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1947/11/20 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第49号
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1947/11/20 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第49号

#1
第001回国会 農林委員会 第49号
昭和二十二年十一月二十日(木曜日)
    午前十一時八分開議
 出席委員
   委員長 野溝  勝君
   理事 大島 義晴君 理事 萩原 壽雄君
   理事 北  二郎君
      佐竹 新市君    田中 健吉君
      永井勝次郎君    成瀬喜五郎君
      平工 喜市君    細野三千雄君
      小林 運美君    関根 久藏君
      寺本  齊君    中垣 國男君
      中島 茂喜君    佐瀬 昌三君
      重富  卓君    田口助太郎君
      益谷 秀次君    松野 頼三君
      梁井 淳二君   的場金右衞門君
      中村元治郎君
 出席政府委員
        農林事務官   山添 利作君
 委員外の出席者
        專門調査員   岩隅  博君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 農地調整法の一部を改正する法律案(内閣提
 出)(第五九號)
 自作農創設特別措置法の一部を改正する法律案
 (内閣提出)(第八六號)
    ―――――――――――――
#2
○野溝委員長 では會議を開きます。
 通告順によりまして質疑を許します。成瀬委員。
#3
○成瀬委員 私は農地調整法及び自作農創設の一部改正案が本委員會に上程せられまして、この問題につきましては、全國農民がひとしく待望いたしておるというような見地から、總體的な點につきまして、政府委員にお尋ね申し上げたいと思うのであります。
 前平野農林大臣は、就任早々第三次農地改革を斷行するというような、新聞などに聲明があつたのでありますが、間もなくいたしまして、それらは諸般の事情からいたしまして行過ぎであるというような觀點から、第二次農地調整法が終了とともに斷行しようというような意思の表明があつたわけであります。しかしながら私ども農村におけるところの今日の實態を考えてみますると、農地調整法の第一條にありますように、この法案が日本民主化のために、農民の解放というところのマツカーサーのあの昭和二十年十二月九日の土地解放令、農民解放令に基くものであるという點に思いを及ぼしてみますと、第二次農地調整法をもつて、また今囘提出されておるところのこの一部改正をもつて、そういつた目的を達するためにはあまりにも微力であるというふうに考えておるのであります。今日中央農地委員會その他等によりまして、農地調整法の内容におきましても、それぞれ地主の保有面積を認めておるのでありますが、それでも地主のわずかな土地を認めたことによつて、かえつて農村におけるところの農地改革が非常に阻害されておるという實態があるのであります。たとえば土地の各前を申しませんけれども、ある村におきましては、百町歩の農地を開放すべき状態にあるにかかわらず、いざそれを政府が買收する措置を講じてみるというと、それが七十町歩とか六十町歩に減つておる。この豫定面積の減少しておる内容を見ると、それは地主が自己の保有米をもちたいという食糧關係からきておるのでありまして、小作人といろいろな方法をもつて、土地を地主にまわしておるという點が各所に現われておるのであります。こういうような状態にあつて、漸く今日日本の民主化の脚光を浴びて解放されようとしておる段階において、こういうように地主の魔の手によつて、一方的な方法によつて、土地がいつの間にか地主の土地と化しておるということは、はなはだ遺憾千萬なことでありまして、かようなことが日本民主化のために大きな障害をなし、かつ所によりますと表面化いたしまして、各所に深刻なる農村問題が勃發いたしておるようなわけであります。それらは正規の町村農地委員會に提訴されておるとか、あるいはまた小作調停法を通じて繋争中のものも少なからずあるのであります。かような農村におけるところの紛争は、わずかの土地を認めておるところにあるのでありまして、この意味において第三次の農地改革を斷行して、ほんとうに自作農民といたしましての素質を具えさせることが必要ではないかと思う。今日の日本の農村はある一部の人々からは、最も惠まれた經濟的環境にあるように言われておりますけれども、その内容にわたつて深く檢討いたしてみますと、米麥を中心とするところの農民は、生産されたところの米麥は、ほとんど供米の方にまわされておるというようなわけでありまして、經濟的に何ら惠まれておりません。近く農業恐慌も豫想される際、完全なる農地の解放を行いまして、農業協同組合のそれらの組織の發達助長とともに、この恐慌に備えしめることこそ、最も緊喫なる今日の要件であると考えております。中途半端なところの今日の農地調整法をもつてしては、かような點に對處いたしましてははなはだしく不備であり、不徹底なりと考えておるのであります。かような點からいたしましても、どうしても第三次農地改革は第二次農地改革の進行途上においてやるべきものである。第一次においても、そういう觀點から第二次をやつておるというふうにも考えておるのであります。それで、これははつきりしたところの内容は私ども知つておりません。ただ憶測するところによりますると、その筋の方から、何か第三次農地改革をすることを好まないということのお話をちらほら聞くのであります。私どもは總司令部が日本の民主化を心から願つておる、それらの内容におきまして、ほんとうに農村の實態を把握していきますならば、これら農村のほんとうの要望するところの、完全農地開放を主體とする第三次農地改革をなし得るものである。かように考えて政府の一段の努力なり、またそれぞれの關係方面の努力によつて、これを強力に推進することが最も必要である。こういうふうに考えておるのであります。この點からして第三次農地改革をやるために政府はいかなるところの熱意をもつかという點について、お尋ねを申し上げたいのであります。
