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1947/08/14 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第10号
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1947/08/14 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第10号

#1
第001回国会 厚生委員会 第10号
昭和二十二年八月十四日(木曜日)
    午前十時四十五分開議
 出席委員
   委員長 小野  孝君
   理事 田中 松月君 理事 山崎 道子君
   理事 飯村  泉君 理事 武田 キヨ君
   理事 大瀧亀代司君
      太田 典禮君    中原 健次君
      松谷天光光君    武藤運十郎君
      師岡 榮一君    園田  直君
      中嶋 勝一君    小暮藤三郎君
      河野 金昇君    野本 品吉君
 出席政府委員
        厚生事務官   葛西 嘉資君
    ―――――――――――――
八月十一日
 兒童福祉法案(内閣提出)(第三三號)の審査
を本委員會に付託された。
同日
 日本醫療團三國病院を三國町に返還の請願(坪
 川信三君紹介)(第六九號)
 國民健康保險組合國營の請願(神山榮一君紹
 介)(第七五號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 小委員選定の件
 國政調査承認要求の件
 災害救助法案(内閣提出)(第二二號)
    ―――――――――――――
#2
○小野委員長 これより會議を開きます。
 前會に四つの小委員會の設置について決定しておりまして、その員數、指名は委員長に一任されておつたのでございますが、次の通り決定いたしたいと思います。
 まず醫療制度に關する小委員會はその員數を十二人といたしまして、
   福田 昌子君  松谷天光光君
   太田 典禮君  飯村  泉君
   中嶋 勝一君  降旗 徳弥君
   有田 二郎君  榊原  亨君
   大瀧亀代司君  野本 品吉君
   徳田 球一君  寺崎  覺君
以上の諸君を指名いたします。
 次に醫療資材に關する小委員會は、その員數を十一名といたしまして、
   太田 典禮君  福田 昌子君
   松谷天光光君  中嶋 勝一君
   井村 徳二君  降旗 徳弥君
   有田 二郎君  榊原  亨君
   小暮藤三郎君  河野 金昇君
   寺崎  覺君
以上の諸君を指名いたします。
 次に社會保險に關する小委員會は、その委數を十二名といたしまして、
   山崎 道子君  師岡 榮一君
   中原 健次君  園田  直君
   飯村  泉君  武田 キヨ君
   大瀧亀代司君  近藤 鶴代君
  小笠原八十美君  河野 金昇君
   徳田 球一君  齋藤  晃君
以上の諸君を指名いたします。
 次に婦人児童問題に關する小委員會は、その員數を十一名といたしまして、
   松谷天光光君  福田 昌子君
   山崎 道子君  武田 キヨ君
   飯村  泉君  園田  直君
   村上 清治君  近藤 鶴代君
   花月 純誠君  野本 品吉君
   齋藤  晃君
以上の諸君を指名いたします。
 次にお諮りいたしますが、この前の小委員會設置に關連いたしまして、醫療關係及び婦人指導問題に關する國政調査の承認要求の件につきまして、衆議院規則第九十四條により、その事項、目的、方法、期間その他の所要事項について協議いたしたいと思います。その内容は、調査する事項は今申した以上の問題、調査の目的はこれらの問題に關する對策を樹立すること、調査の方法は調査委員會において設置したり、あるいは資料を要求したり、報告説明を聽取したりする等、調査の期間は本會期中ということに御異議ございませんか。
#3
○小野委員長 御異議ないものと認めましてさように決定いたします。これで國政調査承認要求の件は決定いたしました。
 次に前會に引續いて災害救助法案の審議を續行いたしますが、政府より本日お手もとに配付されました參考資料について説明いたしたいとのことであります。これを許します。
#4
