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1955/12/08 第23回国会 参議院 参議院会議録情報 第023回国会 法務委員会 第2号
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1955/12/08 第23回国会 参議院

参議院会議録情報 第023回国会 法務委員会 第2号

#1
第023回国会 法務委員会 第2号
昭和三十年十二月八日(木曜日)
   午前十一時十六分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
十二月六日委員藤原道子君及び吉田法
晴君辞任につき、その補欠として亀田
得治君及び赤松常子君を議長において
指名した。
本日委員大屋晋三君、泉山三六君、松
野鶴平君及び大谷贇雄君辞任につき、
その補欠として川村松助君、佐野廣
君、高橋進太郎君及び西岡ハル君を議
長において指名した。
    ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     高田なほ子君
   理事
           一松 定吉君
           宮城タマヨ君
           市川 房枝君
   委員
           川村 松助君
           斎藤  昇君
           佐野  廣君
           高橋進太郎君
           西岡 ハル君
           小林 亦治君
           中山 福藏君
  衆議院議員
   法務委員長  高橋 禎一君
  国務大臣
   法 務 大 臣 牧野 良三君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  説明員
   法務省民事局参
   事官      平賀 健太君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○罹災都市借地借家臨時処理法第二十
 五条の二の災害及び同条の規定を適
 用する地区を定める法律案(衆議院
 提出)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (法務行政に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(高田なほ子君) 大へんお待たせいたしました。これより法務委員会を開会いたします。
 まず罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律案を議題に供します。まず提出者から提案理由の説明をお願いいたします。
#3
○衆議院議員(高橋禎一君) ただいま議題となりました罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律案の提案理由を御説明申し上げます。
 昭和二十一年九月十五日より施行の罹災都市借地借家臨時処理法は、あるいは罹災建物の旧借主に優先的に借地権を取得させ、あるいは逆に、罹災地の借地権で今後存続させる意思がないと認めらるるものを消滅させるなどの道を開き、借地借家関係を調整して、罹災都市の急速な復興をはかることを目的として制定されたのでありますが、その後、同法の改正により、戦災の場合のみならず、別に法律で指定した火災、震災、風水害その他の災害の場合にも同法の規定を適用して、かかる災害地の復興の促進に資することとなったのであります。これにより、既往の大火災に本法を適用して、それぞれ所期の効果をあげております。
 昭和三十年十月一日新潟市に発生いたしました火災は、折柄佐渡沖を通過した二十二号台風による三十数メートルの強風にあおられ、火勢は急速に拡大し、たちまち市内各所に飛び火し、市街地の中心部約八万四千坪、約千月を焼失し、その被害見積額百五十億円に上っているのでありますが、早くも借地借家の権利関係が問題となっており、地元の市及び県当局も、本法の適用を強く要望しております。
 私どもも、新潟市における罹災地区の状況をつぶさに調査いたしましたところ、右災害につき同地区に罹災都市借地借家臨時処理法の規定を適用することにいたしますことが、同地区の借地借家関係を調整し、もってすみやかに同市を復興させるゆえんと考えられますので、ここに本法案を提出した次第であります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに本案を可決せられんことをお願いいたします。
