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1947/09/23 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第15号
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1947/09/23 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第15号

#1
第001回国会 労働委員会 第15号
昭和二十二年九月二十三日(火曜日)
    午前十一時一分開議
 出席委員
   委員長 加藤 勘十君
   理事 辻井民之助君 理事 山下 榮二君
   理事 川崎 秀二君 理事 原   侑君
   理事 相馬 助治君
      荒畑 勝三君    菊川 忠雄君
      島上善五郎君    田中 稔男君
      館  俊三君    前田 種男君
      山花 秀雄君    尾崎 末吉君
      倉石 忠雄君    栗山長次郎君
      村上  勇君    河野 金昇君
      綱島 正興君
 出席國務大臣
        勞 働 大 臣 米窪 滿亮君
 出席政府委員
        勞働事務官   上山  顯君
 委員外の出席者
        專門調査員   濱口金一郎君
    ―――――――――――――
九月二十日
 園部町の官公吏に勤務地手當の地域給を支給の
 請願(奥村竹三君紹介)(第六三五號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 失業手當法案(内閣提出)(第五二號)
 失業保險法案(内閣提出)(第五三號)
 決算委員會勞働委員會連合審査會開會に關する
 件
    ―――――――――――――
#2
○加藤委員長 これより會議を開きます。
 前會に引續いて、質疑竝びに意見の開陳を繼續いたします。倉石忠雄君。
#3
○倉石委員 勞働大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、勞働大臣は、先日の片山總理大臣と同じように、しばしば勞働問題については、配置轉換ということを口にされるのでありますが、この配置轉換について、政府當局は具體的にどういう考えをもつておられるかということを、まず最初に承りたいと思います。
#4
○米窪國務大臣 失業對策の具體的なわれわれの考え方ですが、まず第一に考えられることは、就職の機會を政府の機關を通じて、今日以上にこれを増大するということが、失業對策の第一の段階における政府の施策ではないかというぐあいに考えております。そこで、それではもつと具體的にどういうぐあいにしたらいいかと言うと、やはり公共事業に失業者を吸收するとか、あるいは輸出産業の振興、そういうような新しい事業を國家の事業として、あるいは國家が民間に奬勵して、そういう事業を興すことによつて失業者を吸收する。そして次の段階に來るものが、いわゆる産業の合理化、企業合理化、企業の整備ということに伴つて起つてくる問題を處理する對策でございまして、勞務の配置轉換、すなわちある部面においては非常に勞働者が過剰であるけれども、他の部面においては、むしろ必要である、こういう部面が起り得るであろう。これは一つの企業内においても起り得るし、一つの企業内において起らない場合には、他の企業との關係において起り得る。こういう點で企業内における勞務の配置轉換できるときには、その企業内においてやる。それができないときには、類似の企業において勞務の配置轉換をやる。そうして豫備的な知識、訓練を必要とする場合においては、職業補導所においてやりたい、こういう考え方をもつております。
#5
