くにさくロゴ
1955/12/14 第23回国会 参議院 参議院会議録情報 第023回国会 外務委員会 第3号
姉妹サイト
 
1955/12/14 第23回国会 参議院

参議院会議録情報 第023回国会 外務委員会 第3号

#1
第023回国会 外務委員会 第3号
昭和三十年十二月十四日(水曜日)
   午後一時五十分開会
    ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     山川 良一君
   理事
           小滝  彬君
           羽生 三七君
   委員
           大谷 瑩潤君
           黒川 武雄君
           郡  祐一君
           岡田 宗司君
           佐多 忠隆君
           曾祢  益君
           石黒 忠篤君
           梶原 茂嘉君
           佐藤 尚武君
  国務大臣
   文 部 大 臣 清瀬 一郎君
  政府委員
   外務政務次官  森下 國雄君
   外務省条約局長 下田 武三君
   外務省国際協力
   局長      河崎 一郎君
   文部省社会教育
   局長      内藤誉三郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       渡辺 信雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○万国著作権条約の批准について承認
 を求めるの件(内閣提出、衆議院送
 付)
○万国著作権条約の条件附の批准、受
 諾文は加入に関する同条約の第三附
 属議定書の批准について承認を求め
 るの件(内閣提出、衆議院送付)
○無国籍者及び亡命者の著作物に対す
 る万国著作権条約の適用に関する同
 条約の第一附属議定書の批准につい
 て承認を求めるの件(内閣提出、衆
 議院送付)
○ある種の国際機関の著作物に対する
 万国著作権条約の適用に関する同条
 約の第二附属議定書の批准について
 承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山川良一君) これより開会いたします。
 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#3
○委員長(山川良一君) では速記を始めて。それでは万国著作権条約の批准について承認を求めるの件。万国著作権条約の条件附の批准、受諾又は加入に関する同条約の第三附属議定書の批准について承認を求めるの件。無国籍者及び亡命者の著作物に対する万国著作権条約の適用に関する同条約の第一附属議定書の批准について承認を求めるの件。ある種の国際機関の著作物に対する万国著作権条約の適用に関する同条約の第二附属議定書の批准について承認を求めるの件。以上四件を一括して議題に供します。本件に対し御質疑のおありの方は順次御発言願います。
#4
○梶原茂嘉君 文部大臣に簡単に二点お伺いをいたしたいと思うのであります。
 第一点は、御承知のように今回のこの条約案では、これまでのわが国における著作権の保護に関しまして相当の変化が起ってくるわけであります。平和条約以来日本の著作権に関する各国間のいろいろの関係がきわめて複雑になっておることは御承知の通りであります。新しく主としてアメリカ関係との問題で、この万国著作権条約に参加するということに進みつつあるのでありまするけれども、相当この条約の関係と今後のわが国における著作権保護との関係には複雑な問題が少くないようであります。またこの方面についてのわが国における学界の権威者の方々も相当多くの点について疑問を持たれ、憂慮をされておることも御承知の通りであります。それらの権威者の間にまだ一致した結論がつくというところまで至ってないような模様にも承知をしておるのであります。こういう状況の下で急遽この臨時国会に批准を求める案がかかって、これをきめるということに相なっておるのでありますけれども、果してこういう措置で文部大臣とされまして、何らの心配なしに処理し得るのかどうか、その点について私やや心配を実はしておるのであります。大臣の一つ御所見を伺いたいと思うのであります。
#5