#4
○委員長(高田なほ子君) 本案について御質疑のおありの方は御発言をお願いいたします。
#5
○一松定吉君 私は質問より前に資料の提出を一つ、法務省か裁判所か、どちらでもいいんですが、申し入れたい。この罹災都市借地借家臨時処理法を適用することに関して、借地人もしくは土地の所有者等の間に訴訟の提起されたのがあると思うのですが、そういうようなことはどういうようなことを原因として訴訟が提起せられたか、その提起せられた訴訟は今日どういうような状況にあるのかというようなことを、この関係者の方面から、表があれば出していただきたい。そうして、それは判決が確定したものはどういうものが確定したか、まだ確定しないで進行中のものはどういうふうになっておるか、それがありますならば、それを出していただきた意。これはこの法律の審議に最も関係が深いもので、われわれの参考になろうと思いますか、ありましょうか。
#6
○衆議院議員(高橋禎一君) 資料は、私どもの手元に、新潟市、新潟県及び建設省、法務省等から提出されたものがあるわけでございますが、訴訟が何件で、その結末がどうなっているかということについては、なお後ほど小木専門員から説明することにいたしまして、大体訴訟になっておるもの、調停事件として継続しているもの、あるいは法律相談所等に持ち込まれて、いわゆる紛争、紛議の形として現われておりますものが大体五百件ぐらいあると、こういうふうに考えられるわけであります。そういたしまして、先ほどの提案理由の説明の際には申し上げませんでしたが、借地借家関係の存在いたします、すなわち罹災全体に対するパーセンテージを申し上げますと、罹災地区における借地率が四〇%、借家率が五六%という、こういうふうな非常な高率の借地借家関係が存在いたしておるわけであります。すなわちただいま御説明申し上げましたように、非常に高率な借地借家関係が存在し、その中において今日まですでに約五百件の紛争、紛議が存在いたしておる、こういう実情にありますので、私どもといたしましては本法案を可決されまして、法律として罹災地における借地借家人等の保護をし、借地借家関係を調整いたしますことが、新潟市の復興を促進するゆえんであると考えておるような次第であります。
#7
○一松定吉君 私のお願いしたのは新潟市だけでない。この法律が適用されるようになってから、この法律をもととして訴訟事件が各地に起っておるだろうと思う、それを実は知りたい。それについてどういうような種類の訴訟が起り、そうしてその訴訟の結果はどうなっておるかということを、この新潟市の本件を審議する上に参考にしたい、新潟市のやつは今ここに表がついておるから、これはいい。
#8
○衆議院議員(高橋禎一君) その点につきましては法務省からこの方面の関係の説明員である参事官がおいでになっておりますから、その方からお答え願う方が適切であると考えます。
#9
○説明員(平賀健太君) この罹災都市借地借家臨時処理法は、本来戦災の跡地に適用するということでできた法律でございますが、御承知の通り第二十五条の二によりまして、その後における震災、火災、あるいは風水害なんかの際に大規模の被害が起りました場合に、地区を指定いたしまして適用しておるのでございますが、私どもが承知いたしておりますのは、この当初の戦災跡地に関しましては、都会では若干この法律の適用に関しまして、紛争が生じておるように承知いたしておりますけれども、その後の災害にこの法律を適用しました場合に、裁判所で多くの紛争が生じておるということは聞いておりません。大体円満に処理されておるのじゃないかと想像いたしておるわけでございます。もっとも法務省としましては、現在のところ裁判所の方の関係のことを詳しく承知いたしておりませんので、もしその点の詳細な調査が必要でございましたならば、裁判所の方に連絡いたしまして、その後に、この法律を、第二十五条の二によりまして適用しました場合に、一体裁判所にどのくらいの事件があっておるであろうか、調査してもらってもいいと思っております。
#10
