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1956/11/22 第25回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第025回国会 社会労働委員会法務委員会商工委員会連合審査会 第1号
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1956/11/22 第25回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第025回国会 社会労働委員会法務委員会商工委員会連合審査会 第1号

#1
第025回国会 社会労働委員会法務委員会商工委員会連合審査会 第1号
昭和三十一年十一月二十二日(木曜日)
    午後二時五十二分開議
 出席委員
 社会労働委員会
   委員長 佐々木秀世君
   理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君
   理事 藤本 捨助君 理事 赤松  勇君
   理事 滝井 義高君
      植村 武一君    加藤 精三君
      加藤鐐五郎君    亀山 孝一君
      草野一郎平君    小島 徹三君
      小林  郁君    田子 一民君
      田中 正巳君    仲川房次郎君
      中山 マサ君    八田 貞義君
      松岡 松平君    松澤 雄藏君
      亘  四郎君    井堀 繁雄君
      岡  良一君    佐々木良作君
      多賀谷真稔君    堂森 芳夫君
      八木 一男君    八木  昇君
      渡辺 惣蔵君    中原 健次君
 法務委員会
   委員長 高橋 禎一君
   理事 椎名  隆君 理事 猪俣 浩三君
      小島 徹三君    世耕 弘一君
      横井 太郎君    川上 貫一君
 商工委員会
   委員長 神田  博君
   理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君
   理事 笹本 一雄君
      菅  太郎君    首藤 新八君
      田中 龍夫君    中村庸一郎君
      松岡 松平君    森山 欽司君
      加藤 清二君    佐竹 新市君
      田中 武夫君    松尾トシ子君
      山口シヅエ君
 出席国務大臣
        通商産業大臣  石橋 湛山君
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        法制局次長   高辻 正巳君
        検     事
        (刑事局長)  井本 臺吉君
        通商産業事務官
        (石炭局長)  讃岐 喜八君
        通商産業事務官
        (鉱山保安局
        長)      小岩井康朔君
        通商産業事務官
        (公益事業局
        長)      岩武 照彦君
        労働事務官
        (労政局長)  中西  實君
 委員外の出席者
        法制局参事官
        (第三部長)  西村健次郎君
        検     事
        (刑事局公安課
        長)      桃沢 全司君
        社会労働委員会
        専門員     川井 章知君
        法務委員会専門
        員       小木 貞一君
        通商産業委員会
        専門員     越田 清七君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法
 の規制に関する法律附則第二項の規定により、
 同法を存続させるについて、国会の議決を求め
 るの件(内閣提出、議決第一号)
    ―――――――――――――
  〔佐々木社会労働委員長委員長席に着く〕
#2
○佐々木委員長 これより社会労働委員会、法務委員会、商工委員会連合審査会を開会いたします。先例によりまして委員長の職務は私が行います。
 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件について審査を進めます。
    ―――――――――――――
  電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件
   電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件
  電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律(昭和二十八年法律第百七十一号)附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求める。
    ―――――――――――――
#3
○佐々木委員長 質疑の通告がありますので、順次許可いたします。松岡松平君。
#4
○松岡(松)委員 労働大臣にお尋ねしたいのですが、この法律は、提案の趣旨にも明らかな通り、公共の福祉を守る性質のものであることは議論はないのですが、一体現在の経済環境、企業者側と労働者側の間において、こういう法律を出さなければならぬという環境が那辺にあるのか。この組合の情勢を見ますと、昭和二十八年の八月ごろでは電産の組合員数は、組合員総数十三万余に対して六万四、五千の人数であった。ところがこの法律が施行されて三年の間にこの組合員数の異動が行われて、電産組合は今日では八千余の数に変っておる。この両組合の経過においても、私どもの見たところでは、相当の違いがある。この三年の間に双方の自覚で労使の関係もかなり変ってきているのではないかという見方もあります。しかし現在においてこの法律をもし廃止するとしたならば、せっかく順調になりかけてきた労使の環境もまたくずれるのか、こういう点について大きな疑問がある。この法律を存続しておることによって、企業者に大きな特権を与えるように言われる方もある。しかしながら、この法律によって電気関係及び炭鉱関係の労働者がしかく不利益な環境に置かれるとは、私どもは考えられないのであるが、これに対する労働大臣の見通しなり、御所見を承わりたいと思います。
#5
○倉石国務大臣 お尋ねの点は、この委員会でしばしば論議されました通りでございますが、三年前と三年後の経過を見まして、当該産業の労働組合がどういう情勢にあるかということにつきましては、電気関係については、ただいま松岡さん御指摘の通りでありまして、電労連というふうな非常に穏健な行動をとろうとする組合が出ておることは事実であります。私が先日来電労連の代表者と会見をいたしまして、私にお話のありましたことをその通り伝えたつもりでありますが、何かそういうことを言ってないんだということで、きょう私に申入書が参りました。ほめてしかられたのは今度初めてでございますが、非常にりっぱに成長されたということで賛美いたしたのであります。その申入書の末尾を見ますと、争議の対象が会社、使用者であり、公共事業の労働者として乱用すべきではなく、組合の良識の上に立って判断すべきものであって、電気労働者が誠意と自主的に決定することであるとの態度を明らかにしているものであります、こういう言葉で結んでおられます。しばしば私が申し上げます通り、実はいわゆるスト規制法と言われるこの法律は、一部の論者によりますと、労働者の許されたる労働行為を制限するものだから、これは一つ強制仲裁のような制度を作ったらどうだという御意見もございます。傾聴に値する御意見だと思いますけれども、実際問題としては経営者も労働組合も、そういう強制調停というようなことを、実際に今日までしばしばそういう機会があっても望んでおられない、自主的にやりたい、これは今の申入書にあります通りでございます。そこで電気関係の方は、今お話のように電労連と電産がございますが、これもやはり一般労働政策の立場から見ますと、これで安定しておるものであるということをわれわれが認定することは不十分であります。それから他の産業である石炭関係は、これは御承知のように、本年の炭労の大会においても明らかに、われわれが今年の春季闘争のときにこういうことをやらなかったのは、そのときの情勢判断においてやらなかったのだ。この行為、いわゆる保安要員引き揚げというものはいつでもやるんだということをあらためて宣言されております。さような関係を見ましたときに、立法当初の本法を必要とするという判断は、今日では遺憾ながら変えることができない、こういうふうに見ておるわけであります。
#6
○松岡(松)委員 それでは大臣に最後にお尋ねいたしたいのですが、私どもでは、ストライキ権というものは今日では基本的人権の一つに数えられておるわけでありますけれども、諸外国の例を見ますと、共産主義諸国においてはもちろんこういうストライキ権などというものは憲法に規定するところじゃありません。自由主義諸国家、及び半桃色的な諸国家の憲法を見ましても、みな法律の制限内における行使、あるいは法律の規定による範囲に置くのですが、大臣は一体ストライキ権というものは法以前の基本的人権の巨大なものだとお考えになっているか。その行使方法については、少くとも公共の福祉以外というならば、法の制限すべきということは公共の福祉、つまり国民の大多数を守っていくという考え方の範疇にあるものとお考えになっておるものか。これが根本的に大きな問題でありまして、憲法二十八条の解釈については議論もありましょうが、公共の福祉というものを無視して基本的人権の行使ということは、われわれではちょっと考えられない。そこでストライキ権の行使というものはあくまで公共の福祉というものを守るその範囲のものであるかどうか、この点についての御所見を承わりたい。
#7
○倉石国務大臣 われわれは、この日本の民主憲法の底を流れる精神というものは、どこまでも民主主義を守り、同時に基本的な人権はあとう限りこれを尊重しなければならないということであろうと存じます。しかしながら国民各個の自由権の活動の範囲というものは、やはり今お話のありました、そのことによって大衆に非常な利益の侵害をするようなことは、十二条、十三条でこれを制限いたしておる。これもまた民主主義憲法下における当然な予測であろうと思うのであります。数年前に衆議院の社会労働委員会でこういう説をなした方がございます。どなたか忘れましたが、憲法二十八条にきめてある労働基本権というものは他のいかなる市民権にも優越するのだ、なぜかというと、これには全然制限を加えられておらない、そして財産権などには、その次の憲法二十九条の財産権というところでは、公けの用に供するためにはこれは制限を受けるとわざわざ書いてある。しかるに前条の二十八条にはこれがないのだから、二十八条に認められたる労働基本権というものは他のいかなる市民権にも優越するものであるという御議論をなされた方がございますが、私はこれはおよそ牽強付会な議論だと思うのです。私どもはこの憲法二十八条にわざわざそういうふうな制限を加えなくても、ただいま御指摘のありましたように、外国の立法もだんだん新しく出てくるほど、どの国もその憲法の労働権をうたってある中には「法令の定むる範囲内において」とか「他の法律に許されたる範囲内において」云々、こういうことで労働者の団体行動権を保障しておるわけであります。日本にはそういう特別なる制限なくとも、やはりこれは当然個人の自由権の発動範囲というものは公共の福祉が優先するのであるということは、憲法十二条、十三条によって明らかなところであります。従って私どもは前に申し上げましたように、基本的な国民の自由権というものはあとう限り尊重するようにすべきでありますけれども、その発動の範囲というものは公共の福祉ということで限られてくる。従って御審議願っております本法の中で、団体行動権の一つである争議権の中の一つの行為、これを野放図にやっていただいたのでは公共の福祉を害するおそれあり、こういうことでこれを制限しておる、こういうことでありますから、私どもといたしましては憲法の精神を少しも損うておるわけではない、こういうふうに解釈しております。
#8
○松岡(松)委員 労働大臣に対する質問はこれで終りまして、通産省はどなたが来ておりますか。
#9
○佐々木委員長 石炭局長、公益事業局長が見えております。
#10
○松岡(松)委員 それでは、電気の方から伺いますから、官房長でもあるいは公益事業局長でも、どちらでもよろしゅうございますが、わかる方からお答え願えばけっこうです。
 そこで、これは本来、むしろ労働省より通産省が非常に関係が深い法案だと私は思うのです。この法律をもし廃案にいたしたとするならば、一体どういう効果が起るか。この法律を存続させることによって、生産、消費、労働の関係において一体どれだけの効果を持つのか。これは重大な問題だと思います。一応今、労働大臣から御見解を承わりましたが、通産当局として、この電気、つまり言いかえるならば、発電並びに停電スト、それから炭鉱の保安要員の引き揚げ、これをこの法律によってとめておる。これはなるほど社会党の皆さんが強く主張される通り、ストライキ権の一部制限なんだ。間違いありません。だれが考えたって制限だと思う。それをどう理屈を言ってみたところで制限に変りはない。なぜそれを一体やっているのか、何のためにやるのかという二とを具体的にわれわれは知る必要があると思う。それで通産当局として、この法律を存続させることによって経済関係にどういう効果をもたらしておるか、ことに国民生活の上にどういう効果をもたらしておるか、簡単でようございますから一つお答え願いたい。
#11
○岩武政府委員 それでは電気につきまして事務当局の考えておるところを申し上げたいと思います。このスト規制法の延長がなされなかった場合に、現実にこのスト規制法によって規制しておりますような争議行為が行われますかどうか、これは実はわれわれといたしましては何とも申し上げられないのであります。組合の方の諸般の動き、戦術等もございましょうから、われわれの方からそういう争議行為が現実に行われる危険性があるかどうかということは申し上げられる筋合いでないと思います。ただこのストライキの規制法は、労働省当局から話されておるように、本来違法な、あるいはきわめて妥当でない争議行為は宣言的に許されないものだと規定しておるものでございますから、従って延長されませんでも、われわれといたしましては直ちにそういう争議行為が適法だというふうには考えておりません。しかし場合によりましてはそういう争議行為も適法だというふうに誤解されるおそれがありはしないか、こういうふうに考えております。そういうふうな点で、そういう誤解の結果あるいは現実の争議行為等にも出てくる可能性があるかないかというような点は、これは若干、見る人によりましては、不安定な労使関係に置かれるというふうな懸念を持つ向きもあると思います。その辺のところは実は労使関係の将来の見通しでございますから、なかなか的確には申し上げられませんが、午前中の委員会でも申し上げましたが、二十七年の停電スト、電源ストにおきましては、相当大規模な電力量が喪失されまして、その結果産業界あるいは一般国民生活に相当大きな影響を与えたことは御承知の通りであります。そういう事態に直ちに立ち至るかどうかということは予測の限りではございませんが、こういう規定の延長措置がとられますれば、そういうことが行われないだろうという一応の安定感というものが出てくるというような気がいたすわけであります。
#12
○松岡(松)委員 法務省にお伺いしたいような答弁がだいぶ出たのですけれども、私の聞いているのは、現在この法律が三年間あったために、少くとも日本の産業は非常に順調に発展していたということは言い得るのじゃないかと思うのです。ことに二十七年の発電スト、電源スト及び停電ストを見て、さらに二十五年、二十六年における状況を見ましても、電気は御承知の通り、水力のごときに至っては、もう蓄積のきかないものなんだ。これをストによって捨ててしまえば、大きな国家的損失なんだ。同時にこのために諸工場がとまってしまう。国民の生活がまっ暗になってしまう。だからそういう行為は社会公共の福祉を侵す。それが日本の産業経済に及ぼしておった影響というものは、二十八年のこの法律適用後の状態と適用以前の状態を比較勘案してみたときに、大きな差がそこに考えられると私どもは思うのです。今もしこの法律を廃棄したとしたならば、日本の経済は再び正常なる発展のコースから逆コースをとるおそれはなしとも言えない。このことに対する通産当局の見通しをお伺いしたいわけであります。
#13
○岩武政府委員 先ほど申し上げました通り、その点は実は何とも見通しはつかないわけでございます。ただ申し上げましたように、一応そういう争議行為が行われるかもしれぬという不安定な感じは起ってきやせぬかというのが前に御答弁した趣旨でございます。
#14
○松岡(松)委員 質問者があまり満足しないのですけれども、それでは法務省当局にお伺いいたします。
 公共の福祉を守っておられる法務省当局にお尋ねをいたしたいのですが、問題のスト規制法がもし廃止になった場合にどういう結果が生まれるか。かつて二十七年の法務委員会におきまして、電気のストによる被害の実情を調査いたしました際に、参考人としては東電の木川田常務――今の副社長、山崎という給電部長、労働組合本部執行委員長である吉田一吉、それから警視庁の交通部長の津田忠太、さらに井上病院の顧問の篠井金吾、井上病院外科医長の児玉三磨、戸山アパートの自治会連合委員長の原田という人の意見も徴しておるのでありますけれども、停電ストによって生ずる国民生活の被害の状況というものは、三年間この法律のおかげで発電、停電ストがなかったために国民の大多数は記憶を薄らいでおられます。しかし当時調べたところによると、井上病院の参考人の報告によると、手術中に停電になっておる、そうしてあわや盲腸の手術中に誤まってもしメスが触れれば腹膜を破ってしまったかもしれない。しかしながらその手術のために非常な不安に陥ったということを端的に表明しておる。それから戸山アパートの原田氏の供述によりますと、あそこは水道を使っておりません。地下水を上げておるために電気がとまると、三千世帯からの者が糞尿の始末に困る。おそらく今そんなことを考える人はここには一人もおられぬけれども、当時はそういう不安にさらされた、現実に糞尿の始末に困る、水槽便所で電気がとまって水が流れぬとすれば、どこにその糞をするか、全部外に行ってしなければならぬ。(笑声)それは笑われるけれども、なかなか重大な事柄でございます。それから交通関係において、交通事故が頻発します。電気が消えてしまったら、ローソクでまさか電車が走るわけにはいきません、自動車はガソリンで走りますが、(笑声)電車はもう走らない。そこで起る交通上の輻湊というものは想像に余るものがある。ために交通事故が頻発する、こそどろは発生する、こそどろばかりではない、いろいろと痴漢も現われたりなどする、(笑声)これはほんとうなんです。(「想像して言っている」と呼ぶ者あり)いやしかし、これは結局想像です。つまりこの法律があったから三年間は平穏無事であったけれども、当時においては現実に参考人がそういう証言を述べられておる。これは何も想像ではない、よくこの速記録を読んで下さい、そのとき現実に行われたことをここで供述しておる。だから今この法律を廃案にした場合に、法務省当局はおそらく発電ストはなかろう、停電ストはなかろうとは言えないと思う。電気のストライキは、これはもうストライキにおける原子力みたいなもので、(笑声)これは原子力です。一発勝負で電気がとまってしまう。スイッチ一つはずせばそれでいい、水はどんどん流れていき、電気はとまるわけです。そのために世の中じゅうがまっ暗になってしまう。ところが社会党の皆さんは二言目には病院には電気を送るという規定があると言う、なるほどあります。けれども電気の回路というものがありまして、そう自由自在にこの病院には電気を送る、この食堂にはストップというわけにはいかない、これは実際に、ここに八木委員のような電気の専門家がおられるが、電気の回路に属するところは回路々々で切っていくよりしようがない、もとが減ってくればどうしたって電気会社は順番々々に減らしていくよりしようがない。そういうことが行われた場合に、果して治安上における公共の福祉というものが守り得るかどうか、これは大事な問題です。守れないとおっしゃるなら、どうでもこの法律は存続させてもらわなければ困る。そんなことをせぬでも公共の福祉には少しもさわらないのだということなら、こんな法律はやめた方がよろしい。こんなやかましい、ストライキの制限だ、制限だというようなむずかしい法律などやらぬでもいい、問題はそこにある。だから公共の福祉をお守りになっておる法務当局として、これに対する諸般の見通しはいかがでございましょうか、一つ承わりたいのであります。
#15
○井本政府委員 いわゆるスト規制法が施行されましてから今日まで、この法律に触れるようなストライキがなかったわけでございまして、この状況がこのまま続けば、私どもといたしましては、あらゆる意味におきまして便利であるというか、治安上の確保の上につきましても非常に寄与するところが大きいというように申し上げざるを得ないのでございます。二十七年当時の状況を追想してみますと、全くお話の通り一般需用家の家庭においてすら数時間の停電がたびたびありまして、そのために交通事故もその当時の統計でも三〇数%ふえたとか、いろいろさような事故がありましたし、お話のような窃盗とかその他の刑法犯罪などもふえるということは多くを申し上げるまでもないわけでございまして、私どももかような状態の続くということを切望せざるを得ないのでございます。
#16
○松岡(松)委員 通産大臣がお越しになりましたから、一点お伺いいたしたいのであります。
