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1947/10/01 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第26号
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1947/10/01 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第26号

#1
第001回国会 農林委員会 第26号
昭和二十二年十月一日(水曜日)
    午前十時五十四分開議
 出席委員
   委員長代理 理事 清澤 俊英君
   理事 叶   凸君 理事 寺島隆太郎君
   理事 大石 倫治君 理事 北  二郎君
      大島 義晴君    田中 健吉君
      永井勝次郎君    成瀬喜五郎君
      野上 健次君   小野瀬忠兵衞君
      小林 運美君    志賀健次郎君
      寺本  齋君    中垣 國男君
      堀川 恭平君    八木 一郎君
      小川原政信君    佐瀬 昌三君
      田口助太郎君    野原 正勝君
      益谷 秀次君    松野 頼三君
      梁井 淳二君    山村新治郎君
     的場金右衞門君
 出席政府委員
        農林政務次官  井上 良次君
        農林事務官   山添 利作君
    ―――――――――――――
九月二十七日
 農業會技術員設置費國庫補助増額に關する陳情
 書外三件(廣島縣神石郡豊松村三原才一外六十
 二名)(第三一三號)
 食料品配給公團法實施反對の陳情書(関東信越
 地區味噌生産業者代表村林榮一)(第三三二
 號)
 東京都薪炭増配に關する陳情書(東京都電力協
 議會準備會代表淺野榮次郎外十九名)(第三三
 四號)
 農地調整法竝びに自作農創設特別措置法改正に
 關する陳情書(青森縣弘前市元寺町青森縣中弘
 農政協會委員高杉隆治外百五十二名)(第三三
 七號)
 農業協同組合法案一部修正に關する陳情書外五
 件(静岡市屋形町静岡縣林業會長戸塚昌宏外九
 名)(第三三八號)
 養蟲協同組合法制定に關する陳情書(大分縣蟲
 業技術員組合長二宮倉雄)(第三三九號)
 農業共済保険法實施に伴う農家負擔輕減の陳情
 書(青森縣農業保険組合連合會長齊藤俊治)
 (第三四七號)
 関東信越地區における旱害諸對策實施助成に関
 する陳情書(關東信越都縣知事會議)(第三五
 二號)
 森林組合技術員設置費全額國庫負擔に關する陳
 情書(北信五縣森林組合聯合會協議會代表者新
 潟縣森林組合聯合會會長伊藤文吉外四名)(第
 三五三號)
 造林事業助成促進に關する陳情書(北信五縣森
 林組合聯合會協議會代表者新潟縣森林組合聯合
 會長伊藤文吉外四名)(第三五四號)
 薪炭需給統制の改善に關する陳情書(北信五縣
 森林組合聯合會協議會代表者新潟縣森林組合聯
 合會長伊藤文吉)(第三五六號)
 農調法による林野開墾に關する陳情書(北信五
 縣森林組合聯合會協議會代表者新潟縣森林組合
 聯合會長伊藤文吉)(第三五七號)
 油糧配給公團に關する陳情書(帝國油糧從業員
 組合連合委員長本村一良)(第三五九號)
 食料品配給公團法實施反對に關する陳情書(東
 京都中央區日本橋大傳馬町全國味噌製造業者有
 志代表村林榮一)(第三七四號)
 農業協同組合法案一部修正に關する陳情書(岩
 手縣林業會長三田義一外千七百六十二名)(第
 三七六號)
を本委員會に送付された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 臨時農業生産調整法案(内閣提出)(第五五
 號)
    ―――――――――――――
#2
○清澤委員長代理 これより會議を開きます。
 議題はこの前理事會で決定しておりました臨時農業生産調整法の質問を継続します。大島義晴君。
#3
○大島(義)委員 この生産調整法についてはまず第一番にお伺いしたいことは、一體この生産調整法を制定する目的は、もちろん増産を主としてお考えになつておられることと存じますけれども、あらかじめ具體的にその増産をどこでさせるかという點が明確になつていない。たとえば、収穫が、責任収穫の下まわりをした場合には、町村食糧委員會に申し出てその是正を求めることができるようでありますが、もし収穫が上まわりをしたときにはどうするか。やはりこれを全部供出の對象とするということであるならば、これは今までと一つも變らない。こういうことではせつかくおつくりになつても、何かそこに一つの缺陷があるのではないか、こういうふうに考えるのであります。いわゆる増産意欲を完全に農家にもたすためには、先般私どもの間においてとりまとめた供出對策要綱というものも發表しておりますが、あれらもよくごらんになつて、具體的に農民に増産意欲の起るような案をこの中に盛つていただきたい。かように考えておるのでありますが、私の見るところでは、どうもその具體的な方法がないように考えますが、もしあるならばその點をお教え願いたいと思います。
 なお、これと關連しておることでありますが、私今回の水害に際して、關係各府縣をまわつて見ましたところ、今回の水害というものは非常に大きいものでありまして、たとえば利根川の用水取入口のごときは非常に大きく破壊されておるのであります。現在の米作り農家が、供出制度による農産物價格の割合で、この大工事はとうていなし得られないということは、はつきり考えられるのであります。もしこの用水取入口の修理が急速にできないということであるならば、來年の作付は不可能になるわけでありますが、政府はこれらに對してどうお考えになりますか、この點をあらかじめお伺いしたいと思うのであります。
#4
○井上政府委員 この法律に農民の生産意欲を高揚する規定がない。もしこの割當以上に増収された場合は、全部供出をさせられるのではないか、そうなつたのでは農民の増産意欲というものはなくなつてしまうのではないかというお尋ねでありますが、この法律をつくりましたのは、實は政府が國が必要とする一定の数量をつかむことを目的として、農民の生産意欲を高めるということに大きな目的をもつているのでありまして、今お尋ねのように作付割當をいたして、生産責任制をもつていただいて從つてそのときにはすでに供出割當がされておりますから、その供出割當数量を超過して収穫が上まわつた場合には、當然農家の所得となるものでありまして、その超過した分につきましては、これは特別の報償金をもつて買上げるとか、あるいは別途の處置を講じて農家が納得し得る方法によつて國家に貰つてもらいたい。こういう手段をとりたいと考えているのでありまして、これはあくまで農家が生産意欲を高める事前的處置を講じる法律であるということを御了承いただきたいのであります。
