまして、嚴格となつているのであります。
 以上失業手當法案の大要につきまして、失業保險法案と比較しつつ、御説明申し上げたのでありますが、實は失業保險法案の原案には十月一日から實施するということに附則になつておるのでありまして、國會が休暇等の關係で十月一日までには時日がきわめて短少でございまするので、これらの點を御考慮の上皆さん御多忙ではございましようが、どうぞ至急御審議の上御可決あらんことをお願いする次第でございます。
#4
○上山政府委員 ただいま大臣から失業保險法竝びに手當法の提案理由について御説明いたしたわけでございます。なおそれを補足いたします意味で、保險法、手當法のおもなる條項につきまして御説明をいたしたいと思います。
 失業保險法におきまして、まず第一條に法規の目的が規定してございまして、これはただいま大臣が御説明申しましたように、被保險者が失業をした場合に失業保險金を支給して、その生活の安定をはかるということを規定いたしておるのでございます。第二條に失業保險の保險者を規定してございまして、これは特部政府か管掌するということになつております。御承知のごとく健康保險におきましては、政府管掌の保險のほかに、健康保險組合という組合組織のものも認めておるのでございますが、失業保險は非常に危險率が多い保險でございまして、なるたけ危險分散の範圖を擴くしたいということが一つの理由。もう一つの理由といたしましては、失業保險制度の運用につきましては、職業紹介機關を利用いたすのでございまして、現在職業紹介機關が國の全般的な運營を原則といたしております關係、その二つの理由によりまして失業保險は全部政府がこれを管掌するという建前にいたしておるのでございます。三條、四條等は定義的の規定でございまして、特に御説明を要しないと思います。
 第五條に保險料及び失業保險金の額は、標準報酬によつて、これを算定するということにいたしておりますが、これは現在の健康保險なり、厚生年金等の例にならつたわけでございまして、保險技術上この方が便宜かと思つているのであります。
 第六條以下に被保險者のことがございますが、第六條は當然被保險者といたしまして、常時五人以上の從業員を雇傭する事業所なり事務所が、この保險の當然被保險者であることを規定いたしているのでございます。そうしてそれは、この第六條に掲げる事業の事業所ということになつておりまして、この掲げられております適用範圍は、文字の表現は勞働基準法と同じ表現を使いましたが、實質的には健康保險なり厚生年金と適用範圍をひとしくいたしているのでございます。これはただいまの状況におきまして、これらと同じ範圍に適用するのを適當と認めたからでございます。それで當然適用のところで問題になる點がおよそ三つあるのでございます。
 一つは女子勞務者を當然適用にするかどうかということでございまして、いろいろ檢討いたしたのでございますが、社會保險の性質からいたし、また男女同じ扱いをいたしますことが、新憲法の精神からいたしても、適當であろうという考えからいたしまして、女子につきましても男子と同じように、當然適用といたしたのでございます。
 もう一つは官公吏の點でございまして、これは第六條におきましては、一應官公吏も原則的には當然被保險者といたしておきまして、第七條におきまして特別規定を設けたわけでございます。すなわち國、都道府縣、市町村、その他これに準ずるものに雇用されております者が離職されました場合には、その者に支給されます諸給與の内容が、實質上におきまして本法の保險給付の内容を超えると認められる場合には、これを失業保險の被保險者としないということにいたしたのでございます。これは官公吏の地位が比較的安定いたしておりまして、失業が少いというようなこと、また公務員法等によりまして、官公吏の特別の地位が認められますこと、官公吏につきましては、恩給その他の離職の場合の給與制度が、比較的國なり公共團體というようなものにおいて考えられておりますこと等を考えまして、第七條に規定しましたような條件のもとにおいては、これを失業保險の被保險者としないということにいたしたわけでございます。
 もう一つ第三の問題は船員の關係でございまして、これは第十條の方に、被保險者から除外されるものとして、船員保險の被保險者というのが出ておりますが、船員につきましても、これを一般の失業保險法でやるのがいいという理窟もございますし、別個の保險の方がいいという理窟もあるのでございますが、これもいろいろ檢討いたしました結果、船員の特殊事情からいたしまして、これを別個の船員保險の中でやつてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
