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1955/02/17 第24回国会 参議院 参議院会議録情報 第024回国会 運輸委員会 第5号
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1955/02/17 第24回国会 参議院

参議院会議録情報 第024回国会 運輸委員会 第5号

#1
第024回国会 運輸委員会 第5号
昭和三十一年二月十七日(金曜日)
   午前十一時十九分開会
    ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     左藤 義詮君
   理事
           木島 虎藏君
           仁田 竹一君
           片岡 文重君
           早川 愼一君
   委員
           岡田 信次君
           川村 松助君
           一松 政二君
           三浦 義男君
           大倉 精一君
  国務大臣
   運 輸 大 臣 吉野 信次君
  政府委員
   運輸省鉄道監督
   局長      權田 良彦君
   捕獲審検再審査
   委員会事務局長 土井 智喜君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       古谷 善亮君
  説明員
   海上保安庁警備
   救難部長    砂木 周一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○捕獲審検所の検定の再審査に関する
 法律の一部を改正する法律案(内閣
 提出)
○運輸事情等に関する調査の件(春季
 闘争に関する件)(日本国有鉄道の
 運賃に関する件)(東京湾における
 ノリの被害に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(左藤義詮君) 運輸委員会を開会いたします。
 捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 御質疑のおありの方はお願いいたします。
#3
○片岡文重君 今議題になりました捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案ですが、これで一つお尋ねしたいのですが、これは昨年のこの委員会でも一年延期をされておるわけですが、この同じ法律の有効期限を一年延ばすべきその理由として、一年延ばせば大体片づくという意味の御説明があったと思うのですけれども、またこれを一年延ばさなければならない理由は一体どこにあるのか、その点をまずお聞きしたいのですが。
#4
○政府委員(土井智喜君) ただいまのお尋ねにつきましては、昨年の本委員会におきまして内村委員よりもお尋ねがございまして、どういうわけで一年延ばすのかということでございました。そのとき、政府委員といたしまして私も御答弁申し上げたのでございますが、一年という期間を延長いたしましたのは、法律の時限法である建前から、一応期限を一年延長いたしまして、その間に連合国の要請を受けつける体制を整えておいて、そうしまして早くこういったような仕事を打ち切りたいという消極的な期待を現わすために、一年という期限を付したのであると、こういうことを申し上げた次第でございます。従いまして、その一年の間に全部事件の受付がなされるわけというのではございませんので、ただいまも、フィリピンにつきましては目下賠償等の関係で交渉がなされておりますように、まだ懸案になっております。そういたしまして、また一年延ばす。これはそういう消極的な期待を、法律の形でまあ一年、こういうようなことで規定されて参ったわけでございます。
#5
○片岡文重君 これは別に条約ではないのですから、一年間延ばして、相手方が日本の意思を尊重して自国の利益をあとにして考えてくれるならば、その今の御説明のように、期待をすることはできるでしょうけれども、やはり外国は外国の自国の利益を優先して考えて、甘木の立法の趣旨等についてはその次に当然考えるでしょうから、一年ずつ、一年ずつ毎年これを延ばしていっても、そのことによって相手国はちっとも痛痒も感じないでしょうし、いわんや拘束を受けることもないと思うのです。そうすると、一体これはいつまで続けていくお考えなのか、そういう点についてはいかにお考えですか。
#6
○政府委員(土井智喜君) ただいまのお尋ねの御趣旨はまことにごもっともでございます。条約では期限がないのに、国内法でもってこういう期限を付して、その期待というのは、国際的に見れば、あまり消極的過ぎやしないか。まことにごもっともでございます。と申しますのは、この捕獲事件の性質が、ちょうど今次大戦中に約千隻を当時敵船ということで捕獲したわけでございます。従って、その当時における敵船としての相手国というものは、大体わかっておるわけでございます。で、今までのところ、要請がすでにイギリス、フランス、ギリシャ、オランダ、そういう諸国から出て参っておりますので、それで今後問題になりますところは、その捕獲事件の状況から見まして、まだ批准されていないフィリピンというような諸国が要請をするかどうかにかかっておるわけと存じます。その他の国につきましては、今まですでに要請がありました模様からしまして、大体この捕獲事件の処理というものはこれによって判例的に終結される見通しがつくわけです。ただ、今これを閉鎖いたしますと、まだフィリピンとの間に平和条約の批准が済まない今日において、当方からその道を閉ざしてしまう、こういうことに相なりまして、その点が平和条約を誠実に履行するという建前からしまして、まだ門戸を開いておくべきではないか、こういう趣旨でございます。
#7
○片岡文重君 もし今年一年間のうちにフィリピンからその再審査の要請がなかった場合には、そうすると、来年度の終りにおいてもう一ぺん延期をする予定ですか。
#8
○政府委員(土井智喜君) フィリピンとの国際関係につきまして、もちろん今外務当局の方で進めておりますので、その点につきましては、その見通しは私が申し上げるような建前ではないかと存じますけれども、他方、東ア諸国のうちであと残っておりますのは、フィリピンが主たるものでございます。で、フィリピンの関係につきましては、先般やはり賠償の予備交渉が行われて、すでに沈船の引揚げ等の役務の提供はなされておると思うわけなのでございまして、で、この捕獲船舶の関係につきましても、フィリピンにおきまして戦争中に捕獲いたしました船舶は合計しまして百四十三件ございます。そのうち訴願のあったものが七十七件ございまして、従って、これは当時の官報にも載っておったことでございます。で、そういたしますので、もちろんこれは賠償とはまた違った処理には相なりますけれども、一応この際は、今この期限通りこの法律の再審査の要請の義務を国内法で打ち切ってしまうということは、なお時期が早い。従って、それでは一年の間にフィリピンとの関係が片づくかどうかということは、これは今日本政府がやはり力を尽しておることでございますので、やはり捕獲審検の関係におきましては、法律的にやはり一応一年の期間を延長すると、そういう体制を整えておくというのが誠実なやり方ではなかろうか、こういうように考えております。
#9
○片岡文重君 大へん説明は丁寧にして下さるのですけれども、肝心なところがよくわからぬのですが、ことしでもって打ち切るとまたあとで困るからということはわかりましたが、ことし中にフィリピンから要請がなかった場合です、ことに批准もできなかったような場合には、この法律はまた来年一年延ばすお考えなのか、その点、はっきりお伺いしたい。
#10
○政府委員(土井智喜君) 平和条約の義務を誠実に履行するという建前から申しますと、その一年の期間が参りましてなおフィリピンとの間に平和条約の批准がなされないときにおきましては、延長のことはまた国会にお諮りをするというのが当然の建前かと、こういうように存じております。
#11
○片岡文重君 国会に諮られるということはごもっともですが、一年間延期をしたいという希望で今ここに提案されておると同じように、一部改正する法律案として提出されるということは、要するに、形式的なこれは手続ですね。捕獲審検所としては、ことしなされなかったならば、一たん打ち切って、そうして再審査したときにこの組織を持つのか。それとも、ことし来なければ、さらにこれを一年延長して、そのまま継続をして待機の姿勢をとるのか、この点をお伺いしたい。
#12
○政府委員(土井智喜君) これはフィリピンだけの関係から申し上げますと、あるいは一年たちましてなお平和条約が批准できないときは、一たん打ち切って、あらためて平和条約が批准され、要請のある場合においてまた再審査の警務を再開したらどうか、こういうような御質問かと存じます。しかるところ、ただいま当委員会におきまして審査中の事件がございます。これはフランスから要請しておるサンタフェ号と、それからギリシャから要請されておりますエラト号並びにバレンタイン号、これは目下当委員会において継続して審査しておるわけなのであります。従って、現に専務はそういうように続行しておる最中でございますので、その終結の模様は今のところはっきりいたしませんので、あわせてこの一年と申しますのはそういう建前もございます。
#13
○片岡文重君 そういうことであるなら、どうなんですか、一ぺんに三年なり五年なり、同じことを年々繰り返さぬで、一ぺんに一つ片づく主で延長してしまったらどうなんですか。
#14
○政府委員(土井智喜君) まことにお尋ねの御趣旨はごもっともで、この一年小刻みでこういう延長をやらずに、三年なり五なり――私どもとしても、当初そういうような行き方であれば、よかったのであります。ところが、最初の法律におきまして、三年という期限であったわけです。三年という期限をきめましたのは、こういう船舶の捕獲事件のような性質は、捕獲審検所が当時約千件を扱いまして、その事件というものははっきりしている。ほかの利害関係のあるような権利関係でございますと、なかなか事件自体の性質が不確定である。従って、そういう期限ははっきりつけられなかったのかと思うのであります。しかし捕獲事件については千件あるのであるから、一応早期にこれは片をつけるのが、日本の置かれている立場から見てもいいのではないかということで、最初は三年という期限を付して、そうして消極的な期待でもって国際関係に対処したいという希望を表わしたわけでございます。
 昨年一年延ばしましたのは、やはりこれも当時における国際関係から見て、まだ平和条約の関係がビルマその他でひっかかっておったおけであります。ことしは残るところ、大きな問題としてはもうフィリピンだけではございますが、まあそういうようなもので、あともちろんイランその他の国もございますが、これは船の捕獲という事件の性質から見て、それほど大きな問題はない。残るところはそういう、日本が当時占領しておったフィリピンのような地域でございますので、まだやはり、一年という刻み方は何かちょびちょび延ばしてめんどうではないかというような気もいたしますのですが、これはやはり法律の建前としては、せめてこういうことで日本の消極的な期待と申しますか、そういう意思表示にしたい、こういうような次第でございます。
#15
○片岡文重君 現にフランス、それからギリシャ等が、再審の途中にある。この再審の途中にある案件は、大体どの程度これからかかる見通しですか。
#16
