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1953/05/29 第16回国会 参議院 参議院会議録情報 第016回国会 労働委員会 第2号
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1953/05/29 第16回国会 参議院

参議院会議録情報 第016回国会 労働委員会 第2号

#1
第016回国会 労働委員会 第2号
昭和二十八年五月二十九日(金曜日)
   午後二時二十五分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     栗山 良夫君
   理事
           井上 清一君
           田村 文吉君
           田畑 金光君
   委員
           宮澤 喜一君
           阿具根 登君
           上條 愛一君
           寺本 広作君
           市川 房枝君
  国務大臣
   労 働 大 臣 小坂善太郎君
  政府委員
   労働政務次官  安井  謙君
   労働省労政局長 中西  実君
   労働省労働基準
   局長      亀井  光君
   労働省婦人少年
   局長      藤田 たき君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       磯部  巌君
   常任委員会専門
   員       高戸義太郎君
  説明員
   労働省職業安定
  局失業対策課長  澁谷 直藏君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○労働情勢一般に関する調査の件
 (労働行政一般に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。
 本日は先ず先般議長の承認を得ました労働情勢一般に関する調査といたしまして、小坂新労働大臣から、労働行政一般についての所見を聴取いたしまして、そのあと労働大臣及び政府委員に対し何か御質疑がありますれば、適宜御質疑をお願いすることにいたしたいと存じます。それでは先ず労働大臣から、労働行政一般についての所信を聴取するごとにいたしたいと存じます。
#3
○国務大臣(小坂善太郎君) この機会におきまして、私所管の労働行政につきまして、所信の一端を申述べたいと思います。
 昨年の四月、国民待望の独立を回復いたしまして以来、日なお浅い今日、複雑な国際情勢と困難な経済条件の上に処しまして、経済の自立を達成し、産業の交流を図り、真に独立の実を挙げまするためには、労働関係の面におきましても又解決を要すべき問題が多々あると存ずるのであります。経済の自立と産業の興隆を図りますためには、何と申しましても職場におきまして生産に携りまする労働者の生活を安定し、労働能率を高揚しなければならないのでありまして、従つて私といたしましても、労働行政の全般を通じまして、国民経済の発展の段階に即応いたしまする労働者の生活の安定と福祉の増進を図るべきであると考え、この面におきましてでき得る限りの努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
 この見地からいたしまして、先ず第一に重要な問題は、労使関係の安定を図るということであります。労働組合が健全な組合活動を通じまして、労働者の労働条件の維持向上を図りますることはもとより極めて望ましいことでありまするけれども、同時に工場、事業場におきまして公正にして且つ安定した労使関係が確立されるのでなければ、生産増強は望み得ないのみならず、延いては労働条件の維持向上も労働者の生活安定も困難になると考えるのであります。労使関係の安定のためには、先ず労使間におきまして問題の自主的な解決を図られるということが極めて望ましいことであると思うのであります。即ち労使双方が経営の内部におきまするところの自己の職分と責任におきまして、常に責任を持つてお互いに協力して、労働関係から生ずるところの諸問題を自分みずから解決するという一致した、自主的な努力がなければ、労使関係の安定は到底期せられないと思うのであります。そうして双方の主張が不幸にいたしまして調整点を見出すことが困難な場合におきましても、国民経済の現状を認識した広い視野と国民の公正な世論に対するところの良識の上に立つて、いま一度紛争の調停を図り、調整を図るところの努力が望ましいと思うのであります。私は従つて労使双方に対しましてこのような良識を持つて問題の自主的解決を図るよき慣行を確立されるよう強く期待しておるのであります。
 同時に労働省の一つの重要な使命というものは、労使並びに国民一般に対して、我が国の社会的な経済的な諸条件、この現状というものを客観的に分析いたしまして、資料を常に提供し、問題の合理的な解決に資することにあると考えておりまするので、今後この方面の行政の強化を図ると共に、紛争の調整機関であるところの労働委員会の機能の充実を図りたいと考えておるのであります。政府は昨年の電産、炭労ストの苦い経験に鑑みまして、国民の間から澎湃として湧き起つて来たところの世論を背景として、先の国会に「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案」を提出いたして、衆議院において可決されたことは御承知の通りでありまするが、我々今回の政府は、異なつた政府ではありまするけれども、やはり同一基盤の、自由党を基盤しておるのでございまするから、やはりこの問題に関しましても前内閣同様公共の福祉と争議権の調和を図るという考え方の下に大筋は考えておりまするが、なお関係各方面の情勢を慎重に検討いたしましたる上で善処いたす所存であるのであります。
 次に労働基準法の改正につきましては各方面からいろいろと意見が出ております。で、御承知のように日本の国情にふさわしい基準法を作れというような要望もいろいろ私の耳に入るのでありまするけれども、私といたしましては、労働条件の国際的な水準をも考慮いたしたる上に、今後において研究を続けたいと考えておるものであります。従いましてこの特別国会におきましては労働基準法の改正というようなものは考えておりません。なお、当面の問題といたしましては、法律、規則の円滑な運用に特段の留意をいたしますると共に、先に申述べました基本的な方針に即応いたしまして産業災害、職業病の防止と保護、技能者の養成制度の推進、労災保険の給付の迅速化、労務者住宅の建設の促進など、労働者の福祉と労働能率の向上を図る積極面におきまする行政の重点を指向いたしたいと考えておるのであります。
 更に失業問題につきまして一言申述べたいと存じます。朝鮮動乱後、一時的に活況を呈しました雇用情勢は、最近経済情勢の停滞と相待ちまして、必ずしも楽観を許さない情勢にあるのでありまして、失業問題の悪化は経済、社会問題全般に対しましても各称の影響を及ぼすことになると思われまするので、私といたしましては、この問題に対して深甚の注意と努力を払つて参りたいと考えておるのであります。先ず失業の問題は、根本的には産業の振興によりまして雇用量の増大を図ることによつて解決しなければならないと存じまするので、関係各省とも緊密な連繋を保ちまして、総合的経済諸施策の発展に努力しますと共に、失業保険の円滑な運営を期したいと考えておるのであります。又緊急失業対策事業につきましても、年間稼働日数の増加等予算の充実を図ります一方、失業者福祉施設の新設等の施策も考慮して参りたいと考えておるのであります。
 以上所管の行政につきまして所見を申述べた次第でありますが、私は労働省は、労働問題に関しまして関係者に対下るサービス省であるということをその本来の使命であると考えておるという基本的な考え方に立つて、今後皆さんの御意見を十分に伺いますると共に、なお、更に労使、公益関係者の意見も十分に反映いたしましてできるだけ労働行政を新なる観点から展開するための具体的な方策につきましても努力したいと存じまして今後慎重に研究を重ねて、まじめにあらゆる努力を傾けて参りたいと思う次第でございます。皆さんの御叱正を得て大過なきを期したいと考えております。一言御挨拶を申上げます。
#4
○委員長(栗山良夫君) 衆議院の本会議が三時半頃に開会されるようであります。大臣は衆議院の本会議へ出席を要求せられておるそうでございます。から、その間大臣に対しまして御質疑がございましたならば自由に御発言を頂きたいと思います。
#5
○国務大臣(小坂善太郎君) なお、その前に予算委員会がありまして、暫定予算の討論採決、これは二時からになつておりますから、向うではできるだけ早く来るようにと言われておりますので、これも併せて御承知を願います。
#6
○阿具根登君 大臣、時間がないようでありますから簡単に御質問申上げたいと思いますが、只今の御挨拶の中に、労働者の生活の安定と福祉の増進、これがあつて初めて労使関係の安定もできるというようなことを言われたと思いますが、今度そのあとに、前国会からの引継ぎであるスト規制法案を出さねばならないというようなことを言つておられますが、生活の安定、福祉の増進がなされるならば、そういう御心配はないと思いますし、而も去年の暮の闘争のことをお考えになりまして、澎湃たる輿論の下にということを言われましたが、私も公聴会に出ましたが、この公聴会そのものが非常に時期がなくて、本当の輿論を聞いておらない。地元の輿論を聞いてみますと、政府が考えられておるような輿論ではないのであります。而もあのストをやらなければならなかつた状態ということを本当に考えておらない、こういうようなことを私は考えるわけであります。而も炭鉱の労働者にしましても、電産の労働者にしましても、誰一人ストライキを喜んでやる者はおりません。それは大臣が今言われましたように生活の安定、福祉の増進がなされておらないからであります。而もその間にそうならざるを得なかつた理由のあることも当然これから研究されると思うのです。ただ前国会の流れであるし、而も自由党員であるからこれを踏襲するということでなくて、恐らく新労働大臣は、このよつて来たる根本の原因を探究されることと、こういうように思うわけなんです。時間もないので、そういうことはできないとおつしやるかも知れませんが、農林大臣などはいつも自分たちが乗る汽車の中或いは道端で農民の苦労している姿を見ておつても、やはり農業そのものに対して実際の状態を見られるとか、現場に行かれるとかいうことがあると思う。とするならばスト規制法案でも再度出そうという肚がまえがあるとするならば、坑内の、炭鉱にも実際下つて炭鉱の実態を見るだけの気がまえがおありかどうか。いわゆる法を作るとするならば、その法の適用を受ける人の作業の実態、生活の実態等を本当に見極めて後にこそ私はそういう法律をきめるべきではないかと思う。そういう点についてどういう考えを持つておられるか、或いは又これをいつ頃出そうと思つておられるか、そういう点をお伺いしたいと、かように思いますが……。
#7
○国務大臣(小坂善太郎君) 私は筋道をまあ申上げておるつもりでございまして、元来前国会におきまして衆議院において可決されたあの規制に関する案は、ストライキ権を認めないというのでは勿論ないのでございます。勤労者がストライキ権、罷業権があるということは、これは憲法の保障するところでありまして、これは言うまでもないことなんでありますが、あの法律の趣旨というものは、私から申上げるのは釈迦に説法でございますが、一般の公共の福祉からいたしまして、いわゆる鉱山の保安というようなものは、鉱山保安法によつて、社会通念といたしまして、保安が保たるべきものであるということになつておるのであります。その保安要員を引揚げるというようなことの及ぼしまする社会的な乃至経済的な影響というものは非常に大なるものであるとすれば、このことについて一般の常識からしてこれはよくないということであるのでありまするが、それにおいてもなお炭鉱の保安要員という者の引揚げをも考え得るという解釈があるとしてそれを現に実行するという考え方があるとすれば、これは違法であるということを確認しておく必要があるのじやないかと思います。或いは電源ストライキ等につきましても、これは労調法の精神に照して明らかなところでございますが、元来ストライキというものは労務の不提供である、労務を提供しないということが罷業の根本論であります。新たなる労務を加えてこのスイッチを切るというような考え方、それによつて及ぼすところの非常な社会的な公共的な影響というものから見ますると、これ又前段において申述べた保安要員の場合と同様な社会的通念が存在すると私は考えるのであります。にもかかわらず、電源スト或いは停電ストというものをしばらく行なつて国民の生活に脅威を与えるということが許されるものではないということを確認する必要があるという趣旨から出たものでありまして、その趣旨において衆議院の議決を見たのであると考えるのであります。私は大筋といたしまして、こういう考え方について私は同意するということを申しておるのであります。私はこのそうしたたまたま電源に職を得、或いはたまたま鉱山の保安要員たることによつて職を奉じておる人たちが、その地位を極端に利用することによつて大衆に影響、非常な脅威を与えるということは一種の団体利己主義ともなるのであります。そういうことは国民全般の目から見て考え直すべきことではないかということを、法律という形によつて規制するということは、筋としては正しいことである、こういうふうに思つておるのであります。ただそれをこの国会にどう提出するか、こういう問題でございます。これにつきましては労働界の現況、又労働界における指導者たちのお考えもいろいろあるでございましよう。そういうこともいろいろ伺い、はた又国会の情勢等も十分に勘案いたしながら、どういうふうにこれを扱うかということについて慎重な考慮をめぐらしたいと、こういうことを申しておるのでございます。
#8
○阿具根登君 今日は余り討論はやりたく害いと思うのですけれども、大臣がそういう筋を考えて筋を通されるならば、その前に今度は筋を通すべき裏付けがあるはずでありますね。例えばそういうことをやつたならば非常に迷惑をかけるから、できないとするならば、やらないでいいような方法を考えられておられるものと思うのです。そうしなければ、基礎産業に携わつておる者はいつも犠牲になつて行かねばならない。そのために基礎産業をやつておる石炭労働者、電気労働者がどういう仕事をしておるか、どういう生活をしておるかということを見られて、そうしてこの生活で君たちがやるのは余りに贅沢だというようにお考えになつたのか、或いはここまで押し詰められた労働者の生活というものは、今大臣がおつしやつたように生活の安定もないし福祉の増進もないし、非常に自分の体を危険にさらされてやつておる。これに対する裏付けがあつてこそ私はそういう筋ということも一応出る言葉ではないか。ところがいつも労働者のそういう争議までしなければならないような悲惨な仕事をしておる労働者の生活を考えれずに、ただその筋だけを通されるとするならば、私は何も労働者の生活安定とか福祉の増進とかいうものは、考えておらずに一方的に法で労働者を弾圧せんとする法律だと断ぜざるを得ないのでございますが、その点はどうお考えですか。
#9
○国務大臣(小坂善太郎君) 私は何も法によつて労働者の弾圧を考えるというようなことは毛頭考えておりません。ただ今申したように国民全体の観点からいたしまして必要であると認められることはやりたい。その場合今の勤労者の生活というものは不当に低いかどうか、こういう問題であろうと考えます。これはでき得る限りよくしなければならない。これは併し、日本の経済全体の復興回復度のテンポによつてそういうものを見合せながら、或る特定のものだけが急速によくなれば、そのしわは他の部分に寄るのであります。申すまでもなく、この国民所得全般から見た国民所得統計というものもやはりこれは考えてみなければならない。
 そこででき得る限り勤労者の所得を実体的に、実質的な所得を上げて行くという努力は払います。併しそれだからといつて今申上げたような法律によつて通念として許されざるような社会公共の福祉に影響を及ぼすようなものを挿入していいかというと、それはいけないのじやないか。これは相対的な問題であろうとも思うのであります。一方においてできる限り勤労者の生活の向上を図るが、併しそれが自分らの満足するまでに行かないから電気を消し、炭鉱が爆発してもかまわん、そういう議論は出て来ないと私思うのです。これはでき得る限り私もいたしますし、それが不満であればストライキというものを十分活用したほうがいい。又政府として労使間の紛争に介入して行こうという気持はないのであります。先ほども冒頭に申上げたように労使間の自主的な解決をお図り願いたいと考える。それに要するところのいろいろの労務の提供、或いはサービスをできるだけよくやりたいと、こう思つておりますが、こういうふうな考えでおるのでありまするけれども、私としまして、非常に今の勤労者が困るかち、だからといつて法律で許されないこともやらしていいと思えという議論にはちよつと納得しがたいところがあるのでございます。
#10
○阿具根登君 そこのとこるがちよつと違うのです。労働者の生活ができないから、法律でまあそういうことをするような結果になるというような言い廻しになるんですけれども、その前に労働者の生活の実態を知つておられないからそういうことを言われると思う。本当にその人たちの生活が増進しなければできないような実態であつたなら、それを先ず直してやるのが私は政治だと思うのです。まあこれで質問を打切りたいと思いますが、やはり新進気鋭の、新聞でも承知しておりますが、新大臣は、私は恐らく自由党の前の政策をそのまま鵜呑みで進まれるとは思はない、思いたくない。一つ新大臣は全労働者のためにそういうような悪法であつたならば、先ずその前に、前の法律が流れたからどうだということでなくて、先ず本当に労働者の生活の実態と作業の実態を一つ十分見て頂いて、それから一つそういう問題に取組んで頂きたい、こういうふうに私は考えておるわけです。非常に生意気を言うようですけれども、一つ労働大臣の椅子を俸に振つてでも全労働者のために御努力願いたい、私はこういうふうに考えます。
#11
○委員長(栗山良夫君) 本日は大臣のほうに政府委員といたしまして、労働政務次官安井謙君、労働省労政局長中西実君、労働基準局長亀井光君、婦人少年局長藤田たき君、並びに説明員といたしまして事務次官齋藤邦吉君、職業安定局失業対策課長澁谷直藏君が御出席になつております。従いまして併せて御質疑を願いたいと思います。
 大臣にちよつと私から伺つておきますが、スト規制法の問題ですけれども、今の大臣の所信を伺つておりますと、前国会に衆議院において修正議決をせられたものをそのまま今国会に提出するとははつきり内容的になかつたようでありますが、その点は率直な御所信はどういうことになつているのでございましようか。大体前国会に修正議決になつたものをそのまま提出せられるほうの公算が多いのか、又内容的にも若干再検討せられつつあるのか、又大よそ国会に提出される時期はいつ頃に予定されているか、その点を御説明願いたいと思います。
#12
○国務大臣(小坂善太郎君) 甚だ御答弁にならないかも知れないので恐縮なんでございますが、率直に申しまして、慎重考慮中であると言う以外にないのでございます。内容につきましても或いは提出の時期につきましても、これは全く慎重に考慮していると申上げる以外にちよつと答弁のしようがないので、こういう答弁ではどうも答弁にならんとお叱りを受けるかも知れませんが、実際を申しましてさようなんでございます。
