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1947/08/07 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第8号
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1947/08/07 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第8号

#1
第001回国会 厚生委員会 第8号
昭和二十二年八月七日(木曜日)
    午後二時十三分開議
 出席委員
   委員長 小野  孝君
   理事 山崎 道子君 理事 飯村  泉君
   理事 武田 キヨ君 理事 有田 二郎君
   理事 大瀧亀代司君
      太田 典禮君    中原 健次君
      福田 昌子君    松谷天光光君
      中嶋 勝一君    降旗 徳弥君
      小暮藤三郎君    榊原  亨君
      村上 清治君    野本 品吉君
 出席國務大臣
        厚 生 大 臣 一松 定吉君
 出席政府委員
        厚 生 技 官 三木 行治君
        厚 生 技 官 東 龍太郎君
        厚 生 技 官 濱野規矩雄君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 傳染病豫防法等の一部を改正する法律案(内閣
 提出第一五號)
 保健所法を改正する法律案(内閣提出第一六
 號)
    ―――――――――――――
#2
○小野委員長 前會に引續いて會議を開きます。この前の會議で傳染病豫防法等の一部を改正する法律案及び保健所法を改正する法律案の質疑は大體終了いたしたということになつておりますので、今日の御發言はできるだけ簡單に願いたいと存じます。
#3
○福田(昌)委員 重ねてお尋ねいたしまして恐縮ですが、保健所法の第三條のところでございます。「第一條に規定する地方公共團體の長は、その職權に屬する前條各號に掲げる事項に關する事務を保健所に委任することができる。」この條文でございますが、この條文そのものは非常にあいまいに感じますし、なおどの程度の事務を保健所に委任していただけるかということをこの前一應御説明願いましたが、その程度の委任となりますと、保健所の權限としましてまつたく不滿に感ずるのであります。のみならず各保健所に勤めております第一線を擔任する者はこれに對して非常な不滿をもつておりまして、少くともただいまの區役所の衞生課に移管されておりますところの保健衞生行政の幾分かをこの保健所長の權限にしていただけたら、もつと公衆衞生の見地から大きな仕事ができるのではないか、こういうことを申しております。そういう意味において、もう少し大きい法的な權限というものを委任していただきたいということと、何と申しましてもほんとうに保健所の運營を十分にするためには十分な豫算をとりまして、その設備を完全にすることが第一でございますから、その豫算の面に對することを許される範圍内において詳しく聽かせていただきたいと思います。
#4
○三木(行)政府委員 第三條の保健所長に委任いたしまする權限の内容が、はなはだ貧弱ではないかという御意見であります。私どもといたしましてはできるだけ保健所に權限を委讓いたしまして、實情に即するようにやつていきたいという考え方でありまして、先般も申し上げましたごとくに下水道法、飲食物その他の物品取締に關する件、有害性着色料取締規則、牛乳營業取締、永雪營業取締、清凉飲料、飲食物器具取締、人口甘味質、飲食物、防腐劑、漂白劑、有毒飲食物、飲食物營業取締、その他結核、癩、トラホーム、寄生虫等の傳染病の豫防法、種痘法、屠場法、花柳病豫防法というような、およそ御指摘になりました仕事はほとんど委讓することに相なつておるのであります。ただ農村の保健所等におきましては清掃關係でありますとか、あるいは上下水道關係でありますとかいうようなものは委讓すベくもないのでありまして、私どもといたしましてはむしろ保健所にこれだけの事務を委讓することが、實は少々無理ではないかと思うほど、大幅に委讓する所存でおるのであります。
 なお豫算につきましては本日私はG・H・Qからこちらにまいりましたために、豫算書を携行いたさなかつたので、急遽取寄せておりますから間もなく致著いたすと思いますので、その上で詳細御説明申し上げたいと思います。