 それから今度の水害について、用排水口が完全にふさがれてしまつた。このために次の耕作がまつたく不可能に陥つたのであるが、これについての政府の處置はどうするかというお尋ねでございました。この問題につきましては、いずれ私の方の開拓局の方で詳細に調査をいたしまして、もし地元の町村、あるいは府縣等においてそれが處置できない場合においては、當然これは國の方で、それらの問題については適當に對策を講じなければならぬ事柄でないかと考えている次第でありますから、いずれ具體的な調査を完了しました後に對策を立てたいと考えております。
#5
○大島(義)委員 大體用排水の問題については納得できるが、その前の責任生産を上まわつた點においては、いま次官の御答辯によりますと、もちろんそれは超過供出として扱う、大量な報償物資も出すし、また買上げ價格も引上げるということを言われておりますが、法の中にはその點が明示されておりません。これはやはり農民に安心して耕作させる、さらにより多く増収させるということは法の中にそういう點を明確に挿入すべき必要があると考えておりますので、その點をお伺いしたのであります。もう一つはこの法令を見てますと、二十七條、二十八條、二十九條、いづれも罰則規定があるのでありまして、作付統制のいうことをきかないと、三年以下の懲役になるというような、非常に大きな處分規定があります。供出制度において強権發動の處分規定があり、さらに作付統制においてこういう處分規定があるので、これからの百姓はどうも真面目に百姓をすることにおいてすらも、こういう處分規定が多過ぎるので、はたしてこういう處分規定をつくつて農民を威かすことがいいか悪いかということについて、私どもは疑いをもつているのであります。こういうふうな次から次えと出てくる法案が、いずれも厳格な處分規定を設けるということは、農民に對して恐怖心を起させるということになりはしないかと思つて、私は心配しているのであります。こういう點に關することをお尋ねいたします。
#6
○井上政府委員 考え方によりますと、あなたのような考え方も一應は立つのでありますが、わが國の今日立つております世界的食糧事情の地位というものと、この四つの島で八千萬の人口を養つていかなきやならぬ立場上の見地から、農民の理解と納得において、この食糧増産を國家的至上命令としてやらなければならぬ責任を負わされております政府といたしましては、あくまで國が必要とする所要量を、正當な手段と合理的な對策をもつて完遂をせなければなりません。ただたれが見ても當然であると考えられるにかかわらず、たれもが當然であると考えられることを、利己的な利害のためにそれを實行しないいわゆる悪農と言いますか、そう言うものがおるために、どれだけ村の秩序が乱れ、どれだけまじめに、正直に働いておられるところの耕作農民の感情を悪化するかという例は、枚擧にいとまないのであります。從つてまじめに正直に働いて、しかも國のことを考え、また自分たち農家将來のことを考えておるこれらの人々を守るためには、どうしても一部の悪農はやはり制裁を加えるの處置を講じておかなければ村の秩序も農業全體の計畫も崩れてしまうのでありますから、そういう建前でこの法規は決めてあるのでありまして、農民全體を威嚇し、あるいは農民全體を恐怖せしめるというような考え方で、この規定を設けておるわけではございません。そういう點をどうぞ誤解のないようによく御了承をいただきたいと考える次第であります。なおただわれわれは、この法律でことごとくものが順調にいくとは考えておりません。これは政治全體が、いかに耕作する農民を潤するかという政治が竝行してとられませんと、これらのことはうまくまいりませんから、この法律を強行するということに伴つて、農業全體に對する國の政治が竝行して行われるということを、われわれは強く強調してまいらなければならぬと考えております。そういう中において、依然として利己的に自分さえよければ世の中はどうなつても構わぬというような、横紙破り的な悪農が出ました場合に對しては、これは遺憾ながら處置をしなければならぬから、そういう規定を一應挿入したようなわけであります。
 それからいま一つこの際特に申上げておきますが、われわれこの生産調整法について各部落々々の、また各縣の農民組合なり、あるいはまた農村地帯の意向を、直接耕作しておる農民にあたつて承つてみると、そういうことをきめてもらつた方がかえつていいという意向が非常に強いということをわれわれは伺つておるのであります。ただ一部地域におきましてはいろいろ議論もある所がありますけれども、大體の大勢としては、事前割當と事前計畫を立ててもらつた方が、農民としては安んじて耕作ができる。また収穫したものに對する大きな希望がもてる。ぜひひとつそういう法律を早くつくつてもらいたいというような意向が、相當強く村にはあるということをわれわれは一應察知しておるのでありますから、この點も伴せて御了承をいただきたいと思います。
#7
○大島(義)委員 ただいまの御説明によりますと、悪農を標準としてこの罰則はつくつておるというような結論になると思うのでありますが、私は逆に考えておるのでありまして、たとえば十二條における市町村農業調整委員會の會長は市町村長を充てるということに規定しておりますので、民主主義の確立された今日といへども、市町村長にはずいぶん耕作農民と利害相反する立場におる者が相當あるのであります。こういう人々が滑りこみで會長になり。そうして會長としての絶對権限をもつておやりになる場合に、農民組合等の民主的團體を極端にきらつておる地域におきましてはこれを悪用される危険が多いのでありまして、この調節を一體どういうふうにお考えになつておるかということが、一番大きな問題になるのではないかと思つております。本案を通じて見ますのに、市町村長の権限は非常に擴大されておりますので、市町村長の考え方によつて、相當無知な農民がいぢめられやしないかということを私どもは心配するものでございます。先ほど悪農だけを標準として全體の農民を律していかなければならないという理由が一體どこにあるか。お説のように、この狭い國でこの國民を養つていかなければならぬ日本の農村は、まつたく今の再生産價格に引合わない價格ですらも供出を完了しております。たとえば食糧管理法違反に問われた人間が全國にいく人あるかということは、先般の資料によつても明らかであるように、きわめて僅少であります。九牛の一毛にもひとしい僅少の悪農を標準として、農家全體がややもすればその適用を受けるようなこの過大な罰則規定を設ける必要が、一體どこにあるかということを私は疑うものであります。次いでその市町村長の権限がいかにも過大である。市町村長はまつたく農民以外の者がなつておる場合が非常に多いのでありますから、こういう場合に農民がはたして納得し得るかどうか、この點将來の運用に對して私どもは非常な危惧の念を抱くものであります。
