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1955/12/12 第23回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第023回国会 予算委員会 第6号
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1955/12/12 第23回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第023回国会 予算委員会 第6号

#1
第023回国会 予算委員会 第6号
昭和三十年十二月十二日(月曜日)
   午前十時四十一分開議
 出席委員
   委員長 三浦 一雄君
   理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君
   理事 小坂善太郎君 理事 重政 誠之君
   理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君
   理事 今澄  勇君
      相川 勝六君    今井  耕君
      植木庚子郎君    川崎末五郎君
      北村徳太郎君    河野 金昇君
      河本 敏夫君    小山 長規君
      周東 英雄君    須磨彌吉郎君
      竹山祐太郎君    田中 正己君
      床次 徳二君    楢橋  渡君
      野田 卯一君    橋本 龍伍君
      平野 三郎君    福田 赳夫君
      福永 一臣君    藤本 捨助君
      古井 喜實君    松浦周太郎君
      三田村武夫君   山口喜久一郎君
      山本 勝市君    山本 猛夫君
      阿部 五郎君    伊藤 好道君
      井堀 繁雄君    岡  良一君
      久保田鶴松君    河野  密書
      小平  忠君    小牧 次生君
      田中織之進君    田中 稔男君
      西村 榮一君    福田 昌子君
      矢尾喜三郎君    柳田 秀一君
      川上 貫一君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鳩山 一郎君
        法 務 大 臣 牧野 良三君
        大 蔵 大 臣 一萬田尚登君
        文 部 大 臣 清瀬 一郎君
        厚 生 大 臣 小林 英三君
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
        国 務 大 臣 大麻 唯男君
        国 務 大 臣 太田 正孝君
        国 務 大 臣 正力松太郎君
        国 務 大 臣 高碕達之助君
 出席政府委員
        大蔵事務官
        (主計局長)  森永貞一郎君
 委員外の出席者
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
十二月十二日
 委員井出一太郎君、川崎末五郎君、木崎茂男君、
 北澤直吉君、田中正己君、中曽根康弘君、松岡
 松平君、松野頼三君、山本正一君、志村茂治君、
 成田知巳君及び門司亮君辞任につき、その補欠
 として床次徳二君、楢橋渡君、三田村武夫君、
 小山長規君、北村徳太郎君、平野三郎君、小川
 半次君、山口喜久一郎君、河本敏夫君、小牧次
 生君、矢尾喜三郎君及び福田昌子君が議長の指
 名で委員に選任された。
同 日
 委員赤城宗徳君、小川半次君及び小山長規君辞
 任につき、その補欠として田中正己君、川崎末
 五郎君及び赤城宗徳君が議長の指名で委員に選
 任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)
    ―――――――――――――
#2
○三浦委員長 これより会議を開きます。
 昭和三十年度特別会計予算補正特第二号を議題といたします。右の補正予算案に対する質疑はすでに終了いたしております。また右の補正予算案に対し、赤松勇君外十五名より、その編成替を求めるの動議が提出されておりますが、その趣旨説明並びにこれに対する質疑はすでに終了いたしております。
 これより昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)並びに日本社会党の提案として、赤松勇君外十五名より提出されました、昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)の編成替を求めるの動議を一括して討論に付します。討論は順次これを許します。稻葉修君。
