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1947/09/19 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第14号
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1947/09/19 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第14号

#1
第001回国会 労働委員会 第14号
昭和二十二年九月十九日(金曜日)
    午後二時一分開議
 出席委員
   委員長 加藤 勘十君
   理事 辻井民之助君 理事 川崎 秀二君
   理事 橘  直治君 理事 原   侑君
   理事 相馬 助治君
      荒畑 勝三君    菊川 忠雄君
      前田 種男君    山花 秀雄君
      小川 半次君    小林 運美君
      寺本  齋君    橋本 金一君
      松本 一郎君    山下 春江君
      倉石 忠雄君    村上  勇君
      吉川 久衛君    河野 金昇君
      綱島 正興君
 出席國務大臣
        内閣總理大臣  片山  哲君
        勞 働 大 臣 米窪 滿亮君
        國 務 大 臣 和田 博雄君
 出席政府委員
        勞働事務官   上山  顯君
 委員外の出席者
        專門調査員   大橋 靜市君
        專門調査員   濱口金一郎君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 職業安定法案(内閣提出)(第三六號)
 失業手當法案(内閣提出)(第五二號)
 失業保險法案(内閣提出)(第五三號)
    ―――――――――――――
#2
○加藤委員長 これより會議を開きます。
 この委員會に付託されております職業安定法案を議題として討論に付します。辻井民之助君。
#3
○辻井委員 本案に對し各派より、次のごとく一部を修正し、なお附帶條件を付して賛成したいと存じます。修正の條項を讀み上げます。二箇所修正したいと思います。
 第一箇所は第二十條(イ)本條文中「業務の部門」とあるを單に「業務」と改正する。(ロ)本條文第二項を削除する。
 修正の第二項、第三十三條第二項のあとに「但し、勞働組合法による勞働組合に對し許可をなす場合には、この限りでない。」と附加すること、以上のごとく修正したいと思います。
    次に附帶條件
 一、勞働力の需要供給の調整等、勞働計畫の立案にあたりては、勞働省を中心として各産業廳との連絡を密にし總合計畫を樹立すること。
 二、職業に關する行政の特殊性に鑑み、職業關係行政官の任用その他の人事に關しては、官吏制度におけるがごとき資格、經驗等にとらわれることなく、客觀的に考慮の上、人材の登用をなすべきこと。
 三、職業安定委員會の機構竝びに運用については、單なる形式に終らざるよう考慮を拂い、民主的なる實際活用に努めること。
 四、都道府縣知事に對する監督にあたりては、地方自治法との調整に愼重なる態度をとり、まさつしないよう特に考慮を拂うこと。以上であります。
 なお以上の修正案竝びに附帶條件につきましては、既に數囘の委員會において論じ盡されておりますので、その理由は省略いたします。以上の修正竝びに附帶條件を付しまして原案に賛成いたしたいと思います。
#4
○加藤委員長 ただいまの辻井君の修正竝びに附帶條件の問題につきまして討論の通告はございません。討論を省略いたしまして、ただちに採決にはいりたいと存じます。御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○加藤委員長 御異議ございませんければ、ただいまの各派一致の提出にかかる修正案に賛成の方の御起立を願います。
    〔總員起立〕
#6
○加藤委員長 起立總員よつて本修正案は決定いたしました。
 次に、本案の修正部分を除いた部分を原案の通り可決するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○加藤委員長 御異議なしと認めます。よつて修正を除きたる部分は原案通り可決いたしました。
 次に辻井民之助君の提出にかかる各派共同一致の附帶決議に賛成の諸君は起立を願います。
    〔總員起立〕
#8
○加藤委員長 起立總員、よつて本附帶決議は決定いたしました。
 なおこの際お諮りいたします。衆議院規則第八十六條による報告書の作成については、委員長に一任していただきたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○加藤委員長 御異議なしと認めます。よつてさように決定いたしました。
 これで職業安定法は決定いたしました。
    ―――――――――――――
#10
○加藤委員長 次いで先般來繼續しております失業手當法竝びに失業保險法の質議竝びに御意見の開陳に移りたいと存じます。質問者が多數ございまするが、總理に對しての質問の通告順は、今日は倉石忠雄君の順序になつておりますから、倉石君から御質疑をしていただくことにいたします。倉石忠雄君。
    〔委員長退席、辻井委員長代理著席〕
#11
○倉石委員 過日の本委員會において、同僚川崎君の御質問に對して答えられて片山總理大臣は、失業問題に對する政府の考え方は、つまり國民生活の安定を考える、職業安定をなすには、經濟機構の合理化を考えなければならない。從つて復興事業を起すとか、輸出産業を盛んにするとかいうことをしなければならないのだ、こういうふうなお話があつたのでありますが、先般來ここで論議されておりますような失業者を出さなければならないような企業整備、あるいは産業合理化を行わなければならないとされる主たる原因として、政府はどういうことを考えておいでになるか。この點をまず伺いたいと思います。
#12
○片山國務大臣 御承知のように、戰爭のためにわが國は非常な損害を受けまして、經濟の上において、産業の上において、社會生活の面におきまして非常な打撃が、今現實として現われておると思うのであります。すべての復興はまずこの荒廢せる焦土を整理して、それからその上に建てなければならないと思つておるのであります。先般も申し上げました通り、國民生活を向上し、働きたいと思う者、その能力ある者にその機會を與えるためには、失業者を吸收し、勞働力を十分に與える經濟事情を、まずつくり上げていかなければならないのであります。その意味におきまして、産業を發展せしめ、産業の充實をはかることが、一番大きな問題であるとわれわれは考えておるのであります。それを中心として、すべての計畫を立てていかないことには、インフレも高進いたしますし、また失業者もやむを得ず殖えてくる、こういう状態になつてくると思うのであります。私どもはその意味において、失業者を街頭に多く放り出す政策を避けまして、企業の整理を一面においてやりつつ、企業の合理化を促進しつつ、産業發展に導いていかなければならない状態であると思うのであります。今は特別なる經濟状態である。この特別なる經濟危機を突破するための政策を立てていかなければならない、こういうふうに考えておるのであります。御質問の要點たる、失業者が多く出てくるような状態になるということは、一に戰爭の被害、戰爭の打撃が、今現實となつて現われて、それが經濟を、産業を、社會状態を混亂の状態に陥れつつあるものであるということを考え、これを整理し、それを再建し、産業の興隆をはかつていくというところに重點をおいて、失業者を多く出さないようにしていかなければならない。こういうような方向に向つて進んで行こうと思つておる次第であります。
#13
○倉石委員 了承いたしました。そこで最近いわゆる民間貿易が再開されまして、外國人の商人とわれわれとが、種種な點について話合つてみた結果は、政府當局も御承知のように、日本の輸出貿易の花形であるとわれわれどもが考えておりました雜化ですら、對米為替レート二百ないし三百でなければ引合わないというふうなことが現われてきた。われわれがこういうことを考えて見ましたときに、日本の産業というものの前途に、相當な心配の種をもたせられたの点であります。八月二日の本委員會において、吉川君の御質問に對して米窪國務大臣は、日本の經濟面における生産費中、勞賃がその約五十%を占めておるということを説明されております。われわれはこういう状態であつたならば、この勞賃の點からだけ考えても、外國と太刀打ちをして貿易をするその製品をつくるなんということは、非常な困難であるということがわかるのであります。勞賃が高いということの原因は、多くあるでありましようけれども、その主たる原因としては、私は生活費の昂騰だと思います。農民の方に言わして見ましたならば、つくるところの物はことごとくマル公で供出させられ、そうしてそのできた品物の多くは統制であります。そうしてこの農業經營をする場合に使うところの品物はどうかと言えば、マル公じやはいつてこない。御承知のように地下たび一足買つても三百圓もするというようなものを買つて、米や野菜をつくつておつたのでは、農民がマル公で物を出して、引合うはずはないのであります。しかしながら今度は、そういうものを買つてつくつておる農民の品物も、まわりまわつてやみで流れる。そいつを消費する、いわゆるやみ生活をしておる勤勞階級というものもまた、やりきれない。こういうのが今日の實情なのでありまして、そこで私が政府にお尋ねをいたしたいのは、まず問題になつておりました千八百圓のベースということでありますが、この千八百圓のベースについて和田安本長官は、二千圓くらいでもいいではないかというようなことを言われておつたのであります。また米窪國務大臣が名古屋の演説會において、企業家の方で支拂い得る能力があるならば、二千四百圓でもいいじやないかというようなことを言つておられる。つまり千八百圓ベースというものを、今日のような、日々に物價の高騰していく現状において、これを維持することができるか、いつまでこれを保つていくことができるかどうかということに對して、政府の所見を伺いたいのであります。
#14
○片山國務大臣 經濟上の問題はなかなか微妙であり複雜でありますから、先の先のことまで豫想したり、あるいは假定的にこれを話すというようなことは、かえつていろいろの影響を來すことになると思うのであります。まず現在の状態を基本として考えていかなければならないと思つているのであります。御承知のように勞働の力、總力と申しまするか、それと、生産の結果との間の釣合いもうまくいつておりませず、今まで一人でかかつて仕上げたものも、今日は三人がかりでやらなくてはならないというような状態でありまするし、三人がかりでやりました仕事の總體の成績も今までのようにあがつていない。それが半分となる、三分の一となるというような状態でありまするから、よほどその間の調節をはかつていかなければならないと思うのであります。そこで政府として考えましたることは、勞賃と物價の關係を現在の産業の状態、經濟力とにらみ合わして十分調整し。その均衡をはかつていかなければならないと思つているのであります。賃金を千八百圓のベースとする。物價はそれ以上上つているが、なぜそこに不釣合いな状態ができたかと申しますると、それがわが國の經濟の病根であつたと思うのであります。それが釣合つてまいりますれば、經濟は平均の状態に進み、釣合いがとれてくるのであります。釣合いがとれざるわが國のこの經濟の非常な疲弊せる、まさに破綻に進まんとするような状態を考えて、そしてその釣合いを考慮していかなければならない、かように考えるのであります。そこでこの千八百圓の、ベースでありまするから、その基準というものを守つていかないことには、このわが國の經濟の病状のままでは、また物價は上つてくるというような不均衡状態のままでまた進んで行く、こういうような状態が來るのではなかろうかと思うのであります。それでありますから、物價の上りを止めようとするならば、この病状がまさに深刻でありまするわが經濟の状態に鑑みまして、千八百圓のベースはやはり守つていかなければならない。これを上げるとまた物價が上つてくる、そこに不均衡を來すわが病状があると、こう私は思つているのであります。そういう意味から申しまして、この千八百圓の基準をきめましたることは、今これを政府みずからが破るというような考えはないのであります。これを一般にも十分に考慮願いまして、そしてこの賃金と物價の悪循環を取り除いて、その平衡を十分に保持するように進んでいかしめる、そしてこの危機を乘り切つて初めて平常なる状態に進んでいく。先のことはその後において健全なる状態になりましたるときに、初めて考慮さるべき問題であるが、現在においては今申しましたような状態で、千八百圓のベースはどうしても守つていかなければならないと思つているのであります。これはくぎづけではありませんので、その産業自體において採算がとれ、また賃金を千八百圓より以上に建てることもまた適正なりと考える産業においては、各般の状況を考慮されまして、賃金を考慮さるることは差支えはなかろうと思つているのであります。そういう意味から米窪勞働大臣が、お示しのような話をされたのではなかろうかと思いまするが、それは本人にひとつ聽いていただきたいと存じます。
#15
○米窪國務大臣 最後の點で總理大臣からの御答辯を補足いたします。私が二千四百圓と言いましたか、二千三百圓と言いましたか、數字ははつきりした點は記憶しておりませんが、いわゆる千八百圓に健オーバーする賃金をもらうこともあり得るということは、給與審議會で一應全國の重要なる業種別三十五に對しまして平均をとつたところが、千八百圓ベースというものが出てくる、その三十五の業種別の中には千四百圓というものもあれば、二千三百圓あるいは二千四百圓というものもある。私はその意味におきまして、たとえば機器などというものについては、二千三百何十圓という平均賃金が給與審議會で政府側から示してある、その意味のことを申し上げたので、二千三百圓をもつて物價改訂のための標準賃金でよい、こういう意味で申したわけではないのであります。
#16
○倉石委員 ただいまの御説明によりまして、政府が千八百圓ベースを當分の間維持される覺悟であるということを了解いたしました。今われわれの日常生活品が非常に高くて、それがために生活に苦しんでおるのである。つまり今のインフレーシヨンといわれる現象も、日本では物資の缺乏が非常に大きな理由だと私は思うのでありますが、その生産が上らない、從つて物資が缺乏しているということの大きな癌であると考えるものの一つに、私は賠償の未決定ということを數えたいのであります。御承知のように九百三十七という工場が賠償に指定されている。これはいわゆるポーレー賠償案ですが、最近新聞の傳えるところによりますと、ストライクというアメリカの陸軍省の視察團長がアメリカにおいて、ポーレー賠償案は慘酷であるから、何とか改めなければならないという意味のことを話をされたという。それに對してまた一方國務省筋としては、ストライクの意見は個人的意見であるというふうに、これを否定されておる。われわれはいずれにいたしましても、賠償工場に指定されている、その工場を持つている者の方から申しますと、賠償工場に指定されて、そうしてその工場を皆もつていつてしまうかというと、そうではないのであります。工場全體を取はずすことのできないものもたくさんある、現に化學工業のごときは、取りはずすことなどはとうてい不可能の部分が非常に多いのでありまして、しかもそれらは現在許されて、原料さえ出していただければ、すぐにその日からでも操業がされるというものもたくさんあります。たとえば苛性ソーダ工場のごときはそうでありますが、ところが今度はその苛性ソーダの電解装置二十四萬トンの設備をもつておるものが、今八萬二千トンしかいけないということを指定されております。ところが今その八萬二千トンもどの會社、どの工場等は操業を許されておるという的確な内容のお示しがないものでありますから、この化學工業の業者というものは、手をあげて決定を待つておるというのが現状であります。しかもこういうような經營面から言えば、ボロ會社に属する會社に對して、吉田内閣以來運轉資金というものを遠慮なく貸しておつた。私は石橋大蔵大臣に、ああいうことが日本のインフレーシヨンの大きな原因であるから、早くなめなければいけないということをしばしば申し上げたのでありますが、こういうことが未だに行われておる。従つてそういう會社はどうするかといえば、そこで極端に言えばやみの品物をつくつて、たとえば彼らのもつている技術をもつてサツカリンをつくるとかいうようなことをして、これを今度はほかの方法でやみ流しをして、とにかくそれで生きていられるのであります。こういうような會社こそ、私は早くゆいわる企業整備の爼上にのせて、そうして賠償というものの内容を決定して、これを取立てられて、そうしてその殘りの日本の産業水準というものを、はつきりきめていただきましたならば、日本の産業というものは、それを元手にして再編成の計畫ができるのであります。しかるにこの賠償が、きまるがごとくきまらざるがごとき態度をとられておる。日本の産業はとうていこれでは囘復してこないのであります。この賠償の決定と、日本に許さるべき産業水準をきめてもらうということに對して、政府はどういうふうな手を今まで打つておられたでありましようか。お差支えない程度に、われわれにお話を願いたいと思うのであります。
#17
○和田國務大臣 お話の點は私まつたく同感であります。日本の經濟が安定しない一つの大きな要素が、おつしやつたように賠償の未決定にあるという點は、まつたく同感でありまして、賠償問題につきましては、主として賠償の委員會をつくりまして、もとは終連が主になり、實際の仕事は商工省が主になつて、それぞれの交渉をいたしておるのでありまして、終連及び商工省の方で、やはり依然としてその賠償の問題につきましては――それはもとより經濟安定本部も、そういう研究はいたしておるわけでありますが、早くきまりまするように、また實際問題として指定はされても、それについてある程度使用を許してもらうことを懇請いたして努力はいたしておるのでありますが、まだ非常に不安定でありますので、その點につきましては、できるだけそれが早く安定するようにやつてまいりたいと思つております。お話の點はまつたくわれわれとしても惱んでおるし同感であります。
#18
