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1955/12/02 第23回国会 参議院 参議院会議録情報 第023回国会 本会議 第2号
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1955/12/02 第23回国会 参議院

参議院会議録情報 第023回国会 本会議 第2号

#1
第023回国会 本会議 第2号
昭和三十年十二月二日(金曜日)
   ○開 会 式
 午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長及び議員、内閣総理大臣その他の国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場に入り、所定の位置に着いた。
 午前十一時 天皇陛下は衆議院議長の前行で式場に出御、玉座に着かせられた。
   〔諸員敬礼〕
午前十一時一分 衆議院議長益谷秀次君は式場の中央に進み、次の式辞を述べた。
   式 辞
  本日天皇陛下の御臨席を仰ぎ第二十三回国会の開会式を挙げるにあたり、衆議院及び参議院を代表して式辞を申し述べます。
  今次臨時国会は、地方財政再建促進に関する案件其の他の審議に関して召集されたものであります。終戦後十年わが国政界の各分野に画期的な政治力の結集をみるに至つた今日、国会を開会して諸般の重要問題を解決し、国民と共に全力を挙げて国家の興隆に努力し、国運の前途に光明をもたらさんとすることは、その意義洵に深いものがあります。
  ここに開会式を行うにあたり、われわれに負荷せられた重大な使命に鑑み、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もって国民の委託に応えようとするものであります。
次いで侍従長は御言葉書を天皇陛下に奉り、天皇陛下は次の御言葉を賜わった。
   御言葉
  本日、第二十三回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君とともに、親しく一堂に会することは、わたくしの深く喜びとするところであります。
  わが国が、独立国家として友邦諸国と国交を回復してここに三年有余、国民の努力により、ますます世界の信頼と友好とを得つつあることは、諸君とともに喜びに堪えません。
  しかしながら、わが国が、民主的文化国家として、更に経済の発展、民生の安定にその成果をおさめ、国運を隆盛に導き、かつ、信を世界に深めてゆくためには、今後いつそうの努力を要することと思います。
  このときに当り、わたくしは、国会が国権の最高機関としての使命を遺憾なく果し、また全国民が憲法の諸原則をよく守り、互に協力して各自の最善を尽すことを切に望みます。
   〔諸員敬礼〕
 衆議院議長は御前に参進して、御言葉書を拝受した。
 天皇陛下は参議院議長の前行で入御。
 次いで諸員は式場を出た。
   午前十一時六分式終る
     ─────・─────
昭和三十年十二月二日(金曜日)
   午後二時三十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二号
  昭和三十年十二月二日
   午後二時開議
 第一 常任委員長辞任の件
 第二 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
 議員大山郁夫君は、十一月三十日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 笹森順造君から、発言を求められました。この際、発言を許します。笹森順造君。
   〔笹森順造君登壇、拍手〕
#4
○笹森順造君 参議院議員大山郁夫君は、去る十一月三十日逝夫されました。私ども同僚議員といたしまして、まことに痛惜のきわみであります。ここに同君の生前を回顧いたしまして哀悼の辞をささげたいと存じます。
 君は、明治十三年兵庫県に生まれ、幼少より頭脳明晰、学を好み、明治三十八年早稲田大学政治科を卒業、翌年大学の講師となられました。明治四十三年にはアメリカに留学、シカゴ大学にて二年間政治学を研究せられ、次いでドイツのミュンヘン大学にて国家学を二年間研究、大正三年帰国され、早稲田大学教授となられました。大正六年大学内部の紛争に端を発した同僚教授の馘首を不当として反対し、早稲田を去られ、大阪朝日新聞社に入社し、論説記者となられ、翌七年十月には寺内内閣のシベリア出兵に反対して、同僚記者とともに新聞社を退き、翌年同志と雑誌「我等」を創刊、その後招かれて早稲田大学教授に復帰されまし
た。しかし、君の現実政治に対する関心は次第に激しいものとなり、昭和二年には労働農民党中央執行委員長に就任、同時に早稲田を再び去られております。翌三年には労働農民党は結社禁止となり解散、君は中央執行委員長の職を退かれました。昭和五年には東京五区より立候補、衆議院議員となられ、議会にて最低賃銀法、軍備縮少等を提唱して活躍されました。昭和七年に君はアメリカへ行かれ、ノースウエスタン大学の政治学研究嘱託等をされ、自後昭和二十二年まで十六年にわたる亡命生活を送られましたが、昭和二十二年十月、君は帰国に当つて国民的大歓迎を受け、三たび早稲田の母校へ戻られました。しこうして昭和二十五年には参議院選挙に京都地方区より立候補、当選され、再び政治のヒノキ舞台に立たれてからは、国会活動はもとより、アジア、ヨーロッパ、ソ連等へたびたびおもむかれ、国際政治の分野において活発に動かれ、寧日なきありさまでありました。昭和二十六年十二月にはスターリン国際平和賞を受けられたこともわれわれの記憶に新たなところであります。
 君は、節操の人でありました。君の生涯は、まさにあらしの中を突き抜け、突き抜け、ひたすらに一筋の道を歩き続けられた苦闘史であったと言えましょう。その一筋の道とは、社会大衆のためのよき政治の確立という願いであったのでありましょう。君は学問的素質に恵まれ、学者でもありましたが、単に学問に携わるのみでは満足できずに、現実政治に飛び込み、渾身の力を社会の改革に傾倒されたことは、君が真摯な情熱の結果であったのではないでしょうか。君が温顔の中に秘められていたそのような政治的情熱は、主義思想の立場はいかにあれ、心から尊敬追慕の情を禁じ得ないものがあります。
 今やわが国の民主政治における政党は分裂から結集に進み、新発展の時期を迎えていますが、一方において国際政治情勢は容易ならぬものがあり、国会の責務いよいよ重大を加えますときに、同君のごとき高潔にして洗練さ
れ、かつまた、このような折に国際政治家としての君を失いましたことは、まことに本院のために痛恨にたえないところであります。
 ここに大山君の御逝去に対し、つつしんで弔意を表し、君の御冥福を心からお祈りして追悼の言葉といたす次第であります。(拍手)
#5
○議長(河井彌八君) お諮りいたします。大山郁夫君に対し、院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。議長において起草いたしました議員大山郁夫君に対する弔詞を朗読いたします。
  参議院は議員大山郁夫君の長逝に対しまして、つつしんで哀悼の意を表し、うやうやしく弔詞をささげます。
     ―――――・―――――
#7
○議長(河井彌八君) 日程第一、常任委員長辞任の件。
 内閣委員長新谷寅三郎君、地方行政委員長小笠原二三男君、法務委員長成瀬幡治君、外務委員長石黒忠篤君、大蔵委員長青木一男君、文教委員長笹森順造君、農林水産委員長江田三郎君、運輸委員長片岡文重君、逓信委員長瀧井治三郎君、建設委員長石川榮一君、予算委員長館哲二君、決算委員長小松正雄君、議院運営委員長郡祐一君、懲罰委員長一松定吉君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたい旨の申し出かございましたいずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#9
○議長(河井彌八君) つきましては、この際、日程に追加して、これよりただいま辞任を許可されました各常任委員長及び欠員中の社会労働委員長並びに商工委員長の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。
#11
○三浦義男君 ただいまの選挙は、その手続を省略いたしまして、いずれも議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
#12
○阿具根登君 私は、ただいまの三浦君の動議に賛成いたします。
#13