#3
○稻葉委員 私は自由民主党を代表しまして、昭和三十年度特別会計予算補正に関する政府原案に賛成、社会党の組みかえ案に反対いたします。
 原案と社会党の組みかえ案を比較しつつ理由を簡単に申し述べます。まず原案では、地方交付税率の引き上げを行わずに、税率三%に相当する百八十八億円を地方に交付することとしているのに対し、社会党の組みかえ案では、地方交付税率を五%引き上げて三百十二億二千八百万円、たばこ消費税率を本年度十二月以降百分の三十に引き上げることによって五十四億円、合せて三百六十四億二千八百万円を交付税及び譲与税配付金特別会計を増額し、これを配付するということになっているのであります。この点でまず両案は対立するわけでありますが、私は政府原案の方がよろしいと思います。
 第一には、社会党の案は、次年度以降の予算編成に至大の困難を与えるし、第二に、地方財政の赤字額の見積りについて、社会党の案は過大であって、調査疎漏、根拠薄弱だからであります。このことは一昨日本委員会で行われた古井委員の質問に対する社会党のしどろもどろな答弁によってすでに明らかであります。(拍手)
 政府案が当面の予算措置として、百六十億円の借り入れを行い、これを臨時特別交付金として地方に交付することとし、この際は交付税、譲与税配付金特別会計だけの補正にとどめ、年度末までの推移を税収や支出の実際に徴して見定めた上で、この借入金返済のための適当な時期に特別会計予算の補正を次の通常国会でやるといういたし方は、まことに適宜の方法であると存じます。これによってこそ健全財政が確保されるのであります。また公共事業費の額に対して、一割天引きなどという結果を絶対に招来することなく、ほんとうの不用額が正確に算出されて、地方に不安を与えないで済むのであります。百八十八億円の財源として、政府案が国における一般経費の節約額、賠償費及び実際上の公共事業費などの不用額合計百六十億円と、これに伴う地方負担の軽減額二十八億円という見積りはまことに妥当なものであり、良心的な態度であるということができます。
 ただこの際一言したいのでありますが、地方負担軽減額二十八億円のうち、起債分の十億円については、さらに適当な財源措置を講ぜられたいという地方行政委員会の決議の趣旨は、政府においても十分尊重されるよう要望いたします。
 社会党が組みかえ要求の理由の冒頭に、政府案は財源として昭和三十年度一般会計の組みかえを行わずして、一時借り入れを行ったことは不当であるといっているのは当らないのであります。断じて当らないのであります。もし社会党の案のごとくやったならば、至大の憂いを後日に残すことになるのであります。一般会計に穴があいて財政の健全性はたちまち破れて、将来これを埋めるためには公債によるインフレか、しからずんば増税として国民を苦しめるばかりです。社会党はこの前の国会で、すなわち昭和三十年度の一般会計予算の審議に当って、その予算規模を一兆円とする原則に立っておりました。去る特別国会の予算委員会における両派社会党の組みかえ動議は明らかにそうなっております。しかるに今にわかにその節を変じて今年度の地方財政赤字補愼策として、一般会計を年度末まで四ヵ月を残す途中において巨額の組みかえを行い、一兆ワクを越すということは断じて承服することはできないのであります。
 われわれは第二次鳩山内閣以来財政の健全性をかたく守って参りました。それがために物価も安定し、貿易も予想外に伸張し、幾分でも日本経済の底を深めつつ、その規模を拡大し、拡大均衡への地ならしはほぼ完了したわけであります。
 勢力結集後のわが党は、さらに決意を新たにして財政の健全化を持続するのであります。われわれはこの大きく結集された政治勢力を最高度に善用し、知性を動員して、今後の世界経済の推移をたんねんに分析し、長期にわたる経済計画を立案しております。その一環として行政機構の画期的改革と相まって、国と地方を通ずる抜本的な地方財政再建政策を実施するのでありますが、それまでの暫定措置、すなわち年度途中の臨時の措置としては、このたびの政府原案のごとく手がたいやり方をもって妥当もしくは実行可能性の最大限の良心的措置として原案を肯定するゆえんであります。
 次に社会党の組みかえ案によれば、公務員年末手当〇・二五ヵ月分の増額、日雇い労務者年末手当支給及び被生活保護世帯に対する年末補給金支給を要求していますが、第一に公務員の年末手当〇・二五ヵ月分の増額については、政府はすでに人事院勧告の通り支給することと決定し、法律上の手続もほぼ完了いたしました。第二の日雇い労務者の年末手当についても、五億六千万円の財源の用意があり、さらに第三の被生活保護世帯に対する年末補給金の支給につきましても、六億六千万円の金を用意いたしているのであります。社会党の計算がもし正確であるならば、ほぼ社会党の要求に近い線はわれわれもまたこれを用意いたしているのであります。(「なぜ出さない」と呼ぶ者あり)いたしてある。