○倉石委員 ただいま長官のお話によりますと、終連とか商工省とかいうようなお話でありましたが、私はもう少し日本の政府として大きな力で、やはり向うにあたる必要があるのじやないかと思うのであります。なるほど賠償問題などは、いろいろ國際的な政治的考慮が加えらるべきものでありましようから、困難な問題はあるでありましよう。しかしながらわれわれは、この日本に對して許すべき産業水準というものの枠がきまらない以上は、企業整備などということも、あるいはここで問題になつております失業保險の問題なども、ほとんどこれは枝葉末節の問題でありまして、この産業水準を早くきめてもらつて、そうして極端に言えば、われわれが連合國中のある一國と協力して、その經濟ブロツクの一環として、われわれが生きていかなければならないということは、もうすでに運命づけられておるのでありますから、その國の經濟と日本の經濟とがどういう程度のコネクシヨンをもつていくかということを、はつきり日本の國民に示していただくことが、日本を早く復興させることであり、またわれわれを援助してくれる國にとつても、それだけ早く利益になることだと私は思うのであります。しかるにこれをほつたらかしておかれるということが、日本の産業が行詰つておる一番大きな癌でありますから、私はただいま和田長官の言われた程度のことしか、政府がやつておいでにならぬとしたならば、もう少し強力に――日本のあり方はわかつておるのでありますから、速かに日本に對して、この産業水準を決定してもらうということの努力を政府に要望いたしたいのであります。そうしてこの日本産業の水準が、たとえば一時新聞に傳えられたように、昭和五年ないし十一年くらいな程度であるとか何かといわれておりますけれども、そういうような産業水準というものをきめられて、そこで出てきたところの産業再編成計畫によつて、はじめて日本にはどれだけの生活必需物資が使われるかということがわかつてくるのでありますから、それを前提にして、そうして耐乏生活なら耐乏生活を要望し、そうしてその耐乏生活の結果、いわゆる飢餓輸出制もして外貨を獲得するというふうなことを國民に要求されて、はじめてそれは意味があるのでありまして、日本の産業水準がどの程度になるかということの考え方がわからないで。國民生活をどの程度にしなければならないかということがはつきりしないのに、いたずらに耐乏生活を唱えられるということは、せつかく總理大臣が常に國民に教えらるるところでありますけれども、これは私は無意味だと思う。どうかひとつこの産業水準の決定ということに對して、ぜひ政府當局の御奮發をお願いしたいのであります。
#19
○和田國務大臣 ちよつと私の説明が足りませんので誤解があつたと思うのでありますが、賠償問題については極東委員會の案とか、ちやんときまつたものがあるわけであります。それがいつどれだけのものが取り去られるかということについて、はつきりはいたしていない。それから日本に許された生活水準というものについては、結局昭和五年、九年という一應の水準がきめられておる。われわれとしては、そこの水準まで到達するのにさえ、今の日本の國力をもつてしては非常な努力をしなければいけないというのが見透しであります。その點ははつきりいたしておるのであります。われわれとして今經濟安定本部で長期計畫を組んでおりますのには、そういう水準に到達するのに一體どういう要素を考え、どういう方法によればやれるかということを、最近の囘轉資金輸入資金を一應の中心として考案をいたしておるのでありまして、許された生活水準については、これはもうすでに決定されておると思うのでありまして、それに到達するのにも、今のような日本の經濟が破壊されてしまつておる中では、なかなか努力を要し、相當の蓄積がなければできていかないのであります。その點についてはわれわれは、ただむやみやたらに耐乏生活を要求しておるのではないのでありまして、最近許されました五億ドルの囘轉資金というものを、これを一應の中心とし、それを出發點として、それが同時に長期の計畫に結びつくというような構想でいろいろと策案をいたしておるのであります。さように御了承を願います。
#20
○倉石委員 くどいやうですが、長官にもう一遍念を押してお尋ねしたいのですが、賠償内容も決定し、産業水準も明確に、この程度にすべしということを、はつきり指示を受けておるのでありますか。
#21
○和田國務大臣 賠償の問題については、私が申し上げましたのは、ポーレー案であるとか、極東委員會の案であるとかいうものが一應きまつておるのでありますから、それを無視するわけにはいかぬ。それが一應、われわれとしていろいろものを考える前提になる。ただその内容を具體的に、何を撤去するか、撤去するにはいつ撤去するかという點については、これは全然まだ未決定な點があるのであります。そういう點について、あなたのおつしやるように、私はまだ不安定なものがあるということを申したのであります。
#22
○倉石委員 産業水準は。
#23
○和田國務大臣 産業水準の場合は、私は昭和五年、九年のあの水準というものが、一應示された水準ではないか、かように考えております。
#24
○倉石委員 總理大臣がおいでにならないようでありますが、失業問題と當然關連してわれわれが考えなければならないと思つておりました問題でありますが、總理大臣は施政方針の御演説に際して、電源開發その他公共事業の開發新計畫というようなことを述べておられますが、これに對する具對策を政府は今おもちでありましようか。
#25
○和田國務大臣 電源開發の問題は政府といたしまして、やはり非常に力を入れて考えておる點でありまして、長期の計畫等につきましても、經濟安定本部で一應個々のものについても檢討いたしており、ある程度の案はあるわけでありますが、これは御承知のように、ちよつと速記を止めてもらいたいのですが……。
#26
○辻井委員長代理 速記を止めて……。
    〔速記中止〕
#27
○辻井委員長代理 速記を始めて……。
#28
○和田國務大臣 いろいろやつておるわでけありますが、ただいまのところ電力を新しく大きく開發していくということについては、そういうような状態にあるのであります。
#29
○倉石委員 先ほど來片山總理大臣のお話を承りましても私は同感でありまして、いわゆる産業の合理化、企業整備というようなものは、一日早ければそれだけ國家の産業再興のために利益になるのでありまして、これはしなければならぬ。そこで一方同様な事業に携わつている官業の方はいかがでありましようか。たとえば鐵道とか、そういつた事業に對する、あるいはまた政府がしばしば公表しておられますような行政面における整理、こういう點について政府は具體策をもつておられるかどうか、伺いたい。
#30
○和田國務大臣 お話の點でありますが、これは經濟緊急對策の中にも述べておきましたように、官業その他の點についても、やはり人員の配置轉換と、その合理化を行うということを掲げておりますので、それらの點につきまして、追加豫算の問題なんかと關連いたしまして、大藏省その他と相談をいたしているのであります。政府としましても、やはりいろいろの面で合理化の線を進めてゆかなければならぬだろうと考えている次第であります。
#31
○倉石委員 ただいまの御説明によりますと、政府は考えておられるという程度でありまして、この官業に對する整理というようなことは、具體化しておらないというふうにしかわれわれには考えられないのでありますが、今はこういうことを率先しておやりにならなければならない緊急の時期であります。政府は速やかに、この非經濟的の官業の經濟方針については、いわゆる民間事業の企業整備と同じような考え方で、これを一日も早く斷行せらるる必要があるということを申し上げたいのでありますが、要するに今日の日本は、私どもから大觀いたしましたならば、働くポストよりも人間が非常に多いという結果に、遺憾ながらなつているのであります。それでありますから、私どもが先ほど申しましたような、貿易が再開されまして、外國製品と太刀打ちをするというような場合に、先ほど例を申し上げましたが、米窪國務大臣の御説明にあつたように、經濟面における生産費は勞賃が五〇%を占めているという實情でありますから、こういう一點を考えただけでも、外國製品と太刀打ちをするということは、國際マーケツトにおいては非常にむずかしい點であります。そこで企業整備の必要なことは、勞働力の問題ばかりではないのでありますが、この勞働力の問題というものが、企業整備のうちの非常に大きな部門を占めてくるのであります。しかしながら先ほど申しましたように、失業保險などというものは、これは一種の單なるいわゆる一つの社會政策の現れに過ぎないのでありまして、根本的に國民全體に働くポストを與える、いわゆる國民全體のフル・エンプロイメントというものが、必要だと思うが、政府はそういつたような全般的な、遊んでいる者をなくするというような方法について、先ほどお話のあつた電源開發もその一つでありましようが、社會黨中心の内閣でありますからそういうフル・エンプロイメントの問題については專門家であられるのでありますから、何かそこに政府は案をもつておられるのではないかというふうな氣がするのでありますが、いかがでありましようか。
#32
○和田國務大臣 お話の今の日本の雇傭の構造の點でありますが、これは非常に根本的な問題だろうと思うのであります。私たちもお話のように、ただ失業保險をするとか、失業手當をするとかいう面だけでもつて、こういう雇傭の問題を取扱つておるのではありません。やはり日本の經濟全體として雇傭の問題を取扱つておるのでありまして、やはり國民の所得、それから國民の生産物の生産量といつたような全體をにらみ合わせて、どれだけの人間が一體將來日本の經濟囘復に連れて、その雇傭の面においては吸收されてくるか、こういう點についての案は、ただいま安定本部で出しておるのでありまして、經營の合理化ということをいいましても、それはただちに人員整理ということを意味するのではないのであつて、やはりあなたのおつしやいますように、設備の面の合理化もあれば、經營内容自體の合理化もあるのでありまして、できるだけ多くの人が高い生産性をもちながら、そうして日本の經濟の囘復というものを將來へ向つて進めていく、こういう立場にやはり立つております。しかし今の日本の状態は御指摘のように、一面では雇傭人の水ぶくれという點も私はあると思うのであります。そういう點についての合理化という問題も、ただちにそれが企業の人員の整理という形でなくして、配置轉換であるとかいろいろな點においてやはり行われ得る、またそういう方向への努力をいたしていきたい、新しい雇傭の機會も與えていく、こう考えておるのであります。そういう立場からわれわれとしては、日本の雇傭構造についての大體の案というものを一應は考えてみておるのであります。二十三年から五年後の昭和二十七年というものを一應の目安にいたしまして、そうしてそこで一應最低の安定構造に雇傭の面からいつても達する。從つてその場合においては、雇傭の構造は日本に許されておる昭和五年、九年ごろのものとほぼ同率な就業と失業とをその場合においては生ずる、そういうように一應考えておるのであります。私の方としては、完全雇傭というその理論は、今の日本においてはとうてい實行のできない――わずか三年、五年のうちに完全雇傭という形のものが實現されるとはとても考えませんが、できるだけ今言いましたような立場から、五年間における日本の經濟が、一應の安定帶に達するときの雇傭の面からの構造をも、今言いましたように考えて案を立てておる次第でございまして、經濟安定本部におきましては、物的な消費面と同様に竝行して、そういう人間の方面における案も一應つくつておる次第であります。いろいろ細かい數字的なものもございますが、考え方だけ御紹介しておきます。