○議長(河井彌八君) 三浦君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。
 よって議長は、内閣委員長に小柳牧衞君を指名いたします。
   〔拍手〕
#15
○議長(河井彌八君) 地方行政委員長に松岡平市君を指名いたします。
   〔拍手〕
#16
○議長(河井彌八君) 法務委員長に高田なほ子君を指名いたします。
   〔拍手〕
#17
○議長(河井彌八君) 外務委員長に山川良一君を指名いたします。
   〔拍手〕
#18
○議長(河井彌八君) 大蔵委員長に岡崎真一君を指名いたします。
   〔拍手〕
#19
○議長(河井彌八君) 文教委員長に飯島連次郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
#20
○議長(河井彌八君) 社会労働委員長に重盛壽治君を指名いたします。
   〔拍手〕
#21
○議長(河井彌八君) 農林水産委員長に棚橋小虎君を指名いたします。
   〔拍手〕
#22
○議長(河井彌八君) 商工委員長に三輪貞治君を指名いたします。
   〔拍手〕
#23
○議長(河井彌八君) 運輸委員長に左藤義詮君を指名いたします。
   〔拍手〕
#24
○議長(河井彌八君) 逓信委員長に松平勇雄君を指名いたします。
   〔拍手〕
#25
○議長(河井彌八君) 建設委員長に赤木正雄君を指名いたします。
   〔拍手〕
#26
○議長(河井彌八君) 予算委員長に西郷吉之助君を指名いたします。
   〔拍手〕
#27
○議長(河井彌八君) 決算委員長に田中一君を指名いたします。
   〔拍手〕
#28
○議長(河井彌八君) 議院運営委員長に石原幹市郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
#29
○議長(河井彌八君) 懲罰委員長に中川幸平君を指名いたします。
   〔拍手〕
     ―――――・―――――
#30
○議長(河井彌八君) この際、お諮りいたします。鹿島守之助君から、病気のため会期中請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#32
○議長(河井彌八君) 日程第二、国務大臣の演説に関する件。
 鳩山内閣総理大臣、重光外務大臣から、発言を求められております。この際、順次発言を許します。鳩山内閣総理大臣。
   〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は今回、国会の指名によりまして、三たび、内閣総理大臣の重責をにない、第三次鳩山内閣を組織いたしました。
 御承知の通りこの内閣は、新たに発足した自由民主党を基礎として成立したものでありますが、それだけに、われわれは、今までより一そう強くその責任の重大なることを自覚するとともに、国民の信頼と期待とにこたえるため、全力を振りしぼつて国政に当ることを決意しております。新内閣の施政方針につきましては、引き続き開かれる第二十四国会において申し述べることになっておりますので、ここにおいては、ただ私のいだく所信の一端を披瀝したいと思います。
 元来、二大政党対立は、私の古くからいだいていた政治の理想形態でありましたが、今回保守陣営は自由民主党の誕生によってついにその大合同を達成いたし、一方社会党もその統一を実現することによってここに二大政党
対立の形をとるに至りましたことは、国家のためまことに喜びにたえないところでございます。これによって、わが国の議会政治は、従来しばしば、分立した幾つかの政党の間に見られた不明朗な政治的かけ引きの余地を完全に遮断いたしまして、政策の審議にその精魂を傾けられるという正常な道を歩むことができるからでございます。民主政治は断じて力による政治であつてはなりません。私はこの機会に、二つの政党はあくまでも言論によって争い、多数決によって決するという原則の上に立つよき先例を積み重ねまして、それによって動かしがたい議会政治のルールを作り上げ、国会の品位を高めまして正しい民主政治の姿を確立しなければならないと考えております。
 さて、第一次、第二次鳩山内閣は、平和外交の推進と国民生活の安定に努力して参りましたが、新内閣もこの方針を強く推し進めることは申すまでもございません。
