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1956/11/17 第25回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第025回国会 本会議 第4号
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1956/11/17 第25回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第025回国会 本会議 第4号

#1
第025回国会 本会議 第4号
昭和三十一年十一月十七日(土曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和三十一年十一月十七日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説及び日本国とソヴィエト社
  会主義共和国連邦との共同宣言の批准につい
  て承認を求めるの件外三件の趣旨説明に対す
  る質疑
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説及び日本国とソヴィエト社会主
  義共和国連邦との共同宣言の批准について承
  認を求めるの件外三件の趣旨説明に対する質
  疑
   午後二時八分開議
#2
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説及び日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言の批准について承認を求めるの件外三件の趣旨説明に対する質疑
#3
○議長(益谷秀次君) これより国務大臣の演説及び日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言の批准について承認を求めるの件外三件の趣旨説明に対する質疑に入ります。須磨彌吉郎君。
  〔須磨彌吉郎君登壇〕
#4
○須磨彌吉郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、鳩山総理大臣並びに重光外務大臣の演説について、意見を付して、若干のお尋ねをいたしたいと思うものであります。
 まず、私は、質疑に入るに先だちまして、鳩山、重光及び河野の三大臣並びに松本全権等を初めとする日ソ交渉全権団が数次にわたる折衝を遂げられ、ここに、終戦後わが国にとりまして最も重要な懸案でありました交渉に結末をつけられたことに対し、敬意を表するものであります。特に、鳩山総理大臣におかれては、老驅をひっさげられ、親しくモスクワにおける困難な交渉に当られたその熱意と御心労に対しましては、国民とともに深く敬意と謝意とを表するものであります。(拍手)
 われわれの国をめぐりまする世界の情勢は実に目まぐるしい変化を続けて参りましたが、今やそれが重大な曲りかどに逢着しているとも申し得べき場合でございます。自然、わが国においても、広く東西に窓の開かれんとするこの際、この新しい形勢に対処すべき新出発を強く要請せられているときでございます。すなわち、私は、本日の質疑によりまして、この重大なる世界の転機に対処すべき政府の新たなる覚悟と抱負とをお尋ねする次第でございます。その間に処しまして、わが国が国際的地位を安定回上せしめるためには、まずもって、人口においても面積においても世界の半ばをも占める共産圏諸国との国交の正常化を実現することが必要であったのでありますから、今回の日ソ共同宣言の成立は、ソ連邦との戦争状態を終結し、わが国も、いよいよもって、これによりまして、国際関係の広い舞台に入る第一歩を築いたものといわなければなりません。
 第一に、以上の見地からいたしまして、私は日ソ共同宣言の包蔵する諸問題から質問を始めたいのであります。この点につきましては、いずれ特別委員会等におきまして、詳細なる御意見を承わりたいと思うのでございますから、ここにおきましては、きわめて概括的な、そして重要な点についてお尋ねをいたしたいのであります。
 それには、まず領土の問題でございます。およそ、領土は、いわば民族の霊感でありまして、夢寐の間にも忘れ得ない全国民関心の的でございます。しかるに、首相の御演説の中には、国後、択捉については一言も言及がなく、外相は、また、両島については、すでにソ連側としてはソ連領として確定的に編入をいたしておるのであるから、日本側に引き渡す意向はないものであると断じておられたのでございまするが、考えまするに、政府は、自由民主党の新党議にもありまする通り、歯舞、色丹の即時返還、国後、択捉の継続交渉を根幹といたしまする国民の輿望には、結局において残念ながら沿い得なかったわけでございます。なお重大な問題を将来に残しておるといわなければなりません。歯舞、色丹は平和条約の締結されました後に引き渡されることになっておりますが、これについては、平和条約は、一体いつごろ、いかなる方法をもって交渉せられ、従って、その引き渡しがどういう工合に実現されるかというめどが立っておられるのでございましょうか。しこうして、その他の諸島、すなわち国後、択捉につきましては、ソ連の権力下に置かれたまま両国間の戦争状態が終了するのでございまするから、国際法の通念から申しますると、これらの地域のソ連領有がこれによって確定されるものと解されるおそれがございまする一方、領土の問題については、あくまで、後日強く、しつこく返還され得るつながりが必要でありますから、この点に関しまする外務大臣の御見解をお伺いいたしたいのでございます。
 第二に、日ソ間の復交が両国親善の回復となるよう国民として望むものでありますが、これに対する大きな疑問があるのであります。それは、一九五〇年二月十四日、中ソ――中共とソビエトでございますが、中ソ友好同盟相互援助条約についてでございます。同条約の第一条及び第二条におきましては、ソ連はわが国を明らかに仮想敵国に取り扱っておる。ことに、伝えられるところによりますれば、このことに関連いたしまして、日本赤化の任務は特に中共にゆだねられているという秘密協定すら付随しているというのであります。われわれは、国交の回復はこれを認めますが、日本国内の共産化には断固反対するものであります。(拍手)もし日ソ間の国交を真に親善関係たらしめんとするならば、この友好同盟条約と称せられるものが廃棄せらるることが当然と思われますが、これにつきまして交渉中においてお触れになったことがございますか。御見解とともに、経過を総理大臣並びに外務大臣から承わりたいのでございます。(拍手)
 第三に、日ソ共同宣言の調印によりまして、わが国の善隣外交、平和主義外交の推進の方針につきましてはいささかの変化もあり得ません。いな、それどころか、共産圏との国交調整を契機といたしまして、いよいよもって自由民主主義国家群との協力関係をば国策の基調といたし、ことに国連への参加とも相待ちまして、いよいよわが国の平和外交が推進せらるるときが参ったのであります。ことに、私のここに特に強調いたしたいことは、従来、ややともせば、対米一辺倒外交などのそしりを見たのでございまするが、対ソ正常関係も樹立されましたる今日、天下晴れて対米外交の進展にも当るべきときが来たのだと思われるのでございます。しかも、たとえば、アメリカにおきましては、過般の選挙において再選されましたアイゼンハワー大統領は、必ずや、新しい決意をもって、アジアの諸国、ことに日本に対する政策を打ち出されるであろうことも予想されるのでございまするから、この際、対米関係はもちろん、自由民主国家群との協力関係の増進こそは依然わが国外交方針の根本であるということに徹底をいたして、さらに一歩を進めまして、アメリカなどと対等の立場において、相互理解の実をあげながら、親善協力の関係を一そう強化するの覚悟を新たに宣明せらるることが、この際実に必要であると思いまするが、この点に関しまする明瞭なる御指示を総理大臣並びに外務大臣から承わりたいのでございます。
 第四には、中共との関係についてでございます。日ソ共同宣言が成立いたしましたあとに来たるべきものは、わが国と中共との国交正常化もその一つであると考えられますが、わが国は、実は中華民国政府との間に平和条約を結んでおり、また、国際連合においても、その政府を中国の正統政府として認めているのであります。また、元来、蒋総統は、わが国に友好的に踏み切っている事実があるのでありまするから、これらの事実はまた尊重さるべきはもちろんでございます。従いまして、あるいは貿易の振興、また漁業の展開等につきまして、歩一歩建設的な、実際的な努力が積み上げられていきますることこそがむしろ自然でありまして、これがまた当分の間わが対中共政策の根本的政策でなければならぬと見られるのでございまするが、政府の所見がこの点についていかなることにきまっておりまするか、これを外務大臣から承わりたいのでございます。
 第五には、最も緊要なるべき日本と韓国との関係が何らの思わしい進展を示さないのは、国民のひとしく憂うるところでございます。われわれは、ソ連における抑留邦人の帰還につきましては、それこそ涙をしぼって、また領土問題等の未解決をも犠牲といたしまして、人道的見地から、その一日も早い実現を企図して参ったのでありますが、韓国に抑留されておるわが漁民の留守家族も、また、来る年も来る年も悲願を続けておるというこの事実は、これまた忘れてはなりません。先般、一時日韓交渉の再開が伝えられまして愁眉を開いておったのでございまするが、伝えられるところによれば、韓国政府におきましては、日ソ交渉の進展をもってわが国の対韓熱意の冷却であるかのごとく考えておる向きもあるやに伝えられまして、交渉再開の報はその後立ち消えとなっておりますが、政府は、人道的見地からも、まず釜山にありまする抑留漁民と大村に収容されておりまする韓国民との相互釈放ないしは帰国の問題をば一日も早く解決せられ、韓国の日ソ関係正常化に関する誤解をも一掃し、もって友好的な雰囲気を作って、日韓問題の全面的解決に資せられんことを切望するものでございまするが、この点につきまして外務大臣の所見を承わりたいのでございます。
 第六には、韓国問題にも関連いたしまして想起せられるのでありまするが、それは日本の治安の問題でございます。われわれは、日ソ共同宣言の実施によって直ちに日本が赤化するという危険が近づくなどとは、つゆさら思いません。最近の国際情勢は、あとにも述べます通り、きわめて重大でございまして、思想戦術の時代であります。私は、昨年十二月二日の第二十三回国会の本会議におきまして、この議場において質疑に当りましたときも、静かに祖国の現状を思いますとき、ことにその民心の帰趨を考えますとき、まことに憂慮にたえない点があります実情をるる述べまして、政府の深甚なる御注意を促した次第でございましたが、その後の情勢は何ら改善の見るべきものなく、ありていに申してみますならば、政府において空手傍観に徒過しておることを嘆ずるものでございます。従って、昨日の外相の演説中には、国家間の関係は利害関係によってきまり、また、思想的背景のいかんによってはこれを律することはできないというお言葉がございましたが、かくのごときは私は甘過ぎる見解ではなかろうかと思うのでございます。隣邦韓国から日本の赤化を叫ばれて気がつくのではございませんが、最近ますます盛んならんといたしまする世界的風潮の謀略宣伝に関連して、何とか実際的な、具体的な施策の講ぜらるべき必要については、ひとしくわれわれの唱道して参ったところでございます。日ソ国交の正常化、日ソ国交の永久ならんことを望めばこそ、この際、重ねて、政府に対しまして、思想並びに治安対策のすみやかに実行、具現されんことを強く要望するものでございまするが、この点に関しまして、総理大臣、牧野法務大臣並びに大麻国務大臣から、真剣な御所信を承わりたいのでございます。
 第七には、最近スエズ運河のエジプトによる国有化に関連する問題でございます。ナセル大統領の、七月二十六日にアレキサンドリアにおける第四回革命記念日の演説は、まさに、これは、人類解放運動の一環として今や民族主義が燃え上った一証左であることを意味するものでございまするのみならず、それなればこそ、その機運が、シリアでありますとか、ヨルダン等の国々にも、燎原の火のごとく波及しておるという事実を見るのでございます。しかるに、十月二十九日に至りまして、イスラエルがエジプトに侵入を開始したのでありますが、ほとんど同時に英仏の武力が発動して、ここに中近東の事態は危険な様相を呈するに至ったのでございます。すなわち、ここに問題となりますることは、英仏が、スエズ運河の通航が危険に瀕した場合には、エジプトに予告を与えまして、駐兵をまた開始をしてもよろしいという権利を留保したことは事実でございまするが、イスラエルによる侵略の場合はこれから除外されていたのでございます。従って、イスラエルのエジプト不法侵入と相前後して、英仏が武力に訴えて出動をいたしたというこの挙に出たことは、何と申しても平和の擾乱と申さなければならぬのでございます。いずれにするも、平和をただこれ念願いたしまするわが国といたしましては、英仏の軍事行動を深く遺憾とし、一日もすみやかなる平和状態の回復を提言したいのでございます。同時に、かかる中近東の紛糾に際しましては、日本が、アジアの一国、なかんずくバンドン会議の一員でもある立場にもありますが、翻って顧みまするに、日本は、アジアの一国でありまするとともに、また世界の一国としての責任を自覚して行動せなければなりません。すなわち、日本は、世界の大局から、正々堂々と、英仏でありましても、その非のなじるべきはなじり、エジプトに同情すべきものあらば、進んでその行動に出なければなりません。外相が申されました、大国には寛容、小国には謙譲というお言葉がございましたが、果して、わが日本は、大国か小国か、いずれの部類に属するかはわかりませんが、ただ、ここに申し上げ得ることは、わが国が守るべきことは、いずれの陣営でありましょうが、大小のいかんを問わず、武力行動によって自己の意思を貫かんとするものに対しましては、断固反対しなければならないと思うのであります。(拍手)静かに現下の情勢を見まするに、今次の中近東の事件に関し、アメリカは、良識ある態度をもって、終始国連により国際的に道理ある解決をはからんとするの態度は、まことに意を強うするものでありまして、日本は、かくのごとき場合においては、これと相はかり、人道的見地から真に世界のために清新なる平和提唱をなすことこそが、この際日本に課せられた大きな使命であると思うのであります。(拍手)約言しまするならば、武力の行使に対しては断固反対するということをば何らかの形をもって明確に天下に声明するの御意図はないか、首相並びに外相から、確固たるお考えを承わりたいのでございます。
 第八には、ソ連の衛星国に対する態度でございます。ハンガリー国民のような勇敢な民族が砲火のもとで自由と独立とをじゅうりんされていることを見ることは、まことに文明社会と称せられておりまする現代の悲劇でなければなりません。ソ連邦は、先に述べたスエズ運河の問題に関しましても、十一月五日、米、英、仏、イスラエルに文書を送りまして、米ソの両国が武力をもってこの紛争解決に当る提案を行い、また、英仏に対しては、特にソ連は強力なる武器をもって攻撃を受けることを覚悟しろなどと警告をいたし、真に平和を念願する者の心胆を寒からしめたのでございますが、ソ連のこの間の行動は、実のところ、不必要にアラブ民族を刺激し、これがまたソ連衛星国における情勢の悪化に火を注いだのみならず、まさに全世界をも震憾せしめた一大痛恨事といわなければなりません。(拍手)思うに、戦後十一年にして、中央ヨーロッパ、特にポーランド、ハンガリーにおきましても、ほうはいとしてびまんした一連の民族独立運動が国民の間から盛り上り、ハンガリーにおいては、これが強力な反ソ、反共の実力行動となって現われたのでございます。ことに、ソ連邦が、最近、機械化部隊二十数個師団、数千台という戦車を連ねて、ハンガリー民族運動の抑圧に拍車をかけておりますることは、今申した通り痛心事でございまするが、このソ連の行動が、みずからの唱道する平和五原則にも反し、いわば平和共存の原則をばみずから破っておるという事実は、これを私どもは認識しなければなりません。(拍手)その理由のいかんを問わず、強力なる兵力をもってハンガリー国内問題の干渉に乗り出しましたことは、まさに平和を危胎ならしむるところの行動にほかならないのでございます。(拍手)日ソ共同宣言中にも規定されておりまする国内事項に関する不干渉の約束についても、ハンガリーにおけるただいまの現状にも照らし合せまして、われわれは大きな関心を寄せなければなりません。特に、私は、過ぐる十三日、虎ノ門の共済会館において行われました、ハンガリー国民への敬意と激励のための国民大会に出席をいたしました。集まる日本の会衆は、一斉に、涙をしぼって、「祖国ポーランドを想う」とか、あるいは「祖国ハンガリーの悲しみ」などと題するところの亡命者たちの悲壮なる講演に耳を傾け、事実少からざる義捐金を出し合ったことを目撃いたしまして、まことに感慨の深いものがあったのでございますが、独立をあくまで追求いたしまするハンガリー国民に対して、日本政府としてもこの際何らか具体的なる方法をもって同情を表明することは、昨日の御演説の中にはお言葉はございましたが、具体的なる方法をもって同情を表明するの御意図はないのでありましょうか、総理大臣並びに外務大臣にお伺いをいたしたいのでございます。
 第九として、私は、ただいま述べました近東並びにソ連における緊迫せる状態が、一時権威を失墜したかに見えました国際連合が時宜に適した介入をいたしたことによりまして、その効を奏し、また奏せんとしつつあるの事実は、今や国連の権威がその真価を発揮し出したとも思われるのでございます。日本は、平和外交を推進するため、国連を尊重し、すべての国際紛争を国連のワク内において解決し、すでに日ソ共同宣言第三においてもこの原則を掲げておる次第でありますが、それにつけても、日本は一日もすみやかに国連に加入することこそが必要でございます。去る十四日開会されました今回の国際連合総会におきましては、すでに、十六日、昨日でございますが、ブラジル代表のシロ・デ・フレイタス・ヴァレという人から日本加盟の提案をなしたのでございまするが、このことにかんがみましても、国連への日本単独加盟はこの総会中にも達成し得る公算がおありでございましょうか。従来の交渉経過とあわせまして、政府の自信のほどをば重光外務大臣から承わりたいのでございます。
 第十に、世界の今述べました新情勢に対処するわが国の内外経済施策についてでございます。東欧並びに中東地方におきましては、だんだんと述べました通り、実に寒心にたえない新情勢が起り続けておるのでありますが、〈ンガリーにおけるソ連軍の無事の市民に対して無差別爆撃を加えつつあるということもあわせ、さらには、一八八八年以来長く東西両洋の交通路でありましたスエズ運河が来たるべき半年間ぐらいは閉鎖のやむなきに至ったということ、これを取り巻きまする地域、すなわちエジプトを中心とする中東一帯には、現に撃ち合いが起りつつあるのであります。敗戦以来十有一年、平和にのみ念願をささげて参りましたわれわれは、全くとほうにくれるという状態の変化であります。すなわち、この変転に対しまして、忌まわしい結果すら予想されないでもございません。ここにおいて、私は、日ソ共同宣言がモスクワにおいて調印されました十月十九日におきまして、偶然か、はたまた必然か、ポーランドにおいて反ソの機運が台頭いたした事実を指摘しなければなりません。そうして、ついにゴムルカの指導する政権の成立となったのみならず、これがハンガリー問題の因をもなしたということに思い至るならば、まことに私どもは早く国際情勢の変化を予想することの必要に思い至るのでございます。すなわち、かような国際的な変動は、もちろんこれは容易に予見しがたい場合もございましょうが、重光外務大臣は、昨年十二月二日の第二十三回国会の劈頭におきまして、こう申しておられます。まず、中近東においては、イギリス側は主としてバグダード会議において反共防衛態勢を固めんとしているのに対し、共産陣営は、エジプトなどのアラビア諸国に働きかけ、さらにアジア諸地域にもその手を伸ばさんとする形勢があり、ソ連例の積極政策はいたく自由民主陣営の神経を刺激しておるのである。今から申せば実に卓見を申しておったのでございますが、国際情勢は当時すでに再び緊張の度を増してきたことに触れておられたにもかかわりませず、七月二十六日のナセル大統領によるエジプトのスエズ運河接収宣言にちなんで、ソ連圏内にも重大な形勢が展開され得ることを、この調子ならば予見しておられたのではなかったでありましょうか。もし予見しておらなかったとするならば、まことに遺憾に存ずるものでございます。われわれ国民は、桑港平和条約によりまして国際社会に復帰し、有力なる自由民主国家としての覚悟を持って出発をいたし、自来われわれの踏み出す一歩一歩にはきわめて慎重を要すべきは言うまでもないことでありますから、このたびの国際情勢の変転に当っても、わが政府はいかにその帰趨の見通しをつけるかということこそが実に重大でございます。もう火がついておるのでございますが、ただ、これが大火であるか小さなぼやであるか、これを見きわめることこそは、このことこそは、特にわが国国内産業がいよいよその基礎をかたくし、国内経済、ひいては海外貿易も進展、発展の緒についたときでありますだけに、この際世界新情勢発展の見通しをつけられ、これによって将来に対しても種々画策するところがなければなりません。特に、わが国のアジア諸国に対する関係、さらにこれをこまかく申しまするならば、東南アジアの国々に対してとらるべき種々なる施策についても重要欠くべからざる関係を持つものでございますから、まず、私は、この点に関する政府の確固たるお見通しについて、換言をいたしまするならば、今後その推移により対処すべきわが国の経済貿易政策、たとえば海運、貿易、物価等に関する対策のあらましにつきましてでも、外務大臣、通産大臣並びに経済企画庁長官から御所見を承わりたいのでございます。
 私は、この質疑を終るに当りまして一言いたしたいことは、終戦当時からよく唱えられておりましたいわゆる全面講和の時代をも迎えたにひとしい時代となりまして、正々堂々と、晴れて国際場裏に乗り出す機会が到達したのでございます。時あたかも、わが国経済が内外において異常なる発展を遂げたことは、昨日の総理大臣のお話にもあったのでございます。ちょうど際会しつつある国際情勢の変化は、朝鮮動乱の場合のように、一時的好景気を迎え得べき好材料であるなどと、もし安易な楽観論をもって臨みますならば、それこそ、終戦以来せっかく初めて到来したわが国外交進展の好機をば失うものでなければなりません。他方、日ソ共同宣言に対する国民の正しい理解と覚悟とは、これまた同時にこの際最も必要なることでございますから、以上の十項目にわたる私の質疑に対し、国民に対して、重大なる世界情勢の曲りかど、新情勢の展開に対して、明快なる観念を与えられるという見地から、率直に関係各閣僚の御答弁を求めて終るものでございます。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
#5
○国務大臣(鳩山一郎君) 須磨君の御質問に対してお答えをいたします。
 第一に、日ソ共同宣言の包蔵する諸問題について、特に領土問題に関する交渉の経過をお聞きになりました。今般の交渉を通じまして、わが方は領土問題に対するその立場を一貫して主張して参りました。歯舞、色丹については、共同宣言において、平和条約の締結後現実の引き渡しを受ける旨確約してあります。その他の点につきましては、平和条約交渉に持ち越して処理を行うことになっております。国後、択捉については何事も話をしなかったように解していられるようでありますけれども、国後、択捉についても話し合いをいたしました。これが、平和条約締結のときに、やはりもちろん問題となるということは当然の事柄であります。
 アメリカを筆頭とする自由主義諸国家群との協力関係の増進を提唱すべきであると思うが、所見いかん、という御質問でございます。わが国が、自由主義陣営の一員として、自由民主主義諸国との協力関係を国策の基調として、その上に平和外交を推進していくということは、もとより不変の立場であります。日ソ交渉の再開によりまして、このことはいささかも変るものではありません。
 それから、須磨君は、中共との関係、韓国との関係について御演説がありましたが、これは外務大臣よりというお話でありましたから、私は遠慮いたします。
 日本国内の思想対策並びに治安対策についてのお話、これについてお答えをいたします。日ソ国交が回復したからといって、直ちに現在の国際情勢に急激な変化があるとは考えられませんが、国際共産主義からする宣伝、諜報、謀略等の諸活動が活発になることは、一応予想され得るところでありまするので、政府は、治安諸機関の内容の充実をはかりますとともに、関係機関の密接なる連絡のもとに、これら諜報、謀略等の諸活動の実態を究明いたしまして、国民に対しその何たるかを明らかにする等の啓発宣伝活動に意を用いるつもりでございます。
 日本の国連参加は今回の国連総会中にも達成される見込みはないかとの御質問でありました。これは今次国連総会の会期中には実現を見るものとわれわれは考えております。
 スエズ運河の問題に関連しまして、力の政策に反対すべくこれを提唱したらどうかというような所見がありました。わが国は、広く世界の平和を念願するものでありまして、今回その地域内に武力紛争の惹起したことに対しては、深くこれを遺憾とするものであります。さきの政府声明においても明らかにした通り、わが国は、この紛争が、国連の手によって、かつ国連憲章の精神に従って、平和的に解決せられることを、衷心よりこいねがうものでございます。
 ハンガリーのことについての御質問がございました。わが国はハンガリー国民に深甚なる同情の意を表する次第でありまして、自由と独立を渇望するハンガリー国民の声が十分聴従されまして、国際連合決議の趣旨により事態の収拾ができるよう希望している次第でございます。
 以上をもって私の答弁を終ります。(拍手)
  〔国務大臣重光葵君登壇〕
#6
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。
 最後の御質問から順次にお答えをいたします。国際情勢の見通しを十分にしなければならない。全く私もそう考えて努力をいたしておるのでございます。国際情勢の見通しは非常に困難でございまして、まず、小さな具体的の問題はなかなか予見することが困難でありますけれども、大体の大勢に当っては、これをよく把握しなければならぬと思います。昨今非常に緊張の度が増してきたのでありまして、しかし、それにもかかわらず、各国とも平和確保のために全力を注いでおるわけでございますから、これもあまりに悲観することも当らぬと思います。しかし、それがためには、これに対する対策としては、貿易関係その他十分に計画をして、そして、それに沿うように遺憾なきを期さなければならぬということは、申すまでもないことと存じます。
 さて、その次に、国際連合加盟の問題につきましては、今総理大臣の言われた通りに、日本としては必ず近き将来においてできることと考えております。それに向って十分の準備をいたしておる次第でございます。
 ソ連の衛星国に対する態度、ハンガリー国民に対する態度、これも総理大臣の御答弁の通りでございます。昨日も、私は、外交演説において、ソ連の態度に対してハンガリー国民に同情を表しておる次第でございます。
 それから、スエズ運河会社の国有の問題についてお話もございました。これについては、昨日詳しくその経過をお話して、国際連合を通じて平和的の解決をするように、あらゆる努力をいたしておるということを申し上げておきました。
 さらに、その次に、昨日、日ソ交渉の結果、思想的の背景で国家間を律するということは、もうそういう時期ではないというふうなことを言っておるのは、一体甘過ぎはしないかというお話でございます。私は、述べられました思想戦に対処することは、十分にこれはやらなければならぬと思います。しかし、私が申したことは、その思想戦の問題と国際間の国交を回復する問題というのは別個に考えなければなるまい、こういうことを申し上げたのでございます。将来の思想策動等に至っては十分の準備がなければならぬと考えております。
 日韓問題につきましては、今日まで終局的な解決ができていないことを非常に遺憾に存じます。これはたびたび申し上げて、すみやかに解決しなければならぬという考えのもとに進めておるのでございます。非常に努力はいたしておりますが、今日直ちに解決するということを申し上げる段階にまでまだ至ってはおりません。しかし、決してこれが逆転をいたしておるわけではございません。なお、日本漁夫の釈放のことをまずやるべきであるという御意見につきましては、その通りに考えて、今進めておる次第でございます。一日もすみやかにこれが解決を見るようにいたしたい、こう考えております。
 中共との関係につきまして、これまたお話しの通りに、政治問題はしばらく別として、貿易等、でき得ることから、国際関係において支障のないことから、建設的に日本民族と中国民族との間の関係を改善していったらよかろう、こういうお話は、私どもは非常に建設的なお話でありますので、さように方策を進めていこうと考えております。
 それから、対米一辺倒ということは考えておりません。すべて日本自身の見地から進んで国策をきめたいと考えております。しかしながら、米国その他、民主自由諸国との関係を一そう注意して努力をしなければならぬ、こういうことについては、少しも異存はございません。その通りに進めていきたいと考えております。
 中ソの関係については、中ソ同盟関係があるではないか、こういうお話でございました。これは今総理大臣も言われた通りであります。中ソ……(「簡単々々」と呼ぶ者あり)この問題は、すべて交渉の初めにおいて、かような問題については互いに現状を維持して交渉を進めようということでいっておるのでございます。
 領土問題については、私から繰り返して申し述べません。
 さらに、最初に、劈頭に言われた、国際関係の変動について十分に政府は具体的の見通しを持って進めるべきであるというお話については、私は最初に申した通りに考えております。
 以上をもって終ります。(拍手)
  〔国務大臣牧野良三君登壇〕
#7
○国務大臣(牧野良三君) お答えを申し上げます。
 治安の問題に関しましては、御説の通り、十分注意を払い、遺憾なきを期しております。今後必ず御期待に沿うことを期します。
  〔国務大臣大麻唯男君登壇〕
#8
○国務大臣(大麻唯男君) お答えを申し上げます。須磨君の国内治安に関する御質問に対しましては、鳩山総理からお答えになった通りで、もう十分であると思いますけれども、せっかくの御指名でありまするから、一言申し添えておきます。
 国交の正常化の問題と国内の治安維持の問題とは、おのずから全く別個の問題でございます。国交調整はまことにけっこうなことでございまするが、いやしくも国の治安に重要な影響を与えるような部分に関しましては、各関係官庁と十分緊密な連絡をとりまして、十分に警戒を厳重にし、不法事犯の取締りについて万遺憾なきを期しておる次第でございます。どうぞ御了承願います。
  〔国務大臣石橋湛山君登壇〕
#9
○国務大臣(石橋湛山君) 簡単にお答えいたします。
 中近東の最近の情勢から日本の経済に関係いたします主なる問題は、スエズ運河の通行が阻止されておるということだと思います。これは、今後あの方面の政治情勢が非常に悪化して、どこまでいくかわからぬということなら、これは別問題でありますが、ただ、いまのわれわれの観測では、幸いに政治情勢も漸次鎮定して参るものと思います。もし、そうといたしますれば、主としてスエズ運河内に今沈没しておりますところのいろいろな障害物のサルベージの問題であります。これは、サルベージのやり方によって、ごくよい技術を使えば三カ月くらい、場合によったら六カ月――三カ月ないし六カ月くらいは通行が困難のようであります。しかし、もし三カ月なり六カ月程度通行ができないということなら、日本の経済に対する影響は大したことはないと思います。輸入品については大したことはありません。ただ、運賃が、欧州の方の関係から、タンカーその他の運賃が上るという影響が主なるものだと思います。石油のごときも、欧州の方面には運河の通行がむずかしい、あるいはパイプ・ラインが破壊されたというようなことで、非常に石油の入手に困難を来たしております。日本に対しては、実際の石油の輸入にはさしたる支障はありません。ただ、問題は運賃だけであります。運賃については、できるだけ――現に、石油については、来年の六月くらいまでの分のタンカーの大体九割方は手当を済ませております。鉄についても同様であります。だから、ある程度の影響はありましょうけれども、そう心配するほどの影響はないと思います。また、お話の中に指摘されました、つまり、向うの戦争による物資の需要によって朝鮮事変のときのようなことはないか。これは、今幸いにして、日本の経済界にはだれもそういうことを考えている者はないようであります。多少東南アジアなどに対する輸出がふえる傾向がある。たとえば、セメントというようなものがだいぶ引き合いが出て参りましたが、しかし、これもそう大きな影響はない、かように考えております。大体注意をいたしておりますから、比較的なだらかにいけるつもりでおります。(拍手)
  〔国務大臣高碕達之助君登壇〕
#10
○国務大臣(高碕達之助君) スエズ運河の情勢の変化による世界の経済の動向、また、それに対する日本の動向につきまして、政府の所信を簡単に申し上げます。