 問題のこの法律は、電気並びに炭労側の労働者諸君から言わしむれば、自分らが持っている天来のスト権というものを制限するのだ、制限されてはたまらぬ、こうおっしゃるが、一方においては公共の福祉を守るためにこの法律はどうしても存続しなければならぬと言っておるわけであります。そこで昭和二十八年にこの法律が適用になってから今日まで三年余、それからその以前の状態を勘案いたしますと、労使の関係にかなり変化をもたらしてきておるのであります。ことに電気関係の労働組合の推移を見ますと、当時すでに二十八年のときには六万四千余の電産の組合が、今日では八千に減少しております。そのために労使の関係がかなり円満化しつつあるということは否定できないと思うのでありますけれども、なおこの残余の八千の電産労働組合の諸君というものはきわめて先鋭的であります。むしろ争議というものを好む傾向を持っておる。そのために私どもは労使の関係は必ずしも安心は得られない。そこでもしこの法律を廃案にした場合の日本の経済の発展に対して及ぼす影響並びに国民生活に対して及ぼす影響、この点についての大臣の御所見を承わりたいと同時に、この三年間日本の経済において電気関係のストの抑止と炭坑保安要員の引き揚げ抑止によってもたらした経済的効果は実に著大なものがあったのではなかろうか、あるいはそうではなかったのか、一つ大臣から御所見を承わりたいと思います。
#17
○石橋国務大臣 このいわゆるスト規制法というものの効果がどれほどあったかということは、これは認定でありますからあったと言えば言えるし、ないとも言えるでありましょう。しかしともかくあの法律に規定してあるような電気をむやみにとめたり、それから炭鉱をぶっつぶしたりするようなストライキをやるということは、これはどんな労働組合でもやるということを宣言し得る組合はないでありましょう。しかしとにかくその間の報告によりますと、すれすれのところまでは行ったものが相当ある、中にはずいぶんあれに抵触しているのじゃないかという疑問のあるものもあるが、これはまあいろいろの関係で法律上の罪には問われなかったということもあるようでありますから、われわれ産業を維持するという責任を持つものとしては、やはりああいう規定がある方がよろしい、規定がなくとも行われないかもしれないけれども、まあ心配をすればこれは規定があった方がよろしい。また規定のあるなしにかかわらず、組合が自粛しておればああいうことは起らないわけでありますから、規定があったところで、別段組合の権限に干渉を加えるものではあるまい、かように考えております。
#18
○松岡(松)委員 それでは私の質問はこれで終ります。
#19
○佐々木委員長 田中武夫君。
#20
○田中(武)委員 本議決案に関しまして、商工委員の立場から若干の質問をいたしたいと思うのでありますが、まず最初に基本的な点について労働大臣にお伺いいたしたいと思います。
 この法律が三年前に制定されたときには、これは三年間の期限付でありました。ところが今国会でこの議決案が通過いたしますならば、これは恒久立法になります。そうするならば、制定当時よりかより慎重に、より時間をかけて審議する必要があろうと思うのであります。しかるに政府は今度の国会の召集日に、しかも開会式すら開かれていないときに、委員会の審査を省略して直ちに本会議においてこれを議決する、こういったような手続をとられました。もちろんこれは国会の反対にあいまして取り下げられたのですが、今でもそういうような手続をとられたことが正しかったと考えておられるか、もう一つはこういうような無謀ともいうべき手続をあえてとられたのは自民党のこのごろの党内事情と申しますか、次期総裁をめぐるいろいろの微妙な動きから、こういうことをあえてやられたのであろうと言われておりますが、そういうような点があるのであるか。
#21
○倉石国務大臣 このお話は社会労働委員会でだいぶ何べんか繰り返されましたが、一ぺんお聞き下さった方はがまんしてお聞きとりをお願いいたします。
 本法は御承知のように附則第二項で、期限が切れたときに国会が召集されていないときには、その次の国会が始まったら十日以内に存続するかどうかということについて議決してもらわなければならない。従ってその法律に命ぜられた義務を私どもは履行いたします。その場合に客観的情勢は、先般来お話がかわされておりますように、政府は存続を必要と認めるということで存続の決議をお願いしたい、こういうことで御審議を願っておるわけでありますが、そこで、この議決案を御審議願うために、今お話のように委員会審査の省略を求めましたというのは政府の希望であります。私どもといたしましては、まず第一にこの法律の延長ということは、継続審査を許さない建前でございますからして、しかも今会期というものは非常に短かい会期であります。そして政府としてはぜひ存続いたしたい、こういう考えであります。同時にまた会期が短かいところへ持ってきて、田中さんも御存じのように、現在はいわゆる秋季闘争というようなことで、各労働組合から――本日も私は組合代表に会見いたしましたが、いろいろ労働組合の行動が活発に行われておる矢先でありまして、こういうような労働組合にも関係のある法律案について、長く不安定な状態で置くことは、そのこと自体が、また刺激されて、御承知のように抗議ストなどということをおやりになろうとする組合もあるというような、労政当局の立場から申しましたならば、やはり一日も早く労働関係を安定いたしたい、そうして年末における労働組合のいわゆる闘争については、その闘争自体のプロパーの問題で一つ十分に検討し合うというふうにすることが、労政を担当いたしておる者の親切な態度ではないか、こういうことで、もうすでに法律は現存いたしておる法律でありますし、これに対して何ものも新しく加えようとするわけではないのでありますからして、そういう諸般の情勢を総合して、委員会審査の省略を願って、これは本会議でもちろんいろいろな御議論がかわされることでありましょうが、そういうふうにしていただく方が労働界を安定するに必要なことだ、こういう立場から申し上げたわけであります。
#22
○田中(武)委員 いろいろと言われましたが、要は一日も早くこの法律の存続を決定することが望ましいと思ったからだ、こういうように言われたと思うのですが、それほど急ぐのならば、この法律は八月ですかに期限がきたわけです。従ってそれほど急ぐならなぜ早く臨時国会を開いてこの承認を求めなかったか。われわれ今まで何回も臨時国会を開けといったが開かなかったのは政府じゃないか。その点はどうですか。
#23
○倉石国務大臣 臨時国会の開会御要求は、憲法の規定に従って御提出になったのであります。政府としてはいろいろな準備を整えまして今回ようやく開くという段階になったわけでありますので、急いで提出をいたした、こういうわけであります。
#24
○田中(武)委員 この件についてもいろいろ伺いたいのですが、すでに社会労働の方でも何回かやられておるらしいので次に入りたいと思います。この議決案の御提出の理由を見ましたら、現下の事情にかんがみ云々となっている。そうして今提案の説明をもらったんですが、これを見ましても今直ちにそう急いでこの議決案を存続させなければならないといったような積極的な理由というものがちょっとはっきりしていないんじゃないか、こう思うのですが、その三年間の実情を見まして、なおかつ積極的にこれを存続させなければならないというような具体的な事実があったのですか、その点をお示し願いたいと思います。
#25
○倉石国務大臣 そのことも何日かここで論じ尽されましたけれども、私どもは三年間慎重に検討いたしてみまして、そしてその三年間検討いたしました結論としては、現在の当該関係労働組合の実態を考えてみましたときに、やはり本法の存続を必要と認める、こういうことでございます。
 第一の方の電気関係につきましては、先ほどもここでお話がございましたが、電労連という組合が非常に大きくなって、これはきわめて穏健であります。穏健であってけっこうだと言ってさっきほめて叱られましたから、けっこうだということだけはやめますけれども、非常に穏健にりっぱな組合に成熟されておると非常に私どもは喜んでおるわけでありますが、しかしながら一方において、なお組合としてお互いに地盤の拡張に非常な努力をしておられることも御存じの通りであります。こういう状態というものは、労働界が安定いたしておると認定するわけにはいかない。
 一方の炭労の方では、もうしばしば申し上げておる通りでありますが、いわゆる春季闘争のときにはもちろんのことでございますが、つい最近行われました炭労の秋季大会で決定せられて発表されたものを見ましても、この法律が存在するといなとにかかわらず、われわれは保安要員の引き揚げということはやるんだと宣言しておられます。私どもはやはり今日の状態では本法の必要を認める。しかしながらしばしば私が申しておりますように、なるべく早くみんなが成熟していただいて、そしてりっぱな労働運動ができるようになれば、何もいつまででもそういう規制をする必要はない、早くそういうことをしないでも済むようにお互いに努力をしていこう、こういう考え方でございます。
  〔佐々木社会労働委員長退席、高橋法務委員長着席〕
#26
○田中(武)委員 三年前にこの法律を提出せられた当時の実情は、これは炭労、電産の争議のあとだったと思うのです。その後今言われたような事情で、労働界は安定をしてきておると思うのです。何かまだやるんだというような宣言をせられた、このようなことを言っておられますが、こういうものをあえて存続させるから、それに対する反発的な意見としてそういうことをやったのだろうと思いますが、労働組合のあり方というものについては、法律で縛るとか、押えていくということでなく、自主に交渉さしていくということが望ましいと思うのですが、労相は頭から争議行為は悪いのだ、こういうふうに考えておられるのですか。
#27
○倉石国務大臣 社会労働委員会に出て私の考えを申し上げる機会がございませんでしたから、非常にあなたは誤解されておるようでありますが、私がしばしばこの委員会でも申しておることは、あなたがおっしゃったことと同じ考えであります。つまり労働関係というものは人と人を律するものであるから、なるべく法律、規則なんかをこしらえて制約をしない方がいいんだ、よい労働慣行が成熟するように仕向けていきたいということは、就任当時以来から今なお変らない考えであります。従って私は昭和三十一年度予算にも若干の予算を計上して、八つの重大産業に、企業別に労使協議会というふうなものを設けて、そうして常時お話し合いをするように仕向けていく、繊維産業などはその結成をいたしておるようなわけです。また同時にただいまのお話のように、争議行為というと何でもかんでも悪いというようにお前は考えているんじゃないかというお説でございますが、そういう考えは毛頭持っておりません。しかしながら本法で申しておりますのは、著しく妥当を欠くような行為、つまりそのことの行為は田中さんも御存じのように、たとえば石炭も電気もそうでありますが、労働組合と経営者とがいろいろ団体交渉をして、そして賃金なら賃金の問題で話が折り合わないというときに、そんなことを言うならば遺憾ながら労務の提供をわれわれはやめて、相手方である経営者に経済的損失を与えるぞという威迫をすることが争議行為の目的なんです。それは労働組合法で正当なる労働運動として許されておるのでありますから、そのことを悪いなんて考えておったのでは話になりません。それは当然やる権利を持っている。ところが相手方の経営者に対して経済的損失を与えるのだという威迫の行為といえども、これは正当なる行為でございますけれども、ここで規定しているようなものは、スイッチを切ってまっ暗にするということになれば、なるほど相手方の電気の経営者に対しては経済的損失を与えることは当然でありますけれども、それより、何ら争議行為にも、電気の経営にも関係のない一般国民大衆が非常な迷惑を受ける。こういうことを国として放置いたしておくことはできないではないか。そこで著しく妥当を欠くかくのごときことは、争議行為といえども許さるべきではない、こういうことを言っているのであります。御了解願えると思うのですが……。
#28
○田中(武)委員 先ほど松岡委員の質問のときにも、二十七年ですか、法務委員会における参考人の陳述等を述べておられたようですが、手術のときに電気が消えたとか、電気をとめたために汚水がどうのとか言われておったのですが、あの当時は一般的に電気事情が悪いときだったのです。たまたま手術のときに電気が消えたこともあったかもしれません。それが果して労働組合の争議行為として行われた停電ストで消えたのか、あるいはまた会社の都合によって、あるいは電気の不足等々のために消えたのかということもはっきりしていないのじゃないかと思う。その当時電気が消えたことはすべて労働組合の責任というような言い方をせられることは少しどうかと思うのですが、そういうことについて、いつ幾日、どこにどういうことが起きた、これはどういうことによって行われた結果である、こういうようなことの調査は十分にできておるのでしょうか。
#29
○倉石国務大臣 今のことについて、もし調査の結果を御報告することが必要であれば、当局の方から申し上げさせますが、この法律によって私どもが期待いたしておることもさることながら、さっき松岡さんの引例は一つの御引例でありますが、私どもは労働法上及び憲法上許されておる争議行為というもののうちに、著しく妥当を欠く、一般国民の公共の福祉を阻害するようなことはやってもらいたくないのだという総括論で申しておることでございますから、その点も一つ御了解願います。
 それから個々の停電についてどうであるかということは、調査してあれば申し上げたいと思います。
#30
○岩武政府委員 二十七年の電産ストのときのこまかい数字等は詳細判明いたしませんが、全国的に申しまして、九月から十二月までに行われましたストライキによりまして、電源ストの関係で喪失しましたキロワット・アワーが約三億キロワット・アワーであります。このほかに、停電ストあるいは無効放流等によりますものが、約一億二千万キロワット・アワー程度かと思います。
#31
○田中(武)委員 今ちょっと聞きましたが、二十七年当時の全体の停電ストの中で、労働者のストライキに労働者側のストライキによってなされた停電と、その他の、経営者側の責めに帰すといいますか、労働者のスト以外の事由に基く停電とが、どれだけの割合になっておるかということは調べておられますか。
#32
○岩武政府委員 先ほど申し上げましたのは、組合側のスト行為による喪失のキロワット・アワーでございます。
#33
○田中(武)委員 それではそれ以外の停電については……。
#34
○岩武政府委員 それ以外のはちょっと手元に資料がございませんが、経営者側の行為と申されますと、結局どういうことをおさしになっておるかよくわかりませんが、当時の出水率を見ますと、九月から十二月まで、全国的には比較的水が出ておりまして、大体五%程度の渇水でございますから、場所によりましては渇水によります使用制限あるいはロードの調整等も幾らか行われたと思っておりますけれども、まあ九八%程度の出水の地域もございますから、こういう地域ではおそらく経営者側の渇水によります使用制限といったようなものは行われてないかと思っております。
#35
○田中(武)委員 ただいま岩武政府委員から御答弁を伺いましたが、その中に、使用者側というか、会社側の責めによるというのはどういうことがわからぬというようなことがありましたが、こういうことを言われること自体が、停電という事態はすべて労働者の責任の上に行われておるんだ、こういうような考え方を持っておられる証拠だと思うのです。なお今言われているように、水が幾らあったからどうかということではなく、そのときそのときによって停電の行われる場合がやはりあると思うのです。ピークの関係とかあるいはまた工事の関係等もあると思います。今の御答弁によるとそういうことが十分調査できていないと思うのです。そうすれば、電気が消えたことは全部ストライキだと考えて、これを労働者の責任に転嫁せしめて、それを理由にして労働者の基本的な権利を押えようとする口実に使っておるように思われますが、その点いかがでしょう。
#36
○岩武政府委員 ちょっと私の言葉が足りなかったかもしれませんが、水が出ない、その結果火力発電をされてもなおロードを調整しなければいかぬという場合が、経営者側の責任というふうに一律的にいえますかどうかわかりませんということで申し上げたわけでございまして、先ほど申し上げました電源ストあるいは停電ストになります喪失電力量は、これは具体的に、ストによります時間から計算した数字であります。この当時の具体的な出水状況、その他の需給関係によりますロードの調整がどれだけあったかというのは、実は今データを持っておりませんのではっきり申し上げなかったのであります。ただ比較的出水状況のいい地域もございますから、そう大きなことはなかっただろうというふうに申し上げたわけであります。
#37
○田中(武)委員 ただいまの御答弁等から考えまして、少くとも電気が消えるということが、すべて停電ストによって消えたのではないということだけははっきりしたと思うのです。そういうことをすべてストライキの結果である、こういうように考えてもらうことは、これは労働組合に対してこういった法律を作る一つの口実に使われておるように思います。
 この点はその程度にいたしまして、労働大臣にお伺いいたしますが、先ほどの御答弁によりまして、いろいろと違法というか、行き過ぎのスト行為については規制をする必要がある、こういうふうにいわれたわけなんですが、少くとも労調法とかあるいはその他の法律によって、そういったものについてはいろいろと制限があると思うのです。その上になおかつこの法律を特に作らなくてはならないという理由は積極的にないのではないかと思いますが、その点はいかがでしょう。
#38
○倉石国務大臣 御承知のように労調法の方では一般の労働関係について緊急調整等をいたす建前であります。今ここで言っておりますのは争議行為の手段のうちで著しく妥当を欠くと思われる、つまり国民大衆に非常な不利益をもたらす結果になる、こういうことはすべきでないということを言っておるだけでありまして、御承知のように旧公益事業令、それから鉱山保安法等にももちろん正常なる電気の供給を怠ってはならない。これは経営者及び従業員両方とも拘束されるわけでありますが、そういうものがあるにもかかわらず、なおかつああいう行為が行われた。そこで当時の実情から見て本法が必要であるという認定をいたしまして、当時の政府は提案をいたしたわけであります。そこで本法が三年たった今日、具体的に客観的な労働情勢を判断して必要があるかどうかということについて検討いたしました結果、先ほど申し上げましたように、やはりもうしばらく継続する方がよい、こういう建前になったわけであります。
#39
○田中(武)委員 労調法には一般の争議行為に対しての調整の方法と、そのほかに公益事業につきましては、たとえば三十五条の二、三、三十七条、三十八条等によって緊急調整の方法とか、あるいは三十六条ですかによって、いわゆる保安に大きな影響を及ぼすようなストライキは禁止せられておるわけです。それで今おっしゃるような行為は三十六条によっても規制できると思うのですが、その上になお本法律が必要なんでしょうか。
#40
○倉石国務大臣 たとえば石炭鉱業につきまして争議行為が始まった。そのことの推移を見て、この前昭和何年でありましたか、緊急調整を発動した経験が一回当時の政府にございます。ああいうような争議行為全体に対して労調法の発動をして一時争議行為を停止して、そうして強制仲裁をやる、こういうこととは違いまして、今度のここにうたっておりますのは、先ほど来申し上げております争議行為の一つの手段を、これこれのことはやってはならない行為なのであるということを言っておるわけでありますから、労調法というのは全体の争議行為についてこれを一時停止いたしますが、そういうことではないのでありますから、やはり私どもは実はこの立法当時に労働委員会に参画いたしました当時も、これはやはり法体系から見て、労働関係法に入れたらどうだという考え方を持ったこともございますが、やはり今申し上げましたような事情で、特にこの二つに限ってはやはりこういうふうな法的取扱いをする方がいい、こういう考え方をいたしておるわけであります。
#41
○田中(武)委員 労調法の三十六条の安全保持に関する規定とどういう関係があるのでしょうか。
#42
○中西政府委員 労調法の三十六条は安全業務をやめてはいけない――安全と申しますのは解釈上人命に危害を及ぼすことを申します。この本法の第三条は人命危害のほかに鉱物資源の保持、鉱山施設の保持、さらに鉱害、これが加わっておるわけでございます。従ってこの三条の方は重要なる保安業務を争議行為としてもやってはいけない、争議の場合に圏外にのける、こういう趣旨の規定でございます。
#43
○田中(武)委員 現行の労働組合法第一条にはその目的をうたっておりますが、旧労働組合法第一条にも目的をうたっておりましたが、この旧労組法の一条の目的の宣言の方法と現行労組法第一条の宣言の方法とは若干意味が違うと思うのです。最近いろいろ法律の最初に、その法律の目的をうたっているのが多いのですが、これは大体精神的な宣言といいますか、そういうふうなものだと思うのです。ところが現行労働組合法第一条で、この目的についてうたっておるのは、この労組法の解釈についての一つの基準をうたっておるのじゃないかと思うのです。と申しますのは英米法系といいますか、こういった法体系をとっておるところの法律は、いわゆる慣行の確立ということによってこの法を運用していくということに重点を置いておると思う。現行の労働組合法はそういう観点の上に作られたものだろうというふうに考えるわけであります。そうするならば、この労使のいわゆる自主的な交渉、こういったような慣行を重ねていくことによって労働組合の発展を期するのだというのがこの第一条の宣言だと思う。そうするならば、今日各労働組合においても労働協約あるいは争議時における保全協定あるいは争議協定とかいうようなことを扱っておりますが、そういう協定を結んで、これこれの人はストの場合には除外するとか、あるいはこういう職場は離れないのだ、こういったような労働協約あるいは保全協定を結んでいるところが多いと思う。この労働組合法第一条の精神からするならば、法律でこういったことを押えていくということよりか、今言ったような労働協約あるいはそういった慣行を通じてそういうような争議行為を双方の了解の上でやらない、こういったようなことの慣行が確立していくということが望ましく、またそういうふうに労政当局としても指導せられるのがいいじゃないか、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
