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1956/05/14 第26回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第026回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第15号
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1956/05/14 第26回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第026回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第15号

#1
第026回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第15号
昭和三十二年五月十四日(火曜日)
    午後一時二分開議
 出席委員
   委員長 廣瀬 正雄君
   理事 木村 文男君 理事 中山 マサ君
   理事 堀内 一雄君 理事 山下 春江君
   理事 戸叶 里子君
      臼井 莊一君    木村 俊夫君
      田中 龍夫君    辻  政信君
      保科善四郎君    眞崎 勝次君
      受田 新吉君    中井徳次郎君
 出席政府委員
        厚生事務官
        (引揚援護局
        長)      田邊 繁雄君
 委員外の出席者
        厚生事務官
        (引揚援護局
        引揚課長)   石塚 冨雄君
    ―――――――――――――
五月十一日
 海外抑留同胞救出運動等の強化拡充に関する請
 願(西村彰一君紹介)(第三〇二八号)
の審査を本委員会に付託された。
五月十一日
 海外抑留同胞救出に関する陳情書(山梨県議会
 議長米山泉)(第九二三号)
 残留邦人調査のため議員調査団派遣に関する陳
 情書(長崎県議会議長金子岩三)(第九八六
 号)
を本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 閉会中審査申出に関する件
 委員派遣承認申請に関する件
 閉会中審査小委員会設置に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 中共地区残留同胞引揚に関する件
    ―――――――――――――
#2
○廣瀬委員長 これより会議を開きます。
 初めに、閉会中の審査に関してお諮りいたします。今国会もあと数日をもって終了することになりましたので、閉会中も引き続き、国会法第四十七条の二により、継続して審査を行いたいと思うのでありまして、その旨を議長に申し出たいと思います。つきましては、閉会中審査すべき案件として、関係各般の諸問題を包括し海外同胞引揚及び遺家族援護に関する件について、閉会中の審査を議長に申し出ることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○廣瀬委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#4
○廣瀬委員長 なお、ソ連及び中共地区よりの引き揚げが近く行われますし、また各地における援護の実情調査も必要と思われますので、ただいまの閉会中の審査の件に基き、来たる二十三日に行われる中共地区よりの引き揚げの際の調査及びその他実地調査を必要とする場合におきましては、委員を派遣いたし、調査を行いたいと思いますが、その際における委員派遣の手続等に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○廣瀬委員長 御異議なきものと認
 め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○廣瀬委員長 次にお諮りいたし、ます。先に決定いたしました閉会中の審査の件に基き、案件が付託されますれば、閉会中の継続審査をいたすことになりますので、このため特に小委員会を設置して審査をいたしたいと思いますが、現在設置されております留守家族及び遺家族等援護に関する小委員会を、引き続き閉会中も閉会中の審査小委員会として設置し、小委員及び小委員長も現在通りとすることにいたし、なお、このほかに引き揚げ問題等の閉会中審査のため、海外同胞引揚に関する閉会中審査小委員会を設置し、その小委員は委員長及び理事の八名とし、小委員長は委員長が兼任いたすことに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○廣瀬委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたします。
