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1947/07/12 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第5号
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1947/07/12 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第5号

#1
第001回国会 農林委員会 第5号
昭和二十二年七月十二日(土曜日)
    午前十時四十一分開議
 出席委員
   委員長 野溝  勝君
   理事 叶   凸君 理事 清澤 俊英君
   理事 寺島隆太郎君 理事 岩本 信行君
   理事 萩原 壽雄君
      大島 義晴君    黒田 寿男君
      田中 健吉君    野上 健次君
      平工 喜市君    細野三千雄君
      松澤  一君    水野 實郎君
     小野瀬忠兵衞君    小林 運美君
      佐々木秀世君    志賀健次郎君
      関根 久藏君    圖司 安正君
      寺本  齋君    八木 一郎君
      田口助太郎君    野原 正勝君
      森 幸太郎君    坪井 亀藏君
     的場金右衞門君    山口 武秀君
      中村元治郎君
 出席國務大臣
        農 林 大 臣 平野 力三君
        國 務 大 臣 和田 博雄君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 政府提出豫定の法律案及び經濟實相報告書に關
 して、説明聽取
    ―――――――――――――
#2
○野溝委員長 會議を開きます。政府提出の豫定の法律案及び經濟實相報告書の概要について、委員諸君より發言の要求がありましたので、これを順次許します。小林運美君。
#3
○小林委員 安定本部長官がお見えでございますから、安定本部長官に最初にお尋ね申し上げて、あとで農林大臣がお見えになりましたら、農林大臣にも質問申し上げたいと思います。
 第一に私は蠶絲業の問題につきまして政府の見解をお聽きいたしたいのであります。先般の政府の提出法律案の中に、蠶絲管理法が見えております。これは未定の部に屬しておりますが、これに關しまして、現在の蠶絲業を見てみますと、統制を今後續けていく必要があるかどうかということは重大な問題でありまして、この點に關しまして、蠶絲管理法が政府から提出の豫定になつておるのではないかと思うのでありますが、現在の状況を見ますと、蠶絲業は先般の二千六百掛の繭價が決定いたしましたけれども決して安定をいたしておるわけではありません。また今後生糸あるいは絹織物が食糧の見返りといたしまして、輸出されることを考えてみますと、わが國の經濟に重大なる役割を占めるということは周知の事實でありまして、こういうことに關しまして、政府は今後蠶絲業の統制をどうやつていくか、また蠶絲業の將來はどういうふうになるかという見透しをお聽きしたいのでございます。
 次に蠶絲の金融の問題でございますが二千六百掛が決定いたしまして約三倍近くの値段になりまして、現在九百掛程度の繭價から推算いたしましても、相當の巨額の金融を必要とするのでありますが、今までのところでは、製糸家が繭を買いましてもその繭代が拂えないというような状況であります。それは日本蠶絲業會が製糸業者から生糸を買上げまして、それを政府に賣渡しますが、政府は輸出ができないからというので、蠶絲業會に生糸をもたせたままでおるのであります。從つて蠶絲業會はそんなに金があるわけでもないし、從つて生糸の代金が拂えない。ひいては養蠶家にも繭代が拂えない。こういうような状況にあるのであります。最近一昨日ですか、昨日か、だいたい一時の間に合せといたしまして若干の金融がついたようでありますが、これも一箇月足らずで終るのではないかと思うのであります。加えまして二千六百掛になりますと、三倍近くの金融を必要とするのでありまして、この何十億という金融に對しまして、政府はどういう考えをもつておられますか。現在のところでは前途はなはだ悲觀をしておるような次第でございます。こういう點に關しまして、安定本部長官がどういうふうにお考えになつておりますか。この邊もお聽きいたしたいのであります。
 次に現在の蠶絲業が今後どうなつていくかということは、一般農家その他關係業者から非常に憂慮されているのでございますが、それはわれわれの見るところでは、現在アメリカにおいて五萬六千何百俵という滯貨がございます。また國内にも十二、三萬俵の滯貨があるのでありますが、こういうことがアメリカの消費の部面にも、また國内のいろいろの方面にも影響いたしまして、蠶絲業の前途は悲觀の状態にある。こういう見方をしている向きもあるのでございますが、こういう點に關しまして、現在の滯貨をどしどし處分するのがまず第一の先決の問題である。こういうふうに考えられるのでありますが、アメリカにあります五萬六千餘俵の滯貨につきましては、われわれどんなにいたしましてもなかなか面倒のことと思いますが、とりあえず國内にある十二、三萬俵の生糸を早く處分いたすことが、蠶絲業の將來についてもいいことではないかとわれわれは考えるのであります。政府はこの處分に關しましてどういう御意見をおもちでありますか、簡單にお聽きしたいと思いますので、その點だけは留保いたしまして、以上三點を御質問申し上げます。
#4
○和田國務大臣 お答えいたします。蠶絲業の統制の問題ですが、これは御承知のように、今まで日本蠶絲業會が統制をいたしておつたわけであります。ところが將來あつた民間の團體で統制をしていくということはいけない。統制するものは國家が責任を帶びて統制しろということになりまして、それには公團の形式というのもが一應考えられたわけであります。しかしこの蠶絲業は特別の業態であつて、政府が直接生糸を買つたり賣つたりするという形をとるので、おそらく公團方式にならずに管理法案というものを出したのだろうと思うのでありまして、ただいまの事情といたしましては、貿易自體が一應國家管理貿易という形をとつておりまするし、また日本の生糸というものにつきましては、御承知のように輸出の大宗であり、對外貿易の上から非常に必要なものであるというような觀點からして、この統制はやはり管理方式というようなもので續けていく必要がしばらくあるのではないかと私は考えております。
 それから金融の問題はお話の通りでありまして、おそらく今の産業界で一番問題になつているのはこの金融の問題だろうと思います。これは蠶絲業のみならず他の産業の面においても同様でありまして、これは今度あらゆる物價の改訂を行いましたときには、當然財政の面とにらみ合せて考えているわけであります。われわれの方の考え方としましては、とにかく企業と家計との赤字というものを物價の改訂、平均賃金の設定、それを實質的資金で埋め合せていくための各種の對策というものによつて、一應のバランスをとつていくと同時に、そのしりを産業面でひつかぶるとか、また財政面でひつかぶるということをしないために、ただいま財政の點については、追加豫算について、御承知のように閣議を開いてこの決定を急いでおるわけであります。それから産業の面も同時に――財政がかりに引締つたとしても、そのしりを産業へもつてきて、産業金融の面でまたつじつまが合わないと、これは困るわけでありますから、この財政資金及び産業資金というものをどういう割合で調整していくかというようなことにつきましても、安定本部竝びに大藏省の方と一緒になりまして、御相談をいたしておるわけでありまして、これもいずれ近いうちには成案を得まするので、その方向ははつきりいたすであろうと思うのであります。ただいまのように蠶絲業については一應特別の當座の間に合わせの金融をいたしたようなわけでありますが、これは産業全體として金融の問題として、われわれの方としてはぜひ大きな方式で解決をいたしたいと、こう考えてただいまやつております。
 それからもう一つ滯貨の問題でありますが、これはお話の通りアメリカにも、日本にも滯貨があつて賣れないのであります。ところが一番いいスペシヤルとか三A級のものはどんどん賣れていつておるわけであります。日本が最初に生糸を出しておりましたときには、從來持つておりました滯貨、それからその後にできたもので、あまりいい品質のものは比較的少なかつただろうと思うのであります。いいものは賣れておるが、殘つておるものはそう優秀なスペシヤル級のものでもなく、三A級のものでもないというのが實情でありまして、これはアメリカの、特にナイロンの發達、それから價格の點等から考えまして、なかなかさばくのには困難を來すのではないかと思つておるのでありますが、しかしわれわれの方としましては、G・H・Qの方ともいろいろ相談をいたしまして、何か滯貨の處分については適當な方法をうちたいと思つて、いろいろ相談をしておるのが實情のようであります。こまかいことはおそらく農林大臣の方が私よりよくご存じだと思いますから、おいでになつたらお聽き願つたらよいと思います。ただ私は蠶絲業は日本にとつて、どうても農業經營の點からいつて、努力の配分あるいはその他の點からいつて、將來といえども發達させていかなけれでならないものだろうと考えます。しかし今のところ為替レートがどうきまるかによつて相當大きな影響があるとは思いますが、為替レートがかりにどういうふうにきまろうとも、日本の蠶絲業の將來としては、やはりもつとコストを下げて、いいものをつくつていくという方向にいくことが一つと、それから靴下向きとしてではなくて、織物の分野に伸びていくという工夫をやることが絶對必要だと思います。業者の意見もそういうところにあるし、また普通に考えてみましても、靴下の分野では、ナイロンが生産力の點からいえば、ほとんど日本の生糸がなくても、需要を滿たし得る程度に發達しておるし、コストの點においても非常に安いし、品質の改良も行われたし、こういうことになつていきますれば、こちらとしてはいいものをつくつていくということと、新しい需要の分野を開いていく、こういうことに結局つきるのでありまして、その方向にやはり進んでいきますれば、これは日本としては、殊に貿易品として非常に重要なものでありますのみならず、日本の内地の繊維事情の點からいいましても輕視できないものでありますので、そこらの點を考えて蠶絲業というものを盛り立てていきたいというのが、私どもの考えであります。
#5
○小林委員 ただいまお答えいただきましたが、蠶絲業の將來については、政府としても非常に御心配を願い、またただいまのような御方針でいかれることはわれわれも同感でございますが、現在の生糸が、向うにまいりまして大體どのくらいで取引されておるのか、こういうことが一應心配されるところでありますが、アメリカにおきまする今までの生糸の賣れ行きの状態をみますと、昨年の三月から六月までに輸出をいたしました數量が大體八萬六千俵になるのでありますが、このうち實際賣れましたのは三萬七千七百俵ほどであります。それでただいままでに賣れました三萬七千七百俵のうち平均値段をとりますと、大體一ポンド當り七ドルくらいに賣れておるのでございますが、これを金額にいたしますと相當の値段になるのであります。それからわれわれは食糧の見返りといたしまして生糸を輸出する、こういうふうに考えまして、アメリカの小麥の値段を一石約十一ドルくらいといたしまして換算いたしてみますと、ちようど生糸一俵を輸出いたしますと八十五石の小麥が返つてくるという計算になるのでございますが、こういつた生糸と食糧という關係で、われわれが國内におきまして一段歩から小麥がどのくらいとれる。またその一段歩の畑から生糸がどのくらいとれる。そういうような計算をいたしますと、われわれの計算によりますと、同じ一段歩の畑から二倍半ないし三倍の食糧が輸入される。現在の程度ではそういつた計算になるのではないかと思います。そういうような考えからいたしまして、現在日本が食糧に困つているこの際に、ただこの狹い面積から食糧だけを一生懸命になつてとる。こういうことも必要ではありますが、將來のことも考え、また實際問題といたしましても、そういつた關係から蠶絲業をもつと將勵して、同じ面積から二倍半ないし三倍の食糧が輸入されるというような計算からいたしますれば、もつと積極的に將勵をする必要があるのではないか、こういうふうに考えられるのであります。ただいま和田長官からのお話もございましたし、またわれわれも考えておりますが、現在生糸がアメリカその他であまり賣れ行きがないということは知つておりますが、これはいろいろの關係でありまして、將來ずつとこういつた状態が續くということは考えられぬのでありまして、價格が安定いたしまして、また新しい需要の方向に蠶絲業が向つていくならば、あるいは生糸の用途を別に見出しますとか、あるいは織物にして出すとか、編物にして出すとか、そういつたふうにやりますれば、相當生糸の賣れ行きがいいのではないかと思うのであります。戰爭前の盛んな時から比べますと、現在では約十分の一の生産になつておるのでありますが、こういう點に關しまして、現在の為替の關係もあるでありましようが、今申し上げましたような將來の見透しから、食糧との關係をどういうふうに考えておられるか。食糧が少くなれば、さらに桑園を減らすのじやないか、こういうことを一般養蠶家は非常に憂えております。こういう關係も併せてお伺いしたいのでございます。これは安定本部長官に關連いたしてお尋ねいたしたいのであります。次に農林大臣がお見えになりましたので、先ほど申し上げましたように農林大臣に御質問申し上げたいのでありますが、農林大臣は先般新聞によりますと、今後の蠶絲業は長野縣、山梨縣の二縣程度の養蠶をやつていけばいいのじやないか、こういうような新聞の記事でございましたが、政府におかれましては先般蠶絲業の復興五箇年計畫をきめまして、政府も民間も協力いたしまして、繭の増産をやつてまいつたのでございます。ところがいつの間にか、農林大臣の言によりますと、養蠶は長野縣と山梨縣の程度でいいのだというふうに傳えられておるのであります。長野縣、山梨縣の現在の産繭額を見ますと約二百四、五十萬貫程度でございます。これを現在の日本の總繭産額を一千五、六百萬貫と見ますと、二割にも滿たない數字でございます。そういつた現在の二割程度の繭の産額でいいのか、蠶絲業がその程度でいいのかどうか、これを承りたいのであります。
 次に、長野縣と山梨縣だけで蠶絲業をやつていけば、ほかの方はもういいのだ。あるいは食糧をつくるか、みかんをつくるかどうかしりませんが、ほかの府縣はもう必要がないのだ。こういうふうに一般の農家は考えるのであります。ただいま申し上げました、大臣が新聞に發表された二割程度の産繭でいいとか、あるいは長野縣とか、山梨縣とか、その二、三の縣で養蠶をやつていけばいいのだ。こういうふうに一般が考えられるということは、一國の農林大臣といたしまして、いささか輕卒にすぎはしないかとわれわれは考えるのでありますが、こういう點に關して、農林大臣はどういうようなお考えをもつてやられましたか、一應お尋ねをいたしたいのでございます。以上農林大臣竝びに安定本部長官に御質問申し上げまして、なおさらに關連して一、二申し上げたいと思います。
#6
○和田國務大臣 お答えいたします。食糧との關係でありますが、お話のように今まで出ました生糸の値段は、それが賣れた額によつて非常に違つております。お話のように平均すればあるいは七ドルくらいになるかとも思いますが、それで向うの小麥の價格を計算いたしますれば、あるいは今あなたのおつしやつたような結果になるかとも思いますが、ただいま賣れていないのは御承知のように、いいものは賣れているが、惡いものが殘つておる。日本の終戰後の製糸業の状態はそういいものがたくさんできるだけに囘復していなかつた。そこでスペシヤル格とか三Aというようなものはどんどん賣れておつたが、それ以下のものは殘つておるという現状であります。どうしても日本としては輸出貿易によらなければ日本の國全體が立行かない。その點からいけば生糸というものは非常に必要なものでありますから、やはり養蠶業においても、製糸業においても、經營の合理化なり、あるいは向うの需要を十分研究して、いいものをつくつていく。需要に合うものをつくつていくことに進まなければならぬ。それが一つは品質が優秀であるだけでなく、向うの需要を見て、あるいは競爭關係の品物を考えて、織元の方へいつたらどうかということを私は申し上げたのであります。それで食糧との關係でありますが、日本としては私はやはり食糧の自給度を高めていかなければならぬと思うのであります。それと同時に貿易の品物をこれを兩立して振興して、輸入資金を多くかせいでいく。今でこそ日本は食糧に非常に困つておりますから、輸入の大部分は食糧であつて、七十パーセントくらいが生活關係で、あとが經濟復興の關係だというような状態でありますが、こういう状態をむしろ逆にひつくりかえして、食糧は少くても濟むが、經濟復興のために必要なものがたくさん輸入できるというふうにしていきますれば、日本とすればいいわけでありますから、何も桑を全部引抜いて食糧をつくるということをやらなくても、適地適作で、農業經營の面からいつてやはりここには桑をつくつた方がコストが安いし、農業の勞力お分配の點からいつてもいいというところには、どこまでも蠶絲業、蠶絲業はそこに自然に殘つていきましようし、また殘していく。だから政府としては、一定の計畫に從つて蠶絲業の振興をはかつていくという方針に私は變りはないと思います。ただいまの現實は非常に滯貨があつて、しかもその滯貨の處分に苦んでおりまするがゆえに、前途に對しては非常な不安をもたれておると思うのでありますが、そこはやはり打開の途は政府もまた業者の方も、お互いに十分に心していけば必ずあると思いますし、またこれはぜひ打開していかなければならぬ。こう考えておるのでありまして、その邊は平野さんが長野縣とか何とかいうことを言われたそうでありますか、これは私は何かの誤解だろうと思います。政府の方針としては少しも變らない。かように考えております。