 それからなおもう一つ、この法律が争議行為についていわゆる公共の立場から干渉といいますか、制限する場合は、労調法の規定のようないわゆる強制調停とか、あるいはその調整の方法について規定するのが最大の限界であって、直接その行為まで禁止するというようなことは法の限界を破っておるのじゃないかとも考えるのですが、そういうような点はいかがでしょうか。
#44
○倉石国務大臣 その点につきましては田中さんと全く同感でございまして、しばしば私が申しておりますように、労働関係に特に法律規則などでいろいろな束縛を加えないで、よい労働慣行が成熟するように指導いたすべきである。従ってあなたの御指摘のように、最近はたとえば東北電力会社のごときは、経営者側と労働組合側との間に非常におもしろい協定を結ぶような傾向になってきております。こういうふうにだんだん成熟いたしていくことを希望するわけでございますから、その点においては、あなたと全く同感でございます。そういう方向で政府もしむけて参っておるわけでございます。
 それからまたこういう民間団体の産業につきましては、なるべく強制調停などということもやらないでいく方が望ましい。ある論者によりますと、これは傾聴に値する御意見だと思いますが、やはり電気産業のごときは特に強制仲裁の方法を設けたらどうかという御意見もあります。私どもはこういうことについて経営者側と労働組合側とも話してみたこともございますけれども、やはり両当時者ともなるべく政府が介入してくるような強制仲裁の制度はやめてもらいたい。われわれが独自で自主的に解決していきたいのだという希望が組合側にも経営者側にもございます。そこで自主的に解決ができるように団体協約などで今お話のようにやっていただくことは、非常にけっこうだと思っております。そういうわけでありまして、なるべく私どもとしては介入しないで、よい労働慣行が成熟していくように指導いたしておるわけであります。
#45
○田中(武)委員 大臣は、いわゆる労組法第一条の精神によって労働組合が運営せられていくということを望んでおられると思う。しかも最近はそういったよい慣行といいますか、それが逐次できつつある、こういう状態であります。これも認められたと思うのです。それならばなぜあえてこの議決案を無理に出して、無理に通してまでやらなくても、今できつつある、芽ばえつつあるこの慣行を育成していくということで十分目的を達するといいますか、大臣が懸念しておられるような問題はないと思うのですが、どうなんですか。
#46
○倉石国務大臣 労組法第一条に、御承知のように当初はありませんでしたが、二、三年前かあるいはもう少し前でありますか、改正案が提出されまして、ただいまありますようなただし書きがつけてあります。このただし書きなんというものを、私どもは立法当時に携わっておりまして、恥かしい感じがいたしました。御存じのように労働組合の正当なる行為は保護されるのである、従って刑法三十五条の援用を受ける、ただしいかなる場合であっても暴力を使ってはならないと書きました。あれは実に私ども当時労働委員として恥かしい思いをいたしましたが、まあ現在ではやむを得なかろう、先ほども私お話したことでありますが、日本の民主主義というものは、まだお互いに私どもも成熟しておりませんから、どうかするというと、国会でやはりいわゆる乱闘騒ぎなんということもあるのでございますから、そこでお互いがだんだん反省してよい慣行を作っていくよりしようがないのでありますが、そこで本法に関係しておる当該産業の労働事情を見ますと、先ほど来申し上げておりますように、今これをはずすということは困難だ。そこでなるべく早く一つこういう法律がなくてもいいように、先ほどあなたがおっしゃったように、お互いに団体協約などでりっぱな関係を結ぶように指導していく、しかし今日これを廃止することは客観的な情勢から見て困難である、こういう立場であります。
#47
○田中(武)委員 ただいま労組法第一条第二項のただし書きの話が出ましたが、旧法によってもあれはただし書きがなくてもやはり罰せられておったと思うのです。そういう意味からあれは宣言的な規定だと思うのです。注意規定だと思うのです。それとこういったような自主的に行為そのものを制限していくということとは違うと思います。なお、いわゆる正当なというか、今正常ないい慣行が生まれつつある、こう言っておられるのですが、これを伸ばしていくことが望ましいというならば、十分労使の間にいわゆる労組法の言っておる対等の原則の上に立って交渉していけるような場所を作っていくということが望ましいと思うのです。しかるに一方法律において押えつけておいて対等な交渉というか、自由な交渉はできないと思うのです。そういうところに、いい慣行というものがそんなに早く生まれてくるということに対する助成、育成にはならないと思うのです。むしろそれを助成していくためには、そういうものははずしてしまった方がいいのではないか、こう思うのです。またそれではこういう法律がなくなるようになるまで、そういう慣行が育ってくるということについて労相は一体何年くらいかかるという見通しを今持っておられるのか。そうするならばこの法律にもう一度期限をつけられてもいいのではないか、こういうようにも考えられますが、その点いかがですか。
#48
○倉石国務大臣 今お話のございました一条のただし書きを作りました当時は、やはり労働組合運動なら何をやってもいいんだといったような驚くべき言動をなした者があることは御承知の通りであります。そこでやむを得ず当時はああいうおかしいようなただし書きを入れました。そこでだんだんこういうものもなくてもいいように早くやりたいというのは、あなたと私とは全く同感であります。そこでこの電気産業と石炭鉱業につきましては、しばしば論議されておりますように、これがなくなればやはりやってもいいんだというようなことをおっしゃる者もあるのであります。またこの法律があってもこれはやるんだという宣言を大会でなさる者も現実に存在しておるのであります。そういうことを考えまして、私は労働組合と経営者だけを目標に考えるのではなくして、やはり国民大衆に対しては、民生の安定ということの責任をとらされている政府側の立場からは、もう電気が消えてまっくらになって、ラジオも聞かれない、学校の試験の勉強もできない、何もできないというようなことは絶対にないのである、安心して仕事をしてもらいたいという、国民大衆に一応の安心感を持たせるということも、この法律の大きなねらいでありますから、この法律があってもやらないという組合もいるのでございますから――それは法律があるからやらないのではない、われわれも自主的にやらないのだと言っておられるようでありますが、とにかくそういうことを言っておられるのでありますから、従ってそういうようなよい慣行が早くできてくれば、この法律の存廃ということは、政府が考えるよりも国会議員たるお互いがいつでも廃止のできるものでございますから、よい慣行が生まれたと認定したときにはやりたい。それは何年先かということは、きのうも申したのでございましたが、メルボルンの競争みたいに千五百メートル走ったらこれで終りというのでなしに、あるいは途中でやめられるかもしれないし、しばらくの間継続せられるかもしれませんが、われわれとしては田中さんたちの御協力を得て、よい労働慣行が成熟して、早くこういう法律が不必要になることを期待しておる。こういうわけであります。
#49
○高橋委員長 田中君、まだ長くなりますか。
#50
○田中(武)委員 まだだいぶあります。
#51
○高橋委員長 実はだいぶ時間もおそくなっていますし、それから発言通告があと五人あるわけです。そうして審議日程はきょう終るということになっているようですから、できるだけ一つ簡単に早くお進め願いたいと思います。
#52
○田中(武)委員 委員長からの注意もありましたから、なるべく簡単に申し上げたいと思います。今労働大臣が言われたように、労働組合運動のためならどんなことをしてもいいのだ、こういう考え方を持っている者は今いないと思う。そういう考え方で労働行政をやっていったら、私は大きな誤まりがあると思います。それから、いい慣行が生まれてくることを望んでいると言っておられますが、口と腹とは別で、むしろ三年前よりか労相なり政府の態度はあと戻りしたような感じを受けるのです。というのは、きのうですか、社会労働委員会で、私いなかったから知りませんが、新聞等で見ると、同僚の佐々木君の質問に対する答弁の中に、三年前にはただ、この法律によって規制せられる行為はスイッチを切る行為だけである、こういうふうに言われておったのが、何か水力発電において、水の入口か何かにあるごみを除く行為を拒否してもこれにひっかかるのだ、こういうような答弁があったように思うのですが、一体この法律によって規制せられる具体的な行為というのは、どういうことなんです。それをはっきりしていただきたいと思います。
#53
○倉石国務大臣 午前中の会議のときに政府の見解を申し上げました。それを今政府委員の方から間違いのないようにわれわれの解釈を申し上げます。
#54
○中西政府委員 主として問題になりましたのが二条の関係でございます。これは直接電気の正当な供給を阻害する行為、これがひっかかるわけであります。その直接ということであります。これは午前にも申し上げたのでありますが、現に電気を発生せしめている段階から電気を消費のために配電するところまでの過程の中のいずれかにおいて、作為不作為の行為によって支障を生ぜしめる場合を申すのでございます。この過程のほかにあっての行為によって、あるいはまた、現在用いてない発送、配電施設、それと別個の、現在の発送配電のものとは別個の行為によって影響せしめて支障を起させるというのは間接であるという解釈でございます。電気の発生は、水を落して水車を回す、あるいはまた石炭をたいてタービンを回すことによってなされることは申すまでもございません。従って、水を落すことをやめる行為は直接でございます。しかし、たくべき石炭を調達してくる行為は、この過程の前段階でございますので、間接と申せます。今言われました塵埃処理拒否のごときも、水を落すのをとめるという性格の不作為である場合には、直接ということになります。従ってたとえば定期点検を怠るということは、現に発生し送配電している過程に介入する行為でございませんので、その影響がいずれ出てくれば電気の供給に障害を生ずるとしましても、間接であると考えております。そこで、塵埃処理業務拒否と申しましても、すべてが直ちに本法違反となるのではございませんで、そのときの状況によりまして、その行為を怠れば水の取入口が閉鎖されまして、発電に直ちに支障を来たすという場合が、この第二条に違反する、こういう解釈であります。
#55
○田中(武)委員 時間がないようですから、次に入りたいと思います。
 現政府は、憲法の改正ということを大きな公約としてこられたのですが、これが現実において三年間できないということになったことは、御承知の通りであります。そこで憲法改正の理由にはいろいろ党としてお考えがあると思いますが、その一つに、やはり労働者の自由な行動といいますか、労働基本権を押えていこうというお考えがあるんじゃないかと思う。ところが、憲法の改正が向う三年間ストップになりました。こういうことになったそのかわりとして、こういう法律を次々と作っていって、憲法は改正しないが、現実において労働者なり一般国民大衆の自由権、基本権を押えていくというような方向をたどられておるんじゃないか、こういうように思います。その一つの現われとして、この法律の存続の決議を出してこられたんじゃないかと思うのですが、そういう点はいかがですか。
#56
○倉石国務大臣 本法が制定されました当時は、憲法改正論は出ておりませんで、私どもは争議行為の手段として著しく不当ないし妥当を欠くと認められる争議手段をやめてもらいたいということだけでありまして、そのことを憲法改正にどうするかということは、憲法調査会等で十分研究された上で成案が出たら、そのとき考えたいと思います。
#57
○田中(武)委員 この法律の存続決議に対してわれわれが釈然としない、また反対だと言っておるのは、これは労使の間における、公共事業だという、こういう立場からの規制が一方的であって、労働者だけに、公益事業だ、こういうことから押えつけておいて、資本家の方には何もやっていないじゃないか、いわゆる労使双方に対して平等の立場で臨まねばならない政府が、一方的な立場に立っておられるんじゃないかという点に一つの不満があるわけです。
 そこでお伺いしたいんですが、これは通産大臣の方が適当かと思いますが、労働者側に対しましては、公益事業だということでいろいろとこういう規制をなされておる一方、資本家側といいますか、企業者側に対してはあまりなされていないのじゃないかと思います。これももう話題に出たかと思いますが、たとえば佐久間ダム等におきましてもいろいろな問題も起しておるようでございます。このようなことに対して、政府は一体公益事業なるがゆえに、どういったふうな規制の態度を持っておられるのか、それをお伺いいたしたいと思います。たとえば東北電力でありましたか、値上げをする、こう言っております。しかもそのときに、高い電気を買うて配電しておるのだ。ところが東北では、産業の発展上電気が不足しておる。幾ら電気が不足しても、採算の合わないようなことはやらないんだ、こういったようなことも東北電力の社長が言ったとも聞いておりますが、こういうような態度は公共の福祉という点から、あるいは公益事業という点から考えてどうかと思うんですが、この電気の値上げのような問題に対して、政府のお得意の言葉、公共の福祉の立場からお考えになって、どういうように考えておられるか、お伺いいたしたいと思います。
 なお電気等の公益事業が公共の福祉のために最もふさわしい方法として運営せられるならば、電力とか石炭とかいったようなものは私企業に任せずして、公けの立場から運営していくのがいいんじゃないかと思います。そういう点から、こういう石炭とか電力等の国家管理等についてもどのようなお考えを持っておられるか、お伺いいたします。
#58
○石橋国務大臣 電気とか石炭等の事業家に対する制約はずいぶんやっております。それから電気料金にしても、かってに電気会社が自分の採算だけで上げるというようなことができないことは御承知の通り、ですから、決して労働者側だけに規制をしているというんじゃない。これは争議行為における問題ですから、労働者側だけに影響があるように見えますが、実際は全体に規制をしているわけです。
 それから今の電気や石炭を国営か何かにするという問題、これはなかなか大問題でありますが、現在の私どもの考えは、一応電気でも石炭でもやはり国家の管理のもとに私企業にした方が適当だ、かように考えているわけです。
#59
○田中(武)委員 公共の福祉、公益事業というので一方労働者に対してこういった制限をせられるのでしょう。そんなら企業に対しても、公共の福祉の上から、もっと公益のためになるような企業形態をとらす、すなわち国家管理とか、あるいは公けの立場から運営するような方法をとられた方がいいんじゃないですか。
#60
○石橋国務大臣 それは議論になりますが、現在におきましては、公益に関する事業を私企業にやらせておりますけれども、決して野放しにしてはおりません。すべて公益の上から規制をしているわけです。その規制のもとに私企業にやらせた方が、事業の経営上、現在においては公益にかえってかなり、こういう立場から私企業に任せているわけであります。
#61
○田中(武)委員 大臣はそうおっしゃいますが、やはりわれわれの受ける感じは、一方には法律とか何かでどんどん押えつけていって、一方には、規制するとか監督しているとか言われるけれども、資本を貸してやり、いろいろやっておられるわけです。そういう点にやはり片手落ちだ、こういうふうにいわれているという原因があると思うのです。たとえば昨年の二十二国会だったか、石炭鉱業臨時措置法が出た。この場合に炭鉱の労働者は数万人の失業者が出るというので反対いたしました。しかしあれが通って、結果は政府が買い上げてつぶしていくのだ、こういうことで、ストライキで炭鉱をつぶしてはいけない、資本家のためなら現実に炭鉱をつぶしていく、しかもそういった法律をあえて通すために、まず労働者が大きな抵抗をするであろうということが予想せられるので、こういう法律を作って手足をくくっておいて、法律を通した、こういうふうに考えるわけです。今またあえてこの法律を存続さそうとせられるこの裏には、電気あるいは石炭等の企業の合理化とか、あるいは生産性の向上とかいったような名目のもとで、実は首切りとか、労働強化が考えられているんじゃないかというようなことも心配するのですが、そういうような点はいかがでしょう。
#62
○石橋国務大臣 田中君の今のお話は、何でも悪意に悪意に解釈しているのであって、そういうふうに、何かやると、その裏があるんだろう、裏があるんだろうと悪意に解釈すれば、これは色めがねをかけて見れば、青いものでも、ほかのものに見えます。そういうふうに解釈されない方がいいと思う。これはもう説明するまでもなく、電気だの石炭については、ずいぶん厳重な規制を経営者にもしているわけであります。それから例の石炭合理化法でも、あれは全体の計画の上において、公益上この炭鉱はむしろ閉鎖した方がいいというものをやるだけで、ストライキでもってアトランダムにやられちゃかなわぬですよ。全体の計画の上から国家としても採算に合わぬ、だれがやってもいけないとだれもが認めるものをある程度つぶす。これは決して炭鉱経営者を救うためではなくて、同時に労働者の安定をもはかった法律でありますから、勝手気ままにつぶしているわけではありません。それはこの場合とは違うと思います。
#63
○田中(武)委員 大臣は悪意に悪意に解釈するとおっしゃるが、今まで政府がやられていることは、われわれがそう考えざるを得ないようなことばかりやられるから言っているのです。
 さて政府は生産性の向上ということに力を入れて、日本生産性本部にもいろいろ金なんかも出しておられるようですが、生産性を向上していくためには、生産の増強のためには、今日何といっても労働組合あるいは労働者の自由な創意に基く協力がなくてはだめだと思うのです。ところがこういったような法律で頭押えをしておいて、そういう職場の中からほんとうに労働者の協力を得られる生産性の向上が生まれてくるとお考えになっておるのでしょうか。
#64
○石橋国務大臣 むやみに自由を束縛するような考えは毛頭持っておりません。先ほどからお話があるように今度のスト規制法で規制される行為は野放しにしておいても当然やるべからざる行為なんです。だからむろんこれがなければやりますという宣言をする人はないだろうと思うがこの間一つあった。これは信用問題ですから……。今までの現状においてはこういうものが一応ある方がお互いに安全だと思う。これは決して労働者の利益を不当に束縛するものじゃなく、これは当然やるべからざる行為なんですから、あってもなくても同じことなんです。その意味からいえばなくてもいいというあなたの議論も成り立つが、そのかわりあってもちっとも差しつかえない。だからこれはなくてもいいという時期になったら、労働大臣も言うようにいずれなくす時期もありましょう。しかし現状においてはとにかくみんな不安心で心配するから、それは諸君においても心配させない方がいいでしょうし、心配させたくないと考えるわけであります。それも新しく作るのじゃなくて、今まであったものだから、あったものをしばらくそのまま置こうじゃないか、これをなくしてしまうと新しく争議でもやってもいいというような許可が出たように誤解する間違った人間があっても困ると言っておるわけであります。
#65
○田中(武)委員 先ほど何でも悪く悪く解釈すると云われたが、大臣は労働者なり労働組合を悪い方に解釈しておられる、そういうことでなくては先ほどのようなことは言えないと思う。なるほどあってもなくてもいいというようなことも言われた。こういう法律に触れるようなスト行為をやらないようになるならあっても差しつかえないんだ、こういうような言い方をしておるのだろうと思います。しかし先ほどの松岡委員の質問のときの刑事局長さんの答弁の中に、あった方が便利であるということを言われたと思うのです。これは取締りの立場から便利だというだけで作っておられるのじゃないかと思うのです。どうなのでしょう。
#66
○石橋国務大臣 私は取締りのためとか何とかということは考えておりません。しかしながらこれは今申し上げるように――言葉はなかなかめんどうだから、言葉じりをとらえられちゃかなわぬですよ。そうではないのです。これは先ほど労働大臣も明白に言っているのです。なくてもいい時期がくればむろんない方が好ましい。しかしながら現在においては――私はこの間からいろいろ通産省においても研究さしたのでありますが、やはり心配な点がある。今までの事例において、非常に大きなものがあったと思いませんけれども、ある方がやはりいいんだ、みんなに安心を与えるだけいいという考え方で、そういう安心を与えることは、私は労働者にとってもいいのじゃないかと思うのですが、しいて御反対なさることは、これがなければやるぞということにもなるのじゃないかと思うのです。
#67
○田中(武)委員 この法律を制定せられた当時の様子から見ましても、この法律自体が本来望ましいものでないことは大臣も考えておられると思うのです。いかがでしょう、こういう法律は本来は望ましくないんだと考えておられますか。
#68
○石橋国務大臣 どういう意味か知りませんが、それは労働者の不名誉ですよ。だから労働者の名誉からいえばない方がいいでしょう。
#69
○田中(武)委員 それならこれはむしろ労働大臣と同じ議論をまた繰り返すことになりますが、そういう事態が起るような心配がなければ、あえてこういうことをやらなくてもいいじゃないですか。
#70
○石橋国務大臣 なければよいのですが、ないという確証がないのですね。必ずないという証拠もあげられないのです。
#71
○田中(武)委員 どうも水かけ論になりそうだし、時間もありませんから、最後に次の二点をお伺いしたいと思います。
 これはあくまでも仮定ですが、もしもこの会期中に本決議案が成立しないというような見通しでも出るような場合は、もちろん国会がきめるのですが、会期を延長してでも、あるいは政府与党のお家芸といいますか、いつも好んで行われるところの中間報告を求めるというような方法をとってでも、ぜひともこの法律は通したい、このようなことを考えておられるかどうか。
