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1956/11/26 第25回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第025回国会 本会議 第6号
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1956/11/26 第25回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第025回国会 本会議 第6号

#1
第025回国会 本会議 第6号
昭和三十一年十一月二十六日(月曜日)
    ━━━━━━━━━━━━━
  昭和三十一年十一月二十六日
    午後一時 本会議
    ━━━━━━━━━━━━━
●本日の会議に付した案件
 労働大臣倉石忠雄君不信任決議案
  (淺沼稻次郎君外四名提出)
 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法
 の規制に関する法律附則第二項の規定により、
 同法を存続させるについて、国会の議決を求め
 るの件
   午後六時三十六分開議
#2
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(益谷秀次君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。
 第百六十四番、福岡県第一区選出議員、中島茂喜君。
  〔中島茂喜君起立〕
  〔拍手〕
 第四百四十八番、福岡県第一区選出議員、簡牛凡夫君。
  〔簡牛凡夫君起立〕
  〔拍手〕
     ――――◇―――――
 労働大臣倉石忠雄君不信任決議案
  (浅沼稲次郎君外四名提出)
     (委員会審査省略要求案件)
#4
○長谷川四郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、浅沼稲次郎君外四名提出、労働大臣倉石忠雄君不信任決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#5
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 労働大臣倉石忠雄君不信任決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。赤松勇君。
  労働大臣倉石忠雄君不信任決議案
   労働大臣倉石忠雄君不信任決議
 本院は、労働大臣倉石忠雄君を信任せず。
 右決議する
    ―――――――――――――
  〔赤松勇君登壇〕
#7
○赤松勇君 ただいま議題になりました倉石労働大臣不信任決議案の趣旨弁明を行いたいと思います。
 まず、最初に主文を朗読いたします。
 本院は、労働大臣倉石忠雄君を信任せず。
 右決議する。
  〔拍手〕
 今日政府が労働行政として特に全努力を傾注しなければならないのは、第一に、労働者の基本的人権を守るという問題であります。第二には、生産力を増強し、経済の規模と構造とを拡大して雇用の増大をはかり、失業を絶滅するという問題であります。第三には、勤労者の生活水準を高めつつ、国民全体の生活水準を相関的に高めていくという三点に要約されると思うのでございます。(拍手)
 第一点の問題につきましては後ほど申し上げます。
 まず第二の問題でありまするが、完全雇用という目標達成のためには、政府の五カ年計画の基礎を再軍備経済から平和経済へ転換し、全資本と全労働力を、鉱工業、建設業、農林水産業等を中核として、集中的に、かつ計画的に動員することが必要であるのであります。また、対共産圏貿易の制限を排除し、対ドル圏貿易の奇形を正常化し、市場の拡大をはかることが講ぜられなければなりません。
 昭和二十九年第一次鳩山内閣成立以来、当時五十九万人といわれました完全失業者は五十七万人に減少したと、労働省は発表しております。ところが、この統計は明らかに失業者をば隠蔽する欺瞞的な統計であるのでございます。(拍手)すなわち、この統計は、一カ月の最後の一週間、一時間も働かなかった者だけをあげておるのでございまして、一時間でも働いておれば、この統計には入っていないのであります。従って、かかる統計は、これは失業者の現存するその数を隠蔽する欺瞞的な統計以外の何ものでもないということを明らかにしておきたいと思うのでございます。このようにして、労働省は、失業者の現存する状態については欺瞞的な統計を示している。しかも、一方において、今日どれくらいの失業者があるか。総理府の統計によりますと、依然、不完全失業者は一千万人、ボーダー・ラインの低所得階層が一千万人、要生活保護者が三百万人、計二千三百万人の準失業者が存在していることを、政府みずからの統計が明らかにしておるのであります。
 これに対する政府の社会保障政策というものは一体何だ。何もなすところがないじゃないか。ただ、しいてあるといたしますならば、お年玉つき年賀郵便くらいであるのでございます。(拍手)つまり、お年玉的社会保障政策以外にはないといわなければなりません。しかも、これら二千三百万人、及び、今日なお労働省が隠蔽しております完全失業者のほかに、鉱業部門におきましては驚くべき雇用の減少を示しておるのであります。すなわち、労働省の常用雇用指数によりますならば、第一次鳩山内閣成立当時一一一・四のものが、昭和三十一年一月現在において一〇九・七に落ち、しかも、重要なことは、雇用指数は卸小売業あるいは金融保険業等の非生産部門においてはやや伸びておるのでございますけれども、鉱業部門におきましては、鳩山内閣成立当時の一〇二・三のものが、昭和三十一年八月には七四・九に落ちているのであります。これら潜在失業者の増大と重要産業の雇用の減退という事実は、鳩山内閣が鳴りもの入りで宣伝した完全雇用、失業対策の失敗を端的に表明している以外の何ものでもないのであります。(拍手)これら、選挙において国民へ公約いたし、また、その公約が果し得なかったという責任はきわめて重大であると思うのでございます。このことはもちろん鳩山内閣全体の責任でありまするが、労働行政を担当しておられまする倉石労働大臣に特に大きな責任があるということを、われわれは指摘しなければなりません。(拍手)私どもが倉石労働大臣を不信任いたしまする第一点の理由はここにあるのであります。
 つけ加えておきますが、倉石労働大臣が絶えず目のかたきのように憎んでおられまする鉱工業部門の労働者の労働生産性はどうなっているか。これらの労働者諸君は、労働条件の劣悪化あるいは低賃金にもかかわらず、昭和二十九年鳩山内閣成立当時、その指数が一三五・一でございましたが、三十一年八月には、驚くべし、一七二・七にまで高まっておるのでございます。国民経済に忠実に奉仕し、わが国労働者の勤勉性をわが国労働者が遺憾なく発揮しておる事実を、断じて忘れてはならぬと思うのでございます。(拍手)われわれは、全勤労大衆とともに、ここに誇りをもって国民各位にこの事実を広く明らかにしておきたいと思うのでございます。
 次に、労働大臣は給与担当の大臣でありますが、失礼ながら、労働大臣は、現在の公務員の生活内容を御承知でありましょうか。人事院は、去る七月十六日、国会及び内閣に対しまして、給与改訂の勧告をいたしました。その際、本年の一月、公務員月額平均給与は一万七千円であると人事院は報告しております。今かりに公務員の平均給与を六千円引き上げて二万三千円の給与になったといたしましても、税引き手取りはわずか一万八千円であります。この公務員の生活のエンゲル係数は一四八%であります。エンゲル係数が四八%になっていて国民生活の安定と言えましょうか。これは明らかに貧困者に属するのであります。この貧困者の階層は全勤労者の七〇財を占めております。いわんや、一万七千円ベースで生活している公務員の生活を、一体倉石労働大臣はどう考えておられるのか。人事院は、官民の給与のアンバランスは一一%あるということを指摘いたしまして、この給与改訂を国会及び内閣に対して勧告しておるにもかかわらず、何らの努力を払わない労働大臣は、明らかに給与担当の大臣として不適任であり、当然不信任さるべきであると思うのであります。これが不信任の第二の理由であります。
 次に、政府は、国民所得は六兆七千九百四十八億円に伸びたと、得々と言っている。それならば、国民一人当りの所得は七万六千円になる。ところが、この所得は一体どこに雲隠れをしておるかと言いたくなるのであります。これは明らかに独占資本のふところに入っておる。政府のいう経済の安定とは独占資本の安定であり、政府のいう国民生活の安定とは大所得階層の安定であります。わが国には千五百五十万人の賃金労働者がおる。一千四百万人の家族労働者がおる。一千万人の零細独立企業者が存在しておるのであります。この四千万人の勤労者の生活水準が高まらなければ、国民全体の生活水準は高まらないのであります。それには、生産力を上げることによって賃金を上げていくという方法よりないのであります。これは国民所得自体を大きくしていくから無限であります。生産力を上げて賃金を上げていくというなら、幾らでもこれはできるのであります。国民所得が三倍になれば、賃金も三倍になる。これには何らの限界はないのであります。インフレのように一時的ごまかしでも表面的結果でもなく、最も合理的な経済の原理であり、これ以外に賃金政策はないのであります。それには、資本と生産手段の所有関係に一定の変革を加え、国民経済が拡大再生産のレールの上に乗って循環するに必要な社会的規制を加えなければならぬのであります。しかるに、鳩山内閣は、外国依存の再軍備政策と独占資本の利潤に奉仕し、産業発展策を誤まり、一千五百万人の労働者には最低賃金法を与えようとはしない。一千四百万人の家族労働者には家内労働法を制定しようとはしない。一千万人の零細独立企業者に対しまして中小企業対策を講ずることを怠ってきた。その責任はきわめて重大といわなければなりません。(拍手)われわれが倉石労働大臣を不信任する第三の理由はここにあるのであります。
 次に、ストライキ規制法について倉石労働大臣の責任を追及したいと思います。本法は、第十五及び十六国会に提出されました際、戸塚及び小坂労働大臣は、いずれも、提案の理由に、本法は新たに争議権を制約するものではなく、社会通念上不当であるという範囲を明確にしたものにすぎない、従って本法はどこまでも創設的立法ではなく、単なる宣言的、確認的かつ解釈的立法にすぎない、政府のいう社会通念とは裁判所の判例である、この判例において本来不当であると考えられているものが正当であるとの判例のあった場合はもちろん考え直す必要がある、こう説明しておるのであります。しかるに、倉石労働大臣は、この宣言的、確認的、解釈的立法を創設的立法にすりかえ、従来正当とされていた争議行為をも、これを不当として禁止するように拡張解釈をして法の精神をじゅうりんしておるのであります。この重大な政治的責任は、断じてわれわれは黙過し得ないのであります。(拍手)
 さらに重大な点は、本法は元来時限立法であるにもかかわらず、これを恒久立法にすりかえて提出しておるのであります。そもそも、本法がわが衆議院において臨時立法に修正された理由は、本法成立当時の議事録を見ても明らかであります。すなわち、昭和二十八年七月十一日、労働委員会におきまして、当時自由党分党を代表して山村委員−私は、わが党より提出をいたしました修正案は、附則二項中三年とございますのを一年に改めるというのであります。その理由は、本法はあくまでも暫定立法でありまして、かつ、労働者側のみを規制する一方的な法律案である感がございます。従いまして、早急に健全なる労働立法の樹立されることが望ましいのでございますが、とりあえず、第二項中の三年を一年に改めることを提案するものであります。次に、自由党を代表されまして、持永委員から、政府は、かりに本法律案が成立いたしたとしても、どうか安易に流れることなく、よろしく争議の根本的原因を探究されまして、その調整に努められるとともに、一方適切なる方途を講ぜられまして、労使の現在のような敵対感情を緩和され、労使相協力してわが国産業の振興と国家再建に邁進するよう努力していただきたいと思います。もしこれに伴う態勢ができまするならば、本法のごときは無用の長物となりましょう。かかる法令を必要としない労使関係こそ、われわれの最も望むところでありまして、本法律案には三年の期限がついておりまするが、いわゆる法は法なきを期するのであります。どうか、三年を待たずとも、一日も早く本法の必要のない日の来たらんことを待望してやみません。また、改進党を代表されまして高橋禎治委員からも、同様な立場から修正案を提出され、議決をされておるのであります。