 最後に社会党の組みかえ案で最も問題なのは、歳入補正の部、すなわち地方財政赤字補てんと、上述の諸給与増額を合せた四百六十億三百万円という財源をどうして出すかという問題であります。この案によれば税収の自然増百億、昭和二十九年度一般会計余剰金一部の本年度一般会計歳入への繰り入れ百五十億、防衛庁経費減額二百億、賠償等特殊債務処理費の減額五十億、一般行政費の節約による減額三十一億、こうなっておりますが、第一に自然増収百億の見積りは過大である。詳細な計算は一昨日の質疑、それに対する答弁で明らかであります。三十年度は減税を断行したのでありますから、従来のような実績は期待し得ないのみならず、多少は予想し得ても、たばこ益金の減収を差引いたしますと、百億の自然増収を見込むことは大へんに乱暴であります。
 第二の財源としての百五十億は、二十九年度一般会計余剰金の一部を今年度一般会計へ繰り入れることによって出すというのでありますが、将来の財源を先に食いつぶして、来年度以降やるべきことをやらずじまいにしてしまうことは断じて許されません。社会党の諸君が、先は光のことで何とかなるというばく然たる考えを持っているほど無責任だとは私は思わないけれども、(「そんなことは言いません。」と呼ぶ者あり)それは思わないけれども、(笑声)おそらくこの財源を捻出する方法として諸君が考えていることは、社会主義者の立場からの増税、たとえば、累進課税の重加とか、奢侈的物品税の増徴とか、その他間接税収の増大によるのでありましょう。社会主義的に理屈はつきましょうけれども、いずれにしても増税まあくまで増税であります。増税は響きが悪いからいやだというならば、第二には公債で行きますか。するとこれも困るという結果になって、公債も増税もやらずに、来年度の食いつぶしを埋める第三の方法はあなたの口ぐせのように言う平和論、すなわち国防費の削減に求めることになるわけです。これは全くわが党の政策が許しません。従ってこの百五十億は出ない財源でございます。
 第三の財源としては、防衛庁費減額二百億円があげられております。これこそは本委員会でも、内閣委員会その他の常任委員会で常にわれわれと対立する社会党、労農党及び共産党との政策の違いであって、われわれの方は防衛力を国力相応に充実する立場であります。これによってのみ防衛分担金の削減や、駐留軍の漸次撤退の促進や、安保条約、行政協定の改訂や、さらに基地問題の自然解消が可能になるのであります。これこそが日本の独立態勢と国家としての権威を整えるための実現可能な道だと考えております。従って二百億も一挙に防衛庁費を減額するわけには参りません。社会党の方は、空虚な平和憲法擁護論を基調とする無防備論に近いのであります。これは板本的にどうかと思うのであります。私は、いささか統一社会党の新綱領、新政策を検討し、社会党の抱く憲法九条に関する厳格なる解釈論と国土建設隊の存置論や、さらには先般の本会議における国連加盟決議案の賛成論と、憲法九条の諸君の抱く解釈論との矛盾とを論じて、この第三の財源、すなわち防衛庁費削減分を補正予算に組めと要求するのが全く無理であるゆえんをいろいろ論じたいのでありますが、このたびは特別会計の補正でありますから、これを省略することとしますが、三十一年度予算内容について問題化した場合、さらには日ソ交渉の進展に伴なって領土の返還が俎上に乗せられる場合には、ソ連の出してくる非軍事化条件と相待って、日米安全保障条約改訂の必要との関連において防衛力の充実の必要性がわかるはずであります。そのと、きは切実に防衛力充実の必要を説くわれわれが正しいか、無軍備論を唱えてきた社会党の諸君が正しいか、いずれが国民のためになるか、青年にも婦人にも浮き彫りされてくるに間違いないから、そのときまで暫時論争を保留して、社会党の諸君にも研究と準備の期間を与えたいと思うのであります。(拍手、笑声)国の防衛という重大な問題、さらに世界平和の問題について、一つの国の二大政党が全く相反する考え方で国の統一を欠くという日本の不幸な現状を解消して参りたいと思うからであります。
 財源の第四としての賠償等特殊債務処理費の減額五十億は、見積り過大であり、第五の一般行政費の節約による減額三十一億は政府原案でも財源として見込んでおりますから、この点だけは賛成であります。
 要するに社会党組みかえ案に掲げる財源措置の大きな部分、第一、第二、第三、合計四百五十億円のごときは、捻出不能の空虚な文字にすぎないのであります。
