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1947/09/26 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第17号
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1947/09/26 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第17号

#1
第001回国会 厚生委員会 第17号
昭和二十二年九月二十六日(金曜日)
    午前十一時三分開議
 出席委員
   委員長 小野  孝君
   理事 田中 松月君 理事 山崎 道子君
   理事 飯村  泉君 理事 武田 キヨ君
   理事 有田 二郎君 理事 大瀧亀代司君
      太田 典禮君    角田藤三郎君
      中原 健次君    福田 昌子君
      松谷天光光君    武藤運十郎君
      園田  直君   小笠原八十美君
      小暮藤三郎君    近藤 鶴代君
      榊原  亨君    村上 清治君
      河野 金昇君
 出席國務大臣
        厚 生 大 臣 一松 定吉君
 出席政府委員
        厚生事務官   葛西 嘉資君
        厚生事務官   米澤 常道君
        厚生事務官   濱野規矩雄君
    ―――――――――――――
九月二十三日
 中等學校教員の恩給増額に關する請願外一件(
 野溝勝君紹介)(第六九〇號)
 産兒制限に關する請願(加藤シヅエ君紹介)(
 第六九一號)
 恩給増額に關する請願外十二件(小林運美君紹
 介)(第七〇九號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 災害救助法案(内閣提出)(第二二號)
 醫療制度に關する件
    ―――――――――――――
#2
○小野委員長 それではただいまより會議を開きます。
 災害救助法案を議題に供します。災害救助法案につきましては、御承知の通り質疑の大方を終了いたしたのでございますが、なお一、二質疑の通告がありますので、この際特にこれを許したいと思います。大瀧亀代司君。
#3
○大瀧委員 この間の災害についてちよつとお尋ねしたいのでありますが、この間の災害について、政府はいわゆるこの災害救助法の第四條「中央災害救助對策協議會は、左に掲げる事項を掌る。」こういうことで五項目あげられております。一、非常災害及び救助に關する情報を集めること。二、救助その他緊急措置に要する勞務、施設、設備、物資及び資金の整備云々、この五項目をあげておられますが、この事項をきわめて果敢に善處せられたものだということを信じておるのだが、この法律のなかつたために、この五つの條項がいかんともうまくいかなかつた、こういうことがあつたかどうか。もしかくのごときことがあつたとするならば、行政當局としてこれはきわめて遺憾なことである。私はないものだということを信じたいのでありますが、その點について實際のことを伺いたいと存じます。これは厚生大臣にひとつ御説明願います。
#4
○一松國務大臣 その點につきましては、實際に當つておりまする政府當局の方から……。
#5
○葛西政府委員 この委員會がなかつたために支障があつたかどうかという點でございますが……。
#6
○大瀧委員 ちよつと待つてください。委員會がなかつたから又支障があつたかということよりも、この五項目に對し適切な行為を盡し得なかつたかどうか。現在盡していないかどうか。もし盡していなかつたらその具體的な事例をあげて御説明願いたい。こういうことです。
#7
○葛西政府委員 中央の災害救助對策協議會という各省、關係大臣そのほかの者を網羅いたしました第七條にあるような委員會はつくつておりませんが、去る十八日だと思いますが、内閣に西尾官房長官を委員長として關係各省の局課長を網羅した委員會をつくり、以來連日委員會ないしは幹事會を開き、關係の各省が集まつて情報をとり、ここは不足だというふうなものがあればその場できめまして、措置を講じております。たとえて申せば、たしか二十日であつたかと思いますが、岩手縣の内務部長が來ておりまして、岩手縣の沿岸に米が非常に不足しておるというような情報を岩手縣からもらいまして、これに基いて即座にその委員會でその情報をとり、農林省當局もそこにおりましたので、運輸省と相談して、すぐ横濱からあるいは鹽釜、鮫、大船渡の三港に對しまして、數量はちよつとここにもつておりませんが、そのくらいのものを急送したというふうなことをしております。そのほかいろいろな問題について、たとえば代金支拂いの方法であるとか、あるいは商工當局の日用品であるとかというようなものを、委員會、幹事會等において情報がわかるにつれて、運輸省と相談をして送るといつたような措置を講じております。ただ私どもとしては平素からかような組織、かような計畫が立つておりましたならば、なお一層これらのことが迅速、しかも計畫的に實行ができたのではないかと考えております。たとえて申しますれば、あるいは民間の方とか、日本赤十字社というようなものがはいりあるいは各省大臣が委員會等で御相談を願うというようなことが平素からできておりましたならば、さらにもつと計畫的に行き得るというふうなことが考えられるんじやないかというように考えます。
#8
○大瀧委員 葛西さんのお話では萬全を盡したが、さらに委員會があつたら萬全を盡し得るだろうというお話があつたが、委員會をつくることに對しては何ら法律の規定をまたずともできることは御了承のことだと思いますが、これは當然政治の局に當つておる者が行政的な事務として、平生に委員會というような組織をつくり、急場に即應する態勢を常に整えるということは、行政の局に當る者の任務と私は考えておるのであります。それは何も格別な法律を要しなくともできると考えておりますが、御所見はいかがですか。
#9
○一松國務大臣 今あなたのおつしやるようなことが、法律がないときには政府がつくられるかつくられぬかという問題は、法律はなくてもお互いの話合いの上でつくられます。しかしながらそれは法的な根據はない。いやしくも法治國である以上は、法律によつてすべての行動を規定する方が正しいやり方であります。そういう意味で法律をつくつていくということが正しいやり方であり、法律がないときよりもすべて敏活に行動ができるということについて、その根據たるべき法律の存在ということが必要である、かように私は考える。法律がなければ、しからばそういう活動はできないかと言えば、それはやはりできる。できるけれどもそれはお互いの協議の上で、お互いにそれに反對する者がなければ圓滿に行くが、もし反對する者があればできない。法律があればそういうような障害は遠慮すべきことはない。こういうことになるのでありますから、やはり法治國である以上は、法律をちやんとこしらえておいて、その法律の範圍内において活動することが正しい行動である。かように私は考える。
#10