○一松定吉君 私のお願い、希望するところは、こういうふうな法律は、これは非常な例外的の、ある特殊の地位におる人を保護する法律で、ほんとうから言ったら変則の法律ですね。だからしてこれがうまく適用されておるということであることを、われわれ立法の地位にある者は希望するのですが、しかしながら当事者においては、この法律の施行においていろいろ不服、不満があって、それが訴訟沙汰になっておるということがあるだろう、すると、そういうものの内容をわれわれが知ることによって、この法律をこのままずっと適用していくことについて、支障があるかないかというようなことをよく知った上で、こういう法律案の審議を終了したい。こういう建前から、今私の申し上げるような裁判上お互いの間に意見が衝突したような事柄について、法務委員としてそれらのことを知りたいと、こういう趣旨でありますから、今あなたの言うように、ごく大略で、ないだろうという想像でなくてね、こういう申し立てによって、こういう裁判が行われておって、その結果はこうなった、現に調停の方で多く処理されて、本訴になったようなものは少いとか、あるいはどういうようなものが常に多くこの訴訟の目的となって争われておるかというようなことを知りたいのですから、それを知るのには、あなたの言うその想像じゃなくて、やはり実際ある通りを……。そうすると法務省でおわかりにならぬとあれば、裁判所の方に一つ交渉して、そういう具体的の表があるのでしょうから、それをちょうだいしたい、こういう念願ですから、なるたけ早く一つ出していただきたい。私は第一この新潟の事件について、この二十五条云々を適用することについて異論があるわけじゃありませんが、それについてわれわれが快くこれを承認する前提としては、そういうようなことをやはり知っておく必要があるというので、そういう具体的な表を要求するわけなんだから、なるべく至急に一つお願いしたい。
#11
○説明員(平賀健太君) 裁判所の方に行って連絡いたしまして、至急調査をいたします。
#12
○衆議院議員(高橋禎一君) 一松委員の御発言に関連いたしまして、提案者側の考えを簡単に述べさしていただきたいと思いますが、実は私どもこういう大災害が起りました際に、今提案しておりますこの「罹災都市借地借家臨時処理注第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律」を適用することによって、実は起るべき訴訟なりあるいは紛議、紛争というものを防ぎ得ると、こういう見解に立っておるわけでありまして、もしもこの法律を適用しなかったならば、それは非常にたくさんの訴訟なりあるいはその他の紛争、紛議が起ると思いますが、これを適用すれば、それが起らないで済むのだ、そういう見解に立っておりまして、かりに今までこの法律を適用いたしました災害地域において訴訟事件簿が、先ほど平賀参事官が説明いたしましたように起っておらないといたしましても、それはすなわちこの法律を適用したからの結果であると、こういうふうに考えられまするのと、いま一つは、新潟市は災害を受けましたのが十月一日でございまして、その後立法措置が今日まで延びておるというような関係で、まあ一日を争うほど、何か借地借家関係の争いが、もっとこのまま放置すれば増大してくるのじゃないかというふうに懸念される点がありますので、でき得ることなら一刻も早く御可決願いたい、こういうのが私どもの真意であるということを申し添えておきます。
#13
○一松定吉君 今提案者の御説明はごもっともです。つまりこの法律を実施施行することによって幾多の紛争の起るべきことを起させないようにするというためにこういう法律が制定されて施行せられたということは御説明の通りで、私もそれは反対どころではない、大いに賛成ですが、それと同時に、この法律を施行することによってまた訴訟が起るだろう、それが知りたい、こういう意味なんです。これを施行しなかったらなお起るのであるが、しかしこの法律を施行するがために非常に少くなったということは、この法律の目的を達成したことによって効果の偉大であったことは何も反対ない。ところがこの法律を施行することによって訴訟が起っていはせぬか、起っておるならそれはどういうところに起ったのか、それをわれわれが明らかにして、なお、そういう起るようなものを起らぬようなことにこの法律を修正するとかいうような必要がありはしないだろうかというので私ども申し上げておるのですから、どうか一つその意味において御了承願いたいと思います。
#14
○委員長(高田なほ子君) ごもっともな一松委員の御要求でございますから、御要求の資料につきましてはこちらの方で善処いたしたいと思います。