 なお、委員の異動等によるこれら小委員の異動も起りますので、小委員の異動につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○廣瀬委員長 御異議なければ、さよう決します。
    ―――――――――――――
#9
○廣瀬委員長 次に、閉会中審査に基き、審査の必要上、参考人より事情を聴取する場合があると思われますので、この場合における参考人の招致については、すべて委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○廣瀬委員長 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 なお、参考人の選定の場合、理事に御相談申し上げるようにいたします。
#11
○廣瀬委員長 これより海外同胞引揚に関する件について調査を進めることにいたしますが、この際、来たる二十三日に舞鶴に引き揚げが行われる予定の中共地区残留同胞及び一時帰国者の帰国に関する現在までの状況及びこれに関する措置等について、政府当局より説明を求めることにいたします。厚生省引揚援護局長田邊繁雄君。
#12
○田邊政府委員 先般中国紅十字会から引揚船の配船の要望があった次第でございまして、その後、日本側の三団体と紅十字会とのたびたびの電報の応酬によりましてはっきりしました点は、今回帰還する人の範囲は、第一はいわゆる戦犯者の釈放になった方々六名、一般居留民で帰国を希望する者約百名、それからいわゆる里帰り婦人でございますが、この里帰り婦人につきましては、当初二百名ないし三百名でございましたのが、その後だんだん増加いたしまして、現在までのところ里帰り婦人の希望者数として向うから通報のあった者は、五百九十三名でございます。これに対しましては、五月十四日に塘沽着、興安丸を派遣ということを向うに打電いたしまして、本日たしか興安丸は塘沽に到着しているはずであります。これにつきましては、従来の例にならいまして、遺骨奉持団が華人の遺骨を奉持しまして向うに行っておるのであります。そのほかに戦犯者の見舞のための家族の渡航ということもあわせて実施いたし、七世帯の家族がその船に乗って向うに行っておる次第であります。そこで、里帰り婦人約六百名の者につきましては、名簿がすでに紅十字会からこちら側に到達いたしております。これを見ますと、全部成年の婦人でございまして、子供は一人も含んでおりません。電報では何も言ってきておりませんが、おそらくこれには相当数の子供も一緒に同行してくるのではないかと想像されるのであります。五百九十三名の人方につきましては、従来の例にならいまして、われわれの方で調査をいたしまして、調査した結果、向うに打電をいたしまして、その打電をした部分の方々についてのみ興安丸に乗っていただくということを、三団体から向うに電報を打っている次第でございます。現在までのところ五百九十三名のうちで、未帰還者として当方で把握している者は昨日現在二百十九名でございます。それ以外の方は、当方において未帰還者として把握しているのと完全に一致するということが確認されない人でありまして、そういう方々が果して日本の籍を持っている婦人であるか、あるいは里帰り婦人としての適格性を持っている方々であるかどうかについては、都道府県を通じまして、それぞれの訪問先世帯について調査いたしまして、その事実を確認した上で向うに電報を打っていただきたいと思って、目下作業を急いでおります。一両日中に全国から調査の結果が集まるものと存じております。なお、中共の紅十字会からの電報では、里帰り婦人の中には、華僑送還で帰った婦人も含まれておる、そうしてこれらの婦人の夫も今度の興安丸で里帰りとして同行して帰ってこようとしておる、こういう電報が参っております。私どもの考えといたしましては、里帰り婦人の取扱いについては、天津におきます昨年六月の紅十字会と三団体との協定の中に、里帰り婦人が親族を見舞うために日本へ帰ることは認められるといったような趣旨のことが書いてありました。