○国務大臣(清瀬一郎君) 御承知のごとくわが国は明治以来ベルヌ条約体系で国際的にも折衝し、また国内法も立っておるのでありまして、それで継続すれば一番権利の安定状態を得ていいのでございますが、ただ今次戦争によって変化を生じまして、平和条約で暫定の取りきめをいたしましたが、それが明年の四月二十七日で切れるのでそれまでに何かアメリカとの間に確定なものができませんと、無条約なことになってしまいます。そこでこのユネスコ条約なるものが考慮されたのでございます。この新ユネスコ条約体系についても日本の著名なる著作権または国際私法等の学者に私も友人もありまするし直接相談をいたしました。御論のあるところもごもっともでございます。しかしアメリカと個別の折衝は不可能に近いのでございます。アメリカ自身がユネスコ条約を批准しました。そうしますると四月二十七日までに何か処置をしなければならぬ。しかるにユネスコ条約は批准してから三月しなければ効力が発生しませんから、四月二十七日から逆算しますと一月二十七日になるんです。で国会の情勢は御承知の通り本月の二十日には通常国会は開きますけれども、毎年の慣例で一月三十日までぐらいは自然休会となりまするので、急速にこれを処置しなければならぬというのが今日の状態になりました。そこでまあ学者の方で翻訳権その他について御注告も受けたこともありまするが、また一方日本で著作権を持っておられる人、わけても映画とかその方面からはこの条約の批准を非常に希望しておられるのであります。で両方の言い分をよく聞きましてやはり本国会において御批准を下さる方がいいという結論に達したのでございます。時間さえあればなお十分に考えたいのでございまするけれども、この状況でございまするから、どうか御批准の御賛成を願いたいと文部省では希望いたしておる次第でございます。
#6
○梶原茂嘉君 この国会で批准をきめるということがいいという結論に達したというお話であります。それは私はその通りだろうと思います。来年の四月二十八日以降アメリカとの関係において無条約の状況になっている。これは決して好ましいこととは思はない。またこの案をめぐって賛否両論といいますか、があるということもお話の通りであります。
 私の開きたいと思うのは、もしもこの条約に参加することによって、わが国の著作権に関する実態が憂うべき事態になることがあるとすれば、これは残念ながらある短かい期間であっても無条約の状態もやむを得ないのじゃないか。その間適当な臨時の措置もこれまたとらないわけにはなるまいと思うのであります。私のお伺いしたいのはこれでこの際に批准をやっても、いろいろのその道の権威者が憂慮されておることは、これは心配がないという御見解なのかどうか。その点をお伺いしたいと思います。
#7
○国務大臣(清瀬一郎君) この条約批准の結果、国内で措置すべきことは今の著作権法の適切なる改正をいたします。少しも影響がないかとおっしゃられると、ございまするけれども、しかしそれよりも無条約になる方がなお憂うべきでありますから、皆さんのお知恵も拝借しまして国内で処置できる最善の立法はいたしていきたいと、かように思っております。
#8
○梶原茂嘉君 それでは第二点についてお伺いしたいと思う。それはただいま大臣の言われた点でありますが、どうしても国内において特別のこの条約を実施する上においての立法が必要のように思われるのであります。現に本条約においてもそのことをうたっておるので条約上の義務でもあるのであります。本来であれば当然に国内における立法の措置を準備をして、両々相待って進行するということが当然の筋道ではないかと考えます。条約の方は期限の関係でこれは急ぐと、これはごもっともであります。そうすれば同時にそれに必然的に伴う国内立法というものも当然期限がこれは実質上あるべきであると思うのであります。従って私の伺いたいのは、早急にこれに関する立法措置をおとりになるかどうかということ。それからおそらくはいろいろ文部省、外務省でも検討はされておりましょうけれども、なかなか複雑な困難な問題が立法をするとなれば出てくるようにも思われるのであります。従ってそれについての立法措置の準備についても格段のお考えがなければなるまいかとかように思うのでありまして、立法措置についてどのように考えるかについて一つお考えを承わりたいと、こう思うのであります。
#9
○国務大臣(清瀬一郎君) お説の通りでございまして、御批准を願えば三カ月後に効力が発しまするから、その日までに間に合うように、わが国の著作権法の改正なり、あるいは過渡的経過規定なりを具しまして、皆様の御審議を必ず願いたいと存じております。いかなる規定を設けるかは今ちょっと予定して申し上げるだけの準備がございませんから御容赦願いたいと思います。
#10
○梶原茂嘉君 立法措置をこの条約がわが国との関係において発効するまでにするというお話、ぜひそうなければならぬと思う。ただこの条約の十条の二項には、あるいは大臣これはまだ読んでおられないと思いますが、こういう規定があるのであります。「もっとも、各国は、自国の批准、受諾又は加入のための文書が寄託された時に、」、たとえば来年の一月の二十三日になるのですね、「文書が寄託された時に、自国の国内法令に基いてこの条約の規定を実施することができる状態になっていなければならないと了解される。」と、批准の文書を寄託するときに、国内においてこの条約を実施することができる状態になってなくちゃならぬぞという趣旨の条項があるわけなんです。従って一月の二十三日までにそれじゃ立法措置をしろといっても、時間的にいってまたこれは軽率になると思うのであります。大臣お話の四月二十七日の最終の期限までに、できる限り早い機会にできれば、このときにできておれば、日本のこの条約の観点からいってもいいと私は思うのでありますけれども、できる限り早くやっていただきたい、これはお願いするわけであります。