 他に御質問はございませんか。御発言がなければ質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○一松定吉君 今の資料が出た上でその資料を見て、それから一つ決をつけたいのだが、その資料は急に出やしませんですか。今現に最高裁とかその他裁判所側にあるだけの資料でけっこうなんですよ。
#16
○委員長(高田なほ子君) 速記をとめて下さい。
  〔速記中止〕
#17
○委員長(高田なほ子君) 速記をつけて下さい。
 他に御発言はございませんか。御発言がなければ質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○委員長(高田なほ子君) 異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入りたいと存じますが、別に御発言がなければ討論を省略して直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○委員長(高田なほ子君) 御異議ないと認め、これより採決を行います。「罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律案」を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#20
○委員長(高田なほ子君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○委員長(高田なほ子君) 異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。
 それから、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
  多数意見者署名
    中山 福藏  佐野  廣
    西岡 ハル  斎藤  昇
    高橋進太郎  市川 房枝
    宮城タマヨ  一松 定吉
    小林 亦治
    ―――――――――――――
#22
○委員長(高田なほ子君) 次に検察及び裁判の運営等に関する調査を議題に供します。
 法務大臣が御出席になっておりますから、御質疑のおありの方は御発言をお願いいたします。
#23
○小林亦治君 新しく法務大臣になられた牧野先生に特に伺いたいことなんであります。内閣が変れば総理その他の大臣が抱負経綸を本会議で述べられるが、法務大臣はそのことなくして本国会も本日に至っておるのであります。大臣は長い間在野におられた私どもの大光電であります。さだめしいろいろな抱負がおありだろうと思うのでありまして、今後の当法務委員会が活動しまする上において、大臣のお考え、抱負というものをはっきりわれわれは伺っておく必要がありまするので、御足労を願ったわけであります。ばくたる質問ではお困りでしょうから、どういう点を主として伺いたいかと申しますと、私なんかは戦争のおかげで司法部に入るのが非常におくれて十五年そこいら。自来考えまするところの司法部に対する問題が多々あるに、たとえばおもに秀才畑の者を東京のまん中に置いて、成績の悪い者を北海道とか東北に回す秀才優遇主義というものは、非常に何というか、今日の司法部に沈滞するものがあるとすれば、そういうものが原因になっております。そういう人事面におけるところの今後の経綸において改訂を加える何か御抱負を持っておられるか。それからこれは小さな問題でありますが、衆参の法務委員会はもちろん、私は最近まで弾劾裁判所の裁判長をやっておった、この弾劾裁判所内の空気しかり、それから御承知の弁護士連合会、いわばこれら国をあげた全司法部の世論として、副検事制度と特任判事というものに対するところの不信の声が非常に高まっておる。前にも犬養君以来の法務大臣は、あなたでちょうど四人目、どの大臣も私が要請しておいてどなたからもこれは御賛成を得ておるのですが、少しも改正あるいは改革せられるといったような具体的な態度が見えないのであります。そこでわれわれの大先輩であるあなたが法務大臣になった感想を伺って、これらのものを、司法部の内外の世論にこたえる改革を、一つあなたの手でやってもらいたい、そういう事柄を、ごく卑近な事柄なんでありまするが、長い在野を通して台閣にすわられ、法務を担当せられるあなたでありますから、おざなりな行政に堕することなく、この際一つ世論を取り上げて司法部年来の改革をし、世論の上にこたえていただきたいのが、おいで願った趣旨なんでございます。お考えを承わっておきたいと思います。