 大体は、ただいま通産大臣のお答えいたしました通りでありますが、昨年度スエズを通過いたしました船は一億五千四百万トンございます。これが、現在スエズがとまりますことによって喜望峰を回るために、ロンドンーペルシャ間は、大体スエズ運河を通りますときには六千マイルでありますが、喜望峰を回ることによって一万一千マイルになりますから、約倍になります。従いまして、この輸送力が半減する、その結果運賃が高騰する、運賃が高騰した結果、一番困るのは西欧諸国でありまして、イギリス初め西欧諸国は相当物価が高騰するだろうと思います。もちろん、わが国もこれの影響を受けますが、その影響は比較的少いのであります。しからば、現在のアジアにおける西欧諸国の輸出は、昨年は約二十一億ドルあるのでありまして、日本はそれに対して七億ドルの輸出をしておったのであります。この西欧諸国の二十一億ドルはある程度減退するだろう、これに対しまして、日本は幾らか食い込んでいける、こう思うのでありますが、それにつけましても、アジア諸国に対する日本の態度、これが、賠償問題等も早く解決して、よく親善関係を結び、そうしてここに経済外交を推進すれば、来年度の貿易は幾らかよくなるだろうという感じでございます。
 以上をもちましてお答えといたします。(拍手)
#11
○議長(益谷秀次君) 水谷長三郎君。
  〔水谷長三郎君登壇〕
#12
○水谷長三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、鳩山総理その他の閣僚の所信を問わんとするものであります。なかんずく、鳩山総理の御答弁は、おそらくこの臨時国会が最後になるでありましょう。議会政治家の有終の美を飾る上からも、誠意ある御答弁をお願いする次第であります。(拍手)
 まず、質問の第一点は、臨時国会の遅延についてでございます。わが社会党は、第二十四国会終了後、憲法第五十三条の規定に基きまして、日ソ交渉の中間報告、参議院選挙後の参議院の構成、北海道の冷害、九州の水害等に対する補正予算の編成等、再三再四にわたりまして臨時国会の開催を要求してきたのでありますが、政府は、てんやわんやの党、閣内事情のために、野党社会党の声を無視いたしまして、今日まで臨時国会の開催をおくらせ、四カ月間にわたりましてこれを放置してきたのであります。これ憲法を無視するの暴挙といわなくてはなりません。(拍手)特に残念なことは、鳩山総理の訪ソに当りまして、われわれは、臨時国会を開催し、全国民の要望を鳩山総理以下の全権にお伝えし、大いに激励して、老総理の日ソ交渉への門出を祝さんとしたのでありますが、それが果せず、のがれるようにモスクワに行かれたことは、まことに残念しごくでございます。臨時国会の開催を今日まで遅延させたのはどういう理由であるか、鳩山総理の、率直なる、責任ある御答弁をわずらわしたいと思う次第でございます。(拍手)
 質問の第二点は日ソ交渉についてでございますが、この問題は先の質問者の須磨君と若干重複するところもありましょうけれども、しかし、須磨君に対する総理並びに外相の答弁はきわめて不満足でございますがゆえに、私の質問に対しましては、須磨君の質問に対するお答えよりも、もっと誠意ある御答弁を願いたいと思う次第でございます。
 鳩山総理は、昨日の本会議における政局に関する所信の表明の冒頭におきまして、このたびのモスクワ交渉がいかにも成功であり、最大公約を果したものであることを力説されたのでございますが、果して今回の日ソ交渉は成功であったでありましょうか、よく考えてみたいと思う次第でございます。鳩山内閣成立後、最初に打ち出された公約は、言われる通り、日ソ国交回復でございました。鳩山内閣は、その第一段階といたしまして、昨年六月から本年三月中旬まで、ロンドンにおきまして松本・マリク会談を行なったのであります。この会談の結論は、南樺太、千島、国後、択捉はソ連領である、歯舞・色丹は条件付で日本に譲る、日ソの国境線は根室、野付海峡を結ぶ線であるということでございまして、日本が領土問題を譲らない限り、交渉が成立せないということであったのでございます。さらに、本年七月の重光・シェピーロア会談の結果は、歯舞、色丹を日本の領土とし、他の領土はソ連への帰属を認めることという平和条約方式であったことは言うまでもございません。日ソ交渉慎重派の重光さんがモスクワに着くやいなや、早期妥結派に豹変されたということは、ソ連が領土について一歩も譲る気配がないことを示しておるのでございます。
 さて、このたびの日ソ共同宣言その他は、これら二つの交渉よりも日本の立場がどれだけ有利になっているかを真剣に考えてみなければならないのであります。このたびの日ソ共同宣言は、言葉の言い回しこそ異なれ、ロンドン交渉の結論を一歩も出ず、ある意味では重光・シェピーロフ会談の結論よりも一歩後退しているといわなければなりません。この結果を成功と誇称する鳩山総理の心境は一体いかなるところにあるのでございましょうか。
 このたびの日ソ共同宣言の第一の疑点は、言うまでもなく、領土の問題でございます。歯舞、色丹の領土は、平和条約の締結と同時に返ってくることは明らかでございますが、共同宣言の中には平和条約の継続審議はうたわれておりますが、領土についての継続審議には一言も触れておらないのでございます。全権の一人河野農相は、本年五月九日、ブルガーニン・ソ連首相と会見し、サケ、マスの暫定取りきめの発効と引きかえに、国交回復の交渉を七月末までに再開すると約束したのでございますが、このとき領土に関して何らかの密約がかわされていたのではないかとうわさされているのであります。さらに、今回のモスクワ交渉におきましても、鳩山・ブルガーニン往復書簡や、松本・フェデレンコ往復書簡におきまして、領土全体について継続審議ということで交渉を始めておきながら、鳩山へ河野両全権が、国内に対する手前をつくろうために、特に歯舞、色丹の早期返還の格好を作ろうといたしました結果、かえって国後、択捉については永久に棚上げを暗黙に認めることになったのではないかという疑いがございます。かりに、そのような密約がないといたしましても、結果から見て、歯舞、色丹の返還を実現しようとすれば、やはり国後、択捉などのソ連への帰属を認めなければならないこととなるのではないでしょうか。総理の所見いかん。ついでに、河野農林大臣の所見もいかん。
 第二の疑点は、日ソ共同宣言に盛られておる五つの条件、すなわち、戦争状態の終結、抑留者の帰還、大使の交換、漁業条約の発効、国連加盟の問題であります。まず国連加盟の問題でございますが、ソ連側は単独かつ無条件に日本の国連加盟を支持したのでありましょうか、この点をはっきりとさしていただきたいと思うのでございます。ソ連が、外蒙古との抱き合せや、中共の国連代表権の問題などとからみ合せました場合、他の常任理事国が拒否権を発動したといたしましても、ソ連は責任を免れるというような不幸な事態が起らないとは、少くともこの共同宣言の表現からは保証ができないと思われるが、いかがでございましょうか。また、日本の国連加盟がいつ実現する可能性があるかということは、さきに、総理大臣は、須磨君の御質問に対しまして、きわめて楽観的なお答えをされたのでございますが、ソ連のわが国国連加盟が単独かつ無条件ということがはっきりされておらない限りは、野放しの楽観は禁物であろうと思うが、総理並びに外務大臣の御意見はいかがでございましょうか。(拍手)また、鳩山総理は、抑留者に冬を越させたくないと言っているのでございますが、今日もはや、冬はわれわれの背後に迫っておるのでございます。果していつ抑留者が帰還するのであるか、首相の所見をはっきりと伺いたいと思う次第でございます。
 第三の疑点は、日ソ暫定協定後の内外政策の反動化の危惧でございます。この点は、須磨君の御質問と全く正反対の立場にわれわれは立たざるを得ないのでございます。暫定協定が、巷間アデナウアー方式と唱えられておりますが、その西独におきましては、暫定的な国交回復後におきまして、友好善隣関係は樹立されないばかりでなく、共産党の非合法化の判決が下されるなどの事態が起っておるようでございます。わが国におきましても、すでに財界並びに政府、与党の中からは、外事警察の強化、公安調査庁の拡充、新秘密保護法の制定、企業防衛の名のもとに政治的な首切りなどの準備が進められておるという動きが明瞭に現われておるのでございます。このような、およそ古い、時代錯誤の軍国調の動きをば、総理はいかにお考えになっておるのでございましょうか。かかる動きは、およそ日ソ国交回復を今後事実上否定するものでございまして、総理のただ一つの事業を無にして余りあるものといわざるを得ません。(拍手)この点に関しまして、総理の任務はまだ終っていないのでございます。有終の美を全うするためにも、総理のこれについての覚悟のほどをお聞かせ願いたいと思うのでございます。
 第四の疑点は、日ソ平和条約の締結の時期と鳩山総理の引退問題との関係でございます。共同宣言その他で、重要案件は平和条約で本ぎまりにするといっておるのでありますが、平和条約を、いつ、いかなる型で締結される目算でおられるのか、まずお伺いせねばならないと思うのでございます。この平和条約の締結が終らない限り、鳩山内閣の公約は完全に果されたものとはいえないのでございます。さらに、公約された中国との国交正常化については、その片りんさえも果されておらないのでございます。しかるに、今月、鳩山総理が近く引退されるであろうということは明々白々なる事実でございます。継続審議の案件について、鳩山総理はその責任を負わずして総理の地位を去らんとするものでありまするか。公約の最大のものであった日ソ交渉は、いまだ最終的段階ではございません。平和条約を締結しないまま、問題を将来に残して政界を引退する鳩山総理は、まことに無責任きわまるものと申さねばならないのでございます。(拍手)日ソ平和条約締結についての見通し、さらに、わが国にとってより重要なる日中国交回復についての見通しを、できるだけはっきり総理並びに外相よりお聞かせ願いたいのであります。須磨君に対する答弁は、この点きわめてあいまいでございまして、見通しがつくのか、つかないのか、また、つくとすればいかなる時期かということを、もう少しはっきりされることが、せめて去っていく総理の責任ではないかと私は言いたいのでございます。(拍手)
 ここで特に申し上げておきたいことは、今度の日ソ共同宣言のごとき暫定方式による日ソの国交回復でさえもが社会党の協力なくしてはできなかったという一事でございます。(拍手)鳩山総理の訪ソすら、与党の議員総会では決定できなかった状態であります。鳩山総理は公約を果したと言っておられますが、この公約を果し得た最大の理由は、わが社会党が、国際情勢をば、大局的に、かつ的確に判断いたしまして、暫定協定方式によっても旧ソ交渉を妥結せしめよと主張したからでございます。鳩山総理がこのたびの日ソ交渉が成功であったと言うならば、その大半の功績がわが社会党にある事実をばお忘れになってはならないと思うのでございます。現に、今日でも、与党内にはこの共同宣言に反対の諸君が多数おられることは、このことを雄弁に物語っておるものといわなくてはならぬのであります。(拍手)
 第三の質問は、憲法問題についてであります。鳩山内閣最大の公約の一つは日ソ国交回復であり、他の一つは憲法改正であったことは言うまでもございません。日ソ交渉は、不完全ながらも、社会党の協力を得て、一応その責任を果したのでございますが、憲法改正の意図は完全に失敗したことは言うまでもございません。
 その第一は小選挙区法案でございます。鳩山内閣並びに自民党は、小選挙区法案の実施によりまして衆議院で三分の二の議席を占め、保守永久政権を確立することによりまして憲法改悪の陰謀を遂げようとしたのでありますが、この小選挙区法案は、平和と民主主義を守ろうとする全国民の世論と、社会党の結集した戦いによりまして、ついに葬り去られたのであります。(拍手)続いて、第二十四国会直後に行われた七月八日の参議院選挙では、わが社会党を中心とするところの革新勢力、言いかえれば憲法改悪反対の勢力が三分の一以上を占め、衆参両院において憲法改悪の意図は完全に粉砕されたのであります。かくして、憲法改正という嶋山内閣最高の目標がくずれ去った以上は、あなたがおっしゃる、口ぐせの明鏡止水や行雲流水がにせものでない限りは、鳩山内閣は恥を知って当然総辞職すべきものであったと思うのであります。(拍手)鳩山内閣のねらった憲法改正の企図は、今、憲法調査会という有名無実な木札の看板を一枚残し、委員の任命さえもできず、むなしく消え去ろうとしておるのでございます。この厳粛なる事実を鳩山総理は率直に認めるかどうか、総理の責任ある答弁を求める次第でございます。(拍手)
 質問の第四点は砂川問題についてであります。鳩山内閣の最大の目標であった憲法改正の意図は完全に葬り去られました。小選挙区法案のときの、あのごうごうたる非難を忘れてはなりません。また、参議院選挙におけるわが社会党の圧倒的勝利は、国民がいかに憲法改悪に反対しているかということを如実に示したものであるといわなくてはなりません。しかし、鳩山内閣は、憲法改悪の意図を粉砕されてもなおこれにこりず、今日なお憲法じゅうりんの政治をやっておるのでございます。私はここで鳩山内閣の違憲行為を逐一申し上げる時間を持っておりませんが、最近の例は、あの砂川の大激突事件であります。わが党は、砂川の惨事を避けるため、あくまで話し合いによる解決を主張し、忍耐をもって関係者の説得に当ったのであります。また、地元側の反対同盟、すなわち、地元民、各労働組合、農民組合の応援者、全学連の学生に対しても、あくまで無抵抗でいることを主張し、この主張は実によく守られたのであります。この社会党の話し合いによる問題の解決、無抵抗の反対者、自分の土地を守る農民に対して、鳩山内閣は二千数百人に余る警官を動員し、国民の頭上に、こん棒と、鉄かぶとと、泥足を浴びせかけ、千人に余る負傷者を出したことは言うまでもありません。一千名に余る同胞の血を流してまでアメリカの軍事基地を拡張しなければならない義理が、一体どこにあるのでありましょうか。(拍手)国民を弾圧する熱心さをもって、国民の世論や反対闘争をバックに、なぜアメリカ側と交渉しないのでありますか。わが国の政府は、昔から、警官さえ出動させれば事が解決すると思っておるのでございますが、砂川の場合は、明らかに地元民、国民世論の勝利であると私は言いたいのであります。(拍手)中近東の例に見るまでもなく、現在、世界の潮流は著しく変っているのであります。われわれは砂川問題を国会を通じて徹底的に究明するものでございますが、鳩山総理は、この砂川の大惨事につきまして、いかなる責任を感じておられるか、はっきりとさしていただきたいのであります。(拍手)
 さらに、日ソ交渉におきまして領土問題が重大なる段階に達したときに、国内におきまして、アメリカの軍事基地を拡大するため、同胞互いに血を流したということは、わが国の領土主張に対しまして百害あって一利なしといわなくてはならぬと思うのであります。(拍手)この点に関する総理並びに防衛庁長官の明確なる答弁をわれわれは要求するものであります。
 質問の第五点は、スト規制法の問題であります。政府は、今度の臨時国会に、憲法違反のスト規制法延長の案件を提出いたしました。しかも、政府は、正常なる委員会の審議を省略いたしまして、これを一挙に本会議に上程せんとしたということは、国会軽視もはなはだしい暴挙であるといわなくてはなりません。(拍手)われわれは、ここで、昭和二十八年当時のスト規制法の審議を思い起さねばなりません。当時、政府は、スト規制の名のもとに、電気事業、石炭産業の労働者の罷業権を一方的に弾圧しようとしたのでありますが、わが党並びに国民世論は、これに対して、スト規制法が憲法の第二十八条によって保障されておる労働者の団結権、団体交渉権を剥奪する違憲立法であるとの立場から、強く反対したのであります。この戦いの結果、政府といえども、同法案を三カ年の時限立法とせざるを得なかったことは、諸君の御存じの通りであります。(拍手)ここにわれわれは三カ年の過去を振り返ってみますと、このスト規制法を延長しなければならない理由がどこにも見当らないのであります。政府は、このスト規制法を今日何ゆえに延長しようとするのでありましょうか、総理の明確なお答えを願いたいのであります。ことに、私らが最も遺憾とするところは、政府が今日近く崩壊することを知りながら、なおスト規制法延長を提出しようとしておることであります。これは、このスト規制法をば与党内の派閥争いの具に供そうとしているものであるとのうわさがあります。(拍手)労働者にとってきわめて重要なる反動法案を後継総裁争いのえじきにしようとするがごときことがもしあるとすれば、わが国政治にとってはきわめて不幸な状態であるといわなくてはならぬのであります。(拍手)そうでないとするならば、何ら延長の理由なきスト規制法をば、余命幾ばくもない鳩山内閣がなぜこれを提出したのであるか、鳩山総理にその理由を私は聞かなくてはならぬと思うのであります。