#11
○国務大臣(清瀬一郎君) 御趣旨はよく了承いたしました。
#12
○石黒忠篤君 梶原委員の質問に関連をいたしまして一点伺っておきたいと思います。これは文部大臣からの御答弁でなくてよろしうございます。むしろ文部の事務当局からの御説明の方が新らしく御就任になった文部大臣よりも私は尊重したいと思うのであります。
 本件は相当今日まで長い研究の時間があったのであります。そうしてわれわれの同僚の議員諸君からも文部省の方にこの件に関しての相当急ぐべき必要を申して、準備を急がれることを督促したことがあるのであります。にもかかわらず今大臣がこれに関する国内法を規定していくことについての要綱はただいま答えることができんというようなことでは、梶原委員の心配というものに私は非常に同感でありまして、まことに心もとないように思うのでありますが、どういう事情で文部省の著作権制度調査会等におかれてことがまとまらないで、今日急に時日を制限されて批准をしなければならないようになったのであるか。そこらの点について、私は文部省にやや、ややじゃない大いなる懈怠があったように思うのであります。それらの事情いかがでございますか。
#13
○政府委員(内藤誉三郎君) この点については昨日お答え申し上げたのですが、文部省に著作権制度審議会というものがございまして、十数回にわたってずいぶん長い間論議をしておりまして。なかなか意見の一致をみなかったわけでございます。そこで一部の学識経験者の方々からは、ベルヌで留保している十年の翻訳権の留保ということをずいぶん強く主張された。それをもとにしてあとは万国条約の内容でいいから、ともかく二国間条約を結ぶべきであるという強い一方では意見がございまして、大多数の利用する業界方面からは即刻批准をすべきである。こういう意見が対立しておりまして、なかなかきまらなかったのであります。その条約に伴ういろいろ解釈の問題等もございまして、長い間審議は結論が出なかったので、ようやく最近になりまして、文部大臣あてに答申が出たわけでございます。その答申によりますと無条約状態を回避する点については皆ほとんど全員の意見の一致をみた。しかしながら日米二国間条約でやるか、万国条約を批准すべきかという点については意見が分れた。かりに万国条約を批准する場合に問題点があるので、政府はこれを有利に解決して善処するようにと、こういう答申も出ましたので、私どもは外務省と協力いたしまして以前からも二国間条約の締結について努力して参ったのですが、この点下田条約局長からもお話がございましたように、アメリカがすでに二国間条約というものを四十数カ国との間に結んでおった、これを清算して万国条約という形で統一して参りました。そういう著作権に関する方針の転換を行いましたが、二国間条約の締結はほとんど見込みがなくなったわけであります。そこで万国条約を批准するのに必要な問題点がございますが、この問題点については日米間である程度の了解に到達しておりますので、それをもとにいたしまして、今国内法の問題を整備いたしたいという考えで、国内法の問題については今私どもと法制局との間で問題点については検討しております。たとえば有効期間の場合に、日本の著作権法は外国のものでも著者の死後三十年保護するというふうになっておりますのを、今度の万国条約ですと発行後二十八年でアメリカの著作物の保護は打ち切りますので、非常に短かくなりますのでそういう制限をするとか、遡及効の問題とか、この条約が来年の四月二十八日以後に発効しますので、発効した以後の書物から適用する。すなわち今現に発行されているものは暫定協定でいく、あるいは法定許諾等の問題がございまして、七年たてば一定の料金を払えば法定許諾の道も開けるという点がございますので、法制局とも事務的打ち合せをやっております。最終的な問題が整ったというわけではございませんが、問題点は整備いたしております。そういうわけでございますので、特に著作権の問題が非常にむずかしい問題でして、著作権の制度審議会でも非常に長い間かかっておりまして、批准の手続が遅れましたことは大へん遺憾でありますが、ようやく答申が出ましたのでただいま臨時国会に審議をお願いいたしたわけでございます。
#14