#5
○福田(昌)委員 ただいまの御説明でほぼ納得いたしましたが、私がなお申し上げたいと思いますことは、一般大衆に對する權限のほかに、なお醫師會に對しまする何らかの關連、そういつたものをお願い申し上げたいのでありまして、たとえば今日の醫師會におきましては、保健所の醫師とか、保健所長とかいうものはほとんどはいつておらないような状態でございます。こういうことでは、醫師會の運營と保健所のいわゆる公衆保健の仕事が歩調をそろえていくというわけにはまいらないかと思いますから、これは一例に過ぎませんが、醫師會にも保健所の所員が必ずはいつていくようにしていただきたいのであります。
#6
○三木(行)政府委員 醫師會に對する權限でありますが、これは權限と申すほどのものではございませんので、醫師會の諸先輩、そういう方々と歩調を竝べて相協力してやつていけるようにということを主眼といたしております。しかし實際の行政事務といたしましては、醫師會の會員がいろいろの願屈を御提出になります場合におきましては、これは保健所を經由して提出するというようにいたしますことが、便利のためにも、また親んでいただきますためにも、實情を一番よく知つておるものが意見を添えてやることがいいと考えましたので、保健所を經由するという方法をとつているのであります。
 なお醫師會等に保健所長あるいは保健所の職員が加入いたしますことにつきましては、醫師會は任意加入でございますからこれを強制するわけにはまいりませんけれども、なるべくその方針でやつていき、殊に醫師會等の事務所あるいは集合等にはできるだけ保健所を御利用いただけますように指導してまいりたい所存であります。
#7
○小野委員長 太田典禮君。
#8
○太田委員 第四條「疾病の治療を行うことができる。」この疾病の治療は、希望でございますが、できるだけ思い切つて大幅にやつていただきたい。そうでないと、この間醫師會での説明を聽いておりますと、醫師の營業と牴觸しないということをおつしやつておりましたが、治療を始めれば必ず醫師には差障りが起ります。それにかまわないでやる必要がある。そうでないと、それに牽制されておつてはできないと思います。特に醫師會に對して當局はあまり氣を使い過ぎると思います。私は醫者でございますけれども、こう言えば榊原君あたりからしかられるかもしれませんが、醫師會に牽制されておつてはできないと思います。醫師會は治療でありますから、保健衞生とか豫防衞生ということにはあまり大きな期待はかけられない。醫師會なんか氣にしないで、思い切つて大きな幅でやつてほしいという希望を述ベておきます。
 さらに、第三條、四條、五條の終りの「ことができる」というのがありますが、これにつきましてはこの間質問いたしましたら、これは法律技術的な言葉だからということでありましたが、よく考えてみますと、どうもそれだけでは納得できないし、その後法律の方でお調べになつてどうであつたか、その結果を聽きたいのです。特に第四條、五條の「ことができる」ということの意味は、なるほどその設備が十分でない保健所もあるので、必ずしもどこもやらなければならぬという規定をすることは無理でしようから、これはそのままとしましても、第三條の「事務を保健所に委任することがてきる。」これだけは何とか考えていただきたい。そうでないと、當局としても、各府縣がばらばらに、この地方ではこの事務を移管していないというような不統一が起きて、非常にやりにくいだろうと思いますから、やるということをきめたような表現をしていただきたいと思います。「できる」ということでは、京都府と大阪府とで保健所の事務移管のことが別別になつておるということでは、當局も非常にやりにくいのではないかと思いますから、それは「できる」と書いてあるが、指導的には統一するというつもりなのか。そういう言葉では非常にあいまいじやないかと思いますから、その點をちよつと。
#9
○三木(行)政府委員 第三條の「委任することができる」という表現でありますが、これは地方自治法第百五十三條におきまして、知事、地方公共團體の長は、その職權の一部を「委任することができる」という表現になつております。從いましてこの地方自治法の表現と相矛盾せざるように、これらの權限を「委任することができる」という表現にいたしたのであります。しかしながら太田議員から御指摘になりましたようにこれらの國家事務がばらばらであるということは、好ましからざることでありますので、御指摘になりましたごとく、第六條の運營に關する處分命令、これによつてできる限り規格統一と申しますか、どこも同じに委任せしめていきたい。かように考えております。