#24
○国務大臣(牧野良三君) お答えを申し上げます。ただいま小林さんから大へん御親切なお尋ねを受けたのでございます。これは小林さんも御承知のように、法務省という所は行政官庁としては全く特殊な所でありまして、他の行政官庁でありますると、抱負経綸というようなものを持って、それを実行するという所でありまするけれども、私は法務省だけは独自の意見なんというものを持ち込んで私見を実行すべき所ではない、これはどこまでも司法部内外の世論、それによって定まった国の方針というものを強力に実行していく、これが大切なこと。それで私が任につきました最初にあいさつしたときも、在野四十年、司法則で育成をされてきた自分としては、どうかしてここでお礼奉公をしたいと思うから、皆さんから意見を聞かしていただきたい。それで任を受けました翌日、弁護士会を初め、関係方面へあいさつに行きまして、一通りのあいさつじゃありません、何をなすべきかということに対する指導をしていただきたい、毎日その方面の方にお会いする機会を作っておるのでございます。昨晩も特にその機会を作って御意見を承わって参りました。私はそれに基きまして、省内の消極的な態度に向って、どうも法律というものも、法律を取り扱う司法部の人々も、あまりにいかめし過ぎて、その結果が冷たい、もう少し司法部の人が世の中に入ってくれなければいかぬ、そうしてあんなりっぱな建物で廊下にも赤いカーペットが敷いてあるが、どこにも春風らしいものが漂わない、うららかな日というものがちっとも入っていない、これが司法部と民間とが接触していない実際の事例なんです。ですから私は行き過ぎてしくじるかもしれないが、いしずえにさえなればいいから、もう少し民間に出てほしい。もう一つ小林さん、行き過ぎたことをやったんです。それは全国の高等裁判所から代表の諸君が来られた。そうして最高裁判所長官を初め、最高裁のお方及び東京の高等裁判所のお方が一堂に会せられた席で、私に法律に関する講演をしろと言われ、そのときにどうも裁判所という所は蒸留水をこしらえたがって困る、手数がかかってちっともうまくない、それはやはり自然の水を飲ましておけばいい、顕微鏡で見れば少々ばい菌はあるかもしれないが、そんなばい菌は人体には毒にならぬ、そうして味がうまいのに、どうもそういうやり口をやっている。ことに近ごろは裁判が長過ぎる、検察があまりこまか過ぎる、もっと大まかに日にちをかけないで、手数を重ねないでやろうじゃないか。それはあなた方いかにも公平ぶって、そうしてこうやれば非難を受けないだろうというような裁判の仕方をやっておる、検挙の仕方をやっておる。もう少し非難を受けようじゃないか、非難を受けると初めて民間に接触することができる。どうも依然たる頭で民主主義的なアメリカ風の裁判や検察事務をやろうとするところにこんなに事件が堆積して皆さんからお叱りを受ける原因があるのじゃないか。だから司法部はもう少し民間に入る、中に入って、そうして少々いろいろな非難攻撃を受けることがあっても、自分さえ大丈夫、俯仰天地に恥じないという心でいけばいいじゃありませんかということを言ったのでございます。最高裁の諸君から思い切ったことで、ちょっと失言があるぞという笑い話でありましたが、小林さん、私はそんなふうにして、皆さんの御協力を得て、司法部というものをもっと明るい、もっとあたたか味のある、情味のある、そうして民間の接触を多くする、これだけの仕事をやり上げれば、もう結論というものは、司法部というものはほんとうの人材とインテリの集りでございますから、結論はいいものが得られる、こう思っております。従って部内の諸君とも相談をいたしまして、どうも司法部には行政にフィロソフィがないようなんですね、予算を編成するにはどうやって編成しているかという腹案を見ますと、一貫したガイストというものがない。行政には一貫した精神、そこにフィロソフィというものがなければ、大蔵省から予算なんてもらえもしない。そうして保護事業なんというものはまるで顧みていないのですね。文化政策、憲法二十五条の一項、二項の行政というものは厚生省がやるので、法務省は関係がないような様子にどうも衆議院でも参議院でも見ているのじゃないか、これはいかぬ。