○大瀧委員 それでは大臣にお問したいのです、が大臣はこれは法律的根據はないけれども、話合いでできた。現在の救助はすべての救助に對いして法的根據は何もないがおやりになつたのでありますか、いやしくも行政府長官が一切行政事務をやるにつて、末端の具體的な事實に對しては、法規はないかもしれぬが――あなたはわれわれと同じに辯護士でありますが、法律上の根據は憲法の條章にも一切何もないが、行政長官はそういうことをやるのに何もなくてできないけれども、やつておるんだ、こういうお考えといたしますならば、われわれははなはだ所見を異にするのでありますが、その點いかがですか。何ら法律の根據はない、根本條件は何も規定に基かないけれども、ただ話合いでやつた。こういうことで、行政府に列する方々が一切の政治をやる上において、法律の具體的な規定がなければ、實は何もやれぬのだというような考え方は、非常に解せぬことだと思う。いやしくも法治國にあつてその行政長官たる者が、何らの根據なくしてそういうことをやつておるということであつては、これはどうもわれわれは解せぬ。これはりつぱな根據のもとにおやりになつているものと私は信じたい。行政長官はつまり行政に關する一切の職權に關しては、何でもやれるものだということでおやりになつておると思つているが、そうでないということはわれわれは解せぬのですが、その點について法律上は根據はないけれども、話合いでやつたというようなことの御説明を承れば結構です。
#11
○一松國務大臣 法律の根據はないというのは、こういう第四條のごとき法律の制定したものはない、こういうことです。法律の根據はないからやれないというのではない。いやしくも官吏として國家民心のために安寧秩序を擁護すベき立場にある者は、そういう職責を全うする意味において、法律はなくても話合いでできる。しかしながら法治國である以上は、法律の根據に基いて行うことが正しいのだ、こういうことです。法律の根據に基くということが正しいのであつて、法律の根據がなければやれぬというのではない。いやしくも行政官が人民救護の責任をもつておる以上は、救護するについて具體的の法律がなければ救護はできぬかといえば、できぬというのではない。できる。できるけれども、それは法律の根據はない。話合でやるのだ。ゆえに法治國では法律の根據をこしらえておくことの方が萬事都合がよろしい。根據があればその根據によつて直ちに活動ができるこういう意味ですから、法律の根據がないからできないからできない云々ではない。いやしくも人民救助という責任をもつておるという立場においてそういうことはできるが、その具體的のことを一々やるのには、ちやんと法律があつて、その根據に基いてやることがすべて簡便であり、適切である。こういうことのために立法が必要だ、こういうのです。
#12
○大瀧委員 大臣の意見が法律的根據のもとに具體的法律を必要とすることを痛感するというのなら私はわかる。しかし行政府の實際の政治にあたつて、法的根據が何ものもないのだというその御主張はわからぬ。法律の根據が具體的にはないけれども、憲法その他の條規に基いて實際やつていられるのだ、具體的の法律はないのだ、こういうことなら私はわかる。あなたのさつきの話は、何もないのであつて、法律上も憲法上もあらゆる法律上の根據は何もないのだけれども、やつておられるのだというようなお話であつたので私は承つたのであります。具體的の事實がないけれども、また具體的規定がないけれども、日本の憲法の條章に基いて、あるいはその他の法律に基いてやつているというのなら私はわかる。何も根據がないというなら、私はちよつとわからぬから御説明を承りたい。こういうふうに申し上げたのです。
#13
○一松國務大臣 私もあなたと同じように法律家だ。あなたと同じように辯護士だ。だからあなたの言われるように何も根據はないけれどもやつている、そんなばかなことを答えはせぬ。あなたの今言われたように具據的の法規がないから具體的の法規をこしらえたらよろしい。しからば今囘の救助については具體的の法規があつたかといえば、それはない。具體的の法律なはい。しかしながら行政官として人民救護の職責のあることは當然である。今あなたの言われるようなことを私は答辯いたしませんよ。ただ具體的な法規がなかつたというのです。だからあなたと私とは同じ法律家だから、そんなつまらぬ答辯はしないことを御了承願いたい。
#14
○榊原(亨)委員 ひとつお尋ねしたいのでございますが、それは、地方災害救助對策協議會があり、あるいは都道府縣災害救助對策協議會でございまするが、この第十四條にきめておりますところの仕事というものは、主として平時において協議會においてきめ、あるいは計畫を推進されておるものでございまして、一旦災害が起りました場合には急を要するのでございますから、その場合にはこれらの協議會に諮るということなしに――諮る暇があればもちろん諮つていいのでございますが、諮ることなしに直接地方長官が救助の指令を發し、またこれを推進するということでしようか。すなわち五號の「第二號から前號までの計畫の實施を推進する」ということは、主として平時のことを意味せられるのでございましようか。あるいは違つた意味に解釋してよろしいのでございましようか。その點を承りたい。
#15
○一松國務大臣 十四條の五はちようど第四條の五と同じようなことをここに書いたのでありまして、今あなたの御質問のごとく、實施を推進する餘裕のあるときは、もちろんこれはやらなければならぬ。餘裕のないときに、十四條の五にこういうことがあるから、そこでわれわれの方でいろいろなことをやらなければならぬ時期を失するようなことは、當然これには含んでおらぬ。だからして、そういう餘裕のあるときはやるが、餘裕のないときには、それがいわゆる非常災害の救助でありますから、單刀直入、ただちにこれを實施に移す。これが法の精神であると御了承を賜わりたいと思います。
#16
○小野委員長 以上をもちまして質疑を終了いたしました。
 ただいまより討論にはいりたいと思います。討論は通告順によつてこれを許します。大瀧亀代司君。
#17
○大瀧委員 私はこの救助法がここに提出されてより、とにかくこの法律を通覺して、二つの理由でこの法律案に反對したいと思うのであります。第一番は、ただいま私が質問いたしましたように、この災害救助という問題は、行政府として、行政事項として當然こうした場合には救助に當らなくてはならぬのである。殊にこの規定を見ますと、その總裁が總理大臣、副總裁が厚生大臣、各省官廳の官吏が役員、それに知識經驗のある者をここに加えて協議會をつくり、事務局を置く。こういうように、當然なすべきことを今言つたように法律化し、しかも事務局を置いて經費をかけ、これを行わなければならぬのだということは必要がないことだ。當然やるべきことを法律化して、この豫算のない緊迫している現状において、費用をこれに捻出するということは、國民全般の負擔以外の何ものでもないのであつて、結局歸するところは、同じ效果をあげる以外に何もないのではないか。行政府として常にやらなければならぬことを、協議會をつくつてやるということは、事務を煩雜にして、費用をよけいにかけてやる以外にないことではないか。こういう觀點からこれに反對してまいつたのであります。これが反對したい一つの理由であります。殊にただいまお聽きいたしますと、第四條の五項目にわたれるものに、何かこうしたものに對して非常に間に合わないものがあつた。こういうようなことで、これでなければほんとうの救助ができぬのだという具體的事實でもありますれば、これはまだしも、先日私は伺つたのでありますが、前もつてきめておきますれば、これを果敢にやれるのだという以外の答辯しかないことにおいて、なおさらこの必要がないのだ。ものことは協議會が初めからあるから、有事即應の態勢が敏速果敢にやれるというものではない。これは行政府が常にそうしたところの訓練によることが何よりも大切なことであつて、訓練をしなかつたならば、協議會なんか何年前からやつておつても、效果がないということになるだろうということは、だれでも了知し得ることだと考えるのであります。こういうような點において、今の御答辯によつても十二分に適切有效な施設ができるのだということは、政府みずからの答辯によつて明らかであると考えます。でありますから、さらにこの必要がないという意を強うしたわけであります。ただいまの理由はまず第一點の理由であります。