○政府委員(土井智喜君) このフランスの事件及びギリシャの事件につきましては、これは国際関係が非常に複雑しておりまして、いずれも相手国との間に照会あるいは証拠の収集等の手続がございますので、ギリシャ国政府及びフランス国政府にそれぞれ照会を出しております。なお当時の利害関係者等に対しましてもそれぞれ照会を出しておるようなことでございますので、相手国のあることでありまするので、私どもとしましてはできるだけ早く終結したいと思っておりまするが、たとえばフランスのサンタフェ号のごときは、これはまあフランスの法学界の長老であるリペール教授のような人も実は資料を出して来ているような事件で、国際法学的に見ましても、これは将来の大きな問題になろうかと思いますので、そういうわけで慎重に審議しておるわけであります。相手国のあることでございますので、その期限についてははっきりいたしませんが、この法律の建前として、一たん受け付けましたならば、その事件の終結するまでは一応事務はこれはまあ片をうける、それを滞りなく済ませるという建前になっておりまして、この一年の期限と申しますのは、要するに、再審査の要請を政府から受け付ける期限になっております。どうも説明がはなはだこんがらがって恐縮でございますが、継続している事案につきましては、これは受理されたものはそれの終るまでこの事務をやる、こういう建前になっております。
#17
○片岡文重君 受け付けている期間が一年間であって、その一年間に受け付けたものの処理は幾らかかってもやるのだ、法律の存否にかかわらずということですが、そうなったら、それに要する予算等は一体どこから出て来るのですか。法律がなくなってから、その準拠する法律がなくてどこからその予算を出すのですか。
#18
○政府委員(土井智喜君) それはこの法律の建前が、この法律は存続期間に――お手元に参照条文を上げておりますが、この条文を読んでみますると、存続期間としまして、「この法律(第十七条の規定を除く。)は、この法律施行後四年を経過した日にその効力を失う。但し、その日において、その日までに行われた連合国の要請に係る検定の再審査であって、第十五条の決定書の告示が行われていないものがある場合には、その決定書の告示が行われる日までなお効力を有するものとする。」こういうようにあります。従って、四年というのはこの法律の効力期間ではありますが、その日までに受け付けた事件は継続審議がなされる、こういう建前でございます。
#19
○片岡文重君 そうすると、問題はやはり再審中の事件の処理期間ではなくて、今後申請をしてくる期間がどのぐらいであるかということがこの法案の問題になってくると思うのだが、その場合に、先ほどお尋ねしたフィリピンの批准後の要請が問題になる。しかるに、この批准が果して今年中になされるかどうかわからない。なされなかった場合には、この法律をまた延期するのかどうか。また来年批准されないということになると、また同じ手続をするのではないか。それだったら、いっそ三年なり五年なり延ばしておいた方がいいのじゃないか。同じことをやらないでいいじゃないかということをお尋ねしたのですが、これに対してはっきりしたお答えがなかったように私は思うのだが、その点どうですか。
#20
○国務大臣(吉野信次君) まことにお話の通りでございます。お話の通りでございますが、しかし三年延ばしたからといって、その間にフィリピンが必ず来るとも限らない。ただ、今までの建前が時限立法をしておって、向うの方からいえば、自分のいわば利益を主張するのだから、なるべく早く来るのが当然だろう、こういうこちらの期待の結果なんでして、ただいままでのところ、そうした小刻みにやる以外に方法がないのではないか。しかしもっと大幅に延ばしたらどうかという御意見もごもっともな御意見だと思っております。
#21
○片岡文重君 まあ、もっともだろうということで、手続としては、ここへ出した案を御修正になる意思もなかりそうですが、一体この法律やこういう手続は、サンフランシスコ条約に基いて生まれてきたものだと思うのですけれども、この条約を結ばれる際に、当然こういう問題については審査を要求する権利というものを認める期限が付されておってしかるべきだと私は思うのですが、そういう点について条約の交渉中に全然触れておられなかったかどうか、大臣に一つお尋ねしたいのですが。
#22
○国務大臣(吉野信次君) その当時のことは私よく存じませんですけれども、ともかく法制の建前からいえば、国際法に従って、戦時中に拿捕したものは正当な手続でこれはやるわけで、本来は問題が起らない性質のものです。ただ、こちらが負けたものですから、やはり勝利者の方がその国際法によった日本の審定について疑いを抱いて、そして再審をしろということをむしろ勝った方が一方的に主張してきた、こういういきさつだと思うのです。別に、そのときに個々の案件につきまして、これはこう、あれはこう、ということを、巨細にやるだけの余裕はなかったと思っております。
#23
○片岡文重君 きょう、この問題で大臣に御出席をいただいてお尋ねしたかったことは、そこにあるのです。少くともサンフランシスコ条約を結ばれるときには、政府としては、勝敗の帰結ではなくて、対等の立場に立ってこの条約を結ぶものであるという話で、このサンフランシスコ会議に臨まれておったはずである。そこで結ばれた条約で、しかも、今大臣自身が言われるように、正当な戦時国際法の手続に従ってなされたものに対して、敗れたがゆえにその再審査を押しつけられて、それを巨細に検討する余裕もなかったので、それを引き受けてきたというようなことは、これは非常な屈辱的な条約になっておると私は思うのです。当時政府におられないで、その責任を負うわけにはいかぬと大臣はおっしゃるかもしれませんが、少くとも今日の政府の一員として、こういう屈辱的な条約に対して、何らかこれに対する救済といいますか、修正を、外交交渉に移すというお考えは持たぬのですか。
#24
○国務大臣(吉野信次君) 今日から見て、片岡さんのおっしゃるような御批評もあるわけですけれども、しかし実際問題として、たとえばドイツの例のごときは、みんな返させられたのです。やはり戦時国際法によって正当に捕獲したものと判定したものであっても、事の理非善悪にかかわらず、全部返せと、こういう条約もあるわけですから、それに比べますと、ともかく再審査という点で日本には臨んできたのですから、まあそれでも絶対に平等な立場から言えばお話のようなことはございますけれども、これは日本政府にはむしろ有利なんであって、私はその当時の当事者ではございませんけれども、負けたものが講和条約というものを結ぶときには、この程度のものは仕方がないものである。今、外交交渉で平等云々ということをむし返すことはどうか、こう思います。
#25
○片岡文重君 外交交渉を今繰り返して旧に返すことはできないということは、一応今日の情勢からいって、特に相当年月もたっておることだから、冷却されておるということ等も考えて、一応運輸大臣の立場ももっともだと思うのですが、しかし、この条約のために、こうして毎年々々同じことを繰り返して、しかも相手国を何らか拘束することもなくて、消極的な期待だとおっしゃるけれども、消極的な期待も何も、全然これは期待することのできないような法律を、そのために毎年同じ手続を踏んでいかなければならぬ。これは非常に屈辱的な問題だと思うのです。しかも、こういう再審査の例というようなことはかつてなかったと思う。たまたまドイツは完敗して、返せという条約に従わざるを得ない立場になったのに、日本としてはそうでなしに、再審査の権利が与えられておるのだから、まずまずよかったと言っておられるけれども、少くともサンフランシスコ条約の建前というものは、勝った国、負けた国の講和条約だけではなくて、対等の立場に立って、世界平和のために人類文化の最高の水準をもって講和会議を結ぶのだということは、時の政府も言明しておるし、アメリカも言明しておるはずだ。しかも、こういう屈辱的な法律を日本が作らなければならないような事態になったということは、当時の言明から見れば、はなはだ矛盾するものじゃなかろうかと思う。従って、この際政府は何かここに外交的に手を打つべきじゃないか。そうしてこういう問題は、少くとも国内法でいけば、破廉恥罪でもなお時効というものは認められておるのですから、いわんや今までの再審査要求に対して、一件といえども、相手国の賠償要求を認めざるを得なかったような不誠意な手続で拿捕もしくは没収したものはなかったはずである。日本の国がいかに適正に国際公法に従ってきたかということは、その一事をもってしても明瞭であるので、将来といえどもこれはそのまま私は推し進めていっても差しつかえなかろう論理だと思う。
 そういう点等を考え合わせれば、この問題については、この辺で、単なる事務的な手続だからということで簡単に考えることなしに、政府としてもっとしっかり考え直したらどうか、こう思うのですが、大臣の御所見はいかがですか。
#26
○国務大臣(吉野信次君) 一応お話の趣旨はよく了解いたしましたけれども、先ほども申しました通り、ドイツは全部返せ、イタリアの平和条約においては、全部返せじゃないですが、再審査いたしますけれども、これは連合国がやることになっておる。日本の場合はこれは日本国自身がやるのですから、私は実際のことはよく存じませんけれども、符審査というても、これは国際公法に従ってやって、そうむちゃなことをやったというのではなくて、よく戦争中にあることで、国籍がどこかの敵船だと思ってこっちがやった場合でも、それが用船契約があったり、あるいは旗だけをごまかしておった、そういう実際問題で向うには言い分があるわけですから、そういうところを今度は日本の方でもう一ぺん再審査しろと、こういうのですから、別にそのために屈辱とかなんとかいう建前のものじゃなかろうと思うのです。
 ただ、講和条約の方では、お話の通り、その点については時効も何もきめてありませんし、そうして講和条約にまだフィリピンが入っていないわけですから、あの講和条約はフィリピンの場合に今効力の生じようがない。しかし、だんだんフィリピン、あるいはインドネシアもそうですが、これから平和条約ができて参りますと、あの条約が生きて参ります。そうすると、利害関係者としてフィリピンの方からそういう申し出がある。その申し出に対して、つまり講和条約の責務を忠実に履行するために、法律の受け入れ体制だけは整えておかなければならぬ。それですから、今度期限が切れますのをもう一年延ばす、こういうことをお願いしたわけでございます。それが一年がいいか二年がいいかということになりますと、私も確信がない。確信がないが、そんなら二年三年にしたらその方がかえっていいかというと、その方の確信もつかぬものだから、時限立法になっておりますものですから、小刻みに今日までやってきたと、こういうわけです。
#27
○片岡文重君 大体大臣の御意向はわかりました。なおこれから先になると討論になると思いますから、この場所では質疑はこの問題に対しては打ち切っておきます。
#28
○委員長(左藤義詮君) 他に質疑のある方はございませんか。――他に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○委員長(左藤義詮君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
#30
○片岡文重君 速記をとめて下さい。
#31
○委員長(左藤義詮君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#32
○委員長(左藤義詮君) 速記を始めて。
 討論の御意見ございませんか。
#33
○片岡文重君 この法案につきましては、先ほど大臣を初め政府委員について御質疑をいたしましたところによって、明らかにサンフランシスコ条約締結の際における政府の慎重さに欠けるところがあった結果、こういう無期限な負担を負わされることになったというのが、そもそもの問題であろうと思います。しかし、これは一応政府の責任として私たちは追及したいところであるが、今日において現に発生した事態を否定するわけにも参りませんので、この点については、遺憾ながら、最善の措置を尽してこの生じた負担を補っていくよりほかに日本としては処置あるまい、こう考えます。