○石黒忠篤君 一応の御説明はわかったのでありますが、著作権の問題はむずかしいということはあなたがおっしゃる通りに非常にむずかしい。ことに国際条約の二立てのものがあるというような関係は非常にめんどうである。そういうものの審査を両三日の間にやらなければならぬということは、これは文部大臣は国会人だからよく御承知だろうと思う、国会としては非常に迷惑である。常任委員会がある、そこいらに対して中間の報告でも何でも、著作権の審議会における行き方、問題の重要点のあり方というようなことの説明があって初めてほんとうの審査ができると私は思う。これは外務当局にも申し上げますが、こういう問題を急速臨時国会に出して、口が迫っているからのめというような態度は私ははなはだけしからぬことだと思う。大いなる遺憾を感じます。そのことだけを申し上げておきます。
#15
○梶原茂嘉君 私は大臣にお尋ねすることはもうありませんけれども、条約局長なり社会教育局長なりでけっこうでありますが、今お話がありましたこの条約に存在している問題点であって、アメリカとの間に了解点に達したというお話があったのでありますが、その問題点とそれからどういうふうに日米の間にそれが了解されたか。その点をこれはやや詳細に一つ御説明を願いたいと思います。
#16
○政府委員(下田武三君) 多数国間の条約を、そのうちのある当事国だけが解釈をきめようという企図は、これは百パーセント安全な措置ではございません。しかしながら、先ほど社会教育局長が申しましたように、著作権制度審議会の御意見として、そういう点も最大の利益関係国たるアメリカとよく話し合ってはっきりさせろという御注文が出ました。そこで私どもは米国大使館とずっと意見の交換をいたして参りました。そうして米国と意見が大部分一致いたしております。そこでさらに来年の二月に、ユネスコ条約のもとにおける政府間委員会、これは十二九国でできておりますが、日本は初めからその理事国に選任されておりますので、日米相提携して両国に満足なる解釈を確立するように手を携えて協力しようではないかという意見の一致もできております。もとよりこの条約は新しい制度を国際間に成立するものであり、しかもユネスコ会議では非常に各国の利害が対立して妥協がたくさんできまして、妥協の産物たる条文が並んでおりますので、その解釈を統一するということはこれはなかなか困難だろうと思います。しかし少くとも日米間に関する限りは、両国が満足のいくような解釈に今後条約の実施の段階で進めていこうではな心いかと、そのリーダーシップを日米間でとろうではないかというところの了解までできております。これが日米間の了解の中で実は一番重要なポイントであろうと思うのであります。
 さらにこの条約の内容についての点を申し上げますと、この条約は遡及効がないのであるという点について日米間の解釈が一致しております。つまりこの条約の効力を発生する前に著書を著わしました人は、その著作物が出てから後に新しい条約ができて、自分の著作物の保護期間が変えられたり、あるいは翻訳が自由になったりされた日にはたまったものではございません。条約が発効して、こういう著作物を出せばこの条約で規制されるということがわかってから後にできた著作物に、この条約が適用されるということならこれは当然でございますが、事後と申しますか後にできた条約で自分の権利を規制されてはたまったものではございませんので、この点は遡及効がないと日本も解釈しておりますし、アメリカも解釈しているということがはっきりいたしております。従いまして日米間の関係で申しますと、日本人もアメリカ人も暫定取極の期間中にできましたお互いの著作物は、依然として暫定取極で認められた既得権が確保されているという点で、非常に安全感を持ち得るわけであります。これも内容につきましては第一の重要点でございまするが、この点につきましても日米間意見の一致をみております。
 またその次に大事な問題でございますが、この同時発行の著作物に関する保護、これは御承知と思いますが、アメリカ人は自分の国が今まで国際条約に入っておりませんもので、ベルヌ条約の当事国たとえばイギリスとカナダで同時に発行いたしているのでございます。これはアメリカの国際的な価値ある著作物の七〇%までが米本国で発行すると同時に、イギリスあるいはカナダで発行いたします。そういたしまして、今まではベルヌ条約による保護も、カナダで発行された著作物あるいはイギリスで発行した著作物として保護をされておったわけでございます。そこで、今度アメリカが万国条約に入りますと、アメリカは両刀使いになる危険があるわけでございます。そこで、どういうことが起るかと申しますと、もし、カナダで発行されたアメリカ人の本がベルヌ条約の保護のもとにあるといたしますると、日本はベルヌ条約で翻訳権十年の留保をいたしております。ですから、もしカナダで発行されましたアメリカ人の著作物が十年たっても、だれも翻訳し手がないということになりますと、日本人はそれを勝手に翻訳できるということに相なります。そこでアメリカ人は、同時発行の場合にその利益を主張してくるかもしれません。一方におきましては万国条約からいきますと、御承知のように今まで日本では死後三十年というような長い保護期間を与えております。