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1956/11/17 第25回国会 参議院 参議院会議録情報 第025回国会 本会議 第5号
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1956/11/17 第25回国会 参議院

参議院会議録情報 第025回国会 本会議 第5号

#1
第025回国会 本会議 第5号
昭和三十一年十一月十七日(土曜日)
   午前十時二十六分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和三十一年十一月十七日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
  (第二日)
 第二 参議院法制局長の辞任に関
  する件
    ―――――――――――――
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 この際、日程の順序を変更して、日程第一をあとに回し、日程第二を議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 日程第二、参議院法制局長の辞任
  に関する件
 昨日、本院法制局長奥野健一君から、法制局長を辞任いたしたい旨の申し出がございました。法制局長の任免は、議長が議院の承認を得て行うことになっております。
 本院法制局長奥野健一君の辞任を承認することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 よって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#6
○議長(松野鶴平君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)
 昨日の演説に対し、これより順次質疑を許します。野村吉三郎君。
  〔野村吉三郎君登壇、拍手〕
#7
○野村吉三郎君 自民党を代表しまして、鳩山総理大臣に若干の質問をいたしたく存じます。
 質問は、国の安全に関する問題でありまして、古い言葉を引用すれば、まさに国の大事、死生の地、存亡の道とあるのに該当すると思いますから、率直に国民の全部がわかるようなお答えを切望いたします。
 鳩山総理が全権として、河野、松本両全権以下随員を伴い、長途モスコーにおいでになり、日ソ交渉に御自分で当られたことは、その御労苦は多とし、深く敬意を表するものであります。
 日ソ交渉により、両国戦争状態の終了、外交及び領事関係の回復、国際連合憲章の諸原則、なかんずく同憲章第二条に掲げる次の原則を指針とすることの確認、すなわち国際紛争の平和的解決、いかなる国の領土保全、政治的独立に対しても、武力をもっておどすということ、武力を行使するということは慎しむということ、国際連合憲章にある個別的、集団的自衛の固有の権利を有することの確認、直接間接に他国の国内事項に干渉しない約束、国際連合への日本の加入に関する支持、抑留邦人の送還、漁業条約の発効等、こういう問題は、日本として受諾してしかるべきものと考えます。日本に対してもいろいろ利益があり、国際平和に寄与するもりと考えます。特に個別的、集団的自衛の固有の権利を認めたことは、かつてサンフランシスコにおいて先方がとった態度に比べて一段の進展と認められます。
 日本は自主独立であらねばなりませんが、しかし日本の自衛力が薄弱なるゆえに、かつは現在の不安定なる世界情勢のもとでは、集団保障により国の安全を保つ政策をとらねばならぬ。日米安全保障条約のごときもその一例である。わが政府はこの方針により、その効果を上げて、日本は、朝鮮戦争やヴェトナム戦争のようなことが日本に起らず、過去十一年間よく国の平和を保ち得たことだと思っております。また、根室海峡、津軽海峡、対馬海峡、そういう海峡の独占的航行権の要求も削除されたことは、まことにけっこうだと思います。何となれば、これらは直ちに国の安全に影響する大問題であるからであります。なお、他国の国内事情に干渉しない約束、これを取りつけた以上は、その実現について、わが方において十二分の考慮を払われ、国内治安の確保において施政上万違算なきようおやりになることと確信しております。
 一九五〇年二月、これは朝鮮事変が起った年の二月でありますが、モスコーで調印された中ソ同盟条約、この第一条には、日本国及び直接間接に日本国と結びついておる国の侵略行為に対して、並びに平和の侵害を防止するために、中ソ両国が必要なる措置を共同してとるというこの第一条でありますが、これには日本と明らかに載せておるのであります。日本と明示しておるのでありまするが、この武力同盟は、今度の協定、すなわち極東の平和及び安全のための理解と協力という点をうたっておりますし、また、鳩山さんがかねてからおっしゃっておる友愛精神にも矛盾するように思うでのありまするが、これについて先方でどういうお話があったか、それを伺いたいのであります。
 なお、あらゆる層と親善を保つは当然でありますが、外交の基本は、これを堅持することによって自国は動揺せず、かつ世界各国の信頼をも得るものと思っております。過ぐる太平洋戦の前には、ずいぶん革新的と申してよいような外交をやり、新秩序などを唱えて、ついに多数の敵をこしらえ、乾坤一擲の大戦争になり、苦き経験をなめたということにかんがみましても、日本は日ソ復交後も左支右吾することなく、動揺してはならない。あまり国民の人気のみを気にして、従来の諸条約を軽視し、あまり革新的方面にのみ走っては、在来の諸友邦を離すようなことにならぬとも限りません。(拍手)時代の変化によって調整はもとより必要だと思いますが、この際、総理大臣より、その御所信を伺いたいのであります。
 次に、今度の協定によって、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意しております。わが党は、最も重きを置いたのは領土問題でありますが、これによって継続交渉になると、政府要路よりすでに説明がありましたが、しかし領土に関しては、歯舞、色丹が平和条約締結された後に現実に引き渡されるものとのみ明記されておるだけでありまして、その他領土の継続審議につきましては、一般に不安の念を持っておるということはおおうべからざる事実であります。わが党は、領土問題はサンフランシスコ条約のワク内で処理する。そうして歯舞、色丹とともに、国後、択捉は日本固有の領土であるという主張を堅持して今度の交渉に当り、日本国の主権が完全に回復せられることについて、引き続き日ソ両国間で協議することを方針としておるのであります。さらにまた、サンフランシスコ条約を調印した諸国政府の中でも、こういう公表をしておるものもあるのであります。歴史上の事実を注意深く検討したるところ、択捉、国後は北海道の一部たる歯舞、色丹とともに常に日本固有の領土の一部である。そうして正義の上から日本の主権のもとにあったと承認さるべきものとの結論に達した。ソ連がこれに同意すれば、極東の緊張を減少するのに積極的に貢献するであろうというようなことも発表しております。
 なお、またソ連は、一九四二年一月一日、これは真珠湾戦争があってから一カ月以内のときでありますが、ワシントンの列国の共同宣言がありましたが、これにソ連の代表者が参加して、領土の増大を求めないことを約束しておる次第もありますし、従って択捉、国後の占領は、その他の領土とともに今日占領されておりますが、これは軍事占領の継続と認めるが、総理大臣は、この継続審議について、先方と交渉したるところを伺いたいのであります。
 領土は、われわれは国民として祖先から受け継ぎ、これを子孫に渡すべきものでありまして、わが民族の生命と思っております。御交渉の内容を承わりたいのであります。今日、国際情勢は急激に変化を来たしつつある。簡単に固有領土を放棄し、一時の安をむさぼるごときどきにあらずと思います。御交渉の内容いかんにより、議会は国民のためも十分善処すべき義務があると感じております。
 お尋ねしたい点は、要するに三点であります。わが国を名乗って仮想敵国とする中ソ同盟条約は、日ソ両国が今日志としておるところの極東の平和及び安全のため、理解と協力を増進せんとする主義と矛盾するように思うが、これらの点について、いかにお話があったか、その様子を伺いたいのであります。
 過般の大戦争前、日本が新秩序を唱え、革新的というような外交をやって、在来の条約を軽視し、多数の敵を作ったこと、そうして苦き経験を得たことにかんがみて、日ソ復交により外交の基本は動揺してはならぬと思いますが、総理の所信を伺いたいのであります。なお、あわせて国内治安の維持についてもお考えを承わりたい。
 領土の継続審議は、歯舞、色丹にとどまるという疑いをもっておるものがあるのでありますが、国後、択捉等について、いかに御折衝あそばしたか、その点を率直に御答弁願いたいのであります。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(鳩山一郎君) 野村さんのただいまの御質問にお答えをいたします。
 第一の御質問は、中ソ同盟条約と今回の協定とは矛盾するように考えるが、どういう程度の交渉をしたか、それを申せということでありました。ロンドン交渉におきまして、ソ連は、中ソ条約は日本及び日本国民に向けられなものではないと説明をしております。先方でどういう話があったかということについては、ただいま申しました通り、先方では、日本及び日本人に向けられていないと、こう言っておりますが、また日ソ交渉においては、日ソの両国とも、お互いに現在諸外国との間に有する条約及び協定に基く権利義務に触れることなく交渉を進めることに同意したものであります。
 次の御質問は、日ソ国交回復により、日本の外交基本方針が動揺しないことが肝要と思うが、どう考えるかという御質問でありました。わが国が自由主義陣営の一員として、自由民主主義諸国との協力関係を国策の基調として、その上に平和外交を推進しておるということは不変の立場であります。日ソ国交の再開によりまして、このことはいささかも変るものではないのであります。
 次の御質問は、領土問題に関する御質問でございました。領土問題、特に国後、択捉の返還についての交渉の内容をお聞きになりました。今回の日ソ交渉において、わが方は、固有の領土である歯舞、色丹並びに択捉、国後の返還を要求したのでありますけれども、ソ連測は、歯舞、色丹については一定条件のもとに引き渡すが、択捉、国後については、ソ連領土として解決済みであるといって話し合いがつかなかったことは御承知の通りであります。共同宣言では、歯舞、色丹に対するわが国の完全主権が、平和条約締結ののちに回復されることは明白であるが、その他の地域の帰属は、平和条約において確定さるることとなっております。これは軍事占領の延長ではないかというようなお話がありましたけれども、共同宣言の発動によりまして、日ソ間の戦争状態は終了するのでありまして、法律上には、そのとき以降、これらの地域に対するソ連の戦時占領というものは消失したものと私は考えられます。
 領土問題の継続審議は、国民に不安を与えておるというようなお話がありましたけれども、これは政府としては、最も適当なる時期と思われる時期を選んで平和条約の交渉を行いまして、領土問題を継続審議いたし、すみやかに国民の不安を除きたい所存でございます。
 以上、答弁を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(松野鶴平君) 岡田宗司君。
  〔岡田宗司君登壇、拍手〕
#10
○岡田宗司君 鳩山総理大臣は、国会が日ソ共同宣言を承認したのちに引退すると言明されておりますけれども、他方にまた、後継総裁がきまっておらないということを理由に、鳩山総理の居すわりを策しておる者もあると言われておるのであります。総理は一体、いつ引退を表明し、これを実現するつもりであるかを、まず第一にお伺いしたいのであります。それは臨時国会の開催中に行うつもりであるか、そして次の首班指名をこの国会中に行うつもりであるかどうか、それとも臨時国会終了後辞職をして、首班指名を次の国会の劈頭に行うことを予定しておるかどうかを、まずお伺いしたいのであります。
 昨年の秋、両派社会党の合同と、それに刺激されまして行われました自民党の成立によりまして、日本の政界は、二大政党対立の時代を現出するに至ったのであります。かかる状態のもとにおいて、政府党が政権を担当する能力を失って辞職する場合、反対党に政権が渡されることが、民主主義的議会政治のルールであると私どもは確信しておるのであります。総理はその点をどうお考えになるかを承わりたいのであります。
