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1947/10/30 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第27号
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1947/10/30 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第27号

#1
第001回国会 厚生委員会 第27号
昭和二十二年十月三十日(木曜日)
    午前十時四十三分開議
 出席委員
   委員長 小野  孝君
   理事 田中 松月君 理事 山崎 道子君
   理事 飯村  泉君 理事 有田 二郎君
   理事 大瀧亀代司君 理事 徳田 球一君
      松谷天光光君    武藤運十郎君
      師岡 榮一君    園田  直君
      花月 純誠君    近藤 鶴代君
      榊原  亨君    村上 清治君
      野本 品吉君
 出席政府委員
        總理廳事務官  三橋 則雄君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 國際電氣通信株式會社等の社員で公務員となつ
 た者の在職年の計算に關する恩給法の特例等に
 關する法律案(内閣提出)(第四六號)
 恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出)(
 第六六號)
  請願
 一 恩給増額に關する請願(山本猛夫君紹介)
   (第一六六號)
 二 元官公吏の恩給増額に關する請願(笠原貞
   造君外三名紹介)(第一九二號)
 三 元官公吏の恩給増額に關する請願(佐竹晴
   記紹介)(第四八〇號)
 四 恩給増額に關する請願(永井勝次郎君紹
   介)(第四八六號)
 五 元官公吏の恩給増額に關する請願(植原悦
   二郎君外二名紹介)(第六一九號)
 六 元官公吏の恩給増額に關する請願(唐木田
   藤五郎君外一名紹介)(第六二三號)
 七 恩給増額に關する請願(池谷信一君外二名
   紹介)(第六二八號)
 八 中等學校教員の恩給増額の請願外一件(野
   溝勝君紹介)(第六九〇號)
 九 恩給増額に關する請願(小林運美君紹介)
   (第七〇九號)
一〇 元官公吏の恩給増額に關する請願(石川
   金次郎君紹介)(第七九四號)
一一 中等學校教員の恩給増額の請願(石川金
   次郎君紹介)(第七九五號)
一二 巡査の恩給増額に關する請願(石川金次郎
   君紹介)(第七九六號)
一三 恩給舞額に關する請願(坪川信三君紹
   介)(第八七三號)
一四 増恩給増額に關する請願(本藤恒松君紹
   介)(第八八五號)
一五 恩給増額に關する請願(相馬助治君紹介)
   (第九三七號)
一六 恩給増額に關する請願(受田新吉君紹介)
   (第九七九號)
  陳情書
 一 文官恩給増額に關する陳情書(長野縣東筑
   摩郡生坂村吉澤三男也)(第七六號)
 二 恩給増額に關する陳情書外一件(新潟市西
   大畑町新潟縣恩給増額期成同盟會會長片山
   三男外一名)(第二八一號)
 三 傷痍軍人の増加恩給増額に關する陳情書(
   栃木縣廳教育民生部社會課協助會栃木縣支
   部長小平重吉外三十五名)(第二八六號)
 四 恩給増額に關する陳情書外一件(山口縣大
   島郡白木村藤村梅三郎外六十八名)(第三
   六八號)
 五 恩給扶助料増額に關する陳情書(山口縣大
   島郡蒲野村中西甚作外二十九名)(第四一
   〇號)
    ―――――――――――――
#2
○小野委員長 これより會議を開きます。
 先日の委員會で議題に供しました恩給法の一部を改正する法律案所び國際電氣通信株式會社等の社員で公務員となつた者の在職年の計算に關する恩給法の特例等に關する法律案、この二法律案の審査と併行いたしまして、恩給に關する請願、陳情の類を審査いたしたいと思います。最初に恩給増額に關する請願、文書表第四八六號、永井勝次郎君紹介のものを議題といたします。紹介議員の説明を求めます。永井勝次郎君。
#3