厚生省では、一松さんがおいでになってよく御承知だが、何といっても身体の障害の方が中心になる。司法部は精神上の障害というものが中心点ですから、両々相待って憲法二十五条の一項と二項というものを、並んで一つ実行していかなければならぬ。こうやると、司法部の行政というものはとってもおもしろいものになるのです。おもしろくなれば、民間の人が来るし、そうすれば建物もりっぱだなあと言って喜んでくれるし、廊下にもそよ風が漂うようになる。そうすると人材が今までのようによろいもかぶとも着ないで、ほんとうに背広でくつろぎのあるものを喜んで着てくれる、威厳なんて張らなくて済むという時代がくる。こんなような、小林さん、ざっくばらんに言って、考えを持っております。また失言があるかもしれませんが、御寛恕下さって、そんな心持ちを助けてください。
#25
○宮城タマヨ君 牧野さんが法務大臣におなり下さいまして、私一番うれしいことは、長い間問題になっております売春等処罰法案が今度こそものになるのじゃないかという非常な期待を持っておるからでございます。それで今日お伺いいたしたいことの一点、それは、売春対策の審議会が今度できるそうでございますが、これは私ども初めから願っていたことでございます。協議会でなしに審議会でいくべきだということは、願っておったのでございますけれども、あの当時非常に急いでおりますために、まあ協議会でもいいと思っておりましたが、今度その審議会ができまして、協議会で提出された答申案をもとにして、りっぱな法案を提案なさるということで、それを待っておるのでございますが、その前に、審議会に対する法案は、いつ御提案の御予定でございましょうか、それをちょっとお伺いしたいと思います。
#26
○国務大臣(牧野良三君) 宮城さん、実は打ちあけて申し上げまするが、私は法務省へ入りまして、もうすでに案が協議会でできておるのだろうと思ってきたのです。それで委員長からその案を見せられまして、私はがっかりしたのです。何というこんな婦人を侮辱した案をあなた方が出すか、りっぱな御婦人も小委員の中にも入っておいでになる。第一私は皆さんの前に売春なんという名前を使うことはいやだ、男で、道楽者であるけれども、ああいう言葉を使うことは極度に私は不愉快だ、そうして婦人を侮辱する。だからああいう恥かしい言葉、品の悪い言葉はまず第一に使わない。にもかかわらず、第一条、売春はと、こう書いてある。そんな法律は私は衆参両院へ出したくない。第二に、売春の定義と書いてあります。売春とはと、書いてあるのですね。そうして読みますと、えらい文字が使ってあるのであります。こんなのは少くとも紳士淑女の前には出せない。そうして私が政府委員になって委員から性交とは何だ、売春とは対価を供給し、もしくは要求して、不特定多数な者と性交するからだ、性交とは何ぞやと問われたら、私は皆さんの前でお答えいたしませんと、こう拒絶しよう。けれども私も一応の知識は持っております。私の書斎にもその本はあります。パリに行きましてもその方は調べて参りました。こんな文字と、こんな規定を法律に使うべきものじゃないと私は思っているのですが、こういうことはよしましょう。
 そこで、どうするかといえば、婦人の地位と生活とを守り、善良の風俗と社会の秩序を擁護するということを目的に、大きい視野から法律を作ること、今お話した憲法二十五条の趣旨でいって、それをずっと縮めてくれば目的を達するという法律を作ってはどうでしょうか、賛成して下さいと言いましたら、賛成します。それがいいんだと言って下すったので、大へん力を得た。そこで刑罰法令なんというものを中心にすることはやめましょう。しかし第一に言えることは何だ、やはり人身売買はこれはいかぬ、これは刑罰でいきましょう。それに持っていってポン引きはいけない、これは刑罰に処しましょう。しかして大蔵省に、妙なところからむやみに税金を取ることは、これはよしましょうと言う、こういうことをしながら、一方において特殊な法令を作ろうなんということは、大体において何といいますかな、従来の観念……基礎知識がない、あまりにも基礎知識がなさすぎるということを申しましたところが、うれしいことには委員長が大へん賛成してくれて、私もそういう意見なんです、どうも俗論が、こうしなきゃ承知しないというところに、宮城さん、どうも悪い風潮をこしらえたものだと思いますが、これは戦後占領政策が行われて、外人が入って来まして、それに日本人が卑屈な根性から春をひさいで歓心を得よう、またそれだけでも金もうけでもできるように思い、その卑屈なことを、時の為政者も政治家も、見て見ぬふりをしていて、そうして今私らにその責任を負わせたのだ。