 それから第四條の「疾病の治療を行うことができる」と申しますのは、疾病の治療をなす權能を保健所が有するということであります。保健所はこれらの治療をなす人的、物的施設をもつておつて、治療をやることができる。しかしながら、いやしくも疾病治療の申出がありました場合においては、やつてもやらぬでもいいという意味ではございません。そういう場合にはやらなければならぬ。こういうふうに解するのであります。
 第五條。これも權能を示しておるものであります。簡單でありますが、御答え申し上げます。
#10
○太田委員 わかりました。
#11
○小野委員長 よろしゆうございますか。野本品吉君
#12
○野本委員 大臣にお伺いしたいと思います。先般全官公廳の勞働組合の政府に對する要求といたしまして、國營醫療機關強化擴充と醫療行政の民主化ということがありました。これに對して七月十二日附の西尾官房長官の名におきまして、贊成である、できるだけ速やかにこれを實現する方針であるという囘答がなされております。この要求及び囘答は、どういう内容においてなされたのであるかということを一應承りたいのであります。なおこれに對して主管大臣としての御意見がありましたならば、併せてお伺いいたしたい。
#13
○一松國務大臣 西尾國務大臣が全官公職員の決議案に對してそういう意見を述べた。それはどういう意味か。その意味は私はわからない。それは西尾國務大臣が答えたのでありますから、それに聽いていただかなければ、私はわかりません。ただしかし、西尾國務大臣が全官公職員のそういう決議に對して、速やかに實現することに努力するというお話のあつたことは、これは私もまつたく同じ考えをもつておりまして、そういう國營醫療機關を強化擴充する、あるいは醫療行政を民主化するというようなことは、いずれもわが國の今日の民主的政治をする上においては當然なことでありまして、それはその決議のようにしなければならないということは申すまでもないのですから、そういうことの事實の實現するように努力するということは、西尾官房長官がそういう意見を發表したとするならば、私と全然同一の考えで、われわれもでき得べき限り、そういう方面に努力強化して、そうして民衆の公僕としての使命を果したい。かような考えをもつておるのであります。
#14
○野本委員 そのことについてはそれだけにしておきます。
 次に、保健所法の第四條の、「疾病の治療を行うことができる。」それから第九條の「使用料、手數料又は治療料を徴收してはならない」という條文。それから、これは公表されたのではないかもしれませんが、厚生省の醫療制度改正要綱の案の中に、開業醫制度はその長所を助長し、缺點を是正して、公的醫療機關の及ばざる場合竝びにこれを必要としない對象に對する醫療機關として存置せしむること、ということがあるようであります。それと、今の官房長官の囘答、これらを總合して見るのに、考え方によりましては、醫療國營化の方向に向つて進んでおるという印象を與えないでもないと思うのであります。この點に對しまして、政府の御見解、御方針等を明確に承りたい。
#15
○東政府委員 ただいまのお尋ねの結論は、厚生省の方針が醫療國營をやるつもりかどうか……。
#16
○野本委員 その方向に向つて進んでおるような印象を受けないでもない。
#17
○東政府委員 醫療制度審議會の今の要綱もお引合いにお出しになつたのでありますが、そこにも明らかにあげておきました通り、醫療制度としては公的な性格をもつたすなわち非營利的な醫療機關を中心とする。それがわが國の醫療機關の主流をなすものである。從つて在來最もわが國において醫療機關としての主導權をもつておりました、開業醫制度というものは、むしろその主流に對しては支流という形になるわけでありまして、公的醫療機關という大きな幹にまつわつておるところのつるのような形に相なつていくかと存じます。從つて一擧に開業醫制度を云々するというふうな本旨ではないのでありまして、開業醫制度はなおそれが存在する。すなわち外國のいわゆる家庭醫、フアミリー・ドクター、ホーム・ドクターと稱するようなものとして存置する十分なる理由と意義をもつておると思いますので、公的醫療機關を主流とし、開業醫制度をその介添とするところの、そういう醫療制度が現在並びに近き將來の日本に最も適切ではないかというのが私どもの考えでありまして、醫療國營と申しますと、一方にただちにソヴイエトロシヤの完全なる醫療國營、すなわち醫師を全部國の官吏にして、全部國費をもつて醫療を行うという形をわれわれは想像いたしますが、すベての醫療機關と國立、國營にし、すベての醫療關係者を國の職員とするというふうな考え方の醫療國營は、その中には含まれておらないのであります。