 第八條は、當然適用以外の事業所に雇用されております從業員につきましては、勞働大臣の認可を受けまして、任意に被保險者になることができるということにいたしておるのでございます。但しこの任意加入の場合には、個個の一人々々じやございませずに、その事業所の雇用されております者は、全部一括して被保險者とすることができるということにいたしておるのでございます。それが任意包括被保險者の意味でございます。これはただいままでの、ほかの社會保險でも、大體こういう制度を設けておるのでございます。ただ、ただいままでの健康保險、厚生年金と違いますことは、第三項にありますように、被保險者となるべき者の二分の一以上が希望いたしました場合には、事業主は任意包括被保險者にす認可の申請をしなければならないということを加えた點でございます。
 それから第十條でございますが、被保險者から除外される者といたしまして、日雇勞働者、それから期間の定めをもつて雇用されておる者等が規定されておるのでございます。これらにつきましては、雇用の形態からいたしまして、保險に無條件に入れますことは、保險技術上いろいろ難點がございますので、現在健康保險、厚生年金におきましても、特殊の場合のみを被保險者にするという建前をとつておるのでございます。それで失業保險におきましても健康保險、厚生年金と同じやり方によりまして、日日雇い入れられる者、また期間を定めて雇用されております者は、一定の期間を超えまして、引續いて同一事業主に雇用されましたときの限りまして、被保險者にいたすということの規定いたした次第でございます。大雜把に申しますと、常用的な日雇勞務者なり、臨時期間を定めましての被用者なりが、結局被保險者になるわけであります。それから十一條以下には、被保險者資格の取得でありますとか、喪失でありますとか、被保險者期間の計算とかいうことがございますが、これは非常に技術的なことでございまして、大體ほかの社會保險の例にならつたわけでありますので、説明を省略いたします。
 第十五條以下に保險給付の規定がございまして、まず第十五條には受給要件といたしまして、被保險者が失業しました場合において、離職日以前一年間に通算して六箇月以上被保險者であつたことを、被保險の必要なる條件にいたしておるのでございます。すなわち通算してでございまして、必ずしも繼續して被保險者であることし必要でないのでありますが、過去一箇年間にとびとびでもいいわけでありますが、少くとも六箇月間被保險者であつたことを資格期間にいたしておるのでございます。
 それから第十六條に、以上のような資格期間をもちました者――以下受給資格者と言いますが、これが失業保險金の支給を受けますには、離職後公共職業安定所に出頭しまして求職の申込をしました上、失業の認定を受けなければならないということでございまして、詳しいことは政令をもつて規定することになつておりますが、私たちの政令の案では、原則といたしましては一週間に二囘公共職業安定所に出頭するということに考えております。但し安定所までの距離が非常に遠くて不便な地もございますので、そういうようなものにつきましては特例を考えたいつもりでございます。それで失業保險に對しましての、ただいままでありますいろいろな批判としましては、失業保險が惰民を養成いたしますとか、いろいろな反對的な批判があるのでございますが、私たちの考えております失業保險は――歐米も大體こういう例ではありますが、單に言わば、寢ころんでおりましても保險金が當然もらえるというのではございませずに、まず求職の申込をしまして、極力職を探す。しかしどうしても職がない場合に初めて保險金を支給する、こういう趣旨のものなのでございます。
 それから十七條に給付額の規定がございます。それで給付額につきましては、第五條に規定してございます標準報酬を基準といたしまして、その標準報酬日額の百分の六十に相當する金額を基準として、失業保險金の日額を定めることにいたしておるのでございます。すなわちスタンダードは百分の六十ということになつておるのでございますが、さらにこれを標準報酬の高い低いによりまして、非常に標準報酬の高い人につくましては百分の四十まで經減できる。また標準報酬の低い人、すなわち所得の少い人につきましては百分の八十まで、その比率を高めることができるということにいたしまして、社會政策的な、社會保險としての本質に副うようにいたしておる次第でございます。なお標準報酬でございますが、實はただいままでございます健康保險なり厚生年金が、いろいろのただいまのむずかしい經濟事情のためではございますが、實質賃金から相當距たつておるという批判があるわけでございます。それで私たちとしましては、今後の失業保險はこういう金錢給付、しかも目の前の金錢給付が唯一の目的でございますので、どうしてもその成果をあげますためには、標準報酬を實質上の賃金に極力近づけるようにしなければならないと思つておりまして、これにつきましては、標準報酬の額も最低三百圓から最高は約五千圓、四千八百圓を一應考えております。四千八百圓くらいの金額も、ただいまの給與の状況に合わせまして相當高いところまでいくようにいたしておりますが、これが實際實質賃金に近いものにきめられるかどうかにつきましては、関係の事業主なり、特に勞働者の御理解が必要な次第でございまして、ぜひそういう御協力、御理解によりまして、實質に近いものできめてまいりたいという考えでございます。
 それから第十八條に受給期間の規定がございます。これは資格が失業保險金の支給を受けますについて、二年先でも三年先でもよいというのではございません、一應期間の限度をきめておきたいという趣旨からしまして、受給期間は一年ということにいたしておる次第でございます。
 それから十九條には待期の規定がございます。これはほかの社會保險にもこれに類した規定があるわけでございますが、最初に公共職業安定所に求職の申込みをしました日から、十四日間は失業保險金は支給しないということになつております。
 それから第二十條の給付日數、これは非常に重要な規定でございますが、一年間、に通算して百八十日分を超えては、これを支出しないということになつております。すなわち一年間にとびとびでもよろしいのでございますが、支給を受けます日數の合計が百八十日、すなわち大體半年になるわけでございますが。その間しかこれを支給ないということにいたしております。これは保險經濟等の點から、かようにいたしておる次第であります。それから二十一條の給付の制限の規定でございます。これは受給資格者が公共職業安定所の紹介する職業につくこと、またはその指示しました職業の輔導を受けることを拒みましたときには、その拒んだ日から起算して一箇月間は失業保險金を支給しない。但し正當な理由該當いたします場合は、この限りでないということにいたしておりまして、その正當な理由として認められるものが左に列擧されているわけであります。すなわち第一には、紹介された職業、または輔導を受けることゑ指示された職業が、受給資格者の能力からみて不通當と認められるとき、この場合には拒んでもよいのであります。それでこの點につきましては、日本のただいまの國情からみまして、職業の轉換を容易ならしめるためには、もつと嚴格な規定がよいというような意見もあつたのでございます。たとえば、受給資格者の能力からみて耐えられないときというような規定がよいという意見もあつたのでございますが、それではあまりに受給資格者に酷だと考えまして、不適當と認められるときという程度に、本案ではなつておるのでございます。ただこの能力からみて不適當と認めますことは、必ずしも前職通りという趣旨ではないのでございます。たとえ、ただいままでは事務的な仕事をやつておりましても、本人は十分肉體的な能力ももつておりまして、ただいまのような、また今後の就職が非常に困難だというような時期におきまして、肉體的な勞務が、容觀的に判斷して、その人には適當だろうといつて紹介しまして場合には、必ずしも前職のみを理由にしましてはこれを拒み得ない。但し本人の能力からみて、とうていそういう仕事はできないという場合には拒んでもよろしいということになつております。第二號は、住所の變更または居所の變更を必要とする場合におきまして、その變更が困難であると認められますときというのでございまして、これはただいまのような日本の住宅事情から申しますと、こういう場合が相當あるのではないかと思つております。