○永井勝次郎君 この問題はほかの各位からもいろいろ提案がされておりますので、それらの方々等の御意見とも照らし合せて御審議を賜わりたいと存ずるわけでありますが、御承知の通りに、古い俸給によつて規定された恩給額ではインフレの高進しております現在においては、タバコ代にもあたらないというような現況であります。官公吏が在職中與えられた俵給というものは、まつたくその月はその月だけの生活を保障なるだけでありまして、老後のために貯蓄をするというような餘裕は全然なかつたわけであります。殊に誠實なる官公吏として在職中精勵した者は、そういう貯蓄等について全然餘裕がなかつたことは、すでに皆さま御承知の通りであります。そういうような状態で生涯を國家竝びに公共のためにささげて、零細な恩給で零細と老後を養おうとした人々が六十、七十を迎えまして、タバコ代にもあたらない恩給をもつて生命をつながなければならないという惨憺たる状態におかれているのでありまして、こういう現實というものはまつたく本人の過失から起つたものではなくして、國家みずからがこういう困難な事態に立ち至らしめているのでありますから、その生活に對しては保障するの義務と責任があるとわれわれは考えるわけであります。そういうような立場で、急速にこの問題は増額を實現していただきまして、一生涯を誠實な國家公共のために奉仕した者に對する老後の最低の生活の保障を國家においてしていただきたい、こういう主旨であります。何とぞ御審議の上、御採擇あられんことを切にお願いする次第であります。
#4
○小野委員長 本請願に對する政府側の意見及びこれに關連しての委員會の質疑は後に一括してこれを行いたいと思います。續いて池谷信一君ほか二名紹介の文書表第六二八號、同じく恩給増額に關する請願でございます。これを議題に供します。紹介議員の御説明を願います。池谷信一君。
#5
○池谷信一君 ただいま永井議員からも御説明がありまして、大體私の申し上げんとするところも同じようなものでありますが、今さら申し上げるまでもなく、今日のようにインフレーシヨンが高進し、物價の高騰しております際におきましては、一定の収入しか得られないところの官公吏その他の一般俸給生活者の生活が、非常に困難であるということは、各位が十分御承知になつておられるところでありますが、殊に恩給生活者の生活はさらに困難であり、むしろ悲惨であると思うのであります。長い間國家社會のために貢献した人々が、その老後の生活を恩給に託して細々ながらも何とか安定した生活をしたいと念じておりましたのも、今やまつたく一朝の夢と化しまして、今日いかに悲惨な生活をしているか想像に餘りあるものがあるのであります。今日の時代におきまして一箇年にわずか千圓や二千圓の恩圓がはたして生活のたしになるでありましようか。それはほとんどゼロにもひとしいものであると思うのであります。一口に恩給生活者と申しましても、未だ年齢も若く働く力のある者であるとか、あるいはよき扶養義務者がある場合は別でありますが、すでに齢を重ねて獨力をもつては働く力もなく、適當な扶養義務者もなき場合におきましては、まことに氣の毒でありまして、これに對しましてはよろしく國家において速やかに十分なる對策を立てなければならないと思うのであります。よろしく各位におかれましては御審議の上、恩給生活者に對しまして適當なる御考慮を拂われんことを切にお願いしてやまない次第であります。
#6
○小野委員長 この際お諮りいたしますが、恩給増額に關しては請願といたしまして、なおただいま御説明がありましたほかに山本猛夫君紹介の文書表第一六六號、それから小林運美君紹介の文書表第七〇九號、坪川信三君紹介の文書表第八七三號、本藤恒松君紹介の文書表第八八五號、相馬助治君紹介の文書表第九三七號、受田新吉君紹介の文書表第九七九號、以上の通り請願がございますが、後刻紹介議員が參りました際にあるいは發言を願うかも知れませんが、同様な趣旨の請願でございますから、これらにつきましても紹介議員の説明が濟んだというふうにして運んでまいりたいと思いますが、御異議ございませんか。
#7
○小野委員長 それではさようにして運んでまいります。この恩給増額に關する請願につきまして政府側の意見を求めます。
#8
○三橋政府委員 一般官吏の在職中の俸給は、その日の生活を辛うじてしていくという程度でございまするから、その俸給の中から若干の金を出しまして、貯蓄、蓄積いたしまして退職後の生活の安定をはかる資本にするというような餘裕はほとんど考えられません。從いまして最近におきまするところのインフレの現状からいたしまして、恩給の收入で、また主たる收入を恩給收入に依存し生活されておりまする方々の生活が、非常な困窮な状態に陥つているだろうということにつきましては、私ども十分に御同情申し上げ、決してその生活の困難さというものを無視しておるわけではないのであります。恩給制度の上からいたしまして、こういうふうな状態に放任しておりまするわけではありませんが、そのままにしておりまするということは、政府といたしましてもまことに意に滿たないところでございまするけれども、御承知のような今日の敗戰後の現状でありまするがために、政府といたしましては各方面にわたりまして施策しなければならないことが山積しておるような實情であります。