くにさくロゴ
1947/10/03 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第17号
姉妹サイト
 
1947/10/03 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第17号

#1
第001回国会 労働委員会 第17号
昭和二十二年十月三日(金曜日)
    午前十一時三十五分開議
 出席委員
   委員長 加藤 勘十君
   理事 山下 榮二君 理事 川崎 秀二君
   理事 橘  直治君 理事 原   侑君
   理事 三浦寅之助君
      荒畑 勝三君    菊川 忠雄君
      島上善五郎君    田中 稔男君
      館  俊三君    前田 種男君
      山崎 道子君    小川 半次君
      尾崎 末吉君    寺本  齋君
      松本 一郎君    河野 金昇君
      綱島 正興君
 出席國務大臣
        勞 働 大 臣 米窪 滿亮君
 出席政府委員
        勞働事務官   上山  顯君
 委員外の出席者
        專門調査員   大橋 靜市君
        專門調査員   濱口金一郎君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 失業手當法案(内閣提出)(第五二號)
 失業保險法案(内閣提出)(第五三號)
    ―――――――――――――
#2
○加藤委員長 これより會議を開きます。
 前會に引續いて質疑を繼續いたします。荒畑勝三君。
#3
○荒畑委員 私はきわめて簡單に二、三お尋ねしたいと思います。この委員會へ片山總理が來られて御説明の際に、失業者をなるべく出さない方針である。整備は馘首を意味するものではないのであつて、勞働力の配置轉換によつて失業者をなるべく出さないようにしてまいりたい。やむを得なかつた場合に、失業者が出た際には失業保險等で救濟する。こういう話であります。私もそれには滿腹の同意を表するものであります。勞働省の勞働行政の建前もまた、この片山首相の聲明の線に沿うているものと承知をいたしております。しかしその點だめを押すようでありますが、勞働大臣から、はたしてこの首相の聲明に從つて、そういう方針をとられるかどうかということを第一にお伺いしたいのであります。
 第二にお伺いしたいことは、しかし政府は整備は馘首を意味しない、なるべく失業者は出さないように、勞働力の配置轉換に重きをおくというのでありますが、こういうことは言葉ではたやすく言えますが、實際に行うとしますと、なかなかむずかしいのじやないかと思います。今富士産業――昔の中島飛行機でありますが、その富士産業十七工場に約一萬人の罷業が起つています。これはちよつと新しい形の爭議であります。賃金の方はどうやら解決がついたようでありますが、また解決されない問題が殘つておる。それは富士産業十七工場が、興銀や復金から大分借金をしておる、七千二百萬圓という借金をしておる。その中の荻窪工場だけでも八百八十萬圓であります。日歩二錢三厘の利子を拂いますと、荻窪だけでも元利一千萬圓の借金になる。ところでこれは企業再建整備法の第十一條かによりますと、新勘定の借入金はすべて第二會社が繼承するという意味の條項があるのでありますが、この多額の借入金というものはほとんど大部分が工賃などの人件費に使われておりまして、直接生産の面には使われていない。運轉資金には使わけても、ごく一小部分であります。そこでこの富士産業のような賠償指定工場になつておりますところが第二會社をつくる場合に、これが繼承されることになるとなかなか立つてはいかないのであります。うんと人減らしをするか、賃金をうんと安くするか、どつちかにしなければ立つていけようがない。これはひとり富士産業ばかりではありません。三菱重工業にいたしましても、新潟鐵工にいたしましても、日立、池貝、日産重工業、みな同じような状態にあります。