#7
○小林委員 長官にもう一つ伺います。今お話を承りましたが、先ほど申し上げましたように、現在の滯貨の處分に對してはどういうお考えをもつておられますか。
#8
○和田國務大臣 その點直接に衝あたつておられる農林大臣からお答があると思いますから……。
#9
○平野國務大臣 私は將來の農業形態は、大體多角經營的な農業形態をとる考えでありますので、養蠶を山形縣、長野縣だけに限るという考え方はもつておりません。ただ私が引例として、養蠶を主とする縣、たとえば山梨縣、長野縣等において優良なるものをつくらなければならぬというような趣意をどこか座談會で申し上げたのは、アメリカ方面の將來の日本の生糸の賣れ行きというものを考えてみますと、きわめて優良なる品種のものを一定限度より買わないだろう。こういう見透しが大分強いのであります。從つて日本全國の養蠶地帶において、むやみにどんどんつくつても、それがはけるかどうかという疑問をもつております。そこで養蠶業者に對して、いわゆる生産過剰によつて、賣れない繭をたくさんつくつて迷惑をかけるということよりは、主食、いわゆる食糧の方へ相當轉業した方が、現在の情勢においては妥當であるという趣意のことを述べたのでありまして、ただいま御指摘のような日本の養蠶は、長野縣、山梨縣だけでよいというようなことを斷定した記憶はないのでありますが、誤解を生みました理由は、今申し上げたようなことだと御了承願いたいと思います。それから生糸の滯貨に關しましては、實は現在どれだけの數量がどう滯貨されておるかということについて、數字をもつておりませんので、これは後刻調べて御答辯申し上げたいと思います。
#10
○小林委員 ただいま農林大臣からのお答えで、われわれは農林大臣は多分そういうつもりでお話になつたと考えておつたのでありますが、ただいまのお話でよくわかりました。これが全國の蠶蠶農家にも徹底するように、農林大臣からしかるべき機會にお話を願いたいと思います。なお適地適作というお話がございましたが、それも結構でありますが、農林大臣のお考えを今じつと聽いておりますと、どうも弱い感じを受けるのであります。農林大臣の將來生糸がアメリカその他の國で今後どの程度に使われていくかという見透しの問題でございますが、これは蠶絲業の全般的な將來の問題にも非常に大きな影響をもつのでございまして、私が感じました農林大臣の蠶絲業に對するお考えは、非常に消極的のように考えるのであります。すなわち現在アメリカに滯貨しております生糸は五萬何千俵でございまして、この程度の滯貨は、戰爭前のことを考えますと、これはアメリカの一箇月か二箇月の消費分量でございまして、こんなものは少し活況を呈しますればすぐになくなるのではないかと思うのであります。ナイロンの問題、その他いろいろのことがございますが、われわれは決して蠶絲業の將來はそんな悲觀すべき問題でない。二、三日前の外紙の報ずるところによりますと、インドも相當の生糸を要求しておるようでございます。またアメリカには戰爭前の生糸關係のはたの機械、あるいは靴下の機械というものはそのまま殘つておりまして、一部分ナイロンによつて使われてはおりますが、生糸の値段が安定し、またその値段も適正の値段であればどしどし消費されるのではないか。こういうふうに考えられるのでありますが、農林大臣はそういう生糸の將來の見透しについて、どういうお見透しでありますか。われわれの感ずるところでは、非常に弱いのではないかと思うのであります。先ほども申し上げましたように食糧との關係もございまして、なかなかデリケートなことではありますが、われわれはもつと積極的に、この狹い土地からなるべく多くの物資を輸入するような方策を立てるのが、今後の日本といたしましては重要なことではないかと考えるのでございます。そういう點におきまして大臣は蠶絲業の將來をどんなふうに考えますか。概念的であつても結構でありますから、その點を明らかにしていただきたいと思うのであります。
#11
○平野國務大臣 私はこの際日本の蠶絲業の前途というものをあまりはつきりと明確に言い切るということは、むしろ危險でないかと思つておるのであります。もとより農林大臣になりましてアメリカの生糸に關する係官に對しまして、正式に日本の將來の生糸はどうであるかということを申し入れて聽いてはおらぬのです。しかしその他の關係について、座談の形あるいはいろいろな形において、この問題を私ががいろいろ推測しておるところによりますと、あまり結論が出ないのです。これは正直な私の觀測なのです。結論が出ないのに、外國貿易が再開されれば、昔のように日本の生糸は羽が えてアメリカへ飛ぶような印象を養蠶農家に與えるということはむしろどうかというので、私は食糧重點の立場から先刻來申し上げておるように言うておるのであります。小林さんの御説明によりまする、一つの數字でありまするが、日本の一段歩からできる養蠶と小麥の輸入の率というものを數學的に研究いたしますならば、生糸をつくつてアメリカに買つてもらつて、その見返物資で小麥を買うということが確かに倍ぐらい得になるのです。つまり日本の一段歩の畑で麥をつくるより、養蠶をやつて生糸を買つてもらう。その數字は是認します。しかし今日の輸入食糧というものは、見返物資さえあればどんどんもらえるというのではないのであつて、要は輸送力あるいはアメリカ國内の食糧事情、世界の食糧事情、こういうものに制約をされておるので、あながち生糸さえどんどんつくれば麥と交換できるという状況でないこともはつきりいたしております。そこで私は養蠶業に對する問題といたしましては、先刻來申し上げておるように、きわめて優良な輸出向のものをある一定限度において日本においては考えていくということが、責任ある指導方法ではないかと今は考えておるのであります。なおもう少しこの問題につきましては、責任あるアメリカの當局に對しましてよく見當をつけまして、自信をもつて申し上げる時期がありますならば、はつきりいたしたいと思つております。弱い強いとおつしやいますが、私も養蠶縣のことはよく知つておりますので、決して養蠶農民に對する考え方として薄弱な態度ではないのでありますが、自信のないことをあまり申し上げるということはいかがかと思つておるのでありまして、この點御了承願いたいと思います。
#12
○小林委員 先ほどもお尋ねいたしましたが、現在國内にあります十二、三萬俵の生糸は、なるべく早く處分した方がいいと思うのであります。それは現在農村におきましても、一般國民といたしましても、極度に衣料が不足いたしておりますので、さらにこれから繭もできますし、どんどん滯貨ができると思いますから、現在國内にあります生糸は、ただいま農林大臣のお話によりますと、將來は少くとも良質の糸を輸出していくというようなお考えでもあるようであります。現在あります十何萬俵の生糸は必ずしもスペツシヤルAAAといつたような生糸ばかりではないのでありまして、大部分はA格以下の糸。また廿一中とか、そういつた太織度のものも相當あるのでありまして、そういつた生糸を至急處分をいたしてもらいたいというのが一般の世論でございますが、そういう點に關しまして大臣はどんなお考えでありますか、お尋ねしたいのであります。
#13
○平野國務大臣 滯貨生糸の問題においては、まだはつきり十分な研究を遂げておりませんので、なおこの點につきましては研究いたした上で答辯させていただきたいと思います。
#14
○野溝委員長 小林さん、この程度でどうですか。
#15
○小林委員 では、これで打切ります。
#16
○野溝委員長 森委員。
#17
○森(幸)委員 こんど農林大臣となられてから、初めて農林政策について意見の交換をする機會を得たのであります。まことに時局、殊に食糧問題の重大なる時期に農林大臣として就任されました平野君の御心勞のほどを深くお察しするわけであります。この機會に食糧問題を中心といたしまして御所見を承りたいと思うのでありますが、それに先立ちまして念のために伺つておきたいことは、政府が近ごろ新聞に發表せられるところのいろいろの記事であります。あるいは座談會において、あるいは農相談において、新聞にその當時いろいろと發表され、また先般も食糧緊急對策として十二項目も新聞に發表されたのでありますが、こういうことの責任を政府は、また農林大臣として、はつきり確認されておるかどうかという點をまず第一に伺つて質問に入りたいと思います。
#18