ところが今度の条約によりますと、アメリカは発行後二十八年という短かい保護期間ですから日本もそれに対応しまして保護期間を短かくすることができます。そういう保護期間を短かくする場合には、アメリカは逃げまして、いや、これはカナダで発行しておるのだからそれをやられては困るのだ、というようなことを言われましたら、日本はその両刀使いのどっちのしっぽをつかんでいいのかわからなくなります。そこで、同時発行した場合は、やはり本国のアメリカで発行された方の著作物を著作物として扱う。つまり、同時発行をいたしましてもアメリカ側が両方のうまい汁を吸えないようにする必要が日本側にはあったわけでありますが、日本側としては、そういう場合にはアメリカ人の本は、アメリカ本国で発行された著作物として扱う。つまり万国条約の適用一本で行くという解釈をとるものである。ということをアメリカ側に申しました。アメリカ側はそれは日本側が自由におきめになることであるということを納得いたしておるのでございます。従いまして、この点に関して条約実施後の紛争が日米間に起らなくなったという点におきまして、非常に日本側といたしましては安心ができたわけでございます。
 ただいままでのところの意見の一致というのは、最も重要な問題だけをとらえまして、これらの点についてでき上っておるわけでございます。しかし今後この条約を実施して参りますと、われわれの予想しない新たな解釈上の問題が発生するかもしれない。しかしそういう場合には両国でよく相談して、お互いに満足のいくような解決に持っていこうという点につきましても了解ができております。従いまして、今まで考えました重要問題については意見が一致し、今後の問題についてはよく連絡をとって相互的に満足な解決に到達する。さらに国際的には今後の政府間委員会においては、日米協力してスムーズにこの条約の実施にかかっていくのにリーダーシップをとろう、という点につきましても意見が一致しておる次第でございます。
#17
○梶原茂嘉君 私自身はこの問題のそういう具体的な事柄についての知識は毛頭持ち合せがないのであります。従って見当違いがあるかと思いますが、今、局長が言われました点につきましても一応今後の問題としてあり得ると思うのであります。遡及効のあれにしましても、この条約が発効する前に権利として存在しておるものについてはお説の通りだと思います。しかしそのとき発行があったけれども、まだたとえばその権利確保の手続きをしておらなかったというような問題がある。そういうものは一体前の暫定取りきめで処理されるのか。新しいこれによるのかという点についても疑問がかなりあるのであります。またそういう点についても学者の間ではいろいろ解釈が分れておるように承知しておるのであります。それから代理権、これも意見が一致したと言われるのでありますが、けっこうでありますけれども、この条約案によれば、ベルヌ条約は、この万国条約によって何らの改変といいますか、影響を受けないという規定がある。そうすれば、今お示しのカナダにおける事例のごときは、当然これはベルヌ条約関係によって処理されるべきことじゃないかと思われるのであります。アメリカとの了解を取りつけたと言われること自体が適当であるかどうか、私には非常に疑問であります。それは、当然むしろベルヌ条約によって考えられるべき性質じゃないかと思うのであります。たまたま、アメリカとの関係はそういう取りつけをしたけれども、万国条約の加盟国はアメリカだけではないわけであります。いろいろそういう問題が関連して起ってくるような感じがするのであります。まあこれはほかにもいろいろの問題があろうと思うのであります。今お示しになったこと自体についても、必ずしもそういう点について問題がないということには相ならぬというような実は感じがするのであります。これはもうこの程度でけっこうだと思います。
 ベルヌ条約と万国条約との二つが存在して、一応両者は関係のないような格好にこの条約ではなっておるのであります。今条約局長がお示しになった事例がまさにそれを端的に示しておるように、やはりいろいろの場合においてぶつかったりするケースが起ってくるような気がするのであります。そういうことが今後そうそうないのかあるのか、の点ですね。一つ御説明願いたいと思います。
#18
○政府委員(下田武三君) 先ほどの御説明で、私、正反対の誤りをおかしておりましたので訂正いたします。アメリカとカナダで同時に発行されましたアメリカ人の著作物につきましては、日本側はこれを従来ベルヌ条約の適用下においておりましたので、今後も引き続きベルヌ条約による保護しか与えないということを日本側は言って、アメリカはそれは日本側の御自由でありますということを言っております。つまり、日本はベルヌ条約における翻訳権の保護について、十年の保護期間しか認めないという点に重きをおきまして、そういうようにアメリカ側に申し渡してあるわけでございます。