今年の一月に富士産業で爭議が起りました際にも、社長と交渉いたしまして、社長はこの借入金を第二會社が繼承しないように善處するという約束を與えておるのでありますが、實際にはそうはいかない、興銀から來た代表者は、それでは決して承知はしない。そこで單に借金を上げるとか何とかいうだけではなくして、第二會社が借入金を繼承するということをしないようにしてもらいたいということが、爭議の一つの大きな眼目になつて、賃金は方は片づいたが、この方はまだ片づかぬという状態にあります。企業再建整備法にこういう條項があつて、しかも多くの重要な工場が多額の借金を背負つておる。その借金の大部分は人件費に使われておつて、運轉資金にほとんど使われない、直接生産に使われているのじやない。それを第二會社がそつくりそのまま引繼ぐというのでは、これはどうしても多くの失業者が出ざるを得ない。人員の整理が行われざるを得ない。人員の整理を行わないとすれば、賃金をうんと安くたたき落さなければ立つていかぬということになる。私はこれは非常に矛盾じやないかと思いますが、こういう點でもし勞力の配置轉換を主として、なるべく馘首しない、できる限りしないということが、新しい勞働行政の建前といたしますならば、この矛盾がどう解決されるものか、その點をひとつお伺いしたいと思うのであります。
#4
○米窪國務大臣 片山總理が聲明を出されたことは、おそらくこの委員會か、あるいはほかの委員會で、荒畑さんの御質問のような點を質問されたときの囘答ではないか、説明ではないかと思いますが、勞働省としては失業保險、失業手當というのは、失業對策の末の末で、失業對策の根幹となるべき對策は、乏しい國力を割いても、あるいはわれわれの努力によつて、何とかして就職の機會を増大しようということに全力を傾ける。それがためには全國五百何十箇所の職業安定所を動員するなり、擴張するなり、機能の再整備をやつて、これをフルに働かせると同時に、三百何十箇所の輔導所を十分に活用したい。これは前にも申し上げた通り、昭和二十一年の求人數が三百萬に對して、求職者は二百二十萬に達しない、就職の成立したものが百三十萬という状態であるから、このアンバランスをわれわれの行政面においてひとつ克服するように努力する。從つてそこに、就職の機會が相當未解決になつておつたものが解決される餘地があるのじやないか、こういうぐあいに考えております。もちろん荒畑さん御指摘のように、企業再建整備法の第十條により、一應第二會社が舊會社の社債ですか、そういう負債を繼承することになつておりますが、これには全部を繼承するのではなしに、「新勘定に所属する資産の全部又は一部を出資する場合においては」という條件があるので、多少これによつて第二會社のいわゆる舊會社に對する尻拭いの責任が輕減されるのでないかと考えております。もちろん富士産業の爭議の内容については、まだ詳しいことを聽いておりませんから、こういうことに該當するものであるかどうかということを明確にお答えできませんが、いずれにせよそういつた事例は一つの事例にすぎないだらうと思いますが、そういう事例が起り得るだらうと考えております。但しわれわれとしては、はなはだ抽象的なお答えで相すみませんが、ただちにそれは人員の整理へ結果が及ぶ前に、企業毎に企業の再建という面において考えていくということ、企業の合理化、技術なり經營の方面において改善することによつて、ただちに首切りにいくまでの間に、技術的あるいは經營的な合理化によつて誠首すべき人間が少くなるのではないか、こう考えておるのでございます。もちろん片山さんがどういうことを言われたか知りませんが、われわれの目的は、この失業に對する勞働政策としては、完全雇傭ということを目標としてまいりたいのでありますが、これはもう荒畑さんすでに御承知の通り、私もまたたびたび申し上げる通り、資金の面において行詰り、資材資金の面においてほとんど底をついておる日本の現状においては、生産の増強というものが起り得る要因と稱するものが、きわめて材料が少い、またわれわれとしても、勞働者の生産性の高揚のみにまつということではなしに、資材も施設も、改善し、あるいは供給しなければならぬ面があるのであります。それはおのずから制限があるので、從つて今われわれが相當強い關心をもつておるのは、生産性の高揚ということなのでございます。