#13
○委員長(栗山良夫君) ほかにございませんか。
#14
○阿具根登君 政府委員のかたに御質問しますが、今、全国で失業者はどのくらいおりますか、どういう対策を今後考えているか、これを簡単に御説明願いたい。
#15
○説明員(澁谷直藏君) 失業者は公式な統計といたしましては、内閣の統計局で実施をいたしております労働力調査というものがございます。これによりまして完全失業者を申上げますると、昭和二十七年、年間を通じての平均が四十八万六千人でございます。二十八年に入りまして、一月が四十六万人、二月が五十一万人、大体二十七年と見合いで進んで来ておりましたのが、三月に入りましえ六十一万人という数字が出ております。尤も例年この三月という月は、新らしい学校卒業者という現象がございますので、二十七年におきましても三月は一月に比して四万人ほど上封を示しておりますので、そういつた特殊な現象を勿論考慮に入れなければならないと思いますが、いずれにいたしましても三月には六十一万という数字が出ております。四月になりましてどういう数字になりますか、まだ発表になつておりませんが、大体労働力調査によります完全失業者の数はそういう状況でございます。
 それからもう一つ現実に全国の職業安定所の窓口に出頭いたしまして、失業対策事業の対象としてやつております日雇労働者の状況を申上げますると、昭和二十七年の一月が三十七万二千人、これが逐月僅かでございますが減少して参りまして、昭和二十八年の一月が三十三万一千人、二月か三十三万二千人、三月が三十四万六千人ということでございまして、これは朝鮮動乱の勃発以来、一時は四十万を超えたのでございますが、逐月減少して参りまして、大体三十三、四万台を推移しております。これに対する対策といたしましては、御承知のように、先ず、先ほどの大臣の説明にもありましたように、根本的には雇用量を増大する、産業経済政策の面から雇用量の増大を期待いたしまして、そういう面に極力失業者を斡旋するということが基本であることは言うまでもないことでございます。労働省といたしましては、全国に四百二十の安定所がございます。それに約百二十カ所の出張所がございまして、合わせて五百七十の組織網を持つているのでございますが、この全国の職業安定網を活用いたしまして、安定所の窓口に出て参ります求職者を極力そういつた民間の、或いは公共事業というような面に斡旋するということに日夜懸命の努力を続けているわけでございます。それともう一つの対策といたしましては、御承知のように失業保険制度がございます。現在受給人員は、実人員にいたしまして三十五万程度の失業者が毎月失業保険によつて受給を受けている。この失業保険制度を今後とも活用いたしまして、就職に至るまでの間の生活の安定を期して参りたいということは、これは当然でございます。もう一つの対策といたしましては、職業補導事業がございます。これは技能がないために就職ができないという人々に対しまして六カ月或いは一年の短期間におきまして、その当時の労働市場で必要とされると思われるような種目日につきまして技能の訓練を施しまして、それによつて就職を促遅して行く、こういう施設でございますが、これが全国で二百七十カ所の施設を持つているのでございまして、これによります就職の結果は非常に良好でございまして、殆んど一〇〇%に近くこの補導所を卒業した者が就職して参つております。今後ともこの職業補導施設につきましてはその内容を充実する、或いは必要に応じてはその施設を拡張する、こういう方向で参りたいと考えているわけであります。それから最後にそういつたいろいろな手段を講じましても、なお就職ができないという者に対しましては、緊急失業対策法に基きまして失業対策事業を起しましてこれによつて最終的な就職の機会を確保いたしているわけでございます。昭和二十七年度におきましては、この国から出します予算が年間八十億でございます。これが昭和二十八年度、これは流産になりましたのでございますが、二十八年度におきましては約二割の増額を見て九十五億の原案を国会に提出されたわけでございます。不幸にいたしまして現在は暫定予算でございますので、前年度とほぼ同じような枠で操作をいたしておりますが、この失業対策事業は今後の失業情勢の推移に即応いたしまして必要があればこの予算を増額するということで、失業対策費として措置を講じて参りたいと、こういうふうに考えております。
#16
○田村文吉君 今のに関連して伺いますが、内閣の統計で六十一万の失業者が最近にあるというお話でございますが、内閣はどういう数字によつてそういう数字を出すんですか、その算出の基礎をちよつとお知らせ願いたい。
#17
○説明員(澁谷直藏君) これは細かい説明は私専門でありませんのであれですが、抽出調査でございます。全国で一万三千世帯を抽出いたしましてそうしてそれの十四才以上の者四万五千人について或る一つの調査表を作りましてそれによつて働いているか、或いは全然働いていないかということを調査するわけでございます。それでその一万三千世帯、四万五千人について調査いたしました結果を集計いたしまして、これを全国に拡げて見るというので出しておりますのがこの労働力調査の方法によるものなのでございます。
#18
○委員長(栗山良夫君) お諮りいたしますが、今日は労政局長、労働基準局長、婦人少年局長の三局長においで願つておりますので、それぞれ所管の事項につきまして一応お伺いをしたほうがよろしくはないかと思いますが、如何でございましようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○委員長(栗山良夫君) よろしうございますか。それでは……。
#20
○政府委員(中西実君) それでは初めに労政局の所管の概況を申上げます。
 初めに最近の労働事情、主としては労働争議、これを産業別に概況を申上げたいと思います。大体御承知かと存じますけれども、春季攻勢という旗印の下に、この春以来相当賃上げ闘争がございまして、大きな争議といたしましては私鉄、日通、海員等、公益事業として相当実力行使を含んでの争議がございまして私鉄は御承知の通り大手筋一五%、更に中小それぞれそれより下廻つた。パーセンテージの賃上げで妥結をいたしまして、大体中労委の調停案の線で妥結したのでございます。日通はこれも中労委の調停案の一〇%という線で妥結をしております。海員はやり一〇%、なおそのほか鉄鋼関係、これはまだ現在一社ばかり残つておりますが、大体終熄いたしまして、平均いたしまして約九%くらいのベース・アツプ、造船が大体一五%ばかりのアツプで、これも全部まだ片付いておりませんが、個々に妥結を見ております。それから車輌関係が大体九%、機器、電機の関係が約六%平均のアップ率でそれぞれ妥結を見ております。現在なお継続中の争議の主なものを申上げますと、先ず繊維関係で綿紡、化繊、羊毛、それぞれ現在中労委において調停中でございます。綿紡、化繊、羊毛それぞれ要求は、初任給に対しまして二四%乃至二六%アツプという要求でございます。なお麻関係は、これは現在労使双方で交渉中でございまして要求は三八・八%アツプになつております。この調停は非常に事態が困難なものでございまして、そう早急に調停案の提示の運びにはならないのではないか、来月にかかるのではないかというふうに考えられております。それから次に化学関係でございます。すでに大体過燐酸部門におきましては解決を見たのでございますが、なお日産化学、日東硫曹、新潟硫酸等は難航をいたしております。又東洋高圧等がスト権を確立しているという状況で、合化労連の賃上げは更に六月に亙つて相当活溌に行われるのじやなかろうか、闘争が活溌に行われるのじやなかろうかというふうに考えられております。それから紙、パルプ関係で昨今の新聞にも出ておりますが、大体妥結をしたのでありまするが、王子がこの二十六日以降無期限ストに入つております。なお電気関係は先ほど、機器電機大体六%アツプで妥結したものが多いのでありますが、なお軽電機部門におきまして三〇%のベース・アツプ要求、これに対して会社側は国の予算がきまつておりませんので、電電公社の予算がまだはつきりしないというようなことで、会社としてもこれに対して回答の時期じやないということで相当争議は長引いております。最近六百五十円程度のベース・アツプという会社回答が出て来ておりますので、六月上旬頃には大体片付くものじやなかろうかというふうに考えます。次に金属鉱山でありますが、これは坑外の成人男子標準賃金について約四割近いベース・アツプを要求しております。会社は到底現在の業界の事情から応ずることはできないということで、目下交渉は非常に難航しております。これに対して組合側は、六月三日以降十日一区切りとするストを行うということをすでに各鉱山に指令いたしております。更にこのストには最大限の保安要員の引揚げを考慮するということも同時に併せて考えられているようであります。次に官公労関係でございますが、非現業の部門におきましても、大体税込み一万八千八百円平均、最低八千八百円の要求をきめまして今後活溌に対国会、政府闘争をするということにきめているようであります。現業の部門、国鉄、専売、電電、これあたりはそれぞれ大体一万八千円から一万九千円ベースの要求ということで交渉しておりましたが、まとまりませんので、目下公共企業体等中央調停委員会に調停申請がなされておりまして、目下調停が進行中でございます。大体こういう事情でございます。
 なお総評におきましては、選挙、メーデー後、久しぶりで今月初め幹事会を開き、更に最近の評議会におきまして闘争の方針が決定いたしておりますが、差当つて賃上げ要求を現在やつているもののほか、越盆手当ニカ月、要求ということの方針をきめて、全般的な六月中旬春季攻勢第二の山を作るということで、一応各傘下組合に流しているようでございます。
 以上大雑把な労働情勢でございまするが、なお労政局の所管といたしまして労働金庫の関係、現在二十六府県に二十七の労働金壷がすでにできております。これは中小企業等協同組合法によつて信用協同組合として成立しておるのでありますが、それが労働金庫に適用するに不便でありますので、前回更に前々回、二度参議院の議員提出法案として労働金庫法案が出ておるのであります。二度とも流れておるのでありますが、なおそれが今国会に問題になる点だと思つております。更に労働行政の重要な部門としまして労働教育関係、この部門に私ども日頃非常な力を入れておるのであります。特に労働関係講座、昨年東京大学を借りまして相当高度左講座を開きましてかなりの成果を挙げましたので、今年は東京のほか大阪、福岡でも開催するという運びにいたしております。そのほかいろいろな出版物その他で労働教育には相当力を入れてやつておりますし、労政局の予算の大半は労働教育の関係であるというふうになつております。
 極く概略でございましたが労政局の所管の状況について御説明申上げました。
#21
○田村文吉君 ちよつと伺いますが、今の七分とか一割とかという賃金を増額したという理由は、労政局としては美質賃金が下つたから上げたということに御解釈なさつておりますか。そうでなくて大体が低いのを今度だんだん上げるという、いわゆる近頃のマーケツト・バスケツト・システムというか、そういうような意味で上つたのか、その御解釈はどういうふうにおとりになつておりますか。
#22
○政府委員(中西実君) これは事情が非常にまちまちでございまして、各産業、各会社ごとに賃上げを認めた事情が違つておるのであります。労政局といたしましては、結局双方の自主的な誓いでいろいろな諸条件の下にきまつて行くということで、一概にどういう理由で、而もそれがよかつたか悪かつたかということについての批判は実は加えていないのでございます。ものによりましては今おつしやつたように、従来が低かつたから上げたというのもございます。それからずつと横這いであつたのが、その間物価が上つたので上げたというのもあります。それから更には、例えばこれははつきりしておるのでありますが、紙、パルプ関係は、会社の支払能力が相当あるというようなことで、やはり上げる余裕があつたので、組合の要求もあつたので上げたというのもございます。事情が非常に各産業、各企業によつてばらばらかと存じております。
#23
○田村文吉君 伺いたいのは、実質賃金が下つたということをお認めになつているのかどうか、それを私伺いたいのでして、いいとか悪いということを労政局にお伺いするのでなくて実質的には実質賃金は下つているということがこの原因をなしているのか、そうでなくて、考え方が違つて、そういう意味でなくて上つているのか、大部分今お話を承わると、七分とか一割とかというふうに上つているのであります。大体殆んど一律に上つておりますね。そうするとその一体原因は何かということを労政局としてはどういう見解をお持ちになつているか。個々の場合はいろいろの例もありましよう。ありましようが、先ず第一に実質賃金は下つているかどうか、先ずそれをお伺いして、そうでないとすれば、どういう傾向で上つたのかということの御解釈を一つ承わりたい。
#24
○政府委員(中西実君) 大体実質賃金を考えます場合には、基準はCPIによるのでございますが、この一年ばかり大体横這いでございまして、せいぜいその指数は四、五%ぐらいのアツプがあつたかと考えております。従つて全然名目賃金が変りませんければ、結局それたけ一年間に実質賃金は下つたということになるわけでございます。要求の理由といたしまして、それたからということで要求しているものも勿論ございますけれども、中にはやはりマ・バ方式で理論生計費から割出して要求している。更には先ほど申しました現業官庁あたりの要求額は、先ほど申しましたように大体一万八千円から一万九千円でありますが、この要求の理由は、戦前の賃金をもらいたい、例えば戦前五十円とします、物価高を三百何十倍とこう考えまして、これを掛け合わして一万八千円なり一万九千円、つまり戦前に戻してもらいたい。こういうことを基礎にして要求しているわけでございます。
#25
○阿具根登君 ちよつと質問しますが、春季攻勢の旗印の下に賃上げ闘争が行われているということを言われたが、その中には官憲が介入した事件が何件あるかお聞かせ願いたい。
#26
○政府委員(中西実君) 官憲といいますのはどういう官憲でございますか。
#27
○阿具根登君 巡査、警官。
#28
○政府委員(中西実君) 警官の関係したというものは私のほうで実は件数を調べておりません。
#29
○委員長(栗山良夫君) ちよつと委員長から補足しますが、只今の質問は、恐らく私も聞いているのですが、日産化学において争議団とそれから警官との間に若干の紛争があつたように聞いているのです。そういうような事例が幾らあるかということの質問だろうと思います。わかつておればお答え願いたいと思います。
#30
○政府委員(中西実君) 私のほうも個個の争議で若干耳にいたすものがございます。併し今どれとどれとに何件あつたかということの調べはちよつと持つておりません。
#31
○上條愛一君 労政局の仕事の中心は労働者教育だというお話を承わつたのですが、労働者教育という中には純然たる労働者だけであつて、経営者側は含まれているかどうか。
#32
○政府委員(中西実君) 労働者教育には対象といたしまして労働大衆と組合員、それと同時にやはり経営者側、更には一般国民、それぞれやはり対象になるかと思つております。それで先ほど申上げました労働関係講座にいたしましても、これは労使のこの方面に従事する者、これを講習生として募集しているというようなことで、勿論ものによりましては切離して労働者向きのもの、それから経営者向きのものというものがございますけれども、常にやはり両方とも考えてやつております。
#33
○上條愛一君 労働組合法によつて労働者の団結権は公認されているわけでありますが、今まだ未組織状態に置かれている労働者の数がどのぐらいあるか、おわかりになりましようか。
#34
○政府委員(中西実君) これは正確につかめないのでございますが、而も産業別によつて非常に違つておりますが、大体組織率は四〇%台というふうに一応考えているのでございます。
#35
○上條愛一君 そこで組織率が四〇%とすれば、まだ六〇%は未組織状態に置かれているという実情だと思いますが、そこで労政局としては労使の一体妥当な労働条件の問題についての処置の根本は、やはり組合法に規定されている、労働基準法に規定されておるごとく労使が対等の地位でこの問題を取扱い得るというのが根本精神だと思うのです。そこで労使間が対等の地位でこれらの問題を処理するということになれば、対等の地位という根本は、労働者はやはり労働組合を作つて組織を作つて初めて経営者側と対等の地位になり得ると我々は考えるのですが、この所見はどうなんですか。
#36
○政府委員(中西実君) 労働組合が保護助長されます意義もそこにございますので、筋道としましてはそうだと考えております。
#37
○上條愛一君 然るになお、労働組会法ができ、労働基準法ができ、六年以上経過しているのに六〇%がまだ未組織状態に置かれている、これを組織するということについて何か労政局としては一定の方針を持つているか、又、は何らかの努力を払われているか、全くのこれは労働者の自主的に放任しているのか、その辺のお考えを……。
#38
○政府委員(中西実君) 本来労働組合は結局労使対等の力を作り出すために自然発生的にできるものである、これがまあ歴史的にも事実だと思うのであります。従つて勿論労働組合というものに理解なくして、そのために労働組合組織が展開しないということがあつてはなりませんので、この啓蒙宣伝、これは十分にやりたいと思つているのでありまするが、現実にこれを組織化するということにつきましては、私ども一にそれぞれの組合自体に非常な期待を持つている次第でございます。
#39
○上條愛一君 勿論我々は労働組合のごときは労働者みずからの自主的の運動によつて組合運動が進められるべきことは、これは当然でありまして、他の力を借りてどうこうしようというような考えは毛頭ありません。併し日本の未組織労働者の現状を見まするときに、これは主として中小企業に組織を有しておらんという原因は、無論労働者みずからがまだ自覚が足りずして、労働組合運動を積極的にやらないということが根本的な原因でありまするが、それに加えて今日の中小企業の経営者という者が未だ組合法の何たるかも理解せず、基準法があるかないかもわからない、而もこれは親方或いは子分のような関係で、労働者が組織しようといたしましても、これに対する弾圧的な態度をとつておることは御承知の通りであると思うのです。そこで我々は前から労働者教育の費用という予算があるならば、労働者の教育も無論大切である。併し労働者の教育は組合もありその他の教育機関もあつて、民間の手によつても漸次に進められて来ておる。我々の切望するところは、労政局に労働者教育の費用があり、而もそれは単に勤労者のみならず経営者も含まれておる、こういうことであるならば、やはり労政局としては是非主力を注いでもらいたいという点は、これは主として中小企業の経営者に対して労働組合法も理解せしめ、労働基準法も徹底せしめ、この方面から日本の労使関係というものを合理的にして行くという努力が払われて然るべきである。又それが中心点でなければ我々はならないと考えておるのですが、その点は労政局長の御意見はどうなんでしようか。
#40
○政府委員(中西実君) おつしやる通りの点もあるかと思います。それで私どもとしましても、勿論経営者側、殊に中小企業の経営者側あたりの啓蒙も十分やらなきやならんと思つております。ただやはり主体となりますのは労働者でございまして、例えばこれは基準関係でございますけれども、基準監督官の監督にいたしましても、却つて労働者が経営者と一緒になつて法の施行に協力しないというような部分もございまして、やはりこれは両々相待ちましてそれぞれ啓蒙が必要じやないかと思うのでございます。仰せのごとく中小企業に対する労働関係の啓蒙、これには十分関心を持つて努力する必要があるというふうには考えております。
#41
○上條愛一君 今労政局長のお話では、労働基準法の違反などには労働者が経営者と一緒になつてこれが違反をしておるというようなお話でございましたが、これは事実は、或いはそういう事実があるかも知れませんが、その原因の一つは、労働者みずからが積極的にそのような方策をもつておるのではないのであつて、これは経営者が労働者に対して中小企業のごときは非常な権力を持つておつて、経営者がそういうようなふうに労働者側に仕向けておることは明瞭なことなんです。そこでそのようなことは決して労働者みずから自発的にそのようなことを考えておるわけでは毛頭ない。それはそういうことがあるというところは、如何に経営者側が基準法に理解なく、組合法に理解なくそういういろいろな手段を以て労働者側をそのように仕向けているという事実であると我々は考えます。こういうような態度に対しましては十分政府は今後適切なる対策を立てて行くべきではないかと我々は考えておるわけです。そこで労働者の教育の費用というものは一年どのくらいの予算を盛つておられるか、承わつておきたいと思います。
#42
○政府委員(中西実君) 金額にいたしまして約三千万円余り、これは二十八年度、まだこれは本当にきまつておりませんけれども、三千二百万円ばかり二十八年度に計上されております。
#43
○上條愛一君 そのうち主として文書関係と申しますか、このほうに大分主力を注がれて、予算の大部分が費されるというふうに承わつておりますが、これは文書関係、出版関係と申しますか、そういう方面にどれくらいの費用を投ぜられますか。
#44
○政府委員(中西実君) ちよつと内訳を今持つておりませんが、大体そのうもの三分の二余りが出版関係でございます。
#45
○上條愛一君 なおいろいろなことを申上げたいと思いますが、ただ私が今まで御質問申上げたのは、主として労働者教育の費用というのは三千二百万円であるのに対してこれが有効に使われておるかどうかということについては、我々は非常に疑問を持つておる。従つて詳細については又機会あるときに申上げたいと思いますが、十分労働者教育の費用を本当に労働者の教育運動に対して効果を上げるように、労政局としては努力を願いたいというのが私の主眼点であります。よろしくお願いいたします。
#46
○委員長(栗山良夫君) 労政局長にちよつと、先にも阿具根議員の質問についてお願いしておきましたが、労使間の紛争に警察官が介入しまして問題を起しておる事件があることは事実としてあるのでありまして、只今の労政局長の御答弁では、質問者の恐らく意に満ちていないと私は考えるのであります。従つて労使間の紛争にどういう恰好で警察官が介入をし、どういうような状態になつておるかということを至急に調査せられて本委員会に報告をせられたいと思います。労政局長の一応御所信を承わることはこの辺で中断いたしまして労働基準局長の御所信を承わりたいと思います。
#47
○政府委員(亀井光君) 労働基準行政の最近の動向につきまして御説明を申上げておきます。現在労働局基準法の適用を受けておりまする事業場は約八十一万、その労働者の数は一千八十万になつております。これらの適用事業場におきまする労働基準法の違反の問題は逐年減少して参つております。ことに従来その違反の大半を占めておりました形式違反が逐次減つて参つております。そのことは基準法の浸透というものを物語るのではないかと思います。
 次に賃金不払の問題でございますが、この問題は労働者の生活の基礎を脅かしまする大きな問題でございますので、昭和二十四年からこの問題につきまして力を入れて今日まで解決をして参つて来ておるのでありますが、基準行政におきまして賃金不払事件を解決いたしました割合を申上げますと、今日まで件数としまして約八万四百件、そのうち七万七千四百件を解決いたしております。その解決率は九六%金額にいたしますると三百三十四億四千万円でございまして、解決したものが三百三十一億二千万円、解決率とたしましては九九%という状況でございます。この問題は今後もなお引続き毎月新しい事件として起つておるのでございます。基準行政だけでこの問題を解決することは非常にむずかしい問題ではございまするが、関係方面と連絡いたしながら解決に目下努力いたしておるわけであります。
 次に労働者の福祉増進に関しまするいろいろと施策でございまして、先ほども大臣の御説明の中にございましたように、基準行政の問題におきまするこういう積極的な方面につきまして目下努力をいたしております。又今後もそういう方向に向いまして努力を続けたいと考えておるのでございまして、の一つは、労働者の住宅の問題でございます。この問題は先般の国会におきまして、建設省から産業労働者住宅資金融通法案として提案を見ましたのでございますが、解散によりまして廃案になりました。直接の所管は建設省でございますが、労働者の保護の面からいたしまして、我々は十分意見を提出いたしまして、この促進方に努力をいたしておるような状況でございます。又福祉の問題の一環といたしまして、産業災害を撲滅して参りますることは、これは労働者の生活不安を除去して行く、或いは職場の改善というふうな問題からいたしまして努力をして参つて来ております。これも逐年成績を挙げて参つております。一昨年に比べますると、昭和二十七年度におきましては度数率におきまして二二%程度の減少を見ておるのでございます。併しながらなお電源開発或いは港湾荷揚げ或いは土建、林業というような屋外作業につきましては、災害が滅つていないのでございます。従いまして今後こういう面に重点を置いて、産業災害の減少に努力をいたして参りたいと共に、又昨年暮東亜合成におきまする爆発事件を契機としまして、化学工業におきまする災害が瀕発して参りました。従いましてこの面につきましても大きな力をいたしまして、今後の災害防止に努力をいたして参りたいと、かように思つているのでございまして、ただこの問題は行政だけの力では満足な結果を得られないのでございまして、労使双方の御協力を得ましてこの問題の処理に当りたいと考えているのでございます。
 次に福祉の一環としましての職業病対策の問題でございます。職業病の問題につきましては、その現われます結果が緩慢でありまするために、とかく怠りがちの問題でございます。そこで我々としまして使用者のかたがたの注意を喚起いたしまして、職場の環境の改善、健康診断というような一般的な労働衛生の浸透に努力いたしますると共に、特に職業病関係の珪肺の問題につきましては、国会におきましてかねて御研究を頂いておりますると共に、我々も又研究を進めているのでございまして、できるだけこの問題につきましても早く結論を出しまして、その保護の完璧を期したいと考えておるのであります。幸い昨年の労働基準法の改正によりまして、休業補償費のスライドにつきましては一応の進歩を見たわけであります。今後更にこの問題を真剣に検討して参りたいと思つております。
 又福祉の一環としましての技能者養成につきましては、この問題は当初徒弟排除という目的のために制定されました制度でございまするが、現在におきましてはそういう消極的な面だけでけなくしまして、更に積極的な国際貿易に打ち克つための技能水準の向上という積極的な意義を持つて参つておるのであります。現在におきましては百二十四の職種につきまして養成を行なつておるのであります。全国で実施をいたしておりまする事業場の数は一万九千五百六十六、それに携わつている技能習得者は五万人という状況でございます。特に中小企業におきまする技能者養成につきましては、使用者の経済的負担が十分な余力を持つておりませんために、共同養成の施設を全国に設けましてやつているわけであります。この画に対しまする国庫助成の問題がかねてから懸案になつていたのでございます。前回の国会に提案しました予算案におきましては、一千万円の国庫助成金の予算が組まれたわけでございまして、今国会に提案される本予算におきましてもこの面の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
 又福祉の一環としましての労災保険の関係におきましては、昭和二十五年までは赤字の財政で苦しんで参りました。その結果、労働者の皆様方にも御迷惑をかけていた面もございましたのでございまするが、産業災害が逐次減少して参りますると共に、保険経済が安定をして参りまして、昭和二十六年、二十七年と相当の黒字を残すようになりました。現在におきましては補償費の支払につきまして迅速な処理が行われておるのでございまして、過去におけるような御迷惑は現在におきましては労働者におかけしていない状況でございます。この事業におきましては特殊なものとしまして、保険施設としまして労災病院の設置、経営の問題がございます。これは傷害を受けました労働者に対しまして適正な医療を施す機関としまして目下全国的に我々設置の努力をいたしておる次第でございまして、これができますならば、更に一段と傷害を受けました労働者の福祉の向上に役立つものと考えておる次第でございます。
 最後に最低賃金の問題でございまするが、この問題は、ここ数年来中央賃金審議会におきまして種々検討して参りまして、第十回の審議会におきまして日本における最低賃金は、全産業を通じまする一本の最低賃金と、低賃金産業を主体としまする最低賃金、二本建で行くべきであるという結論が出たのでございます。従いましてこの結論に基きまして、現在におきましては低賃金産業とみなされまする四つの業種、絹人絹織物製造業、家具建具製造業、手漉紙製造業、玉糸坐繰生糸製造業、この四つの業種につきまして専門審議会を設置いたしまして、専門的な調査を目下いたしておる次第でございまして、この専門審議会の調査並びに審議会の結論を得まして十分検討をいたしたい、かように思つておる次第でございます。