 質問の第六点は、補正予算の要求の問題であります。砂川に見られるように、農民の土地取り上げに武装警官を使い、労働者の団結権をじゅうりんするためにはスト規制法を提出しようとする鳩山内閣は、他面においては、労働者、農民、中小企業者の生活安定には目をおおっておるのでございます。(拍手)人事院の勧告によって指摘された公務員の総与改定、年末手当の増額等に、政府はいかなる手を打たれたのであるか。北海道に起った未曽有の冷害、九州の水害、北陸の大火に対して、政府はいかなる援助を与えたのであるか。さらにまた、健康保険の赤字もそのままとなり、保険医への支払いはわざと遅延せしめて、最も大切な医療保障は今危機に瀕しておる次第であります。総裁争い、党内派閥争いもあるいは重大事件であるかはしれませんが、政治の要諦は、まず何よりも国民生活を安定させるということにあるということを、鳩山内閣はお忘れになっているのではないでしょうか。(拍手)われわれは、たびたび政府に対して補正予算の提出を求め、臨時国会の開催を要求しましたが、政府は今なお財政的措置を講ぜず、予備費の流用で事終れりとしているのであります。しかも、その予備費の流用も、日ソ国交回復後の治安対策費と称して、ひそかに外事警察費その他の増額にまず振り向けられているということを、われわれは知っております。これでは、治安を主にして国民生活の安定を犠牲にする、まこと本末を転倒した、昔ながらの古めかしい、戦前の反動政治そのままのやり方であると、われわれはいわなくてはならぬのであります。(拍手)総理は、こうしたことが行われていることを、実際御承知であるかどうか。もし知っておられれば、これに対してどういう手を打たれるかということを聞きたいのであります。
 今日、世界経済の好転の余波を受けまして、わが国経済も好況下にあるとはいわれておりますが、その好況による利得はほとんどが独占的な大資本の利潤増大と設備投資の放漫なる増強に振り向けられておって、中小企業や農民やその他一切の働く人々の苦しい状態は一向改善されておりません。今なお、好況の陰に、一千万人に上る不完全就労者、生活困窮者があるのでございます。国民一人々々の消費生活や国民所得の間には大きな格差が生じている事実を、よもや総理はお忘れでないでしょう。われわれは、健康保険の国庫負担による赤字解消、原水爆傷害者援護国庫負担費、登録日雇い労働者の年末手当、北海道を中心とする自然災害復旧費及び救農土木事業費、公務員の給与改定、年末手当、中小企業に対する年末融資、これらの問題を中心にいたしまして、補正予算を強く要求するものであります。(拍手)総理は、これに対して、何ゆえ補正予算を提出しなかったのであるか、今後直ちに補正を行う所存であるかどうか、これは総理並びに大蔵大臣からお聞きしたいと思うのであります。
 最後に、政局転換の問題について、総理の忌憚なき所信を問わんとするものであります。鳩山総理は、巷間、悲劇の政治家と呼ばれておりました。しかしながら、ほんとうの悲劇は、病身の鳩山総理に二年もの間政権の座にすわられた日本の政界であり、また日本の国それ自身であったと、私は言わなくてはなりません。(拍手)第一次、第二次、第三次の三次にわたる政権の担当は、常に不安定なる短期の暫定政権の連続であったのであります。今まで鳩山内閣の総辞職の時期は何回もあったのでございますが、いたずらに政権にのみ恋々として、昨秋の保守合同にもその機会をのがし、日本の政局は何らの安定を見ないまま今日に至ったのであります。この臨時国会終了後、鳩山総理は政界を引退すると伝えられておりますが、また、その引退の理由は健康にあるようでございますが、老総理の健康は組閣当初から始まっておるので、いまさらのものではございません。(拍手)鳩山総理が引退せざるを得ない根本原因は、鳩山個人の事情では断じてなしに、鳩山内閣並びに与党たる自民党の内紛混乱と、それによる政策の行き詰まりにあることを、われわれは指摘しなければなりません。(拍手)しかるに、与党自民党は、みずからの内紛混乱による鳩山内閣の政策の行き詰まりをたな上げにいたしまして、公然と政権のたらい回しを策し、日夜これに狂奔し、日ソ共同宣言もスト規制法をもその具に供さんとしておるのであります。三人の自称総裁候補が入り乱れ、まことに醜い争いを演じておるありさまは、まさに日本政治の悲劇であり、また、日本政治の喜劇であると、私は言わなければなりません。(拍手)富くじを当てたように偶然総理のいすを拾った官僚政治家に対しては私は何をか言わんであります。きっすいの議会政治家として一生を全うせんとする鳩山総理は、この最終幕において、議会政治家としての矜恃をはっきりとお示しを願いたいと思うのであります。戦前戦後の経験から見ましても、満身創痍のあとのたらい回し政権は、その生命も短かく、また何の施策も断行し得ないことは明瞭であります。私は、鳩山総理が、議会政治家の一人といたしまして、国会解散による政権の移動という民主的ルールを断行されんことを切望してやまないものでございます。(拍手)
 日ソ平和条約、それに続くであろう日中平和条約、その他、今日の世界の情勢に伍し、内外政の一大刷新をはかることは、もはや今日時代おくれの保守政権ではとうてい不可能なことでございます。時あたかも二大政党の時代であり、国家のための野党であるわが社会党はきわめて健在であります。(拍手)われわれは、国会解散によって円満なる政権の授受を強く求めるものでございます。鳥のまさに死なんとするやその声や悲し、人のまさに死なんとするやその言やよし。数十年間の議会政治家として、また一国政権担当の総理大臣として、今や消え去らんとするその瞬間において、悔いを千載に残さざるよう、議会政治の大道を誤まらない総理の所信をば伺いたいと思う次第でございます。(拍手)
 これで私の代表質問を終ります。(拍手)
#13
○議長(益谷秀次君) ただいまの水谷君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
#14
○国務大臣(鳩山一郎君) 水谷君の御質問にお答えをいたします。
 第一の御質問は、臨時国会召集の遅延について政府の責任を問われました。臨時国会開会の時期につきましては、いろいろな議論もありましょう。政府としては、このたび選んだ時期が各般の都合から見て最も時宜に適したるものと存じておるのであります。
 第二の御質問は、日ソ共同宣言の内容は松本・マリク会談よりも一歩も前進しておらない、また、重光平和条約方式よりかえって後退したと考えるがいかん、という御質問であります。今般の交渉の結果、歯舞、色丹についてはわが国への引き渡しの確約をとりつけまして、その他の地域の処分については、その決定を将来に延ばし、今後の国際情勢の伸展とにらみ合せ、わが方主張の貫徹をはかる余地を残したのであります。これらの点を考えれば、今般の交渉の結果は、わが国にとりまして十分満足すべきものではないにいたしましても、わが国が置かれている現状において最善のものと考えるのであります。(拍手)
 領土の継続審議に関しまして、共同宣言にはなく、往復書簡にあるだけである。従って、継続審議は名だけで、その実体は領土の放棄であると思うがいかん、という御質問であります。およそ、平和条約の交渉において取り上げらるべき諸懸案中、領土の問題は最も重要なものでありまして、わざわざその旨を書かなくても、平和条約交渉といえば当然領土問題を含むものと解すべきものであります。
  〔議長退席、副議長着席〕
まして、日ソ間の場合のごとき、領土問題が両国間の最大の焦点となっておる場合には、これを含むことは論を待たないと私どもは考えております。(拍手)国後、択捉の分は、平和条約締結の際に決定せらるべきことは、もとより当然のことであります。
 次の御質問は、共同宣言中にある国連加入は、単独加入かつ無条件の加入であるのかという御質問であります。今回の日ソ交渉において、ソ連は、日本の加盟を支持するとの約束を履行する旨言明しているのにもかんがみまして、われわれは、ソ連が誠意をもって右言明を実行するものと期待をしております。年内には加盟はできるものと信じております。(拍手)
 次の御質問は、在ソ抑留邦人帰還の見込みの時期について触れられました。在ソの抑留同胞は、日ソ共同宣言に基きまして、宣言の効力発生とともに送還されることになっていますので、どうか批准を早くお願いいたしたいと思います。(拍手)批准をした上は、少くとも年内には完了したい意向でソ連側と打ち合せを行う予定であります。
 次の御質問は、日ソ平和条約締結の時期と、私の引退問題についてでありました。政府は、ソ側との間に外交関係回復後、国際情勢の推移を十分勘案した上で、わが国の主張の実現に最も適当と思われる時期に平和条約の交渉、締結を行いたいと考えております。なお、歯舞、色丹については、共同宣言において、平和条約締結後現実の引き渡しを受ける旨、確約しております。他の領土問題についても、当然平和条約締結のときに継続審議されるのでありまして、領土問題の解決の方法は立っているのであります。
 なお、中国との関係は、ソ連の場合に比べまして、きわめて複雑な問題を包含しているので、現在国交正常化の問題を軽々には言うわけには参りません。
 私の引退の時期は大体きまっておりますけれども、私がきまっていても、平和条約締結の時期は国際事情に伴うことであります。その目当ては私にはついておりません。引退の時期との関係については、答弁の限りではないと思います。(拍手)
 その次の御質問は、憲法改正を目的としたことをやらなくなった、その責任をとったらどうだというような御質問でありました。憲法改正はまだやるつもりなんで、今準備中とお考えを願いたいと思います。(拍手)
 その次に、砂川問題について御質問がございましたが、砂川問題というような血を流すような問題が起きたことは、私はまことに遺憾に存じております。詳細のことは関係大臣から答弁をしてもらいます。
 スト規制法についても御質問がございましたが、これは関係大臣から答弁をしてもらいます。
 補正予算の提出について御質問がありましたが、北海道の冷害その他災害対策費については、既定の予備費等の活用によりまして、当面必要とされる措置は講じております。
 また、健康保険の問題及び人事院の勧告に伴う国家公務員の給与改定の問題については、善処方を目下慎重に検討中であります。
 その次の御質問は、民主的のいいルールを作ってから退けというような意味です、簡単に言えば……。(拍手)民主的のいいルールを作るということはまことに必要と思います。そうして、解散もあるときにはやった方がいいと思います。ただいまは、しかし、社会党に政権を移動するとか、それを拒むとか、両方とも考えていないのです。現在私の引退する形式のいかんによってきまるものと思います。どういう形式で引退するか、今ちょっと私にもわからないのです。(拍手)
  〔国務大臣重光葵君登壇〕
#15
○国務大臣(重光葵君) お答え申し上げます。
 私に対する御質問は国際連合加盟の問題であります。私も総理大臣と同じ考えを持っております。国際連合加入は現在の総会の開会中にもできることと考えて、今準備を進めておる次第でございます。
 次に、中共問題を御質問になりました。中共問題についても、総理大臣のお答えの通りに私どもは考えております。目下直ちに政治問題を取り上げる時期ではないと考えておりますが、貿易等は国際関係の許す限り進めていきたいと考えております。
 次に、日ソ交渉の跡始末としての平和条約の問題について御質問がありました。平和条約を、今総理の御説明の通りに、国際情勢をよく見きわめつつ、最もいい時期に始めたいと思っております。目下のところは、日ソ交渉の結果による共同宣言等に対する御批准をすみやかに御承認を得たいと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣河野一郎君登壇〕
#16
○国務大臣(河野一郎君) 私にお尋ねになりました領土関係のことは、総理大臣並びに外務大臣から詳細お答えがございましたから、あらためて繰り返しませんが、ただ、ブルガーニン氏並びにフルシチョフ氏と私が会いました際に密約云々ということがお話に出ましたが、こういうことは一切ございません。
 なお、この機会につけ加えさせていただきたいと思いますことは、今回の、私とフルシチョフ氏と領土のことについて数次会談いたしました際に、将来適当なときに領土問題についてないしは平和条約を交渉いたします際に支障となるべき一切の約束はいたしませんということを、この機会に私は明らかにいたしておきます。なお、申し上げることははなはだどうかと考えますが、ただいまもお話のありました中に、社会党の領土問題に対する御主張を将来実現なさる上において、われわれが今回とって参りましたる処置は一切支障になるべきことはいたしておりませんということだけは明瞭につけ加えることができると私は思うのでございまして、それを、あたかも領土問題について何らかマイナスがあると思えるようなこと、ないしは、また、そういった雰囲気のことをいろいろ御論議になりますることは、かえってソ連側をして利する憂いなしといたしませんことを、この機会にお願いを申し上げておく次第であります。(拍手)
  〔国務大臣船田中君登壇〕
#17
○国務大臣(船田中君) 立川の基地拡張につきまして、地元と流血の惨を見るよなことになりましたことは、先ほど総理大臣の御答弁にもありましたように、まことに遺憾には存じまするが、あの措置といたしましては、政府といたしましては、まことにやむを得ない手段に出た次第でございます。そもそも、立川の基地は現在米軍に使用させておるものでございますけれども、わが国土の防衛のためにはやむを得ない必要な最小限度のものでありまして、これを拡張することの方針と計画はすでに昨年決定をいたしておるのでありまして、その決定に基きまして、本年はそれに必要なる誘導路に当りまするところの測量をいたしたにすぎないのでございます。それは、すでにきまっておりますることを実行する、単なる行政措置にすぎないのでございます。しかも、この実行につきまして、社会党の諸君と話し合いをするということでございましたので、私も数次にわたりまして社会党の諸君とお話し合いをいたしたのでございますが、しかし、何ら具体的の対策をお持ちにならず、また、それのお示しがありませんでした、そして、じんぜん日を過すことができませんので、ついに強制測量をするという措置をとった次第でございます。(拍手)私は、法治国におきまして、法と秩序を守るということは、これは民主政治の基礎でなければならぬと思います。(拍手)私は、このことにつきまして、私のとりました措置について御批評がありますならば、十分その御批評を受け、責任を果すつもりでおります。(拍手)
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#18
○国務大臣(倉石忠雄君) 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律につきまして、水谷さんにお答えいたします。
 お話の中に、この法律は今の電気産業と石炭鉱業の労働組合の団結権と団体交渉権の圧迫であるというお話でございましたが、そうではないのであります。団結権や団体交渉権には何の関係もありません。団体行動権であります。つまり、団体行動権に含まれておる、いわゆるその争議行為の中の手段、わかりやすく申し上げますならば、水谷さんのような御説をなさいますから、ときどき国民は誤解を生ずるのでございますが、電気産業と石炭鉱業の二つの労働組合が争議行為をおやりになる場合に、スイッチを切ったり、ウォーク・アウトといって歩いていってしまうことは非常に危険であるし、スイッチを切ってしまうということは、相手方の経営者に対する労働組合の威嚇だけではなくして、逆にたくさんの消費者の人たちが迷惑を受けることであるから、これは公共の福祉に反することであるから、さような争議行為はしないようにという、また、御承知のように、石炭鉱業も全部の争議行為を禁止しようというのではもちろんないことは御存じの通りであります。つまり、一部の、ポンプ・アップをするそのガスがたまっているやつをガスを拝出する、水がたまっているやつを水を排出するということのポンプの位置にいる保安要員というものが、その事務を怠って、どこかに行ってしまえば、水がたまって何百人という炭坑労務者が死ぬかもしれない、ガス爆発をして大事な国家の財産が滅失するかもしれない、こういうことはやるべきでないという。従って、憲法の二十八条に許されておる団結権、団体交渉権及び団体行動権といえども、憲法十二条、十三条が優先いたしておる。いかなる国民の自由権といえども、基本的人権といえども、これは公共の福祉のためには制限を受けるのは、各国の立法例は皆さん御承知のように、当然のことであります。(拍手)従って、私どもは、憲法違反という御議論には同調いたしかねるのでありまして、さような国民大衆の迷惑をあえて顧みないで、労働者だけに野放図なる自由権を認めなければならないという憲法解釈であるならば、遺憾ながら、われわれは同調いたすことはできないのであります。(拍手)