 それからもう一つは、新聞等によりまして、東北水害のときでありましたか、日時ははつきり今記憶しておりませんが、北海道の旭川の地主組名が、憲法第十一條、第十三條、第九十七條、第九十八條のそれぞれの項にあてはめて、この農地調整法が違反であるというような點から、國を相手に訴訟を提起いたしたそいうようなことが傳えられておるのであります。政府もそれに對して相當の研究をして對處しておるというようなことを聞いておりますが、それらが何を物語つておるかという點に大きな疑義をもちますので、この際においてそれらの内容をはつきり一般に教えていただきたい。かような憲法の精神をはき違えまして、そうして日本民主化のために最も大事なる農地調整法が憲法違反であるというような考えをもつて、いやしくも國を相手にして訴訟を提起する。というような地主の關係が各方面に存在しておることは、覆うべからざる事實でありまして、九州のある縣において、あるいはその他において反動的の地主組合等の結成もありますし、そういつた大小の地主組合が農調法の精神を理解せずして、各所に紛争がかもし出されておるというようなことは、この際それらの關係者がこの農調法の精神を一段と認識する必要があるという見地からいたしましても、さきの旭川の問題をこの際ひとつ、はつきりとお話を願いたいのであります。
 それから今と同じような意味におきまして、和歌山縣のある地主でありますが、この土地取上げにつきまして、司法關係と行政關係との取扱いがいずれを先にするか、いずれを後にするかという點について掲載されておつたのであります。今日われわれの常識とするところは、少くとも農地に關係する限り、農地調整法を通じてこれが解決を民主的にやるべきものであると存じておりますが、大正十三年、あの小作争議の深刻の場合におきまして、保守的團體の利益のために小作調停法が生れたことは御承知の通りであります。この時代遅れであるところの小作調停法による耕地取上げ問題が頻々として起つてまいつたのであります。それらによるところの取扱が未だ民主化されておらないとまでうわさされておる、司法關係のこれらの扱いによつて、著しく小作人には不利益に取扱われておるというようなことは今まで經驗するところでありますが、かような觀點から、一般農村におきましては、行政面に立つところの農調法の農地委員會の取扱によつてのみわれわれは救われるのである。逆に地主は自分たちの利益舊態依然であるというような觀點から、この司法關係によるところの小作調停法によつてやつていこうという考えから、かような小作調停法をしきりに利用するという點があるのであります。かような點については、國においてはその弊害認めまして、農林大臣、司法大臣、内務大臣等の共同通牒が發せられたやにも聞いておりますけれども、まだまだ末端の裁判所にはそれが周知徹底されておらないというようなことも聞いておるのでありまして、共同による通牒が、どういう内容のものが、どういう方法によつて發送されておるかという點も、この際この席上においてはつきりとお伺いしたいのであります。それからそれと同様に、第十條及び第十四條に間におけるこれらの小作調停法の扱い方は、問題が農地委員會等々によりまして處理されない場合においてのみ、公益上必要として小作官なり小作主事が調停に提起するというようなことがここに明記されておるのでありますが、かような點からするのでなしに、地主の一方的な利益のために、さいぜん申し上げましたような方法によつてなされておることは、この際第十條、第十四條を削除いたしまして、小作調停法を廢止するというようなお考えをもつておるか、おらないか。この際われわれはこういつた弊害のある小作調停法は、一日も早く廢止してもらいたい。かような考えでおるのでありますが、今囘における一部改正におきましても、これが出ていないということにおきましても、その意思いかんということをお尋ね申し上げたいのであります。
 その他逐條的の點につきましては、まだまだお尋ね申し上げたい點も多々ありますが、以上の點と合せまして、今日食糧確保のために何といいましようか、食糧管理法等の違反行為も多々各方面に起こしておるかのごとき小作關係の取扱いがあるのでありますが、これはさいわいにいたしまして、物納を認めないというふうに今度は決定されておることは、はなはだその當を得ておると考えておりますが、かような法文だけの決定で、はたして従来における物納小作料のような、非合法的行き方を防ぐことができるかどうかという點につきまして、非常に危惧の念を懐くのであります。農地調整法のそれらの内容が新聞、ラジオ、あるいはまた農地委員會等の委員の講習、講和によりまして、相當周知徹底されておるかのようでありますけれども、まだ各府縣における末端においては、この法の精神を理解せずいたしまして、いろいろな問題が惹起いたされておりますが、國はこの際にこの進行途上におきましてどういうふうにしてそれらの末端に至るまでの周知徹底に對して一段の努力をするお考えがあるかというような點につきましても、お尋ね申し上げたいのであります。
 もう一つは今日の農地の集團化ということにつきましては、いろいろ中央農地委員會におきましても、論議を鬪わしてまいつたのでありますが、農地の集團化ということにつきましては、日本の農村の健全化のためにぜひやらなければならない。御承知のようにアメリカは二億萬町歩の耕地の上に、單位農家あたり數十町歩、數百町歩の農業經營をやり、近代農業の粹を集めてのそれらの結果が、農業生産に非常な成果を收めておる。飜つて日本の農村はわずかに五百八十數萬町歩、一單位農家經營が八段七畝を下まわるという經營であるし、原始的農業經營というのが、日本の農業生産に少からず惡影響を今日まで續けておる。こういうようなことを考えてみますと、この際に農地改革を徹底化いたしまして、今日の當面するところの食糧の問題、農業生産力の増強のために努めなくてはならないのでありますが、かような點から私どもは農地の集團化ということにつきましても、大いに關心をもつておりますけれども、今日の社會的情勢からいたしまして、容易にそれを實現することはむずかしい點もありますけれども、徐々にそれをなす必要に迫られておるというふうに考えておるのでありますが、かような觀點から、三段以下の零細農家というものに對してどういう取扱いをするか。今までの國が買收計畫を立て、そうしてこれを賣渡す場合におきましては、自作を創設する上において、零細農家には賣渡さないというような點が流布されておるし、また聞けば政府におきましても、そういうことを通牒いたしておるというふうにとられる。これは誤解であるかどうかしりませんが、聞及んでおります。こういうような點におきましては、今日日本の農村の全體の三割四分程度を占める三段歩以下の零細農家に非常な脅威を與えておるのであります。これらの農家に對する賣渡しをやらないというようなことがあつたならば、これに對する措置がもし一歩誤つなならば、大きな社會問題化するということを憂えておるのでありまして、かような點についてはこの零細農家に對する明らかなる指導方針を講ずべきでなかろうか。それらの農家に對しましては農業協同組合の形をもつてそれら零細農家も集團經營化せしめて、所期の目的を達することも大いに考えなくちやならない。それは全國の各地に散在する特殊部落の農業經營の内容が、一致して一段、二段、三段という零細農家によつて形づくられて、悪い田を主としてつくつているというような點が、これらの人たちの社會的地位、經濟的な環境におきまして、非文化的な點において、われわれの國民生活の中に少からぬ暗影を投げかけている。私どもはかような點においてそれらの生活基礎をなす零細農家、殊にそういつた特殊部落に對する考え方を一歩誤ることになれば、たいへんなことになるのでありまして、こういう點も政府は大いに思いを及ぼしまして、過ちを未然に防止する方針をとらなくちやならないと考えるのであります。從つて單なる通牒によつて零細農家には自作農としての經營を認めないというようなことでなしに、自作農としての經營を集團化の方面から保護助長せしめていこうというふうになしてもらわなくてはならない。かような點についても政府が集團化の方法として、どういう考えをもつておるかというような點についてお尋ね申したいのであります。
 またもう一つは、各町村農地委員會におきまして、民主化された農地委員會においては相當の成果も收めておりますが、山間僻地その他において、未だ封建的な村であるところの農地委員會の活動状況は、はなはだこの精神を没却いたしまして、いろいろの怨嗟の的になつております。從つてかような點におきまして、たとえそういつた農地委員會の委員に對しましても、法においては罰する規定がないのであります。いやしくも町村の農地委員會の委員たる以上は、他のいづれの者よりもこの法の精神をよく理解し、この法の精神達成のために努めていかなくちやならないにかかわらず、その地位をよいことにいたしまして、まつたく農民の土地解散のために逆な面に走つているというようなことにつきましては、各方面からも農地委員に對する罰則規定を挿入してもらいたいという意見があるのでありますが、これらに對して、この際に不法なる農地委員に對する罰則規定をひとつ附け加えていく必要がなかろうか。これらについても御意見を伺いたいのであります。
 それからもう一つは、自作農の方です。海外の引揚者に對しまして、小作人と海外引揚者との間に生活上著しく不合理である。たとえば小作人よりか海外引揚者の方が貧困の場合においては、農地を自作せしめるというような昨日の御説明でありましたが、これは私どもはどうもその説明の内容において不思議にたえない。今日日本における地主階級の人たちは決して惠まれておりません。一部中に冨裕な地主もありましようが、三町、四町以下というような零細的地主の存在というものは、戰時中から現在においても、依然として經濟的に惠まれておりませんが、それらのそれらの經濟的に惠まれておらない地主の人たちから、土地を返還してもらつて、そうして經濟的な根據を農地によつてやつていこうということは、ただ單に食糧確保という面のみから判斷すべきものではないのでありまして、かようなことは終戰この方において、何十萬という土地取上げ問題の件數に上つておることを考えてみますると、私どもは常に農地は小作人のために解放するのでない。貧困なる小作人のために解放するのでない。農地改革は日本の民主化のためである。またひいては食糧確保のために農地を解放するものであるという點において、われわれは働いておるのであつて、いかにも經濟的關係からすれば、小地主の人たちに對しましても同情の念を禁じ得ないのであるけれども、食糧の確保と日本民主化というところの二つの線において考える場合、八千萬同胞、民旋のこれらの建設のために、新國家建設のために、地主階級の人たちは小農のために犠牲の立場におかれるのでおるのであるから、このところ大きい考えをもつて、われわれのこの運動に對しても、理解をもつてもらいたいというふうに、農民組合の運動も進めてまいつたのであります。過去微百年の間農奴のような状態にあるがために、この際にこそ地主に一つの報復的な考えをもつてやるのだという考えであつたならば、農民組合のほんとうの精神を理解しておらないものである。こういうふうに私どもは農民の方面に微力ながら指導してまいつたのであります。そういうふうな點は何を物語ろかと申しますと、きいぜんもお尋ね申し上げましたように、日本の零細的な土地にみんなのものがしがみついて、いろいろの爭いを生じておることは、あたかも支那における千五百年前、あの均田法によりまして、いろいろ均田收授の方法が行われたのでありますが、ああいつた支那における千五百年前の事跡、また千三百年前の日本の大化の革新等におけるところの、あの農地改革が失敗したということは、あの當時における農民の一つの自覺が伴わなかつたということと、また經濟力、政治方面の相違が、そういつた點を失敗を導いておるというような點があるのでありまして、かような點をわれわれは歴史的に研究してみますると、まずこの際農民に對しをしては、この與られた土地から最高の生産を高めるために進まなければならないし、地主もそういつた觀點から、農地を心から解放するところの精神をもつて進とでもらわなければならぬというような點から、話をいたしておるのでありまして、私どもかような點から考えてみますると、今日いかに經濟的に貧困な立場、同情すべき立場にあるといえども、小地主の人たちは技術的に農業生産の面において劣つておるというような點、また永年における農民の解放なくしては、農村の民主化はないという點から考えまして、強力にこれを推進しておる。ただ單に海外から引揚げた人たちに對して、生活上の同情からそういうことをなさしめるならば、今日そういうような考え方をもつてすれば、今日の日本の各所におきましては、同情すべきところの小地主の人たちはたくさんある。小作人というような人たちよりか、地主の人たちにおいてまことに經濟的に惠まれておらない人たちがたくさんある。こういうようになつてまいりますと、この農地改革の精神を没却することになつてくるというふうに考えるのであります。農村民主化のためと、また食糧増産のためには、涙をぬぐつて馬謖を斬るという考えの型で進まなければならないのでありまして、海外の引揚者に對しましても、同情も私どもやぶさかではありませんけれども、ひとり農地の解放に關する限り、かような片手落ちのことをいたしましたなれば、その弊害たるやはり知れないものがあるのでありまして、かようなことはこの際大いに反省をいたしまして、そうしてさようなことのないように、農地解放のほんとうの精神に立却いたしまして、やつてくれることが、最も大切であるというふうに考えておるのであります。そのような點をお尋ね申し上げまして、大體私は次には逐條的にいろいろとお尋ねを申し上げたい。以上總體的見地から政府委員の御答辯を煩わしいたいのであります。
#4
○山添政府委員 非常に擴範なる御質問でありまして、また成瀬委員はこの方面の専門家でおられるわけでありますから、私は簡單にお答えいたしたいと思います。
 第一に、第三次農地改革を即時斷行する意思ありや否やという問題でありますが、これは國務大臣から答辯されなければならない問題でありまして、私ども事務當局といたしましては、まずもつて現在遂行途上にありまする第二次の改革を完全に徹底し、かつ速やかに完了するということに全力をあげております。それが完了しました曉においての、農地に關する方針、方法等につきましては、これはいろいろそれぞれ考えてはおりますけれども、それを述べましても、これは結局私見にわたることになりますので、ともかくわれわれといたしましても、今はわき目もふらずに、第二次農地改革を速やかに徹底し、かつ完全に行うことに專念をしておることを申し上げておきたいと思います。
 その次に北海道の旭川の裁判についてのお尋ねがございました。詳細のことにつきましては、文書を取り寄せました上でお話を申し上げたいと思いまするが、この内容はきわめて簡單なのでありまして、そもそも憲法違反であるとかいうふうに訴状の中にはうたつてありますけれども、内容から申せば、ある旭川市の土地が買収になつた、その土地は近く用途を變更するのを相當とする土地である。これを農地として買収する。農地ではありますけれども、そういう意味から他に用途か轉換されるべき土地を買収の對象にすべきにあらず、こういう簡單なことでありまして、これについて憲法違反とか、いろいろな文句はあげてありまするけれども、讀んでみますと、何ら憲法違反という論點には、實質的にはふれていない問題であります。これはこちらでも三囘ばかり人も参りまして、大體結末はついておると思います。取調べまして後に御報告いたしたいと思います。
 それから土地の取上げの問題に關連いたしまして、農林省、内務省、司法省の参事官の名前をもちまして、土地取上げの防止、取締りの徹底、司法當局につきましても、これらのことについて十分その運用よろしきを得てもらいたいという通牒は夏ごろと記憶しておりまするが、發したのであります。當時鹿児島縣その他に小作立入禁止というような、今から考えると大分古風な、一昔前の判決と言いますか、假處分をやつたところがあります。私どもも食糧増産の緊急のときに、田植を前にしてそういう措置が出ることがいいか悪いかということには、非常な疑問をもつわけでありまして、さようなこともあり、通牒を發して、土地取り上げに關する不法不當な行為の取締り、またそれに對する心持等についての通牒をいたしたのであります。したしこの土地取上げに關する問題は、申すまでもなく現在の農地改革の進行と同時にそれ自身の結果として、またその問題を離れましても、今の食糧事情、あるいは他に仕事が求められない事情、この一般の社會、經濟的事情から頻發しているのでありまして、なかなか一つの通牒だけではその目的を達することは至難であります。また今までの状況によりますと、これに警察官等の協力を求めるということも、實際問題として望みがないのでありまして、局に當ります者が、この方面になお今後とも氣を配り、強力に努力いたしますと同時に、やはりこれは農民自身の團結の力によるということが最も必要であります。そういう農民組合等の團結等の力によりまして、公正なる小作人の地位が保持されるというところでは、この土地取上げの問題も、まず比較的ないわけであります。やはりこういう問題は法律上の問題でありますと同時に、ひとつは社會上の問題でありますので、その解決の方法といたしましても、ひとり行政ないしは法律的な主段のみならず、社會的なそういう運動と申しますか、そういうことの防止に役立つようなことが當然必要であり、またそういうことを期待いたしておるのであります。それから、とかくこの小作調停法が保主的に運用されるということにつきましては、これは一般的な輿論、觀察になつておるのであります。これにつきましては、最近司法省から何から通牒は出されたようなことを承つておりますが、この點につきましてはなお取調べまして、お答えをいたしたいと思います。その行き方といたしまして、われわれの考えといたしましては、農地調整法によるところの農地委員會の判斷、その裁定、これが優先的というよりも、むしろそこで片づけられるべきものである。その運用によるべきものである。こういう觀念はもつております。しかしながら今ありますこの小作調停の制度を、即時に廢止するや否やということにつきましては、これを廢止するほど一方の農地委員會の組織なりその運用なりが、まだ完成の境に近づいているわけでもございません。でありますのでこれは當面兩建てでまいりまして、そういう農地關係の事柄はまず農地委員會において解決するというような指導を考えておるのであります。小作調停のことにつきましては現在の問題といたしましては、實質上調停委員になるような人に理解のある人を選ぶ、この人によるところの運用について考慮が十分拂われるようにということを絶えず要望いたしておるのであります。と同時に、なお今囘の法律改正におきましても、小作調停によるところの調停は、當然これはいはゆる合意でありましてこれは判決ではないのであります。從つて調停にかかりました件といえども、やはり農地委員會の承認を受ける。この合意ということを含ませます結果、そういうことになるわけでありまして、もとより公正なる當事者の合意でありますから、普通問題はないと思いますけれども、もしその開停途上において、耕作者の方で眞意によらざるところの合意であるというようなことでありますれば、これはまた農地委員會の方でそれを改めて處理をする。非常に例外的な場合でありますが、そういうこともあり得ようかというふうに考えているのでありまして、いずれにいたしましても、農地に關する問題は、この農地調整法によるところの農業委員會によつて處理していくことを原則とする。そうして裁判所によるところの調停は、將來これの措置につきましては、状況をにらみ合わせて考えていきたい。こういう考えでいるわけであります。
 それから現物小作料を耕作者の方で希望する場合には認めるといういわゆる代物辯濟の規定を削りましたけれども、それによつてはたして徹底的なる取締が期待し得られるや否やという點の御質問でございます。それは岩手縣等刈分小作の行われているような所では、農民の意識も非常に水準が低い。そこで何ということなしに、まあ今までの慣行通りというようなことが行われている場合が相當あるように聽いております。そういうことが行われますのも、もとより農民自身の知識の問題でありますと同時に、一方法律の但し書が惡用されるということがありますので、今囘は言いがかり、あるいは言い逃れというような、脱法の穴を塞いだのであります。しかし、それのみをもつてしては、この農地問題のごとき、こういう社會、經濟的な事情は一擧に解決がつくというようなことは、期待できません。從來といえどもこの農地改革につきましては、政府はあらゆる手段を盡し、また各方面の協力を得て、これの啓蒙宣傳の農民に對する徹底を企圖しているのでありますが、今後ともこの方面のことにつきまして、いろいろな手段をもつてするところの宣傳に努めますとともに、また取締りの方面からいたしますれば、こういう拔け穴のようなものがなくなつたのでありますから、いやしくもその事實があれば違法だということは明瞭でありまして、相當こういう遺憾な事實の發生に對しては、將來強硬に取締りの必要があり、またそういうふうにいたすつもりであります。この事柄はひとり小作者と地主との關係だけではない。一面から言えば供出の關係にも響いてくるの問題であります。斷固こういうことは徹底をいたしたいと思つております。
 それから農地の集團化の問題につきまして、特に小さい農家についての關係においてお尋ねがありました。これは健全なる自作農として農業に專心する見込みのある者という範圍につきましては、大體二段歩未滿の人は、これは農業に專心する見込みのある者として取扱わない。しかしながら農地の非常に少い島であるとか、あるいは山村等におきましては必ずしも二段歩にとらわれる必要はなく、もつと小さい人でもよろしい。あるいは果樹、酪農等によつて、土地の面積よりもむしろ別の意味で非常に高い收入をあげておる。かような特殊農家についてもまた別である。しかし一般的には二段歩未滿、北海道では五段歩未滿の農家には、土地を賣渡さないということを通牒をいたしております。しかしながらこれはもとよりその人の耕作權を尊重するということとは、兩立といいまするか、兩立することは當然でありまして、政府がその人に土地を賣渡さないで、第一に、政府が買收しないところの他の小作地と政府がその買收いたしました二段歩未滿の農家の耕作をしておる土地とを交換分合して、そうして二段歩以下の農家は、相變らず別の土地について小作者の地位におるわけでありますから、政府としては、他のそれ以上の農家に土地を賣渡すという手段をとりたい。そういうことを第一の原則にいたしております。かりにその事柄が手取り早く行きません場合におきましても、當然小さい農家の方々の耕作權はこれを保障しておるのでありまして、政府はそれに對して何ら耕作權を解消するというようなことがございませんことは御承知の通りであります。成瀬委員の御意見は、進んでそのような農家の人たちに、安定したところの農業者として將來の希望を與え、その發展を庶幾するために、協同組合の組織によりまして、そういう人たちの土地を持ち寄つて、これを相當規模の農業經營に切りかえていつたらどうか、こういう御意見であります。そういうことができますれば非常に結構なことだと思いますが、ここに考えなければならないことは、現在の状況におきましては、また今後も相當そういう期間が續くと思いまするが、狭い土地にわずかな面積でありましても、農業に從事する以外に他に職がない。こういう事態が現にあり、またやはり續くだろうと思うのであります。おそらく國全體としても、相當程度の失業者が顯在的にか、潛在的にかあるという状況は、相當續かざるを得ぬのでありまして、その意味から申して、從來適正規模ということを考えておりましたもつぱら能率本位の獨立自作農という觀點は、大幅に現實の問題として修正をされたというわけでありまするが、さてそれに代うるに、しからばただちにそういう小さい人が協同組合組織によつてうまくやれるかどうかということにつきましては、これは今後試むべき問題でありまして、必ずそれでいくかどうかというところまではまいつていないと思います。そういう農家の人たちが協同組合をつくつて、耕作についても相當の能率をあげると同時に、むろんその場合には大部分の勞力は餘剰になるわけでありますから、これを農産加工その他農村工業の方に向けていく、こういうことと併せた指導ないし施設でなければならぬのであります。一面全體的に申しますれば、國の經濟が早く囘復をいたしまして、むしろ人手が足りない。一段歩や二段歩の農家はそこから離脱をしていつて、他の職業について、その勞力を十分に利用するという状況が一番望ましく、過小農の處理、整理ということが、國全體として一番望ましい状況でありますけれども、それも當面期待できないということにも考えられますので、成瀬委員のお話になりましたようなことは、研究の問題、試むべき問題の一つであろう、かように考えるのであります。
 それから不正なる農地委員に對して罰則規定を設けることはどうかということであります。農地委員は公務員に關する身分をもつております。從つて當然官吏と同じように、收賄というような事柄、あるいは一定の利益というようなものを得て不公平な取扱いをするということでありますれば、これは當然刑法の適用があるわけであります。
 それから海外から引揚げてきた人の問題でございますが、これは土地取上げということに關連する問題でございます。しかし土地取上げの問題については、もとより農地調整法第九條に書いてある通りの運用方法でありまして、これについて別段最近に至つて、當初からの方針を變更したというようなことはございません。これは耕作權の尊重、しこうしてそれが土地を返還した方がいいという場合には、むしろ土地所有者の方に耕作をせしめれば、全體的に生産力も上がる。そういうような場合も、實際上は今ほとんどないと思いますが、そういう理論的な運營をいたしておるのであります。實際問題といたしまして、この第九條の運用をめぐりまして、いろいろな事態が起こるのであろうということは當然想像もされ、考えておるところであります。そこで海外から引揚げた人といえども、あるいはその他の事業で他に職がないという人といえども、他に職がないということによつて當然農地の返還を受ける。こういうものではないわけでありまして、これはいかなる方法をもつてしても他に生活の方法がないというような場合におきまして、しこうしてその土地返還ということが行われても、それは一人の耕作者に過大なる負擔をかけるものではないというような場合に、諸般の双方の事情を考慮して、農地委員の方でそういう方法を採用するわけであります。これは農地委員長會同をやりましても、絶えず農地法の要請をするところと、一種のヒユーマニズムと申しますか、その要求するところがぶつかつて、身につまされると同時に困難な問題であります。これに對してわれわれが申しておりますのは、今あげましたように、絶對に他に生存の途がないのじやないか。そういう場合はほとんどない。あつても非常にまれな場合であります。昨日説明いたしましたのは、現にそういうような理由で小作者との間に話がなつて、土地の返還を受けて、今二段なり何なりやつているところが遡及して買うという規定を今囘非常に明確にいたしましたので、いやしくもその合意の返還でありましても、たとえば手續に違うとか何とかいうことでありますれば、たちまちまた政府に買われてしまうというような事態が起る。ところがそういう場合に政府がまた買つてしまうということは、これはいかにも不合理ではないか、また忍びないではないかというので、從來の小作者と現に耕しておる地主の状況とを比べて、いかにも地主の方が氣の毒だ、こういう場合に政府が買わないという規定を設けたのであります。なお旭川の問題等につきましては後にお答えいたしたいと思います。
#5
○成瀬委員 海外引揚者に對するところの土地取上げにつきましては、大體そういう觀點から認められるということになりましたが、なお一層私ども研究してみたいと思いますが、その際に農地の細分化ということを防ぐ點から十分にお考え願わなくてはならぬ。他に望みの職がないということがあれば、これはまた生活保護法等の法律によりましても保護される場合があるのでありまして、土地に關してのみ同情して、そうして農地の細分化を促進するようなことがあつたならば、それこそたいへんなのでありまして、かような觀點からひとつお考えおきを願いたい。かように考えておるのであります。それかう農地の取上げが暗々裡に行われておるとか、あるいはまた買收の進行を阻害しておるとか、あるいは米の物納を防ぐとかいうことについては、もつぱら社會的力によつてのみ達成していこうというような御期待があるのでありますが、もちろんお説をまつまで、もなくそういう力によつて今月相當の成果をあげております。しかしそういつた社會的力の自然發展にのみ依存するには、あまりに深刻な現在の農村事情ではなかろうか。たとえば高知縣のごときにおきましても、いろいろの地理的關係から、山村僻地におけるところの農村状態は、非常なみじめな状態である。今申し上げましたような、いわゆる農調法の趣旨が徹底せずして、未だにもつて豫想外な状態のもとに農地改革が逆に進行されておるという形にあるのでありますが、かようなことをもつてすれば、二箇年間にこの第二次農地改革を斷行することは思いもよらないことと思つておるのであります。