 まず日ソ交渉においては、わが方の主張の実現をはかりつつ、できる限り早期に妥結の方向に導くという従来の方針通り折衝を継続するつもりでございます。同時に、日比賠償等につきましても積極的に解決をはかり、アジア諸国との国交調整に力をそそぐ所存であります。
 一方国民生活の安定については、ようやく緒についた住宅建設に一段と意を用いまして、また社会保障の拡充や中小企業対策等にも一そうの努力を払いたいと考えております。
 さらにわれわれはこの機会に、保守党による絶対多数党内閣の仕事としまして、新たに次の三つの目標をかか
げ、強力にその実現をはかりたいと存じます。
 その第一は憲法の改正であります。わが国を真の独立国家に立ち返らせるためには、何よりもまず国の大本を定める憲法を国民の総意によって自主独立の態勢に合致するよう作り変えることが大切であることは言うまでもありません。このために内閣に憲法調査会を設置する手段をとつて、慎重にその準備を進めなければならないと考えております。
 その第二は行政機構の改革であります。わが国の行政機構には、占領中に作られた制度がそのまま存続しているものが数多くあります。政府はそのため早急に行政審議会を拡充強化しまして検討を加え、国民の便宜をはかることを最重点としまして、その組織と機構を国情に適合するよう全面的に改革するつもりであります。
 その第三は税制の改正であります。税制は国民生活に最も深い関係を持つものでありますが、従来の税制がその仕組みも複雑である上に、国民負担の面からも不均衡の感のあることは事実であります。そこで新内閣は、この際衆知を集めて税制全般に根本的なメスを入れまして、国民に喜んで協力を願、える新税制体系を作り上げたいと念願をしております。
 さらにこのほか、いま急速に解決を迫られている地方財政の行き詰まりにつきましては、いずれ通常国会において中央地方を通ずる抜本的な打開策を講ずる考えで、目下その具体策を検討中でありますが、とりあえずの措置については今臨時国会に提案いたしたいと思っております。
 以上、私は所信の一端を申し述べましたが、所内閣は絶対多数の上に立ちながらも、少数党の意見を十分聞い
て、民主政治を守り、どこまでも謙虚な態度で国民の声に耳を傾けまして、国民と共に歩む明朗な政治を行う決意であふれております。
 ここに国会を通じて国民諸君の御理解と御協力を心からお願いする次第でございます。(拍手)
#34
○議長(河井彌八君) 重光外務大臣。
   〔国務大臣重光葵君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(重光葵君) 私は、わが対外関係についてその概要を申し述べんとするものでございます。
 これがためには、まず最近の国際情勢の動向についても言及するの必要があると思います。世界が共産陣営と自由民主陣営とに分れて激しく冷戦が続けられて参りましたが、この形勢は
本年七月、ゼネバに開かれました米英仏ソの首脳者会談によって緩和せられ、原子爆弾による戦争は回避せられたかの観を呈しまして、全世界は一応安心をいたしたのでありますがこの会談においては、両陣営和解の基礎となる諸問題の処理は、すべて次に来たるべき外相会議にゆだねられた状況でございました。
 十月、ゼネバに開かれました四国の外相会議におきまして取り上げられた問題は、第一、ドイツの統一と欧州の安全保障、第二、軍備縮小、第三、東西の交流等の問題であったのでありますが、ソ連側と米英仏の三国側との間に、これについて何一つ意見の一致を見るものがなかった。のみならず、根本的の対立が一そう明瞭となって来まして、その調和は少くとも当分は不可能のことであるとの結論に達したようでございます。
 現にヨーロッパにおける情勢は、勢力の均衡によって大いなる動揺はないようでございますが、中近東においては、英国の主催するバグダッド会議におきまして反共防衛態勢を固めんとしておるのに対し、共産陣営はエジプト等のアラビア諸国に働きかけて、さらにアジア諸地域にも手を延ばさんとする動きが見られているのであります。かようなソ連側の積極政策は、最近原水爆の実験の報道と相待って、いたく自由民主陣営の神経を刺激しておるありさまでございます。かくして、国際情勢は再び緊張の度を増してきたと言わなければならぬ形勢でありまして、この形勢がいつまで続くか今日、にわかに予断はできません。しかしながら、各国ともその動向には対処せざるを得ざる情勢と思われます。
 かかる情勢のもとに、日本の政策及び進路がいかなるものであるかということについては、各国とも異常の注意を払つているのは当然でございます。日本は戦後十年にしてようやく再建の途上にあり、サンフランシスコ条約実施以来、自由民主陣営の一員として独立を完成し、新たに国家の建設を急がねばならぬことは言うまでもございません。自由民主の国家としての日本を再建するためには、どうしても自由民主主義諸国との協力関係を国策の基調として平和外交を推進することが肝要であるのでありまして、第三次鳩山内閣の方針もまたここに存するのでございます。
 この根本政策を進めるためには、わが国の立っておる立場、政府の政策につきまして、諸外国、特に友好国に対して誤解の余地なきょう、明確にこれを了解せしめておくの必要がございます。かようにして初めてこれら諸国との協力関係が推進せられ得るのであります。私が過般鳩山総理の意向をもたらして渡米し、米国当局と忌憚なき意見の交換をなし、双方の理解を深め、さらに両国の協力関係を増進することに努めたのは以上の趣旨に基くものでございまして、その後引続き米国との間におきましては、常に密接なる連絡を保つて、諸般の問題について協力に努めている次第でございます。
 さてわが平和外交を推進して世界の平和に貢献せんがためには、いやしくもいまだ国交の回復せられていない国との関係を正常化することに努むべきことは当然のことで、ロンドンにおける日ソ間の交渉もこの見地によって進められておるのでございます。交渉は去る六月一日から始められまして、正式会談は回を重ねること十五回に及びましたが、ソ連全権が、九月、国連総会に出席のためロンドンを離れました結果、わが全権も一時帰朝し、現在に至っておりますが、ソ連全権が再びロンドンに帰り、交渉再開の準備でき次第、さきに発表せられました日ソ共同声明の趣旨に従って、わが全権もロンドンに再任する用意がある次第でございます。これまでの交渉の経過はすでに説明してきた通り、でありまして、最も重要なる問題は、抑留者引き揚げ及び領土に関連する諸問題でございますが、引揚問題については、わが方は当初より在ソ抑留邦人全部につき、即時送還方を熱心に要求して今日に至っておるありさまであります。また領土問題については、歴史上常に日本の領土であった諸島の返還は当然これを主張せなければならぬのでございます。しかし、これらの問題について今日までのところ、十分に妥結を見るまでに至っておりません状況であります。しかしながら、日ソ両国ともに、本交渉においては現に第三国との間に有する関係はこれを認め、また内政に干渉しないという基礎の上に平和条約を締結して 国交の正常化をはからんとすることに至っては双方とも意見の合致を見ているのでございますから、政府としては、今後の交渉においては国論の帰趨に従い、既定方針に基き、主張すべきはあくまで主張して所期の目的達成に努めたいと思っておる次第でございます。
 日本がアジアにおける民主国家として新興アジア諸国との間に正常国交の樹立をはかることは、ひとり平和外交推進の見地より重要であるのみならず、日本の置かれた地理的条件よりして喫緊の事柄であると思うのであります。
 最も緊密な関係にあるべき日韓両国が、依然として正式国交を樹立し得ない状況にあることは、政府の最も遺憾とするところであります。わが国といたしましては、すみやかに韓国との間の諸懸案を解決し、両国永遠の和親関係を樹立したい所存でありまして、韓国側におきましても、わが方の態度に同調されんことを衷心より希望してやまぬものでございます。しかるに最近韓国軍事当局は、いわゆる季ラインを越える日本漁船はこれを砲撃撃沈することあるべき旨の発表を行なっております。政府はこの事実を重要視してその真意の那辺にあるかについて目下韓国政府に照会中でございます。なおまた、さらに韓国側に不法抑留せられておる邦人漁夫の救出の問題がございます。これについては韓国側に終始厳重交渉をいたしておるのでございます。
 次にビルマとの賠償問題は幸いに解決せられまして、国交が開かれましたが、今や賠償実施の問題が非常に重要となってきたので、政府においては極力努力の結果、賠償実施の取りきめが本年十月に至って成立することができまして、直ちにその運用を見ておるのであります。さらにまた国交を回復するためには、その前提として賠償問題の解決をはからなければならぬアジア諸国がございます。
 フィリピンとの賠償問題につきましては、久しく内交渉の段階にありましたが、その結果、先方からあらためて提案がございましたので、わが方においてもこの提案について目下慎重に検討中であるのでございますが、日比両国が本問題未解決のために長く国交を回復することのできぬままに推移することは、アジア地域の平和確立のため、まことに遺憾とするところであるのであります。そこで政府といたしましては、すみやかにこれが妥結に努めて、その解決を実現したいと考えておる次第でございます。このほかに、インドネシア及びヴェトナムにつきましても、賠償問題の解決を必要とする状況でございます。
 なお昨年末カンボジア国が賠償請求権を放棄してわが国に対する友情を示してくれましたことは、すでに御承知の通りでございます。最近同国は、さらに中立国にあったわが財産に対して権利を放棄するという意思表示を表明して参りました。同国の示された再度の好意に対し、私はここに深い謝意を表明する次第でございます。同国首相ノロドム・シアヌーク殿下が近くわが国との親善協力関係を増進するために来朝することに相なっているので、同殿下を国賓として歓迎申し上げることに決定をいたしております。
 近時わが国の対外経済は著しい発展を遂げている次第でありまして、経済外交は政府の特に重きを置いているところであります。貿易の拡大をもたらした要因の一つである世界経済の拡大傾向は、米国経済の繁栄を映じて、今後も持続するものであると見られますが、他面各市場における通商競争はますます激化の傾向にあると判断いたされるのであります。この間にあつて、関係国と個別的に必要なる交渉を行うのほか、わが国が一般国際社会における公正平等な地位を回復するためには、政府はこれまで最善の努力をいたして参つたのでございます。幸い去る九月ガット加盟の実現によりまして、今や国際経済諸機関のすべてにおいて、日本は主要加盟国として活躍することができることになりましたことは、大なる進歩であると考えております。
 わが国の輸出が今後着実に伸びていくためには、相手国市場においてでき得る限り摩擦を生じないよう、一段の工夫が必要でございましてそのため、わが商品と貿易のやり方等について、国際的評価を高めていくように、各方面の努力が要求される次第でございます。政府といたしましてはガット、国際通貨基金等の精神、趣旨にのつとり、公正なる施策を進め、もってこれら諸国の危惧と疑惑とを除いてわが国に対してなされておりまする差別的待遇の留保を撤回せしめるように、鋭意交渉を進めておる次第でございます。
 なお貿易の自由化の動きにも対応いたしまして各国との通商交渉において積極的に貿易を拡大することに努力をいたす必要がございます。特にわが国の主要市場であるスターリング地域との関係におきましては、過般の日英貿易取りきめによって、今後貿易は大いに増加せられることに相なりました。そのほか、対ドル地域貿易につきましても、最近わが国の輸出は著しい伸張を示しております。
 他方東南アジア、中近東、中南米等、わが国にとつて特に重要な関係にある諸国との間におきましても貿易は伸展を示しておりますが、さらに進んで、これらの国々に対しては経済開発に協力するという方針のもとに相互の親善関係を一そう増進すべく努力をいたす所存でございます。
 以上、最近におけるわが日本の平和外交の概況を述べた次第でございますが、私の外交報告はこれを終ることにいたします。(拍手)
#36
○議長(河井彌八君) ただいまの国務大臣の演説に対し質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#37
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。
 次会は、明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時十二分散会
   ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、故議員大山郁夫君に対する哀悼の辞
 一、故議員大山郁夫君に対し弔詞贈呈の件
 一、日程第一 常任委員長辞任の件
 一、常任委員長の選挙
 一、議員の請暇
 一、日程第二 国務大臣の演説に関する件









ソース: 国立国会図書館
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