 第二の理由は、第十三條、第二十六條、第二十七條の規定中に、生産、集荷、販賣、そういうようなものの場所に、住宅に立入つて一切のものを檢査することができる。農業は農産物、漁業家は水産物、一切のこうしたものを、人家にはいつて検査し得るという規定であるのであります。私は今度の新しい憲法が人権を最も尊重する、しかも財産權でもあらゆる人權でも、公共の福祉に反しない限りは、これに對して制限を加えてはならないのだ、こういう規定が明らかになつておることは、皆さんも御承知の通りであります。公共の福祉に反しない限りに最大に人權を尊重する。それであるから、福祉に反する行為があつたときにおいて、初めてこれに對する制限の規定を設けることが妥當であるにかかわらず、何ら反しない前から、人の家に勝手にはいつて、あたかも家探しするような、こうした法律は、こういう意味からもなすベきではない。殊に日本の今度の憲法には、おかしいような規定だとわれわれが感じた刑事訴訟法の規定が憲法の規定になつておる。その三十五條の規定は、現行犯でない者に對してはいかなる惡いことがあつても、その場所、押收するその書類を明示せんければ、人の家に入つて捜査や何かはできぬ。しかもそれは司法官憲の令状でなければならぬのだということが、明らかに規定せられておる點から見ましても、その人權尊重がいかに大切であるかが了知し得るものだと思う。しかるにこの條文を見ますと、縣知事あるいはその他の者の命ずる當該官吏――事務所長の一末輩官吏で足るのであるから、當該官吏という名前は實に漠然、あいまいなものであつて、官吏であれば、命ぜられたらだれでもできる、こういうようなことがあつたのでは、どんな間違いを生じ、人心をして不安ならしめるかは想像にかたくない、こういうように私は考えるのであります。今度は從來の憲法よりも人權が尊重せられるのだ。官治主義ではいけない、徳治主義でいかなければならぬ。最も民主主義でいかなければならぬと聲をあげて皆さんがことごとく絶叫しておるのでありますが、こういう法律が次から次へと出るということであつたならば、權力主義はきらいだ、官治主義はきらいだというけれども、ますます官治主義を好み、權力主義にどんどん陷りつつあることは明らかであります。これは大臣から聽いた話だと思うのですが、隣りの人が水害に遭つたのに、こつちの家では食い物を山と積んでおつて、それを一切出さぬのだ。こういうやつもあるわけだから、こうしたものを出させなければならぬのだということを言われました。しかしながら、私は日本の國民を信じたい。國民は初めから罪人だ、國民はことごとくろくなことをやらぬのだ、人が困つても、一切物を出さぬのだ、こういうふうな觀點に立つて政治を行うならば、それこそとんでもないことだと私は考えるのであります。私は國民をどこまでも信じたい。わずかな特殊なそうした惡い者や、劣惡な者を基礎において、日本の全般を律するような法律をここに制定せんとすることは、實に將來に過ちを殘すものだという考えにおいて、この法文はどうしてもいかぬのだ。私か最もいかぬと思うのはこれから始まつたことである。そうしてみますと、全體が必要のないことである。當然行政府がやらなければならぬことを、單に法律化するのである。こんな必要がどこにあるか。こういうことになつたのでありますが、根本は何といつても人權を極度に尊重しないかのごとき、人の家に立入り檢査するというような規定だけは除かなかつたならば、私は、反對せざるを得ない。かように存ずるのであります。私は、この二つの理由で、この救助法案が出たときから反對しているのであります。簡覃に二點の反對理由をあげた次第であります。
#18
○田中(松)委員 私は日本社會黨を代表いたしまして、災害救助法案に贊成をいたします。贊成意見を述べる討論ではございますが、私は討論というよりも、ただいま自由黨の反對の御意見を承りました今においても、この上私は御相談を申上げる氣持を捨てることができないのでございます。まだ今からでも間に合うのでございますから、私の相談を聽いていただいて、今の反對の御意見をもう一度御考慮願いたい、そういう切なる念願をもつものでございます。ここに二、三の點についてわが黨の立場を明らかにいたしておきます。
 本案は思いがけない災害に遭うて、あるいは貴い生命を失い、あるいは傷つき、またはかけがえのない財産を失つて、生死の境の土壇場に追い込まれた氣の毒な人々を皆が互いに力を合わせて救助しよう、その生命財産を保護し、社會の秩序の保全をはかろうとする目的でありますから、常に社會主義を主張いたしておりまするわが黨といたしましては、兩手を擧げて贊成するものであります。このような法案はもつと早く出なければならなかつたのでございます。むしろ遲過ぎるのでございます。しかし本法案が完全なものであるというのではありません。それはまたあらためて國會において再吟味する必要がありましよう。過去におけるいずれの法律といえども、條文の中にうたわれている通りに、生かして用いられたら、悪い法案というものはそんなにたくさんあるものではありませんけれども、残念なことにはせつかくのりつぱな法律も空文にしてしまつたり、場合によつては悪い方に運用されたりする幾多の實例がありまして、願わくは本法案のように、温かい血と涙によつてつくられ、温かい血と涙によつて運營されねばならぬ法律が成立し、施行されるようになつたときには、當局はここで再三言明された約束をほごにすることなく、關係官公吏は眞に國民の忠實なる公僕としての責任を果されるよう最善の注意をお願いしたい。特に日本赤十字社が過去の反動的、官僚的な獨善を、斷じてくり返さぬよう萬全の方法を講ぜられたい。
 次にいまひとつ申述べておきたいことは、第十二、第十三、第二十四、第二十五、第二十六、第二十七等の各條文に對するわが黨の態度であります。なるほど活字に現われた條文だけを見ますと、いかにもかつての總動員法を思わせるようなものがあります。しかし本法案が實際に發動するときのことを考えてみねばなりません。かつての關東大震災のごとく、近くは關西方面の大震災、または東北、北海道等におる大水害のように、次には今次の關東東北の大水害のように、幾十、幾百、幾千、幾萬の人々が生死の境に投げ出されているという、いわゆる非常時における非常手段でありますから、尋常一樣の方法では間に合いません。すなわち非常手段をとらねばほかにとるべき方法がない、いわゆる非常手段であります。しかもかつての總動員法のねらいは、國民の大多數を犠牲にして、少數の特權階級に奉仕させるためのものでありましたが、本法案はむしろその逆でありまして、社會、公益福祉のための温かい血と涙の現われであります。現に今度の大水害にあたりまして、私も九月二十四日に埼玉縣下の被害状況を現地視察に參りました。そのときに西村埼玉縣知事は第一線の責任者として連日連夜命がけの奮闘をされたそうでありますが、その西村縣知事が身をもつて體驗したものによりますと、次のようなことがあつたとのこと。