○倉石委員 しからば私はお尋ねいたしたいのでありますが、先日の本委員會で、日本の重要なる産業の九百三十七というおもな工場が賠償工場に指定されて、その賠償工場に指定された大部分が、この間申し上げたように、實際の經營面を内部から見ますと、みんな手をあげておる。それに對してむだと言えば誤弊があるかもしれませんが、いわゆる經營的に見て非常にむだな資金を、政府は金融業者を通じて融通せしめておるというのが今日の實情であります。そしてこれらはまだどの程度に復舊してよいか、どの程度の仕事を許していいかということがはつきりしておらないのであります。先日の本委員會において安定本部長官から、日本の産業水準がほぼ連合國によつてきめられたようなお話がありましたが、その後私は詳しく調べてみますと、しつかりした日本の産業水準、たとえば化學工業部門における硫酸はどのくらいつくつてもいい、苛性ソーダはどのくらいつくつたらいいといつたような、具體的なことについては、まだはつきりしておらない。そういう重大なる日本の産業に對するわくがきまつておらないのに、日本の産業の再編成はでき得ないと思う。だからして私はこの間からしばしば、賠償の未確定が日本産業の復興せざる癌だと言つておるのでありますが、そういうときにその不確定なる日本の産業に對して、配置轉換を考えられるということは、もちろんこれは理想であり、必要なことでありますけれども、きわめて困難なことだと思うのであります。そこで政府にお尋ねいたしたいことは、この日本の未確定な産業にいつごろになつたらはつきりした見透しをつけ得るかどうか。私はこれが確定しておらなかつたら諸般の計畫は立ち得ないと思う。現にいわゆる經濟白書によりましても、政府は日本の今日の産業面においては、資金、資材の面において非常にチグハグになつていることを明確に書いておられるのは、今私が申したようなことを裏面から説明されていると思うのであります。こういうときに配置轉換などということを抽象的に言われても、私はおそらく政府に具體案がないのだと思う。そういう具體案のないときに、必要やむべからずして企業整備、産業の整備ということは、これはやらなければならないことである。そこで必然的にいわゆる産業の合理化を行いましたならば、失業問題は非常に大きな問題としてここにクローズ・アツプしてくることになるのでありますが、何かそこに案がなくては、私はとうてい失業手當、失業保險法というようなものだけでは、遠からず起きてくる失業大衆に向つて救濟の手を伸べることはできないと思う。日本の産業についてもう少し具體的な案が政府にあつてしかるべきだと思うのでありますが、いかがでありましようか。
#6
○米窪國務大臣 日本の現在が、いわゆる管理されておらない日本であれば、當然倉石さんのお尋ねのような案が立て得る。しかし遺憾ながら今日本は連合國によつて管理されている。しかもアンチトラスト法、あるいは經濟力集中排除法と竝んで、日本の産業の規格を決定するいわゆる賠償物資の撤去という問題が、まだまだ連合國によつて根本的な方針がきまらないことは、この間經濟安定本部の總務長官が答えた通りであります。すなわち第一次から第三次にわたるポーレー案もまだ決定的なものでない。それからまたストライキの案も、非公式の問題であると極東委員會は發表している。そういうぐあいに向うの案がきまらない。おそらくこれは講和會議の直前くらい、あるいは對日講和會議において決定するのではないかと思う。もちろんその間に中間撤去の問題はきまつている。しかしこれをもつて全般を推すことはできないと考えておりますが、私は最初のポレー案が緩和される傾向にあるということは信じて疑わない。どうぞ速記を止めてください。
#7
○加藤委員長 それではちよつと速記を止めて……。
    〔速記中止〕
#8
○米窪國務大臣 そういうわけで、私としては、そういう方針がだんだんときまつていけば、わが國のいわゆる企業と企業との間における勞務の配置轉換の目標がつき得ると思います。從つて今日の勞務の配置轉換というものは、一つの企業内において、その企業内におけるある一つの部門においては勞働力が過剰である、しかし他の部門ではむしろ足らないという、そういうことはあり得ると思います。もちろんこれはアンチ・トラスト法や、あるいは經濟力集中排除にかからないということを前提とするのでありますが、そういう場合においても私は勞務の配置轉換の餘地がある。勞務の配置轉換というものは、最初からそれをもち出して、それをもつて國が計畫を立てるのでなしに、いわゆる企業の再建整備の行われたその對策だ、こういうぐあいに御承知を願いたい。しからばどういう程度に企業の再建整備をやるかということについては、目下經濟安定本部でその方針を考究中であります。
#9