その点は、これらの方々の実情を考えまして、無理もないことと考えますので、興安丸が引揚船として往復しておる場合におきましては、この興安丸に便乗することを認めるという方針をとっておるわけであります。しかし、この華僑送還で、華人の妻として中国に渡った方々は、いわゆる里帰り婦人とは性質が全く違う方々でございますので、これらの方々が成規の手続を経て日本に来られて、親族訪問をしてまた中国に帰られることは、これはもちろん問題のないところでございますが、興安丸に乗って往復されるということは、一般の引揚船というもの並びに里帰り婦人という実情を考えましたときに、それ以外の者として、そこに一線を画すべきものであるという考えから、私の方では今度の興安丸に乗ってお帰りになることにつきましては、御遠慮していただくことが当然の筋じゃないか、こう考えまして、紅十字会に対しまして、そういった電報を打つように三団体側に要請をいたしておるわけでございます。先般、里帰りとして帰られた婦人の中には、あとで調べてみますと、いわゆる里帰りでない、先ほど申し上げましたような婦人も入っておったようでございましたが、これは当初私の方では、そういった方々は当然入っていないものと考えておったのでございます。ところが、舞鶴へ来てみますとると、そういう方々が入っておるということでございますので、来た以上はしようがありませんので、そのまま受け入れて処置いたしましたけれども、今回は向うもはっきりそれを仕分けして書いてきておりまするし、私どもの方でも前回の例によってそういうことが確認されておりますので、今度ははっきりしていった方がいいと思いまして、一般の里帰り婦人とは違って取り扱う、従って、その取扱いについては、興安丸に当然乗船できるという考えはどうかと思う、今度の興安丸には乗船することを御遠慮願いたいという趣旨の電報を打つようにいたしておるのでございます。なお、これらの婦人と同行しようとしているという中国人につきましては、入国管理上許可の手続が必要でございますし、興安丸に乗船するという問題とは別個に、入国の許可ということが伴わない限り、日本に入国ができないわけでございますので、その趣旨を明らかにしておく必要があると考えまして、厚生省の関係ではございませんが、三団体の方から向うにその事実を知らすように打ち合せしていただきたいと考えます。
 今日までのところ、大体そういった経過に相なっております。
#13
○廣瀬委員長 本件についての質疑を許します。戸叶里子君。
#14
○戸叶委員 念のために数字の点で伺いたいのですけれども、五百九十三人、大体六百人の里帰りの方たちの名簿が来た。そうして、その方たちがお子さんを連れていらっしゃるし、あるいはまた中国人の夫もいるらしい。そうなってきますと、この六百人のほかに子供さんと中国人の夫がいるというふうにお考えになるわけですか。もしそうだとすると、大体その方たちは何人ぐらいと想定されているわけですか。
#15
○田邊政府委員 ただいまお考えの通りでございます。五百九十三人は日本婦人の氏名だけでございます。この中には先ほど申し上げました通り、純粋の里帰りではなしに、終戦後華人の妻として向うに渡航した人も含んでいると思いますが、その氏名及び人数は、今のところはっきりいたしません。目下調査中でございます。なお、子供はここに入っておりませんで、人数ははっきりいたしません。向うから何も言ってきておりません。また、終戦後航渡した日本婦人の夫ですね、今回渡航しようとしているという夫の氏名及び人数も、向うから何も言ってきておりません。従来の例によりますと、子供は一世帯について一人ちょっとということになるのでございますが、六百人ということになりますと、少くとも六百人以上の子供が渡航してくるのではないか、こう考えられます。
#16
○戸叶委員 そうすると、その子供さんたちはお母さんと一緒に来たということで、当然入国が許されるわけですか。
#17
○田邊政府委員 子供は、従来の例によりまして、入国が許可されることになると思います。
#18
○戸叶委員 今この六百人近い方たちが、未帰還者としての適格者であるかどうかを調査中であるということで、大体三百十九名がおわかりになったそうですが、あと今お調べになっていらっしゃるということですけれども、もうすぐ船が日本に帰ってくる予定になっているわけです。それまでにおわかりになるわけですか。
#19