#18
○野本委員 了解いたしました。
#19
○小野委員長 この際政府に申し上げますが、先般質問中保健所の有料、無料の問題で、答辯が食い違いまして、あらためて御答辯願うことになつております。この機會に御答辯願いたいと思います。
#20
○一松國務大臣 三木局長から多少利潤を見込んで云々という答辯がありまして、榊原委員でありますか、徳田君でありましたか、よくその邊を記憶いたしておりませんが、とにかくその保健所で金もうけをするとはけしからぬじやないかというようなお話がありましたときに、私は金もうけというようなことは政府は考えていないのだという答辯をしたことによつて、政府の意見が食い違いであるというようなおしかりを受けたようでございますが、決してこれは食い違つておらぬと私は考えます。この點につきましてはその本人でありまする三木局長から、さらに釋明をいたしたいということでありまするから、この際三木局長の意見を一つ申し上げて、皆さんの御了解を得たいと思います。
#21
○三木(行)政府委員 前會の答辯に補足いたしまして、第九條の「使用料、手數料又は治療料」に關しまして申し上げたいと存じます。前會私から治療料につきましては、社會保險診療報酬規程等を基準といたしまして、妥當な金額を考えたいということを申し上げまして、それに對しまして、しからばそれは多少もうけるのではないかという御質問でありました。従いまして私としましては、一囘々々の消耗品と申しますか、そういうようなものから見れば、多少もうけるというような表現ができるかもわからぬということをお答えいたした次第であります。私どもといたしましては、これは決してもうけるという意味ではなく、一應社會保險診療報酬規程等を基準といたしまして、地方におきまして委員會において最も妥當な金額をきめ、そうしてこれを厚生省が認可するというようなことで、適正妥當な料金をとりたい、かように考えておるわけであります。決してもうけるとかいう目的のために――そういう目的を達するような料金をきめるという意思は毛頭もつておらないので、御了承を得たいと思います。
#22
○小野委員長 この際私から一、二御質問いたいと思います。第一は、傳染病豫防法等の一部を改正する法律案に關連してでございますが、傳染病豫防に關する事務は國家の事務であるか、地方團體の事務であるかという點に關連した問題でございます。この傳染病豫防法等の一部を改正する法律案の提案理由を拜見いたしますと、政府はこれら疾病の豫防の業務は主として都道府縣知事の責任において地方自治團體の行う事務として遂行させておるのでありまして、と書いてありまして、傳染病豫防に關する事務は地方公共團體の事務であるとの考えをもつておられるやに考えられるのであります。この傳染病豫防に關する事務が國家の事務であるか、地方自治團體の事務であるかは、法律上も非常に問題のある點でありまして、私記憶いたすところによりますと、二十數年前に法廷でもこの問題は爭われたと記憶いたしております。ところが、話が二十數年前ですから、私の記憶も薄らいでおりますが、そのときの判決は、傳染病豫防に關する事務は國家事務であるという趣旨の判決であつたと記憶いたしておりまして、私ここでこの問題を取上げますのは、純粋の法律問題といたしますよりは、むしろ政治的意味を含めたいのでございます。傳染病豫防に關する事務が國の事務であるか、地方公共團體の事務であるかということの違いは、この傳染病豫防に關する事務を、何と言いますか、重要視する程度に非常な差が出てくるのではないかというふうに考えるのであります。殊に新しい憲法の第二十五條によりまして、むしろ公衆衛生の向上及び増進をはかることは国家の義務であるとさえ考えられる今日でありますから、傳染病豫防に關する事務というものは當然に國家の事務でなければならぬと私は考えるのであります。この點につきまして、政府はいかなる御見解を有せらるるか、お伺いいたしたいとお思います。
#23
○濱野政府委員 私からお答えさしていただきますが、仰せの通り國の事務でございまして、それぞれの縣、それから市町村に法律でもちましてその事務を委託いたしております。
#24
