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1947/10/24 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第21号
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1947/10/24 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第21号

#1
第001回国会 労働委員会 第21号
昭和二十二年十月二十四日(金曜日)
    午後一時四十六分開議
 出席委員
   委員長 加藤 勘十君
   理事 山下 榮二君 理事 川崎 秀二君
   理事 原   侑君 理事 三浦寅之助君
   理事 相馬 助治君
      荒畑 勝三君    菊川 忠雄君
      島上善五郎君    館  俊三君
      前田 種男君    山花 秀雄君
      寺本  齋君    山下 春江君
      石田 博英君    江崎 真澄君
      倉石 忠雄君    河野 金昇君
 出席國務大臣
        逓 信 大 臣 三木 武夫君
        勞 働 大 臣 米窪 滿亮君
 出席政府委員
        經濟安定本部副
        長官      永野 重雄君
        總理廳事務官  渡邊年之助君
        逓信政務次官  椎熊 三郎君
        勞働事務官   賀來戈二郎君
 委員外の出席者
        議     員 林  百郎君
        議     員 徳田 球一君
    ―――――――――――――
十月二十二日
 税務職員の給與増額の請願(林大作君紹介)(
 第九四九號)
 別府市の勤務地手當の地域給を特地に引上の請
 願(宇都宮則綱君紹介)(第九七七號)
の審議を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 逓信從業員の集團缺勤に關する問題及び千八百
 圓ベース問題等について説明聽取。
    ―――――――――――――
#2
○加藤委員長 これより會議を開きます。
 本日は日程といたしましては失業保險法、失業手當法の問題が、まだ質疑繼續中に属しておりますけれども、それは大體修正意見が理事會できめられておりますので、修正案文ができ上るまで一時中止しまして、本日は特に政府の勞働對策、とりわけ政府の逓信從業員關係の問題についての措置に對して緊急の質問があるということでありまして、それを行いたいと思います。
#3
○川崎委員 私は全國逓信從業員地方支部の最近の集團缺勤行為に關して、政府が一昨二十二日警告を發するに至りましたまでのいきさつ、竝びにこの警告を發するに至つた見解を、政府當局に問い質したいと思うものであります。すなわち七月以來全國逓信從業員組合の内部におきましては、現在の物價高に對處して、從業員の賃金というものは引上げられなければならない。當然われわれの生活を保障してもらわなければならぬという最低生活保障の要求が出ております。しかるにこれに對する政府當局との折衝の結果は、滿足しがたきものとして東京、神奈川、大阪、兵庫、京都などの各地域勞組におきましては、その地方の勞働委員會に提訴をなしている事實を早くより聞知はいたしておりましたが、近來特に東知、大阪の二つの地方勞協の内部における出勤状態は、きわめて出勤率が低く、これがために逓信業務が遲帶をしているやにわれわれ拜聞をいたしております。しかるにこれに對しまして、提訴されたことに基いて各地方の勞働委員會は、これが裁定のために非常な苦心をいたしている。最後にはこれが全逓から中央勞働委員會に提訴をされて、中央勞働委員會は逓信大臣に對して何らか申入れをしたようにも聞いておる。内容のことはしかと存じませんが、この申入れないしは勸告にもかかわらず、政府が遂に二十二日、今度の勞働組合のやり方は山猫爭議であるというような表現を使つて、この運動に對して非常な警告を與えている。もしこの警告に從わないときには、政府は給料の不拂いを行うものであるというような記事が出ておりました。私はこのことはきわめて由々しい事態に到達いたしたものと考えますので、逓信大臣からこれに至るいきさつを平明にお話を願いたい、まず第一にいきさつについて御質問をいたす次第でございます。
#4
○三木國務大臣 川崎君の御質問に對しまして、大體の今日までの經過を委員各位に御理解を願つておく方が便利かと存じまして、大體の經過を申し述べたいと思います。
 全逓本部は七月に松江に大會を開きまして、その大會の決議に基いて、私宛てに要求書が提出されたのであります。その要求書の項目は、一、二千四百カロリーを基礎として最低賃金制を確立せよ。一、電氣通信事業の民主的一元化をせよ。一、全從業員に住宅を與えよ。一、全從業員に制服を支給せよ。一、結婚資金を全從業員平均月收六箇月分を支給せよ。一、大蔵省預金部中、逓信省關係資金運用權を逓信省に移管し、民主的に運營せよ。一、特定局制度撤廢を促進せよ。こういう要求が出てまいりまして、この問題について全逓本部と逓信當局との間に囘答書を出し、あるいはまた協議すべき事項は協議をいたしまして、最近に至つたのでありますが、その政府の囘答が不滿なりとして、九月の二十六日に中勞委に對して提訴をいたしてまいつたわけであります。この松江大會の決議による項目のほかに、提訴の項目中には、一月から六月に至る赤字補給の意味で、本人二千圓、家族千圓の生活補給金を支給せよという項目も加わつてまいりました。また八月には諏訪において中央委員會を開いて、地域鬪爭をやるという方針も決定をいたし、この線に沿うて今川崎君の御指摘になりましたごとく、全逓本部の提訴に先立つて提訴をいたしてまいつた地協――いわゆる各地方における地域的な支部があつたわけであります。たとえば大阪地協、あるいは今囘問題になつております東京中央地協もそうであります。その後全逓の提訴に前後して、ただいま地方の勞働委員會に提訴をいたしておる地域は、兵庫地協、京都地協、神奈川地協、靜岡郵便局支部、こういう地域的な提訴も行われております。この提訴の内容は多少は違つた點もありますが、大體全逓本部が提訴いたしておりまする項目と大同小異であります。
 この提訴を中心といたしまして、今御指摘になりましたごとく大量な職場離脱が行われましたのは、神戸の中央電信局が、九月分の俸給を八月二十日までに支給せよという要求を八月十八日に提出をいたしました。今日の俸給令の建前からかような處置はとれないから、從つてこれを斷つたのであります。そうして八月の二十日ごろより缺勤が殖えてまいりまして、八月の二十三日、そのときが一番多かつたのでありますが、六十一名の缺勤、平常の五倍、これが八月の二十五日には大體平常に復して、今日は平常通りであります。さらに大阪中央郵便局も九月の九日に、やはり何らかの現金をこの際出してほしいという要求が始まつて、ここも九月の十日ごろから九月の十二日まで相當大量な缺勤が起りました。また大阪中央郵便局も、やはり同じような性質の要求を出しまして、九月の十一日から十七日ごろまでの間に全部ではありませんが、通信課の一部の者の缺勤が行われました。また大阪の搬送工事局、これも同じような性質の要求が出てまいりまして、九月の二十日ごろから一週間ばかり相の要求が出てまいりまして、九月の二十日ごろから一週間ばかり相當大量な缺勤者が出た。また大阪中央電話局からも同様な性質の要求が出てまいりまして、十月の十日ごろから十四、十五、十六日ごろまで、一番多いときま七〇%の缺勤者が大ました。しかし先般千八百圓の差額が支給されまして以來、大體において大阪、神戸は正常に復している現状であります。今日問題になつておりますのは東京の中央地協の問題であります。東京中央地協というのは丸の内、京橋、日本橋、こういう地域を含んでいる通信從業員約一萬一千名の組合員を擁する地域の團體でありますが、この東京中央地協が同じく九月の四日に東京都勞委に向つて提訴をいたしてまいりまして、これが九月の六日に受理されております。その要求は全逓本部の要求のごとく二千四百カロリーの生活保障の給料、あるいは赤字補給金として全逓本部は二千圓、千圓ということを言つておりますが、中央地協は二箇月分の俸給を支給すること、あるいは通勤費の全額を支給せよ、あるいは勞務加配米の減配に反對する。こういう項目で提訴してまいつたわけであります。九月の六日に受理されておりますから、十月の五日でありますか、爭議權を獲得いたしているわけであります。一方全逓の本部の調停がただいま進行中であり、また一方にはこういう地域的な提訴が方々に起つておりますので、政府の意向といたしましては、ほとんどその提訴の内容が同性質のものである。從つて地方的な――東京なら東京という地域で、こういう給與の根本に關係する問題を解決するということは、全髓を解決しないで部分を先に解決していくということで、はなはだ困難でもありますので、でき得べくんばこういう地協毎に提出された提訴は、まとめて中央において處理する。でき得べくんばさらに單一組合としてその單一組合が基本的な諸問題を掲げて提訴をしておるのだから、そういう同じようなことで地域、地域にばらばらな提訴は、勞働問題の處理上もちろん、でき得べくんば一本にしてほしいという希望をもつておりました。戰術としてはともかく、ほんとうに勞働問題を處理しようとする場合には、さような處置が好ましいと考えまして、この希望を中勞委に申し出ましたけれども、結局中勞委としては、東京中央地協に對して何らか一つの解決案を出そうというような方向に向われまして、きわめて非公式ではありましたけれども、十月の十六日に中央勞働委員會の調停委員末弘會長以下が總理官邸に私を尋ねて來られて、とにかく困つていることは事實だから、この際千五百圓の金を何とか出せないだろうかという非公式な交渉を受けました。しかし單に東京の逓信從業員の中央地協だけに千五百支拂つて他の地域にこれを支拂わない、あるいは逓信從業員だけに、名前はともかくとして千五百圓をこの際支給をいたして、他の官公從業員に對してこの問題を何ら考えないというわけには政府の立場としてはまいりませんし、東京地協に千五百圓の生活補給の金を出す場合には、全國的な視野においてこの問題を解決しなければならないが、そういう材源もございませんし、非常に困難な問題であつたのであります。私は率直に言つたのでありますが、千五百圓の金を今東京中央地協だけに出せということは困難だが、しかし今もうすぐ衆議院も参議院も通過して支給のできる直前になつておる千八百圓の差額がある。これは地域によつて率が違つてまいりまして、東京は特地でありますから、東京中央地協だけを先般渡しました平均をとつて見ますと、千四十圓くらいになつている。東京都全體では八百五十圓くらいになるわけですが、この金は從業員から言えば當然昔にもらわなければならぬもので、政府が怠慢なのだと言うかもしれないが、ともかく金は金じやないか。この金があれば當分生活の資金になるのだから、こういう金はできるだけ早く出せるように促進の方法をとりましようと申したわけであります。しかしよく皆とも相談をしてもう一遍返事をしてくれないかということで、改めて十八日に私が末弘委員長を訪ねて、千五百圓をこの際別に出すことは先般申し上げたごとくできないが、とにかく今日は千八百圓の差額は衆議院を通つた。明後日は衆議院も通るから、そうすれば一刻も早く金を出しましよう。あるいはまた政府は勤勞所得税のことも考えておりますから、國會で可決になればこういうことも便宜をはかれる方法もありましようが、結局これは國會で決定をしなければならぬことで、政府はあらゆる手段を盡して今日生活に困つている人たちの生活の資金になるような努力をしましよう。こういう答えをいたしたのでありますが、さらに二十日には中勞委の調停委員會に出席を求められまして、私出席をいたしました。そして千五百圓の問題については今と同じような説明をいたしますとともに、一方においては勤勞者の生活が苦しいという事態も認めるし、あるいはまた政府の計畫した中で計畫通りにいつていない政策のずれも確かにあるだろう。こういうことを反省して、できるだけ配給の面において、やみによる部分を少くして、生活が緩和できるような方法をとろうと政府も努力をしておるのだ、というような答辯をいたしておつたのでありますが、この政府の態度に從業員諸君は相當不滿を抱かれまして、東京中央地協においては、この二十日以來職場の離脱が行われてまいりました、こにに持つております資料の中に、二十一日における職場離脱の状態がございますので、その數字を申し述べておきたいと思います。
 この東京中央地協の中で、今問題のあるのは東京中央郵便局であります。この東京中央地協の中には丸ノ内、京橋、日本橋がありますが、その丸ノ内という中に東京中央郵便局と、東京中央電信局、東京中央電話局という日本の通信の中樞神經である重要な大きな三つの機關があるがために、この問題は非常に重大性を帶びてくるわけであります。その中で電話局、あるいは電信局の方は大體において平常通りの業務を運行いたしております。問題は中央郵便局にあるのであります。中央郵便局の最初における職場離脱状態は、二十一日の統計によりますと、第一種郵便、第二種郵便、第三種郵便を扱つている普通郵便課で、午前と午後に分れておりますが、大體大差がございません。最初に、これは午前八時の統計になつておりますが、普通郵便課の出勤率が三四・二%、小包課が三八・二%、電信課が五〇・二%、こういうような五〇%以上の大量な職場放棄の事質が現われてまいりました。これがずつと續きまして、本日の午前十一時三十分現在の状態では多少よくなつてまいつておるのであります。よくなつておりますが、現在の状態は出勤率が、普通課は三七%、それから書留とか速達とかいう特殊課が八一%、小包課が一番悪くて一七%、いろいろな郵便物の配達をする行嚢課が八〇%、貯金課が七三%、外國郵便課が八九%、集配課が八四%、電信課が六八%、庶務課が八八%、厚生課は平常の通りであります。昨日の状態に比べますと、小包課を除いては相當出勤率が殖えてまいつております。昨日は大體において五〇%前後のものであつた。これと日本橋郵便局が相當事態は悪化をいたしておりまして、それの出勤率は本日の午前中の出勤率がありますが、
    〔委員長退席、山下委員長代理著席〕
郵便課五四%、電信課二四%、貯金課五三%、こういう状態で、相當大量な缺勤があるわけであります。
 これに對しまして、逓信省といたしましては、今回こういう地協の代表者あるいは全逓の代表者を呼びまして、とにかく爭議權は獲得はしておるといつても、全逓が有力な單一組合としてある限りは、全逓が統制をとつたことをやつてもらいたい。たとえばこの大量の職場離脱にしても、全逓本部が要求を出して、まだその審議が行われておる最中であるし、また東京の中央地協にしましても、先般千五百圓という話がありましたが、これは調停案というのではなくして、勧告と申しますか、政府の意向を打診したと申しますか、調停案が出たというわけではないので、東京中央地協もやはり未だ審議中でもあるわけであります。單一組合とし、かつまた自分が提訴したことが今審議中にあるという事態を考え、またこの通信機關が麻痺いたしますことが、國民生活に與える影響等も考えまして、どうか統一ある行動、組合運動をしてもらいたいということをしばしば要望いたしてまいつたのでありますが、事態は改善をされないでまいつたのであります。