あるいは軍人の遺家族のごとく、かつては恩給を受けらるベき人であつて、恩給を受けない者となつておる人もあれば、また傷病軍人のごとくに、相當の恩給をもらうベかりし人であつて、その恩給を減額しておる人もあるのでありまして、こういうふうな人々、その他戰災者とか海外から引揚げてきた人々に對しまするところのいろいろの社會保障的な施設も十分にいつていない現状であります。そういうふうな施設經營のことも考えていかなければならない現状でありまするから、そういう點も考えながら恩給増額ということも決して忘れないで考えておるのでありまするけれども、まだ恩給を増額するという結論にまで至つていない實情であります。もちろん社會の移り變りともにらみ合わせをしまして、現在檢討することはもちろんでありまするが、今後も十分この點は檢討いたしまして、恩給を増額し得る適當の時期に達しました場合には、速やかにその具體策を講じたいと考えておるところであります。
#9
○小野委員長 先ほどちよつと申し忘れましたが、なお請願は先ほど申し上げましたほかに、笠原貞造君ほか三名提出の第一九二號、佐竹晴記君紹介の第四八〇號、植原悦二郎君、ほか二名提出の第六一九號、唐木田藤五郎君ほか一名紹介の六二三號、石川金次郎君紹介の第七九四號、これらは前に申し上げましたのと少し違います點は、具體的に恩給を何倍に引上げてくれということが書いてある點が違うだけでございます。その上げてくれという要望は、一番少いので十倍にしてくれというのでありますが、佐竹春記君紹介のものは七十倍ないし百倍に上げてくれというのでございます。なおその他に特に中等教員の恩給増額と限定いたしまして野溝勝君紹介第六九〇號、それから石川金次郎君紹介の第七九五號がございます。それから特に巡査の恩給増額に關しまして、石川金次郎君紹介の第七九六號がございます。これらも一應の内容はありまするけれども、趣旨においてはまつたく前の恩給増額と同様でございますから、これらについても紹介議員の紹介があつたものとしてまいりたいと思います。
 なお陳情といたしましては吉澤三男也君の文官恩給増額に關する陳情、それから片山三男君ほか一名からの恩給増額に關する陳情、藤村梅太郎君ほか六十八名から恩給増額に關する陳情、それから小平重吉君ほか三十五名からの傷痍軍人の増加恩給増額に關する陳情、中西甚作君ほか二十九名からの恩給扶助料増額に關する陳情がございます。これらもまた同一の趣旨でございますから、一應説明が終つたことにいたしまして、これら全般の問題について審査をいたしたいと思います。野本品吉君。
#10
○野本委員 恩給一般の問題に關しまして若干質問いたしたいと思います。國家公務員法の第百七條によりますと、「職員であつて、相當年限、忠實に勤務して退職した者に對しては、恩給が與えられなければならない。」と規定してあります。なおこの第百八條によりますと、「前條の恩給制度は、本人及び本人がその退職又は死亡の當時直接扶養する者をして、退職又は死亡の時の條件に應じて、その後において適當な生活を維持するに必要な所得を與えることを目的とするものでなければならない。」かように規定されております。すなわち新しくできました國家公務員法によりますならば、職員として忠實に勤務した者に對しまして、相當の恩給を支給しなければならないという原則がここに確立されておると思うのであります。この原則に照しまして、現在支給されておる恩給の額がはたして適當なものであるかどうか。また現在における恩給の支給をそのままにしておいてよろしいかどうか。これについての政府の所信をまず伺いたいと思うのであります。
#11
○三橋政府委員 現行恩給制度のもとにおきまする恩給の金額の現状は御承知の通りでございまして、この恩給の金額の増額につきましては、ただいまお答えいたしましたようなことで御了承願いたいと思うのであります。この國家公務員法の中に、ただいまのお話のようなふうに恩給制度に關する規定がございまするので、國家公務員法もすでに成立したことでございますから、新たにできまするところの人事委員會において、新たなる構想のもとに、いろいろな方面から檢討されまして、この百七條に書かれておりますような趣旨のもとに恩給制度がつくられるものと考えております。
#12
○野本委員 新しくできます人事委員會でなるベく速やかに恩給制度に關して研究を行つて、その成果を内閣總理大臣に提出しなければならないということを言われておりまするが、この人事委員會におけるこの制度に關する研究は、少くとも先ほど申しました第百七條及び百八條の精神をゆがめるようなことは絶對にないと考えるのであります。從つて現在におきましてもわれわれといたしましては、今支給されております恩給が當然この新しい國家公務員法の精神に從つて改訂せらるべきであるというふうに考えるのでありますが、この點についてはいかがでありますか。