#33
○倉石委員 事業經營者の方に立つたり、また働く人たちと一緒に長い間生活をした體驗をもつておるのですが、はなはだ失禮な言葉かもしれませんが、米國などのあの訓練を經た勞働者諸君と、日本のまだ最近組合を結成されて、終戰後特に大きくなつた勞働者諸君との間には、いろいろな面において非常に劣つておるところが多いと思うのでありますが、私は一緒におつてそう思うのは、勞働者諸君に企業ということに對するイントレストを、もう少しよけいもたせることは、どうしても必要だと思う。そういう意味から、外國でやつておりますような勞働銀行などというものをつくつて、そうしてこの勞働銀行を中心にして、勞働者階級の諸君が、このいわゆる投資というようなことに對して興味をもつようにさせるということは、この企業の面において非常に重要な役割をつとめておる勞働というものと、深い關連をもたせるに非常にいいことだと思うのであります。こういう意味において、日本でも勞働銀行というようなものをつくられたらどうか、政府當局はそういう御意思はありませんでしようか。
#34
○米窪國務大臣 倉石さんの御質問のうち、その御質問の目的とするところは、日本の勞働者が企業あるいは經營に對する認識を強く把握しておらない、それに對する知識がないので、自分の立場からのみ出發する考えから要求をするという場面が多く起る、こういうことと私は解釋しております。そういう缺點を是正する意味において、勞働銀行というようなことを一つのテーマとして出されたと思いますが、現在の日本の金融状態から見て、私はまだ勞働銀行というようなものは日本では尚早ではないかと考えております。しかし、さればといつて、日本の勞働組合運動をしておる者、あるいは組織されておる勞働者が、企業あるいは經營の點について學ぶべき、研究すべき點が多々あることは、私はその必要を認める。その點については私は今日腹が減つており、乏しきにたえておる勞働者に對しても、なおかつ生産闘爭に邁進してもらいたいということで、あるいは各企業ごとに經營協議會を開くとか、あるいは經濟復興會議をもう少し利用するとか、あるいは講習會等を通じて勞働者に企業の實情を知らせるとか、あるいは勞働者に勞働の統計調査というようなことに對しての協力を求めるとか、こういつた方法によつて勞働者に企業の實體を把握させるような助力を政府はしたいと考えております。
#35
○倉石委員 米窪國務大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、米窪さんは、昭和二十一年の十二月一日の「實業之日本」という雜誌に、完全雇傭の問題について書いておられるのでありますが、その中で、完全雇傭の問題を「例のニユー・デイール・ポリシイとして、國家の基本的政策として取上げられている。すなわちアメリカのごとく豐富の企業資源と勞働人口を所有しながら、その全的活用は從來の資本主義經濟機構のもとでは發揮することができなくて」云々ということを書いておられる。それからずつとしまいの方に「平素わが黨の主張する高度の社會主義計畫經濟を、この失業問題解決にも適用する以外に方法はないと確信する」ということであります。そこで先日川崎君の御質問の中に、社會主義政策の問題があつたのでありますが、私は今日こういうような重大な時局でありますから、政府はなぜその確信しておられる社會主義政策を、まつ向から掲げられて實行されないか。私たちは社會黨が選擧で第一黨を占めたそのときに、われわれはいかなる態度をとるべきかということを協議したときに、私などはまつ先に片山内閣を主張した一人であります。それはどういうわけであるかと申しますれば、なるほど議會で第一黨であるからという、それを尊重することはもちろんでありますけれども、もう一つ大きなねらいは、あなた方が長い間理想として國民の前に掲げてこられた社會主義政策をここでやつてみてもらえるのだ、こういうことを非常に樂しみにしておつた。しかるに先般の川崎君のお尋ねに對しても總理大臣は、そういうことをはつきり言われない。米窪さんはすでに度々こういうことを言つておいでになるのでありますから、社會黨の考えておられるこの社會主義政策を斷行して、そうして失業問題解決にはこれでなくてはならないというのでありますから、他に妥協される必要はないじやないかということを伺いたいのであります。
#36
○米窪國務大臣 「實業之日本」に私の載せた一文は、全部をそこで引例されないと、倉石さんの御都合のいいところだけを引例されては實に困るので、私の意見はやはり、全部を讀んでいただかないと誤解の起ることが生じてくると思う。私はフル・エンプロイメントというものは、いつも在野當時からもこういうことを言つておるので、これはケインズの説においても、ビバーリツジの説においても、外國の失業問題に關する權威が皆意見が一致しない。また御指摘のルーズベルトのニユー・デイールのあのポリシーにおいても、ああいつた理想をもつておつたルーズベルトがやつてさえも、約三百萬人の失業者が平時常にあつたということを私は述べて、そうしてこのフル・エンプロメントということは、廣い意味において國としてする場合と、狭い意味において企業においてする場合において、それぞれ相違が起つてくるのでございますが、少くとも企業の狭い範圍内においては、とうていそれはノーマルな状態でもむづかしい。いわんや敗戰日本の今日の現状において、金融が非常に梗塞され、資源が非常に涸渇しておる今日においては、なおさら困難である。そこで廣い意味において國がなす場合には勞務の配置轉換、職業補導、あるいは就職の機會を廣める、こういつたことを國が全力を注いでも、なおかつ日本の今日の現状は困難であるということを一應指摘して、しかしこれをエル・エンプロメントに近ずける方策としては、當時私は在野當時でございますが、社會黨が平素言つておるところの高賃金高能率、あるいは勞働時間の短縮、そういうことをやつて、それによつて失業者を職場へ吸收し得る餘裕がある。あるいは交代制を頻繁にしてフルに働かせる、こういうこともあり得る。但しそれはもちろん資材の點、あるいは施設の點等も關係あるが、私の述べた當時の日本の經濟状態であれば、なおかつそれは行い得る餘地があつたと私は考えてあの一文を書いた。しかし、その後において前内閣の施設において、そういうことをやり得ずして、資源はますます涸渇して經濟の諸條件が窮窟になつてきた今日においては、殊にこの内閣は社會黨の内閣ではない、連立内閣である。社會黨は御承知の通り、組閣當時において政策の協定を受けておるのでございまして、社會黨の在野當時の政策をこの内閣の政策として行うことには相當の制約のある今日においては、私は經濟の面からいつても、物の面からいつても、政策の面からいつても、私の在野當時に書いたことを直ちに内閣の政策として行うことは困難な事情にあるということを私はお答えいたします。
#37
○辻井委員長代理 倉石君に御相談したいのですが、實は總理に對しての御質問でありましたので、順序を變更してお許ししていたわけですが、前から通告されております人がまだ二、三名ありますので、一應總理に對する御質問が濟みましたら、ひとつ後へ御質問を譲つていただいて、勞働大臣に對しては後ほどまたお願いしたいと思います。
#38
○倉石委員 よろしうございます。
#39
○辻井委員長代理 それでは小川半次君に質問を許します。
#40
○小川委員 私は勞働大臣に對する質問は次回に譲りまして、本日は片山總理にお尋ねしてみたいと存じます。先ほど倉石委員の御質問に政府の御答辯がありましたが、私にはあの御答辯では納得がまいりませんので、多少ダブると思いますが、お尋ねしたいと存じます。
 政府でもすでに豫知されておられることと思いますが、この十月下旬ごろから電産、全遞を初め、全官公廰勞働組合が中心となつて、一大勞働攻勢が展開されんとしているのであります。その目的とするところは、さきに政府の發表いたしました千八百圓のベースでは、とうてい現在の生活を支えていくことができないという深刻なる經濟問題から出發しているのであります。過般和田安本長官は、千八百圓の收入でも十一月から月に四百圓の黒字になることを發表されたのであります。その根據として安本の示すところによりますれば、十一月からは主食の遅配、缺配が解消されるので、これによるやみ値の下落によるものであつて、東京都の四・二人家族を例にとれば、飲食物費において八月には配給に對するやみの割合が一・九九倍に達していたものが、九月には一・六三倍、十月には一・五七倍となり、十一月には一擧に〇・八三倍に減少して、すなわち八月には二千二百圓三十一錢だつた飲食物費が、十一月には千五百十七圓八十一錢となり、勤勞收入二千九百二十圓に對し、家計費總額二千五百二十一圓で、差引三百九十九圓の黒字が出るというのであります。右の計算の基礎となつている八月の家計費を安本は三千三十三圓十錢としているのでありますが、東京都勞働基準局の實態調査によりますれば、六月において既に夫婦と子供二人で勞務者の家庭では三千百八圓八十八錢、職員の家庭では三千六百十一圓八十七錢に達しているのであります。これを八月の物價に直しますと、勞務者の家庭において約三千七百五十圓、職員の家庭においては四千三百三十圓となるのであります。すなはち出發點において早くも勞務者において七百十七圓から、職員において千二百九十七圓という莫大なる開きが出ているのであります。これは一體政府の數字が杜撰であるのか、あるいは勞働者の生活が贅澤なりというのであるか、おそらく政府は今日國民に耐乏生活を求めている建前から、贅澤なりと言いたいところであろうと思うのでありますが、しかし東京都の統計に現われたところによりますれば、勞務者の家庭では家計を補うため一ケ月に二百十五圓十七錢の物品賣却と、百十九圓八十五錢の貯金引出しがあり、また職員の家庭では二百十六圓十六錢の物品賣却と二百七圓七十二錢の貯金引出しが現われているのであります。このなまなましい事實は、贅澤というにはあまりにも深刻であるのでありまして、政府の發表した千八百圓のベースでは、とうてい生活のできないことは現實の問題として明かなところであります。
 以上私は、東京都内の勤勞者を對象としての數字を申し上げたのでありまするが、なお私は、正確な數字を得たいと思いまして、關西で輿論調査機關を有しておる友人に依頼しまして、京阪神在住の勤勞者約二千名の實態調査を行つてもらつたのであります。これは八月一日現在でありまして、當時京阪神は東京都よりも、やみ物價が平均一割高であつたのでありまして、この一割高を差引いて計算いたしますと、先に申しました東京都内の勤勞者の家計費と大體合致する數字が現われるのでありまして、以上の數字は正確なものと判斷していいと思うのであります。從つて千八百圓の發表は、政府の失敗であつたことは、正確なる數字の上から分析しましても、明白なところであるのであります。しかして政府がかくのごとき杜撰なる案を發表した無責任は、當然反省しなければならないのでありまするが、ここにおいて政府は、面目問題にとらわれることなく、この千八百圓のベースを潔ぎよく徹囘して、新たなるベースをつくることが責任ある處置といわなければならないのであります。
 それでは結論として、どの程度のベースが基準であり、妥當であるかと申しますと、分析した細かい内容は省くことといたしますが、大體二千三百圓が現在の物價水準に竝行する最も妥當な基點ではなかろうかと思うのであります。しかしながら、あるいは千八百圓のベースであつても、今後やみ物價の下落が必然的であるという見透しさえあれば、勤勞者は一應納得ができると思うのであります。政府はあくまでも千八百圓のベースを固執されるのであるか、もし固執されるのでありますれば、勤勞者の安心、納得のいくように、今後物價は必ず下落するのであるという具體的のものを示していただきたいと思うのであります。
#41
○片山國務大臣 ただいま小川君から、いろいろ數字に基いて詳細なる、かつ熱心なる御研究の結果を御發表になりましたが、こういう問題はなかなかむずかしい問題でありまして、各方面の研究を總合して、その結論を得なければならない問題ではなかろうかと思うのであります。小川君の御研究も、なかなか有力な一つの御發表であるに相違ありません。しかしまた、安本によつて研究いたしておりまするものも、十分考慮さるべき根據のある發表であるということもお考え願いたい。また他の學者や政治家によつて研究されておること等を總合いたしまして、すなわち諸般の情勢を總合して妥當なる結果を見出したいと私どもは考えておるのであります。安本の研究によりまして、將來は黒字が出て物價は下つてくる、こういう見透しをつけておりますのは、ほんとうに國民がやみをしないで、ほんとうの意味において消費を節約して、耐乏生活に徹するという、やや理想に近い形が遂行せられるならば、おそらくやみはその根を絶ち、かつまた物價も下つて國民の生活はだんだんよくなつて、産業も發展してくるだろう、こういう見透しをつけての結果だろうと思うのであります。そういう意味から申しまして、立て方によりましてはその見方が違つてまいりますし、またいろいろの發表される形態というか、研究の對象、狙いどころなどにおいて、それぞれの差異があるのではなかろうかと思うのであります。包括的に申しまして、政府としては七月五日に發表いたしました物價體系と睨み合せて、賃金は千八百圓ベースで一應定めていかなければならない。それは先ほど申しましたようなつり合いになつておる。これがわが國の當時における經濟状態の跛行的な状態である。千八百圓をあげていくならば、物價體系もまた崩して別の物價體系を立てていかなければならない。形は山形になつて、物價と賃金との關係は並行にならずに、こういう状態になつておる。この結果は、わが國の經濟の跛行状態と病状の深刻さがそこにプラスされておる。これを是正して初めて並行状態となる。こういう觀測のもとに立てられておると考えるのであります。國民全體が協力して、その跛行状態を是正し、その病状を直していかなければならない、順調に進めばよき結論に達する。こういうようなことであろうと思いまするが、なかなかそのことは思う通りにもいかず、やみは根絶してその形は一つもなくなる。こういうことも望むところでありますが、そう實現化しない。そういう惱みがやはりつきまとつてくるものであります。そういうような現實の惱みと申しまするか、實際生活の工夫、あるいは實際經濟の運行の複雜性というようなことに考えまして、安本で發表いたしておりまする十一月になれば黒字ということは、あるいはむづかしいような状態になるかもしれないと私は思つておるのであります。しかしそれだからといつて、そういうような物價と賃金の悪循環を絶ち切る國民的な努力をそのまま打捨てておいて、仕方がないから、こういう問題についての努力を國民はやめてしまつて、やり放題にしてしまえというようなことは、國家再建途上においてとるべき政策ではないと思うのであります。われわれは努力して、國民全體の努力によつてその體系を十分に守つていかなければならない。こういう意味において千八百圓のベースはあくまでも守ることによつて、物資體系を崩さないような方法で、やがては物價の値下りを期待し、國民生活の向上に貢献するであろう。こういう努力と熱意とが望ましいことであると思うのであります。今われわれ日本國民に課せられております至上命令ともいうべきことは、この荒廢に歸しております經濟を再建するということであります。物價と賃金の悪循環を絶ち切つていくということであります。これが私どもの考えておりますところの耐乏生活であつて、何も耐乏生活は食べる物も食べないでやめろ、多になつてもひとえ物を着て辛棒しろというような、無理を強いるのでは決してないのであります。消費を節約して、最低の生活で乘切つていく努力を、お互いに拂つていこうではないか、そうして順調なルートにこれを乘せていくべく、國民全體の努力としてやつていこうとする耐乏生活の國民運動化を、私どもは要望いたしておる次第であります。何分にも八千萬國民全體の運動でありますから、理想通りにはいきませんが、どうかその點は諸君の熱意と御努力によつて、國民的全體の運動として推進されることを要望いたしておるような次第であります。理想と現實は、惱みがこういうところにも現われてくるのではなかろうかということを考えておる次第であります。
#42
○小川委員 總理の御心配のほどはよく理解できるのでありますが、しかしただ心配と思案のみに暮れていては何にもならないのであります。その心配な問題を行動に移し、實踐するところにおいて、私は政治家としての大きな責任があると思うのであります。安本で發表いたしました千八百圓のベースは、先ほど私が申しましたごとく、順次物價が下落していつて、やがて十一月、十二月には、黒字の現象が起つてくるという安本の調査に基いて發表されたものであつたのでありますが、しかしこれは完全な失敗であつたということは、現實の問題から見るときに明らかであります。もちろん八月には、やや物價が下落するかのごとき傾向にありましたが、しかし九月にはいつてからは、依然として物價が上向をしつつあるのであります。特にわれわれが今考えなければならないことは、關東の大水害によつて、おそらく二割ないし、はなはだしい場合は三割の物價値上りとなるということを知らなければならぬのであります。かつて、いつの時代であつたか忘れましたが、美濃に大震災がありまして、そのときに數千戸の家が倒壞されたのでありますが、この美濃地方の大震災によつて數千戸の家が倒壞されたことによつて近畿關西一帶が二割ないし三割の物價の値上りがして、あの地方の農民たちが大恐慌を來したという記録をかつて讀んだことがあるのであります。關東の大水害によつて、おそらく物價の値上りということは、必然的であるという事實もわれわれは考えなければならない。私はおそらく政府では、豫期せざるというところの災害によつて、やむを得ざる、状態であるということを御理解されて、それによつてこの千八百圓のベースを撤囘することが、政府の面目も解決することであり、また最も得策であると思うのでありますが、この點について承りたいと思います。
#43
○片山國務大臣 なるほど美濃の震災の當時においては、その土地において大きな地震があつた結果、不足を來し、被害が大きいという結果、物價が上つたというような事實があつたかもしれませんが、時代の推移に從いまして、今日においてはいろいろの關係が總合状態ともなつておりますから、一地方の天災は他地方の關係において十分に補充せられてくると考えるのであります。全國的な問題としてこれを取扱う場合において、一地方の不足はかなり充實されますので、その點は小川君のような御心配は、今日においてはそう大きなものではなかろうと思うのであります。現に農林大臣が、どの委員會でありましたか、發表されました通り、食糧事情もそう大して心配はない、影響を受ける附近の消費大都市には、遅配なくして供給し得るというような發表をされておりますし、また各地からの同情なり、いろいろの手厚い救濟方法が及んでおる今日でありますから、その點は心配は少いと思つておるのであります。また政府におきましても、この水害に對する緊急對策を果敢敏速に立てようということによりまして、今日その對策を立てて、それぞれ擔當者は手落ちなくやつておるような状態であります。そういうことから考えまして、まず小川君の御心配は防ぎ得ると考えておりますので、それを根據としての千八百圓ベースの變更は今日考えておらないわけであります。
#44
○小川委員 あとに質問者が多數おられるそうですから、あと一點で私は一應打切つておきたいと思います。政府はあくまでも千八百圓のベースを固執されるような御様子でありますが、しかし私は見透しとしては、物價は下落しない、これは一般社會通念から申しましても、今日各方面の意見を徴しましても、また國民の聲を参考といたしましても、物價は下落しないというような状態にあることは、間違いのないところだろうと思います。してみれば、物價下落を豫想して立てた案というものは、すでに失敗であることは明らかであります。これをあくまでも政府は押し通そうとする場合には、おそらくこの十月下旬ころから行われるところの勞働攻勢によつて、大きな困難が生ずるのではないかと思うのであります。私は今この千八百圓のベースを撤囘して新しいベースをつくることが、この勞働攻勢を防止し、圓滿に國家再建の途を切り開いていくことができるという、この心配から私は特に申し上げるのでありまして、政府はあくまでもこれを固執すれば、必ずここに勞働攻勢によるところ大混亂が生ずるのではないかと思うのであります。この見透しにつきまして、總理からお答え願いたいと思います。
#45
○片山國務大臣 いろいろの見方がありますが、われわれは物價を、できるだけ國民的全體の努力によつて、下げるべく奮闘しなければならないと思うのであります。そういう方向に政策も向け、國民も打つて一丸となつて努力をする。こういうことが、ゆるませてはならない今日の心構えであると思います。それと關連いたしまして、もしこのベースを變更して上げますならば、必ず物價は上つてくる。これはその方向を迫ることは明らかであります。そういうことが一面において見えておるのでありますから、どうしてもこれは守つて經濟安定の方向に向わしめる努力をすることが、國民に要望せられておる必要な事項であり、政府また懸命の努力を拂つてやらなくてはならない事柄であると思うのであります。今御指摘のような、いわゆる勞働攻勢と稱せられる要求がそれぞれ現われておりますが、政府はこれらの諸君に向まいして、實情をほんとうに打明けてお話をして、勞働大衆諸君の心からなる理解を得るべく目下交渉であります。そして故意にこれを囘避するというようなやり方をとらずに、赤裸々な心持ちをもつて十分話に應じて進めていきたいと思います。
 なお、いわゆるでこぼこでありますとか、千八百圓の出る前の不足を補う方法については、できるだけの方法を講じて、勞働大衆諸君の生活の充實には努力をいたしたいと思つて勞働大臣、安本長官、あるいは官房長官等の、勞働問題に關係のある閣僚が主となつて懇談會を開きまして、その案を練つて、これに對する對策を立てつつあるような次第で、その方向に向つては、全力を傾倒いたしまして經濟安定のために戰うつもりであります。どうかこの努力と、この懸命なる奮闘に對しましては、十分の御理解を賜わりたいと存ずる次第であります。
#46
○辻井委員長代理 次に松本一郎君に質問を許します。
#47
○松本(一)委員 私は片山首相に、國民生活の重大なる問題と祖國再建の指針ということにつきまして、信念をお伺いいたしたいと思うのであります。
 片山首相の御人格、人となりにつきましては、私ども衷心から尊敬申し上げ、敬服いたしておるのであります。それあればこそ、過般選擧のときに首班として投票さしていただいたのであります。しかしながら具體的なる國政御運行の政策の面におきましては、はたして首相の政治的實行力、御政策を忠實に實現させる御信念が奈邊にありやということを承りたい、かように思うのであります。
 一昨日の川崎氏の質問に對しての御答辯によりますれば、社會主義政策を堅持して、一度に出せば國民が食傷するから、小出しをするのだという御方針を明らかにされたのであります。このことにつきましては私ども、いささか首相の根本的御信念と意見を異にいたす點がありますので、お伺いをいたしたいと思うのでありますが、今日わが國の政治といえば、申すまでもなく經濟に重點がおかれております。經濟即政治と申しましても過言ではないと思います。その經濟もわが國の再建と國民生活の安定という線に注がれておると思うのでありますが、今國民が、殊に働く勤勞大衆、戰災者、あるいは引揚者、大多數の國民は今日の衣食住に不足して、いかにしてこの苦難を切り抜けようかということに日夜苦慮いたしておることは御承知のはずであると思うのであります。私どもは、どうしてもこの國民生活を安定の域まで救い出すとともに、敗戰という不面目な大失敗を償つて、祖國日本を再建しなければならぬという熱意をもつておるものであります。ともかく今日の國民生活の安定には、何をおいても物を充足する、物をつくるということに重點がかけられなければならないのでありまして、できた物をどう配給するか、消費せしめるかということは第二の問題であります。しかるときに、物をより多くつくり、いい品物をつくるということにおきまして、今日の日本の國の經濟政策、指導方針、すなわち統制經濟は大きな缺陥をもつておるのではないか、かように私は思うのであります。殊に間もなく開かれんとする自由貿易の時代になりますれば、わが國は好むと好まざるにかかわらず、世界の競爭經濟市場に乘り出さなければなりません。そのときにいい品物を安く賣り、しかも多量につくるという努力がなかつたならば、必ず落伍者となつて外貨の獲得は思いもよらないことだ。すなわちこの小さな島國に、またぞろ孤立しなければならぬのではないか、かように私どもは心配いたします。その觀點に立つて考えますときには、國内の經濟状態を努めて競爭經濟にもつていかなければならぬのではないかと思います。今日國家公務員法が上程になり、その説明を伺つておりましたら、公務員の能率が低下しておるから、能率向上をはかるために競爭制にしなければならぬという御趣旨には賛成であります。殊に經濟面において、なぜ一日も早く競爭制にもつていかないのであるか。このことを私ども非常に遺憾に思うのであります。戰時中から今日までの日本の統制經濟の跡をたどつて見ますれば、ことごとくが實際わけのわからぬ素人で、月給さえもらえばよい、日が經てばよいという官僚のその日暮しの無責任なる經濟のやり方でありまして、俗に餅は餅屋と申しますが、やはり産業のことは産業界人にやらさなければならぬ、ほんとうの苦勞を知らない人にやれるものではないということは申すまでもないことであります。かつて戰時中に岸統制で私どもは大きな憤激をもちました、せつかく育てた事業すらも私どもは中小工業、企業整備のために大事業に合同せよという商工省の命令に憤激をもつて、支那の華中水産に賣拂つたことがあります。戰時中國策に協力しなかつたかといえば、決してそうでないのであります。官僚統制の無知識、權力をもつて國民を屈服させんとするこの方針に、私どもは大きな憤激を感じ無抵抗の抵抗をいたしたのであります。今日日本の生産面に携る國民のおそらく大多數の人は、この官僚の統制には大きな不滿をもつていると思うのであります。その一例としまして、政府は先般薪炭の値上げをいたされました。生産者價格が從來の倍になつて、生産者は喜ぶかと思います。反對に消費者價格が非常に高くなりましたがために、かえつて生産者の不滿を買つて、依然として薪炭はやみなら買えるが、マル公では買えないという現状であります。マル公を引き上げれば、ついやみ値がさらに上つていくというのが日本の現状で、先ほど首相も、わが國の經濟の病根は賃金を上げれば物價が上る、物價が上れば賃金が上るという悪循環にありと指摘されました。これも一理はありましようけれども、さらに重大な原因は物の不足であります。物さえ増産すれば物價は安くなり、賃金は上げずとも濟むのである。この根本の方針、原理は簡單でありますが、首相竝びに經濟安定本部あたりで、その通りだ、實行しようという熱意がどこまであるかということを疑わしく思うのであります。今日素人の何もわからぬ者に事業にタツチする實權をもたしますことは、あだかも狂人に刄物をもたすようなものだ、先般私は京都方面の食糧對策實地調査にまいりまして、みそ、醤油製造の大きな工場を視察しましたとき、その會社の關係者が曰く、今度は私どもの方も公團ができて、また役人の支配を受けなければなりません、實に殘念ですと申しておりました。その工場の、先祖代々粒々辛苦してつくられたところの機械設備を見ましたとき、私は私個人ならぶち壞したく思いました。とにかくそれほど業界は、いわゆる一生の運命と全財産を投じて、その事業に血の出るような精魂を打ち込んでいるのが現状であります。それをただ役人が權力によつて、自分たちの思うままに支配せんとするところに間違いの種があるのでありまして、要は重要産業はやむを得ませんから、これは統制いたすといたしましても、その他のものはできるだけ統制の枠をはずして自由經濟に、競爭經濟にもつていつて、物を増産するという政策を行われるのが適當なのじやないかと考えます。この意味から薪炭類のごときも、あるいは生鮮食料品のごときも、かようなものは速かに統制を撤廢されるのがよいのじやないか。先般も食料關係で京都に調査に行きましたが、魚の配給でありまするが、政府は食糧緊急對策によりまして、一人あたり十一匁づつの魚を配給されるということを發表されております。實際行つてみてどれだけ配給になつておるかと言いますると、七月、八月の二箇月に、六十日の間に二百五十グラムでありますから、七十匁であります。六日分より配給はないのであります。あとの五十四日というものは魚を食わないか、あるいはやみで食うかしなければならない。しかしやみならば魚のありますことは、御承知の通りであります。すなわち今日國民は、一面はマル公ですが、大部分はやみの生活をいたしておるのであります。先ほども首相は、やみの撲滅、マル公生活について國民の道義に訴えられ、非常に御結構な御方針のように思われますが、現状をもつて推移いたしますれば、おそらく十年かかつても、このやみはなくなるまいと私は思うのであります。やみをなくする途はただ一つ、物を増産さえすればそれでよい。物によつてはいろいろ資源の關係や施設の關係で増産できぬものはありましようが、簡單に増産できるものは統制の枠をはずして自由經濟にすればよい。すなわち魚のごときも生産縣におきまして、陸上で取締りを強化すれば海の上でやみをやる。海上に警戒船を出して取締りを強化すれば、今度は漁業者が海に出ない。漁業者が耐乏生活を始めるのであります、これが現實であります。すなわち政治は多數國民の納得のいくように、得心のいくように現實に即して行うのが政治ではないか。しかも今日國家關頭の時期に立つて、國家興亡のこの非常時において、なおかような適切な政策を――これまでの政黨のイデオロギー、さようなものは捨て、政黨政派を超越して、祖國をいかにして再建し、國民生活をいかにして安定するかということこそ、今日の重大なる必要なるとるべき手段ではないか、かように私は考えますので、首相の御所見を伺いたい。
 その次は最近一般國民の思想も遺憾ながら悪くなつてまいりましたが、殊に勞働能率の低下であります。不肖私も十三萬人ほどの勞働組合員の一人であります。その中にはいつて仕事をいたしておりますが、終戰後だんだんと悪化してまいります。作業能率が遺憾ながらあがらないのであります。殊に殘念なことには、日本の前途を双肩に背負うべき青少年の能率があがらぬことと、思想が悪くなつたことであります。このことだけは、特に私どもも看過できないのでありますが、その原因は衣食住の生活が缺乏しておるということも一理はありましようが、いま一つは、すなわち國の指導者、あるいは地方におきましては、府縣町村の指導者が身をもつて率先垂範して、國民のためよく指導するというこの方針に過ちがありはしなかつたか。すなわち自由と權利を主張することは教えても、憲法十二條の絶えざる努力によつてのみ自由と權利は主張することが許されます。またみだりに濫用すべからず、あるいは公共の利益のためには利用する責任を負うという、この重大なる義務ある反面を教えられなかつたことを、私どもは遺憾に思うのであります。今後國民の指導にあたりましては、政黨政派、黨利黨略を離れて、眞に日本人、働く勤勞大衆をつくるという意味からも、こういう指導方針をおとり願いたいと思うのであります。先般首相が國民に總勤勞を説かれました。非常に私どもご結構なことだと思います。戰前の日本ならともかく、敗戰の日本はこれまで十働いた國民が、十も二十も働かなければ、將來に負う重壓負擔に耐えられないことは當然のことであります。このことを國民によく徹底認識させるため、先般首相は本會議におきまして、新日本建設國民運動を大々的に展開するということを發表されまして、私ども意を強うしたものでありますが、その具體的の御實行方法が、今なお見られないのを遺憾に思います。祖國を再建復興し、民生を安定させんとするならば、ともかく精神的にも國民の大啓蒙運動を起す必要があります。これには政黨政派を離れて、暇ある者は暇を、からだまめなる者はからだをもつて全國に遊説せしめて、國民の奮起と、そうして時局の認識を徹底させる方法を講ぜられる必要がありはせぬか。かように私は考えて、所見を伺いたいと思うのであります。最後にもう一つお伺いいたしたいと思いますが、御答辯のいかんによつてお伺いをいたすことにいたします。
#48
○片山國務大臣 第一番目の松本君の御質問は、經濟再建の重點は物をたくさんつくることである、生産の増強である、こういうことをお述べになりましたが、その點については同感であります。先ほども申しましたように、物の不足が今日の困難の大きな原因であるということを、私も申したつもりでありまして、その點については同意であります。さてこれをどうしてたくさんつくるか、生産増強をどうしてわれわれは實際に考えていくかということになつてまいりますると、その方法がいろいろ出てくると思います。私どもの考えといたしましては、敗戰のために惱んでおりまするわが國は、すべての點において不足いたしておるのであります。勞働者の數がかりに多くとも、働く機會がない、また資材が乏しい、資金が乏しい。こういうような状態であつて、大勢寄りましても生産能率はあがらないのであります。また總體的に人がたくさん動きましても、總體量が少く、また金の面から申しましても、通貨をたくさん發行いたしましても、それが産生資金となつて全部的に動かないで、消費方面に動いておる、あるいはやみ方面に動いておる、あるいは資金の死藏退藏がある。こういうような状態でありまして、この資金の運轉も生産發展のために役立つていない場面も相當今まではあつたと思うのであります。こういうような状態でありまするから、これをそのままうつちやつておいて、なすがままに任すというわけにはいけないのであります。殊に消費方面から考えてみますると、物は足りないが要求する方面が非常に多い。これもそのままに任しておきまするならば、力のある者がその物を獨占してしまう。金のある者、暇のある者は、それにあかしてこれを獨占して、力のない者、金のないもの、機會を得ない者は、それを得る機會を全然失つてしまうというようなことになるのは、理論の示すところであると思うのであります。從つて國民生活必需品でありまする食料品につきましては、これを計畫いたしまして漏れなく全體の人々に行渡らせて、生活の不安を起さないように按配していかなければならない。こういうふうに考えるのであります。そこに配給制度あるいは統制制度というものが生れてくると思うのであります。今まではそのやり方が悪かつたと思うのであります。やり方が悪いために、いわゆる官僚統制であるとか、權力統制であるとかいうような非難があつたと思います。政府の考えておりまするこの統制方式は、今までのようをやり方を一擲いたしまして、眞の民主主義を政治の實際に現わすのはこのときである。この會機をおいてほかにないというほど熱心に、この統制問題を民主的に考えておる次第であります。第一に國家觀念でありまするが、私の考えでは、國家は國民の福利増進をなかる主體である、國民の幸福を指導しなければならない主體である。かように考えるのであります。權力主體ではなくして、權力を縦横に振りまわして、官吏階級というものを形づくつて統制を振りまわした時代はすでに去つて、ほんとうに國家は國民の福祉をはかる主體にならなければならないと考えておるのであります。從つて國家の命令を受け、その事務を擔當いたしまする官吏は、國民のために福祉増進をこれ念として、奉仕的に動いていかなければならないものであると思います。すなわち官吏は國民公僕の觀念に徹しなければならない。こういうことを考えるのは、それから來りまする當然の結果であります。國民もまた新憲法の精神によりまして、全體として國家を幸福に仕上げていかなければならない。安寧秩序の維持から公安を守つていくというようなことも、國民全體の運動としてやつていかなければならないと思うのであります。官吏にやらしておいて、そうしてこれを第三者的、傍觀的態度で批判するというような態度ではなくして、國民みずからが政治を擔當するのであるという今日の民生的原則から割出しまするならば、國民自身が政治をする、こういうことになりまするから、乏しき物資を――生産されたる物も乏しいが、またこれから生産される物も乏しい今日の特殊状態から鑑みまして、國民全體に行渡るように、國民みずからが、これを公平に配分していかなければならないと思うのであります。その意味におきまして、計畫を立てて生活を安定せしむる方策を立てなければならないのであります。主食物に對する一つの統制は、松本君もお認めになつております。これが生活必需品であるからであります。位の高い者とか、富める者とかいう者に、これを獨占さしておいてはいけないのでありまして、働く人人も、また女も、子供も、力のない者も、ひとしく生活必需品には公平なる分配に與かるような方策をとらなければならないのが、私どもの考えておりまする統制であります。從つてこれは官僚的にやるべきでは決してありません。官吏がやるからといつて、これを官僚統制と言うわけにはいきません。國民の公僕たる官吏が、國家の命令によつて、國民が選んだ政府の命令によりまして動いて、國民福祉のために奉仕的に奮闘努力する場合においては、これは官僚的に動いておるのでは決してないのであります。面目を一新し、方式を一新し、眞に民主的に動いていかなければならないのが今後の政治のあり方でありまして、現政府はその方針に向つて經濟の實際面に當つていこうと考えておるのでありまして、斷じて官僚的な、天降り的な、大威張り的統制をやるつもりは全然ありません。公平な福祉増進のための統制であるということをお考え願いたいのであります。統制という言葉が、前の言葉と同じでありまするから、とかく混同される憾みがありまするが、これを計畫配給と申してもよろしいし、他の言葉を使つてもよろしいと思います。眞に國民に公正なる扱いをいたしたいということが、私どもの念願であります。