しかしこれもやはり、いかに勞働者が生生性も高揚しようとしても、勞働者に對する最低生活費の裏付けというものがなければ起らないことも自明の理である。從つてこういういろいろの隘路を考えていきますと、ここに企業の面、經營の合理化という面から考えて、すぐ人員の整理という段階をとるにしても、なお若干の私は失業者が出てくる。私も各企業ごとに一人の失業者も出さないということは困難であると考えております。そういう者が出てきたときは、職業補導所における勞務の再配置、配置轉換、あるいは公共事業、あるいは公共事業に含まれておらない新しい事業を計畫してまいりたい。さいわいにして五億ドルのクレジツトのレボルヴイング・フアンドも貸し與えられたのでございまして、もちろん國内保有量というものはおのずから制限がある。この中の二割はやはり國内に、それ以上保有してはいけないということであるから、そこにおのずから限度がございますが、輸出貿易を振興することによつて、中小工業の發展を促して、その方面へ吸收し得る勞働者があり得る、そういうぐあいに考えておる次第でございます。さればといつて私は、企業整備によつて失業者が増大することが絶對ないとは言えない。政府としては、一人でも少く、そういう犧牲者の出ないことを心がけておる次第でありまして、大體において片山さんの言われた線に沿うていきたいと思つておりますが、片山さんの言われたよりもつと深刻に私どもは考えておる次第で、勞働省の立場としては全力を盡して、そういう失業者を一人でも少くするような方向でわれわれの政策を推進していきたい、こういうふうに考えております。
#5
○荒畑委員 せんだつてここで、たしか辻井君の質問に對する勞働大臣の御答辯の中に、勞働者はこの際空腹に耐えてでも生産闘爭に努力してもらいたい、こういうお言葉がありました。その點も私は非常に同感であります。いわゆる耐乏生活というもので、むしろ今日のような状態のもとにおきましては、勞働者階級が率先して、自發的に、積極的に、そういう意圖を振い起して増産に當るのでなければ、このインフレの悪盾環を斷ち切ることができないと私も思つております。しかしそれにはやはり一定の條件があるのでありまして、流通秩序の確立とか、やみの撲滅とか、そういう方策によつて勞働者の實質賃金を確保するということができなければ、それは單なるお説教に終つてしまう。それではどんなに耐乏生活を忍んで増産に努めよう、また政府の方針に協力しようと思いましても、なかなかこれは生身の凡人でありますから、できることではないと思います。
 私の望みたいことは大口のやみ屋というような者に對して、徹底的にこれをしぼりあげるような政策がとられて、勞働者が、なるほど自分たちも苦しい耐乏の生活を忍ばなければならないが、しかし一方で政府が、萬人を苦しめておるインフレに乘じて、やみによつてかえつて反對に利益を得ておる少數の人間に對しては、こういうような手を打つておるのだということを現實に見なければ、私はなかなかそういう氣持は起らぬと思うのです。
 ただ自分だけが耐乏生活を強いられておるのでは、政府の意圖がどうであろうとも、結果においては勞働者の犧牲において政府が手をつけない、やみ屋の利益をはかるというような氣持を起させるとしても、私はそれは無理ないことではないかと思うのです。大きなやみ屋、やみ利得者に對して高額の税を取立てろというような要求に對しましても、政府はいつも捕捉することができないというような、のらりくらりとした答辯でお茶を濁しておるのでは、私はこれはどうも勞働者に耐乏生活をしてもらいたいといつても、なかなか實際の效力はなかろうと思う。大きなところはもちろんでありますが、勞働大臣も勞働組合に向つて、やみの撲滅に對して協力をしてもらいたいという要請をしばしばなされておられますが、こういうやみ屋の撲滅なんということに對する、大は政府から小は警察の當局に至るまで三日坊主であります。ちよつと一時はやりますが、それがすぎるともう勝手に、禁止されておる主食物が公然と路傍で賣り擴められておる。白いコツペが公然と賣られております。眞白なうどんが公然と賣られておる。砂糖は私ども何年にも口に入れたことはありませんが、阿佐ケ谷の譯に行つてごらんなさい、百匁三百八十圓で公然と賣つておる。特に第三國人、あるいは第三國人に名を借りた主食物の販賣は公然であります。淺草あたりに行けば公然と賣つておる。一體第三國人であろうが、もうすでにそういう主食品の販賣は、してはならぬことになつておるのだと私は考えておるのでありますが、言つた當座はやつたでありましよう。しかし三日坊主で、もう今日では公然とやつておる。高級の料理店は禁止されておるのでありますが、しかしいろいろな方法で法律の裏を濳つて、高級料理店が營業をしておるのであります。現に私はそういうところに人に引張られて行つたことがある。仕出しであるとか何とかいう逃道をつくつてやつております。そういうことを徹底的に一方でやるのでなければ、私はいわゆる流通秩序の確立ということはできないと思う。そういうことを一方でやつておつて、百匁三百八十圓も出せば砂糖も十分に手にはいる。何でも金さえ出せば、高級料理店にでもどこにでも行けるというのでは、勞働者に耐乏生活は御免こうむると言わざる得まいと思う。
 私は先月の末新潟縣に參りましたが、朝九時に長岡發上野行の列車に乘りますと、ほとんどやみ列車であります。皆大きな米の袋を抱え込んでおる。その中に乘つておつた一人の朝鮮人のごときは、公然と俺は一斗もつておると言うのです。こういうことも、ときどきはなるほど警察が驛頭でそういうのを引上げますが、しかしすぐまた忘れてしまつたようにやられておる。なかなかそういう列車々々を、一人檢査するというようなこともむずかしいかもしれません。人數も足りないでしようし、むずかしいことかもしれませんが、一體に取締というものはむしろ三日坊主であります。そういう點を嚴重に行つて、そういうちつぽけなやみ屋ばかりではない、一斗くらいを背負つてくるやみ屋ばかりではない、インフレの原動力となるような大口のやみ屋に對して、徹底的な取締を政府はやる意思があるのか、ないのか。そうしてそれによつて、そういう實績、實状を見せて、こういうふうにやつておるから、勞働者諸君も耐乏生活をやつてもらいたい、こういうのでなければ、私は實效はないと思うのでありますが、その點米窪勞働大臣の御覺悟のほどを私は伺いたいと思います。
#6
○米窪國務大臣 一々ごもつともでありまして、これは昨日も勞働組合の代表者會議の席上でも問題になつたので、政府としては、勞働組合にやみ撲滅運動を起してくれということを要請すると同時に、そういうことをお願いする政府みずからが、物資活用委員會等の運動によつて、單に掛聲だけでなく、實際に取上げなければならぬということを強く要望されたのであります。私としては司法大臣、内務大臣等に、これらの取締りを徹底するように、先ほどの閣議に要望してまいつたのでありますが、しかし實は荒畑さん御指摘のように、現在警察官の給與なり、新圓成金、その他いわゆる不當所得者に對する收税の徹底化ということについては、税務官、收税吏等の給與なり、あるいはそれの身邊の安全ということを政府がやらない限り、能率が上らぬ。
 そこで給與の問題になつてくると、そういう特殊の官吏だけの給與だけを上げるということは、今日の千八百圓ベースの問題になつてきまするが、その建前上非常に困難である。しからば請負というのか、でき高拂いというのか、そういう保證制度にしたらどうかということも、大藏大臣が案を建てておりますが、これも大藏省の考え方によるとなかなか困難であるということで、結局はそういつた危險から政府が護つてやること、さらにそういう仕事をやるには、たとえば警察官に對しては危險手當とか、あるいは收税官に對しては、能率給を加味したような特殊の給與を考えなければならぬという點も、一つの隘路になつておるのであります。散發的な取締りではいかぬ。やれということになれば、人數を殖さなければならぬ。こういう問題によつて、そういつた隘路がたくさんありまするが、いやしくも政府が、勞働團體にああいうことを提唱した以上は、政府みずからが、政府のやるべき限界において、ひとつ勞働組合のそういう運動すに對る奮起を促す意味においてやらなければならぬ、こういうぐあいに考えております。勞働省が手兵をもつておつて、警察官をもつておるならば、たちまちやります。しかし勞働省は勞働政策を立てる省であつて、そういうことにあたる警察官もなければ、いわゆる税務官もないので、これはこの關係各省に要望するよりほかに方法がないのでありますが、昨日のあの提唱は、單なる勞働大臣の提唱でなくて、政府の提唱でございます。政府は今御指摘のような點については、強力にその效果の上る施策を講ずるつもりでございます。
 いずれにせよ、われわれとしては、隱匿物資の調査及び摘發、これは委員長が關係されておる方面にも連絡があることになるのですが、やみ流しの資材の報告、それから司法官、警察官が、何といつてもやみ屋と結託とまでいかなくても、やみ屋と連絡がある場合が豫想せられる。そういうものはどうしても政府の手ではわからないので、私どもはこれを勞働組合の手でもつて摘發してもらいたい。こういうことを昨日勞組の代表者にお願いしたのであります。また政府の手でとうていいかない問題としては、配給機構の不正あるいは横流し、あるいはやみ商人のいわゆるやみ行為、こういうことはやはり六百萬人の組織をもつておる勞働者が立つてやらなければならぬという點で、特に私はこの點を指摘し、要望しておるわけ合であります。
 ただ問題は、おれたち千八百圓に縛られて腹がへつておるのに、そんなことができないということでありますが、勞働渦中にあつて一番の被害者は勞働者であるから、その勞働者が自衞手段としてやるべきではないか。政府のためにやるのではない。あるいは社會のためにやるのではない。自分らの生活を自衞していくために必要ではないかということを言つておるわけであります。こういう提唱をする以上は、政府としても相當の決意をもつてやるということを、ここで御答え申し上げます。
#7
○荒畑委員 もう一、二點お伺いしたいと思います。失業保險法の條文についてお伺いいたしたいと思います。それは第二十一條に、「受給資格者が、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと又はその指示した職業の輔導を受けることを拒んだときは、その拒んだ日から起算して一箇月間は、失業保險金を支給しない。但し、左の各號の一に該當するときは、この限りでない。」と四つの條件があげられてあります。ところがこの中には、爭議行為の起つておるところに就職を指定された場合に、それを拒むことができるというような條項はないのでありますが、私はそういう條項をここに明白に規定する必要があるのではないか。すでに職業安定法の中にも、先ほどの修正案の中にそういうことが明白に規定されておりまするが、第十八囘國際勞働總會の、非任意的失業者に對する給付條約案というものの第十一條第一項の八という條項には、提供せられる位置が産業爭議に起因する作業中止の結果としてあいているときは、提供された勞務を拒絶することは正當と見なされる。こういう規定があるのでありまするから、この第二十一條の一項から四項までの規定の中に、やはりこういうことを明白に規定しておく必要があろうと思うのでありますが、これに對する當局の御見解を伺いたいと思います。
#8
○米窪國務大臣 これは先ほど委員長から御報告のあつた職業安定法二十條との關連の問題であります。ああいう正當な理由をもつて、あれに該當する事例において紹介を拒み、あるいは紹介しないという人については、その人が失業者であつて、いわゆるスキヤツプとして會社の方から雇入れようとしたときに、もちろん職業安定所はこれを拒む。これに該當したときは、そういう但書がなくとも、一から四までの各號のほかに、もう一つつけ加える必要のないほど當然なことでありますから、給付權者たる資格を失わない。こういうふうに解釋しております。これをこの場合に、職業安定法は優先的に施行しますから、荒畑さんの御心配はないのであります。
#9
○荒畑委員 もう一つ、やはり第十八囘國際勞働總會の、失業保險及び失業者扶助方法の勸告という中の第十二條に、失業救濟の資金の一部を、居住區域以外の土地に就職する者の旅費支辨にあてしむべしという規定がありますが、こういう規定も、この法案の中に入れる必要はないのでありましようか。
#10
○上山政府委員 お答え申し上げます。それはこの失業保險法の第二十七條の費用の支給といたしまして、範圍が若干食い違つているかはしれませんが、趣旨といたしましては、公共職業安定所の紹介した職業に就きますために、住所又は居所を變更するために、政府は命令の定めたところによりまして、受給資格者及びその者により生計を維持されている同居の親族の移轉に要する費用を支給することができる、こういうことに相なつているわけであります。
#11
○荒畑委員 わかりました。これはほんのお尋ねをするばかりの話で、私の知識が足りない點を補つていただきたいと思うのでありますが、勞働組合が自分で失業共濟制度を設けて、組合員に失業者が出た場合には失業手當を組合が支給するという場合に、この本法と牴觸して執行するようなことはないだろうと思うのでありますが、勞働組合が企業家、雇主との間に、失業手當基金を積立てさせるというような團體協約を結んだ場合があると假定いたしますと、本法と牴觸して執行するようなことはないか、それをお聽きしたい。これは日本ではまだ、あつたためしも聞きませんし、またなかなか當分ありそうもないことでありますが、しかし實例がないわけではないのであります。かつてアメリカの衣服勞働者の組合大會で、資本家に、組合が組合員の失業手當を出す資金を積立てるのでなく、平生の會社の利潤の中から、そういう萬一の場合に備えて積立てさしておくそういう決議をやつている。これは失業というものは勞働者の責任ではない。現在のような資本主義制度のもとにおいては、不可避的におこる現象なのであるから、その責任は一に資本家の負うべきものである。そういう建前からでありますが、日本にもこういうことが近い將來に起らないとは限らないのでありまして、こういう場合に、かりに會社が勞働組合との團體協約に基きまして、利潤の中から不景氣がきて、あるいは恐慌が起つて失業者を出さなくてはならないという場合には、失業手當を會社が支給する、そういう基金を積立てるというようなことが起りました際に、本法と牴觸執行するというようなことはないものかどうか、いかがでありますか。
#12
○米窪國務大臣 失業保險というのは、御承知の通り國及び經營者、勞働者が三分の一ずつの保險料の負擔義務をもつておるもので、從つて失業保險に關する限りは、かりに荒畑さん御指摘のような團體協約によつて、經營者と勞働者の間にそういう取きめをしたからといつても、法律的にはなんら差支えない、こう考えております。この失業保險の第七條には、官業及び官公吏は恩給その他退職手當をとつて、この失業保險による給付額をオーバーした場合には、被保險者からはずれるということがありますが、この法案においては、私企業の場合においてはそういう規定がないのでございますから、私はこれは失業保險法と兩立できる、こういうように考えております。なぜそういうことを申し上げますかというと、失業保險というものは、勞働者側の立場から考えると、一種の相互扶助でございますから、勞働者が相互扶助をやるということでいく場合において、勞働者、經營者各自がその負擔を分擔するということであれば、私はこの法律には觸れないと思います。ただ失業手當の場合ということになると、國だけがこれを拂うのであつて、勞働者及び經營者の方では、兩者とも負擔の義務がないのでございまするが、同時にそれは、そういうものをやつたからといつて、國に餘分の負擔が加わるものでないのでございますから、私は差支えないと思つておりますが、なお少し調査研究しまして、次の機會にはつきりお答えいたしたいと思います。
#13
○加藤委員長 それでは今日は質問はこの程度に打切りまして、ことによると、明日本會議に職業安定法の緊急上程をしてもらうようになるかもしれませんので、その前にあるいは、委員會を開いて採決しなければならぬようになるかもしれませんから、もし公報に出ましたら、ひとつそのおつもりで、明日委員會は採決しますから、ぜひ御出席をお願いしたいと思います。
 今日はこれをもつて散會いたします。
   午後零時十七分散會
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト