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1947/10/10 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第19号
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1947/10/10 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第19号

#1
第001回国会 労働委員会 第19号
昭和二十二年十月十日(金曜日)
    午前十時四十六分開議
 出席委員
   委員長 加藤 勘十君
   理事 辻井民之助君 理事 山下 榮二君
   理事 川崎 秀二君 理事 橘  直治君
   理事 相馬 助治君
      荒畑 勝三君    島上善五郎君
      田中 稔男君    前田 種男君
      山崎 道子君    山花 秀雄君
      小川 半次君    寺本  齋君
      松本 一郎君    江崎 真澄君
      古島 義英君    吉川 久衛君
      河野 金昇君
 出席國務大臣
        勞 働 大 臣 米窪 滿亮君
        國 務 大 臣 和田 博雄君
 出席政府委員
        勞働事務官   上山  顯君
 委員外の出席者
        專門調査員   大橋 靜市君
        專門調査員   濱口金一郎君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 失業手當法案(内閣提出)(第五二號)
 失業保險法案(内閣提出)(第五三號)
    ―――――――――――――
#2
○加藤委員長 これより開會いたします。
 前囘に引續いて質疑を繼續いたします。前田種男君。
#3
○前田(種)委員 安本長官がお見えになつておりますから、私も先を急ぎますから、できるだけ簡單に質問を申し上げたいと考えます。
 第一點は、昨日本會議で説明されました經濟力集中排除法案が施行されました曉きに、失業問題がどういうふうになるか。この問題に關連して、安本に對する具體的な計畫案等がございますれば、この際勞働委員會を通じて、明確にしていただきたいと考えます。
#4
○和田國務大臣 經濟力集中排除の場合は、再編成計畫を個々の指定されました企業が立てることになるのでございますが、今その指定の範圍等が明確にきまつておりません。大體百五十社くらいのものが今までのところ向うのなにを受けているわけでありますが、これがどの程度になりますか、實際上の具體的な基準を持株整理委員會の方から公表することになりますし、それに從つて指令を行つていくことになる。それらのものが實は明確になりませんと、今おつしやつたように失業者がどの程度かということは、私どもの方としては、まだはつきりした見透しはできていないのであります。この點につきましては、もう少し事態が進んでくるに從いまして、自然にある程度の見透しがつくだろう、こう考えております。
#5
○前田(種)委員 今長官の答辯は無理からぬ點がありますが直接それに關與するところの事業會社等に働いておりますところの社員、工員に至るまで、この問題のために非常に神經過敏的に、毎日頭を惱ましているという現實の問題があるわけです。しかも、もしこれで相當失業者として押し出されるということになりますと、長年勤めておつた工場會社から追われて、次の就職先というものは、今日の現状においては、容易に見出し得ないという押し追つた今日の社會情勢を考えてみましたとき、この點に對するところの政府の明確な指針を與えてやる必要があると思います。その點に對しまして、もう少し具體的にこの問題に對しては大體の見透し等を、政府として聲明してもらえるのではないかと考えますが、重ねて重要なことでありますから質問しておきたいと考えます。
#6
○和田國務大臣 ごもつともでありまして、相當重要な問題と私も思いますが、今度經濟力集中排除の場合には、結局具體的な基準をきめて、再編成の方の計畫は個々の指定された企業自身が内部的に、これをつくつていくということにして、その計畫自體の決定があつた場合にも、やはり利害關係人の方から、實際上の證據を採用しなかつたとかなんとかいうような場合には、異議の申立なんかもできるようにしておりますし、それから利害關係人の聽問會もまた開くということになつておりまして、もちろん内部的に企業自體がこれを立てていくということになつておるのでありますが、政府としましても、その具體的な基準の決定等につきましては、持株委員會にかけて公表することになつておりますが、われわれの方としても、この點については十分に、これに參畫といいますか、一緒になつて立てて實際に指導していきたいと思うのであります。しかしこれこれの業種別について、今どのくらいのものが豫想されるということは、ちよつと今の事情では明確に申すだけの段階にはまだきていないと思うのでありますが、しかしいずれこれが具體的な基準がはつきりして、指定をする範圍も明確になつて來ますれば、それぞれの個々の企業において、排除されるものは排除される計畫が立つて來ますから、そういうようなものは明確な見透しが、全般的につき得るのではないかと思います。
#7
○前田(種)委員 この案件につきましては、これ以上質問をいたしませんから、どうぞ本安長官としましてはこの法案の審議の過程においても、そういう計畫あるいは見透し等が明確になりますれば、重要なる勞働面から本委員會に進んで發表されることを希望しておきます。
 次の質問は、八月の委員會の席上で、長官がお見えにならなかつたので、勞働局長に質問をして、できれば案本案として政府案を發表してもらいたいという質問をしておきました。今日政府が計畫している計畫は、主として物の面と金の面から計畫を立てているわけです。私はこの點についても、當然そうあるべきだと考えますが、さらに重要な問題は今日の日本の八千萬という國民を、どういうようにそれぞれの職につけるかというのが、政府の一番重要な面だろうと考えます。そうであれば、どうしても勞働に對する計畫、あるいは人の配置、職業というものに對して政府は、根本的な對策を具體的に立てる必要があると思います。いわゆる人の計畫を優先的に立て、それに物と金を合わせる對策が絶對に必要と思う。しかも物は、勞働力が加わつて初めて物の價値というものが變つてまいりますので、どうしても勞働の計畫というものを、政府は具體的に立ててもらいたい。しかしこれは今日の日本のおかれている現状においては容易な問題でありませんが、案本としては全精力を集中して、この問題に對する具體策を立てて、その上に立つた殘りが、いわゆる失業問題になり、失業手當の對象になるというようにわれわれは考える。そうすると失業保險法、失業手當法を審議する前段といたしまして、この計畫が具體的になることを私は絶對必製だと思つて質問をしておりますので、この點に對するその後の安本の計畫と内容とを、この機會にお示しを願えれば仕合せに考えます。
#8
○和田國務大臣 非常にごもつともな質問でありまして、私たちも非常にその點は必要だと思つているわけでありますが、現實の問題として、なかなかできにくい状態にあるのであります。それは一つは、御承知のように長期の計畫とも關連してくる問題だと思います。
 それから長期計畫をやるときには、當然そこにどれだけの勞働力が、どの産業部門にどれだけ配置されるかということがはつきりしてきて初めて、全體の計畫というものが身についたものになろうかと思うのでありますが、その場合には、生産性をどの程度に見るかといつたようなことももちろん問題になりますが、結局物の面と人の面と兩方の計畫がそこにはやはり當然に結び合わされていりのであります。ただ日本の場合は今お話のように、作業を進めていく場合において、勞働統計その他の面でまだ非常に未熟でありまして、その面から實は計畫をなかなか立てにくいのであります。そこでわれわれの方としても、お話のように今いろいろの作業をやつておりますが、まだ自信をもつてお話しするだけの段階にきておりませんので、内部的にも、まだ、正確な資料そのものとしてまとまつたものは出していませんが、そういうような點については、われわれとしても十分作業をやる上において考えながらやつていきたいと思います。これは囘轉基金を中心にした問題を長期計畫の一環として考える場合にはちようどイギリスが白書の中で、勞働力の配置の面から計畫が取上げられてきているわけでありますが、ああいう作業が、私なんかも今度の白書を發表します場合においても、やりたかつたわけでありますが、事實できない實情でありましたので、物の面からのみしか觀察できなかつたわけであります。お話の點は、いずれ具體的なものが示し得られます程度に作業でも進みますれば、また何かの機會にお示しができると思います。