ここにトラツクが十臺あれば斷水を防ぐ資材を運ぶことができるがな、ここに小舟が二十雙あればみすみす水浸しになる家財を安全な所に運ぶことができるのだがな、と思つてみても、トラツク屋も船主もこういうときにこそやみの仕事でどつともうけたいという氣分があつて、なかなか言うことを聽かぬ。いくら部下をやつて相談をされても、無理を言いおると、最後には一體當局はどんな法的根據によつてそんなことを言われるのかと逆襲されてくる。こんな場合、行政的にトラツクや船が動員されるような法律をつくるようにしてもらいたい、先ほども西尾官房長官と和田安本長官が來られたから、このことをやかましく言うておいた。それこそ身をもつての體驗からつくづく災害救助法案のような法的根據を痛感されておりました。また藥品にいたしましても、相談を受けた小さな會社は正直に十トン、十五トンというような多量の藥品を供出してくれるが、日本でも指折りの大會社が二トンそこらしか出してくれぬ。あともう一トン出してくれないか、あんな小さい會社にあれほどあるのだから、あれほど大きな會社にないはずはないかと思つてみても、ないと言われてみればそれつきりのこと。こうした場合でもほんとうにあるかないかということを調査する法的根據が欲しいものである。あの水害地におきまして一番困つておられるのはローソクだそうですが、ローソクは縣廳にも一本もない。それならどこにもないかと思つておると、縣廳に盛んに賣込みが來る。自分の所にこれくらいあるがわくをもらいたい、そうしたらローソクを出しましよう。たとえば千本なら千本のわくをやりますと、その商賣人は必ず縣廳からもらつたわくをふりかざして、一萬本、二萬本というものをやみ流しにする。ないのではない。そういう工合に賣込みに來る。どこにかある。それを探すためにこういう法的根據が必要であるということは、實際これは血のにじむような今度の大水害から割出された結論であります。御心配のような點、たとえばこの法律ができたならば、あつちこつちと片はしから押し入つて、戸棚を開けたり、天井裏をつついてみたり、何かある物を片はしからとつてくるのではないか、そういうことをやられるおそれがある。もちろんそういうことがあつてはならない。そういう點についてはこれは別途に考えるベきものでありまして、この法律ができる根據というものは、今申し上げるようなトラツクが、船が、あるいは藥品が、そういうようなまあ何と申しまするか、常識で考えてみても納得のいくようなところにのみ發動するのであつて、戸別々々に一軒々々米びつを探すの、長持を引つ張り出して着物をとつてくるのというようなことに使うべきじやない。またそういうことをする者があるということにまで、いくら今日の人道頽廢したときとはいえども、私どもはそこまで疑いたくないのでございます。今私がここで實例を申し上げたいくつかのことは、これは西村埼玉縣知事から聽いたことでありまして、聞くところによると、西村埼玉縣知事は自由黨公認の運擧によつて出られた方であると申しておりまするが、實際そういう場面を見ていただく、あるいは見においでになることができないならば、今私がここで申し上げる血と涙の心持でそういう場面を想像していただきまするならば、一日も早くこういう法律をつくらなければならぬということに思い至つていただくのではないか。まことに言葉が過ぎるかとも思いまするけれども、前にもお斷り申し上げておりましたような、私は討論というよりも、今に至つてもなお反對派の方々がこういう點を御考慮くだされて、もう一度再考していただくことをお願いする意味で申し上げるのでございまするから、言葉の過ぎる點はどうぞお許しを願いたいと思います。日本社會黨も前にあげましたような條文を吟味することなく、まるのみにしたのではございません。そういう點を十分慎重に考慮いたしました上で、今申し上げるような結論を見出したのでございます。繰返して申しまするが、法律というものはつめのあかほども濫用されてはなりません。大瀧さんの指摘されたようなことは過去にもいくつもございました。そういう點も十分考慮いたしまして、そういうことのないように、當局において慎重なる態度をとつてもらうために、日本社會黨といたしましては、次のような附帶決議を付して、本案に贊成いたしたいと思うのでございます。
    附蔕決議
 一、本法案第十二條、第十三條第二十六條及び第二十七條の規定は、その運用いかんによつては、新憲法により保障されている國民の基本的人權及び財産權が不當に侵害されるおそれなしとしない。政府は新憲法の精神を侵す下級官吏の權力乱用等のことを來さないよう、本法の運營に特別の考慮を拂うこと。
 二、水難の救助は、現行水難救助法をもつてしては十分にこれを行うことが困難であると思われる。ついては、同法が改正されるまで、同法の規定による救助が十分でない場合は、本法案第二條第二項の規定を適用して水難救助に遺憾なきを期すること。
以上。
#19
○小野委員長 園田直君。
#20
○園田委員 民主黨を代表し本案に贊意を表するものであります。そもそも本案は第二條に示すがごとく、廣範圍にわたり非常災害にかかり、通信連絡あるいは杜絶し、傷者は續出し、給養、治療等多數人命に關する急務は激増し、人心あるいは混亂し、平生の組織、平素の環境においては、處理し得ざる事故が多數勃發し、状況によつては治安維持等においても懸念あるやもはかり知れざる状況において、災害を最小限に防止し、これを速やかに救助せんとする法案であります。個人の自由と權利を尊重し、これにあこがれる點においてはあえて劣らざるものでありますけれども、かかる非常の場合は平穩平和のうちに座しての理論、心境等は大よそ用いるに足らざるものでありまして、これを速やかに救助し、防止せんとするには、強力なる、しかも平素より諸凖備えたる組織、統制のみが初めて効果があるものでありまして、平靜裡に實施され得ざるところの強力なる處置等も、斷固として實施するの要があるものであります。すなわち大を生かすべきためには小を殺すという必要が生起するものでありまして、特に敗戰後の混亂今なお治まらざる時期に、しかも再組織の過程にある今日に、かつまたかかる場合に最も有効なる形式にある軍隊等なき今日、一日も早くこれが對索を強力に施行をして、これを裏づけする法案によつて對處すべきは當然であると思考するものであります。關東の大震災、あるいは戰時中の各都市の災害を考慮しましても、戰時中の各都市の災害の状況は決して戰時中に加えられたる敵の攻撃の大小によつて災害が定まつたものでなく、その都市の平素における強力なる組織と統制と諸準備のいかんによつて災害の大小がきまつたことは、最も深くわれらの惱裡に今なお存するところであります。今般未曽有の水害に本法案未公布の状況にありまして、大臣この法案に準じて處置されたことは感謝するものでありますけれども、われわれ委員としては、この法案が今次の水害に今なお公布されずして、これに準じて處置をとるのやむを得ざることの責任を感ずるものであります。今水害の状況を見ましても、社會黨の委員から述べられましたごとく、あるいはトラック、あるいは船等、運搬あるいは食糧、治療、あるいは決壞、破壞、あるいは立ち退き等に關して強力なる、しかも法の根據あるいは前もつての準備がなかつたために、本水害を最小限度に止め得たにもかかわらず、大なる被害を招いたという點は、あるいは座談會において、あるいは現地の報告において見るところであります。