 委員会審査の省略について申し上げますが、私ども労政当局といたしましては、年末に際しておりますし、ことに、水谷先生御承知のように、秋季闘争というものも行われている状態でありますし、なるべく早く労働関係については安定をしなければならない。これは労働者のためであります。しかも、この臨時国会というものはきわめて短期間でありますし、しかも、すでに存在いたしておる法律に何らかつけ加えようというのではなくして、法律の命令するところによって、この期限が切れて、その次の国会の十日以内にこれを延長するかどうかという議決を求めなければならないという法律の命令に基いて政府は行動をとったのでありまして、御決議を願うだけであって、法律は現存しておるのであるし、労働界のために一日も早く安定してあげたいという親心から審査省略を要求いたした次第であります。(拍手)
  〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕
#19
○国務大臣(一萬田尚登君) 災害対策費その他いろいろの出費が新たに考えられるのに、なぜ補正予算を本国会に出さないか、という御質問であったと思うのであります。北海道の災害の対策経費につきましては、救農土木事業費、災害復旧事業費、営農対策費補助、学校給食費補助、国民健康保険組合再建特別会計貸付などに充てるために、予備金から十三億三千七百万円をすでに支出しております。さらに、国有林野事業特別会計予備費からも四億八千万円支出、それから地方単独事業起債の承認も四億五千万円いたすことにいたしております。これらの措置と並びまして、その他の既定予算の活用、営農資金の貸付等も行われますので、当面必要とされます対策は十分立てられると考えます。従いまして、この関係から、補正予算を行う必要はないのであります。
 健康保険の財政再建対策につきましては、本臨時国会に前国会と大体同様の再建法案を提出いたしまして御審議を願いたいと考えておるわけでありまして、法案が通過いたしますれば、これがための予算措置につきましては、既定の予算にすでに織り込まれておりますので、これを実行することができると考えております。
 また、人事院の勧告に伴う国家公務員の給与改定問題につきましては、目下慎重に検討いたしております。まだ結論に達しておりません。公務員の年末手当の問題につきましては昨年増額したばかりであります。民間におきますこの種の手当とほぼ見合っておるように考えておりますので、この増額には非常に慎重な検討を要すると考えております。
 中小企業の金融につきまして、特に年末金融につきましては、政府の金融機関に対しましては、もちろん融資のワクを広げる等の措置をとっております。民間の金融機関に対しましても、それぞれ特別に配慮を加えるよう指示いたしておりますが、なお遺憾なきを期したいと思っております。今国会に補正予算を出さないから、何だか国民生活の安定を考えていないかのようなお言葉だったと思いまするが、そういうことは絶対にありません。国民生活の安定を期さないというような政治はない、こういうように私は考えているわけであります。(拍手)
#20
○副議長(杉山元治郎君) 穗積七郎君。
  〔穗積七郎君登壇〕
#21
○穗積七郎君 鳩山総理が日ソ交渉を決意されてから今日まで二カ年の長きにわたりました。その間、与党内は四分五裂、国策は全く党内けんかの道具に使われるし、また、横合いからはアメリカの牽制にあい、そのために、日本の外交は世界の物笑いの種にされました。さらに、相手国ソビエトからは終始ほんろうされ通しで、非常に不利な条件を作り上げるに至ったのであります。その政治的責任は、今日といえども、なお免除されているものではございません。しかしながら、老首相は、最後に、われわれ社会党の陰に陽にわたるてこ入れをたよりとされて、みずから病躯をかってモスクワにおもむき、不完全ながら、次善の策として、いわゆる暫定方式による日ソ共同宣言その他に調印して帰られたことについては、われわれはその労を多といたします。また、ようやくにして、今日ここに日ソ国交が日の目を見るに至りましたことを大いに歓迎するものでございます。
 そこで、私は、日本社会党を代表して、共同宣言並びに貿易発展に関する議定書を中心として、ごく総括的な質問をいたしたいと存じます。
 第一に総理にお伺いいたしたいのは、今後日ソ間の国交を一体どういう方向に持っていこうという方針を持っておられるかについてでございます。ソビエトとの国交回復を、単に北洋の魚と抑留邦人を取り逃げするためのものとして、あとは冷たい国交関係に終らしめるつもりであるか、あるいは、これを両国間の相互平等による経済、文化の交流のあたたかい国交回復のスタート・ラインとして役立たしめるつもりであるか、そのいずれであるかをお伺いいたしたい。もとより政府は後者の方針でなければならないと信じますが、そのためには、まず総理みずからの目で見てきた新しいソビエトの科学技術とその経済建設について、どう受け取ってこられたか、また、その新しい共産圏との間に西欧諸国がとっている積極的な貿易政策をどう感じてこられたかを、率直に御披瀝を願わなければなりません。今日まで、日本の保守党の諸君は、社会主義建設にはあえて目をおおって過小評価を行い、それとの経済、文化の交流を拒むのみならず、むしろ反対にこれらの国を仮想敵国として、武力による対立を自国の国民にしいるという、実に誤まった政策をとってこられました。この政策の誤まりに総理が率直にお気づきになったかどうか、お伺いいたしたいと思います。
 さきにモスクワに行かれた重光外務大臣は、すばらしいモスクワ大学をごらんになり、その科学が生産の中に生かされておる偉大なる実力を見て、従来の対ソ慎重論を一夜にして早期妥結論に賢明にも豹変されたのであります。また、河野全権は、最近の中央公論の誌上におきまして、みずから筆をとって次のようにしるしておられるのであります。いわく、「私が――これは河野農林大臣のことですが――私が想像していたような、冷たい、暗い共産主義の政治は、今日のソ連の社会のどこにも見出すことが困難であります。」また、いわく、河野さんの言によれば、「一体どういう国ができ上るのか見当がつかない、偉大な国家の建設をわれわれに想像させます」と言われ、だから、結論として、「われわれは、これらとの関係については深く考え直さなければならない」と、正直に告白しておられるのでございます。総理も全く同じ感想であろうと存じますが、国民の前に、この際総理の感想を披瀝していただきたいと思います。
 これと関連して、総理にお尋ねいたしたいのは、もししかりとするならば、問題は、その総理の認識があなたの内閣の政策にいかように生かされているかということでございます。しかるに、驚くことに、今日、あなたの内閣の法務並びに警察当局は、日ソ国交回復を口実に、外事警察、昔の特高警察を倍化して、先ほどの答弁に、調査と宣伝だけに使うと言っておられましたが、われわれの判断によれば、やがて一切の進歩的な勢力を権力をもって弾圧しようとたくらんでおるのであります。このようなことは矛盾もはなはだしいではございませんか。さらにまた、あなたの内閣の外務省は、日本の学術会議を通じて、日本の学者たちに向って、「今後共産圏との学術交流を抑圧する」趣旨の通達をすでに出しておるのでございます。時代に逆行するもはなはだしいものではございませんでしょうか。われわれは、総理の猛省を促し、このようなばかばかしい政策を撤回することを要求しつつ、総理の納得のいく御答弁をお願い申し上げます。(拍手)
 次に、共同宣言の内容についてお尋ねいたします。当初、十月十五日、ソ連側から提案されました原案には、原水爆実験禁止の条項が明記されていましたのに、日本全権はなぜこれを削除することをあえて求められましたか。われわれの最も遺憾とするところでございます。われわれ日本国民こそ、世界に向って原水爆の実験を禁止することを強く要求する権利と義務を持っておるのではありませんか。また、政府は、先般の国会における実験禁止を含む決議案をお忘れになったのでありましょうか。交渉の経過を伺いますと、ソ連側の原案の第一項に、両国全権は国際情勢について話し合いを行なって、そうして意見の一致を見た、という文句があった。それに拘泥をして、第二項の禁止規定を削除するという理由にされたようでありますが、われわれは、このようなものを信ずるわけには参りません。全権の心中は、まさにアメリカに気がねをされたのが真実なる理由であろうと思われます。この際弁明を求めますと同時に、なお、この問題は大使交換の後の継続議題とすることに合意に達しているかどうか、交渉の経過をお伺いいたします。もし合意に達しておるとするならば、日本政府は、今後、一方はソビエトとの間に、また他方においてはアメリカとの間において、さらにまた国連にこれを持ち出しまして、国際的に原水爆禁止を実現すべきであると思いますが、この際外務大臣の御方針を伺っておきます。
 第三に私がお伺いいたしたいのは領土問題についてでございます。この問題については、先ほど河野農林大臣から弁明がございましたが、私は、この問題について、ざらにもう一度お伺いしなければなりません。それは、ごく最近の、十一月十日発行の「国際事情」の誌上におきまして、「領土問題については歯舞、色丹をもって一切終結したのである、それはフルシチョフ・河野間のアレンジメントをもって明確である」としるされておると、同月十日のAFPのモスクワ電によりますと明確に報道しておるのでございます。まさかそのようなことはなかろうと思いますが、もしありとするならば、事は重大でございますから、この際その真偽のほどを農相から伺っておきたいと思います。
 次に、このたびの取りきめの内容に及びます。元来、領土問題については日本側の議がまとまらないために、日本側から領土問題はすべて継続議題にしてもらいたいという要求を出して今度の交渉が始まったのでありますから、その継続議題の中から歯舞、色丹だけを切り離して、しかも、即時かつ無条件に返還を求めるという党議の決定は、これは国際社会に出ましては通用しない要求であることは言うまでもありません。しかしながら、この二つの島につきましては、ロンドン交渉以来の特別の事情があることでありますから、百かゼロかというのではなくて、その中間に幾つかの有利な場合があり得たと思うのであります。このたび、政府は、平和条約発効を条件に歯舞、色丹の返還を約するものに調印して来られました。ところが、われわれの判断によりますと、これよりもさらに有利なる次の二つの場合があり得たと思うのであります。その一つは、日本政府が、歯舞、色丹については日米安保条約の除外例を認め、ここには米軍基地を置かないという条件を出すならば、この両島を批准後一定の期間内に返還する約束を取りつける可能性があったと思うのであります。このことは、われわれはすでに早くから政府に御忠告を申し上げてきたにかかわらず、重光全権もモスクワにおいて一度もこの政治折衝をなされませんでした。また、このたびの鳩山全権も同様であったようであります。なぜ一体この交渉をされなかったのでありましょうか。おそらく、政府は、アメリカとの安保条約に、たといそでにでも触れることを恐怖しておられる。そのことがすなわち実は保守党の政治的限界であると思うのでありますが、その保守党の政治的限界のために、このような有利な政治交渉ができなかったと、われわれは断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)
 さらに、政府の取りきめより有利な第二の場合は、政府は安保条約に触れる勇気がないとしても、領土のすべてを一括審議するという中から歯舞、色丹だけを分割して、しかも、これを先議し、しかも、さらにこれについては好意的なる取扱いをするということを事前に取りつけておく可能性が私は十分あったと思うのでございます。この話すら、ついに一度もされなかったのは、われわれのはなはだ遺憾とするところでございますが、どうか、交渉の経過について、もっと責任を持った、納得のいく説明をしていただきたいのでございます。(拍手)
 私は、さらに、鳩山総理に、領土問題について一歩根本に触れてこの際お伺いをいたしておきたい。それは、われわれの信ずるところによれば、サンフランシスコ条約第二条並びに第三条において、北における南樺太、千島列島全体並びに南におきましては小笠原、沖繩列島の一切の領土権を放棄しておりますが、この際、このサンフランシスコ条約第二条、第三条を改訂いたしまして、これらの四つの島に対する領土権放棄を取り消し、しかも、その上に安保条約を廃棄して、日本本土を初めとし、今後日本に返ることが予想されるいずれの島にも米軍基地を置かないという、真に独立と平和の外交政策を打ち立てるならば、ソ連もまた、必ずや、すなおに、ポツダム条約の線に返って、南千島のみならず、全千島列島の領土権の返還を約し得るものと考えております。ソ連も、領土欲によって千島問題に執着するのではなく、現在の日本の政策が、アメリカと組んで、領土を対ソ攻撃の軍事基地に使おうとしているところに問題があるのでありますから、われわれが、政治的に見て――条約上は違いますが、政治的に見て、千島列島全体の領土権は南の沖繩の領土権返還と見合って必ず返し得ると主張するのは、ここにあるのでございます。この際、総理の率直なる御意見を伺っておきたいのでございます。
 第四には、私は、貿易と漁業問題について、高碕経審長官と河野農林大臣にお尋ねいたします。
 このたびの交渉において、先方の提案によりまして、最恵国待遇を基礎とする貿易議定書ができたことは、まことにけっこうでございました。しかし、これは貿易発展の糸口にすぎません。最初シェピーロフ外務大臣から年間十億ルーブルを目標とする貿易計画の提案があったにかかわらず、重光全権は聞き流しにされまして、これに何ら熱意を示さず、その後今日まで一言の話し合いもしておられません。次に鳩山全権の行かれたときも、ほぼ同様な態度をとられたのでございます。われわれの確かめておるところによりますと、先方は、従来の木材、バルプ、非鉄金属鉱等のほかに、今後石油、石炭、鉄鋼、機械類、化学染料等々を主にした輸出計画を持つ可能性がある。また、向う側の輸入につきましては、すなわち日本の輸出については、ソビエトの第六次五カ年計画のうち、特にシベリア開発計画とからみ合せまして、船、ワイヤー等のほかに、各種の建設資材、重工業資材、貨車、工作機械、各種の繊維品等を主とした輸入計画が立てられる段階に来ておると思うのでございます。そうするならば、数年の努力を経た後には、十億ルーブル、すなわち二億五千万ドルを目標とする貿易というものは、決して不可能ではないと見るのでございますが、高碕経審長官の、対ソ貿易拡大の可能性に対する御所見を具体的に伺いたいと思います。
 次に、北洋における漁業基地と近海漁業の問題について、河野農林大臣にお伺いいたします。この二つの問題についても、また、われわれは、早くから、その交渉いかんによっては実現の可能性のあることを示唆し、河野農林大臣も、立つ前に、鳩山・鈴木会談の席上におきまして、この方針で話してみたいと明らかにされて出発されたにかかわらず、何らこのことをなされなかったのは、一体どうしたことでございましょう。聞くところによりますと、河野さんはイシコフに対して日本漁業労働者使用の問題を提案された、ところが、先方は、それは日本側の漁獲高拡大の問題と理解をして、これを軽く断わられたようでございますが、河野農林大臣は、これだけで交渉を打ち切って引き下っておられる。われわれが申し上げておったのは、そういうことではございません。日本側の合意に達しておる漁獲高の範囲内においても、南北千島列島に漁業基地を設定し、または領海内をも含みまする近海漁業の許可を取りつけることは、特に日本の中小企業漁業家にとっては得がたい利益であるということであります。にもかかわらず、この問題に不熱心であった河野さんの水産政策というものは、遺憾ながら、日魯漁業その他の大会社を代弁する政策だと言われても、返す言葉はなかろうと私は思うのでございます。(拍手)どうか農林大臣のお考えを伺っておきたい。交渉の経過も明らかにされたい。
 第五に、国連加盟については、先ほどのお話では、今年度中に入れる可能性があるということでありますが、私がお伺いいたしたいのは、鳩山・ブルガーニン会談で、共同宣言の文章には出ておりませんが、単独かつ無条件に支持するということを取りつけてこられたのかどうか。また、引き揚げ問題については、先ほどお話しの通り、今度の共同宣言が批准発効後直ちに帰すということでありますが、その送還を年内に行いますためには、一日も早くやらなければならない。そのためには、講和発効前に、調印とともに日本の抑留者をナホトカに集結するという、そういう好意を取りつけるべきであったと思いますが、このことはお取りつけになってこられたかどうか、農林大臣にお伺いいたしておきたいと思います。