#9
○前田(種)委員 どうも今の長官の御答辯を聽いておりますと、悪く言えば、不親切な答辯だと私は考えます。もちろん今日、日々に追われておりますところの政府の實情を知つておりますわれわれとしては、事情はよくわかりますが、しかし物の計畫あるいは金の計畫の問題については、安本の内部においても陣容が確立されて、そのことのためにも日々多忙な時間をつぶしているのです。しかしこれは根本的に逆であつて、むしろ勞働對策、人の對策を重點に安本の陣容も立てて、それに物と人と金とを合わすという計畫が立てられなければ、安本の計畫はちんばだと私は考えます。どうしても今日のような日本の状態においては、それが絶對に必要だと考えるのです。いかに勞働力を效果的に發揮するかという面だけを取上げてみましても、あるいはせつかく與えられた貿易の再開を見ましても、今日日本人が高能率的に働かなければ、貿易というものも前途憂うべき結果になると私は考えます。そのためにはどうしても、政府の中核をなしていろいろ計畫をやつておりますところの安本みずからが、その問題に對してもつと強くその内容を檢討して、困難ではありましようが、その困難に打勝つて打開するところの氣魂と積極性が私はほしいと思います。その意味において、大きなもう少し突き進んだ、ざつくばらんな長官の眞意を、もう一度この席上で承ることができぬかどうかという點を再質問します。
#10
○和田國務大臣 私の方としましては、その作業はやつているわけであります。勞働局もやつておりますれば、調査部としましても連絡をとつてやつておるわけであります。安定本部の勞働關係が非常に貧弱だというお話でありますが、もつと適當な人がありますれば、人員を充實することはわれわれ考えているわけでありまして、もちろん今の陣容においても、その操作を怠けておるわけでは毛頭ありませんので、勞働關係におけるそういつた策定も、ちようどこの間、生活物資の需給計畫のような策定を、非常に困難があつたにかかわらず、長い間これが苦しんでできましたように、勞働部面におきましても、もちろん今お話のようなことをわれわれはやろうとしておるのであります。ただ今の段階において、そんなに突き進んだ作業が、どこへ出しても御説明申し上げる程度には、まだ實はできていないということを申し上げておるのでありまして、その作業はぜひやつていきたいと思つておりますし、またやらしておるのでありまして、その點はひとつ御了承願います。
#11
○前田(種)委員 その問題はさらにそれ以上のことは、適當な機會に質問なりその他の點で安本の方針を承ることにいたしまして、私は最後に、いわゆる千八百圓ベースと物價の問題についていささか承つておきたいと考えます。私の意見から申しますと、いろいろ各方面にいわれておりますところの千八百圓ベースは、くずれるのじやいかということをいわれております。今いろいろの面から、賃金を上げれば食えぬという要求が各方面からいわれておりますが、賃金を上げることによつて今日よりも生活が樂になるという結論ができますならば、賃金を上げることがよいと私は考えますし、あの方針を變更することはよいと考えますが、今日の情勢のもとにおいては、ただ單に賃金を上げることによつて生活が安定されるということは考えられないのでございます。しかし實際に各職場でやつておりますところの現状は、千八百圓ベースをはるかに上廻つた實質賃金を獲得しています。これは必要以上働いて、そしてその企業の範圍内において經理が賄われるというような條件のもとにおいては、絶對必要であります。多くの生産を上げて高い賃金をとるということは、當然なことでございます。この點について、政府の方針をもう一度明確にしてもらいたいと考えます。
 さらに第二點は、來年度産米の買上げ價格の問題が今日問題になつておりますが、産米の買値の問題と千八百圓ベース、いわゆる經濟安定の線とは一體どうなるかという點を、この際はつきりしてもらいたいと考えます。
#12
○和田國務大臣 お答えいたします。第一點の千八百圓ベースの問題は、まつたく御意見の通り、政府といたしましても、ただ名目賃金を上げていくだけでは問題は解決しないのでありまして、お話のように勞働の能率を上げ、そして新しい物價體糸というものを崩さないという範圍において、能率を上げて企業の合理化をやつて、そこにおいて實收賃金が基準よりも上つていくということであれば、これは一向に構わないのでありますが、政府としましては、非常に企業がむりをして、そして赤字が出ておるにかかわらず賃金ベースをこわしてしまつて、結局は財政にその負擔をもち込むなり、あるいは赤字金融として財政にもち込むとして價格改定を求めてきても、政府としては新しい物價體系は堅持する方針をとつておるわけでありまして、その點はまつたく御意見の通り方針を變えてはおりません。
 第二點でありまする米價の問題につきましても、これは新しい物價體系というもののもとにおいて、とにかくパリテイ計算によりまして、新物價體系を維持する賃金ベースというものを維持していく、こういう觀點から決定さるべきものであります。もちろんこれは、供出その他の方面におきまする政治的な考慮ということもはいつてまいろうとは思いまするが、しかしどこまでも米價の決定は、やはり新しい物價體系を堅持していく、この一環として決定していくという方針をとつておるのでありまして、そのためにただいまいろいろな作業をいたしておるような次第であります。
#13
○前田(種)委員 千八百圓では、生活ができないということは、萬人が認めるところであります。千八百圓でどうして實際に生活ができるかということは、政府の強い施策が必要であるわけです。いろいろ具體的にあげて考えますると、勤勞所得税の大幅控除の問題、あるいはマル公で配給を確實にやるという問題、さらにいろいろ作業衣その他必要物資を職域を通じて配給するという問題等々があげられるわけでございます。しかしこうした問題を一つ一つ取上げてきますと、勤勞所得税の面においても、近く提案されまするところの追加豫算案の内容によりますと、大よそ三分の一以下の減額だということになつているのであります。さらにその必要物價の配給の面でも、特に生活に困つておりますところの大都市、あるいは大工業都市というような地區は、現状においてはマル公配給によつて生活が絶對できないという實情でございます。さらに仕事をする上に必要な作業衣その他の物資の配給、これまたゼロに近い現状にあるわけです。こうしたものを一つ一つ押していけば全然打開する途がないというのが今日までの政府の答辯でございます。しかし八方ふさがりの現状にありますところのこの問題を、どこかで打開しなければ、千八百圓ベースは確保できないと私は考えます。どこかで政府はこれを切り開いていくという勇氣が必要だと考えます。あるいは勤勞所得税の今日まで計畫されておりますところの減額を、もつと大幅に考慮する。あるいは七月から十月までは安本の計算でいつても赤字だから、赤字期間中は免除するという大擔な處置をとるか、あるいは職域に對しては配給物資を相當大幅に特配をするという計畫を立てるか。あるいは農林省、商工省等においては、ないないと言いながら相當の衣料その他の物資をもつているわけです。こうした物資をもつと政府全體の立場から職域に特配するという方法を切り開いていく。いわゆる勞働者に對して、何とかそうした物資を特別に配給するという途が絶對に必要だと考えます。特に働く人々に對するところの配給物資の面については、どうしても政府の總合的な計畫の上に立つたところの配給計畫を立てて、そして高い能率のあがる職域等に對しましては、優先的に配給するという計畫も立ててもらいたい。こうした問題をいろいろ論議してきますと、全部八方ふさがりという現状では千八百圓ベースは堅持されない。また政府としても、親切がなさすぎると私は考えます。もちろんいろいろな面倒な問題がありますから、政府はうしろはちまきでやつておるができないという事情もわかりますが、何とかそこを打開して、この千八百圓ベースを堅持する具體的な方法を、もう一段と努力して實行するという力強い政治力が必要だと考えますが、そういう計畫の中心をなす長官としての御意見を承つておきたいと考えます。
#14