○平野國務大臣 食糧緊急對策等として閣議決定等において發表いたしましたものについては、もとより責任を十分もつておるのであります。新聞の記事については、大體多く誤りがあるとは考えておりませんが、一々の新聞については多少の誤りがある場合もありましようから、その點については全部新聞記事そのものを責任を負うというわけにはまいらないのですが、大體政府の閣議決定および農林省として發表いたしておりまする基本的な問題については、責任を負う次第であります。
#19
○森(幸)委員 今後のいろいろの問題について、今の御答辯によりまして希望いたしておきたいことは、先般國會に白書として、時局乘切りに對する政府の所信をわれわれ議員にお示しになりました。これは私は正當な手續と考えるのであります。食糧の緊急確保對策に對しましても、新聞に閣議の決定として御發表になつておりますけれども、それはあるいは印刷の上において、誤植の責任も考えなければならぬと思うのでありますが、よろしくかくのごとき重大なることは、すべてわれわれに對して、國會に對して、これを御發表になるべきものであろうと思う。そうして政府は閣議決定して國民に臨む責任を明らかにせられることが、その道であろうと私は考えております。しかし新聞の記事の全體においては、あるいは責任を背負えないというお話がありましたが、やはり座談會あるいは農相談として新聞に記載されますると、國民はこれを正直に受入れる今日まで日本の國民性になつておりますから、もしもその記事が農相の意思に反するような場合がありましたならば、直ちにこれは訂正されることを今後希望するのであります。しかして私は時間が非常に制約されておりますので、質問の事項を逐次に申し上げます。相當數がありますから、お聽き逃しのないようにして、御答辯、御意見を伺いたいと思います。あらかじめ申し上げておきますが、決して私はあなたのお困りなさるようなことを申し上げようと思わぬのであります。今日の食糧事情は何としてでも國民一致協力して突破せなければならぬ重大な時期と考えるのでありまして、われわれも現内閣の成立いたしましたときに、その政策の協定に加わつて、そうしてこの難局を乗り切りたいということは、わが黨としてもその本旨を明らかにしておるのでありますから、どうかひとつ誤解のなき氣持でお聽きとりをお願いいたしたいと思います。
 農相が就任された當時食糧問題について事務當局にその内容を聽いてみて、非常に窮迫しておることに驚いた。豫想外に食糧が窮迫しておるということをお話になつたのでありますが、先般食糧問題はどうか政爭の具に供していただきたくないという御希望がありまして、まことにごもつともであります。しかし農林當局としての責任を背負いなすつたときに過去においてどういうことになつておつたか。自分は農林大臣になつてみたが、どうも前内閣が食糧問題を十分にやつておかなかつた。それで親の財産を繼いでみたところが、おやじが借金をしておつて、非常に困るというような、責任を他に轉嫁されるような氣持を私は考えるのであつて、むしろさようなことをお考えなさる、またそういうことを言明されることそれ自體が、政治問題に供されるのではないかというようにも考えるのでありますから、この點についてひとつ御意見を承りたいのであります。
 次に第二の問題といたしまして、農地法に對して第三次の改革をしたいと思うということを御就任當時發表されております。この農地法はすでに第二次改正が終りまして、目下本年一年の間にその目的を達成するように政府として努力されておるのでありまするが、さらに第三次の農地法改正の意思ありということに言及されております。その理念とされるところはどういうところにあるかということを承りたい。かつてあなたは七十六議會に農地改正法を議員提出法律案としてお出しにならんとせられたことを承知いたしております。その當時のあなたの理念は、小作地を國有として全農地の國家管理を斷行する、家産制自作農の創定に移行せしむるという理念をおもちになつておつたのであります。今おもちになつておるところの、農地法の第三次改正をせられんと希望される場合において、やはりこの理念をお捨てになつておらないか、この點をひとつ承りたいのであります。
 次には農業形體の改善をしなければならない。こういうことも御發表になつておる。農業形體をどういうように改善せられんとするのであるかどうもわれわれはそういうお話を承るときに、今少しく具體的に理念を表現されなければ、國民は非常に迷うのであります。それでこの機會に農業形體の改善をなすという言明に對する、具體策とまでは申されないと思いますが、いま一歩つつこんで、どういうふうな形體で改善せられんとしておるのか、その點を承りたいのであります。
 それから次には供出制度の根本的改正を立案中ということを言明されております。昨日も参議院の自由討議の模様を、結論として新聞等によつて承れば、このお説が出ております。これは昨年來あなたと一緒に食糧對策委員會に列しておりまして、この問題についてはお互いに研究を進めてまいつたのであります。私はその當時の理念といたしまして、今日の供出制度は天降り式である。昨年はようやく生産者がなつとくするように、生産者の保有を認め、そうしてその餘つたものだけを供出せしむるという、一應理論が合うような供出制度を考えられたのであります。しかし結論においては強制供出、強權の發動をしなければならないことになつたのであります。昨年農林大臣はこの強權發動に對しては非常に反對の御意思を發表されておつたのでありますが、しかしこの強權を發動しなければ、政府の豫期するところの供出が確保できなかつた。私はそこに無理があると思う。過去しばらくの間でありましたが、私は責任の地位に立ちまして、この供出の根本としては、立地條件にいくか、立毛條件にいくか、これをはつきりしなければ日本の供出制度は完全にいかない。生産者がなつとくして供出するという態度を出せしむるには、どうしても立地條件にいかなければいかぬということを強く主張しておつたのであります。今もこの主張を變えるものではないのであります。過去において農林事務當局に對しまして、君らもこの立地がいいか、立毛がいいかということをよく考えて、そうしてこの供出制度の根本的改善をしなければならぬということを私は注意いたしまして、その基本を確立するように話しておつたのでありますが、本年度のじやが芋の供出におきましても、現にお前の縣ではこれだけのじやがいもの種芋を配給いたしておる。一段歩當り三十貫ないし三十五貫という種芋の量である。これだけの種芋を配給すれば、これだけの段別が栽培されておるとみなければならぬ。そうすればその段別に對して、段當りこれだけの收量を豫想される。それであるからこれだけのものを供出しろ。こういうふうな割當の基礎のように聞いておるのであります。こういうことがそもそも生産者の生産意欲を減退し、消耗せしめ、そうして政府の豫期するところの供出量が確保できない、こういうふうに私は考えるのであります。またこの議會に生産調整法というものを出した。そうして生産命令をして、その生産命令によるところの段別によつて肥料を配給し、あるいは資材を配給し、その條件によつて食糧を供出せしめようとされるように考えられるのでありまするが、これはかつて戰爭中に、麥を何段つくれ、稻を何段つくれ、こういう生産命令が出たのでありまするが、生産者は決してこれを喜んでやらない。戰爭中でありましたけれどもその通りこれは行われなくて、この施策は失敗に終つたのであります。今日は聞くところによりますれば、ある府縣のごときはりつぱ芋あるいは陸稻の栽培せらるる耕地に砂糖きびを栽培する。あるいは玉ねぎを栽培する。りつぱに水田として耕作し得る耕地にさつまいもを栽培する。さつまいもはまだ供出の對象になつておりますけれども、玉ねぎのごとき、あるいは砂糖きびのごとき、供出の對象にならないものをつくる、もとより經濟生活をしておるところの農業者でありまするから、その利潤を追求することは當然であります、一段歩の耕地より收益をいくらかでも多くあげようとするのはこれは當然でありますが、この食糧危機を突破しなければならぬ時期において、そういう政府の意思に反した行為に、途儀なくか、作為的にか、出るというようなことは、まことにこれは政治の貧困なところであつて、この供出制度は根本的に改正しなければならない、それには立地條件によつてこれをせねばならぬと私は考えておるのでありまするが、農林大臣も供出制度の根本的改正を立案中と言明されておるが、どういう意見であるか。またわれわれが常に叫んでおりますところの、一定の供出を出して、もしその餘剰の食糧があれば、その當人の自由意思によつてこれを政府に賣る。自由販賣をせしめるということが生産意欲を高揚するというように考えられるのであります。今日アメリカより食糧を輸入しております状態において、勝手氣儘にこれを賣らすということは、あるいは買占が行われ、かえつて金ある者がこれを買占めてしまつて、結局金のない者は配給に苦しまなければならぬということになりまするから、私はまず今日の段階といたしまして、ある程度の價格差によつてこれを政府が買上げるということが必然的に起つてくる方法ではないかと考えるのでありますが、農相の所見をこの際承りたいのであります。
 次には食糧食糧對策に對して正確なる數字を把握いたしたい。そうしてその方策をきめたい、かようにお話になつております。これはまことにごもつともです。私は昨年來この農政問題について、いろいろと現在の、あるいは將來のことを考えまして、施策を立てんと考えたときに、ぶつかつてくるのは數字の不明確であります。かつて私は政府に對して正確なる統計をつくれ。あのソヴイエトが大戰後起ち上るときに、四箇年間の統計學校を建てて、統計技師を養成して、そうして五箇年計畫の基礎をつくつたという實例を聞いております。日本が敗戰後客觀的な數字が一つもない。殊に戰爭中秘密秘密という氣持ですべての統計が燒却されておるわけでありますから、それほど正確なものをつかむことができない。たとえば麥の耕作段別にいたしましても、稻の耕作段別にいたしましても、この不確實の數字をつかまえて、どうして現實に合うような政策が立てられるか、われわれはここに惱みをもつておるのであります、はなはだ不徹底であるが、この統計法が昨議會を通過いたしまして、統計調査がやや常軌に上らんとしておるのでありますが、今日のようなあの貧弱な數字においてはどうてしも正確なものを急速につくることはできない。かようにわれわれは思うのでありますが、農林大臣はどういう方法手段によつて、正確なる基礎をつかまんとされているのであるか、この點を一つ承りたいのであります。
 次は今責任をもつとお話になりました、食糧緊急確保對策の十二項について、二、三お尋ねをいたしたいと思います。輸入食糧の殺到と麥、芋の輸送確保の計畫的能率的の運營ということが第二項に揚げられておりますが、この御趣旨をいま少しく具體的に御説明を願いたいと思います。
 次に第三項として緑故小包米の供出を揚げられております。今日一一〇%の供出をさせられた場合において、生産者のどれだけが緑故米を供出する餘裕ありとお考えになつておられるか、現に卑近な例を申し上げて失禮でありますが、滋賀縣のごとき、私の家といつてもいいのでありますが、八月いつぱいの保有米はようやく確保いたしまして、九月以後はすつかり供出いたしております。それが滋賀縣におきましては大體の状勢であります。おそらく各府縣におきましても、一一〇%の供出のために十一月の端境期までに、自分の取上げるさつまいもを豫定しなければ、保有食糧というものはとうてい確保できないと考えております。このときに緑故米を出し得るところの余力ありと政府側では認められているかという點であります。また緑故米の小包輸送は、その價格の點において自由販賣と認められると考えられるのでありますが、この點についてのお考えを承りたいのであります。
 それから魚類蔬菜等の即賣をする。第七項には代替配給の制度を設けるということを揚げてあります。日本人はかつて、戰爭前には二四〇〇カロリーをもつて、必要カロリーとされてあつたのでありますが、今日は敗戰國の悲しさに、最低限度の一二〇〇カロリーをようやく、補給されることにわれわれは甘んじなければならないのであります。ただ二合五勺の配給をいたしました場合、その二合五勺の主要食糧、いわゆる米麥によらずして、あるいはさつまいも、あるいはじやがいもをもつて補う、さらに今囘政府は魚類をもつて、あるいは蔬菜をもつて二合五勺の配給を代替してゆこうと考えられるのでありますが、そういう場合において、どういう計算によつてこのカロリーを出されるのか、米一升に麥なんぼ、芋なんぼということが、今日まで代替供出で認められているのでありますが、米一升に對して玉ねぎがなんぼ、あるいはするめがなんぼというようにカロリーで考えられるのであるか、そういうふうな數字をどういうようにして積算されるつもりであるのか。あるいは六大都市に對しては主要食糧の代替配給を行う。酒であるとか、あめであるとか、ズルチンであるとか、あるいは砂糖であるとか、タバコであるとかが揚げてありますが、主要食糧がさようなものによつて代替し得られるのであるか、私は六大都市の方々は、飯を食わぬでズルチンなめてそれでいいであろうかということも、はなはだ奇異に考えられるのでありますが、今日の食糧事情はさようなことを許される事情にない、かように考えられるのであります。この點についてこの十二項目の中に加えられました所見を承りたい。またその中に幼兒食糧の確保ということが揚げられてあります。私はこの乳兒に對する手當ができませんので、せつかく生れては死に、生まれては死ぬ、あの乳兒が死ぬことによつて親が苦しみ、悲しむということを考えますと、榮養不足の結果と考えられるのでありますが、もう一歩進んで妊婦に對して榮養の補給の途を考えるということが、生れた弱い子供をりつぱに育てるというよりも、むしろりつぱな子供を生むようにして親をして榮養をとらしめる。こういうようにもう一段先のことを考えるのがいいのではないか、かように考えるのでありますが、これに對する所見はどうでありますか。
 次に自給農園の擴充ということが十一に揚げられております。これは燒け跡等の自給農園が相當數に上つております。これは東京都における食糧對策について、いろいろと構想を專門的に研究されておる方もあるのでありますが、せつかくこの建築までの燒け跡を、もつともつと有利に利用するということがこの方針と思うのでありますが、その制度がただここに作文せられてあるだけであつて實現し得ない。この燒け跡の耕作は、われわれ見ましたときに、實にりつぱに專門の農業者を負かすような作柄もありますし、またほとんど人まねに作づけて何ら收穫のできないようなもつたいない結果を見ておるものもあります。これは肥料がめちやくちやに使用される。いわゆる肥料をほどこすところの技術に缺けておる。肥料は相當自給し得る立場にある人が、つまらないやり方をして、せつかくのものをだめにしておる。また栽培の方法を少しも辨えない。ただ人まねばかりの栽培をしておる。もう少し手をつければもつと生産されると考えることも、その手當ができていない。結論において技術の指導がないのであります。せつかく自給農園を擴充するというよりも、むしろりつぽなものに、能率をあげるという上において技術指導が私は必要であろうと思う。こういうふうなお考えがあるか。ただ十二項目を羅列されまして、そうして食糧緊急對策として揚げてあるのでありますが、その内容をもう一段つつこんで御説明を願いたいと思うのであります。
 次にこの緊急對策の一般農業者に及ぼす影響でありますが、今どうか米を早く出してくれ、救援米を出してくれという氣持から、いろいろの條件がつく、酒をやる、タバコをやる、あるいは値段を上げる。こういうようにそれからそれへといろいろの手段が講じられてまいるのでありますが、こういうふうなことは今一時はそれによつて効果をあげるかと存じまするが、その結果非常に將來惡い。たとえば米を供出する場合においてもまじめに早く出したものは、價格の上においてはさかのぼつて清算されるので間違いはないようでありますが、あとから出せばいろいろの條件がよくなつてくる。こういうふうなことに考えるから、なるべく供出を遲らせばいいのではないか、ずるくやればまた政府がタバコをやる、酒をやるといろいろのことを言うてくるからというように、惡い影響を將來に殘すのではないかと考えます。これはかつて戰爭中にあつた金屬囘收の例を引いてみたいと私は思います。第一囘に金屬を囘收する場合において、鐵は、しんちゆうは、赤がねは、すずはというので、一應の價格を表示されて愛國心によつて出した。ところが第二囘の金屬供出になると、第一囘よりもさらに價格が上つてきたのでばかをみた。やいやい言うて率先して金屬を囘收したのに、第二囘の囘收はまた高くなつた。もちろん戰爭は長期戰爭だから、また言うてくるだろうから出さないでおこう。その次に出せばまた上るというので、この價格の改訂のために金屬囘收がだんだん遲れて、戰爭に間に合わなかつたように聞いておる。私はこの緊急對策のやり方が、供出なり生産の將來に惡影響を及ぼすと思う。また今日の農村に對して、酒をやるから、タバコをやるからというようなことによつて、生産や供出をせしむるというこのやり方は私はよろしくないと思う。根本的に生産者は國家の重大な責任をもつて、食糧生産をしておるのだから喜んで供出するのだという氣持に、政治を差向けなければならぬように私は考えるのでありますが、御所見はどうでありますか承りたい。