 以上簡単でございまするが、基準行政のあらましにつきまして……。
#48
○委員長(栗山良夫君) 続きまして、婦人少年局長の御説明を伺います。
#49
○政府委員(藤田たき君) 婦人少年局のいたしております仕事は、結局一言に申しますと、法律の上において女の人々の権利というもの、又それの裏付けであります義務というものが男の人のそれと同じになつたのでございますけれども、実際の面においてまだまだいろいろと足りませんところがありますし、本当に世界的な水準から比べましても低いという状態にありますので、その状態を婦人たちが又年少者たちが一生懸命に向上しようといたしております、それのお手伝をさせてもらう、そして婦人の地位、又年少者の地位というものを本当に進んだところのものにするということが私どもの仕事でございます。例えば婦人労働行政におきましては、その当別におきましては、基準法の中の解釈とかいろいろございましたのでございますけれども、この頃といたしましては、働く婦人たちの地位の向上、その保護のために努力いたしておるのでございまして、そのために啓蒙、調査、そして資料の収集ということをいたしておるわけでございます。
 只今最近にいたしましたところの仕事のうちの一部を御紹介いたしますと、婦人労働行政といたしまして、啓蒙に関しまして例えば女子の職場衛生に関する啓蒙活動、女子の職業に関する啓蒙活動、女子が男子と比べまして非常に低い地位にありますのはいろいろと原因がございますが、そのうちの一つの大きなものは、職業意識というものが非常に立ち遅れておりまして、男の方と比べまして技術の点においても又勤続年限においても非常に少うございますので、そういうようなことに関しましての啓蒙活動、それから又例えば連絡調整に関しましては、労組の方々と懇談会をいたしましたり、それから又実態調査の結果に基きましたところのその懇談会を職業安定の方々、労政の方々、又その他のいろいろの関係者、そして働く婦人たちと一緒にするというようなことをいたしております。調査のことについて二、三を御報告申上げますと、家事の使用人が労働基準法の外にもおかれておりますし、又その家事使用人の大多数は女でございます。それで家事使用人の低い状態というものはほかの働く婦人たちの地位をも引下げることになりますので、そういつた家事使用人の実態調査ということをいたしております。又産前産後の休養に関する調査というようなこと、これらのものは只今私どもが調査いたしておることでございます。
 次に年少労働行政についてでございますが、年少労働者についてはやはり私どもは啓蒙調査、それから資料の収集ということを一生懸命にさせて頂いております。私どもとしては広報活動でいろいろ、年少者相手でございますから、ポスターだとか壁新聞だとか映画・スライド・パンフレツト・リーフレツト・たくさんのものを、年少者たちにアピールするようなそういつたものを作ることに一生懸命いたしております。それで例えばどういうような啓蒙の仕方をいたしておりますかと申しますと、年に一度働く年少者のための大きな保護運動を展開いたしますが、そのほかにも年少者たちを集めまして座談会をいたしましたり、又年少者たちに職場の記録を書いてもらいましたり、いろいろ年少者の関心を起し、年少者たちが組合の中の活動においても、又定時制高等学校などにいろいろの障害を排して行くことができるようなそういつた環境を作ることなどにも啓蒙をいたしております。又調査におきましても、例えば小企業に働く年少者の実態調査、炭鉱に働く年少者の実態調査、学びながら新聞配達に従事する年少者の実態調査等に、いろいろの調査をいたしております。で、目下実施計画中でありますところのものに、衛生上有害事業に働く年少者の実態調査、非工業的産業における年少労働者の身体的適性調査、中学卒業者の特殊求人状況などについて目下のところ調査を進めております。
 次に一般婦人行政でございますが、これは全婦人を対象といたしております非常に大きな仕事でございますが、ここにおいても先ほど申上げました通り、婦人の地位の向上、その他婦人問題に関する連絡調整ということをいたしておるのでございますが、この婦人行政のために今までいたしましたところのものを二、三御紹介いたしますと、女世帯の生活の実態調査、又農村婦人の生活実態調査、この農村婦人の実態調査などは、例えば岩手、山形等等のそういう地域、又北海道だとか静岡、奈良というような非常にその環境が違いましたり、農作物が違いましたりするような所を対象としていろいろと調査いたしました。
 それから最近の問題といたしまして売春婦の問題でございますが、これは婦人少年問題審議会というものがございまして、それに前々大臣から諮問がございまして婦女の人権を守るための対策如何ということでございまして、その売春問題につきまして非常に広く調査を続けましたが、今年度におきましてはこれに対する予算も少し頂けそうでございますので、ますますこのほうをいたしたいと思いますが、この点につきましては私ども資料を集め、調査を進めるということをいたしております。
 一般婦人に対する啓蒙のことでございますが、これは御承知頂いたと思いますが、例えば全国を挙げて婦人週間というものをすでに五回開きまして、このたびも四月十日から一週間に亙りまして婦人週間を開催いたしましたが、今度は特に全国一つずつの県から二人の、一名乃至二名の無名の婦人たちを、論文を書いてもらいますことによつて選考いたしまして集めまして、どうすれば本当に家庭において職場において、社会において民主化が行われるかというような、そういう問題について真剣な討議をいたしました。私どもの婦人少年局はこういつたような啓蒙、調査、資料の収集ということが主でございまして、申上げれば限りのないような調査や資料の収集をいたしておりますが、現在、最近にいたしましたことを少し申上げまして御参考にいたしました。
#50
○委員長(栗山良夫君) 両局長に御質疑ございますか。
#51
○上條愛一君 これは基準局長にちよつとお尋ねいたしますが、現在の基準法違反についてはどのような方針で、どのような御活動をなさつておられますか、無論基準監督官が中心だと思いますが……。
#52
○政府委員(亀井光君) 現在約二千四百名の監督官がおりまして全国の適用事業所の監督をいたしておるわけでございまして大体毎月一人の監督官が十二日から三百というものを実地に出まして監督をいたしております。あとは内部事務の整理でございます。監督のやり方としましては、まだ中小企業の面におきましては法律の内容をよく知らないが故に違反をする者もございます。こういう者につきましてはもつぱら啓蒙宣伝をいたしておりまするし、又実質的に違反をいたしておりまする悪質な者につきましては、これを徹底的に監督をし、又場合によりましては送検をいたしておるような状況であります。
#53
○上條愛一君 基準法違反については、労働組合の存在しておるところでは、労働組合自体の活動によつてだんだん違反が減つておるという実情だと思いますが、労働組合のない中小企業はなお依然として違反が続いておると思いますが、この点について基準局長はどのような御努力をなさつておるか承わりたい。
#54
○政府委員(亀井光君) 今お話のございましたように、労働組合のございます大企業におきまする基準法違反というものは、非常な激減振りでございます。従いまして目下我々が監督の重点を置いておりますのは中小企業の面でございまして、監督官の出て廻りまする半分以上は中小企業の監督に向けられておると言つて過言はないのでございます。併しながらその数から申しますと、中小企業は全体の中の九割程度を占めるという数でございまして、一つ一つ廻りまして監督をいたしますることはなかなか困難な問題があるわけでございます。従いまして実地について監督官が監督をいたしますると共に、申告のございますものについては全面的に現場に参りまして監督を実施しております。更に又使用者の組合、同業組合或いは協同組合というふうなものを通じまして積極的に、自主的に基準法の遵奉をいたすというふうな指導もいたしつつこの監督を実施いたしております。
#55
○上條愛一君 局長も御存じと思いますが、この申告制度というものは、実は組合のないようなところの中小企業の諸君は、申告制度を置いても、申告をするというようなことになれば、これはやがて経営者から弾圧を食い、甚だしきは馘になるというような状態でありまするから、この申告は殆んど有名無実に終つているのではないかと思います。そこで問題は、工場監督官のやはり現地調査が主たるものでなければならないと考えておりまするが、この点について、二千数百名の工場基準監督官で十分だとお考えになつているか、なお手不足だとお考えになつているか、承わりたい。
#56
○政府委員(亀井光君) 監督官の数の問題よりも私は質の問題ではないかと思うのでございます。従いまし監督官の質の向上につきましては平素努力して参つているのでございまして、その一端を申上げますると、新任の監督官を採用しまする場合におきましては、必らず一カ月の研修を経まして現地に派遣をいたしまして、監督技術、能力の向上を図つておりますと共に、又現在の監督官につきましては再教育をいたしております。昨年は主として監督署長、三百三十六の監督署長と監察監督官の四十六人を主体としまして一年間かかりまして研修をいたしたのでございます。これらによりまして幾ら数を殖やしましても、能力のない監督官でございますると能率は上らんわけであります。数は数といたしまして、質的な向上によりましてその欠陥と申しまするか、能率の向上を図るように努力いたしておる次第でございます。