 自民党は、衆参両院におきまして絶対多数を有し、強力であるように見えるのでありますが、天下周知のごとく、その政府の最大公約である日ソ国交回復の問題について意見が鋭く対立し、時局懇談会に属する者のうちには、公然と日ソ共同宣言に対しまして反対投票を公言する者もあり、また棄権する者も多数出るであろうということも、これまた天下周知の事実であります。これはすでに政党としての統制力を失って、事実上分裂に瀕しておるということができるのであります。しかもこれと後継総裁問題とがからみ合って、内部は全く不統一であり、一つの政党の体をなさないほど混乱しておるのであります。鳩山総理の引退後、たとえだれが後継総裁になろうとも、かかる自民党が、再び政権を担当する能力のないことは明白であります。しかも自民党に対する国民の信頼が、今日急速に失われつつあることは、最近行われました知事選挙、市長選挙におきまして、自民党が敗北をし、社会党が勝利を占めておることで明らかではないでありましょうか。(拍手)これは、国民がすでに保守政党にあきたらず、総理は、議会政治家、民主主義者として終りを全うしたいと考えるならば、政権たらい回しのごときは断じて行うべきではない、ただ一つの力ある反対党である社会党に政権を引き渡し、二大政党下における政権授受のルールを確立すべきであると思うのでありますが、鳩山総理はこの点についてどうお考えになっておるかを承わりたいのであります。(拍手)
 次に、総理に外交問題に関する所信について若干お伺いしたいのであります。日ソ交渉の問題につきまして、その内容等についての質問は羽生君に譲るといたしますが、総理が病躯をひっさげてモスコーに飛び、ついに日ソ交渉の妥結を実現されましたことに対して、社会党はその御労苦を多とし、その成果である日ソ共同宣言等を、自民党とは違って、党をあげて支持するものでございます。(拍手)しかし私どもは、なおこの問題をめぐります二、三の点について、総理の所信をただしたいのであります。
 近く日ソ国交回復が実現されることに相なるのでありますが、私は国交回復後の両国の関係につきまして、今日から考えておかなければならぬ問題があると思うのであります。すなわち昨年の秋、西独の首相アデナウアー氏がモスコーに乗り込んで、暫定協定方式によって両国間の国交を回復いたしました。その後の一年有余の間の両国の関係は、どうなっておるかと言いますというと、ドイツ人の戦犯抑留者の釈放、大使の交換、貿易の若干の増進等は行われましたが、その関係は冷たいものであり、まことによそよそしいものがあるのであります。日ソ国交回復後の関係は、かかるものであってはならないのであります。たとえ両国間の体制の相違がありましょうとも、また今回のハンガリーにおけるソ連の行動のごとく、われわれの是認し得ないものがありましょうとも、両国間の友好親善関係が打ち立てられないことはないと思うのであります。国交回復後においても、外部から日ソの間に水をさそうとするもののあることも予想されることでありますし、保守勢力、反動勢力、財界等からも、日ソの接近を喜ばないものがあろうと思うのであります。総理は、日ソ交渉をまとめるに当りまして、将来の日ソ関係は、西独とソ連との関係のようなことではなく、経済交流、文化交流、人的交流によって積極的に友好親善関係を打ち立てて行くつもりでおられるかどうか。こういうような関係を打ち立てて行くことが、将来日ソの間における領土問題の解決につきましても、十分寄与するところがあろうと思われるのでありますが、その点についての総理の御見解を承わりたいのであります。(拍手)
 次に、日ソの国交回復は、アメリカの喜ばないところでありまして、交渉の最中にもいろいろなことを言って、陰に陽に牽制を加えてきたことは周知のことであります。しかし鳩山総理は、この圧力並びにこれと歩調を合わせる国内の勢力の反対にもかかわらず、日ソ国交回復を実現したのでございます。このことは保守勢力が、好むと好まざるとにかかわらず、意識するとせざるとにかかわらず、終戦後、日本の保守勢力がとって参りましたアメリカ一辺倒の外交政策に変更を加える道を開いた、すなわち社会党が日本の独立と平和のために、従来主張してきた自主中立外交への道を開くことに相なったのであります。われわれはこの観点からいたしましても、今回の日ソ国交回復を支持するものでありますが、総理は日ソ国交回復に当って、従来のアメリカ一辺倒の外交方針に修正を加え、自主中立外交に進むことを意識して、この日ソ交渉をまとめられたのであるかどうかをお伺いしたいのであります。(拍手)
 日ソ国交回復に次いで、共産圏諸国との国交回復が日程に上ってくるものと予想されるのであります。特に日本との関係の深い中華人民共和国との国交の正常化について、今日具体的に手を打つべき時がきていると私は確信するのであります。台湾の問題は確かに難関ではございましょうが、決して乗り越えることのできないものではないのであります。要は日本の決意次第で、両国間の国交正常化の道は開けるものと私どもは確信しておるのであります。よってわが党は、このために近く具体的に手を打ちたいと思っておりますが、総理は日ソ国交回復後引き続いて、日中の国交の正常化を望ましいことと考え、これに対して何か具体的に手を打つお考えを持っておられるのかどうかを伺いたいのでございます。
 また最近の国際情勢におきまして、アジア、アアリカ・ブロックに属する国々の国際的比重が高まりつつあることは、外相の演説によっても指摘されておるところでございます。従来、日本のアメリカ一辺倒外交政策は、これらの国々から白眼視されて参っておりました。しかし日ソ国交回復は、これらの国々の日本に対する見方を変えつつあるものと私は思うのであります。今こそ日本は、賠償問題の解決、経済協力、文化交流等によりまして、一そうこれらのアジア、アフリカ・ブロックに属する国々との友好親善関係を打ち立て、日本もまたアジアの一国といたしまして、これらの国々と歩調を合わせて進むことが、世界の平和、東洋平和の確立、ひいては日本の平和の確立に大いに寄与するものと思うのでありますが、この点につきましての総理の御見解を承わりたいのでございます。(拍手)
 さらに、外相の指摘しております通り、今や世界各地におきまして、民族主義がほうはいとして台頭しておるのであります。外国軍隊が駐屯し、外国の軍事基地を持っている国々におきましては、国民は自国の独立の達成のために、外国軍隊の撤退、軍事基地の撤去を要求して立ち上っておるのであります。この例はすでにエジプト、キプロス、セイロン、アイスランド等において起っており、さらにソ連圏におきましても、今回のポーランド、ハンガリーの事例がそれを示しておるのであります。この大きな民族主義の波は、日本をもゆり動かさずにはおかないのであります。わが国におきましても、すでに国民はアメリカ軍の駐屯、アメリカの軍事基地の存在に対して無関心ではあり得なかったのであります。いな、すでに各地におきまして、このアメリカ軍の駐屯、アメリカの軍事基地に対する反対運動が強力に展開されつつあるのであります。国民のこの問題に対する心理は、一昨年、昨年と、本年とは全く違ったものになっておるのであります。政府並びに保守党の諸君は、このことに十分にお気づきになっておらないかもしれません。またこの点を過小評価しておられるかもしれません。しかし事態はすでに日本におきましても、大きく変りつつあるのであります。私はこのことを政府並びに保守党の諸君に対して、声を大にして指摘をしておきたいのでございます。(拍手)もとよりわれわれは、日本の独立と平和のために外国の軍隊の撤退とその軍事基地撤去のために戦って参りました。われわれは日米安全保障条約と行政協定廃棄のために戦っておるのでありますが、われわれと立場を異にする自由民主党といえども、現下の国際情勢、今日の日本の国民の心理の動きからいたしまして、安全保障条約並びに行政協定の改廃、駐留軍の漸次的撤退、軍事基地の縮小等につきまして、何らかの手を打つ時が来ておるのではないか、すなわちアメリカの対日政策に対して変更を求める時が来ておるのではないか、こう私どもは考えるのでございます。総理、外相は、この点についていかにお考えになるかを承わりたいのであります。また総理がモスコーに行っておられる間に、砂川におきまして、軍事基地拡張に反対する地元の農民、学生、労働者等と警官隊との間に大衝突が起り、流血の惨事が起りましたことは、総理もよもや御存じないはずはないと思うのであります。政府は、警官隊の出動を安全保障条約、行政協定に基く軍事基地拡張のためにとった事務的、行政的措置であって、正当だと強弁しております。最近このくらい国民を憤激さした事件はあったでありましょうか、国民を敵とし、これに弾圧を和えようとしたあの措置は、世論の反撃にあいまして後退はしましたけれども、これは一時的な休止にほかならないのであります。政府並びに総理大臣は、かかる措置を遺憾であったと考えないかどうか、また総理は、今アメリカ軍から要求されておる軍事基地拡張をとりあえず中止するよう、アメリカ政府、アメリカ軍に対して交渉すべきであると考えるのでありますが、その点はどうであるか、総理にお伺いしたいのでございます。(拍手)
 最後に、本臨時国会に対する政府の態度について、総理の見解をただしたいのであります。自民党並びに政府は、昨年秋の合同以来、衆議院における約三分の二の議席、参議院における約半数の絶対多数をかさに、何でもしゃにむに力で押し切れると考える態度をもって臨んできたのであります。二十四国会における小選挙区制、教育二法のごとき、その典型的な実例であると思われる。世論の強い批判にもかかわりませず、今日に至りますまで何ら反省するところなく、今国会にも、またぞろ政府は同じような強引な態度で臨んでおるのであります。すなわち、ここ数日来問題になっておりますスト規制法の延長を、委員会の審査省略をいたしまして、本会議で一挙に押し切ろうといたします態度のごときはそれであります。政府は本院におきましては、ついに委員会の審査省略を撤回せざるを得なくなったのでありますけれども、衆議院では、まだみずから進んでこれを撤回せずに、がんばっておるのであります。わずかに議長の取扱いによって、一時これが小康を得ておるにすぎないのであります。総理自身、衆議院の議院運営委員会におきまして、審査省略を撤回する意思はないと公言せられているのでありますが、これこそ議会政治、言論の政治をじゅうりんしようとするものと考えざるを得ないのでありまして、われわれは断じてこれを許すことはできないのであります。(拍手)総理は、議会政治家としてこの国会を最後に引退されようとしておられるのでありますが、ここで翻然その態度を改めまして、委員会審査省略のごときことは、今日すみやかに撤回せられたらいかがでありましょうか、この点を総理大臣にお伺いしたいのであります。
 また今国会は、日ソ共同宣言等の承認のために特別に開かれたものであることは、衆目の一致するところであります。政府は、何を好んでスト規制法の延長のために国会を混乱に陥れ、日ソ交渉妥結をすみやかに国会において承認せしめるようなことをしないのでありましょうか、私どもは自民党のスポンサーである財界によって、スト規制法が強引に押し出されてきたものと思うのでありますけれども、政府はかくのごときことを、一体財界の要求によってなしつつあるのでありましょうか。私どもは断じてかくのごときことは許せないのであります。
 鳩山首相は、日ソ交渉をまとめましたことをもって、その引退の花道としたいと考えられているようでございます。しかし引退せらるる首相に対して、もう一つ、私どもはその最後を飾っていただきたいと思う。それは何かというならば、長年にわたる議会政治家としての首相は、今日、議会政治を確立するため、すなわち言論の府であるこの国会におきまして、言論をじゅうりんするがごときことをやめて、言論の府である議会の権威を高め、さらにまた二大政党対立下における政権の授受について、新たなる道を開かれることこそ、鳩山首相がその引退の花道を飾られることであると私は思うのであります。(拍手)
 私は、首相の最後のこの国会における善処を期待いたしまして、私の演説を終りたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(鳩山一郎君) 第一の御質問は、私がいつ引退するかという御質問でございました。私は、帰って参りまして、その日かの記者会見におきまして、近く引退したいということは天下に声明いたしました。しかしいつ引退するかについては、ただいまは考慮中であります。(笑声、「だから紛糾するんだよ」「二、三年後に引退したらいいよ」と呼ぶ者あり)そういう気持はありません。(「政権のたらい回しをどうするかということだ」と呼ぶ者あり)それはこの次の質問であります。
 引退をした後に政権を社会党に譲る気があるかどうか。そういう気分がないのです。(笑声)これは引退形式によるものでありまして、鳩山内閣の延長の形式の内閣ができるならば、それはけっこうなことと思っているのです。(「それはおかしい」と呼ぶ者あり)よく考えて下さい、おかしくありません。(笑声、拍手)
 第三の御質問は、日ソの国交回復によって、アメリカ一辺倒から中立政策に移行するのではあるまいかというような御質問だと聞きましたが、アメリカ一辺倒ということは、今日でもないのです。たとえば西独とソ連との関係のようにならないようにした方がいいと、その通りであります。徐々にソ連と日本とは友好関係を確立できるように、いろいろ考えて行かなくてはなりますまい。まず第一に、貿易を増進することがとにかく必要だと考えまして、貿易に関する最恵国約款というような議定書ができたわけであります。文化の交流なども、お互いにやって行くということは非常に必要なことだと考えています。(「それはほんとうか」と呼ぶ者あり)ほんとうです。
 中共との関係についての御質問がありましたが、中共とは、ソ連と同じように国交を正常化することはむずかしい事情があるということは、たびたび私が諸君に申し上げてあります。(「アメリカ一辺倒だからむずかしいのだよ」と呼ぶ者あり)そうじゃないのです。私はいわゆる中共というものは二つの国があるような気がしておりますが、それですから、国民政府がある以上は、国交の正常化ということがソ連と同じようなことには行きませんです。
 アジア、アフリカとの関係につきましてもお話がありましたが、もちろん国際間の友好関係というものは、いずれの国を問わず成立さして行かなくてはならないということは当然な事柄であります。
 砂川の事件、あるいは軍事基地拡張についてのお話がありましたが、これら詳細のことは関係の閣僚から答弁をしてもらいます。
 スト規制法にういてのお話がありました。私がどういうような考え方をしておるのか、撤回するような意思はないかというお話がありましたが、本法が三年の期限付立法とされたのは、この三年間に労使の良識と健全な慣行が確立されますと、本法がなくても、本法に定めるような争議行為が行われなくなるということを期待したのでありますけれども、今日の実情においては、このような良識と慣行が成熟したとは遺憾ながら認められません。公共の福祉を擁護するためには、本法の存続がどうしても必要であると考えられましたので、本国会に提出した次第であります。
 右、御了承を願います。(拍手)
  〔国務大臣船田中君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(船田中君) 立川基地の拡張につきまして、十月十二日、十三日、警察官とその他の間において紛争が起りましたことはまことに遺憾に存じます。しかし立川基地は、これはわが防衛のために、最小限度の必要を満たすために、ぜひとも拡張をしなければならないのでありまして、その方針は、すでに昨年、方針と計画とがきまっておりまして、それに基きまして、今日はただ行政措置をするだけのことになっておるのであります。その行政措置をいたすにつきましては、やはり法と秩序を守ることが最も大切だと思います。従いまして、法と秩序を守らない者に対しまして、警察権が発動したということは、これはやむを得ない措置であると考えております。(拍手)この砂川の問題につきまして、これが日ソ交渉に影響を及ぼしたというようなことは絶対にないと信じておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(松野鶴平君) 廣瀬久忠君。
  〔廣瀬久忠君登壇、拍手〕
#14
○廣瀬久忠君 私は緑風会を代表いたしまして、まず総理大臣にお伺いをいたします。
 日ソ国交回復の後、わが国の国内政策はどうあるべきか、また、わが外交政策はどうあるべきかということについての根本に関する首相の所信を伺いたいのであります。
 鳩山首相は、政治家として久しきにわたって日ソ国交の調整を考えておられ、また首相としては、組閣当初から国民にこれを公約しておる。そうして今回は、その念願を文字通りみずからの手で達せられたのであります。首相は帰国の第一声において、「必ずしも十分満足すべきものではない」という、はなはだどうもデリケートな、謙虚な気持であろうかと思いますが、含みのある言葉を述べられました。しかし首相はおそらく腹の中では、大いに期するところがあったのではないかと思います。今回の首相のとってきた措置は、将来のわが国の運命に対する首相の責任というものは、きわめて大きいのであります。この大責任を果たすについては、首相は確固たる信念がなければならぬと思う。私はその信念は、これからわが国が進むべき方向を示す大きな国策でなければならないと信じます。さだめし首相の胸中には、練りに練って積み上げられた国策が首相の胸中にはあることだと存じます。昨日、首相はその所信の発表において、わが祖国とわが国民の将来のことを深くおもんぱかって、意を決して妥結の道を選んだと言うておりますが、その首相の言葉の中には、そこに必ずや首相の国策に関する抱負が含まれておると私は信じます。今は非常にいい機会です。どうかこの際、首相は率直簡明に、あなたが意を決したと言われるその国策の大綱について、ここに明示していただきたいと思います。
 次は、私は外交問題についてお伺いします。日ソ交渉妥結については国民に非常に不満があります。私はこの不満を、政府はどう考えるかということを聞きたい。それからまた、いかにこの不満に対処するかということを聞きたいのです。私は日ソ交渉の結果、国交が正常化することを希望いたします。しかし今回一応妥結いたしましたいろいろな事項については、私は多くの不満を持っておる。国民の中には私と考えを同じうする者が少くないと信ずるのでありまして、その不満を取り除くにあらざれば、真の正常化したる国交は回復せられないと思う。そこで私はあえて不満を申し述べます。そうして政府の見解をただしておきたいと思う。
 まず第一に私が不満としているのは、日本とソ連が同一の立場に立って共同して戦争状態の終了を宣言した、こういうことについて非常に不満であります。緑風会は、首相出発前に要望書を出しておる。その要望書によれば、戦争はソ連による中立条約の侵犯に基くものであるから、戦争状態終結に関する宣言は、わが方よりは行わないことということを特に言っております。われわれは、ソ連に対して戦争をやった覚えはないというのが国民全体の常識であり、また国民の信念であります。中立条約の侵犯こそ、日ソ戦争状態発生の原因であります。しかるに日本とソ連とが、同一の立場に立って共同して戦争状態の終結を宣言するということは、あたかもわが国の方にも戦争責任があるかのごとき感じを与えるものであって、かくのごときは日ソ戦争の性格をあいまいならしめ、日ソ戦争の特殊性を没却せしむる。そしてわが国民の常識と信念を裏切るものであります。(拍手)日ソ戦争勃発の当時は、日ソ中立条約は有効期間中であった。ソ連は日本を侵害せざるの義務を負うておったのであります。かつまた、当時ソ連に駐在しておったわが大使、佐藤大使は、日本政府の命によって、平和回復のために、ソ連政府が日米の間に入って平和回復のあっせんをしてくれということを申し込んでおったのであります。しかるに何の戦争原因もないのに、突如としてソ連よりの宣戦の通告であり、次いでソ連の一方的進撃が行われたのであります。中立条約違反は、これは国際信義のじゅうりんであります。また佐藤大使の懇請をないがしろにした態度は、それは国際道義の軽視であります。これがすなわち日ソ戦争勃発の原因であります。かくのごとく、わが国に何ら責任なき戦争を、わが国がソ連と同じ立場に立って共同して終結の宣言をするということは、何としても私には納得ができない。政府はこの不満をどうしてくれますか、これを伺いたい。
 次に私が伺いたいのは、戦犯及び抑留者同胞送還に関する問題であります。日ソ戦争の特殊性にかんがみて、われわれはわが同胞には、戦犯なんというものはないんだ、わが同胞が抑留せられるなんという理由はないんだと思っておった。ところが事実は全くこれに反した。そこで戦犯及び抑留者送還問題については、わが政府は国際連合にも訴え、またソ連にも訴えたのであります。そして大いにその送還に努力したのでありますが、ソ連には人質政策の底意があった。これがために、日ソ交渉妥結を見るまでは、送還問題を外交上の取引の具に供しようとするソ連の人質政策の底意は、ついにどうすることもできなかった。ためにこの人道問題が、人道問題としての見地より解決することができなかったのであります。この問題ほどわが国民を苦しめた問題はありますまい。またこれほどわが政府当局が悩んだものもありますまい。友愛精神を持っておられる鳩山首相は、さだめし最も深刻なる苦痛をなめられたことでありましょう。これこそ首相が、不自由なからだをモスクワまで行って交渉に当ったその原因だと私は思う。戦犯者送還、抑留者送還の問題を、人道問題として解決せずに、これをもってわが国をいやおうなしに日ソ交渉妥結に追い込まんとする外交の具に供したこの人質政策について、鳩山首相はこれをどう考えますか。総理大臣の友愛精神というものは、この人質政策を是認するほど寛大ではありますまい。送還問題を外交取引の具に供して、そして外交の道具として解決した今日のままでは、ソ連の常に口にする平和外交とは、こんな冷酷なものかと、わが国民は思わざるを得ません。(拍手)これでは、力の外交への屈服にほかならぬではありませんか、一体、総理はどう考えますか。
 私は、ここで一つつけ加えておきますが、送還問題に関するこの際の私のせめてもの希望は、批准前に送還者をナホトカに集結せしむるということであります。これは人道的意義において非常に深いものがあると思います。政府は特にお考えを願いたい。
 次は、国連加盟の問題について私は言います。世界の諸国は、ひとしく日本国の国連加盟の資格を認めておる。わが国の国連加盟は、世界の世論であります。またサンフランシスコ条約締結以来、国連加盟はわが国の熱望であります。それであるからロンドン交渉以来、わが政府はソ連に対してわが国の単独加盟を主張をしてきたのでありまするが、今回の共同宣言には、単独の文字は削られておる。しかし全権諸公は、今度は大丈夫だから信頼せよと言われるが、今日でもわが国の国連加盟については、ソ連との関係において、政府は確信を持っておられるか、まずそれを伺いたい。
 それから次に、私は国連加盟に関連して特に外務大臣にお尋ねをしたい。国連加盟は日本国の国際的立場を一変するものである。わが国の国際的の生命は、国連の基盤においてこそ無限の明るさを覚えるものであります。日本国は新たに国連への世界的ヒノキ舞台に乗るわけであります。しかしわが外務省は、果してこのヒノキ舞台にふさわしき役者たり得るでありましょうか。最近の日ソ交渉におけるわが外務省の外交は全く浮き上っておったと思います。外務省の諸先輩は、最近の外務省のあり方について長嘆息をしているということを聞いております。私は事のいいとか悪いとかを言うわけではないが、最近のわが国の外交は、いわゆるしろうと外交のみであった。わが国には、鳩山外交があった、河野外交があった、高碕外交があったけれども、しかしながら、外務省の外交は、ついにこれらと肩を比べるものはなかった。遺憾ながら外務省の外交は補助的のものにすぎなかった。好意をもって外務省の外交を見ても、それは縁の下の力持ち程度のものにすぎなかった。こんなことで世界のヒノキ舞台の国連に行って、わが国の外交がほんとうにりっぱな外交ができるだろうかと私は思う。私はこの際、外務省に対して言います。外務省は、国内においては外交の主導権を確立しなさい。鳩山内閣においては、一体どこに外交の主導権があったのかわからない。これでは政治の秩序が乱れてしまう。国の内外に政治の信用を失ってしまいます。それから国内において外務省が外交の主導権を握るとともに、国外に対してはどこまでもわが外交の自主性を堅持しなければなりません。鳩山首相は昨日の演説で、東西の窓は開かれんとしていると言われましたが、国連加盟が実現すれば、東西の窓どころではない、南北の窓も開かれます。しかし北風は冷たい。ハンガリーは今北風に苦しめられております。あたかもハンガリーは、日ソ中立条約侵犯によって日本が苦しめられたと同じような立場において、今日ハンガリーは苦しめられております。まことに同情にたえません。どうか国連に入ったら、自由と独立のために戦うハンガリーをどこまでも助けてやって下さい。昨日の外相の演説の取りどころ、外相の演説のよかったところは、英国に対しても、ソ連に対しても、遠慮なくわが外交の自主性を主張したところにあった。どうか、私は繰り返して言うが、将来の外務省は、国内においては主導権を持ってくれ、国外においては自主権、自主性を発揮してくれ、これを外務省に望みます。外務大臣の所見を伺います。
 その次に、私は最も重要なる問題である領土問題に関して大いに不満を述べてみたいと思う。緑風会は領土問題について、歯舞、色丹は即時返還、国後、択捉は継続審議ということを要求したのでありまするが、しかるに共同宣言における領土問題は、全くわれわれの要望に沿わないものがあります。一度返還することになった歯舞、色丹両島もたな上げになってしまった。のみならず、国後、択捉はその影さえも没してしまった。全くあぜんたらざるを得ません。領土問題のごとき難問に臨むに当って、私は顧みると、わが鳩山内閣の態度には、はなはだ遺憾なものがあったと思う。それは準備が不足であった。そうして方針に一貫性がなかった。ために事あるごとに左顧右眄した、動揺見るに忍びざるものがあった。強大なるソ連を相手とするところの敗戦国の日本の外交が困難であることは、初めよりわかり切っておる。従って、この難問である領土問題に臨むには、わが方のまず地固めができておらなければならぬ。またわが方の背景を作っておかなければならぬ。これがためには、まず世界の世論をおれに導くということを考えなければならぬ。世界の世論をわれに導くについては、サンフランシスコ条約締結諸国、特に米国との間に完全の意見の一致がなければならないはずである。しかるに、この種の活動はわが政府に何ら見るべきものはなかったと判断せざるを得ません。一体領土問題の中心が、国後、択捉両島の問題にあるということは初めより明瞭である。従ってこの点について、初めから確固不動の確信が確立したものがなければならない。そうしてそれは、サンフランシスコ条約締結諸国と見解を一にしておかなければならない。しかるに事実は全くこれに反しておる。日ソ交渉の始まったまん中、昨年の十月ごろになって、アメリカ政府から国後、択捉の問題についての文書をもらっておるというような怠慢ぶりであります。何たることでありましょう。そのしかもアメリカの文書は、国後、択捉両島の性格はヤルタ協定でも桑港条約でもはっきりしておらない。だから日本がその性格をはっきりしようとするなら、国際司法裁判所に訴えたらいいじゃないかというような、きわめて冷淡なる返事であった。当時私は、この種の回答に対してわが外務省は、もっとわが方に有利なる関係に米国の見解を取りつけるべきであったと思うのでありまするが、しかるにただ、おめおめとこの冷淡なる米国の回答に沈黙しておったのではないかと思われる。これは領土問題に関して米国との疎遠を物語る一つの材料である。その後、モスクワ会談において重光全権が領土に関するソ連案をのまんとするや、その情報が米国に伝わると、今度はサンフランシスコ条約第二条と第二十六条という条文の解釈問題について、わが政府と米国政府との間に食い違いがあるというような物議が起きてきた。こんなときになって条約の解釈が物議が起きるようなことでどうなる。これはわが政府の研究が足らない証拠だ、準備の不足の証拠だとして私は遺憾千万に存ずるのであります。しかもこのときの米国の返事は、国後、択捉は、日本の固有の領土だというわが方を支援するがごとき返事であったが、それは時節おくれのごちそうであって、何の役にも立たない。わが政府と米国との関係が、領土問題についてこんな食い違いがあるようなことですから、世界の世論をわれに引きずってくるなんという力は全然なかった。従って日本の外交はさびしい孤立外交にすぎなかった。国際的な孤立ばかりではない、国内においても世論の統一はできなかった。いわゆる早期妥結派あり、慎重派があった。のみならず、政府と与党との間でさえも、帰一しておらない。またうわさにすぎないかもしれないが、欄内さえも二元であると言われたじゃないか。こんなことで国家の運命に関する、これだけの大外交に、どうしていい結果などが得られるものかと私は思うのです。果せるかな、事あるごとに、日ソの外交は動揺に動揺をして、方針の確固不動のものはない、首尾一貫したるものはなかった。領土問題について、ことにそうです。ソ連が漁業問題をもってわが国に圧力を加えてくるというと、領土問題はあと回しにして早期妥結をしようという一派が起るかと思うと、領土問題は大切だから、これに執着しなければならぬという慎重派とが対立した。この間において政府は、何ら方針の明確なるものを持たなかった。だから慎重派なんと言われている重光外相は、モスクワにおいて突如として態度を変えたと言われているが、あるいはそうでないかもしれんが、とにかく、突如として早期妥結派に踏み切ってしまった。また出発前の鳩山首相は、アデナウアー方式、いわゆる領土問題を別にして交渉しようという考え方であった。しかし結局自民党の慎重な議論を中心とするところの自民党の新党議をしょわされてモスクワに行った。私はあえて、自民党の党議をしょわされて首相はモスクワに行ったと言う。それは、首相は、私の見るところでは、自民党の党議をほんとうに消化して自分の血として肉としてモスクワへ行ったのじゃないと思う。全権団はモスクワにおいて悪戦苦闘をやったけれども、領土問題については結局実を結ばなかった。自民党の新党議は雲散霧消してしまった。結論としては、実質的には領土問題は一歩も進展しておらない。昨日の首相及び外相の演説は、あまりにも楽観的である。ただモスクワにおいて変ったことは、言葉が変った、表現の方法が変ったにすぎないのであって、結局は力の前に屈服した姿である。
 以上、私は政府の無準備と無計画とが、実に遺憾であったということを不満とともに申し上げたが、私はそれ以上に、私がもっと遺憾とする、もっと不満とするところの問題がある。それは、領土問題に関して、力の外交のみが絶対であって、国際正義が無視されたということであります。力の外交が絶対であったというのは何だというと、それは秘密協定の性格を有するヤルタ協定が、大手を振ってまかり通ったということです。米英は、ヤルタ協定は領土帰属の問題などをきめるものではないのだと言っているにかかわらず、ソ連のみは、ヤルタ協定によって領土問題は米英ソの大国間において決定済みなんだ、領土問題は決定済みなんだ、今ごろ、負けた日本が何を言ってくるのだというような高圧的態度であった。一体、第二次世界大戦の特色の一つは何ですか。それは領土の無併合ということである。領土の無併合ということが、その特色の一つである。大西洋憲章やカイロ宣言、ポツダム宣言もことごとく領土の無併合を標榜しております。しかもこれらの宣言は、連合各国の署名する世界的の公文書であって、ソ連もまた大国の一つとして共同の責任者であります。しかるにソ連はヤルタ協定を振りかざして、共同責任ある世界の公けの宣言を無視して顧みないというに至っては、驚くほかはないじゃありませんか。(拍手)これこそ力の外交ではないでしょうか。一体、国際正義なんてどこにあるかと問いたい。ソ連は、口には平和外交を言っております。平和は正義の上にのみ存在し得る。領土に関する正義は、大西洋憲章にある、カイロ宣言、ポツダム宣言にある。断じてヤルタ秘密協定にはありません。私は、正義のないところに平和外交などはあり得ないと思う。一体わが政府は、日ソ間の領土問題の今日の状況をどう考えておるか。今の見通しとしては、歯舞、色丹も、国後、択捉も返らないだろうということを嘆ずる国民が非常に多い。政府は、わが国の力をもってしてはいかんともなしがたいとして、力の外交に属するつもりなのか、それとも国際情勢の変化を待って継続審議をするという声を聞くが、一体その国際情勢の変化とは何を言っているのか、そんな国際情勢の変化がいつくる見通しがあるのか、私は政府の所見を聞きたいのであります。
 領土問題について、この今日のままでは、国際正義は決して実現せられておりません。これでは力は正義なりという言葉の通りです。鳩山首相は、世界平和のために日ソ国交回復を念願したのでありましょう。国交の回復ということは、国交の正常化でなければならぬというのは言うまでもない。国交の正常化は力への屈服であっては断じて生まれてきません。(拍手)国民が納得する正義の実現であってこそ、初めて正常化したる国交が獲得せられるものと私は確信しまして、以上の質問を申し上げた次第であります。明快なる御答弁をお願いします。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(鳩山一郎君) 廣瀬君の御質問にお答えをいたします。
 第一の御質問は、わが国の国策のあり方の根本に関する私の所信を承わりたいという御質問でありました。このたびの日ソ国交正常化の実現によりまして、ソ連との間に戦後十一年間存在した戦争状態という、好ましくない状態が解決せられました。わが国の国連加盟が実現いたしました暁には、その機構を通じまして、わが国の国際的地位の向上をはかりたい。そうして世界の平和に貢献をしたいという考え方であります。
 次に御質問になりましたことは、戦争状態終了に関する条項が日ソ共同の形式で宣言せられたことが遺憾だ、これはあたかも戦争責任がわが国にあるような形をとったものである、この点非常に遺憾だという御質問でありましたが、日ソ共同宣言の第一項は、単に日ソ間の戦争状態の終了を規定したものでありまして、戦争責任の問題を決定した条項ではございません。
 第三の御質問は、抑留者の送還問題であります。これを人道問題として解決すべきものであるという御所見でございました。このたびの日ソ交渉において、ソ連側は、抑留者はすべて、ソ連国内法により刑を受け、刑の終了次第送還するとの立場をとっていたのでありますが、わが国は、抑留者問題は人道問題として、交渉とは別個に解決すべきものとの立場をとって終始一貫しております。そうして折衝を続けまして、今回の共同宣言批准後に、すべての抑留者は、釈放を受けまして送還せられることとなったのであります。
 国連加盟についての政府の確信を問われましたが、国連総会会期中には、わが国の国連加入は必ず実現するものと確信をしている次第であります。
 領土問題について、非常にいろいろの点から御質問がありましたが、交渉の結果は、たびたび申しますがごとくに、十分満足しているものとは考えておりません。わが国が置かれている現状においては、最善を尽したものと考えております。
  〔国務大臣重光葵君登壇〕
#16
○国務大臣(重光葵君) お答え申し上げます。
 私に対する御質問中の、米国との関係、まことにやり方がまずかったじゃないか、こういう御批判でございます。私は、日ソ交渉を進めるに当って、最も日本との密接な関係を持っている米国に対しては、十分にその経過を通報して参ったことは事実でございます。しかしながら、私は日ソ交渉をやるのは、日本独得の考えと申しますか、日本の考えで進めて行くのが当然のことであると考えております。あくまで私は日本の利益に従って進めてやってきたのであります。それはむろん米国との意思疎通をはかる必要はありますので、それはやって参ったのであります。
 そこで、日ソの関係において、領土問題について非常に意見が合わなかったのは事実であります。私は、ソ連側で日本の主張を認めてくれるがよかったと思う。また認めてくれるべきであった、こう思って、その信念で進めて行ったのであります。しかしながら、これは目的を達することができなかったのであります。できなかったから、結局暫定協定ということで、領土問題はあとに延ばしたわけであります。しかし、このくらいな程度で日ソの国交を回復するということが、日ソの関係だけではない、すべての平和外交の方針から見て、これは適当であろう、日本の国家の利害関係から見てこれで適当であろう、こう考えまして、その点をるる述べて、この日ソ共同宣言の御批准をお願いしたわけでございます。将来の領土問題が、それじゃどうなるか、これは、今これを断言することはできません。将来の交渉に待つよりほかに道はございません。いろいろな順序を経て、そこに持って行きたい、こう考えているのであります。
 それから、将来は国際連合に対する関係が一番重要である。国際連合における日本の加入が許された後は、連合における日本の活動がきわめて重要であるのであるから、外務省としてはしっかりやらなけりゃいかぬ、その通りに私は考えます。これは御激励の言葉と思います。御注意によりまして、その御注意に沿うて、でき得るだけの努力を尽して行きたいと考えることを申し上げまして、お答えといたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(松野鶴平君) 羽生三七君。
  〔羽生三七君登壇、拍手〕
#18
○羽生三七君 私は鳩山総理並びに重光外相の演説及び日ソ交渉関係の案件に対して、日本社会党を代表して、以下順次その疑点をただしたいと思います。
 まず最初に、国際情勢一般に関する問題でお尋ねをいたします。首相、外相ともに、日ソの国交回復を世界平和推進の立場で認めておることは、われわれもまた同感であります。さらにまた、日本が今後国連憲章を尊重して、国際紛争の解決に当っては、武力の行使に訴えることなく、平和的解決の方針をもって臨み、わが国の発言力を強化して、もって国際的な地位を高めようという考え方にも賛成であります。率直に申して、今の外相の答弁でも感じたのでありますが、今度の所信表明は、従来から見ると、これは非常な進歩であります。その意味でわれわれも賛成はいたしております。しかし、ではどのような外交路線を築くことによって、この目的が達成されるかという具体的な条件が全然示されておりません。従って、私は日本社会党の見解と対比しながら、政府の所信をただしたいと思います。
 まず中東の問題でありますが、イスラエル及び英仏のエジプト攻撃が明白な侵略行為であることは間違いがありません。またハンガリーにおける事態も、大体政府の分析は妥当であろうと思います。政府はかかる中東及び東欧の情勢分析を行なって、冷戦の雪解けは逆転しつつあると判断をし、世界の情勢は緊迫しつつあると結論をいたしております。われわれは、さらにこのような事件の生起するに至ったおもなる要因、及びその国際的背景を検討してみたいと思います。
 すなわち昨年ジュネーヴで開かれたアメリカ、ソ連、イギリス及びフランスの四カ国巨頭会談を頂点としまして、いわゆるジュネーヴの雪解けといわれる国際緊張緩和の情勢が生まれ、これと相前後するころから、西欧各国はNATO、すなわち北大西洋条約機構に対して、少しずつ冷淡になり始めたのであります。他面関係各国は、それぞれ自分の国の利害に熱心になり始めたということであります。私はここが非常に大事な点だと思う。次に、政府も指摘するように、本年の第二十回ソ連共産党大会におけるフルシチョフ氏のスターリン批判以来、東欧の諸国は、社会主義への道には、各国それぞれ異なった形があるということを認め始めたことであります。第三には、昨年インドネシアのバンドンで開かれたアジア・アフリカ会議以来、いわゆるアジア、アフリカ各国の、いかなる形の植民地支配にも反対という動きが、とみに顕著になってきた事実であります。現に先日もボンベーでアジア社会党会議が開かれ、わが党の代表諸君もこれに参加して、なまなましい現実に触れてきたばかりであります。
 以上の三点が、最近の世界情勢を見る上に必要な条件と考えられます。そこで今回の中東の問題ですが、これは東西の冷戦ではありません。これはエジプトの独立完成という民族的要求を破壊せんとする英仏等の侵略攻撃であることは間違いないのであります。(拍手)次に、東欧の問題も、これは東西の冷戦ではないのであります。これは共産主義国家相互の間に起った民族独立、自主化の闘争であります。
 さて、以上の二つのことから、政府は冷戦の雪解けが逆転したと判断するのでしょうが、しかし次の事実を見落してはいけません。すなわちエジプトへの侵略が始まって以来の世界の世論であります。まずこの問題発生直後開かれた国連総会で、即時停戦決議案が、賛成六十四カ国という圧倒的多数で議決されたという事実、さらにハンガリーに対するソ連の場合も同様ですが、とにかく世界の世論が、今回ほど武力攻撃及び力の政策に反対して、平和の叫びをあげたことはないのであります。(拍手)戦争に際しては、いつも挙国一致の体制をとる英国においてすら、労働党はもちろん、国内の世論は、あげて今回のエジプトの場合でありますが、武力攻撃は明白な侵略と断じ、軍事行動の停止、イーデンの退陣を求めるというのが圧倒的な世論であります。実に世界が、いまだかつて見られなかったほどに、戦争への憎悪を表わしているということができます。これは今回の動乱の過程に生じた特徴的な事実ということができましょう。先にも述べたように、これは東西両陣営の衝突ではありません。いずれも、これは民族の独立と自由のための戦いであります。しかし、もしこれを好戦主義者や戦争挑発者が利用するならば、いわれるところの東西両陣営の対立に発展する危険性はもちろん存在をいたしております。従ってわが日本としては、単に情勢を分析するだけではなく、昨日の施政方針は情勢分析でありましたが、情勢を分析するだけではなしに、国際緊張を緩和し、世界平和に貢献するためには、具体的にどのような方針をとるか、どのような外交路線を築くかが重要な課題となってくるのであります。(拍手)その意味で冷戦の雪解け、いわゆるこの冷戦の雪解けという問題を、再軍備の強化のために、これを合理化するために悪用されてはならぬということであります。このような国際情勢のもとで、今回日ソ交渉が成立したのでありますが、これを鳩山首相の引退に道を開く贈りものというようなこととしてではなく、わが国としては引き続いて、先ほど同僚岡田議員からも述べられましたように、中華人民共和国との間に国交を回復させ、さらにアジア、アフリカ各国との親善関係を一そう強化させるために、従来の欧米諸国偏重の外交方針を改め、自主独立の新たなる外交路線を確立すべきであると考えます。(拍手)そのためには、東西いずれの勢力にも属さないアジア、アラブ諸国とともに、国連という場を通じ、あるいはまた独自の立場から、東西の冷戦激化を押えて、真の平和共存を確立するために、積極的な努力を払うことが今後の方向でなければならぬと確信をいたします。(拍手)
 そこで政府にお尋ねいたしたいことは、日ソ交渉に続いて、先ほど岡田議員も尋ねられました中共との国交回復に、いかなる具体策を持っているかということであります。台湾政権の問題のお話がありましたけれども、しかし具体的な政治をわれわれが行う場合においては、これは過渡的には、われわれの社会党で言う積み上げ方式というものもありますが、とりあえず貿易をさらに強化し、あるいは代表を交換する等、いわゆるこの国交の回復を具体的に積み上げて、将来国際連合が、いわゆる国連における代表権を中共に移すようなときに、歩調を合わせるような具体的なやり方もあると思います。ただ中共とは、まだ国交回復できないというようなことでは、日ソ交渉は、じゃ何のためにやったのかわからないことになる、だからこの点については、もっと具体的なる政府の判断をお伺いをいたしたいと思います。
 引き続いて、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言等の案件についてお尋ねをいたします。長い間の案件であった日ソの国交回復に関する交渉が、不満足ながらもとにかく妥結したことは、日本社会党としてもこれを歓迎するものであります。そしてまた先ほど廣瀬さんから、だいぶいろいろな御意見がありましたけれども、われわれとしては、とにかく関係者の今日までの労苦を多とするものであります。太平洋戦争終結以来、長い期間にわたって日ソ及び日中間の国交が未回復であることは、日本の発展のためにも、また世界の平和を確立するためにも、きわめて大きな障害となっていたのでありますが、この障害を取り除く意味で、日ソ両国間の戦争状態終結と国交正常化を、一貫してしかも強く主張し来たったわが社会党の主張に合致するものとして、これを同慶に感ずるのであります。
 私は最初に「不満足ながらも」と申しましたが、質問に入るに先だって、日ソ国交正常化を主張してきた日本社会党の基本的立場をまず明確にしておきたいと存じます。
 言うまでもないことでありますが、外交は気に食うとか気に食わないということで論議されるべき性質のものではないと存じます。まずもって各種の客観的条件を吟味し、問題のウエートを考え、その上で、総合的、大局的に判断を下さなければならぬと存じます。そこで、日ソ間で対象となる主たる問題といたしましては、領土問題、抑留者の帰国問題、国連加盟問題、漁業問題、貿易問題等々となります。そこで、この中のどの問題かが不満足であれば、国交は回復を行わないという立場をとるか、あるいは、個々の問題では若干の不満はあっても、国交回復そのことが大局的に見てわが国の発展に役立つかどうかという判断の問題になりましょう。わが日本社会党としては、先にも触れましたように、若干の不満はあっても、日ソの国交回復が日本の発展と極東における緊張緩和に役立つという、大局的、総合的判断のもとで、これが妥結を支持するものであります。(拍手)事実、日ソ間の戦争状態終結と国交回復なくしては、抑留者の帰国も実現されません。漁業問題もまた障害に突き当るでしょう。さらにまた貿易の発展も望まれぬものと思います。そればかりではない。従来のように、米国を初め資本主義国との国交のみを国際親善と考え、また平和維持の基礎と考えているような外交方針では、日本の真の独立が達成できないのみか、今日のアジア・アラブ諸国家の動向から見まして、日本は世界の大勢から取り残されることになるでごさいましょう。それゆえ、日ソの国交回復は、国内的、国際的にきわめて重要な意義を持つものと言わなければなりません。(拍手)このような判断が日本社会党の日ソ国交回復に関する基本的態度であります。しかしこのことは、今回の交渉内容そのものが無条件的に認められることを意味するものではありません。
 さて問題の第一点は、わが国民の強い要望である領土問題の解決を平和条約締結のときまでたな上げし、これが最終決定を見るに至らなかったということに関してであります。もっともこれについて、わが党の野溝氏初め同僚議員諸君が訪ソの際に、暫定協定についても話し合っておりますので、基本的には異議はありません。しかし、国後、択捉が平和条約締結の際、どのような解決を見るかは、終局的に最も重要な問題であります。日ソ共同宣言の第九項においては、平和条約締結の際、歯舞、色丹を引き渡すことになっております。歯舞、色丹だけの問題であるならば、鳩山首相の訪ソを待つまでもなく、最初のロンドン交渉で話し合いは成立していたはずであります。それが、さきの鳩山首相の訪ソまでの複雑な経過をたどった理由は、言うまでもなく国後、択捉の問題でございましょう。ソ連は、この要求を最後まで認めなかった。しかしそれでは、日本が承服できないので、平和条約方式であるならば、ソ連は即時返還可能の歯舞、色丹を、今度の共同宣言の九項で日本への帰属だけを決定して、その引き渡しの時期を平和条約締結のときとし、さらに日本の国民には、国後、択捉をも継続審議の対象となっているのだということを示すために、第九項の前段において「両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続する。」ことを規定いたしておるのであります。しかし文面に示されているように、「平和条約の締結に関する交渉」とありますが、「領土を含む平和条約の締結」とはなっておりません。この欄のことについては、河野全権とフルシチョフ第一書記との第三回会談でいろいろやりとりがあったようでありますが、なぜ「領土を含む平和条約」と明記できなかったのか、その間の事情を、これは大事な問題ではありますが、お差しつかえのない範囲で河野大臣にお伺いをいたします。
 次に、この領土問題が重要であればあるほど、平和条約締結の時期がまた重要な問題となるのであります。これは歯舞、色丹の返還にも関連をいたしております。平和条約の締結の時期、この時期を政府はどのようにお考えになりましょうか。なぜなら、ソ連の今日までの態度から推して、この問題の解決は、国際情勢と深い関連を持っているように思われるのであります。政府としては、これがわが方に望ましい解決をもたらすためには、平和条約締結はどのような時期がよいと判断されましょうか、平和条約締結の時期であります。この点を伺いたいのであります。これは総理、外務大臣、両方からお答え願いたい。
 次にお尋ねいたしたい点は、将来返る可能性のある領土であるならば、なぜ今日返らないかということであります。どうしてたな上げをするのでありますか。将来返る可能性のあるものならば、今でも返らないということはないはずであります。政府が、党内事情やあるいは国民の目をそらせるために、便宜主義的の立場で領土のたな上げを考えたのでないならば、そして、それはまた将来必ず返ることを確信してのたな上げであるならば、今日の段階ではなぜ返らないかということを、まじめに考えてみる必要がある。政府はまじめに考えてみたことがありますか。われわれとしては、社会党としては、その理由を次のように考えております。