○田邊政府委員 興安丸が本日向うに到着いたしまして、四日間滞在して、十九日に向うを出発して帰ることになっております。日本側の調査はすでに各府県に名簿を発送してございまして、届いているはずでございます。それに基いて各県別にその名簿ができておりますので、各県で急いで調査していただきますれば、一両日中に回答が全国から集まって参りますので、それに基きまして回答を向うに電報でいたしますれば、従来大てい間に合っておりますので、間に合うと思います。もちろんその場合、許可が向うにいかない者も従来の例によってあるわけでございます。一両日中に、全国の各府県から調査の結果が私の方に出ることになっております。
#20
○戸叶委員 未帰還者として扱えないというような例、それは大体どういうのをおっしゃるわけですか。
#21
○田邊政府委員 この未帰還者として私の方で把握しているというのは、留守家族から届出がある方々が、何の何がしという方が中共地区において未帰還者となっているということが登録されているわけであります。向うから来た名簿によりますと、その名前が完全に一致する者は問題がないわけでありますが、向うにいる方が旧姓を名乗っているとかなんとかいうことで、私の方の名簿に該当するかどうかはっきりしない方があるわけでございます。おそらくは、この名籍に載っている人の中には、若干ないし相当数あろうと思われますが、確認するまでに至っていない。こういう方々があります。それから、私どもの方の未帰還者に登録されてない方であって、今度里帰りしたいという方もおありじゃないかと思う。というのは、その方々の家族が内地にいないというような場合、またあっても、もうその関係が非常に疎遠であるために、家族が未帰還者として賢録をしないでおるという方も、従来の例によると相当あるのじゃないかと思います。こういう方々は、先ほどの調査によって、渡航先等を調査してみますと、事実が確認されるわけでありますし、本籍等もわかるわけでございますから、それによって向うに回答して参りたい、こう考えております。
#22
○戸叶委員 戦争中のごたごたで、こちらの方に名簿がなかったりしても、当然未帰還者に該当するような人もいると思いますので、こういう点はよく御考慮を願いたいと思います。
 そこで、念のために伺っておきますが、未帰還者の方には、未帰還者としての待遇をなさるわけでございますね。この前の里帰りのときにはそれがなかったように思いますけれども、この点はいかがでございますか。
#23
○田邊政府委員 未帰還者としての待遇は、未帰還者である以上はいたすのでございますが、これは引揚者ではございませんから――引揚者と申しますのは、永住の目的を持って日本に帰ってくるというのが引揚者でございまして、言葉は悪うございまするが、引揚者と旅行者に分ければ、これは旅行者の部類に属する方々でございます。何となれば、向うを出て一定期間内地に滞在して、親族等を見舞った上でさらに向うに帰るという方々でございますので、形式から申しましても、紅十字会の中国側としても引揚者としての扱いをせずに、いわゆる旅行者と申しますか、そういった範疇で扱っておるのでございます。これらの方の受け入れに当りましては、本来の引揚者との違いはやむを得ないところでありまして、引揚者に対すると全く同様の処遇をするということは考えておらないのでありますが、実情に応じましてそれぞれの処置をして、それぞれの訪問先に行くことができるように処置をしたいと考えております。
 なお、先ほど申し上げましたが、里帰り婦人というのは、終戦時以降一度も内地へ帰ってきたことのない人というふうに当、えております。しかし、終戦後向うに渡航した者、あるいは一般引揚者として帰ってきて、それから華人送還で向うに行った人というのも実はあるわけでございます。帰るときは日本婦人で向うに行くときは華人の奥さん、従って華人、こういうことで行っておる方も多いのでございますので、こういった方々はこの里帰り婦人とは区別して取扱っていきたい、こう考えております。
#24
○戸叶委員 実情に応じて適当な処置をとるというふうなお答えでありましたが、そのことは結局、この引揚者に準ずるような扱いをなさるというふうに考えてよろしゅうございますか。処遇の問題です。
#25
○田邊政府委員 舞鶴の引揚援護局へ泊ることができるかどうか、泊ったときに給食するかどうかという問題でございますが、これは従来の例によりましても、なるべく早く舞鶴援護局からそれぞれの家郷にお帰りいただくようお願いしているわけでございます。遠い方々等につきましては、汽車の便等もございまして、その日のうちに帰ることが困難な方が相当ございます。こういう方々は舞鶴援護局にお泊りをいただく、それぞれの宿泊に伴ういろいろのお世話を申し上げるわけでございます。また帰る場合の旅費等につきましても、お金を持っておらない方もおられますので、そういった方々につきましては旅費を政府から援助いたしまして、それぞれの家郷にお帰りになるようにお世話を申し上げておるのでございます。
#26
○戸叶委員 そこで、問題になりました今度帰ってこられる婦人の中に、華僑送還の人のところへ妻となって行ったその方が入っているかもしれないというお話でございましたが、こういう方たちはこの六百人の中にはいないわけですね。
#27
○田邊政府委員 そうじゃございませんので、六百人の里帰り婦人の中にはそういう方も含まれておる、こういう言い方をしておりますので、六百人の名簿の中で、目下調査中でございまするが、私の方で未帰還者調査で調べたところによりましても、いつ何日興安丸で華僑について向うに行かれた方があるということが確認されております。これは全体的には全部調査してみればわかりますので、お話のような外ワクじゃございませんで、六百人の中に入っておるのでございます。
#28
○戸叶委員 そういう人を入れていいかどうかということに対して、紅十字会から日本に対してどういうふうな電報が来たかを伺いたい。
#29
○田邊政府委員 こういうふうな言い方をしております。今回里帰りする婦人は約六百人であって、名簿はすでに航空便で発送いたしました。里帰り婦人の一部は、帰国した帰国華僑の日本籍の妻子であります。彼女らの夫も同行しようとしております。こういう電報でございます。従来はこういうことを言ってこなかったのでございますが、今回ははっきり、里帰り婦人の中にはこういう人が入っておるのだということをわざわざ向うから言ってきたわけでございます。この前はこういうことを言ってこなかったのでございまして、私どもはこういうものはないと考えておったのでございますが、事実あったわけであります。今回は向うからはっきりこういうことを言って参りまするし、私どもの方でも前回の例によって気がついておるのでございますので、これは一線を画すべきである、こういう考えを私どもの方で持って、目下その点について中国紅十字会に、少くとも政府の方針は明らかに伝えるべきであるということで、三団体から電報を打っていただくように要望しておるわけであります。
#30
○戸叶委員 三団体のお話はまとまったのですか。
#31
○田邊政府委員 政府の方針がそうであるという事実はわかっておるようでございまするが、それに対していろいろ意見を持っておる向きもあるようでございます。政府の方針がもっともだという考えを持っている人もあるようでございますが、どうも政府の方針はかた苦しい、おおらかに何でも乗せたらいいじゃないか、こういうお考えの方もあるようであります。まだ完全に意見が一致したという報告は見ておりませんが、何らかの形で政府の方針を向うに伝えるということだけはぜひやっていただかなければならぬ、こう考えております。
#32
○戸叶委員 何でもかんでも乗せるということはどうかと思うのですけれども、一応日本の籍を持っているというような婦人が日本に来た場合に、この人たちの上陸を拒む理由はないし、また拒むことはできないのじゃないかと思うのですが、このことはいかがですか。
#33
○田邊政府委員 お話の通りでございます。そのことと興安丸に乗るかどうかということは別問題でございまして、たしか天津協定がああいうふうな形でできておりましても、その後紅十字会におきましては、里帰りの具体的の婦人について興安丸に無料で乗船さしていただけるかということを別に聞いて来ております。これにつきまして、無料で乗船させますということを日本側から電報を打っておるわけでございます。従って、入国管理上、日本婦人であるから当然入国さすべきではないかという点は御説の通りでございますが、もちろん法律形式上そういうふうにならねばならないわけでございますが、もっと実体的に申しますれば、行くときには中国人で行ったのでございまして、帰るときには日本婦人ということは、入国管理上ちょっとおかしいと思うのですが、まあそういう取扱いになっております。しかし、そのことと興安丸に無料で乗船できるかという問題は切り離して考えるべきものであろうと存じております。
#34
○戸叶委員 もしもそういう人たちが来ても、政府としては上陸を拒むことはできませんですね。このことだけは念のために一応伺っておきたいのです。