 それからただいまの御質問の、今後もいろいろな問題につきまして、紛議や解釈上の相違が起らないということを何人も保障し得ないではないかという点でございますが、それはまことにおおせの通りでございます。いかなる条約でもそうでございますが、時にこのように各国の法制がまちまちであり、かつ利害関係がまちまちであり、それをユネスコ支配のもとで妥協の産物としてできました条約でございますから、論旨一貫しない点が多々ございます。でございますからなおさら今後もいろいろな解釈上の問題、実施上の問題が起って参ると思います。しかしこれはある程度やむを得ないことでございまして、いかなる条約も実施の当初から解釈がきちんときまっておるものではございませんで、それをだんだん実施後運用して参りまして、いろいろな問題が発生し、またそういう問題が発生するからこそ必ずこういう多数国間条約のもとには、関係国の理事会でございますとか政府間委員会というものを設置いたしまして、そうして運営面で各国の利害の調整をする、あるいは解釈の調整をするということに相なって参りますので、この条約も当然それを予想いたしまして、明年二月ごろ第一回の政府間委員会を開くということでございます。そこでわが方としましては日本一国で立ち向うよりも、事前にアメリカ側と意見の交換をいたしまして、できれば日米共同で今後のスムーズな運営をはかりたいという方に持って参る方が得策であろうと考えておるわけでございます。
#19
○梶原茂嘉君 ベルヌ条約に関連して、日本が翻訳権についての留保をしておるわけでありますが、あの留保というものは万国条約に加盟をして、将来の問題になりますけれども、あの留保に影響を与えていくというようなことはないかどうか。
#20
○政府委員(下田武三君) ベルヌ条約がなくなってしまえばともかくでございますが、ベルヌ条約体制というのは古い体制でございますから、まずなくなるということはないと思いますので、従いまして、日本の翻訳権十年の留保というものも消滅しないと思います。しかし遠い将来のことになりますと、ユネスコの理想といたしましては、世界中一本の著作権関係の条約で規律したいということでございます。従いまして、十年先かあるいは二十年先かわかりませんが、そういう条約になりました場合には、これはベルヌ条約そのものが新しい条約によってかわられるという事態に相なりまするので、その場合には影響を受けることはないとは限らないと存じます。
 ただこの際一言御説明申し上げておきたいのは、世間に非常に誤解がございますが、十年の翻訳権留保というものを非常に貴重なもののように考えられておりまする向きがあるのでございます。この十年の留保と申しますのは、一たん著作者の承認を得て翻訳をしましても、十年たったらばただで今度は翻訳を続けていかれるというものでは毛頭ございませんので、著作物の七〇%は十年以内に翻訳されてしまいます。そうすると契約関係が生じまして、原著作者には五%あるいは一割、一割五分というロイアルティを払うわけでございます。そうしましたらばその翻釈出版者には独占権が生じまして、その権利はずっと侵されざるものになるわけでございます。十年たちましてもその独占権は続くというわけでございます。ですから十年たったらばすべてのものが自由になるのではございませんで、わずか十年間に翻訳し残された一割足らずのものについてのみ十年たったらば自由に翻訳できるということになるのであります。しかし先ほど申しましたように、アメリカ人の著作物の国際的価値あるものの七〇%は、ベルヌ条約当事国で同時に交換されているわけでございます。残りの三〇%の一側足らず、つまり百分の三ぐらいにつきまして十年たてば、十年間だれも翻訳しなければだれでも翻訳できるという自由があるのでありまして、こういうことを考えてみますと、実際面から申しますと、このベルヌ条約に対する十年の留保ということは、私は今日では最大のものではない、もちろん文化輸出国になっております日本人の著作物の権利保護という点に相当の重要性を認めて考えていかなければならないのではないかと、そう存じますのでこの際御説明さしていただく次第でございます。
#21
○梶原茂嘉君 今の翻訳権についての留保の持っておる価値といいますか、それから今後のわが国の立場等についての条約局長のお考え、私も大体において同様に考えるのであります。いろいろ情勢によって当然変っていくものであります。しかしながら、当面条約上持っておる権利といいますか、実体といいますか、それはやはり大事に考えていくべきであろうと思うのであります。
 それから今度の万国条約で非常にわれわれに一つの興味を感じさせる問題は、Cというもので、よくわからないのでありますが、どういうふうに日本の立場においてこれが現実に利用されるのかどうか。それについていろいろ問題があるようであります。これは一つわかりやすく御説明を願いたいと思うのであります。
#22