 それから勞働者の教育につきましては、政府といたしましても十分に力を入れております。多年問題となつておりまする勞働省の發足を見るに至りましたのも、その一つの現われであります。勞働省を設置し、米窪勞働大臣を初めといたしまして、今までの體驗を通じまして、眞に勞働者の自主的な生産協力を望んでおるのであります。勞働者自身の力によつて、地位の向上によつて、一國の産業が發展するのである。わが國の産業は勞働者の肩に擔われておるのである。勞働者が奮起するにあらずんば日本産業の發展をいかんせん、こういう氣慨をもつて一國の經濟を擔つていただきたいということを、私どもは念願いたしておるのであります。從つて勞働組合運動も、ストライキをするための組合運動ではなくして、自主的に、勞働者自身の力によつて修養し、訓練し、技術を練磨し、そうして一國の産業の發展に大いに貢献してもらいたいという運動が勞働組合運動である。これを健全に手引きをしていかなければならないということが、勞働省の大きな任務であります。勞働者の自主的な教育であつて、型にはめて、そうしてなわをつけてひつぱつてくるというやり方ではなくして、ほんとうに勞働者諸君の自主的な、精神的な向上に對して、十分途を開けるのでありまして、そうして一國の産業と經濟が隆盛に向うように手引きをいたしたい、こう考えておるのであります。勞働者教育のために、青少年教育のために、政府は十分に力を入れまして、産業の隆盛を期待いたしておる次第であります。その意味におきまして國民全體も十分なる御理解を願いたいと思つておるのであります。國民運動と私どもが申しておりまするのは、今までのように政府が豫算を立てて、そうしてこの豫算をこれだけの計畫でお使いなさいと言うて、人を集めてきて、やれ宴會の、やれ集會の、やれ相談會のというように、型ばかりのことをやつて宣傳するような、いわゆる官僚式な國民運動の方式をとりません。そういう方式をとらないで、國民の間に澎湃として上つてくる自主的な運動を私どもは望んであるのであります。それでありますから、勞働組合の諸君、農民組合の諸君、宗教家團體、教育家團體、婦人團體、文化團體、各方面にお願いをいたしまして、その組合の團體的自主的運動として、ほんとうに祖國再建のために諸君の奮起を望む、こういうふうにお願いをいたしておる次第であります。よつてこの運動はきよう唱えてあす效果があがるというわけにはまいらないと思つております。相當の時日を要するであろうと思つております。辛拘強く、根氣よくやらなければならないと思つておるのであります。ほんとうに熱心に、祖國再建は國民の心からなる自主的な運動にまつところ多大である。こういう意味で呼びかけておるのでありますから、じみではありますが、じりじりと效果が現われてきておると思います。先般の都市の消費者諸君のために、農村のお米を總ざらいして、都市に吸取られるように、漏れなく出さなければならないという運動なども、經濟復興運動、農村復興運動に携わつておられますところの諸君の共鳴を得まして、非常に奮闘努力されたことを、私どもは心から感謝いたしておる次第であります。また道義の廢頽、正義觀念の失墜等につきましても、國民運動として各所にあがつておることを私どもは伺いまして、非常に心強く思つております。こうして民主主義理念を、實際政治の上にぜひとも現わしていただきたいということを考えておる次第であります。どうか政府の意のあるところを御了承願いたいと存ずる次第であります。
#49
○松本(一)委員 たいへん御丁寧な御答辯で恐れ入ります。私は乏しき物、不足せる物は、あるいは重要産業につきましては、統制配給經濟も、これはいたし方ないと存じております。しかしながらやり方によつては簡單に物が出てくるものを、統制方式が悪いがために物の増産を阻んでいるというものにつきましては、この際統制のわくははずして、自由競爭經濟に復歸さした方がよいのではないかということをお尋ねいたしたのであります。それが生鮮食料品、すなわち鮮魚、鹽干物、あるいは蔬菜、あるいは薪炭類などにつきまして、なぜ官僚統制というかと申しますと、たとえば一例に薪炭のごときものもあります。たとえば炭が一俵生産者價格は五十餘圓であり、消費者價格は八十餘圓で、約三十圓という各差があるのであります。この差はどこから出るかと申しますれば、全國平均したプール運賃と、さらに全燃配の會費、もう一つは役人の月給であります。こういうようなむだな費用が中間で取られますことが、隣村で焼いた炭を隣村にもつていけば運賃がさほどかからないのに、むだに三十圓も取られるということは、生産者を不愉快にならしめるとともに、消費者の負擔を非常に重くする、こういうことになるのでありまして、このことは蔬菜についても同様であります。また主食は米、麥はやむを得ませんが、たとえば馬鈴薯とか、あるいは甘藷とか、供出百パーセント完納したあとのものは自由に賣らしたらよいのではないか、そうすればわずか五貫目や六貫目のものを汽車や電車で高い運賃を拂つて混雜をしてもつてこなくても、トラツクなり貨車でどんどん消費地に運びこめる。これなどもやろうと思えば、あすからでもやれる。何も國費がかかる問題ではない、しかも國民生活はそれによつて安定してくる、しかもこれは増産になつてくる。こういうことを私は考えますがために、いかに丸公生活を配給計畫經濟でおやりなさろうと思つても、むずかしい。但しソ連のようにゲー・ペー・ウーを使つて、あの強力なるいわゆる統制計畫經濟といいますか、國民を非種に重壓するところの國策をおとりになるなら別問題であります。しかしこれは、おそらく日本の新憲法の精神にも副わないとともに、日本は米英を中心とした、すなわち自由資本主義圏内にあるということは、當局も御承知の通りであります。ゆえに日本の將來生きる道から考えましても、國民生活を安定する上から考えましても、できる限り、統制經濟のわくはやむを得ぬものに止めて、他は自由經濟に復歸させるという方法をお講じ願いたい、かように考えます。つきましては、さらにお伺いいたしたいと思いますことは、最近國民思想が非常に悪化してきましたことは、悪質犯の激増となつて現われてきておることであります。このことはいろいろ御心配願つておることとは思いますが、先般改正になりました――改正と申すと語弊があるかもしれませんが、變りました檢束訊問制度がかようになつた結果、現行犯でなければ罪は犯しても差支えないというような、悪い考えをもつものが非常に殖えました。農村におきましても、大體百戸ほどの農村で、この間中までに十戸ぐらいまでは盗難の被害を受けております。
#50
○辻井委員長代理 松本君、總理大臣は四時までに、どうでもある場所へおいでになることになつておりますので、なるべく簡單にお願いします。
#51
○松本(一)委員 それではごく簡單にいたします。非常に悪質犯が殖えておりますことは、國民思想を悪化せしむるとともに、作業能率、すなわち農村におきましても、留守番に男一人はおかなければならぬというのが現在の實情であります。政府當局は盗難にかかられた御經驗がないかもしれませんが、とにかくさようなことでは困ると思いますので、何とかこの法規をもう一遍改正していただきたい、かように私どもは考えるのでありますが、これが國民生活を安定せしめる一つの途であると思うのでありますが、御所見を伺いたいと思います。
#52
○片山國務大臣 やみでもつてくる物を檢問するという法規を改正しろという御質問ですか。
#53
○松本(一)委員 そうです。
#54
○片山國務大臣 これはやみを嚴重に取締つて、いわゆるやみブローカーという者のあとを絶たなければいけない。こういうことを聲明いたしておるのでありますから、そのために行つていると思うのであります。正式に職業をもたないでいて、甲からたくさん品物を買つてきて、そして非常な利益をもくろんで乙に賣り渡すというようなことが盛んに行われて、それが公々然と承認せられているということになりますると、汗水垂らして眞面目に働いている人はばからしくなつて、そういう勤勞の精神を非常に阻害することになりますから、ぬれ手で粟のようなやみブローカーはどこまでも取締らなければならないと思うのであります。眞に正直に働く人を保護するための政策でありますから、やむを得ざるやみ撲滅の對策であると御了承を願いたいと存じます。
#55
○松本(一)委員 今の御答辯は私が質問しましたこととは筋が違うのであります。(「こういうことじやないか」と念を押したら「そうだ」と言うから、總理大臣は答辯をしたんじやないか」と呼ぶ者あり)いや、そうじやない。やみブローカーの取締りではない。窃盗とか、強盗とかいう、そういう犯罪をなくして、國民生活を安定して、安心して農村の働く者が生活できるということにしなければだめです。これです。それには法規の改正をいま一度やり直す必要があると思います。おそらくこれは、G・H・Q、あるいは連合國の方の意見も伺つておられると思いますが、政府の熱意が必要だと考えて質問をしたのですが、質問はこれで打切ります。御答辯も要りません。
#56
○辻井委員長代理 それでは質問を次會に繼續しまして、本日はこの程度で散會いたします。次會の委員會はあらためて公報をもつてお知らせいたします。
   午後三時五十八分散會
ソース: 国立国会図書館
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