 もう一つの點は、これによりますと、割當がやはり個人割當になつてしまうようでありますが、私どもは、これには前にわれわれの意見として発表しております通り反對であります。戰爭中に行われました部落共同責任制は、天降り的な部落の共同責任制でありますがゆえに、これには反對しておりましたけれども、民主的にでき上つております農業協同組合を中心とした部落協同責任制のもとに供出を完遂しようということを、われわれは考えておるのでありまして、しかも部落内における適地適作ということは最も公平に行われることであります。從つて供出の責任を個人の割當でなく、部落に對して共同責任の上において供出の完遂を期したい。かように考えておるのでありまして、要約いたしますれば、私が今申し上げておることの全體は、結局供出を完了しようとする考え方に基いて申し上げておるのでありまして、この法の不必要はそこからも考えられることであります。この點に關する御見解を伺いたいと思います。
#8
○井上政府委員 こまかい點は局長から答辯させますが、大體この條文の中に、市町村長が村の調整委員會の會長になつて責任をもつてもらうということにいたしましたのは、御承知の通り割當が縣知事から市町村長におりていくという關係上、一應市町村長に責任をもつてもらうということにいたしました。しかし市町村長が主宰いたします農業調整委員は、選挙によつて公選することになつておりますから、多数の場合は、當然耕作農民の利害を代表する委員が選挙されて委員會を構成することになりますし、委員會の多数の意見を無視して、會長の独断の處置は講ぜられないとわれわれは考えられますし、もしこの委員會を無視して独断專行的な處置が講ぜられるような市町村長では、割當の公正と圓満を期せられません。また供出も順調には進みません。そういう點から、いかに村長が独断專行し、また農民の意思を無視してやろうとしても、それはでき得ない相談になりはしないかということをわれわれは考えます。ただ何と申しましても、民主的にまだ成長してないわが國の農村事情の現状においては、とかく市町村長というような特權的な地位の者に、えてして農民は指導支配される被支配階級の立場に立ちますから、そういう點が多少心配になりますけれども、しかしながら大體農民の納得と、農民の要求を相當参酌しませんと、割當もうまくいかないし、また供出もうまく進まない。こういう考え方を私はもつておるのでありまして、この點はそう心配はないのじやないかと考えておるのであります。ただ部落共同責任制によつて、個人割當はやめたほうがいい、こういう御意見のように伺いますけれども、考え方としては一應公正な考え方のように伺いますけれども、一應また個人割當をいたしませんと部落全體の割當というものがまとまらぬことになりますので、あくまで個人の割當を大體おろしまして、それで部落全體で按配を願う、こういうやり方にいたさなければいかぬじやないかと考えるのであります。從つて結論では部落全體の共同責任制みたいなことになるのであります。
 それからさらに悪農を中心にしてつくつた罰則で農民全體に脅威を与えるようなことは困る。こういう御意見でありますが、これは考え方の相違でありまして、われわれはあくまで善良な農民を援助し、善良な農民の耕作を確保する立場上、この法律は、あくまで一方悪農に強制を加えていくという立場を明確にしなければならぬと考えております。そうしなければ秩序は保てないのであります。信賞必罰の境を明確にしなければならぬと考えておる次第であります。ただこれを使ふ者が手心をうまくやりませんと非難が起りますから、この場合はあくまで法を活かして使わなければなりませんという點であります。お説のようにこの法律を運用して、真面目にやつておる者にこれを振まわすということは、これはかえつて危険でありますから、その點については十分注意をしなければならぬと考えておる次第であります。その他は局長が答辯いたします。
#9
○山添政府委員 特にお答えすることはございませんが、ちよつと補足して申し上げておきます。第一にこれは事前割當の制度をとつており、増産ができた場合に追加割當をしない。その事柄は法規に明確になつていないじやないかという點でありますが、これは供出数量の割當はしますけれども、一體供出する義務はどの法律からくるかというと、これは食糧管理法であります。食糧管理法第三條に命令の定むる数量を政府に賣渡さなければならないということが書いてあります。それが基礎法であります。從つて食糧管理法の附属法令として、政府に賣渡すべき数量はこの生産調整法で定まつたところの割當数量、またそれが變更された数量を、政府に賣渡すべし、こういうことになつております。その點を御説明いたしておきます。
 それから罰則の點でありますが、なるほど作付をしない場合の罰則が三年、それから壱萬圓と書いてありますが、これは食糧管理法における供出の義務に對する罰則と同じものが書いてあるわけであります。これは直接供出に關係する事柄でありますので、その間同一歩調でございませんと、一つの行為があるいはこの法律の違反になり、あるいは場合によつては食糧管理法の違反になるという場合も事實上あり得るわけであります。從つて今までつけられておるところの罰則と同じものがつけてある。こういうふうに御承知を願います。なおまた罰則の運用につきましては考慮を拂いまして、仰せのごとくいきなり罰則をもつて威嚇するという建前ではなく、必要と認める場合に、市町村農業調整委員會が知事に申請をする。知事が生産計畫の指示に對して從いなさいという命令を出しまして、そこに今度は罰則がかかる。こういう効力を生ずる。二段構えと申しまするか、そういうことになつておるわけでありまして、その間むやみに力を振まわすということではございません。罰則の對象になります人は政務次官から申されましたように、たちの悪い者というのが對象になることは申すまでもないことであります。
 それから市町村長の権限が非常に大きいという點につきましては、本來これは行政上の責任當局といたしましては、農林大臣、府縣知事、市町村長ということになつております。しかしその運用の實際におきましては、市町村農業調整委員會にいたしましても、都道府縣農業調整委員會におきましても、いずれも議決機關であります。その議決がなければ独断專行ということはないわけであります。しかしながら供出でございますから、いろいろな場合も起り得るわけでありまして、ある市町村において調整委員の方で議決しないとか、あるいは議決をいたしましても、指示のあつた數量よりもはなはだ低いものを議決するとかいう法令違反のことが起り得る。その場合に議決を取消したり、あるいは原案を執行したりする権限を、行政責任當局としてもつということで、これは法制上の措置として當然そういうことがございませんと動かない場合があるわけであります。そういう用意のためでございます。