○政府委員(下田武三君) Cにつきましても著作権制度調査会におきましては、いろいろ問題が提起されました。ただ私どもからみますと、これは日本側がもう一方的にきめてしまえばいいわけでございまして、調査会ではあるいはこれを一体表紙に書くのか、裏表紙に書くのか、あるいはイトウジロウという人でしたらイトウ・ジロウと書くのか、ジロウ・イトウと書くのか、あるいはローマ字をヘボン方式でやるのか、他の方式でやるのかというこまかい点が、いろいろ議論百出でございまして、私どもから申しますとこれは日本人がきめればいい問題でございまして、日本側はこうきめたと決定いたしまして、来年二月の政府間委員会で日本ではこうしますということを通報して、各国にわからせさへすればいい問題でございまして、従いましてCにつきましては私はもうきわめて簡単な問題であろうと思いまして、この(C)のつけ方でどうこうなんということは毛頭ないと私は考えております。
#23
○梶原茂嘉君 その点はおそらく局長の言われる通りだと思います。ただ私の聞きたいのは、Cをつけまして一応この条約の条文上は大手を振って通用ができるような建前になっておりますが、無条件でもないらしい。ほかに条件をつけられれば、Cはつけたけれどもさてぶつかってさっぱり意味がないというような事態もあるのではないかという感じがするのであります。Cをつければ、大体においてフリーパスで、向うとしては十分それが尊重されるのかどうか。別途のまた困難があってCが看板だけになって意味合いがなくなる。そういう点についての一つお見通しの御説明を願いたい。
#24
○政府委員(下田武三君) その点につきましては、これはたとえばアメリカで裁判所に訴えるというような場合には、裁判所の手続上の問題として必要な手続が要ることは申すまでもないことでございます。ただその著作権者に著作権を認めるという点ではCさえあればいいのでございますけれども、訴訟提起という場合に納本等の手続が要るわけでございます。しかしこれはアメリカ人の方から考えますと、日本の裁判所に訴えるためにはこれまた非常に複雑であり、第一日本語でいろいろな必要書類を作ってやらなければならないというのでございますから、日本人がアメリカで裁判に訴えますよりも、アメリカ人が日本で訴えます場合の方がはるかに複雑であり困難であるということでございまして、結局これはおたがいさまということでございます。
#25
○梶原茂嘉君 何条ですか法定許諾というのですか、七年間の特別措置の条項があります。あれに関連して、日本としては翻訳料等のロイアルティ式のものをきめる必要があるわけであります。それについて国際慣例ですか額をきめなければならぬ。こう条約ではなっているのであります。まあ常識的にも英語をフランス語に訳す場合と、それらのものを日本語に訳す場合と、そのものにもよりましょうけれども差異がある。日本でこれはきめるわけなんですけれども、国際慣行ですか、それを日本語の翻訳というものとを、どういうふうに考えておきめになるかどうか。これは文部省に一応お伺いいたします。
#26
○政府委員(内藤誉三郎君) 法定許諾制の問題は発行後七年たってから動くわけでございます。今すぐ法定許諾制を取り入れるかどうかという点については、まだ政府の意見も最終的には固まっておりませんですが、大体の傾向といたしましては国際慣行で五%以下ということを想定しておるのであります。
#27
○梶原茂嘉君 昨日もお伺いしたのでありますが、あるいは重複するかもしれませんが、立法される場合の重要な事柄としてもう一度一つ現在のお考えを承わりたいと思うのであります。
 先ほどお話がありましたが遡及、不遡及の関係、これは国内法ではっきりされるのかどうかという点。それから今の法定許諾制はこれをやはり国内法として明白に取り上げて規定をしていくのかどうか。それから著作権の方の期間の問題もいろいろ長い短かいがあるのであります。それはそれぞれ国内の立法で明確に規定をされていくのかどうか。その点を一つ伺っておきます。
#28
○政府委員(内藤誉三郎君) 現在の著作権法二十八条によりますと国際条約に別段の定めがある場合はこの限りでないと、こういうことで一応著作権法の建前からは読めるのでございますけれども、国内法上それを明らかにするという意味から著作権法の改正を考慮しているのでございます。その問題点はただいまお上げになりました遡及効の問題、特に来年の四月二十八日以後に発行され、アメリカで納本登録の手続がとられたものが日本において保護されるわけであります。それ前の分は、すなわち来年の四月二十七日までに発行されたものはあたかも従来の暫定協定が存続しておったと同じ権利を持たせるようにいたしたいと思っております。
 なお有効期間の場合に、日本においては国内法上発行後、生存間及び死後三十年の保護期間で、アメリカの著作物を保護しなければならんのですが、この条約に入りますと発行後二十八年で保護期間が制限できます。保護期間の特別制限をいたしたい。