以上申し上げましたごとく、大乘的見地より速やかに災害を防止するためには、若干の個人の自由をもあるいは某期間制限するの必要を認むるものでありまして、もちろん本法案内にはあるいは新憲注の精神に反するがごとき、感を受けるものもありますけれども、憲法第二十二條によつて國民の權利は常に公共の福祉のためにこれを利用するの責任を負うの一項あり、かつまた十三條、二十九條等を見ましても、常に個人の自由と權利あるいは財産というものは、公共の福祉に適合するがごとくこれを認めてあるものであります。先年の憲法審議會における各黨の代表演説を見ましても、この點については十分各黨より論議されたところでありまして、私有財産を認めるということも、社會の秩序を維持し、公共の福祉に貢献するということを認めた上でなければならないというような意見が述べてあります。以上述べました通りに、個人の自由と權利は、あくまで社會の福祉に反しない限りという前提がありまして、大瀧委員から述べられました通り、この場合の社會の福祉に反しないということが、むしろ個人の自由と權利の根本である。社會の福祉の根本で、しかも最低の生命と生活を慰安をし、これを取止めようとするために發生せられるやむを得ざる制限であるかと存じます。この意見からしまして、決して本法案が新憲法の精神に違反するものでないと考えられるのであります。但し運用の妙は人にあり、これを實施されるにおいては、當事者は十分その責任を感じ、これが弊害の起らざるように十分の監督を望む點において、社會黨の提議せられたる附帶決議に異議なきものであります。なおまた本案は主として消極的な救助について述べられ、積極的なる未然の豫防その他については述べるところ少いのであります。かつまた破壊あるいはその他についても別途の時間に速やかに考慮し、これに強力なる別途の法案を考慮される必要があるものと存じます。
 以上所見を述べまして、民主黨を代表して贊意を表するものであります。
#21
○小野委員長 河野金昇君。
#22
○河野委員 國民協同黨を代表いたしまして若干の意見を述べて贊成するものであります。
 本案は關東、東北の水害の起らない前に本委員會を通過すべきものであつたのであります。しかるに審議不十分にして突如採決にはいろうとしたがゆえに、私は國民協同黨の立場から一應全面的に反對をしたのであります。その後この法案はそのままになつておりましたが、社會黨竝びに民主黨の方々が全面的に無修正でまた何らの條件もつけずに最初は贊成されようとされたが、この約三十日間の休みのうちに、非常にわれわれの言うことを諒とせられて、折れてこられたことを私は喜ぶものであります。ただいま社會黨から附帶決議として出たのでありますけれども、實は社會黨からあれは出たのではないのであります。各黨から共通に出したはずであります。社會黨はきよう突如としてわれわれの提案竝びに自由黨の提案をうのみにされたのでありまして、實は社會黨の提案では斷じてない。各黨共同の附帶決議であるということをここに私ははつきりしておきます。
 大體今後の水害を見ましても、確かに厚生大臣なんかのおつしやるように、法的根據がなかつたがために、萬全を期し得なかつた點もあることと思いますが、そういう點に對してはわれわれも十分反省をしなければならぬと思うと同時に、法律があまりありすぎるがために、かえつて役人たちがその處置を誤つたことも多々あることはお認めになることであろうと思うのであります。必要な法律をつくることはよろしいけれども、一體この議會始まつてからでも法律は山のごとくつくられておるけれども、なくなつておる法律はほとんどないのであります。おそらくわれわれの周囲は法律の綱によつてめぐらされて、人間的個性や責任觀というものはなくなるおそれすらあるのであります。特に今度の水害に對して官吏諸君のとられた態度には法的根據がないとか、あれの責任だ、これの責任だとかいう法律をたてにとつての責任のなすり合いのために、多くの人命や多くの田畑に損害を與えたことの多々あることを、私は官吏諸君が率直に反省しなければならぬと思います。大體法律はたくさんあるよりも少い方がよろしい。いくらでもつくつて役人だけが知つておるような法律なら、ほんとうはない方がいい。法律は常識でわかる程度のものであつた方がいいのであります。法治國々々々といつて法律の綱をめぐらすというと、人間の個性は働かずに、あれも法律、これも法律といつて法律に頼つてしまうことになるのであります。私は理想をしては法は三章であつた方がいい。簡單であつた方がいい。しかし萬やむと得ずこういう法律をつくらなければならぬならば、不必要になつた、邪魔になつた法律は片はしからやめていくことであります。厚生省なんかにおいても、今議會になつてからいくつも法律を出されましたが、一つも減つていかないのであります。必要な法律はつくつてよろしい。不必要な法律はやめていくことを私はこの際強調しておきたいと思います。
 この法案には先ほど附帶決議の第一項にありましたような權力規定が盛られております。確かに大臣なり次官なり局長なんかの説明を聽いておれば、非常にごりつぱな説明であります。大臣や次官や局長がものの運用に當り立入り検査をされるならば、おそらく何らの問題はなかろうかと思いますが、ここで一旦法律ができるというと、厚生大臣の知りもされないような、ずつとはずれの方の下級官吏がこれを行使するのであります。戰時中においても、戰後においても、法律があるがゆえに、下級官吏が必要の權力を濫用しておることは多々あるのであります。私は國民協同黨としては、その權力規定、十二條、十三條、二十六條、二十七條の規定は、ややもすれば下級官吏が濫用のおそれあるがゆえに、今日まで反對をしてきたのであります。しかるに今日社會黨、民主黨の方竝びに自由黨の方々がわが黨のこの立場を諒とされまして、本法案を通すにあたつて附帶決議を各黨滿場一致で採擇くださることになりましたがゆえに、不本意ながらこの法案を通すことに決定したのであります。どうぞこの附帶決議に盛られたように、この運用にあたつては權力濫用にわたらざるよう、特別の考慮を拂われんことを切望いたしまして、國民協同黨としては附帶決議をつけて本案に贊成をいたしたいと思います。
#23
○小野委員長 先ほど田中君の討論に關して、田中君より發言をしたいと求められておりますので、これを許します。
#24
○田中(松)委員 先ほど私の發言中、附帶決議を社會黨單獨のもののように申し上げましたけれども、これは間違いでございまして、各黨共同の附帶決議でございます。この點訂正いたします。
#25
○小野委員長 以上をもちまして討論を終結いたしました。
 採決いたしますが、その前に大瀧君に御了承いただきたいと思いますが、大瀧君の御發言は反對の討論という御通告でもございませんでしたので、別に採決を用いないことにいたしたいと思いますから……。
#26
○大瀧委員 自由黨はさきに反對であるが、ここに附帶決議がされて、これが完全に行政府に了承されて、間違いなくこれを行うということであれば、この際やむを得ず了承しよう、こういうことですから、それはよろしうございます。
#27
○小野委員長 田中松月君提出の各黨提案の附帶決議を附して本案を原案通り可決するに贊成の方の御起立を願います。
#28
○小野委員長 起立總員、よつて本案は全會一致をもつて原案通り可決いたすことに決しました。
#29
○一松國務大臣 本案に關しまして附帶決議をおつけになりまして、滿場一致可決していただきましたことに關しましては、まことにありがとう存じます。この附帶決議の趣旨は、政府におきまして十分これを諒といたしましで、これが運営に萬全を期したいことをお約束を申し上げます。
#30
○小野委員長 なおこの際お諮りいたします。衆議院規則第八十六條による報告書の作成については、委員長に一任していただきたいと思いますが、御異議ありませんか。
#31
○小野委員長 御異議なしと認めましてさよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#32
○小野委員長 有田君から發言を求められておりますので、この際これを許します。
#33
○有田委員 局長がお見えになつておりますから、簡單にお聽ききしたいと思います。先般私が質疑いたしました中の大阪新聞の記事に關しましては、目下調査中であると思いますから、調査ができましてから、御報告が願えればまことに結構であります。ただこれらの吉原病院あるいは大阪の府立大阪病院等におきまして、ほとんど食糧が十分に行つていない。この點については農林省と十分な御交渉を願つて、食糧の獲得に御努力願いたいと同時に、今日刊務所におきましても、留置場におきましても食糧が十分に交付されておるのに、こういつた病院の人たちが、實際的に町籍をもたないというような關係上、非常に食糧の面において全國的に困つている。しかも醫療關係が衝撃療法であり、かつまた驅梅劑も身體を傷めるものでありまして、この點についていかなる御處置をおとりであるかという點。さらに先般私が豫防局長に伺いましたときにおきましても、大體これらの病院において人權蹂躙の事實があるというお話でありましたけれども、私どもも現地を視察いたしまして、これらの病院に人權蹂躙の事實が十分にあると私は考えているものであります。この點についていかなる對策を厚生省を厚生省としてはおもちであるか。さらに、最近これらの醜業婦に對しまして、女の暴力團が相當おつて、これらに對していろいろな行為が行われているように、私どもは聞いておるのでありますが、昭和二十一年一月十五日附の勅令によりまして、「暴行又は脅迫によらないで婦女を困惑させて賣淫をさせた者は、これを三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。」というような第一條もありますし、また第二條に「婦女に賣淫させることを内容とする契約をした者は、これを一年以下の懲役又は五千圓以下の罰金に處する。」さらに第三條には「前二條の未遂罪は、これを罰する。」というような條令もあるのでありまして、この點につきまして、内務省の方はいかなる方針でこれをやつているか。さらに委員長におきましては、内務大臣を本委員會に招致していただいて、これらの取締りに對していかなる方針でやつているかということを、私どもにお聽かせ願いたいのであります。さらにいま一點お伺いいたしたいのは、先般私が委員會でも質問しておきましたが、貿易が再開され、さらに近く平和會議が開催されまして、將來わが日本は觀光日本として世界にクローズ・アツプしていきまするが、この日本の特徴としては世界的に知られているのは富士山と藝者ガールであります。これらの外國から來られるところの方々には、藝者ガールというものを見たいというようなものが必ずできると思うのであります。それらの藝者の中には、賣淫を常とするところの藝者もありまするが、しかしながら藝をもつて立とうとするところの藝者もあるのでありまして、これらの藝をもつて立とうとするところの藝者に對する檢査、これもまた現状では全國的に、大體においてこれらの醜行為をなすところの者、あるいは接待婦と同等の檢査が行われている事實があるのであります。ただ東京におきましては幾分これが緩和されておるようでありますが、他の地區におきましては、接待婦あるいはパンパンガールと同様の状態において檢査が行われておるということは、まことに遺憾でありまして、これらの藝をもつて立とうとする藝者の人權を尊重して、何らかこれに對して處置をおとりになるお考えがあるや否や、この四點についてお伺いいたしたいと思います。
#34
○一松國務大臣 今のいわゆる淫賣婦に關する取締り等につきましては、直接取締りの問題は内務省に關係があるのでございますが、私の關係しております範圍竝びに承知しておりまする程度におきまして、お答え申し上げたいと思います。
 戰爭後道徳の頽廢ということが原因になつたのでございましようか、また兵役に服する人々の身體檢査というものがなくなつたためでありましようか、近來非常に花柳病が次から次に猖獗をきわめておるのであります。この點に關しまして、關係方面からも、將來健康にして、文化的な國民を養成しなければならないわが國が、こういう花柳病のために國民の健康を阻害するということでははなはだ不都合ではないかというお申出がありまして、私厚生大臣という立場から、また國民の一員という立場から、わが國民としてかくのごときいまわしき病氣のために健康を害するというがごときことは、徹底的にこれを是正しなければならない。かように考えて、これらの點について考慮を拂つておるのございまして、専門家の方を數囘お集り願いまして、そういう方面の意見も十分に聽いてみたのでありますが、その中で、ただ私がとりあえず自分の素人考えとして考えておりますことを、きようはここに遠慮なく發表いたしまして、皆さんの御理解を乞うと同時に、御批判をお願いいたしまして、なおそれについていろいろの御注意を受くベきことが多々あろうと思いますから、そういう點をお話賜わりまするならば、それらのことを參考にして、花柳病の撲滅に邁進いたしたいと私は存じておるのであります。
#35
○有田委員 それは私の今の質問と違いますので、御所見は、時間もありませんので、後の機會に願いたいと思います。
#36
○一松國務大臣 それではただいまの有田委員の御質問は、主として内務省に關係することでありますが、私の厚生大臣という立場から、もしくは國務大臣という立場からお答えをいたすことによつて御了承願いたいのであります。詳細のことは司法大臣竝びに内務大臣からお答えすることが適當であろうと思います。しかしながら、今あなたのお示しのような事實があるといたしますれば、これは斷固として放任すべきものではありません。これは十分に取締るばかりでなく、司法處分として適當に處理しなければならぬものであろうと考えております。取締りその他の點につきましては、適當な當該官からお答えを願うことにいたしまして、私はこれだけ意見を申し上げておきます。
#37
○有田委員 私のお尋ねいたしておりますのは、厚生省關係のおもなるものは、病院内における食糧と病院内における設備の惡いために、人權蹂躙の事實が患者相互間に行われておる事實、これは厚生省の大體所管事項であるのであります。それから同じ厚生省所管事項でありまするけれども、内務省と共同の點、すなわち第三點の女の暴力團狩り、それは内務省との間の問題でありますが、ただ藝者の檢査の問題とか、食糧の問題とか、あるいは人權蹂躙の問題は厚生省の所管の事項でありまして、この點について大臣に御答辯を願いたいと思いたいと思います。
#38
○一松國務大臣 食糧の點につきまして、いやしくも生命に非常な障害を來すような食糧を給するということは、それはもつてのほかであります。これはいずれ、かの草津の事件について詳細御報告申し上げまするときに私の意見を申し上げまするが、人間の生活を維持することができないような食糧を給しておるというがごときことは不都合千萬でありまするから、有田さんのお話のようなことがあれば、ただちにこれを是正していかなければならぬと考えておるのみならず、實は係員を派してあなたの御説明になりましたような大阪病院の實地を調査させようと考えております。