 ここで政府といたしましても、こういう大量な職場放棄が各地に行われる事態を黙視するわけにはいかないわけであります。しかも爭議權を獲得したと申しましても、いかなる爭議でもそれが勞働組合法、あるいは勞調法の規定において正當な爭議として保護されるという性質のものでないという解釋を政府はとるわけであります。たとえば勞調法の四十條、四十一條にも爭議權保護の規定をもつておりますが、しかし勞保委員會の同意があつたときには處分ができることも四十條、四十一條には認めておるのでありまして、これは事實上爭議權を制限いたしておることがこの立法の精神であると思います。結局爭議行為はその判定あるいは處分には勞保委員會の同意は必要といたしますが、いずれの爭議も勞働組合法あるいは勞調法において保護はされておらない。その中には、いわゆる正當なりざる爭議も豫定しておるという法の解釋をとりまして、今囘行われておる大量の職場放棄は組合の指令によらないで皆自廢的にやつた、從つて責任者もない。また指令でないのでありますから、統制もとれていないという形で各地に職場放棄が行われるということは、一面から申しまして、日本の勞保組合運動の正常な發達を希う政府といたしましては、かくのごとく無秩序、あるいは無責任に職場が放棄されるという事態は、日本の勞保組合運動の將來のためにも非常な禍根を残す。またこういう重大な時局に、たとえば逓信省の問題にいたしましても、この通信事業が痲痺することが、國民生活、國民經濟に與える重大な事態を考えまして、かくのごとく誰がやつておるのかもわからず、誰の指令もない自發的であるという形で、ほとんど出動者の半分が職場を放棄するという事態を看過するわけには政府としてはいかないわけでありまして、政府はこの事態においてかくのごとき行為は自發的であるといつても、これを爭議なりと政府の見解において斷定して、もちろん勞保委員會の同意でありますが、この爭議がきわめて悪質な、きわめて不當なものであるという見解のもとに、今後對處していく決意をいたして、先般警告を發した次第であります。
 この事態によりまして、現在國民に對しても非常な迷惑をかけておることは、責任者としてまことに相濟まぬと思つておるのでありますが、しかしながら、さりとてこの問題の解決をうやむやにするわけにはいきません。また姑息な手段によつては、この問題が本質的酒決に至ることができないとは當然なので、この點は事態を國民各位に御了解を願つて、その不便をしばらく忍んでいただきたいということを議會を通じてお願いをいたしたい。今どういうふうにこの事態が影響いたしておりますかと申しますと、中央郵便局は御承知のごとく、日本の郵便物の一番大きな中繼所になつておりますから、これがこういう爭議にはいる結果、郵便物の停滯が起つてくるわけであります。現在停滯をいたしております數字を申し上げますと、普通課における一種及び二種の郵便が百二十萬、正確には百二十萬六千百八十通でありますが、約百二十萬郵便物が停滯をいたしております。三種以下の郵便物が二十一萬七千六百通、それからまだ開いておりません未開の郵袋が――たくさん入れた袋――三百二十箇、これは普通課でありますが、小包課はまだ開いておらない開いておらない郵袋が八千九百七十五箇、また特種課の未開封の郵袋が、これは書留などのはいつておるのが三百九十七箇、また赤行嚢が三百三十九箇、白行嚢が六百八箇、これは皆袋の箇數であります。ほかに速達が一萬五千通、書留が一萬六千百五十二通、これは今特種課の數字を申し上げたのでありますが、外郵課――外國郵便課の方では、通常も小包も平常通りで停滯はありません。集配課も窓口は平常通りで、配達引受けども平常通りでありますが、平常通りと申しましても、處理する方からまわつてこないから、この平常通りという仕事が實際は平常通りにいつていないわけであります。
 こういう事態でありますので、これに對しまして逓信省の今までとつてまいりました處置は、小包がかように大量に停滯をいたしまして處理に困難を來しますから、十月の二十一日に各逓信局に向つて、東京中央郵便局宛及び中央郵便局を中繼とする小包郵便物の差立てを當分の間停止方を指示いたしました。小包は受付けはするのでありますが、それを東京中央郵便局に向つと送つてこないで、その郵便局で留めておいて欲しいという指示をいたしました。また小包郵便物を、東京中央郵便局を經由しないで迂囘して逓送のできるような場合は、その方法をとるようにという指示をいたしました。また問題の起つているのは東京の中央地協でありますから、東京逓信局、中央地協に向つて連合軍關係の郵便物の處理の確保方を命令をいたしました。これに對しては郵便局長はただちにこういう手配を、――組合側に對してこの事實を傳達いたし、また上野、新宿等に到著して停滯しておる郵袋は、これは非常に交通上の妨害になりますために、臨時人夫を手配して、これを引取る手配をいたしました。また普通郵便處理のために臨時事務員等も、これは少人數でありますが、採用いたしました。また一方今缺勤をいたしている人人に對しては、出勤方を勧告すると同時に、政府の警告書が出ました場合には、組合の責任者の出席を求めて、この趣旨を傳達して、各組合員にこれを傳えて欲しいということを申述べたのであります。その間最初に申し上げましたごとく、組合責任者に對しても、この事態を收捨するために、現に提訴は進行しているのだ、提訴進行中にこういう事態を――理由はともかくも、この事態を收捨するためにその協力する點をいろいろ組合にも傳えて、組合側自身としてもこの事態收捨に對して協力方を要請をしているわけでありますが、事態はかようになつている次第であります。
 これはもちろん逓信從業員のみの問題でもありませんが、いろいろな點から考えまして、逓信從業員の生活の状態が非常に苦しいという事態に與しては、これは率直に認めなければならぬと思うのであります。しかしまた一方において、今日逓信省自體あるいは政府自體としても、同じような苦しい立場にありまして、必ずしも組合の満足するような事態にはまいりませんが、組合の全逓本部の提訴されておる問題については、近く中勞委においても調停案が出ることと思います。こういう問題については、政府は誠意を披瀝してこの問題の解決にあたつていく。また一方において、官公廳の從業員、これは國民一般にも影響することでありますが、この生活の緩和についても、今日政府としては檢討いたしておる次第であります。以上大體の經過と、政府のとりました處置とを御報告申し上げる次第であります。
#5
○川崎委員 ただいま逓信大臣から、全逓の集國離脱行為に對しての經過と、從來の要求をめぐる當局の態度と、さらには最後にとつた政府全體としての方針というものについては、十分に詳細な經緯を含むあなたの御報告を了承しました。松江大會において、二千四百カロリーを基礎とする配給をせよ。あるいはこれに代えてそれだけの賃金をよこせ。さらにはまた全從業員に住宅を支給せよ。結婚資金を附與しろというような要求が、はたして今日の日本におかれておる客観情勢、經濟状態からして妥當なりや否やについては、私は一つの見解をもつております。しかしながら本日は質問に重點をおいて、多くの大臣の見解を伺いたいものでありますから、その點は省略をさせていただきますが、問題は中央勞働委員會が裁定をすることについては、政府は常に尊重する。從來電産の爭議あるいは讀賣新聞の爭議などに起つたところの吉田内閣がとつた政策、つまり中央勞働委員會の裁定を尊重しない態度については、われわれはこれに否定的な態度をとつておる。現在の勞保事情を勘案して、中勞委の裁定を尊重するという考え方に對しては常に敬意を表してまいつたのでありますが、そこでひとつ中勞委の裁定というものに對して、政府の見解をさらにお伺いする前に、この十五日に末弘委員長は一體中央勞働委員會の委員長代理としての資格できたものであるかどうか。問題の核心は東京地協が九月六日に堤訴をして、十月の五日にはすでに調停期間を過ぎて、爭議權を獲得しておる東京地協の問題について、末弘委員長が中央勞働委員會の委員長の資格勸告にきたのか。あるいは――私も末弘委員長には私的にお會いをして、いかなる資格でどういう方法をとつたかということについては相當念入りにお尋ねしてきておりますので、個人的には知つておるけれども、公の席上においての言明がまだなのです。そこでむしろこれは三木逓信大臣の側にひとまず聽いてみる。今後においてこの問題がどういうふうに發展していくかは別として、その點をしつかり聽いておかなければいけないと私は思います。そこで申入をしにきたのか、あるいはその他の委員とともに、とにかく政府のもつておるところの方針というものを打診にきたものであるかどうか。これは末弘さんはそのときにどういうような形式でこられておるかということを、あらかじめ聽いておきたいと私は思うのです。申入と裁定ではたいへんな差異がある。しかも假調停というような話も聽いておるので、この際三木逓信大臣から十分に伺いたいということが一つ。
 もう一つついでに伺つておきますが、中勞委がかりに申入とするならば、その申入をしたる千五百圓の數字の基礎についてお話がなかつたかどうか。とりあえず千五百圓出してくれと、こういうお話であつたかどうか。
#6
○三木國務大臣 そのときの總理官邸における空氣は、とにかくこの際逓信從業員は困つておるのだから、理由はともかくも千五百圓の金が出せないという、きわめて相談的なお話であつたのであります。その雰圍氣は、一つの勸告案をもつてきたというよりかは、調停委員も、聞けば生活が苦しいようであるから、何とかこの際、理由はともかくとして千五百圓の金が出せないだろうか、その證據には、共濟組合の金でもないですかというようなお話までもされたわけでありまして、ほんとうの解決は、全逓全體の調停案が出ているから、そのときに基本的な問題を解決して、この地協の問題は、とりあえず千五百圓というものを何か出す方法がないかというお話なので、それを聽いておつた私の感じは、調停委員が勸告案を私のところへもつてこられたとは受取つておらないのでありますが、しかし末弘さん以下その他の調停委員の方も――中には缺席されておつた方もありましたが、多數お見えになつておつたのでありますから、あるいはあとでそれは勸告であるというような主張をされるような方もあれば、そういう形にも見られるのでありますが、實際のそのときの私も委員の方々の話合その他の空氣は、ひとつ何とか方法がないかというので、一つの勸告に來られたという感じで私は會つていないわけであります。
 千五百圓については、今申しましたごとく、とにかく何とか千五百圓は出ないだろうかというので、ちようどそのときにはまだ千八百圓の差額を出す直前にあつたものですから、今これだけの金があつて、東京では相當な金額がこれでいくのですというわけで、その千五百圓という基礎がどういうところから割出してきたか、抽象的には、今まで政府のいろいろ發表された政策のずれもあつて、赤字が相當殖えたことは事實なんだから、理由はともかく、千五百圓のをこの際出せないかということで、的確に千五百圓の算定の基礎をお示しにはならなかつたのであります。
#7
○川崎委員 ただいま逓信大臣から伺つていると、末弘委員長は相談に來たというような平であつたと私は拜聽いたしました。そこで中勞委の裁定なりとする一部の見解が今日行われておるのでありますが、本調停の裁定でないということだけは明白になつたと思うのであります。
 そこで私はこの際勞働大臣にお伺いいたしたのでありますが、先ほど三木逓信大臣は集團離脱行為が非常に激しくなつてきた、特に中央郵便局では、ときには十分の一しか出ておらぬ、最近の平均をとつてみても三割から四割の出勤率であるように聞いております、しかしながらこの問題について組合側は聲明を發して曰く、これは物價事情、生活事情の貧窮に基くところの自然發生的な行為だ、もうどうしてもこの賃金では、空腹で出ていつても仕事の能率があがらない、そこで各個人個人が生活の困窮から來たところの自然發生的な行為であつて、決して組合が強制したものでもなければ、一部の煽動分子が煽動したものではないというような聲明を出したように聞いておるのであります。そこでもしも千八百圓ベースを、かりに今日の經濟情勢から正しい政府の方針であるとしても、こういうような状態で實際に腹が減つて出勤ができないということが事實であり、また事實でありましよう。しかしながらそのことによつて離脱をしたということが、各個人の自由意思によつて行われているものかどうかということについては、また大いな疑問をもたなければならぬのでありますが、今政府はこれらの現象を見て正當ならざる爭議行為であると認定するに至つた。そこで正當ならざる爭議行為と認定するに至つたのは、どういうことを根據にして、またどういう見方で政府はこれを正當ならざる爭議行為と判斷をしたものか、勞働大臣にお伺いしたい。
#8
○米窪國務大臣 アメリカの言葉で言うと、ワイルド・キャット・ストライキと俗に言つているが、いわゆる正當ならざる行為と内閣が斷定するまでの大體の閣議における空氣を申し上げれば、今の御質問に對するお答えになるだろうと思う。千八百圓ベースで食えない、從つて全逓の諸君が職場で働く力がないということが絶對的のものであるかどうかということについては、おのずからいろいろ立場によつて意見が相違すると思うのです。しかしながら、今朝の新聞に現われている全逓に責任者が言つているところは、要するに責任は政府にあるのだ、千八百圓ベースでもつて耐乏をしろと言つている政府に責任があるので、すなわち政府の言葉をかりて言えば、正當ならざるストライキをやつている者の責任ではない。これは新聞記事ですからほんとうにその通り言つたかどうかわかりませんが、そういうことを言つているのです。この點これらの諸君の生活に對しては非常に直情しておりまするが、さればといつて今やつているあの行為が、それにより正當化されるものと政府は考えておらない。なぜ政府がこれを爭議であり、かつその爭議も正當ならざる行為であるというぐあいに解釋したかということを申し上げます。それは、千八百圓ベースで生活の困窮を來しているのは全逓の諸君だけではない。すでに提訴している他の全官公廳の人たちもあるし、また未だ提訴をしない人たちもある。もちろん全逓の諸君ばかりが一種のサボタージュ行為をしているとは、私ここではつきりは言いませんが、主として全逓の諸君がやつており、ほかの者はやつておらない。また同じ全逓の諸君といえども、やむを得ざる自然發生的行為というのには、あまりにも集團的であり非常に多い。またそれが日によつてそうい行為をなす者がかわつている。たとえて言えば、机の片側に竝んでいる者がきよう仕事を放棄すると、あすはその連中が出て來て、今度は向い側の者がやつている。そこにある程度の、何らかの計畫的行為があることがわれわれにわかる。しかるに一方、全逓の責任者はおれたちが指令したものではない、これは爭議行為ではない、こうはつきり言つている。從つていわゆる不當なる勞働爭議というものは、責任ある團體の執行部の者が命令をくださないのに、組合員が各自勝手に爭議行為をする。すなわちこれは健全なる勞働爭議ではない、不健全な爭議である。しからば政府がこれをなぜ勞働爭議なりとしたかということです。これは目下要求が出ているということが唯一の前提條件なんです。要求が出ていないときに集團的に休んだからといつて、われわれはこれを勞働爭議とは思わないが、要求が出て中央勞働委員會でこれを調停しているのに、調停を提訴している側の者が自分らの方の主張を通させる一つの間接的な牽制運動だと政府は考えている。從つてこれは勞働爭議の一種であり、しかもそれは先ほど申し上げた理由によつて、これは不健全なる勞働爭議であるというぐあいに斷定した次第であります。
#9
○川崎委員 ただいま勞働大臣のお答えの中で、明らかに爭議行為と見られる計畫的な行為がある。それから一般從業員を出勤させない間接的な牽制行為があるというお話があつたと思う。
政府がそういうふうに事態を見られ、そういう判定のもとに今度の警告を發せられたとするならば、しかもそれが事實客觀情勢からしても妥當であると見られるならば、政府の警告というものに對しては、別にわれわれの側からこれをとやこう言うものではない。しかしそれについては、警告を發せられるとともに、勞調法の第四十條に「使用者は、この法律による勞働爭議の調整をなす場合において勞働者がなした發言又は勞働者が爭議行為をなしたことを理由としてその勞働者を解雇し、その他これに對して不利益な取扱をすることはできない」とありますが、この點を採用されるというのではないのでしよう。但書の方に「但し勞働委員會の同意があつたときはこの限りでない」とありまして、勞働委員會がこれに對して正當ならざる行為というように判定をしたときに、初めて政府の今日の警告というものは效果を生ずるわけと思いますが、勞働委員會が正當の爭議行為だという判定を下したときには、政府はどういう處置をとられるか。