 すなわち、今日の国際情勢は、まだ必ずしも平和が確立されたとは言えない。特にわが国について言えば、国内に多数の軍事基地が存在しておる。わが国とアメリカとの間には、日米安全保障条約、日米行政協定が結ばれており、さらにまた、沖繩、小笠原諸島がアメリカの支配下にあるというような現在の客観的諸条件が、領土問題の解決を将来に持ち越した主要な条件と判断せざるを得ないのであります。(拍手)しかりとすれば、将来国際緊張が緩和し、平和の条件が確立された場合においては、ソ連としてもわが方の領土に関する要望を積極的に受け入れることが望ましいのであります。そして国後、択捉は、わが国が戦争の結果獲得した領土ではないという実情にかんがみ、大国ソ連が、国際情勢の変化した場合においても、なおかつその領土権を主張することはあるまいとわれわれは考えております。そしてまた、実際にソ連がそうあることをわれわれは心より期待をいたしておるのであります。しかもこのことは、わが国がただ漫然とその時期を待つのではなく、みずから進んで緊張緩和の外交施策を推進することによって、その時期を一そう早めることも可能でありましょう。その意味において、日米安全保障条約、日米行政協定の改廃が望ましいのであります。私はさきに、国後、択捉が返らざる理由を、今の国際情勢に帰しましたが、日米安全保障条約、日米行政協定等の改訂について、政府は具体的にどのように考えているか。考えないこともないというようなことではなしに、先年、外相がアメリカへ行かれたときにも、すでにこの問題はある程度触れられたはずであります。具体的にどのようにお考えになっているか、この点を率直に伺いたいのであります。
 もっともこのことは、アメリカとの友好関係を傷つけるという意味ではありません。アメリカのことはどっちでもいいという意味ではないのであります。アメリカとは引き続き友好関係を維持して行くことには、もちろんわれわれも異議はありませんし、また必要でありましょう。しかし現在の形の安保条約、行政協定は、われわれの立場からでなくとも、保守党の立場からしても、十分再検討するにふさわしい時期に参っておると考えております。(拍手)たとえば、先ほど岡田議員が触れられました砂川問題を見ましても、外国軍隊の基地拡張のために、日本の同胞があのような状態にあることをすみやかに廃絶するためにも、今の安保条約と行政協定の改訂は絶対に必要であります。いまのことは具体的にお答え願いたい。
 次にお尋ねいたしたいことは、これはきょうの新聞を見ましても、ソ連の国連代表の意見が出ておりましたから、ある程度周題は解決したとも言えますが、国連加盟については無条件支持の話し合いができておったかどうか、これをお伺いしたい。昨年は台湾政府の外モンゴール加入に関する拒否権それからソ連の日本に対する拒否権という合い打ちの形で葬られましたが、今回は無条件加入が約束されておるかどうか、話し合いの経過をお伺いいたしたいと思います。
 次の問題は、これはちょっと技術的なこまかいことになりますが、国境線の確定ができない場合には、領海はどのようなことになるのか、その話し合いはどうなっておるか、国境線が確定されない場合の領海線の問題であります。
 その次は、木漁業条約と、いわゆる日米加漁業協定との調整について、ソ連及び関係各国と話し合ったと思うが、その経過はどうであるか、この問題。
 それから先ほど他の議員も触れられましたが、日米安保条約と中ソ同盟条約、このことについて何らか話に触れられたことがあるかどうか。これは今度の日ソ共同宣言の中に国連憲章五十一条を引用いたしましております。これはおそらく相互にこの問題を頭に置いて書いたものと思いますけれども、この問題については話し合ったことがあるかどうか、こういうことであります。
 その次は、この機会に特に伺っておきたいことは、沖繩、小笠原等の返還要求についてであります。今回の日ソ共同宣言は、その前文において、「両国間の外交関係の回復が極東における平和及び安全の利益に合致する」ことを明記しております。また台湾問題につきましては、中共政府も平和的な話し合いを提唱しているのでありますから、かれこれ、極東の緊張は緩和しつつあると判断しても差しつかえないと存じます。そうであるならば、ソ連に対するわが方の国後、択捉の返還要求とともに、沖繩、小笠原等の返還をアメリカに求むることは当然のことかと考えられるのであります。ましてやプライス勧告以来、苦悩にあえぎつつある沖繩島民の苦痛を思えば、当面わが外交権を必要な程度まで発揮することは、当然の権利でもあり、かつ政府の喫緊の義務であるかと存じますが、この点に関する政府の明快なる御答弁をお伺いいたします。(拍手)なお、この沖繩、小笠原等が、戦争の結果取得した領土でないことを特に付言をいたしておきます。
 ここで結論にいたしたいと思いますが、イギリスやフランスは、一時的にはエジプトやあるいはアルジェリアで成功することができるといたしましても、結局は帝国主義的植民地支配は終えんを告げることになるでありましょう。昔の夢がいま一度おとずれることはないとわれわれは確信をいたしております。同様に、また共産主義国についても、かつてのスターリン主義が復活することもないでありましょう。そして今日までの植民地主義や権力政治は、やがて民族の自由な創意と真の平和共存を求める多くの国々の新らしい方向に道を譲らなければならぬことになると存じます。そしてまた大国の横車も、やがて限界に近づくことは確実であります。わが国が国際社会の一員として、もし世界の平和と人類の進歩の上に貢献せんとするならば、先ほど政府はそう言われましたが、そうであるならば、この世界の発展の方向に沿って進むことが、国連加盟の実現した場合のわが日本の心がままであるべきものと確信いたします。
 近く首相の地位を去らんとする鳩山首相や、鳩山内閣の閣僚に多くを言っても意味のないことは承知をいたしております。しかし何人が、あるいはどの政党が、政局を担当しようとも、この方向こそが、日本の真の発展に寄与する道であることを最後に付言いたしまして、日本社会党を代表いたしましての私の質問を終ります。
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
#19
○国務大臣(鳩山一郎君) 羽生君の御質問にお答えいたします。私の名前をさしてのご質問だけにとどめたいと思います。外交の詳しいこと、あるいはその他の事項について特に名ざしのないものについては、関係閣僚からお答えをしたいと思います。
 政府は、中東、東欧等の問題から、雪解けの逆転というけれども、国際世論の今日ほど武力行使をにくみ、かつ平和を求めているということはなかったと。その通りと思います。政府は、国際情勢を分析するだけでなく、具体的に新らしい外交路線を確立すべきではないか。この点につきましては、先刻来申しますごとくに、わが党としては、あくまでも平和外交の方針を堅持いたしまして、国際的地位の向上と発言権の強化を期して、そうして世界の平和に寄与いたしたいと考えております。再軍備の強化の理由になぞ使うことはないか、使っては困るというような御演説でございましたが、もちろんその通りでございます。ただ、アイゼンハワーの演説を、私はちょうどニューヨークで聞いたんであります。アイゼンハワーの演説をしているときに行ったんでありますが、そのときにアイゼンハワーは、私はあなた方に平和を誓う、平和を誓うけれども、それは力なしには平和を誓うわけにはいかないという演説をしているくらいでありますから、力がなくてもいいという結論にすぐ持って行くわけには参りません。
 それから中共との国交回復、アジア、アフリカ諸国との親善関係の増進、さらに行政協定の改廃を行い、世界平和に貢献するように努力すべきではないか。その通りと思います。中共との国交回復、国交の正常化は、ソ連とのようには簡単には参りませんけれども、あなたがおっしゃいました通り、貿易をさらに強化して行く、あるいはそういうふうなことを積み上げて、そして親善関係を深めて行こうということについては賛成でございます。アジア、アフリカ諸国との親善関係についても、先ほどの御質問にお答えしました通り、友好関係の増進ということは、どの国とも必要であるということは言うまでもないことでございます。
 日ソ平和条約締結の時期を、どういうように想定しているかという御質問でございました。両国は相互に、これから大使を交換するのでありますから、その大使を交換した後、国際情勢の推移を勘案の上、わが国の主張の実現に最も適当と思われるときに交渉をいたしたいと考えている次第であります。
 政府は、択捉、国後が継続審議の対象となっているかという御質問でございましたが、むろん継続審議の対象となっております、平和条約のうちに領土問題が対象となっているかというような御質問があったと思いますが、当然のことでございます。当然領土問題を含むものと解すべきであります。
 将来返還の可能性がある領土ならば、なぜ今日返さないのか、それは政府としては、これは望ましいと考えまして、種々その実現にも努力いたしましたが、両島の即時回復、即時引き渡しを主張することは、国後、択捉その他の帰属に国する具体的な決定の問題を誘発いたしまして、重光全権が交渉をした際の困難を再び惹起するので、今般の共同宣言においては、単に歯舞、色丹の引き渡しの確約だけを取りつけまして、その他の地域の帰属の問題は、今後の国際情勢の進展をも勘案して、平和条約の締結の際、あらためて取り上げることといたしたのでございます。
 その他の質問に対しましては、安保条約、あるいはその改廃の意思があるかどうかというようなことについては、外務大臣から答弁をしてもらいます。
 大体、私を名ざしての御質問は以上のものだったと存じます。(拍手、羽生三七君「平和条約の締結の時期についてお答え下さい」と述ぶ)それは、私にはなかなかわかりません。
  〔国務大臣重光葵君登壇〕
#20
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。
 ただいまの外交の大局を論じられました御質問を、私はつつしんで拝聴いたしました。その御質問の要点は、最近の国際緊張は、その通りだ、これを緩和する方法をとらなきゃいかぬ、こういうことが主体であったと思います。私は、全然御同感でございます。その通りにやらなければならぬと思います。(拍手)社会党を代表されて、私の説に御賛成下さったことを非常に感謝いたします。(拍手)それでありますが、その緩和の方法は、何もかも一度にはできません、また、そうすべきじゃない、時期を追うて、順次に進めて行かなければいかぬと思います。これも御同感であろうと思います。
 そこで、その緩和の方法として、第一には、日ソ交渉の点を取り上げて、今御批准の御賛成を得たいと、こう思っているわけであります。それから、むろん世界情勢の緩和を願わなければなりません。しかし特に日本といたしましては、東亜方面の形勢の緩和を、これ以上努めなければなりません。その意味において中共の問題が浮んで参ります。中共の問題は、これはもう御説明いたすまでもなく、従来いろいろ国交の調整とか、もしくは政治問題については非常に複雑な困難な問題があって、すぐにこれは着手はできないということをたびたび申し上げる機会がございました。これも東亜の全局の政治関係、国際関係の緩和ということに目をつけて、だんだんと解決の方向に向わなければならぬと、私はそう考えております。今すぐどうしようということは申し上げかねるのでございます。
 それからさらに進んで、それならば日ソ交渉の内容について、細目について質問をする、こういうことでお話がございました。領土の問題も、今、総理大臣の答えられた通りに、平和条約の中には、どうしても領土問題を規定しなければなりません。それでありますから領土問題に関する交渉は、当然この中に含むのでございます。さような意味で、私どもは将来平和条約の締結の交渉をやるときに、日本側の希望を十分に申し述べなければならぬと考えております。
 平和条約の締結の時期でございますが、これはまだ何にも今平和条約をいつやろう、いつ交渉をどういう工合にやろうということは、まだそこまで手が伸びておりません。こういう点も、いろいろと御意見の点も伺って、そうして手落ちなくやりたいと考えております。要するに国際情勢の変化、国際情勢の変化については、どういうことを考えておるかということについて今御意見の御発表がありました。非常に参考になりました。さようなことも、十分検討をいたしまして進めて行きたいと考えております。
 それから領土の問題について、なお、米国との関係につきまして、沖繩等は返還を要求しなければならぬのじゃないか。その通りに考えております。返還を要求しておるのであります。その結果といたしまして、日本に対する潜在主権はアメリカは認めておるのであります。さらにまた、これが完全に日本に返ってくるように、将来国際緊張の緩和もはかって、進めて行かなければならぬという大局論は、御意見に私は共鳴を申し上げるのであります。
 それから安保条約等も、改訂の時期じゃないか、これは私は、今時期じゃないと、こう考えます。国際関係の緩和等をよくにらみ合せて、そうしてその方面に主力を尽してやるべきだと、こう考えております。
 それから漁業問題についてでございますが、これは境界線の問題がありますが、これは国際間の普通の領海の原則でやっておるのでございます。それについて問題があれば、また交渉をいたさなければなりませんが、さようにして進めて参っております。
 これで、御質問の各点はお答えしたと思います。(拍手)
  〔国務大臣河野一郎君登壇〕
#21
○国務大臣(河野一郎君) 私に対するお尋ねは、外務大臣から全部お答えになった点に尽きておるのですから、私からお答えするあれではないと思います。
    ―――――――――――――
#22
○議長(松野鶴平君) 大竹平八郎君。
  〔大竹平八郎君登壇、拍手〕
#23
○大竹平八郎君 私は簡単に、日ソ共同宣言の問題につきまして、具体的な問題を二、三お尋ねいたしたいと存ずる次第であります。
 まず第一は、漁業の問題の点でございます。本年の夏、最悪の状況の中に暫定的に結ばれましたるところの漁業条約は、全く当時せっぱ詰ったいわゆる漁期を控えていたときでございますので、大手水産会社以外の漁業会社は、非常な準備はいたしましたけれども、この過酷に近いところの暫定協定のために出漁が中止をせられまして、その損害は相当なものでございました。こういうような暫定的な屈辱的漁業協定が、今回の共同宣言の案件を見まするというと、そのままに発効せらるるということでございまするので、私はおそらくこの協定そのままが発効せられるということに当りましては、さすがの河野農林大臣も心中がく然とせられたことと信ずるものであります。この屈辱的漁業協定に関しまして、政府は今後いかなる改訂の意思がございまするか、これを第一にお尋ねする次第であります。
 第二にお尋ねいたしたいことは、終戦と同時に一方的に戦争を宣言して参りましたソ連は、当時の北満から北鮮地域に至りまする長い間に進攻いたして参りまして、そうして無辜なわれわれ同胞、しかも無抵抗な婦女子が戦車の下敷きに、あるいは暴行の上惨殺せられる等、実にその数字は三十万に近いのであります。私も妹の一家族がその犠牲の一員でございます。政府は今回の共同宣言の発効と同時に、その行方不明者に対しまして調査を要求するということを言われておりまするが、われわれは単なる調査どころでなくして、この尊い三十万に近い御英霊に対しまして、ソ連当局に向ってその道義的責任を求める、しかして、この霊に対しまするところの慰霊の何らかの措置を講ずるお考えがあるかどうかということをお伺いいたしたいのでございます。われわれは終戦の当時に、一番過酷な目にあいましても、一言の余地もないと言われまするところの中国の問題、今その政権がどこにございましょうとも、当時二百二十有余万の人たちが、われわれが殺されても文句の言いどころのないのが、ただの一人のその被害者もなくして、無事にわれわれが日本に帰ることができたということに対比しまして、申し上げましたるところの惨状を見ると、実にその差の、いかに大きいということをわれわれは痛感せざるを得ないのであります。(拍手)
 第三は、十月十三日、当時わが三全権に対しまして、ソ連側は、その全権はブルガーニン首相ほか四名の顔ぶれになっております。しかしながら、十九日の最後の調印のときに至りましては、ブルガーニン首相と、新たに加わりましたシェピーロフ氏と、ただ二人でございます。これは当時その参加をせられておりましたフルシチョフその他の人々が、ポーランド並びにハンガリーの動揺対策のために急遽出向いて行ったことでございます。そうして後に判然といたしましたることが、あのソ連に対するところの、ソ連革命成立以来の重大事件でございましたポーランド、ハンガリーの反ソ動乱でございます。私は結果論を申し上げるわけではございませんけれども、この情勢をいま少しく政府なり全権が知ることを得ましたならば、私は今回の条約が、もう少しわが方に有利に展開したのではないかと、かように考えるのでございまするが、この情報について全く政府も全権団も関知しなかったことでありましょうか、その点をお伺いいたします。
 次には、国交回復後におけるところの処置でございますが、これは先ほど廣瀬さんからも申し上げられましたので、私は省略をいたしまして、次に日ソの貿易の問題でございます。われわれの経験から申しまするならば、日ソの貿易というものは、一般が期待しておるがごとく必ずしも私は大きな数字をあげるとは考えられないのであります。特に考えなければならぬのは、従来の共産圏との貿易におきまして、その共同的な謀略の中に、しばしばわが方が市場の損失をこうむることでございます。すなわち、われわれは中共貿易はこれは国民の声として、むろん取り上げなければなりませんけれども、昨年皆様も御承知の通り、香港を通じまして東南アジア市場に出ましたところの、日本のいわゆる輸出貿易の六〇%を占めるところの中小企業者が取り扱うべきような雑貨工業品というものが、実に一億三千万米ドルもこの東南アジアに出たという、こういう事実であります。これはすなわちコストを無視いたしまして、経済的に日本を屈服させるところの大きな一つの手段であったのでございます。従いまして、われわれはこの日ソ貿易をやるに当りましても、その点十二分の御注意をもちまして、そうして十二分の政治的理解のもとに私どもはやっていただきたいことを念願するのであります。しかして、われわれは決していきなり膨大な数字をあげまして、国民を惑わさぬことを政府に御注意を申し上げると同時に、日ソ貿易に対しまするところの見通しにつきまして、私はお尋ねをいたしたいのでございます。
 以上の諸点につきまして簡単でございまするが、政府の御答弁をお伺いいたしまして、私の質問にかえる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
#24
○国務大臣(鳩山一郎君) 大竹さんの御質問の第一並びに最後の御質問に対しては、所管大臣から答弁をしてもらいます。
 抑留者の悲惨な最期を遂げた三十万の同胞犠牲者に関して、その道義的責任をソ連に追及し、何らかの処置を求める意思ありやという御質問でございます。これは政府として抑留者の死亡者につきましては、まことに哀悼の念にたえないところでありまして、政府として十分の配慮を払うようにしたいと考えております。
 その調印のときに、ソ連では出席者が少くて、そのときにはフルシチョフ、ミコヤンが出席しない、その情報を得ていたかということであります。フルシチョフからは河野君に対しまして、二日延ばしてくれという交渉があったのでございます。自分がポーランドに行くが、調印式並びにレセプションに出席したいから延ばしてくれという交渉がありましたので、出かけるということはわかっておりましたけれども、当方としては早く調印をした方がいいと考えまして、これに応じなかったのであります。私は調印式をおくらすということによって、何も日本が利益を受ける理屈はないと考えております。これだけが私に対する御質問でございました。
 貿易に対しては、石橋さんから答弁をしてもらいます。ブルガーニンも私に対して、シベリアの開発のために日本からいろいろの機械を買いたい、船を作ってもらいたい、いろいろな貿易の増進をしなくては真の平和は成立しないのだ、貿易の増進をしたいということは言っておりました。
 以上、答弁いたします。
  〔国務大臣重光葵君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(重光葵君) 御答弁を申し上げます。
 漁業条約は、また変えなければならぬのではないかというお話がございました。今回できました漁業条約は、十年の期限になっております。それで、その期限到来の節は、また改訂をいたさなければなりません。しかし漁業そのものにつきましては、条約によりまして、日ソの間に漁業委員会ができまして、その委員会において具体的の問題を一々相談をして決定をするということに相なっておりますので、漁業については、十分にわが利益を講ずるように取り計らいたい、こう考えておる次第でございます。
 それから日ソ貿易の問題について、私の所管に関することをお答えいたします。この日ソ貿易交渉は将来開かれることになっております。そのときに、向うの提案をもよく見て、そうしてどういう品物について双方の利益のために通商の発展ができるかということを具体的に考えて、そうしてこれを進めて行きたい、こういうふうに思っております。
 以上であります。
  〔国務大臣石橋湛山君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(石橋湛山君) 日ソ貿易につきましては、御承知のように、従来においてもあまり大きな貿易があった歴史がありません。最近ソ連側においては、相当日本品を買おうと、今、総理大臣からも申されましたように、機械、建設資材というようなものに希望があるようであります。また、今までも船舶などについては、ずいぶん修繕その他の注文がございました。だが、売る物は日本側に相当あるように考えますが、買う物の方が私は非常に困難があるように考えます。木材でありますとか、石炭、石油、そのほか白金とかいろいろなものがございまするが、大きなものは石炭、木材、石油というものでありましょう。これらは今までの例によりますと、価格の点等においては、石油のごときも輸入は困難であります。木材が一番望みがあるように考えますが、これらもどれほど進みますか。ソ連側で申すように、五年以内に往復十億ルーブルというような金額に果してなるかならぬか。むろん国交が回復すれば、ある程度の増進はあると思いますけれども、先ほどの御質問にありましたように、非常に大きな期待をかけることは誤まりかとも存じております。
 以上、御答弁いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#27
○議長(松野鶴平君) 八木幸吉君。
  〔八木幸吉君登壇〕
#28
○八木幸吉君 私は総理に対し、日ソ交渉の焦点たる領土問題を中心としてお伺いをいたします。
 最初に総理に伺いたいのは、政党の党議、公約をいかにお考えになるかということであります。昨年十一月の自民党結成大会において、領土について、一、歯舞、色丹、南千島は無条件に返還せしむること、一、その他の領土の帰属は、関係国間において国際的決定をすることの二点をきめておられますが、今回の共同宣言は党議に反しております。この党議違反の政治的責任をいかようにお考えになるか、第一に承わりたいのであります。
 次に、鳩山訪ソのことでありますが、国民の間には、反対の機運が濃厚であり、党議さえもまとまらずに、閣議決定で強行されたのは世間周知の事実であります。何ゆえであるか。南千島を放棄して交渉を妥結し、鳩山引退の花道を作らんとしたからであります。河野農相はラジオの対談で、社会党政権防止の必要のためにこれをやるのだとさえ言っておられるのであります。結果はどうであったか。河野全権が十一月一日の長老会議で報告されているように、ソ連は南千島を一歩も譲っておりません。そこで私は総理に伺いたいのでありますが、第一に、引退決意の鳩山総理が、昨年六月以来、交渉のデッドロックである南千島の帰属を継続審議に譲って、それで政治責任が果せるとお考えになるか、また、この程度であれば、どこに鳩山訪ソの価値があったのであるか。総理が日ソ国交回復論者であるがために交渉が有利なりとせば、社会党政権がこれに当ればもっと結果はよいでありましょう。相手はそんな甘いものではありません。
 第二に、共同宣言の歯舞、色丹返還は、平和条約締結後という条件つきであります。しかるに国民は歯舞、色丹の引き渡しの文句に幻惑されて、南千島の放棄がその陰に隠されているのを見のがしております。これでは国民を錯覚に陥れるものと申さなければなりません。総理は南千島を放棄せずして平和条約を締結する確信があるかどうか。もしなければ、南千島の放棄を決心して歯舞、色丹の返還に踏み切られたのであるか、真相をはっきり伺いたい。
 第三に、共同宣言には、平和条約の継続交渉を約束されておりますが、領土条項を明記してはおりません。これは南千島は解決済みで、残るはただ国境線確定のみとのソ連の基本線を示したものではありませんか。もし、しからずとするならば、その具体的根拠を示されたいのであります。
 第四に、共同宣言も国際条約の一種である以上は、南千島帰属に関する具体的留保を明記せざれば、そのままソ連の領有を認めたことになりはせぬか、なぜ留保条項をつけないのであるかということであります。
 第五に、共同宣言の6に、賠償請求権放棄の規定がありますが、苦痛と損害を受けたのは、わが国日本であってソ連ではないのであります。侵略国にして、一方的開戦者たるソ連が放棄した賠償の内容は具体的に何があるか承わってみたいのであります。
 第六に、共同宣言6の二項に、戦争請求権放棄の規定があるが、これによって略奪された在満権益約二十億ドルをソ連にそのまま提供すれば、すでに賠償額を決定し、将来賠償額を決定せんとする諸国と、その金額が果してつり合いがとれるかどうか、またサンフランシスコ平和条約第二十六条との関係は、いかようになるのであるか、御説明をいただきたいのであります。
 第七に、ソ連が熱望いたしましたのは国交回復でありまするから、その後ソ連として、平和条約の締結を急ぐ何らの積極的理由はないのであります。政府は、政府の希望する交渉再開の前提条件となるところのものを具体的に伺いたいのであります。
 最後に、私は外務大臣に三点お伺いをいたします。
 第一は、重光外相はモスクワ会談で、南千島の日本固有の領土たることをきわめて明瞭に主張されました。敬服をいたします。しかるに交渉の半ばにして、突如態度を急変し、譲歩を決意されましたその理由を詳細にこの席で承わりたいのであります。
 第二は、鳩山総理は近く引退を表明しておられます。外交責任者として、南千島を放棄せずして平和条約締結の見込みがあるかどうか。モスクワ会談における体験を基礎として、その後の経過にかんがみて、確信に基く所見をこの席において承わりたいのであります。
 第三に、今回の日ソ交渉は、鳩山・河野ラインによって進められました。外務省は除外されておるのであります。この状態で確信あり、責任ある外交処理ができるとお考えになりますか。私どもは、当然その責任を尽し得ざるがゆえに辞職すべきものと考えるのであります。しかるに、てん然として今なお外相の席にとどまっておられる積極的の理由を私は承わりたいと思うのであります。
 以上、各項にわたって、率直明確なる御答弁を総理並びに外相に承わらんことを切望して私の質疑を終ります。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(鳩山一郎君) 八木君にお答えをいたします。
 自由党党議違反の政治的責任を問われましたが、党議違反云々は党内の問題であります。これは答弁の限りではないと私は思います。
 私が、交渉の焦点たる領土問題を継続審議に残して、果してその責任を完了したと考えるかという御質問でありましたが、十分に満足すべきものではありません、このたびの妥結は……。現状においては最善のものと思っております。今後平和条約の交渉が行われる際、十分わが方の主張を貫徹するように努力いたしたいと考えております。
 交渉妥結の私の国民に対する欺瞞というようなお話がありましたが、私は国民に対して欺瞞をした覚えはございません。
 平和条約締結の際に南千島を放棄せずとの確信ありや、むろん南千島を放棄したということはございません。択捉、国後の帰属につきましては、これから万全の努力をやはり継続していたしたいと考えております。
 歯舞、色丹の引き渡しは明瞭にして、領土交渉を継続条項から省いたのは、ソ連側の基本線に同調したのではないかという御質問でありましたが、領土問題が継続審議から除かれたということはございません。
 大体、私に対する御質問は答弁したつもりであります。他は外務大臣から答弁いたします。(拍手)
  〔国務大臣重光葵君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(重光葵君) 私にお尋ねの最後の二点についてお答えいたします。
 最後の一点は、南千島に対する日本の主張は今後も維持するか。こういう御質問であったように思いますが、むろん維持しなければならぬと思います。
 それから領土の問題について、今後その主張を通す自信があるかという第二の御質問であったと思います。これは非常に困難な問題だと私は思います。というのは、私がこの問題を、何とかして日本の主張を通したいと思って非常に努力をいたしたのでありまするけれども、これはできませんでした。そうしてそれは、ソ連は非常に強いのでありますから、その点は、私はすぐソ連がどうしてくれるとか、日本の主張を認めてくれるということについて自信を、今申し上げるわけには参りませんけれども、しかしこれだけは申し上げられます。日本として将来交渉の場合には、あらゆる努力を一つしてみよう、主張を通すように最善の努力をしてみようと、こういうことは、はっきりと申し上げられるのでございます。
 それから第三の問題は、外交の問題について、外務省が責任を尽しておらぬ、外交の問題が他の閣僚によって行われておる、これはお前は責任を尽しておらぬのだから、辞職すべきが当然じゃないかと、こういうお話でございます。これについては、私はあえて私の弁明を申し上げる意向はございません。しかしながら、外交のことは私は全責任をもってやっておるということだけを申し上げます。そうして日ソ交渉について、いろいろお話がありましたが、日ソ交渉は、これは鳩山内閣成立以来、つまり私が外務大臣になって以来、日ソの関係を正常化したいという方針でずっと参って、そのことは国会の開かれるたびに申しておるのであります。そのことを私は成就をいたしたい、日本の対外関係を十分に調整をいたしたい、こういう考えをもって今日までやっております。そうしてまさにそのことについて、日ソ関係の正常化について最後的の御意見を仰ぐ段取りまでなっておることを申し上げられるのであります。(拍手、八木幸吉君「答弁漏れがあります。賠償問題のソ連の放棄した賠償の内容と、それからサンフランシスコ二十六条との関連、戦争請求権を放棄したこと」と述ぶ)
 賠償問題については、サンフランシスコ条約で賠償の問題を取り扱っておる条項に準じて、これは規定をいたしております。そこで双方どういう要求があるかということは、詳細には、交渉の段取りに出て参っておりません。しかしながら、かような問題は将来何かと問題にならないために、はっきりとさしておく必要があるのでありますから、国交の正常化の際に、もう一括さようにきめて、そうして将来のいざこざをなくして平和関係を確立しよう、こういう考えになって参ったのであります。
    ―――――――――――――
#31
○議長(松野鶴平君) 野坂参三君。
  〔野坂参三君登壇、拍手〕
#32
○野坂参三君 私は日本共産党を代表して、鳩山総理大臣、重光外務大臣に対して、私に与えられたわずか数分間の持ち時間のうちに、二、三の質問を試みたいと思います。
 御存じのように日ソ両国の国交の回復は、過去十一年間日本政府のとり続けてきたアメリカ一辺倒の外交政策を転換して、わが国が平和と独立の方向へ進む重大な第一歩であります。しかるに、政府は、モスクワで共同宣言に調印しようとしたそのときに、国内的には砂川に、ソヴィエトに向けられた原爆基地を作るため、わが同胞の血を流すことをもあえてしたのであります。このような事態を目の前にしては、われわれ国民は、政府がソヴィエトと真に友好関係を回復しようと考えているかどうか疑わざるを得ないのであります。そこで私は、国民にかわって政府に若干質問したいのであります。
 まず第一に、政府は何のために、また、どこの国に向けて軍事基地の拡張に狂奔するのであるか、お答え願いたい。アメリカと日本政府は、従来ソヴィエト、中国を仮想敵国として軍備を拡張してきました。日ソの国交回復ができようとする今日においても、総理大臣と外務大臣は、なお依然としてこのような考えを持っておられるのかどうか、この点もお聞きしたい。
 また重光外務大臣は、昨日の外交演説の中で、こう申されております。平和五原則、すなわち内政不干渉、主権尊重などの原則は、国際間の基礎的観念であり、今次日ソ共同宣言においても、互いにその順守を約束しているところであると、こう申されている。もし真にこの立場に立って、平和と独立を求めるならば、政府はアメリカ政府と交渉を開始し、沖繩を含む全国の軍事基地の拡張を直ちに取りやめるべきであります。(拍手)
 さらに進んで、この主原則に反して、わが国に他国の軍事基地を許し、わが国の主権を侵害し、わが国の独立を妨げているサンフランシスコ平和条約、日米安全保障条約、行政協定、MSA協定などの不平等条約を改廃すべきであります。政府は、これらの交渉を直ちにアメリカ政府と行う決意があるかどうか、はっきりとお答え願いたい。もしその決意がないとするならば、総理の唱えておられる平和と独立の言葉も、外務大臣の唱えておられる平和三原則の尊重も、ただ国民をごまかすためのものであるとわれわれは断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 第二に、総理は平和愛好諸国と提携すると言っておられます。国民は日ソ国交回復に続いて、当然中華人民共和国と国交正常化が実現するものと、心から期待しております。政府はこの国民の期待にこたえて、直ちに中国政府と話し合いを始める用意があるかどうか、お答え願いたい。
 さらに、朝鮮民主主義人民共和国、蒙古人民共和国、ヴェトナム共和国などのアジアの諸国並びに東ヨーロッパ人民民主主義諸国との国交を正常化するために交渉を開始すべきであります。これらの諸国と国交を正常化することなしには、アジア・アラブの諸国の信頼を得ることはできない。国際社会における日本の地位も確立しないのであります。
 最後に、日ソ共同宣言が批准されても、両国間の平和と友好関係が具体的に進められるかどうかは楽観を許しません。なぜならば、過去一年半の日ソ交渉の経過が示しているように、ソヴィエトとの国交回復に反対する日本国内と、海のかなたの反動勢力が、今後もあらゆる妨害を企てるからであります。このことは、自由民主党の方々がよく御存じのことです。日ソ国交回復の実を結ばせるためには、鳩山総理も言っておられるように、国民が一致団結する必要があります。ところが、実際にやっていることは、国民の一致団結を乱すことばかり実はやっているのです。政府は世論に抗して、議会政治を破壊するような暴挙までもやって、ストライキ規制法の延長をはかろうとしているではありませんか。国民の大多数の窮乏を土台にして軍備の拡張を進めているではありませんか。すべての勤労者の生活と権利を踏みにじって、少数の大資本家の繁栄だけを謳歌しておるのではありませんか。このような政府の政策は、平和と独立と民主主義に向っての国民の団結を破壊する以外の何ものでもありません。これこそ国民に対する政府の挑戦であります。これについての鳩山総理の見解を問うものであります。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(鳩山一郎君) 野坂君にお答えをいたします。
 第一の御質問は、安保条約及び行政協定の改訂を米国に交渉すべきであると考うるが、私の所見をお聞きになりました。わが国をめぐる現下の国際情勢から判断して、安保条約及び行政協定の改廃を交渉すべき時期ではないと考えております。
 それから米国に対し、基地拡張の取りやめ、さらに進んでその撤廃を要求する意思なきやという御質問であります。基地の拡張は、わが国の国土防衛と安全保障条約の義務履行という見地から、必要最少限のもののみを実施することにいたしているものでありまして、米国に対し今直ちに全面的に拡張の取りやめ、ないしは撤廃を要求するわけには参らないと思っております。
 今回の共同宣言には、平和と友好善隣関係を唱えておるにかかわらず、それに反する事態が多々生じておる、国民はその実現に疑惑を持っておる、首相はその完全実施の責任と保障を示されたいという御質問でありますが、政府としては、共同宣言の趣旨に即し、日ソ間の平和と友好善隣関係の確立に努めたい所存でございます。
 以上、答弁申し上げました。(拍手)
  〔国務大臣重光葵君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。
 ただいまの御質問は、国民の名においてするというお話でございましたが、私は日本共産党の御主張であると伺ったのであります。(拍手)この御主張の根本においては、非常に意見を異にしておるものがございます。軍事基地、その他の問題については、ただいま総理大臣のお話の通りに私は考えております。
 なお五原則云々と申しますが、この五原則は、共産党の方で主として論ぜられたものと思います。私もその内容の文字については、これは昨日も演説しました通りに異存はございませんが、これらの問題に対しては、日本政府として、日本政府の考えるところによって平和政策を進めて行こう、こう考えておることを申し上げます。
 以上でお答えを終ります。(拍手)
#35
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は、終了したものと認めます。
 本日の議事日程は、これにて終了いたしました。
 次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後一時十六分散会
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ソース: 国立国会図書館
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