○葛西政府委員 先日前會の委員會で御要求のありました日本赤十字社に關します資料と、それからもう一つはこの前の時に委員の方から御質問がありましてお答えを申し上げたつもりでございますが、この中で災害救助の機構と申しますか、中央地方どういうふうになつて働くのかという點が、條文のみでは非常に不明確のように存じましたので、お手もとに圖表にいたしまして災害救助機構圖示というような資料をお届けいたしましたので、これについて御説明を申し上げたいと思います。日赤の關係につきましては御要求ございました機構、使命、それから現在の日本赤十字社の定款というふうなものをお手もとに差し上げた次第であります。新舊の表というようなお話でありましたが、實は舊の方の部數が足りませんでしたので本日は間に合いませんが、もし必要でありますれば、舊の方は謄寫をいたしまして、この次にでもお届けするようにいたしたいと思います。それから日本赤十字社の職員の數、それから過去の災害の活動状況、特に迅速を貴ぶ災害救助についての時間的な關係についてのお尋ねがありましたので、これらの點も書き物にしてお手もとに配付しておりますのでごらんをいただきたいと思います。それから次に災害救助機構の圖表についてひとつ申し上げさしていただきたいと思うのでありますが、一番上にあります中央災害救助對策協議會というのが中央におきますいろいろな連絡をし、しかもそこで計畫を立て、事前にあるいは事後に迅速に處置するための協議會であります。ここで民間の方あるいは日本赤十字社の社長というようなもの、あるいは關係大臣、關係の官廳の代表者というようなものを入れましてここで相談をいたすのでございます。ここできまりますと、これを地方に必要に應じて流しますとか、あるいはまたそれぞれの省できまりましたものについては、それぞれの大臣より地方にいろいろ指示をすることがありますれば、この表にありますように關係各大臣が協議會の決定に基きまして、地方にいろいろ指示をいたしていくことに處置をとつていただくことになるわけであります。たとえて申しますと、非常に大きな災害で相當の金融が必要である場合にはただちに協議會で御相談になり、對策がきまりますと、それに基いて大藏大臣からその出先機關を通じて金融上のいろいろの措置を講ずることになるのであります。地方におきましては、これに對應する都道府縣の災害救助對策協議會が都道府縣知事を會長として、關係各省の出先機關をメンバーとした委員がありまして、同様にここで、都道府縣における事情に即應した事前事後の對策立て、實行に移されるのであります。この一番下にあるのが、この法律の第二十二條第二項に強力な救助組織の確立ということがあります。この點についての一應の案でありますが、先日も御説明申し上げたように、救助隊といたしまして、大體縣廳を中心にして、技術部などにおいては遞信大臣管下の地方遞信局の出先のもの、あるいは運輸省の出先である鐡道局などがはいることになります。そういうものを集めた六つの部を豫想したのであります。縣廳のそれぞれの部がこれに代るような形になると思いますが、縣廳の各部を動員いたしまして、災害救助の仕事に當ることになるのであります。この中で大體名稱でおわかりと思いますが、民生部が總務部になります。協力部というのは私的團體、個人の活動について日本赤十字社が民間の調整團體になるという第二十一條第二項の規定に基きまして、働くわけでありますが、これらがすぐ縣廳と連絡を密接にする必要があるので、協力部とでも申すような部になりまして、救助隊の一員になりまして連絡を密にしながら、脈絡ある連絡のもとに活動してまいることになるのであります。大體對策協議會と實際働く救助隊との關係、中央との關係などをこの圖によつて御説明申し上げたのであります。なお前會委員の方からの御質問によりまして、日本赤十字社に委託する事情乃至その理由について一應申し上げたのでありますが、今の御説明に關連いたしまして、若干補足して申し上げたいと思います。本法による災害救助はもちろん國が各團體あるいは私人の協力のもとに國の責任において行うのが建前でありますが、その實施については、その地方の公共團體さらにその他の民間團體あるいは一般國民の協力による協力部というものが一緒になつてやらなければならぬのであります。この場合にぜひ適當な團體を選びこれを活用することが一番效果的であらうと考えまして、日本赤十字社が出たわけであります。日本赤十字社は從來から御承知のように、中央地方を通じて民間團體といたしましては、相當整備された組織をもつておるのでございます。殊に終戰後におきましては、お手もとにあります資料のように、赤十字の主としてねらいます事業等につきまして、非常な改正をいたしまして、しかもこのことはお手もとにありますジユネーヴの赤十字社連盟の指導原理というものを取入れまして、災害、天災その他の事變等に對しましての救護に力を注ぐということを非常な大きな目的に掲げたのでございます。從いましてここで日本赤十字というものを取上げて、政府が公認してまいるというふうにいたしたわけでございます。同時に日本赤十字社は赤十字連盟等を通じまして、萬國の赤十字とも連絡をもつておるわけでございますので、日本赤十字社を通じて世界各國の協力援助が受けられるということも、災害によつては考えられるのではないか。そうなれば非常に好都合ではないかというふうに考えた次第でございます。しかしながら御指摘もございましたように、日本赤十字社の現在の状態は、まだ十分とは申すことのできないのは、私どももその通りに思つておりますが、これは今後十分發達をさせ、殊に現在日本赤十字社にはアメリカの赤十字の方からメツカー氏を初め數人の方が現に日本赤十字社の中へはいられまして、いろいろアドバイスを與えていただいておるような状態でございますので、將來に期待すべきものであるというふうに考えておるわけでございます。
 條文につきましていささか申し上げさしていただきたいと思うのでございますが、第二十一條の第一項は、日本赤十字社のいわば心がまえとでも申しますか、全般的な規定でございます。日本赤十字社が終戰後災害救助というような點に重點をおいて、目的事業を變更いたしましたのは先ほど申し上げた通りでございます。それで常に國、都道府縣等の行います救助に協力する態勢を整えまして、できるかぎりこれに協力をなさなければならないというふうな建前になつております。その具體的な現われといたしましては、二つになつておるわけでございますが、第一は第二十一條の第二項でございます。これは先ほどの圖表にございますように、いろいろ國、地方公共團體の系統で活動をいたしてまいりますが、そのほかの民間の團體、あるいは個人が救護をなす場合の協力の連絡調整というふうなものを政府の指揮監督の下に日本赤十字社をして當らせる、こういうのが一つでございます。第二十五條の場合、これは直接知事が指揮をいたしますから、括弧をいたしまして第二十五條の協力というものは、日本赤十字社にやらすということはどうだろうということから、これを除くことにし、直接知事が指揮をするというふうにいたしてございます。
 第二は先日も御質問があつたのでございますが、三十二條でございます。三十二條はここにもございますように、救助またはその應援の實施に關しまして、必要な事項を都道府縣知事から委託されることができるというのでございます。この委託の場合には救助そのものはもちろん知事が行うのであります。日本赤十字社はいわば知事の手足となつて働くことに相なるわけでございます。たとえば知事が行う醫療救助というような場合について、實際の醫療の行為というようなものを日本赤十字に委託さして、醫療の實際の行為をやつてもらうというふうなことになるわけでございます。もちろん知事は日本赤十字社に委託をしないで、自分の手で直接に行うこと、これはもちろん差支えございません。先ほど申しましたように、實際問題としては日本赤十字社の現在の機構なり態勢をもちましては、ただちに相當多くをこの際この條文によつて委託するということは期待できないことだと思いますが、將來日赤の態勢の強化に伴つて、できる限り委託をしてまいるというふうにいたしたいと思つておる次第でございます。重複いたしましたが、一應申し上げさしていただきました。
#5
○大瀧委員 この前私ちよつと留守しておつたのでありますが、政府の説明によりますと、この法律の全體を見ると非常に他人の物資あるいは家屋等をどんどん調査、檢査をなさしめることができる、こういうような規定が存在しておるのでありまして、それに對しては憲法十二條、十三條の規定によつてこれができるのだというようなことを答辯せられたがごとく承つておるのでありますが、われわれがここで質問して明らかにしておきたいことは、日本の憲法は基本的な人權尊重ということが非常に重大視されておるのであります。殊に十二條、十三條がむしろその原則的な規定だ。こういうことにも、解釋し得ることだと思う。ただ公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う、あるいは十三條は公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で人權を尊重すべきである。