○倉石委員 現内閣の主流をなしておられる社會黨御出身の閣僚諸君は、勞働運動に對しては非常な御經濟をおもちであつて、そういう方面の大家であられる方が多いのでありますが、現下の勞働問題、あるいは失業問題は、特に産業政策と密接不可分の關係があるのでありまして、これを度外視しては考えられないのであります。すなわち日本産業の實體を把握しておられなかつたならば、今日の失業問題を論ずることは不可能であります。申すまでもなく、およそ經濟には生産と流通と分配の面がありますが、分配の面を重しとするのみであつて、生産の流通の知識をもたなかつたならば、今日の産業というものは私は考えることは無理だと思います。この間委員の松本君がおつしやつたように、今日の日本の産業で、われわれが最も重視しなければならないことは増産であります。この生産の増強にわれわれは重點をおいて考えなければならないのでありますけれども、遺憾ながら現内閣のおやりになつておる經濟政策を見れば、増産どころではなくして、ああいうやり方では生産の減退を來していくおそれが多分にあると私は思うのであります。この間私が米窪勞働大臣のかつてお書きになつたものを讀み上げた中にもありますし、片山總理大臣のお話の中にもありますけれども、しきりに計畫經濟ということを唱えておいでになります。この計畫經濟は現在の經濟安定本部に蟠踞しておられて、戰時中企畫院に立てこもつて、いわゆる革新官僚という諸君がおやりなつたあの統制經濟と少しも變つておらない。先般同僚の御質問に答えて片山總理大臣は、現内閣のやろうとしている計畫經濟は、決していわゆる官僚統制經濟ではないのだ、民主的な計畫經濟であるというようなことを言われましたけれども、それにそういう美しい題目を竝べられるだけであつて、どんな人間にやらしても、やはり自由競爭のない統制というものは、それが役人であるとないとにかかわらず、官僚式になつてしまうということは、申すまでもなく、世間の實例がこれをよく表示しておるのであります。たとえば米の配給所に行つても、勞働大臣のごときは御自分で米の配給所にはおいでにならないでありましようが、われわれのような大衆は、たまには配給所に米をとりにいくようなことがある。結局米屋の小僧がやつておるような配給の方法を見ても、これは立派な官僚統制である。そして威張りくさつておつて、從來ならば、お得意さんに對する業者の態度であつたのが、結局競爭のないあの統制配給のやり方になると、あのようないわゆる官僚式になる。魚屋の配給でもそうであります。そこで私は自由競爭を伴わざる統制經濟というものは、どうしても官僚統制になる。戰時中における電力の國家管理などを見てもそうであります。電力を國家管理に移すときには、當時の政府は豐富低廉なる電力を供給するのが目的であると言われましたが、現在日發によつて統制されておる電力の供給状態はどうであるか、およそ統制經濟の結果というものは、この電力の國家管理のごときものを見てもよくわかるのであります。私はここで一日も早く、日本の産業というものは、先般來問題になつておりますように、弱體産業を整理して、ここで日本の企業整備を完遂して、ほんとうに必要缺くべからざるものだけは統制を殘しておくけれども、經濟といふものはできるだけ早く自由なる常道にもどすことが理想だと思うのであります。ここで私が思い出すことは、米窪勞働大臣の言われましたように企業整備に當つては、勤勞階級のみの犠牲によつてこれを行うことなく、もちろん企業家も一段の努力を必要とするのであります。その點は勞働大臣のおつしやる通りであります。しかしながら、私は現下日本の産業状況においては、これは好むと好まざるにかかわらず、私ども企業に多少關係をもつておる者から見ますと、だんだん今日のような状態になつてまいりますと今後日本の産業は行き詰らざるを得ないことになると思う。私は本年の暮ごろになつたならば、ただでもいいから、どうか食わせるだけ食わしてくれ、そうして働く仕事を與えてくれというような状態にならざるを得ないと思う。これはすでに今日の日本の弱體なる企業がぼつぼつ没落していくところを見ると、はつきりそういう状態が現出するであろうというということが豫想されるのであります。殊に私は、そういうような日本の全體の經濟の状態が、たびたび問題になつておるように非常に弱體化してきておる。そこにもつてきて、いわゆる自由貿易が再開されて、だんだん外國との自由競爭をしなければならぬような状態になつてくるというときにおいては、私どもはこれと對抗していくために、どうしても生産コストを引下げなければならぬ。そこにおいて大きな問題になつてくるのは、やはり勞働力の問題、勞働賃金の問題であります。そこで私はこの失業保險というようなものは、もちろんやらなければならぬ。できれば國家がこれをぜひ全面的に實行していかなければならないのでありますけれども、今日のような時代においては、日本の國の現在の經濟力においては、失業保險制度を今速やかに行うべきときであるかどうかということについては、よほど疑問があると思う。政府はこの失業保險制度なるものを、どうしても今すぐにやらなければならないと考えておられるか。私どもはそういうことについて、時期が少し早いのではないかという疑問をもつのでありますけれども、勞働大臣はいかようにお考えでありますか。