 そのために、しからばどういう状態でこの相手国の要求を受け入れていくかというところに問題が出てこようと思いますが、これまた今日のこの法律の建前では、サンフランシスコ条約を批准した国がたとえば毎年一カ国ずつ出てくると、そのつどこの法律の有効期間というものは延長していかなければならぬ。幸い今後批准するであろう国はフィリピン等に限られてきておりますから、そういう点は解消できるとしても、なお申し出でする期限については制限を付しておらぬようでありますから、この点、一年々々延ばしていくということについて、非常に不都合な点があると考えられます。しかし今政府当局の説明のように、一年々々でたとえ消極的な期待ではあっても、なおこれによって相手国の出方を幾分でも促進するというお考えであるならば、もちろんこれを妨害することにはならぬでしょう。おっしゃる通りだと思います。むしろ、この際私たちは三年もしくは五年の期限を付した方がいいではないかと一応考えられますけれども、出された法案を修正してまで有効期限を延長しようということもどうかと思いますので、一応この際はこの法案に、原案に賛成の意を表したいと思います。
 ただ、条件として、なるべく早くこれが終結するように、政府としては問題を外交交渉に移して最善の措置を尽されるように、私は希望しておきたい。この希望を付して賛成いたします。
#34
○委員長(左藤義詮君) 他に御意見もないようでありますので、討論は終局したものと認めて、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○委員長(左藤義詮君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより採決に入ります。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#36
○委員長(左藤義詮君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条による議長に提出すべき報告書の作成等、自後の手続はこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#37
○委員長(左藤義詮君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。
 それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますので、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
  多数意見者署名
    木島 虎蔵  仁田 竹一
    片岡 文重  早川 愼一
    岡田 信女  川村 松助
    一松 政二  三浦 義男
    大倉 精一
    ―――――――――――――
#38
○委員長(左藤義詮君) 次に、鉄道抵当法の一部を改正する法律案を議題といたします。
#39
○大倉精一君 この際、今日は時間の制限もあるようでございますので、私は緊急にお尋ねしたいことがありますから、それを一つ先にお許しを願いたいと思います。
#40
○委員長(左藤義詮君) ただいまの大倉委員の御提案、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
    ―――――――――――――
#41
○委員長(左藤義詮君) それでは、倉委員にこの際御質疑を願います。
#42
○大倉精一君 私は、本日は二つの点についてお尋ねをしたいと思います。その一つは、今いわゆる春季闘争といいますか、非常に労働問題でもって緊迫な様相が出てきております。特にここは労働委員会ではありませんので、運輸委員会としての観点から、この問題の発展如何によっては、日本の運輸情勢からいって重大な問題が出てくるということを痛感するものであります。ところが、私が新聞等で見るところによるというと、政府はこの争議に対しまして、解決をするという方向ではなくて、むしろ見方によっては油を注いでおるというようなふうに見受けられるところがあるのであります。運輸大臣として、この争議、特に運輸関係のこの労働問題の将来の見通しと、それに対する対策がおありになったら、この際お聞かせ願いたいと思います。
#43
○国務大臣(吉野信次君) まあ、春季闘争、ことにただいまのお尋ねが国鉄に関する、あるいは私鉄に関する運輸関係のものだと思いますが、私たちといたしましては、別にその闘争に油を注ぐという気は少しもございませんので、円満に解決するということを期待しておるわけでございます。
#44
○大倉精一君 むろんこれは期待してもらわなければならぬのですが、ただ傍観をしておってもらったのでは、これは円満な解決の期待にはならぬと思います。特に労働争議というのは、一つは何といいますか、大衆の心理といいますか、そういうような問題も非常に大きく影響して参ります。ところが、最近見ておるというと、政府側からまず声明書を出す、これに総評はまた反駁声明を出す、また申し出をやる、反対をする、また反対解釈をやるというようなことでは、むしろ円満なる解決というよりも、そういうような争議に特に大衆の心理といいますか、そういうものに対して政府みずからが扇動をするような役割を演じておるのではないかと思われるのですが、私はこの際、やはり何といっても国鉄関係におきましては、調停委員会の結論を早く出させる。そして早く解決のめどを作る、こういうようにやはり運輸大臣として御努力なされなければならぬと考えるのですが、そういう点についてのお考えはいかがですか。
#45
○国務大臣(吉野信次君) お考えの通り私も考えております。
#46
○大倉精一君 しからば、具体的に大臣としてどういうように働きかけておられるか、どういうような努力をせられておるかということを伺いたい。
#47
○国務大臣(吉野信次君) まずもって調停委員会というものの結論を早く出していただきたい、こう思っております。
#48
○大倉精一君 その努力をされた結果、見通しはどうでございますか。
#49
○国務大臣(吉野信次君) あまり遠くない期日に調停委員会の方から何分の意見が出る、こういうふうに私は承知をしております。
#50
○大倉精一君 運輸大臣として、調停委員長かあるいは調停委員の諸君に、この問題について直接面談をなすったことはありますか。
#51
○国務大臣(吉野信次君) それはことさらいたしません。と申しますのは、あの調停委員というものは、御承知の通り、一つのいわば司法手続みたいなものでございますから、かえって私のような立場にあるものがこれに対してとやかく言うことは控えた方がよろしいかと、こう思いまして、大体そういった方面の交渉は、労働担当の閣僚というものを通して交渉しております。
#52
○大倉精一君 これは確かに労働省という所管大臣もあるのですが、その労働省という所管からいけば、労働委員会でやらなければならぬと思うのですが、私が今お伺いしたいのは、運輸委員会として、運輸関係の将来に起る状態ですね、この争議から起る状態というものが心配になるので、運輸大臣としては当然、われわれとともにこの状態を心配されて、この争議の早期解決のために努力されるのが至当じゃないかということを私申し上げているのであります。従って、調停委員会に対しまして大臣が、いかようにせい、調停をどうせいということは、これは越権だろうと思いますけれども、しかしながら、やはり早く出せというように督励をするということは、おやりになっても差しつかえないのじゃないか。それが運輸大臣みずから言って工合が悪いというならば、労働大臣を通じてやらせるなり何なりという、そういう努力を運輸大臣としてしてもらわなければならぬと思うのですけれども、どうも今の御答弁を聞いていると、早期円満妥結を希望するということであって、ただ希望するだけであって、大臣としてはどうもこれに対して積極的な対策はないように考えますが、今からでもおそくないと思うのですが、積極的にそういうような一つ御努力をお願いしたいと思います。いかがでしょう。
#53
○国務大臣(吉野信次君) 何もやらぬというのではないので、やはり早く調停委員会が出すように、実は労働大臣を通してお願いしておるわけであります。なおこの上とも、お話の趣旨はよく承知いたしました。
#54
○大倉精一君 そこで先ほど、遠からず調停案が出る見通しであるという御答弁でございましたが、遠からずというのは、一体いつごろの見通しなんですか。
#55
○国務大臣(吉野信次君) まあいわゆる遠からずでありまして、これは向うの方の、調停委員会のいろいろ御都合もございましょうが、これは公式じゃございませんけれども、私の承知しておりまするところでは、来週の早々くらいのつもりに、私は心づもりをいたしておるわけでございます。
#56
○大倉精一君 来週の早々ということになれば、全く間近だと思いますから、けっこうなことだと思います。と同時に、私は一つ希望しておきたいことは、運輸大臣として労働大臣を通じ、あるいはその他の関係方面を通じて、政府みずからが不必要な、必要の度をこえたような挑発的な行為というか、あるいはそういう大衆心理に油を注ぐような、そういうような行為というものをやめて、ほんとうに民主的に解決できるような方向に努力を願いたい。特に希望しておきますが、重ねてその点に対する大臣の御所見を一つ伺います。
#57
○国務大臣(吉野信次君) 承知いたしました。
    ―――――――――――――
#58
○大倉精一君 じゃ、その問題はその程度にしまして、運輸大臣の善処をされることを期待いたしまして、次の問題をお伺いいたしたいと思います。
 次に、お伺いしたいことは、先回の本委員会において次官にお伺いしておったのですが、どうも要領を得ませんので、もう一度伺いたいと思います。これは運賃問題でありまするが、先般の衆議院の予算委員会におきまして、大臣は、わが党の同僚の楯君の質問に対しまして、新聞記事によりますというと、こういう工合に答弁なすっておるのであります。すなわち、私は三十一年度予算では運賃値上げをしないということを言いました。こういう工合に新聞記事に書いてあるのですが、それは事実でありますか。
#59
○国務大臣(吉野信次君) その通りであります。
#60
○大倉精一君 三十一年度はやらないということは、来年の三月三十一日までやらないという工合に解釈してもよろしいのでございますか。
#61
○国務大臣(吉野信次君) その通りでございます。
#62
○大倉精一君 運賃問題は、いろいろ一転、二転、三転をしているように思うのです。特に行政管理庁の勧告によれば、運賃の値上げはしなくてもいいというような内容であるように思われるような勧告である。ところが、国鉄当局は、運賃値上げしなければ経営がやっていけないという傾向が強い。かりに経営調査会の答申によりまして、二%ないし一五%は運賃値上げをすべきだという方針が出ておる。国鉄の総裁はやはり、今度の秋ごろには運賃値上げはしなければならぬ、できれば今やりたいけれども、できなければ、やむを得なければ、秋ごろは云々というようなことで、そこに運輸大臣と国鉄の総裁との間において、この重要な運賃問題について、大きな食い違いがあるように思うのですが、その点はいかがですか。
#63
○国務大臣(吉野信次君) 運賃問題は、よく御承知の通り、なかなか複雑な問題でございまして、経営調査会においては若干の値上げはやむを得ないという結論になっておることは、御承知の通りでございます。しかし、それにもかかわらず、やはり条件がございますので、無条件ではない。その前に国鉄自体の合理化、すなわち収入をいかにして多くするか、経費をいかにして節約するかといういろいろな問題がからんでおります。私は衆議院の予算委員会でも申し上げたのですが、これが経済採算の問題であれば、今の国鉄の現状をもってはやはり若干上げるのが至当だと私は思うのです。だけども、私が申すまでもなく、運賃問題というのはなかなか経済だけの問題ではございませんで、世間には、理屈いかんにかかわらず、何でもかんでも上るのは困るのだというこういう論もありまするし、また運賃の値上げの程度あるいは時期いかんによっては、これは一般物価にも響く、こういうような関係もございまして、この内閣としては低物価の方針を堅持しておるわけでありますから、そういったようないろいろな問題がございますから、三十一年度というものの予算を組むときには、運賃の値上げというものは考えないで、やらぬと、こういう建前で運賃問題というものをやったわけであります。それですから、その点と国鉄総裁との間に意見の食い違いはないので、ただ、私もそれなら上げないでそのまま行けるかどうかという問題になると、これはまた別問題なんです。そのときどうしたらいいかということは、これは責任ある私としてはそこがいろいろ苦慮しておる点でありまして、国鉄の現状からいえばあのままではなかなかやりにくいでしょうし、またもう少し掘り下げていえば、大倉さんの御存じの通り、あれだけの莫大な何百億という工事の費用を出すのですから、それだけの費用を出して運賃収入でこれを回収し得ないということでは、インフレの要因になるのですね。逆説のように聞えますけれども、運賃値上げをしないということがかえってインフレの要因になるということが経済理論の通説ですから、そういったむずかしい問題もございますが、とにかく非常に複雑な問題だけれども、低物価の建前、あるいは現在の労働攻勢というようなものの建前というあらゆることを考慮しまして、運賃の値上げは三十一年度の予算には考慮しない、こういうわけです。
#64
○大倉精一君 何か、今しまいの方に、運賃値上げをしないのが労働攻勢のせいのようにおっしゃっておるのですが、これはどうも私は受け取れないと思いますが、それはそれとしまして、そういう原則論については当然国鉄総裁と大臣との意見の一致をみることは当然だと思います。いやしくも国鉄総裁が運賃値上げをしたいということは、これは公共企業体の限りにおいては、国鉄の収支だけを考えて運賃値上げということを言っておるかもしれないが、おそらく日本の経済全般も考えて運賃値上げを考えておられると思うのであります。特に運賃値上げの問題を、この前のその前の国会でしたか、二等運賃の値上げのときに、政府与党はこぞって三等運賃も値上げしなければならぬ、全般を値上げしなければならぬ、こういうような構想でもって運賃値上げの案を出しておる。これは汚職だ何だというような状態のもとに、世論の反撃を買って、ようやく二十億かそこらの収入を得るためにやったのですから、運賃値上げということは今やったことじゃなくして、もうその前から出てきている。特に現在の状態においては、おそらく与党の議員諸君は運賃値上げ、みんな賛成だと思う。おそらく政府も賛成しておったと思う。まあ今議員全体といいますと、中には反対する方もあると思いますが、大ていはそうだろうと思う。それで今私は国鉄の総裁と意見が食い違っているのじゃないかというのは、こういう原則論じゃなくて、現在の現実の問題として、現在当面する事態としての認識が違っているのじゃないかということを伺ったのです。それで国鉄総裁は、国鉄の経営なりあるいは現在の鉄道運賃の水準なんというようなものからいって、当然値上げをしなければならぬ、値上げをしても物価にはそんなに大きな影響があるのじゃないというような御意見だと思うのですが、現状についての認識の意見が違うのじゃないか、こういうことを私はお尋ねしておるのであります。
#65
○国務大臣(吉野信次君) 私は別に現状についての認識はさして違ってないと思う。ただ立場々々でその意見が多少違うのは、これはやむを得ないのだと、こう思うのであります。
#66
○大倉精一君 本年度の国鉄の予算は、まだ説明は聞いておりませんが、国鉄の予算には運賃値上げは見込んでおりませんか、いかがでしょうか。
#67
○国務大臣(吉野信次君) 見込んでおりません。
#68
○大倉精一君 聞くところによるというと、この前の衆議院の予算委員会のときにおきまして、十河総裁は委員会における大臣の質問に関する発言について疑議を感じられて、運輸大臣に対して面会を申し込まれておる――面会を申し込まれてといいますか、そういうことをちょっと私は耳にしておるのですが、ある新聞にも書いてあるのですが、そういうことは事実ですか。
#69
○国務大臣(吉野信次君) 何も聞いておりませんですが、そういうことはおそらく――おそらくじゃない、私の知る限りは全然ございません。
#70
○大倉精一君 その後、総裁とお会いになっておりますか。
#71
○国務大臣(吉野信次君) 別に面会を申し込みませんし、会っておりません。
#72
○大倉精一君 ああそうですか。そうしますと、まあその新聞はうそを書いたという工合に私は了承するわけですが、そうしますと、大臣は運賃は今値上げする段階ではないと。そうしますと、いわゆるどういう時期になったら値上げ可能になるのか。ということは、もう一ぺん裏から申しますと、この運賃値上げをしないというふうに御決定になったという、これは国鉄の経常自体から見れば当然これは運賃値上げしなければならぬという、これは大臣もそういう認識を持っておられるのですが、一般の情勢からいって今はどうも適当じゃない、こういう判断だと思う。いわゆる政治的考慮だと思う。その考慮されたところの内容、理由を、この際明らかに御説明願いたい。
#73
○国務大臣(吉野信次君) それは先ほど申し上げました通り、現内閣としては低物価の政策というものをこれは堅持しておるわけですから、それですから、まあかりに運賃の値上げというものはすぐ物価が上るとも考えられないので、まあその程度と時期にもよりますが、ともかく物価の値上げを招来するようなおそれのあるものはこの際はやらぬと、こういう考慮をいたしましたし、その結果やらない、こういうことになったのであります。
#74
○大倉精一君 この前の委員会の政務次官の御答弁によりますというと、政府としては一応この際運賃値上げは見送ったのであるが、しかしながら、その後補正予算というような問題もありますので云々という御答弁があったのであります。これは見方によれば、秋ごろになって必要があれば補正予算で上げるのだ、そういうこともあり得るのだという工合に受け取れるのですが、そういうこともあり得るわけですか。
#75
○国務大臣(吉野信次君) 政務次官は何と申したか知りませんが、もし補正予算云々というような説明をしましたなら、私はこれはそういうことはないということを申し上げておきます。今補正予算でこの三十一年度内にやるとかやらぬとかいうことは、全然考えておりません。
#76
○大倉精一君 私はまあ政務次官のおっしゃることは大臣のおっしゃることと同じだと思ってお尋ねしておるのですが、速記録を見ればわかると思うのですが、これは確かに補正予算等の問題もありますのでというような御発言があったわけです。そうしますというと、今は上げないが、あるいは秋ごろか、参議院選挙が済んでから後にそういう、上げるような情勢が出てくれば、また上げなければならぬような情勢が出てくれば、補正予算を組んで上げるということもあり得るのだ、可能だと、こういう工合に私らとれるのですが、そういうことはありませんか。
#77
○国務大臣(吉野信次君) そういうふうに的確に何も考えておりませんです。ただ三十一年度の予算というものを組むときには、ともかくいろいろな事情からして非常に複雑な問題ですから、運賃値上げは考慮しない、これだけのことなんです。
#78
○大倉精一君 まあ、それだけのことといえばそれだけのことなんですが、まあ運賃値上げはもっと重要な要素があると思う。運賃値上げをするかしないか、あるいはこれを延期するかしないかということは、特にやはり政治的にあるいは経済的に重要なる要素があって、その運賃値上げ、あるいは値上げするとかしないとかは決定されると私は思う。今確かに国鉄の状態からいって、膨大な施設もしなければならぬ、あるいはその修理もしなければならぬ、たくさんの費用が要る、これは運賃値上げでまかなわなければならぬといった実態は確かにわかっておるわけなんです。それにもかかわらず、今値上げを見送るということは、そこにやはり大きなそれに見合うところの理由がなければならぬと思う。その理由について国民の納得いくような御説明があれば幸いだと思うわけですが、これはいかがですか。
#79
○国務大臣(吉野信次君) それですから、その理由の一番大きいのは心理的の影響だろうと思うのです。サイコロジカルな、世間には理屈にかかわらず、とにかく運賃あるいは物の値段というものは上っちゃ困る、こういうものもあるわけです。ですから、まずその前に国鉄自体の経営につきましても、果してあれでいいかどうかということも、幾多の批評が御存じの通りあるわけですから、まずもってそういう問題を解決するには、国鉄自体というものの経営をやはりどうして合理化するか、また国鉄自体も血の出るようなそこに合理化をはかる必要もあろうと思う。そうしたいろいろな前提がございますから、それですから、その前提に立って、非常に複雑でございますから、私は先ほど申し上げましたので、この際は考えていないということを言ったので、それがすぐいつになったらやるとかやらぬとかいうようなところまでは、まだ私の結論は出ておらないのであります。
#80
○大倉精一君 大臣の結論は一応さっき出ておったはずなんです。昭和三十一年三月三十一日まではやらぬ、こういう結論は出ておったわけですから、私はそれをそれなりに承知をしておるわけですが、今の理由の中で心理的な影響が一番だとおっしゃっておる。これはまた妙なことだと私は思うのです。心理的な影響は確かに一つの大きな要素だと思う。しかし次官の答弁ではそうではなかった。やはり健全財政というものが確立をして、景気の見通しをもっとつけて、そういう見通しがついたならばということをおっしゃった。そこでその点が非常に食い違っておるわけですが、心理的な問題が一番大きな問題だということになると、これはどういう状態になるというと心理的な状態が解消されて、運賃値上げの状態になるのか、これはどうでしょうか。
#81
○国務大臣(吉野信次君) これは特にその人の物の考え方でして、どこに重きを置くかというので、私はやはり政務次官よりは、そのサイコロジカルの方面に少し、少しですよ、あるいは偏して重きを置き過ぎておるのかもしれないけれども、しかしざっくばらんに言って、国鉄というものは国鉄一家というような、世上ですよ、当らないかもしれないが、何か少しまあ勝手な経営をしているがごとき印象を持っておる人もあるわけですから、ですから、まずもって国鉄自体がその経営の合理化というものをして、できるだけのことをする。そうすれば、私の心理的と申し上げたのは、消費大衆が、国鉄はあれだけ血のにじむような努力をしておって、なおかつ赤でいかぬ。さればといって、国鉄の独立採算の公社の建前、あるいは運賃法の原則で、支出は収入でまかなうのだ、こういう建前の場合に、赤があるからといって、むやみに国民の血税をもってこれを補うということは適当ではないと思うけれども、そういうような消費大衆に了解ができることが一番肝心だと思う。それが私の心理的と申しますのは、そういう認識が消費大衆というものに行き渡ったときには、それでも程度がひどければ問題ですけれども、その程度が経営調査会の案のように一割そこそこのものであれば、それが直ちに物価に影響を及ぼすという、ようなことはない。そういう意味で、心理的の要素に、これは私はあるいは少し自分のドグマかもしれませんけれども、私自身はそういう点に非常に重きをおいて考えておるのです。
 しかし、さればというて、政務次官の言われた経済の計算の基礎というものを全然無視するという考えは一つもないのであって、根本はどこまでもやはり採算の基礎というものは重大であるということは、これは申し上げるまでもないことだと、こう考えております。
#82
○大倉精一君 何かこう希望的なようなことで、ばく然としておって、何か精神訓話を聞いているような気がするのですが、そうしますと、国鉄の経営は今は非常にずさんだということなんですね。まあ非常にという言葉が強ければ、国鉄の経営はずさんであるという一つの認識の上に立って、こういうずさんな状態では国民が承知しないから、だから、国鉄はもっとその経営をずさんでないように立て直すべきだ、これが先決だ。ですから、今の国鉄の経営はずさんであるというような一つの大臣としての認定をお下しになっているわけですね。
#83
○国務大臣(吉野信次君) 私はそう申したのじゃないのです。世間にはそういうふうに言うて、そういうふうな、まあ当っておるか当ってないか知らぬが、そういう考えを持っておる人もある。それがそういうサイコロジカルの問題だ、こういう意味で申し上げたのです。私自身は国鉄の経常は決してずさんとは思っておりません。しかし、なお国鉄というものの経営の中でも合理化をすべきもの、すなわち経費を節約すべきもの、あるいはもっと収入を増すべきものがあることは、これは行政管理庁のなににもありますように、また経営調査会の指摘にもありますように、そういう要素は多々あるのですが、私自身決して国鉄の経営がずさんだということを申したのではない。ただ世間にはそういう見方をしている人もあるということを申し上げたのです。
#84
○大倉精一君 これは大臣が、世間ではそういう見方をする者があるからということ、それだけであれば、これは私は運賃値上げをしないという理由は非常に薄弱だと思う。もし世間がそういう誤った認識を持っているならば、そういう誤った認識のもとに国鉄の運賃値上げはどうも工合が悪い、ひいては国鉄のこの運輸関係に非常に大きな支障を来たす、こういうことであれば、政府は堂々と運賃値上げを発表して、そうして国鉄の経営はこうである、事情はこうであるといって国民に訴えて、そうして国民の批判を堂々と受けて、そうして値上げを発表して国鉄の経営を正当な状態に戻すという、そういう努力をされるのが普通じゃないか。世間ではそういうふうに誤った考えを持っておるから、そういう誤った考えが直れば心理的なものもよくなるから、運賃値上げもするのだ、こういうことでは、私はどうも運輸大臣としての責任がぼやけてくるのではないか。そういうものこそ運輸大臣として国民を啓発すべき任務がある。堂々と運賃値上げを発表すべきじゃないかと思うのです。どうも私はつじつまが合わないところがある。
#85
○国務大臣(吉野信次君) 私の言葉が少し足りなかったと思うのですが、世間がそうだから、ほうっておいて、世間が認識を改めるのを待っておるというのじゃございませんで、私自身も国鉄というものの今の合理化というものについてはできるだけのことをやってもらわなければならぬので、今着々それをやらしておるわけです。そのつどそういうことを世間にちゃんと発表をして、今非常にその点は努力しておるわけです。
#86
○大倉精一君 どうも、だんだんと話のつじつまが合わなくなるように私感ずるのですが、大臣は、国鉄の経営は決してずさんじゃない、決してずさんではない。が、しかしながら内部においてはまだ経費を節約しなければならぬ部面がある。これはどこでもある。どんな企業にしても、一家の経済にしても、そういう点はあるに違いない。全体を見てずさんではないという確信を持っておるならば、それをこそ国民に周知せしめて、こういうふうな経営をやっているが決してずさんではない、むろん改めるべきところはあるのだけれども、決してずさんではない。にもかかわらず、国鉄の経営はこうである、国家の財政はこうである、しかるにこれだけの値上げをしても物価への影響はこの程度であって、どうであるという工合に、相当所信をもって運賃値上げを強調されるのが至当じゃないか。私は、こう申し上げると、運賃値上げを賛成のようだけれども、反対なのですよ。反対なのですけれども、運賃値上げをしなければならぬという根本的な考えを持っておるという政府、国鉄としては、堂々とこの際そういうふうにやるべきが至当じゃないか。そうして論議は論議として正々堂々と尽してやられるのが至当じゃないか。何か今運賃価上げを延期されるということは、格別の政治的な配慮があっておやりになるような印象をかえって国民が受けておる。そういうことをこそ排除すべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
#87
○国務大臣(吉野信次君) そこまで参りますと、あるいは考えが大倉さんと少し違うのかもしれませんけれども、やはり私はさっき申し上げました通りに、消費大衆というものがある程度に納得するということが必要なんであって、それには国鉄自体というものも経営の合理化ということでこれだけの血がにじむ努力をしたということが、これがやはり先決問題だと思うのでありまして、そういうことが、この間経営調査会の方の答申も出ておりまして、あれに基いて今実現方をせっかく努力しておる段階なんです。
#88
○大倉精一君 どうも国民は現在の状態においては、あなたのおっしゃるような心理状態ではないと思う。むしろ国民の率直な議論は、国鉄の運賃はきっと上る。秋ごろ上るんじゃないか。しかしながら参議院選挙があるので、今の政府は保守党だから、参議院選挙に損だからこれは少し見送るだろうと、国民の心理はここにきておると思う。新聞にも書いている。新聞に書いていることはほんとうかどうかは別問題としまして、そのこと自身がびしっと国民の脳裏にきておるわけですね。だから、あなたのおっしゃる心理というのは、少し方向が違って、今ではそういうような一つの政治的な謀略というような方向に国民の心理はかえって動いておる。そして頭の中では、あるいは腹の中では、運賃はいつ上るのだろう、どのくらい上るのだろうという一つの心配がある。そこで、国民としてはこの運賃問題に対して何か割り切れぬものがある、安心し切れないものがある。こういうのが現在の国民の心理状態ではないかと思うのですが、大臣の御見解を……。
#89
○国務大臣(吉野信次君) 私はそうとも思いません。
#90
○大倉精一君 そうですか。
#91
○国務大臣(吉野信次君) だから、私は決して、今お話しのように、選挙ですか、選挙というものをちゃんと目安において、そして政策をどうするこうするという考えは少しもないのであります。やはり運賃の問題というものはずいぶん複雑ないろんな要素がありますので、これは私だけではないのですね。どこの国でも運賃問題をやるときには、サイコロジカルの要素というものがやはり相当の重要な問題で、やはり消費大衆というものがある程度の、納得というところまでいかなくても、その事態をやはり正確に認識させるということが私は非常に必要なんだろうと思う。そういう方面に私の努力がまだ足りませんから、いろいろこれからせっかく努力してやってみたいと、こう考えております。
#92
○大倉精一君 それでは一つ、根本的に大臣としてはいろんな状況があって今は困難であるけれども、国鉄の運賃というものは他上げをしなければならぬのだと、値上げをしなければならぬのだろうというお考えが根底におありになるように思うのですが、いかがですか。
#93
○国務大臣(吉野信次君) 経済採算の問題からいえば、どうも上げるのが当然じゃないかと思っております。
#94
○大倉精一君 経済採算の問題だけではなくて、これは公共企業体ですから、一般営利企業と違いますから、そうではなくて、現在の国鉄の状態、施設の状態、あるいは一般経済界の状態から見て、今運賃を上げなければならぬ。ならぬが、そこにサイコロジカルといいますか、そういう複雑な問題があるので、今はちょっと困難だが、結局これは運賃は値上げすべきもんである、こういう工合にお考えになっておる。これが根底ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
#95
○国務大臣(吉野信次君) それもやはり条件がございます。大体上げるとしても程度が問題でございますし、また時期も問題でしょう。方法も問題でしょう。要するに、そういう問題というものを解決するために、つまり国民の生活を脅かさないように、一般物価というというものに影響を及ぼさないように、そういったいろいろな考慮というものを考えなければなりませんから、今低物価というものを堅持しておる政府としては、今はそれはできない、こういうことを申し上げておきます。
#96
○大倉精一君 私の言っておるのは、端的に御質問申し上げておるので、その御論議はずっと今までやってきたわけなんです。運輸大臣とされましては、国鉄の運賃は値上げしなければならぬというお考えが根底にあるのかないのかということを私はお伺いしておるのです。
#97
○国務大臣(吉野信次君) それですから、さっき申し上げました通り、採算の問題ですね、採算の問題からいえば、国鉄の経営調査会というものに各方面の識者が集まりまして、相当これにも分析してありますように、あそこにも書いて天下に公表しておりますが、批判を仰いでおりますが、あの意見というのは、私は相当傾聴すべきものじゃないか、こう考えておる。
#98
○大倉精一君 それで大臣としては、あの答申もあるし、国鉄の運賃は値上げしなければならぬのだということが根底になっておるというふうに私は思うのです。そこで今度の国会に鉄道運賃法の一部を改正する法律案というものをお出しになる予定のように聞いております。私の方のこの予定表にも載っておりましたが、これが出ないことになった。これは何か理由があるのですか。
#99
○国務大臣(吉野信次君) 別に格別の理由はございませんです。
#100
○大倉精一君 特別の理由がないわけなんですか。これは政府として一応そういう構想を持たれて、法案まで作られておったと私は思うのですが。
#101
○国務大臣(吉野信次君) つまりそこに書いてあるのは、運賃を、今の法律は、御承知の通り、運賃というものは法律できめることになっている、議会で。だから、一部改正と書いてありますれば、運賃値上げ法を出すというふうな、まあ誤解といいますか、誤解でありますまいが、そういうふうにお考えになるのはごもっともでありますが、私どもの考えたのは、そういうことを考えたのじゃないのです。つまり国鉄というものの、公社というもののあり方について、今種々検討を加えておりますが、六年前からあれは公社という形になっておりますが、あの公社のあり方についていろいろな問題がございます。その一つとして、一体この運賃という、公共企業体という、まあいわば一つの商業的な企業でございますから、その企業の運営の一番基本となるものを国会自体がきめるのがいいかどうかということは、私は三権分立の論からいっても、ここに私は問題があると思うのです。議会の、立法府としては、国鉄の経営を監督することはよろしい。監督の最も有効なる、強力なる方法は、すなわち運賃を議会で握るということにあることは、これは間違いございません。監督の方からいえば、それは一番的確な方法ですけれども、しかしあの複雑なる運賃問題というものを、いろいろ経営の面から始終見なければならぬものを、一々どこのものを何キロ、一キロどのくらいにしたらいいかということを議会にかけることはどうかと。この点について、私は公社としての国鉄全体のあり方を考えるときに、その方面の研究もして、できれば改正をする方がいいじゃないかと、こういうふうに実は就任以来考えておるわけですけれども、まださらばどういうふうにするかと、これはまあ外国じゃいろいろ例があるようですけれども、さればといって、これを公共企業体そのものにまかせ切りにするというわけにも参りませんし、それならば、またイギリスのように、御存じのように、賃金裁判所ですか、賃金審判所というような形を作るのがいいかどうかということがありまして、そのことについての成案がまだ私の頭に浮んでおりませんものですから、そういう意味で運賃法の改正というものの法案はあるいはこの議会には提案が間に合わないだろう。しかし国有鉄道法の改正の方は早々に成案がまとまりまして、今せっかく審議しておりますから、不日ここに提案いたしまして御審議をおずらわしたい、こういう意味でございます。
#102