 それから設備の問題でありますが、これも病氣を治しさえすればよろしいのでありまして、病氣を治すために、特に汚い所に、特に設備の惡い所に、そうして衛生上はなはだ好ましからざる所にこれを收容するということも收容の目的に反し、病を直すという趣旨にも反するのでありますから、これらの點も調査の上、ただちに惡いところは是正するようにいたしたいのであります。
 また檢査の問題でありますが、この花柳病の檢査というようなことにつきまして、藝者等の意思に反して云々、あるいは暴力を用いて云々というような點につきましては、ただいま花柳病の取締りに關する法規の運用によつてやつておるのでありましようが、それらの運用の正しからざる點は、これまた調査の上にただちにこれを是正することにいたします。とりあえず急速に實地に係員を派遣して取調べさせまして、なるたけ御趣旨に副うようにいたしたいと考えております。
#39
○有田委員 ちよつと私附け加えて大臣に希望いたします。大臣のお言葉を聴いてまことに意を強うするのでありますが、食糧の問題につきましては樂泉園の問題と違いまして――樂泉園は町籍簿があつて、一般國民としての配給を受ける權利があるのでありますが、パンパンガールは町籍簿がないために、食糧の配給が病院にないのであります。しかも相當長期にわたつて療養を行わなければならないというような事情がありまして、全國的に飢餓の状態にある。病院の報告によりますと、約千カロリーほどのものは何とかなつておるというお話でありまするが、實際は七八百カロリーくらいよりないのではないか、かように私は考えるものであります。何とか農林省とも十分御交渉を願いまして、これらの實態に即して御處置願いたい。特に私が大阪で調査いたしましたのでは、一部屋八十人おりましたうちで、二名だけ町籍簿があるのみで、あとの七十七、八名は町籍簿がないのであります。そうしてその食糧についてはまつたく哀れな状態で、私が調べました約三月入院している女子のごときは、ほとんど生死の境におるというような哀れな状態でありまして、病氣のために死んで行くので行くのはいたし方ありませんが、食糧のために死んで行く。しかもその病院が全部鐵柵によつて牢獄と同じような状態においてあるというようなことを考え併せましても、ぜひとも大臣のお言葉通り、この點は十分ひとつ御注意願いたいと思うのであります。
#40
○小野委員長 樂泉園の視察に参られました方々が歸つてまいりましたので、武藤君から簡單に一應の御報告をしておきたいということでございますので、御報告を受けたいと思います。武藤運十郎君。
#41
○武藤(運)委員 それでは草津栗生樂泉園に調査に参りました御報告をごく簡單に申し上げます。詳細につきましては、後日書面をもつて提出をいたしたいと存じます。調査期間は九月の二十日に出發をいたしまして二十三日に歸つてまいりましたから、都合四日間でございます。大體においてその期間に調査を終了いたしました。参りました委員は飯村泉君、それから小暮藤三郎君竝びに私でありまして、指名されました野本品吉君は何かの御都合でお見えがございませんでした。
 調査の對象は、大體におきまして問題になりました人權蹂躙問題、職員の不正事件、患者の待遇改善要求問題等でありますけれども、私どもはただ現に起つておりましたさような事件のみを調査するのではなく、この事件を通じて國家の癩對策がどういうふうに行われているかということを、廣い立場から調査することに努めたのでございます。
 大體において人權蹂躙問題を第一に取上げてみましたが、まず問題になつておりますいわゆる特別病室というのは、まことに今の世の中には珍しいものであります。その構造も中世紀的な、ほんとうに牢獄という感じのする所でもありまして、フランス革命當時のバスチーユ監獄を想わせるようなものであります。これは昭和十四年に厚生省によつて設計されたものであるということを聞いておりますけれども、この特別病室を設計實施した責任者の責任を追究するとまで言われているくらいひどいものであります。投獄の理由もまことにでたらめでありまして、ただ投獄する場合には、特別病室名簿というものがございますが、その名簿に一人について一行簡單な理由と、投獄の日と、出た日と、その結果が記されておるのでありますけれども、投獄の理由などもでたらめであり、投獄した期間、出た日等もでたらめであります。たとえば酒井テイという女の人、これが三百九十日間投獄されておりましたが、その者の告白するところによりますと、夫が大阪の方で盗んだ品物の自轉車を買い受けたという理由で逮捕されて送られてきたのでありますけれども、帳簿の上では賭博ということになつております。それで酒井テイはその妻であるという理由で連坐刑に處せられて、夫婦とも一緒に投獄されたのであります。しかし酒井テイの投獄の理由は賭博ということになつておりますが、ただいま申し上げましたように何ら犯罪關係はないのであります。夫の滿八十山(マンヤソヤマ)という人は一番長時間投獄された者でありまして、五百三十三日投獄されておりますが、妻の酒井テイというのはやや短く、三百九十日間で出てきております。その特別病室にはいつておる間の食事なども、いわゆる箱辨でありまして、ごく少量の食事に梅干が一つつけて入れられております。朝はみそ汁らしいものが一囘出るそうでありますが、その他には何ら副食物というものは添えられておらないような實情であります。人間の生命を維持するのには非常にむづかしい數量の食事であります。衣料入浴等もほとんど與えられておりません。從いまして非常に健康も低下し、御承知の通り草津は非常に寒い所でありまして、零下十六度、二十度ということになるのだそうでありまして、冬季における凍死者が續出をいたしております。なおふとんを破きましてなわをなつて縊死をした者も數人あります。特別病室の中にはいつてみますと、その中に非常に深刻な落書が見出されます。それを見ますと、いかにこの病室で患者が呻吟をしたかということがわかるのであります。特別病室へ入れる目的というものは癩患者の中の重い犯罪を犯した者を入れるということで初めは出發したものであります。園内における規則を破つたとかなんとかいうごく輕微な違反者に對しましては、別に監禁室というものができておるのであります。しかしながらこの監禁室に入れるべき者をそこに入れないで、重監獄と稱せらる特別病室の方に全部收容いたしまして、監禁室は使つておらないというような實情であります。もつと詳しく申し上げたいのでありますが、大體申し上げますとかような状態でありまして、患者側がこの特別病室に收容された人權蹂躙問題を取上げてその經過や實情を報告いたしましたが、行つてまいりましてそのことが大體において事實であるということを確認いたした次第であります。厚生省は調査團を數囘にわたつて派遣されまして、この特別病室のこともお調べになつたことがあると思います。そして早速これは取壞すというようなことを醫務局長も言明されたそうであります。まことに結構なことでありまして、これは取壞すのがあたりまえである。責任者も取調べの上處罰をされるということを患者に言明されたそうであります。これも當然なことであります。取壞しも至急しなければなりませんし、責任者の斷固たる處置もとらなければならないことを私は痛感するのでありますが、ただ問題はそれだけによつては解決しないと思います。癩患者にも御承知の通り相當大きな犯罪を犯すものがあるのでありまして、この癩患者の犯罪というものをどういうふうに裁判をし、どういうふうに教化をするかということになりますと、何ら建設的な機構なり、法規なり、處置なりが講ぜられておらないのでありまして、取壞したあとの問題が私どもはなお大きな問題であり、責任者を處分したあとの問題がなお大きな問題である。これは政府に課せられた最も大きな問題であるというふうに考えてまいつた次第であります。