#10
○米窪國務大臣 もしも今までの内閣において、少くとも一年前にこの生産増強經濟再建が實現するような政策をとつておられたならば、今日われわれが當面しておるような困難は、もつともつと輕くなつたのではないか。これははなはだぐちですが、そう思います。また統制經濟のことを盛んに言われたのでありますが、今日のように物資の非常に少くて、いわゆる供給と需要とのアン・バランスの上においては、國民の毎日の生活に必要である物は、どうしても統制しなければならぬということは、私が言わぬでもおわかりのことと思います。そういうことから考えてきまして、今日生産力が起らぬ。昭和五年、六年の生産力のわずかに四割五分、昭和九年、十一年の生産力のわずかに三分の一という今日において、勞働者、すなわち勤勞によつて生活しようという者が非常に多い場合において、これらの人の生活必需品というものが、どうしても需要にミートするほど出てこないという場合においては、これはやはり失業保險、失業手當というものが最後の失業對策であるけれども、しかしさればといつて失業對策というものはやらなくてもいいということの理窟は立たない。もちろんその前提は就職の機會を増大することである。それからいわゆる職業輔導によつて、比較的に勞働力の需要の多い方面へ再訓練をするための勞務配置の轉換、こういうことも必要であるが、なおかつ食えないものは、生活保護法というようないわゆる救貧制度でなしに、社會保障制度として各國でこれをやつており、また日本でも從來長い間研究しておつたところの失業保險あるいは失業手當というものをやることが、私は少くとも今日の經濟情勢においては、決して妥當ではないという結論は生れないというぐあいに考えております。
#11
○倉石委員 本案のような制度はこれを悪用しようと思えば、相當悪用し得る餘地が多分にあると思うのであります。第一に失業保險法の第二十一條の受給資格のことでありますが、先日も政府委員から第二十一條のことについて御説明があつたのでありますが、「受給資格者が、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと又はその指示した職業の補導を受けることを拒んだときは、」本案によりますると、その職業が本人の能力から見て不適當と認められるときは給付されるということになつておりますが、これはやはり現在の日本のように、誰も一ぱいに働かなければならないというときでありますからして、これを本人の能力から見てその職業に耐えられないときとか、あるいは耐え得ないと認められるときというふうな程度にするのが妥當ではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。
#12
○米窪國務大臣 失業保險あるいは失業手當というものは、決して隋民を養成するという結果にはならないということを、政府は非常に強く考えておる。從つて給付のごときものを、いわゆる日額標準報酬の百分の六十というところに平均をとつておるというわけで、もちろんそれだけでは生活ができない。從つてこれは決して失業者の生活を全面的にカバーしようといふ趣旨ではないということを、まず第一に御諒承願いたい。御指摘の二十一條においては一應は第一項において、職業紹介所が指示した職業の輔導を拒んだときにおいては、その拒んだ日から起算して、一箇月間は被保險者の資格を失うということで、一應そこで一つの制約條項をきめまして、但しその拒んだ理由の内容としては、實は英語で言いますとイントレラブル、非常に耐えられないというのと、アンスータブル、不適當、いずれをとるべきかということで相當の意見があつた。しかしイントレラブルということは、その範圍が非常に解釋のしようによつてはむずかしいのでありまして、まずアンスータブル、不適當という表現を用いた方がよくはないかという説に失業保險起草委員會で意見がまとまつた。そうしてこれを閣議において決定して關係筋の了解を得た。しからばこのアンスータブル、すなわち不適當だという意味はどうであるかというと、前の職業の通りでなければアンスータブル、不適當だ、こうはわれわれは考えておらない。これはやはり政令でやるつもりですが、どれが不適當であるか、どの程度が不適當であるかということについては、相當われわれ政令で研究して、そうして倉石さんの御心配になるようなことのないようにしたいと考えております。