 最後に、私は、日ソ交渉と関連して、中国との国交回復について、根本に触れて総理のお考えを伺って、答弁をわずらわしたいのでございます。日ソ国交回復の次に来るものは、当然、内においては安保条約を初めとする日米間の不平等条約の改廃の運動でございましょう。外においては新中国との国交回復問題であることは、すでに国民が強く指さしておるところでございます。日中間には、日ソ間のような領土問題というようなむずかしい問題はございません。それどころか、引き揚げの事前解決、賠償請求権の好意的な放棄等々、はかり知れない中国側からの友情は、日本国民に疑惑なき感謝をもって迎えられております。さらに、中国との貿易の拡大、文化の交流は、日本国民により多くの利益を持ち来たらすものとして、国民一人の反対もございませんでしょう。しかも、日ソ交渉の眼目を、総理みずからも言われたごとく、日本みずからが東西の両陣営のかけ橋となって、真に独立と平和に近づかんとするところに置かれるならば、日ソに続いて、すみやかに日中の国交回復をして、初めて車の両輪を得たことになると思うのでございます。
 しかるに、政府は、今まで周総理の誠意ある幾たびかの呼びかけに対して、失礼にも一言のあいさつもしておられません。また、人の相互の往来につきましては、憲法、旅券法に違反し、これをじゅうりんするような不当な閣議決定によって、パスポートの許可権を握っておる外務大臣のほかに、至るところに頑迷な関守を作って、これを阻止し、貿易についても、西欧諸国のココム、チンコムを突破しようとする自主果断な態度というものは、日本政府にはつめのあかほども見受けられません。
 われわれの聞くところによれば、去る十月四日、河野農林大臣は、モスクワに立たれる前に、アリソンと会談をされた。その会談の席上で、アリソンが「日中の国交回復はまかりならない」ということを事前にくぎをさす御託宣を述べられたようであるが、これは明らかに日本政府に対する内政干渉でなくて何でございましょうか。(拍手)政府は、このような不当なるアメリカの内政干渉にいつまでも平伏し続けて、日中問題については口を緘して語らない態度をお続けになるつもりでございますか。
 重光外務大臣は、昨日、この議場におきまして、中東並びに東ヨーロッパに関する報告がございましたが、あの中からわれわれが学び取らなければならないことは、強国の不当なる武力行使に対して、中間国または弱小国は、武力をもってこれに対立することではなく、ますます平和政策に対する決意を固め、団結を固めるべきことであることは言うまでもありません。しかし、われわれがさらにここで学び取らなければならない重要なる教訓というものは、弱小国が、いずれにおきましても、強国の前にいつまでもこびへつらっておる時期はもう過ぎたということを教えておるのでございます。(拍手)中東並びに東ヨーロッパにおきます問題は、遠いかの地の問題ではない。にもかかわらず、外務大臣はこれを対岸の火のごとく報告されておられますが、その政治的センスを疑わざるを得ない。この問題は人ごとではございません。ここアジアにおいて、それは日本、韓国並びに台湾の独立の問題を示唆しておるのでございます。
 そう見てくるならば、日中間のただ一つの問題は台湾問題でございます。台湾問題はアメリカの武力政策に根を置いております。しかしながら、この不当なるつながりにこだわっていては、いつまでもこの日中問題は解決いたしません。そこで、われわれは、台湾問題はあくまで中国の国内問題として処理すべきであると考えます。そうするならば、北京と東京と台北の三人のアジアの兄弟が、ことごとくアジアに返って、アジアの平和と建設問題を話し合うならば、道は必ず開けるものと確信いたしております。日中問題に関する総理のお考え方をこの際伺っておきたい。
 かくのごとく見来たりますならば、このたびの日ソ交渉後に残されました諸問題、すなわち領土の問題を解決して完全なる平和条約を結ぶことも、次には共同宣言を両国の友好と繁栄のために使うことも、さらに第三には重大なる日中間の国交を解決することも、これらすべてアメリカに縛られておる日本の保守党内閣ではもはや解決することのできない、限界を割っておるものであるとわれわれは思うのであります。(拍手)正直なる総理みずからがこのようなことをお感じになりませんかどうか。私は、総理の政治生涯における最後の答弁として、正直にしてかつ示唆に富んだ御答弁を求めて、私の質問を終ります。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
#22
○国務大臣(鳩山一郎君) 穂積君の御質問にお答えをいたします。
 日ソ間の国交回復によりまして、冷たい国交にするのか、あたたかい国交にするのかという御質問でございます。もとより、日ソの両国は、友好関係を密にしていかなければならないと思います。冷たくては困ると思います。(拍手)むろん平和と民主主義に生きようとする所存であります。決して反動政治をやるつもりはありません。内外諸政策を反動にする意図などは、政府としては毛頭持っておりません。
 次に、原水爆禁止の条項を削除したことについての御質問がありました。これは原水爆の実験の禁止条項に反対という意味ではないということは、特に申し上げております。ただ、今回の暫定協定の中に、全く性質の違うこの条項を入れるということは、形がおかしいじゃないか、他の機会においてこれをしようじゃないかという話し合いのもとに、双方合意で削除したものであります。
 その次に、アメリカの考え方を考慮してこれを削除したというような御質問でありましたが、アメリカの考えを考慮しながらソ連と交渉したという事実は毛頭ございません。(拍手)
 領土問題について、穂積さんは、何といいますか、沖繩、小笠原の諸島との関係を考慮してソ連と交渉すべしという御議論のようでありますが、アメリカに対しては、施政権だけをアメリカが持っておりまして、日本は残存主権はもちろん持っておるので、これと同じような取扱いに択捉、国後等を考えるわけには参らないのであります。(拍手)もちろん、幾度も申しまするごとくに、情勢の変化によりまして、国際情勢の変化によって平和条約を結びたいと言っている言葉のうちには、米ソの関係が友好関係を持つようになった場合には日本の立場はよくなるということを考えておりますものですから、ああいうことを言っておるのであります。(拍手)
 日ソ間の貿易についてもお話がありましたが、ソ連側は、いわゆるシェピーロフ構想等、ある種の案を考えておるようでありますが、その具体的内容については、いまだ不明確であります。わが方としては、合理的な貿易発展の線に沿う自主的見地かち、実際的な見通しについて目下検討中であります。
 次に、国連問題について、単独でかつ無条件であるというような御質問がありましたが、私からブルガーニンに対して、この前はこぶがつけられた、それで加盟ができなかったが、今度はああいうことになりはしないでしょうねとただしましたところ、ソ連としては必ず加入できるように骨を折るという返事がありましたから、私はその言明を信じております。
 抑留者の引き揚げについて、ナホトカに集結等についても善処方を申し入れてあるのかというような御質問がありましたが、河野農林大臣から、とにかく必ずこの議定書並びに協定は承認を受けるから、受けるまでにナホトカぐらいに抑留者を送っておいてもらいたいということを、河野君がブルガーニン、フルシチョフに話しました。それに対して向うは明言をしませんでしたけれども、同意をしたような顔つきをしておりました。(笑声)
 日中関係については、いつ国交回復を行うのかというようなお話でありますが、国交の正常化のごとき問題を軽々に言うわけには、日中との関係にはできないのです。実際上の必要に応じて貿易の伸張等をはかりまして、また漁業などについても、必要に応じて民間において適当な接触をしていく等の処置をとっていくのが適当であろうと考えております。ソ連と同じように国交の正常化をすぐ考えるわけには参りません。
 以上をもって御答弁といたします。(拍手)
  〔国務大臣重光葵君登壇〕
#23
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。
 通商関係につきましては、すでに通商貿易の議定書ができているのでございますから、その御批准を得た上では、ソ連との間に交渉を開始し得ると考えております。
 それから、原水爆の禁止のことについて努力をするかというお話でございました。努力はいたしているのでございます。これは、主として国際連合関係において原水爆の禁止が実現するようにいたしたいという考え方をもって進めておるのであります。
 中共に関する問題は、総理大臣の御答弁の通りに御承知を願いたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣河野一郎君登壇〕
#24
○国務大臣(河野一郎君) 外国新聞の特派員云々ということでございましたが、この事実につきましては、先ほどお答えを申し上げましたことで御了承願いたいと思います。そういうことはございませんから、報道員の報道の間違いだと私は考えます。
 それから、領土問題について、こういうふうにしたらどうだ、こういうことは言わなかったのかというようなことの御指摘でございましたが、フルシチョフ氏と数次会談をいたしました際に、同氏がいろいろ発言せられますることは、ただいまのこういうことを考えて、こういうふうにしたらということとは、相当の主張に距離のあることであるということを申し上げて、私が今お話のようなことをその際に申しましたところが、それはとうてい先方の聞くところでなかったろうということを、ここに申し上げて差しつかえないと思うのであります。
 次に引揚者のことでございますが、これはただいま総理からお話のありましたる通り、ナホトカあたりにぜひ早急に集結するように期待をするということを、強く私は希望は申し出ておきました。ところが、その後……(「どんな顔つきだ、見せてみい」と呼ぶ者あり)顔つきをいたさなくても、現実に……(笑声)静粛に一つお聞きを願いたいのでございます。現実に、チフヴィンスキー氏から私のところへ、当方としても、批准ができれば遅滞なくこの処置がとれるように、双方で打ち合せをしておきたいという話がございましたので、顔色だけでなしに、先方にも十分通じておるということが明瞭になっているのでございますから、この点、私は相当の期待をして差しつかえないと考えております。
 次に、漁業基地の問題、近海漁業の問題でございますが、これは二つに分けてお答え申し上げます。
 漁業基地につきましては、千島の場合、現在の鮭鱒漁業を振興いたします、操業いたしますには、基地関係は、私は考慮の必要も大してありませんし、価値も大してないのではなかろうかと考えておりまするし、これは資本漁業とか中小漁業とかいうことでなしに、いずれも北海道を基地として現在やっておりますことで差しつかえないのじゃないかと考えておりますが、なおよく研究はいたしたいと考えております。
 なお、近海漁業の問題につきましては、いずれ漁業条約発効と同時に、先方と漁業委員会を開催いたしまして、これらの海域における漁業について十分打ち合せをして、遺憾なきを期することにいたしておりますから、その際になお議題として先方に申し出たら一番適当だと考えております。(拍手)
  〔国務大臣高碕達之助君登壇〕
#25
○国務大臣(高碕達之助君) 日ソ貿易の将来についての御質問でありましたが、いわゆる第六次五カ年計画と申しますか、これはソ連の一九六〇年をめどといたしました計画でありますが、その内容はよくわかりませんが、私どもの知っておる範囲におきましては、まず生産力の地理的配置ということに重点を置いているようであります。言葉をかえますれば、シベリヤの開発ということに重点を置き、石炭、水力、木材、非鉄金属、石油、鉄鉱石等の開発をするということが目途のようであります。従いまして、日ソ国交が回復いたしますれば、これら開発に要するところの建設機械だとか、鉄道だとか、車両、レール、発電機、そのほかいろいろな消費物資等も輸出が増進し得ることと存じます。同時に、これらの資源が開発できますと、日本に持って参りますものは、現在におきましては、ソ連の品物は、石油にいたしましても、石炭にいたしましても、国際的の価格に対して非常に高いのであります。これがだんだん安くなってくる、こう存じますから、その際には、石炭、石油、鉄鉱石、特に非鉄金属の鉱石が相当豊富であると存じますが、こういうものは日本に輸入いたしまして、日本の産業の振興に非常に役立つことと存じます。従いまして、今日の日ソ共同宣言が批准を得られますれば、一日も早く通商航海条約あるいは通商協定等が締結されまして、そうして、貿易の方式、あるいは決済の方式等を改善いたしまして、できるだけ多く貿易の拡大をはかりたいと存じます。(拍手)
#26
○副議長(杉山元治郎君) 日野吉夫君。
  〔日野吉夫君登壇〕
#27
○日野吉夫君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となっている日ソ関係四案中、主として漁業条約並びに海難救助協定に関する部分について、政府に若干の質問をするものであります。(拍手)
 日ソ交渉が、難航実に一年三カ月、ここに曲りなりにも成立して、日ソ両国間の戦争状態の終了、大使館の相互設置、抑留者即時帰還、漁業条約の発効及び国連加盟の支持の五点についてそれぞれ妥結し、効力発生を見るに至ったことは、八方ふさがりのアメリカ一辺倒外交に新しい北の窓を開いて、局面展開の機会を与えた功績は大きい。わが党は、つとに、この重要性にかんがみて、早期の妥結方針を支持して、しばしば政府を鞭撻してきたところでありますが、何ゆえか、政府、与党一の諸君の中には、この歴史的使命を理解せず、強力なる反対の今もなお存在することは、まことに遺憾とせざるを得ないところであります。(拍手)もちろん、領土問題の未解決、既得権益の喪失、公海漁業の大幅なる制限等、遺憾の点なしとはいたしませんが、それらは、厳然たる敗戦の事実と彼我国力の比較等々の点より勘案いたしまして、一切を国連加盟の後に譲り、早期妥結をすることこそ、国民の待ち望んでやまざるところであったのでございます。サンフランシスコ体制より平和共存への一歩前進こそ、わが外交の今日の急務といわなければならないのでございます。
 かかる意味において、問題は本条約発効の後に残されるのでございますが、私は、主として漁業問題並びに海難救助協定を中心として、疑義の数点をたださんとするものであります。
 まず第一点として伺わなければならないのは領海の問題についてであります。領海の主張が両国で食い違っていることは御承知の通りであります。ソ連は十二海里を主張しております。わが方は三海里を主張しておる。この問題は国際間の懸案として残された問題で、一九五二年の四月四日国際法委員会の報告によれば、三海里説をとるものは日本、アメリカ、英国、フランス、カナダ、豪州、オランダ、中国等の主要な国を含む二十二カ国であり、十二海里説をとるものは、ソ連、ブルガリア、エクアドル、グァテマラ、ルーマニア、ドミニカの六国で、三海里説をとる国が圧倒的に多いのであります。日ソ交渉の未解決問題の一切が今後の継続審議として残る以上、いずれはこの問題の解決は当然なされなければならない問題になって参るのである。北洋漁業の問題はもちろんでありまするし、領土決定の問題、両国国境の設定の問題、海峡航行の問題等、いずれも海洋に関する問題が残るのでありまして、いずれもが最後は領海に突き当るものと考えなければならないのであります。具体的な問題としては、講和発効後第一回の委員会からもうすでに問題が起るのは、北海道周辺の領海に関する問題だといわなければならぬのである。条約の第一条一項においては「(領海を除く。)」とカッコがしてあり、二項では「条約のいかなる規定も、領海の範囲及び漁業管轄権に関する締約国の立場になんらの影響を与えるものとみなしてはならない。」と規定はいたしておりまするけれども、条約海域と領海との関係はきわめて複雑になり、北海道周辺のごときは、農林大臣の許可漁業、北海道知事の許可漁業等が輻湊しておって、この区域が条約区域の中に入り込んで、その調整に困難する等の事態が直ちに発生いたすことが予想されるのであります。北海道議会は、もうすでにこのことに思いをいたし、各方面に陳情書を出して、その解決に動き出しているという事情も起っておるのである。政府は、領海問題に対していかなる基本方針で臨むのであるか、領海問題の解決をどういう手段でやらんとするものであるか、外務大臣より一応この見解を伺っておきたいと思うのであります。(拍手)