 以上補足的に申し上げます。
#10
○大島(義)委員 今の御説明を承つておりますと、やはり彼らが罰則さえつけて威嚇すれば、農民はいくらでも威嚇できるということを、はつきりお答の中からくみとることができる。こういうような罰則まで設けてやらねばならぬというほど今日本の農民は敵國の國民とは違うのでありまして、日本の實情というものを非常によく知つておつて何を苦しんでこんなにひどい罰則を設ける必要があるか。この法の制定をなすつた方々の、私は良心を疑うものであります。こういうばかばかしい罰則をきめ、そして市町村長を中心とした生産調整法を實施するという、威嚇一方では納得ができない。さらに市町村長が府縣知事の傀儡となつて農民を搾取することは間違いないと思いますから、いかに強辯されようともこの點は私ども納得できないのであります。
 その次は委員の選挙制を一體どうするか、先月に行われた委員の選挙について、私は一度この席でお尋ねしておいたことがあるのでありますけれども、ちようど縣の経済部長に伺つたところが、選挙をしろという指示はあつたが、選挙の方法をどうしろという指示はなかつた。從つてある町村では定員を字ごとに割當てて、市町村長の決定によつてきめた。しかも割當てられた字以外の投票を多数得て當選しても、無効であるというような變態的な選擧を行いまして、この選擧の効果に對して私どもは非常に疑いをもつておるのであります。それとやはり同じように、選挙をしろということは言つておるが、どうしてやれということは言つていない。これらに對しては、この選擧は一體どういうふうに施行されるお考えであるか。これを伺いたいのであります。
 それから話が前後いたしますが、この調整委員會が作付統制をして事前割當をする場合に、地方その他の客観的な情勢の判断のもとにこれをやらせる御方針であるのか、一切合財をまかせきりでこれは構わないという方針なのか、あるいはどういう方針でこれを運營していこうというお考えなのか、もう一應伺つておきたい。
#11
○山添政府委員 選挙のやり方につきましては、政令にその詳細を譲ることにいたしておるのでありますが、これは今まで行われましたような農地委員會の場合におきましても、およそ半数くらいは實際の選挙を用いないで委員が選任されておる。その場合にも部落部落の話合いによるのでありまして、最もよい結果のところもあれば、その反對のところも相當あるだろうと思つております。この法律による選擧におきましては、できるだけ投票してもらう。農民の意思によるところの投票の結果によるという趣旨が行われるような選擧のやり方をいたしたいと考えておるのであります。大體の腹案といたしましては、まず選擧人及び被選擧人の資格でございますが、これは一段歩以上の農地を工作している人、その世帯主、これを選擧及び被選擧の資格といたします。それから必要があれば選挙區を設けることができます。これは部落ごとに選擧をいたす場合を豫想いたしております。しかし必ずしもそうでなくてもよろしいわけであります。部落が非常に多くかつそれが小さいときは、合併して選擧區をつくる。それから候補者制度をとるかとらぬかというのが非常に研究を要する點でありまして、なるべく現在の投票によつて委員が選出されるという意味合いから、そこに特別の候補者制度というものをとらないで選擧が行われるような方法を研究したい。こういうつもりで研究をいたしております。
 その次に地方その他の状況によつて割當をするという點につきましては、市町村におけるところの農業計畫の立て方、また各農家に對する割當方針について、法律の第五條に参酌すべき點を揚げておるのであります。まず全國的段階におきましては、從來の統計の實績、あるいは供出等に用いましたところの面積、数量というような諸般の状況竝びに國家的な今の食糧需給の状況を背景にして、地方長官と農林大臣とよく話合いをいたしまして、地方長官の意見を斟酌した上で都道府縣の計畫をきめる。都道府縣におきましては、同様に各般の資料をもちましてこれを市町村別にやる、實際問題といたしまして府縣の計畫を郡別に割るのが大多数の場合のようであります。これはそういうことでもよろしいし、また直接市町村に割當ててもよろしいのであります。ともかく都道府縣の委員會、また郡にその委員會が置かれますれば、その郡の委員會等を經まして市町村にまいる。市町村では各農家の田畑の面積、地味等によるところの状況、これを初めから非常に詳しいというわけにはいきませんでしようが数段階にわけて、そういうものを基礎といたしまするとともに、一面に從來の作付あるいは収穫等の實績等を参酌いたしまして、個人の生産豫定数量竝びに供出数量を決定いたすわけであります。その間、この市町村農業調整委員會が中心でございまするが、これは十五人ないし部落の数によつて殖えたり若干減つたりすることもございましようが、その委員だけでできるかといえば、これはなかなかむずかしい問題でありまして、仰せのように、部落ごとに十分懇談をして相談をしてもらつて、そういうものが基礎になる。そうしてそれが正式に農業調整委員會において取上げられて検討を加えられ、確定をされるという順序になると考えておるのであります。
#12
○大島(義)委員 もう一度伺いたいと思います。私は先ほどから、個人割當でなく部落共同責任をとつたらどうかということは、協同組合法の第一條にも明確に規定されております通り、今後の日本農村は部落單位くらいな協同組織をもつていかなければ、農業經營はやれないという意味からこれを申し上げているのでありまして、單に供出で物さえ出れば制度はどうでもよいというような無責任な考え方でなく、農民の協同精神を涵養する意味においても、部落共同責任制が最も適當である、かように考えておりますがためにお伺いしておるわけであります。それから今の委員の選擧のお話でありますが、今の御説明によると、私はこれまたこの前の食糧委員の選擧と同じ結果になることをおそれているのであります。農地委員の選擧におきましては、都市計畫による合併町村のある町村に對しましては、地區委員會制度を設けさして、その地區の實情に即した町村委員を選擧するように私ども申しておりますけれども、こういうような場合に、そういう合併をしていない町村にまで選擧區を設けてもよいというようなことを、今の説明によるとおつしやつているようでありますが、これは非常な間違いではなかろうか。都市計畫により近隣町村を合併した町村においては、合併以前の状態における選擧區をもうける必要はあるかも存じませんけれども、そうでない町村に對して、部落ごとの選挙區を設けるということは決して妥當な方法ではないと考えますので、この點はもう一遍御説明願いたいと思うのであります。
 それから、これであまり長くなりますから質問を打切りますけれども、この罰則の適用をもう一度お尋ねいたします。統制令で罰則を受けるような人間は、物をつくつておらぬのですから、必ず供出が完遂できないということになるわけであります。從つて管理法違反の罰則を受ける。いろいろな罰則を三つほど受けることになりますから、統制令違反に問われる者は最高の處罰を受けることになるのでありまして、百姓をするがゆえに懲役にいかなければならない。百姓をやめれば懲役にいかなくてもすむのだというような考え方を、百姓にもたした場合に一體どう考えるか。罰則がいかにも同一事件に二つも三つも重なつて併科せられるという危險が非常に多いのでありますから、この點に關してもう少しこまかに御説明を願いたい。
#13
○山添政府委員 選挙のやり方に部落等から一人ずつ代表者を出したいという要求が現實にあるであろう。また地味の問題等部落ごとにこまかいというとおかしいのでありますが、いろいろ具體的の問題を相談いたしますのに、部落という單位はよほどの働きをいたすわけでありまして、そういう意味合から、部落ごとの選擧區を設けることも一方法である。かように考えておるのであります。しかしながら、その通りでなければならぬというわけではないので、法制上の問題としては、そういう意味合における選擧區を設けてもよろしい。こういうようにいたすように考えておるのであります。しかしそういうことについて、どういう弊害があるかという御意見がございますければ、別の機會にでもまた御意見として承りたいと思います。
 なお罰則の點でありまするが、なるほど併科になるわけであります。一つの行為ではございませんが、これは一連の行為になるわけでありまして、一つの行為でありますれば重きに從つて處罰を受ける。一個の行為が数個の扉名に該當する場合には、重きに從つて處分するということになりますが。この場合は、作付に関する違反、また供出に對する違反ということでありまして、結局一個の行為に對して数個の扉というのではなく、連續した一つの事柄に数個の扉があてはまるということになろうかと思うのでありますが、結局この場合も、實質問題としては一つの事柄が数個の罪名に該當する。從つて處断をされるということになると思うのでありまして、その意味におきまして、實は先ほど申し上げましたように、食糧管理法における罰則と同じ罰則がこの法律につけてあるということになつておるのであります。
#14
○八木委員 簡單に五つの點についてお尋ねいたしたいと思います。
 第一點は、この法律を實施してまいりますには、相當豫算を伴うと考えられますが、その豫算の概要を伺いたい。それからその豫算と法律との関係で、豫算は豫算委員會で審議されるでしようが、豫算が伴わなかつた際に實施に困るだろうから、この法律は豫算と切り離して實施できるものかどうか。それが第一點であります。
 第二點は、法律の標題が農業生産調整法となつておりまして、農業の増産こそ必要でありまするが、この際にことさら調整、コントロールするというような題目からまず氣に食わないのですが、こういう氣に食わない法律を出す考え方の基本的なところが解しかねるのです。どうも讀んでみますと、戰爭中困つてきて、企圖して大失敗をしたあの作付統制令と同じところに考えがある。ただ言いまわしをかえただけではないかという感じをもつのでありますが、それはどういうわけか、納得のいくように御説明を願いたいと思います。
 第三點は、法律施行の骨になる指示權と言いますか、計畫生産をやらせようという指示は、むしろ命令生産と言つた方がさつぱりするのではないか。ここに委員會に諮るとか何とか書いてありますが、究極の指示權の所在はやはり安本にあり、農林大臣にあり、知事にあり、市町村長にありまして、あと委員會とか何とかということはごまかしであつて、ほんの相談をする權關というだけではないかと思うのであります。先ほどの御説明では、獨断專行はこれによつてさけるのだという程度のお話でありますが、究極においては、責任の所在は今申しましたように安本、農林大臣、知事、市町村長の手に歸していると思うのであります。それもまだ讀み方が足らないから私の考え方が違つているのか、それも伺いたい。
 第四點は、全體の問題として、最近農林省がこの農林委員會に提案されましたいろいろな法律を見ましても、どうも要らない法律をつくつて出すような感じがするのです。この法律もその一つでありますから、率直にそう申し上げる。農林省自體が、食糧の生産省であり、食糧の増産省でなければならないのが、戦時中の惰性で食糧の配給省になつてしまつた。食糧の問題を追いまわしておるあまりに、かえつて食糧の減産を期待するようなところに力を入れている。そういう法律ばかりたくさんつくつているという感が深い。そういうような意味合からいたしまして、この法律はなくても支障はないのじやないかという點です。供出要綱あるいは食糧管理法、むしろこれを強力行政の線に沿つて、増産の方に力を入れていくのならばいざしらず、かような、今まで同僚の質問になりました、大島委員からも質問になりましたような點に觸れて考えますと、どうもこれはなくてもやれる、要綱でもやれる範囲のものではないかという氣がいたしますから、これも率直に伺いたいと思います。
 それから第五點は、たくさん農業關係の法律をつくつて、大嶋委員の言葉を借りると、百姓をやるがゆえに懲役にいかなければならぬというような、脅かされるような法律がたくさん出てまいります。この法律をたくさんつくる農林省のかんじんなる法律用語の中に、この法律では耕作を營む者を農業者と呼んでおります。農業協同組合法においては農民と呼んでおります。的場委員が農業協同組合法の際にお尋ねになつておりましたが、同じ農業者に對して、農民と言い、また農業者と言つておる。これは何か意味があるのですか、伺いたいと思います。
#15
○井上政府委員 こまかい點は農政局長に答辯をしていただきますが、二、三私から申し上げておきたいと思います。第一、この法律を調整法と言う名前をつけておること自身がどうかと思うというお話でございますが、仰せの通り、わが國の食糧が、一體どういう事情にあるか、そうしてこの食糧事情を眞に農民の方が自覚をしていただいて、國家が必要とする計畫生産に協力をしてもらう必要から、どうしても主要食糧の計畫的生産をやる必要上、主要食糧の生産調整を行わなければならぬ建前上、この法律をつくるに至つたのであります。これはあくまでわが國の主要食糧の重要な国家的見地から、やむにやまれぬ必死の要請に基いた法律であるということを御了承いただきたいのであります。
 次に、この法律は、いろいろ説明をするが、結局は命令をしてつくらすのではないか、こういうお尋ねでありますが、一應國家が年間必要といたしまする所要量を大體割當することは當然であります。ただその割當にあたつて、それが戦時中行われたような強制力をもつて、むちやくちやにそれをやろうというのではなしに、あくまで耕作農民と納得し合つた上で、適地適作といいますか、當然こうしなければいけないという、實際に適應した方法によつてやろうというので、三段階ないし四段階にわたる農業調整委員會の議を經て割當をしよう、こういうのでありまして、この點は、單に上から、いかなる土地であろうと、これだけのものはむりやりつくれという意味とは違うのであります。その點は、十分農民の協力を求めませんと、政府が計畫するだけのものはつかめませんから、これはあくまで農民の協力を求めなければならぬと考えておる次第であります。
 次に、最近農林省は必要でない法律をあまりにも出す、こういうお尋ねのように伺つたのでありますけれども、少くとも法律を制定する場合は、今日の國民の社會的生活が、こういうひとつの社會的規絆といいますか、一つの道徳的な規絆を必要とする面から、こういう一つの規則を設けたがいいという要請に基いてつくるのでありまして、決して役人の獨想的な、縛張り的な感じから、法律を机上プランによつてつくるというのではない。今ここへ出しております法律も、日本の今目立つておる食糧の事情から、どうしても國は年間必要とする所要量をおさえなければならぬ、こういうやむにやまれぬ事情からこの法律をつくつたのでありまして、決して今日わが國の立つておる、またこれから日本が發展しようとする見地において、不必要に法制をつくろうとしておるものではないということを御了承いただきたいと思います。
 あとは局長から答辯いたします。
#16
○山添政府委員 豫算の概要は印刷物にして差上げたいと思いますが、大體平年にして年額約五億圓であります。それから、豫算がなければこの法律は實施に困難じやないかということでありますが、もちろん必ず豫算は要する、必要な經費は要します。
 それから、御質問のうちで殘つておりますのは、農業者と言い農民と言うことについての、字の使い分けのしてあるのはどういうわけかということでありますが、これは、協同組合法の方におきましては、農業を營む人竝びに農業に從事しておる人、言いかえますと農業勞務者、数は多くございませんが、そういう人たちをひつくるめて、きわめて廣い意味における言葉としての農民という言葉を使いました。この法律におきましては、農業を營む人、すなわち經營主體という意味としての言葉でございます。そういう區別でございます。
 なお、法案の濫發傾向がある。要綱でできないかというお尋ねでございますけれども、これは、供出の事前割當をいたすということでございますれば、やはり要綱のみでやるというわけにはいかないのであります。これだけの制度を立てますのには、そこに法的基礎が要る。また委員會の権限等、これは大臣であるとか、知事であるとか、市町村長が結局は指示をするのである。委員會はつけたりじやないか、と仰せになりましたが、これは、委員の方ですべて議決をする、委員會の権限が相當多い。かつ私は、實體的には、その委員會の議決による。委員會が主體であると思つておりますが、この委員會というものはこれまたその法律的な根據を要する問題の一つでありまして、そういうような意味合でこれは法律を要するものであります。
#17
○八木委員 第一點の豫算の関係はお答えが簡明過ぎてもう少し内容を説明願いたいのであります。概要五億圓必要な經費はこの法律の中にあるという程度ですから、これはいずれ印刷物をお配りになつたときに伺うことにいたしまして、留保いたしておきます。それから第二點の私の聴きたかつたのは、戰時中に失敗をして、農民がこりこりしておる作付統制令と本質的に同じものではないか、いや違うのだというところを、農家、農民諸君が十分に納得できるような説明がいただきたいのであります。どうしても私は同じだというふうな見解をもつのでありますが、そこを重ねてお伺いいたします。それから第三點の責任の所在が、事實上は議決權を委員會にもたしてあるから、獨断專行、命令生産ではないのだということですが、委員會が議決したとしましたことと、政府、安本、農林大臣と、上からずつと押しつけるものと違つた際の處置は、やはりごまかしてもごまかし切れない問題がそこに出てきまして、命令であるということに解せざるを得ないのであります。窮極その間に相談する機關、諮問する機関があるからとおつしやいますが、その法理的な基礎はやはり命令だ。こう思うのですが、お答えによるとやはりぼやけてきてはつきりしませんから、もう1度重ねてお願いいたしたい。具體的に言えば、委員會で議決したことと、政府の計畫意圖とが齟齬した場合にどれによつてやるか、この點であります。
#18
○井上政府委員 この法律が戰時中行いました生産調整のやり方と、今度のやり方とどうも同じではないかという感じが非常に強い。そういうにおいが多少皆さんにうつるかわかりませんけれども、戰爭中に軍部なり完了がありました生産調整と、これからやろうとするこの調整というものとは、まつたくその性質が異になつておると思います。御承知の通り戰爭當時の生産調整というものは至上命令に基くものであつて、それを農民が納得しようがしまいが、あくまで戰爭に勝とうとする、このために強制手段を加えたのでありまして、このために多くの農民の人々がどれだけ泣かされたかということは、あなたが御説明しておる通りであります。しかしこれからやろうとする生産調整は、日本を再建し、日本を立ち上らせなければならぬという、この立場をよく農民の方々に納得してもらつて、この立ち上ろうとする根本主體は食糧を解決しなければならぬ。解決するためには、お互いがひとつ食糧増産に協力しようじやないかというところにあるのでありまして、この建前が戰爭の時代とは全然違うということであろうと私は思うのであります。しかもそのやり方があくまで農民を主體にして、農民の納得の上に立つてやろうとするのでありますから、全然そのやり方は違う。農民が得心をせずにはなかなかやれない。ただその場合國の命令、國が計畫しておるものとあまりにも食い違つた場合はどうするかというものがありますが、その場合は一應上級機関に申立をすることができますし、また國全體で變更することもできることになつておりますから、命令權は絶對のものではありません。それはあくまで訂正も變更もできることになつておりますから、そういう點はただ獨断專行でこれを押しつけるということではないのであります。そういう點はどうぞ御了承いただきたいと思うのであります。
#19
○八木委員 どうも私の頭が悪いからか、お聴きすればするほどわからぬようになつてきます。質問は打切りますが、なるほど伺いますと、作付統制は戦時中のものとは動機において違います。しかしこれを受ける結果は罰則をもつて臨み、この危急存亡の際を救うには、農家、農民皆さんの力にまたなければならないのだということからきたんだと言つて説明する動機はわかりますけれども、結果はどうしても同じところになつておるということを、もつと時間をとつて逐條的に説明を申し上げないと不徹底でありますけれども、私はさような疑問をもつたまま、この際質問を打切るということを申し上げたい。以下二三點を繰返しても同じでありますから、疑問をもつたまままたの機會を得て御質問申し上げます。
#20
○田口委員 私もいろいろたくさん質問事項があるのですが。今の関連事項だけをまずお聴きしたいと思います。この前農業協同組合法案を提出したときに、農林大臣は、その提案理由の根本の趣意はどこにあるのかといつた問いに對しまして、根本は自由主義を貫くのだ、農民に自由を与えるのだ、これが本質的な提案の理由だということを言つておりました。私はその點については賛成でありました。ところがこの臨時農業生産調整法は、この協同組合を貫いておるところの自由の原則と正反對に、強制と断壓の思想で貫いておる點は、爭うべからざる一貫した思想であると私は考えております。今次官はそうでないので、納得ずくでやるのだということを盛んに言つておりますが、それならばその思想とこの法律の文字とは根本的に違つておりまして、その思想を織りこんで書き改めなければならないと思う點が多々あります。まずこれによつてどこにこの條文で自由の原則を貫いておるところがあるか、農民の自由を認めてやるという問題はどの一箇所としてもないと思います。ただあると思われるのは、間接に委員會制度をつくつて、その委員會が農民の選挙によつて構成される部面が相當多い、そこでいくらか納得ずくだというのと、ある異議の申立ができるというこの二點だけだと思います。ところがこの委員會と言いましても、國家におきましてこれは決議機関があつて、これは國家が命令をするときは諮問機關であつて、それは官僚が決定したものに對する異議とかいろいろなものはできません。それから片方の場合におきましても、町村長が會長を勤めているというような點、しかもこの異議の申立をしても、最後の決定權は彈壓であるという點から考えまするならば、この二つが自由の原則を認めているが、その自由というのは名ばかりであつて、なんらない。そこで私はこの法律のどこに、協同組合に認めたような自由の原則を織りこんでいるかということを、まず伺いたいと思います。
#21
○井上政府委員 民主主義下における自由の原則はお互いがその責任を遂行することにあるのであります。無責任な自由というものはあり得ないのであります。從つてわれわれは自分のプライドをもつて人間としての自由を主張する限り、あくまでその責任を遂行しなければなりません。農民の利己的な自由だけを許して國家を忘れるがごとき態度は非難をしなければなりません。今日日本の食糧事情がどういう事情であるかということをわれわれは考えた場合に、あくまで農民が國全體から受けているところのその土地、それからその經營、それからその将來というものに對して、十分な國からの保護と、それからいろいろな援助を受けるとともに同時にまた農民がそのつくつたものに對して一部國家奉仕の責任を伴うということは、私は當然でないかと考えております。それをただ自由だ、自由だということで、農家の自由自在にその耕作地を任しておきましたならば、今日やみとインフレの嵐の中に、農業生産は主要食糧をつくつております點では絶對やつていけない状態にあることは、皆さんの御承知の通りでありまして、そこでどうしても他の作物に轉換をいたしまして、できるだけその値段の高い、勞力の少い作物をよけいつくる。たとえて申上げまするならば、特に暖地においては最近砂糖きびの作付が非常に殖えております。これを一段つくりますと、やみに流せば八萬圓もの金がはいるということから、どんどん水田あるいは畑地に砂糖きびの作付が殖えている、こういうものがもし自由に許されるということになるならば、一體主要食糧はどこで確保できるかということがあり得るのでありまして、そういう意思があつてもその點は三畝なり五畝くらいで我慢をしてもらつて、あとはひとつ主要食糧をつくつてもらいたいというのが、われわれ農民に望む切なる希望であり、國家が要望するところであろうと思います。從つて私どもはただ農民に頭から強壓と弾壓をもつてそれでものが生産されるとは考えておりません。あくまで國は農民の生活を確保し、再生産を裏づけるところのいろいろな對策を講じまして、増産の意欲を高める方策を講じなければなりません。そういう對策を講じるとともに、できたものはできるだけでそれを公の立場に利用するようにやつてもらいたい。こういうのがわれわれのねらうところでありまして、農民がやみで横流しをしないような十分な裏づけというものをせずに、ただ農民がやみで流すのはけしからぬ、こういう理屈にわれわれは賛成できないのであります。農民が横流しをせずにいけるような農家生活を保證する政治を、われわれが一日も速やかに確立する方向にやらなければならぬ。そうしてつくつたものはできるだけ公正な立場でこれを出してもらう、こういう方向にもつていくところに、農民の眞に叫ぶ自由の民主主義的な生活が私は確立できるのではないかと考えております。
#22
○田口委員 私は決して農民の自由奔放なことを望んでいるものでもなければ、認めようとするものでもありません。ただ現在の段階において一粒でも多くの主食をつくりたいという國家の要請は、これは認めなければならないと思います。そこで多く生産するためにはかくのごとき彈壓法が必要なのか、それとも農民の創意とくふうと自由とを認めることによつてつくるほうが増産できるかという點において、私は政府と見解を異にする。農民は決して自由にしたからとて、國家と正反對のものをつくるということはなく、悪い者はほんのいくらもないくらい少いと思うのでありまして、ただ現に生産を低下させておるのは、あまりにも從來のやり方が彈壓的であるために、反動的にそういう方向に向つたのだと私は思います。そこで政府の方針に納得しなかつたという理由は、決して農民のただ利己的考えではなくして、政府のその他の政策について過ちがあつた。價格政策についても、資材についても、あるいは勞賃問題、いろいろな問題に對する施策に過ちがあつたために、農村に一部悪農が出てしまつたのでありまして、これを改善するならば、われわれは農民はかくのごとき彈壓法をつくらなくともついてくる、國家の目的に喜んで協力してくれる。施策は他にたくさんあると考えるものであります。そういう観點から考えて、まず國案の必要、農民の自由、兩方のものをにらみ合わせて、調和をとつた施策が一番いいのだ。そこで私はある程度の強制も仕方がないが、自由というものをまず生かさなければ生産意欲はあがらない。そこでこういう生産調整をつくる場合におきましても、自由というものを認める面と、國家の要請に從つて我慢してもらう面と、二つ必要があると考えて、現段階としてはやむを得ない。そこで政府は自由というものを根本的に否定するのか、それとも認めようとするのか、また認めるとするならば、この法案のどこで認めておるか、私は聴きたいのであります。
#23
○井上政府委員 よくわかりました。私ども何も農民の本能的な自由を、この法律によつて押えつけようというのではありません。あなたが今御指摘のように、農民がもつておるところの創意、くふう、努力というものを、百パーセント活用する自由は認めなければなりません。またこの法律をつくりまして、生産力を増強できるかできぬかという問題でありますが、そのことのためには、現在のような供出制度によつて割當がきめられるために、まつたく農民の努力というものが報いられない。これが非常に今日の供出制度の大きな缺陷であります。そこで一應割當をいたしまして、それによつてこれだけさえつくれば、あとは自分が汗をながしただけの價値があるという、働きがいのある生産意欲を高めさす、農民の創意とくふうと努力が、十分報いられるような方途を講ずることを目的としたのが、この法律であります。だからあなたの御主張通りの意見が十分この法律の中にはいつておりまして、今のように米がこれだけとれたからこれだけ出せというやり方では、農民がほんとうに苦んだ勞苦というものは、まつたく報いられないことになつておりますから、そこで植付前に大體これだけつくつていただけばこれだけ出してくれ、そうするならばあなた方がこれから肥料の施しぐあいなりいろいろ努力されて、これ以上おつくりになつたら、それはあなたのものになるのだ、全力をあげてひとつおつくりなさいということで、農民が努力を重ねれば重ねるほど、自分の収穫が多くなり、手取りが多くなつていくということになる法律であります。だからあなたの御主張される點は、まつたくこの法律の中で生きてまいるのでありまして、この點はぜひひとつ誤解のないように願いたいのであります。決して法規で縛りつけて、がんじがらめにして、農民の供出意欲を窒息させようというつもりで考えてはおりません。その點は誤解のないように願います。
#24
○田口委員 次官の趣意はよくわかります。その精神はそうでなければならぬということはよくわかるのでありますが、この法案の文字と次官の考えとは相當違つておる。それを私のほうから一々具體的にあげますと時間がかかりますので、この次に留保いたしますが、それより逆に一點でも二點でもいいから、次官のその精神がどの條文に織りこまれておるかということを、私は條文について聴きたい。次官の精神はよくわかつておつて、大いに賛成であります。ただ遺憾ながら、この法案の文字が違つておるということを指摘するのでありまして、その精神と文字が根底的に一致しておるというならば、御説明願いたいと思う。また私の方から指摘しろというなら、私は一條ごとにやつていきたいと考えておりますが、次會にそれは留保いたします。
#25
○北(二)委員 私はこの法律についてはかねて心配しておつたのでありますが、過般わが農民黨の議員三名と、農村團體の陳情の前で山添農政局長は、この法律はまつたく官僚的にやるのだ、農民の方は民主的にやつてくれということを言われたが、これは官僚的にやるのか、民主的にやるのかということを、一點だけ聴きたいのであります。
#26
○山添政府委員 これは言葉の使い方でいろいろあろうと思いますが、私は、いわゆる下からずつともつてきて、國家計畫とすべしというのか、いわゆる純粋なる民主的という側の議論なり、希望であろうと思います。ところがこれのやり方は、戦爭中における集中生産ではなくて、總合的に生産力をあげるということを念頭において、國家の食糧事情を頭において中央計畫を立てる。それがだんだん市町村までおろされていく。市町村においては各農家の事情を考えて、まつたく相談づくでやる。この事柄を私は申したのでありまして、しかして下からずつと積み上げたものがそのままの計畫ではないのだということを、私はそういう言葉で申したのであります。上と下との違いがあるということはそういう意味であります。
#27
○北(二)委員 しかしあのときの言葉はそういう意味でないと私ども思つてるのです。官僚的にまつたくやるのだということを言明されている。今ここでそういううまいことを言われても實は困るのであります。そのときの心境をはつきりお答えを願いたいと思います。
#28
○山添政府委員 これは御承知のように、割當をいたしますのにつきましても、一つの縣と相談をするのに数時間あるいは十数時間、あるいは二囘、三囘、こういうふうに――麥の面積の相談をいたしました、がそういうふうな手間をかけてやつておるのでありまして、上から何か面積をきめて、それでぎりぎりに押していくという考えはもつていない。また今後の本格的な法律の運用においては、まずもつて詳細なる統計資料、また從來の實績等を基礎におき、横から見ても縦から見ても、公正妥當なるところの府縣別計畫を立てる。それをもとにして十分知事さん等の意見を聴いてやつていくのでありまして、そういう事柄のやり方はいかなる言葉で表現されるかということは、これはそれぞれ言葉の違いがあろうと思います。從つて一體民主的であるか、あるいは官僚的であるかということは、私の解釋によれば、その人の態度ということでありますれば、これはそれぞれ批評がありましよう。私自身はそういうことは極力避けたい。いわゆる懇談的なやり方でやりたいと思いますが、事柄の起りは今のような手續によるのであります。その態度はともかく、辛抱強くよく言うところを述べ、納得づくでやろう、こういうことになるわけであります。しかしその計畫そのものはいわゆる下から盛上つたものでない。これは今の供出の事柄の性質上當然だと思う。そういう事柄は、俗に天降りということを言うのでありますが、まず中央計畫から市町村計畫に及び、さらにその不備なるところはずつと補正されていく。こういうことになるわけであります。
#29
○北(二)委員 よくわかりました。時間がありませんからこれでやめますが、私どもは下から盛上つてきたものが民主主義だと考えておるのであります。この點だけ言つておきます。
#30
○清澤委員長代理 それでは今日の委員會はこれで散會いたします。
   午後零時十七分散會
ソース: 国立国会図書館
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