○大倉精一君 これは大臣がそういうふうな構想を持っておられるということは、私もかねがぬ承知をしております。そうしてこの国鉄運賃の改正法律をお出しになるということも聞いております。が、しかし、これは法案として一応成案を得る段階にあるということを聞いておりましたが、そうではありませんか。
#103
○国務大臣(吉野信次君) 私の手元では、まだ私自身が運賃法改正の法文を見ておりませんのですから、私の承知する限り、その法はまだ法文化いたしておりません。
#104
○大倉精一君 これはやはり運賃審議会というものをお作りになって、そうして国会の審議を省略して――省略というより、国会の審議を通さずに運賃審議会において運賃を決定すべきだと、こういう御構想のもとにこういうような法案を御準備になっておる、そして本国会に提出される、こういうふうに聞いておったのですが、それを提出されないということは、別に何も理由がないとおっしゃるのですけれども、大臣としてそういう構想を持っておられる、そういう信念のもとにおやりになっておるのを、この法案を打ち切りになったということは、私はそれ相当の理由があると思うのです。
#105
○国務大臣(吉野信次君) 決して内部でそういう法案が一ぺんきまったのを、どうしたということはございません。それがすなわち研究問題なのです。その形がいいかどうか。とにかく監督をしなければならないということだけは明瞭なのです。いくら独立採算であるからというて、国鉄当局者にいわゆる運賃を、普通の商品の物価をきめるというふうに、まかせる手はないのです。それを今議会でやっている。それも一つの方法ですけれども、それでいいか悪いかということは、一つの案として、運賃審議会というような構想も浮ぶわけですけれども、それがいいかどうか、それはまだ引き続き研究中であって、実は私自身がまだ成案を得ていないというのが事実でございます。
#106
○大倉精一君 これもいろいろ巷間の風聞にすぎないかもしれませんが、この運賃審議会というものを作って、運賃決定は国会の審議を経ないということについては、与党の間にもいろいろな論議があったようであります。これは私は風聞に聞いておるのですが。従って、たとえば今運賃の値上げを見送った、かりに秋にやろうとする、あるいはその次の来期にやろうとする場合においても、今の与党の勢力であったら、国会の審議をやったって何も支障はないわけです。今審議会を作ってごちゃごちゃやらぬでも、国会で二百九十九名、多数をもって賛成といってしまえば、簡単にいってしまう。ですから、今さらこんなものを作って、へんな風評を受ける必要はないじゃないか。ちょうど運賃値上げを見送ったと同じ理由でこれを見送っておるのだというような風評ですから、そういう風評を私は聞いておる。これまた国民の疑惑の一つになっておる。ですから、こういうものが重なり重なって、運賃値上げにからんで、むしろ国民の疑惑というものが次から次へ重なって深まっている、こういうことを私は心配をしておるわけなんです。ですから、運賃法一部改正の見送りの問題も、運賃値上げの見送りの問題も、理由は軌を一にしておるのではないか、こう私は考えるのですが、どうですか。
#107
○国務大臣(吉野信次君) せっかくのお言葉ですけれども、それは全く風評なんです。私は責任者ですから、運輸省として与党にまだ法案の内容を説明したことも何もないのでして、ただ、おそらくは経営改善に関する意見が調査会から出ておりますから、その中に運賃というもののきめ方についても意見が出ておるようですから、あるいはそういうものを基礎として、与党内部にあるいは論議があったかもしれませんが、私自身としては、まだ自分自身の成案がきまらないのですから、それを与党にかけようがないのでして、その意味においては全くおっしゃることは風説と御了解願って差しつかえないと思います。
#108
○大倉精一君 こういう質問はあるいは不問になるかもしれないけれども、大臣としてはそうでありますということは、これは言えないことであって、そういう風評もあるということは御承知だと私は思う。それでまあこの問題はこれ以上私は大臣にもお伺いいたしませんが、国鉄の総裁にこの問題をちょっとお伺いして、必要であればさらに御質問いたしたいと思うのですが、ただ、ここでこの論議を通じて、結論的に私が承知したことは、来年の三月三十一日までは運賃は値上げしない、こういうことを政府としては確約ができるというふうに承知したのですが、それで間違いございませんか。
#109
○国務大臣(吉野信次君) その通りです。三月三十一日、予算年度ですね、予算年度。そういうふうに予算は作っております。
#110
○大倉精一君 予算ができているということでなしに、運賃値上げをしない。
#111
○国務大臣(吉野信次君) 今そういう考えは持っておりません。
#112
○大倉精一君 今はそういう考えは持っていない、これはなかなか微妙な答弁なんですが、私の聞いておるのは、三月三十一日まで絶対に運賃値上げをしないと承知していいかということを聞いておるのです。
#113
○国務大臣(吉野信次君) まあ大体そう御承知願っていいと思います。けれども、ただ先のことを、先にどういう事態が起るかわからぬ、それはいざ起ったら起ったときのこと、特別なことがあればあったときにという仰せなら、よろしゅうございますけれども、今どんなことがあっても絶対にどうだということを、そう簡単に割り切って私が申し上げるのは、責任者としてはどうかと私は思います。
#114
○大倉精一君 これは予算委員会で昨日私確認したのですが、私は三十一年度の予算では運賃の値上げをしない、こういうふうにおっしゃったことは事実と思います。それがどうもぼやけてきましたですね。
#115
○国務大臣(吉野信次君) それは衆議院の予算で、伊藤さんの質問ですか。
#116
○大倉精一君 楯さんの質問。
#117
○国務大臣(吉野信次君) 三十一年度の予算には運賃値上げは考えてない。
#118
○大倉精一君 というのは、三月三十一日まで運賃値上げをしないということですか。
#119
○国務大臣(吉野信次君) そういうふうに予算は作っておるというのです。
#120
○大倉精一君 予算ができておるならば、先日運輸次官が答弁になった補正予算というものもあるからということが、また浮び上ってくるのです。先ほど大臣の答弁では補正予算ということは次官が言ったかしらぬが、私は考えておらぬという話があったので、三十一年度末までは運賃値上げをしないと承知していいのかと、こういうことを伺っておる。
#121
○国務大臣(吉野信次君) これはそう申しちゃ何ですが、値上げするんだろう、値上げするんだろう、こういうお含みだからそういうお尋ねが出るので、これをすらっと考えれば、三十一年度は責任をもって値上げは考えないで予算を提出しておるのですから、予算年度は三月三十一日まで来年はあるわけですから、その間は現在のところでは運賃値上げということは考えてないわけです。これだけのことだろうと思います。
#122
○大倉精一君 これは運賃値上げをするのだからという前提で考えたとおっしゃるけれども、私は国民がそう思っておるから、国民代表として尋ねておるのです。ひょっとすると運賃値上げをするのじゃないか、こういう疑惑があるので、運賃値上げをするのかしないのかということを伺っておるのです。それを一つ大臣が言明されれば、国民も来年三月三十一日まで少くとも安心ができる。それを、今のところでは、予算ではという、いわゆる政治的の答弁では、国民はどうもわからぬ。そこで運輸次官の補正予算ということもありますからということで、なるほどこれではどういうことになるかわかりません。どうですか。
#123
○国務大臣(吉野信次君) しかし、そう申しちゃ、言葉を返してはなはだおそれ入りますけれども、予算の問題でございますから、それですから、予算の問題としては考えてない。これ以上のことをどうも私としてちょっとお話ししにくいのでございますけれども……。
#124
○大倉精一君 そうすると、私は結論を得たと思ったのですが、結局端的に言って、三月三十一日までに運賃値上げをするかしないかは、そのときの情勢によるのだと、こういうふうに考えても差しつかえないわけですか。
#125
○国務大臣(吉野信次君) そうじゃないのです。やらないのです。やらない建前で予算ができておるのですから。ただ、どんなことがあってもということは、そういうもしお尋ねであると、それは将来のことに対しては、私が今言うてみたところで、そのときはそのときのことであって、事情がですよ、不時の予見しないようなことがあれば、これは仕方がない。
#126
○大倉精一君 そうしますと、そういう言い回しだというと、非常にわからなくなるのだが、これをもっと国民にわかるように、というと、予算では運賃値上げは計上していない、今はそういう考えは持っていない。しかし必要があれば補正予算ということもあるので、そういうもので運賃値上げの措置をしていってもいいですと、こういうふうに言いかえてもいいわけですか。
#127
○国務大臣(吉野信次君) そこまで行くと、少し何じゃないですか。さっき申し上げましたように、上げる腹があるんだという気持になってお考えになれば、そういうことになるんですけれども、とにかく三十一年度の予算で、責任をもって出した予算が運賃の値上げというものはこれは考慮していないんですから、それで国民は御納得ができるんじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
#128
○大倉精一君 私はこれ以上聞いても、あなたうまいことを言って逃げてしまうのですが、これは国民はそう思わないんです。だから、私はずうっと申し上げたように、運賃値上げをするんだ、値上げをしないんだ、いや運賃体系を作るんだ、何だかんだといって、一転、二転、三転をしている今日においては、国民は今度の運賃値上げというものは予算措置をしていないというのは、やはり何か政治的考慮からいっているのじゃないか、参議院選挙をねらっているのじゃないかという疑惑も出ている。参議院選挙が済んでしまうと、そういうふうなことはどこかに行ってしまって、事情やむを得ないというようなことで補正予算によって値上げをやるのじゃないか、こういうことを国民は思っておりますので、それがあらゆる方面に心理的な影響がうようよ出てきていると思いますので、そういうことに対して大臣としての一つの見通しをお伺いしたい。
 それを、かりにこの一年間経済変動が起るかもわからない、景気の変動がどうなるかわからない、わからないのに今からどうするわけにもいかぬというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、しかしながら三十一年度予算をお組みになった場合には、この一年間はこうこうこういう政策をとって、こういう工合に景気を持っていくんだという見通しと自信がなければならぬわけだ。それが、今はわからぬが、半年先の景気によっては、あるいは経済界の動向によってはというようなことは、政府としては私は言えないことだと思うんです。この三十一年度予算において一年間の政策は確かにやっていくんだ、しかも経済の基礎なんだから運賃はこうするんだという、やはり一つの三十一年度予算からくるところの政策の中に、その運賃の問題もしっかりした自信を持ってやっていかなければならぬと思う。だから、ここで大臣としては、三十一年度の来年の三月三十一日までは、運賃の値上げの必要はありませんと、政府はちゃんとそういう政策をとっておりますと、こういう予算を組んでおりますと、こういう工合に御答弁になった方がほんとうだと思うのですが、いかがでしょうか。
#129
○国務大臣(吉野信次君) お話の通りでけっこうなんです。それですから、三十一年度の予算では見通しを持って、とにかくまあ国鉄としてはいろいろな状況がありますので、運賃値上げというものは……。
#130
○大倉精一君 それでは、最後に一つお伺いいたしますが、三十一年度予算では運賃値上げをしなくてもいい、そういう必要がないというような予算を組んでいるが、将来の見通しということになると、いつどういう異変が起るかもわからないとおっしゃっているのですが、三十一年度予算の見通しの中において、運賃値上げをしなければならぬという場合は、一体どういう場合ですか、たとえば……。