 次にお尋ねいたしたいことは、供出に對して農民になつとくをいかしめるということであります。今囘米價の豫想をどうおもちになつておられるか。先般麥、じやがいもの價格が定まりました。それはパリテイ式の計算によるということでありますが、百姓はわかりません。ハイカラな、なまいきな事柄は知りません。何が何だかわからないが、これだけに麥がなつたのだ、じやがいもがなつたのだ、しかし肥料は二千六百圓の窒素肥料が六千圓にも八千圓にもなるそうだから、麥の値段を上げても、米の値段を上げても、結局金を余計勘定するだけで、生産者には何ら利益がない。ことにパリテイ式などというわけのわからないものでごまかされた氣持がある。もとより魚にしても米にしても農産物にしても原始生産でありますから、原價計算ということはこれは不可能であります。一軒一軒、一人々々違うのでありますから、原價計算によつてやるような第二次生産物と違いますので、そこに無理があります。無理がありますけれども、農産物の價格をきめられるには、もつとこれならこれくらいでいいだろうという生産者のなつとくするような方法を考えていただきたいと思う。よしパリテイ式によつてきめられるにいたしましても、その價格が生産者に滿足を與えるというふうな手段に出ていただくことが必要と思うのでありますが、御所見いかがであるか。
 次にお尋ねいたしたいことは、本年度内の輸入食糧をどの程度にお考えになつておるか。あとでこれは申し上げますが、吉田内閣のときには二百萬トンの輸入を豫定された、こういうようにお話になつたようでありますが、私の計算によりますと百三十萬トンばかりの輸入で大體需給推算ができた、かように考えておるのでありますが、本年度の食料に對してどういうふうにこの輸入を今後お考えになつておるか、この點を承りたい。また報奨物資等に肥料をやる。あるいは蔬菜の確保に肥料をやる、肥料を非常に配給するようにお話になつておりますが、今は肥料の生産は商工省に移つておりまして、農林大臣といたしましてはこの需要量を定めることと配給だけの責任になつております。農林省は考えておられるだけの肥料を責任をもつて商工省が生産しますか。これは一つの政府でありますから、政府の責任でありますが、おそらく私は今日の石炭事情から申しましても、あるいは鐵鋼材の需要から、また電力の需要から申しましても、豫想通り農林省の考えておられるような肥料の生産は不可能ではないかと心配するのであります。これは心配してお尋ねするのですが、決して心配しなくてよい、農林省の約束した肥料は必ずやるということをはつきりと言明でき得ますか。この點を私は伺つておきたいのであります。
 それから食糧問題の現状につきまして非常に御心配になつておられることを私はお察しするのであります。しかし物は出れば餘る。爭えば足らずで、今日食糧が足らぬ足らぬと言い出しますと、ますます足らぬようになるのではないか。先般の本會議の自由討議において、從來の政府は秘密主義であり、國民に眞實を知らすな、知らさぬがよいのであるというような意見も出ておりましたが、私思い起すのに、二十年の十二月に、當時の内閣が農村に供出をどうかしてくれ、供出をしてもらわなければ一千萬人の餓死者が二月頃にはできる。どうか農民諸君、食糧を供出してくれということを澁澤大藏大臣が發表いたしました。それからやみが始まり、リユツクサツクを背負つて汽車の窓をたたきこわした。これは政府の言明からである。いよいよ二月になれば一千萬人の餓死者ができる。それでその一千萬人の中に入つてはたいへんだというので、汽車の窓をこわし、やみが始まつた。これが元祖である。神經をあまり細かくして、端境期までは二十何日の缺配を餘儀なくされる、こうしなければならない、ああしなければならないと政府から言明されますと、いよいよ國民はいら立つてじつとしておられない。今のうちに確保しなければならないということになつて、ますます食糧を窮屈にする。それがために東京では當時米のやみは七十圓と聞いておりましたが、今日は二百圓でも買えないということになつておる。こういうようにますますあるものを爭つて缺乏に導くのではないかと考えるのであります。この機會に私は二十二年度の食糧事情について私の考えておりまする數字を申し上げて、農林大臣のお考えと合うか合わないか、一つ承りたいと思うのであります。これは平野君も私と同じように、その當時和田農相から示された米穀の需給推算の根據であります。昨年の五月一日の人口は、七千七百八十一萬四千人でありまして、そのうち一般消費者が四千五百六十二萬八千人、それに二合五勺の配給をいたしますと三千八百五十一萬三千石が要る。勞働者として加配すべきものが七百五萬四千人、これに平均一合七勺の勞務加配をいたしますと三百九十四萬二千石が要る。また生産農家の保有量の不足するものについて、これに二合五勺の配給をしなければならないのですが、その不足者は百六十六萬一千人ですから、これに二合五勺を配給するとして三百六十七萬三千石、そのほかに復員者あるいはさらに政府手持ちとして九萬三百石、合計四千六百二十一萬八千三百石というものが二十二年度の食糧として要るのであります。今日は申し上げるまでもなく、二十二年度の食糧はすつきり確保する時期に入つております。すなわち去年の米はとれておりますし、さつまいももとれております。今年の麥も馬鈴薯も割當はできました。それを見ますと、米、雜穀は二千八百六萬三千四百石の供出であります。これが一〇〇%の供出であります。次にさつまいもがとれておりますが、總合食糧に廻わしますのは四億三千七百五十萬貫、これを米に換算しますと四百十萬五千石、これは新聞の發表を根據として申し上げるのであります。麥の供出割當は北海道、青森を除いて、四百九十六萬七千九百八十石、馬鈴薯は六億三千四百十九萬貫、これを米に換算いたしますと、七十四萬五千五百石ということになつております。さらに前内閣が追加供出の要求をしたのではありません。これは大臣のいつかのお言葉にもあつたようでありますが、五千七百五十萬石を政府が豫想したところが、關係方面の調査では七千百萬石からになる。そこでまだ一割の供出の餘裕があるということで、一割の供出をさらに政府は考えたのであります。それから雜穀があるために二百五十萬石に一割の供出を見ておるようでありますが、それがこの間の新聞によりますと、百六十七萬石しかいまだに供出ができていない。それで一〇三%に頭を打つておるということでありますが、これは是が非でも一一〇%の供出をせしめなければ、横着をしておればもう出すことはいらないということになりますから、これは必ずおとりになるものと見ますると、合計四千三十八萬一千八百八十石になる。そうすると先ほど申しました需要量から差引きますと、不足量は五百八十三萬六千四百二十石になるのであります。これに一月以來の輸入食糧の放出量を合せますと、一月が五萬五千トン、二月が八萬七千五百トン、三月七萬五千トン、四月十萬四千トン、五月十六萬七千五百トン、六月上期十一萬五千トン、下期が十三萬一千トン、七月上期が十萬八千トン、總計八十四萬三千トンの放出を得ておるのであります。そうしますとこの不足額五百八十三萬六千四百二十石、これをトンに直しますと八十九萬七千百四十トンになります。そうすると農林大臣が非常に御心配になり、十一月の端境期までに二十日も缺配をしなければならないというような數字は出て來ないと私は思うのであります。このくらいのことならば何とかして切抜けることができるのではないか。大臣は配給量は切下げぬというが、缺配は約一箇月ある、切下げと同じではありませんか。こういうことを發表すればするほど國民は心配する。推算需給からいえば、いま少し關係方面とお話願つて、八十九萬七千百四十トンの今年の足らぬものについては折衝を重ねていただくならば、さほど食糧問題は心配することは要らぬと存ずるのであります。今日の經濟新報によりますと、井上政務次官が京都へ行つて、十一月からは三合配給するというようなことを言うておられるのでありますが、これまた新聞記事でありますから責任はとられぬかもしれませんが、そういうようなことを言うということが、食糧問題を政爭の具に使うということになりはしないか、こういうことを考えるのであります。それから今後の缺配はなお恐ろしくなる。今までは缺配が續きましても、やみ行為が自然に行われておる。これは政府も認めておられだと思う。それだから何とかかとか食糧不足を切り抜けましたが、嚴重にやみ取引を取締つていけば、そうして缺配がくれば、死ぬか、どろぼうして生きるよりしかたがない、ますます世相は惡化することになると私は思う。これらの問題について、一つ農林大臣のほんとうの心持を聽かしていただきたい。
 そうして最後の結論にはいるのでありますが、日本の人口が二十五年度においては八千萬近くなるというような推定もされておるのであります。ただいままた和田長官は、今後の日本の貿易はできるだけ工業原料を輸入するようにして、そうして食糧はできるだけ自給自足の方向に進まなければならぬというお話でありましたが、私も同感であります。なるほど領地を失つて四つの島になつて、日本は人口を多く擁して、生産の立地が少いのでありますけれども、日本の工業を興すその原料をまず第一に入れて、そうしてわれわれの食生活を根本的にかえて、胃擴張になつておるこの國民の食生活を次代の國民からでもかえて、米や麥を腹一ぱい食わなければ生きていかれぬという國民でないようにして、自給自足の途を立てて、そうして工業原料をどんどん外國からもらつて、そうして日本の商工業の發達をしていかなければならぬと思うのでありますが、この人口問題と農村對策について大臣はどういうようにお考えになつておられるか、この點を承りたいのであります。