 次に、第二点として伺いたいのは、戦前のソ連領内の日本人の権益がいかになるのでございましょうか、及び、もう一つは、日本の領土であった樺太、千島等における日本人の戦前保有している漁業実績は、いかにこれは決定されるのであるかということになるのであります。元来、北洋漁業は日本民族の開発せる漁場と断じてよく、戦前は、明治四十年の日露漁業条約、昭和三年の日ソ漁業条約で、ソ連領域内に日本人の漁業権が認められていた。この長期にわたる実績と、戦前の漁業条約で認められていた権利とが、今後どの程度に認められるのであるか。外相の報告によれば、戦前条約の取扱いはおおむね意見の一致を見たというが、どの程度の了解がついたのか、いまだ明らかに示されたことはないのであります。講和条約発効後委員会で決定されるのであるか、あるいは国連加盟後の問題として残されるのであるか、この点を明らかにしてもらいたいのであります。さらに、戦前日本領土たりし南樺太、千島等の領土における漁業の実績は、どこで話し合いをするのでありましょうか。話し合いの場がどこになるのであるか、領土問題のときに話し合いになるのであるか、漁業問題の交渉の委員会においてこれが話し合いになるのであるか、この問題の解決をいかにするつもりなのか、外務大臣から所信をただしたいのであります。(拍手)すでにこれらの関係漁民は出かせぎの準備を整え、出かせぎ労働組合等に結集されまして、出動の態勢をとっておるのであります。北海道、青森、秋田等には、もう町村単位に労働組合を作り、それが県の連合会となって、今猛運動を進めているというような事情にあり、時至らばいつでも出漁しようという態度をとっているのでありますが、政府は、これらの諸君に対して、年来の希望であるところのこの出漁を満たしてやるような対策と自信があるのであるかを、一応伺っておきたいのであります。(拍手)
 第三点といたしまして、本条約は、公海漁業の自由の観念より、はなはだしくかけ離れた条約であるということであります。この問題を将来いかに取り扱うかについては、私たちは重大なる結果を引き起すであろうと思うのでありますが、これに対する外相の所見を伺っておきたいのであります。国際法上の原則として、公海の自由、いわゆる航行の自由、漁撈の自由の問題はあらためて論を待たないところであり、魚族資源保護の科学的基礎の上に立つ条約が締約国間に有効であることも明白でありますが、近時この自由が一方的に侵されつつある実例はきわめて多いのであります。李承晩ラインの問題、アラフラ海の真珠貝採取の問題、あるいは大陸だな宣言のごとく、全く一方的に公海漁業の自由が無視されているといわなければならないのであります。本条約の一部をなすところの附属書の規定に、この公海自由の制限は、本年三月十三日行われたソ連閣僚会議の一方的宣言がそのまま成文化されたものであり、公海自由の観念とははなはだしき相違であるのであります。しかも、その基礎をなす科学的調査は、まだ両者の意見の一致を見ざる、一方的強制によるものであることは明白であります。従って、本条約による今後の運営に当っては、このことを重大に考えて、公海の自由を守る筋を通すのでない限り、その他の今懸案になっておる李承晩ライン、アラフラ海等の問題の解決にも、これは重大なる影響を持つものといわなければならないのであります。日米加の三国漁業協定があり、本条約があり、李ライン、日中漁業協定等々により、公海自由の制限に縛られているわが国の漁業は、漁場の狭隘から海外漁場への発展を余儀なくされることも、またやむを得ないといわなければならないのでありますが、かくして公海の自由を奪われる現状においては、これらの問題が非常に大きな制約を受けるものと見なければならないのであります。沿岸より沖合いへ、沖合いより遠洋への政府の方針はもはや壁に突き当っておる。区域の制限を受け、魚族の制限を受け、さらに領海の拡大等々の制限に縛られて、もはやわが国の漁業は窒息せんとしている事情にあるのであります。今日の現状から、いかにして公海漁業の自由を守り抜くかが、わが民族の運命を決する問題となって参っておるのであります。日本漁業の危機に対し、外相はいかなる方針を持って公海自由の原則を守り抜かんとするのか、その信念を伺っておきたいのであります。(拍手)
 次に、第四点として、本条約発効後の北洋漁業のあり方と再編成の方針について、特に農林大臣にこの点を伺いたいのであります。
 北洋のサケ・マス漁業は、わが国水産業の中核漁業で、わが国民食糧確保の上からも、わが国輸出貿易の上からも、その占める地位はきわめて高い重要な産業であることは申すまでもないのであります。河野農相は、就任早々、サケの切り身を安く食わせるとみえを切って、七船団を十二船団にふやし、戦後最高の九千万尾という大量の記録を作ったのであるが、遺憾ながら、切り身の値段は少しも下らなかったということになるのであります。(拍手)百四十五万籍のサケのカン詰は、河野農相のあっせんで、英国を中心に欧州諸国に売りさばかれた。この利益は実に莫大なものであったのであります。北洋ブームと称したことは皆さんの御承知の通りでありますが、この結果は本年の北洋漁業へ殺到する結果になって現われ、ついに、船団の系列化と称し、十二船団を十九船団にふやして、独航船を五百隻にふやし、従業員を二万名にふやして、実に偉大なる大陣容を誇ったのであります。このばか騒ぎがソ連、カナダ等の利害関係国を刺激いたしまして、日本の乱獲指摘となってきた経緯は明らかであるのでございます。結果論的に見て、北洋漁業のこの問題が、行き詰まった日ソ国交の回復を早期妥結に導いたといえないこともないのでありますが、しかし、この姿は北洋漁業の正しいあり方ではないと、われわれはいわなければならないのであります。もちろん、本条約発効後は、当然これは規制を受けましょう。しかし、業者の中には、夢よもう一度の要求は依然として強いのであります。政府はこの調整と指導をいかに考えておられるのでございましょうか。本年五月十四日モスクワで調印された河野・イシコフの共同コミュニケには、極東のサケ、マスを含む漁業の最大の持続的生産性を維持するために、それぞれ協力的に措置をとる必要を認めたとしるされてあるのであります。これらの条約を誠実に実行するためにも、北洋漁業の規制と指導が重要性を持ってくるが、船団編成をいかに規制するか、再編成の方針を河野農相に伺っておきたいのであります。
 昨年の十二船団、本年の十九船団の母船は、実質的には日魯を中心とする日水、大洋三社の独占系列であったということであります。(拍手)戦後北洋の漁場を失って一時危機に陥った日魯が、三年間の北洋出漁で日本随一の水産会社にのし上った業績はすばらしいが、問題はここにあるのであって、政治と結ぶ独占企業の弊害を遺憾なく暴露したものといわなければならないのであります。(拍手)独占会社の大福帳的経営が船団争奪に大金をばらまいたうわさや、政治資金の出どころが取りざたされるこの原因がここに存するのであるということを、われわれは知らなければならぬのであります。(拍手)農相の約束不履行に終った切り身の値段の下らないのも、北洋サケのカン詰が高くて内地の勤労者の食卓に上らないという不平が起るのも、要は独占会社の協定による市場操作の結果であるということは、もはや明白な事実といわなければならないのであります。(拍手)農相はモスクワに二度も使いし、感覚の鋭い農相に先方の意図の何であるかがわからないわけはないはずであります。しかも、農相は、条約を誠実に実行する約束をした責任者である。そこで、私は河野農相に尋ねたいのであるが、本条約締結の責任者として明確に一つ御答弁を願いたいのであります。一つは、北洋漁業を三社の独占にまかせず、持続的生産性向上を目ざす再編成を行う意思があるかどうかということ、もう一つは、北洋三社の経理を大福帳経営から企業的経理に改めて、世の中の疑惑を一掃するように努力される意思があるかどうかということであります。(拍手)
 次に伺いたいのは、漁業委員会の人選についてであります。本委員会については、条約三条の各項、西条の各号に規定された広範な権限を有する委員会でございますので、発効後直ちに日本政府は三名の日本側委員を任命することになっているのでありますが、任務の重要性にかんがみ、委員会の構成、人選の方針等を伺っておきたいのであります。すでに新聞の報ずるところによれば、人選がだいぶ進んで、具体的に顧問、随員まで決定しておるように発表されているのでありますが、巷間伝えられるところによると、これに割り込みの猛運動が行われたといわれておる。重大なる本委員会が人選を誤まると、ついに北洋漁業を滅ぼす結果になることを、われわれはおそれるのであります。北洋の漁場を独占三社の利潤追求の場にするのか、勤労者の生活の場として国家経済の役に立てるのか、北洋漁業を民主的に育成して、条約前文にうたわれた持続的生産性の維持に資せんとするのか、かかってこの人選にあるといわなければならないのであります。もし新聞の報ずる人選が進められるとするならば、それは前者の危険に陥る公算が大といわねばなりません。利害関係地域の考慮が払われていない。民主的運営のための配慮も全く払われていないのであります。勤労者の代表の顔も見えなければ、重大なる労務管理のエキスパートも見当らない。ただ一色に独占三社の代表と官僚人事があることに、われわれは大きな危惧を抱かざるを得ないのでございます。(拍手)国民の批判がきびしくなっておる今日、農相はこの人事をそのまま押し切る考えか、また、若干の入れかえ等をやる考えがあるのか、一応の方針を明らかにして、国民の疑惑一掃に努力する考えがあるかを、重ねて伺っておきたいのであります。
 次に、北洋漁業の労務管理について、労働大臣の意見を一つ聞いておきたいのであります。カニ工船で有名な北洋漁業の実態を、一体労働大臣は御承知かどうかということであります。国際問題に隠れて見失われ、日本の労働行政の盲点として北洋漁業があるのであります。この問題がこのままに放置されておりまするならば、条約発効後、ソ連の公務員からおそらく指摘される結果になることは明らかであろうと考えるのであります。労働大臣は、北洋漁業労働者二万人の労務管理をやる意思があるのかどうか。これは労働省本来の任務であり、本職を忘れてスト禁法の延長に夢中になっている間に、漁業委員の任命が終って、労務管理の適任者が一人も入っていないという結果になったなら、私は北洋の問題は非常に重大になると思う。労働大臣は、本条約発効後は、責任を持って北洋漁業の労務管理をやる御意思があるのかどうか。とりあえず、この人選に対し、労務管理のエキスパートをこの委員の中に推薦しておく意思があるかどうかを、一つ伺っておきたいのであります。(拍手)
 最後に、私は海難救助協定について伺いたいのでありますが、本協定の成立は、これは人道上からも当然のことで、喜ぶべきことであり、そのすみやかな実施を望むものであるが、わが国の実情は、世界一の漁獲を誇る漁業国であると同時に、その反面、世界一の事故の多い国であることもまた同様なのであります。近年のわが国の水産業は、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へと重点は移され、船舶が大型化され、中には優秀なる大型漁船の出現を見ておりますけれども、その反面、沿岸漁業は枯渇し、中小漁船は老廃腐朽がはなはだしい。その改造、設備の改善も、経済力の欠除によって、とうてい及ばないのでございます。(拍手)そのために結局無理な操業を継続しつつある実情こそが、今日事故世界一の汚名を着なければならない原因をなすものと見なければならないのであります。政府は、これらの状況にかんがみ、講和発効を機会とし、老朽船の改造、中小漁船の建造資金等の融資によって、本協定が一方的に発動されることのないように、事故防止をするところの用意があるのか、もしあるならば、具体的にこれらの点を示してもらいたいと思うのであります。
 以上の数点をあげて伺ったのでありますが、本条約の持つ意義の重大性にかんがみ、慎重にして責任のある答弁を求めて、私の質問を終る次第であります。(拍手)
  〔国務大臣重光葵君登壇〕
#28
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。
 領海の問題について、主義が分れており、十二海里の領海主義を持っておるものもあれば、三海里の主張をするものもある、わが国は三海里を主張しておる、これは非常に困難なる問題であるという御説は、その通りであります。非常に困難な問題でございます。そうして、これは直ちに公海の自由の問題に直結する問題であり、漁業の自由の問題に直結する問題であるのでございますから、非常にわが国としても利害関係を持っている、非常に重要な問題であります。そこで、各国とも、かかる重要な問題について主張が異なる場合においては、実際の利害関係を調節するのには、国際交渉によってこれを調整するよりほかには方法はございません。国際交渉で、国と国との間の交渉でこれを調節することを試みる必要があるのみならず、国際連合の国際法委員会等で、これは非常に研究しておる問題でございます。そこで、かような機会において、また国家間の交渉において、わが国としてはあくまで三海里の主張を貫くために努力をしておるわけであります。しかし、この問題は、今申す通りに、非常に困難なる問題でありまして、国際間において長い間の討議を経なければ解決はできぬ問題であると考えております。今回の漁業協定においては、この問題に触れずして、公海の魚族保護の問題を協定して参ったのでございます。
 さらに、次に、戦前ソ連領内において日本は特権を持っておった、漁業をしておった、それはどうなっておるかと、こういうことでございますが、戦前に日本の持っておった特権はなくなったのでございます。そこで、ソ連領内において基地を持ち、また漁業に従事しておったその日本の権利は、すでに消滅しておるのでございます。これは今後戦前の条約を検討するという部類のうちには入らないと思っている次第でございます。
 以上、お答え申し上げます。
  〔国務大臣河野一郎君登壇〕
#29
○国務大臣(河野一郎君) 北洋漁業の問題についていろいろお尋ねのありました点についてお答えいたします。
 大へん誤解があるようでございまして、たとえば、この条約が効力を発生いたしました際に、両国から選ばれて出ます委員会の性質等につきましては非常に誤解がおありのようでありまして、これは、申すまでもなく、この漁業条約の目的を達成するために、この海域における魚族の保存もしくは生産の制限というような両国の共同の目的を達成するために、いろいろ会議を開いてやっていこうという委員会でございまして、御指摘にありました労務関係その他については、ここでは取り扱うべき筋合いのものではないと考えております。なお、委員の人選につきましては目下御審議を願っておる際でございますし、これは批准の後にあらためて両国で出すのでございますから、これらの随員がどうだとか委員がどうだとかいうことは話が出ますから、その話し合いのときに、ああいう人はどうだろう、こういう人はどうだろうということは、茶話はしておりますけれども、それがどういうものであるとか、こういうものであるとか、あるいは随員等がどうとかいうようなことは全然未決定でございまして、ただ、委員の性質からいって、外務省、農林省から各一名、民間から一名、委員の数を三名にする、代表委員は三人でやるということになっておりますから、そうすればそういうことがいいのではないかということを茶話でいたしておる程度でありまして、本質的に話をしたり、それが新聞に載ったとか、随員の数がどうとか、どこでやるとかという場所もきめてないのでございます。大体は、ブルガーニン氏と会いました際に、漁業の委員会は、たびたびモスクワに来ておるから、そちらから一ぺん東京に出てきて、東京で開くようなことを、日本側で支障がなかったら、そういうことで同意してもらうとけっこうだがというようなことは申しましたけれども、これもまだ最終決定をしているようなわけではないのでございます。どうかそういう意味で誤解のないように願いたい。こういうものをきめるについて、いろいろ、ああだのこうだのということをおっしゃいましたけれども、そういうことは一切ございません。
 さらに、特に申し上げておきたいことは、資本漁業三社のことについてお話がございましたが、この点は明確にいたしておきます。おおよそ、北洋漁業の問題、これは一般遠洋漁業についてね考えなければならぬことでございますが、そのわれわれの行政施策の目標とするところは、鮭鱒で申しますれば、これが国民各位に安く配給されること、もしくは売り渡されること。これはサケの値段が下らぬじゃないかとおっしゃいましたけれども、お宅へお帰りになって奥さんにお聞きになれば、昨年サケの値段が下ったということは、よくおわかりになると思います。ただ、ここで下らぬじゃないかとおっしゃいましても、国民各位は下ったことを全部承知でございますから、そういうことはおっしゃらぬ方がよろしかろうと思います。(拍手)
 そこで、次に目標といたしますところのものは、この漁業に関係いたしまする北洋の場合には、独航船の立場を十分に考慮するということでございます。せっかく母船とともに参りましても、母船の指導が悪いために、独航船が十分の漁獲を上げることができないとか、せっかくとった魚代が入らぬとかいうようなことになって、この漁業形態が不完全であり、不十分であり、しかも、これが不安であるということは避けなければならぬということから、特に三社を中心として、内容の健全でありません会社を、これらの三社の系列化を私は示唆いたしたことは、その通りであります。ということは、せっかく働いた独航船の各位が十分なる漁獲を上げることができないとか、ないしは、また、とった魚の代金が十分に安全に確保できないとかいうような事態がありますることを避けるために――これらの独航船の漁師の諸君が、せっかく北洋まで出かけて行って働いて、働いたあとの収入が十分でない。これが昨年の場合に非常に優劣のあるような状態でございましたし、今年におきましても、相当に現に優劣があるのでございます。そういうことでございますから、技術、経験等において十分に指導のできるこれら三社を中心にして系列的にやった方がよかろうという観点から指導いたしておるのでございまして、何も、この三社にもうけさせようとか、三社を中心にどうしようとかいうことのないことは、この業について少しく御勉強いただければ、よくおわかりになることと考えております。
 その他の点につきましては今後どうするか。これは、この条約発効後におきまして、双方の間において漁獲量の打ち合せをいたします。たとえば、豊漁の年には最低限十万トン、不漁を目標とされる年におきましては最低限八万トン、それを、ソ連側が陸上において漁獲いたしますものと見合った上で、両国一致してきめていくことに、相談していくことにしようじゃないかということを話し合っておりますが、かかってこれら漁業委員会の諸君が自己のために主張するのではないのでございまして、日本の立場、ソ連の立場について決定したその決定に基いて政府が指導してやって参るということでございますから、その決定に基いて、これら業界において、適当に、御心配のようなことなしにやっていけるものと、私は確信しておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#30
○国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします。ただいま農林大臣が申し上げました通りでありまして、私の方には関係ございません。
#31
○副議長(杉山元治郎君) 志賀義雄君。
  〔志賀義雄君登壇〕
#32
○志賀義雄君 小会派に割り当てられた時間は十五分ですかも、ごく簡単に要点だけを質問いたします。
 第一点、この臨時国会では、日ソ国交回復の案件の審議と、緊急を要する農村の冷害、水害の救済、公務員の年末手当の要求の承認、健康保険赤字補てん、その他中小企業の救済に集中し、ストライキ規制法の上程はこれを取りやめることを、あらためて総理から明言されたいということなんです。その理由は次の通りです。
 日ソ交渉については、日本の国内でもざまざまな構想が今まで出されましたが、長い交渉を経て、結局落ちついたところはどうですか。総理は、水谷君の質問に対する答弁で、最善のものと信ずると言い、また、水谷君は、この成功の大半は社会党の功労であると言われました。しかし、そうなったのも、これは、国民がやっぱり一番これを要求しておったから、そこに落ちついたのでありまして、私どももまた、この線で今日まで主張して参ったのであります。これは、とにかく、今日の世界並びに日本の情勢、それからまた、特に相手が社会主義国であるという事実から当然生まれた妥結点です。
 これまで二回の世界戦争の経験によりますと、双方が帝国主義国である場合には、敗戦国は必ず占領され、従属国に落されております。現に、日本と西ドイツがそれで、苛酷な占領状態に置かれておるのであります。(「ハンガリーはどうした」と呼ぶ者あり)ハンガリーはそのうち触れます。それに比べるならば、日ソ共同宣言案、及び、それと同時に調印された条約、協定、議定書は、平等互恵、平和共存の原則に基いておるのであります。アメリカは、つい最近も、中華人民共和国という世界の大国の国連加入に反対しましたが、ソビエト同盟は、先ほど鳩山首相も言われた通り、これは顔つきでなく明言されたそうでありますが、日本の加盟を支持するということであります。しかし、今度の国連総会は、日本の国会の日ソ共同宣言案の審議がおくれるのを、いつまでも待っておるわけではありません。また、せっかく戦争犯罪人といわれて残されておる日本人をこの冬の前に先方が返すと言っておるとき、スト規制法を持ち出して、国会の審議を紛糾させ、おくらせるのは、日ソ国交回復を悲願として所信を表明された総理としてあまりに拙劣ではなかろうか、また、国会の審議権を無視し、国民の民主主義的権利を踏みにじることにもなるのであります。
 報道機関の伝えるところによりますと、こんな不手ぎわになるのも、与党の内部が総裁の跡目の問題で分裂しておるからということです。また、与党のある人は、その内部に七師団、三連隊があると言ったそうであります。(笑声、拍手)イギリスのエコノミストは、日本の今の与党は、ヒドラ、日本でいえばやまたのおろちであると批評もていました。跡目は与党の内部問題ですが、日ソ国交回復は、日本の国家の独立と繁栄、世界の平和にかかわる大問題であります。世論の反対するスト規制法を無理に通そうとして、この旧ソ国交回復という大きい道理を引っ込めさせないこと、これが今日の国民の要求であります。この要求に従うことを、もう一度総理は明言していただきたい。というのは、先ほど総理が早く批准して下さいと水谷君に答弁されましたが、与党の内部に反対する者がありましても、社会党も小会派も進んでこの批准をやるのでありますから、それには、早くスト規制法を取り下げて批准を進められることが、鳩山総理の任務であろうと思うのであります。(拍手)
 次に、日ソ国交回復が平等互恵、平和共存の原則を実現するからには、それは、当然、日本が今アメリカとの関係で置かれておる、不平等の、そうして軍隊と基地とを押しつけられておる状態を改める国民運動が日本では必ず高まります。これは、中華人民共和国その他の人民民主主義諸国との国交回復という問題とともに、今後日本国民の二つの大きい対外運動となることは必定であります。総理は、日米安全保障条約、行政協定の廃棄をアメリカ政府と交渉する意思があるかどうか、この点を第二に伺います。
 第三に、総理は、最近の日本経済の好調を政府の計画がよかったからと大いに自画自賛しておられましたが、これを伺いまして、さてさていい御身分でと、実は聞いていて冷汗が流れました。というのは、厚生白書は一千万人の最低生活以下の人々があるといっておるではありませんか。労働者の大部分が残業と労働強化でやっと生活しているではありませんか。総理はこの事実をまるで知られないのであろうか。また、目を日の当るところだけに向けておられるのではなかろうか。さらに、ことしから明年にかけては、日本の設備投資が進んで、生産額は大きく増加する予定であります。内閣、与党並びに財界の大どころは、とかく東南アジアだけにその主たる取引先を求められておるが、諸国の競争の激しいここだけで、とてもそれが解決されるものではありません。明年から始まるソビエト同盟の五カ年計画はシベリア、極東に主力を注ぎ、中国の五カ年計画も、それと関連して目ざましいものです。このような両国との関係で、地理的に、歴史的にいって、日本ほど有利な工業国はほかにないのであります。ところが、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアその他ヨーロッパの資本主義諸国はどしどしこの両大市場との取引を拡大しているのに、日本だけがココムとチンコムの制限の中で、自分の手足をわざわざ縛り続けている状態であります。これは一体だれに対する心中立てでありますか。その相手は、日本の輸出商品に勝手な制限を加え、余った農産物を日本に押しつけて、農民を不安に陥れているではありませんか。総理は、自画自賛もほどほどにされて、もう少し活眼を開いて、せめて演説には、この制限を取り除くことをなぜ言われなかったのでしょうか。モスクワでは、シェピーロフ外相が十億ルーブルの貿易を大いにやろうと言ったのに、こちらから通商航海議定書にわざわざココムの制限条項を入れ、貿易を積極的にやろうとする態度をとらなかったことの釈明と、あわせて、この制限を取り除くつもりがあるかどうか、御答弁を願います。
 第四に、重光外相は、エジプト並びにハンガリーの民族に大いに同情すると言われました。この二つの問題を、同じ列に置き、同じ質のものと考えるところに、実は問題があるのであります。サンフランシスコ平和条約の第三条、つまり、沖繩の基地問題にほおかむりをして、砂川基地問題などを引き起した日米安全保障条約の不平等性に目をつぶり、これは外相の言う「体制はこれを変更せずとの方針を堅持し、」という事態に合わない認識不足が根本にあるからであります。ハンガリーの革命労農政府は、ソビエト同盟と必ず正しい社会主義的協力体制を作り出し、ハンガリーにファシスト体制を復活させようとした国際的山賊どもをくやしがらせるでありましょう。(「冗談言っちゃいけない」と呼び、その他発言する者多し)そして、エジプトの問題では、独立を求めるアラブ諸国は必ずその勝利をかちとるでしょう。
 諸君はしきりにやじを飛ばされますけれども、他人の目のちりは気にしても、自分の目の中にあるうつばりには気がつかないとのたとえもあります。砂川問題はどうです。日本の警官が、話し合いの解決を主張した日本国民に対し、一方的に暴行を加えたではありませんか。これは、鳩山総理がモスクワに出かけた留守に、重光外相が首相代理をやっておられたときのできごとであります。日米安全保障条約、行政協定に基いてこの事件が起ったからには、首相代理として、あなたの責任は重大です。そのことに一言半句も触れられないのはどういうことですか。政府は、砂川を初め五つの基地拡張は、この条約、協定に従い、どうしてもやらなければならないものと国民に思い込ませることに焦っておられるようでありますが、それはごまかしというものです。基地拡張については、日米合同委員会で、双方が協議してまとめることになっております。さらに、行政協定第二条第二項によりましても、一たんきめた基地でも日本政府の要求で再検討することができることになっています。現に、昨年三月までは、日米合同委員会で、一年余にわたってこの基地拡張についてのアメリカのたび重なる要求を引き延ばしてきたこともあります。しかるに、船田長官は、砂川問題は約束に基いて行政措置を行なったにすぎないものだと言われますけれども、これでは行政協定でさえ認めている権利をみずから放棄することになります。(拍手)現に原子力研究所の置かれる東海村付近にあるアメリカ基地の返還を日本政府は要求しておるではありませんか。なぜ、これと同じように、砂川基地の返還を要求できませんか。(拍手)これを見ても、政府がみずから進んで同意しなければ、実際に基地の拡張をはばむこともできるのです。これさえやらないのはどういう理由でしょうか。まして、今日では、日ソの平和的な国交が開け、新しい事態になっているではありませんか。この点を重光外相にはっきりとお伺いしたいと思います。
 さらに、モスクワでの共同宣言案から原水爆禁止条項を日本側の提案で省いたが、砂川基地問題を解決するために、また、三度も原水爆の被害を受けた日本としては、むしろ率先してその禁止の取りきめをすみやかに国際的に提案すべきであります。日ソ共同宣言で先方の提案を断ったからには、この用意があるかどうか、これを伺わせていただきます。
 私の短かい質問を終る最後に、ぜひとも総理に一つの決意を促したいことがございます。総理は言われました。戦争を終えて十一年間も継続した日ソ両国間の戦争状態はここに終結せんとしています、これによって戦犯として抑留されてきた人々も晴れて祖国に帰れることになりました、こう言われました。(「その通り」)その通りでしょう。そこで、国内のことを忘れないでほしいものです。日ソの国交が回復すれば治安取締りを強化しなければならないと言う人があるが、それは、時勢を知らない、三十年前の治安維持法時代の感覚に基く考え方であります。それよりも、アメリカの占領のもとで、政治的にいろいろな罪名を着せられ、あるいは権利を奪われた人々の数は、決して少くないのであります。これらの人々は、直接占領軍の命令や占領法規、これと関連した法規で罪に落され、権利を奪われた人々であります。これには、国民の物を見抜く正しい目からしても、全く不法不当と思われる罪名で極刑を受ける人々も含まれています。総理は、その演説を結ぶに当って、「私の政治的生涯において、最も感慨深きこのときに当り」と、日ソ交渉成立の所感を述べておられる一また穂積君の質問に対して、反動政治をやるつもりはないとも言われました。それならば、この際、錦上さらに花を添えるという言葉もある通り、戦犯も晴れて帰国できる今日、右の人々に対し、恩赦、起訴取り下げ、あるいは、その受けた損害の補償、職場を追われた者にはその職場に復帰する措置を講ずる必要があると思います。特に、総理は、長い間の追放生活がいかに苦しいものであるかは、みずからつぶさに御存じのはずであります。それゆえにこそ、私は、総理がこの人権に関する重大な問題について決意をされるかどうか、特にはっきり言明していただくことをあえて促しまして、私の演説とする次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
#33
○国務大臣(鳩山一郎君) 志賀君にお答えをいたします。
 労働問題審議の妨げとなるスト規制法の上程をとりやめる意思はないか。上程をとりやめる意思はございません。
 日ソ国交回復は、実質的に十分わが国の立場を貫徹するように努力をしたつもりでございます。
 国連加入は今期中に実現を見ることと考えております。
 安全保障条約、行政協定等の不平等条約を廃棄するためアメリカと交渉する決意があるかという御質問でございましたが、さしあたり、それらの改廃は考えておりません。
 ココムの制限を取り除く努力をしてはいかんという御質問であります。国民の要望に沿うよう統制を緩和すべきものと、かねてからその実現をはかるべく努力を続けております。
 砂川問題については、以前の質問に答えたところによって御了解を願いたいと思います。
 以上、答弁を終ります。(拍手)
  〔国務大臣重光葵君登壇〕
#34
○国務大臣(重光葵君) お答えします。
 今、志賀君のお話によりますと、私が、エジプト、アラビア人やハンガリー民族運動に一緒に同情したということは認識不足だ、認識が間違っておるということを言われました。私は、なるほど、今志賀君のお話とは非常に認識が違います。私は、ハンガリーの民族主義に同情を表するということは、日本人として当然そう考うべきことだと考えております。
 それから、砂川問題に対する責任を問われましたが、砂川問題については、私は、法と秩序を守るために政府の責任を果したつもりでございます。(拍手)
#35
○副議長(杉山元治郎君) これにて国務大臣の演説及び趣旨説明に対する質疑は終了いたしました。
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#36
○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時四十六分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鳩山 一郎君
        法 務 大 臣 牧野 良三君
        外 務 大 臣 重光  葵君
        大 蔵 大 臣 一萬田尚登君
        文 部 大 臣 清瀬 一郎君
        厚 生 大 臣 小林 英三君
        農 林 大 臣 河野 一郎君
        通商産業大臣  石橋 湛山君
        運 輸 大 臣 吉野 信次君
        郵 政 大 臣 村上  勇君
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
        建 設 大 臣 馬場 元治君
        国 務 大 臣 大麻 唯男君
        国 務 大 臣 太田 正孝君
        国 務 大 臣 正力松太郎君
        国 務 大 臣 高碕達之助君
        国 務 大 臣 船田  中君
 出席政府委員
        内閣官房長官  根本龍太郎君
        法制局長官   林  修三君
        警察庁長官   石井 榮三君
        外務参事官   法眼 晋作君
        外務省条約局長 下田 武三君
        大蔵省主計局長 森永貞一郎君
        水産庁長官   岡井 正男君
        海上保安庁長官 島居辰次郎君
        労働省労政局長 中西  實君
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ソース: 国立国会図書館
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