そういうことに書かれておるのでありますが、こうした人權をむしろ尊重しないような法律を出してもいいのだというようなことに解すべきでないということを私は信じておるのであります。殊に憲法の三十五條なり三十四條等を見ますと、何人もその住居、書類その他の所持品について侵入、捜索を一切受けられない、もし受ける場合には司法官憲の令状がなければ絶對そういうことをしてはならぬ、こういうことすら明記せられまして、われわれの人權に對してはそういう條件のもとでなければできぬのだ、こういうようなことが明記されておるにかかわらず、これを見ますと、都道府縣の知事が一官吏に對して人の家へはいつたり物資を調達することを命ずる權利がある。かように規定されることは、憲法上の人權をあまりに尊重しないことで、われわれの承服できないことであります。この點についての御説明を求めることと、一體その災害救助が、この間もちよつと申し上げましたが、非常に結構なことだ、ついては政府のこの法律において豫想される災害というものはどんな災害であるか、日本では今までの災害として大きいのは關東大震災、この度の南海の災害というものは非常に大きい災害のうちに算えられるのでありますが、この間の政府のお話だけでは、こうした救助法案というものはわれわれはちよつと納得しがたい。あるいは政府において第三國間においての何かの交戰状態に備えるという趣旨であるのか、日本全國が暴動化するということにおいて、各府縣に常に戰時態勢における救助態勢のごときものをつくらなければならぬ。こういう趣旨における災害を豫見した意味か、そういうことをお聽きしたいと思うのであります。災害において日本赤十字社を最も遺憾なく活動せしめようというような意味がまたそこにあるのかどうか。こういうようなことを考えまして、第一番にこの問題が、こういうようなことが憲法違反にならぬかどうか。二十五條、二十六條、二十七條、こういうような規定が憲法上人權尊重をしないという憾みが多分にあるのであつて、承服しがたい。これの説明――今申し上げました災害の範圍をいかに豫定したか。この二點についてまずお伺いしたいのであります。
#6
○葛西政府委員 お答え申し上げたいと思います。基本的人權の尊重すべきこと、これは憲法の明示するところでございまして、申すまでもないことでございます。從いまして、あるいは災害の救助にあたりましては、こういうふうな條文を使うことなしに、協力によつて、話し合いによつてやるべきこと、これは申すまでもないことでございます。非常に協力が得られないという場合、あるいはまた差迫つた場合等におきましては、公共の福祉と申しますか、そういうふうな立場から、あるいは今御指摘になりましたように、他人の物資あるいは家屋等についても若干の制限をして、これを公の目的のために、公共の福祉のめに活用するということは、これはまた必要ではないかと思います。御承知のように、これは申すまでもないことでございますが、憲法の第二十九條には財産權の點につきまして、公共の福祉に適合するようにやらなければならぬ。それから正當な補償のもとに公共のために用いることができる、という規定がございます。それでこれをやります場合にも、ここにありますように補償ということを明らかにいたしてございます。補償によつて、しかもこれをいい加減にやるというのでございませんで、一々令書を出しましてやつてまいるというふうに相なつておるのでございます。また人の動員というような點につきましても、これももちろん協力といいますか、お互いに話し合いということで、近隣の災害に對して働いてもらうということ、これまた申すまでもないのでございますが、先日の委員長からも御指摘いただきましたように、國民の自由權というものも、常に國民の公共の福祉のために利用される責任があるというふうに十二條の規定もございまするし、また憲法で禁じておりまする苦役というようなものに服させるという考え方ばかりでもございませんので、こういうふうな人道的な、殊にごく非常な場合にやるようなことにつきましては、苦役というふうな憲法で禁じておるものに該當しないというふうな建前から、基本的人權の尊重は、これは申すまでもないことでございますが、こういう非常突發の差迫つた場合においては、やむを得ない場合にはこれだけの權限を與えていくということは必要ではないかというふうに考えた次第でございます。なお先日もちよつと申し上げましたように、地方自治法等におきましても、第百六十條に、市町村長が非常災害の場合に補償をいたしまして、ほんとうの非常災害のとき、必要のあります場合に、物件の使用、收用というふうなことができましたり、あるいはまた市町村の住民をして防禦に從事させるというふうな規定も、現行法でございますのです。これらと照し合わせまして、憲法の人權尊重の精神を侵害しておるのであるというふうには考えないでもいいのではないか。こういうふうに思つておるようなわけでございます。
 それから第二にお尋ねいただきました災害の範圍でございますが、これは非常災害と申しますのは實は部落等におきまして、あるいは七戸あるいは十戸あるいは二十戸というような家屋が火事で燒けてしまうというふうなものも、やはり土地の事情等によりましては非常災害というやうなことになるかとも思うのでございます。そういうふうなごく小さい災害、これは都市と農村とで大分非常災害という觀念が違つてくると思います。そういうものと、大きいのを豫想いたしますれば、これはほとんど豫想もできぬような――先日も委員の方から指摘がございましたが、豫想もできないような大きい災害も考えられるわけでございます。こういう場合にも、やはりわれわれがやり得る一つの災害の救助の對策というふうなものにつきましては、一應この法律によつてやつてまいるということができるというふうな構想のもとに立案いたしたような次第でございます。ただいま御指摘になりました第三國間の交戰状態に對應して、これを豫想しているかというふうな點についてのお尋ねでございますが、これは特に第三國間の交戰状態による災害を豫想してこれを立案したということは申し上げられないと思います。ただしかしかりにそういうふうな状態が起きたといたしますれば、やはりそのことによりまして相當程度救助がやれるのじやないか、またやつてまいらなければならぬというふうに心得ております。ただ第三十六條の補助の規定等につきましては、最高限度が百分の九十で終つているものでありますから、相當大規模の災害というようなことになつてまいりまするとそれを受けました地域の地方公共團體だけで負擔ができるかどうかというふうな點については、これはあるいは補助率というような點だけは、特別に議會で御決議をいただくというふうなことが、非常に特別な大きいものになつた場合には、必要ではないだろうかというふうに考えております。一應豫想し得るものについては、小さいものから大きいものは相當程度のものまで、これに含んでこれでやることができるのではないかというふうに考えております。
#7
○大瀧委員 ただいま憲法問題に對し人權をきわめて尊重する態度であるというようなお話であるが、それによつて憲法の第二十九條を引かれたようでありますが、これはちよつと考え違いだと、かように私は思う。憲法二十九條は「財産權は、これを侵してはならない。」これは財産不可侵權を意味しているのであります。そして「財産權の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定しているのであります。財産權の内容はもちろん民法においてあるいはその他の法律において決定することだ。かように考えるのであります。適合するようにいわゆる内容を決定して福祉に適合するように法律でこれを定める。こういうことであるのでありまして、この適合するのはどういうことか、一體財産をどういうふうに使用することが公共の用に適するのだということがはつきりきまらないうちに、いかなる物資でもありとあらゆる一つのものに對して、自由勝手に殊にその檢査をすることができる。こういうことは人權の尊重であると言うことは、法を破るものであるということを私は斷言して決して憚らぬとかように考えております。こういう二十九條のような規定は民法、その他の法律で財産權の内容をはつきりさして、それによらなければならぬということをむしろ規定したのである。これが福祉、公用に供することができるといつて、これは何でも福祉だ公共の用だというようなことで、一つの府縣の知事の命令によつて當該官吏が勝手に人の家にはいつて物資の收用をする權利があつたならば、人權いずれにありやとわれわれ考えざるを得ないのであります。だからこういうような法律はつくるべきではないと思う、またこういうことではなく、もつと民主的な法律で十分に效果を達成することができるはずだと考えておるのであります。その點、私は二十九條の關係については違つているのではないかと思う。二十九條にこういう規定を置いたのを、何でも公共の福祉であつたならばよいのだと、ちようど大政翼贊會式の考え方でわれわれの財産權、その他の生命、自由の權利を蹂躪せられるがごときことがあつては、民主主義をなさんとする初頭にあたつては、はなはだ遺憾なことである。かような意味におきまして、人權蹂躪ではない、憲法違反ではないというような簡單な答えではなく、あらためて説明し直していただきたい。またこういう規定を設けずとも、十分に災害の豫防救助ができると思う。これではまるきり戰爭中における軍司令官の規定のようなもので何でもできる。そういうような考え方はいかぬのじやないかと思うので、二十九條の點を御説明願いたい、かように思うのであります。
#8
○葛西政府委員 憲法の點についてのお話でございますが、第二十九條の第二項は「公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」と書いてございます。あるいは大瀧委員から御指摘のようにそういうふうな趣旨になるかとも思うのでございますが、私の申し上げ方が悪かつたと思います。むしろ第三項の「補償の下に、これを公共のために用ひる」という點を申し上げたらよいのではないかというふうに思います。これは非常に切迫をいたしました罹災民の保護と、ひいては社會の秩序を維持できないおそれのある事態に對しまして、これに保護を與え、もつて社會の秩序を維持保全するというようなことは、やはり公共のために用いると申して差支えないのじやないかと思いまして、正當な補償をして、しかも公用令書をもつてやるということにいたしますれば、憲法の精神には反しないものだと考えます。
#9
○大瀧委員 第三項は第二項を受繼いだ規定である。こういうことを考えないで、それだけを考えることがこれは法律解釋として間違いである。公共の福祉に適合したものを公共の用に供するということに連續しているものであると考えない法律の解釋はいかぬのである。こう思うのであります。第一項も第二項も第三項も各項全體としての關連の下に考うべきである。あなたの御議論は、この公用徴収を勝手にやるということは權力的でない。こう解釋をする。こういうことであつたならば、こういう規定でも公共のために仕方がないということになるけれども、財産權の内容がどういうわけで公共の福祉に適するかということがなくして、みだりに補償さえすればいいのだということじやいけないと思うのです。
#10
○小野委員長 この點は實は餘計なことかもしれませんが、昨年の議會でも臨時物資需給調整法にこれと同じような規定があつた。その當時は、昨年の議會では憲法は公布されてはおりましたけれども、施行されておらなかつた。從つて今日では情勢の違いもありますけれども、それが憲法違反ではなかろうかというので、私自身があなたと同じような席から、しかもこの室で政府とやつたことがあるのですが、この問題はいろいろまだ論及してはつきりしておくことが必要かと思われますので、もし大瀧君御必要とあれば、法制局長官の出席でも求めて明らかにすることも一つの方法かと思われます。
#11
○大瀧委員 私は議論で追い詰めて喜びたいというのじやないが、ただこういうような危險な規定を末輩の官吏にもたすベきでない。こういうことが憲法違反であろうがなかろうが、そういうことではいかぬという考を實はもつているのであります。これは子供に刄物をもたせたようにとんでもないことになる。前の總動員法では皆さんがお苦しみのことははつきりしている。だから憲法違反であるということをぼくははつきりさつきから言つていない。憲法違反であるかのごとき、人權を尊重せないかのごとき一つの規定じやないか、これは愼むべきではないか、こういう意見なんです。だから憲法違反の問題だの法理論をここに云々するのではない。こういう法律をこしらえると、あとは官吏が威張りくさつてどうにもならぬ。こういうことは何とか差控えて、別にもつと權力的でない法規のもとに、遺憾ない運用を期せられる方途があれば、そうしたらいかがですかとこう申し上げたいのです。あえてこの議論を通そうというのではない、何も苦しめるのではないのですから……。
#12
○葛西政府委員 今委員長からお話がございましたし、大瀧委員からもお話がございましたですが、これの運用につきまして、もちろん間違つてこれを不當に運用するということになれば、これはゆゆしきことになることは御指摘の通りだと心得ております。從いましてこの運用につきましては、今お述べいただきましたようなことの絶對にないように、私どもは末端まで徹底をさせましてやる必要があることは、お述べになりましたような點について痛切に感じておるわけでございます。ただどういたしましても非常に切迫をした時代でありますものですから、もしいろいろそこらに摩擦があるというふうなことになつた場合などに對しまして、こういう法規を適用する、しないということは別といたしまして、やはり第一線で責任をもつてやります者は地方長官であります。從いまして地方長官にこれ又權限を與えておいていただくということは、差迫つた災害の場合を豫想いたしますると、私どもはやはり必要だと考えているわけであります。ちよつと速記を止めていただきたい。
#13
○小野委員長 速記を止めて。
#14
○小野委員長 速記を始めて。大瀧君よろしゆうございますか。――他に發言ございますか。野本品吉君。
#15
○野本委員 ただいまの問題はすベての人が一應はつきりと理解し、把握しませんと、この案を審議していく上に非常に支障があると思います。ただいま委員長が言いましたように、法制局長官なり何なりの出席を求めて、委員全部が同一の理解の上にこの案の審議が進められるようにされたらどうかと思います。
#16
○小野委員長 それでは本案の審議中に一囘法制局長官の出席を求めることにいたします。さよう御承知を願います。野本君、それでよろしゆうございますか。
#17
○田中(松)委員 本法は大體において結構でありますが、この法を生かすも殺すも、これを委託される日本赤十字社の性格と機能ということが根本になると思うのであります。いかに日赤が誠意と熱意をもつてどの程度に活動をするかということでありますが、かつてこの日赤は愛國婦人會と竝び稱せられた最も大きな團體で、これはどちらも半強制的に會費を取上げて、しかもその集まつた莫大な經費の使い途等についてはいろいろな疑惑の眼をもつて見てこられた團體であります。一方愛國婦人會の方は、あのような經過をたどつてあのような末路をたどつたが、これと竝び稱せられておりました日赤の方は、わずかある一部分の飾りを取りかえただけで、ほとんどそのままの主體が残つておる。これがいかに人道的に誠意をもつて熱心に活動するかということが問題になるのでございますが、定款を見てみますと、皇后陛下の名譽總裁、皇族を總裁に推戴する、まことにありがたいことではありまするが、こういうことはともすればいわゆる袞龍の袖に隱れた過去の過ちを殘しはせぬか。地方においては知事とかあるいは有力者が支部長になることでございましようが、もし日赤の内部に不正事件が起つても、それをあばき立てると總裁の名譽に關するとか、あるいは地方の支部長の名前が出るとどうもいかんからというようなことで、ともすればうやむやに葬られるおそれがある。もし不正事件があつたというような場合には、これは刑事上の問題となることは別といたしまして、やはりこれを指導監督する當局において、どのような手段方法を講ずることができるか。またどういう決意をもつておられるか。これはわかり切つたことのようではございまするが、實際の世の中というものはわかり切つて何でもないようなことがなかなかひつかかりになるものでございます。今私がここで申し上げますと、そういう心配はせぬでもいいじやないかというように響くかとも思いますれども、必ず後日私がここで心配しておるような問題が起つてきます。そのときには一つ一つの方針と申しますか、そういう問題にぶつかつたときのやり方を、この際明らかにしておかなければいかぬと思いますので、そういう意味合で當局の御意見を承つておきたいと思います。
 一、本來の使命を果すために、日赤を指導するには、具體的に言えば、どのような方法があるか。
 二、不正事件でも起つたら、一體當局にはどうする權限があるか。また不正事件が起つたときには、今私が心配するような、總裁の名前が出るから、支部長の名前が出るからというようなことにかかわらず、これを斷固として糾明する意思があるかどうか。
 三、日赤が本來の使命を忘れたような、いわゆるサボ状態というようなときには、これに警告を發することができるかどうか。まだ嚴重な警告を發するだけの意思があるかどうか。
 以上の三點について後日のため、當局の御意見を承つておきたいと思います。
#18
○葛西政府委員 ただいま田中委員からお述べいただきました御注意は、今後私どもが日赤を指導し、監督をしながら仕事をしてまいります上においての、非常にありがたい御注意と謹しんで拜聽いたした次第でございます。