 以上、私は政府原案賛成、社会党組みかえ案反対の理由を述べましたが、今回統一社会党は、このたびの予算の補正に当り、内容はともかくとして、歳出についても歳入についても数字を具体的に示し、しかもそれに伴う所得税の臨時特例に関する法律案以下五つの裏づけをなす精密な法律案まで参考資料として付加し、提出されましたことは、反対党に対する儀礼においても間然するところなく、また国民に対する公党の忠実な努力であって、この点については深く敬意を表する次第であります。その政権担当の熱意と主観的な用意は、それは実に驚嘆に値しますが、一昨日古井、松野両氏によるわが党代表質問に対する答弁は、いさざか精彩を欠くというよりは、むしろ支離滅裂であって、社会党の政権担当能力に多大の不安を与えましたことは、社会党支持者のみならず、私もまた心から残念に思う次第であります。わが国が二大政党政治の画期的な時代に移行し、その最初の国会でかくのごとき非現実的な組みかえ案を持ち出し、その現実的成長を国民に明示する絶好の機会を逸したことを残念に思います。やがて来たる通常国会におきましては、三十一年度本予算案を機会にその機会をキャッチせられることを衷心から祈って、私の原案賛成、組みかえ案反対の討論を終る次第であります。(拍手)
#4
○三浦委員長 岡良一君。
#5
○岡委員 私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)に関し政府の原案に反対をし、わが党の提出にかかる編成替えを求むるの動議に賛成をいたし、若干その趣旨を述べたいと思うのであります。
 わが党の動議に関しましては、一昨日の本委員会においても、自由民主党の代表各位より懇切なる御質疑をいただいたのでありますが、正直のところ、その内容においては政策の大本に触れた建設的なものに乏しく、あたかも鬼千匹の小じゅうとが嫁いじめに終始したかの観を呈しまして、国民に失望を与えたことはまことに残念であります。(拍手)たとえばわが党の編成がえに伴う予算増の財源を、三十一年度においていかに措置するかというような御質疑もありましたが、あたかも政権担当のあかつきにおいて、わが党の政策内容が現内閣と同様であるというような、驚くべき錯覚に基く議論の展開であり、あるいは年の瀬を控えて失業者や生活扶助を受けておる人たちに対し、せめて餅代でも与えたいというわれわれの思いやりにひっかけて、その前に職安の日給や生活扶助費そのものを引き上ぐべきではないかという御趣旨、もちろんわれわれは現在の日給や扶助額があまりにも少いから、とりあえず年の瀬には生活補給金を与えてやろうではないかと申しておるのであって、与党の代表から日給や扶助費を引き上げよという主張が公然と出た以上は、来年度の予算においてはぜひともその実現を願いたくわれわれは刮目して期待をいたしたいのであります。
 そこで私は以下、政府並びに与党とわが党の政策の根本に触れて、政府の御提案に反対するの理由を若干申し述べることにいたします。
 その第一点は、政府の公約せられたるいわゆる拡大均衡、完全雇用、経済自立、なるほどその目標はまことにけっこうでありますが、現実のやり方に対しましては、社会党としてはとうてい承服することができないのであります。特に拡大均衡のための地固めと称して行われておる諸政策の結果として、政府のいう拡大均衡なるものは、事実上中小企業者や、働く人たちや、地方団体が下積みとなって大きな犠牲を払い、その上に立っての拡大均衡であり、従ってその実体は拡大均衡どころか、むしろ縮小不均衡とも申すべきであります。わが党が今回の組みかえを要求する基本的な理由はまずここに存するのであります。
 第二点といたしまして、われわれは日本の現実を直視した場合、何よりも国を守るためには、まず守るに足る国を作るべきであると信じ、この心ある国民の総意を受けて、防衛庁費の減額を主張いたしておるのであります。しかも防衛関係費の問題は、国民の生活にかかわるだけではなく、独立国たるわが国の尊厳に、また憲法に明らかな予算の編成という政府の国務に、ひいては国権の最高の機関たる国会の審議権にもかかわる、重大な関連を持っておるのでありまして、これらがことごとく無視されようとしておることも、わが党としては看過するわけにはいかないのであります。
 第三点として、政府並びに与党の諸君の予算に対する無定見、無計画性を指摘しなくてはなりません。国の予算に対するこのように無定見な無責任は、全く国見の血税をないがしろにするものであって、その政治的責任は重大であろうと信じます。