○和田國務大臣 お話のごとく、千八百圓ベースといいますか、新しい物價體系を維持しまするためには、やはり相當の努力がいるわけでありまして、われわれの方といたしましても、その點につきましてはいろいろの事柄を考えているわけでありますが、御説のように、物の裏ずけをしていくという考え方につきましては、勞働者、勸勞者に對する物資の配給等につきましては、われわれの方といたしまして、勞働者方面におきまするものについては、勞働局として一應全部の需要をまとめまして、それをもちろん農林水産方面との關係もありまするので、十分内部的な連絡はとつて、とにかく確實にそれがいきまするような計畫をわれわれの方で立てようといたしております。ただそらの個々のものにつきましては、これはそれぞれの生産の状況がありまするので、もちろん物資の總量そのものがゆたかになりません限りは、全部のいき渡りが多くなるということはありませんけれども、少くとも政府が、とにかく重點的に生産増強、その他いろいろな點において、勤勞者の側に向けるべき物資につきましては、特にわれわれの方としましては、十分そのリンク制といいますか、配分についての考慮を拂いたいと思つております。それから何といいましても、先般の生計費指數の總理廳の統計などを見ましても、八月は下つておりまして、九月もまた多少下つておるのであります。しかし問題は、大都會その他における生鮮食料品の野茱、鮮魚といつたようなものの配給が、經濟緊急對策の時に豫定しておりました通りに、今まではまいつていないのであります。それらの點につきましては、われわれも十分過去の實績を考えまして、特段にその點について、大都市への入荷等についての手を、今いろいろと考えておる次第であります。
 それから一つの問題は、これは何と申しましても、追加豫算の問題だろうと思うのであります。どういうように考えてみましても、豫算面におきまして、そこに厖大な赤字が出るということでありましては、すべての點がそこから出てまいりますので、政府といたしましては、健全財政の線をどこまでも堅持する方針で、今まで非常に長く關係方面と折衝いたしておる次第でありまして、この方面におきましても、われわれとしては今格段の努力を拂つておる次第であります。要するに經濟安定本部といたしましては、千八百圓ベースというものを堅持いたしまするために、特別に總合的な緊急對策というものを考えるよりも、過去における今までの歩みを十分に檢討した上で、一つ一つについて個々の具體策ができ次第これを實行に移していく、こういう態度でおりまして、今それらのものについて個々檢討をいたしておる、こういうことになつております。
#15
○前田(種)委員 私はさらにいろいろな物價體系、その他の問題について質問をしたいのでございますが、そうした面については、おそらく他の委員諸書から質問があろうと思いますので、私はこれにて質問を打切ります。
#16
○加藤委員長 辻井民之助君。
#17
○辻井委員 鎌前田君から質問された點について、私もなおただいまの長官の御答辯では納得しかねる點がありますので、突進んでお尋ねしたいのであります。私もやはり千八百圓ベースは、物價體系を亂さぬためにあくまで守るべきだと考えて、勞働組合にも極力説得するようにしております。しかし十一月になれば經濟流通秩序も確立をし、緊急施策も著々實現して黒字が出るという當初の政府の計畫は、容易に實現されずに、十一月には計畫通り黒字になる見込みは確かにないように思います總理大臣もこの席でそういう答辯をされておりまするし、また實際がそれを證明しておるのです。そこで今前田君が述べたように、何か實質賃金と千八百圓とのずれを、ただ勞働者に耐乏を強いるというだけでは、この賃金體系をあくまで守り拔くということは絶對不可能だと思います。政府の發表にもそういう違算が起つてきた以上は、何らかほかの方法で、千八百圓に勞働者が協力していけるような手を具體的に政府が打たなければ、私はこれを守り拔くことは不可能だと思います。一般の民間の事業では、實際もう千八百圓を多くは突破しておるように思いますが、全官公なんかの職員、勞働者においては、やはりこれが標準ではなしに釘づけになるのでありますから、このままではこれはやはり、いわゆる勞働攻勢が盛んに起つてきて、相當勞働不安を起すような結果になると思います。そのためには一番今問題になつていますのは勞務加配米、どういう勤勞にでもついておる者には全部、たとえわずかの加配米でも出すべきだ、また農林當局では非公式に、もうあと全部に出してもわずかな量でいいのだから出したいというようなことを言明していたのでありますが、聞くところによると、安本で反對せられておるために實現ができないというようなことでありますが、これはどうしても働いておる者に無力を強いるのだから、政府もできるだけのことを苦しい中からでもしているのだということで、これは實際上の生活にどれだけの助けになるかは別として、政府のそういう手がいわゆる政治的にどれほど效果を發揮するかわからぬと思う。こういう點で、あともうわずかな量で全部に、輕工業といわず、一般の勞勸者に加配ができることなんですから、ぜひ私はそれをやつてもらいたいと思います。
 それからもう一つは、先にも問題になりました勤勞所得税の問題でありますが、これは數日前の政府の發表によると、傾斜生産の重要産業、石炭鐵鋼なんかに對しては、近々に何とかするというふうな發表でありましたが、これは現在、實物給與とか何とかいうようなことで出ている勞務者に對する物の横流れを、徹底的になくしなければならぬのでありますが、こういうことが起るのはいろいろの原因がありますが、一つは現在の勤勞所得税の税率の問題でありまして、ある程定以上の所得になると、その所得は大部分が累進課税のために税金にとられてしまう。そこである程度働けばそれ以上はもう働かぬとか、働いても賃金で貰うよりも現物で支給を受ければ、會社側も税金を減ずることができるし、また勤勞者の方でも現物で受取れば勤勞所得税を免かれることができる。こういう不合理な税率が行われている結果が、現物支給というようなことを行わしめる一つの大きな原因になつていると思う。經濟秩序を確立するためにも、また生産意欲を大いに燃え上がらせるためにも、よけい働いた者は、それだけ收入が殖えるような途を開くことがかんじんでありまして、一方においては免税點をうんと引上げると同時に、累進課税率を改正して、よけい働いた者ある程度以上働いた者は、ある場合には税金を免除せられて、それだけ所得が殖えるような途を開くことが絶對に必要だと思います。以上の二點についてどういうふうにお考えになつておりますか、お伺いしたいと思います。
#18
○和田國務大臣 お説の點にお答えいたします。ごもつともでありまして、われわれとしても、勞務加配米につきましては、次の食糧年度におきましては十分にその範圍、あるいは相互の間のことについては考慮いたしたいと思います。そして勞務加配米については、できれば殖やしてゆきたいという考えをもつております。そしてこの面からも生活安定の一つの絲口を見つけたいと考えておりますので、安定本部としては、それについては反對をいたしているわけでは毛頭ございません。むしろ積極的にそういうことを考えております。次の食糧年度からは、ぜひ全面的にその範圍あるいは基準についての檢討を行つて、できればそれを殖やしてゆきたいと考えております。
 それから今の所得税の點でありますが、これは御説のように千八百圓の基準のベースをとりましたときに、免税點の引上げについては、七月以降やるということで税務側と相談をいたしたのであります。それからまた、ある一定の率以上についての税率の引下げあるいは免税という點につきましては、これまた差當つては石炭ということにいたしまして、交渉をいたしているわけであります。目下まだいろいろの點ので最終の決定までには至つておりませんが、私の考えとしましては、これは働けば働くだけある一定限度までくると、もう殖えなくなつてしまうというのではなくて、能率給とその免税税率というものとの累進税の間には、そこにうまい調和をとつて、働けば働くだけ、やはり所得は實質的に多くなつていくという行き方をするのが適當だと考えております。ただこの問題は、根本的に今すぐ全部やるということは、おそらく税制の全面的の改正を考えなければ實行に移せない問題でありますので、今石炭増産の一つの方法として、石炭についてそういう考え方をさしあたつて取上げたということでありますが、もちろん基礎的なその他の産業についても、將來必要があればこの規定を擴げていくということになろうかと思うのでありますが、これらの點についてはまだ連合軍の方でもいろいろの議論があるようでありまして、まだ決定には至つておりません。しかしその考え方については、私はまつたく贊成でありまして、そういうふうにいたしていきたいと考えております。
#19
○辻井委員 まだその點について、近く具體化するという見込みはないわけですか。
#20
○和田國務大臣 それは追加豫算の關係がありますので、連合軍側の方と話をいたしておりますが、まだ最終の決定まで至つておりません。ただいろいろの議論がありまして、たとえば所得が多くなれば多くなるだけ、かえつて税金を増していくのが穏當じやないかといつたような一般論をやるような人もおりまして、これは主として大藏省の方で交渉にあたつてもらつておるわけでありますが、私の聞くところでは、現在ではまだ決定までには至つていないのであります。
#21
○辻井委員 最後に簡單に希望を申し上げておきたいと思いますが、勞働大臣はソ連のスタハノフ運動を日本でも提唱せられておるようでありますが、ソ連のスタハノフ運動は長官も御承知のように、スタハノフ勞働者は、もうずば拔けた優遇を受けておるのでありまして、所得の上においてもその他の待遇においても、貴族的な生活ができておるというふうな状態であります。ただそういう特別によけい働く者は、それだけ重く待遇を受けるという途を開かずに、ああいうことをただ叫んだだけではだめなのでありまして、極力そういう點について思い切つた努力をしていただかぬと、われわれは七日から三日間總同盟の大會がありましたが、千八百圓ベースにあくまで協力はするが、これでは食えぬというのが大會にみなぎつた痛切な空氣であります。こういう連中にまでも失望をさせ、あるいは期待はずれにさせるというふうなことがありましては、これはもう働く階級の協力を得ることは、まつたく不可能だと思います。そういうあくまで支持しようという協力的な立場におる勞働階級にまでも滿足させぬようなことにならぬように、ぜひ勇敢に思い切つた處置を急速にとつてもらいたいということを最後に希望しておきます。
#22
○和田國務大臣 承知いたしました。今の點でありますが、能率をあげていつた者については特別な取扱いをするというのは、今度の勞働關係の生産増強につきましての對策につきましても、政府はその點は十分考えておるのでありまして、たとえば非常に能率をあげた勞働者のみならず組合、團體に對しても、たとえばそこでいい機械が必要であればもつとそういう施設も與える、また個人的にも何らかそういう報い得られる途を、物的にも精神的にも講するというふうにして、個人たると團體たるとにかかわらず、兩方に特別な能率をあげた者については、特別な取扱いをしていくという態度を決定いたしておるわけでありまして、その點につきましては政府としましても、できるだけ盡力をいたしたいと思います。
#23
○荒畑委員 私も物價と賃金の問題について一つだけお伺いをしたいのです。これは私のまた聞きでありますから、もちろん確定的に申し上げることはできないのですが、ただ疑點としてお伺いするのであります。安定本部の高級の幹部の役人が、千八百圓のベースは三割は上げ得る餘地がある、もう三割上げても、物價安定の安定帶といいますか、安定環といいますか、そういうものを崩さずに、まだ三割は上げ得る。これは初めから上げ得る餘地があるのを途中でごまかしたのではないでしようが、おそらくはその後の研究の結果、まだ三割は上げ得るということがわかつたのでありましよう。とにかくそういうふうに話された、こういううわさを私は聞いておるのであります。そういう點について、今まで御研究になつたことがありますかどうか。またもし御研究になつたとすれば、そういう餘地があるかないかということを、おわかりになつておればお伺いいたしたい。
#24
○和田國務大臣 そういううわさがあるかどうか私聽いておりませんが、千八百圓の問題は、平均千八百圓を基準にして價格改訂を行いまして、そこに新しい物價ができたわけであります。その物價をつくるには、これは原價計算でやつておりますから、この新しくできた物價のもとで能率をあげていきますれば、そこにやはりゆとりは出てくることになるのであります。なぜなら、原價主義でいつておりますから、その物價でいく限り、とにかく普通のコストというものは、これはペイすることになつております。ただ特別に必要な特殊の産業について、多少の利潤というようなものも認めたものもありますから、やはりこの物價體系のもとでは、とにかく合理的に經營さえできればペイしていくということになつておるわけであります。その關係で、生産なんかをあげ能率をよくしていきますならば、そこに新しい物價體系のもとでもゆとりができてくる、ゆとりができてくる限りは、それを勞働者の方にわかつて實質賃金が上つていつても、それはわれわれの方としては、むしろ増産によつて賃金が上つていく形をとるものであり、しかも物價體系は壊さないわけでありますから、むしろそれは望んである、こういうわけで改訂したのであります。おそらくいい企業にしてやれば、そういうことも出てくると思うのであります。この間われわれもそういうことで、今度の原價主義による公定價格の改訂が、現實にはどういうように企業に影響をもつたかということを知りますために、さしあたつて石炭を選びまして原價監査をやつたわけであります。その結果はまだ詳しい數字は聽いておりませんが、あるところによりましては、マイナスだといわれておるところが、むしろプラスの結果が出てきておる。そういうことになつてきますれば、賃金がその部分でなくても、その幾分かが上つていつても、非常に私は合理的だろうと思うのであります。これは私どもの方といたしましては、新しい物價體系を維持していきますためには、そういう原價の監査をやりまして、そうして現實的に企業がどういうように經營されておるか、また新物價體系がどういう影響をもつたかということを、やつぱりきちんと現實をつかみまして、そうしていろいろな今後の對策を考えていきたい、こう思つております。ただいまのお話の三割云々ということは、だれがどういうわけで言いましたか存じませんが、われわれとしては、そういうような事柄を考えながら、原價主義によつて、物價更訂をやつたわけではありません。やはり千八百圓基準を織りこむものとしてやつたものであります。
#25
○荒畑委員 これは安定本部長官の御所管ではないかもしれませんから、あなたにこういうことを質問するのはちよつと筋違いかもしれません。
 勞働者に耐乏生活を望むからには、喜んで耐乏に耐え得るような氣持をもたせるのでなければ、實效のあがらないことは、これは政府でもよく御存じのことと思います。私はせんだつてもここで勞働大臣にそういうために一方では勞働者に耐乏生活を求めると同時に、勞働者をして、なるほど自分たちも耐乏生活をしなければならないが、しかし政府は一方で、やみの取締りに全力をあげておるという具體的な證據を見せて納得させなければなるまい。ところが市中にはやみ物資が横行しておる。政府の取締りはいつも三日坊主で、一時はやるが、すぐあとは知らぬ顔をして忘れておる。禁止されておる物が公然と街で賣られておる。閉鎖を命せられたはずの料理屋が、陰でいろいろな名目をつくつて、法律の裏をかいて半公然に營業しておる。そういうことでは、とても勞働者の耐乏生活なんということは、望んでも得られるものじやないということを申し上げたのであります。きようの新聞を見ますと、東京市中の貸席の看板をあげた家で、藝者をあげてたいへんな料理を出して、そのためにつかまつた者がある。しかもその客は役人だ。こういうことでは國民一般が私は納得するものじやないと思う。これは安本の長官としての管轄外のことであるかもしれませんが、どこの管轄だ、ここの管轄だということでなく、政府としてこういう點を取締り、そういうところに流れておる物は、少しでも勞働者その他一般國民の臺所にまわすという上に、強固な決算をもつて斷行されるお覺悟があるかどうか、そういうことに努力なさる御決心があるかどうか伺いたい。
#26
○和田國務大臣 經濟安定本部としては、經濟統制を強化する必要がありますので、お話のような點につきましては、經濟緊急對策を立てた以後非常に力を注いで、各方面を督促して、内務省、司法省とも連絡をとり、またいろいろの檢擧、その他やみの撲滅に當つてきたわけであります。お話のような遺憾な事實が出たことについては、はなはだ殘念に思い、責任を感ずるのでありますが、ただいまのところわれわれの方としては、やはり初めの決意を少しもゆるめておりません。各省關係のやみ撲滅のための特別の委員會をつくりまして、われわれのところの監査局が中心になつて、そうして連合軍側の方の人にも來てもらつて、それぞれの情報を持寄り、その他實際上の調査もいたしまして、そこでいろいろ弊害の出てくる缺點については、早速手を打つてやつていく。こういう態勢を整えてやつておるのでありまして、先般も一應いろいろと苦心して、生鮮魚介等の配給の點を事こまかに調査して、そういう點について缺點のあるものについては、どしどしやつていくというような態勢をとつております。これはどうしても一面ではやみ撲滅について、やはり政府がそういう態度をとると同時に、勞働組合その他の方の方にも御協力願つて、やみを撲滅していくという方向をとりませんと、今のお話のように、經濟全體が安定してくることは、なかなか困難であろうと思いますので、われわれ經濟安定本部としては、やみに對する抗爭については、考え方は少しもゆるめておりません。ただいろいろの批判等もありまして、實績の上らないという點については、今後とも十分氣をつけていきたいと思います。
#27
○加藤委員長 それでは午後一時半から繼續することにしまして、これで休憩いたします。
    午前十一時三十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十四分開議