#131
○国務大臣(吉野信次君) それですから、それはわからないというのです。ですから、私は上げる上げないということはわからないのです。ただ絶対にどういう場合でも上げないで済むか済まぬかということを今言えということになると、私もわからないんです。どういうことがあるのかちょっとわかりませんから、それを今はっきりは申し上げにくいというだけのことであります。
#132
○大倉精一君 私の聞いておるのは、どういう場合があるかもわからぬということはよくわかります。わかりますが、政府が一たん運賃値上げはしないのだ、来年の三月三十一日まではしないのだという見通し、自信を持っておられる。これが途中で値上げをしなければならぬ、あるいはすべきであるというような状態が起るというのは、たとえばどういうような問題が起った場合、どういうような状態になった場合、こういう一つ例証をしてくれませんか。どういうふうになった場合は運賃値上げをするのだというようなことを……。
#133
○国務大臣(吉野信次君) 少しくどいようですが、それがわかるくらいなら、あるいはその場合には上げることがあるかもしらぬということは、これははっきり申し上げられる。それがわからぬのです。そういうことです。ですから、とにかく三十一年度の予算ではまず運賃値上げというものはやらないのですから……。
#134
○大倉精一君 予算では……。
#135
○国務大臣(吉野信次君) そう御承知願ってよろしいと思うのです。
#136
○大倉精一君 私も少しくどいかもしれませんが、どうもぴんと来ないものですから、よくわかるようにしたいと思ってお伺いするのですが、たとえば先ほどいろいろ、心理的な問題とか、あるいは国鉄の経営状態とか、あるいは経営の合理化の問題とか、いろいろ運賃の問題についてお話があったのですけれども、たとえば予算を編成した今日においては予算上の運賃値上げはしないのだ。が、たとえば補正予算等によって運賃値上げをするという場合――あるかないかわかりません。わかりませんが、しかし今おっしゃったように、もしあるとするならば、どういう状態の中では心理的な問題であり、あるいは経済的な問題であり、あるいは国鉄の内部の問題だ。どういうような状態が起ったときには運賃の値上げをする、あるいはすべきである。このどういうような状態というものを想定ができないといえばそれまででありますけれども、ずっと今まで運賃の問題についてお述べになった上からいって、たとえばこういうことになった場合においてはこういうことが想定されると、そういうふうなことはお答え願えませんか。
#137
○国務大臣(吉野信次君) ちょっとわかりかねると思います。具体的にどういうこと、ああいうことということになりますと、いろいろ複雑な問題がございますから、どういうことが今、予想されるかということになると、私も全然見当がつきませんです。
#138
○大倉精一君 そうしますと、今後たとえば国鉄当局の意向なり、あるいは総裁とお会いになるなりして、政治折衝といいますか、そういう話し合いの余地が残っておるというように考えてもよろしゅうございますか。
#139
○国務大臣(吉野信次君) どういう意味でございましょう。お言葉を返すようで失礼でございますけれども、政治折衝とおっしゃる意味は……。
#140
○大倉精一君 政治折衝というのは語弊があるかもしれませんけれども、たとえば今後半年なら半年の間には、国鉄はどうしても運賃値上げをしなければならぬ、そういう状態が起ってきた場合、あるいはそういう状態であるというような場合に、総裁と大臣とお会いになって、そうして国鉄の運賃の値上げの問題についてさらに話し合いをされるという余地が残っておるわけですね。
#141
○国務大臣(吉野信次君) どうも私もよく了解がしにくいのですけれども、運賃の問題は、これは今のところは国会にかけてきめるのですから、別に総裁とどうだこうだという政治折衝をする私は余地はないだろうと思う。これは必要があればやはり堂々と国会にかけて、今の場合には、今の建前はそうなっておりますから、運賃というものはこれはすべて国会できめるという建前になっておりますものですから、どうも普通の会社が品物の価格をきめるようなわけには参らぬと、こう思っております。
#142
○大倉精一君 規則、規定ではそうなっておりますが、しかしながら運賃を決定する、あるいは値上げするかしないかという方針をきめる場合に、国鉄の総裁の意見は聞かれないわけですか。
#143
○国務大臣(吉野信次君) それはまだ、ないしょといいますか、内実にそれは経営者と意見を交換することはありましても、それをきめて出すときには、これは国会がきめるのですから……。
#144
○大倉精一君 わかりました。そういうのは私は一つの形式論であって、かりに総裁とお会いになって、そうして政府の意向も伝え、国鉄の意向も伝えて、そうしていろいろな政治上の配慮なり経済上の問題なり、あるいは心理上の問題なりから、あるいはさらにまた国鉄の経常の内部の状態からいって、運賃値上げをこれはやらなければならぬという結論が出れば、それを国会に出してこられれば、二百九十九名、多数でオーケーでいっちゃう。だから、国会に出すというのは一つの形式であって、それをおやりになろうと思うならばいつでもオーケーで、絶対多数を持っておるのだから、おやりになればできるわけです。ですから、私のお尋ねしておるのは、今の予算上のいわゆる点からいって、将来国鉄の総裁なり、その他といってもよろしいが、この運賃値上げの問題についてさらに審議をされる余地が残っておる、年度内において。そういう工合に解釈してよろしゅうございますか。
#145
○国務大臣(吉野信次君) たびたび申し上げました通り、それは私は決してそうは考えておらぬのです。それは与党は多数持っておりますけれども、重大な問題ですから、私が国鉄総裁ときめたものをすぐそれをのむということはできないので、やはりそういう問題はすべて国会で実質的にきめるのですから、ただ形式ではないのですね。ただ形式的に、私と国鉄総裁できめたものは実質であって、あとはすべて形式であるとは私は考えておりません。
#146
○大倉精一君 形式とは私も言っておりません。言っておりませんが、国鉄の総裁が言われたのをそのまま政府がまるのみされるとは、私は考えておりません。国鉄の総裁は総裁として、国鉄の立場から運賃の問題についていろんな意見を言われるのですが、政府は政府として、政治責任上いろいろ意見がおありになると思います。その意見の調整をはかるなりあるいはその審議の結果なりについて、運賃値上げをするということになれば、十分可能性はあるけれども、これは国会は形式じゃないとおっしゃったが、確かに形式じゃない。形式じゃありませんが、形の上において、また国会の運営の上において、やはり絶対多数の与党を持っておれば、これは通る。ですから、世論とかいろんなことをいいますけれども、その他の重要法案につきましても、たとえばあの憲法調査会にしろ、あるいは国防会議法案にしろ、話はいろいろ飛ぶようでありますが、これはこういう問題でも重要だとなれば、世論にかかわらず、びゅうっと通ってしまう。ましてや運賃のごときものは、びゅうっと通ってしまう。ですから、形式とは申されませんよ。形式とは申しませんけれども、そういうふうな経過になるのではないか。
 私のお尋ねしておるのは、先ほど、現在予算を編成した現在の予算が幾らというお言葉の中では、将来において、この年度内において、国鉄の運賃問題についてさらに審議をされるという余地がここに残っておる。もうきまっておるなら審議される余地は私はないと思うのですが、来年度の問題の審議はあると思いますけれども、年度内の問題はもう審議される必要はないと思うのですが、今の御答弁では、やはり年度内における運賃問題に対して将来審議される余地が残っておる、こういう工合に解釈しても差しつかえありませんか。
#147
○国務大臣(吉野信次君) 私、別に審議の余地が残っておるということは申し上げていないのです。
#148
○早川愼一君 関連して。非常に運賃にこだわっての御質問がありまして、それに対する御答弁がありましたが、もし、かりに何か国鉄の財政上問題が将来発生すると、これはひとり運賃だけで御解決にならぬで弔いいじゃないかと思うのだが、いろいろの方法があろうかと思うのですが、それらについては別に運賃にこだわらず、運輸大臣が措置をされるお考えが当然あると思うのですが、いかがですか。
#149
○国務大臣(吉野信次君) その通りです。
#150
○大倉精一君 今の御質問でいきますとですね、国鉄内部の問題としては、たとえば運賃値上げをしなければならぬような問題が国鉄内部上に起ったといたしましても、今の早川委員の御質問からいけば、内部のそういう操作によってやる可能性がある。とすれば、この年間において運賃値上げを当然必要とするような事態が発生しないとは私は考えられぬのです。ですから、先ほどから、まあちょっとくどいようですが、お伺いするのですが。
#151
○国務大臣(吉野信次君) そう早く結論をお出しになっても困ると思うのです。つまりいろいろな操作をいたしますと。つまり公社というものは、講釈して申し上げるまでもございませんけれども、国有、国営の形でありまして、普通と違いますから、あるいは一般の財政と申しますか、そういう方面から補給する余地もありましょう。だけれども、公社の建前からいって、そう無制限にもやれますまいから、いろいろな問題がございますものですから、ただ運賃値上げを内部の操作、いわゆる国鉄のやりくりだけで、やらなくても済むだろうとか済まぬとかいうことは、今ここで何とも申し上げられませんです。
#152
○大倉精一君 最後に一つお伺いするのですが、この問題はこれ以上お尋ねしても同じだと思います。ただ、少くともこのくらいのことは言えるのじゃないかと思いますが、大臣とされては、年度内においては運賃値上げをしない、こういう方針を持っておる、少くともこの方針は大臣としては堅持していくつもりである、こういうことに承知してもよろしゅうございましょうか。
#153
○国務大臣(吉野信次君) その通りでございます。
#154
○大倉精一君 それでは、この問題は別に一つ国鉄の総裁にもお伺いいたしまして、その結果によってこれは再質問することをお許しいただきたいと思います。
    ―――――――――――――
#155
○委員長(左藤義詮君) 片岡委員より発言を求められておりますので、これを許可いたします。
#156
○片岡文重君 海上保安庁の範囲になると思うのですが、ちょっと議事進行について……。
#157
○委員長(左藤義詮君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#158
○委員長(左藤義詮君) 速記を始めて。
#159
○片岡文重君 海上保安庁から御出席になっておられる政府委員はどなたですか。
#160
○委員長(左藤義詮君) 警備救難部長でございます。
#161
○片岡文重君 最近、東京湾の木更津沖を中心として、再び、三たびといいますか、ことしもまた油によるノリの被害が大幅に発生しているということが伝えられておるが、海上保安庁としてこの被害の発生しておることを御承知かどうか。
#162