農民組合等の發達する地域におきましては、御期待に副うこともできるでありましようか、かような僻地におけるところの農民が民主的に起ち上るということをおもむろに待つことについては、はなはだ意を得ておらないと私ども考えて、しばしば健全なる農民の發達のために、農村民主化のために、農民組合法等も國會において立法化して、そうして農地改革のために、農村建設のために進んでいくことを、同僚にも申してまいりました。さような點において勞働組合法、あるいは勞働基準法等の、それらの似通つた意味における農村に對する農民組合法というような點において、山村僻地の農民をひとつこの際引出してくるというような立場から、農民組合法の制定も必要でなかろうかと思うのであります。かような點について政府はどういうお考えをもつておられるか。私どもそれをよく研究いたしまして、できる限り早く、今申し上げましたような點において進んでいきたい。
 そのほかに農地委員會の費用でありますが、これはしばしば全國の農地委員が東京にも再三集まりまして、最も妥當なる要望を各關係方面にも陳情したということを私ども承つております。東北方面においては、百名あるいは、八十名というふうに、集團的な辭表提出が行われている。折角訓練し得たところの事務に慣れた農地委員が、待遇が惡いために生活が維持できないというような立場からいたしまして、今申し上げたような行動に出ていることは、この農地改革の重要なる進行途上において、最も歎かわしい状態であります。政府においてもその點を重要視しまして、しばしば大藏當局とも折衝してまいつたのでありますが、その結果十二億の追加豫算を要求いたしたのであります。ところがそれが本豫算面におけるところの追加總額は六億二千そこそこであるというふうに出ております。前平野農林大臣は、その六億圓というものは今當分の間であつて、またさらに二十二年度の下期においては、やはり六億圓の追加豫算を計上して、そうしてこの農地改革を強力に進行していくものであるということも、私は直接聽いたのでありますが、今の日本の國家財政の關係からいたしまして、はたしてそういうことができるかどうか。私どもはこの際においてこそ、當初の目的の通りに十二億の金を追加豫算において確保することが必要でありますが、かような豫想の半額にも滿たないようなことで、はたして今日の農地委員會の活動を強力に推進し、活溌ならしめることができるかどうか。それはもちろん農地委員會の委員の手當等の改善によつてのみされるとも考えられないのでありますが、かような豫算面からするところの點において、政府當局は現在の六億二千數百萬圓で、はたして自信をもたれておるかどうかという點についての説明を願いたいのであります。それから日本の一般農家においては、農地調整法の第十七條の四ないし五において罰則規定がありますが、これらは相當農地改革進行の上に大きな力をもつておるようであります。しかし未だに拔かざる寶刀で、法を適用したことがないというようなことが、しばしば法を輕視するような傾向に進みつつあるのであります。今日ただいまにおきましては農林當局において御調査の上においては、どの程度の件數がこの第十七條の四あるいは五に該當するものが現われておるか、これは司法關係のことでありますが、知つておられましたならば、この件數が最近において統計的にどれだけ現われておるかということを伺いたい。それによつて私どもいろいろ参考とすべき點があるのであります。
 以上の點についてお尋ね申し上げまして、私は今日の總體的な質問を打切りたいと思います。
#6
○山添政府委員 先ほどお答えいたしました中で、一つ落ちておる點がありますから、附加えて申し上げておきたいと思います。なるほど土地取上げ等盛んに行われましたけれども、その事柄が政府の買收する面積には影響がない。これは從來遡及方針ということをとつております。法律にもそう書いてあります。今囘それを特に明確にいたしましたので、今の小作地が實際上減つたということによつて開放が面積が減るということはございません。と同時に、今まではともかく一般的な農地改革の思想の普及、それからわかりやすいものから處理していく、こういうことに全力を注いだのであります。これから本年中で農地の買收を終りますれば、來年度においては今度はあとをきれいにするといいますか、詰めをするといいますか、一種の寄せにはいるわけであります。嚴密に調べて完全に、かつ徹底してやりたいと考えております。それから特に山村等におきましては、何と申しましても非常に思想が低調である。この覺醒を期するということは、啓蒙宣傳と同時に、お話のような、農民の團結を進めるということに當然期待しなければならぬのではないかと私どもも考えているのであります。
 それから農地委員會の費用についてでありまするが、現在追加豫算として六億圓認められましたが、もとよりこれをもつて足るわけではございません、當時の要求額の半ばでありまして、足らない部分は通常議會において措置するということに大藏省、農林省話合がなつております。ここの金額をいかにするかということにつきましては、實際の實情を調べて必要額を計上したいということで、農林、大藏と相談の上で、地方の農地事務局での實際の場合について所要費用の算定を行つております。これに基いてさらに追加を要求する建前になつておるわけであります。
 それから第十七條の四の罰則規定が適用されたものの件數ないしは事例については、調べましてお答えをいたしたいと思います。
#7
○野溝委員長 田口委員
#8
○田口委員 私は全般的なことは留保いたしまして、次の點をちよつとお伺いします。
 自作農創設特別措置法の第二條に牧野の定義が掲げてありますが、これは牧野法にもこれと同じような定義が書いてあります。これは牧野法の制定當時から非常に議論がありまして、牧野というのは家畜の放牧、採草をしているものを言うのだ、客觀的に見て放牧採草地という現状がある場合に言うのだというのと、それ以外の目的をもつているものもはいるのだというように、いわゆる客観的條件と主観的條件と兩方含むか含まないかということで、相當議論が闘わされた問題であります。ところがこの規定によりますと、やはり牧野法と同じように、その議論がそのまま移されているような感じを受けるのでありますが、牧野というものは、客觀的條件だけでいいのではないか、目的をもつてやるというような、あいまいなことは拔いた方がいいのではないかというふうに考えられるのであります。一例をあげてみまと、放牧または採草を現にしておるものがこの自作農創設特別措置法の對象になるべきであつて、そういう目的で將來されるというようなものはおそらくはいつてこないだろうと思います。ところが牧野法とこの條項は同じようでありますが、その目的に供せられるものがはいるのだというふうに、現在畜産局長をしている遠藤さんは言つておりますが、それと同じ條文だと、やはり目的に供される土地もはいるという、同じ觀點になるのではないかと思いますが、これは間違つているのではないかと思います。その點に對する定義を聽きたいと思います。
 それから第四十條の三の二號に財産區という字句が使つてありますが、これは舊町村制あるいは市制等にも使つておりまして、これもまた學者間において非常にむずかしい議論がたたかされておりますが、ここに言う財産區というものはどういうものを言つているのかということを承わりたいのであります。
 それから、この條文に關連して、牧野組合というものは一體どこにはいるか。これは第四號の「省令の定めるところにより」というところで牧野組合などを指定されるかと思うのですが、牧野組合が牧野を所有している事例があるかないか承りたい。またあるとすれば、牧野組合というものもはつきり明文化しておく必要があるのではないか。特にここに「省令の定めるところにより」とありますから、これにはいると思いますが、この省令の定めるところとはどんなところをねらつているかをまず承りたいと思います。
 それから入會權によつて放牧、採草している場合がたくさんあるのでありますが、この入會權の場合は、これを解體して個々の所有に分割する意思なのか。それとも一應所有主體は分割するけれども、利用は入會權として扱うという考えであるかどうかを承りたいと思います。それから牧野の買上價格は政府として大體どれくらいに考えておられるかを伺います。
#9
○山添政府委員 第一の御質問の目的は、主觀的意思でも何でもないので、現に客觀的にそれに供しているということです。これは耕作方面に供せられるというものではなく、農地として現にやつているということで、本人の意思ではありません。從つて現在原野であるけれども、將來するつもりであるというものは含みません。それから財産區というものは部落のことでありまして、今度の地方自治法にも財産區という言葉が使つてあるようであります。
 それから牧野組合でありまするが、ちよつと速記を止めてください。
#10
○野溝委員長 速記を止めて。
    〔速記中止〕
#11
○野溝委員長 速記を始めて。
#12
○山添政府委員 それから省令で定めるところにより農林大臣が規定するというのは、優良なる種畜を供給する牧野でありまして、これは二百町歩というような相當面積をもつて、相當種類の家畜を飼つて優良なる種畜を供給するというものは、どうしても必要でありますので、そういう種類のものを指定して買収しない。それから牛乳等の乳幼兒の食糧供給上缺くべからざるものは、買収等によつて生産力を落すことがないようにしたいと考えております。
 それから、入會權の問題でありますが、農家の人は入觀權をもつております。土地の所有權は市町村か、もしくはここのいわゆる財産區が權利の主體であろうか思いますが、市町村や財産區が所有權をもつておつてその上に農民が入會をしておる。これは原則的には買收の對象にならないわけでありまして、現在の状況を續けることになるわけであります。ただ土地は廣いが入會權者としてはごくわずかな人たちがもつているということであれば、その人數にその地方で認められる面積をかけたものを超過する部分を買收するということになつておりますが、實際問題としては、市町村や財産區のもつているものは、多人數の共同の用に供せられるものということで、今囘の買收の對象にはなりません。
 それから牧野の買上げの價格の點でありまするが、これは抽象的に申しますれば、中央農地委員會において未墾地と採草地の價格がきまつておりますが、牧野も同樣であります。すなわち附近の類似の農地の價格の四割五分以内できめるということになつております。そこでこれは内地と北海道とはたいへんな相違があつて、その附近の開墾をすれば、この程度の畑になるであろうというような、畑の公定價格の半分以下できめる。これは牧野の場合におきましては傾斜地もありましようし、いろいろ状況がある。それについては評價の適正を期さなければならぬと思います。
#13
○田口委員 今の局長の解釋は獨善的解釋で、一般の人はそう解釋しないおそれが十二分にある。特に牧野組合法制定當時相當議論が闘わされておつたのでありますから、この「目的」という文字は削つた方がいいのではないかというように考えられます。
#14
○山添政府委員 ただいまの御説につきましては、農地調整法にも本法に申しました「耕作ノ目的ニ供セラルル土地ヲ謂フ」とあります。耕作の目的に供せられる土地というのは、もつぱら現實に農地を指しておるのであります。自作農創設特別措置法におきましても、農地關係におきましても、目的に供されるという文字を使つておる、しかして客觀的にその事實に基ての状態によつて判斷することに解釋がなつておる。何か特別な論戰があつたということを知つておる人は別ですが、一般の場合は大丈夫だと思います。
#15
○野溝委員長 それでは本日はこれにて散會いたします。
   午後零時二十三分散會
ソース: 国立国会図書館
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