#57
○上條愛一君 無論質の問題、御説の通りたと思いますが、質は質といたしましても、十分たくさんある中小企業を廻られて、現地に実際これを監督するたけの充実、した監督官制度であるかどうかということを私は伺うわけです。
 それから第二に御質問したい問題は、好景気のときには基準法違反というものは比較的少くなつて来る傾向だと思いますが、今日のごとく日本の産業全体が窮迫を告ぐるような場合においては、競争上、中小企業などは基準法なんというものは全く無視して不当競争をやつているという現状なんです。繊維産業を見ましても、新々紡、新紡というようなところは、これは明らかに局長も御存じとは思いますが、基準法などを無視して、そうして低賃金で長労働時間で生産した安い物を国内にダンピングしておるという現状なんです。殊にその顕著な例として、御承知と思いますが、近江絹糸の問題であります。これは今日に始まつたことではない。私のほうの組合などでもこれについては長い間問題にしておりますが、基準局は近江組糸について十分なる御調査をしておると思いますが、御調査を十分に行われて、そうして違反の事実が挙つておるかどうかということを承わりたい。
#58
○政府委員(亀井光君) 近江絹糸の例をおとりになられたのでございますか、近江絹糸につきましてはお話の通りでございまして、再三基準法違反がございまして、我々としてもこれを検事局に送検をいたしまして、強硬措置をとつておるのでございます。ただ地元の局の監督官が参りますと、違反事実を見出すことが非常にむずかしいという話も聞いております。これは使用者の違反事実の隠蔽か、或いは事実違反がないのか存じませんですが、併し問題のある事業場でございますので、地元の局に対しましては我々といたしましても絶えずこれに対する監督の手を厳重にやれという指令を出しまして、監督を継続しておるような状況でございます。
#59
○上條愛一君 私の御注意を申したい問題は、そういう近江絹糸のような場合に、これは経営者について違反事実を調べようとしても、これは隠蔽その他によつて困難だと思います。これは労働者側に十分なる誠意を以てお調べになれば、この違反事実は明瞭だと思うのです。このような問題に対して基準局は何ら明快なる処置をしないということであれば、労働基準法などというものに対して労働者側の信頼がなくなると思う。そうして今違反事実があるのに対してどのような処置を一体政府はとるかということは、これは重要な問題であります。若し違反事実があるにかかわらず、これに対して適切な措置ができずに、而も違反事実をその工場から一掃できないということであれば、これは基準法などというものがあつても、実際において役に立たんということになるのではないかと思いますので、私は近江絹糸の違反事実についてはもつと基準局長は熱意を以て速かに解決するように努力を払つて頂きたいと思うのです。
#60
○田畑金光君 ちよつと基準局長に尋ねますが、これは先ほど労働大臣の挨拶がありまして私ちよつと中座しましたので、最後まで聞くことができなかつたのですが、ただ根本的な考え方としては、先ほどのお話は、要するに公共の福祉と争議権の調整を図つて行く、そうして前国会において問題になつたスト規制法案については改めて新しく提案するであろうということを意味し、もう一つの問題といたしましては、労働基準法については飽くまでもこれを尊重して行く、こういうようなお話があつたわけですが、ただ私の見るところでは、従来の吉田内閣のとつて来た政策のあとを振返つて見ると、朝に一城を抜き、夕に一城を抜いて、だんだんだんだん労働券業的な権利を制限して行く方向に向つていることが自由党の性格です。こういうことを考えてみましたとき、次の日程に上つて来るのは、必ず又基準法の問題が出て来ると思うのであります。これは時間の問題ではないかと思うのです。殊に最近の日経連その他の経済界の声というものは、日本経済の実情に即した基準法でなければならん、中小企業の実情に即した基準法の改正をやらなければならん、こういう声が強く出て来てこれが自由党の内閣に対する大きな圧力となり、労働行政の将来を支配する傾向にあると思います。そこでこれは自由党の小坂労働大臣に聞くのが本当かも知れないんですが、基準局長等はこういう財界の圧力或いは又自由党のこういう圧力に対して、先ず基準法の忠実な番犬としてこれを飽くまで守つて行くという肚があるのかどうか、そういう考え方の下にあなたは基準行政をおやりになつておるか、これについて先ず第一にお尋ねしておきたいと思います。
 それからもう一つお尋ねしたいことは、労災保険金が相当に余裕があるわけであります。どのぐらいの額に上つておるのか、そうしてこの運用はどういう方面に運用されておるのか、こういう問題が一つ、それからもう一つ、基準局長のお話によると、ちよつと正確なあれは忘れましたが、賃金遅払い等についての処理件数は九一%だとか、金額については九九%基準局の手で処理した。これは官庁のいわゆる表面的な計算の統計資料であつて我々が実際地方にあつて実情を目撃したところによりますと、それは氷山の一角に過ぎない。実際基準局が言つておるような賃金遅払い等は、これは殆んどの中小企業にあるわけであります。今日中小企業においては如何に基準法に基いて工場を監督官が職権を持つてやりましようとも、それには限界があるのです。これはどうしても産業振興政策という積極面を強調しなければならんわけであります。これは労働行政の面じやないので、そこで労働行政の範囲内においてできる問題はどうかというと、賃金遅払いに対しまして政府或いは労働省などが地方の公共団体を指導して、或いは政府の財政資金の中から、或いは公共団体の財政資金の中から、如何にしてこういう賃金遅払いに対して積極的に財源措置を講ずるか、こういう問題が一つ出て来ようと思うのであります。そういうような問題をルーズにしていてそう言つていたんでは、これは問題の解決に遠いのです。そこでそういう積極面を考えましたとき、労災保険金等の余裕金の運用というような問題が出て来ようと思うのです。こういう問題、こういうようなことについて労政当局、労働省当局は労えたことがあるかどうか。これが先ず一つ。
 それから関連しますが、これは基準局長に尋ねるよりも労政局長に尋ねたほうが妥当かも知れませんが、労働金庫法案という問題が第十三国会でしらか、今度の第十五国会においてもお流れになつておるのですよ。これはお流れになつたのも自由党の性格の然らしめるところだと我々は見ておりますが、そこで労働金庫というものはすでに全国に三十近くできておるのです。そこで近くこの労働金庫法案というものが国会において制定されますならば、中央労働金庫というものができて、労災保険金の運用というものもできるわけなんです。従つてそういうような中央労働金庫というようなものを作つて、労災保険金をそのような労働者の金庫に預託することによつて、労働者の福利厚生を大きく前進させるということは、積極的な労働行政になると思うのです。こういう点について今日実現されるだけの熱意を、努力を事務当局は今日まで払つて来たか、こういう点について先ず基準局長には御苦労かも知れませんが、一つその……。
#61
○政府委員(亀井光君) 基準法の改正の問題につきましては、先ほど大臣から御説明があつたと存じます。ただ法律というものはきまつたら改正しないというような性質のものじやないので、やはり各方面からの御意見というものは我々聞きながら、それはこれを聞き入れて、現実に実現するのがいいかどうかという判断は別になりますが、意見としては各方面から出されました意見を我々としまして忠実に聞きまして、それに対する判断を適確につけて行くというふうな方向を我々としてはとるべきではないかというので、本国会におきましては改正の問題は、我々としては大臣御指摘のように考えておりません。併し検討は我々として加えておるということを申述べたいと思います。
 それから労災の剰余金の問題でございますが、剰余はまだ決算が済みませんので、正確な数字は申述べられませんが、二十億を上廻るという金額が残ると思います。併しこの金は会計法の上におきまして支払基金積立金のような性格でございますから、これに繰入れる性質のものでございまして、ほかにこの資金を運用するということは法律上許されない性格のものでございます。というのは、労災保険では御承知のように三年間の継続の補償をしなければならない。従つて労災補償制度が廃止になりました暁におきましては、保険料はその三年間は入りません。給付だけは行わなければならないというための財源としまして支払基金の制度があるわけでございます。これが予算の上におきましては約五十億程度の予算が計上されなければならない。従いまして五十億に達しまするまではこれらの剰余金というものはほかに流用なり使用することは困難でありますという建前でございます。又会計法の建前で、このような剰余金につきましては、支払基金に繰入れられましたのは大蔵省の預金部に入りますか、或いは日銀にこれを入れるという法則がございまして労働金庫に預け入れるということは現在の特別会計法の建前で無理ではないかという気がいたします。
 又お話のありました賃金不払に対しまする融資の問題につきましても、金を廻しますことはむずかしい問題だと思つております。
#62
○田畑金光君 最初の問題の基準法の問題等については、先ほど労働大臣は国際的な基準、こういうようなことを言つておりましたが、これは非常にいい価値基準だと、こう思うんですよ。成るほど法律というものは動くんだし流動することはわかるけれども、今の内閣の下に動かすならば、各般のあなた意見を聞くと言うけれども、それは財界の意見たけによつて処理して行こうということになつて来ると思う。そういうようなことは大いに慎しんでもらわなくてはならんので、まああなたがたは基準法の番犬であるからもう少し強い信念を持つてこれを守るというぐらいの気魄を持つてもらわなくてはいかんと思うのです。
 それからこれは先ほど申上げたように労政局関係者の問題だと思うのですけれども、これはおられませんか。
#63
○委員長(栗山良夫君) 只今ちよつと帰りましたのですが……。
#64
○田畑金光君 それではこれは別に後日に譲ります。
 それからもう一つ労災病院についてお話されましたが、これは本年度何カ所に設置される予定なのか、更にこの予算等について、国家予算にどの程度要求されるか、将来の一つ構想について承わつておきたいと思います。
#65
○政府委員(亀井光君) 労災病院につきましては、昭和二十七年度におきましては一億六千万円の予算でございましたのを、二十八年度の先国会に提案しました予算案におきましては四億五千万円に飛躍的に増額をいたしまして、二十八年度におきましては六カ所の新教をいたす予定でございます。目下これにつきまして、その実現方につき大蔵省と協議をいたしておる次第でございます。
#66
○委員長(栗山良夫君) 田畑君ちよつと……。先ほど労政局長は用件があつて帰られましたけれども、政務次官がおられますから若し御質問があれば……。
#67
○田畑金光君 ああそうですか。それで今ちよつと労災病院に対して六カ所と言われましたね、大体これは場所はわかつているんでしよう、一応は。それでこれはどことどこなんですか。
#68
○政府委員(亀井光君) 二十八年度の予定としましては、北海道地区が一カ所、それから常磐の炭鉱地区が一カ所、それから名古屋地区、中京地区が一カ所、岡山地区一カ所、広島地区一カ所、山口県一カ所という予定でございます。まだ最終結論に達しておりません。
#69
○田畑金光君 これはそうしますともう一度お尋ねしますが、六カ所という場所は、大体必ず本年度に設置するという御予定で交渉を進めておるわけですね。
#70
○政府委員(亀井光君) その通りでございます。
#71
○田畑金光君 政務次官がおいでのようですから、ちよつとお尋ねしたいんですが、私は労働金庫法案の問題について先ほどちよつとお尋ねしたんですが、これは過去二回の国会において議員提出立法という形で、参議院においてはいずれもこれが通つておるんです。衆議院においてこれがお流れになつておるわけですが、これはやはり小坂労相の、積極的な労働福利施策を進めるというこの観点に立つならば、今国会においては当然にこれが成立を期せねばならん、こう思つておるんです。それでこれは議員立法の形になるか、或いは政府提出の立法になるかどうかわかりませんが、政務次官はこの金庫法案、或いはこれによつて労働金庫を更に強化して、労働者の福利厚生を積極的に増進さすんだ、こういうような考え方につきましてどのような御所見を持つておられるか、この際承わつておきたいと思います。
#72
○政府委員(安井謙君) 田畑さんのお説の通りに全く私ども同意見なんでございます。これはお話の通り参議院におきまして自由党も入りました共同提案で出ております。衆議院でいろいろな御都合で審議が延びておる間に流産になつておりますので、労働省といたしましては、是非ともこれが実現して福祉に寄与したいという考えでおります。
#73
○田畑金光君 今の政務次官の御答弁を私は了承いたしまするが、参議院においては自由党を含む全会一致で可決されているわけであります。ところが衆議院に参りますとそれが常にお流れになつている。この原因は、率直に言つて自由党の無理解から来ているわけです。この際政務次官はそのような気持であるとするならば、労働大臣と協力されて、与党をよく納得さして自由党の労働施策にこれだけの積極面があるのだというようなくらいの一つ気魄を示して頂きたい。かように私は要望として申上げて置きます。
#74
○田村文吉君 さつきの問題に関連して基準局長に伺いたいのですが、遅払の現在高はどのくらいございますか。或いは昨年の最高はどのくらいに上つたことがございますか、ちよつとお知らせ願いたいと思います。
#75
○政府委員(亀井光君) 私のほうで処理をいたしました金額といたしまして、昭和二十四年の三月からの累計でございまするが、三百三十四億四千万円……。
#76
○田村文吉君 お話し中ですが、それを伺つているのじやない。最高遅払はどのくらいあつたかという調査はできていますか。
#77
○政府委員(亀井光君) 毎月の累計といたしまして……。
#78
○田村文吉君 累計でない、残が……。
#79
○政府委員(亀井光君) 新しいものといたしましては四億八千万円というものが昨年度一月に新しく発生いたしました。
#80
○田村文吉君 そうじやないのです。私の伺いたいのは、現在或いは昨年度のうちに遅払の最高は幾らあつたのですか、総額で……、当然支払うべき金であつたが、それが払われないままで……、最高の月は何月で幾らあつたか、それが調査できていなかつたら、あとで調査して資料として頂きたいと思います。
#81
○政府委員(亀井光君) 今資料を手許に持つておりませんので後ほど……。
#82
○阿具根登君 基準局長に、さつきの、田畑さんの続きになりますがね、労災病院が六カ所予定されておりますが、九州関係はもうすでにでき上つているところが何カ所かございますか、それをお尋ねしたい。
#83
○政府委員(亀井光君) 現在までにでき上つているものを申上げますと、東京の労災病院、関西に尼ケ崎、小倉に九州の労災病院、そのほかに栃木に珪肺を主体といたします労災病院、秋田の鉱山地区に同じく珪肺を主体といたしますところの病院、八代にも南九州の労災病院、こういうのが現状でございます。それから仙台に東北の労災病院。
#84
○阿具根登君 そうすると佐賀、長崎等はまだ全然ないわけでございますか。
#85
○政府委員(亀井光君) 佐賀、長崎につきましては小倉にございます労災病院、又は南九州の八代の労災病院でこれを処理いたします。
#86
○阿具根登君 あとは要望ですが、珪肺患者に対する研究、最低賃金の問題等につきましては相当資料がまとまつていると思いますので、近いうちにこれを一つ頂きたいと思います。かように思います。
 それから続いて婦人少年局長に御質問申上げます。労働者の妻が労働者の妻だけで婦人会を作つている場合ですね。これに対して地方の婦人課長が婦人会は自主的で、労働者側に片寄つてはできないというようなことで、非常に介入されておる向きがございますが、それに対して局長はどういうふうに考えておられますか。
#87
○政府委員(藤田たき君) 労働者の主婦たちが会を作つておりまして、私どもそれは非常に結構なことだと思つておりまして例えばいろいろと講師を派遣してくれというような場合なんか、私どものほうから送つておることもございまして若しそれが婦人会にいろいろと介入しておりますといたしたならば、私はそれはいろいろ事情もあるとは存じますが、それの事情は知りませんので的確にはお答え申上げることはできませんけれども、遠慮してもらつたほうがいいのじやないかと思いますが、婦人会には非常に民主的な婦人会と非民主的な婦人会と今のとこるは両方ございます状態であります。
#88
○阿具根登君 ちよつと詳細に申上げますと、今まであつた婦人会はいわゆる会社のほうから仕送りをもらつておるよう婦人会であつたわけですが、それを婦人自身が目覚めて、労働者の婦人であるがために労働者の婦人会として発足をしたい、こういうことで、相当大きな婦人会でありますが、それに対して会社側は、婦人会というものは会社側の援助を受けることもできないし、組合にくつついて行くこともできない、こういうことを言つておられるのに、地方の婦人課長は、その会社側の人と一緒に、婦人会は自主的に、労働者側にあつてもできません、会社側にあつてもできません、こういうことを言つておられるのであります。それに対して婦人側は、我々は労働者の妻であるし、労働者の主人に何らの拘束も受けない、労働者としての妻の婦人会を自主的に作るんだということを絶叫してやつておるのに対して、婦人課長はそれに対して水を差しておられる、こういう報告を聞いておりますが、これに対してどういうお考えですか。
#89
○政府委員(藤田たき君) 私は今おつしやいますその特別の場合は存じませんが、私どもといたしましては、婦人会というものは民主的なものであらねばならない、そうしてそれに対して、婦人会に加入することも、それから脱退することも自由であるような最も民主的な婦人会を作ることにいろいろと助言を与えたりいたしております。若しそういう特別の場合がございましたならばどうぞお知らせを頂きたいと思います。婦人課長がいろいろと介入とおつしやいますが、それは何の婦人課長でございますか、私にはちよつとわかりかねるのでございますが。
#90
○阿具根登君 県の社会課。
#91
○政府委員(藤田たき君) それでは私どものほうではございませんので、私どものほうは婦人少年室長と申しますが、県庁の所在地にございまして、そうしてそれらのものに対しましては私どもとしては民主的な婦人団体のあり方ということをいつも申しておりますが、大体そういたしておるように思います。
#92
○阿具根登君 わかりました。
#93
○委員長(栗山良夫君) 時聞も大分過ぎましたので、御質疑がなければ次の議事に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#94
○委員長(栗山良夫君) 御異議ないと認めます。ちよつと速記をやめて。
   〔速記中止〕
#95
○委員長(栗山良夫君) では速記を始めて。
 本日はこれにて散会をいたします。
   午後四時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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