○説明員(砂本周一君) 承知しております。私どもの承知いたしております大体の様子を、現在まで存じておりますことをお答えいたしたいと思います。詳細は今調査中でございますから、若干後ほど御訂正申し上げる事項もあるかと思いますが、十二日に汚濁の発生があったようでございまして、地元の人たちで十三日の早朝にこれが発見されたように報告を受けております。従いまして、私どもの出先機関でございます横浜海上保安部は直ちに船艇を派遣いたしまして、それには当然関係官を乗せまして、現地の調査に当っておりまして、まさに油の浮遊している現状、あるいは油のノリ関係へ汚濁を与えている現状を確認いたしております。その際、いろいろ今後の調査その他の必要物件といたしまして、その付近にありました油を、第一回といたしましては、約石油カン一カン程度のものを採取いたしまして、持ち帰っております。その後、船艇によります状況の調査にあわせまして、私どもに所属しておるヘリコプターも出しまして、その付近並びに東京湾一帯の状況を調べました。なおその後に引き続きまして、関係があると思われます範囲におきましては、陸上におきましても、あるいはまた海上を運航いたしました船艇につきましても、調査を進めておるのが現状でございます。
#163
○片岡文重君 現在調査が進行中であるということですから、ただいまの御説明並びにこの進行経過を後ほど書面にして委員会に提出していただきたいと思いますが、この種の事件は昨年も一月末から二月の初めにかけて起ったことであり、一昨年も一月の終りから二月にかけて同様な事件が発生しておる。昨年も一昨年も、ついに被害を与えたいわば加害者ともいうべきものがわからないかのごとく伝えられておるのですが、少くとも昨年は相当国会の問題にもなり、農林水産委員会等においても数回にわたって問題として取り上げられておると承知しておりますが、海上保安庁としてその後この捜査をどういうふうにして進めてこられたのか。それからその加害者と目されるべきものが、大体少くとも被疑者が指摘できたのかどうか。昨年の事故についての概略を一つ御説明いただきたいと思うのです。
#164
○説明員(砂本周一君) すでに一カ年になる昨年の事件でございますが、先ほど委員からのお言葉のように、たびたび国会でもその当時の模様は御説明しておりますが、遺憾ながら、油を流しましたものを現在に至りましてもはっきり確認することができないのでございます。私ども法規に基きまして取締りをやる立場にありますものといたしましては、非常に遺憾に存じております。
 いろいろ国会の御意向もございましたし、また私どもの必要からも、海上における汚濁につきましてはいろいろな弊害がございますので、現在におきましても、まず私どもの直接関係としては、港則法によって廃油その他の廃物を港の境界から一万メートル以内においては捨ててはいけない。この法規は、大体東京湾におきましては捨てることを許される場所はほとんどないわけでございまして、港則法におきましても捨てることを取り締る一応の根拠はあるわけでございます。そのほか、水産資源保護法その他若干の関係がありますけれども、拾い上げますとかなりの法規があるのでございますが、それは非常に限られておりまして、やはりこれは、こういった弊害の防止については法規の上においてもさらに検討を要するということが、関係者におきましても十分認識されたわけでございますが、その後どういうふうに法規の面で整備するかは、事務的には関係各省でその後も折衝しております。しかし現在まだはっきりした方針がきまったものはないと思うのでございます。ただ、これは海上保安庁だけでございませんので、特に今申しました水産資源保護法、これは当然水産庁の関係でございますし、そういう関係で、今ここで今後法律的にどう整備されますか、私はっきりとしたことはお答えできません。ただ、なかなか海上のことでございまして、直ちに法の整備ができないにしろ、現在大体は今申しましたように取締りの根拠もございますが、さらにこれを徹底的にやるとなりますと、いろいろな困難の事項がございますので、一年間は経過いたしましたが、あらためてこういう方法で的確にやる方針がきまりましたということをここでお話し申し上げることができないのを、残念に思っておりますが、その後引き続いてその努力はしておるわけでございます。
 昨年起きましたケースにつきましても、いまだにその根源がつけません。これはやりっぱなしをしておるわけではございませんが、遺憾ながら、それをつきつめる結果になっておりません。そうしたところに、大体まだ原因がはっきりつかめないのでございますが、現場における状態におきましては、ほぼ似かよったような状況で、しかも偶然だと思うのでございますが、時期的にも場所的にも、ほぼ同一の場所に起きたのでございまして、こういう事実に基きまして、最善を尽して、今回こそは何とかその根源をつかみたいと、こういうことで現地機関は全力をあげている次第でございます。
#165
○片岡文重君 法の整備ができないからとかいうようなお話でございますけれども、私のお尋ねしているのは、その前の問題だと思うのです。被疑者が指摘されて、その被疑者に対する措置ができぬという場合に、初めてその法の問題が上ってくるのであって、今私のお尋ねしているのは、去年も、おととしも、ことしも、まさに偶然過ぎるような偶然かもしれませぬけれども、同じような時期にほとんど同じような事態によって、沿岸のノリ業者、というよりも、むしろ文字通り零細なノリの栽培者が、漁民が、何と表現していいか、とにかくなべ、かままでも売り尽してなお生活し得ないような困窮の状態に叩き込まれておって、しかもそういう困窮な状態に陥れた被疑者が、三年も続いて被疑者そのものが指摘できない、こういうことは、これは法の問題じゃなくて、少くとも海上保安庁としての活動に私はかかっているのじゃないかと思う。またその被疑者が海上で流したのか陸上で流したか、それはわからぬですけれども、いずれにせよ、海上保安庁の手に負えなければ、それぞれ必要な機関と連絡をとって捜査すればできることであって、そういう手続について、一体海上保安庁は三二年の間どういう手続をとっておられたか、それをお尋ねしたい。
#166
○説明員(砂本周一君) 昨年の被害が起きてから始めたわけじゃございませんので、海上におきましては常に、こういった犯罪を予防するため、あるいはそれを検挙するために、非常に少いのではございますが、船艇を動かしまして、必要な面には常にパトロールをやっているわけであります。そういうことでこういう面の予防をはかっているわけでございます。
 それから事件がたまたま出ますと、もちろん私どもの力の及ぶ限り、捜査なりあるいは調査を進めますし、必要ならこれはもちろん、陸上の関係で必要であるならば、警察の協力も十分得られるわけですから、その必要の限度におきましてはそういう措置をとることもございます。
 それからこれは東京湾に二度続いたのでございますが、他の港湾にもあり得ることでありますので、特に昨年の事件発生以来、全国にわたりましても、こういうことの、起りませんように、事前にいろいろな措置は講じてあるわけであります。しかし遺憾ながらまた同じことの出てきたことは、非常に残念でございますし、被害を受けられました方に対しましても、非常にお気の毒に存じております。ただ、その救済方法につきましては、私どもちょっと何とも申し上げられません。
#167
○片岡文重君 被害救済について、もちろん海上保安庁にどうこうせいということを私は言っているわけじゃない。これは方面が違うのだから、そういうことを聞いているのじゃなくて、繰り返すようですが、少くとも一昨年の一月末から上月にかけて、昨年もまた一月末から二月にかけて、ことしもまた二月早々に、ほとんど同じような事態が起きた。しかも横浜からは目と鼻の先です。そういう所で同じ事態が三年も続いて起って、それでなお海上保安庁としてその被疑者すらあげることができない。たまたま千葉県や千葉大、あるいは防衛庁でもやったようですが、化学試験を行なっても、それに対する判定すら海上保安庁ではしておられない。あまりといえば、海上保安庁、少しなめられているのじゃないですか。被疑者にあまりにも侮辱されておると思うのですよ。眼と鼻の先で三回も同じようなことをやられて、しかも被疑者もあげられない。一体今後被疑者を早急にあげ得る自信があるのですか、海上保安庁に。
#168
○説明員(砂本周一君) それは全力を尽しまして、ぜひあげるという考えでもって当っております。
#169
○片岡文重君 全力を尽すことは、おそらく過去三回にわたって全力を私は尽されただろうと思う。それでなお今のような状態ですが、この間において、特に昨年の事件発生以来の今日までの捜査方針といいますか、捜査の経過というものを、一つ書面にしてこの委員会に私は提出してほしいと思う。
 それから、もしこの海上保安庁の現在の状況で、たとえば手が足らない、あるいは機動力が不足をしておる、そういうようなことがもし言えるとするならば、どういう点においてそういうところが不足をしておるのか、足らぬのか。それから、さっきあなたは、法の点に不備があるというようなことを言っておられたようだが、この被疑者捜査に当ってどういうところに法の不備の点があるのか。従って、その場合にはどういう法的な措置を講ずることが適切なのか。そういう点についても一つ書面でこの委員会に私は提出してほしいと思う。できるだけ早い機会にその調査を出していただいて、それを拝見した上で、再びこの調査を進めていきたいと思います。
#170
○説明員(砂本周一君) 先ほどの資料その他につきましては、できるだけ早く提出いたします。
#171
○委員長(左藤義詮君) ちょっと、資料のついでに、私からも。……大阪湾その他屎尿投棄などを非常にしておって、水産資源その他非常に迷惑をしているところがあるのですが、そういうことに対しても、東京湾だけでなしに、全国的に海上保安庁としてどういうような取締りをしておられるか、あるいはそういうことに対してすでに取り締られた実績があるかどうか。せっかくコースト・ガードというものがこうしてやっているのですが、今なめられたというお話がありましたが、十分にその機能を発揮してやっておられるかどうか。あるいはそれに対して法的に、あるいは現存の勢力ではとても不十分だというのならば、その理由もですね。そういう問題も、今度のノリだけでなしに、全国的なコースト・ガードでも、海岸の汚染、特に水産資源に対する影響、その他の点についても、どういう方針でやっておられるか、またどういうような実績、を上げておられるか、あるいはどういうような欠陥があるのか、その欠陥をどうしたら満たすことができるか、こういうことなどについてもあわせて資料を提出していただきたいと思います。委員長からお願いしておきます。
#172
○説明員(砂本周一君) ちょっと、大阪湾の何ですか。
#173
○委員長(左藤義詮君) 屎尿その他の問題ですね。これは非常に、屎尿なんか投棄して、困っている問題ですから……。
#174
○片岡文重君 東京湾の館山あたりにも一ぱい流れ込んでいるでしょう。同じことですよ。東京湾のやつは東京都で捨てたやつです。大阪湾のは大阪市が捨てる。その捨てるやつが、規定の所まで行かないで捨ててしまうのだろうと思のだが、流れ込む。
#175
○委員長(左藤義詮君) 今のお話で、港則法によってもほとんど、東京湾なり大阪湾なり、捨てる所がないはずですが、それにもかかわらず、捨てているのですから、それを十分法の規定する外までやっているかどうか。これは非常に困ったものと思うのですが、そういうことを十分認識して、それに対して措置をしておるかどうかですね。
#176
○説明員(砂本周一君) 今の問題、この汚物の投棄につきましては、これは関係当局とよく打ち合せまして、割合に取締りは比較的容易でございますので、東京湾の場合におきましても、これはだんだん改善されていっております。そうしてその投棄場所その他につきましても、その監督は十分徹底するような措置を講じつつございますから、これは改善される。大阪につきましても、その点はよく現地と連絡しまして、徹底を期したいと思います。
 それから油の点は、非常に困難でございますし、先ほどの関係につきまして十分資料を整えまして、御回答をいたします。
#177
○委員長(左藤義詮君) 本日の委員会は、これにて散会をいたします。
   午後一時二十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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