 さて第一点でありますが、われわれはあくまでも交付税率の五彩の引き上げによって、地方制度の抜本的な改革ができるまでは、地方財政の安定をはかることが至当であろうと信ずるものであります。地方団体の累積した赤字が、やがては七百億にも及ぶと推定をされておる、しかも固有の財源を与えることなく、地方債の引き受けに終始した結果は、本年度においても百五十億を上回る元利の支払いに、地方団体は追われておるという現状であります。赤字といえば本年度だけでも政府が無理な抑え方をいたしましたために、百四十億の赤字がすでに地方に押しつけられる結果となっておる。すでに当初予算のときにおいても、わが党はこの点については強く警告を発したものであるが、これが一方的なデフレ政策を横行して、遂に今日の事態を招いたのであり、その責任は当然政府並びに与党の諸君の負うべきものと信ずるのであります。しかも今日に至ってもなおこの政策を押し切ろうとして、一時しのぎの借入金をもって一時を弥縫し、やがては公共事業を取り上げて返済をしよう、加えて地方公務員の臨時手当の増額部分は、事実上府県の赤字をもってまかなえ、これでは地方団体としてみれば全く踏まれたりけられたりと申すほかはありません。(拍手)日本の民主化の基調ともいうべき地方自治の財政的基礎というものが、このようにして弊履のごとく捨てて顧みられないという政府のやり方に対しては、わが党は断固として反対をいたすものであります。
 過日一萬田大蔵大臣は財界筋との懇談の席上で、生産も所得も貿易も伸びたのは、一にわれわれのデフレ政策のたまものであると、自画自讃をしておられたと聞いております。しかし国の生産が伸びても、果して国民一人々々の所得は伸びを見たでありましょうか。最近の統計によれば、中堅的な所得階属が著しく減少し、一方では一万二千円未満の低額の所得者がだんだんと増加を来たしております。国勢調査で明らかにされた一世帯五人のものが、一ヵ月一万二千円未満でやっていける道理はございません。中小企業につきましても、東京の手形交換所の不渡り手形の枚数は、この十月には戦後最高の記録を示し四万七千五百余枚と相なっており、その一口額面も十万円を割っておるのであります。本年に至りましてからは、賃金の不払いも逐月増加いたしまして、労働省の統計によれば八月の賃金不払いは、すでに二千六百件を越えておるのであり、その一件金額もまことに二十数万円ということに相なっております。これらの数字こそはまさに氷山の一角を示すものであります。一見好況のごとくに見えながら、一兆デフレ予算の強行というものが、働く人たちや中小企業、あるいは地方団体をいかに苦しい瀬戸ぎわに追い込んでいるかを如実に物語っておるのであります。諸君の地固め政策なるものが、このようにして地方団体や、中小企業や、あるいは働く人たちを、八合目でミルクをやるどころか、ぎりぎりの頂上まで追い込んでおるのであります。従ってわれわれが今日組みかえ要求の中で、地方団体、失業者、生活困窮者に対して特別の予算措置を主張いたす立場は、もはや政策と申しまするよりは、人道的な立場であると申す方がよかろうと思うのであります。あるいは貿易が伸びたとも大蔵大臣は申されておりますが、それとても国内の需要が衰えた生産のはけ口を輸出に求めようという出血受注が至る所に存在をいたしております。加うるに、この伸びにしても、あるいはアメリカ経済の好景気とか、あるいは世界的な貿易の拡大というような外部からの上げ潮に乗ったものであって、手放しの楽観はとうてい許されません。すでに赤信号はあちらこちらに打ち上げられております。ヨーロッパ諸国における公定歩合の引き上げ、あるいは東南アジア諸国における外貨事情の悪化による輸入の制限、スターリング・ブロックの金ドル準備の悪化など、来年度におけるわが国の国際収支は決して楽観を許さないのであります。アメリカ経済とて、片やインフレ、片や不況の待ち伏せをしておる危険な峰を伝う遠足隊であるとされて、その先行きは公正なる論者からは憂慮されておるということであります。底の浅いわが国の経済であってみれば、こうした国際経済の波の起き伏しは、直ちにわが国経済そのものに大きな影響を与えることは必至であります。このような事態に即してわが国経済の安定をはかる大切な防波堤は、何と申しましても地方財政の安定とともに、国の財政投融資に待つところがきわめて多いと思うのであります。財政懇談会の中間報告なるものを見ますと、来年度の財政投融資に対してもきわめて消極的であり、地方財政に対してもきわめて批判的な意見を拝見いたすのでありますが、わが党といたしましては、真の拡大均衡という立場から、貿易の拡大、中小企業、農林漁業等の安定のために、ぜひとも国の責任において留意をせられたいのであります。要は健全財政に名をかって自由放任、優勝劣敗の現状を放任し、その結果として、名は均衡予算たりとも、その内容と結果はいたずらに大資本と大銀行の決算の帳じりにおける均衡予算であることは、われわれはあくまでも反対をいたすものであります。