 それから最後に今小林君の御質問に對して、農林大臣が蠶絲業についてお話になりましたが、これは非常に重大な問題であります。日本の養蠶を外國あてにするか、國内あてにするかということをきめなければならぬ。かつ優良な絹糸でなければアメリカは今欲しがりません。ナイロンが相當進んでまいりましたから、日本の絹糸の優良なものをわずか欲しいというのがアメリカの偽らざる言葉でしよう。まだ為替レートがきまつておりませんから、價格の點もありましようが、日本には將來において養蠶をやつていかなければならない條件がある地方があります。この養蠶を外國向きにいくのか、内地向きにいくのか、これをきめることによつて養蠶の手段が非常に違つてくるのであります。戰爭中短繊維等が起りまして、そして日本内地の衣料の原料として行われた。これが輸出になれば靴下が第一の目的である。その靴下がナイロンに抑えられて、アメリカへは優良な糸しかいかない。あとの糸は、綿糸のない日本としては、日本人個人の衣服に廻される。これは羊毛代用として考えていかなければならぬ。そうすると養蠶の品種から、飼育方法、製糸の加工方面等、すつかりこれが變つてくる。それを左に行くか、右するかという非常に重大な岐路に立つのでありますから、政府は養蠶業の將來に關して、はつきりと目途をきめて政治を行つて、養蠶家を迷わしめないようにしていく必要があると思いますから、この點については十分愼重な立場で、政府の所信を發表していただくことが必要である。かように考える。はなはだ長くなりましたが、なおいろいろの問題については次の機會にお尋ねすることにいたしまして、とりあえず食糧問題を中心といたしまして、農林大臣のただいまの御心境を承りたいのであります。
#20
○平野國務大臣 森君から御質問に相なりました點は十七項目に及んでおりますので、一つ一つを詳細に申し上げますと、非常に時間を要しますので、はなはだ失禮でございますが、きわめて率直簡明に、一應お答えをいたしまして、なお御不滿がありましたならば、さらに御質問を受けたいと思います。
 第一點の就任したときに私が數字を見て驚いたというのは、一體どういうことか、これは率直に、私はかように政府の手持米がほとんど皆無に近くなつておるとは思つておらなかつたのであります。それから森君のお述べになりましたように、大體われわれが了承する食糧の數字というものは、そんなに心配がないと思つておつたにかかわらず、遲配缺配が先日本會議で申しましたように非常に多いということを見て、實は驚いた。驚いたけれども驚かないような顔をしてやるのが、あるいは森君御指摘のような政治家態度であるかも知れませんが、私は非常に自分としては良心的に考え、かつ責任を感じました結果、これは正直に、率直に明るくやるより手がない、こういうことをまず就任と同時に考えましたので、實は驚いたことは正直に驚いた、かように申したのでありまして、決して他意がないということを御了承願いたいと思うのであります。
 第二點の、第三項土地改革をやるかどうかという御質問でありますが、私は土地改革に關しましては、在野當時に考えておりましたことと、現在農林大臣になりまして考えておりますことについても、何ら一つも變つておりません。問題は現在第二次土地改革案というものは進行の途上にありますので、一應段階といたしましては、この第二次土地改革案というものを速やかに實行する。しかして第二次土地改革案というものが一應切りがついたところで、第三次を考えたい。かように考えておりますので、土地改革の理念については、何ら變化をしておらないということを申し上げたいと思います。
 第三點の農業經營の變化ということについて、どういう考え方をもつておるか。これは私といたしましては、自作農の上に立ちました有畜機械化農業というものが、大體日本の農業の現段階において考えられる構想であります。もとより機械化については動力機械を用うることも當然であります。經營の方法といたしましては、常に申し上げておりますように、多角經營的に、かつ主體的なる形態をとつて日本の農業を指導することが、世界農業の水準から正しいところの日本農業形態と思つておるのであります。
 第四點の、供出制度の根本的改革はどういう考え方か、これは現在研究の途上でありますので、決定的なことを申し上げますのは時期が早いと考えますが、大體自分の考え方を正直に申し述べますならば、從來の供出制度が、できた生産高を目當にして供出割當をきめる。このことは農民諸君から言えば、餘計つくれば餘計供出がかかつてくるということを考えるのでありまして、この制度はよくないと思います。從つて供出制度はできるだけ早く割當を實行するようにいたしたいと思います。その考え方といたしましては段別、地方、肥料、作物の種類、家族の人員數、こういうようなことが基本的なる數字となりまして、農業の生産状況というものの實態を調査した上において、その農家々々の供出分というものを早目に割當てていく。その早目に割當てましたものをもつて、責任供出制というものを確立いたしたい。それから昨日も参議院において申し上げたのでありますが、その責任供出を果した以後の農民の供出については、これは特別高く買上げるとか、あるいは相當の報奨の制度をもつて報ゆるという特別の制度を講じたい。かように私としては現在考えております。これを基準といたしまして一定の成案を得て、なるべく今月中に一案をつくりまして、皆さんに御相談をしたいと思つておるような次第であります。
 第五の御質問でありまするところの、正確な農業統計を握らなければならぬという御質問はまつたく同感であります。このことは私も現在非常に苦心をいたしておるのでありまして、今議會に提案せんといたしまする農業生産調整法、これは約十億近い豫算を査定いたしておるのでありますが、この農業生産調整法によりまして、日本の農業の現在の實態を把握して、その實態を把握した數字の上に立つて日本の農業の政策を立てていく、かように考えておるのであります。
 次に緊急對策についていろいろ内容的に御質問がありましたが、これらはいずれも相當に考えまして私どもの案を立てたことでありますので、大體實行可能なる案であると確信いたしておるのでありまして、決して作文に終らしたくないと思つております。
 緑故米制度を考えたことについて、農家の現在の保有量をどれくらいに見ておるかという御質問でありますが、現在農家は昨年の米をいくら保有しておるかということる算定することは理論的には困難であります。困難ですが、農民諸君に米があるかと問えば米はないと答える。絶對ないかと言えばそれはある。ここに現在の農村に米があるかないかということの微妙な問題があるのであります。そこでその意味は、政府がかすに手段と方法をもつてすれば、なお昭和二十一年産の米というものは相當に吸収できるという觀點のもとに、あるいは緑故米制度、あるいは物資とを交換いたしますところの特別緊急制度、あるいは御反對がありましたけれども、酒であるとか、タバコであるとかいうようなものとも、ときには引換えてでも米を得るというような、代替制度というようなことが現在頭に浮かぶのでありまして、このことは現在の理論的なる供出制度の上においては矛盾する部面がありますけれども、しかしこの危機を突破する非常手段としては、多少理論に相反することがありましても、この際斷行しなければならないと考えて、この緊急對策として閣議決定を得たのでありまして、この點ひとつ御諒承願いたいと思います。
 乳幼兒に對する牛乳の配給が豫定通りいくかどうかという御質問であります。これは現在の一合五勺の配給を二合五勺にいたしますについては相當に檢討を加えたのであります。もしこのことが實行できないということでありますると、非常に重大でありますので、保管に對しましては、十分二合五勺配給ができるかどうかということを何囘かにわたつて念を押しました結果、大體緊急對策に盛りました乳幼兒の牛乳増配ということは、可能であるという結論に達しましたので發表いたしたのであります。大體この通り實行いたしたいと思うております。
 自給農園の、東京におきますところのいわゆる家庭菜園について、相當專門的なる技術官を置いて指導したらどうかという御説でありますが、これはごもつともであると思います。しかしさように計畫的に組織的に行えるかどうかということについては、十分まだ成案を得ておらないのでありますが、これは御意見といたしまして十分拜聽いたしておきたいと思います。