○小野委員長 その點が明らかになりまして、はなはだ仕合せに存じます。次はこまかい問題かもしれませぬが、保健所法の改正案に關してでございますが、第一條に「保健所は……」途中省略いたしまして、「都道府縣又は政令で定める市が、これを設置する」と、こう書いてございます。この政令で定める市というのは、舊保健所法によりますと、東京市、京都市、大阪市、横濱市、神戸市、名古屋市と指定しておるようでございますが、新しい保健所法に第一條で「政令で定める市」というのはやはりこの六大都市を豫定されておるのでありますか、その點をお伺いいたします。
#25
○三木(行)政府委員 御意見の通りであります。
#26
○小野委員長 さようにいたいますと、お尋ねいたしたいのでございますが、第三條によりますと、地方公共團體に長は、その職權に屬する前條各號に掲げる事項に關する事務を保健所に委任することになつております。ところが今申したような、市が保健所を設置いたしますると、その市で設置した保健所には、職權に委任ということが行われないように考えられるのであります。ただいま問題になつております特別市制が施行されまして、市長が都道府縣に長と同等の職權をもつようになりますれば、この問題は氷解いたすのでございますけれども、そうでないと職權の委任がうまく行われないように考えるのでございますが、これらの點をどういうふうに處置されるお考えであるか、承りたいのであります。
#27
○三木(行)政府委員 御指摘に相なりましたごとくに、この保健所法によりまして五大都市におきまする保健所は警察權を委任せられるこは現在では不可能であります。従いまして當分の間は五大都市及びその他の保健所との間には權限の相違が出てくるわけであります。私どもといたしましては、特別市制の推移とにらみ合わせまして、五大都市における保健所の權限がないために、五大都市に住んでおられる方が不便をしないように考慮してまいりたいと考えております。
#28
○小野委員長 ただいまの御答辯ですと、五大都市の保健所は現に警察行政事務になつておる事務をやれないで、他の地方においてはこれをやれるというようなあまり好ましくない現像を生ずるように思うのでございます。これは政府において經過的に一時二様に保健所が出てもやむを得ないという御意見であれば、強いて爭わないのでございますけれども、先ほど申しましたように、特別都市の問題ともにらみ合わせまして、第一條で政令をもつて市を定めます際には、こういう問題があることを十分念頭におかれて定めらめることを希望いたします。
 次にお伺いいたしたいのは、この委員會で一應問題になつた點でございますが、第四條の「その他厚生大臣の指定する疾病の治療を行うことができる。」という點に關連してでございます。すなわち保健所法の改正の大きな眼目は、一つは今までは保健所は指導の面を掌つておつたばかりであるのに反しまして、今後は治療を行うことで、その治療は結核、性病、齒科疾患、それから今申しました厚生大臣の指定する疾病ということになつております。これは先般質問の際にも問題になりましたように、言葉は變ですが、これを極度に惡用してまいりますれば、この法律案一本で醫療國營の制度をもとつてとれないわけもないのでございます。私ども考えますと、醫療制度を將来どうしていくベきかということは非常に大きい問題でありまして、この點に關してはただいま政府委員よりも發言があつたのでございますけれども、いずれにいたしましても、これは立法事項を伴うと了承いたしますので、いずれ醫療制度の確立という問題は議會においてはいろいろ審議いたすべきものと考えます。従つて醫療制度の問題は醫療制度の問題として眞正面から議會がこれを論議すべきであつて、單なる保健所法の改正をもつてそのような問題に觸れるべき問題ではないと考えるのでございます。そういう點について考えますと、その治療の範圍、それから厚生大臣の指定する疾病の範圍というものは、これをできるだけ押擴めろという議論も先ほどありましたけれども、この法案に關する限り、またこの法案に現われておる條文に關する限りにおきましては、文字通りにこれを解釋して、治療はあくまでも豫防の限界に止めるべきものである。また厚生大臣の指定する疾病というのは、政府委員よりも説明がありましたように、特殊の風土病等を豫定するたけであるというふうに一應限界をつけておくことが望ましいのではないかと考えます。このことはもちろん醫療制度をいかに運ぶかという問題とは別箇の問題で、先ほども申しましたように醫療制度の根本的な問題として眞正面から取組んでいく、そういう建前からさようにいたしたい、またさようにいたすべきものであるとわれわれは考えるのでありますが、この點に關して厚生大臣の御所見を承りたいと思います。