#35
○田邊政府委員 そういうことは予想したくないのでございますが、入団を拒否するということは、入国管理法の建前上むずかしいのではないかと思っております。これは入国管理法の解釈の問題でございまするが、今日までのところの私どもの承知しておるところによれば、従来の例によれば、そういうことではないかと考えております。
#36
○戸叶委員 その点はそれではっきりしたわけですが、私どもは、そういうふうな方がいらしても、それほどたくさんあるわけじゃないと思うのです。ですから、一応日本の国籍を持った人に対して、日本に上陸してはいけないというふうな返事を出すということに対しては、もう一度考え直していただきたい、こういうふうに考えるわけでございますけれども、田邊局長はどんなふうにお考えになりますでしょうか。
#37
○田邊政府委員 戸叶先生の言葉は、まあそういう窮屈に考えないでいいだろう、少しくらいのことなら、おまけしておいたらいいじゃないかというお気持から出た御質問だと思いますが、しかし、筋から申しますれば、これは自由往来の船ではないのでございまして、国費をもってまかなっておるところの帰還輸送船でございますので、これに無料で乗船するということには、それぞれの理由がなければならないと思うのであります。援護の限界と申しますか、こういう点はやはりはっきりしませんと、締めくくりがつかないことになるのではないか。理論的に申しまするならば、そういった方方に援護の手を差し伸べるならば、それ以外の人に提供しないという理屈はないではないか、こういうことにも発展してくるわけであります。やはり政府としては筋を通し、帰還輸送船は帰還輸送船としての建前は堅持していくべきではなかろうかということは、当然なさなければならぬ。これはひとり厚生省だけの問題ではございませんので、運輸省も関係しております。それから大蔵省も関係しております。それから国会の審議を経ました予算におきましても、そういう建前で予算が計上されているわけでございます。食費もかかるわけでございます。また帰る人数が多くなればなるほど、用船料も実は高くなるのでございまして、貨物のようにあいているから乗せればいいじゃないかという簡単な考え方では、経費の面からも考えるわけにはいかないし、また今後いろいろの問題が中国との間にこういった関係で発生すると思うのでございます。帰還輸送船には帰還輸送船としての使命があり、限度があるわけでございますので、やはりこの点ははっきりした立場でいく、また少くともそういった立場であるということを、紅十字会にもはっきり認識していただいて、こういった問題はこういつた問題として別途に処置していくのが、当然の筋ではないかと考えております。
#38
○戸叶委員 局長のお考えはわかったわけですけれども、しかし、船が一応行って、そしてこちらへ来るという便があるわけでありまして、華僑送還の妻として行ったけれども、やはり何かと連絡のことがあったり、また一時帰国者と同じような願いでちょっと帰ってくるというような気持で帰ってくる人もあるのです。そういうふうな点から考えてみれば、何もその人たちだけいけないということを、同じ日本の国籍がある人たち・に対して言うのは、ちょっとどうかと思うのであって、やはり同じように取扱いをしてあげても、これは自由往復ということにはならない、こういうふうに考えるのですけれども、そういうふうな考慮を払って、御連絡をしていただきたいということを私は希望いたします。
#39
○田邊政府委員 向うに行くときは華人だという建前で行くわけですね。帰るときには日本籍を持っている婦人だということで、使い分けをして来るのです。これは政府側も態度をはっきりしなければいけませんが、両方の使い分けをして、両方とも興安丸で行き来ということはいかがなものであろう、こういう点が一点であります。それから、ついでがあるからどうこうという問題もございますが、やはり中国との関係におきましては、便船が全然ないわけじゃないのでございます。香港経由もございますれば、天津から来る船の場合においては、貨客船に便乗するチャンスもあるわけでございますので、こうした方々は、それらの便船を利用なさるのが筋ではないか、しかもこの方々は、一たん日本にお帰りになって、また向うにお帰りになる。向うに行ってごらんになったのが、いろいろの事情で日本に帰ってこなければならぬという必然の理由があるということは考えられない。一たん来て、また向うにお帰りになるので、私はいろいろの情勢を判断いたしまして、やはりはっきりしなければならぬことははっきりしなければならぬ。できるだけの便宜は提供し、あまりかた苦しいことはやらないつもりでありますけれども、やはり引くべき線は引いていくのが今後のためになるのではないか、こういう考え方を持っておるわけであります。