 それから第三は、報酬がいわゆるプリーベーリング・ウエージというのでありますか、一般の報酬水準と比べて不當に低い場合、その他正當な理由があるときには拒んでもよろしいということになつておるわけでございます。それからこの給付の制限は、その拒んだ日から起算して一箇月間でありまして、一箇月間が過きますれば、また失業保険金をもらう資格ができてくるわけでございます。
 第二十一條の趣旨は大體以上の通りでございますが、實際これの運用は、個々の場合にあたつて非常にむずかしい問題があると思うのでございまして、私たちとしましては、これの一定の基準をこしらえまいて、實際の運用にあたります第一線の行政機關に示したいと思つております。しかしてこれの基準をこしらえますについては、後ほど申し上げます委員會等にお諮りしまして、十分各方面の意見を聴いてきめたいつもりでございます。
 それから第二十二條もやはり支給制限の一つでございまして、「自己の責に歸すべき重大な事由によつて解雇され、又はやむを得ない事由がないと認められるにもかかわらず自己の都合によつて退職したとき」、こういう場合は一箇月ないし二箇月の間におきまして、失業保險を受ける資格がなくなるわけでございます。
 第二十三條は、詐欺の場合につきまして、やはり支給制限の規定でございます。
 それから二十四條において、支給方法、支給期日等については政令で詳しく規定することになつております。
 それからもう一つ、二十六條では、失業保險金の標準としましては、所得税等の租税がかけられないということが規定してございます。
 それから二十八條には、失業保險の國庫負擔の規定がございます。「國庫は、保險給付に要する費用の三分の一を負擔する。」ということになつております。
 なおそのほかに事務費は全額國が負擔することになつております。これは他の社會保險に比べますと、健康保險は給付費については國の負擔は全然ないのでありまして、單に事務費の一部でございます。それから厚生年金につきましては、事務費の全部と、給付費の原則は十分の一、ただ炭鑛の坑内夫につきましてのみ十分の二といふような給付に對する國庫負擔があるのでありますが、失業保險は、それらに比べまして非常に危險率が多く、また金のかかる保險でありまして、特に國としましてこれだけ負擔をいたしたいという趣旨でございます。
 それから三分の一の國庫負擔のほかは、事業主と被保險者から保險料を徴収するわけでありまして、これは三十條に規定してございますように、被保險者、事業主、おのおの同額ということになつております。
 それから第三十一條に保險料率が規定してございますが、これはただいままでの社會保險では、主務大臣の告示等によつてきめておつたのでございますが、なるたけこういうものは法律で規定するの適當だという趣旨をもちまして、法律で規定いたした次第でございます。しかしその保險料率は、被保險者、事業主おのおのにつきまして標準報酬の千分の十一ということになつております。
 それから三十一條の二項以下に、こまごまと規定してございますが、一口で申しますと、この保險料率の變更は國會にお諮りしまして、法律變更の手續をとらなればならない。但し緊急の場合には、とりあえずこの失業保險委員會の意見を聴きまして、勞働大臣が變更しておくことができる。しかしその場合におきましても、次の國會におきまして正式に法律改正の手續をとらなければならない。こういう趣旨のことが規定しておるのであります。
 それから三十二條以下の保險料の義務者でございますとか報酬過多の保險料控除等については、大體他の社會保險と同様でございますので、説明を省略いたします。
 第三十九條に失業保險委員會のことがございますが、これは失業保險事業の運營に關しまして重要な事項を審議していただきますために、勞働大臣の諮問に應ずる機關として設けられるのでございまして、その構成は被保險者を代表する者、事業主を代表する者、公益を代表する者、おのおの同數でこれを組織するということにいたしておるのでございます。これは他の社會保険の委員會、また勞働基準法等にたくさんございます委員會等と、大體同じようなやり方でやつております。大事なことにつましては、十分こういう機關にお諮りするつもりでございまして、民主的な運營をやつていきたい所存でございます。
 第六章に審査のことがございますが、これにつきましては失業保険審査官でありますとか、失業保険審査會等の規定があるのでありますが、これも榮災保険等の大體こういう規定がございまして、特に御説明することはございません。
 第七章の雜則につきましても別に御説明することはありません。