#29
○一松國務大臣 今委員長の御質問になりました點はごもつともと思うのですが、要するにこれは第四條に明らかに規定しておりますように、結核、性病、齒科疾患、これが原則的でありますが、これ以外に厚生大臣の指定する疾病――厚生大臣はこれ以外の病氣を何でもかんでも指定してやりさえすればよろしいというふうな意味に解釋せられますと、いろいろな障害を生じまして、それは保健所法設定の趣旨に反するのでありまして、これは政府委員からも過般申し上げたことと思いますが、地方における特異の疾病、たとえば青森におけるトラホーム、山梨の日本住血吸虫病あるいは輕度のむし齒とかいうようなものをこの保健所法の第二條に列記しておりませんから、列記してあるもの以外のものでも、こういうような地方病で、しかも輕微なようなものは厚生大臣が特に指定すれば治療することができるという趣旨に立案いたしたのでありまして、厚生大臣が何でもかんでも一般の病氣をどれでも治療することができるというような趣旨でないと私どもは解釋しております。どうかそういう趣旨に御了承を願いたいのであります。
#30
○東政府委員 先ほどの發言に補足さしていただきたいと思います。醫療制度の問題につきまして先ほど申し上げましたのは、醫療制度審議會において一應決定いたされました要綱の内容を申し上げたのでありまして、醫療制度審議會におきましては、日本の醫療制度をいかにすべきかとという問題か現在諮問事項になつております。これが醫療制度審議會のこれからの仕事でありますが、在來は醫療制度審議會の委員の中には貴衆兩院議員の方が十數名おはりになつておりましたが、今後は参議院、衆議院の學識經驗のある方を醫療制度審議會の委員にお願いすることはできないことになつておりますので、その意味において國會におきまして醫療制度が國會議員の方々の間で愼重に審議いたされますことは、私どもとしては何よりも喜ばしいことと存じますので、ぜひさようになりますように御配慮願いたいと思います。
#31
○山崎(道)委員 ちよつと厚生大臣にお伺いしたいのですが、厚生大臣の指定する疾病の治療でありますが、これについて伺いたいのであります。新潟縣等に地方病でつつが蟲病という病氣がございますが、これに對してはG・H・Qの方では非常に研究を進めておるということでありますが、國内においてはどういうふうになつておるのでございましようか。國家の研究所というようなものがあるのでございましよか。地方で個人的にこれを研究しておるということを聞いておりますが、費用がなくて非常に困つておりますので、これに對して特に豫算を出していただくことはできないものでありましようか。
#32
○濱野政府委員 前にやはり同じことをお答えしたことがございますが、ずつと前は傳染病研究所におきまして長與所長以下いろいろ研究されました。そしてリケツチヤにかかつたこれこれの者がおるということで病氣もよくわかり、その後豫防措置につきましてもよくわかつた。ワクチンができるかできないか、注射によつて疾病を防げるか防げないか。つつが蟲病と同じ問題で種類が違うのですが、この研究が取殘されただけであります。それに對しまして御承知の通り今度アメリカがそれをつくりました。これはフイリピンにおけるつつが蟲病みたいなものからとりましてただいま實驗をいたしております。
 なお長與先生がおられます時分から元名古屋大學の教授をしておられた林直助先生が同じく研究されまして黒死病なるものを研究しておられます。それに對しましては縣が若干先生に補助しておりますが、昨年來このつつが蟲病に對しましては進駐軍の方も熱心にやつておられ、國の方でも特に豫算をとつて林先生と共同で實驗するというので、林先生と御相談いたしましてただいま共同でやつていただいております。一つの注射藥が新しくできまして非常に綿密に試驗しておられます。アメリカから持つてこられた注射藥の成否を今年度においてはつきりときめたいということで、極力林先生にお願いして今共同でやつておりますから、さよう御了承願います。
#33
○小野委員長 以上をもちまして兩案に對する質疑を打切りたいと思いますが、御異議ございませんか。
#34
○小野委員長 異議なしと認めてさよう決定いたします。
 ただいまより本委員會に付託されました傳染病豫防法等の一部を改正する法後案、竝びに保健所法を改正する法律案を一括議題といたしまして討論を行います。討論は發言の順に應じましてこれを許します。山崎道子君。