#40
○戸叶委員 その点のお考え方が、田邊局長と違うわけです。あともう少し伺いたいことがありますけれども、山下委員も御希望のようでありますから、一応この程度で行ち切りまして、あとからまた述べさせていただきます。
#41
○廣瀬委員長 山下春江君。
#42
○山下(春)委員 私、質問の前に、ちょっと忘れたので再確認したいのですが、興安丸の往復に要する費用はどれだけかかって、どういう費目から出ておるかということをお知らせ願いたい。
#43
○田邊政府委員 興安丸は、舞鶴を出港して向うに到着して、内地に帰って参りますまで、出発、到着を入れて前後六日間でありまして、停船料、入港料など合計いたしますと、一航海千四百万円要るわけで、これは運輸省の予算から支出せられるわけであります。そのほか、引揚者の食費その他医者等の手当は別でございます。船が行くだけで千四百万円要るわけであります。
#44
○山下(春)委員 一航海千四百万円かかります興安丸を運航しているというその目的は、人道上から出たことでありまして、その人道上から出た根源は、今日なお多少自己の意思をもって帰ることのできない、いわゆる戦犯と称される者がありますけれども、もう大部分そういうようなものが終りましても、過般李徳全女史が来られたときに、四千九百名の日本の青年婦女子が、やむなき事情によって中国人と結婚しておる。しかし、それが十二年たって、一ぺん祖国が見たいというその気持、その心情をわれわれは察しまして、これも非常な大きな戦争犠牲者であるという立場から、この問題に対して国があとう限りの援助をして、その気持を達成させてあげたいという親心から出たことでありましたが、今回のこの船に乗られようとする方々に対しましては、私どもは非常な疑問を持つておりまして、その点は、今、戸叶委員の御質問と私は非常に趣きを異にするのであります。約六百人の中で二百十九人だけが完全に未帰還者としてのいろいろな調査で把握しておる、なお調査中だということでありますから、かりに半分の三百名がそれの該当者であるとしても、三百名はその該当者でないという、この船に対しまして政府のいろいろの御配慮はわかりますけれども、本日塘沽に到着したであろうというその船が出ます前に、これらの問題はもう少し――十四日に到着するように寄こせ、はいはいといって飛び出さないで、もっと厳重な調査及び三団体を通じての御折衝があってしかるべきではなかったかと考えられるのでございます。新聞の伝えるところによりますと、浜松事件の該当者である洪進山君が再びこれに乗ってくるかもしれないというような報道を見かけたのでありますが、万一そういうことでもありますれば、一体この船の使命、性格というものはどういうことになりますか。私どもはこういう問題に対して非常に心配をいたしますが、万一それが乗っていたような場合には、どういう御処置をなさろうとしておるのでありましょうか。
#45
○田邊政府委員 従来の例から申しましても、また筋合いから申しましても、帰還輸送船に乗るべき人の範囲というのは、おのずからきまっております。それ以外の人を乗せる場合においては、必ず紅十字会が事前に日本側の了解を得ておるのが従来の例であります。ただいまお示しの例につきましても、もしも乗せてもらいたいという問題があるならば、日本の入国管理上の問題でありますので、当然事前にこちらの方の気持を照会してくるのが筋であります。そうでなければ、あとでトラブルが起ることは必然でございますので、そういったトラブルを避けていきたいというのはお互いの共通の一致した希望でございますので、そういうことは万々あるまいと考えております。まず入国管理の問題を解決した上でなければ――興安丸に乗船するということも問題でございますが、その前に入国管理の問題がある、こう考えます。
#46