 第二には職員の不正事件でありますが、たとえば患者に配給せらるべきタバコを不正に横取りをして、横流しをしたということが患者によつて取上げられまして、そのことが中野原の警察に告訴状まで出ておるそうであります。このことも調査の結果、大體において事實であるということが確認されました。それは幽霊人口というものがこの樂泉園にはあるのです。登録された收容患者というものは收容人員一千二百五十五人ということに帳簿の上ではなつておるのでありますけれども、實際の數は九月一日現在で九百三十人でありまして、實に幽靈人口が三百二十五人というくらいあるのであります。この幽靈人口に對しても主食はもちろんのこと、タバコなども配給されてきております。ここに一つの問題があるのであります。これをめぐりまして職員に不正が行われたということが事實なのであります。主食その他の調査につきましても、園側及び厚生省側に残つておられる方に依頼いたしましたから、いずれ詳細に何月にはどれだけ配給を受けて、どういうふうにこれを處分したという調査報告があると思いますが、ただいまのところではこの程度のタバコのことしかわかりません。主食その他につきましてももちろん配給があつて、それを獻立として患者に支給しているのでありますけれども、先般厚生省から提出されました獻立表というものは、これを炊事係の職員にあたつて聽きますと、ほとんどでたらめであつて、ほんとうのことを言つておりません。調べてみますと、この獻立表というものは、厚生省の方から急いで出せと言われたから、想像で大體の見當をつけて書いたのでありますというような無責任極まるものでありまして、提出せられた書類だけによつて判斷をすることが、いかに危險であるかということを實證するものであります。それでこれに記載されたような獻立はほとんど出ておりません。はるかに惡い食事であります。なお不正事件のうちに、別途會計として相當の金額が流用されているようでありますが、このことも目下調査中でありまして帳簿がありません。傳票だけでありまして整理中でありますから、いずれ詳しい數字につきましては後刻申し上げたいと存じますが、數百萬圓に上る別途會計の金が不正のやみ取引というものに使用されているおそれがあるのであります。現在現金では六十萬圓ぐらい残つており、取立て得る債權を加えると百萬圓近い金が殘つているそうであります。
 次に患者の待遇改善要求の問題であります。樂泉園の患者に對する待遇は、他の國立療養所の待遇と比べてはるかに惡いようであります。このことがいろいろの方面で患者から問題が出されまして要求があるのでありますが、當局の答えは豫算が足りぬのだから、どうしてもしかたがないんだというような答辯をされておつたそうであります。しかしながらできるならばなるべく國會議員にも協力を得て豫算をとり、改善をするというお話をなさつたそうであります。これはまことに結構なことであります。しかしながら私どもが調査したところによりますと、豫算が足りないということはもちろんありますが、豫算の範圍内におきまして、園當局の責任者なり、厚生省なりが、ほんとうに筋金を入れて一生懸命癩治療のために盡したい、癩患者のためにしてやりたいというふうに考えて努力をしますならば、待遇改善の問題につきましても、物の支給につきましても、はるかによくできたであらうと思うのでありまして、この豫算の不足ということは、官僚がその怠慢を辯解するための言葉として、用いられるようなおそれがないでもないということを痛感をいたしてまいつたのであります。職員につきましてもこれは問題というほどになつておつたのではありませんけれども、職員が百數十人おりますが、職員もやはり待遇が惡いということでいろいろな要求を出しておりました。これなどもぜひこの僻遠の地に惡病と鬪かつているところの職員の待遇をもつとよくしてやらなければならないということを痛感をいたした次第でございます。
 以上のいくつかの問題を通じて私どもが考えましたことは、今まで癩というものに對する當局の考え方、癩對策というものが、全然なつていないということであります。こういうふうないくつかの問題が起るのも、すでに數年前からぶすぶす起りつつあつた問題が爆發したにすぎないのでありますが、その根本というのは政府の癩對策というものが、ほとんど眞劍に行われていなかつたというところに根本的な原因があると思います。たとえば日本には癩患者が幾人おるかというふうな實態調査ができておりません。あるいは一萬五千人くらいだろうと言い、あるいは二萬人くらいだろうと言い、ある者は三萬人から五萬人は間違いなくあるというようなことが言われているだけでありまして、いずれも推定であつて、最近における實態調査というものがない。從つてこの實態調査に基いたところの施設が行われるはずがないのであります。この癩の治療は非常にむずかしいのだそうでありますが、最近はズルフアミン劑で非常にいいものがアメリカあたりでできたということを聞いております。こういうふうなものを當局において至急輸入されるなり、あるいはまたこれと同じものを製造するような施設をつくるなりして、ただ單に隔離するということでなくて、治療という方面に力を注がなければならないと思うのであります。癩豫防に一番いい方法は、從來完全隔離と言われておることは、今さら申し上げるまでもないのでありますけれども、現在日本における約十箇所の官公私の療養所に收容されております癩患者は一萬に滿たないのでありまして、未收容というか、浮浪癩というか、ルンペン、レプラが非常に多い。あるいは二萬、三萬という者が未收容として放置されておるのであります。非常にこれは恐るべきことでありまして、至急當局はこの癩患者の實態調査を全國的に行いまして、これを完全に隔離するということが最も重要な問題であると考えるのであります。なお私どもが參りまして非常に恐れをなしたことは、癩患者が待遇が惡いために、われわれもラジオを賣り、着ておる着物をはいで賣り、たけのこ生活を送つておるのだということを申しております。これを職員について聽いてみますと、なるほどそうである。園内に古物商、古着商が最近どんどんはいつてくる。しかも未消毒のままこれがどんどん出ていくという。そういうことを聽きまして、私は實に戰慄を覺えたのであります。こういう點については當局としては至急適切な處置をとられまして、癩患者の着物が未消毒のまま市井に出るということのないように、十分注意せられたいと思うのであります。なお研究所の施設その他適切なる施設を考えると同時に、癩對策についてもう少し筋金を入れて、眞劍に問題を解決するように努力をしてもらわなければ、日本の癩というものはいつまで經つてもやまないということを確信いたした次第であります。以上大體御報告を申し上げる次第であります。
#42
○小野委員長 調査に行かれな方々には、まことに御苦勞さまでございました。感謝いたします。
 本日はこれをもつて散會いたします。
   午後零時三十一分散會
ソース: 国立国会図書館
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