 次に失業手當法でございますが、これは第一條にございますように、失業保険の被保険者が失業いたしました場合に、失業手當金または失業保険金を支給するということを規定しているのでございまして、この失業保険金というのは、第一條の第二項にありますように、失業保険法の特例としましての失業保険金でございます。先刻大臣から提案理由を説明いたしましたように、失業保険の方では資格期間としまして、六箇月の被保険者であることが必要とされますので、本法施行後六箇月の間は保険給付は始まらないわけであります。その間の繋ぎとしまして、この失業手當法でやつていきたい、かように考えておるのでございます。
 それで第二條に、失業手當金または失業保険金の支給を受けられます者について規定をいたしております。第一の條件としましては、離職の日まで繼續して六箇月以上失業保険に規定する事業所に雇傭されたことということでありまして、失業手當金の適用範圍としましては、結局失業保険法の適用範圍と同じ範圍にいたしたのでございます。これにつきましては、經過的に申しますと、實はいろいろの案がございまして、單に失業保険の適用事業のみにかかわりませず、いやしくも現在どこかに雇傭關係がありますものについては、將來離職しました場合に失業手當を支給しようというような案も研究されましたし、また現在おります失業者全部につきましても、公共職業安定所に出頭して、失業の認定を受けるという條件のもとに失業手當を支給してはどうかという案も檢討いたしたのでありますが、財政上の理由、また、ただいまのような日本に社會、經濟の状態からいたしまして、失業者であるかどうかを捕捉しますことが非常に困難だという點、いろいろの點を考慮しまして、失業手當の適用範圍は失業保険の適用範圍と一致するということにいたしたわけであります。それから失業保険の方におきましては、過去一年間に、飛び飛びでもよい、六箇月以上の掃保険者であればよいということになつておりましたが、こちらの方は繼續して六箇月以上ということにしたのでございます。これは失業保険としましての普通の資格期間をもつておりません者に、特別に失業手當を支給するのでもございますし、また失業保険法施行以後でございますと、これは保険料をちやんちやんと拂つておりまして、はたして本人が六箇月以上勤めたかどうかということがはつきりするのでございますが、この失業手當法の方におきましては、離職の日まで繼續して六箇月以上勤めておりますれば、必ずしも失業保険法の被保険者であることは要件としておりません關係上、そういうことを考え合わせまして六箇月以上ということにいたしたわけでございます。それからそういう人が、昭和二十三年の三月三十替までの間において離職したことということを要件にしているのでございます。すなわち三月三十一日以後の離職者につきましては、失業保険法の方で保険給付が始まり得ることになつておりますので、それまでの、三月三十日までの離職者について、この失業手當をやろうということにしたわけでございます。それで、あるいは御疑問が起るかと存じますので、特に御説明いたしますが、この第二號にございます三月三十日というのは、これはミス・プリントではありません。これは失業保険法の際説明を省略いたしましたが、資格期間の喪失であるとか、被保険者期間の計算等の規定からいたしまして、三月三十一日以後の離職者につきましては、失業保険金の支給が始まり得るのであります。それで、そういう人については失業手當はやらない。三月三十日までの間に失業保険金の方が始まらない者について失業手當金を支給するのだ、こういう趣旨でございます。
 それから第二條の初めに返りまして、そういう失業手當金を受けられます者につきまして、三月三十一日までは、すなわち本法施行後六箇月間は失業手當金という名前で支給いたしまして、これについては、あとで申上げますように、全部國の負擔ということになるのであります。ところが四月一日以後につきましては、保険經濟としましては相當積立金もあることではありますし、これについてはなお四月一日以後については、一般の失業保険も給付が始まつているわけでありまして、いろいろ考え合わせまして、失業保険金という名前で支給しまして、これについては普通の失業保険金と同じような国の負擔割合でやろうという趣旨でございます。