#13
○三橋政府委員 恩給法を改正いたしまして恩給の金額を増額いたしました場合におきまして、その恩給法の改正のありました後の退職者の恩給のみを増額するのか、あるいはまたその改正前の恩給受給者、すなわち現在の恩給受給者の恩給も増額するかというような、こういう御質問の趣旨じやないかと忖度するのでありますが、今後できますところの恩給制度は、この公務員法に書いてありますような趣旨によつて、できることと存じておりますが、その際におきまして、從來の恩給受給者、すなわち現在の恩給受給者の恩給金額を増額するかどうかということも、やはり人事委員會で恩給制度を考究されるときに取上げられて、論議される問題だろうと考えております。從來の例からいたしますれば、明治四十三年と、大正九年だつたと思いますが、俸給令が改正せられまして、從來の恩給金額が相當増額せられました。その際におきましては、その恩給法の改正後の退職者の恩給金額を増額いたしますとともに、從來の受給者の恩給金額を増額いたしております。こういう先例もありますから、もちろんこういう先例がありますことも考えられました上におきまして、人事委員會におきましてとくと檢討されることだろうと思つております。
#14
○野本委員 現在の恩給を主たる收入として生活しておりますところの文官、教育職員、警察官、監獄の職員、その他待遇職員等の生活がいかに困つているかということにつきましては、先ほど請願の趣旨にも明瞭に述ベられているのでありますが、最近の物價におきましては、約六十三倍になつており、一般俸給におきましては、二十倍以上になつているこの事實を見ますときに、恩給その他現在の恩給額が當然増額されなければならないということを信じて疑わないものであります。先ほどもお話のありましたように、現在恩給によりまして、細々としかもつつましやかな生活をしております人の状態を考えて見ますのに、長い間國家公共のために奉仕しておりまして、ほとんど老後を過すべき貯蓄をもつておらないことは、先ほどもお話のあつた通りであります。それからまたそれらの人たちは、かつての日本の社會の、あるいは指導者として地方のために非常に役立つた人たちであります。これらの人たちを氣の毒な生活状態におくことは、何としても私どもとしましては、忍ぶことができないのであります。私はここに一つの實例の申すのでありますが、私どもがおせわになりました先生で、孔子様と言われるほど幾千の子弟から神様のごとくに尊敬されている人がおります。この人は長いこと轉々と各地の學校をまわつたのでありますけれども、おやめになつてから自分の町村へ引歸えられますと、その徳望を恭いまして、ただちにその村の者は熱心にその先生を説いて村長になつていただきました。村長になつてから村の治績は非常にあがりまして、擧村これをとくとして喜んでおつたのであります。ところが戰時中の村長なるがゆえにやがてその職におることができなくなつて、また戰爭中かわいい子供たちを失つておる。そうして今殘された老夫婦はわずかに千二三百圓の恩給の收入以内で生活しなければならない。前に多少の土地はもつておつたのでありますけれども、轉々と任地をかえる關係上、土地の者にこれを耕作せしめておりましたために、今これを耕作しようとしましても、その土地を自分のものとして耕作することができないような状況になつておる。この私の恩師は私に涙をもつてかようなことを言うことは實に忍びないことであるけれども、いかにして生きていつたらばいいかということが、實に切實な問題になつたということを訴えておるのであります。かような方はおそらくこの方一人でなしに、他にも多數あると思うのでありまして、私どもはかような方々が苦しいみじめな生活に陥つておることに對しまして、國家としても當然のその責任を感じなければならぬと、かように考えておるのであります。そこで問題はいろいろあろうと思うのでありますが、世間ややもしますというと、食うことができないのならば、生活保護法を適用して生活保護を受けたらどうか、というようなことも言われるのでありますけれども、われわれの常識からいたしますならば、かつての地方の指導者であり、教育者でもあり、官吏であつて、そうして一般から尊敬されておつた者が、いわゆる生活困窮者として扱われることは、本人の氣持においてもこれを許さないでありましようし、私ども國家社會といたしましても、それらの人たちの誇りを傷つけないようにしなければならぬと、かように考えております。かような事柄につきましてほんとうに何と申しますか、親身になつて考えていただかなければならない。私はこの際お聽きいたしたいと思いますことは、現在生活保護法によりまして生活しておる者の數と、それからそのために支出しておる費用がどれくらいになつておるかということをあらためてお伺いしたいと思います。
#15
○小野委員長 それは社會局關係のようですから傳えておきます。
#16
○野本委員 いろいろとさらにお伺いしたいことがありますが、提出されました資料その他を一應檢討の上またお伺いしたいと思います。
#17
○田中(松)委員 かつて恩給亡國というような言葉が使われておりましたが、この恩給亡國というその言葉の裏には、官吏優遇に偏しておつた恩給そのものに對する非難ということも含まれておつたようでございます。今日ではいわゆる當時言われたおつた恩給亡國というような言葉は、一應解消したかのようでございまするけれども、恩給そのものの本質的な再檢討ということをやらなければならない時期に迫つておると思うのでございます。もちろんただいま政府當局からお説明になりましたように、今日の社會情勢、あるいは國家財政、そういうものから考えてみるというと、やりたいことはやりたいけれども、なかなか思うようにはいかない。しかしやれる時が來たならばそういうぐあいにしたい、こういう御意見のようでございますが、やれるようになるまで待てる情勢であるかないかという、そういう面に對する御考慮を願いたいのでございます。財政の面ということは、これはおつしやるまでもなく、私どもも十分考慮いたしておるものでございますが、その許されたる財政のわく内において、平言葉で言うたならば、やりくりをやつていくというようなこともこれは考えられる。たとえば恩給をもらう年限には達したけれども、本人はまだ若いから十分ほかの面で働ける、そういうような人たちにはやつぱりこの際、いわゆる働く義務を喜んでもつていただいて、恩給の方はまず當てにしないようなぐあいにしていきたい。けれども年は若くても、病弱のために、それ以外に生活の途がないというような方面には年齢という制限を除く。あるいは年齢はもう恩給をもらう年に達したけれども、自分の財産を相當持つている。こういうような方面にはしばらくの間やらなくてもいいではないか。もちろん恩給というそのものに對しては異論もございましよう。長い間勤めた者に對して、こうしなければならぬというようなこともよくわかりますけれども、政府當局もおつしやいましたように、いわゆる今日の敗戰後の状態であり、財政というような面ともにらみ合わしていかなければならぬのでございますから、思うようにいかぬ。しかし思うようにいかぬそのわく内においてどれを先にするか、どれをあとにするかというようなことは、そこに温かい血と涙と、そしていいと考えついたことならば斷行するという勇氣があつたならば、そのわく内において今日の實情に即したような手だてが考えられるのではないかと思うのでございます。今日議題に供せられておりますのは、恩給法の一部を改正する法律案でございますし、私がここで質したいのは、恩給の方の根本的な問題からの再檢討でございますから、私はここでは御質疑をこの程度で止めておきますが、お伺いしたいのは、恩給そのものに對する再檢討をするというような機會、あるいは根本的に恩給法というものを考慮し直すというようなお含みが當局にあるかないか。もしあるとするならば、もちろんはつきりした期限は言われますまいけれども、こういう機會にはそういうことも考えておるというような、あらかたの時期というものもお示し願いますならば、私どもはそれに對應して、私どもの恩給法に對する考え方をいろいろ吟味し、勉強していきたいと思うのでございます。紹介議員からも、また野本議員からも詳しくお話がございましたが、今私がもう一つ當局にお含みを願つておきたいことは、そういう面についても十分お含みではあろうと思いますけれども、いかに今日の情勢下において悲惨な立場に立つておる者があるかという一例でございます。去る十月の十一日、福岡縣朝倉郡大福村田中伊勢吉という人から私面會を申し込まれました。ちようど厚生委員會に出ておりましたので、面會の申込みの知らせを受けたのが大分遅れました。面會に行つてみると、その人は一葉の名刺にわかれの挨拶を書き残してすでに歸つたあとでありました。私はその名刺の裏に書かれたこの挨拶文を見まして、妙に氣をひかれておりましたが、はたして私の悲しい豫感は的中いたしまして、明けて十三日には戰災老人の訴えという書置が手紙をもつて配達されました。六十五歳の田中伊勢吉という老人は十月十二日に宮城前で自殺を遂げたのでありました。戰災老人の訴えという同人の書置の中に血涙をしぼる一節があります。
 「私はこの戰爭に二兒をささげた遺族であります。長男はガタルカナルで二十七歳、次男はビルマで二十六歳で戰死しました。――中略――妻も私もともに六十五歳の老齢で、他に頼るベき身寄りもなき戰災老人で、殊に私は神輕痛を病み、歩行困難なるものであります。行く先を考えるとき、さびしさ、心細さが限りもなくわいてきます。あの子たちがおつたら、月に數千圓の收入があり、餘生を樂しむことができるものをと、思わず愚痴の涙を催します。――中略――私は若いとき怠けたものではありません。米一升三十錢、酒一升一圓のとき、貯金もしました。國家の恩給も受けています。貯金のみでも十一年間は樂に暮していけると確信していましたが、公定價格で數十倍、やみ相場で數百倍にもなつた物價の高騰は、數箇月で貯金の底をはたいてしまいました。恩給は軍人關係の分を削除し、文官關係のみ年額四百圓餘に訂正されましたが、退職當時に比較して何十倍にもなつた生活費には、何のたしにもなりません。政府は食えない者の救濟策として、生活保護法があるではないかと言うでありましようが、戰爭犠牲者が、極貧者に轉落し、タバコ、酒はおろか、一枚のジユバンさえも買えない最低生活を、しかも國家の保護という恩義を着て、これを受けねば生きていかれぬとは、實に悲しき運命ではありませんか。雪の中に凍えている者のみじめさは、やはり雪の中にいる者のみが知るのであつて、丹前をまとい、火鉢に温まつている者の想像も及ばないことです。戰災者、引揚者、傷痍軍人、遺族の心中は、これと同一の境遇にある者のみがうかがうことができるのであります。私はやがてはかなくこの世を去ることでしようが、この私と同じ運命にある戰爭犠牲者のために、何らかの方法によつて、この窮乏な非戰爭犠牲者に訴え、たとえ息の根は絶えても魂魄をこの世に止め、現在の不公平を是正し、敗戰の苦杯を國民全部が喫するようにしたいと思います。息の根はたとえ絶ゆるとも魂をこの世にとどめ筬を正さむ。」こういうことをもちろん政府當局でも十分お含みではございましようが、ひとつできるようになつたならば何とかしたいというお氣持を一歩進めていただいて、そのわく内においてこういうものを先に何とかするというような、生きた實際面における政治が行われるようにお願いしたいものでございます。まことに希望のみを申し上げましたが、最初にお願いしましたようにここで政府當局から聽きたいことは、そういう根本的な再劍討の含みがあるかないか、あるとすればほぼいつごろになるか、それをお伺いしたいと思うのでございます。
#18
○三橋政府委員 公務員法が成立しましたから、公務員法の中に書いてありまするようなふうに、新しい恩給制度というものは、人事委員會におきまして近く根本的に劍討されることと存ずるのであります。
#19
○野本委員 こまかく目は通しませんが、私はただいま政府から提供されました資料を見まして、ここでどうしても言わなくてはならぬ氣持になりましたので、一言申し上げまして御意見を伺いたいと思います。提出されました資料によりますと、文官恩給率の最高受給者の恩給額は、四千八百圓になつております。おそらくこの四千八百圓の恩給を受けております文官は、國家公共のために多大の功績を留めて職を去られた方と想像するのであります。しかるに一方生活保護法によりますと、最低の給與を受けるものでありましても、一人一日十二圓五十錢、月三百七十五圓、年額四千六百五十二圓五十錢を支給されることになつておるようであります。この生活保護法によつて四千六百五十二圓五十錢を支給されております人の中には、むろん本人の怠惰によつてこういう生活に轉落した者のみではないと思いますけれども、私どもが生活保護を受けております者の實態を見るところによりますと、本人の不注意、怠漫、その他の不心得から、現在の困窮状態に轉落して、そうして生活保護を受けておる者が、相當あると考えられるのであります。ここで私が政府にお伺いいたしたいと思いますことは、多大の功績を殘して退職された最高恩給受給額が四千八百圓であり怠惰によつて、むしろ社會に害毒を流したのではないかと思われるような者の生活保護の金額が、ほとんどそれに近い四千六百五十二圓五十錢になつておるということは、何としても納得のではない、矛盾いたしておる事柄と思うのであります。この點につきまして政府の方のお考えをお伺いしたいと思います。
#20
○三橋政府委員 恩給の金額が非常に少いことは、ただいまお話になりました通りでございます。この恩給の金額と生活保護法の金額を比較いたしますると、今お話のようなことでございまして、これもよく承知しておることでございます。生活保護法の金は生活保護法の趣旨によつて出されるところでありまして、これも理由のあるところではありますが、この生活保護法のこういう金が出いていることは、もちろん恩給の金額の増額をするかしないか、また増額をするとすればどの程度の増額をするかということにつきましては、十分に参考にして檢討しなければならない問題だと考えております。そういうふうなことも考えながら、今恩給の増額のことにつきましては、種々檢討をいたしておるところでございますけれども、先ほど申し上げましたようなふうに、いろいろ國家の事情がありまして、未だ御滿足のいくような恩給の増額をし得る結論に至つていないことは、まことに心苦しく思うものでございます。御了承願いたいと思う次第であります。
#21
○野本委員 ただいま申し上げました生活保護の恩給との間の矛盾確認されておりますことは、十分了承いたしました。從つてその矛盾を確認されております以上は、一刻も早くこれに對して適當に處置しなければならないということをお考えになつておられることもわかりました。ただ結論に達しない。結論に達したらば實現に努力すると、こう申されておるのでありますけれども、その結論に達しないおもな理由は、先ほど來お話のありました敗戰後の日本の實情が、これを許さないということだけなのでありますか。それともほかに何か特別な事情があるのでありますか、お伺いいたしたい。
#22
○三橋政府委員 ほかに特別な理由はございません。
#23
○飯村委員 一般の恩給の増額については、いろいろ他の面とのことがありますので、その御趣旨はよくわかるのですが、ただそのうち傷痍軍人の恩給の問題については、これは一般の問題と切離して考えていただきたい點が多々あると思うのであります。それは現在の傷痍軍人の受けておる恩給の基礎というものが、いかに零細なものであるか。あの基礎が他の俸給者の現在における俸給の基準と比較しますときに、何十分に一に當つておるかという問題も私は考えておるのであります。この點におきまして、傷痍軍人の恩給を至急に増額せられることは、決して他の恩給を上げるということの現在の困難さとは比較にならない安易さがあるのじやないか。現在の傷痍軍人が受けている恩給の基準が、他の俸給者の受けておる俸給と全然違つておるということは、恩給局長もよくおわかりのことと思います。ですからたとい連合軍の指令に基くものからいつてみましても、あれは傷痍軍人の最低程度を許されておるはずであります。最低限度を許されておるならば、現在の他の俸給者が受けておる俸給の最低限度にまで、傷痍軍人の恩給の基礎を引上げることができるのではないか。しかるに他の俸給者の最低限度の何十分の一の基礎をもつて、現在の傷痍軍人に恩給を與えておるということは、まことに殘念なことでありまして、ぜひともこの點を是正せられ他の一般恩給の増額ということの前に、一應傷痍軍人の恩給を平均に上げていただく。それから一般の恩給の増額にとりかかつていいのじやないか。私はこのように思いますが、恩給局長のお考えはいかがてすか。
#24
○三橋政府委員 傷痍軍人に對する恩給増額につきまして今御質問がございましたが、この點につきましては先般のこの委員會におきましても、いろいろと御質問がございましたので、お答えいたした通りでありまして、傷痍軍人に對しましては、一定の制限が設けられておるわけであります。その制限に從いまして現行の恩給を支給することにいたしておる次第でございまして、この制限がある以上はどうしてもこういうふうなことにならざるを得ない實情であることを御了承願いまして、御了解を願いたいと思つておるのであります。
#25
○飯村委員 ただいまの制限の問題でありますが、その制限というのはどういうふうになつておるのでありますか。
#26
○三橋政府委員 その内容は大まかに申しまして二つにわけられると思います。一つはこのミリタリ・サーヴイスによるところの恩給を全部廢止する。その但書で、但し例外として傷病者に對しまする恩給に關しましては、一定の制限のもとに許すことになつております。その一定の制限のもとに許すというのは、非軍事的な原因によつて起つたところの肉體的な障害に對する同じ程度の傷痍疾病に對して拂われるところの一般に行われておる最低の補償、それを超えない程度において支給することは差支えない、こういうことになつておるのであります。ところでその當時におきます非軍事的な原因によつて生じましたところの勞働能力を制限するような肉體的な障害に對する補償的な制度といたしましては、厚生年金保險制度をそれと認めまして、その厚生年金保險制度の中の傷害年金、傷害手當金に標準をとりまして、その支給の方法によつて支給の割合をそのままとつていきまして、恩給の金額をきめたというような實情であります。
#27
○飯村委員 そうすると厚生年金保險法によるところの片方の傷痍者の基準というものは現在相當上つておるのじやないでしようか。
#28
○三橋政府委員 この厚生年金保險法は改正になつたのでありますが、その當時におきますところの恩給受給者は増額されておりません。その後のものにつきましての適用の標準が變りましたけれども、前のものはそのままになつておるのであります。從いまして傷痍軍人と同じようなふうに今はなつておるものと考えております。
#29
○飯村委員 現在勞務者の基礎俸給というものが相當變つておることを年金の方では認めておるのではないのですか。その當時よりはずつと上つておるということを年金法では認めているのではないですか。
#30
○三橋政府委員 年金法は改正になつております。
#31
○飯村委員 そうするとその點において片方の傷痍軍人の方も上がつているんですか。
#32
○三橋政府委員 今申上げましたように、非軍事的の原因によりまして生じたところの勞働能力を制限するがごとき肉體的障害に支拂われる一般的の補償の最低程度を超えざる範圍において支給するということになつております。すなわちレートの割合の問題になつてくる。その算出率を原生年金保險法の算出率をもつてきて算出しているということになつております。從來のものにつきましては從來通り厚生年金保險法では出しております。
#33
○飯村委員 その一般の場合の補償の最低ですが、最低は現在の傷痍軍人が受けていないと思います。一般の勞働者の最低を補償されている最低限度までは、傷痍軍人の方は恩給を受けていないと思います。そのレートの問題はただいまおつしやいましたが、日本人として少くとも片方の勞働者が最低限度が百圓だという場合に、傷痍軍人を五十圓にする必要はない。やはり百圓まで受けさせる必要があるのじやないかと思いますが、いかがでしようか。
#34
○小野委員長 飯村君にちよつと申上げますが、少しどうも考え方が食い違つているところがあるようなふうに私には思われますから、あとでひとつ……。
#35
○飯村委員 よろしゆうございます。
#36
○小野委員長 他に御質疑はございませんか。
#37
○三橋政府委員 厚生年金保險法におきましては、傷害年金、傷害手當金は、傷害を受けましたときに、その症状によりまして差等を設けまして、傷害を受けたときの給料を基準といたしまして、その一定の率をもつて算出いたしております。ところでこの傷病軍人に對しまするところの恩給金額の算出にあたりましても、この率は同じようにいたしたわけであります。今のお話の勞働者の給料が上つたから、傷痍軍人の基礎俸給も引上げて、そうして傷病恩給というものを増額したらどうか。こういうふうな御意見だろうと思います。傷病軍人に對しますところの給料というものは上つておりません。そのままになつております。これをいまさらかえて増額するということは、檢討しなければならぬ問題ではないかと思つております。
#38
○飯村委員 そうしますと、軍人に對する恩給に基準であるところの基礎俸給は、永久に上ることはできないというふうなお考えですか。片方の勞働者はどんどん俸給が上つていくにかかわらず、この傷痍軍人の場合の基礎俸給というものは上ることはできないというふうなお考えですか。
#39
○三橋政府委員 現在の未復員軍人の俸給をどうするかという問題につきましては、これは私は今ここで答辯すべき筋合いではないと思いますが、恩給の問題といたしまして、すでに退職しておりますところの傷痍軍人に對しまして、かつての在職中の恩給をいまさら引上げて恩給を増額するというようなことは、これはちよつと困るのではなかろうか、こういうことを申し上げているわけであります。
#40
○小野委員長 なお恩給法の問題につきましては、相當議論もあるようでございますし、また機會を得て討議いたしたいと思いますが、なおこの際政府に資料を求めておきたいと思います。一つは先ほど野本君からも要求があつたのでありますが、厚生省關係に要求いたしたいことは、生活保護法と恩給關係を調査いたしますために、恩給受給者で生活保護法の適用を受ている者がどのくらいあるか。もしわかりますれば恩給受給額別に生活保護法の適用を受けている者の一覧表でもおつくり願えればさいわいであります。
 なおこれは私から恩給局にお願いいたしたいのは、恩給の問題は先ほど來の政府の答辯ですと、國家公務員法の施行に伴つて、當然基本的に考え直すということでございますが、基本的の改革の問題は別といたしましても、應急的にも何らかの措置を講じなければならぬような事態になつているかとも思われるのでございます。つきましてはいろいろな點から檢討いたしたいと思いますので、この際年齢別の恩給受給者の一覧表とでも申しましようか、つまりかりに滿六十歳以上のもう働く餘地のない人の恩給について、考慮すればどのくらいの經費を要するだろうかというような問題に檢討の資料にいたしたいわけでございます。年齢別の恩給受給者の資料があれば、これを次會までに御提出を願いたいと思います。
 本日はこれをもつて散會いたします。
   午前十一時四十五分散會
ソース: 国立国会図書館
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