#13
○倉石委員 もう一つお伺いいたしますが、現在日本の産業における經理状態から見ますと、本案のごときものが施行されるようになりますと、貧弱な經營面においては、その負擔が相當増加されるのであります。そこで通例各企業においては、御承知のように、いわば失業保險制度のようなものを各會社で取入れて、そうして退職金とか解雇手當というようなものを支給しているのが多いのであります。それとこの失業保險とやはりダブらないようにして、そうしてこれを救濟する方法を當局は講じていただきたいと思うのでありますが、本案にそういうことを加えられるお考えはありませんか。あるいは取扱において別個にされるお考えでありましようか、その點を確かめておきたいと思います。
#14
○米窪國務大臣 お尋ねの點は、官吏及び官業の從業員に對しては、恩給あるいは退職金によつて支拂われる額が、失業保險の給付によつて受ける額よりもオーバーしている。それよりも多い場合においては、これは被保險者の資格の中、いわゆるここで言つているところの、指定した被保險者の中に入れないということになつているので、その點で調整ができる。民間の場合については局長からお答えをさせます。
#15
○上山政府委員 ただいま倉石さんからお尋ねの點でございますが、御承知のように工場等でもつております退職金でございますとか解雇手當等は、通例の場合といたしまして、勤續年限等を考えまして、長く勤續した者にはたくさんやるということが相當多いかと思つております。ところがこの失業保險においては、一年間に通算して六箇月以上という條件に適いますれば、一律に同じように失業の場合の保障を受けるわけでございます。從いまして失業保險ができたからといつて、今まであるところの退職金、解雇手當が當然なくなるということには考えられないと思うのでございまして、一應は二つのものが兩立する。こういう考え方でございます。但し具體的の解雇あるいは整理等の場合において、どの程度に退職金、解雇手當を今後きめるのがいいかというような選定にあたりましては、こういう失業保險法ができておりますときと、できていませんときとでは、おのずから違う場合もあるかと思うのでございます。法律上といたしましては、一應兩者は兩立するものと考えております。
#16
○倉石委員 政府委員にもう一つお尋ねいたしたいのでありますが、企業の方では給與を給付する場合に、扶養家族をもつている者と、もつておらない者とにおいて差異をつけているのでありますが、失業保險の給付に對しては、扶養家族を有する者と有せざる者と同額ということは、不公平のように考えるのでありますが、いかがでありますか。
#17
○上山政府委員 保險の給付額といたしましては、標準報酬に比例いたしまして、普通は第十七條に書いてございますように、標準報酬の百分の六十を基準といたしましてきめることになつておりまして、そのときに特に扶養家族の多い者と少い者とによつて區別はしないことになつております。但し標準報酬自體のきめ方といたしましては、單に本俸的なものではございませんし、現在こういう工場等でやつておりまする家族手當も、これは標準報酬の中に含ませたいつもりでおりますので、その限度におきましては家族數等も考慮されるということになるかと思います。
#18