 それで第一條にもう一度返つて申し上げますと、この第一條にございます失業保険金というのは、失業手當金を受ける資格があります者について、四月一日以後は失業保険金という名前で支給するということになつておりますが、そういう失業保険法の特例としての失業保険金を言つているようなわけでございます。
 その他につきましては、大臣の提案理由の御説明でも申し上げましたように、大體保険法と同じような建前でございますが、ただ手當法の方が若干、いろいろな點で條件が嚴格だということでございます。すなわち第五條の支給金額につきまして、保険法の方では、標準になりますのは、標準報酬日額の百分の六十でありますのに、こちらは百分の五十五であります。彼が最高が百分の八十であるのに對しまして、これは百分の七十五であります。彼が最低が百分の四十であるのに對して、これは百分の三十五であります。そのように少しずつ支給金額が少いということになつております。
 それから第七條の待期につきまして、保険法の方では十四日ということになつておりますが、これは三十日間ということになつておりまして、こちらの方は失業保険が適用されます前の、すなわち被保険者でなかつた期間もありますので、はたしてそれが六箇月間雇われておつたかどうかということの調査にも、若干時間もかかるわけでございますし、いろいろの點を考え合わせまして、三十日間ということに待期を延したような次第であります。
 それから第八條の支給日數につきましても、保険の方で百八十日でございますが、こちらは百二十日ということになつております。支給の制限につきましても、保険の方よりも若干嚴格な規定が第十條、第十一條に規定してあります。
 それから第十六條に費用の負擔が現定してございます。これは先刻もちよつて觸れた點でございますが、三月三十一日までの失業手當金ということで支給しますのは全部國が負擔しますが、四月一日以降の失業保険金という名前で支給します分については、三分の一のみ國が負擔いたしまして、あとは失業保険法と同じように事業主、勞働者の保険料の中で負擔してまいる、かようになつておるのであります。以上が大體法律の規定でございます。
 それから、これの豫算につきましては、追つて豫算案としまして國會に提案されるわけでございまして、未だなお準備中のものでございますが、ただし本年度につきましては、さきに閣議決定をもちまして、船員の分をも含めまして給付費なり、事務費なりの總額が十五億ということに決定されておるのでございます。それで船員關係の方に若干割かれまして、こちらの方の關係では十四億五千萬圓餘りになる豫定でございます。その中に失業手當金の給付に必要なる費用と、必要なる豫備費等が計上されることになつております。それから明年度以降、平年度におきましての失業保險の經費が、大體どんなふうになるかという概算でございますが、それの前提といたしまして、被保險者の數が大體どのようになるかということを申し上げたいと思うのでございます。この法律の適用範圍としましては、健康保險なり厚生年金なりの被保險者と範圍を一にしておるということを申しましたが、それらの民間の者の適用を受けております數は、若干脱漏等もあると思いますので、現在の適用の被保險者數よりも少したくさん見込みまして、大體四百七十萬程度だと概算いたしております。それで最小限度の適用範圍としましては四百七十萬と相なるわけであります。それから官公吏等につきましては、先刻御説明のように、適用除外をなすことができることになつておりますが、大體の數を申しますと、官公吏の現業が約百二十萬程度でございます。それから現業以外の官公吏が、これも概算でございますが、約八十萬程度でございます。それで現業、非現業含めまして官公吏全部合わせますと、六百七十萬ばかりに相なつております。それから序ででありますから申し上げますと、船員については別個の保險ということを申しましたが、船員の數は大體十四萬程度だと思います。
 それで被保險者の範圍を、かりに民間だけに限りまして四百七十萬といたしました場合には、この保險料の千分の十一という保險料率の出ました計算の基礎としましては、失業者を被保險者數の一〇%、それから受給者豫定數は被保險者の五%と見ております。すなわち、失業者の豫定數は、被保險者を四百七十萬と見ました場合に、いつもその一〇%の四十七萬の失業者の豫定數、それから受給者といたしましては、その失業者の中で資格期間でございますとか、給付日數でございますとか、待期でありますとか、給付の制限とかそういうふうなことで失業者の全部が受給することができないわけでございまして、失業者豫定數の五〇%が受給者だという假定で計算をいたしております。その結果受給者豫定數は被保險者數に對しまして五%、すなわち被保險者四十七萬と見ました場合には、二十三萬五千人ということになるのであります。