#28
○加藤委員長 午前に引續いて會議を續行いたします。
 質疑にはいります前に、勞働大臣から、先般の調査に基いて返事をしていただくことになつておりましたことについて、發言を求められておりますから、發言を許します。米窪勞働大臣。
#29
○米窪國務大臣 この前に荒畑委員から、失業保險を民間のものがやるということについて、政府の意見はどうであるか、大體そういう御質問だつたと思います。政府としましては、その後研究しました結果、この本法の第二條によりまして、失業保險法と稱するごとき形においてなすものは、政府だけがやるのであるが、民間の人たちが、たとえば共濟組合のごときものが、失業保險と同じような内容の失業救濟事業をやることについては、何ら政府としてこれに反對するものではない。以上簡單でございますがお答えといたします。
#30
○川崎委員 私は先ごろ、片山總理大臣においでをいただきまして、片山内閣の失業對策、これにからみましての企業整備の問題についての質問をいたしました。その際に片山總理大臣は、該博な從來の經驗と知識をもつて、まず自分としては、今日職業の安定をはかることが第一であると思う、なるべく失業者を出さないようにする。失業を防止するということに全力を注いで、企業整備の方針も勞務の配置轉換ということを主にして行いたい。企業整備は行うのであるけれども、なるべく失業者を出さないようにしていく。これが從來社會黨が野にあつて唱えておつたところの、完全雇傭を目的とする失業對策というものの線を、やはり生かしていくのだという御答辯であつたように記憶いたしております。私どもも、なるべく社會不安を起さないように、また完全雇傭というものは、戰後の世界の各國において、共通した最高の理想であるということについて、片山總理大臣と同じような考え方をもつておりますので、そのお説に對しては十分に傾聽いたした次第であります。しかしながら私は、この日本が當面しているところの現在のこの經濟不安定状態、これを打破していくためには、どうしても企業整備ということが差迫つた大きな問題である。しかもその企業整備というものは、もちろん人員の大量馘首ということを前提とするものではないけれども、勞務の配置轉換をやり、經營の合理化を斷行しつつ行わなければならぬことは、これはもう必然の行き方ではあるけれども、しかしながら必ずしも人員の馘首を前提としないということも言えないと、私は考えてあるのであります。そこで米窪國務大臣は、この間片山首相が言われたと同じような考えをもつておられるかどうか、ないしはしばしば御言明になつております完全雇傭というものは、今日できないのだということ、こういうことを米窪勞務大臣は常に言われていると私は思うのでありますが、一應そういう點からお伺いしてみたいと思います。
#31
○米窪國務大臣 最初の御質問に對しては、産業の合理化というものは、私の見解によれば多くの段階があるのでありまして、産業の合理化の内容においては、まず最初に手をつけなければならぬのは企業の合理化、そうして經營の合理化ということで、資材も日本ではそんなぜいたくな餘地はないと思いまするが、もし遊休的資材があればこれを活用する。また資材のウエイスト、無駄があれば、これも生産機能を發揮する上においてこれを活用する。あるいは企業の面においても、もしウエイストが起つておるような場合があれば、これも生産ができるような合理化をしていく、あるいは未利用資源のようなものも、これを利用できればそれを利用していくように、科學的、抜術的にその面から改善を加えていく。そして人員整理というものは一番最後の、どうしても避けられない一つのフアクターとしてこれを扱つていきたい。こういうぐあいに考えております。もちろん人員整理をやる場合において、一つの企業ごとに勞務の配置轉換が行えれば、それは極力行うことにして、その企業ごとに勞務の配置轉換をやる。そして今申し上げたように、だんだんそういう順位でやつていつても、どうしても若干のものが出るような種類の企業があつた場合においては、これと類以な企業へ國の力でもつて勞務の配置轉換を行いたい。まあ大體そういう考えでまいるのでございまして、從つてある企業においては失業者が出ないものもあり得るでしよう。たとえ今日のように財戰日本の資材、資金において非常に不自由な状態、共通的なそういう現象があるにかかわらず、なおかつある企業においてはそれができる。今のような創意工夫をもつてできるわけである。しかし大多數の企業は維戰時中において厖大にされた人員、すなわち戰時中において非常にかくらんだ人員は相當あると思いますから、これはやはり大部分の企業においては、人員の整理も免れない、私はそう考えております。
 それからフル・エンプロイメントの考え方は、一人も失業者がないということ、文字を直譯すればそういうことになるのですけれども、完全雇傭といことに私は少し考えが違うので、完全雇傭の中には、たとえ需要がなくとも、國の力でもつて、失業防止ではないけれども、失業救濟ができるようなものがあれば、やはりそれによつて吸收できれば、これは完全雇傭の中へ入れていつてもいい。という意味は、失業救濟をやつているうちに就職の機會が訪れてくるということになれば、廣い意味における完全雇傭のわく内にある、こういうぐあいに考えております。しかし嚴密な意味で完全雇傭ということになれば、これはやはり失業者が一人もないということになつて、これは世界の例をもつてみても、資本主義がいわゆる上昇線を辿つておつて場合においても、たびたび例に申しまするが、アメーカのニユーデイールをやつたときでさえも、何百萬の定時失業者があつたのでございますから、そういう觀點から見ると、私は完全雇傭というものは、今日の日本のような状態においてはむりである、こういうぐあいに考えております。
#32
○川崎委員 ただいま米窪勞働大臣の言われたことは、私も實は同感なんでありまして、そういう考え方のもとに、企業整備と對蹠的な完全雇傭の考え方も、國全體として完全雇傭ということを目途とせられておる體については、まことに同感であります。ただ失業者を出さないということのために、企業整備が行われるのであつてはならぬと私は思う。失業者を出さないという單なる消極的な見地からならば、從來でもナチス・ドイツにおいては、一九三二年から一九三三年にわたつて、大規模な失業者救濟制度というものがとられ、完全に失業者が救濟されたことはあります。しかしながらその國家目的は、他國を蹂躙しようという企圖をもつたところの土木工事、あるいは國防工事というものに集中をされた完全雇傭というものができたのであつて、これは嚴密に批判されなければならぬ。また同時にソイヴエト・ロシヤにおいては、今日失業保險金の制度はあるけれども、一文も拂つておらぬということを高言をしておられ、また事實そうであろう。しかしながらそういう社會状態というものは、はたして最善のものであるかどうかということについては、相當深刻に反省をしてみなければならぬと思うのであります。
 そこで私はこの企業整備の問題に關連いたしましては、最近民間側におきましても、早く政府が具體的な方針を示すならば、われわれもこれについて、自主的に勞働組合と經營者が、眞に手に手を取り合つて企業整備をやる。どうしても人員の馘首を餘儀なくしなければ企業が成り立たないというときには、勞働者の納得のもとに斷行するというまじめな資本家、經營者も今日は輩出をしているのであります。目的は經濟安定、高能率、高生産というところへおかれて、そういう聲がだんだん巷に滿ちてきているときに、最近日本製鐵なんかでは、企業整備にいよいよ著手をする。ところが勞働組合においては、釜石や輪西ですかの作業所では、昨年來の勞働運動の一つの大きな旗じるしであつた首切り絶對反對という、この聲が今なお續いておつて、むりな企業體制で今日採算がとれない。また連合國の要請によつて鐵鋼業というものが縮少された。しかるにもかかわらず、これに對して反對をしている。こういう傾向もある。それは一體どういうところから出ておるかというと、國家が擁しておるところの官業の整理さえ手がつかぬのに、民間の企業の壓縮するような考え方については、反對であるというような聲が巷に相當高くなつておる。これが一方にあるのではないかと私は考えるのであります。先ごろ總司令部では政治部の代表の談をもつて、たしか今月三日の新聞紙上に掲載されたと思うのですが、現在の官吏の數は四割近くは不必要だという談話を發表されたと思うのです。中央の官廳の官僚が、洪水のように地方に流れる。これは地方民の迷惑であり、納税者の負擔を重くする以外の何ものでもない。例を大阪府、農林省というようなものにてつておる。これは政府に對して警告を發せられたものと私は思うのでありますが、これらについて一體米窪勞働大臣はどういうふうにお考えになつておるか。官業の整理をまずみずから、隗から始めなければならぬ、かように考えるのであります。
#33
○米窪國務大臣 行政整理のお尋ねですが、これはおのずから、現業に從事しでいるところの政府職員と非現業との問題のわかるるところじやないかと思う。そこで川崎さんの今のお尋ねは、私率直に言えば、非現業についてはそういつた御意見も、全部でなくても若干成り立つて思う。現業については、こういうこともわれわれは考慮の中に入れなければならぬと思つております。戰爭の慘禍のために資材その他で非常な大打撃を受けまして、たとえば機械が十分にあれば、その機械を使用することによつて一人が一日になし得る仕事を、今日そういう機械力が極度に低下しております際において、やはり三人がかりでもつて二日もかかつて、ようやく同じ作業工程をしなければならぬという場合が相當にあると思います。一つの例を鐵道にとりますれば、國鐵が戰前三十何萬が、戰後すでに車體も減り、運轉キロ數が減つておるときに、むしろ殖えておるではないかという非難があるのですが、これは國鐵の現業員の諸君に聽いてみると、今言つたような事情で、機械力の足らぬところを人力で補わなければならぬという事情で、行政整理の餘地がない、こういう實情であります。從つて數が多くなつたから行政整理を行うべきであるという考え方も、やはり若干考慮しなければならぬ。もちろんホワイト・カラー、非現業の人たちについては、若干そういうことも考えられると思いまするが、今日日本の行政組織は非常に複雜になつております。いろいろの事情から人間を非常に余計要することになつてきたと考えるのであります。もちろん現在行政調査部において、あらゆる行政機構の改善あるいは效率的壓縮をはかつておるのでありまして、また一方においては、公務員法がいよいよ適用されることになれば、いきおい公務法の規定によつて剩員を淘汰されることになるであろうと考えております。
#34
○川崎委員 たいへん總合的な見方から、米窪勞働大臣は、お答えになつておると思うのですが、公團ができたから、それだけ人員が要る。いろいろの事情から當然殖えてきておるものもあるのだという。しかしそういうものが殖える反面において、不必要になつてきておる官吏の數も相當激増しておるのではないかと考えるのであります。そこで私のお尋ねは、もちろん非現業に重點をおいておりますけれども、また同時に現業官廳でありましても、國鐵のごときは戰前よりも多數の人間を擁しておる。今日國鐵は非能率の代名詞のごとくいわれておるのであります。これに對しては先ごろ來、苦米地連輸大臣はしばしば馘首をやるのではない、勞務の配置轉換をやるのだと言つておられる。差當り新たに就職する者については、相當嚴重な規定を設けて人員をなるべく新採用しないような方針のように、新聞紙上では伺つておる。しかし勞働大臣は、國鐵、通信關係の能率の悪い状態をどういうふうに見ておられるか。さらには數の問題は一應後廻しにしても、勞務の適正配置ということが一番行われておらないのは鐵道だと私は思つております。未だに省線の破れた窓ガラスは修理もされなければ、一枚の切符を買うのに蜿々長蛇の列をつくつておることが今なお續いておる。サービスの改善、勞務の配置轉換によつて能率を上げるということに鋭意力を注がなければならぬのですが、これについて勞働大臣は、國鐵勞組あるいは全遞というものに對して、どういう考えをもつて指導されるつもりか、ぜひお伺いしておきたいと思います。
#35
○米窪國務大臣 これは非常に重大な、機微にわたる問題で、私は大體川崎委員と同感でありまして、十月二日に官公廳職員を含めた勞働組合の代表者を呼んで、政府側と墾談いたしました。その席上において私は、いわゆる生産復興運動の必要なることを力説したのであります。もちろんこれに對して勞働者側は、生産復興のできるような、すなわちエフイシエンシーを上げるような生活状態を政府が保證してくれ、平たくいえば、千八百圓では食えないから、すなわち單なる名目賃金の引上をわれわれも望んでおらない、實質賃金を最低生活にまで近づけるように、政府が政治力を出してくれ、こういう注文で、腹が減つては仕事ができない、ごく簡單にいえばそうでしようが、私はもちろん、そういうことは一應うなずけるが、しかし腹が減りながらも、當然自然の職場における義務を盡すべきが勞働者の務めであり、それが平素私の高唱しているところの、いわゆる健全なる勞働組合主義である。こういう點で墾談を重ねたのでございまして從つて私は、私の意見が百パーセントというわけにはいかないでしようが、相當勞働組合の反省を促し得たと考えているのでございます。從つてこれは失業問題とか、そういつた問題を離れて考えてみましても、職場における能率、私企業の場合でも、官公廳の場合でも、職場における能率と職場における紀律と、もつとこれが増進されることを望んでいる次第でございまして、今後政府はそういう方面に勞働行政の重點をおいてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
#36
○川崎委員 その問題はそれでは一應打切らしていただきます。
 そこで今度は、失業保險法に關連しての質問を二、三してみたいと思います。昨年御承知のごとく生活保護法ができまして、これは私は法律の面からいうと、貧窮に對する最後の手段であると考えている。これが進展して失業保險法、失業手當法というものができて、政府の社會政策というものが一進歩をしたと思うのでありますが、米英の社會保障制度を見ましても、失業保險制度というものがやはり基盤をなしている。そこで最近新聞紙上に散見するのでありますが、社會保障全般の問題について、社會保障委員會というものが厚生省につくられている。これとの關係は今後一體どういうふうになつていくものか。社會保障制度というものを、もし厚生省が取上げられるときには、失業保險關係は當然それに包含せられていくものかどかうか、それをお答え願いたいと思います。
#37
○米窪國務大臣 きのうきようの新聞に大きく、非常な大掛りなプランが厚生省によつて發表されております。非常な廣い意味からいえば、失業保險も一種の社會保障制度の中にはいると思います。しかしそういう觀點から、この失業保險を檢討するということは、今日の窮迫した勞働問題の現状から見てどうかと私は考えているのでありまして、これはあくまでも失業者を救濟するという勞働問題として私は扱つていきたい。この點は勞働基準法の裏づけになる勞働者災害保障保險と同じ性格からして、失業保險問題も純然たる勞働保險として取扱つた方が勞働者の福祉のためにもいいのではないか、健康保險や厚生年金は社會保障制度ということで、その系統に入れてもいいと思いますが、狭い意味においてこの失業保險とか勞災保險というものは勞働保險という形で、政府が當面したところの失業問題、あるいは災害問題のために善處する一つの社會政策としていきたいというように考えております。
#38
○川崎委員 現在の對策としては、私は今米窪大臣が言われたような考え方の方に贊成であります。しかしながら漸次社會情勢もかわつてくるし、また生活保護法あるいは健康保險、養老年金、この他の關係制度との關連もだんだんに深まつてくると思いますので、これらとの關連において社會保障制度がどういうふうに取上げられておるかということを御質問したいのでありますが、これは實は厚生大臣の方にお尋ねするのが當然だと思いますので、ここでは省略をさしてもらいます。
 そこでこの失業保險制度というものは、昨年の生活保護法とは性格を異にしたものであり、さらに社會保障というものに對して一大前進をしたと考えておるのでありますけれども、しばしばこの失業保險制度の問題をめぐつて論點の的になりますのは、惰民を養成しないかということの一點であります。これはイギリスのビヴアリツジ案にも、この骨子とするところにもちろん完全雇傭の思想もあり、あるいは國家的保險施設というようなことを重點にした思想が現われておるのですが、一面においてはやはり、能力があるにかかわらず勤勞の意欲のない者、あるいは素行不良な者に對しては給付をしないという考え方が、相當強くにじみ出ておると思う。で、この判定が失業保險制度の圓滑なる實施にあたつては一番重要な問題である。やはり國家と個人の協力が強く考えられなければならぬ問題だと私は考えておりますが、これらの關連について米窪勞働大臣は、どういうお考えをもつておられるかお伺いいたします。
#39
○米窪國務大臣 これは本法の第三條におきまして「この法律で失業とは、被保險者が離職し、勞患の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。」とあり、これで一應多少抽象的な解釋や規定かもしれませんが――もつとこまかくこれを規定しろという意見もあるのですが、しかし經濟的關係であるとか、いわゆる生活に必要である物資の問題であるとか、あるいは社會的環境の條件であるとか、そういうこととにらみ合わせて、勞働する意思と能力があるにかかわらずという解釋を規定しなければならないのじやないかという意見もあるのですが、一應この判定についてはやはり本人が職業紹介所に出頭して、自分は働く口を一つ探してくれというにもかかわらず、社會的な客觀的な條件によつて、あるいは經濟の關係によつて職業がない。やむを得ず本人の意思にかかわらず、本人の働く能力があるにかかわらず、本人の責任を歸せざる條件において、すなわち社會的な不可避的な條件において職業が得られない者を失業者ということにきめるのでありまして、從つて惰民を養成するという點については、嚴に政府もこれについて戒しめておるのでございまして、この保險給付額においても、これを上程した當時に御説明申し上げたように、最低生活費の何分の一、あるいは三分の一くらい、今日の物價から見ても三分の一くらいに値しないものきりやらないということでありまするから、失業保險給付を貰つておるからといつてブラブラしておるということは、被保險者そのものがそれでは食えないこととなるのでございまして、決して惰民を養成するということはないと思います。先日小川委員からも御質問があつたのですが、英國では最初、私は額は忘れましたが、相當の給付額をしておつたのが――もちろん當時の景氣變動であるとか、あるいは物價の高低によつて違つてきまするが、それが結局就職意欲を起すことを阻む原因になつたので、今度給付額を變更したということを聞いておるので、その點は起草委員會でも非常に問題にしまして、アイドル・ピープルをつくらないようにしようということで立案した結果がこの内容になつておるのでございます。
#40
○川崎委員 條文の第三條をとらえて御説明がありましたが、私はもう少し深い思想的な御答辯をこの際伺つておきたいと思つたのでありますが、これはこの次の討論の際に、民主黨ないしは私どもが始終考えておることについて述べたいと思いますので、この點は打切ります。
 緊急に御質問をいたしたいことが二つ三つあります。それは現在上程されておる炭鑛國家管理案と關連のある問題でありますが、マツカーサー元帥の書簡は、私が申し上げるまでもなく、後段の六箇條に、勞働の強化と勞働の責任、同時に勞働者の生産性の重視ということが、にじみ出ておると思うのであります。そこで先頃私は、炭鑛事業を公益事業に追加指定する意思はないかという質問をいたしましたところ、大臣はそれに答えられて、現在の勞働事情からそれは適當でない、また勞調法の改正を要するために、現在とるべき措置としては、爭議があつたときには勞働大臣の強制調停でやるという御答辯であつたと記憶をいたしております。そこで昨日來新聞紙上で拜見すると、地方の炭鑛で勞働爭議が起つた場合には、石炭特別勞働委員會というものを北海道、福島、宇部、福岡というような地區に設けて、勞働委員會の活動に待つようになつておりますが、この勞働委員會というものはどういう性格をもつものか、たとえば地方の勞働委員會との關係はどうなるのか、生産協議會との關係はどうなるのか。この點をお伺いいたしておきたいと思います。
#41
○米窪國務大臣 御指摘の石炭緊急増産對策に關連する勞働委員會の中に、特別の委員會を設置しようという考え方は、勞働組合法の施行令の三十七條第三項に、そういう必要があつた場合は、いわゆる小委員會を設けることができるという規定があるのであります。從つて石炭増産ということが非常に重要な今日の問題であることに鑑みまして、不幸にして爭議が起つたときには、地方の勞働委員會へこれが提訴される。しかもその勞働委員會が石炭の問題に精通しておらない場合においては、完全なる調停もできなければ裁定を下すこともできない。こういう最悪の場合を考慮しまして、地方の勞働委員會に、主として先ほど川崎さんが御指摘のように、札幌、平、宇部、福岡。大體地方にいたしますと、北海道、福島、山口及び福岡、この地方勞働委員會に、今申し上げた勞働組合法の施行令の條項に該當する臨時委員會を委嘱したい。もちろんこれは臨時委員でございまして、決していつまでもおくつもりではないのですが、しかもその構成はどういうものであるかというと、大體勞、資、中立三名づつの委員を――あるいは場合によつては五名ぐらいを増員して、臨時小委員というものを勞働委員會の中に設けたい、こういう工合でございます。そこでその機能は、關係地方の勞働委員會の會長は、前項の調停委員會をして、勞働爭議發生し、調停をなすべき場合は、これが調停運營にあたらしめるよう、あらかじめ包括的に指定しておく。今からそういう委員を任命しておこう。こういう構想でございます。從つてこれは石炭國家管理法案なるものがなくなれば、當然この小委員というものはなくなる。こういう工合に御解釋願います。
#42
○川崎委員 今の御答辯できわめて明白になつたので、私これをさいわいといたします。けさの新聞あたりを見ますと、何か地方勞働委員會のほかに、石炭特別勞働委員會ができるというようなふうに載つておりましたので、關係がどうなるかと思つたのですが、勞働組合法施行令三十七條五項ですか、それに從つてその中につくられるという。ところがけさの新聞あたりのは、多少誤解を招くおそれがある。今は勞、資、中立、それぞれ三名ずつというようなお話でしたが、五名ずつと書いてあると小委員にはならぬ、これは別だというふうに私解釋しておつたのですが、これは今の御答辯できわめて明瞭になりましたので、そういたしますと、今一番最後に言われましたが、國家管理法の施行と關連しての石炭特別勞働委員會ですか、それも間違いありませんか。
#43
○米窪國務大臣 これは名前は特別委員會で、また臨時におくということがあるのですから、この點は明らかであります。
#44
○川崎委員 もう一つお伺いしておきたいのは、最近やはりこの問題に關連して、二十四時間制の實施を強く推進するというので、勞働省の關係でおきめになつたことで、現場八時間三交代五日週間制ということや、あるいはそのほか坑口九時間三交代七日週間制、あるいは坑口十時間二交代七日週間制というような、この三つの作業方式のいずれかを、勞働協約によつて實施するよう要望するといつて、新聞紙上には出ておりますが、昨年勞働基準法が作成されますときに、私も民主黨の委員として關係をいたしておつたのでありますが、その際經濟安定に至るまでは、どうしても坑口十時間制をやらなければ、日本の石炭というものは他の基礎産業に必要な量も出せないし、原動力にもなり得ないというような關係から、坑口八時間というものを暫定措置として二時間延長するこれを勞働協約にうたつていつたらどうかということが、相當委員會の内部でも論議をされ、末弘委員會長以下このことには賛成をしておられました。しかるに、地方の勞働組合では非常な反對がありまして、それが實施できず、また關係當局においても、この點には強く反對をせられておつたように私は伺つておつたのでありますが、はしなくもこの問題がマツカーサー元帥の今度の書翰を契機にして、二十四時間制推進、その中でも地方によつては、やはり坑口十時間というものをやらなければならぬ炭鑛があるのではないか。これが今度の石炭國管案の成果をあげるやはり一つの大きな要因になる。これが實施できるかどうかということが、地方の炭鑛のうち、非常に増産が捗らない炭鑛においては、實施しなければならぬ一番大きな部面ではないかと私は思つておるのでありますが、最近新聞紙上でも論説等で、拘束十時間というものを強く主張しはじめている新聞もあります。これらの點については、三つのやり方を勞働省としては進められておるようでありますが、坑口十時間ということが、はたして勞働基準法との關係と矛盾しはしないか。この點についての御答辯をいただきたいと思います。
#45
○米窪國務大臣 勞働基準法の三十六條にこういう規定があるのでありまして、一應は三十二條もしくは四十條の勞働時間という規定があるにかかわらず、坑口勞働その他命令で定める健康上特に有害な業務の勞働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない、すなわち坑口勞働について必要がある場合においては、坑口で交替をした拘束八時間という第四十條の規定をさらに二時間延長してよろしい、こういうことになつておるので、法的にみると、決して勞働基準法と牴觸するものではないと、われわれはそう解釋しております。しからばその三十六條を適用すればいいじやないか、こういうことですが、増産ということは、そうしろ、ああしろということを法律の規定によつてやるよりも、勞働者に心から進んで生産意欲を起してもらうことの方が效果が大であるから、先ほど申し上げた通り、切羽におけるツル交代八時間、すなわち實勞働八時間、また坑口において拘束九時間三交代、それから今御指摘のような坑口において拘束十時間二交代、いずれをとるかは經營者と勞働者との間の團體協約できめていくこと、それはその山の實情に基いていずれをとるかは決定を任せる、こういうことにしたのでございます。
#46
○川崎委員 勞働基準法に矛盾しないという御囘答でありますし、われわれも現在北海道の山々などで行われておる勞務時間をみましても、極端なのは四時間二十分とか――實働時間でありますが、あるいは相當働いているところでも六時間を超えておらない。これではどうしても三千萬トン増産の要請には報いることはできないと考えておりましたので、何とかして實働時間を殖やす方法がとられなければならない。その一つの方法としては、やはり坑口八時間というものが延長されなければ、往復の切羽までの道程だけでも、片道一時間近くかかるような山々が北海道や九州にはある。それではとうてい實績はあがらぬと私ども考えておつたところが、今囘はしなくも二十四時間實施體制というものをマツカーサー元帥の書翰から示唆されて、政府が石炭増産對策要綱を國家管理案と裏づけて御發表になつたことについては、實は贊意を表しておつたのであります。
 そこでこの石炭國家管理案は、今度の議會におきましては、はしなくも純經濟問題から政治問題にまで發展をせんといたしている状況を示しているのでありますが、この石炭國管案が成るか成らないかは、まさに日本の經濟の基底を築くか築かないか、安定に導く誘いの水をここで十分に盛り得るかどうかという岐れ目、いわば經濟安定か不安定かの分水嶺に立つのが、私は實は國家管理案だとさえ考えている。先般來、私どもの黨内では、この問題は今議會における最大の問題として、種種な民主的な論議をたたかわしております。現在黨の方針は御承知のごとく、わが黨の考え方と政府の考え方の間には相當の距離があるものの、國家管理案成立の方向に向つて連日苦心をいたしておるのでありますが、勞働大臣竝びに商工大臣は、經營者が全面的に今日反對をしている、その全面的反對の原因はといえば、いろいろのとり上げられることもありましよう。増産にならないで、かえつて減産を招くのだというようなことを言つている經營者もあるのでありますが、事實個々にあたつてみると、經營者の中では、こんど出た國家管理案ならば、われわれは十分にこれに賛成をし協力をすることができるということを個人では言つている人がある。しかしながらその國家管理案のふり出しというものが、どうもイデオロギー的な色彩が強かつたために、そのことのために反對をし、また勞働大臣竝びに商工大臣が常に勞働者側に――これは社會黨の立場上やむを得ないのでありましようが、勞働者側にのみ相談をされてことを進めておられるというような點にも、私は相當大きな原因があると思う。なんでも、ここ二、三日中には、經營者側ともお話し合いになつて了解のいくようにするというような手が打たれるそうでありますが、なぜもつと早く經營者側と十分に肚を割つて話し合わなかつたかという點については、非常に遺憾に思つているのであります。商工大臣はいろいろ言説の上において多くの話題を投げましたが、勞働大臣はこれをやはりバツクアツプをして、どうしても石炭國家管理案は勞働者の福祉のためにも、また日本國民全體のためにも必要なものであるという御認識のもとに、商工大臣と併行して、國管案成立については十分の御努力を私は願いたい。特にこの勞働委員會の席上をかりまして、實はお願いを申上げようと思つておつた次第であります。政府が國管案を出した意義ということは、これだけの資材と資金というものを山に注ぎ込んでいるのだから、國家管理をするんだということの一點張りで進められてきておりますが、私はむしろさらにこれを進めて、勞働者と資本家、經營者との協力態勢を炭鑛において實現する、そのことによつて日本の經濟が安定する最初のきつかけをつくるんだというていの斷乎なる信念が、特に勞働大臣に必要ではないか、かように私は考えます。私はこれで質問を終りますが、これらの問題に關連して一應勞働大臣の御信念のほどをお聽きいたしておきたいと思う。
#47
○米窪國務大臣 まことに結構な御意見で、平素私が抱懐している、また主張している意見と全然同感でございます。私は産業平和論というものを主張しているのでありますが、産業平和論の最初の、第一の段階においては、經營協議會中心システムというものをとつているので、經營協議會において勞資の間に、わだかまつている誤解なり、あるいは考え違いなり、そういつた感情的な衝突は相當そこで緩和して、そういうことから立脚する爭議は、早期的に解消するのでないかということを思つておるので、山崎さんのおつしやる勞資の間の肚を割つたかけ引き抜きの協議ということが、相當生産の上に役立つだろうという點においては一致しておる次第であります。ただ水谷君なり僕なりが、勞働者の意向ばかり尊重し過ぎておるというようなお考えをおもちになつておるのであれば、それはこの際御訂正願いたい。それは昨日全炭連の勞働者側の代表と懇談會をやつたところが、あべこべに勞働者側から、お前ら政府の考え方は經營者の利益ばかり考えておる、勞働者の犠牲において石炭増産をやるつもりだろうという意見が出たくらいで、ちようど政府の意見は、どちらからもそういうことを言われるようだから、考えてみると一番中庸を得て、經營者にも偏せず、こういうことになるのでないかと考えておる、そこでお言葉の中に、價格差補給金であるとか、資材の調達ということで政府が從來山に注ぎ込んだということが、國管案の一つの動機であると考えられるようですが、これは商工大臣の言うようにそう考えていない。一に基礎産業中の基礎産業である石炭が出なければ、日本の經濟復興はできぬ、生産増強もできない、經濟は崩壤する、こういう差迫つた現實の問題に直面して、どうしてもこの際は、マツカーサー元帥から激勵されようがされまいが、これは日本の經濟問題として、あるいはもつと廣言えば、日本國民存亡のいわゆる重大なる點として、一つならねばならぬということに立脚してやつておるので、從つてこれは決してイデオロギーからきておるのでなくして、これは石炭増産のために殘されるただ一つの手段である。こういうことで閣議はみな一致して決定しておるわけであります。私不敏をもつて勞働問題を擔當しておりますが、仰せのごとくその面から商工大臣と協力して、石炭國管案の實現をはかりたい、こういうように考えております。
#48
○橘委員 川崎君の炭鑛國管案に關連しての勞働問題の質問に關連して、私も一言承つてみたいと思つております。と申しまするのは、石炭業を勞調法の公益事業にお加えになる御意思があるかどうか、この問題です。
#49
○米窪國務大臣 この點は川崎委員から先日お尋ねがあつたのですが、勞調法の第八條二項の規定にはこういう規定があるので、勞働大臣が必要と認めた場合においては、第八條の一項できめたところのいろいろの公益事業のほかに、さらにこれを追加指定することができる、但しその場合は勞働委員會の同意を要する、その勞働委員會の同意を得る方法としましては、勞働委員會は御承知の通り、經營者と勞働者と中立の三者から委員が構成されておるのですが、この場合は相當こういう公益事業を追加指定するということの重大性に鑑みまして、平素の場合だつたら勞働委員會のいわゆる單純多數でいくのですが、この場合だけは特に勞働委員會の使用者側及び勞働者側、中立側、各グループでの過半數の同意を得たなければならぬ、こういう規定があるのでございます。そこでそういう規定を前提として、勞働大臣が石炭を公益事業として追加する場合においては、そういつた手續を經てそれを指定することができるのであります。そこでそういうことさえ經ればできることはできるのでございますが、私としては、これは何といつても、政府が法律に基いて非常手段をとつたという感じを勞務者に與えやすい。そのことによつて直ちに私の恐れておるのは、勞務者の心理が反撥をして、いきおい石炭の増産ができないような結果に終るのではないかという氣分を多分にもつておるのであります。從つて私が、いわゆる産業平和論で皆に提唱しておるのは、石炭に限らず、すべての基礎産業において、それが公益事業でなくても、一つ問題が起つて、それが調停委員會にかかつておる間だけは、公益事業にあらざるものでも、その調停期間中は勞資双方ともロツク・アウト、ストライキなどをしないということでやつていきたいということを提唱しておるのであります。萬一石炭の山で爭議が起つて、私のそういう提唱にもかかわらず、どうしても勞調法の八條二項を適用しなければならないという全般的な情勢が認められたときには、これは閣議にかけてそういう處置をとるようなことになるかもしれないということを申し上げておきたいと思います。
#50
○加藤委員長 それでは本日はこれをもつて散會いたします。次會は公報をもつてお知らせいたします。
    午後二時四十一分散會
ソース: 国立国会図書館
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