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1956/11/27 第25回国会 参議院 参議院会議録情報 第025回国会 社会労働委員会 第6号
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1956/11/27 第25回国会 参議院

参議院会議録情報 第025回国会 社会労働委員会 第6号

#1
第025回国会 社会労働委員会 第6号
昭和三十一年十一月二十七日(火曜日)
   午前十時四十七分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
本日委員片岡文重君、山下義信君、坂
本昭君及び木下友敬君辞任につき、そ
の補欠として栗山良夫君、田畑金光
君、大矢正君及び藤田進君を議長にお
いて指名した。
    ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     千葉  信君
   理事
           榊原  亨君
           安井  謙君
           山本 經勝君
           早川 愼一君
   委員
           小幡 治和君
           大谷藤之助君
           木島 虎藏君
           草葉 隆圓君
           佐野  廣君
           野本 品吉君
           吉江 勝保君
           大矢  正君
           栗山 良夫君
           田畑 金光君
           藤田  進君
           藤田藤太郎君
           田村 文吉君
           竹中 恒夫君
  国務大臣
   労 働 大 臣 倉石 忠雄君
  政府委員
   労働政務次官  武藤 常介君
   労働省労政局長 中西  實君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       多田 仁己君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○電気事業及び石炭鉱業における争議
 行為の方法の規制に関する法律附則
 第二項の規定により、同法を存続さ
 せるについて、国会の議決を求める
 の件(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(千葉信君) それではただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 この際、委員の異動について御報告申し上げます。十一月二十七日付をもって山下義信君、片岡文重君、坂本肥料並びに木下友敬君が辞任せられまして、その補欠として田畑金光君、栗山良夫君、大矢正君並びに藤田進君が選任せられました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(千葉信君) 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件を議題といたします。
 本案に対しましては、提案理由の説明を聴取いたしたのでありますが、さらに詳細な点について、倉石労働大臣の説明を願います。
#4
○国務大臣(倉石忠雄君) 御審議を願いますこの法律につきまして、先般提案理由の御説明を申し上げましたが、それを補う意味で若干の事柄をなお申し上げたいと思います。
 御無知のように、この法律は昭和二十七年の電産、炭労の大きな争議に起因いたしまして、当時の情勢からみてこの法律が誕生いたしたわけでありますが、私どもといたしましては、この法律の一番大きなねらいというものは、一般労働関係は申し上げるまでもないことでありますが、経営側と労働組合側との争議行為は、大体労働条件その他のことについて話し合いがつかないような場合に、それでは組合側としては経営側に対して承服することができないから、あなたの方に向って経済的損失を与える労務の提供をしないぞ、雇用関係は存続しながらもそういうことで相手方に対する経済的な畏怖心を持たしめるということが大きなねらいでありますが、本案に申しますような争議行為の手段というものを進めて参りますというと、そのことの結果、経済的損失を与えるぞという相手方に対する畏怖よりも、むしろその経営及び労働関係に何らの関係を持っておらない一般大衆に最も大きな被害を及ぼす、こういうことでありまして、私どもはそういうことは正当なる争議行為としては、そういう手段をとることは適当ではない。