 それから標準報酬の月額がどの程度になるかは、これは事業主からの申告をまつてわかるわけでございまして、今後の經濟事情等によつて變更するわけであるとは思いますが、一應千八百圓というのが標準報酬月額の平均額だと假定をいたしております。そうしまして給付の額でございますが、これはスタンダードは標準報酬月額の百分の六十でありまして、上の方は百分の四十まで下がる、下の方は百分の八十まで高めるということになつておりますが、むしろ下の方の高められる方が多かろうという前提で、標準報酬月額の六六%として計算いたしております。そういたしますると千八百圓の標準報酬月額に對しまして、給付月額の平均は千二百圓と相なります。そういたしますと、年額としましての給付支給の總額に三十三億八千四百萬圓に相なります。それでその三分の一が國の負擔であり、三分の二が事業主と勞働者からの保險料ということになるわけでございます。それで國庫負擔として計算いたしますと、ただいま申した三十三億八千四百萬圓の三分の一、十一億二千八百萬圓でございます。その他に事務費、これは假定でございますが、事務費を給付支給總額の約一割と見まして三億と見ますと、國庫負擔の總額は十四億二千八百萬圓であります。さらに官業なり公共團體の現業のみを被保險者に入れました場合には、被保險者數は六百萬になる見込であります。さらに現業以外の官公吏も入れました場合は、被保險者は六百七十萬になるわけであります。その場合が、國としましての保險經濟におきましての負擔は一番大きい場合でありまして、この際には先刻申したと同じような手續で計算をいたしますと、給付支給總額が四十八億二千四百萬圓になりまして、國の負擔としてはその給付費の三分の一であります十六億八百萬圓、それから事務費の四億五千萬圓そのほかに六百七十萬人の中に官吏官業が百五十萬入つております。それで公共團體については、これは公共團體の負擔になりますが、官吏官業の百五十萬人については、事業主としましての保險料負擔額が要るわけでございまして、これが三億六千萬圓でございます。それで保險給付費の三分の一と事務費のほかに、事業主としましての保險料負擔額全部合わせまして國の負擔が二十四億一千八百萬圓、かように相なります。
#5
○加藤委員長 ちよつとお諾りしますが、引續いて午後開會して、質疑なり御意見なりをお述べになることを繼續しますか、それとも今日はこの説明を聽いて、質疑の順序等をきめて、この次からにしますか。もし御都合で、質問の準備ができておれば、午後引續いていたしたいと思いますが、いかがいたしますか。
#6
○川崎委員 失業保險法案竝びに失業手當法案は、現内閣の社會保障制度の一環としての重要性をもつておると私は思うのです。また片山内閣の勞働對策、特に企業整備を前にしての失業對策の意味も考えられますので、民主黨としては、本委員會の冒頭に片山總理大臣の出席を願いまして、失業對策についての片山總理大臣の信念のほどをお伺いをいたし、失業對策の綜合的な對策をまずお伺いをいたしたいと考えておりますので、他黨において御贊成を得ますならば、綜合對策からまず入つて、失業保險法のこまかい質問はこれに續いて行わるべきであろうと考えております。
#7
○加藤委員長 ただいま川崎君からお述べになりましたように、まず總理大臣の出席を求めて、現内閣の總合的な意見を聽いてから、順次事務的な内容に質疑なり意見なりを進めていきたい、こういう御意見でございますが、そういう順序に運ぶことに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○加藤委員長 それでは總理の方としても、多少の準備もあるだろうと思いますが、次會は金曜日にすることにいたします。もし委員部の方と話し合いまして、速記などの都合ができるようならば、定例豫定日である金曜日より先に開會することがあるかもわかりませんが、そのことを豫め御了承おきを願いたいと思います。そういう場合には、もちろん公報をもつて御通知いたします。今日はこれをもつて散會いたします。
   午後零時八分散會
ソース: 国立国会図書館
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