 さて第二点といたしまして、われわれは組みかえ要求の財源において防衛庁費の減額を要求いたしておるのであります。この際防衛関係費に対するわが党の態度を明らかにいたしたいと存じます。すなわちわれわれは現在の再軍備に反対をし、当面自衛隊の拡大を阻止し、その漸減をはかるという基本的な立場に立っておるのであります。この立場に加えて、昨年度の防衛庁費においては、二百余億の繰り越しがあったとも伝えられておるのであってみれば、本年度において二百億程度を減額することは十分に可能であると信じておるのであります。元来このたびの補正措置については、政府としてはこの防衛関係費に財源を求められることが当然であったと思います。生産的な公共事業を犠牲にして不生産的な防衛費には手をつけないということは、国の施策としては筋が通らないと思うのでありますが、アメリカへの約束ということをたてにとってこの費用に手をつけることができず、一体政府は火の車の実情である地方財政に忠実であろうとするのか、それともアメリカの政府に忠誠を誓わんとせらるのであるか、心ある国民は疑いを持っているのであります。憲法には、内閣の最も重要な国務として予算の編成権がうたわれておるにもかかわらず、第三国の意思に制約されて自主的な予算の補正が不可能であった、こういうことは明らかに国会の審議権そのものをも拘束する結果となるのであって、まことにわが国の独立の尊厳の名においても遺憾千万と申さねばなりません。
 防衛分担金の削減交渉もいよいよ始められた模様であります。ところが本年春の総選挙の際は、防衛分担金を削減して住宅や失業の費用に充てたいと国民に公約せられたことは、総理も御記憶のことだと存じます。ところがこれをすっかり忘れ果てて、今日始められようとしておる削減交渉における政府の建前は、民生の安定と変って、西太平洋の安全保障をするに足るわが国の防衛努力と見合って分担金を削減しようということに相なっております。心ある国民は、この驚き入った豹変ぶりてばあぜんといたしておるのであります。しかも伝えられるところを総合すれば、八十億程度の削減が精一ぱいのところではなかろうかといわれておる。従って本年度からいよいよ防衛関係費は本格的に増加をし、少くとも千四百億の台になるのではなかろうかといわれております。しかも防衛庁の試案として伝えられておるものによれば、三十五年には二千億の大台をこえて、二千百五十億とも伝えられております。一方、いわゆる六ヵ年計画における社会保障費の総額は、わずかに六千三百億程度に落ちつくらしい。してみれば、現在は千三百億に対して一千六億という再軍備費と社会保障費の比率は、五年後においては二千億に千二百億という大幅な比率のずれを来たしてくるのであります。このことは、社会保障の犠牲の上にわが国の再軍備が強行されることを数字が明らかに示すのであります。第二次大戦後の世界的な風潮は、一に福祉国家の建設という大目標であることはすでに御存じの通りであろうと思うのでありますが、これをしもあえて裏切る政府の施策はまことに驚くべき暴挙と申し上げたいのであります。すでに鳩山総理は憲法の改正を言明をせられたのでありますが、われわれはこれらの事態を総合いたしまして、憲法を擁護し、再軍備反対のきぜんたる方針をひっさげて、国民の生活を守ることが立ちどころに国の独立と平和を守る道に通ずるというかたい信念に立って、国を愛するすべての国民とともに、保守党の諸君と対決する日のあることを心から期待をいたしておるのであります。
 最後に第三点の理由として、何を無定見といい、無責任というか。過ぐる六月七日、当時の民主、自由両党は、世論のごうごうたる非難をしり目にかけて、強引にも三十年度予算の共同修正を敢行いたされました。よもやお忘れでもあるまいが、その中には四十億になんなんとする公共事業費が計上されていたのであります。しかも一方、地方ではこれらの公共事業をも含めて、これを執行するためにこそ交付税率を引き上げてくれと再三再四、知事も、市長も、議会も、政府や与党の諸君に陳情をいたされたはずであります。しかるに政府今回の挙は、これら地方団体の切実なる要望を踏みにじって、八十八億に達する公共事業費を地方団体から巻き上げようというのであります。せっかく与えておいて半年たつかたたずで、またこれを引き上げてしまう。まことに驚き入った無定見であり、文字通り赤字にあえぐ地方財政をもてあそぶものといわなくてはなりません。(拍手)それのみにとどまらず、一に国会が決定した、国会の審議権をも踏みにじるものといわなければなりません。(拍手)せっかく二大政党が対立をし、今やわが国にも議会政治運営の常道が立てられんとするに当ってこの大切なときに、このように国会の威信を全く失墜するというような事態を引き起されたことを、われわれは日本の議会政治の上から、心から遺憾に存ずるのであります。(拍手)