つまりこういう社会公共の福祉を阻害するような行為は争議行為でもやってはならないのだと、こういうことでありまして、その利益の保護というのは、一般社会公共の、民生安定の安心感を持たせる、こういうことに一番大きなねらいを持っておるわけでございます。それからまた、この法律は、今回期限が切れまして、八月七日に切れまして、法律の命ずるところによりまして、期限が切れて二十日以内、またそのとき国会が召集されてないときには次の国会の開会後十日以内に提案しなければならないという、法律の命ずるところによりまして、皆様方に存続するの議決をしていただきたい、こういうことで提案をいたしたわけでありますが、本法が、この前の本法制定のときと法律そのものについては何の変更もございませんことは御承知の通りでありますが、問題は三年前のこういう法律を必要といたした状況と、三年後の今日の状況判断については、見る人によっていろいろ御論議があろうと存じますが、私どもは、当時私個人がまた立法に携わりました一人といたしまして、三年間の間、本法関係の労働関係について注意深く観察をいたしておったのでありまするが、私どもの認識といたしましては、本法はなお存続する必要があると、こういう客観的情勢を認識いたしましたので、ここに存続するの議決を求めるという提案をいたした次第であります。こういう趣旨でございまして、しからば将来に向ってどういう考えであるかということになりますと、私どもは本法が三年前に制定されるときにも国会でしばしば私自身も申したことでありますが、かくのごとき争議行為の手段というものは、特に規制されないでも当然なさるべからざることであるのでありますから、これはやはり一日も早くよい労働慣行が成熟することによって、本法のごときものがその必要性を失うというようなところまで或熟することを期待いたしますし、政府といたしましてもそういうことに全力をあげて協力をし、指導いたしていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
 なお、本案の議決は、御審議の中途において、いろいろな点について御質疑もあることと存じますから、そういう機会に、あとう限り私どもの気持を率直に申し上げて御了解を得たいと思いますが、一応、先日申し上げました提案理由の説明を補充する意味で、私どもの考え方を申し上げた次第であります。
#5
○委員長(千葉信君) 中西労政局長。
#6
○政府委員(中西實君) もうございません。
#7
○委員長(千葉信君) それでは補足説明については、今お聞き及びの通りでございますが、これから質問に入りますことは、いずれ総理の出席を待って総括質問に入る予定になっておりますが、理事会の申し合せもございますので、この際二、三の方に質問をお許しすることにいたしたいと存じます。
 なお、出席されておられます政府委員は、武藤労働政務次官並びに中西労政局長、そのほか説明員として石黒労働法規課長が出席いたしております。御質疑のある方はただいま申し上げた範囲内で順次御発言を願います。
#8
○安井謙君 ただいま労働大臣から、本議決案の内容について詳しく御説明をいただいたわけでありますが、私基本的な問題について二、三の御質問をしたいと思う次第であります。
 第一に伺いたいことは、本案は三年間の時限立法になって、三年間を経過したので、その処置を院議に問うという形で政府からお出しになった。これは法律によってお出しになったのでありまするが、その最初は、この委員会における審査省略ということを政府としては御要求になったように伺いますが、それが衆議院との関係でいろいろ議長のあっせんもあって、これを常道の委員会へ移すというふうに中途で御方針をお変えになったように伺っておりますが、これにつきましての経緯について一応御説明を伺いたいと思う次第であります。
#9
○国務大臣(倉石忠雄君) 当初私どもの考えましたのは、この議決案は継続審査を許さないということであります。それからまた臨時国会でございますので非常に短期でありまして、政府としては本法の存続をぜひ議決していただきたいという考え方でありますが、臨時国会はきわめて短期であるということと、もう一つは御承知のように、ただいま大きな労働組合がいわゆる秋季闘争という形で、各方面にいろいろな問題が起っております。労政当局としては、一日も早くこのような状態をなるべく早く安定することが非常に望ましいことでありまして、各民間産業の単産などでも、それぞれ妥結をみるものはどんどん戦列からはずれておりますが、そういうようないわゆる秋季闘争という格好に出てきておる今日のような労働情勢で、しかも労働関係に関係のあります本法のようなものが長くペンディングになっておりますということは、やはりそのために、新聞でも御承知のように、抗議ストなどというようなものが伝えられるような状態でございますので、労政当局としてはなるべく早くこういう問題を安定することが望ましいと、これらの考え方から、ことに法律は現存いたしております法律に何ら新しいものを加えるわけではありませんで、本法の存続を議決していただくということだけでありますから、委員会の審査を省略して、本会議においていろいろな御質疑もあるでありましょうが、そういう形で議決をしていただくことが望ましい、こういう考えで政府の希望を申し入れたわけであります。ところが国会の両党において、党幹部間にいろいろな折衝が行われまして、これはやはり両党としても、委員会にかけて審議をする方が望ましい、政府はそれについてどう考えるかということでありましたから、両党がそういうお考えで、御審議を願うのにその方がよろしいということであれば、政府としてもあえて固執するものではありませんので、こういうことで撤回をいたした、こういう事情であります。
#10
○安井謙君 撤回をするについては、両党の間で何か特別のお話し合いでもあったというふうなことをお聞きになっておりますか。
#11
○国務大臣(倉石忠雄君) 両党の間でお話し合いがありました話を承わりますというと、衆議院において審議日数をきめる、そうして参議院においても、衆議院の例にならって、大体審議の日程をきめる、こういうお話で、そのほかなおその声明書の末尾には、文句は記憶いたしておりませんが、たしか前国会の混乱のあとで両党首脳部の間に覚書を交換されております。そうして国会運営は、何と申しますか、きわめて穏やかにやっていく、こういう意味の声明が響いてございまして、この趣旨であるから政府は撤回される方がよかろう。こういうことでありました。
#12
○安井謙君 まあ、いきさつについては了承いたしましたが、本案の内容について一、二伺いたいと思うのです。
 労働大臣はこの本案については、できるだけ労使の間で円熟な慣行ができ上れば撤去したい、こういうお話をしておられるようであります。これについて、今一部では、この本法がいわゆる憲法の二十八条にいう勤労者の団結権、あるいは団体行動権についての制約を加えるものである、いわゆる基本的人権の制約であるというふうな意見が、一部であると思いますが、私あるように思いますが、これに対する政府の明快な御見解をあらためて伺っておきたいと思います。
#13
○国務大臣(倉石忠雄君) 憲法に認めてあります国民の自由権というものは、私は平等に尊重せらるべきものであると思うわけであります。衆議院の委員会における御議論の中に、共産党の川上代議士の説にこういうのがありました。憲法二十九条の財産権の保障については、公共の福祉のために制限を受けるということをうたっておる、しかし二十八条の勤労者の団結権、団体交渉権及び団体行動をする権利はこれを保障するとなっておるので、何も書いてない、従ってこれは何らの制約を受けるべきものではないのだ、こういう川上君の御意見でありました。私どもはもしそういうことであるならば、労働組合法に保護されておる労働組合の団体行動権というものは、何をやってもいいということではないのであって、いかなる国民の自由権も法益は均衡されておらなきゃならぬ。ことに民主主義の国では、つまり個人の尊厳を尊重するのでありますから、各個人はそれぞれの自由を持っておる。しかしながら、その自由権の発動するところによって、多人数の者の利益を阻害するような行為は当然許すべきでないというのが憲法の精神である、私どもはさように解釈をいたすわけであります。従って国民の市民権というものは、やはり憲法十二条及び十三条の持っておる権利を乱用してはならないということと同時に、また十三条の、すべて国民は、個人として尊重される、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重を必要とする、これはすべての市民権におおいかぶさってくるものであるとわれわれは解釈いたしておるわけであります。従って安井さんも御存じのように、日本には、なるほど川上君の言われるように、憲法二十八条に特に規定はいたしておりませんが、近代できて参ります諸国の憲法を見ましても、たとえばインドの憲法、フランス共和国憲法、それからイタリア憲法なぞ、いずれも皆あるものは、他の法律に定める範囲内において労働者の団体行動権を許すとか、あるいは他の法令の範囲内において、といったようなことを皆書いておりますが、これは書くと書かないにかかわらず、私どもは憲法全体をおおう、この十二条、十三条の国民の公共の福祉ということは、すべての市民権の自由なる行動に対して一応優先するものである、こういうことでございます。しかしながら、憲法二十八条の勤労者の団結権、団体交渉権及び団体行動権というものは、それによって起きてきておる、労働組合法にいう正当なる労働運動、これはつまり刑法三十五条の援用を受けるということでございますから、あとう限りこれが守られなきゃならないということについては、私どもは当然なことだろうと思います。しかし、この法律で規制いたしております二つの行動――二つの産業の労働組合の行動のうちの二つの手段、この手段は、やはり今申しました立場から考えまして、公共の福祉という立場から、われわれとしては争議行為としてでもなすべからざるものであると、このように考えておるわけであります。
#14
○安井謙君 今の憲法第二十八条の基本的人権と、それからいわゆる社会公共の福祉と、この間の限界と申しますか関連は、非常にむずかしい問題だろうと思うのであります。私はこの問題を取り上げた場合に、この争議関係というものは、電気、石炭だけでもあるまい、ほかにもそういった問題に関連するんじゃないかと思うんでありますが、その他の問題については、労働大臣、どういうふうにお考えになりますか。
#15
○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、私は実はこの間、夏、ILOの総会にジュネーブに参りました機会に、この法律のことが頭にございましたのですから、歩きましたヨーロッパの諸国の公益事業に対する法律関係について、若干の調査を出先に頼みましていたしましたが、御説のように、ガス、水道などというものについて一般的に規制をいたしておる国もございますが、日本でも、私設鉄道であるとか、あるいは今のガス、水道というふうなものについて、公共性を強調して何らかの規制を加えるべきではないかという御意見もあるようでありますが、政府といたしましては、ただいまのところ、そういうふうに、他の産業に対して類似の規制をいたそうとは、考えておりません。もともとこの法律すらもよい労働慣行が成熟してくれば、このようなものはやらないのが当りまえだと、こういう組合があるのであります。現に衆議院の社会労働委員会で、公述人としておいでになりました方々の中でも、われわれは法律によってこれを規制されることは反対であるが、私どもはこういう手段というものは、争議手段としてはやらないほうがいいと思っているんだという意味のことを、お二人ほど述べておられました。そういうわけでありますからして、私どもは、そういうお考えの方がたくさんに出てくれば、法律を無理に制定することはないと思う。しかも、たとえば私設鉄道なんということになりますというと、これはやっぱり多くの問題が内在いたしておると思いますので、こういうことに対しまして規制というふうなことを考えるということになると、これは非常に問題が大きくなると思います。従って、政府は、どこまでもよい良識の成熟を希望するという立場でございまして、他の産業に対しては、そう法律などで規制をいたしていかないほうがいいと、こういうように今は考えおります。
#16
○安井謙君 今大臣の御説明によりますと、まあ社会公共の福祉を守るという最低の線として、電気と石炭の側のストライキの方法について一部の規制をやむを得ずやっておられる、こういうお話のようでございますが、私は、まあそういう公共の福祉を守るという点からやむを得ずやられるにもかかわらず、やはり一部では、そのために勤労者のスト権を一方的に制約することになって、経営者のほうは野放しになっておるんじゃないか、こういうふうな意見をときどき出される力があると思うんでありますが、まあ実例としましては、たとえば、炭労なんかで経営者がロックアウトをやった場合に一方的に勤労者の側としては保安を維持するだけの義務を持たなくていいはずじゃないか、こういう議論も相当強く打ち出されておるように思うのでありますが、こういう点についての御見解はどうでありますか。
#17
○国務大臣(倉石忠雄君) 労働者という立場から、私どもはそういう点について、非常にいろいろ考えさせられるわけでありますが、御承知のように、わが国では、ストライキをやって労務提供を拒否するというときに、依然として両名の雇用関係というものは継続いたしておるのであります。従って、こういう所に勤めていることはいやだ、この場合に保安要員として引き揚げをしないなどということはいやだというお考え、あるいはまたこの会社に勤めておるのはおもしろくないという方は、これは契約自由の原則で雇用契約を破棄されれば別でありますが、雇用関係を維持してそこにおいでになる方は、やはり保安業務だけは引き揚げられては困る。このことは、その保安業務の放棄という結果どういう事態が出てくるか、最悪の場合のことを考えますならば、あるいは溢水とかガス爆発というふうなことも予想しなければなりませんので、そういうことは争議行為としてでもやってもらっては困る。こういう必要最小限度の争議手段の規制である、こういうことでございますから、私どもはこの点は労働組合側にも守っていただかなきゃならない。一方、経営者側は、御承知のように、保安の責任者でございます。また、同時に、鉱山保安法などによっていろいろな施設を鉱山保安のためにしなければならない義務を負うておるわけであります。そういう立場で、片方は全然の野放図であり、片方だけが義務を強いられるというものではないと私は考えます。
#18
○安井謙君 そうしますと、技術的に言いまして、たとえば経営者側がロックアウトをやった場合に、その保安維持の責任は経営者側にあるんであって、勤労者側にはその責任はなくなるんだ、消滅するんだというふうな考え方が出てきやすまいかと思うのでありますが、その点はどういうようにお考えですか。
#19
○国務大臣(倉石忠雄君) 実際問題として、炭労の争議は、部分ストが行われて、それの対抗手段としてロックアウトは行われました。ところが、そのロックアウトの場合に、保安側要因をロックアウトはいたしておらないわけであります。それからまた、その保安要員というものは、会社によっては団体協約できめておる所もあり、あるいは両者話し合いでどういう部分のものが保安要員であるかということを相談してきめておる所もありますから、そういうようなそこの両者の関係できめております保安要員というものは、当然ロックアウトをされておらないわけでありますから、そこでその場合でもやはり保安要員だけは差し出してもらわなければならない、こういう結果になるわけであります。
#20
○安井謙君 そうすると、この法律は、結局、労働者側、経営者側、両方に共通したそういった争議の方法を共通的に除外したものと、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
#21
○国務大臣(倉石忠雄君) あまり例のないことかもしれませんが、経営者側がやはり保安を怠るということになれば、これは違法でございます。
#22
○安井謙君 一人でいつまでも質問をしてもどうかと思いますが、大体この法律は、この前政府の意思にかかわらず、議会の意思では三年間の時限立法になったということになっておりますが、これは今度政府がお出しになったのは恒久法のような形で、年限をきめるという御意思がないように伺っておりますが、この点についてなぜそういうふうになったか、あるいは今後これに年限を付するというような御意思がおありになるかどうか、その点について。
#23
○国務大臣(倉石忠雄君) 当時立法に携わられました議員さんもここにお見えになっていらっしゃいますが、私どももそうであります。この法律は、御承知のように第十五国会に当時の政府が提案いたしましたときには、三年経過したならばもう一ぺん議決を求めなければならぬということはなかったわけです。そこで十五国会で衆議院が解散になります前に、衆議院の方で、両党――両党でございますか、三党で話し合いがつきまして、そして三年を経過したなら云々という今度の付則がついたわけです。そこで、このたびの提案に際しましては、私どもも先ほど来申し上げておりますように、よい労働慣行の成熟を待って、こういうようなものはなくてもいいように早くしたいのだということが当時からの考えでありましたから、今回もまたそういう点についても考えてみましたが、法律によりますというと、これはそういうかりに期限をつけるということになれば、別な立法措置を講じなければならぬのだそうであります。従ってそういうことをしていろいろ混淆することもどうかと思いますし、第一、今申し上げましたよい労働慣行というものが成熟すれば、法律というものは国会でいつでも廃止されるわけでありますからして、この際は法律手続に従って存続を求める、こういう措置に出たわけであります。そこでしからばどこまでも、たとえば刑法のような基本的な法律のように、この法律の永久性を希望するかということになれば、それはそうではないのでありまして、先ほど来申し上げておりますように、良識が成熟してきたとき国会においてもう一ぺん相談いたし、そしてこの法律に対する措置をきめてもらいたい、このように考えております。
#24
○委員長(千葉信君) ほかに御質問ございませんか。
#25
○早川愼一君 労働大臣にお尋ねいたしますが、このスト規制法によって、組合なり、組合員が受ける利益というものはどういう点でありますか。まあストそのものの争議行為が制限されるということはよくわかるのですが、そのほかに何か特別に……、私どもの考えるのは、たとえば労働組合法の正当な保護を受けることができないとかいうことはよくわかるのですが、それ以外にストを、この手段をとったために何か非常に不利益をするとか、実際問題としてどういうことが予想されるのでありますか。何か刑罰を受けるような感を世間の人が一般に受けておる、誤解されておるのではないかと思うのですが、その点は必ずしも刑罰というような問題――直接この問題とはならぬと思うのですが、これに対する労働大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
#26
○国務大臣(倉石忠雄君) この法律自体には刑罰規定はございませんが、この法律によって禁じられておる行為をかりになさったような場合には、今の御指摘のように、はね返って労働組合法による保護を失いますからして、あるときは損害賠償の問題も起きて参るでありましょうし、それからまたその行為がだんだん激しくなって参りましたならば、旧公益事業令あるいは鉱山保安法等に抵触するようになればその罰則を受ける、そういう結果になると思います。
 それから私どもの立場から一番心配いたしますのは、健全な労働組合が、先ほど申しましたように、われわれは法律で禁止されることは反対であるが、自主的にかようなことはなすべきではないと思っておるのだと、こういうことを相当思っておることば御承知の通りであります。ところがかりにこの法律に禁止されているようなことをいたして、そうして二十七年当時のように非常に大衆の憤激を受けるような停電ストなどをやりました場合には、せっかくこの現実に発展の一路をたどっております日本の労働運動に対して一般国民の非常な憎しみを受けることになるのでありまして、私どもは、そういうことはせっかく今日まで伸びて参りました日本の労働運動の発展の、よいほんとうの芽をつむことになる。私は思うのでありますが、政治活動でも労働運動でも究極するところ、やはり大衆の理解と同情がなければ成功しないのでありますからしてそういう意味で私はこの規定されているような行動をかりに取った結果はどういうことになるか、私は労働運動のために悲しむべき逆作用を持ってくる、こういうことを非常におそれるわけであります。
#27
○早川愼一君 そこで先ほど来からよき慣行が成熟するように、そうすればこの法律は必要はないのだ、よき慣行が成熟するということは、たとえば炭労関係におきまして経営者と組合との間にいかなる場合も保養要員を引揚げるような争議手段に訴えないというような約束ができて、あるいは電気関係におきましても停電ストとか電源ストというような、そういう争議手段はお互いにやらないということを約束することが慣行の成熟となるのでありますか。それとも事実上何らの事故が起きなかったということで一つの慣行と認められますか、その辺の慣行という意味はどういうふうに御解釈になりますか。
#28
○国務大臣(倉石忠雄君) 私は、もしわが国に日本の産業を早く破壊さして、そうして社会革命の動機を作ろうといったような考えを持っている者があるといたしましたならば、そういう者とは一緒に同じ広場でお話しをすることはわれわれには不可能でありますけれども、日本の労働大衆というものはそういうものじゃないと私は考えているのであります。つまり究極において民間産業でも経営側と労働側というものは利害は一致いたしているのだ、そういう立場でございますから、御承知のように、終戦後の日本の労働運動というものも非常に安定してきております。たまさか失敗はありますけれども、この失敗というのは私は労働運動ばかりじゃありませんで、民主主義そのものに対して私ども国民自体がなお成熟しておらないのでありますから、労働運動においてたまさか失敗があったって、そんなことは長い月で見て、歴史の流れから見たら大したことはないと思うのですが、そこでこの組合と経営者が、先ほど申しましたような基本的なものの考え方でございますからして、政府は昭和三十一年度予算にも若干の経費を作りまして八つの重大産業、たとえば石炭、造船、電気、繊維、こういったようなところには労使の協議会を作るように勧奨いたしまして、そういうようなところで大いに経営と労働側との話し合う場所を作って相互理解を深めていくというふうなことを進めておりますが、御承知のように、すでに繊維産業ではりっぱなものができまして、先般盛大な発会式が行われて、組合も非常にこの点に協力しております。また、電気関係でも関西電力にもございますが、最近東北電力などでは同じような趣旨で、そういう催しを持つようになってきておるわけであります。そういうふうにだんだんなって参りますることによって、経営自体、その企業自体に対する労働側の一般の理解が深められ、同時にまた、労働組合側の実情、あり方などについて経営側が十分なる理解を持つというふうにだんだん傾向が向ってきております。私は経営側でも特にこれは企業別ではございませんけれども、最近経済界の動きをみますと、御承知のように、経営の目的が株主と、それから労働者だけではないのであって、つまり第三者である国民の消費者の利益を一番考えなきゃならぬといったような、まあ経営の倫理観とでも申しましょうか、そういう動きも強く出てきております。私どもはそういうような幾多の事情を総合いたしまして、経営と労働との間によき慣行が生まれて参るようになれば、本法で憂えておりますような手段というものはだんだんこれはなくなる、こういうふうに考えて、そういう風潮を助成するように政府としても努めておるわけであります。
#29
○早川愼一君 これは新聞で拝見したのでありますが、何か労働大臣が衆議院の委員会において、本法の在続については、ある一部の労働組合においても賛成しているのだというようなことを言われましたところが、すぐ電気関係の方でありましたか、何か抗議を申し込まれたという話がありますが、その点についてのいきさつをちょっと御説明願いたいと思います。
#30
○国務大臣(倉石忠雄君) 新聞というのは長くしゃべった中のちょっとしたところだけ書くものですから誤解を生ずるようであります。私が、この間衆議院の社会労働委員会でしばしば大いにほめたところが、逆に叱られた。こういって笑ったわけでありますのは、全国電労連の方々が二、三度私のところへお見えになりまして、そして私ばかりじゃありません、局長、次官、列席しておりましたが、その席でまあ言葉のやりとりで多少の誤解はあったかもしれませんが、私が受け取ったのは、こういう争議手段というものはもうわれわれはやりはしませんよ、だからこんな法律は要らないじゃありませんか、こういうお話でありました。やりやせぬということは、もう二十七年当時からみると、非常に変られたのだ、まことにけっこうなことでありますといって、電労連をしばしば引き合いに出しましたところが、誤まり伝えて、電労連はこの法律の存在に賛成だと言っておる、こういうふうにおっしゃった方があるとみえて、賛成しておるのではないと、書いたものをお持ちになりました。その末尾を読んでみますと、「争議の対象が会社、使用者であり、公共事業の労働者として乱用すべきではなく、組合の良識の上に立って判断すべきものであって、電気労働者が誠意と自主的に決定することであるとの態度を明らかにしているものであります。」こういうふうに述べられてございますので、やはり自主的に良識の上に立って、そしてそういうことはやらないのだ、法律でこういうことをきめられる必要はないではないか、こういうことをおっしゃったわけであります。
#31
○早川愼一君 ちょっと重ねてその点についてですが、そういったようなことも一種の慣行で、だんだん成熟していけば、社会的にみてよき慣行が行われておると認められる証拠じゃないかと思いますが、その点、いかがですか。
#32
○国務大臣(倉石忠雄君) 私は二十日ほど前と思いますが、どこか大きな新聞に、全労会議の和田書記長のお書きになった本法に対する批評の論文を拝見いたしました。皆さんもお読みになったことと思います。今私が申しました電労連の例を引きましたと同じような趣旨で、私はあの和田さんのおっしゃることは九〇%われわれと意見が一致だと思います。ただ最後のところで、この法律が要らぬという結論、そこのところが違うだけであります。私はこの法律は、一応労働組合側としても反対をされる方もあるかもしれませんが、私はやはり非常によい労働慣行がだんだんと成熟して参っておる、こういうふうに了解いたしております。
#33
○委員長(千葉信君) 本案の本日の審査は、この程度にいたして御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#34
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十七分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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