 次にお述べになりました、現在かような緊急對策を政府が行えば、供出制度が混亂に陷つて來年の供出については――來年と言いますか、今年の秋の供出制度については相當弊害を生ずるのではないかという御質問でありますが、これはごもつともであります。われわれもこの案とつくるときに、たとえば緑故米制度であるとか、あるいは肥料と米とをリンクするとか、あるいは酒をやつて米をとるとか、タバコと米を取換えるというようなことはよくないことである。こういうことは供出制度というものを理論的に考える場合におきましては、ある意味においてはむしろ避けなければならぬ。殊に米と肥料をリンクするということはよくないと深く考えたのであります。でき得ればかようなことはいたしたくなかつたのでありますが、しかしこの十月末の危機を突破する上においては、どういう方法でも考慮しなければならないという、背に腹はかえられない立場においてかような對策をとりましたので、この點は御指摘の通り相當矛盾もあると思います。しかしこのことを補うためには、先刻申し上げましたように來米穀年度からは供出制度というものは根本的にかえて、新しい制度を採用することによつて、現在行つておりますところの矛盾の政策は清算していきたいと思つております。
 次に今年の秋の米價の豫想を言えというお話でありました。米價問題は非常に微妙でありまして、殊に農林大臣自身に決定權がないのであります。これは安本その他の關係が非常に重大でありますので、今ここで私が米價の豫想をはつきり申し上げるということは差控えたいと思います。しかし概念的に申し上げてよろしいと思うことは、大體今囘決定をいたしました麥、馬鈴薯を基準として一應米價が考えられることは當然であります。しかし現在の物價水準とこの十一月の物價の間にはさらに相當の變動も豫想せられますので、現在の麥、馬鈴薯より上まわることはあつても下まわるものではない。こういうことは申し上げられるかと思う。ただ常に農家の希望するような、いわゆる高米價政策がとれないのは、現在あらゆる物價の基準をなすものが米であつて米を基準として現在のインフレを防ごうというような考え方があるために、米價問題はなお相當むずかしい問題をはらんでいると思います。しかし米價の決定にあたつては、きわめて愼重な態度をとつて、農民諸君の期待を裏切らないように、農林大臣といたしましては善處をしたいと思つております。
 次に輸入食糧の見透しを言えというお話でありますが、これは本會議において申し上げましたことと現在何ら變化はありません。森君は二百萬トンの輸入食糧というものは前内閣時代必ずしも豫想しておらなかつたという御意見がありましたが、私、農林大臣に就任をいたしまして、現米穀年度内における二合五勺配給の基本をなすところのものは何かということをはつきり檢討いたしました結果、二十一年産の米の一一〇%と今年の麥と輸入食糧二百萬トンというものが二合五勺配給の裏づけにはつきりなつている。從つてその裏づけの大きなる柱である輸入食糧二百萬トンというものが、豫想の約四分の一くらい程度はどうしても輸入困難だということに立ち至つておりますので、ここに食糧事情に大きなる違算を生じたと言わざるを得ません。しかしこのことは連合國の最高司令官においても日本に對して多大の盡力をされていることでありますが、遺憾ながら世界食糧全般の事情等により、日本におきましても相當困難なる状況であるということは申さなければなりません。しかし私どもといたしましては、最後までこの輸入食糧の懇請に對しては、農林當局あげてほとんど連日懇請に盡力しておるということを申し上げて置きたいと思います。
 次は報奨物資の肥料をやることはいかがかという御發言であつたのでありますが、これは先ほど申し上げたことによつて盡きておりますので、御了承願いたいと思います。
 次にお述べになりました森君發表の現二十二米穀年度内におきまするところの需給の數字は、私もかつて衆議院の飼糧對策委員會におりました當時、森君と同様了承しておりました數字でありまして、森君のおつしやる數字が間違つておるとは申しません。ただ私が農林大臣に就任をいたしまして、實際の米びつを見ますると、森君がお述べになりましたような、われわれが當時衆議院食糧對策委員會の考えておりましたような數字が現實裏切られておりました。明らかに遲配、缺配は續いておる。もう一囘繰返して申しますと、五月末日の全國平均の遲配が八日、六月末日の遲配平均が十二日、かようにどんどん遲配の傾向が進みつつあります。しかもそれでは七月から十月までの需給推算はと計算をいたして見ますると、議會の本會議において私が申し上げましたように、今後約十六日の遲配をせざるを得ない。かようなことに相なりまするので、私はこれまた正直に本會議の議場において發表をいたしましたので、現在から申しますと、率直に言えば、私自身が農林大臣となつて、現在の食糧管理局の事務當局自身について調べ上げました數字は、これは現在の段階においては正確な數字でありますので、この數字について御信用を願うよりいたしかたないと思います。ここで森さんにお答えいたしたいと思うことは、平野君はかような正直な數字を發表するから、むしろ食糧不安が起るのではないか。二十八日も遲配が續くというから、やみ買いが起り、買いだめが起り、混亂するのではないかというこの御指摘については、私もこの數字を發表いたしますについては、二日も三日も非常に考えました。同時に周圍の事務官その他ともいろいろ檢討を加えました。しかして私はどういう結論に達したかと申しますと、かような重大な責任の立場に立つておるものが誤つた嘘の數字を言うことによつて、政治的にかような買いだめ等を防ぐということから起るその弊害と、正直にものを發表してから起る弊害とは、これはやはり正直に發表してから起る弊害の方が少いと考えるにいたつたのであります。今後社會黨を中心といたしますところの内閣の百般の施策に關しましては、これはいろいろ御議論があるところかとも考えまするが、われわれはあくまで正直な數字を發表して、できるだけ國民の前に内容を明らかにして、その明らかにしたものの上に立つて、できるだけの對策を講じて、そのことから國民の協力を得て、すべての政策をやるということの心構えを、單に食糧問題のみならず、あらゆる政策に關する基本的なわれわれの態度でなくてはならぬ。かように考えておるのでありまして、かような正直な數字を發表することによつて食糧政策は混亂に陷るのではないかという御質問に對しましては、遺憾ながら私は多少見解を異にいたしておるのでありまして、この點一つ御了承を願います。とともにわれわれの方針に對して一つ御協力を願いたいと尋ねてお願いする次第であります。
 最後に生糸の問題について再度御質問がありましたが、私は蠶絲業問題に對しては、いまだ農林大臣として責任ある明確なる態度は發表しておらぬのであります。これは座談會あるいは新聞等の場合において、先方から外國貿易が開かれれば生糸は飛ぶように賣れるのではないかという質問があるから、そうは簡單にいかぬ、こう考えている。このことは生糸を外國向にするか日本内地向として、將來繊維の資源として考えるかという問題は、今簡單に農林大臣就任一箇月くらいで決定しかねる複雜な問題でありますので、私はこの問題に關する限りはいま少し檢討の機會を加えた上で、日本蠶絲業の前途と將來について態度を表明したいと思います。以上まことに廣汎なる森君の質問に對して、きわめて簡單なるお答えでありまして恐縮千萬に存ずるのでありますが、一應私の答辯といたします。御不滿の點については再度御質問を得てお答え申し上げたいと思います。
#21
○森(幸)委員 もう一言最後に大臣にお願いしたい。政治をとる上において國内事情を赤裸々に、正直に國民に訴えて、そうして國民の協力を俟つ、まことにいいことであります。私はそれに根本的に反對するのではありません。ただ今日の食糧事情につきましては、數字において二百萬トンの輸入が豫定されておつたとお話になりますけれども、われわれの示された數字によりますと、結局今年の實收によつて五百八十三萬六千四百二十石の不足しか出てこない、すでに今日まで放出輸入によつて八十四萬三千トンができておる。それであるからそこまで國民に重大なる危局の觀念をもたせなくても方法があるのではないかと考えさせられるのと、そうして内容を明らかにするのは決して私はいけないというのではない。内容を明らかにするとともに、しかし心配するな、こうしてこれを救濟する途があるのだ、この對策を同時に立てなければならぬと、かように私は考えるのであります。ただ食糧は危機だ、十月になるとこうだというだけではなく、それに對する施策が同時に發表されなければならないと私は考えておるので一言申し添える次第であります。まだ御答辯につきましてももう一度お伺いした點もいろいろありますが、また機會を得まして膝つき合わせての御相談をいたしたいと思います。
#22
○野溝委員長 では本日はこれにて散會いたします。
   午後零時二十八分散會

ソース: 国立国会図書館
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