#10
○米窪國務大臣 御質問に對してお答えする前に、川崎委員が私の答辯に對してだめを押した點に食い違いがありますから、その點は訂正しておきます。
私が先ほど述べた説明の中に、全逓の執行部はそういう行為をすることを命令したのではないと言つております。
しかるにこの行為をなぜ爭議であると政府が認めたかということについて、先ほど一つの例を申し上げたように、計畫性がそこにあることをわれわれは認めている。ただしこれからあとの點は川崎委員が私の説明を聽き間違えたと思う。それは指導者が職場へつかないように牽制をしたということは私は言つておらない。それは私の言つたことを聽き間違えたのだろうと思います。
すなわち爭議行為であるとわれわれが認めたのは、今全逓の方から出ている要求が中央勞働委員會で調停をしておる。その調停の案なるものを提訴した側の者が、自分らの方に有利に導くためにとられた一種の牽制行動である、こういうぐあいに言つたのでございまして、勞働者側の幹部が出勤をしないように牽制をした、こういうことを言つたのではありませんから、この點に一つ御了解を願いたいと存じます。
 それから御質問に答えるのでありますが、第四十條は今お讀み上げになつた通り、これこれの場合においてはその勞働者を解雇し、その他これに對し不利益の取扱いをすることができない。ただし勞働委員會の同意があつたときにこの限りでないというのでありますが、これを文字通り解釋いたしますと、一應こういうことによつて解雇してはいけないということを規定しただけにすぎない。ただし勞働委員會の同意があつたときはこの限りではないということは、これをひつくり返すと解雇ができるというぐあいいに援用はできますが、政府は四十條をねらつて警告を發したのではないのです。政府は先ほど三木逓信大臣が言われた通り、こういう行為が行われている限り、すなわち公共の福祉に反する行為が行われている限り、重大なる通信事務というものが停滞したときに社會に與える被害が非常に大きいのであるから、爭議の平和的解決、産業の平和を唱えているわれわれとしては、今までの點は不問に附する。しかし今後は、ああいう行為をしている者の中には事情を知らずしてやつている者もあるだろうし、あるでは全逓の幹部が言つておるように、ほんとうに腹が減つて仕事ができないという者もあるだろうから、重大なる影響を自分らの行為が知らず知らずのうちに社會に與えているということを知らずにやつている者もあるだらうから、今までの分はわれわれは看過する。不問に附する。しかし今後そういうことがあれば、われわれとしては不當なる勞働爭議として認めた以上は、これによつてわれわれとしてとるべき最後の手段をとるのであるという警告を發したところに、いわゆる政治的なわれわれのねらいがあるのでございます。しからば勞働委員會が同意しない場合において、政府はどういう態度をとるかということでございますが、政府としましては、これは勞働爭議である、しかも不當なる勞働爭議である。
こういうぐあいに解釋しておりまするから、これが勞働委員會において、第四十條に違反しないという裁定が下つた場合においても、なおかつ文官任用令その他公務員法の適用が當然行われる餘地がある、こういうぐあいに解釋しております。
#11
○川崎委員 ただいまの問題の、勞働委員會が同意しなかつた場合にとられる處置の件は了承しましたが、中央勞働委員會もこれは御承知のごとく勞、資、中立から權威のある代表が出られて、勞働問題に對して最高の判定をする權威ある團體でありますが、これの裁定に對しては尊重するという政府の態度というものが變つていなかつたとするならば、中央勞働委員會がとにかくいろいろな議論の末で、ありましようが、私の聞知する限りでは、勞働委員の一人の方は、この際とにかく一箇月分ずつ各人に手渡すようにしろというような話も中央勞働委員會では出ている。しかるに各種の觀點から檢討された末に、今算定の基礎はきめて明白ではないけれども、とにかくとりあえず一千五百圓出してくれというような相談があつたとするならば、この申入というものを覆えすには、中央勞働委員會としても、相當從來のいきさつ上面子にもかかわる問題ではないかと思う。もちろん中央勞働委員會が國家財政その他のことを勘案して、政府はとても出し得ないだろうというような判定にでも立至つて、本調停のときに裁定方針が變更されるならばともかく、中央勞働委員會が今の考え方、今の線によつて解決しようとした場合に、政府ははたして、この裁定に對して裁定を尊重する意思があるのかどうか。政府としてはもはや財源の涸からしてとうていそれは出せない、あるいは全官公勞に及ぼす影響等からして、それだけの經費というものは國家財政上捻出できないというような結論に達するものかどうか、今日のところのお話を伺つておきたいと思います。
#12
○米窪國務大臣 これは三木逓信大臣がどういうぐあいにお答えになつたか、私途中から参つたものですから知りませんが、現在は全逓の全部ではなしに、一部である東京地方協議會から東京地勞委へ出した提訴が、地勞委の裁定で中勞委へ移された。しかもしばらく經つて全逓本部から全國的な組合員の利益を代表して、中央勞働委員會へほとんど内容の同しような提訴が出ておる。從つて政府としてはもちろん、中勞委の自主性と中立性とは尊重しますが、政府の希望としては、その裁定案は大體においてどういう調停案が下されるにしても、それは全逓の東京地協の場合においても、あるいは全國的な場合においても、こまかいことは違いまするが、一番重大なポイントについては、ほとんど同様な調停案が下されるとわれわれは考えおるのであつて、從つて政府としましては現在の段階においては、そういう調停案は全逓の調停が目下かかつておるから、全逓本部の提訴に基くところの調停と合流をして扱つてもらいたい。こういうことを申し入れておるのでございます。
#13
○川崎委員 現在の中央勞働委員會は、一昨日でありますか、衆議院から荒畑勝三氏以下三名、衆議院議員としての資格のもとに院議をもつて承認をされ、委員として御活動願うような形になつたように聞いておりますし、全委員の顔觸れか揃つたと思うのでありますが、中央勞働委員會の今囘の全逓爭議に關する調停委員の勞働委員の方方は、これは三名の名前はわかつておりますが、ほとんど主義主張というものが、われわれの側からみれば一方に偏した考え方をもつている人のように思う。われわれの側でなく、客観的にみても、あるいはこういう人々は極端な考え方をもつて組合の爭議というものに對處しているようにわれわれは思うのであるけれども、今後調停委員というものについて、政府はこの全逓爭議の調停委員を中央勞働委員會に勸告して變更する意思はないか。また當然今後中央勞働委員會においても、それぞれの立場において利益を代表する人々をつけ加えられるとは思うけれども、これについて勞働大臣竝びに逓信大臣は、今囘の折衝經緯を考えて、どういうふうに思つておられるか。
#14
○米窪國務大臣 調停委員につきましては、川崎委員御承知の通り、經營者側の利益を代表する者が三名、勞働者側の利益を代表する者が三名、中立ですか第三者を代表する者が三名、しかもこの三名はそれぞれ勞働者委員、經營者委員、中立委員、すなわち勞働委員の承認を受けて委員長がこれを推薦することになつておる。從つて政府としましては、この決定に對して勞働委員會の中立性、自主性を尊重するので、あえてそれを變更しろとか何とかいうようなことは今のところ考えておりません。もちろんこういう事實はございます。今囘の調停委員が總同盟系と言うと語弊があるが、總同盟に屬している勞働委員から一人も出ずに、いわゆる産別系の方の調停委員が三名とも調停委員になつておるということは事實でございます。しかしそれは決して勞働委員會の委員長が勝手にそうきめたわけではなくて、おそらく勞働委員會内部のいわゆる自主的な方法によつて、そうして勞働委員の一人々々の都合によつてそうきまつたものであつて、決して總同盟側を忌避したわけでも何でもない。總同盟側委員の諸君にもおそらく交渉があつたと思いまするが、それは總同盟側委員の御都合でお引受にならなかつた結果、勢い産別系の人たちのみ三名が調停委員になつたので、私はこれは偶然の結果だと考えております。
 なお一言申し上げますと、調停委員は勞働委員中ばかりから選ばれるのでなくて、勞働委員中からも選ばれますし、あるいは勞働委員にあらざる者も、その勞働委員會の承認さえ受ければ外からも選ばれる。これはすでに御承知であると思いますが、追加的に御説明申し上げます。
#15
○三木國務大臣 調停委員が公平に選ばれて、日本の勞働爭議が平和的に處理されていくような形をとることは、最も好ましいことであると思います。しかしその人事については米窪勞働大臣の御意見と同じであります。
#16
○川崎委員 これは片山總理大臣がおいでになりましたら、お伺いをいたしたいと思つておつた件でまりますが……。
#17
○山下委員長代理 話中ですけれども、川崎君に申し上げます。お聽きだろうとは思いますが、安本の長官は司令部に行かれて、未だにお歸りにならぬということで、第一副長官が代理としてお見えになつておりますから、この點申し上げておきます。
#18
○川崎委員 私の質問に關連しては、逓信大臣に對してはもう質問はありません。
#19
○山下委員長代理 加藤委員長に話をして了解を得てあるそうでありますから、逓信大臣に關する質問で、委員外の發言を許します。林百郎君。
#20
○林百郎君 逓信大臣にお聽きしたいのでありますが、大體先ほどからの逓信大臣の答辯を聽いておりますと、このたびの全逓側の問題に對しては、全逓從業員の態度がふらちきわまるものである、殊に悪質きわまる爭議であるというようなことで、政府側の人はできるだけのことをやつておるという程度であつて、政府側の誠意ある具體的な處置については何らの答辯もない。結局責任は一方的に逓信從業員に歸せられておる感じがあるが、私は次の點を逓信大臣に質問してみたいと思う。大體政府は依然として千八百圓のベースを維持しておるのであるが、八月十一日に安本の發表した十一月黒字案、この資料によつて新しく政府が設定したマル公、これによつて計算してみますと、四・二人で千六百カロリー、千六百カロリーというのは人間がただじつと安靜して休んあおるだけのカロリーであり、人間がじつと休んで安靜したようなく生命を保つだけの生活を維持するにも、政府がこのたび設定しました新マル公によつて計算しますと、大體四千圓かかる。それからこのたび政府が徴收しようとする大衆課税、これを計算すると、四千三百五十五圓かかる。それから新しい米價を計算に入れますと、四千八百九十一圓かかる。これが千六百カロリーとして生命を維持するについて、これだけの必要な生計費がかかるのであります。これはこの政府側が發表した資料によつて、政府側が發表したマル公、それから大衆課税、新米價、これをわれわれは計算に入れて算出したのであります。從つ分の一にしか生活費として當らない。さらに少し仕事をするに足るカロリー、これは政府が經濟白書によつて發表しておりますが、大體戰爭前老人から幼兒に至るまで、日本國民を平均して、生命を維持するに必要なカロリーは二千百五十カリー、それを計算しますと、大體今の物價で六千圓なければ生活できない。こうしたわれわれの生活状態は窮迫を極めているにもかかわらず、政府は依然として千八百圓を維持しておる。そうして全逓從業員は他の從業員と比べまして現物の給與はない。衣料だとか、あるいは鐵道從業員のようにバスの給與はない。勞働は他の官公廳勞働者に比べて劣らない、むしろ非常に激しい勞働をしている。こうして生物的な生命すら維持できない、じつとしているにも四千八百圓かかる。それを千八百圓のベースを維持しておりながら、全逓從業員だけには人間としてほとんど寄跡的に働け働け、八時間勞働をしろと言つておるのだが、この點について、一體政府は千八百圓ベースで逓信從業員が十分に勞働者として活動できるだけのカロリーの補給ができると考えるかどうか、この點をまず逓信大臣にお聽きしたいと思います。
#21
○三木國務大臣 林君の最初のお言葉に對して、言葉を返すようであるけれども、誤解を生じてはいけませんから、一言申し上げておくのでありますが、私は先ほどの答辯の中においても、逓信從業員が非常に他の職場に比べて惠まれない中にも、通信事業を護つておることに對して、御理解を得たいという發言をしておるので、私ども全逓從業員がふらちとか何とかいう考えは逓信大臣としてもつておりません。ただ私が先ほど申したのは、そういう全逓信從業員というものではなくして、秩序もなく、統制もなく、責任もなく、こういう重要な公共事業に携わつておる者が、集團的に職場を離脱するというその事態に對して、またそういうことをもし指導する者があつたならば、そういう指導者に對して、こういう者は正しくない。こういうことを申したのであつて、他のこういう困難な事態に通信事業を護つておる全逓信從業員に對しては、できるだけのことをいたさなければならぬ責任をもち、またそのために苦心もいたしておるということを最初に申し上げておきたいと思います。
    〔山下委員長代理退席委員長著席〕
 千八百圓の問題を中心として、いろいろ林君がカロリー計算をして生計費をお出しになりましたが、この生計費とかカロリー計算は、これはいろいろ計算の仕方があり、またその計算の基礎になるものが、いろいろこれは計算の仕方があろうと思います。それで今お示しになつた一つの點は、あなたの御計算として承つておくのでありますが、質問の要點である今の給料で十分に働けるかどうか。率直に言つて今の給料では非常に苦しいであろうという事態は私も認めます。微力ではありますが、何とかこれを改善したいということにつきましては今日まで努力をしておるし、今後も何らかこれに對して對策を立てなければならぬ必要を感じ、政府の方においても檢討をいたしておる次第であります。しかしながら御承知のような國情でありますので、必ずしも從業員が滿足のできる状態におくということは、それは限度があつて、困難かと思いますが、非常に困難な事態を率直に認め、これを改善するために政府が鋭意努力する義務をもつておると考えます。
#22
○林百郎君 私の質問は、こうした事態に對する責任が、ただ一方的に從業員側にのみ歸せられておるが、やはり困難な事態とか、敗戰後の日本の現状というものに對しては、從業員も政府もともに責任を負うべき問題であつて、こうした事態が發生したことに對しては、一應政府側においても責任の一端があるではないかということをお尋ねしておるわけであります。それで政府はできるだけの努力をすると言うております。それから中央勞働委員の裁定を尊重するということは、これは豫算委員會、あるいはそれぞれの委員會で、政府側の責任ある當局者が辯明をしておるのでありますが、しかしこの全逓の問題については、たとえば先ほど三木逓信大臣からも御説明がありました通りに、中央勞働委員會ですら、すでに千五百圓をこの際何とか從業員に支給してやつてはどうかという申入れがある。これに對しては政府側はまだ責任ある處置がしてない。これは青森縣の國鐵の問題でありますが、やはり全逓と大體同一程度の請求を、青森の地方勞働委員會へ提起したのでありますが、これはやはり青森の地方勞働委員會も、全官公勞働者としてこの程度の要求は當然であると言つて、全逓側の同一の要求を認めておるのであります。ただ政府は、地方で一部的に解決できないから、中央勞働委員會へこれをまわすということを言つて、責任を囘避しておるのであります。こうした中央勞働委員會竝びに地方勞働委員會でも、いずれも政府に對して、官公勞働者に對してこの際、何とか生活補給金を出さなければならないと言つておるのであります。これに對して政府としては、時局多難の折だ、あるいは敗戰の結果だということによつて、何ら具體的な處置がしてない。こういうことに對して政府側が一應責任があるかどうかという點が一つ。