 それからもう一つ、すでにこれは議論があったかと思いますが、こういう法律をあえて存続させようという裏にはもっと私鉄とか、あるいは日通とかいったようなものにも、いわゆる公共の福祉ということでどこまでも幅が広げられると思うのです。そういうことでこの種の法律のワクを広げてくる。しまいには鉄鋼あるいはガラス工場の炉の火を落すこともいけないということになるのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
#72
○倉石国務大臣 この会期中に本法律は皆様の良識によって必ず成立さしていただけるという確信をもってやっておるわけでありますから、どうぞ御協力を願います。
 それから第二の点につきましては、ただいまのところは適用範囲は電気事業と石炭だけを考えております。将来またこういうようなものが必要になるようなそういう不安な労働情勢をかもさないようにお互い一つよい指導をしていきたいと思っております。
#73
○田中(武)委員 ただいまのところは、こういうことが将来はあり得るということを言われるのでありますか。
#74
○倉石国務大臣 昭和二十七年のあの激しい争議の結果、いわゆる社会通念に基いてこういうような法律が考えられました。先ほど通産大臣との応答の間にもこれは恥ずべき法律だ、私も実は本会議で賛成討論をしたときにこれは恥ずべき法律だということを申しております。なぜならばこういうようなことは労働者が良識をもってやったら法律があってもなくてもやらないのだ、ことに旧公益事業令でも鉱山保安法でもやってならないということになっておるのでありますから、よい労働慣行が成熟すればやらないはずであります。そういうものをなるべく早く廃止できるような時代を出現させたい、従ってこういうような特殊な制限を労働運動に加えなければならぬということは悲しむべきことだから、そういうようなことは私はおそらくだんだん成熟してきました日本の労働界ではないと思います。従って今月はほかの産業について特に何かの手段を講ずる必要を政府としては毛頭認めておらないのであります。
#75
○田中(武)委員 私はまだ質問したい点もあるし、労相あるいは通産大臣等々から説明を求めたいと思うのですが、時間がないのでこれでおきます。しかし今のところ、私は先ほどからいろいろ労働大臣あるいは通産大臣から伺いましたが、どうも釈然といたしておりません。またこの法律の直接の規制を受ける労働者はもちろん、そうでない日本全国の多くの労働者も釈然としていないと思います。従って労相が先ほどから言っておられるように、ほんとうにいい労働組合の育成ということを望んでおられるならば、もう一度こういったような法律は考えていただきたい、こういうことを申し上げて終りたいと思います。
#76
○高橋委員長 猪俣浩三君。
#77
○猪俣委員 私は法務行政に関しまする点に限って御質問いたしたいと存じます。それも、実は私は四時ごろ済むかと思って出てきましたが、時間が大変延びたので、私の用意いたしました質問の三分の一くらいにとどめたいと思います。あとの三分の二は、場合によりましては労働委員かだれかに質問してもらって、もう一ぺん明らかにさせていただきたいと思っております。
 そこで、最初に労働大臣と井本さんにお尋ねしたいと思います。まず第一に、本法の第二条あるいは第三条に違反をいたしましたものが、いかなる法律に基いて、いかなる処罰を受けるのであるかを労働大臣からお尋ねしたい。もし労働大臣に不服がありましたならば刑事局長からお答え願いたいと思います。
#78
○倉石国務大臣 本法に違反いたしておる行為は、そのことが他の法律に触れる場合には従ってそれの規定によって処罰をされる、こういうことになります。
#79
○猪俣委員 その他の法律とはいかなる罰則のある法律に当りますか、私もほぼ知っておりますが、あなたを確かめたい。
#80
○倉石国務大臣 政府委員から詳細に答弁いたさせます。
#81
○井本政府委員 いろいろの罰条に触れる場合があると思いますけれども、主として第二条関係では公益事業令の第八十五条、それから第三条関係では鉱山保安法の規則第四十七条に触れると思います。
#82
○猪俣委員 なおもっと大きいところを落していらっしゃるのじゃないか。労働組合法第二条の正当な業務ということに対して関連があるのじゃないか。これは非常に大きい問題です。いずれにいたしましても、この法律自体には罰則はついておらぬけれども、この法律を前提といたしまして体刑までつける法律が陰に控えておる。そこで法務行政と相当関係があると考えるのでお尋ねするのであります。
 なお、念のためにお尋ねいたしておきますが、私はこの国会における倉石労働大臣の答弁をあまり聞いておらないが、第十六国会におきましての政府委員の答弁、大臣の答弁は速記録で多少見ております。それによりますと、この法律は既存法律の規定の不明確なところを明確ならしめる解釈法律である、確認法規である、こういう答弁になっておりまするが、それは倉石大臣になられましてもお変りないのであるかどうか、念の為にお尋ねします。
#83
○倉石国務大臣 変っておりません。
#84
○猪俣委員 そうしますと、ある既存法律のその意義が不明のために、明瞭ならしめるためにそれと同等の資格のある法律をそれだけのために作るということは異例である。そういう異例の立法のためにここにいろいろの疑問が出てくる。もしある既存法律が不明確であるために、それを具体的に明瞭ならしめるために特に法律を作るとするならば、その法律は非常に明瞭かつ的確なる法律でなければならぬことは論理の当然であります。そこでこのスト規制法と略称いたされております法律は、労働法学者の説を読んでみましても、法三章にして足りるのが理想でございましょうが、まことに不明確、抽象的であるという酷評を受けておる。それは学者のたわごととおっしゃってもいいかもしれませんが、先ほど申しましたように、この法律が他の法律に反射いたしまして体刑を科されることが結果するのであって、ここに警察及び検察の活動となり、第一線の検事の活動となるわけで、この第一線の検事は、不明確の法律ほど扱いにくいものはないのでありますが、私はここに憂慮することがある。それは法務省の刑事局付の検事であります滝川幹雄氏が「警察研究」第二十四巻第十号にスト規制法の詳細な説明をしておる。現代に見ましたる解釈としてこれくらい詳細に論じておる人は少いのでありますが、おそらくこれは刑事局において井本さんの下でこういう方面の専門家ではないかと思う。この滝川幹雄検事が、スト規制法の問題点というのを、この「警察研究」に書いておる。何と言うておるか。本法は、抽象的かつ不明確な表現を用いているばかりではなくて、禁止せらるべき行為を個々具体的に列挙していないので、本法の規定の解釈は相当困難であり、もしこれを拡張して解釈、運用するがごときことがあれば、直ちに違憲のそしりを免れ得ないことになるのである、かようなことを論じておる。なお、同じ趣旨で、これはいわゆる司法官の卵を養成いたします司法研修所におきましてこの滝川検事がやはり詳細なる論文を書いておりますが、これにおきましても、同趣旨でありますが、本法は解釈規定であるとされながら立法技術上及び政治上の関係から相当抽象的かつ不明確な文字が用いられており、禁止せらるべき争議行為の方法が具体的に列挙されず、一定の結果を発生する現実の危険な行為を包括的に禁止する形をとっておる。非常に不都合なことが起るということが書いてある。かような解釈法律であり、既存の法律を明らかにするものであると称して立法いたしましたその法律自体が、専門家である検事が、ことに第一線で活躍しなければならぬその検事が、かような酷評をしております。これに対して倉石大臣の御所見を承わりたい。
#85
○倉石国務大臣 政府委員の方からお答えをいたします。
#86
○猪俣委員 あなたの所見を言ったらどうか。
#87
○井本政府委員 滝川検事は元刑事局の局付の検事でありまして、ただいま大阪の管内の検事をしております。お読み上げの文書は、私もおそらく滝川検事の書いた文書だろうと考えますが、これは滝川検事の一個の私見というふうにお考え願いたいのであります。私は現在ではさように不明確なものとは考えておりません。
#88
○猪俣委員 私見だから重要であるので、井本刑事局長に本音を吐けと言ったって吐きゃしません。あなたは政府委員であります。お歴々の大臣が並んでいて言うはずはありません。若き前線の検事が私見を述べておるところに値打がある。刑事局長井本氏の発言よりは、この方がほんとうのことを言うておるから私が心配する。これはそういう心配が要らぬのかどうか、一つ大臣から御答弁願いたい。
#89
○倉石国務大臣 あなたもよく御存じのように、私は今法律論の詳細なことは別として、争議行為というものはいろいろな手段があるのでございますから、それを列挙しろと言われましてもこれは大へんなことであります。従って労働関係というものは、大体電気産業にいたしましても石炭鉱業にいたしましても、たとえば石炭の保安要員というのは大体経営者側もそれから労働組合側もわかっておることでございますから、その保安放棄はいけないというふうに言っておるのでありまして、私は、法律的に厳密に言えばいろいろな議論がそこに出てくるかもしれませんが、これは大体労働関係を律しているものはわかっておることでありますから、私どもとしてはさように不明確なものではないと思っております。
#90
○猪俣委員 そこで今、あなたの答弁の中に内包せられております争議手段というのは多彩である、御説の通りである。そこで具体的に一々列挙することは不可能である。そこで問題は、私の言わんとするところは、されば解釈と称してかようなる単簡なる法律を作るべきではない。これは一切司法権の発動にまつべきものである。そこでここに石橋大臣もおいでになりますから、私は以下説明することによって石橋大臣にお答え願いたいと思う。これは実はあなたに通告しておらなかったから、あなたの常識でよろしゅうございます。それは、あなたが通産大臣としてよりも何だか来たるべき、今度は総理大臣になられる候補者のようにも考えられますので、一応申し上げます。
 それは民主政治は政党政治なり。日本のごとくイギリスの政治を大部分取り入れておりますのは政党政治であります。政党政治を言いかえれば多数党政治であります。いわゆる三権分立の原則が政党政治においては相当形が変ってくる。そこで政党政治とは、多数党政治とは、結局立法権と行政権を一手に握る政治でありまして、この運用のいかんによっては専制政治のおそるべきものとなり、絶大なる権力を把握する。されば三権分立の思想、ことに司法権の独立という思想は、今や昔のように貴族特権階級に向けられずして、多数党の横暴を押えるということがこの司法権の独立の新しき意義でなければならぬのであります。さような意味におきまして諸君は、一度多数党として決意をされるならば内閣を組織し、行政権を掌握するとともに国会内を押しまくって委員会の審議もせずして本会議で一挙に押しまくるぐらいの勢いで、わがことならざるなしなんであります。そこに非常に危険性がある。ことに現在は二大政党の対立であり、片や資本家を基盤として立っているような自民党、片や労働階級に深い関連を持っている社会党、この二大政党が国会内に対立しておる。かような場合において、内閣が行政権の発動としていろいろな提案をなさり、また国会が多数党によって数で押し切って、いろいろの法律を作る、ここに実におそるべきものがあるのであります。私どもはもし今労働大臣がおっしゃったように、この争議行為というものは多彩であり、各種各様の性格と要素を持っておるものであり、一律に規定することが困難である、それもごもっともだと思う。この検事が嘆いておる、実に困った法律だ。それはあなた自身の告白でもわかる。それはとりもなおさずかようなことを抽象的な法律として作ることがふさわしからぬということに相なるのであります。すでに労働組合法あるいは労調法、鉱山保安法、いろいろの法律があるのであります。それを解釈すると称してかようなものを作る、しかも万般の各種の行為に対しまして、これは不適当であります。私どもは具体的事案の起った際に、いわゆる厳正中立の立場である裁判所、検察官もこれは準司法官であります。検察官の認定及び裁判所の認定、これにまかさるべきものである。これを多数党が数で押し切った立法作業において、法律としてこれを規制する。いわゆる二大階層のうちの一方の立場をとって一方を押えつける。少くとも電気産業関係者、炭鉱関係者にはありがたい法律であるし、労働組合は総評を初め一斉に反対しておる。かような場合におきまして、最も公平厳正なる裁判所に解釈をゆだね、裁判所の解釈によって、われわれが従うというのが民主政治の根底でなければならぬのであります。これが司法権の問題であり、民主政治の発達している国ほどアメリカを初めイギリス、いずれも裁判所というものの権威が実に高いのはそこからきている。これによって多数党の横暴を抑制するとともに、国政の円満なる、各階層の調和ある性格が実現していくのであります。だから砂川事件は、一つ裁判所の判決があるまでくいを打つをやめたらどうかというのが私どもの態度であったにかかわらず、行政権の発動で、二千人の人の頭をたたき割って、そうしてくいを打ち込んだ。少し脱線いたしましたが、そういう一連の連関がある。なぜ一体現政府は、これを裁判所の良識ある判断にまかせる態度をとらないで、こんな法律を作るのか。この民主政治のあり方から、この司法権の問題というような点から、かような論点に対しまして、石橋さんの御意見を承わりたい。
#91
○石橋国務大臣 私は法律のことは一向わかりませんので、御意見はもうごもっともに拝聴いたしました。
#92
○猪俣委員 これは法律問題じゃない、政治問題なんだ。それをあなたはおわかりにならぬと、総理大臣はむずかしいかもしれぬ。
 それでは私も端折りまして、なお一点お尋ねいたします。裁判の話が出ましたので、裁判に関係してこれは労働省で御研究だと思いますが、新潟県にあります東北電力の大谷第一発電所の事件というのがあるのであります。これは電源ストに関する事件であります。実は私も弁護に携わった一員でありますが、これが東京高等裁判所において無罪の判決が出ておる。その内容を申し上げますが、一体これは昭和二十七年に起った事件ですから、このスト規制法の発効以前のものである。こういう事案が今起ったらこのスト規制法によればこれが有罪になるのか無罪になるのか、御高見を拝聴したいと思う。この事案は、正確を期するために判決の内容を読んでみまするが、「本件電源ストは発電所の水車室、機械室、配電盤室その他堰堤取水口等の電源職場において従業員が一旦、発電施設の運行を停止せしめた上その職場を離脱し一定時間労務の提供を拒否することにより一定の減電量の実現を目的とする争議方法として案出されたものであって、これにより会社の発電量の低下を来たし、その業務の正常な運営を阻害するものであるが、本来、争議行為において使用者の業務の正常な運営を阻害する結果を伴うことは、その性質上己むを得ないところであるから、電産がその争議方法として上記のような電源ストを決定し、その実施によって会社の正常な業務の運営が阻害せられ水利の阻害を受けることがあっても、このことのみを以て不当な争議方法であるとはいえない。ただ、この争議方法によるときは、電源職場従業員が会社側より発電施設の操作を停止することなく、現状のまま引き継ぐよう要求されても、これに従うことなく、敢て発電施設の運行を停止せしめ、一時会社の施設の管理を行う状態を伴う点において、不法性を帯びるやの疑を生ずるけれども、電産がかかる電源ストの方法を採用するに至った理由を考按するに、」これは証人の名前は出ておりますが、省略します。「各供述を総合すると、電気事業は最も重要な基礎産業としての公益事業であるから、全国ないし一地方の電気産業従業員が一斉に労務不提供に入れば、社会的経済的に頗る深刻な影響をもたらすことが予想されるので、当時電産としてはかかる大規模なストの実施を良識的に避けて、電気の供給に実質的な障害を生ぜしめないよう減電量を定め被害の少ない一定時間、一部発電所に限って行う電源ストの方法を採ったものであること、かように電源ストは一部発電所を対象として限られた時間だけ行う争議方法であるから、単に職場を放棄するのみでは会社側非組合員の手により操業を継続させることが容易であり、従来の電産争議の経験に徴しても、会社側は当然そのような対抗策に出ることが予想せられ、かくては短時間小部分の電源職場を単純に離脱するのみでは、その実効を挙げ得ないため一時発電機の運転を停止して減電量十五パーセント程度(保安電力及び一般需要家に支障を生ぜしめないよう考慮し電源ストとしては最低線と認められる限度)を実現確保する必要があるとして会社の上記要求に従うことなく、敢て発電施設の操作を停止する方法を採るに至ったものであることが認められるのである。して見れば、叙上の限度において会社側の前記要求に応ぜず、発電停止の準備操作の間一時、会社の当該施設を会社側の意思に反して管理する状態に立ち至ることも、電源職場の特質上海に己むを得ないところといわなければならない。」かような判例になっております。これは結局電源ストをやって一時機械をとめた、しかしその減電量を全発電量の一五%としておいて減電をやった。そこで実際の需用家には差しつかえなかった。これは法廷で全部需用家には何ら支障がなかったことが科学的に正確に立証されておるのであります。かような電源ストは、このスト規制法によると、やはり取締りの対象になるのであるかどうか、今読んだことだけで大体事案が明らかだと思います。発電装置を停止して減電した。しかし需用家にはあまり迷惑をかけない程度に相当の考慮を払ってやった。これがこのスト規制法の二条の違反になるのか、これを一つ御答弁願いたいと思います。
#93
○倉石国務大臣 御承知のように大谷第一発電所の事案は一審で有罪になりまして、二審で無罪の判決を受けておりまして、ただいま最高裁に係争中であります。従って判決の出ます前に政府がこれに対してとかくの批評をいたすことは、遠慮いたしたいと思います。ただ一般論としては水門を自由に開閉して発電を阻害することは、本法二条に違反する行為であると考えております。それから大谷発電所の事件にはピケットの問題がございます。これは本法には関係ございませんが、ピケットの違法性については、政府がしばしば言明いたしておる通りであります。
#94
○猪俣委員 この判決などは労使双方から見てまことに妥当な公平な判決である。その述べられている趣旨からいっても、こういう争議を奨励した意味は一つもないのでありますし、公平な立場で判断しておる。これは何ら資本家のひもつきならざる立場に立つと、こういう合理的な判断ができるのであります。だからこういうスト規制法を設けるよりも裁判所の判断にまかせることが合理的ではないか。これが解釈法律であるならそういう結論になる。解釈は裁判所にまかせるべきである。それを多数党の勢いをもってみずから解釈する。これはあとから法制局に聞きたいと思いますが、こういう異常な立法それ自体問題があると思います。
 そこで第二の問題といたしまして、解釈法律を作るくらいならば、なぜ現行法を諸君が考えるより、改正の手続をとらないのか。それが通常の方法であります。今大臣が答えられたように、すでに多数の法規がある。それが不明確であるならば、法規自身を改正すべきである。それをこういうふうなまことにえたいの知れない立法をしたというところに一つの問題がある。これはさっき大臣みずから述べられましたからあれですが、倉石大臣は第十六国会において、こういう発言をしております。「私どもは、法体系からいえば、既存のこういう法律を改正することが一番いいんじゃないか、政府はどうしてそういう態度をおとりにならないで、こういう法律案をお出しになりましたか、」こうあなたはおっしゃっておる。そこでこの疑いを今度はそっくりあなた自身に向ける。法体系からいえばそうです。既存のこういう法律を改正することが一番いいんじゃないですか。政府はどうしてそういう態度をおとりにならないで、こういう法律をお出しになったのか。あなたの言うた言葉そっくりであなたにお聞きいたします。
#95
○倉石国務大臣 先ほどもそういう点についてお話がございました。なるべくいろいろな法律規則を作って制約しない方がいいのであるが、やはり本法のようなこういう規制は必要なことである。そこでそういう点について考えた場合に、一般労働関係法に入れたらどうであろうかということについて政府の所信をただしました。それからまた私自身もその後十分検討いたしてみましたが、先ほどの方にお答えいたしましたように、労調法などにおいては一般労働関係そのものを論じておりますが、本法で申しているものは、争議行為の手段として著しく不当ないし妥当を欠く行為はすべからざるものであるということだけで、しかも電気産業及び石炭鉱業だけに限られた規制行為でありますから、これはやはり法体系としてはあまりうまくないが、どうもこれよりほかに仕方がないのだ、こういうふうに結論づけられるように考えがなって参りました。そこで今回この法律の延長をお願いしておる、こういうわけであります。
#96
○猪俣委員 大体このスト規制法なるものは臨時立法として作られたものである。この臨時立法として作られたものが国会で一ぺんの議決をすると、これが恒久法に変る。これは非常に例が少いことではないかと思います。そこでこれは法制局長官にお尋ねいたします。一体かような事例があったかどうか、そしてかようなことが法律制度上妥当なことであるかどうか。これは臨時立法的態度において作られているはずであります。それをそのままの形において永久立法に変改させてしまう。それからこの法律の附則というものはどういうことになるのか、どういう手段をとっていくのか、国会でやるものは議決だ。この附則はどうなるのか、そういうことについて法制局の御意見を承わりたい。
#97
○高辻説明員 ただいまの御質問の点でございますが、まず第一点は、この種の方法による、言いかえれば議決による継続を建前とした法律が前例としてあるかというお尋ねでございます。この法律と全く同一の趣旨の建前の上に立った法律というものはございません。これは私の知る限りで申し上げるわけでございますが、おそらくはなかったと思います。ただ非常にこれと似通った法律といたしまして、御承知でもございましょうが、第二回国会に成立いたしました法律の中に、新聞出版用紙割当事務庁設置法というものがございます。これはその後改正をされまして、新聞出版用紙の割当に関する法律というように題名が変りましたが、その附則の第三項、第四項だったと思いますが、その中には、新聞用紙の割当を継続する必要の有無及び割当制度の可否に関しまして、国会が再審議の機会を持たれますために、政府において、毎通常国会の議決による再確認の手続というものをきめております。似通ったものとしてはこの例があると思います。
 それからもう一点は、今の法律の附則第二項によりまして手続がなされました後、第二項の規定は一体どうなるかというお尋ねのようでございます。むろん第二項の規定は、あそこにありますように、三年を経過した後における手続を規定しておりますので、その後のことには関係がないと思います。お尋ねの趣旨は、おそらくはその規定は一体なくなってしまうのかどうかということであろうと思いますが、形式的にと申しますか、それを削除するような手続がとられませんから、むろんその意味では形の上では残っております。しかしながら御承知のように法律の中にはいろいろな規定がございまして、立法上それを削除するというような形式的手続によってなくする方法もございますし、その規定がすでに目的を果しまして実効性がないものとして、ただ形骸のみが残っておるというものもありますことは、御承知の通りだと思います。
#98
○猪俣委員 今のあなたの新聞紙の割当の法律なんというものは、例としてははなはだまずいんだ。私も特にそれを今比較して研究しておりませんが、あなたの説明は違っているんじゃないかと思う。これは今私が質問したような前例にならぬと思うのです。その趣旨を違っています。しかし私も今的確にここに規定を持っておりませんが、私のおぼろげなる記憶によると、あなたの言うことは間違っておる。もうちょっと研究してもらいたい。私も研究します。この例としては不適当だと思う。そこで結局これは例がないということになるんじゃないかと思う。ことにこういう重大な基本的人権に関係する憲法の原則に関係するようなこういう法律というものはおそらくない。憲法に関係するような、こういう基本的人権、申すまでもなくこれは学者が言うている生存的基本権です。この生存的基本権をこういうあいまいな立法操作によってやるなんということは、前代未聞の話だと思う。これは法制局としてはとくと御考慮にならなければならぬ。あなたも政府の役人だからあれだけれども、率直なお答えを願いたい。こういうことが一体いいことであるか、悪いことであるか、法制局次長としてのあなたの御判断を求めたい。
#99
○高辻説明員 大体例がこれに当らないんだというふうにおきめいただいたわけでありますが、しかし私も正確に申し上げたつもりでございます。これと全く同じ建前とは申しておりません。これと似通った建前のものとしてこういうものがあると申し上げたわけであります。むろん非常によく似ているということは、これは主観の相違で、あるいは違うかもしれませんが、大体私の見るところでは似ていることは間違いないように思います。そういう意味で申し上げたわけであります。
 それから、妥当性でございますが、これはまたお答えするのに非常にむずかしいのでありますが、いずれにいたしましても、われわれとしましては、三年前の国会で成立をいたしまして、その妥当性を国会としては――むろんそこには賛成、反対ということがありましたでしょうが、成立をいたしましたことは、一応この内容を持った法律としては妥当であったと見られたからそういうことになったのではないかというふうに考えます。ただ理論的に申しますれば、法律というものは、この国会が立法機関として、法律によっていつでも改正し廃止しすることができるものであるから、こういう措置をとらないでもいいだろうという観点からしますれば、そこには批判の余地があるかもしれません。しかしながら、同時にまた、これは三年の後に再検討するということがありますために、現にここで慎重なる御審議ができておりますことを見ますと、そういう意味でもやはり効用がある。そういう意味ではやはり妥当と認められたゆえんのものではないかというふうにも考えられる。あれこれ考えられるわけでございますが、一言そういうふうにお答え申し上げます。
#100
○猪俣委員 政府委員としてはそれ以上しようがないでしよう。だからあなたを追及しても仕方がない。
 そこで、私もちょっちょっとはしょりますために連絡つかぬかもしれませんが、先ほど申しましたように、本法それ自体については罰則規定がありませんけれども、他の法律と結合いたしまして、これは罰則がついておる。犯罪になるのであります。そこで犯罪の構成要件というものを考えなければならぬのですが、その点につきまして、これはなお井本さんに確かめたいのだが、今私が読み上げましたこの東北電力大谷第一発電所の電源ストは、今読んだような趣旨で無罪になった。とにかくかようなことが確かに正常なる電気の運営を阻害したということは、それは裁判所も認めておる。しかしここには、彼らの意思は、一般需用者とか保安電力というものに支障を生ぜしめないためにいろいろな配慮をしておる、そうして減電する意味においてとめたんだという事実によって、犯罪意思がないというふうに認めたんだと思うのです。そこで今スト規制法に違反いたしますと、あるいは業務妨害とか労働法の免責規定がなくなりますと、刑法の各犯罪というものも出てくると思うのです。そういう場合に、この行為をやったものの犯意ということが相当問題だと思う。そこで、確かに第二条の電気の正常な供給を停止する行為をやったが、しかしいわゆる公共の福祉を阻害する意思がなかった。具体的事件はこの大谷発電所です。減電は確かにしたのです。正常な運営でなかった。しかしそれは一五%にとめて、保安電力と一般需用者に対しては迷惑をかけなかった、またそういう意図のもとにやった。つまり結局において、この法律が規定しておる公共の福祉というものを頭に置いて、そうして停電をやったというような場合、これは一体犯意ありとするかないとするか。具体的なこの大谷事件です。これをどういうふうに考えますか。これは倉石さんからも御答弁願いたい。これが第二条の不当な行為と認められると、刑法の罪が出てくる。その場合に、この行為者がいかなる犯意を持っておれば犯罪人になるのか、つまり公共の福祉を阻害しないものだという確信があるならばいいのかどうか。いや、公共の福祉を阻害しないと思おうと思うまいが、ちょっとでも電気をとめたら全部縛るんだ、こういうのであるかどうか、その点をお聞かせ願いたい。
#101
○井本政府委員 本件は、先ほど労働大臣からも御答弁なさいました通り、ただいま係属中の事件でございまして、さような観点から具体的な問題についてとやかく言うものもどうかと思うのでございますが、これを起訴いたしました検事局側の立場といたしましては二点ございまして、第一点は、スクラムを組んで威力業務妨害をしたという事実と水利妨害でありますが、前段につきましては事実の認定が一審と二審と違ったというようなことで、私どもは一審の認定の方がむしろ正しいのではないかというように考えております。それからこの事案は、御承知の通り、昭和二十七年の起訴の事件でございまして、問題のスト規制法が当時まだできていなかったわけでございます。それにいたしましても、この問題は、できていなくても私は有罪であるという考え方を持っておるのでございまして、いわんやスト規制法ができておりますれば、当然この事件は有罪であるといわざるを得ないというふうに考えるのでございます。
#102
○猪俣委員 私がお尋ねしたのは、停電というような異常な電気の運営をやった場合、第二条によって正常な供給を停止する行為をやった。しかし私どもはこれは裁判している最中に弁護をやってわかったのですが、減電をやっても需用家には迷惑をかけない方法がある。一般需用家に迷惑をかけないでしかも減電ができる、あるパーセンテージならば。そういう意図のもとに一般需用家に迷惑をかけない、保安電力も迷惑をさせない。保安電力も温存し一般需用家にも迷惑をかけない程度において運転を停止するという場合において、これは公共の福祉を阻害し、このスト規制法第二条違反の犯意ありとするのであるかないのか。それをあなたに聞いておるのに、あなたはここではっきりしない。だから私は仮説でもいいです、たまたま実際上の判決が出ているからお伺いしているのですが、政府の説明によれば、公共の福祉を守るために、――第一条に書いてあるこの公共の福祉というのはこれはまゆつばものなんですが、それはそれとしてもいい。公共の福祉とは何ぞや。一般需用家あるいは保安電力というものを減らさないという意図のもとに停電をやった。そういう場合においてなお本法違反の犯意ありと認めることが法律解釈として妥当なりやいなや、その点をあなたに聞いておる。
#103
○井本政府委員 どうも具体的なことをもう少しお尋ねいたしませんと的確なお答えもできませんが、私が聞きました範囲ではやはり起訴を妥当と言わざるを得ないと思います。
#104
○猪俣委員 あなたがそう答弁するだろうと思って私はこの判例を持ってきて具体的に言うた。あなたは第一審の事実が正しくて第二審の認めた事実は間違っておる、それはそれでいいのです。それを言うておるのではない。さらに第二審が、控訴審が認めたこの事実そのものとして判断して、これが一体本法に違反するのであるかどうか。この判決は本法が出ない前です。前であるからなお確かめる。これは主として犯意の点について、一体保安電力や一般需用家に支障を生ぜしめないでやるという意思が、スト規制法の第二条の犯意になるのかならないのか。犯罪意思と認められるものであるかどうか。結局、一体第二条違反の犯罪意思はどこまで言うのか。機械をとめるというただ認識さえあれば犯罪意思ありと称するのであるか、あるいは一般需用に迷惑をかけないという意思があるならば犯意にならぬのであるか、その意味を問うておる。なぜならば、この立法は憲法の規定しておりまする生存的基本権であるストライキそのものを処罰しようとするのでありまするがゆえにやむを得ず公共の福祉を持ってきたのでしょう。公共の福祉によれば合憲的に制限はできる。そこで公共の福祉の認識ということが非常に重大な問題になるのです。当然の筋合いじゃありませんか。元来が二十八条でとめられるべきものじゃない。公共の福祉からのみこの停電ストをとめるというのが本法の規定なのです。そうしてみれば、公共の福祉に違反しているかどうかということが非常に重要なウエートを持ってくるわけであるから、単に水をとめる、機械をとめるという認識だけじゃいけなくて、その上にこれによって公共の福祉を阻害するんだという意思が行為者になければ犯意の成立を欠くのじゃなかろうか、これが私の質問なのです。それに対してあなたは答えていただきたい。
#105
○井本政府委員 直接のお答えにならぬかしれませんが、結局二条の規定の適用があるという段階になりますれば、免責規定が適用されないことになりますので、刑法の各罰条が適用になるということになるのでありまして、この大谷第一発電所の事件の水利妨害の関係も、現在のスト規制法が適用に相なっておりますれば、明らかに水利妨害罪が適用になるといわざるを得ないと私は考えるのでございます。
#106
○猪俣委員 それじゃもう一点聞きます。第一条、第二条、第三条とありますが、スト規制法の守らんとする法益は何なんですか。公共の福祉であるか何であるか、法益は何なんですか。まさか資本家の財産じゃなかろう。そうすれば何を守るのですか。
#107
○井本政府委員 このスト規制法に書いてある通りでございます。
#108
○猪俣委員 井本さんは刑事局長でデリケートな立場だから、私もこれ以上申しませんが、しかしあなたの答弁がはなはだ難渋をきわめておるところから、なおその本年の性格がわかる。これは既存の法律の不明確を明確にした解釈法律じゃありません。新しいストの弾圧法であります。そこから答弁ができないことが出てくる。それじゃなければ、こういう犯意の問題においても真に公共の福祉を阻害する意思がない者が犯意があるという道理がない。それをこのスト規制法は、公共の福祉なんていう認識なくとも、ただ電気をとめるという認識さえあれば、もう犯罪意思ありと認めるための法律なんです。そこに犯罪原因の拡張をはかった、言いかえれば正当な労働運動を弾圧したんだという解釈が出てくるのです。犯罪の構成要件から考えても、それは出てくるんじゃありませんか。倉石さんどう考えます。
#109
○倉石国務大臣 具体的な問題につきましては、先ほども申しましたように、私どもといたしましてはただいま批評することを遠慮する方が適当だろうと思います。そこで今のこの法の目的でございますが、この点は私がしばしば申しておりますように、第一には公共の福祉、これが前提に立っていることは申すまでもないことでございますが、さらに私どもといたしましては、この法律の一番ねらっておるところは、国民大衆が電気が消されたり何かするということはないのだ、労働運動というものは正常に行われるものであるということを国民に安心づけるということも、この目的の大きな一つであります。
#110
○猪俣委員 私の承知しておるところによれば、本案は、電気の正常な供給を停止すれば直ちに違反が成立する、こういうふうに政府は考えておられるように思います。そこに、実際取り締る当局は、先ほど私が申しました滝川検事のように、現実の法律構成からいいますと、非常に困難な、あいまいな、つかみどころのない法律だという議論が出てくる。今あなたは公共の福祉が目的だと言われたが、しからば公共の福祉の認識は、犯意に欠くべからざることでなければならない。しかるに、それに対して明確じゃない。そこで、公共の福祉とは何ぞというけれども、政府の説明は、公共の福祉と公共の便宜というものを混同しているのではないかと思う。あなたはそれをどう理解されるか。公共の福祉と公共の便宜ということは違った観念です。本法で規定しておりますものは、公共の福祉です。しかるに、あなた方はそれを公共の便宜ということにすりかえておられると思う。その区別を、あなたは御存じだったら説明して下さい。あなた方が言っておるのは、公共の福祉ではない、公共の便宜ということです。なお、たとえて言うならば、小さい石炭山がある、そんなものは大したものじゃない、その石炭山にも、なおこの法律が適用されるはずなんだ。その小さい、わずかの出炭量しかない石炭山のストライキが、どれだけ公共の福祉と関係があるのですか。公共の福祉ということになるならば、千差万別の具体的事案を考えないと、公共の福祉は出てこない。これはおそろしく抽象的な規範です。公共の福祉というものは、むやみに使ってはいけない。公共の福祉ということを使って、どんどん国民を縛った十八世紀のヨーロッパだから、警察国家、福祉国家といわれた。福祉国家というから、社会保障制度の完備した国家かと思うと、そうではない、公共の福祉ということをあまり言って、どんどん国民を縛ったから、そこで福祉国家という名がついた。これは人民弾圧の国家です。どうも保守党の諸君は、公共の福祉ということを、憲法にある言葉を金科玉条としている。私はこれに対しては非常な意見がありますが、これは申し上げません。日本の憲法を静かに解読されるならば、公共の福祉というものは積極的要件になっておりません。これは日本の憲法ではごく消極的な問題なんです。基本的人権を尊重しなければならないという原則がある。ただ、公共の福祉に反しない限りという消極的なことをつけているだけで、公共の福祉に反するということであらゆる基本的人権を侵害していいということではないのです。これは憲法をよく静かに読んで下さればわかるのです。それはそれといたしまして、しからば公共の福祉をそれだけ唱えるならば、どの範囲までが公共の福祉であるか、これは実に抽象的な観念でありますから、具体的事案でなければわからないのです。今言ったように、ほんの小さい、まるで大した出炭量もないような鉱山、それに対するストでも、全部この法律が適用になる。そうすると、それは一体公共の福祉になるのですか。私ははなはだ疑問なんです。どういう範囲まで公共の福祉になるかという問題が起ってきます。いずれにしても、公共の福祉それ自体というものは非常に困難な問題でありますけれども、なお、それを行為者が認識しないでやった、みんなに迷惑をかけまいとして一生懸命にやったところが、犯罪になるということならば、この公共の福祉を守らんとする法の目的と違ったことではありませんか。矛盾していやしませんか。どう調和しますか。
#111
○倉石国務大臣 お説のように、公共の福祉ということについてはいろいろ御議論のあるところでありますが、私どもこれを常識的に考えまして、一部の方々の利益を伸張することによって、大ぜいの人々の迷惑になるようなことはなすべきではないと、こういう立場に立って、公共の福祉を申しておるわけでありますが、今例にございました小さな炭鉱のことでございますが、この炭鉱というのは、御承知のように、全部のストを禁止しているわけではありませんで、保安要員の引き揚げだけを制約しておるわけであります。そこで争議が起きました場合に、小さい山であっても、保安要員が引き揚げるということによって、溢水とかガス爆発というような悪結果をもし招来するようなことになりましたならば、話がまとまりまして、労働者が現場に復帰しようとしても、そのときにはその大事な山が滅失しておる、こういうようなことは、われわれとしては、労働運動のほんとうの目的に反する行為でございますから、そういうことはやってもらってはならない、こういうことで言っておるわけであります。
#112
○猪俣委員 あなたが公共の福祉と公共の便宜、そういうものの関連について御説明がないけれども、私も時間を急ぎますので、その程度にしておきます。
 ただ法律をやっておる者からしますと、容易ならぬ幾多の難問題を控えておりますので、私は、こういう法律は撤回されて、もっと実務家が安心できるような大きな正しい法律を作るというふうにした方がいいと思う。あなたも前にはそういうふうなお考えであったようであるが、大臣になられると考え方が変られるようであって、はなはだ遺憾です。私はこれで終ります。
#113
○高橋委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
  〔速記中止〕
#114
○高橋委員長 速記を始めて下さい。
#115
○滝井委員 今の猪俣委員のいわゆる公共の福祉と関連しての問題でございますが、これは井本さんにぜひ御答弁を願いたいのですが、あなたのいわゆる公共の福祉とこの二条の関係です、これがどうも明白でない。そこで、十六国会のときに、参議院において緑風会の梶原委員が、今猪俣委員が言われたと同じような具体的な問題について質問を展開しておる。そのときに政府は、たといそういう場合でも明らかに違反になります、なぜなら本法は行為の結果いかんを問うものではない、これらの行為はいけないというふうに、行為の方法を規制の対象としているからだと、こう答えた。いわゆる公共の福祉なんというのは問題にしてない、もう一切行為そのものが悪いからだめだと、こういうように二条を割り切って言っておる。さらに梶原さんは、たとえば小さな発電所で一分間の停電をやった、それが電圧がちょっと低くなった程度のもので、一般国民の日常生活に与えられた影響は少かった、そういう場合でもなおかつ公共の福祉に反するという理由で基本的人権を奪うほどの罰に値するのか、もしそうだとすれば、政府は公共の福祉を乱用するということにほかならないのかという質問に対して、政府はやはり同じ答弁を繰り返しておる。従って三年時日がたっております。これは政府はもう明確な答弁を一ぺん出しておるが、この通りの答弁で、三年経過した現在でもよろしいといわれるのか。それともこの答弁を公共の福祉との調和のためにある程度修正をせられるのか。これを一つ伺いたい。これは仮定の問題ではない、もうはっきりと答弁をしております。
#116
○井本政府委員 スト規制法第一条でこの目的をはっきりしておるのでありまして、先ほどの答弁は十分でございませんでしたが、二条の関係については公共の福祉を阻害するというようなことが範囲の内容に入っておるということを言うのは法律上どうかと思うのでありまして、結局さような電気の供給を阻害するということ自体が、公共の福祉に反するというように私は考えておるのでございます。従って大谷発電所の事件などは、第二審で無罪になっておりますけれども、私はこれは当然有罪であると法律的には考えるのであります。
#117
○滝井委員 そうすると二条の解釈はやはり参議院十六国会における答弁と同じように、それは公共の福祉なんというものとは関係なく、行為の結果いかんを問うものでなく、行為そのものが悪いのだから罰する、こう端的にずばりそのもので解釈していいのですか。
#118
○井本政府委員 私はそれが公共の福祉に反するというように考えております。
#119
○高橋委員長 松尾トシ子君。
#120
○松尾委員 時間もおそくなりましたし、なおまだ質問申し込みの方があるそうでありますから、ごく簡単にやりますけれども、質問の順序として少しぐらいは重複するところがあるかもしれません。
 まず第一に倉石労働大臣に御質問いたします。法律を作った場合に、それでだれが利益を得るのか損をするのかということが一番問題になると思うのです。これとかね合いながら、今度のこのスト規制法を存続することの真の目的はどこにあるのか。今までの質疑応答の中でだいぶ聞きましたけれども、かいつまんでわかりやすくもう一度お話を願いたいと思います。
#121
○倉石国務大臣 本法の立案の当時も今回も同じことを申し上げておるわけでありますが、争議行為の手段として著しく不当で妥当性を欠くと思われる今回ここに指定してありますような行為は、争議行為としてでもやってはならない、こういうことを言っておるわけであります。そのねらっておることは、つまり国民大衆の利益ということを一番念頭に置いておるのが本法の目的である、こういうわけであります。
#122
○松尾委員 争議行為の発生というものは、一方的に起るものではないと私は思っております。言いかえますと、本法がもし廃案になった場合に、あしたから労働者が一方的にスイッチを切ったり、あるいは炭鉱にストが起ったりすると思っていらっしゃるのかどうか。先ほどさような懸念があるからとおっしゃいましたけれども、そういうふうな理解をしていらっしゃるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
#123
○倉石国務大臣 しばしば申し上げておる通り、二つの従業員組合がございますが、電気関係は電労と電産に分れておりまして、非常に態度が違っておりますけれども、やはり御承知のように今内部でいろいろ自己の勢力拡大について活躍しておられるようでありまして、その方の労働事情が安定しておると認定するということは、今日ではできません。石炭鉱業の方では、すでに御承知のように炭労の大会においても、本法が存在するといなとにかかわらず、われわれは保安要員の引き揚げということはやるのだということを宣言しておいでになります。そういうような事情を考えてみますと、やはりこの前の事情とあまり変っておらない、こういう認定のもとに提案いたしておるわけであります。
#124
○松尾委員 一方的に争議が起るものではないというのはそうではなくして、労使両方の責任があってストライキが起るのじゃないか、こういうふうに解釈しているのです。従って電気だの炭鉱の労働者のストライキをこの法律によって規制すれば、他面、電力資本家とか炭鉱資本家の財産権、所有権あるいは経営権なども、同時に規制する必要が起る場合もあるのじゃないか、こう思います。言いかえますと、団体交渉が決裂した場合に、資本家側に対する法律的規制が必要じゃないかというように考えておるのです。
#125
○倉石国務大臣 私どもはもともと争議行為としてでも、今ここで指定しておりますような反社会的な行動はやってもらってはならないのだということで、その部分の手段を言っているのでありまして、争議行為というものは御承知のように電気関係も炭鉱関係もできるわけであります。従ってその争議行為自体を制約しようというのではないのであります。
#126
○松尾委員 結論としましては同じことになるのです。結局ストライキの起る原因はどこにあるかというと、経済問題だと思うのです。ところで石橋通産大臣が御出席ですから、この点についてちょっとお尋ねをいたします。
 ストライキの原因は、今申しましたように一方的なものではなく、その事業経営のいかんによって起ってくることが大多数の原因だと思うのです。それで今の電力あるいは炭鉱の経営現状というものをどういうふうに見ていらっしゃるか、石橋通産大臣に御説明を願いたい。
#127
○石橋国務大臣 さっきも申し上げましたように、電気及び石炭については政府も十分監督の目を光らしておりまして、できるだけ合理化をし、労働者との間の関係も円滑にいくようにというふうに指導をしておるつもりであります。
#128
○松尾委員 いわゆる電気、炭鉱が将来もうかるのじゃないかと私見ているのです。相当いい状況にあるのじゃないかというふうに見ているわけです。というのはなぜかというと、電力も炭鉱も巨大なる政府の援助を受けたり、低利資金を借りているはずです。それでその上に持ってきて、もうかるからこそその利益を国に還元しないで、特定の資本家関係者のみにいわゆる配当として相当の額やっているわけです。こういうこと自体が、何か国の援助とかあるいは低利資金を使っているということからしても、広い意味での公共の福祉に反するのではないかというふうな考えを私は持つわけです。これは言いたくないことですけれども、こうした資本家の生活態度というものが相当問題になっております。長者番付に上っているような金持が数百万円の競馬馬を買ったり、二号、三号をかかえていろいろ問題になって世間を騒がしておるところの実例は幾らもあるわけです。一方通産大臣は労働者、特に炭労の労働者の日常生活というものを知っていらっしゃるかどうか、こういう点も加えて通産大臣の御意見を伺いたい。
#129
○石橋国務大臣 私は電気会社や炭鉱がそんなにあくどいもうけをしておるように思っておりません。
#130
○松尾委員 先日あたりの発表によりますと相当黒字で、なかなか景気がいいように思われるわけです。しかし大臣がそういうふうにおっしゃるならそれは別といたしまして、次の質問に入る前に、皆さんがおっしゃいます憲法の二十八条と二十九条というものに触れてみたいと思います。二十八条では労働者のスト権を保障しているし、また二十九条では財産権を保障しております。けれどもこの財産権の保障というものは、公共の福祉に適合せる条件がちゃんとついている。先ほど労働大臣は、何かこれに同じような質問をした人があるけれども妙だなというふうにおっしゃいましたが、私の考えている点は、公共の福祉に関係ある事業にストライキが発生するような場合には、この経営権すなわち財産権を、スト規制法と同じように三カ年くらい規制をして、これを政府が監督をして処理をしていくのは、二十九条の公共の福祉に適合せる要件がちゃんとついているというところからすれば、反していないように考えるのですけれども、大きな公共の福祉を阻害するようなストライキが起らんとしているときには、ちょうどスト規制法で労働者を縛るように、資本家の財産権あるいは経営権を阻止して、政府がやるような暫定的措置をとることはできないでしょうか、こういう点を一つ……。
#131
○倉石国務大臣 私が先ほどお答え申し上げましたことは、国民に認められておる自由権の活動範囲というものも、やはり憲法十二条、十三条にいっております乱用してはならない、公共の福祉のためには国民の自由権というものも、やはり公共の福祉というものを念頭に置いて乱用してはならない、こういうふうにいっておるのであって、他の国民の権利と労働基本権というものもやはり同じように扱われておるのだ、こういうことを申し上げたわけであります。
#132
○松尾委員 労働大臣は労働のことばかりおっしゃいますけれど、この際一つ通産大臣に、経営者の方に法律的に規制する考えがあるのかどうか、全般的にという言葉をお使いになりましたけれど、どういうものがあるのか、ちょっとお示しを願いたい。
#133
○石橋国務大臣 御質問の意味が十分にのみ込めませんが、たとえばアメリカのごときは炭鉱等を国家が接収して、一時管理するということもやっております。場合によったら日本においてもそういうことが必要なことが起るかもしれません。けれども現在においてはまだそこまでいかぬでも、大体現在の法律によりまして、炭鉱あるいは電気等の経営者は規制していける、かように考えております。
#134
○松尾委員 時間がございませんけれど通産大臣に質問を続けますが、日本の労働者というものはその経済面において非常に弱いものであります。ですけれども、労働者はそのために、生存権を確立するために長年の間、戦前から血を流して、文字通り戦ってきたわけなんです。私は非常におこがましいことを申すようですけれど、明治憲法と現在の日本国憲法との基本的変革の一つは、やはり何といっても憲法の二十八条にあると思うのであります。戦前は御承知のように民法の双務契約において、労使の雇用が契約されていたばかりです。ところが一人の労働者と資本家が対等の立場で雇用契約を結んでも、資本家は二週間前にその契約破棄を通知すれば、いつでも首にすることができたわけです。すなわち二週間分の首切り代を一方的に押しつければ、いつでも解雇できたわけです。働く意思と能力を持っている者が失業をしいられたのであります。そしてそんなようなことは戦前は日常茶飯事に行われました。これに対して反発を加えるような労働者を弾圧する法律というものは、治安維持法その他数えることを知らないほど、山のごとくあったわけであります。今この規制法を見るときに、ほかの質問者がみな心配しておりますように、往年の時代に逆行する第一歩ではないかという点であります。公共の福祉という美名に隠れまして、この法律を恒久的なものにするという考えは、昔の専制政治の復活のように思われて、私たちには心配でたまらないわけです。こういう点を一つ、あるかないかということをぜひ石橋通産大臣に、経済的に非常に弱者である労働者の側に立って一つお示しを願いたい。
#135
○石橋国務大臣 私は今労働者があなたのおっしゃるような、昔のような弱者であると思っておりません。非常に強いのです。これはある意味において経営者よりもっと強い力を持っている。昔は御承知のように、日本ばかりじゃない、外国でも参政権もろくに持たぬというのが多かったが、だんだん政治的には勢力が伸びております。現にそれは国会においても社会党が大いなる優勢を占めているということもその一つの現われであります。これだけの力を持ちながらなお弱者々々というのは……。非常に強者になりつつあるのですから、強くなれば同時にそれに相応した責任も持っていただかなければならぬ。私はこのスト規制法なんというのは、さっきから言う通り好ましい法律と思いませんけれども、やはり責任の一端を示したものだろうと思います。
#136
○松尾委員 私の申しますのは、いわゆる力といっても経済的の力、経済的の面を申し上げていたわけなのでありまして、決して通産大臣も、その面では資本家と同じような生活をしておるなんていうことはお考えになっておらないと思います。日本は何といいましても欧米の経済に比べれば貧乏国ですから、これから企業を社会化していくという建前になっているきょう今日ですから、その面について通産大臣は一つ昔のようなことにならないようにお願いしたいと思います。
 最後に、これはまことに言いにくいことですけれど、この法案に関連いたしまして一、二点個人的の御意見を伺いたいと思います。先ほど猪俣さんがおっしゃいましたように、通産大臣は次期自民党の総裁の有力な候補者だと新聞は伝えております。私も実は通産におります関係から、石橋きんが一国の宰相の印緩を帯びることを願っているわけなんです。新聞の報道によりますと、各総裁候補者はそれぞれ有力なる後援者を持っておいでになるように承わっております。特に石橋さんは、石橋さんの推薦者の中で松永安左衛門さんが推進力の急先鋒であるというようにも伝えられているわけです。松永さんという人はだれも知るようにわが国の電力資本の総本山であります。このスト規制法と電気資本と石橋通産大臣との進退の間に何かの疑点があるとするならば、石橋さんのために私はまことに遺憾に思うわけです。この点について一つ明快な御所見をお伺いしたい。支持しているのですから……。
#137
○石橋国務大臣 どうも御質問がまことに困った御質問ですが……。しかし特に松永氏が私の何か後援者とか、なんとかということは、私は松永氏自身の心情は知りませんが、私は何も関係ございません。いわんや電気事業と私などとの間に何か特別の関係があるようなことは毛頭ございません。その点はもうそれこそ天地神明に誓って間違いありませんから、どうぞ御安心を願います。
#138
○松尾委員 そういたしますと、ときに新聞が何かでたらめに書いたように思われるのですけれども、その点はまずそのあたりにしておきまして、ただいまの通産大臣に対する質問と関連いたしまして労働大臣にちょっと御意見を伺いたいのです。あなたは聞くところによりますと、石橋さんを次期総裁に非常に強く推しておるということですが……。この法案の提出の経緯といい、委員会審議を省略して強行突破作戦を行おうなんというのは、何か人が見ますともののけにつかれたようにさえ思われるわけなんです。もし次期総裁争いに電力事業家を支持してこの法律の提出が行われたとするならば、倉石さん、数百万人の労働者は非常に浮ばれない結果になるわけです。どうかこういう点、業者とのいろいろの関係があったり、総裁問題とのからみ合せがあるといううわさがありますけれども、こういう点について一つあなたはここで明快な答弁を願いたいのであります。
#139
○倉石国務大臣 新聞によりますと、私どもの方の党には三人の総裁候補がございます。そのうちの一人であります岸幹事長は、この法律の通過については私とともに非常に一生懸命で協力をしていただくようなわけでありまして、このことは必要なことでありますから、協力をいたしておるわけでございます。一党の総裁として石橋さんが非常にりっぱな方であることは、私どももあなたとともに認めておるものであります。けれども私どもは、これは党内の問題でございますし、ことに閣僚でございますから、だれをどうするなんということを騒ぎ回ってはおりませんけれども、この法律を出しますのは、今もお話のございましたように、電力資本とか石炭鉱業の経営者とかいうことがわれわれの念頭にあるのでなくて、常にしばしば私が申し上げておりますように、この法律のねらいは――この争議行為は労働者と経営者である。しかし争議行為をやった結果、被害をこうむるのは大衆であります。そこで今の内閣としてはこの大衆の利益をまず念頭に置かなければならない、そういうことでございまして、経営者側がどういう考えであるとか、あるいは労働組合側の利益がどうであるということももちろん考慮しなければなりませんが、ねらっておるところは国民大衆の利益、こういうことでございます。
#140
○松尾委員 その他の質問は重複しそうですから、これで終ります。
#141
○高橋委員長 加藤清二君。
#142
○加藤(清)委員 私は時間の関係がございますので、要点をかいつまんでお尋ねしますから、そのおつもりでお答え願いたいと思います。
 まず第一番に、本法律を通そうとするところの目的でございます公共の福祉でございますが、これは先ほど来の質問によって完全に隠れみのであるということがはっきりしたわけでございます。この法律を通さんがために、あえて着ておるところの政府側の隠れみのである。ところで私は思うのでございますが、今日、電気事業やあるいは石炭事業において、果して公共の福祉をそこなうところの行為がありやなしや、こう尋ねられるならば、私は端的にあると答える。これはあるのでございます。しかしながら倉石さんの眼は別な方にばかり向けられておって、ほんとうにある方には向けられていないのでございます。そこで私はそっちの方へ方向を向けて見ますから、まずこの法律が行われておりました過去三年間におきまして、果して停電があったかなかったかをまずお尋ねいたします。
#143
○倉石国務大臣 地域的には小さなものはあったかもしれませんが、大体二十七年当時のような大きな停電ストはございませんでした。
#144
○加藤(清)委員 私は原因をお尋ねしておるのではなくして、停電があったかなかったかということをお尋ねしているのでございます。
#145
○岩武政府委員 お尋ねの点は、停電ストとおっしゃいませんので、広く停電があったかなかったかというお尋ねだと思います。その点は二十七年以来ときどきの電気の需給関係におきまして、あるいは地域的には供給力が足りませんで、一部地域の停電を行わざるを得なかったという事態があったかもしれませんが、一々記憶しておりません。
#146
○加藤(清)委員 そういう大事なことをおおってしまって、三年、四年昔の労働者の原因だけを探求しておるというところに、片手落ちということが生まれてくるわけです。過去三年間にいろいろな停電がいろいろな形において行われております。先ほど大臣は、病院の手術の場合の停電のことを言うておられましたが、今日でもなお工事停電と称しまして、当然のことながら送られなければならない工場、特に中小企業の工場に電気が送られないで行われる。この結果が中小企業の産業を――さなきだに苦しんでおる中小企業を一そう追い込んでおるという事実を私は知っておりますが、こういうデータが通産省にないというはずはないのです。
#147
○岩武政府委員 今工事停電のお話がございましたが、これは正確に申しますと、工事のために休日を振りかえて電気を送らないという事態でございます。御承知のように電気の最近の需用は非常にふえましたので、配電関係におきましても旧来の古い施設あるいは弱い施設を強化する必要がございますし、また電圧の逓昇をするためにいろいろな工事をやっております。そのためにやむを得ず一部地域におきまして工事のために電気の供給を停止する。しかしそれを無制限にやっては困りますので、供給規程で認められておりまする月二日の休電日というのを振りかえてやっておるわけでございます。その他停電はいろいろな事故なんかもございまして、たとえば変圧器が熱くなったとか、あるいは落雷があったというようなことで停電があったことは、これは御承知の通りでございます。ただこれらはいずれも天災地変、あるいは電気の供給関係上やむを得ない工事のためにやっておるのでございまして、そういうことでございますから、広くそういうデータを一々役所で持っておらぬとおしかりを受けましても、これは事態が違いますので、二十七年当時の大規模の停電はなかったと私は申し上げたのであります。
#148
○加藤(清)委員 私の質問しておりますのは、天災地変によるところのやむを得ざる原因ではなくて、人為的障害をお尋ねしておるのでございます。そこでたとえて申し上げますと、停電のおかげで、動労感謝の日がやがてもうあすに迫っておりますが、この日といえどもなお休みにならないところの多くの工場がございます。そういうところは停電になっておりながら、窓の外をごらん下さい。ネオンがちゃんと光っておる。停電はない。いずれが公共の福祉に益であり、いずれが害であるかは、あなたの方がよく御存じのはずなんです。公共の福祉、公共の福祉というならば、何がゆえにネオンの方へたくさん電気を送って、工場の方へ送らないのかと聞きたいのです。このネオンに送る電気がありながら、工場に電気が送られないという、この結果は一体だれが得するかといえば、なるほどネオンというのは、あの営業と電気会社の収益を増すということには大きな効果があるでしょう。しかしその電気が企業者の動かし方いかんによっては、なくてならないところの、輸出を迫られておるところの、船積みを迫られておるところの工場へ回されたならば、この方がもっと公共の福祉に益があると考えられるにもかかわらず、政府みずからがいずれに使ってもよろしいという、そういう措置をとったじゃないか。だからこういう結果が生じてきておる。
#149
○岩武政府委員 電気の御事情をあるいは十分御承知ないことかと思いますが……(加藤(清)委員「どっちが」と呼ぶ)御質問の方がそうかと思いますので、私失礼でございますが、申し上げますと、ネオン、ネオンとよく言われますが、これは実は御承知のようにああいう放電管でございますので、電気の消費量は非常に少いわけであります。私も着任以来非常に気になりますから、一体日本の全国のネオンは大体どれぐらいの電気を使っておるものか調べさしておりますが、非常に少いようでございます。それからまた、一方勤労感謝の日に働く工場があるというお話でありましたが、これは御承知のように、計画的にロードに合せまして配電いたしますために、いろいろ休電日の振りかえ等を行なっております。ことに十一月になりますと全体の供給力は減りますので、やむを得ずそういう措置をとっておることは御承知の通りであります。そこであるいは若干の工場等におきましてそういうふうに一日休日を差しかえて、ウィーク・デーに休んで休日に働くという事態があるかと存じております。これも何といいますか、全体の供給力と需用とを合せまして、できるだけならして供給しようということでございますので、その点は公共の福祉に反するとまでのおしかりは受けなくても済むのではないかと思っております。
#150
○加藤(清)委員 公共の福祉に関係がないとおっしゃるならば、フィリピンの賠償要求に大きなマイナスがあったと言うておきましょう。そこで、この問題についてずっと深く論議をいたしますと時間がかかりますから、これ以上追及はいたしませんが、要はこれは労働者がその原因でなくて、企業者みずからが原因を作っている、こういうことはだれしも認める明らかな事実でございます。
 次に石炭の鉱害をお尋ねいたしますが、本法律が施行されておりますその三年の間に、鉱害ということが起ったか起らないか、一体どの程度あったか。
#151
○小岩井政府委員 スト規制法が実施されましてから、特に争議中に大きい鉱害を起した事例はございません。
#152
○加藤(清)委員 私は大きいとか小さいとかいうことを尋ねているのではない、あなた方は逃げ口上をここで言えば事足れりとしているが、つい最近も穴埋めになった事実がある。幸い愛知県においてはこれが助かったからいいようなものの、九州においてはこの鉱害の陳情がわんさとこちらに来ている、これを野放しにされている。その原因は一体何かといえば、これは労働者のストではなくして、ちょうどここに規定されておるところの鉱肺または鉱害を生ずるその原因は、むちゃくちゃに掘ったからなのだ、掘らせる方が掘らしたからなのだ、そういう原因で鉱害がずいぶんたくさん起きている。それだから、その被害を受けた方々が、北九州の県知事までが陳情団に加わってやってきているというのが事実なのだ、それをあなたの方においてそういうことはございませんとおっしゃるならば、私が最初に言ったところの片一方のことは目をおおってしまって、労働者の作った原因にのみ眼を向けていらっしゃるということがずばりでは、ありませんか。
#153
○小岩井政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、争議行為中に鉱害を起した事例はございません、こう申し上げたのでございます。一般の鉱害につきましては、鉱業を営みます前には施業案というものを出してもらいまして、この施業案の中で鉱害の起ることを予防できるあらゆるファクターを考えまして、認可をいたしておるわけであります。施業案の認可後につきましては、鉱山保安法によりまして、あらゆる面について鉱害の起らないように、極力監督をいたしておる次第であります。
#154
○加藤(清)委員 あなたの御答弁にもかかわらず、なお鉱害は今日でも継続して起りつつあるわけでございます。やがてそのまた陳情団がやって参りましょう。そこでこの原因もやはり労働者のストにあらずして、別な原因である。その別な原因というのは、政府の施策かないしは経営者の経営の仕方が悪かったというところから発しておることは、これはもう明らかな事実なのです。かようにあげていきますと、労働者のストライキによるところの原因よりは、他の原因によって起るところの、いわゆる公共の福祉をそこなうということの方がはるかに多いようでございます。電気にたとえて申しましても、つい最近行われました佐久間ダムの完成、ここでは百余名の人命が犠牲にされている。ところが発表によると、これで一番少うございますということなんです。一番少くて、なお一つのダムを作るに当って百数十人のとうとい人命が犠牲にされている。結局これは建設計画の疎漏からくるところの殺人行為なんです。この方がはるかに大きい。殺人行為といえば、社会公共の福祉にもっと大きな影響を及ぼしているものは、警視庁の前のあれをごらんになると一番ようわかる。きょうの死亡は四人で、事故が三十六件、毎日のように出ておる。(「あれは自動車だよ」と呼ぶ者あり)それは自動車ですよ。自動車事故だが、社会公共に不安を与え、心配をさせているということは、労働者のこの二つのスト以外に、もっとほかに眼を転じて見れば幾らでもある。それに対しては野放しなんです。うそじゃない。あの警視庁の前の掲示を見てごらんなさい。毎日々々連続して行われておる。結局これもあなたの方の手が足りないという証拠なんです。片方にのみ目を向けて、片一方は全然野放し、こういう結果から生じてきていることだと思いますが、これについて通産大臣、一体あなたはどう考えておりますか。
#155
○石橋国務大臣 それは今事務当局から申しましたように、鉱害も原因はいろいろありましょう。日本の炭鉱全体がもう老朽になったとかなんとか、いろいろありましょうが、とにかく政府としてはさような鉱害をなからしめるように、全力を注いでいるつもりであります。それでもなおかつ現われてくる、こういうことであって、はなはだ遺憾に存じますが、しかしそれだから、電車の事故でもって死ぬ人間が相当ある、だから殺人、強盗を横行さしてもいいという理屈にもならないと思う。ですからこの炭鉱そのものの老朽その他の原因で鉱害の起ることは、これは極力防がなければならぬし、場合によったらその炭鉱そのものを閉鎖しなければならぬということも起ると思います。けれども、それだからストライキによって鉱害を起しても差しつかえない、こういう議論にはならないと私は思います。
#156
○加藤(清)委員 あなたの答弁は逃げ口上だ。まあそれはあとでやるとして、労働大臣に一つお尋ねしたいのですが、あなたは先ほども、あるかないかわからぬけれども、予定してこの法律を通しておきたいという御答弁が質問に対してあったわけですが、あるかないかわからぬようなそういう行為を目当てにして、今日法律を作るほど先見の明がありとするならば、私はここにあなたに聞きたいことが出てくる。それは、それ以上はっきりと目の前に現われてくるところの労働者の犠牲というものをどうなされようとしているか。すなわち生産性向上という言葉を金科玉条にして、次から次へとオートメーション化されようとしております。つい先日も北海道の砂川の火力発電所を調べてみますと、過去においては数百人も必要とした工員は、オートメーション化のおかげで七人半で済みます、こういう話なんです。このことはどこの火力発電所にも、どこの石炭山にも行われようとしていることでございますが、労働者の行為を憲法に違反してまでも規制をしようとなさるあなたは、労働者に当然振りかぶってくるところのこの犠牲をどうしようとしていらっしゃるのですか。
#157
○倉石国務大臣 生産性向上とオートメーションのお話がございましたが、この間私がジュネーヴに行きましたときに、イギリスの労働大臣の演説を聞きますと、彼は一生懸命でこのオートメーションと労働関係について論じておりましたが、イギリスの大きな労働組合であるTUCの大会の決定を見ますと、世界のどこかでオートメーション化が起きてきたときに、わが英国だけこれを取り入れないということではとうてい競争に立ち向うことはできない、われわれは前世紀の産業革命を人類の英知によって克服した、やはりここに第二次産業革命ともいうべきオートメーションについては、わが英国の労働組合はこれを克服するの努力をしなければならないという決定を発表いたしましたことは御承知の通りであります。私どももやはり国が経済上の国際競争をいたしていく場合においては、わが国だけの経済状況、関係だけを考えておったのでは競争できないことはよく御存じの通りであります。従ってオートメーションあるいは生産性向上による一時的雇用、失業の問題については、私どもも一番頭を悩ましているところでございます。従って私どもが申しております生産性向上運動には、やはり政府が一本筋を入れるべきだ、こういうことを言い出しておりますのも、つまり生産性向上運動というふうなものをただ今の民間だけに放置しておくのではなくて、計画的に政府が計画を立てるべきだ。同時に私どもの方では次の機会にはぜひ雇用安定基本法というようなものを提唱するつもりでございますけれども、わが国の経済政策の立案に当っては、やはり雇用安定という問題をまず経済政策とマッチして考えていかなければならない。石炭合理化法案についても、われわれが一番心配いたしましたところは、そこから出てくる失業の問題でありました。従ってこういうような問題についてこれから政府のとろうといたしておるのは、経済政策は常にその立案のときに雇用問題、失業問題とマッチして計画を立てる、こういうふうな方向で大きな筋を経済政策に入れていきたい、こういう考えでやっております。
#158
○加藤(清)委員 あなたの抽象論だけでは、当然必然的に起ってくると予想し得るオートメーション化から来るところの労働者の犠牲、これが具体的にどう救われるかということは理解できないのでございます。あなたにどうしても聞きたいのは、あるかないかわからぬ、起り得るか起らぬかわからぬ、そういうストライキをも規制するというならば、当然起ってくるというところのこの犠牲を具体的に救うの法律なり何なりをなぜあわせて提出されないのか。
#159
○倉石国務大臣 オートメーションの問題は明日の日程になることでございますから、今申し上げましたような明日の日程についての政府の抱負を私が申し上げたわけであります。これはあなたも大いに御協力願えることだと思います。
 そこで生産性向上によって当面出て参ります失業問題については、私どもは当面の対策として、来年の予算にもそれぞれそういう方向について検討いたしておるわけでありますが、直接本法に関係のあります問題について、あるかないかということについては、これは例はいけないかもしれませんけれども、わが国の刑法を見ますと、いろいろな懲罰規定がございます。やはりあれはだれも日本人はそんな人殺しをしたり何か犯罪を犯そうと思っていないのでありますけれども、そういう犯罪というものは人類社会にあり得る現象でありますから、そこで刑罰規定のいろいろなものができておるわけであります。私は先ほど来しばしば申し上げておりますように、本法で規定いたしておりますような行為は一日も早くなくなることを待望するのだ、しかしながら客観的情勢はこれを心配しなければならない状態にありますから、そこで今はやむを得ずこういう法律の延長を議定していただきたい、希望するところは早くこういうものがなくて済むようにしてもらいたい、こういうことであります。
#160
○加藤(清)委員 私が質問しておるのは、本法案を通そうとするところの意義でなくして、当然起りくるところの労働者の犠牲を救うような具体的方策が当然行われなければならないが、それが立法措置としてあるいは予算措置としてすでに行われているかどうか、あるいはどう行おうとしているか、こういうことが聞きたいのです。それをあす発表するとおっしゃいましたが、そうですか。それなら今ここで聞く必要はありません。
#161
○倉石国務大臣 私が申しました明日の日程ということは、将来のことでございますという意味でございます。そこで今お話のございましたような問題につきましては、来年度予算で私どもは来年度出てくるであろうと思われる失業者については、やはり本年度と同様にそれにマッチした予算要求を提出して、これを獲得することに努力をいたすつもりであります。
#162
○加藤(清)委員 明日の予定で逃げられちゃ困る。あなたはこの次に官房長官にはなられるかもしれぬけれども、労働大臣であるかどうかわからないわけなんで、命脈はもろ迫っておるわけです。(「余分だ」と呼ぶ者あり)余分じゃない、絶対必要なんだ。そんならここで聞きたい。それが言えないということになるとどうかといえば、片一方だけをいじめることはいじめるけれども、救う方の手は差し伸べてなかった、こういうことになる。
#163
○倉石国務大臣 その点は遺憾ながら私とあなたの見解が非常に違うのでありまして、私は、今オートメーションの話がございましたから、オートメーションは今日の日程ではなくて日本では明日の日程なんです、従ってその明日の日程についてはさっき申し上げましたような構想でやっていくつもりであります、こういうことです。
 もう一つ本法に関係のあることで、労働者をいじめるとおっしゃっておられますけれども、私どもはそんな考えは毛頭ないのです。たとえば今申し上げましたような生産性向上による利潤の分配は、これはやはり経営者と労働者だけで独占すべきものではなくして、国民大衆にはね返って、生産コストを引き下げることによって物価を低下せしめるというふうなこともあるのであります。あるいはまた雇用安定法にしても、これはもう一に日本の労働者のための考え方なんです。労働者の幸福を念願とすることが労働大臣の職責でございます。しかもこの法律できめてあるようなことを、かりに労働組合が、これを野放しにしてやったといたしましょう。スイッチ・オフしたりあるいは炭鉱を爆破したりするようなことになれば、この法律を阻止された社会党の皆さん方の方に国民の恨みは集中されるのですから、そういうことのない方がみんながいいじゃないか、こういうことなんです。
#164
○加藤(清)委員 あなたは言葉にきぬを着せて切り返したつもりかもしれぬが、何べん言い直してみたって私にわからないことは、それこそあるかないかわからぬものを当てに法律を作っておきながら、当然はっきりと犠牲が出ているということがわかっているものについての救いの手は伸べられていない、こういうことなんです。
 通産大臣にもこれは関係が非常に多いので承わりますが、本年度の予算ないしは本年度提出されようと予定している法律の中に、この問題から労働者を救うということは含まれておりますかおりませんか。
#165
○石橋国務大臣 俗にオートメーション化による労働者への影響というものについてのことはしておりません。しかしながらさっき労働大臣も言いましたように、全体の雇用関係、労働者の失業状態というものについてはむろん十分考慮しておるつもりであります。
#166
○加藤(清)委員 これはあすの問題だという労働大臣のお答えでございますが、私は今日の問題だと思っておる。そこでお尋ねしたいのは、この問題については何ら具体的措置がとられていない、あすの問題だからだ、こういうことなんです。そうするとあすの時期は一体いつごろでございますか。
#167
○石橋国務大臣 オートメーションは漸次これから進んで参るでしょう。それに伴って日本の生産がふえる、しかしながら同時に直接には雇用数が減るということはむろん予想しなければなりません。それに対してはこれはオートメーションだからどうというのじゃない、日本の全体の雇用量をどうしてふやすか、あるいは勤労階級の収入をどうして維持するか、これはある程度になったら、労働日数を減らすということもありましょうし、時間を減らすということもありましょうし、いろいろの所作があると思います。
#168
○加藤(清)委員 どんなに法律を作ってワクをかけられましょうとも、理由もないのに、労働者の方に何も悪い欠点もないのに首切りがきたとか、あるいは会社がもうかっているにもかかわらず賃金が下げられたということがあれば、当然のことながらストライキは起るんです。どんな犠牲を忍んででもストライキは起るだろと思う。従ってむしろ規制をしていくよりも労働者のストライキが起るところの原因を除去するという方向に向われた方が一そう適切ではないか。従って当然予見し得るこういう雇用の問題は、当然のことながらほんとうに労働者のためを思う内閣であれば、予算に組まれてしかるべきだと思うにもかかわらず、それがことしは組まれていない。あすの日程はいつからかと尋ねてみても、それは予定はわからないということであれば、これはないということにひとしい。研究はし、心は痛めているけれども具体的に伸ばす手はない、こういうことなんです。そこで、ここで押し問答をしても何んですから私はこれでやめまするが、正直言って私は大臣が次の首班指名を受けられることには心から賛意を表しております。(笑声)これはけっこうなことであると思う。それからまた過去の内閣は非常に年寄りが多くていけないんだ、ところがその中にただ一人年若い人が入っている、それが今の労働大臣だ。これは青年代議士のホープであった。しかも、ともすればタヌキだとかキツネの多い内閣の中の良心的存在だと私は心得えておった。だからそういう期待を裏切られたような気がしますが、かりに内閣がどう変りましょうとも、その内閣の寿命は私はこのスト規制法の寿命と反比例すると思う。このスト規制法の寿命が短くして終るような方途を講じられれば、あなたたちの内閣はずっと長引くだろうし、このスト規制法をどうしても通してこれを存続させなければならぬということになりますと、幾ら資本家の方方におぼしめしがよい内閣ができても、長続きしないと思う。それで苦言を呈しまするが、この際思い切って撤回なさった方がいいと思います。
#169
○高橋委員長 川上貫一君。
#170
○川上委員 時間が非常にありませんし、通産大臣はエチオピア皇帝の会に行かなければならぬ、与党の方々も早く済めばいいと思って、義理合いに努めておられて大へん気の毒だと思います。それで一つ質問をしてお答えを願いたいのですけれども、それでは時間をとりますので、便宜上私は聞きたいことを全部まとめて質問したいと思うのです。質問は四点ほどよりないのでありますけれども、あとで一つ一つの質問に対して別々に政府の方でお答えを願いたい。
 第一に質問したいことは、この法律は実はあってもなくてもよいんだ、労働者にはあっても不利益になりはせぬ、こういう御答弁がさきにもあったのであります。しかしこれは労働者が聞いたら一体どう考えるだろうか。これは労働者の権利を制限し、きつい言葉で言えば奪う法律です。その上に憲法に違反しておるという点が重要な問題じゃないかと思う。この点については政府の答弁が今までありましたようですが、非常に明確でないと思う。そこであらためて聞きたいのですが、憲法第二十八条には「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利はこれを保障する。」と規定されておるのであります。これは条件づきの権利ではない。憲法第二十九条には財産権に関する規定がありますが、これには「財産権は、これを侵してはならない。」と規定してあって、その次にしかしこの財産権の内容は公共の福祉に合致するように法律でこれを定めると明確に書いてある。ところが憲法二十八条の労働者の団結権、罷業権の問題には制限する条文がない。このことは労働者の団結権、団体行動の権利というものは無条件であって、第一義的な権利として保障してある証拠だと思う。ところがこれについて政府の方では、今までの答弁をずっと見ると、この法案は団結権そのものを制限するのじゃない、団体の活動、労働組合の活動の一部を制限するんだ、こう答弁になっておるのです。もしそういうことを認めるならば、それでよいのならば、今後政府が一方的にきめた抽象的な公共の福祉とかあるいは行政解釈とかいう口実で、労働者の団体行動の大部分を次から次へと制限しても差しつかえないことになる。これは切りがないんです。これでは憲法二十八条の保障というものは全く空文になってしまう。この一点から考えても、この法案は明らかに憲法違反の法案であると思うが、この点がどうもはっきりしない。そういう疑いがあるから、これはこの前の国会で時限法にもなっておるんです。ところがまた政府はこういうことを言うておる。憲法第十二条及び十三条にある公共の福祉が個人の自由権を制限し得るのだと、こう言うておる。しかし憲法第十二条、十三条はこれは一般規定であって、労働者の団結権のように特別の条文、すなわち憲法二十八条、こういう条文によって保障されておる権利を抽象的な公共の福祉云々で制限することはできない。これを制限するためには憲法の上に一定の条文がなければならぬ。よその憲法においてもそうなっておるんです。一定の条文がなくて憲法十二条を憲法二十八条に適用することは、明らかに憲法違反であると思う。この点について正確な答弁がない、応答を読んでみる……。これを一つ明らかに聞きたいのです。このことについての御答弁でふに落ちぬことがあれば、簡単にあとで質問さしてもらいたと思う。これが第一点です。
 第二点は、労働大臣は大阪の財界の懇談会で、生産性向上運動の指導その他すなわち生産性向上本部のその仕事、これに類するものを労働省で管轄したい、こういう談話をしておられる。これは新聞にも出ておる。生産性向上運動というのは生産を向上する運動であって、主として資本家の運動です。労働省本来の使命というものは、労働者の福祉、労働者の保護、労働者の保護立法の運用の監督、これが労働省の本来の使命でなければならぬ。ところが日本の経済上において、資本家がやっていこうとしておるところの生産性向上運動に労働省がまっ先に立ってタッチしなければならぬというこのことは、私は労働省の性格を変えようとしておるのだと思う。これはスト規制法に関係があると思う。つまり労働行政を今後資本家の生産向上の立場から実行していこう、生産性向上運動の線に沿うように労働規制をしていこう、こういう考え方が労働大臣の頭の中にあるのではないか。こういう考え方があるから、このスト規制法の根底にも労働者を日本の生産性向上運動並びに資本家の利益の方向へ規制していかなければならぬという観念があるから、無理無体なことまでやってこのスト規制法を通そうとしておる、こういう意図があるのである。そこで第二点の問題は、労働大臣は、生産性向上運動を労働省がタッチしていく、こういうことがよろしい、これについては経団連も賛成しておる。これはどういう考えであるのか。これを第二点に聞きたい。第三点は、労働大臣はかつて社会労働委員であった時分にこう言うておられる。このような恥ずべき法律は一日も早く廃止したい。すなわち労働大臣自身が悪法であることを認めておる。ところが今日労働大臣になると、直ちに豹変した。自分自身で認めた悪法を、委員会の審議もさせないで、国会の審議権を無視してまで、これを無理無理に押し通そうとする、こういうことをやった。一体これはどこから出たかというこの問題。何でこんなことになるのか。この理由は、端的に言えば、日ソの国交回復に無関係ではない、こうわれわれは思う。
 言うまでもないけれども、日ソの国交回復をどうしても早期にやらなければならぬように非常に要求した国民の力というものは、今後国際平和と民主主義、特に政府の対米一辺倒の政策を平和共存の政策へ切りかえろという猛烈な広範な運動が起ると思う。このくらいのことは政府は知っているだろう。これは困る。そこで、まずその先頭に立つであろうところの労働者階級の権利をもっともっと押えつけて、もっともっと奪い取っておかなくてはいかぬ、これが一つのこのスト規制法の根底にあって、こういうことをやる橋頭堡にまずスト規制法を通して、憲法に保障してあろうが何をしてあろうが、公共の福祉という名目ではどんなことでもやれるんだという前提を作ろうとしておる。これは明らかだと思う。現にそれだから時限法を延長するのだと言うけれども、単なる延長ではない。立法当時の説明と違う。公共の福祉の内容もまだほとんどきょうの委員会でも明らかにならぬし、実際には制限の内容をぐんぐんと拡張して、どんな形にもせよ、少くとも電源や保安に関係のある行動をしたら、一切がっさいスト規制法でひっかけていこう、こういう解釈を出しておる。これは本法の審議をした三年前の状態とは非常に解釈を拡張しておる。この法の拡大は、ちょうど日経連や商工会議所の要求と同じことなんです。これをやってござる。こういうことは割合はっきり言うておらぬけれども、事実やっておる。そこで私はここで聞いておきたい。もしそうではないんだということであるなら、ここで明確に、内容の拡張解釈はしたい、これを例にして他の産業に対する制限を拡大することはしないということを、言葉の上ではなく――言葉では何でも言えますから、委員会さえ言いのがれさえすればいいというので、何でも言えるから、そうではなくして、これを保証するための具体的な措置をとるかどうか。この具体的な措置がない限りは、委員会の答弁なんか当にならぬ。この具体的措置についてどういう考えがあるか。具体的措置は何もとらぬのか、これが質問の第三点。
 もう一つは、この法案は大資本家本位一点張りであって、公共の福祉ではなく、大資本家の利益だけに奉仕してはおらぬかという点である。そんなことはない、見解が違う、こうおっしゃるかもしれぬ。ところが事実はそうなっておるのじゃないかという点で聞きたい。御承知のように、独占資本は未曽有、空前の大もうけをしております、これを謳歌しております。これは鉱工業生産一つ見ましても、昭和九年から十一年度を一〇〇として、この九月には二二三となっておるということを資本家自身が発表しておる。これは世界最高の上昇率です。また大資本六百九十二社の本年九月の決算を見ると、その利益は千二百五十三億です。これも発表しておる。鉄鋼三社は前期より二八%の増利益、造船四社は四五%、重電機四社は四一%、人絹五社は三七%増、電力九社は八七%、百十八億円です。不況々々と言われておる石炭産業においても、大部分の会社は一割二分以上の増配をしておる。これが実情なんです。これは考えてみれば、一つには、戦後十一年にわたる政府の保護、てこ入れがものを言うておる。いま一つには、労働者に対する低賃金労働強化がものを言うておる。こういう状態であるから、労働階級は賃上げの要求をした。たとえば鉄鋼労働者は今秋の要求で二千五百円という控え目な賃金値上げを要求しておる。これに対して資本家はびた一文も出さぬ。いろいろやった結果、やっと七百円。全造船は千八百円要求して、たった九百円。こういう事実に対して政府は何の施策もしておらぬ。何かしましたか、何もしない。公務員に対する人事院勧告にも応じておらぬ。逆に賃金ストップを強行して、社会党その他がしきりに要求された補正予算すら出さない。その反面において、労働者の当然の権利を憲法を無視して踏みにじり、どこまでもこれを踏みにじるやり方、これはほんとうに政府がなすべきことを一つもせず、なすべからざることばかりやりおる証拠である。ここにこのスト規制法の問題がある。全労働者はもちろん、学者も反対しておるんです。新聞が反対しているんです、朝日新聞がトップを切って大反対しておる、地方自治体が反対の声明を出している、政府がやったことに対してこんなことがありましたか。地方自治体があかんと言っているんだ、北海道なんかはざらにやっている、こういうことは今まで例がない。こういうやり方でほんとうに国民の福祉が守れるかどうかという点について一体考えておられるのかどうか。これはだいぶん違うんじゃないか、そうしてあってもなくてもいいというような法律を無理押しに通すと言う。私は今まで国会にきてそう長い経験はないけれども、あってものうてもいいけれども、とにかくどうしても、委員会を省略してまで本会議で通すんだという答弁を聞いたのは初めてだ。どうしてもやらなきゃいかぬというて多数をたのんで無理押しに押したことはあるが、あってもなくてもいいものを、それをむちゃくちゃに通さなければならぬ、こんなのはないです。私はこれは間違いだと思う。私は思うのにほんとうに民族のいしずえは、政府はいろんなことをおっしゃいますけれども、ほんまの民族のいしずえは労働者階級と農民です。これの福祉が守れぬようなことじゃほんまに民族の基礎は立ちやしません。この労働者の権利を奪うことはするし、すべきことはしておらぬのです。日本の平和と独立を保障するものは、労働者階級の権利と生活を保障することこそが、ほんとうに政府が言うておるりっぱな日本を築く道であるということを政府は銘記しなきゃいけない、これを忘れる政府は国民の政府じゃない、私はこう思う。この点について労働大臣はどう考えておざるか。委員会だけ言いのがれすればいいというのではなく、心をむなしゅうしてほんとうのことを言うてみられたらいい。自分のかわいい子供や孫の顔を見るつもりで答弁願いたい。これだけです。
#171
○倉石国務大臣 私どもが自由民主党という党を作っておりまするし、そこで決定いたしておる政策というものは、私どもの政策こそ今あなたが申されました労働者、農民の一番利益になるものであるということを確信してやっているのであります。そういう点についてはあなたとは二本のレールであるいは一致しないかもしれませんが、第一のことについてお答えをいたします。あってもなくてもよいなどということは私は申しておりません。きょうは連合審査でございましてあなたは初めてお見えになったようでありますが、この法案が審議されている間じゅうあってもなくてもいい法律だなどということは一ぺんも言っているのではないのであります。そこで憲法二十八条のお話がありました。あなたのお立場から言えばあるいはあなたのような立論が出るかもしれませんけれども、私どもは憲法のきめておる団結権、団体交渉権を保障するということは、同時に同じ憲法は国民の平等権、自由権、財産権というものを保障しておるのでありまして、その二十八条の発動に基くところの労働基本権というものが行使されて、そして労働者の争議権がそのために無制限であってもいいということを憲法は予定しているのではないのであります。いかなる市民権といえども対等のものである、平等のものであるという見地に私どもは立っているのだ。この点においてあなたのおっしゃることとは全く考えが違うのでありまして、毛頭違憲であるなどとは思っておらないのであります。あなたもそうは思っておらないでおっしゃるだけでありましょうが、そういうふうに私どもは解釈しております。
 それから第二の点の生産性向上運動の御指摘がありましたが、大阪で私が生産性向上運動は労働省の所管に置くことがよいなどということは言っておらないのであります。政府が責任を負うてこの運動に筋を一本入れるべきである。それは私の構想ではまず通産省か経済企画庁がよかろう。最近日本に参っておりましたインドの生産性向上運動の方々のお話によれば、インドは所管省は労働省であると言っておりますが、そこで生産性向上運動の目的は一体どこにあるかということを申し上げましょう。
 私どもは生産性向上運動は、あなたはお気に召さないかもしれませんけれども、日本の大きな労働組合である全労会議は生産性向上あるところに初めて労働者の生活向上があるのだと申しております。私どもと同じ考えであります。そこで生産性向上というものが行われたる結果得たるものはどうするかといえば、第一に考えてもらいたいことは国民一般の利益になるようにしてもらいたい。それはよい品物を安く作るようにして、そして国民大衆にこの恩典を均霑するようにすると同時に、国際競争力を維持しなければならないのでありますから、そのために生産性向上運動の結果、コスト・ダウンができて国際競争力を増すということがこの運動のねらいであります。そこで政府が筋を一本入れるべきだ、現在行われているように民間団体にだけまかしておくということでは実際の効果は上らない。私は生産性向上運動の頭がございましたから、先般ヨーロッパに行きましたときも、諸国に回ってその状態を調べてみましたが、どこの国でもやっぱり私の言っているように政府が計画を立てているのです。そして民間における日本の生産性向上本部というようなものが、外郭団体として、そこの事務局長がやはり政府のプランニングの中に入って、実際の計画はそこで立てて、その実施面を外郭団体である生産性同上本部というものが担当いたしておる。従って日本では御承知のように七〇%以上を占める中小企業の生産性向上をやらなければ、どうしたって立ちおくれますからして、そういうことをやるためには、まず資金であるとか資材であるとかいうもののめんどうを見て上げなければならないから、従ってやはり政府が責任を持って計画すべきである。そして民間団体の参加したものにその向上運動をやってもらいたい。従って先ほど通産大臣もお話になりましたように、その結果得たる利益というものはあるいはコスト・ダウンになって消費者の利益にもなりましょうが、生産性向上をすることによって働いて下さる人々の時間の短縮ということもできるでありましょうし、上ってきた利潤によって労働者の福利増設ということもでき得るでありましょう。それを私どもはねらっているのであります。あなたのおっしゃるようにこれが資本家擁護の利益になるというようなことは勝手な独断でありまして、さようなことに私どもは賛成の意を表するわけにはいかないのであります。
 それから第三の点については、私が労働委員会において三年前にこの法律は恥ずべき法律であると申しました。今でもそう思っておりますが、なぜそうであるか、つまりあなたのお言葉を借りて言えば、悪法であるということを承知しているのだというお話でございましたが、恥ずべき法律というのは、こんなものがなくてもよき労働慣行があるならば、あえてこういうものを規定しなくても公益事業令もありますし、あるいは鉱山保安法というものもあるのでありますから、同時にまた日本の憲法は、さっき申しましたように何でも野放図にやってもいいという意味ではなくして、労働運動といえどもやはり憲法十二条、十三条に示すところの公共の福祉というものが優先するのだ。このことは川上さんも御承知のように、最高裁判所の判例を見ましても、これらのもろもろの基本的人権が労働者の争議権の無制限な行使の前にことごとく排除されることを認めておるものではなくて、後者が前者に絶対的に優位を有することを認めておるものではない、こういうことを言っております。私どもこれと同じ考えなのです。つまりこの法律の目ざすところは一般大衆の利益を阻害するようなことはしてもらってはならない、こういうことだけでありまして、あなたがストライキを抑圧するとか制限するとかいろいろおっしゃいますけれども、そんな意思はわれわれにはないのであります。
 それから、この法律は他産業に及ぼすつもりはないかということでございますが、その点についてはしばしば申し上げておりますように、現在他産業と申しますと、よく伝えられております、たとえば私鉄鉄道というようなことが頭の中におありかもしれませんが、そういうことは現在は考えておりません。
 それから大資本擁護であるということですが、これはもうあなたの独断でありまして、あなたがそういう見解を持たれることはいかんともいたし方ないのでありますけれども、先ほど電力会社の利潤率の上昇を御説明になりましたが、この法律を施行されて以来の傾向を見ましても、一般民間産業に比べて電気産業の労働者の賃金はずっと上回っていることはあなたも御存じの通りであります。私どもは根本的な立場から申しますと、繰り返して申すようでございますけれども、あなたの言われる大資本の擁護とか、そういうようなことは毛頭考えておりませんで、この法律の目ざすところは国民大衆の利益である、こういうことなんであります。
#172
○川上委員 一々聞いておる時間をとるので、やっぱりまとめて聞かなければならないと思うのだが、恥ずべき法律と言うたけれども悪法ではない――恥ずべき法律が善法という理屈はない。そういう論弁を弄しちゃいかぬと思うのです。恥ずべきような法律は悪法ですよ。世界に向って、国民に向って恥ずような法律が善法ですか。こういう言葉じりで妙なことを言うちゃいかぬと思うのです。あなたが今から三年前に恥ずべき法律と言うたのは、悪法という意味です。これは独断でも何でもない。国民に聞いてごらんなさい、恥ずべき法律というのは善法かどうか。全部わかるのです。
 それから生産性向上について勝手な独断だと言われましたが、これはあなた知ってそう言われるのか、政府当局としてそう言わなければならぬのかどうかはわからぬけれども、それは違いますよ。生産性向上運動をイギリスやその他のところへ持っていって、すぐ同じような形で考えるということは大間違いだ。第一に、生産性向上、オートメーションをやるためには膨大な資本が要るのですが、その資本蓄積が日本にありますか。今日問題になっておるのは海外における資本輸出でしょう。この金はありますか。だから大蔵大臣がアメリカに行っててこ入れをしてもらわなければ資本輸出はできない。外国ではもう数年前からオートメーションをやっております。しかも莫大な費用をかけておる。日本が今オートメーション化をやろうとすると、これだけの資本蓄積がないのです。そこでどういうことになっておるか。よそでやっておるオートメーション化はできないのです。日本のオートメーション化というのは特色がある。どういう特色があるか。ほんとうの意味で労働者の労働を軽減し、なおかつ完全雇用の道を立てながら生産を増大しようとする、このオートメーション化はできないのです。労働大臣は通産大臣じゃないから知らぬかもしらぬけれども、知らなければ聞いておいてもらいたい。日本のオートメーション化、生産性向上というのは、労働階級をオートメーション化する、これ以外には手がない。海外の貿易を目ざして、コスト安をして、ここがねらいなんです。このためにオートメーション化、こう言っておるのです。生産性向上運動と言うておるのです。ほんとうの生産性向上、オートメーション化はできないのです。しかしそれはしなければならぬという独占資本の至上命令に追い込まれておる。そこで、生産性向上というこの形で――事実できておる形をごらんなさい。労働組織、これのオートメーション化が行われておる。労働方法のオートメーション化ができおる。ここが問題なんです。こういう状態でありますから、一口にオートメーション化、それはよろしい、外国もやっておる、これは生産が上るのだ、みんながよくなるのだ、こういう条件は日本には今のところないにもかかわらず、オートメーション化をしなければならぬところに追い込まれてきておる。そういう自分に労働大臣が一番中心になって、生産性向上運動をてこ入れするというようなことを言い出しておることは――私の聞いたのは、労働省の線が、この問題についての考え方が、オートメーション化の線、生産性向上の線に沿うた労働行政を考えておるのであろうと言うておるのである。オートメーション、生産性向上という問題についてごまかしよるのか、ほんとうに知らないで安易なのか、そこは知りませんけれども、これはほんとうの専門家に聞いてごらんなさい。外国にできておるようなオートメーション化はできっこない。どこに資本蓄積があるのですか。膨大な利潤を上げたけれども、広範なオートメーション化をし、資本輸出をするだけの資本蓄積が日本にはない。この時分にやるのだから、その犠牲はことごとく労働階級の労働規制に入ってくるのです。首切り、労働強化、配置の転換、ここに必ず入ってくる。こういう点を勝手な独断だと言う。これを、政府がタッチし、労働省がこれを考え、労働大臣が一生懸命になるということは、資本家階級のこういう形の生産性向上の運動、これをつかまえて、繰り返して言うが、労働規制をその線に沿わせようとしているのであるから、これを私は質問したのである。独断でも何でもない。根拠がある。
 それから憲法論でありますが、憲法十二条は憲法二十八条を制限することはできぬという点について明確な答弁がない。これはできない。外国の事例を見てもわかる。外国の憲法には書いてあるではないか、ちゃんと。こうこうすることができると書いてある。日本の憲法には書いてない。それをあなたは解釈だけでやろうとしている。法的基礎がありますか。これを適用するという基礎がありますか。憲法の条文のどこにある。あれは第一義的な無制限な権利である。この権利は一般的規定である。十二条によって制限することはできない。これは違憲なんです。これを十分研究してござらぬと思う。そこだから裁判所がどう言ったとかなんとかいうところにしか持っていけない。法律的にこういう見解のもとにわれわれは憲法違反でないと確信している。よそで言うておったとか、これでは答弁にならぬと思う。政府としては答弁ができないのだということに落ちてしまうではないか。
 それから、あなたと私は考えが違うのだからというようなことをよく言われるが、これはいけない。考えの同じものだけおるなら国家は要らぬ。いろいろな考えのものが、国の中にはありましょう。いろいろな考えの政党政派があるだろうと思う。全部の政党が自民党と同じ考えになることはない。そういう自民党の中さえ考えが一致せぬのではないか、ごたごたしてしもうて。いろいろな考えがあるのを、あなたと私は考えが違うのだからというような答弁をすることは吉田流の答弁であるかもしれぬけれども、これは非常によろしくない。そうではなくて、考えが違うというのなら、こうこうこういうわけでここのところがこう違うと言わなければならぬ。頭から考えが違うというような答弁は、これは国会の政府の答弁としては今後やりなさらぬ方がよろしい。みっともない。
 その他あったと思うのですけれども……。
#173
○倉石国務大臣 時間がないようでございますから、第一の恥ずべき法律ということについては、先ほど来申し上げておりますように、こういう法律はなくても――労働組合というものが十分に成熟しておればこういう法律は必要ないのだ。しかるにもかかわらずああいう争議行為をおやりになるということは、しかも公益事業令であるとかあるいは鉱山保安法というようなものがあるにもかかわらず、あえてああいうような争議行為をおやりになると、やむを得ずこういう法律を作らなければない。まことに恥ずかしいことだ、こういう私の気持を言っていることであります。
 第二の生産性の問題でございますが、これはどうも私としては驚き入ったお話でございます。オートメーション・システムもやはり生産性向上運動の中に含まれてはおりましょう。しかし、生産性向上そのものがオートメーション・システムではないのであります。勘違いされては困る。つまり日本の今の産業で一番必要なのは、あれだけ立ちおくれているこの生産性向上をしなければならぬのは中小企業であります。従って私どもは、昭和三十一年度の予算編成のときにも、まず歩いてみると、全国の中小企業の工作機械なんというものは非常におくれておる。私ども代議士になります前にずっと十数年会社に生活をやって参りました。そういう体験から見まして、今日の日本の工作機械というものが一番ネックになっているのだ、これを国として大きな計画を立てて、そうしてこの機械を全部新しくやり直そうではないかというふうなことを考えましたが、予算の都合上通産大臣の御努力にもかかわらず、私どもの計画のようにはいきませんでしたが、ある程度金融措置などを講じてこの古くさいアウト・オブ・デートのこういう機械をだんだん交換していくことになりましたが、そういうことをするということがやはり生産性向上運動の一つであります。もう一つはお隣においでになる井堀さんなどは最近も外国を視察しておいでになってよくおわかりのことでありますが、それらの御報告を承わってもそうでありますが、ヒューマン・リレーションということが生産性向上運動の中で一番重点なんであります。この人間関係というものをどうするかということが、生産性向上の一番大きなねらいなんであります。従って労働省がこれに大きな関心を持つということは当然のことであります。私どもはそこでさっき申し上げましたように、国際競争力という立場から考えましてもぜひ生産性向上はやらなければならぬ、そこで今の経営側に対することは別といたしまして、私どもの関係のある労働関係については、まず福利の増進ということもしなければならないし、あるいはまた時間の短縮もその結果招来されてくるでありましょうし、どうしたって川上さんと私はその点においては御見解が違うかもしれないということを、冒頭において申したのはそういう意味で申したのであって、私どもとしては日本の産業を力強く復興することが行われて初めて労働階級の生活向上という結果を招来するのである、こういう立場でございますからして、どうしたって今の経済機構のもとにおいては生産性を向上するにあらざれば労働者の生活向上ということは不可能なことだ、こういうことを言っているのであります。しかもなおわれわれの所管といたしましては、生産性向上運動の最も重要なるキー・ポイントであるヒューマン・リレーションということに重点をおいて考えなくちゃならない、このことによって生産性向上というものが非常に上るのであります。そのことは諸外国の成績を見てもわかることでありますから、そういうことを私どもは今熱心に主張して、それにはまずもって政府が力を入れなくちゃいかぬ、それからまた一時的には失業の問題も出てくるでありましょう。そういうものもやはり政府がここに腰を入れて、暫定的に過渡的に出てくると思われるであろうところの失業者をどういうふうにしなければならないか、こういうこともわれわれに課せられたる義務でありますから、それはまず出てきてからではいかぬ、出る前に、さっき申しましたように、雇用安定基本法というようなものでまず計画的にそういう人間関係のことをきめていかなければならぬ、こういう意味であります。
 違憲の問題につきましては何べんお話を申し上げても、同じことを何べんかもう繰り返しているところでありますから、これはもう遠慮いたします。私どもは憲法十二条及び十三条にいう国民に対して与えられたる自由権も公共の福祉ということの前には優先しないのだ、この公共の福祉が優先されるのだ、こういう立場をとっておるわけです。
#174
○川上委員 もう一点だけ。ほかの問題はけっこうですが、生産性向上についてはちょっとお考えが違うのじゃないかと思うので、一口だけ申しておきたいと思います。しかし見解が違うのだということで済むかもわかりませんが、生産性向上運動の基礎はオートメーション化である。これをのけて生産性向上運動というものを精神運動にしたらだめです。そんなもんじゃない。世界の生産性向上の一番基礎となるものはこれは機械化である。合理化である。あなたは問うに落ちず語るに落ちている。そうではないんだ、労働規制である。だから見なさい。日本の生産性向上運動は労使協調じゃありませんか、これなんです。労使協調というものが、いかなる結果を来たすかということは、産業報国会が明らかに示しておる。第二に、生産性向上運動をどんどん進めていけば、労働者は利益を得るというが、そうじゃない。日本の特殊な条件のもとにおいては今言うておる生産性向上運動も、この形を進めるならば、このしわよせは全部労働階級にくるという必然的の客観的事実があるのじゃないかということを私は言うておるのであります。これを分析しなければいけない。生産性向上運動というものそれ自体が抽象的に悪いもんだとかいいもんだとか、そうじゃない。日本の特殊的なこの条件のもとにおいては、生産性向上運動は大きな資本蓄積がまだないのだから、広範なる機械化、合理化、オートメーション化はできない。しかし独占資本は生産性向上をやらなければならぬところに追い込まれておる。どうしてこいつを解決していくか。その時分に考えついたのが労使協調である。労働組織のオートメーション化なんだ。これがいわゆる生産性向上なんだ。この点は私は日本の経済にほんとうに理解のある人ならすぐわかると思う。大資本家はこれをよく知っているんだ、これがために今日生産性向上運動というものを強力に推し進めようとしておるのであります。またこれがためにこそ総評を初め、日本の労働者階級が生産性向上運動に猛烈な反対をしておるんだ、ここに問題がある。ここのところをほんとうにとらえて、労働省本来の使命に立ち返って、労働者の福祉と保護、労働立法の完全なる履行、これに献身することが労働大臣の仕事なんだ。ここのところをせずにおいて、生産性向上運動に頭を突っ込んだりして、労働省が生産性向上を現実的なこの線に沿うて、労働規制をやりこの線に沿うて労働法規を改悪しようとする意図があるんだ、労働省の性格を変えようとする考え方があるんだ。労働大臣はもう一ぺんほんとうに考えてみる必要があると思う。善良だからそう思うておらないのかもしれぬ。もし思うておらぬのだったら、よっぽどこれはおかしい。またこれを思うておりながら、いいかげんなことを言っているのだったらこれはさらに悪い。この点はここの委員会だけの質問応答の問題ではないと私は思う。将来の日本の産業、貿易、経済の再建、労働階級の福祉、この問題に重大な影響を来たしておる。今日労働者階級の話題に出るものは何か、全部生産性向上運動というこの問題なんだ。これほど労働階級の中では大問題になっておる。その理由は、生産性向上運動の進展は日本の条件のもとにおいては、労働者階級の犠牲と労働組織のオートメーション化としてくるのだというこの現実がある。これに対する考え方を、これを守る考え方をするならそれは労働大臣の仕事であると思う。そうじゃない。生産性向上運動に頭を突っ込んで、労使協調を大いに展開して、そうして労働行政をこの生産性向上運動の線にマッチさせようという形をとっておることは、これは非常に労働行政の上から、労働省本来の使命から逸脱しておる、こう考える。しかしこれは考え方が違うのだという答弁をされるに違いないから答弁は要りません。考えておかれる必要があると思う。私は委員会でただあげ足をとるために言うておるのではない。これを顧慮するから言うておるのです。おそらく今後において生産性向上運動については猛然たる労働者階級の反撃があるだろうと思うのです。なぜこうなるかということを労働大臣は考えておかれる必要があると思います。これで終ります。
#175
○高橋委員長 これにて散会いたします。
 なお本日の社会労働委員会は、休憩のまま散会することとし、次会は明後日午前十時より開会する旨、社会労働委員長より連絡がありましたからお知らせいたします。
   午後七時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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