 それからただいまお話の法定許諾制の問題、これが著作権法の改正する場合の大きな問題点でございます。
#29
○梶原茂嘉君 一応これで終ります。
#30
○委員長(山川良一君) ちょっと速記とめて。
   午後二時四十四分速記中止
     ―――――・―――――
   午後三時十三分速記開始
#31
○委員長(山川良一君) 速記を始めて。
 それではほかに御発言もないようでございますから質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○委員長(山川良一君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
#33
○石黒忠篤君 本件関係の案件を含めまして非常に重要な案件だと思うのでありますが、十分の審査討議をすることを時日の関係で許さないように思われるのでありますが、一応拝見をいたしましたところによりますれば、政府の御提案の通りにこれを承認をせざるを得ないと思います。私は本案について賛成をいたします。こういう案件に関しましては、政府におかれましても国会の立場をよく御了承いただいて、できるだけすみやかにあらゆる資料を提供して、そして文字通り慎重なる審議ができるようにお取り計らいになることを強く要望をいたします。
#34
○委員長(山川良一君) ほかに御発言ございませんか。
#35
○梶原茂嘉君 私も本案件の承認について賛意を表するものでありますが、ただこの条約を実施する上において権利関係その他相当国内の法制で明白にしていくことが必要な事柄が多いのであります。本来であればこの条約批准と同時に必要な法令が整備されてあるべき筋合いのものであると思います。しかもこのことが条約自体にもうたってあることである。従いまして国内においてこれに関連して立法することは当然のことでありますから、できる限り十分の審議を遂げられて、次の国会早々提案されるよう私は期待をして賛意を表するものであります。
#36
○委員長(山川良一君) 例に他に御意見もないようでございますから討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#37
○委員長(山川良一君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより採決に入ります。万国著作権条約の批准について承認を求めるの件、万国著作権条約の条件附の批准、受諾又は加入に関する同条約の第三附属議定書の批准について承認を求めるの件、無国籍者及び亡命者の著作物に対する万国著作権条約の適用に関する同条約の第一附属議定書の批准について承認を求めるの件、ある種の国際機関の著作物に対する万国著作権条約の適用に関する同条約の第二附属議定書の批准について承認を求めるの件以上四件を一括して議題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#38
○委員長(山川良一君) 全会一致でございます。よって本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 この際政務次官から発言を求められておりますのでこれを許可いたします。
#39
○政府委員(森下國雄君) いろいろな事情がございましたとしましても、この短期間の国会に重要なる法案の審議を煩わしましたことは、ある意味で国会軽視というような形にもみられたのでございますが、決して毛頭さような考えはございませんので、誠に恐縮でございますが、今後は十分気をつけまして処して参りたいと存じますので、はなはだ遺憾の意をここに一言表しまして御了承を得たいと存ずる次第でございます。
#40
○委員長(山川良一君) それでは本会議における委員長の口頭報告の内容及び議長に提出すべき報告書の作成、その他事後の手続等、慣例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#41
○委員長(山川良一君) 異議ないと認めます。さよう決定いたしました。
 それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本件を承認された方は順次御署名を願います。
  多数意見者署名
    黒川 武雄  小滝  彬
    佐藤 尚武  石黒 忠篤
    梶原 茂嘉  大谷 瑩潤
    岡田 宗司  佐多 忠隆
    曽祢  益  羽生 三七
#42
○委員長(山川良一君) ちょっと速記をとめて下さい。
   午後三時十九分速記中止
     ―――――・―――――
   午後三時四十二分速記開始
#43
○委員長(山川良一君) 速記を始めて下さい。それでは本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト