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1947/11/06 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第28号
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1947/11/06 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第28号

#1
第001回国会 厚生委員会 第28号
昭和二十二年十一月六日(木曜日)
    午前十一時四十五分開議
 出席委員
   委員長代理 理事 田中松月君
   理事 山崎 道子君 理事 有田 二郎君
      太田 典禮君    福田 昌子君
      松谷天光光君    武藤運十郎君
      園田  直君    竹田 儀一君
      中嶋 勝一君    降旗 徳弥君
     小笠原八十美君    大野 伴睦君
      河野 金昇君    野本 品吉君
      齋藤  晃君
 出席國務大臣
        厚 生 大 臣 一松 定吉君
 出席政府委員
        厚 生 技 官 東 龍太郎君
        厚 生 技 官 濱野規矩雄君
    ―――――――――――――
十月三十一日
 治療師制度の改善に關する請願(岡田春夫君紹
 介)(第一〇〇二號)
 國立療養所入院費患者負擔反對の請願(庄司一
 郎君紹介)(第一〇三三號)
 引揚者の職業補導共同作業特別施設費増加の請
 願(川合彰武君紹介)(第一〇四四號)
 引揚者に生産資金貸出増額の請願(川合彰武君
 紹介)第一〇四六號)
 生活保護法の一部を改正する請願(川合彰武君
 紹介)(第一〇四八號)
 中學校教員の恩給増額の請願(志賀健次郎君紹
 介)(第一〇七六號)
 盲人に鍼灸業繼續の請願(山崎猛君紹介)(第
 一〇七一號)
 恩給増額に關する請願(増田甲子七君紹介)(
 第一〇七六號)
十一月四日
 赤十字の標章及び名稱等の使用の制限に關する
 法律案(内閣提出)(第八三號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 醫療制度に關する件
    ―――――――――――――
#2
○田中委員長代理 ではただいまから會議を開きます。
 委員長は病氣のため御缺席でございますから、私が代理を勤めます。國際電氣通信株式會計等の社員で公務員となつた者の在職年の計算に關する恩給法の特例等に關する法律案、恩給法の一部を改正する法律案、醫療制度に關する件を議題に供します。お斷り申し上げておきますが、今日出席を求めておりました社會局長、福利課長は、G・H・Qの方に行かれまして今日出席がございませんので、その方面に對する御質問はこの次の機會に利用されたいと思います。吉原病院等に關することについて有田委員の發言を願います。
#3
○有田委員 大阪の灘波病院の先般私が質疑いたしました件は、農林大臣から御答辯を承ろうと思いますが、實質的に先般私が申し上げました中に、食糧問題について厚生省としてはその後どういう對策をおとりになつたか、この問題をまず具體的に御説明願いたい、さらに全國におけるああいつた吉原病院あるいは大阪の灘波病院のごとき病院内におけるリンチ事件、これはおそらく厚生大臣からの説明がありました場合においても、多分そういうことはないというようなお話であろうと思いますが、私が先般豫防局長室でお話した場合においても、リンチ事件は局長自らも御承認になつておられるのであります。しかもそれに對して今日までどういう計畫とどういう御方針でリンチ事件のないような手を施されておるか、この二點についてお聽きしたいと思います。
#4
○濱野政府委員 有田議員から御質問になりました件でありますが、先般來各病院當事者全部集めましていろいろと懇談いたしまして、將來の對策についていろいろ善處いたしまして、御質問のようなことのないように努力いたしておるのであります。第一の食糧の問題でありますが、これは大體聽いてみますと、地元において本人の身許を調べまして二重配給のないように極力手配を警察署竝びにその方へ連絡いたしまして實行いたしております。それからまた有田議員からのお話によりまして、農林當局とも連絡をとりましたが、現在大體拘留中の者はある一定期間は縣で皆賄つておるそうであります。これにつきましても重ねて依頼をしておきましたが、なお今度病院給食が完成されまして、これら花柳病病院も病院給食の中に入れてもらいますれば、花柳病病院における患者も普通の病院と同じようになります。それから數日間勾引される者に對しては、縣で大體賄われるのと、今の病院給食の量の増加についてはいろいろ病院給食の方での關係で考慮しております。
 次にリンチ事件でございますが、段段ああいう女性ができますと、顏役ができまして、顏役の關係上リンチなるものが行われるやに聞いております。病院によつてはリンチのある病院と、また全然リンチ事件のごときもののない病院とがありまして、われわれといたしまして各集まりましたる病院長竝びに縣の者と連絡をとりまして、仰せのごとく室を小さく切り、新らしい人を別の室に移すということでリンチ事件のないように、なお室長制度、あるいは牢名主のようなものにつきましては大阪病院はただちに變更いたしまして、そういうことのないようにいたしております。その他の病院におきましても、それと同じ趣旨をとらせますように措置をいたしました。以上でございます。
#5
○有田委員 私が大阪の灘波病院を調査いたしましたときにおきましては、大體パンパン・ガールのような者は約三百何名というものが、ほとんど町籍簿をもつていないというような状態で、非常に食糧事情が悪いのであります。今の豫防局長のお話は縣で何とか賄つておるというお話でありますが、そういうことは納得できないのであります。現實の問題が人間は毎日食つていかなければならないのでありまして、その職業のいかんということは別といたしまして、基本的人權が新憲法によつて認められておる今日、それらの人たちがほとんど見るも哀れな状態におかれておる。もちろん町籍簿について警察を通じて調査いたしておるという話でありますが、私が調査いたしましたその一日のごときは、八十名のうちにたつた二名より町籍簿をもつていない。すなわち食糧の通帳をもつてきていない。あとの七十何名というものは無籍者でありまして、食糧をもつていないのであります。從つていかに縣が賄うと言いましても、今日は配給が限定されておりますので、そんな厚生省のなまやさしいやり方では、これらの人權が保護されないのであります。ですから私がこの質問をいたしまして、實に一箇月有半を閲しておるのでありますが、厚生省においては何らそれに對して積極的な處置をとつておらない。縣が何とかやつておるだろう。こういうことでありますが、これはひとつぜひともこの委員會において調査委員を樂泉園と同じようにつくつて、そうして現實に調査してみる必要があると思うのであります。わずかな食糧でもつて、しかもここに製藥課長が來ておると思いますが、スルフアミンにしましても、スルフアチアゾールにしましても、これは一つの衝撃療法でありまして、非常にからだに副作用があるのであります。しかもこれに對應する食糧はほとんど與えられていない。私は二箇月あるいは三月入院しておる患者を呼んで調査したのでありますが、ほとんど幽靈のような状態になつて現われてきておる。しかもその中には力の強い者がおつて、一部屋八十名の中の女性に夜中に公然とリンチが行われている。このことにつきましては、豫防局長が先般夜中の七時、八時に行つた。そのときにはたいへんだつたというお話がありましたが、毎日毎夜、私が先般動議を出しまして以來、今日までもやはり全國の各地においてリンチ事件が行われている。しかも病院外におけるそれらのパンパン・ガールの生活は、やはりそれらのパンパン・ガールの親分というものがおつて、リンチ事件が行われておる。院内にもそれらの人達がやつてきて、いろいろな行動をとるということを聞いておるのであります。それらのリンチ事件は今の豫防局長のなまやさしいし調査では納得できないのであります。ほんとうにこれらのリンチ事件が行われていないかどうか。これは豫防局長の方においてももつと積極的にひとつ熱心に大臣とも御相談願つて、大事な人との娘がそういう立場に置かれたと考えるときに、もつと眞劍にお考え願いたい。食糧についても、府縣がどうにかやつておるだろうと言いますが、やつていけないのです。厚生省としても、これらの性病患者に必要な食糧を農林當局と交渉して、一定の食糧を確保するということが、花柳病撲滅のに大切な問題であろうと思うのであります。この點について、もつと具體的な事實としてこういうようにしておる、またリンチ事件に對してもこういうような手を施しておるというようなお答えが願いたい。これは單に病院だけの問題でなく、院内においてもいろいろな問題があるのであります。それが院内にまで波及しておる問題でありますがゆえに、厚生省當局としてはよけいに努力をしなければならないと考えるのであります。さらにまた院内における薬品についても、非常に缺乏しておるそうでありますが、この點もひとつ十分御注意を願いたいと思うのであります。先般私が質問いたしました點に對するただいまの局長の答辯は不十分である。從つてこの點については委員會が将來委員を派遣して、各地の現状を視察して、そういう事實があるかないか。食糧の點についても萬全を期せられておるか。あるいはリンチ事件のようなものがないかということを、特に御調査願いたい。
 さらにもう一點お尋ね申し上げたいのは、先般大臣にも質問した通りに、全國に藝者というものがおりますが、これらの檢査につきまして、パンパン・ガール、あるいは接待婦と同様な扱いにおいて今日檢査されておるということを大臣に御注意申し上げまして、この善處方を大臣からお聽きしたいのであります。しかし全國各地の藝者の中にはいい者もあり悪い者もある。特に藝をもつて立とうとしておる者については、特別な考慮を拂つていただきたい。これらの藝者の檢徴についていかなる御方針が今日とられつつあるか。この點につきまして大臣のお答えを得たいとお思います。
#6
○一松國務大臣 まず私がこの席に出席して以後における有田委員の御質問に對して、私の承知しておる點だけを申し上げておきます。
 まずリンチ事件、これはあなたのおつしやるようにあつたようです。一體どういうわけでこういうことが行われるのか。この動機、原因を研究してみますと、やはり彼らの仲間には親分だとか姉御というような者がおる。そうして淫賣行為をやるときに、自分の指揮命令に從わない者があるとリンチ行為をやる。そういう者がたまたま病院内においてその女と顔を合わせると、きさま、かねておれの命令に從わなかつたではないかということで、收容されておる者同士の間に、彼らの指揮監督の立場におる者が、監督されておる者に對してリンチをやるというようなことがどうもあるらしい。またあつたらしい。そういうようなことが彼らの町における生活にも常に行われる。そのことは警察取締りに屬することでありますが、入院した後における彼らの行動については、病院で十分取締らなければならぬ。從つて病院を監督する厚生省において、これに向つて深甚の注意を拂い、かくのごときことはなからしめなければならないというような立場から、あなたの御質問のあつた後におきましては、それらのことを絶對さしてはいけないということを嚴重に訓示して、今取締つております。おりますが、あなたの御質問以後において、なおかつそういうことが行われておるというようなことはあるかどうか。そこまで詳らかにいたしておりませんが、確かに取締つておることに間違いない。彼らもこの取締りの嚴重なことにおびえて、あまり手を出さないような状態にあると承知しております。ただ何分建物が臨時につくられたとか、臨時に部屋を區切られたというようなことのために、ごちやまぜに彼らを入れる。二、三人ぐらい入れて區分して、そういうような特異性をもつておる者と、被征服者と區別して入れるということであればこれはなくなる。これは設備が十分でないために、そういう者を一緒に收容するということがありますから、そういうことが行われる。しかしこれは嚴重に取締りつつありますから、その點はひとつ御了承願いたいのであります。なおその後にもしこういうことかありますれば、私の方から十分調査もいたしますが、お耳に入つたようなことがありました場合、遠慮なく係なり私までお申出くだされば、徹底的に取締りまして、さようなことのないように努力いたすということをお約束しておきます。ただしかしこの前御提出になりました、新聞に書いてあるような、ああいうひどいリンチはなかつたようであります。しかしこれも新聞記者諸君の調べたことが、そのまま新聞に現われたのでありましよう。新聞記者諸君がうそを書いたとは思われませんが、私どもの調査によりますと、あれほどのことはなかつたということになつておりますから、これはいかようとも御判定を願いたいのであります。
 食糧のことでありますが、これは御承知のように、あなたの今お話になつたように、やみの中には、主食の配給通帳や外食劵をもつていない者の多いことは事實であります。彼らはどうかというと、そういううな醜業を營んでおる立場上、轉々として歩く必要上、配給通帳や外食劵をもつことのできない立場におる者が多い。でありますから、そういう淫賣行為をしてたくさんの金をもうけては、その金で飽食暖衣をするという關係である。だから收容されない間は彼らは決して食糧には困らない。なぜかというと、そういう不都合なことをしてたくさんな金を客からもらつて、そのもらつた金でたらふく食うということであるから、外部におるときはいいのであるが、さあ病院等に收容されるということになると、その行為ができない。從つてたくさんの金を使うことはできない。そこで問題はいわゆる配給通帳や外食劵をもつておるかということになると、もつておらぬということになる。そうするとそこに配給がないということになるから、自然、食のために苦しめられることになるのは當然である。でありますから、これらの點については、各都府縣においてもつておらぬからというて、これをそのままにひぼしにすることはできませんから、やはり縣から特配はいたしておりますが、ただ問題は二重に配給を受けやしないだろうかどうか。病院に行つておるときには外食劵をもつていない。あるいは配給通帳をもつておらぬということで、縣もしくは府から配給をする。しかしながらその實彼らの名前において彼らの家族とか彼らの同居者というものがとつておるということがありはしないか。そういうことがあるなら、今日食糧の非常に缺乏しておるときに困るからということで取調べつつある間に、時間を要しますために保護が十分でなかつたということはありましよう。できることならそういうことのなるたけないようにということで、彼らの身元調査等をやつておりますが、ある者にとつては自分の身元に明らかにすることをいやがる。いやがるでしよう。自分は淫賣をしておつて今病院に入れられて、花柳病の治療を受けておるというようなことが、自分の親族、故舊に知られたらたいへんだということのために身元を明らかにしない。それがために調査が非常に困るというようなことがあるのでありますから、なるたけそういうことのないようになだめすかして、それらの居住地を質して、そうして配給所を探し出して、はたして配給しておるかおらぬかというようなことによつて配給しようという手續のために、あなたのおつしやるように十分に配給が届いていないという事實はありしよう。こういう點は一層努力もいたします。けれども今言うように、二重配給を受けるというような者があるのに、二重配給でも何でもよろしいからと言うて、何でも彼らに對してどこまでも彼らの思う通りにすぐやらなければならぬということも、これもまた困る。この點はいわゆる善處妙用して、彼らをしてなるたけ困らせぬようにしようということに努力いたしておるのでありまするから、さように御了承を賜わりたいのであります。それから一番困つておるのは副食物です。福食物に非常に困つておるようでありますが、それはなるたけ困らないように今手を打つておりまするが、なおこれは御了承を願つておきたいことは、近日中に病院給食ということを實施することになつておる。今までは彼らに對して配給量を與えて、彼らが自炊をするとかいうようなことでやつておつたのでありますが、今度はそれらの特配を受けまして、病院で全部の食事を一緒に一まとめにこしらえて、これを彼らに給與しようというようなことを計畫いたしておりまするから、これが近いうちに實施されまするならば、一般病院と同じように給食されることになりまするから、そういうこともあまり遠くないと思います。これらのことを今農林省方面に向つて交渉いたしておりまするから、この點もひとつ御了承を賜わりたいのであります。
 それから性病藥の不足ということも實際であります。これは有田委員御承知の通り、どうも今までは藥の製造ということについて十分に手を打つことができなかつたというような關係もあつたでありましようが、これらの弊害を除去いたしまして、國産品を大いに増産しようということに、私が大臣になつた以後において努力いたしております。それらのことも實績があがつてまいりましようし、また不足の分に對しましては輸入をするということを、今關係方面に懇請いたしておりますから、外國から輸入ができ、日本の國産品が増産ができるということになりますれば、これらの問題もほど遠からず解決しようと思うのであります。有田委員はさいわいにこういう方面には有力なるお方でありまするから、ひとつ政府に御協力あらんことを特にお願いをいたしておきます。
 それから藝者の檢診でありまするが、これは御承知の通りに、花柳病豫防法の特例でありまして、すなわちポツダム宣言による勅令に基いてこれを行つておるのであります。しかしながら今あなたのおつしやるように、藝をもつて立つている藝者、おれは客をとつたりするような者ではない。あるいはおれの客は一人である。主人もちであるというような者までもこれを局部を檢診するということは、これはおもしろくありません。そうかと言つて、この人間がただ主人もちであるとか、淫を他に賣らないのだということの保證は、取締官としてはわかりませんから、そういう意味において、そういう特別の事情の明らかでない者に對しては一樣に檢診をするということは、これはやむを得ないのでありまするけれども、でき得ベくんばそういうような非難を拂拭いたしたいという立場から、いわゆる藝者に對して、藝者はそれぞれ組合が設けられておりまするから、組合の役員と取締りの方面とが打合わせまして、甲の藝者は客はとらぬ藝者だ、乙の藝者は客はとらぬけれども、主人をもつておるのであつて、そういうみだらなことはないのである。この人間は藝だけをもつて身を立つておるのである。花柳病の傳染ということについては、何にも疑いはない藝者であるというような者に對しては、これを檢診をしないという方針をとつて、現に今實施いたしております。でありますから、今までそういうようにたれも彼も十把一からげに檢診しておるという弊害は、こういう施策の實施によりまして是正されることであろうと思う。さよう御了承を願いたい。
#7
○有田委員 まず一番最初の大臣からの御答辯による、リンチ事件があつたようであるというお話でありますが。厚生省としての責任であることを御痛感願いたい。從つてひとごとのようにどうもあるらしいというような問題ではなく、やはり厚生大臣としては當面の責任者であります。將來とも十分にこの點に御留意になつて、再びそういうことのないように、御努力を願いたい。私どもも同時にこれを監視いたしまして、この問題につきましては將來調査していきたいと思いますので、留保いたしたいと思うのであります。さらに食糧の問題につきましては、これらのパンパン・ガールのやつていることがいいか悪いかということは私が申し上げるまでもない。しかしながら今日殺人罪あるいは強盗というような犯罪を犯した者ですら、刑務所あるいは留置場において相當の待遇が行われておる。すなわち基本的人權に基いて相當なことがなされておるのにかかわらず、厚生省が厚生省管區のこれらの病院におきましては、大臣は見られたか見られないか存じませんが、大阪の難波病院のごときは全部鐵柵になつておるのであります。刑務所と同じでありまして、その入口には頑として警察官が立ち、あるいは力の強い男が立つておる。そうして一歩も外に出ることはならない。その中において公然とリンチが行われ、さらに食糧においては非常なものでありまして、大臣や局長の報告によりますると、どうにかやつておるというような話でありますが、やつていないのであります。もちろん二重配給という弊につきましては、警察當局を通じて十分な調査は必要でありまするが、現實はあくまでも現實であります。現實にこれらの入院患者が、しかもスルフアミンなりスルフアチアゾールという非常な副作用のあるところの藥品によつて身體が痛められておるにかかわらず、それに對抗するだけの食糧すら與えられていない。しかも大阪の病院では二千カロリーに滿ちていないという報告でありまするが、私の見る目では一千カロリーはおろか、おそらく六百カロリー、七百カロリー程度の食糧よりないのではないかと思うのであります。人間は毎日生きていかなければならない。病院の給食ができたならばそれによつて何とかなるだろうというようなことでは、將來に希望をかけるわけにはいかない。大臣がこれから一週間食わずにおるというのなら私は了承するのであります。大臣も人間であるから毎日食糧をお上りになつておられる。これらの多數の入院患者、はなはだあわれむべき入院患者に對して――今日刑務所か強盗殺人に對してすら基本的人權を認めて、食糧その他の待遇が行われておる。同じように厚生大臣の監督下にあるこれらの病院の患者、特にこれらの病院の婦女子について今の大臣の御報告だけでは、私はどうしても納得できかねるのであります。點についてもう一度大臣の御答辯を頂戴いたしたい。
#8
○一松國務大臣 私は難波病院に入院のパンパン・ガールに對して、一週間も飯を食わせぬというようなことは存じません。またそういうことがあれば、あなたのおつしやる通り人間問題どころか、それはりつぱな刑事問題である。私の言うのは、一週間飯を食わせぬ。そういうのではない。一週間飯を食わしておるのである。飯を食わしておるのであるけれど、今申し上げるように、二重配給というようなことを受けることがあつた場合には困るから、そういうことを調査しておる間に多少の不合理な配給のあつたこともありましよう、と言う。しかしそれは、今そういうことのないように嚴重に訓示して、實施されつつあると、こう言うのだ。だからそれらの點について、私が一週間飯を食わぬから云々だとか、刑務所が十分な飯を食わしておるということと比較されるのは困る。私も飯を食つておる――それらの者もむろん飯を食つておる。ただ食い方が、あるときにおいて時間が遲れたとか、あるいは缺食があつたかというようなことがあつた。そういうようなことが不都合だから、そういうことのないように今取締つておるとこう言うのだ。あなたが實地を檢査されるならば、私も一緒に行つて檢査しましよう。そうしてこれらの事實を明らかにするということは、少しも厚生生大臣として躊躇すべきことではない。あなたと同じような考えをもつておる。それからいわゆる鐵格子というようなこともあるそうです。それは、私はこの調査報告を見て實に驚いた。驚いたのみならず、譴責しておる。何の必要があつて鐵格子などをして、それらの人を収容するのか。あなたの考えと同じて、少しも變つておりません。ところがそれについては、いわゆる逃亡ということを防止しなければならぬということがある。その逃亡を防止するという方法について、何も鐵格子を設けて防止しなくてもいいじやないかというのが私の意見である。おそらくあなたの意見も同じだろうと思う。逃亡を防ぐということは鐵格子をしなくてもよろしい。一尺四方の窓ぐらいのもので逃亡できぬから、そういうことをしておけば逃亡を防げるではないか。こういう鐵格子というようなことをするからして問題が起るのだから、そういうことをせぬで、ただ逃亡を防ぐという構造をつくればよろしいにかかわらず。塀がいかにも高く、格子を入れた、しかも鐵條網を張りめぐらした。そうしてそこに警官を配置しておるというようなことをするので問題が起るのだから、一切さようなことはやめなければならぬということを嚴重に言つてやりまして、今ではそういうことに改めております。さようにひとつ御了承を賜わりたい。今まであつたことは、私は率直に認める。率直に、今までやつたことはよくない。あなたが質問してこれらのことを糾彈をして、國民の自由の權利を擁護しなければならぬという御精神は、私まつたく同感である。だからそういうことが以前あつたことはよくない。それを改めて將來そういうことのないように、あなたのおつしやるように人權を尊重しなければならぬ。藝者だつて、罪を犯したというものではないので、ただ花柳病の豫防だとか、その他取締りの必要上やつておることであるから、人權をどこまでも尊重して、惡いことを改め、そうしてほんとうに彼らが明朗に生活ができる。そういう所に愉快にはいつておつて、そうしてただ目的は病氣を治せばよろしいのだそういう目的のためにこれらの取締りをすればよいのだから、そういう方針で進めようということを嚴重に訓示しております。それでもなおかつ改まらぬということであれば、それは適當に處置をしなければならぬ。私もそのうち大阪に歸りましようから、あなたと同行して、そういうことを嚴重に視察して、そういうことが改まつておるかどうかをあなたの御同行によつて明らかにいたします。こういうことは國家のために――厚生大臣の私のためでも何でもない。國家のためであり、あなたの執心なるその御協力によつて、かくのごとき弊風は是正するということに少しもやぶさかでないということを申し上げておきます。
#9
○有田委員 大臣のお話の中に、食糧について命令してあるというお話でありますが、その私が調査しました一部屋八十名餘りのうちで、二名より食券をもつていない。あとの七十何名はもつていない。もちろんそれについては、大臣が申されたように警察でそれぞれ二重配給のないように調査中でありましようけれども、現實が八十何名のうち、わずか二名より配給のものをもらつていない。しかも府縣において食糧をやつておると言いますが、府縣も御存じの通りに、そういう餘裕を今日もち合わせていないのでありまして、私が先般豫防局長に申しましたのは、農林省に交渉して、厚生省としてのこれらの花柳病豫防に對する食糧を確保してくれということを私は豫防局長にお願いしておいたのであります。ただ命令だけで、大臣が言明しておるというだけでは、私は納得しかねるのであります。農林省と交渉して、これだけの食糧を獲得して、そうして今日こういうようにやつておるという現實の言葉が頂戴いたしたいのであります。さらにまた今の鐵柵の問題であります。この鐵柵の問題につきましては、おのずから逃亡という問題かありまするから、私はあえてこの點は考えてやらなければならぬと考えておるものでありますけれども、しかしながらその大き部屋の中においてリンチ事件が行われておる。しかも鐵柵もそういうようなな状態である。せめて食糧だけでも何とか大臣の手によつて、もつといいようにしてやつてもらいたい。これは理窟があります。あるいは府縣において何とかやらせておる。けれども府縣においてはやる餘裕がないのであります。どうしても厚生當局が農林當局と直接に交渉して、これらの人たちに對する特別なる食糧を獲得していただいて人權擁護のために、大臣のその烈々たるところの信念をひとつ形において現わしていただきたい。私はかように思うのであります。それらの人たちは、大臣は一週間飯を食わなければ困るだろうと言うが、私はそういう悪意で申し上げたのではないのであります。それらの人たちの長い間、あのやせ細つた幽靈のような姿を見たら、私としてはじつとしてはおられぬのであります。おそらく東京の吉原病院――吉原病院には私は参つておりませんが、その中にも相當哀れな人がおられるだろうと想像するのであります。どうか、その鐵柵の中で、しかもリンチの中で呻吟しているこれらの人たちが、せめて食糧だけ――しかも藥品が衝激療法であつてからだに副作用があつて體質が弱つていく。こういうような人たちにせめて最低の食糧を、大臣の手によつて農林省と交渉して、全國にそのわくをひとつ一日も早く與えていただくように私はお願いいたしたいと思います。
#10
○田中委員長代理 ただいまの質問に關連して、福田委員の發言を許します。
#11
○福田(昌)委員 有田委員の御質問と全然別個になるかと思いますが、私の私見を申し上げます。この問題に對しての私の批判を申し上げますると、有田委員のこれに對する御同情というものはまつたく安つぽい同情である。かように私は申し上げたいのであります。私も個人的な非常な關心をもちまして、難波病院にも吉原病院にも参りまして、しかも私はその難波病院などにおいては、約一箇月というものをこういうパンパン・ガールとまつたく寢起きをともにいたしまして、かの女らの教化というものに對しましてほんとうに獻身的な努力を拂つたのであります。その状況を考えてみましても、確かに鐵柵を構えたところの病室もありました。また八十人、百人を収容しておる廣い病室もあつたのであります。難波病院は御承知のように廣い病室もありますし、狭い病室もありまして、その病室の様相は一階、二階、三階によつて非常に種々であります。その間におきまして、かの女らはなぜ鐵柵を設けたような所に置かなければならないか。そういう所に置かなければ逃亡する人間であるか、そういうような性質をもつた人間であるということを考えましたならば、鐵柵の中に置くということは、あえて人權蹂躙にならないと思うのであります。また食糧問題におきましても、一概にこういつた女性に對して非常に食糧状況が悪い、刑務所と比較して難波病院の待遇が悪いという仰せでありますが、私は今日の刑務所の待遇というものに對しても、日本の現状からしてはすでに行き過ぎではないかということを考えております。刑務所の状態は――私は堺の刑務所に興味をもつて見學に参つたのでありますが、そのあまりにりつぱなることに驚きまして、私自身刑務所の中に容れてもらいたい。かようなぐあいに思つたのであります。そういうふうにこういつたパンパン・ガールという者がいかなる精神状態にあるか、いかなる種類の人間であるかということを考えた場合には、私は人權尊重の名をもつて待遇するという有田委員の御意見は、まつたく寛大であると批判したいのであります。厚生當局においても人權尊重の線の沿つて相當の御盡力は拂つてくださつていると思いますが、豫算の問題もあるし、有田委員の希望というものは完全にかなえられるわけもないと思います。ですから私はこの問題の解決策としては、こういつたような患者に何か積極的な仕事をさすべきだと思います。なまなましい症状の現われたばい毒においてはまた別ですが、そうでない濳在性のばい毒においては患者に積極的な仕事をさせて、その勞働の報酬として相當の食糧もやり、また相當の小づかいもやるというような制度にすべきだと思います。これもただ漫然と普通の病人と同一の待遇において遊ばせておいて、治療だけは十分にし、食糧も與えてやるということは行き過ぎではないかと思います。そういう意味において、ああいう療養所には必ず何か積極的な營利的な仕事の面を附設すべきものではなかろうかと思います。それから先ほど籍についてのお話がありましたが、確かに彼女らの中には無籍者が大部分であります。しかしこれも念を入れて調査しますと、必ずどこかに籍があります。彼らの言というものは三通り、四通り、五通りくらいは完全にうそを言いわけます。一人々々について、二、三日調査して、また三、四日經つて調査してみるとうそを言つている。それをたつた一囘の調査によつて信ずるということは私たちは愚もはなはだしと思います。
 それから患者を鐵柵の設けてある部屋に收容するのはいけないということですが、私はこういうことを體驗したのであります。患者を鐵柵の中へ、しかも地下の一階の非常に汚い、採光の悪い部屋に押し込めておくことは、非常にいけないことではないかということを、私がそのときの院長に言つて、三階に移させました。するとその移した晩に三階から長いひもをつないで何人かが逃亡を企てた。そこで看守の人が氣がついて抱き止めたところ、最後の人は三階から飛び降りて足を折つてしまつた。私は現状を知らないで翌日下の一室で患者が足を折つて痛がつてうんうんうなつているのを見ましたので、いきなり質問いたしました。ところが逃亡と言わずに足を折つたのであるが、病院のお醫者さんは非常に不親切だとか、家の者に再三見舞に來いという手紙を出したが、見舞に來ない。自分が働いて一家を支えている。父は病氣で寢ており、母は買出しをやつて、やつと一家の生活を支えている状態だから、家が非常に心配になるということを申しましたので、私も非常に同情して、その言葉を信じて、その子供の家までわざわざ雨降りでしたが夕方尋ねてまいりました。すると病氣で寢ているはずの父親がひよろひよろ出て來てあなた何しに來たかと言つて非常に私を毛ぎらいしたのであります。そこで娘が心配しているからと申しましたところ、あなたは娘の同類、または娘の手先として來たのだろうという話で私はまつたく唖然としたのであります。ですから私もまつたく彼女の言つた言葉がうそであるという見當がつきましたので、その親父とひざを交えてじつくり話したのであります。その話を聽いたところによりますと、その娘たるものは家の手助けどころか手に負えぬ者で、娘のためにその親父さんは警察に何遍もらい下げに行つたかしれない。こういつた子供は家には要らない。そういつた子供から、病院にはいつたから見舞に來てくれと言われるのはまつたく心外である。こういう者はあなたの方で煮ようと燒こうと勝手だから適當に處分してくれ。とにかく家には要らない娘だからこういうような劍もほろろの挨拶を受けたのであります。これは極端な一例でありますが、いわゆるパンパンガールでもしようかという、しかも二囘三囘と繰返して病院にはいるパンパンガールなる女性が、いかなる女性であるかということを十分認識して、その處置を考えていかなければ間違いができると考えておるのであります。そういう意味において彼女らに魂の教化――勤勞精神を吹き込むことが最も先決問題であると私は結論したいのであります。
#12
○有田委員 ただいま福田委員から安つぽい同情というお話がありましたが、決して安つぽい同情ではないのであります。ただいま私が申しました中でも、鐵柵の問題については大臣においても大いに注意願わなければならない。特に花柳病豫防法案が近く政府から提出されることになつておるそうでありますが、この花柳病は國民にとつても重大なる問題でありますから、その點については私は福田委員と同意見であります。しかもこの病院において仕事をさせるという福田委員の御意見はよい意見であつて、私も贊成であります。私の申し上げておるのは安つぽい同情ではなく、今日現實にこれらの人たちが非常に食糧が足りなくて困つておる。しかも藥品の關係上衝撃療法でありますので、身體が非常に弱る。ですから最小限度の食糧を厚生省において獲得していただいて、花柳病豫防法案ができますまでの處置として十分なる處置をおとり願いたい。かように念願いたしたのであります。私は決して安つぽい同情をしておるのじやない。しかしながら福田さんが女性としての潔癖さから、これらのパンパン・ガールを頭から毛ぎらいするということはどうかと思うのであります。これらの鐵柵の中にいる哀れな多數の人たちにせめて食糧だけでも最小限度のものを獲得してやれるようにしていただきたい。かように申し上げたのであつて、安つぽい同情でないことを御了承願いたいのであります。
#13
○田中委員長代理 この問題はいずれまた後日懇談、あるいは討議したいと思います。そこでかねて懸案になつておりました樂泉園問題につきまして、當局の御報告を承ります。ついてはこの際お斷り申し上げておきますが、司法大臣は閣議のために、刑事局長は關係筋へ出頭のために今日出席ができませんので、その方面に對する御質問は後日に讓られるよう望みます。
#14
○一松國務大臣 國立療養所樂泉園の問題に關しまして、本日はひとつ詳細に御報告させていただきたいと思います。ただお願いいたしておきますことは、私はその大體を申し上げまして、私の考えております結論を最後に申し上げ、事柄の内容につきましてはそれぞれ事務當局から答えさせることにいたしますから、さよう御了承を願いたいのであります。
 まずおもな點から申し上げてみたいのでありますが、特別病室という監獄にも勝るような恐ろしい部屋に監禁しておるという事實に關しまして、率直に申し上げますが、そういうことがございます。そういうようなことがありまして、私はこの報告を聽いて實に驚いた。武藤委員が憤慨なさることはこれは當然だ。昭和の今日にこういうことが行われておるというようなことは、特に私が以前司法官であつたという立場からも、刑務所等のことをよく承知しておる關係からも、實は驚いておるのであります。ところがこれに對しまして、かくのごときことをしなければならなかつた沿革もありますから、その沿革だけはひとつ皆さんに申し上げて御了解を得ておきたいと思うのであります。これはこの問題に關する關係者等に對する將來の處罰の問題等にも影響いたしますし、また皆さん方の御關心をも和らげることができようと思いますから、ぜひ御聽取を願いたいのであります。
 まず一般問題として總論的に申し上げてみたいことは、癩病患者であつて、罪を犯した者が全國にずいぶん多いのであります。そういうような者を癩病患者であるからと言つてそのままに放置することはできません。そこで悪悪質な者は檢事が調べて裁判にまわし、法廷を開いて裁判の言い渡しをする、これは當然の處置であります。そういうことをいたしますときにおいて、一體どういうような悪結果を生ずるかと言いますと、その者を刑務所から裁判所に送り迎えするときに、これを馬車に乘せ、あるいは今では自動車に乘せる。そうすると御承知の通り癩病は空氣傳染ではありません、感染するものでありますから、そういう者を一人よりほか馬車に乘せられない。一人の者を乘せて運轉手一人、看守が一人、もしくは兇暴な者になりますと、看守二人で裁判所に送り迎えをする。送り迎えしますと、それを法廷に立たせるといすに腰かける。もしくは腰掛に腰かける。そういうようなものは特別の專用のものでなければできない。專用のものにしなれば、ほかの裁判を受ける者をそれに腰かけさせるということによつて感染させるというおそれがある。いすに腰かけさせる。いすがそうであるし、前のテーブルに手をつける。そのテーブルもその人間のために特につくらなければならぬということになりますと、たいへん國家の費用を要するのみならず、そういうような者の送り迎えをする看守であつても非常に忌みきらう。そういうようなことが自然に馴致せられましてこれは困る。こんなことは全國でやられると困る。何とかこれを考えなければならぬということから、檢事局もしくは警察において、それらの者を調ベるときに、どこかこういうような者を專門に入れるような病院をこしらえて、そこに送ろうじやないかということがだんだん馴致されたのです。また警察方面もそういうことを非常に心配しまして、悪質の癩患者を調ベるときに、別房に入れまして別仕立ですべてのことをしなければならぬ。警察の者はこういうことを調べるのに非常に弱る。調べた結果、檢事局に送りますと、檢事局でも檢事局に備えつけてあるいすや腰掛、机を皆一々消毒しなければならぬ。檢事も差し向いで調べておると、向うのつばきがかかるので、俺にうつりはせぬかということで檢事もそういう者を調べることをいやがる。そういうことのためにも、癩患者というとすぐにどこそこに送つてしまえとこう言う。そうするとその地方のそういうような病人を収容する病院に送ると病院がきらう。そんな者を送られては困る。結局彼らは日本のあらゆる土地において身をおく所がない。それでこれは何とかしなければならぬということで、結局それは日本國中のどこか一箇所に、そういうような者を収容する場所をこしらえようじやないかということが事の起りです。これに對しましては、ここに一つこういう實例がありますから、これを申し上げてみたいのであります。これは昭和五年の望月内務大臣のときに、日本における癩療養所の五箇所の院長が連名して望月内務大臣に願つた、その要旨は非常に悪質の癩患者が強盜をやり、窃盜をやり、家宅侵入をやる。初めのうちは仕方がないから、おつかないから不起訴にしてしまつておつた。やればやるほど切捨御免だという考えでなおさらそういうことをやる。仕方がないから檢事局がそれを調べて、結局それを東京の全生病院へ収容しようということにしたのであります。ところが全生病院ではそんな者を送られては困る。その困るというのは先刻申し上げた事情によつて困るということです。檢事局の命令だ。だからぜひあなたの方でしなければならぬということで、拒んだけれども、結局これを収容しなければならぬということになつて、それではこういうものは惡質であり、しかも前科というものはないけれども、何遍も何遍も悪いことばかりして裁判にまわし、監獄に入れなければならぬ者がこのままで放置されるということでは困る。何とかしてこれは裁判にまわして、刑務所に収容していただかなければ困るということを、昭和三年望月圭介氏が内務大臣であつたときに陳情書を出した。そこで内務大臣では何とかしなければならぬと言つて司法省に交渉したが、司法省はそんな者を今入れることになると、まつたく別の廳舍をつくらなければならぬ。檢事も困る、看守長も困る。看守も困る。皆困るというので司法省もはね、内務省もはね、厚生省の方にもつてくるということになつた。厚生省もそんな者を入れられては困るということになつて、結局どうすればいいかということでいろいろ考えた結果、それでは特別に一つ病院をこしらえるよりほかなかろうというので、草津のここがその地位に當たつた。そこでいろいろな施設をしようとするけれども、そういうような者を入れるために費用が出ないと言うておるときに、ちようど時たまたま三井報恩會から二百萬圓という金を慈善事業のために寄附してくれた。これはいいからというので、そのうちの七千圓という金をもつて樂泉園に昭和十四年に特別病室をつくつてそこに入れることにした。このときの話をいたしますと、三井の方でも一體そういうような悪質な者を入れて、しかもそれらの者が逃亡しないように、それらの者が再び罪を犯さないようなことをするために、私の方からせつかく出した二百萬圓のうち、そういう方面へ七千圓も使われては困つたことだという不平を受けたけれども、できたことである。國家のためならやむを得ぬということで、泣寢入りになつた。そういうことでこの特別病室というものができた。ところが特別病室ができたがために、ずいぶん人權蹂躙というそしりもありますけれども、非常に功績をあげておることがある。何かというと社會秩序がこれによつて大分保護された。今までは癩病患者が何をしても切捨御免だからというので天下に横行したものだ。ところがそんなことをすると、お前は草津に送るぞというと、草津に送られては困るという。草津という聲を聽いてふるえあがつて悪いことをせぬということになる。それがために大阪の天王寺の附近、天和川の附近にずいぶん悪惡質な癩患者がおりました。それから香川縣の金比羅樣、熊本の本妙寺、行つてごらんになつた方はわかりますが、そういう所に悪に者がいて、悪いことをしても切捨御免であつたのが、草津へ入れられるということを聽いてそれはたいへんだぞ。世の中でも監獄よりひどい所だといつてふるえあがつて、悪いことはできないというので、彼らも逃げるというようなこともせず、悪いこともせぬというわけで、非常に秩序が保たれた。こういうことがありました。それから全國から悪質な者をことごとくほかの病院へ入れずしてそこへ送る。送るにも汽車に特別な室を設ける。そういうものは周圍のほかのものにうつらないように設備を設けて送る。そうして特別病室に入れられるということで、彼らも悪いことをせぬでこれらの者が靜かになつたというようなことはある。そこで特別病室に入れられるということになると、逃げられると困るから逃げることを防ぐためにいわゆる窓格子をこしらえ、鐵格子をこしらえるというようなことをし、多少膺懲するというような意味があつたらしい。でありますから構造が非常に嚴重であつて、光線も十分にはいらないというような設備が設けられてそれが八つほどある、私はまだ見に行かぬけれども、いずれそのうちに行こうと思うのですが、こういうようなことは絶對にいかぬということで、それは今では使わないことを命令いたしまして、使つてはおりませんが武藤委員が御調査のときなどは、確かにこういう事實があつたことは間違いありません。でこれが昭和十四年にできましてそれから今日までの間、九十二名を確かにこれに監禁した事實も武藤委員の御調査の通りで、その九十二名の住所氏名も明らかになつておりますが、それはただいま省略いたします。その中で十二名という者が死んだ事實も間違いありません。こちらは十四名死亡とありまして、武藤委員の御調査では十二名ということになつておりますが、まあ十二名死亡いたしました。それからその死亡したのが多く寒冷の時期、すなわち十一月から二月ころの間に死亡した者が、その中の九名はそうなつておることも事實であります。どういうわけでそれがそういうことになるかといいますと、武藤委員の言われたように、薄い着物を着せ、ふとんもちやんと與えず、凍死せしめたものだというようなことは、これは觀察のしかたでいかようになりましようが、とにかく冬の寒いときに、シヤツを與えるか與えぬか、あわせ一枚は確かに給與しておつた事實はある。ふとんは煎餅ぶとんが敷ぶとんと蔽いぶとんがあつたということだけは間違いない。ところが御存じでありましようが、あの草津という所はずいぶん土地も高く、温度も低いところであります。東京邊と違つてよほど寒さがきびしい。それが冬の非常に酷寒のときに煎餅ぶとんで、煎餅敷ぶとんを敷いてあわせ一枚を着ておるというようなことで、ずいぶん寒さを感ずることはこれは當然なことです。それがために多分死んだのであろうと推測されます。だから、凍死と斷定できるかできぬかは問題でありますが、とにかく十分な温度を保つことができなくて、それが癩病患者という弱いからだにひどく冷氣を感じたために、死んだのであろうと想像される。そういう事實は間違いありません。それから食糧の點にいきましても、握り飯が二つくらい、梅干が一つというようなこともたしかそういうことがあつた。それからこれ以外にみそ汁というようなものをあげておつたのですけれども、カロリーが今のように二千四百カロリーとか千九百カロリーとか、そんなカロリーはとうてい給與はできておらなかつたことは私も認める。そういうようなことでありますし、それから賃金等が、一日勞働させて一圓八十錢しか勞賃を與えていない。そうして三圓六十錢というものを自分は要求しなければならぬ――實は三圓六十錢やつておつたのですが、その中の相當なものを彼らの慰安會の費用として差引いておつたというようなことも事實です。私をして言わしむれば、彼らが働いてとつたわずかな金を、しかも半分以上を慰安會の費用としてその中から差引くということそれ自體が、すでに常識をはずれておる。もし慰安會の費用が必要であるならば、國立病院に收容して、おる者であるがゆえに國家が慰安會の費用を出さなければならぬのじやないか、そういうことをするのが一體常識はずれだといつて、實はこれも私は非常に不滿に思つておつたのであります。新聞の配達料金の問題もありますが、これは一箇月に配達する料金が二百三十七圓ということになつておるにもかかわらす、子供に對して一囘に十二圓しか與えない。しかも患者がそれ以外に十二圓出して、合計二十四圓で配達をさせておるというようなことで、それ以外のものはどうなつておるか。みな不正に處分しておるのか。不正に處分しておるのではない。それ以外のものはやはり患者の慰安會の費用ということで蓄積しておつたということもある。こういうようなことで、どちらにいたしましても、調査の結果から言いますと、武藤委員が痛烈な御質問をなさつたことは當然だと私は思う。武藤委員のこの御質問によつて私は初めてこの事實を知り、初めて調査いたしました結果、武藤委員の主張することのほとんど八割までは事實でございますから、私としてはただちにこういう弊害は除去いたしまして、これらの關係者に對しましては、それぞれ行政上の手續をとりました。刑事上の問題も起るでありましようが、それらの點については、承るところによりますと、前橋の檢察廳において相當調査をいたしておるということでありますから、これは司法處分をまたなければ、その結果を今私から言明はできません。この以外のこまかい點についてもそれぞれみな調査ができておりますから、これらの點は事務當局から詳細に御報告させていただきます。
 最後に私申し上げておきますが、こういうような不都合なことが今日までこの昭和の時代において行われておつたということはまことに申譯ございません。これはただちにこれらのことを是正いたしまして、ほんとうに人權擁護ということに向い、明るき生活を彼らをしてさすような、哀れなるこれらの人々に對して、樂しく明るくこれらの病氣を治して、そうして世人から疎んぜられる哀れなる患者をして十分に療養に努めさせて、一面には社會の秩序を亂さぬようによく言うてきかせて、そうしてこれらの改善をはからなければなりませんので、それらの手は今著々打つております。また栗生樂泉園以外の全國の癩療養所において、同じようなことが行われておるのじやないかという疑をもたれるのも、これはやむを得ません。しかしながら今申し上げました特別病室なんかというようなものはほかの所にはないのであります。ただ食糧問題とか、あるいは衣料問題とか、その他待遇問題等について不都合なことがあるでありましようから、これらのことのなからしむるように、過般全國の癩療資所の病院長を本省に招集いたしまして、十分にこれらのことのないように嚴重なる訓示を加るておきましてので、除々に改善せられることであろうと思いますし、また將來私もこの議會が濟みましたならば、そういうような所を視察して皆樣の御期待に反することのなからしめるように努力いたすということを、お約束申し上げまして私の御報告を終りまして、あとは事務當局から十分に御報告いたすことにいたします。
#15
○東政府委員 ただいまの大臣からのお答えと重複する點があると存じますが、一應この委員會におきまして武藤徳田兩委員から御質問のありました各項目につきまして、逐條私どもの調査の結果を御報告いたします。
 まず武藤委員からの御質問の點でありますが、第一は特別病室の監禁に關する問題、そのうちの第一の質問は、この特別病室設以來九十二名の患者を監禁しておる。しかもその期間は許さるべき二箇月を超えるものが多い、最長は一年半にも及んでおる、平均四十日にも及んでおる。これは監禁といつても監獄ではない。人權蹂躙ではないかという御質問であつたと存じますが、この事實は、九十二名の患者を入れておりますこと、その他監禁の長さ等、これは事實その通りでございます。
 第二の御質問は、九十二名の監禁中手續關係書類の完備しておるものはたつた一つである。書類の不備なものは二十七件で、書類のないものが六十四件である。これでは暗黒裁判である。この點を十分調査せよというお話でありますが、厚生省の調査團が參りまして、倉庫等丹念に調査いたしました結果、入室關係書類が整備しあるものは四十九件あります。これには必要なる書類が全部見つかりました。しかしその他の入室につきましては關係書類はございません。その大部分は外部から、これらの監禁をせらるべき、いわゆる不良と稱せられる患者を護送してまいりまして、それをただちにそのままこの特別病室へ入れてしまうという事實がありますので、さような者については、この關係書類は完備していないものと思われます。いずれにいたしましても當初武藤委員から御指摘になられたただ一件よりないということよりは、よほど多數、四十九件までは正式の書類を見出し得たのであります。
 第三の御質問は、監禁の例をお示しになつた二例でございますが、ともにこれは一種の連坐的監禁である。すなわち監禁せらるべきはずでない者が監禁せられておるというお話でありました。この點も調査したしました結果、事實御指摘になりました者の監禁せられておつたことは事實であります。その事情を調査いたしましたところ、第一の北牧つぐのという者が夫山田道太郎と一緒に罪なくして監禁せられたことにつきましては、この罪なしということは事實であります。北牧つぐのも夫道太郎も、ともにこれは當然監禁せらるべきはずの人ではなかつたようであります。不幸にしてこの二人は、他の八名の不良患者と一緒に、東京の全生病院から送られてきたものでありまして、當時警視總監から一括して、十名が不良患者であるという送監状がついておりましたために、その送監状によつて收監したのであります。誤つて二人に監禁室へ入れられた氣の毒な人であつたのであります。もう一例の齊藤俊次ということでありましたが、これは調査いたしますと齊藤新助という者でありまして、二十六才になる新助の息子茂という者が園内のカボチヤを盜んだ。その際に親父の新助がこれを教唆したというので、一緒に入室せられたというのがその事柄であります。
 それから特別病室に關する第一の御質問は、この病院の構造についてでありまして、これはすでに大臣からお答えいたしたように、御指摘の通りであります。嚴重な錠前のかかつた部屋でありますし、日光等がほとんどはいらない、確かに御指摘のような構造のものであります。それから御質問の第五は、そういう特別病室内における待遇についてでありまして、非常に狭いところで、冬は零下十七度くらいになつてふとんが凍えるくらいである。從つて九十三名の被監禁者中、監禁中に十四名死亡し、出所後八名死亡し、しかもその大部分は冬季に死亡しておる。こういうような事實について調査を求められたのでありますが、仰せの通り零下十七度に下るということは、その通りであります。また監禁中の書類によつて申しますと、監禁中に死亡した十名、出室當日死亡四名となつておりますが、これは兩方合せまして監禁中とすれば、御指摘の通り十四名であります。出室後一箇月以内に死亡した者は二名でありまして、私どもの調査では監禁と死亡との間に密接な關係があると思われるものは十六名であります。しかもそのうち十一名は冬季に死亡しております。以上が大體特別病室に關する御質問に對する調査の結果であります。
 第二の點はいわゆる不正と申しますか、特に前園長及び前庶務課長に對する不正の問題についてでありまして、御質問の要旨は、タバコは患者には配給せずして横流しておるような事實があるということでありました。その點について調査いたしましたところ、約二百名の幽靈人口によつて配給を受けておりまして。そしてこれを職員に二重配給及び特配いたしました。それを他の物交に使用したという事實もございました。
 それから不正に關する第二の御質問は、五十萬圓にも達する別途會計があるのではないか、これについて詳細なる使途を調ベろということでありました。この調査の結果によります、昭和二十年以來財團法人慰安會に炊事用具施設費という別途會計を設けて、最近までの收入が約三百萬圓、支出が約二百四十萬圓になつております。この事實は一種のやみ賣買をいたしまして、その運用によつて國費の不足を補つてきたのであります。現在現金及び貸付金が合わせまして約六十萬圓、それから物品といたしまして購入當時の價格で約四十萬圓、これだけの財産がこの財團法人慰安會、殊にその別途會計にございます。しかし一應金額の帳じりは合つておりまから、その點だけからただちに私腹を肥したという證據は、私どもの手では握れないのであります。しかしながら整理がきわめて不完全でありまして、金額だけを記入した傳票以外に正規の帳簿のようなものはございませんでした。從つて賣買の相手方も明らかでありませんし、物品名も不明なものもありまして、疑いをかけられてもただちにその疑いを解くだけの證據も得られないと存じます。
 第三の質問は、百ヤールの布地を三十反、それをガソリンと交換したという事實があるかどうか。これは調査の結果によりますと、今申し上げた別途會計で購入いたしました布地を横須賀でガソリン、モビール・オイルと交換いたしまして、園用の自動車の燃料竝びに潤滑油として使用した事實はございます。
 第四の御質問は、倉庫から患者の食糧を持出して費消した事實があるではないか。これに對する調査の結果をみまずと、炊事倉庫から米麥合わせて約四十俵餘りを持出しまして、職員の出張及び取引先への賣却に充てた事實がございます。しかしながらこの炊事倉庫には患者用のもの、職員用のもの竝びに別途會計でいわゆるやみ買いをした米麥等も雜然と保管してありまして、かつ受け拂いの帳簿等も完備しておりません。從つて持した事實はございましたが、その米麥が患者用のものであるという證據もつかめないのであります。
 次に御質問の第三は、癩豫防對策上根本的な缺陷があると思うかどうかという御趣旨だつたと思います。すなわち癩は傳染病であり、隔離によつて防止し得べきものであり、またすべきものである。いろいろ歐米等の例もおあげになつての御質問でありました。これに對して御指摘のことは、私どもといたしましては十分是認いたさなければならないのであります。必要な療養所、病床數等を完備いたしまして、かつ療養所の患者の生活竝びに治療を十分に改善して全國の癩患者が進んでこれらの療養所に入所して、いわゆる完全收容と申しますか、全癩患者を收容し得て、しかもそれに對して治療の目的を達するようにいたしたい。すなわち最近におきましては、癩治療ということに對して、非常に大きな光明を見出しつつありますから、治療を目的とするところの全癩患者の收容ということを、一つの國策としてでも取上げていくようにいたしたいというふうに私ども當局としては考えております。
 第四の御質問は、癩療所は全國に十箇所ある。すなわち國立のものは十箇所ある。それらにも樂泉園と同一の事件があるだろうと思われるが、これを徹底的に調査してもらいたいということでごさいました。これにつきましては、ただいま大臣からも申し上げました通り、十月一日、二日、全國の國立癩療養所長を招集いたしまして、樂泉園の問題を詳細に話し、各療養所の近況等も十分聽きました。その結果、樂泉園のような問題がはたして他の九箇所の療養所にあるかどうか。あるとは考えておりませんが、しかしながらなお實情を調査する必要がありますので、逐次調査班を派遣して、十分遺漏のないように指導監督をいたしたいと思つております。
 第五の御質問は、癩患者の犯罪についての問題でありまして、これを裁判所の管轄すベきか、あるいは療養所の權限に任すがよいか、これは大いに檢當を要する。特別病室を廢することはよいが、それだからと言つて癩の犯罪を不問に付するという結果になつては困るし、あとの處置に窮するようなことがあつては困る。その對策を十分に考えなければならぬというお話でありました。厚生省及び特に癩の療養所側といたしましては、癩患者といえども犯罪に對しては一般人と同様正式の裁判を受けさせて、かつ差支えのない程度の刑を科するような設備が必要と思います。これがためには癩患者に對する特殊の法廷、あるいは刑務所内におきまして、つまり癩専門の病館を設置せられるということが、厚生省といたしましては望ましいと思つております。この點につきましては、すでに司法省當局等とも話合いを始めております。
 次の御質問は、患者獻立表で見るとずいぶんいいものを與えておるようである。しかし事實は患者は握り飯と梅干だけを食つていたというが、眞相はどうか。これにつきましては最初に武藤委員に差上げました獻立表なるものはこれはまたつたく信をおくに足りないものでございました。厚生省の調査班が現地に参りまして、いろいろと食事の點についての資料等を調べました。その結果現在殘つておりますその資料から、日々の獻立表というものの明細のできたものはございませんが、しかしながら全體として使用した主食、副食物等の全量はわかつておりますので、その方から算定しても、また患者には特配がございますので、主食についてはその量はまず十分と申しますか、與えるベきものを十分に與えておつたということは言えます。しかし副食物につきましては、畫あるいは夕食に副食物がついていない日が相當あつたことは事實であります。これは一方患者の賄いが著しく安かつたとか、あるいはまた不便な土地であつて、副食物の入手が困難だとかいうことももちろん原因としてあげられましようが、しかしながら園當事者における計畫性と、またこういう問題についての執意が缺けておつたということが大きな原因であつたと思われます。
 以上が武藤委員の御質問に對する各項目についての、一應の調査の御報告であります。
 なお徳田委員の御質問につきましても、特別病室についてその死亡者が大い。しかもそ中には縊死した者あるいは凍死した者があつた。しかもあるいは死亡者の全體の六割までがそうである。その原因はどういうところからくるかということについての御質問でございました。調査をいたしまして、その死亡診断書等を根據にした結果を申し上げますと、特別病室死亡者中に縊死した者が一名ございます。それから死亡診断書の表面から見まして、診断書の上では心臟麻痺あるいは神經衰弱という病名になつておりますが、それらの状況から推測いたしまして、凍死と思われる者が二名ございます。すなわち合計三名は縊死あるいは凍死ということが断定せられると思われます。かようなことになりました結果は、要するにこれは監視の不十分、十分なる見まわり手當が行届いていないということが原因でございます。
 第二の御質問は生活保護法の適用の問題でありましたが、これはもはやすでに楽泉園におきましても、群馬縣當局と直接園とが折衝中でありまして、生活保護法を適用することに話が進みつつございます。但しその額は、一様に一人二百圓というような、そういう患者の希望通りの額にはなり得ないと存じますし。もちろんこれは原則上は各個人の能力に從つて査定することになつておりますが、それは縣と十分事情を話合つた上で、實際の額が定まることになつております。
 第三が勞働賃金の問題でありまして、患者の勞働に對して一日一圓八十錢しか拂つていない。患者はこれを二倍いしてくれと要求しておるというお話であります。これは先般私が現地に参りまして、患者と會見いたしました節に、この勞働賃金は患者の要求通り三圓六十錢にするのが至當であるということで、實施いたしております。また一般人と同一勞働に對しては、一般人と同一賃金を拂うようにしたらどうかという御意見でもありましたが、これにつきましては癩患者は一體に一般人よりは能率が劣つておるのでありますが、もちろんその能力に應じた適正な賃金を考えるのは當然であります。但しその場合に、その賃金の中から、園内で作業いたしております場合は、官給の、國費をもつて給しております生活費を差引いたその妥當額を勞働に對する報償として與えるようにいたしたいと存じます。なお園外の作業は、傳染豫防の原則からしてこれをさせないようにいたします。それから松葉鑛山の勞働賃金が不正なることに使われたのではないかというようなこともございました。これは調査いたしてみましたところ、勞働賃金のうち四分の三を本人に與えて、四分の一を例の財團法人慰安會に積立てて、全患者の勞働いたした者もしない者も、全患者の福利に與えるようにいたしております。なおこのことを患者に公表いたしておりませんので、四分の一づつ上前をはねておるというような横領の嫌疑を受けたのではありますが、事實はこれは全部慰安會の方に送つております。
 第四は患者に對して農耕を強制した。手足のない者にまですき、くわをとらして働かしておるというような無理なことをさせるということから、患者の逃亡する者があるというようなことでありましたが患者は問題の樂泉園の作業として、みずからの割當てられた地所にいわゆる自作農園をつくつてその農耕をやつております。しかし手足のない者に強制的に勞働させたという事實は認められませんでした。
 第五は、新聞配達料の問題で、つまり園内の配達を子供にやらせておるのであります。その配達料は新聞屋が各戸に配達することの煩を省きまして、一括して園内の配達料として、一箇月に二百三十七圓が受取つております。ところがその園内に配達する子供に對しては、一人に一箇月十二圓しか拂つていない。これは實際は三十圓拂うベきものだそうでありますが、十二圓しか拂つていない。しかも患者まで負擔させておる。そこに不正があるというわけでありましたが、この點は調査してみますと、この新聞配達料が値上げになつた後も、すなわち十二圓でなく三十圓拂つてやるベきことになつたことを、事務の擔當者が支拂いを直接擔當しております者に通知をしていなかつたために、値上げの前の安い賃金しか拂つていなかつたものであります。但しその支拂殘りのいわゆる差額は全部患者慰安會に積み立ててあることがわかりましたので、ただちに値上げ當時にまでさかのぼつてそれぞれ支給いたして解決いたしました。
 最後はやみもうけの件について、一千萬圓にも上るやみもうけを職員がやつておるのじやないか、あるいはすでにわかつたものも六百萬圓くらいはある、療養所という所は實に官吏がどろぼうをするところだろうというふうな痛烈な御質問であつたのでありますが、これに對しましては先ほど武藤委員の御質問に對するお答えの中で申し上げました通り、別途會計というものによるやみ賣買でありまして、その目的は決して私腹を肥やすということのために行われたやみ賣買ではなく、その賣買による利益をもつて患者に對する國費の不足を補おうとしたのであると思われるのであります。しかなながら國營の施設においてかようなことを行つたことに對してはまことに遺憾であると存じます。ただこの間個人的に私腹を肥やしたり、あるいは横領したというふうな事實が完全にありませんことを、私どもは祈つておる次第であります。
#16
○武藤(運)委員 それでは樂泉園の問題について簡單に申し上げます。ただいま厚生大臣及び醫務局長から詳細な御答辯がありましたが、この答辯は大體においてわれわれが調査したところと一致いたしますので了承をいたします。ただ調査の結果明らかになりましてなお未解決でありますものは、人權蹂躙、タバコその他の不正配給及び別途會計の問題、これが殘つております。それぞれの係員に對する行政處分は行われておるようでありますけれども、これらに對しましてはすでに告訴の出ておるものもあるそうでありまして、當然司直の問題として明らかにされなければならない問題と存じます。この點については司法大臣にも出席を求めまして、いかなる處置をするかということについて所信を問わんとしたのでありますが、今日お見えがありませんからあとにしたいと存じます。今囘の不祥事件の解決につきましては、先ほど來いろいろお話がありましたが、そういうことも大きな問題ではありますが、私は今後のことが最も大きな問題だと思いますので、先ほど來醫務局長の答辯のうちに見えておりましたような線に沿いまして、癩對策というものを立つて、そうしてこれを眞劍に強力に進めてもらいたいと思います。
 それから癩療養所の患者はむろんでございますが、職員が非常に薄給でこういう病氣の處置にあたつておるのでありますが、この待遇を大いに考慮してやる必要があると存じます。この點につきましても、どうか厚生當局において十分なる具體的な處置をとられたいと存じます。樂泉園の問題についてはそれだけであります。
 今日私は新しい質問をいたしまして、厚生當局のお考えを承りたいと存じます。それは数日前十一月二日の読賣に掲載されておるのでありますが、「ヴイタミン劑きかぬも道理一流品さえ含有量にいつわり」という大きな見出しでございまして、たとえばヴイトミン劑の注射液でありましても、これを数十種市販されておるもの衞生試驗所で調ベてみますと、その含有量が全然ゼロ・パーセントのものがある、有名品で一番多いものでありましても三六%を越えないというような實情であるそうであります。大體においてこの報告は事實であると考えられるのでありますが、單に注射液ヴイタミンB劑だけでなくて、他の注射薬あるいはその他の醫薬品についても、同様の不正、不良品が想像せられるのであります。殊に無害無効ならばまだ別ですが、副作用として非常な悪寒がくるとか、あるいは死亡するとかというような薬品もないことはないと私は考えるものであります。この點について私は次の項目の質問をいたしたいと存じます。
 第一に國民の保健衛生ということは文化國家の重要な基礎づけであると私は考える。最近御承知の通り、賣薬の非常な値上げが行われており、從つて醫療費も非常に高いものになつてまいりました。國民の負擔、殊に勞働者、農民、小市民等のいわゆる勤勞階級の負擔というものは、非常に加重をされてきております。しかるにその用いられるところの醫藥というものは、かような不良品、不正品が横行しておるようであつては、まことに遺憾であると思うのであります。殊に醫師、病院、保健所等におきまして、いかに的確な診斷をいたしましても、その治療に用いるところの藥が効力がないものでありましたならば、まつたく豫防治療の目的を達し得ないということになるのでありまして、これは國民の衞生保健という建前から、業界の徹底的な肅正を必要とすると考えます。これについて厚生當局の所見はどうであるか。第二に賣藥、たとえばヴイタミンB注射液というものについて、含有量を檢定しているかどうか。第三にやつておるとすれば、いかなる法規、いかなる方法、いかなる時期に調査または取締りをやつておるか。第四に今度の賣藥の一齊調査は非常によいことであると私は考える。もつと早くこういうことをやつておつたらよいと思うが、從來今度のような一齊調査をやつておつたか。もしやつたとすればいつやつて、それはいかなる結果になつておるか。第五に今後いかにこの賣藥を調査または取締らんとするか、その具體的な方策を聽きたい。第六にその新聞に出ておる通り、すでに判明せるものがあると思うのでありますが、すでに調査の結果、判明せる分を一週間以内くらいにお手數ではありますけれども、文書によつて國會に御報告を願いたい。第七に今月一ぱいに調査を完了して、十二月十日までに全國からの成績をあげるというような様子でありますけれども、これをできるだけ促進いたしまして、國會の開會中、なるべくならば今月二十日か二十五日ごろまでにできるだけ集計をされまして、その結果を國會に御報告を願いたい。それから第八に從來藥に不良品があり、不正品があるということはしばしば言われており、多少手をつけられたこともあるのでありますが、この藥の不正、不良品に對する調査と、飲食店の不良、不正營業に對する問題は、いつ手をつけられてもそのときだけでありまして、龍頭蛇尾に終つているのでいります。この原因がどういところにあるか私は知りませんけれども、まことに遺憾なことであると思います。この際當局は斷固たる決意のもとに、全國にわたつて公平に、迅速に不良品及び不正品の調査取締りを斷行せられたいと思うが、この點について、當局の決意はどうであるか。第九に、本日は司法大臣は出席しておりませんけれども、こういう不正、不良品の販賣せられているということは、行政上、たとえば製造、營業を取消すとか、あるいは停止するとかいう處分も必要であると思いますが、これは刑法上の問題として斷罪すべきものであると考える。たとえばヴイタミンB劑のごときは、明らかにその一CCの中にヴイタミンBが三ミリグラムはいつているということが表示されて、その上に定價というものがつけられて、それが市販されているのでありますが、それにもかかわらず、その内容がまつたくゼロであるとか、あるいは三六%以上を出ないというような實情がありますれば、これは明らかに詐欺をしているのでありまして、刑法の詐欺罪に該當すると思う、それからまた副作用を起し、人でも死ぬということになれば、傷害罪、殺人罪というようなことも考えられるのでありまして、そういうくらいの意氣込みで取締りをしないと、いつまで經つてもよい品物が出てこないと思います。私はやがて報告されるであろう調査の結果によりましては、私個人としても製藥會社を詐欺罪または傷害殺人罪というもので告發をいたしたいと思つているのであります。どうか以上の點につきまして、即答は求めませんから、御調査の上、至急御答辯をいただきたいと思います。
#17
○東政府委員 ただいまの御質問の各項目につきましては、答辯を次の機會に留保させていただきまして、ただ不良醫藥品の取締りということについて、厚生省がただいままでとつておりました態度竝びに將來の態度について、一應總括的にお答えいたしておきたいと思います。
 申すまでもなく醫藥品というものはその品質純良である、また純良な品質の醫藥品を確保するということが最も重大な問題でございます。從つてそのために藥局方とか公定處方というようないわゆる規格が設けられておりますし、また新しい藥品につきましては、許可制度によりまして純良な品質を確保するという途が開かれているのでありますか、事實今日の状況は、まことに遺憾ながら相當の不良品、また一方偽造品が市場に出現いたしておるのであります。特に現在最も不足いたしておりまする醫藥品の一つである驅蟲劑あるしはまた需要の多いスルフアミン劑その他甘味劑あるいは注射藥等には、不良品と目されるもの竝びに偽造品が事實存在いたしております。これは資材がないとか、あるいは原料が得がたいとか、そういうふうな結果からくるので、醫藥品の生産の不足というこうとが一方に考えられますが、どういう理由であるにしても、かようなことが現在現存いたしますことは國民の保健上まことに寒心にたえない次第でありますので、厚生省としてはこれに對して重大な關心をもつております。しばしば取締りの實施に當つております地方廳へは、そういう具體的な事例があるごとに、またさようなおそれがありますことに通牒をいたしまして、この取締りの勵行をはかつてまいつたのでありますが、それでもなおかつさような事實が絶えませんところを見ますと、これらの措置が必ずしも適切でなかつたということになるのであります。從つてこのたびこの不良醫藥品の取締りを強化いたしまして、全國一齊に査察取締りの運動を展開するようにいたしたのであります。このことは單に一般不良醫藥品を取締るということにおいて効果をあげますのみならず、製藥材料である重要な資材が、不良品の生産の方に流れるという、この二重のマイナスを防止することにも力があるのでありまして、少しでも正しい優良醫藥品生産の確保をはかるためにも、十分な成果をあげたいと思つておるのであります。ただいままでにやりましたこと全國のいわゆる行政地區ごとに打合會を開きまして、そうしてこの取締りの趣旨竝びにその實施についての指示をいたしまして、各府縣には厚生省から擔當官を派遣して、地方廳と協力いたしましてこの取締りを實施中でありますことは、ただいまの武藤委員の仰せの通りであります。ただ豫定といたしましては、その運動の成果が十二月になつて全國總括的にできあがる見込みでありますので、全國的集計はその結果をまちまして、しかもその各結果のそれぞれを十分周到に檢討いたしまして、そうして初めて今後の對策を立てるということに相なりますので、ただいま御要求のありましたように、本議會中に何らかの集計という御注文でありますと、あるいは全國的な結果を申し上げることができないかもしれません。あるいは局部的なことになるかもしれませんが、何らか的確なものをこの委員會において御報告申し上げるようにいたします。なおこの取締りは一時的のものではないのでありまして、常時これを實施することが當然必要であります。いわゆる龍頭蛇尾に終りませんためにも、このことはますます強化されることが必要であります。ただ今までこの地方の査察の状況から見ますと、人員の點におきましても、經費の點におきましても不足であります。そのことがつまり強力な實施に重大な支障を來しておるというような現状でありますので、厚生省といたしましても、來年度の豫算にはこの經費を要求する所存であります。なおペニシリンあるいはスルフアミン劑とか細菌製劑というような重要醫藥品につきましては、これは國家檢定を實施いたしております。そうして品質の優良なものを確保するような努力を拂つておる次第であります。一應總括的な不良醫藥品取締りの方針だけを申し上げまして、詳しいお答えは次の機會竝びに御要求通り文書をもつていたします。
#18
○田中委員長代理 野本君。
#19
○野本委員 時間がたいへん遲れておりますから、きわめて簡單にお伺いいたしたいと思います。日本醫寮團の解散に伴いまして、日本醫療團で經營しておりましたところの各地の病院をどのように處置すべきであるかということにつきましては、厚生當局も深く考えるところがあるようであります。またどのように處理せられるであろうかということは、關係地方民といたしましては、重大な關心事になつておるわけであります。醫療團の經營しておりました病院が適正妥當に處置されて、その活用の上において遺憾なきを期することができるかどうかということは、國民醫療の立場から見まして、きわめて重大な問題であろうと思うのであります。私は一問一答の形でお伺いしたいと思うのでありますが、時間を省略する關係上、次の三つの點を一括してお伺いいたしますから、當局の御答辯をお願いしたいと思います。
 その一つは醫療團の經營しておりました病院を處分する處分の一般方針、二番目はこの處分ときわめて密接な重大な關係をもつております評價基準というようなことにつきまして、どのように考えられておるか。三番目は地方的な問題でありますが、群馬縣の伊勢崎市に、日本醫療團の伊勢崎病院がございます。これが地方の統合的醫療機關といたしまして、地方の醫療に貢獻しておりましたことは、私どもこれを確認しておるところであります。ところが今度醫療團の解散にあたりまして、伊勢崎市及び伊勢崎市を取巻く佐波郡十三箇町村の人たちは熱心にこれが拂下げを要望し、拂下げの上は地方における中心の醫療機關とし、各町村にはそれぞれ公的醫療施設を講じて、地方民醫療の萬全を期そうとする熱意をもつております。このことについては、東醫務局長はすでに御承知のことであるはずでありますが、現在その問題につきまして、どのようにお考えになつておられますか。以上三點につきまして御囘答を願いたいのであります。
#20
○東政府委員 醫療團の解散に伴いまして、その一般病院の處理の方針でありますが、仰せの通り醫療團の解散後の病院の處理は非常に大きな重要な問題ありますので、その方針につきましては、醫療制度審議會に諮問せられまして、そうして醫療制度審議會におきましては小委員會を設けまして、十分これを檢討いたしました結果、その一般處理方針というものを決定して、すでに發表いたしております。簡單に申し上げますと、醫療團の一般病院にもいろいろな種類のものがあり、またその財産權と申しますか、についてもいろいろなものがあるのでありまして、まずこれらのものをば一々檢討いたしまして、その結果純粹に醫療團の財産として醫療團の所屬になつておりますような病院が殘るわけでありますが、それらのものにつきましてはなるべくこれを散逸と言いますか、ばらばらにしないように、そうしてまた公共的な醫療機關として繼續していくように、のみならずますます公共的な醫療機關としていいものになつていくように、そういうことが處理の根本方計であります。從つてそういうふうな方針に合致するような手段といたしましては、これを國において經營いたしますか、あるいはまた府縣においてこれを一括して經營いたしますか、この二つが最も上策であるというので、府縣もしくは國においてこれを經營するということを原則として決定せられておるのであります。實際の處理につきましては、そしてまた第二の御質問にも關連するのでありますが、ただちに評價の問題が起つてまいります。これを國において引受けますにしても、あるいはまた府縣等の公共團體において引受けますにしても評價が問題になつてくるのでありますが、これにつきましては、醫療團解散とともに、ここに厚生大臣の諮問機關として清算監理委員會ができるのでありまして、これらの委員會において愼重にこれを檢討すべきものと存じております。もつとも先般厚生大臣から醫療團の施設、特に結核療養施設、なかんずく五大都市の結核療養施設の問題と關連しまして、あの解散の法律の審議の際にすでに表明せられております通り、この評價という問題については、買取つた當時のいわゆる帳簿價額をもつて、今日これをそのままの價格でもとへ讓り渡すというようなことはできない。しかしながらまた一方時價という、非常な高い値段ということでなければ處理しないというようなことも、これも考えていない。要するに無理のない價格を目標として、われわれは處理するのだという意味のことをすでにお答えになつておりますが、今日私からお答えし得ますのもその程度に止まるのでありまして、この評價の基準につきましては、一方結核療養所等を國において引受けますのも多數にございます。從つて大藏者當局とも十分なる打合せをいたしまして、國に引取るのは安くて、ほかに渡すのは高いということは、これは考えられないことでありますので――といつて、醫療團といたしましても、別に解散後これによつて利益をあげる必要もないのであります。ただしかし破産をするということは、醫療團としてははなはだ困ることでありまして、つまり破産をしないで、しかも餘分なもうけをしないというふうなことにこの清算の結果が相なりまするように、それを十分考えまして評價の基準を決定いたしたいと存じております。
 それから伊勢崎病院のことにつきましては、お話は一應伺つております。この實際の處理につきましては、一方清算人があり、清算監理委員會がございますが、各府縣においてこれを引受けるというふうな問題が今主題になつておりまするので、厚生省と府縣當局と、それから醫療團、この三者がなるべく現地において會見いたしまして、個々の施設について具體的に各方面から實情を檢討いたしまして、そうしてそのあとの引受手、あるいは運營の方式等について意思の疏通をはかりまして、その意味におきましても無理のないような解決をいたしたいと存じております。すでに機會を得まして、新潟縣、福井縣、これは兩縣とも醫療團の施設が非常に多數にある縣であります。新潟は五十以上、石川は三十以上ありますが、これらの縣につきましては、すでに厚生省から私ども参りまして、そうして今のように縣と醫療團と厚生省の三者の協議、打合せ、懇談等をいたしまして、それぞれ無事に、圓滿に話をつけつつあるような状況であります。また福井縣につきましても大體話がついておりますし、すでに府縣の方からも、厚生省が参りますまでもなく、その方針をきめておられる縣もあります。しかしながらこちらの考えといたしましては、なるべく現地において、今のような三者の懇談によつて間違いのない、そうして無理のない歸趨を見出したいと思つております。從つて群馬縣の問題につきましても、一應伊勢崎病院の話は十分伺つておりますし、またこれからも伺いますが、なおこちらといたしましては、群馬縣當局と醫療團と厚生省とで、總括的に群馬縣内全部の施設とも考え合わせまして、そうして圓滿な解決點を見出したい。さように考えております。
#21
○田中委員長代理 山崎委員。
#22
○山崎(道)委員 時間がないので、はなはだ殘念でございますが、ごく簡單に私はお伺いいたします。國立病院の問題がしばしば取上げられておられるのでございますが、この際最も國立病院こそ、施設その他において完備していただかなければならないと思つておりますときに、現在あまりにも待遇が悪いこと、施設も惠まれない等々にも起因いたすでございましようし、その上にまたいわゆる該當者の問題も起つてまいりまして、各地の國立病院にお醫者さんが不足いたしております。現在水戸とかあるいは高崎の病院におきましては、醫院長がいないというような國立病院があるのでございますが、醫院長がいないということは、すべての病院の機關が不能の状態に陷ることは局長も御承知の通りでございます。現在こういうような状態にあるのに對しまして、醫務局長といたしましてはどういうふうにお考えになつておられるか。もとより種々御研究ではございましようけれども、だからといつて一時も放置することはできない問題である。かように考えますが、このことに對しましてどのようにお考えでありましようか。今調べられておるだけでございましても、二百十名なければならないはずの國立病院の醫者が、九十六名よりいないというような現状といたしまするならば、相當の支障を來しておることは明らかでございます。患者の有料問題その他で相當刺激されておる人たちが、醫者がないということによつて、またその點の不便をも與えられておるということは、私たちといたしましてもとうてい忍びないのでございます。この醫者のないということと、もう一つ附隨いたしまして、看護婦が待遇の悪いために非常に不足いたしております。先日の委員會でも申し上げましたように、神奈川療養所のごときも、二百名いなければならないのに、現在百名よりいない。こういうことはどこにその影響が來るか。結局患者にこの影響が來るのであります。いろいろ隘路もございましようけれども、直接働いてくださる人の足りないことを、このまま放置することは許されないと私は思いますので、この點に對する局長のお考えを伺いたい。
 それからいま一つ、私も時間がございませんので續けて申し上げますが、十月二十一日の國際タイムスにこういうことが出ております。「すご文句で患者威嚇、煙草、アルコール等配給物資を横領、國立病院(兵庫縣大久保)を暴く」こういうような記事で、まことに事實こういうことがあつてはたいへんだということが載つておるのでございます。この中を一々申し上げておりますと時間がございませんので、私は非常に殘念でございますが、「ことごとに人員不足だといつて自己の職務を果さず、何よりもひどいのは結核性の患者が死亡した時などは消毒が行われず、ただ毛布を日光消毒をするくらいで、これには入院患者の間でも相當問題となつている。またときどき患者用として配給される物資があるが、病院側では患者に公表せず、祕密主義で何がどれだけ配給されているか知らさず」云々とあります。もう一つこれで見逃すことができないのは、やはりこの病院でございますが、「副院長などは患者に對して、病人は醫者にさからうと損だよ、聽診器に響くよ、などとすご文句をあびせて、立場の弱い患者を威嚇したり、また雜役婦がいないため、附添いのない患者は洗濯も皆自分でやつており、中野という患者などは死亡する前日まで自炊していた」、というようなことがこれに出ております。あとでお目にかけてもいいのですが、こういうふうに病院に人手がないということが直接患者に響いてまいりますと同時に、あまりに待遇が悪いことが悪を生むのでございまして、この悪に對しまして、私たちはただ單にこれを責めるのみでは濟まされないものがある。かように存じますので、この國立病院の待遇に對しまして、何かお考えになつておられることがありましたら、お示し願いたいと思います。
#23
○東政府委員 國立病院が醫師竝びに看護婦等醫療關係者について人員不足を來しておるということの御指摘がありましたが、これは全體といたしまして、確かに醫員、看護婦等の定員に比べますと、目下不足であります。なおその上にいろいろな事情でやむを得ず職を離れていかれる人もありますので、ますますその點について人員不足を來すような見透もございます。また今お話のありました病院長が缺けておるという病院もございます。もつともこの病院長の缺けております所につきましては、それぞれ後任を選定して手續中のものもあるのでありますが、その間といえども、院長がなくては會計經理等についても不便を來しますので、一應もよりの比較的近い、そうして一週間に何囘かでも事實院長としての職を果していただけるような、もよりの國立病院等の院長を臨時兼任にいたしまして、急場をしのいでおります。しかしながら院長の缺けました所につきましては、ただちに後任院長を選考し、あるいはすでに手續中になつておるものもありまして、これは一日も早くふさぎませんと、病院そのものの運營、殊に病院の志氣に關係することが大でありますので、この點につきましては御指摘の通り病院に對する不便のないように、至急にもつと事務を促進させるように努力いたします。この醫師が十分に得られませんことにつきましては、これはまつたく醫務局といたしましては、國立病院の關係の方面におきましては頭痛の種であります。何がゆえに醫師が得られぬかということでありますが、おそらくその大いなる原因の一つは、今仰せの通り待遇がよろしくない。つまり生活を十分に保障されるだけの物質的のものが與えられていないということが、これは確かに大きな原因であります。なおしかしながらそのほかに若い醫者にとりましては、さような給與以外に若い人の研究心と申しますか、あるいは向學心と申しますか、さようなものを滿たすような施設、殊に研究施設あるいはそれを指導する院長、副院長の幹部等が十分でない。つまり指導者と研究の設備がないということが、若い人をひつけ得いということもあげられております。いずれもこれは御指摘の通りでありまして、ただしかしながら給與の點につきましては公務員でありますので、一定の俸給等の基準に束縛せられて、非常に不自由なわく内におります。しかしながら醫師というものが特殊の技術官であるという意味で、でき得る限り俸給を高くすると同時に、もう一つは俸給以外におきましても、今の研究等のために相當の援助、補助をいたし得るようにと、そういうふうな形で、豫算等につきましても折衝をいたしております。しかしながらいずれわれわれの要求が通りましたとしても、これと同年輩、同經歴の國立病院以外の、殊に開業醫というふうなものに比べますと、これは問題になりません。しかしながらおそらく國立病院の醫官の方も、何もさような開業醫のような状態を考えておられるのではなく、若い間の向學心を滿足せしめ、そうしてまたとにかく生きていくに足るだけの俸給を得れば、自分の天職として國立病院において勤務してくれるという心をもつておる方が多數だと思いますので、私どもといたしましては、でき得る限りの給與の改善――これは醫師のみならず看護婦についてもしかりでありますが、給與の改善と、一方今のように給與以外の方面において、それらの人の熱意と努力、向學心等を滿足せしめるような施設をいたしたい。さようなことを現在やつておりますが、とにかく醫師の手不足看護婦の人員減というようなことから、直接療養上に支障の起りますことは繰返して申しますが、まつたくわれわれとしては頭痛の種であります。何とかして缺點を最小限度に止めたいと知惠をしぼつているのでございますが、實は今申し上げましたようなことを現在やつておるということしかお答えできないのは、はなはだ遺憾には存じますが、現状はその通りでございます。
#24
○山崎(道)委員 醫務局長の御苫心はよくわかるのでございます。豫算等において御折衝になつておるというお話でございますが、その豫算はどのくらいになつておるのでございますか、またあなた方の方だけでお苦しみにならないで、ひとつどのくらいの豫算が要る。どうしてもやらなければならないのだということをわれわれにお示しいただきますれば、われわれ厚生委員としまして豫算委員の方に請求もいたしましよう、そういうふうにして、少しでも國立病院をよいものにしていただかなければ、私たちは困るのでございます。
 それから今おつしやいました待遇だけでなく、眞に研究心、向學心に燃えてやつておられる人もあるというお話でございますが、これに對しては、そのまじめに國立病院で働ててくださるそうした崇高なる精神の人々に對しましては、私は心から敬意を表しておるのでございます。しかしながらこれらの人が何ら滿足させられないような状態におかれておる現在の施設を、そのままでは困ると思うのでございます。こういう崇高な精神ではいつておいでになつて、そうして失望して出ていく、この人たちの將來はまた恐ろしいのでございます。少くとも文化國家といたしまして生きていこうとする日本にとりましては、醫療の問題、殊に國立病院の設備等に對しましては、相當その筋でも私は理解が願える。援助がいただける。かように思いますので、せめては暗い氣持に落されておりまする國民に、安心して醫療が與えさせられるというふうにもつていく意味におきまして、國立病院の完備を私は心から希うものでございます。それといま一つ樂泉園の問題にいたしましても、國立病院の問題にいたしましても、こうした問題から待遇が悪かつたり、いろいろな點から――それでも落ちてはならないはずでありますが、悪の道に落ちていく人のことが大きく取扱われ、殊に癩病の病院に對しましては、そこで働いてくれておる神様のような職員が多數あるのでございます。この人たちは自分の一生を棒にして、そうして不幸の人たちのために仕える。この人たちに對しましてもつと私たちは感謝しなければならぬと思つておりますので、私はこの機會を利用いたしまして、この人たちが世間から一様に疑惑の目をもつて見られる。そういうためにせつかくのその人たちの精神をくじくようなことがあつてはならないと存じますので、この際私は委員會で心からそうした人たちに對しまして敬意を表したい、そうして一部にございます、ただいま申しました兵庫縣の大久保病院の實情の御調査を私はお願いいたしまして、一部の人のために多くの人が悪感情をもつて見られるということの是正もはかつていただきたい。豫算その他についてひとつお示しをこの次でもよろしゆうございますからお願いいたしたい。そしていくら困つても解決しなければなりませんから、ひとつ解決に邁進していただきたいということを強くお願いしておきます。
#25
○東政府委員 豫算の點につきましては次の機會に申し上げることにいたしますが、委員會の力強い御支持がいただければ、われわれとしても非常に意を強うするところでございます。それから國立病院の施設をよくしろというお話でございます。これはまつたく私も同感でありますし、またこの際これは、あるいは私見になるかもしれませんが、私自身國立病院というものに對して抱いております理想を一つ申し上げておきたいと思います。國立病院と申しても九十七箇所、言案は悪うございますが、ぴんからきりまであるわけでございます。これを全部一流の病院に仕上げるということは、これは理想でありますが、なかなかこれは短い時間にできることではないのでございます。しかしながらいやしくも國立病院と申しますからには、このうちのいくつかは、そうしてまたなるべく多くが、少ともその地方における第一流の病院でなくてはならない。それは施設においても人においても、すべて模範的なる病院でなければならぬ。あるいは指導的な地位になければならぬ。これも私どもの間では絶えず論じておるところでございます。特に私は日本の病院のうちでほんとうの最高峰すなわち日本におけるところの模範病院というものは、國立病院をその位置にあげたいという考えを實はもつております。すなわち日本のナンバーワンの病院は東大の病院でもなければ、京都大學の病院でもない。國立の病院でなければならぬと思いますし、實はすでにプランを立てまして、關係方面とも話合いをいたしております。大體において私どもの考えておりますことは、關係方面の方々の非常に好感をもつて迎えられるところでありまして、とにかく日本には模範と稱すべき病院が一つもないのははなはだ遺憾である。この際國立病院をもつてそういうふうな高い理想を追うことはまつたく時宜を得たものであつて、その方面に向つて十分な努力をするように、またそれについてはできるだけ後援を惜しまない。早速その具體的のプランをつくつて十分檢討しようじやないか、というところまで最近まいつております。從つて私はまず一つでも日本の最高峰、日本の模範病院というものが、國立病院の名においてできますことを、これを理想の一番第一歩といたしている次第でありまして、この實現には多大の困難も支障もあることは十分了承いたしますが、しかしながらこれはぜひ實現いたしますように、私も自分の微力をあげて努力いたしたいと存じております。
 それからただいま最後に山崎委員から仰せになりました、特に癩病療養所の職員についてでありますが、私も先ほどの武藤委員、徳田委員の御質問に對する調査の結果の報告について、きわめて淡々と事實のままを申し上げまして、不正のうかがわれるようなものにはそのままこれを申し上げました。しかしながらかような事柄は、決して癩療養職員の全部にわたる問題ではもちろんないのでありまして、きわめて少數の不幸なる地位におかれたる人々の過ちの結果でありまして、大多數の職員はほんとうに獻身的な、崇高な精神で、殊に癩病療養所等におきましては一生をまつたく俗世間とは打切つて精進している人も多數にあるのでございます。かような人々に對しまして、わずかなる人々の過ちから、全部が一種の汚名を着るようなことは、私としてはまことに堪えられないのでありまして、先ほど武藤委員からも、そいうう點については十分考えて、待遇等も考えてもらいたいという御發言に對して、内心私は非常にありがたく思つております。またただいまの御發言で、委員會においてさような意味で、醫療從業員、特に癩等困難な醫療に獻身的な努力をしている者に對する十分な認識、そしてまたその崇高なる行いと精神に對する感謝のお言葉をいただきまして、私としては一同に代りましてお禮を申し上げます。
#26
○田中委員長代理 では本日はこれで散會いたします。次會の議事日程は公報をもつてお知らせいたします。
    午後二時六分散會
ソース: 国立国会図書館
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