 しかも国家公務員の期末手当増額に伴う地方公務員に関する負担は、地方団体の赤字でまかなえという、地方団体の政府に対する信頼は全く地を払うに至るであろうことは必至と申さねばなりません。(拍手)中央地方を通じて一貫した相互信頼、相互協力の体系は、寸断をされるおそれもあるのであります。このような無定見、無計画は、国全体の計画にもしばしば現われておるのであります。拡大均衡、完全雇用、ことしの春の総選挙で、かねや太鼓で宣伝をされた経済建設六ヵ年計画も、実施を見ないうちに御破算になりました。十二月四日には経済審議会の答申がありました。いち早く大蔵省筋からはかなり手きびしい批判も公表されております。このようなことでは、果して五ヵ年計画の第一年度予算編成にぴったりと盛り込まれることができるかどうか、われわれは心配をいたしておるのであります。またしても先般の六ヵ年計画のように、責任ある予算措置が伴わず、年次中途で投げ出すに至っては、外国に対しても、まことに面目ない次第と申さなければなりません。
 しかも一方防衛費は、昭和三十五年には、二千百五十億と、着々として国の経済計画とは優先的に増額をされて参ります。試案であろうとなかろうと、事実は国の経済建設計画の中に、アメリカのお仕着せを着た防衛関係費だけが、傍若無人にまかり通っておるという現在の姿は、まことに遺憾千万と申さねばなりません。(拍手)
 現在アジアにおいては、中共はもとより、ビルマもフィリピンもインドもタイも、あらゆる国々が独立の完成を目指して、それぞれ年次的な経済自立の計画を立て、政府も国民も、一丸となって建設に邁進をしておることは、諸君も御承知の通りであります。ところが肝心の日本では、国民に公約された計画が、初年度から御破算になり、せっかくできても予算の編成ことりおくれてしまうかもしれない。しかも一方防衛関係費は、国の建設計画に優先し、他国の意思の拘束を受けて、三十五年度二千百五十億などと、これではまことに遺憾千万であります。われわれは中共はもとより、アジアの国たからも完全に取り残されてしまうことをおそれるものであります。
 私はこの機会に来たるべき通常国会においては、政府が必ずほんとうに、責任ある財政に裏づけられた、実行に責任を持てる、ほんとうの国家計画を提出せられ、堂々と国民の審判の前に、わが党の政策と対決せらるるよう、その御用意を切に要望いたすものであります。
 以上私は、政府の弱肉強食を放任して、縮小不均衡を招来する地固め政策を批判し、国を守る前には守るに足る国を作ることが、わが国の独立と平和の大前提であることを主張し、また他国の意思に拘束されない、真の自主独立の経済自立計画を遂行すべきことを要求し、わが党の組みかえ要求もこの基本的な政策に達することを提唱いたしまして、私の討論を終えます。(拍手)
#6
○三浦委員長 これにて討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。まず日本社会党の提案として、赤松勇君外十五名より提出されました、昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)の編成替を求めるの動議を採決いたします。右の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#7
○三浦委員長 起立少数。よって赤松勇君外十五名より提出されました、昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)の編成替を求めるの動議は否決されました。
 次に昭和三十年度特別会計予算補正
 (特第2号)の原案を採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#8
○三浦委員長 起立多数。よって昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)は、原案の通り可決いたしました。(拍手)
 委員会報告書の作成は、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○三浦委員長 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。
 この際一言ごあいさつを申し上げます。
 去る六日審議を開始して以来、委員各位には終始きわめて熱心に質疑を行い、審議を尽されましたが、その間議事の運営につきましては、格別の御協力を示されまして、本日ここに無事本予算案を議了いたしましたことに対し、委員長といたしまして、厚く御礼を申し上げます。衷心より謝意を表します。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時二十九分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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