 かくのごとく、政府の恒久立法への願望は、衆参両院によって三年間の時限立法に修正されているのであります。あるいは、政府は、本法附則第二項に基く規定から提出を義務づけられているから提出したのであると言うでありましょうが、それならば、国会が修正をした意思を尊重して時限立法として提出する方法を何ゆえとらなかったかといわざるを得ないのであります。(拍手)この点においても、倉石労働大臣は国会の意思をじゅうりんし、その責任は党派を越えて糾弾されなければならないのであります。これが、われわれが労働大臣を不信任する第四点の理由であるのであります。(拍手)
 次に、本法存続の緊急性について、労働大臣は委員会において明らかにしていない。労働大臣は、本法存続の緊急性について、きわめて貧弱な根拠を持ち出しておるのであります。すなわち、社会労働委員会におけるわが党各委員の質問に対しまして、その緊急性をこう説明しております。それは、労働組合の中には、なお、ストライキを激発させ、社会不安を助長し、革命的方向を目ざす組合がありまするから、従って本法の存続が必要である、こう説明されておるのであります。私は、ここで、倉石労働大臣のその御認識に対しまして、重大な誤まりのあることを指摘しておきたいと思うのであります。
 一体、革命的方向を目ざす組合とは何のことであるか。革命的方向を目ざす組合とは何のことであるか。そうして、そのような組合がどこに存在しておるか。そういう点はいささかも明らかにされていないのであります。あるいは労働大臣は総評とおっしゃるかもわからない。(「その通り」)今日、総評は、革命的な方向を目ざすような、そういう社会党にかわるような運動方針や綱領をかつて持ったことは、ただの一回もございません。(発言する者あり)そういうような政治活動や、あるいは、そういうような革命的な方向というものは、これは政党の任務でありまして、日本社会党がその全責任において達成しなければならぬところの歴史的任務であるのでございます。(拍手)
 言うまでもなく、労働組合は、憲法二十八条によって、みずからの労働条件の維持改善と、さらに労働者階級全体の生活を高めるための組織でございまして、自由民主党内において労働問題について権威のある、その知識を持っておるといわれておりまする倉石労働大臣が、かくのごとき誤まった認識を持っておられるということは、はなはだ私ども驚かざるを得ないのでありましてどうぞ、労働大臣は、こういう点についてもっともっとしっかり御勉強をお願いしたいと思うのであります。本年春闘に際して、総評を暴徒の団体のごとく宣伝し、挑戦し、総評を極度に刺激したあの無能、無策の反動ぶりだけでも、近代的労働行政の担当者としては断じて不適格者であるといわなければなりません。(拍手)
 去る十一月二十四日、衆議院の社会労働委員会において、日本炭鉱労働組合委員長原参考人はこう言いました。経営者が経営の実態をガラス張りにして利潤の分配について誠意をもってやるならば、今日、労働組合の指導者がいかに旗を振ってストライキをやれと言っても、大衆はついてこないるその反対の場合においてのみストライキが起きるのであるということを指摘しているのであります。(拍手)この言葉は、全勤労大衆の気持を集中的に代表しておることを銘記してほしいと思います。
 これを要するに、倉石労働大臣は、鳩山政府のいう占領政策是正に名をかり、憲法第二十八条の労働者の団結権及び団体行動権をなしくずし的に骨抜きにし、わが国民主化に逆行する反動的政策に終始し、労働法理論の体系を混乱に陥れ、違憲的暴挙に出たことは、断じて許すべからざる犯罪的行為といわなければなりません。(拍手)
 次に、去る十一月十二日、政府は、衆議院議長に対し、ストライキ規制法存続の議決について委員会審査省略の異例なる措置を要求して参りました。倉石労働大臣は、これに対しまして、委員会においてこう答弁しておる。これは単なる議決案件であるから当然だ、こういうふうにうそぶいておるのであります。これは、先に申し上げましたように、宣言的、訓示的法律が創設的なものとなっておる。さらに、臨時立法が恒久立法に変質しておるのであるから、単なる議決案件として取り扱うべき性質のものでは断じてないのであります。さらに重大なことは、このため衆議院における日ソ共同宣言等重要案件の審議を五日間も停滞させ、国会の運営を混乱に導いたことである。その責任はきわめて重大であるといわなければなりません。(拍手)幸い、社会党、自民党、議長、議院運営委員各位の良識によって、こうした無謀ともいうべき要求が撤回せられましたことは、国民とともにまことに欣快にたえないところであります。(拍手)
 去る十一月二十一日、衆議院社会労働委員会において、鳩山総理大臣は、私の質問に対しまして率直に遺憾の意を表され、われわれも総理の謙虚な態度に心から敬意を表したのであります。しかるに、倉石労働大臣は、言を左右に責任を回避し、いささかも反省の色なく、てんとして恥じざるの態度をとっておられるのは、まさに非立憲的態度といわなければなりません。ストライキ規制法よりも労働大臣規制法を必要とすることは、おそらく諸君も御同感でございましょう。(拍手)
 私は、この際、倉石労働大臣不信任の最大の理由の一つといたしまして、倉石労働大臣は、保守党内閣であっても、保守党内閣の立場から労働行政ができると思います。しかるに、労働省設置法第三条に規定されておりまするところの労働省の任務達成を怠っておる。そうして、反動政策に終始しておる。この際、労働省設置法第三条をいま一度倉石労働大臣に申し上げましょう。
  労働省は、労働者の福祉と職業の確保とを図り、もって経済の興隆と国民生活の安定とに寄与するために、左に掲げる国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う行政を機関とする。
 一 労働組合に関する事務、労働関係の調整及び労働に関する啓もう宣伝
 二 労働条件の向上及び労働者の保護
 三 婦人の地位の向上その他婦人問題の調査及び連絡調整
 四 職業の紹介、指導、補導その他労務需給の調整
 五 失業対策
 六 労働統計調査
 七 前各号に掲げるものを除く外、労働者の福祉の増進及び職業の確保
 八 労働者災害補償保険事業
 九 失業保険事業
 以上が労働省設置法の第三条に掲げられておるところの労働省の任務であります。一体、労働大臣は、これらの任務をどのように達成してきたのか。見るべき労働行政が一つでもあるか。おそらく、この点については、自由民主党の諸君といえども同感であると私は思うのであります。(「ノーノー」、拍手)
 しかも、一方においては、労働行政については無為無策無能、他方においては、反動的な労働政策に終始する、かくのごとき労働大臣の存在は有害でございまするから、われわれは不信任をしたいのでございます。これは明らかに倉石労働大臣の明治憲法への郷愁であり、彼の胸中には、それが労働組合の産報化をねらっておる。あるいは、公益−優先の思想にかられて、いろいろな占領行政を解いていくのだというその考え方の底には、かつて戦争中の産業報国会があり、憲法二十八条によって保障されておるところの労働組合、その組織の実体を骨抜きにせんとする、その野望がひそんでおるということを指摘せざるを得ません。(拍手)大阪商工会議所におきまして労働大臣は、このような観点から、労働三法の改悪の演説をなさっておられる。
 われわれは、今日、情において、はなはだ忍びないけれども、日本経済発展のために、労使間のよき慣行を形成成熟さすためにも、倉石労働大臣不信任案を満場一致可決せられんことを切望いたしまして提案の説明にかえます。(拍手)
#8
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。草野一郎平君。
  〔草野一郎平君登壇〕
#9
○草野一郎平君 私は、ただいま議題となっておりまする倉石労働大臣不信任の決議案に対し、自由民主党を代表して、絶対反対の意見を表明するものでございます。(拍手)
 本不信任決議案は、第一、議案の取扱い態度が純粋性を欠くということ、社会党の諸君は、議会戦術の一種として前国会以来、不信任を乱用し始めたのでありますが、その弊風が今国会にも現われてきたということであります。第二に、不信任の内容が、従って全然空疎だということであります。(拍手)
 さきの第二十四国会におきましては、野党たる社会党の諸君は、あるいは小選挙区法案、あるいは教育二法案、さらに、あるいは健康保険法案等に反対の立場より、これを否決し、もしくは審議未了に終らしめんとして、各大臣、委員長の不信任案を初めとして動議戦術、牛歩戦術まで展開するに至ったのであります。(拍手)その結果は、言論の府を暴力によって踏みにじり、国民大衆より徹底的指弾を受けたばかりでなく、やがて司法権の発動とさえなって、ある者は公務執行妨害容疑者として検察庁に送られ、(拍手)ある者は傷害罪の容疑者として起訴されるに至ったのであります。この忌むべき一連の議会戦術の中の一種に大臣の不信任案が連発されたのであります。そうした好ましからざる戦術は、国民大衆の非難の中に、前国会限りにおいて影をひそめたことと信じておりましたが、またもや今国会にもその轍を踏み始めたのであります。私が本不信任案の取扱い態度が純粋性を欠くと言うことは、倉石労働大臣の不信任そのことよりも、続いて審議日程に上されるいわゆるスト規制法存続案の前哨戦的意味において取り扱われておるからであります。(拍手)かくして、大臣の不信任案が戦術として議事の引き延ばしなどに用いられる結果は、いたずらにかけ声のみ大にして実感を伴わず、(「その通り」と呼び、その他発言する者あり)議事を戦術の中にほんろうして、国会の権威と真剣味を喪失せしめ、ひいては民主主義そのものをさえもてあそぶの結果となるのであります。(拍手)
 本不信任案提案者は、いわゆるスト規制法存続案の提案に当り、政府が委員会の審査省略を要求したことをもって、国会の審議ルールを無視した議会軽視であり、反民主主義などと論難しておるのでありますが、政府には政府としてそれぞれ委員会の審議省略を要求する根拠があったわけであります。(「何を言うか」と呼び、その他発言する者あり)しかし、その後、与党と野党の話し合いによって、審議日程にも約束ができ、社会労働委員会の審査に付し、国会の意思に従って虚心たんかいに要求を取り下げたことは、国会尊重の誠意として率直に認めねばならぬと思うのであります。(拍手)もし、政府が、当初の要求通り、がんとして委員会の審議省略を主張しながら今日に及んだとすれば、そこに論拠の対立もありますが、政府の意見が話し合いにより与野党の意見と合流した以上、その態度こそ民主的であって、賞賛こそすれ、ごうまつも非難すべきものはないはずであります。(拍手)
 しこうして、倉石労働大臣の所管にかかる、いわゆるスト規制法であります。この法律の存続可否の審議に当り^社会党その他野党の諸君は、いちずに憲法第二十八条の労働基本権を強調して、憲法によって保障されたるストライキ権を剥奪するものであり、労働の基本的権利を著しく侵害する法律の存続であると論じておるのでありますが、この法律は、私は、常にいわゆるスト規制法と、いわゆるという四つの音を冠して呼んでおるごとく、スト規制という俗称から受ける誤解が多分に存すると思うのであります。この法律は、もともと、憲法第二十八条の労働基本権を尊重するがゆえに、ストライキの危険区域への暴走を阻止しようといたしておるものであります。(拍手)すなわち、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の一部の規制であって、電気を消して世の中をまっ暗にし、産業を破壊し、経済を麻痺せしめ、国民生活を困窮に陥れ、ひいて故意に社会不安を醸成せしめてはならないし、炭鉱を爆発せしめ、国家資源を壊滅し、炭鉱労働者のみずからの職場を失うようなことがあってはならないという、ごく限られた部分的行為の規制であります。憲法の保障する労働基本権はあくまで守られねばなりません。しかし、自己の労働基本権を無限に主張して、他人の基本的人権を侵害するがごときことがあってはならないことは当然であります。電源ストや停電ストは、労使交渉の場において経営者に対抗するの強烈なる手段として用いられるのでありましょうが、交渉の相手方たる経営者を困窮せしめる以前に、第三者たる国民大衆を困窮せしめるの結果となるのであります。(拍手)電気がとまって因るのは、電気事業労働者の家族をも含めての大衆であり、より広範なる労働者をも含めての国民であります。電気事業労働者の労働基本権が、他の九千万国民大衆の基本的人権をそこねてはなりません。(拍手)すなわち、基本的人権と基本的人権の角突き合わす状態を調節し、九千万人の歯車が、摩擦と矛盾のないよう、きわめて精巧にかみ合わされ、国家という社会機構の中になめらかに回転すべく考えられるのが、憲法第十二条、第十三条の公共の福祉であります。(拍手)
 石炭鉱業における保安ストの規制は、重要なる国家資源の保護であり、争議解決後に労働者の帰るべき職場の確保であって、保安ストなどというものは、これを経営者に対して用いるとき、同時に両刃のやいばとなって、労働者みずからをも傷つくる危険性を持っているのであります。(拍手)
 本不信任の提案者は、その理由の中に……。(「不信任論議をやれ、賛成か反対か」と呼び、その他発言する者多し)本不信任の提出者は、その理由の中において、世論があげて反対している云々とうたっているのでありますが、これは社会党一流の偏狭なる独断であります。(拍手)同じ電気事業関係でも、電労連と電産とは大いなる主張の相違があり、石炭鉱業関係でも、炭労と全炭鉱とはよほど異なった考え方を持っております。一昨日の社会労働委員会における公聴会においても、全炭鉱、すなわち全国石炭鉱業労働組合代表の参考人は、こういう意味のことを言っております。すなわち、この際百歩を譲ってこの法律の存続をなお必要とするならば、あえて恒久立法とせず、さらに時限立法として、労使慣行のよりよき成熟を待ってはどうかというのであります。百歩を譲ってという仮定的前提はあったにいたしましても、絶対反対などという立場と非常に相違のあることは論を待たない。社会党の不信任理由に、世論があげて云々とあることは、その中に各種の意見が織りまざっており、しかも、それは国民世論あげてという意味ではなくて、国民一部の各種の世論と訂正すべきであり、従って、国民大衆は、すなわち大部分の世論は、それこそ公共の福祉を守るために、世論あげていわゆるスト規制法の存続を熱望いたしておるのであります。(拍手)
 多少趣きは違いますが、私は、あの警察官の所持しておるところのピストルが、いうところのストライキ権といささか似通った面がありはしないかと思うのであります。警察官のピストルは、その所持しておること自体に大いなる威力があります。所持しておるだけで大いなる威力を有するピストルは、これを発射するときには、驚くべきというよりも、むしろ、おそるべき威力を発揮するのであります。それゆえに、警察官に対しては厳重なる拳銃使用規則というものがあり、職務執行法に基いて、自己防御のほか、重大犯人逃亡のおそれある場合とか、凶行犯人が他の生命を犯そうとしておるときなど、しぼりにしぼって、最小限のさらに極限まで、その使用を規制いたしておるのであります。労働争議に際して、労使折衝の場合に労働者がストライキ権を所得することは大いなる威力であります。しこうして、相手の出方いかんによってそのストライキ権を行使するのでありますが、所持することの威力は、発動の可能性の持つ威力であり、一たびストライキ権を発動するに及んでは、経営者を窮追する驚くべき威力を発揮するのであります。従って、この驚くべき威力は、行使のいかんによっては、ときにおそるべき威力となり、経営者を窮迫するばかりでなく、電気事業もしくは石炭鉱業における停電スト、保安ストのごとき、第三者たる国民大衆を窮追するの結果となり、窮追されたる国民大衆は、被害者となって怨嗟の声をストライキ権の行使者に放つ状態ともなるのであります。
 いかに自由なる基本権だからといって、これが野放図に置かれてよいはずはありません。いわんや、一部の人々の基本権が、他の大部分の国民大衆の基本権を侵し、国民大衆の怨嗟を招くがごときことがあっては一大事であります。そこで、こうした電気事業や石炭鉱業におけるストライキ権の行使が、勢いの激するところ危険区域へ暴走することを阻止すべく出されたのが、いわゆるスト規制法であり、憲法第十二条、第十三条の公共の福祉を重視する政府のとるべき当然の措置であると同時に、労働争議がよりよき慣行の成熟へ発展することを期待し……
  〔発言する者多く、議場騒然〕
#10
○議長(益谷秀次君) 静粛に願います。
#11
○草野一郎平君(続) 一部の労働者が、ストライキ権の乱用によって国民大衆の怨嗟を招くがごときことのないよう、あらかじめ万全の方策を練るために、いわゆるスト規制法の存続をはかることは、労働者の立場を守るための労働大臣としての当然の責任であります。(拍手)
 過日来連日開かれた社会労働委員会において、社会党その他野党の委員諸君は、入れかわり立ちかわり、倉石労働大臣に向って必死に切り込んだのでありますが、いずれもより抜きの精鋭でありながら、労働大臣にかすり傷さえ負わせ得なかったばかりか、逆に、立ちどころに切り返された形であります。(拍手)まさに、倉石労働大臣の、野党の攻撃の前に立ちふさがった答弁の態度は、完璧の観があったといわねばなりません。(拍手)それというのも、いわゆるスト規制法存続に関して、国の産業と経済の発展をこいねがい、社会、公共の福祉を守り、しこうして、電気事業と石炭鉱業に従事する労働者の究極の利益と国民大衆の福祉をささえようとする誠意と信念に満ちていたからだと思うのであります。(拍手)しかし、もし倉石労働大臣の答弁ぶりを通して、しいて難があったといえば、あまりに野党の攻撃の前に完璧に過ぎて、相手に花を持たすという破綻がなかったことであります。(拍手)太閤秀吉は、常に、敵を攻めるときには、敵の逃げ道を開いておいたということであります。社会労働委員会では、その点、野党の諸君は逃げ道がなかった。(笑声、拍手)逃げ道を失った野党の諸君は、ついに、苦しまぎれに、この本会議に倉石労働大臣の不信任案を提出するに及んだのであります。(拍手)従って、この不信任案は、目的が純真でない。内容がからっぽである。実弾を装填せざる空砲をぶっ放して、われわれには威嚇射撃にもならない。空砲でありますから、音はなかなか大きいが、中身は何もない。
 こういう不信任案に対しては、われわれは絶対反対であるということを表明して、私の反対演説を終るものであります。(拍手)
#12
○議長(益谷秀次君) ただいまの草野君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
 渡辺惣蔵君。
  〔渡辺惣蔵君登壇〕
#13
○渡辺惣蔵君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま同志赤松勇君から提案されました労働大臣倉石忠雄君不信任決議案に賛成を行おうとするものであります。(拍手)しかし、ただいま反対討論に立たれました草野君は、━━━━━━━━━━━━お話をなさいましたが、国会の討論の威信にかかわりますので、私は、特にそうした論旨について反駁を行わずに、慎重な態度でお話を申し上げたいと思います。
 私は、倉石労働大臣に対する不信任決議案の賛成の理由の第一には、労働行政全般についての問題と、第二には、このたびのスト規制法の上程に当りまして、倉石労働大臣のとられたところの政治的責任を究明し、第三には、労働委員会の審議を通しまして倉石労働大臣の露呈いたしました資本家的な見解を究明することといたしたいと思うのであります。(拍手)ただ、第一点の労働行政全般につきましての問題は特に赤松君から指摘をいたしておりますので、私はもっぱら次の二点だけに問題を集中いたします。
 労働大臣倉石忠雄君は、すでに長いこと衆議院議員も勤められて、特に日本自由党の国会対策委員長を勤め、また、社会労働委員会の委員長もなさいまして、議会政治家として特に国会の運営については十二分の経験を積まれておる。いわゆる官僚出身の人々とは違って若干の民主的なる感覚をも持っておるであろうと思われてきたのであります。それゆえにこそ鳩山内閣の労働大臣につかれたものと想像しておったのであります。ところが、このスト規制法の上程をめぐりまして、私どもは、この倉石君の従来かぶってきました民主的なベールを完全にはぎ取って露骨なる反動的政治家の本質を暴露するに至ったことは、まことに遺憾にたえないと存ずる次第であります。(拍手)
 特に、私どもは、本国会の召集が行われまする以前から、このスト規制法の問題につきましては、しばしば倉石労働大臣その他の方々と事前の話し合いを進めて参ったのであります。当時、倉石労働大臣は、本法を提出するのに対しまして、きわめて慎重な態度をとっておられました。もしこの法をこの国会に提出いたすといたしましても、第一には、存続を求めるの提案が一つの方式である。第二は、存続をしないことの議決を求めることが第二の方式である。第三には、存続するかしないかということを国会の自主的なる決定に待つという態度を打ち出すことが第三の方式である。この三つの方法のうちで、第三の場合は、政府の立場から見れば無責任のそしりを免れない。第二の方法な、今日の段階においては考えられない。とすれば、第一の、存続を求めるの議決案を提出する方法以外にはない。しかし、その場合といえども、国会の民主的な運営と慎重審議をするためには両党の共同の広場において十分話し合うという態度を表明されてきたのであります。この倉石労働大臣の態度は、当時、同時に自民党の態度でもありました。この間、両党の首脳部会談におきましても、しばしばこのことが確約されてきたのであります。
 しかるに、突如として、開会日たる十一月十二日に至りまして、午前の持ち回り閣議において、倉石労働大臣から委員会審議の省略を求めるの議決案件を提出し、ここに至って、関係大臣であります石橋通産大臣を初め各閣僚が、次々と、何らこれを深く検討することなく、めくら判を押してしまったといわれておるのであります。われわれは、この抜き打ち的なる提案については全くあぜんとしたのでありますが、いかなる事態の変化によって、かかる突如たる提案がなされたのか、全く今日まで理解に苦しんできたところであります。時ちょうど十一月十日前後には関西の経済団体の催しがありまして、石橋通産大臣と河野農林大臣は、相前後して、この十一月十日には関西に参っております。そこで、これらの主要閣僚が関西財界の人々との話し合いの中におきまして、財界筋からスト規制法提案についての強力なるてこ入れが行われたのではないかと、私どもは想像いたしたのであります。しかるに、こういう一連の問題がある反面において、倉石労働大臣自体は、労働省の一部の官僚や、参議院における官僚出身の参議院議員の一部の人々の入れ知恵で、にわかに態度を急変して、彼の独断的な見解から、委員会審査省略の議決案を、あたかも鬼の首をとったような喜びをもって提出するに至ったということが、次第に明らかになってきたのであります。幸いにいたしまして、衆議院におきましては、盤谷議長の公正なる態度とあっせんによりまして、十七日に至って、これを政府においても撤回されたのであります。国会の運営もようやく一週間目に軌道に乗ることができたのでありましたが、日ソ共同宣言等の重要性を持っております本国会が、しかも、会期わずかに二十五日の四分の一以上を空費いたしまして、国会の審議を非常に混乱に陥らしめた、この軽はずみな行動と不見識な態度とは、断じて許すことができないのであります。(拍手)しかも、議院運営委員会や社会労働委員会の席上において、再三にわたりましてこの政治的責任を追及されるや、前段赤松君も申しました通り、少しも誠意を示すことなく、そのために、今や退陣の花道を急がれる鳩山老首相に対してまでしばしば迷惑をかけたことは、まことに責任政治家の態度として遺憾きわまる行動であるといわなければならないのであります。(拍手)
 第二の問題は、本法の審議の過程を通じて明らかになりましたところの、倉石労働大臣が、労働階級の基本的な労働権をじゅうりんして全く電気産業並びに石炭産業の独占資本家に奉仕する番犬にもひとしいような態度を露呈したという事案であります。(拍手)すなわち、社会労働委員会における質疑の中におきまして、倉石労働大臣の答弁によって順次明らかになって参りましたのは、第一は、本法が、その制定当時の客観的情勢のもとにおいてさえ三年間の時限立法であったものが、今日のような、経済界が上昇し、労働運動は逐次現実化しまして正常なる労働慣行が助長されつつあるときに、これをかえって時限立法から恒久立法化そうとし、半恒久的に炭鉱労働者と電気産業労働者の基本労働権を制約し、その行動権に制限を加えようとする事実であります。第二の問題は、本法の著しい拡大解釈であります。本法の成立当時におきましては、電源のスイッチ・オフをすることと、炭鉱の保安放棄を行うことの直接の行為だけに限って法の対象としたことは、当時の労働大臣であった小坂善太郎君の答弁においても明らかなところであります。倉石労相は、この際、一挙にこれを恒久立法化すると同時に、さらに二重にこの適用範囲を拡大いたしまして、発電所等におけるところの塵芥処興業務の拒否にまでこれを及ぼそうとし、さらに、しいてこの法規を拡大解釈することによって、ガス、水道、私鉄その他における全産業にまでその影響を及ぼそうという意図を持ち、その足がかりとしてこの国会にこの延長案を提出したことが露骨に明らかになって参ったのであります。(拍手)
 ここで問題になやまするのは、労使間の紛争に政府が不当に介入して、資本家側の不当なる行動を規制することなく、あべこべに、これらの独占利潤を追求することに擁護を与えようとする態度が明らかになってきたことであります。倉石労働大臣は、口を開けば、炭労がスト規制法制定の前年たる昭和二十七年十二月から現在まで十回にわたる保安放棄の指令を出していると称しております。さらに、昭和三十年十月の炭労の臨時大会及び本年五月の定期大会、本年十月の臨時大会におきまして、それぞれ保安放棄を含む戦術決定を行なっていることを唯一の口実として、これを足がかりとして、この法の存続を主張してきたのであります。しかし、これらは、会社側、経営者側のロックアウト戦術の乱用に対します労働組合の対抗上の戦術として声明されてきたものであって、一方的に炭労の指令や決議のみを非難の対象とすることは、経営者側に対するところのロックアウトに対する何らの規制を行わないことは、全く片手落ちであるといわざるを得ないのであります。(拍手)倉石労働大臣が、経営者側に対しては信を与え、労働組合側の団体交渉権を拒否して、罷業を切りくずす手段として行われるところのこのロックアウトに対して何らの制限を加えておらないことに対しまして、これに対抗する必要上、今年十月の宇部市における炭労の臨時大会においては、特にロックアウト対策に関する議題の一部において、こういっておるのであります。ロックアウトの保安の責任は会社側にある、従ってロックアウト中の保安要員の差し出しについての義務はもともとわれわれにはない、こう主張しておるのであります。この事実を故意にゆがめて経営者側の挑戦的な手段であるロックアウトだけをたな上げにして、労働組合の罷業権、行動権のみを制限しようとする態度は、はなはだしい資本家擁護の暴論であると断定せざるを得ないのであります。(拍手)
 私は、ここで、一言、炭坑の保安の問題について申し上げたいのでありますが、炭鉱の保安問題は、あげて会社の責任であります。言うまでもなく、鉱山保安法第四条では、鉱業権者の義務として、これらの落盤、崩壊その他の炭鉱の災害は、あげて鉱業権者の責任であるということを、法律において明記いたしておるのであります。ところが、今まで十数回の指令や決議を行なったと宣伝しておりますけれども、炭鉱では、まだ一度も、保安放棄を行い、これによって事故が発生した事実はどこにもないのであります。ところが、現実の炭鉱においては、そのあべこべに、資本家の利潤追求のためや、独占企業の擁護のために炭鉱の保安放棄がなされて資本家側によって保安施設のサボタージュが行われることによって、多くの災害が発生いたしておるのであります。(拍手)一例を申し上げますならば、昭和二十五年以降の六カ年間におきまして、ガスの爆発によって重大災害が起りました件数が百六十五回に及び、その罹災者の数は一千四百六十六名を数え、そのうち四七%の者は死亡いたしておるという状態であります。ことに、昨年の十一月二日の北海道茂尻炭鉱のごときは、一瞬にして六十名の生命を奪ってしまっておるのであります。しかも、こういう重大災害は、合理化が行われ、機械化が行われることによって作業の集約化が起りますために、件数は減少いたしましても、個々の災害の状況はますます大規模となり、深刻化しておるという事実を無視してはならないと思うのであります。
 しかも、われわれは、昭和二十六年、破防法や石炭合理化法か通過する以前の昭和二十六年には、全国の炭鉱労働者の数は四十万二千大百六十二名を数えておりましたが、昨年の昭和三十年度の末になりますると、この石炭合理化法等の大量首切りの影響を受けまして、約十万名が減少し、現在ではわずかに三十一万名といわれております。しかも、不思議なことには、人員は総数の四分の一を減少しているにもかかわらず、かえって、日本の石炭界の出炭量は、昭和二十六年度が四百三十三万トンであったものが、現在におきましても依然として四百二十二万トンが維持されているという状態であります。このことは、十万人の首切りの一切の犠牲が、残された三十万の稼働者の労働強化によって加重されているという事実を物語るものでありまして今日の資本の重圧がいかに激しく労働階級に加わっているかという事実を雄弁に物語るものであります。しかも、こうした問題は、単に炭鉱の労働者だけではございません。電気産業の労働者におきましても、また、民間産業はもとより、全官公庁の職員等に至りますまで、ことごとく労働強化と低賃金の政策が強行されて、一そうの生活の不安、混迷の中に、失業の状態に追い込まれているという姿であります。
 私どもは、こういう資本家階級に奉仕し、労働階級に目をおおう労働行政に対しまして絶対に反対いたしますとともに、こういう諸般の情勢を勘案いたしまして、倉石労働大臣に対する不信任の賛成にかえる次第でございます。(拍手)
#14
○議長(益谷秀次君) ただいまの渡邊君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
 これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
 氏名点呼を命じます。
  〔参事氏名を点呼〕
  〔各員投票〕
#15
○議長(益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。
 投票を計算いたさせます。
  〔参事投票を計算〕
#16
○議長(益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
  〔事務総長朗読〕
投票総数 三百八十六
  可とする者(白票)  百三十九
  〔拍手〕
  否とする者(青票) 二百四十七
  〔拍手〕
#17
○議長(益谷秀次君) 右の結果、労働大臣倉石忠雄君不信任決議案は否決されました。(拍手)
    ―――――――――――――
  〔参照〕
 淺沼稻次郎君外四名提出労働大臣倉石忠雄君不信任決議案を可とする議員の氏名
      阿部 五郎君    青野 武一君
      赤松  勇君    茜ケ久保重光君
      淺沼稻次郎君    足鹿  覺君
      飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君
      井岡 大治君    井谷 正吉君
      井手 以誠君    井上 良二君
      井堀 繁雄君    伊瀬幸太郎君
      伊藤卯四郎君    猪俣 浩三君
      池田 禎治君    石田 宥全君
      石橋 政嗣君    石村 英雄君
      石山 權作君    稲富 稜人君
      今澄  勇君    今村  等君
      受田 新吉君    小川 豊明君
      大西 正道君    大矢 省三君
      岡本 隆一君    加賀田 進君
      風見  章君    春日 一幸君
      片山  哲君    勝間田清一君
      上林與市郎君    神近 市子君
      神田 大作君    川俣 清音君
      河上丈太郎君    河野  正君
      木下  哲君    木原津與志君
      菊地養之輔君    北山 愛郎君
      久保田鶴松君    栗原 俊夫君
      小平  忠君    小松  幹君
      五島 虎雄君    河野  密君
      佐々木更三君    佐々木良作君
      佐竹 新市君    佐竹 晴記君
      佐藤觀次郎君    櫻井 奎夫君
      志村 茂治君    島上善五郎君
      下川儀太郎君    下平 正一君
      杉山元治郎君    鈴木茂三郎君
      鈴木 義男君    田中幾三郎君
      田中 武夫君    田中 利勝君
      田万 廣文君    多賀谷真稔君
      高津 正道君    滝井 義高君
      竹谷源太郎君    楯 兼次郎君
      辻原 弘市君    戸叶 里子君
      堂森 芳夫君    中井徳次郎君
      中居英太郎君    中崎  敏君
      中島  巖君    中村 高一君
      中村 時雄君    中村 英男君
      永井勝次郎君    成田 知巳君
      西尾 末廣君    西村 榮一君
      西村 力弥君    野原  覺君
      芳賀  貢君    長谷川 保君
      原   彪君    日野 吉夫君
      平岡忠次郎君    平田 ヒデ君
      福田 昌子君    古屋 貞雄君
      帆足  計君    穗積 七郎君
      細迫 兼光君    細田 綱吉君
      前田榮之助君    正木  清君
      松井 政吉君    松尾トシ子君
      松岡 駒吉君    松平 忠久君
      松前 重義君    松本 七郎君
      三鍋 義三君    三宅 正一君
      水谷長三郎君    門司  亮君
      森 三樹二君    森島 守人君
      森本  靖君    八百板 正君
      八木 一男君    八木  昇君
      矢尾喜三郎君    安平 鹿一君
      柳田 秀一君    山口シヅエ君
      山口丈太郎君    山崎 始男君
      山下 榮二君    山田 長司君
      山花 秀雄君    山本 幸一君
      横路 節雄君    横山 利秋君
      吉川 兼光君    吉田 賢一君
      和田 博雄君    渡辺 惣蔵君
      石野 久男君    岡田 春夫君
      川上 貫一君    久保田 豊君
      志賀 義雄君
 否とする議員の氏名
      阿左美廣治君    相川 勝六君
      逢澤  寛君    愛知 揆一君
      青木  正君    赤城 宗徳君
      赤澤 正道君    秋田 大助君
      淺香 忠雄君    荒舩清十郎君
      有田 喜一君    有馬 英治君
      安藤  覺君    五十嵐吉藏君
      井出一太郎君    伊東 岩男君
      伊藤 郷一君    池田 清志君
      池田正之輔君    石井光次郎君
      石坂  繁君    石田 博英君
      石橋 湛山君    一萬田尚登君
      稻葉  修君    犬養  健君
      今井  耕君    今松 治郎君
      宇田 耕一君    宇都宮徳馬君
      植木庚子郎君    植原悦二郎君
      植村 武一君    臼井 莊一君
      内田 常雄君    内海 安吉君
      江崎 真澄君    遠藤 三郎君
      小笠 公韶君    小笠原三九郎君
      小川 半次君    小澤佐重喜君
      越智  茂君    大麻 唯男君
      大石 武一君    大久保留次郎君
      大倉 三郎君    大島 秀一君
      大高  康君    大坪 保雄君
      大野 市郎君    大野 伴睦君
      大橋 武夫君    大平 正芳君
      大森 玉木君    太田 正孝君
      荻野 豊平君    加藤 精三君
      加藤 高藏君    加藤常太郎君
      加藤鐐五郎君    鹿野 彦吉君
      上林山榮吉君    神田  博君
      亀山 孝一君    唐澤 俊樹君
      川崎末五郎君    川崎 秀二君
      川島正次郎君    川野 芳滿君
      菅  太郎君    菅野和太郎君
      簡牛 凡夫君    木村 俊夫君
      菊池 義郎君    岸  信介君
      北  ヤ吉君    北澤 直吉君
      吉川 久衛君    清瀬 一郎君
      久野 忠治君    草野一郎平君
      楠美 省吾君    黒金 泰美君
      小泉 純也君    小枝 一雄君
      小金 義照君    小坂善太郎君
      小島 徹三君    小西 寅松君
      小林  郁君    小林  リ君
      小山 長規君    河野 一郎君
      河野 金昇君    高村 坂彦君
      纐纈 彌三君    佐々木秀世君
      齋藤 憲三君    坂田 道太君
      櫻内 義雄君    笹本 一雄君
      笹山茂太郎君    椎熊 三郎君
      椎名悦三郎君    椎名  隆君
      重政 誠之君    重光  葵君
      篠田 弘作君    島村 一郎君
      正力松太郎君    白浜 仁吉君
      周東 英雄君    須磨彌吉郎君
      杉浦 武雄君    鈴木周次郎君
      鈴木 善幸君    鈴木 直人君
      薄田 美朝君    砂田 重政君
      世耕 弘一君    瀬戸山三男君
      關谷 勝利君    園田  直君
      田口長治郎君    田子 一民君
      田中伊三次君    田中 角榮君
      田中 彰治君    田中 龍夫君
      田中 久雄君    田中 正巳君
      田村  元君    高岡 大輔君
      高木 松吉君    高瀬  傳君
      高橋 禎一君    高橋  等君
      高見 三郎君    竹内 俊吉君
      竹山祐太郎君    千葉 三郎君
      塚原 俊郎君    辻  政信君
      綱島 正興君    戸塚九一郎君
      渡海元三郎君    徳田與吉郎君
      徳安 實藏君    中垣 國男君
      中川 俊思君    中島 茂喜君
      中嶋 太郎君    中曽根康弘君
      中村 梅吉君    中村三之丞君
      中村庸一郎君    中山 榮一君
      中山 マサ君    仲川房次郎君
      永田 亮一君    永山 忠則君
      長井  源君    灘尾 弘吉君
      夏堀源三郎君    並木 芳雄君
      楢橋  渡君    南條 徳男君
      西村 直己君    根本龍太郎君
      野澤 清人君    野田 卯一君
      野田 武夫君    馬場 元治君
      橋本 龍伍君    長谷川四郎君
      畠山 鶴吉君    八田 貞義君
      鳩山 一郎君    花村 四郎君
      濱地 文平君    早川  崇君
      林   博君    平塚常次郎君
      平野 三郎君    廣瀬 正雄君
      福井 順一君    福田 赳夫君
      福田 篤泰君    福永 健司君
      藤枝 泉介君    船田  中君
      古井 喜實君    古川 丈吉君
      古島 義英君    保利  茂君
      保科善四郎君    坊  秀男君
      星島 二郎君    堀内 一雄君
      本名  武君    眞崎 勝次君
      前尾繁三郎君    前田房之助君
      前田 正男君    牧野 良三君
      町村 金五君    松浦周太郎君
      松岡 松平君    松澤 雄藏君
      松田竹千代君    松田 鐵藏君
      松永  東君    松野 頼三君
      松村 謙三君    松本 俊一君
      松本 瀧藏君    三浦 一雄君
      三木 武夫君    水田三喜男君
      南好  雄君    宮澤 胤勇君
      村上  勇君    村松 久義君
      粟山  博君    森   清君
      森下 國雄君    森山 欽司君
      八木 一郎君    山口喜久一郎君
      山口 好一君    山崎  巖君
      山下 春江君    山手 滿男君
      山村新治郎君    山本 勝市君
      山本 粂吉君    山本 正一君
      山本 猛夫君    山本 利壽君
      山本 友一君    横井 太郎君
      横川 重次君    米田 吉盛君
      早稻田柳右エ門君    渡邊 良夫君
      亘  四郎君
    ―――――――――――――
 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件
#18
○長谷川四郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて国会の議決を求めるの件を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#19
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会の議決を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員長佐々木秀世君。
    ―――――――――――――
   電気事業及び石炭鉱業における   争議行為の方法の規制に関する   法律附則第二項の規定により、   同法を存続させるについて、国   会の議決を求めるの件
  電気事業及び石炭鉱業における争 議行為の方法の規制に関する法律( 昭和二十八年法律第百七十一号)附 則第二項の規定により、同法を存続 させるについて国会の議決を求める 。
    …………………………………
  〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔佐々木秀世君登壇〕
#21
○佐々木秀世君 ただいま議題となりました、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて国会の議決を求めるの件について、社会労働委員会における審査の経過並びにその結果を御報告いたします。
 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律は、去る昭和二十八年、第十六国会において成立し、同年八月七日公布、施行された法律であります。
  〔議長退席、副議長着席〕
その立法の趣旨は、昭和二十七年秋から年末にかけて大規模、長期にわたる電産、炭労の二大争議を契機として電気事業及び石炭鉱業の特殊性及び重要性並びに労使関係の実情にかんがみ、争議権と公益との調和をはかり、もって公共の福祉を擁護するため、争議行為の方法について最小限度の規制を定めたものでありますが、附則第二項において、本法施行後三年を経過したときは、本法を存続させるかどうかについて国会の議決を求めなければならない旨を定めておるのであります。しかして本法は、去る八月七日をもって施行後三年の期間を経過したのでありますが、電気事業及び石炭鉱業における労使関係の現状については、いまだ健全なる労働慣行が十分確立されたとは認めがたい、従って、本法の存続を必要とするというのが、政府の本件提案の理由であります。
 本件は、十一月十二日内閣より提出せられ、同十七日本委員会に付託、同十九日倉石労働大臣より提案理由の説明を聴取した後、連日慎重なる審査を続けたのでありますが、本件の重要性にかんがみ、十一月二十一日及び本二十六日、特に鳩山内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行いましたほか、二十二日には法務、商工の両委員会と連合審査会を行い、さらに二十四日には、参考人として東京大学教授有泉亨氏外八名の参考人を招致して、労使、公益それぞれの立場からの意見を十分に聴取したのであります。
 次に、おもなる質疑の要点を御報告いたします。
 第一に、本法のごとき基本的人権に関係ある重要な法律の存続について委員会審査省略の要求をしたのは不当ではないかとの質疑に対しましては、本件は、既存の法律の内容に変更を加えるものではなく、ただその存続をはかるにすぎないものである上、短かい今国会の会期中にその可否を議決する必要があるが、継続審査に付することは不可能な案件である。なお、現在秋季闘争、年末闘争が行われており、すみやかに労働界に安定を与えることが要望されている等の見地から、緊急を要するものと認めてとった措置であるが、国会運営の円満をはかる意味において、政府はその要求を撤回した次第である、との答弁がなされたのであります。
 第二に、本法は電産、炭労争議を契機として臨時立法として成立されたが、その後三年の経過において何ら違反事件もないのに、今後も存続させるのは不当ではないかとの質疑に対しましては、三年の過程において本法違反の疑いある事例も数回あり、かつ、違反一歩前で辛うじてとどまった事例もあるのであって、労使関係の現状はいまだ健全なる労働慣行の確立を見たものとは言えないから、依然本法の存続は必要である旨の答弁がありました。
 第三に、本件の議決により本法は恒久立法となるが、これは臨時立法たる本法の性格の重大なる変更である、延長をやむを得ないとするならば、さらに期限を付する考えはないかとの質疑に対しましては、本件は本法附則第二項の規定するところであって、その結果として無期限となるのであるが、政府としては、一日も早く健全なる労働慣行の成立によって本法が不要となることを希望することには変りはない旨の答弁がなされたのであります。
 第四に、政府は未払い賃金の解消、失業対策の確立等の重要施策を怠りながら、本法の存続によって労働基本権を制約するのは不当ではないかとの質疑に対しましては、労働者の生活の向上、福祉の増進については、政府としても万全の努力を払っているところであり、また、本法は、本来争議行為としても許されないようなものを規制したにとどまるものであって決して労働基本権を抑制するものではない旨の答弁がなされたのであります。
 第五に、本法の存続は、公共の福祉の擁護を名として、国民の基本的人権を制限するもので、憲法のなしくずし的改正ではないかとの質疑に対しましては、国民の自由権を制限するような憲法改正を行う意思は全くない、公共の福祉を擁護するため、本来許されない争議行為の方法を規制するものにすぎないのであって、ごうも憲法改正とは関係がない旨の答弁がなされたのであります。
 その他の質疑応答の詳細は会議録において御了承願いたいと存じます。
 本委員会は、本二十六日質疑を打ち切り、引き続き討論に入りましたところ、社会党を代表して多賀谷委員より本法存続反対の意見が述べられ、続いて、自由民主党を代表して田中委員より本法存続賛成の意見が述べられ、最後に、小会派クラブを代表して中原委員より同じく存続反対の意見が述べられたのであります。
 かくして討論を終了し、本件について採決に入りましたところ、多数をもって、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の規制に関する法律はこれを存続させることと議決すべきものと決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#22
○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。八木昇君。
  〔八大昇君登壇〕
#23
○八木昇君 私は、ただいま上程をされました、いわゆるスト規制法を存続させるについて国会の議決を求める案件につきまして、日本社会党を代表して、ただいまより反対討論をなそうとするものでございます。(拍手)
 そもそも、私は、三年前に制定されましたスト規制法そのものに賛成ができないとともに、今日この法律をさらに存続せしめ、かつ、これから先はこれを恒久立法としようということにつきましては、絶対に承服ができないのであります(拍手)しかも、本議決案を提出するに当りまして、政府は、当初、委員会審査を省略し、直ちに本会議において採決すべく国会に要求をしたのでありまして、各新聞、世論が一斉に攻撃をしたごとく、まことに驚き入った態度であり、国会を軽視し、国民の基本的な権利を無視することはなはだしきものがあったのであります。私は、このような政府の無謀な性格こそが、はしなくも、このスト規制法そのものの性格をなしているものと思うのであります。察するに、政府がこのような暴挙に出たことについては、よほど政府みずからも本法の存続について何かうしろめたいものを感じているのか、しからずんば、新聞などでいわれるように、ごたごたしている自民党の内部対策であるのか、そのいずれかと申すべく、もしそうだとするなら、これはまことに言語道断なことであったといわなければならないのであります。(拍手)
 以下、私は簡潔に反対理由を申し述べるのでありまするが、第一の反対理由は、本法は解釈法であると言いながら、実は明らかにストライキ禁止法であり、憲法違反であるということであります。(拍手)すなわち、政府は、この法律は憲法の保障する争議権に新たに禁止、制限を設けるものではなくて、以前から違法とされたもの、すなわち、法律解釈上当然のことを明文で規定しただけだと言っておるのでありまするが、この主張がいかに笑うべきものであるかは多言を要しません。法令の解釈者でありまするところの裁判所が、今日までどういう判決を下したかを見れば、おのずと明らかであります。電気関係におきまして、昭和二十四年以来二十五の判決が下ったのでありまするが、ピケットによる威力妨害の一部を除いてそのことごとくが無罪もしくは免訴となっており、政府みずからが三権分立下の法治国家であることを否認せざる限りは、何とも抗弁はできないのであります。(拍手)また、政府は、この法律はスト規制法と略称されておるけれども、実はストライキの方法のごく一部を規制するにすぎないとも言うのでありまするが、電気に関しては、発電、送電、変電、配電等、電気のすべての生産過程のストライキを禁止しておるのでありまして、一体生産を停止しないストライキなんということがあるのか、これはどういうことなのか、私は政府に伺いたいものだと思うのであります。
 第二の反対理由は、いわれるごとき全面的炭鉱の壊滅、あるいは工場、鉱山保安電力の停電等の事態は、スト規制法以外の現行法規のもとに一おいても、容易に起り得べきものではないということであります。政府その他の方々は、一たび三年前にこの法律が制定された以上、もし今度廃止になった場合は、炭鉱保安要員の総引揚げも全面的な大停電ストも意のままだということになり、大へんなことが起ると、盛んに国民をあおっておるのでありまするが、決してそんなことはありません。なぜかといえば、元来、炭鉱の労働者の皆さんは、言うまでもなく、山があり、山に働くことによってその生活を維持しておるのでありまして、山がつぶれるということは、そのままみずからの糧道を断つことであります。にもかかわらず、もし万々が一にも部分的に非常事態が起ると一応仮定いたしましても、それは超封建的な小山の鉱山主さんあたりが、自分の山をつぶすことを覚悟の前で、とほうもない、むちゃをやるがような、そういう場合以外はとうてい想像ができません。(拍手)それさえも、単なる仮定のまた仮定であって、過去において事例を見ないのであります。電気におきましても、昭和二十七年の大争議に際しましても、各電力会社総出力の二〇%程度の電源ストが最大限度でありまして、工場、鉱山、水道等の保安電力の確保については懸命の努力がなされたのであります。また、私は、このような非常事態の回避は、政府がいたずらに干渉すべきものではなく、労使がともに誠意を尽し、自主的に解決すべきものであると信ずるのでありますが、かりに百歩を譲って考えましても、政府は、最悪の事態に対しては労調法による緊急調整を発動し、五十日間の争議停止と強制調停をなし得ることは、皆さんがよく御承知のところであります。(拍手)
 第三の反対理由は、本法律は争議発生の原因の探求が不十分であり、明らかに労働者を敵視し、一方的に他方に味方した、資本家擁護の片手落ちの法律であるということであります。(拍手)昭和二十七年のいわゆる炭労、電産の争議を振り返ってみまするときに、炭労においては、当時の炭鉱経営者たちは、争議中実に四十日間にわたって団体交渉をなさなかったばかりではありません。激しい、つらい地下労働に従事し、しかも、インフレの波なお激しかった当時において、低賃金にあえいでおる労働者のささやかな要求に対して逆に四%の賃下げ案をもって臨んだのであります。しかも、この争議が行われたにもかかわらず、その昭和二十七年の大手各社の経営はすべて黒字であり、いずれも二割五分前後の配当を行なったことは、皆さん御承知の通りだと思います。(拍手)電気の場合におきましても、昭和二十四年以来二十七年末までの五回の賃金紛争に当りまして、経営者側は、第三者、すなわち中央労働委員会の調停案を、四度までも拒否いたしておるのである。しかも、ひたすらスト破りに狂奔したわけであります。これを要するに、昭和二十七年の争議がかりに問題だといたしましても、その責任はいちずに労働者のみに帰せらるべきものでは断じてございません。(拍手)特に電気においてかりにこの争議の自己批判が要請されるとするならば、それは労使両方になさるべきものであるにかかわらず、スト規制法が制定されたために、資本家側にはごうまつも反省の色が見受けられないのであります。その証拠には、スト規制法により一方的に手足をもがれた労働者に対し、経営者側は追い打ちをかけ、二年間以上の組合専従を認めないというがごとき、明らかに不当労働行為の協約を締結せしめ、あるいは、会社純利益のこの三カ年における三倍の上昇、配当金の四倍から五倍の上昇にかかわらず、賃金ベースの引き上げはきわめて緩慢であり、いまだ、戦前、昭和十一年の水準にも達しておらないのであります。しかも、公共の福祉に反することは皆様方御承知の通り、電発会社における佐久間ダムの不正、あるいはいろいろな問題等、経営者それ自体が、果して公共の福祉に沿うごとく彼らは動いておるか。(拍手)そうして、また、大衆の意向に反し、近く、再び、このような利益を上げておる電力会社は、電気料金の値上げを要求しておるではありませんか。
 第四の反対理由は、本法律は幾多の矛盾を内包しており、しかも、条文がきわめて抽象的、かつ、あいまいであり、拡大解釈のおそれが多く、また、将来他産業にもスト規制の及ぶおそれがあるということであります。この法律の持つ幾多の矛盾につきましては、委員会においてすでに十分論じ尽されておりますので省略いたしますが、元来、本法律を単独立法としたこと自体、労組法に挿入できないしろものであって、まことに珍妙な法律であることを示しております。(拍手)政府答弁によれば、シーズンによってときどき行うような水力発電所取り入れ口の落ち葉かきの問題さえもスト規制法の対象となるというお話であります。今の政府のやり方では、一体どこまで拡大解釈をするやらわかったものではないと思います。(拍手)過去におきましても幾多の事件を作り上げまして、百名に及ぶ人を、電気関係については身柄を勾留し、被告席に数年すわらせ、この人々に多大の犠牲をしいた政府、検察当局は、そのすべてが無罪あるいは免訴になったというこの事態に対して、いかにおわびをしようというのであろう。(拍手)まことに許すべからざる前科を持っておるのであります。これらの人々がこうむった精神的、対社会的損害はどうして償われるというのでありましょう。おまけに、単にこういう違法なる行為をやって起訴をされたという理由で、昭和二十五年、この方々のほとんどすべてはパージにかけられ、職場を追われておるのである。しかも、三年たった今日、無罪という判決が出ておるという事態に対して、政府はいかなる責任を負うのであるか。(拍手)このようなことは、私ども、電気労働者の立場から了承ができません。公共の福祉に名をかる、このような悪法が、なお存続をするならば、将来私鉄、日通、ガス等々の諸産業に及ぶ危険は、過去の政府のやり口から見て想像にかたくないと思います。このあり方は、かつての日本が、国家と民族という美しい名前に名をかりて国民の基本的な人権を次々に剥奪していった、あのファッショの道に通ずるものであろうと思うのであります。(拍手)今日、いささか模様がえをいたして、公共の福祉という名のもとに、この人権のじゅうりんが行われておることを、われわれは見のがすことができないのであります。(拍手)
 第五の反対理由は、かりに過去三カ年間はスト規制法の存在理由があったといたしましても、今日は、もはや、その延長、存続の必要はない。ましてや、これを恒久立法とするに至っては、全く反動といわざるを得ないと思うのであります。このスト規制法は、その制定に当り、本来こういう法律は望ましくない、従って、当面の対策として三年間の時限立法とし、その間に労使の慣行の成熟を待つということであったのであります。時限立法というものは、申すまでもなく、その時限がきたときに、特に再延長を必要とする事態が新たに起らざる限り、その命が終るという建前のものであろうと思うのであります。ところが、今日なお本法を存続せしめねばならないような積極的な根拠と現実があるかどうか。この三年間に、たった一つも明確な違反事件がなかったのであります。しかも、これは、労働基準法のように、経営者による違反事件が年間数十万件も起っておるという、この日本の世の中においてであります。ましてや、スト規制法を今後はさらに恒久立法とする根拠のごときは、何人によっても絶対に見出すことができません。(拍手)かくして本提案は、ひたすら資本家を擁護し、労働者を敵視し、追い打ちに次ぐ追い打ちをもってするものといわざるを得ないのであってこういう政府が、民主的かつ穏健な労働運動のあり方を説くなどとは、まことにもっておこがましいのであります。国の基幹産業労働者に対する政府のあたたかい思いやりがなくして何の福祉国家かと申し上げたいのであります。(拍手)
 最後に、私は次の諸点を申し上げて討論を終りたいと思います。すなわち、炭労、電産争議の直後、しかも、三カ年の時限立法を制定することについてさえも、去る第十六国会におきましては、当時なかなか難航をきわめたのであります。この本会議での当時の討論におきまして 一応名前は遠慮をいたしまするが、改進党の代表は、本法律案が三カ年の臨時立法であることの意義はきわめて重大であると言っております。また、政府が安易な気持をもってこの法律の上にあぐらをかいておるようでは、おそるべきことになろう、とも言っておられるのであります。また、分派自由党の代表は、同じくこの壇上におきまして一年の時限立法とせよとのわが党修正案が否決されたことは遺憾であると言い、また、労働者の争議は規制し、資本家側べの規制は何らなされていない、労働者の権利の侵害に対する保障措置もない、この法案は労働者に対する吉田内閣の血も涙もない労働行政である、と言っております。(拍手)さらに、自民党を代表して当時の自由党を代表して、現在の倉石労働大臣御自身が、本案のごとき法律の廃止せられる日の一日も早からんことを待望すると言っておるのであります。(拍手)今日、保守合同の結果、自民党となったとはいえ、特に当時改進党その他であった方々は、今日いかなる感慨をもってこの場に臨んでおられるのであるか、私は最も不可解に思うのであります。
 ともあれ、過日も、社会労働委員会において、有泉教授は、おそらく、どこを探されても、他の学者はいざしらず、専門の労働法学者にして本法存続に賛意を表する者は一人も見当りますまいと申されたのでありますが、この際、政府並びに自民党は、学者、各言論機関、世論に対して謙虚に耳をかすべきであると思うのであります。
 先般の毎日新聞の記事によりますると、こんなに評判の悪い法律は、どうせ不人気の鳩山内閣のときに押し通しておいた方がよい、新しい内閣にやらせれば、きずがつくということらしい、という意味のことが書いてあったのでありますが、もしそうだとするなら、一体どういうことでありましょう。明治憲法下、制限されていた基本的人権、すなわち、言論、集会、出版、結社の自由が今や保障され、同時に、労働者の団結権、団体交渉権、ストライキ権が保障されるに至った現憲法を、社会福祉という美しい名のもとに、次々にこれを奪っていこうとする今の政治の方向に、われわれは断じてくみすることができません。(拍手)今、全国の労働者は、スト規制法審議の成り行きを重大な関心を持って注視をいたしております。国民もまた、一ころの感情論を脱却し、今や、冷静なる判断力を持って、ようやく政府の反動的本質を見抜き始めたのでございます。
 何とぞ、各位におかれましても、われわれの主張に賛同をせられ、かかる悪法に断固反対をせられまするように切にお願いをいたしまして討論を終る次第であります。(拍手)
#24
○副議長(杉山元治郎君) 大坪保雄君。
  〔大坪保雄君登壇〕
#25
○大坪保雄君 私は、ただいま議題となりました議決案につきまして、自由民主党を代表して賛成の討論をいたさんとするものであります。
 この法律、すなわち、いわゆるスト規制法は、私どもの記憶にまだ新たな通り、しこうして先ほど佐々木社会労働委員長も申された通り、去る昭和二十七年の秋から冬にかけて行われた電気事業及び石炭鉱業のストライキが長期かつ大規模のものであって、その国民経済と国民の日常生活に与えた脅威と損害がきわめて甚大であったために、その苦い経験にかんがみ、かかる社会不安をもたらすような争議行為の極端な行き過ぎを防止するために、翌二十八年八月に制定された法律であります。ところで、この法律には、その附則第二項で、この法律が施行後三年を経過したときには、これをなお存続させるかどうかについて国会の議決を求めねばならぬと定められており、その存否の議決は本国会においてせねばならぬこと御承知の通りであります。
 本法については、制定の当時から、国会の論議においてはもちろんのこと、一般世上におきましても賛否の両論が対立し、激しい議論が戦わされたのでありますが、三年を経過した今日、これを存続せしめるかいなかについても、なおその両論が対立いたしておるのであります。
 私は、今、その反対論のおもなるものについて、それぞれその理由のなきゆえんを明らかにし、よって存続させることの必要なる論拠といたしたいと思います。
 反対論の第一は、先ほど来たびたび社会党の諸君からお話もありましたように、本法をもって相変らず憲法違反だとする論であります。憲法二十八条の保障する勤労者の団体行動権は、労働者の基本的権利であって、何ものにも拘束されるものではなく、ストライキは絶対自由であり、法律をもってこれを制限することは許されないとするのであります。しかしながら、この議論は、国民の生命、自由及び幸福追求に対する権利もこれを乱用してはならない、また、公共の福祉に反してはならないと、国民の基本的人権の限界を示した憲法第十二条、十三条の規定をことさらに無視し、労働者の争議権のみを一般国民の基本的人権よりも重視して絶対的優位のものとするもので、独裁的、専制的思想にもつながる暴論と断ぜざるを得ません。(拍手)本法の目途とするところは、国民経済、国民の日常生活に密接重大な関係を持つ電気事業と石炭鉱業において、公共の福祉を害するような極端な争議行為の行き過ぎのみを規制するにすぎないのでありまして社会生活を営み、社会のうちにあってのみその生活も幸福も追及することのできる個人は、社会の秩序を乱し、社会の進展を害するようなわがままな行動を許されないことは、これは自然の道理であり、また、わが憲法の精神でもあります。(拍手)勤労者の争議権と公共の福祉との間の限界を示してその調和をはかったのが本法であって何ら憲法に反するものでないことは明らかであります。
 次に、本法は、労働者の生存権を守る唯一の武器であるストライキを制限し、労使の力関係を不均衡にする労働弾圧法であるというのでありますが、申すまでもなく、本法は、電気事業及び石炭鉱業の公益性、重要性にかんがみ、労使双方に対して、ただその争議行為の行き過ぎを禁じたもので、その目的はあくまでも公共の福祉を守ることにあり、公共の福祉を害せざる限り、他のあらゆる争議行為をなすことは許されておるのであります。(「どんな行為があるか」と呼ぶ者あり)たくさんあります。諸君のよく御承知の通りである。現実、本法のために労働者側の力が非常に弱められたという事実はなく、過去三年の実績に徴してみても、労使交渉の間においても、労働者側も各種の有効なる争議手段を講じており、賃金のごときも、石炭鉱業においてもそうでありますが、特に電気事業においては、他の一般産業に比べて依然高き水準を示し、その上昇率も決して劣ってはいないのであります。反対の第三は、本法は、もともと、三年間の期限を付した時限法である、政府も、労使関係については、法をもって規律、抑制するよりも、労使の良識と健全な慣行の成熟に待つことが望ましいと述べておるではないか、三年を経過した今日では、電気関係でも、また石炭関係でも、良識ある健全な慣行ができ上って、停電ストとか、電源ストとか、あるいは炭鉱における保安放棄などの行為はやらないのだ、従ってこの法律を今後なお存続する理由はなくなったとする論であります。私どもも、労使関係は、なるべく当事者間の良識ある自主的交渉に待つのがよろしく、法をもって制限を加えるようなことは極力避けた方がよろしいということには同感でありますが、従って、本法を存続せしむべきかいなかをきめるこの議決案の審議に当っては、主としてこの法律がその目的とした公共の福祉を守る上において有効に働いたかどうか、労使の間の良識ある健全な慣行が成熟をして本法を廃止しても公共の福祉を守る上に何ら危惧するところがなくなったかどうかを特に検討しなければならぬと思います。
 しかるに、過失三年の実績及び今日の労働運動の実情からいたしまして本法を廃止した場合には、依然として行き過ぎの争議行為がなされ、国民経済、国民の日常生活に大きな不安をもたらすおそれが多分にあることを認めざるを得ないのであります。反対する人の中には、三年間本法に違反した事件は一つもなかった、すなわち無用の法であったと言う者がありますが、それは誤まりであって、実際は電気についても石炭についても違反の疑いがあったのであります。(「ないじゃないか、うそを言うな」と呼び、その他発言する者多し)さらにそれよりも重大なことは――さらにそれよりも重大なことは、違反寸前の事件が相当にあって、この法律があったがために争議行為の行き過ぎが未然に抑制、防止されたことであります。(「うそを言うな」と呼び)、その他発言する者多し)この法律があって抑制、防止されたことであります。しかも、かような事柄は決して偶発的または一部の例外的なものであったというわけにはいかない。ことに、石炭の従業員の大多数を傘下におさめている炭労のごどきは、二十七年の大争議の際指令を発して実行しようとした、本法の禁じているこの保安要員の引き揚げ戦術を、今日もなお捨てておりません。これは違法でない、最終戦術として必要であるということを、毎年の組合大会で公然と強調、決議をしておる。また、たびたびの争議において、その指令を出しておるのであります。一昨日の社会労働委員会に参考人として出席されました炭労の委員長は、保安要員の引き揚げは労働組合の戦術であるから、経営者の出方によってはいつでも実行する旨の供述をいたしてその無反省な態度を明らかに表明いたしておるのであります。電気事業関係においても、十三万従業員のうち、なお約一万人近くの電産所属の組合員があり、本法違反の争議行為も絶無ではなかったのでありまして、
  〔副議長退席、議長着席〕
かような組合運動の実績から、労使の間に良識ある健全な慣行が成熟したとはいまだ認めがたいのであります。
 かような状態のもとで本法を廃止するといたしますれば、今まで禁ぜられたものが解かれるのでありますから、当事者はもちろん、一般に対しても新たなる権利を認めたごとき印象を与え、絶対的スト権を獲得したのだ、これからは何でもやれるんだ、与えられた権利は使うべしという労働大衆の要求が高められ、おそらくは、組合幹部も制止困難となってその意思に反して行き過ぎの争議手段がひんぱんに採用されざるを得なくなるでありましょう。ましていわんや、幹部自身これを希望し、これをしきりに指令するごとき組合においておやであります。
 これに反して、本法施行以来、これが労使双方にとってよき抑制の力となり、電気事業関係では、現に、賃金問題等の交渉において、当事者同士の自主的交渉によって円満な解決を見ておる傾向さえあるのであります。危険防止のさくのごとく、本法の存在することがかえって良識ある慣行の成熟に役立っておると申しても過言ではございません。(拍手)さらに、本法で禁止する争議行為のごときは実行はしないと言っておる組合等にとりましては、本法はなくてけっこう、しかし、また、あっても別段の支障はないということになります。すなわち、廃止することは、今日ではかえって平地に波乱を起すことになるのであります。
 第四に、本法はもともと時限法として制定されたものである。それをこの際恒久法に変質しようとすることは不都合であるといって反対する議論があります。が、これはいささか見当違いの議論で、本案の議決の結果が従来のごとき期限付のものでなくなるというだけであって、永久に変更や廃止はできない法律となるのではないのであります。良識ある健全な慣行ができ上って、かかる法律、規定を必要としなくなれば、何どきでき廃止すればよろしい。また、他の法律の改正や別の立法措置でこれを吸収させることによって本法を廃止する道もあるのであります。大騒ぎするほどのことではございません。社会党の諸君は、早くから本法の廃止を唱え、存続反対の特別委員会までも設けられて、労働組合の諸君とともに宣伝これ努めておられる。これはおそらく労働組合の要請もあってのことと想像されますが、その反対の理由は組合によって非常に違っておるのです。すなわち、全労系の電労連や全炭鉱の諸君は、いわゆるスト規制法で禁ずるごとき争議行為は行き過ぎであって、やるべきでもないが、また、やりもしない。ただ、労使の関係は当事者の自主的交渉にまかせるのがよいので、法をもって規制するのは適当でないから、やめてもらいたいというのであります。ところが、これに反して、総評系の電産や、特に炭労のごときは、前述のように、保安放棄は本法があっても違法ではないと主張し、かかる争議手段は戦術として必要であり、また、実行するつもりであると呼号しておるのであります。主張は百八十度違っておる。反対を唱えられる社会党の皆さんは、一体どっちの側の主張をおとりになるのですか。百八十度違っておるのです。右に行くのか左に行くのか、現実の政治に携わる責任ある政治家としては、ただ単に、憲法違反とか、労働権の圧迫だとか、恒久法にするのが気に食わぬとか、抽象的論議だけでは済まされないはずであります。(拍手)存続反対といっても、全労と総評はその反対理由が違っておる。これをそのままにして国会で反対の矢表に立つのは社会党の矛盾である。これはある有力な新聞の論説が喝破しておる点であります。
 あらためて申すまでもなく、電気の場合でも、石炭の場合でも、行き過ぎの争議行為のために迷惑をこうむる者は、当事者よりも、むしろ第三者である一般消費者大衆であります。(拍手)ことに、電気のごときは、今日、文明国においては、その国民の生活にきわめて深く広く密着しております。生活必需物です。その公共性、その必需性の重要度は、空気に次ぐといってもいいくらいだと思う。この公共物は、もはや、一電力会社や、そこに働く勤労者たちだけの私有物としての自由な取扱いは許されないのであります。(拍手)労働者も、経営者も、国民大衆からの大切なる預かり物として取り扱うべきものであることは、何人も異論のないところと思います。これを当事者間の交渉の道具に勝手に利用することを許さんとするのは、少数者の利益のために、国家の利益、及び、大多数の国民、すなわち、一般勤労大衆、中小企業者、農民、学生、その他一般大衆の利益と生活とを売るものであることを忘れてはならないと思います。(拍手)私どものいう公共の福祉とは、この国家の利益及び一般国民大衆の生活と利益とをいうのであります。これは私どもの意見だけではありません。心ある人士のすべて同調する意見であります。東京における有力新聞の論説が、ほとんど全部、ただ一紙を除く全部が、結論において本法の存続を必要としておるのは、むべなりと申さねばなりません。すなわち、私どもは世論とともにあるとの自信の上に立っておるのであります。(拍手)
 以上、私は、本法の重要性並びに労働運動の実情を述べて、数点にわたって存続反対論の理由なきゆえんを明らかにいたしました。しこうして、これことごとく本法をなお存続させねばならぬ理由であります。
 私は、最後に、一言政府に対する要望を述べて、私の討論を終りたいと思います。(拍手)
 政府もしばしば述べております通り、もともと、労使間の事柄は、法律をもってこれを抑制し規制することは、できる限り最小限にとどめ、むしろ労使の良識と健全な慣行に待つことが望ましいこと、申すまでもありません。労使双方がこのことに努力すべきこともまた言を待ちませんが、ただ、わが国の労働運動は、まだ歴史の浅い、経験の乏しい、未成長の域を脱しないものといわざるを得ませんので、これが健全なる発達を期待するにつけても、もともと敵対関係にあるのでなく、協力関係にあるべき労使間のことでありますから、できるだけ多くの共通の広場を持ち得るように、政府においても積極的に力をかすことが必要と思うのであります。(拍手)公益的事業において特にしかりであります。かくて幸いに良識と健全なる慣行が成熟し、行き過ぎのない争議手段によって自主的に労使の問題が解決され、労使協力により生産性も向上して、かくて公共の福祉にも寄与し、また当事者の利益をも進めることになりますならば、もはや本法のごときものは不要のものとなるでありましょう。私どもは、さような、世界のどの国にもおくれない成長した労使関係を期待してやまないのであります。
 以上をもって私の賛成討論を終ります。(拍手)
#26
○議長(益谷秀次君) ただいまの大坪君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
 これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本件についての委員長の報告は、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律を存続させることに決したものであります。本件については委員長の報告の通り決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
 氏名点呼を命じます。
  〔参一事氏名を点呼〕
  〔各員投票〕
#27
○議長(益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。
 投票を計算いたさせます。
  〔参事投票を計算〕

#28
○議長(益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
  〔事務総長朗読〕
 投票総数 三百七十四
  可とする者(白票) 二百三十四
  〔拍手〕
  否とする者(青票)   百四十
  〔拍手〕
#29
○議長(益谷秀次君) 右の結果、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律はこれを存続させることに決しました。(拍手)
    ―――――――――――――
  〔参照〕
 本件については委員長の報告の通り決するを可とする議員の氏名
      阿左美廣治君    相川 勝六君
      逢澤  寛君    愛知 揆一君
      青木  正君    赤城 宗徳君
      赤澤 正道君    秋田 大助君
      足立 篤郎君    荒舩清十郎君
      有田 喜一君    有馬 英治君
      安藤  覺君    五十嵐吉藏君
      井出一太郎君   伊東 岩男君
      池田 清志君    池田 勇人君
      池田正之輔君    石坂  繁君
      石田 博英君    石橋 湛山君
      一萬田尚登君    稻葉  修君
      犬養  健君    今井  耕君
      今松 治郎君    植木庚子郎君
      植原悦二郎君    植村 武一君
      臼井 莊一君    内田 常雄君
      内海 安吉君    江崎 真澄君
      小笠 公韶君    小笠原三九郎君
      小川 半次君    小澤佐重喜君
      越智  茂君    大麻 唯男君
      大石 武一君    大久保留次郎君
      大倉 三郎君    大島 秀一君
      大高  康君    大坪 保雄君
      大野 市郎君    大野 伴睦君
      大森 玉木君    太田 正孝君
      荻野 豊平君    奧村又十郎君
      加藤 精三君    加藤 高藏君
      加藤常太郎君    加藤鐐五郎君
      鹿野 彦吉君    上林山榮吉君
      神田  博君    亀山 孝一君
      唐澤 俊樹君    川崎末五郎君
      川崎 秀二君    川野 芳滿君
      菅  太郎君    菅野和太郎君
      簡牛 凡夫君    菊池 義郎君
      岸  信介君    北  ヤ吉君
      吉川 久衛君    清瀬 一郎君
      久野 忠治君    草野一郎平君
      楠美 省吾君    倉石 忠雄君
      小泉 純也君    小枝 一雄君
      小坂善太郎君    小島 徹三君
      小西 寅松君    小林  郁君
      小林  リ君    河野 一郎君
      河野 金昇君    高村 坂彦君
      纐纈 彌三君    佐々木秀世君
      齋藤 憲三君    坂田 道太君
      櫻内 義雄君    笹本 一雄君
      笹山茂太郎君    志賀健次郎君
      椎熊 三郎君    椎名悦三郎君
      椎名  隆君    重政 誠之君
      重光  葵君    篠田 弘作君
      島村 一郎君    正力松太郎君
      白浜 仁吉君    周東 英雄君
      須磨彌吉郎君    杉浦 武雄君
      鈴木周次郎君    鈴木 直人君
      薄田 美朝君    砂田 重政君
      世耕 弘一君    瀬戸山三男君
      關谷 勝利君    園田  直君
      田口長治郎君    田子 一民君
      田中伊三次君    田中 彰治君
      田中 龍夫君    田中 久雄君
      田中 正巳君    田村  元君
      高岡 大輔君    高木 松吉君
      高瀬  傳君    高橋 禎一君
      高見 三郎君    竹内 俊吉君
      竹尾  弌君    竹山祐太郎君
      千葉 三郎君    塚原 俊郎君
      辻  政信君    綱島 正興君
      戸塚九一郎君    渡海元三郎君
      徳田與吉郎君    徳安 實藏君
      中垣 國男君    中川 俊思君
      中島 茂喜君    中嶋 太郎君
      中村 梅吉君    中村三之丞君
      中村庸一郎君    中山 榮一君
      中山 マサ君    仲川房次郎君
      永田 亮一君    永山 忠則君
      長井  源君    灘尾 弘吉君
      夏堀源三郎君    並木 芳雄君
      南條 徳男君    根本龍太郎君
      野澤 清人君    野田 卯一君
      野田 武夫君    馬場 元治君
      橋本登美三郎君    橋本 龍伍君
      長谷川四郎君    畠山 鶴吉君
      八田 貞義君    鳩山 一郎君
      花村 四郎君    濱地 文平君
      早川  崇君    林  唯義君
      林   博君    平塚常次郎君
      平野 三郎君    廣瀬 正雄君
      福井 順一君    福田 赳夫君
      福田 篤泰君    福永 一臣君
      福永 健司君    藤枝 泉介君
      藤本 捨助君    船田  中君
      古井 喜實君    古川 丈吉君
      古島 義英君    保利  茂君
      保科善四郎君    坊  秀男君
      星島 二郎君    堀内 一雄君
      眞崎 勝次君    眞鍋 儀十君
      前尾繁三郎君    前田房之助君
      前田 正男君    牧野 良三君
      町村 金五君    松浦周太郎君
      松岡 松平君    松澤 雄藏君
      松田竹千代君    松田 鐵藏君
      松永  東君    松野 頼三君
      松本 俊一君    松本 瀧藏君
      三浦 一雄君    水田三喜男君
      南好  雄君    宮澤 胤勇君
      村上  勇君    村松 久義君
      粟山  博君    森   清君
      森下 國雄君    八木 一郎君
      山口喜久一郎君    山口 好一君
      山崎  巖君    山下 春江君
      山手 滿男君    山村新治郎君
      山本 勝市君    山本 粂吉君
      山本 正一君    山本 猛夫君
      山本 利壽君    山本 友一君
      横井 太郎君    横川 重次君
      米田 吉盛君    早稻田柳右エ門君
      渡邊 良夫君    亘  四郎君
 否とする議員の氏名
      阿部 五郎君    青野 武一君
      赤松  勇君    茜ケ久保重光君
      淺沼稻次郎君    足鹿  覺君
      飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君
      井岡 大治君    井谷 正吉君
      井手 以誠君    井上 良二君
      井堀 繁雄君    伊瀬幸太郎君
      伊藤卯四郎君    猪俣 浩三君
      池田 禎治君    石田 宥全君
      石橋 政嗣君    石村 英雄君
      石山 權作君    稲富 稜人君
      今澄  勇君    今村  等君
      受田 新吉君    小川 豊明君
      大西 正道君    大矢 省三君
      岡本 隆一君    加賀田 進君
      春日 一幸君    片山  哲君
      勝間田清一君    上林與市郎君
      神近 市子君    神田 大作君
      川俣 清音君    河上丈太郎君
      河野  正君    木下  哲君
      木原津與志君    菊地養之輔君
      北山 愛郎君    久保田鶴松君
      栗原 俊夫君    小平  忠君
      小松  幹君    五島 虎雄君
      河野  密君    佐々木更三君
      佐々木良作君    佐竹 新市君
      佐竹 晴記君    佐藤觀次郎君
      櫻井 奎夫君    志村 茂治君
      島上善五郎君    下川儀太郎君
      下平 正一君    杉山元治郎君
      鈴木茂三郎君    鈴木 義男君
      田中幾三郎君    田中織之進君
      田中 武夫君    田中 利勝君
      田万 廣文君    多賀谷真稔君
      高津 正道君    滝井 義高君
      竹谷源太郎君    楯 兼次郎君
      辻原 弘市君    戸叶 里子君
      堂森 芳夫君    中井徳次郎君
      中居英太郎君    中崎  敏君
      中島  巖君    中村 高一君
      中村 時雄君    中村 英男君
      永井勝次郎君    成田 知巳君
      西尾 末廣君    西村 榮一君
      西村 力弥君    野原  覺君
      芳賀  貢君    長谷川 保君
      原   彪君    日野 吉夫君
      平岡忠次郎君    平田 ヒデ君
      福田 昌子君    古屋 貞雄君
      帆足  計君    穗積 七郎君
      細迫 兼光君    細田 綱吉君
      前田榮之助君    正木  清君
      松井 政吉君    松尾トシ子君
      松岡 駒吉君    松平 忠久君
      松本 七郎君    三鍋 義三君
      三宅 正一君    水谷長三郎君
      門司  亮君    森 三樹二君
      森島 守人君    森本  靖君
      八百板 正君    八木 一男君
      八木  昇君    矢尾喜三郎君
      安平 鹿一君    柳田 秀一君
      山口シヅエ君    山口丈太郎君
      山崎 始男君    山下 榮二君
      山田 長司君    山花 秀雄君
      山本 幸一君    横路 節雄君
      横山 利秋君    吉川 兼光君
      吉田 賢一君    和田 博雄君
      渡辺 惣蔵君    石野 久男君
      岡田 春夫君    川上 貫一君
      久保田 豊君    小林 信一君
      志賀 義雄君    中原 健次君
    ―――――――――――――
#30
○議長(益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後九時五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鳩山 一郎君
        法 務 大 臣 牧野 良三君
        通商産業大臣  石橋 湛山君
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        内閣官房長官  根本龍太郎君
        労働省労政局長 中西  實君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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