○倉石委員 私どもももちろんこの失業保險法というようなものはかねて唱えておつたことでありまして、結構なことであります。國の財政が許すことであれば、こういうことはできるだけ早くやりたい。しかし先ほど申しましたように本案のごときは、外國の例を見ても非常に弊害を起しておるところもあつたのでありますから、そういう點運用の場合において、政府としては十分御注意を願わなければならぬことだと思うのでありまして、失業保險をもらつておつて、やみ商賣に没頭するというような者が必ず出てくるのであります。そういうことを取締る人よりは、それを濳る人の方が知惠が發達しておるのでありますから、そういうやみ商賣などをしながら失業手當、失業保險をもらつておるようなものは必ず出てくる。そういうことで國家の財政が加重せられるということにならならば、これは非常に悲しむべきことであります。そこで從來いろいろな社會保障の制度がありますが、政府としてはこの保險行政の充實をはかつて、失業の實體を的確にとらえて、監督上萬遺憾なきを期せられるように、特に政府に要望をいたしたいのでありまして、本法のごときは運用いかんによつては、國家の再建に非常に裨益するところあるのでありますが、へたをやると、先ほど米窪さんの言うように、いたずらにアイドル・ピープルを出すだけでありまして、よくないと思うのであります。政府はそういうことに力を入れられんことを切望いたしまして、質問を打切ります。
#19
○米窪國務大臣 御希望の點は運用上において十分注意いたします。ただ失業保險の給付を受けている者がやみを行つて、その方で主として生計費を維持するというようなおそれがあるだろうということでしたが、これは失業保險の給付を受ける者は、事前に一週間のうちたしか二囘だつたと思いますが、職業安定所に出て行つて登録しなければならぬという規定があるので、そういう規定によつて、そういう弊害はある程度まで避けられるというぐあいに考えております。
#20
○加藤委員長 前田種男君。
#21
○前田委員 安本長官に質問を通告しておりますが、後日に讓りまして、勞働大臣に伺いたいのですが、第七條は、恩給あるいは隱退料をもらつた場合に、その額が超過した場合は給付しない、被保險者でなくなるというような項目ですが、もしこれがこのまま適用されますと、官廰等において十年、二十年勤めておつた者が、失業保險の被保險者として掛金を掛けながら、結局適用が受けられないことになりますし、しかも隱退料のごときは勤續年數が長ければ相當の金額になりますので、この關係をもつと別途に考える考慮が必要ではないかと考えます。恩給、隱退料と失業保險とを一緒にしてやるというやり方は、全然別に考えるように考慮を願いたいと思いますので、この點に對してもつと明確にしてもらいたいと考えます。
 次に負擔額の問題でございます。原案は、政府勞資双方三等分ということになつております。政府の方については、あとで意見を申述べますが、勞資双方の負擔額については、勞働組合でも産別あるいは共産黨關係の組合では、事業主が全額負擔すべきだ、あるいは四分六に負擔すべきだというようなまちまちの意見等もございます。しかしこの點は明確に、勞資双方の掛金はともに對等の立場に立つて同額を負擔すべきであると力説しておるわけです。その理由は、今後の社會保險は、使用者の恩惠的な給與によつて經濟的に援助してもらうという觀念を一擲いたしまして、勞働者も使用者と同等の負擔額を負擔するという建前が、今後の健全なる社會保險發達の原則だろうと考えます。また事業家に全額負擔をさせなければならぬという言い方は、勞働組合が十分發達していない、あるいは勞働者自身が勞働組合の訓練を受けていない場合に、幼稚なものを取上げまして、勞働組合がいかにも事業者からそういう勞働條件をとつてやつたというような一つの餌にするという行き方も見受けられます。結局はその工場における勞働條件全體を總括して、勞働條件をどういうようにきめていくかということになつてまいりますので、保險金を會社負擔にするとか、あるいは税金を會社負擔にするというような工場等がございますが、こうした問題はすべて全體の勞働條件の中に包含しているということをわれわれははつきりと銘記して、その勞働條件の一部であるということを考えますがゆえに、そうした税金とか社會保險の負擔金等は當然同額負擔する、そうしてあくまで全體の勞働條件を高く維持しつつ高能率をあげるという建前をとつていきたいと考えます。ただし今日のような情勢下における政府を含めての三等分という按分の負擔額につきましては、社會黨でも論議されましたように、政府は事務負擔額が別にありますが、むしろこの際全體の負擔額の上においても政府が四割を負擔して、殘りの六割を二等分して勞資双方が負擔するという建前をとつたらどうかと私は考えます。もちろんこれは政府の豫算に重要な關係がありますので、容易でありませんが、この際民間企業その點につきましても、經濟的に非常な負擔が加重されている現状でございますから、社會保險の重要な部面をなすこの保險においても、政府が相當多くの負擔をもつように努力してもらいたい。それと併せまして、今朝の新聞によりますと、失業保險額が追加豫算の中から減額されるという記事がありましたが、もしそうしたことになりますと、せつかく審議しておるこの失業保險制度の根本に狂いが出てくると私は考えますので、この點についてこの際勞働大臣から明確に御答辯願つておきたいと考えます。
 その次は五十三條の罰則の點でございますが、このような法規を施行するにあたりまして、罰則の五十三條は、これに違反したる者は一萬圓以下の罰金に處すというだけでございます。もしこの法律を無視しても、罰則は一萬圓以下の罰金だけであるということになりますならば、今日一萬圓くらいの罰金なら出してもいいという不心得な事業主も、相當出てきはせぬかと私は考えます。そこで、あくまでこの一萬圓以下の罰金の上に、相當な體刑を科すという條項にすべきだと私は考えます。そういう罰則を設けましても、違反者をなからしむるということが法の趣旨であります。政府の處置よろしきを得ればそうなると思いますが、しかし悪質な違反者があつた場合には、罰金以外に體刑を科し得る條項に訂正したらどうかと思います。この點も併せて御答辯を願いたいと考えます。
#22
○米窪國務大臣 第一の御質問の第七條の點ですが、大體においてこの査定は非常にむずかしいのであります。その人が向う何年經つて滿期になつて恩給を受ける資格ができる、あるいは退職金をもらう資格ができたときに、そのもらう恩給及び退職金が、そのときに受けるいわゆる標準報酬日額から算定して受ける現給額と比較して多いときには、被保險者資格を初めからやらない。從つて保險料を徴收するということもないのでありますから、その御心配は要らないのであります。ただ何年か先のことを見透してやるということが非常に困難だと思いますから、それは政令においてそれを詳しく規定する考えでおります。
 第二の點は、負擔の分擔の點にお觸れになつたのですが、前田さんの御意見によると、政府が事務官のほか四割もつ、こういうことですが、これは前田さんすでに御指摘の通り、國の財政上からして一應十五億という失業手當、さらに失業保險については今のところまだはつきりきまりませんが、大體その程度になるだろうと思う。すなわちある人によつては、なぜもつとよけい取らぬかという意見も出ているのに、現下の國の財政ではその程度きりできない。從つていわゆる被保險者の二十分の一が、ようやく保險給付を受けるというような計算をわれわれ立てているように、非常に嚴重に窮窟な吟味をしているのは、この國の財政という點が非常な考慮になつているのでありまして、その際に政府が事務費のほかに四割まで保險料をもつということは、實際上今日の敗戰日本の國の財政からみて、これはとうてい困難だと思います。またこれは保險の理論から言いましても、保險者である政府、それから被保險者、そしてこれに關連のある經營者、三者がやはり同一にもつということがきわめて公平じやないか、こういう工合に考えております。そこで御參考までに申し上げますと、健康保險あるいは厚生年金のごときは、政府はほとんど事業費だけきりない、殘りを經營者と勞働者がもつ、こういう状態になつているので、それはあまりに政府の負擔が均衡を失するということでもつて三分の一、そのほかに政府は事務費をもつ、こういうことにしたのであります。この邊が一番公平な考え方でないかと考えたのであります。
 それから本日の毎日新聞の記事は、まだ私は見ておりませんが、これはちよつと速記を止めて……。
    〔速記中止〕
いまだ閣議なり、その他のわれわれのいわゆる正常な方法によつて得た情報には、そういうことはございません。この點だけはこの際において、全然心配はないと私は斷言はしませんが、目下大藏省が折衝中でございまして、おそらくそういうことは大藏大臣といえども承知しないだろう、こういう工合に考えております。
 それから五十三條の點でございますが、なるほど一萬圓というものは、今日の貨幣相場では罰金として安いかもしれません。しかしこの一萬圓ときめた法律が、あるいは通貨が安定し、あるいは物價が下つてきた曉を考えると、私は今日でこそ一萬圓は安いけれども、あるいは五年先、十年先にいくと決して安くないと考えているのであります。ただ前田さんのお尋ねは、さらに體刑を加えろということですが、これはほかの保險立法と比べまして、この法律だけ體刑をつけることはいかがなものかと考えるのであります。ほかの保險法には體刑というものはありません。この點はもし必要ならば、さらに司法當局の出席を求めてお尋ねを願いたいと考えます。
#23
○前田(種)委員 第七條の問題はもつと檢討したいと思いますので、私はあとで意見を申し述べたいと考えます。政府委員の間においても、恩給、退隱料とこの失業保險との關係等について、もつと詳細に檢討した資料を出していただくようにお願いします。それから負擔金の問題等につきましては、もちろん政府の苦しい財政の點はよくわかりますが、それ以上に民間事業も苦しい經營の實情にあるということと、なお被保險者であるところの勞働階級も、これまた今日の生活面においては非常に苦しい状態にあるということをよくお考え願つて、さらにこの點についても意見をあとで述べたいと思います。さらに今の罰則の問題につきましては、私はこれはぜひ本案審議の過程においてここを檢討してみたいと思います。體刑を加えるか、さらに公民權を剥奪するという條項を追加するか、何らかの形にしなければ、もちろん五年、十年先の通貨が安定した場合の一萬圓の價値というものは多くなるかわかりませんが、もうすぐ十月一日からでも施行しようとしております本法でございますし、ここ一、二年の間におけるところの本法が、いかに施行されるかという點が一番重要でございますので、一萬圓程度の罰金だけでは實際の施行が心配されます。ゆえにこの點はもつと考慮していただきたいと考えます。
 最後に私は勞働大臣に特にお願いしておきたい點は、本法が施行されますならば、相當の企業が、失業保險ができたということのために、相當整備をするのじやないかというように考えます。もしこの法律が施行されたために、各工場が全國的に整理をして、失業保險法ができたから、失業手當法が施行されたから、待つてましたというように、どんどん首切りを始めることになると、この法律が首切りをする法律になつてしまうという危險性が相當あるわけでございます。ゆえにこれの施行にあたりましては、そうした工場が整理をするか、あるいは整理をしなければなりきれぬというような場合は、少くとも中央勞働委員會、あるいは地方の勞働委員會に提訴して、その委員會の公正なる判斷によつて、初めてそうしたことが考慮されるというような嚴重な、そうした觀念をもつようなやり方をやらなければ、このまま施行したままで放つておきますならば、大變な結果になるという心配がありますので、この點については全委員とともに、この法案をしあげるにあたりまして、私は運用上におけるところの強い希望、その他の點について意見を申し上げておきたいと考えますが、この點についての大臣の御意見を承つておきたいと考えます。
#24
○米窪國務大臣 前田さんの最後の御意見は、しごく同感でございます。この點は特に國會が休みになる前に、この法律案を議會へ提出したときに、私が大臣談話として各新聞に發表したその談話の中に、この點を特に力説して、くれぐれもこの失業保險及び失業手當の兩法案は首切りというものと交換問題とするものじやない、これが首切りを促進するような、過つた經營者があるならば、これは嚴重にわれわれとしては反省を求めるつもりである。また必要によつては、勞働大臣として適當な處置をとるつもりであるという意味の聲明を、私はその點を憂慮して出した。今後この法律をいよいよ實行する場合において、皆さんの御協力を得て適當にその點は處置を講じたいというように考えております。
#25
○加藤委員長 それでは本日はこれをもつて終りますが、散會する前に、この前の委員會で皆さんに御注意申し上げておきましたように、公務員法の決算委員會に付託されまして、二十六日に勞働委員會と連合審査をいたしたいというこであります。御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○加藤委員長 もし委員諸君の中で御質疑なり御意見のおありの方は、この合同審査會に臨んで、御意見なり御質問をしていただきたい。御意見がなくても、できるだけ出席していただきたいと思います。
 本日はこれにて散會いたします。
   午前十一時五十三分散會
ソース: 国立国会図書館
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