#35
○山崎(道)委員 私は日本社會黨を代表いたしまして本案に贊意を表するものであります。つきましては私一つの希望條件を申し上げます。すでに今まで十分に審議された通りでありますが、私たちの考えるところによりますと、いかなる機構も人が運營するのでございまして、この法案がこのままに實施されますことを私は希望するものでございます。生活保護法の場合におきましても、相當愼重に審議したつもりでございますけれども、末端におきましてはこれが十分に生きておりません。本案にありましても、保健所のもちます使命というものがはたしてこれで達成されるであらうかということについて私は非常に不安をもつものでございます。先日本委員會から視察になりましたときに委員長も御承知のような状態でございまして、保健婦が保健指導にあたりますのに現在ある保健所ですらあの状態でございます。私はこれに對しまして國民の保健衛生向上のために、もつともつとこの法律が積極的に生かされますことを心から希望するものでございます。一つの例をとらしていただきましても、結核の指導、育兒の指導等につきまして、保健婦が派遣されますとき、一年間の旅費が六十圓であります。東京都の施設におきましても一年間の旅費が六十圓、そしてその實質は百八十五圓實費がかかつている。ですから保健婦さんが活動すればするほど赤字になつてきて、乏しい俸給の中からこれを自辨しているというようなあり方でございましたら、どうして働く意欲を高めることができようかということを考えますときに、こうした前線に働きます人に働きやすい待遇を與えていただかなければ、本案を生かしていくことはできない、かように私は考えるのでございます。重要な點につきましては同僚議員から十分審議し盡されたのでございますから、この法案の精神を責任をもつて生かしていただきたいということを心からお願いいたしまして終りたいと思います。
#36
○小野委員長 飯村泉君。
#37
○飯村委員 私は民主黨を代表いしたしましてこの兩法案に贊成いたします。山崎先生のおつしやつたように、それを動かす人の氣持、人の手段、手法、そういつたものに熱意と努力がもたされることが必要であらうと思います。この法案がりつぱに成長せられるように希望いたしまして終ります。
#38
○小野委員長 榊原亨君。
#39
○榊原(亨)委員 私もこの法案に對して贊成であります。ただ保健所を單に増設するというだけでなしに、むしろ保健所の内容の充實ということを切にお願いする次第であります。先般も保健所を視察いたしました場合に、政府委員のおつしやつたことと、現地における事情とに違つた面がしばしば認められたのであります。たとえて申しますと豫防を行う醫師と治療を行う醫師とは別であるというようなお話でありますけれども、現實において見ますと、豫防を行う醫師と治療を行う醫師が同一の醫師であつて、ただその擔當する日にちをかえているというにすぎません。あるいはまた齒科疾患に對してはむし齒の抜齒までやるというふうな考えを現地においてはもつておいでになる。あるいは花柳病血液反應にいたしますと、ワツセルマン氏反應のほかに違つた種類の反應を二つ以上行わなければ、ほんとうの花柳病の血液檢査としては不完全であるにかかわらず、日本一を誇るところの京橋の保健所においてなおかつ、一つの反應だけを行つて、その反應の陽性のものだけを大學に送つて檢査しているというみじめな状態であります。こういうことにつきましてもよろしく内容の充實ということを主眼にいたしまして、そうして醫師の指導あるいは監督の上において、十分なる機能を發揮していただくようにお願いいたしたいのであります。殊に私どもが寒心にたえませんのは、保健所におけるところの職員の給與の抵廉なことであります。先ほど山崎さんがおつしやいたしたように、保健婦の半分以上は生活保護法に該當するような給與を受けているのであります。しかも先ほどお話にございましたように、一日の旅費として保健婦に與えられるものはたつた一圓であります。今東京都の市内におきまして市内電車に乗り換えて乗りましたならば、少くとも二圓要るということは私どもの常識であります。しかるに數箇所の家庭を訪問いたすために保健婦にたつた一圓の旅費しか與えていない。實地における末端の保健所の機能をいかに發揮するかどうかということは、實に保健所におりますところの保健に携わつております醫者と、そしてその大多數は保健婦である。その保健婦の旅費がたつた一圓しか給與されておらないという無惨な事實をごらんいただきたい。なおその給與が生活護法給與以下であり、生活保護法を實施するならば、保健婦の半分以上に生活保護法を實施しなければならぬというみじめな状態においては、衛生上最も必要なる保健所がどうして活動することができるのでありましようか。この點はとくと御改良を願いまして、たとえば地方におきます交通においては、保健婦にはパスを與えるとか、あるいはまた旅費を増すとか、保健所における職員の給與を十分にやつていただくようにお願いいたしたいと思うのであります。また榮養の指導につきましても、私どもしばしば申し上げましたように、これら配給面と直接かみ合つた實地に即した榮養指導が行われているかどうかを見ますときに、これも行われていない状態であります。この點を御改善くださいますようにお願いいたしたいと思うのであります。
#40
○小野委員長 野本品吉君。
#41
○野本委員 私は國協同黨を代表したしまして本案に對する贊意を表したいと存じます。
 保健所が遺憾なくその機能を發揮するかしないかということは、直接國民の日常生活に、また將來の民族の運命に至大の關係をもつておりますので、この法案に對しましては深い關心をもつておつたわけであります。さいわいにいたしまして、委員會における質疑應答を通しまして、政府の意圖するところを了承することができたのでありますが、なお設置竝びに運営の萬全を期待いたしまして、保健所が完全にその機能を發揮し、本法制定の趣旨を實現することを念願いたしまして、次の希望條件を申し上げたいと思うのであります。
 第一は、先ほど來ほかの方からも意見の開陳がございましたが、設置基準を確立してこれが實現を期し、形式的な設置に墮することのないようにということであります。
 第二は、地方財政の實情に鑑みまして、國庫補助の實質的な増額の方途につきまして十分御考慮願いたい。
 第三は、地方醫師會、地方人、一般保健所が三位一體となりまして運營の民主化をはかつていただきたい。以上の希望條件を附しまして保健所法の改正に贊意を表します。
 次に傳染病豫防法の一部改正の問題でありますが、國民生活の實情を考えてみますと、今後傳染病に對しましては、大いなる關心をもつてあらゆる豫防の方策を立てねばならぬと考えているのであります。こういうときに、國庫補助額を引上げまして豫方の措置の強化をねらいましたこの改正は、まことに機宜に適したるものといたしまして、贊意を表する次第であります。
#42
○小野委員長 この際討論された各位に御了解を得たいと思います。討論者各位それぞれ希望意見を述べられたのでございますが、これを本法案を通すについての一つの條件とまでいたさずに、政府に對する要望というふうに考えていきたいと思いますが、それでよろしゆうございますか。
#43
○小野委員長 ではさようにいたします。これをもつて討論を終結いたしました。
 これより採決をいたします。兩案とも原案に贊成の諸君は御起立を願います。
#44
○小野委員長 起立總員。よつて兩案はいずれも原案の通り可決いたしました。
 この際お諮りいたしたいことがあります。報告書は議決の理由を付し、議案の要旨、特色その他豫算等を記載して議長に提出すべきものでありますが、そのうち議案を可決いたした理由としましては、傳染病豫防法等を改正する法律案につきましては、現下の國内衞生状況に鑑みて、これらの疾病豫防を積極的に推進するため國庫補助率を引き上げることは異議なきものと認め、これを可決すべきものと議決した次第である、かようにいたします。また保健所法を改正する法律案につきましては、現下の國民の健康状態に鑑み、保健所の機能の擴充強化をはかることは急を要するものと認め、これを可決すべきものと議決したのである、かようにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
#45
○小野委員長 御異議なしと認めてさように決定いたします。その他の記載事項の作成については委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議はございませんか。
#46
○小野委員長 御異議なしと認めてさように取計らいます。次會は十一日の午前十時から開會いたしまして災害救助法案を議題に供したいと思います。
 本日はこれをもつて散會いたします。
   午後三時六分散會
ソース: 国立国会図書館
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