 それから先ほど逓信大臣からの説明がありましたが、千五百圓の問題、千八百圓と千六百圓の差額を支拂う。それによつて千五百圓の問題をすりかえるというような説明もお聽きしたのでありますが、千八百圓と千六百圓の問題は、政府側の答辯によりますと、これは千六百圓を千八百圓ベースに上げた、基本給を上げたことによる差額を支拂うということであつて、これは生活補給金を拂うということではないわけであります。ですから生活補給金の問題はおのずから別だと思う。中央勞働委員も地方勞働委員も、生活補給金をこの際全官公の勞働者の諸君に支拂えということを、政府に極力勸奬しておるわけでありますが、それに對して政府は、今もつて具體的な誠意ある處置がしてない。こういう事態において、このたびの全逓側の事態が、はたして政府の言うように、一方的に全逓從業員側のみに責任があるのか、あるいは政府もその責任の一端があるのかということを、はつきり御確認願いたいと思うのであります。
#23
○三木國務大臣 政府の責任問題につきましては、政府は今日の事態の中において、できる限り誠意を盡して、この問題の處理をいたしてきた考え方でありますが、それが政府の誠意が足りない。こういうことで責任があるとするならば、國民の世論の審判にまたなければならぬと思います。
 次に千五百圓の問題でありますが、これは林君の御質問の中には、これをすりかえるというようなお話があつたが、政府がすりかえるといつたところで、あまりにも明らかなことで、すりかえられる性質のものでもないのでありまして、そういう意圖ではないのであります。とにかく川崎君の御質問にもお答えしたごとく、調停委員としてもこの際、何とか千五百圓の金を出すような方法がないかというような、きわめて懇談的なお話があつたので、これは別な話で、當然な權利に屬するけれども、しかし金が出れば今困つている人の生活の資金になるのだから、一日も早く千八百圓の差額を出して、今日の困窮の状態を緩和しましよう。東京地協ではそれが千四十圓に平均なるのであります。こういうことを言つたので、すりかえるというような意味でなしに、とにかくこの困つておる事態をこれで一時しのぐ、金になるのだ。こういう意味で申したわけであります。またその千五百圓のお話ですが、正式に政府に對して全官公に出せ、こういうような御勸告を受けたのではなくして、中央地協との調停としてこういう意見を出された。今正式に全官公に千五百圓支給せよ、こういう決定が中央勞働委員會であつて、それを政府がけつた。こういうような事態は、實情に則したお話でないので、さよう御了承願いたいと思います。
#24
○林百郎君 そうすると、同じ問題を質問してもどうかと思いますが、一應政府のこの問題についても責任ある御囘答としては、こう聽いておいていいのかどうか。全逓の從業員の生活問題に對しては、政府もできるだけ努力しておるが、今もつて十分だとは思わない、今後なお努力するつもりだ、その點については政府も十分考慮するという點をお認めになるかどうか。それから千八百圓と千六百圓の差額の問題は、これは基本給のベースの繰上つた差額を支給したわけであつて、生活補給金とは別個であるという、この二つの御返事をいただいたものとみていいですかどうですか。
#25
○三木國務大臣 前段の逓信從業員の苦しい事實を認めるか、これから努力するかということは、さようにいたすことを申し上げてよろしいのであります。かつ千八百圓の差額、これは生活補給金という性質ではなくして、もちろん給料の差額支給であるわけであります。
#26
○林百郎君 その次に、十月二十三日で逓信從業員に對する通勤パスが全部切れておるのでありますが、この通勤パスの切れたことに對して、新たに通勤のパスを購入するための手當を、逓信當局としては考慮したかどうか、また考慮するかどうかという點をお聽きしたい。
#27
○三木國務大臣 通勤手當の問題については、今囘の全逓の提訴の中にもはいつておるわけであります。もちろんこれは逓信省だけの處置というわけにはいきません。また政府全體の給與體系等も勘案をいたさなければならないので、この問題について考慮はいたしますけれども、通勤の手當が今日出し得るという状態ではないわけであります。
#28
○林百郎君 全逓の現状が爭議であるか、爭議でないかという問題は、愼重に事態を檢討してみなければわからないと思うのでありますが、かりに政府側の言う爭議なりとするも、何ゆえこれが悪質なる爭議であるか。幹部の者の指令がなくして、下部の地方組合が爭議形態にはいるということは、どうして悪質であるか。それから爭議行為というものは、本部幹部の命令がなくしては、絶對に地方組合というものは爭議形態にはいれないかどうか。この二つの點をお聽きしたいと思います。
 それから政府では、本行為を爭議行為とみなし、しかも悪質な爭議行為として、文官任用令あるいは公務員法を適用すると言つておるが、勞働組合法の第一條第二項の關係、竝びに勞働組合法第十一條の關係、竝びに勞働關係調整法の第四十條の關係と、公務員法竝びに文官任用令との優先的な適用問題について、政府はどう考えておるか。どちらが優先的に適用されるものかどうかという點についてもお聽きしたい。
#29
○三木國務大臣 今囘の爭議行為を政府が正當ならざるものとしたということについてのお尋ねでありますが、先ほどから私も米窪勞働大臣も申し上げるごとく、やはり爭議權というものはその當時における客觀的な諸條件、あるいはその時代における正常な社會通念をもつて判斷さるべきものであつて、今日それは組合指令によらないと言いますが、職場大會等も開いておる事實もありますし、そうして自發的で、だれがやつておるのかわからぬが、一つの組合というものをつくつておりながら、組合としての行動でなくして自發的である、また自發的であるから責任者もわからない。こういうふうな形で統制もなく、秩序もなく、責任もなく、こういう困難な時局下に大量の、ほとんど公共事業が停止するような状態に、大量に職場を放棄するという事態は、それは正常でない。社會的な健全な常識から考えて健全でない爭議行為、こう斷ぜざるを得ないわけであります。また後段のお尋ねの法律の適用問題については、それは法制局からでも後刻お答えをいたすことにいたします。
#30
○林百郎君 本部幹部の指令なくして地方組合員の行う爭議が、なぜ三木逓相の言われるように悪質であるかという點が了解しにくいのであります。それから全官公勞働者というものは、官業勞働者で責任は重大である、それがゆえに勞調法によつても爭議行為にはいる前提として三十日間の期間が特別に設けてある。ですからこういう重要な勞働者に對する爭議行為については、政府側も極力協力してこれを解決するように努力しなければならぬ、そのために三十日の期間がある。三十日たつてもなお事態が解決しない場合には爭議にはいつてよいと認めるということが勞調法にあるわけであります。全官公の業務が重大であるから、それは悪質であるということになるなら、全官公の爭議權あるいは團體交渉權の行使はできなくなる。この點についてお答えを願いたいと思います。
#31
○三木國務大臣 爭議は當然に勞働者に認められておる權利でありますが、最初にも申し上げましたごとく、公益事業で三十日の豫告期間があるといつても、豫告期間が過ぎれば個々ばらばらにやつていいというのではなくして、勞働組合法の基本的な精神は、勞働組合運動を正常に發達さす、こういうことが立法の精神でありますから、そういう場合においては組合として、組合があるのですから爭議は、今林君の言われたように、全官公の人たちの爭議權をもつておる人たちは爭議をやれる。爭議權をもつておる場合組合が指令をし、そしてだれが責任をもつか、こういう人がはつきり秩序と責任のある體制において爭議權を行使すべきで、ばらばらに責任者もない、秩序もない、規律もない、こういう一つの爭議權までも勞働組合法、勞調法は保護していない、こういう解釋を私はとるのであります。
#32
○林百郎君 二・一ストの際政令は、統一ある大規模な組織全體が爭議形態にはいるということは不健全である、これは國家秩序を亂すということで爭議が禁止されたのであります。そうすると、そういう爭議形態もいけない、またそれが部分的に行われる爭議行為もいけないということになれば、爭議權というものは保障されないと思う。てんでんばらばらというが、中央郵便局なら中央郵便局の組合があるし、あるいは日本橋なら日本橋の支部がある。かりにこれは爭議でないかどうかは別として、獨自の立場で爭議行為にはいつても悪質だと思わない。もしそういう形態が悪質だと思われるなら、全逓なら全逓の大規模なストライキは合法的であるか、正當な爭議であるか、こういうことをお聽きしたいと思います。
#33
○三木國務大臣 どうも私はあなたの御質問はよくわかりませんが、全逓の本部が指令をしなくても、地協には地協としての委員長もあるし、中央郵便局には中央郵便局としての支部長がおるのでありますから、その支部長が、あるいは地協の委員長が、部分的の爭議にはいるという事由を少くとも是認しているわけではない。ただそれを責任も明らかでない、秩序もない、規律もないような状態で、そういうふうな無責任な形で爭議が行われるということが正當でない、日本勞働組合運動の將來に對しても禍根を殘すという點から、政府はこれが正當ならずと言うのでありまして、本部が指令しなくても、支部には支部としてちやんとした組合の機構があるのでありますが、今回の囘の場合はそういう指令によつていない。
#34
○加藤委員長 委員外の徳田球一君から發言を求められておりますが、許可をして御異議はありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○加藤委員長 御異議がなければ許可します。徳田君。
#36
○徳田球一君 これはごく簡單なことですが、事業を確かめておきたい。三木さんは大阪及び神戸の、やはり今起つているような職場での問題だと思いますが、私はこれは爭議行為ではないと認めておりますが、しかしこれは起つたことは事實です。その起つたものに對して七月から九月までの間の三箇月間の、千六百圓ベースより千八百圓ベースに變つた差額を拂つた。そのために向うのは鎭靜したということを述ベられたと思います。しかるに東京では、これがまだやられておらぬように聽いているのであります。これは議會の協贊を經て後でなければやれない、こういうお話でありますが、この神戸及び大阪に對するやり方と、東京に對するやり方では大分違うように思いますが、これは一體どういうわけでありますか。
#37
○三木國務大臣 徳田君の御心配くださるまでもなく、ただちに支給して全員にもうすでに渡つております。出せるようになりますとただちに支給をいたしております。
#38
○徳田球一君 ちよつとここは違います。あなたの方はすでに神戸、大阪にはやつたと言われる、そしてすでに鎭靜したと言われる。東京の方はあれほどせきついて、そうして千五百圓は早くやつてくれるという勸告だか、申込みだか、お話だか、何か知らぬが、中央勞働委員會のそういう話があつた。しかしこれはできないのだ。こういうお答えでありますが、向うの方はやつてしまつている。なぜ東京のはやらないのか。
#39
○三木國務大臣 それはもうとうの昔に支拂濟みなのであります。昔というと非常に古い話になりますが、議會を通過いたしましてやれる時期になりましたときに、ただちにこれは支給しまして、大阪の方は渡して、東京の方はまだ渡さずにおるという事實はないので、これはもう私自身として因つている状態はわかつているので、待ち切れないような氣持で、東京にも渡したわけであります。ただ大阪はその金を渡してから非常に状態がよくなつたが、東京の方は渡してから、それはそれと關連があるかどうかは別といたしますが、大阪は渡して鎭靜したが、東京は渡してから相當突つばり合いが始まつた。こういうことであります。
#40
○徳田球一君 そうすると兩方渡してあるんでいか。
#41
○三木國務大臣 渡してあります。
#42
○徳田球一君 それなら問題は千五百圓を渡せというのに對して、ここに千四百圓ぐらいは差額があるから、これをいずれ渡そうと思う。とにかく金を渡せば、どうとかこうとかいう今の林君との問答のような、そういうややつこしいことは起ろうはずはありませんが、それが私たちはおかしいと言うんだ。
#43
○三木國務大臣 それは末弘會長がお越しになつたときは、まだその差額を支給しない前であります、議會通過をしない前であります。
#44
○徳田球一君 そうすると、すでに渡してあるわけですな。――それならばよろしい。それから、もう一つの問題でありますが、あなたは中央地協その他の逓信の今要求を出している方だけが、非常に悪質な執務の集團的な離脱があると言われますけれども、われわれの調べて知つているところにおきましては、これはただに逓信省においてはここばかりではなく、ほかの方面にもたくさんあるこれは國鐡の方面にもたくさんある。全體の缺勤率といたしまして大體一〇%前後が常時ある。そうしますと、これは逓信省の、しかもこの爭議をやつているところだけが特別あるというわけではない、どこでもある。それはほかの私的な鑛業のところにもたくさんある。だからして私的の鑛業のところでは企業主が、そういうふうなことをやられては困るということを盛んに政府に陳情に行つている筈です。だからしてこれは方々でやはりある。でありますから、これは現實に言いまして、要するに千八百圓ベースでは、食えぬ、今の勞働賃金では食えぬということを意味するのである。すでに半箇年以上も前からサイド・ワークというのがはやつている。いわゆるサイド・ワークというのは、ある意味からすればやみ仕事である。一方では勤めを休んで、この方で月給を取る、他の方でもやはり仕事をしなければならない。さもなければ食えない。この状態はすでに半年以上も續いているのでありまして、有名な事實である。勞働委員會ではサイド・ワークということは、はやり言葉になつている。それであるのに、こんどの逓信省の事件だけが悪質だというのはおかしい。幾分か増加しているかもしれぬ。増加しているのは幾分かであつて、根本的な問題ではないと言うが、増加するのは當り前である。それが展開すれば、いよいよますます正常ではなくなる。そういう一つの紛爭が起る場合には、幾分かの増加をすることは正常の状態である。これを異常の状態ということはできない。だからして、それを特別悪質だと言うに至つては、私は見解が非常に違うと思いますが、三木逓信大臣は、特にここだけが、中央地協及びこの前には大阪、神戸などがそうであつた。ほかの方にはそういうものは認めておらぬのか、一般的にこういう事實があるのを、あなたは認めないのかどうか、このことをひとつお尋ねしたい。
#45
○三木國務大臣 御指摘のように、缺勤率を部分的にみれば殖えているところもありますが、しかし大阪あるいはまた現に東京等における状態は、缺勤率が殖えたというような事態ではなくして、やはり職場の大會もしておりますし、ただ形としては責任者がないという形になつておりますが、いろいろ職場大會なんかで相談もしているようなことも開いておりますが、こういうことで通信が麻痺状態になるような怠業的な職場離脱、從つて大阪及び神戸その他のことも、決してそれが正しいことではないのでありますが、今東京等に起つている事態は、まさに日本の通信機關というものに、非常な麻痺状態が起つている重大なでき事であり、しかもそれはちよつと出勤率が減つたというような事態ではなくて、ほとんど大半が職場離脱をしている。こういう事態、そういう行為、そういうものを指してそれが質のよくないものである、こういう判斷を下すわけであります。
#46
○徳田球一君 少し話が違うようであります。私は、ほかの方においてはそういう事態が起つておるかどうか、あなたは認めないかどうかというのだ。それはあなたが悪質だということは何遍も言うたからよくわかつておる。あなたは悪質と思つておるだろう。これは考える人はどうこう思うかもしれぬ。しかしほかにもそういうことはどんどん起つておる、私はこう言うのである。そういうこと自體はあなたは認めないのかどうか。ここばかりが特質であつて、ほかに一般的に日本全國において、すでにこういう事態は頻發しておるのである。殊に國鐵等のごときは、保線工事だとか荷物取扱だとかいうように、非常にカロリーを要するところでは、特にそういう事態は起つておるのである。そういう事態の起つておることを、あなたは認めないかどうかということを私はお尋ねしておるのである。
#47
○三木國務大臣 今私がこの委員會で申し述ベた大阪地區、あるいは東京の中央地區、それを除いては今大阪や東京に起つておるようなこういう事態は起つておりません。逓信省に關する限りは。
#48
○川崎委員 私は他の大臣に對しても發言をいたそうと思つておりましたやさき、逓信大臣に對する質問は一應打切つたものでありまして、その關係で今委員外の議員の方からほかの質問が出ておるのでありますが、できれば私は、この際勞働大臣竝びに安本の長官に對する質問を繼續したいと思います。
#49
○林百郎君 ちよつと逓信大臣と片づけたいと思いますが、どうでしよう。
#50
○加藤委員長 よろしゆうございます。林君やつてください、なるべく重複しないように、簡潔に要點を述べていただきたいと思います。
#51
○林百郎君 實は逓信省は、すでに東大の學生に對して四時間三十圓の割合をもつて、郵便區分作業員の募集を東大の學生課を通じて申込んでおるそうでありますが、組合員以外の新規に採用する場合には、經營協議會にかけて組合の了解を得て新規採用するという申合せが、團體協約によつて行われておるのでありますが、協約を無視して、一方的の政府が爭議なりと認め、この爭議のスキヤツプを募集するということは、團體協約を無視しておると思いますが、この點について逓信省としてはいかなる見解をもつてこういう行為に出るのか、この點についての答辯を伺いたいと思います。
#52
○三木國務大臣 缺員がある場合は臨時雇はできるという解釋をもつて雇つたわけである。
#53
○林百郎君 もう一つ、政府は、殊に逓信大臣は、新聞紙の報ずるところによりますと、本件事態を一方的に爭議行為と認定して、しかも悪質なる爭議行為と認定しておるのである。實はこういう事態が爭議行為であるか、あるいは事態やむを得ざる結果自然發生的に生じたかどうかということは、やはり中央勞働委員會なりの裁定をまつてはじめて結論が出ると思うのであります。しかし政府では一方的の警告を發し、あるいは爭議行為と稱して、すでに公務員法を適用し、あるいは官吏服務規律を適用して處分をするかのごとき威嚇をしておるのでありますが、こういうことは明らかに組合に對する干渉である。しかもこういうことは、かえつて逓信從業員なり、あるいは他の官公勞働者に對する非常な挑發的な行為だと思うのであります。もしこうした挑發的な行為によつて、かえつて勞働者が硬化して、たとえばこの二十三日には全逓信從業員組合竝びに東京中央地區協議會は、もう萬やむを得ない場合には斷爭ストライキにはいるという闘争宣言まで出しておるのであります。これは明らかに政府があまり先走り一方的な認定によつて不當な彈壓を組合にしようとした結果だと思いますが、この點について政府の責任ある囘答を得たいと思うのであります。政府は伺ゆえに一方的に勞働委員會の裁定をまたずして爭議行為と認定し、しかも悪質な爭議行為と認定し、公務員法によつてこの適當な處分までするという處置に出たか。なぜこういう處置に出たか。しかもこれは一部の煽動によつておる、一部の者の煽動によるということまで新聞紙に書いてあるのであります。こういうことは非常に挑發的な言である。そのためにすでに二十三日にはかえつて逓信從業員側が硬化して、ストライキにはいるというような宣言まで出しておるのでありますが、この點について政府は責任をどうとるかということをお答え願いたいと思います。
#54
○三木國務大臣 政府はこの事態において、それが正當ならざる爭議行為であるという判定を下す自由はもつております。むろんそれに對して政府は責任を負わなければならぬが、政府は責任を負つて判定するの自由はもつております。ただそれに對しての處分は、御承知のように勞働委員會の同意を要する。しかしこの事態を政府がさように判斷をする自由は、政府はもつております。またこの政府の警告が、これを勤勞大衆を威嚇するために政府の聲明を出すという意圖ではない。一日も早くこういう職場を離脱しておる者たちが職場に歸り、そうして各職場に規律ある行動に復してもらいたい。これが政府の眞意であつて、それがゆえに政府は今日までのことはあまり問わないで、今後ひとつ規律を守つてくれ、こういうことを警告の中に申しましたゆえんは、威嚇をしようというのではなくして、亂れた職場の規律を守りたい、これが政府の意圖であります。決して御指摘のような考えをもつておりません。現にまたあの警告文が出まして、逓信從業員に關する限りは、今申した中央郵便局のごときは今日出席率は上つておるのであります。これを誤解なく、政府の意圖を御了承願いたいと思います。
#55
○林百郎君 總括的に最後に少しくお尋ねしますが、この事態を爭議行為と認定し、しかも悪質な爭議行為と認定し、かりにいかなる事態が惹起――そうしたことによつて、こうしたわれわれから見れば挑發的な警告であるが、こういうような警告を發したことに對して、いかなる事態が發生しても、この認定に對する責任は政府が負うというお答え。もう一つは、この責任者に對する處分とか、あるいはこの事態に對する處分は、勞働委員會の裁定をまつて後に行う、こういう結論とお聽きしておいていいかどうか。
#56
○三木國務大臣 政府が聲明を出した意圖が、最初に申しましたごとく、重大な事態を防止せんとしてあの聲明を出したものであります。また今後その警告に對し政府が責任をもつことはむろん當然のことであります。その處分については、勞働委員會の同意を要するものは同意の手續を經、同意を得ないでできるものは同意を得ないでやる場合があろうと思います。その個々の場合において考えられます。
#57
○林百郎君 その點が非常に重要だと思います。中央勞働委員會の同意を得なくして處分して得るものは處分すると言いますが、具體的にどういう場合を豫想しておりますか。
#58
○三木國務大臣 それは行政處分の場合を指し得るのであります。
#59
○川崎委員 本日の最初の逓信大信の私に對する囘答、竝びに詳細なる經緯によりまして、私らも政府の見解は一應了承しました。これが政府の言うごとく悪質な爭議であるということが客觀的に是認されたならば、われわれといえども、こういう悪質なる爭議に對しては斷固たる處分に出るということは、政府に對して強く要望したい。二月一日のゼネラル・ストライキの禁止以來、各種の勞働爭議が起つておりますれども、おそらく今囘の爭議のごとく異常な形態によつて巻き起された爭議行為の内容というものは、あり得ないと私は考えるのでありまして、もしもこの行為がさらに續くといたしますれば、日本の經濟の原動力の一つをなしておる通信網の確立ということが根底から崩れる。中央郵便局の事務室には小包が山のように滯貨をしておつて、ほとんど配達をされておらないというような状況もしばしば耳に聞いております。これはゼネストの形態をかえたところの――底流を流れておるものは、それと同じような考え方に基くところの行為であると、もしも政府の言うことが眞であるとするならば、われわれもそういうふうに認めざるを得ない状況でありますので、この點に對してはわれわれ政黨員の一人として重大な關心をもち、政府に對しても強く、この集團缺勤が爭議行為であるという信念を立てられたならば、それに向つて強硬な決意のもとに邁進をしてもらいたいとかように考えております。
 そこで私がお伺いをいたしたいことは勞働大臣に、この勞調法の第三十七條、すなわち公益事業の爭議に對しての拔打爭議の禁止ともいうべき項でありますが、これは立案の際に、調停の申請をなし、その申請をなした日から三十日でなければいけないということをこの法律に明記をして、そうして衆議院は昨年の九十議會でありましたか、いろいろな過程をたどりましたけれども、通しました。一番議論のあつた箇所であつたと私は思いますけれども、今日公益事業の爭議が發生するおそれのある状態から勞働者側で調停の申請をじた。大體今日の爭議というものは、資本家側から調停の申請をするということはあり得ない。大體勞働者側から調停の申請をすることが多いのでありますけれども、その場合におきまして、最近の現象を見ると、三十日間の期間を眞に調停をめぐつて、勞働者側も經管者側も鳴りを鎭めて待機をして、調停委員會の裁決を待つというやり方ではなく、あらゆる交渉を通じて調停をやつた日からもはや鬪爭委員會を組織するとか、あるいはその前においてもすでに組織はしておるのでありまするが、その期間中ほとんどすでに爭議行為を起しておると同じような状態が起つておるということが、非常な問題の點になつておると思うのであります。すでに中央勞働委員會の中立側の委員の一人からは、昨年勞調法の原案の時には、この三十日間という餘裕期間はむしろ十五日に改めても、調停の申請をなした日からという條件というものは要らないことにした方がいい。むしろ拔き打ち爭議というものを禁止すれば、その後においてかりに爭議が起りそうな場合においては、公益事業が投げかける影響から見て、當然勞働委員會が調停をしなければならぬだろう、そうすれば事態はむしろ、この三十日間をおいて調停の日からということを入れたよりは、圓滿に解決ができるのではないかという意見が、相當強かつたように私は記憶をいたしております。現在の調停期間中におけるところの紛爭、粉議というものの状態からみて、第三十七條を將來勞働大臣は改正する意思があるかどうかということをお尋ねしておきたいと思うのであります。
#60
○米窪國務大臣 川崎君から長々とお尋ねがあつたようですが、要點はこうだろうと思います。第三十七條の終りの方で、第八條二項の規定に基いて、公益事業として第八條の一項で指定したもの以外のものについては、勞働委員會の構成する各グループのそれぞれの過半數の同意を得た場合に限つて、勞働大臣は公益事業として追加指定し得るという規定がある。それと關連があつてお尋ねがあつたと思いますが、第三十七條においては、大體原則として、公益事業の爭議においては調停に移されてから三十日を經過しなければ爭議をしてはいけないときめてあるのであります。但し第八條二項によつて、勞働大臣の權限をもつて勞働委員會の同意を得て指定したものについてはこの限りではないという意味は、その場合においては三十日のいわゆるクーリング・タイム、すなわち冷却時間を待たなくてもよろしい。こういうぐあいにここでは解釋しているのでありまして、これを改正する意思ありや否や。今のところ私はそういう意思をもつておりません。但し今のところというのは、今日ただいまという意味でございます。
 それからこの問題について、現在問題になつている全逓との關連はどういう意味でお尋ねになつたか、どうぞもう一度はつきりおつしやつていただきたい。
#61
○川崎(秀)委員 三十七條の條項は將來改正される意思が、私のきわめて獨斷ではありますが、あるとみてその點は打ちきります。先ほど來安本の副長官がお見えでありますので、お伺いをいたしたいと思います。
#62
○加藤委員長 發言中ですが、勞働大臣はこれでよろしゆうございますか。四時から御用事があるそうでございますが。
#63
○川崎(秀)委員 それでは安本長官に對するお尋ねと同時に、二つの問題を一緒に質問いたす方が早く片づくと思いますので、お尋ねをいたします。
 安本の副長官の永野さんは、あんまりどうも安本的ではないので、質問する方もちよつと氣兼ねをしなければならぬけれども、昨日社會黨では、千八百圓ベースというものを改訂すべきだということを政務調査會から進言をされたようであります。西尾長官の官邸であるか、政務調査會の幹部と和田安本長官、西尾長官がお打合わせになつて、社會黨側からそういう要求が出たということを聽いております。私どもの政黨でも、すでにわれわれの同僚である小川半次君は、千八百圓ベースは無理ではないかということを、本會議の席上で質問をいたしたことがあるのであります。しかしながらわれわれの政黨は、一つの物價體系、賃金體系を維持するためには、やはり千八百圓ベースというものは無理であるけれども、今日の物價體系、賃金體系というものを相なるべくは崩さないということの方針のもとに、今日まで政府の方針を支持し續けてまいつておるので、今日といえどもその態度は變らない。ただ問題は、安本では經濟白書を發表されたとき、十一月には黒字になるというような説を發表された。これはもちろん、完全配給の物資の裏ずけがあつて初めて行い得ることであるとは言明はされておるけれども、とにかく状態はまつたく逆な方向に私は發展をしてまいつたと思う。七、八、九の各都市、農村におけるところの生活實態調査というものは、いかなる機關や調査をいたしましても、安本の計畫とは逆な方向に向つて進行を續けておると私は思う。そこでもはや十一月に黒字になるというようなばかばかしいことは、安本長官御本人といえども言明はされないと思うけれども、しからば全逓の要求の問題にもなつたこの千八百圓ベースは、一體今後も續けられ、かつ勤勞者の生活家計というものが黒字になる日があるのか、あるいは黒字にならぬまでも、一應の安定をつくり得る日が、一體今の安本の計算では、どういう見透しをもつておられるかということを安本副長官にお尋ぬをしたい。それに關連をいたしまして、米窪勞働大臣お急ぎのようでありますので、私が申上げたいことは、勞働大臣は勞働者の最低生活は保障しなければならぬ、千八百圓ベースは決して勞働者を千八百圓平均賃金で釘ずけしようというものではないのだ、生産能率を上げ利潤を上げておる工場は、この千八百圓基準というものを越してもいいというような話をされております。この間にはたして矛盾がないかどうか。さらには最近紙上で伺うと、池貝鐵工所のごとく四千なんぼでありますが、膨大―膨大でもないでありましよう、今日の容觀情勢からすれば、少の他の方面よりは利潤の上つておる工場であるかしれませんが、給與が非常に高い、これらに對しては何か斷固たる處置をとられる。もちろんその裏には、不法なやみ取引などいうものがあつたといことを聞いておりますけれども、そういうような新聞を見たことがある。しからば一方千八百圓基準というものを上まわつても差支えないというものは、勞働大臣の見解によれば、どのくらいの數字であるのか、その間においてどういうような觀測をしておられるのか、この點をお伺いしておきたいと思うのであります。
#64
○米窪國務大臣 千八百圓と一應きめたのは、私がこういう集まりで度々説明申し上げておる通り、新物價體系を立てるときに、生産費の原價計算をする場合において、それの非常に大きなウエートと分野を占めておる人件費、おそらく今日平均六割くらい占めておるでしよう、それをきめなければ新物價體系の算定が成り立たないのであるから、賃金を大體きめてかう物價體系をきめなけれでならぬ、こういう順序になつたのであります。
 しからば賃金をどの程度にきめたかというと、本年五月頃の官公廳及び私企業の勞働者の全國平均をとつてみると、業種によつて二千三百圓、あるいは千四百圓、あるいはそれ以下、こういうぐあいに各業種によつて平均賃金が相違しますが、その總平均賃金をとつてみると、大體千五百八十何圓ですか、そういうところに統計が現われてくる。しかしそれできめて新らしい物價體系が立つたときに、物價が上つたのによつて賃金のはね返り、物價のはね返りから賃金に及ぼす影響を考えて、いわゆる二百圓というはね返りの分をプラスして、千八百圓ときめたのが、當時の給與審議會における政府の責任をもつてきめたものでございます。この給與審議會においては、勞働者側と政府側及び第三者側との委員の間にしばしば會合を開いて、いかなる最低賃金や標準賃金をきめるかということを談合したのですが、勞働者側の方の政府側の意向との間に相當のギヤツプがあつて、ついに勞働者側は政府の責任できめてくれということで、政府の責任をもつて今申し上げた考え方から千八百圓というものを一應きめたのでございます。但しこのとき政府は、この千八百圓というものは今申し上げたような意味においての標準賃金であるから、殊に私企業において、各業種別によつて、すでに平均賃金に相當の開きがある。すなわち機器の方においては二千三百圓、あるいは紡績においては千六百圓、こういう開きがあるから、やみ處理をするとか、あるいは價格差益金を政府に納めるものを流用するとか、あるいは勞働者の勤勞所得税を轉用して、これをもつて人件費の方にまわすとか、そういうことでなくして、ほんとうに各經營者が、健全なる合法的な經營形態をもつて黒字が出るような企業においては、必ずしも千八百圓で縛るものではない。一つの例を言えば、二千三百圓でも二千四百圓でもよろしいこういうことを聲明したことは事實であります。