実際同情の涙を流して私は立案をしたいと思って、年末から年始にかけて構想をこしらえて、すみやかにただいまおっしゃった審議会をこしらえて、これも国会開会中あまり日にちを取っちゃいかぬ、そうしてあらかじめ予算措置については閣議で了承を得て進めていく、私はこの問題と取っ組むことに大へんな楽しみを感じておりますが、しかしながら御婦人の方々を向うに回して昨日は怒りました。全国から集まって来た人々に……。あなた方は何で婦人を侮辱し、そうして婦人を罵倒なさるのか、そうして婦人に対して、一部の婦人を私がかばおうとするのに、非難をされるのか、こういう問題は愛をもたなければ解決するものではないですよ。だから法律にはあふるるような愛情を基礎にして立案したいからあなた方もその心持で関係のお方とよく懇談しておいて下さい、こう申しました。どうかこんな心持で、あまり審議会等もむやみなひまをとらないで進めていきたいと存じますから、長い問この調査にお力をおかしいただいた宮城さんの特別な御援助をいただきたいと思います。どうぞよろしく。
#27
○宮城タマヨ君 大臣も御存じのように、私二ヵ月ほどヨーロッパの方に行っていろいろな調査をいたしました。その一つの問題は、政府の方からの願いでこの売春問題、売春というとお気に入らないかもしれませんけれども、今までそういう言葉を使って進んで来ましたのでございますが、今その法務省に出しますこの材料を法務省でいろいろ訳してもらっております。それでまだそこまで運びません、提出するまで。運びませんけれども、私自身もヨーロッパを見ましたことによってだいぶ考えが変って来ました。それでその変った点も報告いたすつもりでおりますのでございますけれども、いずれにしてもほうっておけませんことは業者なんでございます。でございますから、法務省の方で審議会をお作りになってほんとうに完全無欠な案ができることもいいのでございますが、さっそくの間に合うようにしていただきたいということが私の一つの願いなんでございます。それで協議会はもうおしまいになりましたので、今度はその審議会ができる、法律によってできるはずでございますと思いますが、それを私急いでいただきたいということをきょうはお願いしたがったのでございます。
#28
○国務大臣(牧野良三君) ただいま宮城さんがおっしゃった営業ですね。あれにはまあ非常に対案がむずかしいのです。これはどうしてもあなた方から御意見を具体化していただかねばならぬ、そうしてこの方面にむしろ予算が要るのじゃないかと思いますが、これは今至急なことはむずかしいと思います。ここでどういうふうにしていくかということについて特にいい材料を出していただきたいと思います。それはやはり、各省に連絡をとりまして、私はある程度の目的は達する、品位のある国にすればいいのですから、日本を。あまり品がなさ過ぎる。だから露骨過ぎる。だからこの方面の社会運動をする人も露骨な言葉を使って恥としないというような風ができたことはもうすでに大へんな堕落と私は思っておりますから、どうかよろしくこの点の御配慮をいただきたいと思います。
#29
○一松定吉君 せっかく法の権威者である牧野法学博士が今回司法部を担当せられたことについて私どもは非常に心丈夫に思っております。実は今までの法務大臣がまるでしろうとであったり、お医者がなったりいろいろなことをしておって、法務のことをわからんで今日まで経過したので、非常にこの法務の仕事が実は渋滞しておる。こういうようなことでは将来司法に関してどうなるだろうかとわれわれの専門家は非常に憂慮しておったときに、牧野氏が法務大臣に御就任になったということで非常に力を得たのです。ただいまその御抱負の一端を承わって非常に喜んでおるのでありますが、あなたがいわゆる民間の声を聞き、もう少し生きた活動をしたい、ただかみしもを着てこわばっておるような今までの法務のやり方はおもしろくないということは私ども全く同感です。これについては今この司法制度についていろいろ審議会というものが法務省のうちに設けられておって、法務大臣に諮問機関がある。ところがこれに国会議員は一人も入っていない、国会議員は。そうして弁護士だとか法学者とか司法部の役人だとかというものだけでこれを組織している。そういうところでいろいろなことをやる。そうしてそれが立法化の原案を作って国会に出てくる。国会とは没交渉の審議会であったために、国会では問題があり審議のやり直しをするという二重の手間がかかっておるということは、私は非常に遺憾に思っておりますのでありまするから、そういうような法務大臣の諮問機関の中に国会議員も入れるということについてはこれは特別な手数が要る。たとえば国会の承認を経るというようなことがあるそうであるが、それは承認を経るなら経るで、そういうやはり審議会の中にもうすでに相当な国会議員を入れておいてやれば国会に、それが提案されたときには便利であるのみならず、二重の審議ということを省くこともできるわけである。ずいぶんこの司法制度の改革をしなければならぬ問題が数多くある。たとえば今質問のありました裁判官の質の向上の問題だとか、あるいは刑事訴訟法に対する運営の方法だとか、法曹の一元化だとか、あるいは司法問題の遅延の問題であるとか、こういうようないろいろな問題について審議機関である審議会というものが、今のような片手落ちみたいなやり方ではおもしろくないと思って、こういうことを私どももだんだんこの前の花村君にも話をしておいたが、何か考えなければならぬといってそのままになっておる。今度は幸いにあなたはこういう方面の権威者であるからして、そういう方面に一つ十分意を用いられて、さっそく制度の欠陥を補正するようにやっていただきたいということが一つ。それから近ごろ国会で立法する法案が、法務委員というものは、何か裁判や検察に関することのみの法案がこの法務委員会にかかり、そうしてあとのいろいろな制裁法規や取締り法規がほかの委員会にかかる。その委員会には専門家が少い。いろいろな衝突あるような法案がどんどんどんどん通過するようなことで、でき上ってみた上でこれはやはり法務委員会にかけた方がよかったなという法案のあることもあなたは御承知でしょう。そういう点につきましては、一つやはりこの取締り法案とか、刑罰をもって臨んでいるとかいう法案については、一通りほかの委員会にかけると同時に、合議体でもよろしいですから法務委員会にもかけてやるように、一つあなたは法務大臣として閣議でも提案して、そうして各委員会もそういう趣旨を徹底するようにしてやらなければ、今のようなやり方だとすると、まるきり法務委員会というものは裁判と検察のことよりほかに何もやらないというようなことでは、非常に片手落ちの法案がだんだんよりたくさん出てくるからして、こういう点についても一つ御留意に相なって、あなたの手によって今までの弊害を是正していただきたい。これを私は特に経験に富んだあなたにお伺いいたしますが、それに対するご意見があれば承わっておきたい。
#30
○国務大臣(牧野良三君) 全くお説の通りというよりも、今の御指摘によって私が啓発されました。なるほど戦後の国会の経験が乏しい、この委員会というものがそんなことになっておる、これは非常に遺憾なことで、必ずそういうことを是正して、刑罰法令なんというものは統一することなんか専門に関係した人のほかわかりませんからね。何といったってこれは一応どこの法律案でもここの一応の審議を受けるということは私はそれは当然のことだと、こう考えます。それにただいま一松さんのおっしゃったように、大体この法務行政が無味乾燥過ぎるのですね。だからもう少しあなたのごときその方面には非常な……他の行政事務に対しても経験を持たれる皆さんと相談をして、法務行政というものが国民生活にどんなに深い関係を持って、親しみを持って、温情でやっていかなければならないのだ、要するに法律の民主化というものはどこまでも時代文化を作るのだ、それには法律を制定する上にも、解釈及び適用の上にも、今までのような考えではいかぬ。そうして、法務省の中には、もっと大きい仕事があるはずじゃないか、その方へ手をつけろということを御指摘下さいまして、もっと法務省の人にも、この委員会にも、行政事務に関して御苦心を請うというような場面を豊富にいたしたいということを思っております。どうかよろしくお願いいたします。
#31
○委員長(高田なほ子君) 他に御質問はございませんか。
 なければ本日の委員会はこれをもって散会いたします。
   午後零時二十二分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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