 御質問になりました第一の、本來の使命を果させるための具體的な方法という點でございますが、これは現在お手もとにも配付いたしました資料でごらんいただきますように、日赤といたしましても定款を變更いたしましてから、まだ日はあまり經つておるとは言えぬのでございますけれども、資料にもございますように、その方面に乘出すためにいろいろやつております。それから政府といたしましても、政府の事業をあるいは委託するというような事態も、法律でもしこの案がきまるといたしますれば、きまりますし、また第二十一條の第二項のように、民間の團體、あるいは私人に協力活動を強制させることになりますれば、これは當然政府關係部局全力を盡してやつてまいらなければならぬと考えております。實はこの日本赤十字社は、御承知のように、陸海軍の指導監督のもとに特別の勅令がございまして、日本赤十字社令をもつてできた特別の法人でもあつたわけでございますが、それを先般そういうことでなくして、一般の民法に基く法人に組織を改めまして、資料にもありますように、社長を勅任とするというような規定等も改めて、一般の法人にかえて、總會で選擧するということに改まつたわけでございます。この監督は厚生省が主としてあたり、對外的な渉外事項と申しますか、そういうものについては、外務省の指導を受けることになつておりますが、厚生省が主としてこういう方面の指導、育成をしてまいることになつておりまして、私どもぜひ力を入れて日赤にもやらせ、私どももできますやうに一日も早くやつて、そうして國際的な、外國の赤十字と同じように仕事ができるようにしてまいらなければならぬと考えております。
 第二にお尋ねになりました、もし萬一御心配をいただきました不正事件が起つた場合、あるいは起きようとする場合にどうするか。もしこういうことがありとすれば、これはもう當然民法の六十七條に主務官廰の監督の規定がございますので、これをもちまして十分調べることはもちろんであります。また不正等がもしかりにありといたしますれば、御心配になりましたようなことなく、斷固としてこれを糾し、罰すべきは罰してまいるようにしてまいらなければならぬと考えております。
 それから第三に、日本赤十字社が使命を忘れてサボと言いますか、そういうような状態になつたときにはどうかというようなことでございますが、かようなことではもうとても何ともならぬことでございますし、これはぜひそういうことのないようにしてまいりたい。いろいろな人が理事にもなつておりますが、厚生省といたしましては、社會局長たる私が今理事になつておりまするから、内部からももちろんそういう大事な使命を遂行するようにしてまいりまするし、役所といたしましても、法律でもしこういうことを委任し、あるいは仕事をさせることになりますれば、かような事態の起きますときには、起きないように内部から注意をするというようなことも考えておりますし、またそうしなければならぬと考えておりますが、もしそういうことがあつたと假定いたしますれば、これは警告と言いますか、今のような方法をとつて、かようなことのないようにしてまいることは、やらなければならぬ當然のことと心得ておる次第であります。
#19
○小野委員長 大瀧君。
#20
○大瀧委員 それに關連して……。ただいまの法案の問題ですが、憲法違反でないということは、先ほど法制局長官に出席していただいて説明を聽くことになつておりますが、われわれは法制局長官の説明がかりに憲法違反にあらずとしても、こちらが憲法違反なりと信ずる場合には、最高裁判所の判斷を求めるということはあり得るかもしれません。しかしながらそれよりも、こういうようなことを論議する前に、政府として將來こういうまぎらわしいこと、あるいは監督を十二分にして、その運營の萬全を期するように注意するということでなくして、この運營を全うし得るような法律の條文に改める御意思はありませんか、あなた一人で決定できぬというなら、これは省で相談して、もつと民主的な條文にこれを改めていただきたいということを私は希望したい。もし今日一旦書いたのだがら、これを固執するということであつたら、それはきわめて非民主的であつて、これは憲法違反であるという最高裁判所の判斷に問うたりしては、あまり民主的でないと考えるので、善處方を要望したい。これだけであります。
#21
○小野委員長 その問題は、もちろん憲法違反の疑いがありとわれわれが考えれば、われわれが立法機關であるから、われわれが相談して修正すればいいのですから一應われわれであとで話合つてきめることにしたらどうかと思いますが、いかがですか。
#22
○小野委員長 それでは次會の日程は公報をもつてお知らせすることにいたしまして、本日はこれをもつて散會いたします。
   午前十一時五十一分散會
ソース: 国立国会図書館
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