○山下(春)委員 先ほどから局長がるる戸叶委員に対する御答弁の内容で、その心がまえは私もよくわかっておりますけれども、しかしながら、今回この六百名が、かりにこれまでの例のごとく平均二人のお子さんを連れてくるとすれば千二百人、それは予想外にやっぱり混乱を起すと私は思います。とても大ていな、大まかな扱いをもってこの問題を処理するということは、非常に困難だと思うような想像がされてならないのであります。そのことに対して戸叶委員が、なるべくめんどうなことを言わないで、日本籍にある婦人じゃないかということですが、局長御答弁のように、これは一応華人として出国したのでございますから、興安丸に乗るということはいかにそういう便船があったといえども、筋が通らない話であります。そういう筋が通らないことを、私どもこの委員会があたかもバックしているような形になって、だらだら何年も続けておるということには、私は大へんな異議があります。それは中国紅十字会においても、そんな筋の通らないことを日本国に押しつけるということは、はなはだもって不都合だと考えます。その点に対して、打ったであろうというようなことでなく、そういう不明確な人は乗船をしていただいては困るのだ、それはかねがねの北京協定によっても、そういうことはないではないかというはっきりした態度で電報を打つように慫慂なされたでしょうか、それとも打ったであろうという程度でございましょうか。
#47
○田邊政府委員 この点につきましては、実は私、この前の里帰り帰人の中にこういった方々があるということは知らなかったのでございます。今回向うがこういうことを聞いてきておりますので、これが初めてだろうと思って調べてみましたら、この前もあったということでございます。従って、この前からそういうことがあったということでございますならば、里帰り婦人ということを言ったときに、すぐそういうものは含まれるということを言ってくるべきだと思っておりますが、その点については、山下委員の発言の通りであります。しかし、気がついたときにはおそかったという点はごもっともでありますが、向うからはっきり帰していいと言ってきておるわけであります。そこで私どもは、日赤に対しまして、それは含まれるのだということを、電報を打ってもらいたいと要望したわけであります。ところが、三団体の間におきまして意見が一致いたしませんので、三団体はこういう電報を打ったわけであります。里帰り婦人については、受領した名簿に基いて今次興安丸に乗船許可の手続を行い、その結果を明示いたします、その許可の間に合ったものだけを乗船させるようお願いします、こういう電報を打ったわけでございます。そしてこの里帰り婦人の中に入ってきておりまする、何と申しますか、終戦後渡航した者はだめだということを、はっきりはうたってないのでございます。私どもから見ますると、その点は不満足なのでございますが、別途日本赤十字社におきましては、こういう電報を打っております。日本婦人及び中国人である夫――これは終戦後渡航したという意味でございます。――終戦後渡航した日本婦人及び中国人である夫については、興安丸には乗船できないことに決定しましたので、その旨決定して下さるようお願いいたします、こういうことを赤十字単独で打ったわけであります。それに対しまして昨日の朝、三団体あてに紅十字会から電報を打ってきております。日本赤十字社の署名した今回の申し入れの日本婦人及び中国人たる夫は興、安丸に乗船を許さないという独単の電報を十一日受け取りました、まことにいぶかしく思います、三団体事務局はこれをいかに考えられるかをお尋ねします、至急御返事をお願いします、こういう電報が来ておる。昨日夕刻以来、三別体におきましては、この取扱いについていろいろ会議をしておるようでありますが、まだ意見は一致を見てないようであります。しかし、返事を出さなければならぬことでございますので、もし意見が不一致であるならば、いかなる部分について意見の不一致があるかということを明らかにしておく必要があり、また政府当局にわれわれの考えていることも伝えてもらいたい、こういうことであります。
#48
○山下(春)委員 この問題は、もう少し本委員会としては責任を持っていろいろトラブルの起らないような措置を講じていきたいと思いますので、いろいろ質問もいたしたいこと等がございますので、本日は本会議が重要会議のようでもございますからこの程度にいたしまして、委員長において至急委員会を再開されまして、この問題の究明をさせていただくことにお願いいたします。
#49
○廣瀬委員長 本日はこの程度にいたしたいと思います。なお、次会は明十九日、午後零時三十分より開会することにいたします。これにて散会いたします。
 午後一時四十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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