 但し、しからば私企業の各平均賃金が齊しく全部二千三百圓なら、千八百圓のベースを上囘ることになるのでございますが、各種の業種及びその業種に屬しておる各企業形態を調べてみて、その總平均をとつて千八百圓にならないという企業のわくの内においては、必ずしも千八百圓で一應みな縛りつける意思はない。こういう意味において政府はその當時、川崎さんのお尋ねの通りのことを聲明したのでございます。千八百圓という名目賃金、これは名目と言つておりますが、この名目賃金を上げてもインフレーシヨンが止まらず、やみが横行しておれば、當然勤勞者の實質賃金は下つてくることはあたりまえでございまして、勤勞者の最低生活費と勤勞賃金とのギヤツプを埋める方法としては、政府は加配米あるいは勞務用物資の配給の改善、あるいは勤勞所得税の基礎控除額を引上げる。あるいはやみ撲滅をやつて、今日の勞働者の生計費の七割まではやみであるから、その割合をひとつ減らそう、こういうことにおいて、この名目賃金と、最低生活費とのギヤツプを埋めようと努力してきたのであります。
 そこでそういう努力にかかわらず、八月、九月、十月は赤字あるということは政府が發表しておる。もちろんそれの計算に當つたのは經濟安定本部でありまするが、これが閣議にかかつて決定した以上は、それから後は日本政府の責任でございます。今申し上げたそういう計算においても、なお十一月において若干の黒字が出る。この黒字の額については、經濟安定本部で最初に發表したときと、その後に發表されたときとの間に相當開きがあります。最初よりも相當その金額は下つております。しかしともかく、わずかながらも黒字が出ると經濟安定本部でこれを計算したその場合においては、これは閣議にかけておりませんから、經濟安定本部だけの發表でありますが、いずれにせよ政府が黒字が出るということは、當時の事情において確認したのであります。
 その後、計算した當時に當然ある部分まで正常なルートで配給されると信じておつた野菜、あるいは生鮮魚類、そういつたものがいわゆる物價改訂の跋扈がはなはだしくて、新物價體系が上つたならばやみは下ると思つたのが、あべこべにこれに便乘して、やみ物價がずるずる上つたために、野菜類及び生鮮食糾がほとんど配給ができずして、やみで勤勞者が買わなければならなかつたという事情が手傳つてきて、あるいは十一月において黒字が出るかどうかということについては疑問をもつのでございます。しかし政府はこの際、あくまでも千八百圓ベースを堅持しなければ、インフレは止まらぬ、否ますます増進するので、やみ撲滅ができないことは、政府ばかりでなく勞働者自身がよく知つておる。今日私の接觸しておる勞働者は、異口同音に、口をそろえて、われわれは名目賃金を上げてくれということは、われわれのほんとうの要求ではない、むしろそれよりも、われわれの生活費を下げてもらうように、すなわち物による配給流通秩序の確立がわれわれの希望であつて、各目賃金を一應われわれは要求しておるけれども、それよりむしろ物の配給を完全にして、われわれの生活を樂にしてもらいたいということを異口同音に言つております。政府はこの乏しい物資の中において、十一月になればともかくも、米は例の三千五十餘萬石というあの供出が、大體において順當に行われるならば、米は乏しいながらも二合五勺を滿配して、遲缺配をなくしていくという大體の見込のもとに、米のやみ買いをせずにすめば、米のやみ買いがなくなれば、從つて他の日常生活品に必要なに諸物價が下つてくるだろう、ここにいわゆる十一月黒字が出るという根據があるのでございます。從つて十一月もし黒字の出ない場合においては、これはすでにやはり政府の政治的道徳から言つても、責任から言つても、私はすぐ改訂するとは言いませんが。改訂すべきかどうかということについて、政府は再檢討しなければならぬ、私はそう考えております。
#65
○川崎委員 安本の都留君からもきわめて學理的に、また今勞働大臣からも長々と、こうなればこうなるのだというお話を聽きました。しかしながら事實は黒字にならない。そんなことで、目の前に控えた十一月であつて、これは確かに政府は、政治道徳に鑑みて改訂することに大いに檢討を加えなければならぬ時節がくると私は考えておるのですが、千八百圓ベースではあるけれども、民間企業一般において利潤が出、生産が上れば千八百圓ベースを上囘つても差支えないという。民間企業に對しては、それでいいかもしれない。おそらく民間企業で千八百圓ベースでやつているような會社というものは、ほとんどないじやないかとさえ考えておるけれども、それでは生産能率とは全然無關係に、全官公勞組というものはどういう取扱いをしなければならぬか。
#66
○米窪國務大臣 お尋ねの點がどうもよくはつきりしませんが、官公廳の勞働者の給與については、私企業と違つて、千八百圓を間にはさんで上下の開きが非常に狹いので、そこで融通がつかないということは事實でございます。しかしさればといつて、私企業の方で千八百圓を起えた標準賃金を獲得しておる勞働者があるから、官公廳もやはりその線までいくべきである、こういうぐあいにやられると物價體系が亂れるのでありますし、また一方においては國の財源がこれを許すことのできない事情にある、こういうぐあいに申し上げたいのであります。
#67
○川崎委員 私企業の方が千八百圓ベースを上囘つても、それを官公勞を引上げると物價體系が崩れる、こういうお話ですが、どうしても千八百圓ベースを守ろうという物價體系は、國家財政とも關係があることだと私は思うのですが、かりに國家財政から千八百圓ベースをどうしても維持しなければならぬ、國庫の豫算の關係からも維持しなければならぬということになれば、私は官廳の徹底的な整理をしてもらわなければならぬ。もちろん官界の行政整理ということは、必ずしも人員の大量馘首ということは前提とはしません。しかしながら今日復員局にしても、あるいは恩給局にしても、さらには地方の出先機關にしても、不要な不急の機關というものは非常に多くなつておる。しかるに政府は五月の初めでありましたか、齋藤國務大臣は本會議において、何黨であつたか忘れましたが、議員の質問に答えて、行政整理の具體的な方策は次期議會に提出するということを約束しておる。次期議會というのは五月からというと、もう八月中には第二囘國會は終つて、その後の臨時議會に提出するという運びになるだろう、こういうように私ども一般議員には了解をされた。しかるに政府は未だに行政整理について何らの具體的な方策をもつていない。もしも國家財政というものに關係があるならば、これは行政整理をやらなければならない。もちろん行政整理が勞務の配置轉換であり、合理化であるならば、人員の馘首を前提とはしない。しかしながら今の官界は、マツカーサー司令部から指摘されたように、四分の一は不要だということまで示唆をされておる状態であるのでありまして、これらの問題に對して勞働大臣はどういうふうに今日お考えになつておりますか、伺いたい。
#68
○米窪國務大臣 國庫に官公諸君の名目賃金引上げに應ずるだけの財源がないという今日において、一應行政整理ということが考えられると思うのでございまするが、マツカーサー元帥が四分の一は、何という言葉ですか、要するに過剩であるといいますか、不要であるといますか、そういうことを申しましたというお言葉ですが、それについては私は不敏にして知りませんが、マツカーサー元帥の言葉があろうがなかろうが、政府としては最近閣議において、各省においては大體定員に對して一割くらいの缺員があるが、その缺員はこれを充當しないという方針をきめまして、そうして實質的に一割減という方針でもつて進んでおる。しかしこの一割減が、川崎さんのお尋ねになつたような行政整理の實體に即應し得るものであるかどうかということは、ここで簡單に言えませんが、ともかく政府はそういう方針に向つておる。さらにまた必要ならば、それがただちに失業問題となつて、政府が現在の失業對策では、とうてい救濟し切れないという事態とも考慮いたしまして、政府はこれについて相當研究しなければならぬ状態にあると私は考えるのであります。
#69
○川崎委員 ただいまの答辯で、行政整理の問題については、政府の具體的なものに踏み出そうという意思の現われが初めて表われたと私は思つております。これはあらゆる委員會で、また本會議で、行政整理の必要なことは、口を酢つぱくするほど各議員から言われておる問題だと思うのでありまして、行政整理をまずやらなければ民間の企業化も實は上らない。すでに民間では金属工業に對する企業合理化の方針が立てられ、政府としてもこれについては乘り出すようなふうにいわれておるが、民間にのみそういう相當荒療治的犧牲を強いて、そして政府は恬然としておる。勞働省や水産廳というような勞働者の福祉、あるいは食糧資源の確保というような役所の新設はともかく、最近の役所の新設の状態を見ると、まことに憂慮に堪えざるものがあるのでありまして、この際政府は斷固として行政整理の具體的の方針を立てられることを切望するものであります。この問題についてはしばしば勸告を申し上げておるけれども、何ら具體的の方針が語られていない。しかしその具體的の方策にとりかかるという意思は、今朝の西尾長官の言明で、これは非公式のものでありましようが傳えられております。また今勞働大臣からその兆が現われたので、私はこれ以上は追求いたしませんが、ぜひとも行政整理にとりかかるということの、具體的の方策に歩を進められたいということを要望いたしまして、この點に對する私の質問は終るのでありますが、本日特に總理大臣に御出席を願いましてお尋ねいたしたかつたのでありますが、總理大臣は御出席にならないようでありますから、この點勞働大臣から最後にお話を願いたいと思うのであります。
 それは勞働組合運動の健全化という問題にからみまして、今後片山内閣は、産別勞働組合と總同盟と二つにわかれておるこの戰線を、どういうふうにして統一することが望ましいかという點であります。勞働戰線の統一ということはしばしばいわれておる。しかしながら最近の經濟問題、特に賃上げ問題については、この二つの組合の考え方は事ごとに相反しておるようにわれわれには受けとられる。勞働戰線の統一ということについて、首相に代つて勞働大臣はどういうふうなお考えをもつておるか、これが第一點。
 第二點は、二月一日のゼネラル・ストライキは、マツカーサー元帥の、この荒廢の日本の現状においては破壞の武器の使用を許さないという聲明によつて中止された。しかしながらその後におけるところの公益事業、さらには大規模の産業においては、しばしば勞働爭議というものが頻發をして、その一番顯著な現われが、今度の全逓の政府が爭議行為とみなした一つの職場離脱の行為であろうと私は思つておるのであります。今後政府はこの經濟不安定の時期において、大規模の産業竝びに公益事業の爭議についてはどういう考え方をもつておられるか。これはアメリカのことではありますけれども、いわゆるタフト・パートレー案というようなものが通つて、大規模産業竝びに公益事業に對しては特別の考え方をアメリカの政府ももつてきておる。
日本の状態はかようなものを行うにはたして適するかどうかは別といたしまして、少くともここ一、二年の經濟不安定の状態において公益事業がもし爭議をする、國民生活に非常な關連をもつておる事業が休んだならば、かりに一日休んでも國民生活の上にかけるところの悪影響、負擔というものは非常なものであるというような爭議の問題に對しては、勞働大臣はどういうような解決方法をとられるか。あるいは臨時立法をもつて公益事業竝びに大規模の産業に對しては、臨時的に調停の間は絶對に爭議行為を禁止するというような立法がなさるべきであると思うけれども、そういうようなことに對してはどういうお考えであるか。これらの問題に關連して御答辯をわずらわしたい。
#70
○米窪國務大臣 その御質問に答える前に、一言行政整理のことをちよつと落しましたから申し上げます。これは今日のように日本で財源に行詰つており、かつ官公廳の從業員諸君が、いわゆる厖大なる豫算の支出を要するような要求をしておる場合においては、行政整理もまたやむを得ない一つの方法である、これを解決する一つの方法であるということは政府も考えております。しかしこれがためにはやはりそれによつて出てくる失業者をいかに救濟するか、これにどういう就職の機會を與えるか、これはどの程度に保險あるいは手當でもつて救うかということをまず用意しないと、輕率にできないという事情にあることは、この際特に御注意をいただきたい。すなわち今日追加豫算の面においても、いずれ皆さんの前に明らかになると思いますが、公共事業費が政府最初の額よりも非常に減らされておる。すなわち公共事業を通じて失業對策をしなければならぬ立場にある政府が、この就職の機會を與える公共事業費が非常に減らされておる。こういうようなことを考えてきまして、政府は行政整理で首を切りつ放しでよい、こういうことでは政府の責任は果されない。また政治道徳上からも果されないのであります。從つて政府はこの行政整理を斷行する前に、やはりそれによつて犠牲になる人をどうやつて救濟しなければならぬかということを考えなければならぬ。この點を特に政府は考慮しておることを明らかにしておきたいと思うのであります。
#71
○川崎委員 大規模産業というのは、全炭協の場合なんかをさしているということに御解釋願います。
#72
○米窪國務大臣 勞働戰線の統一ということは非常に望ましいことであります。すでに産別からも總同盟に對して戰線の統一を提唱し、また今度は逆に總同盟からも戰線統一ということを提唱しております。こういうぐあいに理想としては、もちろんだれしも反對するものではないのでございますけれども、さてそれでは實際に現實はできるかというと、なかなか傳統というものがあり、また勞働組合各自のいわゆるお家風というか、性格が違うところもあり、いわゆる共通な問題もあれば、今度はどうしても戰統統一を妨げるような獨自の事情もあり得るので、まだまだ勞働戰線統一ができないのがまことに殘念であります。しかしこれは政府がああしろ、こうしろと言つて、政府がこれをくつつけるということはやりたくないと思います。くつつけたつて離れると思います。これはどうしても勞働團體が自主的に各自の意見をお互いに話合い、各自の立場を明らかにして、そうして最低限度をもつて、すなわち最大公約數でもつて話合つて、そういう點においてお互いが各自の立場を理解して、讓り合い、どうしても讓れないところは何とかして、そこで一緒になる。こういうことでないと私はいかぬと思うので、今日は政府はそういう方面に助言なり、あるいは助力をしたいと思いますが、政府が天降り的に押しつける、こういうことはしたくない、こういうぐあいに考えております。しかしながら政府の方針は、どの團體といえども、いわゆる健全なる勞働運動をしてもらいたい。すなわち憲法の二十五條から二十八條にわたつて、國民は基本的人權を與えられ、それによつて團結權、罷業權、交渉權、そういうものを與えられたと同時に、第十二條、第十三條において、それらの權利を行使する場合においては、公共の福祉にそむかないという義務的觀念を強いられておる。こういう權利と義務の觀念に徹底した勞働運動が進められていくのが私は健全なる勞働組合運動だ、こういうぐあいに考えております。特に今日の日本の國情においては、階級的利害のみを主張するということよりも、階級的利害を主張すると同時に、國民的立場から見たところの權利義務を體得していくのが健全な勞働組合主義ではないか、こういうぐあいにも考えておるのでございます。この基本的なる理念をお互いに理解し合うところに、初めてそこに勞働戰線統一ができるのではないか、こういうぐあいに考えおてります。
 それからお尋ねの第二の點、こういう公益事業につきましては、調停法の三十七條に書いてある通り、三十日の調停期間を經なければ爭議ができない、三十日ということは長いという御意見もあつたのですが、私はやはり三十日くらいの調停期間をおくことが、お互いに冷靜に、その理性においてものごとを判斷するためには必要であると思うのでございまして、三十日の調停期間をおいて、どうしても意見の合わないときには初めて爭議を起す。この場合においては、政府としてこれを止めるということは今の法規の上ではできない。どうしてもそれを止めなければならぬとするならば、これは今の調停法を改正しなければならぬと考えております。これは私としては、また今日の日本の國情では、これを改正する必要はない。しかし近い將來にそういう必要が起り得るかもしれませんが、今のところはそういう考えをもつておりません。それから大規模産業、すなわち石炭あるいは製鐵、そういつたただちにその爭議が國民の福祉に影響するような事業において、全國的な爭議が起つた場合は、きわめて憂慮すべき状態になると思います。これは公益事業でないのであるから、當然現行の法規では抑制できません。しかし私としてはこの前から、經營者及び勞働者に對して産業の平和運動を提唱して、すなわち産業の紛爭の平和的解決ということを言つております。その意味は、第八條の二項において、勞働委員會の同意を得て勞働大臣の權限をもつて公益事業に追加指定をすればわけはない。
しかし私としては、現行の法規で勞働大臣に與えられた權限をもつてただちにやるよりも、むしろ勞働團體及び經營者の理解を得て、そうして調停期間中はたとえ公益事業にあらずといえども、經營者は抑壓しない、勞働者はストライキしないということを、各人が現在の日本の立場、現在の日本の崩壞の一歩手前の状態をよく考えて、勞働大臣が調停法の八條の二項を適用するまでに至らない、そういう法的措置をとるまでに至らなくて、各自のいわゆる理解と自制をもつてやつてもらいたい。しかしどうしてもそれができない場合においては、現行法規の調停法の第八條の二項で權限を與えられておりますから、もちろん勞働委員會の同意を要するのでありますが、八條の二項によつて公益事業の追加指定をやるのであります。これによつて非常に大きな産業の爭議を食い止めることができるだろうと考えております。萬一第八條の二項の勞働大臣の與えられた公益事業に追加指定することが、どうしても勞働委員會の各グループの過半數の同意を得られないということがしばしば起るようであれば、これはやはり改正しなければならぬと考えております。
#73
○加藤委員長 それでは長野政府委員の答辯を求めます前に、勞働大臣にいま少しく林君が質問があるそうでありますから……。林君、さつき言うたように、勞働大臣はほかに要件を控えておりますので、なるベく簡潔にお願いしたい。
#74
○林百郎君 この案件も相當重要な案件だから、勞働大臣も少し時間をさいてお願いしたい。四つほどまとめてお聽きしたいと思うのであります。政府は勞働委員會の調停を尊重するということを常に標榜しているのでありますが、これは明らかに地方における地方勞働委員會の調停ということも尊重するという趣旨だと思うのであります。そこで今月の十六日に青森の國鐵の支部で要求した要求に對して、青森の縣勞働委員會が、大體このたびの全逓と同一の要求でありますが、これを認めているのであります。それの對して全面的に認めて、これを政府當局に要請しておるのでありますが、政府はこの青森地方勞働委員會の裁定を、後に中央勞働委員會の問題として取上げるつもりであると言つて、逃げておるのでありますが、この點について政府は、將來この青森地區勞働委員會の決定に對して相當の斟酌をし、尊重する意思があるかどうか。政府の言う勞働委員會の調停の尊重という意味は、中央、地方を通じていずれの勞働委員會の調停に對しても、相當の敬意を拂うという意味で言つておるのかどうかという點が第一點であります。
 それから第二點としまして、政府は大體新物價體系によつて千八百圓ベースを維持すると言つておるのでありますが、われわれはこの政府で發表した十一月黒字説。政府の發表した通りの資料を参考にして計算しますと、大體その後新マル公が發表になり、さらに新財源として大衆課税を徴収するということを表明しておるのであります。そうしますと、大體四・二人家族で先ほども申しました通り、新マル公によつてすら千六百カロリーで四千九十七圓、さらに大衆課税を入れれば四千三百五十五圓、新米價によれば四千八百九十一圓必要とする。さらに經濟白書によつてすでに政府が表明しておるように、日本人にして平均カロリー二千百五十カロリーを必要とするという計算をしますと六千十六圓を必要とする。そうなりますと、改府の言う千八百圓ベースというのは、實質的には新マル公によつて千三百十圓のベースになる。それから傳えられる大衆税を基礎にして計算しますと、千二百六十七圓のベースになる。さらに新米價によりますと、政府の言う千八百圓ベースは實質的には千百二十八圓。もしこれが二千百五十カロリーを必要とするならば、政府の言う千八百圓ベースは實質的には九千十八圓ベースに落ちてしまう。そうしますと、千八百圓ベースは政府のいろいろな施策によつて壊れていると思う。もしかりに政府の言う千八百圓ベースを維持するとして、實質的には半分以下になつておるのだから、各目賃金として今の經濟秩序が現状のままでいくとするならば、これを改訂しなければならないと思うが、政府はこの點について依然として、實質的に政府の聲明したところの千八百圓ベースを維持していると思うかどうか。すでにわれわれの計算でいけば、實質的には半分以下になつていると思う。この點について勞働大臣としての所信を問いたい。
 第三點としましては、勤勞者に對して、増産に努力すれば將來勤勞者の生活を考慮すると言われておりますが、勤勞者に對しては非常に大きな勤勞所得税がかかつておる。これではとても勤勞者としての肉體的な再生産すら維持できない。どうしても勤勞者に増産意欲を増させるためには、賃金を考慮するはもちろんのこと、こうした悪税は徹癈しなければならないと思うが、政府は勤勞所得税に對してどういう考えをもつておるか。
 それから第四點としましては、先ほど米窪勞働大臣は、適當な準備さえ整えば全官公の勞働者諸君を整理する意思があるという重大な意思表示をしたのでありますが、これは他の各大臣から、整理ということはしない、しかし新規採用ということは避けるつもりだ――この新規採用をしないということですら勞働協約に反しておるのでありますが、新規採用をしないで、何とか今いる人員に對して將來の生活を保障するつもりだということは聽いておりましたが、米窪勞働大臣に至つては、積極的に整理をするという重大な發言をしておるのでありますが、この點について、どういう所信に基いて他の各大臣と異なつた、積極的に整理をするという意思表示をなさつたのか、この四點についてお聽きいたします。
#75
○米窪國務大臣 第一の點は、私正確なことは聽きませんが、國鐵の青森地協の堤訴よりも、青森の地勞委の調停案の方がはるかに上まわつたということでありますが、政府は勞働委員會の調停は尊重するということは、それは中央も地方もわれわれは差別をしない。ただ手續として、青森縣の地方勞働委員會の調停案に對して、もし運輸省の青森の管理部長が同意しないときは、これは順序として中央の勞働委員會へ委讓される。その場合にこの青森の地勞委の調停案を考慮するしかないかということは、政府へ來るまでに中央勞働委員會がやるべきことであつて、從つて中央勞働委員會が青森の地勞委の調停案をどの程度容れるかということは、中央勞働委員會の意見であつて、そうしてその容れたものが國鐵全部の問題に關する調停案となつて政府に來た場合においては、政府はこれを尊重するつもりであります。
 ただ一言申し上げますと、政府としては、青森の地方勞働委員會に國鐵の地協からもち出したあの提訴を受理するまでの經過に對しては、はなはだ遺憾を感じております。すなわち勞調法二十一條によつて提訴を受理すべきか否か、あるいは調停委員を任命すべきか否かということは、各グループの過半數をもつてきめるのです。この場合に青森は各グループの過半數をきめるときに、中立委員一人しか出ていない。そうしてそれが過半數だと稱するのです。なるほど一人出て一人が贊成すれば過半數になるかもしれませんが、青森地勞委が提訴を受理した經過については非常に愼重を缺いておる。また中立と稱する委員の中には、中立性のない者がその調停委員になつておる、こういうこともある。この點はわれわれとしては、青森の地勞委のとつた行動に對しては、はなはだ遺憾の意をもつておりますが、その調停案に對する林さんの御質問に對しては、以上申し上げたようにお答えいたします。
 それから、千八百圓ベースはカロリー計算やなんかですでに破れておる、こういうことをお尋ねになつたのですが、これは先ほどからたびたび政府の方から説明があつた通り、カロリーの計算というものは、生計費においても同様ですが、そのウエートのとり方、ベースのとり方によつていかようにも統計の數字が出てくるのであります。なお一應私から申し上げておきますが、今の政府の千八百圓ベースでもつて最低生活を維持できると考えておりません。しかしカロリー問題について一言申し上げますならば、たとえば米に例をとれば、三千五十五萬石の供出がマツカーサー元帥の命令によつてようやく許されました。それに今後毎月約十萬トンの輸入が最大であるとすると、これで百二十萬トン――これは主として粉だろうと思いますが、この小麥粉を米に換算して、これに三千五十五萬石を加えても、これを七千五百萬人で割つたときに、そこに二千四百という平均のカロリーは出てこないと思います。私は決して他に責任を轉嫁する意味で申し上げるのではありませんが、ドイツにおいても、イタリーにおいても、いわゆる敗戰國においては千五百五十カロリーが基準であるということは連合國の意向であります。速記を止めてください。
    〔速記中止〕從つてこの千八百圓ベースのカロリー問題の詳細については、後ほど永野經濟安定本部副長官からもお話があると思います。
 第三の勤勞所得税については、政府は七月に遡つて勤勞所得税の基礎控除を大體百四十二圓上げることによつて、勤勞所得税を輕減しようとすることを考えております。また重點産業に能率給を適用して出來高拂をする場合においては、勤勞所得税の累進課率を三割五分で止めて、さらに一年の收入が六萬圓以上になるときには勤勞所得税をやめよう、こういう工合にやつておりますが、今日の日本の財源その他から考えまして、勤勞所得税を全廢するということは、收支のバランスから見て他に代る財源がない限りこれは實現不可能である。こういう工合に御了承を願いたいのであります。
 それから行政整理について、非常に御不滿があり、痛烈なる御質問があつたのでありますが、私は決して積極的に申し上げておるのではない。川崎委員からそういうことを聽かれたので、消極的にそういう方法も一つの方法として考えられる。であるからわれわれは今日いわゆる財源においても制限がある、出せない、要求は過大である、こういう場合に何かそれに對應するところの策があるかと聽かれたときに、一應そういうことも考えられると言つただけで、積極的に私が斷行するとかなんとか言つたように思われるのは、はなはだ遺憾でございます。それだけを申し添えておきます。但しその場合でも、くれぐれも申し上げた通り、それによつて出てくる犧牲に對しては、これを就職せしめる。配置轉換をするとか、あるいは就職の機會を増すとか、あるいは失業保險、失業手當で救うとか、そういうそことを考えずに、いたずらに行政整理をなすべからずということをはつきり言つておりますから、その點は誤解のないようにお願いいたします。
#76
○林(百)委員 この二千四百カロリーを保持することは、いろいろの情勢から不可能だという説明であつたのですが、これは政府の經濟實相報告書によりましても、戰前の日本人は老人から子供を平均して二千百五十カロリー、これは老人も子供も入れてのカロリーですから、これがやつと、われわれの通常の健康を維持していく程度のカロリーだと思うのであります。そこでそれが國際情勢その他からして不可能だ、大體千六百カロリーしかできない。正確に言えば千五百五十カロリーですが。これは大體政府も認めているように、平靜な状態で、何も仕事もせずにじつと寝ている程度のカロリーだということになつております。しかし國際情勢から、米窪勞働大臣によりますと、それは不可能だということになりますれば、このたびの全逓從業員の職場離脱の問題も、一つはこうした肉體的な再生産ができない、人間としての完全な活動力を保持することができない實情なんだから、そういう不可抗力的な原因があるから、こういう事態を生じているということを、私たちは痛切に感じておる。從つて政府の勞働大臣としての立場に立つて、こうした人間としての生命を維持するに不可能なようなカロリーしかとつていないから、職場離脱についても相當の理解をもつべきだと思う。ところが新聞紙の傳えるところによれば、米窪勞働大臣あたりが最も強硬にこの危機を乘り切つてみせる、斷固とした處置をとるということを言つておるということを、風間に聞いておりますが、こうしたこのたびの全逓從業員の職場離脱の問題について、米窪勞働大臣としては、特に他の閣僚と違つて勞働事情に深い理解をもつているはずの勞働大臣であるから、この點についてもう少し理解があると考える。はたして新聞紙の傳えるように、最も強硬な主張をされているかどうか。その點をひとつ聽きたい。
#77
○米窪國務大臣 その記事が出たのは何新聞であるか御明答を願いたい。そしてその現物ももつてきて見せていただきたい。
#78
○林(百)委員 それは後ほど提供しますが、それが事實であるかどうか、事實でないならば、この問題についてどういう考えをもつておられるか、それをお尋ねいたしたい。
#79
○米窪國務大臣 私が閣内で最も強硬に主張したということは事實でありません。しかし新聞を取上げて言うならば、ちやんと證據をもつてきて言つてください。
#80
○林(百)委員 證據は後ほど提供します。
#81
○米窪國務大臣 後ほどじやいけません。みんなが聽いている公の席で新聞に書いてあると言う以上は、ちやんとその證據を用意してきて言いなさい。
#82
○林(百)委員 それでは答辯にならないのだが、その問題は別として、勞働大臣として全逓從業員に對してどういう考えをもつておられるか、これを聽きたい。新聞はあとでいくらでも提供しますから。
#83
○米窪國務大臣 これについては先ほど川崎委員にお答えした通りです。
#84
○川崎委員 今の問題に關連して――私が行政整理を斷行せよということを最後に申し上げたのは、民主黨としての立場に多少の誤解があつてもいけませんからはつきり申し上げ、かつ社會保障制度との關連で、一言最後にお伺いしておきたいと思うのです。私どもは、行政整理をするということは、今日の國家財政からして今日官吏に十分な滿足を與える最低生活の保障ができないではない為という觀點もあり、かつは行政の能率の向上という觀點からして、今日行政を整理すべきときである、かような考え方から申しておるので、それに伴つての失業對策というものの解決は、民主黨としての獨自の見解をもつておる。これは當然失業保險法などというような消極的なものだけでなしに、公共事業初め、あるいは輸出産業の振興等によつて失業者を吸收していく。そうして生産を増加していくという積極的な方面に對する失業對策を確立しなければならぬ。しばしばそのことは政府にも民主黨政調會から進言をしており、殊に私は有力にこの説を唱えておるものであります。しかしながら現在たしかに、國民が七人に一人の割合で官吏及び官吏の家族を養つておるという現状は、まさに官吏亡國の兆だと私は考えておる。殊に管理部分の官吏が非常に多過ぎる。この點を強調して行政整理を言つておるものでありまして、決して失業對策の確立、あるいは廣範な失業保險、社會保障制度の確立ということを、われわれは考えておらないのではないのであります。
 そこで今出ておるこの失業保險法案との關連で、近來厚生省では社會保障制度全般にわたつて計畫を進められておる。これは理想社會への進出としてまことに結構な方策でありますが、はたしたこれが經濟安定にたえ得るかどうかということは、疑問に思つておる點もあるので、この間厚生省の役人を呼んでいろいろお話を聽きましたが、この際お伺いいたしておきたいことは、厚生省では失業保險法について一つの考え方をもつておつて、失業保險法は、その考え方によると、あの社會保障制度の六つの段階のうち第一段階に實施すべきもの、すなわち來年度から實施をしてもらうというものの中に失業保險法というものがはいつておる。厚生省の社會保障制度の中にです。そうして第二段階以下は、これは相當將來のこととして考えるものであるけれども、第一段階は來年度から實施してもらうつもりでおるというので、厚生省では考えておるけれども、その失業保險の内容を見ると、自營者、つまり自分で營業している者にも失業保險をかけていくような、きわめて理想的な案であるけれども、これは勞働省と何か關連があつてのことであるかどうか。豫算もあの計算でいくと、たしか百三十一億ということである。これは今日の勞働省から出しておる失業手當法によれば、今年度は七億五千萬圓とか十億にきまるのではないかという話でありますが、これとはまるでかけ離れたものが出ておるけれども、これは勞働省と連絡があるものかどうか、この點をお伺いしておきたい。
#85
○米窪國務大臣 お尋ねの點は何と勞働省と連絡もありません。厚生省の社會保險委員會へかけているものは、新聞紙に傳えられている通り社會保障制度で、すなち國庫が一方的の負擔でもつて、生れたときから死ぬまでの人間の生活を保障しようというので、總豫算千四百億圓に上るという厖大なとこで、理想といては結構であり、一日も早くそういう國家になつてもらいたいということをわれわれも祈念しておるのでありますが、現状においては一つの理想案にすぎない、こういうふうに考えております。
#86
○加藤委員長 それでは永野政府委員。
#87
○永野政府委員 先ほど川崎さんからの御質問で、もし誤解があるといけませんからお伺いいたしますが、千八百圓基準は今でも妥當たと考えておるか。もう一つは、民間企業の方は必ずしも千八百圓に固定しているものでない、從つてある場合は固定していると考える官聽とのバランスはいいかというように伺つたのでありますが……。
#88
○加藤委員長 大體そういう意味ですね。
#89
○永野政府委員 最初の千八百圓の問題でありますが、八月、九月當時時最初豫定しましたよりも示字が相當出たといことも事實であります。大體豫定をしておつた。そう狂いはなかつたのでありますが、すでに八月、九月は赤字を考えておりましたので、やはり數百圓の赤字があつたことは事實であります。それから當時、十一月になると新米も出るし、かたがた數百圓の黒字が出るということを發表いたしたわけでありますが、これはその後の實情、物資の需給状況、あるいはやみ値等を勘案いたしますると、必ずしもそうは出ない。しかし非常に苦しいながら、どうやらとんとん近く出るのじやなかろうかということをただいま考えております。もつもこれも現在考えております流通秩序のもと一歩前進とかいう、いろいろな手を打たなければならぬ、萬全の努力をしなければならぬということは、もちろん前提になるわけであります。また政府もそれをする覺悟でおります。ただそれでは一體千八百圓をそんな苦しいところにおいておくよりも、何か上げる餘地はないかということになるわけでありますが、それは先ほど勞働大臣からもすでにお話がございましたように、日本の今日の生産だけでは物が足りないので、海外から相當量を補給してもらわなければならぬという實情を勘案してみると、その數字というものは必ずしもあまり期待できない。これは世界の諸情勢からも影響を受ける問題と思います。從いまして限りある食糧は、ただ金を上げただけではいけないであつて、むしろ同じ量を上げた金で買うとすれば、結局その間にインフレーシヨンが進んでいく。中間搾取をする方面に物が流れて行つて、實質的にはかえつて苦しい環境になる。從いまして非常に苦しいのではございますが、これで政府も萬全の努力をし、また苦しいながらがまんをしていただければ、なまはんか上げて、そのために一部のものが横へ流れ、またやみ商人を肥やす結果になるようなことになつて、結果としては苦しい目をおかけするよりも、これに萬全なる努力をして、政府も、また耐乏していただく國民各層にも、御努力を願う方が結果としてはよいのではないか。こう考えておる次第でございまして、決して樂だからこれでがまんしてくれというような希望をもつておるわけではございません。
 よく往々聞くことでございまするが、先ほど伺つた數字の中に二千四百カロリーとか、また世間では、それ以上の數字を要求しておられる方面もあることもよく存じております、また聞いてもおります。しかし實際の問題として、それが全部供給できないとすれば、これもただ物價を上げて辻褄が合うだけになりまして、實質としては上らなので、現在先ほど勞働大臣も言われましたような千五百五十カロリー――もつとも千五百五十カロリーのうち――主食の二合五勺は千二百四十三カロリーばかりになりまして、あと野菜とか魚介類とか、調味料その他もそれぞれカロリーを合んでおります。また一部には現有の計算は、ある程度のやみを前提にして辻褄を一五五〇カロリーに合わせるというようなことで、現在の高物價を勘案いたしまして、先ほど申しましたような、ほぼとんとん近くになる數字に一應なるわけでございまして、この點ひとつ御了承を願いたいとと存ずる次第でありますが、また一面それでは民間企業は、經營能率さえ上れば千八百圓以上になり得る場合がある。そういう場合に官公勞とのふり合はいいいかというような御質問でございましたが、民間企業の千八百圓以上になり得る場合は、同じ設備、同じ人員でもつて、いろいろな諸條件を總合いたしまして效率が上つた場合でございます。從いましてそれだけのものを負擔を多くしましても、原價に織りこみますコストは上りませんので、從いましてその方面だけからくる他の負擔はないわけでございます。しかしその程度はどうかというお話がございましたが、これが何制限に上つてもいりますと影響がないとは申し上げかねると思います。ある程度の上りでございますれば、それだけの勞銀が拂えて生産能率が上つて物が殖えておる場合もございます。從つて物價の需給原則から言いますと、必ずしも物價は上らない、のみならず場合によつては、全體的には下り得る場合すら考えられます。從つて影響を與えない。そう言えるわれでございますが、これは生産が上つて、從つて賃金の千八百圓、四千圓になるというような場合を想定いたしますると、兩方の相の間の購買力に不均衡を生じまして、結局總體的には一方が被害を受けるということになりますので、非常に上つたような場合は、その面から檢討する必要があると存じますが、ただそれがどの程度に上つた場合、從つて時期的に見ていつごろかということは、生産實相と勘案して考えるべき問題と存ずる次第でございます。さような状況でございまして、現在のところは輸入及び内地の生産でできる物資を前提にいたしますると、樂ではないけれども、とにかくこれで我慢願つて、われわれといたしましては萬全な努力をして、それが完遂できるような方途を講じ、またその決意ももつ次第でございます。
#90
○川崎委員 この問題は安定本部長官にお伺いしないと、やはり初めからこういう計畫をつくられ、そうして見透しを立てられた人は、安定本部の事務局當局者ではありましようけれども、直接その責任に當られており、またこういう考え方をもつておられるのは、どうも永野さんあたりではなくして、和田安本長官あるいは都留委員あたりだと思うので、私はそれ以上お伺いしても無駄だと思います。
 そこで最後にひとつお伺いをしておきたいのは、例の長期經濟計畫の問題でありますが、あれは安定本部の部内においてはどういう研究を進められておるか。かつて社會黨から長期經濟計畫は獨り安本だけではなしに、社會黨、民主黨、國協黨の與黨三派の政調會とも連繋をとつてやつてもらいたいという申し入れがあつたはずであります。民主黨においても同様の考え方を申し述べておいた次第でありますが、十月の末から十一月にかけて長期經濟計畫に著手するということを言われておるが、部内においてはどういう進行状態を示しておるかをお伺いして、私の質問を終る次第です。
#91
○永野政府委員 ただいまの長期生産計畫につきましては、かねてすでに著手をいたしております。ただ何分にも實汎な資料、また刻々に變つてくる海外の諸情勢等を勘案いたしますると、一度立てた案がまた變るというようなこともございまして、急には結論を得ないのです。しかしこれは日本の現在打ちます施策の中にも、先を見透さなければ立たない案がたくさんございますので、そういう面からもせつかく各方面にも御協力をいただき、また萬全の資料等も整え中でございまして、そのうち成案を得ることと存じまするが、ただいまのところではまだ案の檢討中ということで御了承願いたいのでございます。
#92
○川崎委員 ひとつ具體的に伺つておきたいのです。ばういう部門についてやつておられるか。たとえば主要食糧、動力というようなことがあつたようですが……。
#93
○永野政府委員 これは各般にわたつて、主要食糧はもちろんのこと、動力、石炭その他諸物資の生産状況、あるいは將來を想定して、賃金收入全般にわたつて研究をいたしております。あるいは貿易についても同様の意味で研究をいたしております。
#94
○徳田球一君 あなたの見解も米窪さんの見解も同様でありますが、千五百五十カロリー以上には今の食糧事情、生産事情としてはどうしても上げ得られないということでありましたが、しからばこの千五百五十カロリーではどうしても勞働はでませんがね。寢ていなければならぬ。われわれもこへ來こてこれだけ喋る以上は、どうしても事實二千四百カロリー以上とつておるのです。これはあなたの方では相當やみも考えておると言つておられますが、實際上は私は二千四百カロリーを得るだけの物はあると思います。まただれしも得ている。得ていなければ勞働できるものではない。事實上勞働できません。ですからこれはどうしても、私はあなた方の言われることには承服できない。これだけの經濟事情で、これだけのもので、千五百カロリー以上はどうしてもくれられないということになりますと、これは全部の勞働を停止しなければならない。おそらくこれは全部が榮養失調で死ななければならない。こんなことになりますと、これはもうすべての經濟計畫、すべての財政計畫も、社會的ないろいろの設備も、みんな廃棄せざるを得ないと思うのであります。そういう實際に違つたことは、政府としては私は言うべきじやないと思います。でありますからこの點はあなた方どう考えられるか。事實あなた方も千五百五十カロリー以上はどうしても維持することができないと言われるのかどうか。この點が一つ。
 それからもう一つは、あなたの方ではある部門の生産があがれば、これに對しては賃金を上げることを認める。しかし現に上げられない石炭においてさえ、實際上の食糧の供給は認めている。すなわち働く者は六合、家族は三合を認めている。しかし認めていても實際上はそう大して變りはない。これは事實あることを言うのである。ほかの産業でうんと増産をしたからといつて、たちまち食糧が上るわけではないと思います。これは循環をして相當の食糧の増産もあげ得るでありましよう。私たちは上げ得ると思います。しかしそれは時期に大分ずれがある。そうしてそういうことをどんどん方々でやりますれば、それはたちまちあなたの方の考えが狂つて來なくてはならぬ。事實これは賃上げをしましたところほみな生産はどこでも上つて、池具にしましても、東芝にしましても、いずれの工場でもわれわれの見るところではみな上つておる。そうして事實は高賃金を拂つていても何ともないのである。ですからやはりここの問題は、事際上あなた方が言われるような食糧が千五百五十カロリーしか維持できないというのではなくて、實際はもつとこれが維持できる。要するにこれはやみであるか、それとも正當の配給でやるかの問題である。あなま方の方は大體正當の配給のみを主として、やみはほとんど行われない、こういう前提に立つているのではないか。だから政府のつかんであるその限りにおいては、千五百五十カロリーかもしれないけれども、實際においてはずつと高いものになる。そうしますとほかの産業はよいけれども、國鐵や逓信、あるいは電産のごときは、いかにしても現在の状態では生産の上るはずはない。生産が上るというよりはむしろ收入を増すということはできない。なぜならば、ほかの産業のようにインフレーシヨンが上れば、これに追いかけてすぐ價格を上げるというわけにいかない。ほかのものは公定價格も實際それに應じてだんだん上つており、また公定價格が上らなくとも、やみでどんどん流す可能性はある。一方はやみに全然流し得ないのである。實際やみ行為をすればどつちも大して苦しくない。これは物があるからなのである。そういう状態に對しまして、私は政府の方針というものは根底的に違つていると思う。これをどう政府は考えられるか、この點を聽きたいのであります。
#95
○永野政府委員 ただいまの千五百五十カロリーの問題でありまするが、これはおそらく先刻御承知とは思いますが、全部の總平均でございまして、從いまして二十歳から六十歳までの働き盛りの方のも、ならして二千百何カロリーというような割合になるような計算になつております。それからもう一つ、働く者の立場としてそれじや足りないという話がございましたが、これはその點も十分政府といしましては勘案をいたしまして、業種によりまして數量は違いますが、それぞれの勞務加配をつけております。それで今の勞働の量による消耗に照應いたすような手配にいたしております。それから先手ど石炭の場合は非常にたくさん――――本人は六合、家族三合もやつておるが、ちつともあがらぬじやないかという話もございましたが、その點につきましては私どもも全然同じ氣持をもちまして、これまで苦しい食糧の中から、これだけのものを皆が割愛して石炭の從業者にまわしておるわけでありまするから、ぜひその要請にこたえて十分掘つていただきたいという念願は、御同様われわれももつておるわけでございます。また池具の例のお話が出ましたが、これもあるいはお調べかと思いますが、必ずしも生産があがつて四千何百圓でありましたかを出しておるわけではないように聞いております。いろいろな事情もあつたと思いまするが、資材の賣却代で出したとか、あるいは生産物の前拂代金を出したというようなことを聞くわけでございます。その點はもしお手がございますならばお取調べをいただきいと思います。われわれの方ではかように解釋しております。
#96
○徳田球一君 そうすると千五百五十カロリーというのは一般的なものであつて、働く者には二千百何カロリーのものをやつておるという計算でありますね。それならば千八百圓ベースのあの計算を出しておるあなた方から示めされた、何々を食つて何々をいくら使つておるという詳細なあの内容ですと、二千百何カロリーにはなりません。二千百何カロリーをとつたといたしましすと、大體二千五六百圓になります。そうしますとこれは非常に計算が違いますが、それは何らか特殊な考え方があるのか、それともただこの場所であなたがそう言われることによつて、われわれを納得させようと試みられるものであるか、いずれかひとつとくとお伺いしたい。
#97
○永野政府委員 決して事實でないことをただ申し上げて納得していただくわけではございませんで、事實を率に申し上げておるわけでございます。今二千百何カロリーは千八百圓の數字に合わないんじやないかという話がございましたが、ただいま千八百圓と申しておりますのは日本全國の總平均であります。從いまして二千百何カロリーを消費されるところには家族の方もおられるという想定になるのであります。從つてその場合の總平均を言つておるわけでありまし。家族ならしにすれば千五百五十カロリーという數字になるわけであります。
#98
○加藤委員長 今日はこれをもつて散會します。次囘は公報をもつて發表いたします。
   午後五時八分散會
ソース: 国立国会図書館
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